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  • 特許-血液浄化装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-28
(45)【発行日】2023-10-06
(54)【発明の名称】血液浄化装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/36 20060101AFI20230929BHJP
   A61M 1/16 20060101ALI20230929BHJP
【FI】
A61M1/36 107
A61M1/16 111
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019158322
(22)【出願日】2019-08-30
(65)【公開番号】P2021036934
(43)【公開日】2021-03-11
【審査請求日】2022-05-13
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山根 隆志
(72)【発明者】
【氏名】西田 正浩
(72)【発明者】
【氏名】小阪 亮
【審査官】小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0233798(US,A1)
【文献】実開平06-060785(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/36
A61M 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液を循環させる血液回路と、
前記血液回路上に配置され、血液を浄化するための血液フィルターと、
前記血液フィルターよりも上流に配置され、前記血液フィルターに血液を送るための遠心ポンプと、
前記遠心ポンプの回転数を取得する回転数取得手段と、
前記血液フィルターの上流の流量を取得する流量取得手段と、
前記遠心ポンプの上流の圧力を計測する第1の圧力計と、
前記遠心ポンプの下流から前記血液フィルター間の圧力を計測する第2の圧力計と、を備え、
前記遠心ポンプの回転数と前記流量とから前記血液回路の抵抗値を算出し、
前記血液回路を循環する前記血液の流れが定常流であることを特徴とする血液浄化装置。
【請求項2】
前記回転数取得手段は、前記遠心ポンプの回転数を計測する回転計であり、前記回転数は、前記回転計によって計測された値であることを特徴とする請求項1に記載の血液浄化装置。
【請求項3】
前記回転数取得手段は、前記遠心ポンプを回転させるための回転数指令信号であり、前記回転数は、前記回転数指令信号によって送信される値であることを特徴とする請求項1に記載の血液浄化装置。
【請求項4】
前記流量取得手段は、前記流量を計測する流量計であり、前記流量は、前記流量計によって計測された値であることを特徴とする請求項2または3に記載の血液浄化装置。
【請求項5】
前記流量取得手段は、前記遠心ポンプの電圧値と前記遠心ポンプの電流値との積から前記遠心ポンプの軸摩擦損との差を、前記遠心ポンプの上流の圧力と前記遠心ポンプの下流から前記血液フィルター間の圧力との差から除して算出することを特徴とする請求項2または3に記載の血液浄化装置。
【請求項6】
前記流量取得手段は、前記第1の圧力計による計測値と前記第2の圧力計による計測値との差から前記遠心ポンプのポンプ特性を介して算出することを特徴とする請求項2または3に記載の血液浄化装置。
【請求項7】
前記血液回路の抵抗値を表示する抵抗表示器をさらに備え、前記抵抗表示器は、前記遠心ポンプの検出回転数を前記流量で除した値と、前記遠心ポンプの回転数の初期値を前記流量の初期値で除した値との比を抵抗値として表示することを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の血液浄化装置。
【請求項8】
前記抵抗値に応じて警報を発する警報器をさらに備え、前記警報器は、前記抵抗値が所定値以上に上昇するときに作動することを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の血液浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液浄化装置に関し、詳しくは、血液フィルターの目詰まり等、体外循環回路の血流異常を検出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、患者の体内から血液を取り出し、この血液から老廃物などを除去して体内に戻す、血液浄化療法が知られている。
【0003】
このような血液浄化療法として、特許文献1のように、体内から血液を取り出すためのしごき型の血液ポンプであるローラーポンプと、体内の血管から取り出した血液を循環させて体内の血管に戻す体外循環回路と、老廃物などを除去するための血液フィルターとを備え、これらを用いて血液浄化を行う血液浄化装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-12648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1のようにローラーポンプを用いた構成では、血流が不十分なときに体内の血管が潰れて吸引圧が際限なく上昇する問題がおきる。これに対して、遠心ポンプでは吸引圧が既定値を超えることはないため、上記の問題は生じない。一方、遠心ポンプを用いた血液循環回路では、例えば、フィルターに目詰まりが生じた場合に、フィルターの前後での圧力変化を観察しても、遠心ポンプの回転数が変化するとその影響によって上記圧力変化はフィルターの目詰まりに対応した値を示さない場合がある。
【0006】
本発明は、遠心ポンプを用いた血液循環回路における血液フィルターの目詰まり等、体外循環回路の血流異常を、精度よく検出することが可能な血液浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一形態では、血液を循環させる血液回路と、血液回路上に配置され、血液を浄化するための血液フィルターと、血液フィルターよりも上流に配置され、血液フィルターに血液を送るための遠心ポンプと、遠心ポンプの回転数を取得する回転数取得手段と、血液フィルターの上流の流量を取得する流量取得手段と、を備え、遠心ポンプの回転数と流量とから血液回路の抵抗値を算出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一形態によれば、遠心ポンプを用いた体外循環回路における、血液フィルターの目詰まり等、体外循環回路の血流異常を精度よく検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る血液浄化装置の概略図である。
図2】本発明の一実施形態に係る血液浄化装置の体外循環回路における圧力損失と流量との関係図である。
図3】本発明の一実施形態に係る血液浄化装置の遠心ポンプにおける発生圧と流量との関係図である。
図4】本発明の一実施形態に係る血液浄化装置の体外循環回路の血流量の実測値、遠心ポンプの回転数の実測値、および体外循環回路の回路抵抗比の関係図である。
図5】本発明の一実施形態に係る血液浄化装置のポンプ揚程と圧力損失との関係図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施形態を詳しく説明する。
【0011】
(第1実施形態)
図1は、本発明の一実施形態に係る血液浄化装置の概略図である。血液浄化装置は、患者とそれぞれ穿刺針を介して接続される脱血端と送血端との間に構成される体外循環回路11(血液回路)によって血液循環を行う。すなわち、血液浄化装置は患者の生体内血液路と体外の血液路とからなる血液循環回路を備え、そのうち、体外循環回路11は体外部分を構成するものである。体外循環回路11は、回路要素として脱血端から順に、流量計12、血液を移送する遠心ポンプ13、および血液を浄化するための血液フィルター14、を備えるとともに、脱血端と流量計12を介して遠心ポンプ13との間の脱血チューブ11a、遠心ポンプ13と血液フィルター14との間のチューブ11b、血液フィルター14と送血端との間の送血チューブ11cによって接続して構成される。また、血液浄化装置10は、体外循環回路11において後述されるようにして得られる、血流の抵抗値を表示する抵抗表示器16と、流量計12と遠心ポンプ13との間の圧力を計測する圧力計P1と、遠心ポンプ13と血液フィルター14との間の圧力を計測する圧力計P2と、求めた抵抗値が所定値以上のときに警報を発する警報器(不図示)と、を備えている。さらに、血液フィルター14で除去された成分を含む濾液を排出するための濾液容器15と血液フィルター14を連結している。
【0012】
体外循環回路11は、上述したように、軟質の生体適合性材料を素材とする内部中空のチューブを備える。このチューブは、脱血端の接続を介した患者の動脈から血液フィルター14へ血液を移送するための脱血チューブ11aと、遠心ポンプ13から血液フィルター14へと送られるチューブ11bと、血液フィルター14によって浄化された血液を、送血端接続を介した患者の静脈へ移送するための送血チューブ11cに分けられる。動脈側の脱血チューブ11a及び静脈側の送血チューブ11cには、それぞれの先端にコネクタが接続されており、当該コネクタを介して動脈側穿刺針及び静脈側穿刺針(不図示)が接続可能とされている。なお、動脈側穿刺針および静脈側穿刺針を患者の血管に穿刺する形態に代えて、ダブルルーメンカテーテルを患者に穿刺する形態にしてもよい。
【0013】
流量計12は、脱血チューブ11aに配置され、患者の動脈側から脱血した血液の流量を計測する。また、流量計12は、脱血した血液の流量が計測できればよく、従来の血液浄化装置において使用されるものであればよい。このような流量計としては、例えば、超音波流量計や電磁流量計などが使用される。
【0014】
遠心ポンプ13は、体外循環回路11を介して血液を循環させるために用いられ、脱血チューブ11aおよび流量計12よりも下流側に配置されている。遠心ポンプ13は、遠心ポンプ13に流入してきた血液を、内部にあるインペラを駆動させることで流出口から吐出し、送り出すポンプである。また、遠心ポンプ13の回転数を取得する回転数取得手段として、電磁式や光電式などの計測器である回転計を用いてもよい。これにより、遠心ポンプの回転数を計測することができる。さらに、遠心ポンプ13の回転数を取得する回転数取得手段として、回転計による計測値としたが、これに限らず、遠心ポンプ13を回転されるための回転数指令信号であり、回転数指令信号によって送信される値を回転数としてもよい。
【0015】
圧力計P1、P2は、血液浄化装置において、圧力計P1、P2の設置場所は、図1に示すように、一方は流量計12と遠心ポンプ13の流入側との間と、もう一方は遠心ポンプ13の流出側と血液フィルター14との間である。また、圧力計は、従来使用されているものであればどのようなものでも採用することができる。
【0016】
血液フィルター14は、脱血された血液を浄化するためのフィルターであり、例えば、濾過フィルターやダイアライザなどを用いる。血液フィルター14は、遠心ポンプ13によって吐出された血液を浄化するものである。また、血液フィルター14は、血液と透析液の間に半透膜を介して、尿素、電解質などを除去するものである。血液を浄化することによって、血液フィルター14が目詰まりすることがあり、その原因としては、血中蛋白等があげられる。そして、血液フィルター14によって浄化された血液は、送血チューブ11cを通って患者の体内に戻るようになっている。
【0017】
濾液容器15は、血液フィルター14において、血液中の尿素、電解質など濾過したものを含む、排出された濾液を貯蔵する容器である。
【0018】
抵抗表示器16は、体外循環回路11の抵抗値を表示するものであり、例えば、体外循環回路11の抵抗値の初期値と時間経過とともに変化する抵抗値の比をとったものを表示するようにしてもよい。これにより、使用者は、検出された血液フィルター14の詰まりを把握することができる。
【0019】
警報器は、体外循環回路11において、求めた抵抗値が所定値以上に上昇したときに、作動して警報を発して患者や医療従事者に知らせるものである。これにより、異常を知ることができ、血液フィルターの交換など迅速に対応することができる。
【0020】
このように、血液浄化装置10は、遠心ポンプ13によって、脱血チューブ11aを介して患者の体内から血液が取り出され、チューブ11bを通り血液フィルター14に導入される。血液フィルター14によって血液が濾過されてから、送血チューブ11cを通って患者の体内に浄化された血液が戻される。
【0021】
本発明の実施形態は、以上説明した血液浄化装置10の体外循環回路11における流量と遠心ポンプ13の回転数を用いて、体外循環回路11の抵抗値を求める。
【0022】
体外循環回路11における圧力損失P-は、以下の式1で表すことができる。
- = R2・Q2 ・・・(式1)
【0023】
ここで、P-は体外循環回路11の圧力損失、Qは体外循環回路の流量、Rは体外循環回路11の抵抗である。図2は、圧力損失P-と流量Qとの関係を、抵抗Rをパラメータとして表したグラフである。同図において、抵抗R1、R2、R3は、R1<R2<R3の関係を有しており、このことから、抵抗Rが大きいほど、流量Qの変化に対する圧力損失P-の変化が大きくなる。
【0024】
一方、血液を移送するためのエネルギーを付与する遠心ポンプ13の圧力上昇P+は、低流量の範囲では血液流量や血液粘度によらず以下の式2により近似算出される。
+ = a2・N2 ・・・(式2)
【0025】
ここで、P+は遠心ポンプ13を駆動することによる血液の圧力上昇、Nは遠心ポンプ13を駆動する際の回転数である。上記式2における係数a2は、一例として、次のようにして求めることができる。複数の遠心ポンプの回転数Nについて、それぞれの回転数のときの圧力上昇P+を測定する。そして、得られる複数の回転数と圧力上昇の組み合わせに対して回帰分析を行うことにより、回帰直線の傾きa2を求める。なお、係数を二乗の形で表しているのは、回転数Nが二乗の形で表されていることに合わせたからである。なお、上記式2は、遠心ポンプ13の回転数Nが、設計流量の2倍以内程度の流量のときに成り立つ。図3は、遠心ポンプ13による圧力上昇(発生圧)P+と流量Qとの関係を、遠心ポンプ13の回転数をパラメータとして示すグラフである。同図に示すように、どの回転数でも流量Qが多くなるほど発生圧P+が小さくなる関係にある。そして、遠心ポンプの回転数Nが多いほど発生圧P+が高くなる。遠心ポンプ13の発生圧P+は、圧力計P1、P2の差として測定することができる。
【0026】
ここで、本実施形態の血液浄化装置10が、患者の例えば腕における互いに近傍の動脈と静脈にそれぞれ脱血端と送血端が接続する場合、脱血端と送血端の圧力差はほぼ一定であり、それによって、体外循環回路11の血流が定常流であるときに、圧力損失P-と圧力上昇P+は等しくなり、以下の式3が成り立つ。
2・Q2 = a2・N2 ・・・(式3)
【0027】
そして、式3から体外循環回路11の抵抗Rは、下式4で表すことができる。
R = a・N/Q ・・・(式4)
【0028】
このように、体外循環回路11における血流の抵抗Rは、遠心ポンプ13の回転数Nとそのときの流量Qによって求めることができる。これにより、遠心ポンプを用いた血液循環回路における、血液フィルターの目詰まり等、体外循環回路の血流異常を精度よく検出することが可能となる。本実施形態の血液浄化装置10では、抵抗表示器16に上記式4のN/Qの値を表示する。そして、操作者はこの表示される値を見ることによって、血液フィルター14の目詰まりを検出することが可能となる。さらに具体的には、血液浄化の開始時の抵抗値と、時間と共に変化する抵抗値との比をとった値を抵抗表示器16に表示する。すなわち、開始時は比が1で、時間の経過と共に大きい値に推移して行く。この値が所定の閾値を超えたとき、血液フィルター14に目詰まりが生じていることを検出することができる。
【0029】
図4は、流量Qと時間、回転数Nと時間、回路抵抗比と時間、との関係を、それぞれ表したグラフである。図4(a)は、体外循環回路11の流量Qの変化を示したグラフであり、縦軸は体外循環回路11の流量(ml/分)を、横軸は経過時間(時間)を表している。図4(b)は、遠心ポンプ13の回転数の変化を示したグラフであり、縦軸は遠心ポンプ13の回転数(rpm)を、横軸は経過時間(時間)を表している。図4(c)は、体外循環回路11の回路抵抗比の変化を示したグラフであり、縦軸は体外循環回路11の回路抵抗比を、横軸は経過時間(時間)を表している。血液浄化が開始時は、流量Qは100ml/分、遠心ポンプの回転数Nは2000rpm、体外循環回路の抵抗比は1である。血液浄化開始から24時間を過ぎると、流量Qが100ml/分から低下している(図4(a)のA点)。そのとき、図4(c)を参照すると、抵抗比もわずかに1から上昇し始めていることから、血液フィルター14は若干の目詰まりしていることが検出される。ここで、遠心ポンプの回転数を2000rpmから3000rpmに上げると、流量も一時的に100ml/分を超えているが、しばらくすると、流量は100ml/分に安定する。このとき、体外循環回路の抵抗比は徐々に上昇している。さらに、時間が経過すると、図4(a)のB点を参照すると、流量の低下とともに、抵抗比も2付近にまで上昇している。遠心ポンプ13の回転数は変化していないことから、血液フィルター14の目詰まりしていることが検出される。
【0030】
このように、本発明は、体外循環回路の流量と遠心ポンプの回転数から血液フィルター14の目詰まり、すなわち体外循環回路の抵抗値を検出することができる。
【0031】
(第2実施形態)
以下、本発明の第2実施形態について説明する。なお、実施形態の基本的な構成は第1実施形態と同様であるため、以下では特徴的な構成についてのみ説明する。
【0032】
本発明の第1実施形態では、血液浄化装置10における流量を取得するために流量計を用いて計測し、それに基づいて、血液フィルターの目詰まり、すなわち体外循環回路の抵抗Rおよび抵抗比を検出していた。しかし、第2実施形態では、流量計を用いずに遠心ポンプの電気入力と遠心ポンプの流体出力とから体外循環回路11の流量を求める。すなわち、流量取得手段は、遠心ポンプの電力と、遠心ポンプの流体出力とから流量Qを求める。具体的には、遠心ポンプ13の電気入力と遠心ポンプ13の軸摩擦損との差が、遠心ポンプの流体出力と等しいことから下式5が成り立つ。
V・I-w = P・Q ・・・(式5)
ここで、遠心ポンプの電気入力はV・Iであり、Vは遠心ポンプの電圧、Iは遠心ポンプの電流、wは遠心ポンプの軸摩擦損、Pは遠心ポンプの圧力、Qは流量である。
【0033】
そして、式5から流量Qは、下式6で表すことができる。
Q =(V・I-w)/(a2・N2) ・・・(式6)
【0034】
このように、体外循環回路11における血流の流量Qは、遠心ポンプの電気入力V・Iとそのときの遠心ポンプの回転数Nと実験的に求められる定数aによって求めることができる。そして、体外循環回路11における血流の抵抗Rは、上記式6で求めた流量Qを第1実施形態の式4によって求めることができる。これにより、遠心ポンプを用いた血液循環回路における、血液フィルター14の目詰まり等、体外循環回路の血流異常を精度よく検出することが可能となる。
【0035】
(第3実施形態)
以下、本発明の第3実施形態について説明する。なお、実施形態の基本的な構成は第1実施形態と同様であるため、以下では特徴的な構成についてのみ説明する。
【0036】
本発明の第1実施形態では、血液浄化装置10における流量を計測するために流量計を用いて計測し、それに基づいて、血液フィルターの目詰まり、すなわち体外循環回路の抵抗Rおよび抵抗比を検出していた。また、第2実施形態では、血液浄化装置10の流量Qは、遠心ポンプの電力と遠心ポンプの流体出力から求めていた。しかし、第3実施形態では、体外循環回路11の流量Qは、体外循環回路11内に設けられた圧力計P1、P2の圧力差から求める。
【0037】
流量計測手段は、遠心ポンプの上流の圧力と遠心ポンプの下流から血液フィルター間の圧力との差から遠心ポンプのポンプ特性を介して算出される。具体的には、体外循環回路11の流量Qは、脱血チューブ11aにおける圧力と、遠心ポンプ13の流出側と血液フィルター14との間との圧力差ΔPから図3の遠心ポンプ13の特性を介して求める。遠心ポンプ13には、遠心ポンプ13の回転数Nと流量Qが定まると、ポンプ圧力上昇が一意的に定まる特性がある。つまり、遠心ポンプ13における圧力差ΔPは、遠心ポンプの回転数Nと流量Qの関数となる特性があり、図3の曲線において、回転数Nについて求めると、下式7が成り立つ。
ΔP/N2 = F(Q/N) ・・・(式7)
【0038】
このとき、式7の逆関数Gについて求めると、下式8で表すことができる。
Q/N = G(ΔP/N2) ・・・(式8)
【0039】
ここで、遠心ポンプの回転数Nが変化したとしても、体外循環回路11における流量Qは、回転数Nおよび圧力差ΔPから求められる。また、図5は、血液浄化装置のポンプ揚程と圧力損失との関係図であり、縦軸はΔP/N2を、横軸はQ/Nを表している。すなわち、図3の曲線である回路圧損と遠心ポンプのポンプ揚程を表し、これらの交点からQ/Nの値を求めることができ、適宜、図5の体外循環回路における流量Qを求めることができる。そして、体外循環回路11における血流の抵抗Rは、上記式8と図5で求めた流量Qを第1実施形態の式4によって求める。すなわち、遠心ポンプ13の回転数と、体外循環回路11における遠心ポンプ13の前後の圧力差とから流量Qを算出することにより、第1実施形態の式4から体外循環回路11の抵抗Rを算出することができる。
【0040】
以上のように、本実施形態では、血液浄化装置10において、体外循環回路11を循環する血液の流量Qと、遠心ポンプ13の回転数Nとを用いて体外循環回路11の抵抗Rを求める。これにより、通常の血液フィルターの目詰まりだけでなく、突発的な血液フィルターの目詰まりや体外循環回路の血流異常を精度よく検出し、対応することができる。
【符号の説明】
【0041】
10 血液浄化装置
11 体外循環回路
11a 脱血チューブ
11b 送血チューブ
12 流量計
13 遠心ポンプ
14 血液フィルター
15 濾液容器
16 抵抗表示器
図1
図2
図3
図4
図5