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特許7357286高熱膨張係数を有する黒鉛材料の製造方法及びその黒鉛材料
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  • 特許-高熱膨張係数を有する黒鉛材料の製造方法及びその黒鉛材料 図1
  • 特許-高熱膨張係数を有する黒鉛材料の製造方法及びその黒鉛材料 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-28
(45)【発行日】2023-10-06
(54)【発明の名称】高熱膨張係数を有する黒鉛材料の製造方法及びその黒鉛材料
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/52 20060101AFI20230929BHJP
   C01B 32/205 20170101ALI20230929BHJP
   C04B 35/645 20060101ALI20230929BHJP
【FI】
C04B35/52
C01B32/205
C04B35/645
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020026361
(22)【出願日】2020-02-19
(65)【公開番号】P2021130580
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2022-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】591014651
【氏名又は名称】日本テクノカーボン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132230
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100088203
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 英一
(74)【代理人】
【識別番号】100100192
【弁理士】
【氏名又は名称】原 克己
(74)【代理人】
【識別番号】100198269
【弁理士】
【氏名又は名称】久本 秀治
(74)【代理人】
【氏名又は名称】成瀬 勝夫
(72)【発明者】
【氏名】岩下 哲雄
(72)【発明者】
【氏名】薄葉 秀彦
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 俊哉
(72)【発明者】
【氏名】池亀 邦男
【審査官】末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-033107(JP,A)
【文献】特開平03-279207(JP,A)
【文献】特開昭59-223284(JP,A)
【文献】特開平10-289936(JP,A)
【文献】特開2011-084410(JP,A)
【文献】特開昭61-275115(JP,A)
【文献】特開2002-154874(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/52-35/536
C04B 35/645
C01B 32/205
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料となる骨材を粉砕する工程、骨材と結合材を配合し加熱混合する工程、その後、成形工程、焼成工程及び黒鉛化工程により黒鉛材料を製造する方法であって、
800℃から1200℃で焼成した炭素材料を2400℃から3000℃まで昇温し黒鉛化するプロセス中に圧縮荷重を負荷して塑性変形させ、圧縮荷重の負荷による最大圧縮応力が60MPa以上であることを特徴とする高熱膨張係数を有する黒鉛材料の製造方法。
【請求項2】
られた黒鉛材料は、1方向の熱膨張係数が8.0x10-6/K以上、11.0x10-6/K以下であり、かさ密度が1.75g/cm以上、2.00g/cm以下であることを特徴とする請求項1に記載の高熱膨張係数を有する黒鉛材料の製造方法
【請求項3】
骨材がピッチコークス、天然黒鉛、人造黒鉛又はカーボンブラックであり、結合材がピッチ系又は樹脂系である請求項1に記載の黒鉛材料成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高熱膨張係数を有する黒鉛材料を製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
黒鉛材料は非酸化性の雰囲気下では高い耐熱性を有し、高温を必要とする治具や装置の部品材料として広く使用されている。
一般に黒鉛材料の特性は使用する原料の種類や組み合わせ、及びそれらの粒径、混合方法、並びに成形方法で決まることが知られている。特性の中で熱膨張係数(CTE)については使用される用途により望まれる値が異なっている。たとえば、電極やヒーターの様に発熱体として使用されるものについては発生する熱応力を抑制する為に低い熱膨張係数のものが望まれる。一方、相手材への汚染防止や黒鉛材料の酸化防止野ためにセラミックスでコーティングするものについてはコーティングするセラミックスに近い熱膨張係数のものが望まれる。また、ガラスや金属の型に使用されるものについては、高い熱膨張係数のものが望まれる状況にある。このように黒鉛材料の熱膨張係数を制御することは重要な技術といえる。
【0003】
高い熱膨張係数の黒鉛材料は、一般に、原料として黒鉛化度(配向性)の高い天然黒鉛が使用されることが多く、その場合は原料が制約されることになる。また、成形法としてモールド成形を使用する手法もあるが、高熱膨張係数はそれほど期待できず、得られる成形品のサイズも制約される。
【0004】
熱膨張係数を制御する課題の内、高い熱膨張係数を有する黒鉛材については、特許文献1に炭素基材の好ましい熱膨張係数として6.5×10-6から9.0×10-6/Kのものが開示されている。また、特許文献2には高い熱膨張係数を有する黒鉛材料の製造方法として原料にか焼していないコークス(生コークス)を使用することが開示されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1には、その黒鉛基材の製造方法については記載がない。一方、特許文献2に記載された黒鉛材料は、揮発分の多い生コークスを原料としていることから、安定的に特性を発現させることは製造上かなりの工夫が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】WO2006/085635
【文献】特開2005-298231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、原料として天然黒鉛を使用せずとも、通常の人造黒鉛原料を使用して、高熱膨張係数を有する黒鉛材料を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような中、本発明者らは長年にわたり黒鉛材料の特性の発現について鋭意検討をしてきた結果、原料として天然黒鉛を使用せずとも、通常の人造黒鉛原料を使用し、800℃から1200℃で焼成した炭素材料(以下、焼成品と言う)を2400℃から3000℃まで昇温し黒鉛化するプロセス中に荷重を負荷すると、黒鉛化後の材料に圧縮荷重をかけて変形させた場合に比べて、より大きな塑性変形によって高い熱膨張係数が得られることを見出し、本発明に至ったものである。
本発明によれば、通常の黒鉛化では得ることのできない高い熱膨張係数の黒鉛材を得ることができる。
【0009】
一般に黒鉛材料は微小な黒鉛結晶の集合体であり、その結晶粒子の大きさと方向により熱膨張係数が変化する。これらの結晶の大きさは黒鉛材料の原料及び製造方法に影響される。具体的には骨材としては、人造黒鉛原料として通常使用される骨材、例えばコークス粉、黒鉛粉、天然黒鉛粉、カーボンブラック等を、結合材としてはタール、ピッチ等を用い、これらを粉砕、加熱混合(捏合)、成形、焼成、黒鉛化の各工程を経て黒鉛材料とされる。結晶粒子の大きさは、概略は炭素六角網面(a軸方向)の大きさと網面の積層(c軸)の大きさから推定でき、熱膨張係数はa軸方向に小さく、c軸方向に大きい特性となっている。結晶粒子が小さく、方向がランダムに配列されている等方静水圧プレス(CIP)で成形された人造黒鉛材料などは見掛け上、等方的な性質となり、熱膨張係数は比較的大きな傾向となる。一方結晶粒子が大きく、一方向に配列している押出成形材は、押出方向に結晶が配列するために熱膨張係数は小さくなり、その直角方向は大きくなる傾向にある。
【0010】
本発明者らは、複数の骨材の組織形態、平均粒度、配合量、並びに結合材の配合量を検討し、その黒鉛材料の性状を鋭意検討してきた。その検討の中で、焼成品に荷重をかけて黒鉛化すると、黒鉛化後の材料に荷重をかけて変形させた場合に比べて、より大きな塑性変形が生じる領域を発見した。そして、この現象を利用することで高い熱膨張係数を有する黒鉛材料を発明するに至ったものである。
その理由については定かではないが、焼成品に荷重をかけることにより、荷重方向(c軸方向)の配向密度が高くなり、かさ密度も高くなり、c軸方向の熱膨張係数が高くなるものと推定される。
【0011】
すなわち、本発明は、黒鉛材料の前駆体であり、一般的に焼成品といわれる材料を黒鉛化プロセス中に圧縮荷重を負荷することにより高い熱膨張係数(CTE)を有する黒鉛材料を得るものである。
【0012】
本発明により得られる黒鉛材料は、1方向の熱膨張係数が8.0x10-6/Kから11.0x10-6/Kであり、かさ密度が1.75から2.00 g/cmである特徴を有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明により一般的な配合の黒鉛材料前駆体より高い熱膨張係数を有する黒鉛材料が比較的容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施例で使用した圧縮変形試験治具を備えた黒鉛化試験炉の概要を示す説明図である。
図2】焼成品に圧縮荷重を負荷した際の応力―ひずみ線図を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の黒鉛材料の製造方法は、以下の工程により得ることができる。
すなわち、原料となる骨材を所定の粒径に粉砕する工程(粉砕工程)と、骨材と結合材を所定の割合で配合し加熱混合する工程(捏合工程)と、この中間材料(捏合品)を所定の粒径に粉砕し、ゴム型などに充填し成形する工程(成形工程)、得られた成形品を非酸化性雰囲気で加熱し焼成する工程(焼成工程)、焼成した製品を非酸化性雰囲気で2400℃から3000℃まで加熱昇温し黒鉛化する工程(黒鉛化工程)に荷重を負荷することにより得ることができる。
【0016】
本発明で使用する骨材の一つは石油系ピッチ及び石炭系のピッチを原料として得られるピッチコークスを粉砕したものである。ピッチコークスは原料ピッチの特性を調整することによりその組織形態をコントロールすることができる。具体的には、ピッチコークスは黒鉛結晶が発達しやすい流れ組織部分と黒鉛結晶の発達しにくいアモルファス組織部分の混合物であり、原料ピッチの特性を調整することにより、これら組織の割合をコントロールすることが可能である。また、ピッチコークスの他に、天然黒鉛粉、人造黒鉛粉、カーボンブラックなどを粉砕したものを併用することもできる。ただし、コークス粉単独ではなく、コークス粉と天然黒鉛等を併用する場合であっても、コークス粉を主体とし、併用する天然黒鉛粉等は50重量%未満で使用するとよい。本発明で使用する骨材原料はこれらを1種もしくは2種以上混合して使用するものである。結合材としては炭化歩留まりの高い材料が好ましく、樹脂系並びにピッチ系の結合材を使用することができるが、石炭系ピッチを原料としたバインダーピッチを使用するのが望ましい。
【0017】
上記で選定した骨材は予め1μm~300μmの所定の粒径まで粉砕して、結合材と配合し、そののち加熱混合し捏合品を得る。捏合には一般的な混練機を使用することができるが、加熱ができるニーダーが用いることが望ましい。骨材と結合材(バインダー)の配合割合は、好ましくは骨材50~80重量部に対して結合材50~20重量部、より好ましくは骨材50~70重量部に対して結合材50~30重量部である。
得られた捏合品の成形にはラバーケース等を使用する方法と、押出成形機を使用する方法が適用できる。ラバーケース等を使用する方法は、捏合品を一旦冷却したあと、粉砕機により所定の粒径まで粉砕し、その粉砕した捏合品をゴム型もしくはラバーケースなどの型に充填し密封したのち圧力をかけ成形品を得るものであり、圧力かける方法としては、種々の方法があるが、静水圧プレス機により加圧することが望ましい(CIP成形)。押出成形機を使用する方法は、捏合品を冷却せずに押出成形機に投入し、ピストンで口金より押出して成形する方法である(押出成形)。
【0018】
これらにより得られた成形品を非酸化性雰囲気下で800℃から1200℃まで焼成して焼成品とし、さらにこれを非酸化性雰囲気下で2400℃から3000℃まで加熱昇温し黒鉛化プロセス中に荷重を負荷することで本発明の高熱膨張係数の黒鉛材料を得ることができる。一方、より低い温度において荷重を負荷した場合、焼成品が破壊したり、破壊しなくても所望の高熱膨張係数の黒鉛材料を得ることができない。
【0019】
ここで、黒鉛化工程において焼成品に荷重をかけるためには種々の方法が適用できるが、その方法のひとつとしては、黒鉛化炉内に焼成品を固定し、黒鉛材料等で製作された治具を用いて黒鉛化炉外より荷重を負荷する方法がある。他には、黒鉛化炉内に焼成品を固定し、黒鉛材料等で製作された所定の重量のものを載荷し、荷重を負荷することができる。
高い熱膨張係数を得るためには、焼成品にかける圧縮荷重による最大応力は、高いほどよいが、成形品として所望の諸物性を維持することも考慮すると、60MPa以上であることが好ましい。上限としては、特に限定されず、破壊しない程度、例えば5000MPa(5GPa)以下である。好ましくは、70~200MPaである。
【0020】
また、2400℃以上の黒鉛化温度まで加熱する方法としては、電気ヒーターによる加熱、直接通電による加熱、誘導電流による加熱、マイクロ波による加熱、プラズマアークによる加熱など、一般的な方法が適用できる。
【0021】
本発明の製造方法によれば、荷重負荷方向(0°方向)において熱膨張係数(CTE)が8.0x10-6/K以上、11.0x10-6/K以下の黒鉛材料を得ることができる。特に、同方向(0°方向)において熱膨張係数が9.0x10-6/K以上の黒鉛材料を得ることもできる。一方、荷重負荷の直交方向(90°方向)における熱膨張係数(CTE90)は、あまり変化せず、-1.0~5.0x10-6/K程度である。
本発明の製造方法によれば、黒鉛材料として要求される諸物性も維持しており、かさ密度は1.750~2.000g/cm、より好ましくは1.800~1.950g/cm、特に1.850~1.920g/cmであり、ショア硬度(SH)は50~80、特に60~75を維持できる。
【0022】
<熱膨張係数>
熱膨張係数は 5mmx5mmx2.5mmに切り出したサンプルを用い(株)日立ハイテクサイエンス社製 熱機械分析装置TMA/SS7100 を使用して、室温(RT)から500℃まで測定し、熱膨張係数を求めた。
【0023】
<かさ密度>
かさ密度は、2.5mmx5.0mmx10mmに切り出したサンプルの体積と質量を計測し、JIS-R7222-2017「黒鉛素材の物理特性測定方法」に準拠した方法により求めた。
【0024】
<ショア硬さ>
ショア硬さは、5mmx5mmx2.5mmに切り出したサンプルを用い、JIS-Z2246-2000「ショア硬さ試験-試験方法」に準拠した方法により求めた。
<圧縮ひずみ>
圧縮ひずみは、JISK7181:2011に準拠し、圧縮方向の減少厚み(ΔL)を圧縮方向の当初厚み(L)で除した値とした。
圧縮ひずみ(%)= ΔL/L×100
【実施例
【0025】
次いで、本発明を実施例により比較例と対比しながら具体的に説明する。
実施例1
偏光顕微鏡観察においてアモルファス組織のみが観察されるピッチコークス(アモルファスコークス)を粒径10~30μm(粒径はメジアン系である。以下、同じ。)に粉砕した骨材1を軟化点105℃の石炭系バインダーピッチを粒径5mm以下に粉砕した結合材を、それぞれ、骨材60重量部に対し、結合材40重量部の範囲で配合し、ニーダーにて200℃以上300℃以下で加熱混練し捏合した。この捏合品を冷却後約50μmに再粉砕し、これをラバーケースに充填し、静水圧プレス機により1t/cm2の圧力で成形した。得られた成形品を非酸化性雰囲気下で1000℃まで加熱して焼成品(かさ密度1.620g/cm、SH96)とした。
この焼成品よりサンプル(2.5mmx5mmx60mm)を切り出し、図1に示した黒鉛化炉内に固定して非酸化性雰囲気下で2600℃まで加熱し、黒鉛炉外より最大応力77MPaまでの圧縮荷重をかけて、本発明の黒鉛材料1を得た。すなわち、図1に基づいて説明すれば、黒鉛化炉内を2600℃に加熱した後、圧縮ロッド3を降下させ、圧縮子4を介して、炭素材料(焼成品)6に圧縮荷重をかけた。
【0026】
実施例2
実施例1において、負荷する荷重を65MPaとして、非酸化性雰囲気下で2600℃まで加熱し黒鉛化した他は、実施例1と同様にして捏合、粉砕、成形、焼成、黒鉛化して、黒鉛材料2を得た。
【0027】
実施例3
実施例1において、非酸化性雰囲気下で2400℃まで加熱し負荷する荷重を80MPaとして黒鉛化した他は、実施例1と同様にして捏合、粉砕、成形、焼成、黒鉛化して、黒鉛材料3を得た。
【0028】
実施例4
アモルファスコークスを粒径10~30μmに粉砕した骨材1と流れ組織が観察されるピッチコークス(ニードルコークス)を粒径10~50μmに粉砕した骨材2をそれぞれ重量部50:50に混合して骨材とし、これらを軟化点105℃の石炭系バインダーピッチを粒径5mm以下に粉砕した結合材を、それぞれ、骨材55重量部に対し、結合材45重量部の範囲で配合し、ニーダーにて200℃以上300℃以下で加熱混練し捏合した。この捏合品を冷却後約50μmに再粉砕し、これをラバーケースに充填し、静水圧プレス機により1t/cm2の圧力で成形した。得られた成形品を非酸化性雰囲気下で1000℃まで焼成して焼成品(かさ密度1.580g/cm、SH87)とした。
さらにこれを実施例1と同様に非酸化性雰囲気下で2600℃まで加熱し最大応力77MPaの圧縮荷重をかけて黒鉛化することで黒鉛材料4を得た。
【0029】
実施例5
実施例4において、非酸化性雰囲気下で2400℃まで加熱し、黒鉛化した他は、実施例1と同様にして捏合、粉砕、成形、焼成、黒鉛化して、黒鉛材料5を得た。
【0030】
実施例6
アモルファスコークスを粒径100~300μmに粉砕した骨材1とニードルコークスを粒径100~300μmに粉砕した骨材2をそれぞれ重量部50:50に混合して骨材とし、これらを軟化点105℃の石炭系バインダーピッチを粒径5mm以下に粉砕した結合材を、それぞれ、骨材70重量部、結合材30重量部で配合し、ニーダーにて150℃以上300℃以下で加熱混練し捏合し、押出成形機により成形した。得られた成形品を非酸化性雰囲気下で1000℃まで焼成して焼成品(かさ密度1.580g/cm、SH55)とした。
さらにこうして得た押出成形による焼成品を非酸化性雰囲気下で最大応力77MPaの圧縮荷重をかけて2400℃まで加熱し黒鉛化することで黒鉛材料6を得た。なお、押出成形焼成品の場合、焼成品には、押出方向(E)と押出方向の直角方向(E90)とがあり、CTE値が異なる。こうした押出成形焼成品に圧縮荷重を負荷する場合、押出方向の直角方向(90°方向)に一致する方向(0°方向)に圧縮荷重を負荷する。
【0031】
比較例1
実施例1において、非酸化性雰囲気下で圧縮荷重をかけずに3000℃まで加熱し黒鉛化した他は、実施例1と同様にして捏合、粉砕、成形、焼成(焼成品のかさ密度1.620g/cm、SH96)、黒鉛化して、黒鉛材料C1を得た。
【0032】
比較例2
実施例1において、非酸化性雰囲気下で圧縮荷重をかけずに2600℃まで加熱し黒鉛化した他は、実施例1と同様にして捏合、粉砕、成形、焼成、黒鉛化して、黒鉛材料C2を得た。
【0033】
比較例3
実施例1において、非酸化性雰囲気下で最大応力26MPaの圧縮荷重をかけて2600℃まで加熱し黒鉛化した他は、実施例1と同様にして捏合、粉砕、成形、焼成、黒鉛化して、黒鉛材料C3を得た。
【0034】
比較例4
実施例1において、非酸化性雰囲気下で最大応力39MPaの圧縮荷重をかけて2600℃まで加熱し黒鉛化した他は、実施例1と同様にして捏合、粉砕、成形、焼成、黒鉛化して、黒鉛材料C4を得た。
【0035】
比較例5
実施例1において、非酸化性雰囲気下で最大応力51MPaの圧縮荷重をかけて2600℃まで加熱し黒鉛化した他は、実施例1と同様にして捏合、粉砕、成形、焼成、黒鉛化して、黒鉛材料C5を得た。
【0036】
比較例6
実施例6において、非酸化性雰囲気下で最大応力39MPaの圧縮荷重をかけて2400℃まで加熱し黒鉛化した他は、実施例1と同様にして捏合、粉砕、成形、焼成(焼成品のかさ密度1.580g/cm、SH55)、黒鉛化して、黒鉛材料C6を得た。
【0037】
得られた黒鉛材料の物性測定結果を表1に示した。
【表1】

【0038】
上記のように実施例1から6は荷重負荷方向の熱膨張係数が、比較例1から6に比較して大きくなっており、本発明により通常の黒鉛材料前駆体より高い熱膨張係数を有する黒鉛材料を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明によれば、高い熱膨張係数を有する黒鉛材料が容易に製造でき、ガラスや金属などの熱膨張係数の大きい材料の成形型として使用することができる。
【符号の説明】
【0040】
1 断熱材
2 ヒーター
3 圧縮ロッド
4 圧縮子
5 固定治具
6 炭素材料
7 受圧板
8 受圧ロッド
図1
図2