(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-28
(45)【発行日】2023-10-06
(54)【発明の名称】便器用衛生製品
(51)【国際特許分類】
A47K 13/24 20060101AFI20230929BHJP
E03D 9/00 20060101ALI20230929BHJP
【FI】
A47K13/24
E03D9/00 C
(21)【出願番号】P 2017045946
(22)【出願日】2017-03-10
【審査請求日】2020-02-06
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【氏名又は名称】田中 順也
(72)【発明者】
【氏名】吉田 慶太郎
(72)【発明者】
【氏名】澤村 茂樹
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-076298(JP,A)
【文献】実開昭63-165367(JP,U)
【文献】米国特許第04216553(US,A)
【文献】特開2009-127385(JP,A)
【文献】特開2006-206882(JP,A)
【文献】特開2011-047218(JP,A)
【文献】登録実用新案第3198786(JP,U)
【文献】登録実用新案第3134078(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 13/00-17/02
E03D 9/00- 9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉可能な便蓋を有する便器に使用される便器用衛生製品であって、
揮散性の洗浄成分を
揮散させて放出させる薬剤組成物(ただし、二酸化塩素を含むガスを発生する錠剤を除く)を含み、
前記便蓋のボウル部側に設置される、便器用衛生製品(ただし、圧力液体を噴射するためのノズルを有するものを除く)。
【請求項2】
前記薬剤組成物が、前記洗浄成分、及び/又は前記洗浄成分の発生源を含有する、請求項
1に記載の便器用衛生製品。
【請求項3】
前記薬剤組成物が、当該薬剤組成物を収容する収容部と、当該薬剤組成物から前記洗浄成分を容器外に放出するための放出部を有する容器に収容されている、請求項1
又は2に記載の便器用衛生製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開閉可能な便蓋を有する便器に使用される便器用衛生製品に関する。より具体的には、本発明は、便蓋のボウル部側に設置され、薬剤成分をボウル部側に放出させることにより、便器のボウル部を衛生的な状態にすることができる便器用衛生製品に関する。
【背景技術】
【0002】
家庭や商業施設等において、トイレを衛生的な状態に保つことは、居住者や使用者等の健康維持はもちろん、快適で気分よく生活する上で重要である。
【0003】
トイレを衛生的な状態にする製品(便器用衛生製品)の一つとして、便器用の洗浄剤が知られている。便器用の洗浄剤の中でも、擦り洗い等の手間を減らして簡便に洗浄を行えるものとして、フラッシュ水に希釈して使用されるタイプの便器用洗浄剤が知られている。このような便器用洗浄剤は、便器の手洗い部、貯水タンク、リム部、ボウル部等に設置され、フラッシュ水に便器用洗浄剤を希釈させて便器のボウル部に流水させることによりボウル部を洗浄できるようになっている。しかしながら、フラッシュ水に希釈して使用されるタイプの便器用洗浄剤では、便器のボウル部においてフラッシュ水が通過する部分でしか洗浄作用が発揮できず、フラッシュ水が通過しない部分では洗浄作用を期待できないという点で改善が求められている。
【0004】
また、便器用衛生製品の一つとして、便器用の芳香・消臭剤も知られている。このような芳香・消臭剤は、通常はトイレ内に設置して使用され、トイレの空間内の空気を快適にする効果を奏するようになっている。しかしながら、このような便器用の芳香・消臭剤は、トイレの空間に芳香や消臭効果を付与できるようにトイレ内に設置して使用されるため、トイレの主要な悪臭発生源である便器のボウル部に対して直接的に適用芳香・消臭作用を示すことができず、効果が限定的であった。また、従来、フラッシュ水に希釈して使用される便器用洗浄剤に香料や消臭成分を配合し、フラッシュ水で希釈して、便器のボウル部に対して直接的に芳香・消臭作用を発揮できるものも知られている。しかしながら、前述の通り、フラッシュ水で希釈して使用する態様では、ボウル部においてフラッシュ水が通過しない部分では、所期の効果が付与されず、限定的な効果しか期待できない。
【0005】
このように、従来の便器用衛生製品では、便器のボウル部に対する衛生化の点では、効果が限定的であり、便器のボウル部を衛生的な状態にする効果が高い製品の開発が望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、便器のボウル部を衛生的な状態にする効果に優れた便器用衛生製品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、従来の便器用衛生製品とは使用態様が全く異なるものを採用することによって、前記課題を解決できることを見出した。具体的には、本発明者等は、便器の便蓋のボウル部側に、便器のボウル部の衛生化に有効な薬剤成分を放出させる薬剤組成物を設置し、当該便蓋を閉めた状態にすると、当該薬剤組成物から放出された薬剤成分が便器のボウル部に行き渡り、ボウル部を効果的に衛生化できることを見出した。更に、本発明者等は、薬剤成分として揮散性薬剤を使用することによって、薬剤組成物から薬剤成分をガス状で放出することができ、便器のボウル部の表面全面、リム部(裏面部を含む)、及びリム部の内部(通水部)にまで薬剤成分が行き渡り、より一層効果的に便器を衛生的な状態にできることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0008】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. 開閉可能な便蓋を有する便器に使用される便器用衛生製品であって、
薬剤成分を放出させる薬剤組成物を含み、
前記便蓋のボウル部側に設置される、便器用衛生製品。
項2. 前記薬剤成分が、洗浄成分、抗菌成分、香料成分、及び消臭成分よりなる群から選択される少なくとも1種である、項1に記載の便器用衛生製品。
項3. 前記薬剤成分が、揮散性薬剤成分である、項1又は2に記載の便器用衛生製品。
項4. 前記薬剤組成物が、薬剤成分、及び/又は薬剤成分の発生源を含有する、項1~3のいずれかに記載の便器用衛生製品。
項5. 前記薬剤組成物が、当該薬剤組成物を収容する収容部と、当該薬剤組成物から薬剤成分を容器外に放出するための放出部を有する容器に収容されている、項1~4のいずれかに記載の便器用衛生製品。
【発明の効果】
【0009】
本発明の便器用衛生製品によれば、便器のボウル部を衛生化する薬剤成分を便器のボウル部に行き渡らせることができるので、便器を衛生的な状態にすることができる。特に、薬剤成分として揮散性薬剤を使用した場合には、便器のボウル部の表面全面、リム部(裏面部を含む)、及びリム部の内部(通水部)にまで薬剤成分を行き渡らせることができるので、より一層効果的に便器を衛生的な状態にすることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の便器用衛生製品を便器の便蓋のボウル部側に設置した態様(便蓋が開いている状態)を示す模式図である。
【
図2】本発明の便器用衛生製品を便器の便蓋のボウル部側に設置した態様(便蓋が閉まっている状態)を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の便器用衛生製品は、開閉可能な便蓋を有する便器に使用される便器用衛生製品であって、薬剤成分を放出させる薬剤組成物を含み、前記便蓋のボウル部側に設置されることを特徴とする。以下、本発明の便器用衛生製品について詳述する。
【0012】
・薬剤組成物
本発明の便器用衛生製品では、便器のボウル部を衛生化するために、薬剤成分を放出させる薬剤組成物が含まれる。
【0013】
[薬剤成分]
本発明において、「薬剤成分」とは、便器のボウル部を衛生化できる成分であり、具体的には、洗浄成分、抗菌成分、香料成分、消臭成分等が挙げられる。ここで、抗菌成分とは、除菌効果、静菌効果、殺菌効果、抗カビ効果等を含んだ、細菌又は真菌の増殖を抑制又は減少させる成分全てを指す。
【0014】
薬剤成分として使用される洗浄成分の好適な一例として二酸化塩素が挙げられる。二酸化塩素は、抗菌作用を示すことが知られているが、後述する試験例に示すように、糞便や黒ずみ等の汚れを除去する効果(汚れ除去効果)、及び当該汚れの付着を防止する効果(防汚効果)があることが新たに見出されている。
【0015】
また、薬剤成分として使用される洗浄成分の他の例として、界面活性剤が挙げられる。当該界面活性剤は、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、及び両性界面活性剤のいずれであってもよい。界面活性剤として、具体的には、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシエチレン硬化ひまし油エーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリルエーテル脂肪酸エステル、アルキルアルカノールアミド、アルキルポリグルコシド、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール等の非イオン性界面活性剤;アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、スルホコハク酸塩、N-アシルアミノ酸塩、カルボン酸塩、αオレフィンスルホン酸塩、リン酸エステル等のアニオン性界面活性剤;アルキルアンモニウム塩等のカチオン性界面活性剤;アルキルアミドベタイン、アルキルジメチルアミンオキシド等の両性界面活性剤等が挙げられる。これらの界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0016】
薬剤成分として使用される抗菌成分としては、便器のボウル部に対して抗菌作用を発揮できることを限度として特に制限されないが、例えば、二酸化塩素、ジクロロイソシアヌル酸塩、トリクロロイソシアヌル酸塩、オクチルトリメチルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムグルコン酸、クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、アリルイソチオシアネート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ヒノキチオール、安息香酸類、サリチル酸類、ソルビン酸類、パラベン類、塩化クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、イソプロピルメチルフェノール、トリクロサン、塩化リゾチーム、ヨウ化カリウム等が挙げられる。これらの抗菌成分は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0017】
薬剤成分として使用される香料成分としては、芳香作用を発揮できることを限度として特に制限されず、天然香料、天然香料から分離された単品香料、合成された単品香料、及びこれらの調合香料のいずれであってもよく、従来公知の香料を使用することができる。具体的には、単品香料として、d-リモネン、カリオフィレン、α-ピネン、β-ピネン、ミルセン、ターピノレン、オシメン、γ-ターピネン、α-フェランドレン、p-サイメン、β-カリオフィレン、β-ファルネセン、1,3,5-ウンデカトリエン、ジフェニルメタン等の炭化水素系香料;シス-3-ヘキセノール、リナロール、ゲラニオール、フェニルエチルアルコール、トランス-2-ヘキセノール、シス-3-ヘキセノール、3-オクタノール、1-オクテン-3-オール、2、6-ジメチル-2-ヘプタノール、9-デセノール、4-メチル-3-デセン-5-オール、10-ウンデセノール、トランス-2-シス-6-ノナジエタノール、リナロール、ゲラニオール、ネロール、シトロネロール、ロジノール、ミルセノール、ラバンジュロール、テオラヒドロゲラニオール、テトラヒドロリナロール、ヒドロキシシトロネロール、ジヒドロミルセノール、アロオキシメノール、ターピネオール、α-ターピネオール、ターピネン-4-オール、l-メントール、ボルネオール、イソプレゴール、ノポール、ファルネソール、ネロリドール、セドロール、パチュリアルコール、ベチベロール、2,4-ジメチル-3-シクロヘキセン-1-メタノール、4-イソプロピルシクロヘキサノール、4-イソプロピルシクロヘキサンメタノール、1-(4-イソプロピルシクロヘキシル)-エタノール、2,2-ジメチル-3-(3-メチルフェニル)-プロパノール、p-t-ブチルシクロヘキサノール、o-t-ブチルシクロヘキサノール、アンブリノール、1-(2-t-ブチルシクロヘキシルオキシ)-2-ブタノール、ペンタメチルシクロヘキシルプロパノール、1-(2,2,6-トリメチルシクロヘキシル)-3-ヘキサノール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール、フェノキシエチルアルコール、スチラリルアルコール、アニスアルコール、シンナミックアルコール、フェニルプロピルアルコール、ジメチルベンジルカルビノール、ジメチルフェニルエチルカルビノール、フェニルエチルメチルエチルカルビノール、3-メチル-5-フェニルペンタノール、チモール、カルバクロール、オルシノールモノメチルエーテル、オイゲノール、イソオイゲノール、プロペニルグアエトール、サンタロール、イソボルニルシクロヘキサノール、サンダロア、バグダノール、サンダルマイソルコア、ブラマノール、エバノール、ポリサントール、3,7-ジメチル-7-メトキシオクタン-2-オール等のアルコール系香料;ジフェニルオキシド、p-クレジルエチルエーテル、dl-ローズオキシド、(ネロールオキサイド、ミロキサイド、1,8-シネオール、ローズオキサイド、リメトール、メントフラン、リナロールオキサイド、ブチルジメチルジヒドロキシピラン、アセトキシアミルテトラヒドロピラン、セドリルメチルエーテル、メトキシシクロドデカン、1-メチル-1-メトキシシクロドデカン、エトキシメチルシクロドデシルエーテル、トリクロデセニルメチルエーテル、ルボフィックス、セドロキサイド、アンブロキサン、グリサルバ、ボワジリス、アニソール、ジメチルハイドロキノン、パラクレジルメチルエーテル、アセトアニソール、アネトール、ジヒドロアネトール、エストラゴール、ジフェニルオキサイド、メチルオイゲノール、フェニルエチルイソアミルエーテル、β-ナフチルメチルエーテル、β-ナフチルイソブチルエーテル)等のエーテル系香料;ヘキサナール、シトラール、ヘキシルシンナミックアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、オクチルアルデヒド、ノニルアルデヒド、デシルアルデヒド、ウンデシルアルデヒド、ドデシルアルデヒド、トリデシルアルデヒド、トリメチルヘキシルアルデヒド、メチルオクチルアセチルアルデヒド、メチルノニルアセトアルデヒド、トランス-2-ヘキセナール、シス-4-ヘプテナール、2,6-ノナジエナール、シス-4-デセナール、トランス-4-デセナール、ウンデシレンアルデヒド、トランス-2-ドデセナール、トリメチルウンデセナール、2,6,10-トリメチル-5,9-ウンデカジエナール、シトロネラール、ヒドロキシシトロネラール、ペリラルデヒド、メトキシジヒドロシトロネラール、シトロネリルオキシアセトアルデヒド、2,4-ジメチル-3-氏クロヘキセニルカルボキシアルデヒド、イソシクロシトラール、センテナール、マイラックアルデヒド、リラール、ベルンアルデヒド、デュピカール、マセアール、ボロナール、セトナール、ベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、フェニルプロピルアルデヒド、シンナミックアルデヒド、α-アミルシンナミックアルデヒド、α-ヘキシルシンナミックアルデヒド、ヒドロトロピックアルデヒド、アニスアルデヒド、p-メチルフェニルアセトアルデヒド、クミンアルデヒド、シクラメンアルデヒド、3-(p-t-ブチルフェニル)-プロピルアルデヒド、p-エチル-2,2-ジメチルヒドロシンナムアルデヒド、2-メチル-3-(p-メトキシフェニル)-プロピルアルデヒド、p-t-ブチル-α-メチルヒドロシンナミックアルデヒド、サリチルアルデヒド、ヘリオトロピン、ヘリオナール、バニリン、エチルバニリン、メチルバニリン等のアルデヒド系香料;オクチルアルデヒドグリコールアセタール、アセトアルデヒドエチルシス-3-ヘキセニルアセタール、シトラールジメチルアセタール、シトラールジエチルアセタール、アセトアルデヒドエチルリナリルアセタール、アセトアルデヒドエチルリナリルアセタール、ヒドロキシシトロネラールジメチルアセタール、フェニルアセトアルデヒドジメチルアセタール、ヒドラトロピックアルデヒドジメチルアセタール、フェニルアセトアルデヒドヒドグリセリルアセタール、アセトアルデヒドエチルフェニルアセタール、アセトアルデヒドフェニルエチルプロピルアセタール、フェニルプロピルアルデヒドプロピレングリコールアセタール、4,4,6-トリメチル-2-ベンジル-1,3-ジオキサン、2,4,6-トリメチル-2-フェニル-1,3-ジオキサン、2-ブチル-4,4,6-トリメチル-1,3-ジオキサン、テトラヒドロインデノ-m-ジオキシン、ジメチルテトラヒドロインデノ-m-ジオキシン、カラナール等のアセタール系香料;エチルブチレート、スチラリルアセテート、o-t-ブチルシクロへキシルアセテート、蟻酸エチル、蟻酸シス-3-ヘキセニル、蟻酸リナリル、蟻酸シトロネリル、蟻酸ゲラニル、蟻酸ベンジル、蟻酸フェニルエチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソアミル、シクロペンチリデン酢酸メチル、酢酸ヘキシル、酢酸シス-3-ヘキセニル、酢酸トランス-3-ヘキセニル、酢酸イソノニル、酢酸シトロネリル、酢酸ラバンジュリル、酢酸ゲラニル、酢酸リナリル、酢酸ミルセニル、酢酸ターピニル、酢酸メンチル、酢酸メンタニル、酢酸ノピル、酢酸n-ボルニル、酢酸イソボルニル、酢酸p-t-ブチルシクロヘキシル、酢酸o-t-ブチルシクロヘキシル、酢酸トリシクロデセニル、酢酸 2,4-ジメチル-3-シクロヘキセン-1-メタニル、酢酸ベンジル、酢酸フェニルエチル、酢酸スチラリル、酢酸シンナミル、酢酸アニシル、酢酸パラクレジル、酢酸ヘリオトロピル、アセチルオイゲノール、アセチルイソオイゲノール、酢酸グアイル、酢酸セドリル、酢酸ベチベリル、酢酸デカヒドロβナフチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸イソアミル、プロピオン酸シロネリル、プロピオン酸シロネリル、プロピオン酸ゲラニル、プロピオン酸リナリル、プロピオン酸ターピニル、プロピオン酸ベンジル、プロピオン酸シンアミル、シクロヘキシルプロピオン酸アリル、プロピオン酸トリシクロデセニル、酪酸エチル、2-メチル酪酸エチル、酪酸ブチル、酪酸イソアミル、酪酸ヘキシル、酪酸リナリル、酪酸ゲラニル、酪酸シトロネリル、酪酸ベンジル、イソ酪酸シス-3-ヘキセニル、
イソ酪酸シトロネリル、イソ酪酸ゲラニル、イソ酪酸リナリル、イソ酪酸ベンジル、イソ酪酸フェニルエチル、イソ酪酸フェノキシエチル、イソ酪酸トリシクロデセニル、吉草酸エチル、吉草酸プロピル、イソ吉草酸シトロネリル、イソ吉草酸ゲラニル、イソ吉草酸シンアミル、イソ吉草酸ベンジル、イソ吉草酸フェニルエチル、カプロン酸エチル、カプロン酸アリル、エナント酸エチル、エナント酸アリル、カプリン酸エチル、チグリン酸シトロネリル、オクチンカルンボン酸メチル、2-ペンチロキシグリコール酸アリル、シス-3-ヘキセニルメチルカーボネート、ケト酸エチル、ピルビン酸イソアミル、アセト酸エチル、レブリン酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸イソブチル、安息香酸イソアミル、安息香酸ゲラニル、安息香酸リナリル、安息香酸ベンジル、安息香酸フェニルエチル、安息香酸フェニルエチル、ジヒドロキシメチル安息香酸メチル、フェニル酢酸メチル、フェニル酢酸メチル、フェニル酢酸エチル、フェニル酢酸イソブチル、フェニル酢酸イソアミル、フェニル酢酸ゲラニル、フェニル酢酸ベンジル、フェニル酢酸フェニルエチル、フェニル酢酸p-クレジル、桂皮酸メチル、桂皮酸エチル、桂皮酸ベンジル、桂皮酸シンアミル、桂皮酸フェニルエチル、サリチル酸メチル、サリチル酸エチル、サリチル酸イソブチル、サリチル酸イソアミル、サリチル酸ヘキシル、サリチル酸シス-3-ヘキセニル、サリチル酸ベンジル、サリチル酸フェニルエチル、アニス酸メチル、アニス酸エチル、アンスラニル酸メチル、アンスラニル酸エチル、メチルアンスラニル酸メチル、ジャスモン酸メチル、ジヒドロジャスモン酸メチル、メチルフェミルグリシド酸エチル、フェニルグリシド酸エチル、グリコメル、フラクトン、フレイストン、フルテート、ジベスコン、エチル2-メチル-6-ペンチル-4-オキサ-2-シクロヘキセンカーボネート等のエステル系香料;2-オクタノン、δ-ダマスコン、アセトイン、ジアセチル、ミチルアミルケトン、エチルアミルケトン、メチルヘキシルケトン、メチルノニルケトン、メチルヘプテノン、コアボン、カンファー、カルボン、メントン、d-プレゴン、ピペリトン、フェンチョン、ゲラニルアセトン、セドリルメチルケトン、ヌートカトン、イオノン、α-イオノン、β-イオノン、メチルイオノン、α-n-メチルイオノン、β-n-メチルイオノン、α-イソイオノン、β-イソイオノン、アリルイオノン、イロン、α-イロン、β-イロン、γ-イロン、ダマスコン、α-ダマスコン、β-ダマスコン、δ-ダマスコン、ダマセノン、ダイナスコン、α-ダイナスコン、β-ダイナスコン、マルトール、エチルマルトール、2,5-ジメチル-4-ヒドロキシフランノン、シュガーラクトン、p-t-ブチルシクロヘキサノン、アミルシクロペンタノン、ヘプチルシクロペンタノン、ジヒドロジャスモン、シスージャスモン、フロレックス、プリカトン、4-シクロヘキシル-4-メチル-2-ペンタノン、p-メンテン-6-イルプロパノン、2,2,5-トリメチル-5-ペンチルシクロペンタノン、エトキシビニルテトラシクロヘキサノン、ジヒドロペンタメチルインダノン、イソ・イー・スーパー、トリモフィックス、アセトフェノン、p-メチルアセトフェノン、ベンジルアセトン、カローン、ラズベリーケトン、アニシルアセトン、4-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)-2-ブタノン、メチルナフチルケトン、4-フェニル-4-メチル-2-ペンタノン、ベンゾフェノン等のケトン系香料;ゲラニル酸、シトロネリル酸、安息香酸、フェニル酢酸、フェニルプロピオン酸、桂皮酸、2-メチル-2-ペンテノ酸等のカルボン酸系香料;γ-オクタラクトン、γーノナラクトン、γ-デカラクトン、γ-ウンデカラクトン、δ-デカラクトン、クマリン、ジヒドロクマリン、ジャスモラクトン、ジャスミンラクトン等のラクトン系香料;ムスコン、シベトン、シクロペンタデカノン、シクロヘキサデセノン、シクロペンタデカノリド、12-ケトシクロペンタデカノリド、シクロヘキサデカノリド、シクロヘキサデセノリド、12-オキサ-16-ヘキサデカノリド、11-ヘキサ-16-ヘキサデカノリド、10-オキサ-16-ヘキサデカノリド、エチレンブラシレート、エチレンドデカンジオエート、ムスクケトン、ムスクキシロール、ムスクアンブレット、ムスクチベテン、ムスクモスケン、6-アセチルヘキサメチルインダン、4-アセチルジメチル-t-ブチルインダン、5-アセチルテトラメチルイソプロプルインダン、6-アセチルヘキサテトラリン、ヘキサメチルヘキサヒドロシクロペンタンベンゾピラン等のムスク系香料;アセチルピロール、インドール、スカトール、インドレン、2-アセチルピリジン、マリティマ、6-メチルキノリン、6-イソプロピルキノリン、イソブチルキノリン、2-アセチルピラジン、2,3-ジメチルピラジン、2-イソプロピル-3-メトキシピラジン、2-イソブチル-3-メトキシピラジン、2-セカンダリーブチル-3-メトキシピラジン、トリメチルピラジン、5-メチル-3-ヘプタンオキシム等の窒素含有香料;ゲラニルニトリル、シトロネリルニトリル、5-フェニル-2,6-ノナジエンニトリル、シナモンニトリル、クミンニトリル、ドデカンニトリル、トリデセン-2-ニトリルと等のニトリル系香料;ジメチルスルフィド、2-メチル-4-プロピル-1,3-オキサチアン、イソオシアン酸アリル、p-メンタン-8-チオール-3-オン、p-メンテン-8-チオール、p-メンチルチオプロピオン酸メチル等の硫黄含有香料等が例示される。また、天然香料としては、チュベローズ油、ムスクチンキ、カストリウムチンキ、シベットチンキ、アンバーグリスチンキ、ペパーミント油、ペリラ油、プチグレン油、パイン油、ローズ油、ローズマリー油、しょう脳油、芳油、クラリーセージ油、サンダルウッド油、スペアミント油、スパイクラベンダー油、スターアニス油、ラバンジン油、ラベンダー油、レモン油、レモングラス油、ライム油、ネロリ油、オークモス油、オコチア油、パチュリ油、タイム油、トンカ豆チンキ、テレピン油、ワニラ豆チンキ、バジル油、ナツメグ油、シトロネラ油、クローブ油、ボアドローズ油、カナンガ油、カルダモン油、カシア油、シダーウッド油、オレンジ油、マンダリン油、タンジェリン油、アニス油、ベイ油、コリアンダー油、エレミ油、ユーカリ油、フェンネル油、ガルバナム油、ゼラニウム油、ヒバ油、桧油、ジャスミン油、ベチバー油、ベルガモット油、イランイラン油、グレープフルーツ油、ゆず油等が挙げられる。これらの香料成分は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて調香して使用することもできる。
【0018】
また、薬剤成分として使用される消臭成分としては、便器のボウル部に対して消臭作用を発揮できることを限度として特に制限されないが、例えば、ジクロロイソシアヌル酸塩、トリクロロイソシアヌル酸塩;イネ、松、ヒノキ、笹、柿、茶等の植物の抽出物;脱塩型ベタイン化合物;変性有機酸化合物;アルカノールアミン;二酸化塩素;オゾン;アルデヒド化合物;グリコールエーテル化合物;フィトンチッド系香料;低級脂肪族アルデヒド系香料等が挙げられる。これらの消臭成分は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
【0019】
これらの薬剤成分は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0020】
これらの薬剤成分の中でも、好ましくは、揮散(気化)性薬剤成分が挙げられる。揮散性薬剤成分とは、常温常圧下(25℃、1atm程度)で揮散(気化)する薬剤成分であり、具体的には、25℃における蒸気圧が1×10-7Pa以上である薬剤成分が該当する。揮散性薬剤成分は、便器の便蓋を閉めた状態になっている際に、便器の便蓋とボウル部で形成された空間内にガス状で放出され、ボウル部の表面全面に薬剤成分を行き渡らせることができ、薬剤成分による衛生化効果をより一層有効に付与することが可能になる。
【0021】
揮散性薬剤成分として、具体的には、二酸化塩素等の揮散性の洗浄成分;香料成分;二酸化塩素、アリルイソチオシアネート等の抗菌成分;二酸化塩素、オゾン等の消臭成分が挙げられる。これらの揮散性薬剤成分は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。これら揮散性薬剤成分の中でも、二酸化塩素は、洗浄、抗菌、及び消臭作用を示し、便器のボウル部の衛生化において卓越した効果を奏するので好適に使用される。
【0022】
本発明で使用される薬剤組成物は、薬剤成分を放出できる限り、その組成については、特に制限されず、薬剤成分自体を含有している態様(以下、「態様1の薬剤組成物」と表記する)、また、薬剤成分の発生源を含み、薬剤成分を発生できるように設計されている態様(以下、「態様2の薬剤組成物」と表記する)であってもよい。
【0023】
前記態様1の薬剤組成物における薬剤成分の含有量については、使用する薬剤成分の種類、薬剤組成物の剤型等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、0.0001~30重量%、好ましくは0.001~20重量%、より好ましくは0.01~20重量%、更に好ましくは0.1~10重量%が挙げられる。
【0024】
前記態様2の薬剤組成物では、薬剤成分の発生源を含み、薬剤成分を発生できるように構成されていればよく、態様2の薬剤組成物に使用される薬剤成分の種類については、組成物中で生成されることができるものである限り、特に制限されない。
【0025】
前記態様2の薬剤組成物で使用される薬剤成分の好適な例としては、二酸化塩素が挙げられる。以下、薬剤成分として二酸化塩素を使用する場合の態様2の薬剤組成物を「二酸化塩素発生組成物」と表記し、その組成等について説明する。
【0026】
(二酸化塩素発生組成物の組成等)
二酸化塩素は、水の存在下で亜塩素酸塩と酸との反応により発生するので、二酸化塩素発生組成物は、二酸化塩素の発生源としては、亜塩素酸塩及び酸を含んでいればよい。
【0027】
二酸化塩素の発生源の一成分として使用される亜塩素酸塩の種類については、特に制限されないが、例えば、亜塩素酸リチウム、亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸塩カリウム等の塩素酸のアルカリ金属塩;亜塩素酸カルシウム、亜塩素酸マグネシウム、亜塩素酸バリウム等の亜塩素酸のアルカリ土類金属塩等が挙げられる。これらの亜塩素酸塩は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0028】
二酸化塩素発生組成物における亜塩素酸塩の含有量については、態様2の薬剤組成物の形状、二酸化塩素を放出させる態様、設置部位等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、0.1~30重量%、好ましくは1~10重量%が挙げられる。
【0029】
二酸化塩素の発生源の一成分として使用される酸の種類については、水に溶解すると酸性を示し、水の存在下で亜塩素酸塩から酸化塩素を発生させ得るものであることを限度として特に制限されないが、例えば、リン酸、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸カリウム、酸性へキサメタリン酸ナトリウム、酸性ヘキサメタリン酸カリウム、酸性ピロリン酸ナトリウム、酸性ピロリン酸カリウム、スルファミン酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、フマル酸、マレイン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、グリコール酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、ヒドロキシアクリル酸、α-オキシ酪酸、グリセリン酸、タルトロン酸、サリチル酸、没食子酸、トロパ酸、アスコルビン酸、グルコン酸等の固体状の酸;塩酸、硫酸等の液体状の酸が挙げられる。これらの酸は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0030】
二酸化塩素発生組成物における酸の含有量については、二酸化塩素発生組成物の形状、二酸化塩素を放出させる態様、設置部位等に応じて適宜設定すればよいが、亜塩素酸塩の全量と反応するために必要とされる最少量以上であることが望ましく、具体的には、0.01~15重量%、好ましくは1~10重量%が挙げられる。
【0031】
二酸化塩素発生組成物において、二酸化塩素の発生源として、前記亜塩素酸塩と酸とを含んでさえいれば、水を配合していなくても、空気中の水蒸気を吸収したり、フラッシュ水に希釈させて使用する態様の場合にはフラッシュ水を利用したりすることにより、亜塩素酸塩と酸とを反応させて二酸化塩素を発生させることができるため、必ずしも水は含まれていなくてもよい。但し、効率的に二酸化塩素を発生させるという観点からは、二酸化塩素発生組成物には水が含まれていることが望ましい。
【0032】
二酸化塩素発生組成物において水を含有させる場合、水の含有量については、態様2の薬剤組成物の形状等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、30~99.69重量%、好ましくは70~97重量%が挙げられる。
【0033】
二酸化塩素発生組成物において水を含有させる場合、二酸化塩素発生組成物を水溶液の状態にしてもよく、また、二酸化塩素発生組成物をゲル状にしてゲル中に水分を保持させたり、水分を保持させた水分保持基剤を含有させたりしてもよい。
【0034】
ゲル状にしてゲル中に水分を保持させる場合、ゲル化に使用されるゲル化剤の種類については、特に制限されないが、アルギン酸、寒天、カラギーナン、フコイダン等の褐藻、緑藻或いは紅藻由来成分;ビャッキュウ抽出物、ペクチン、ローカストビーンガム、アロエ多糖体などの多糖類;キサンタンガム、トラガントガム、グアーガムなどのガム類;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース誘導体;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸・メタクリル酸共重合体などの合成高分子類;ポリグルタミン酸及びその誘導体;グルコシルトレハロースと加水分解水添澱粉を主体とする糖化合物;デンプン系、セルロース系、合成ポリマー系等の各種吸水性樹脂等が挙げられる。
【0035】
二酸化塩素発生組成物にゲル化剤を含有させる場合、その含有量については、特に制限されないが、例えば、0.2~25重量%、好ましくは1~10重量%が挙げられる。
【0036】
水分を保持させた水分保持基剤を含有させる場合、使用される水分保持基剤の種類としては、水を保持できる特性を有していることを限度として特に制限されないが、例えば、珪藻土、ゼオライト、カオリン、パーライト、ベントナイト、炭等の多孔質物質が挙げられる。これらの水分保持基剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0037】
二酸化塩素発生組成物に水分保持基剤を含有させる場合、その含有量については、特に制限されないが、例えば、0.2~25重量%、好ましくは1~10重量%が挙げられる。
【0038】
また、二酸化塩素発生組成物に水分を保持させた水分保持基剤を含有させる場合には、更に、必要に応じて潮解性の固形剤を含んでいてもよい。水分保持基剤に水分を保持させた場合、二酸化塩素発生組成物における水含有量が比較的少なくなり、二酸化塩素の発生速度が遅くなることがあるが、更に潮解性の固形剤を含有させることによって二酸化塩素の発生を促進させることが可能になる。潮解性の固形剤の種類については、特に制限されないが、例えば、塩化アルミニウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、リン酸一水素カリウム、グリセリン等が挙げられる。これらの潮解性の固形剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0039】
二酸化塩素発生組成物に潮解性の固形剤を含有させる場合、その含有量については、特に制限されないが、例えば、0.1~30重量%、好ましくは1~20重量%が挙げられる。
【0040】
更に、二酸化塩素発生組成物に水が含まれている場合、当該二酸化塩素発生組成物中に水には二酸化塩素が溶存させた状態で含まれていてもよい。このように溶存した二酸化塩素を含有させることにより、より一層効率的に二酸化塩素を放出させることが可能になる。
【0041】
二酸化塩素発生組成物に溶存状態の二酸化塩素を含有させる場合、二酸化塩素の含有量については、水の含有量等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、10ppm~10000ppm、好ましくは50~6000ppmが挙げられる。
【0042】
[その他の成分]
本発明で使用される薬剤組成物には、前述する成分の他に、水、有機溶剤、酵素、殺菌剤、キレート剤、着色剤、顔料、乳化剤、可溶化剤、増量剤、溶解性調整剤、漂白剤、撥水剤、親水剤、充填剤、pH調整剤、緩衝剤、消泡剤、賦形剤等が含まれていてもよい。これらの成分の含有量については、薬剤組成物の形状、使用する成分の種類等に応じて適宜設定すればよい。
【0043】
[形状]
本発明で使用される薬剤組成物の形状については、その組成や薬剤成分の放出方法等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、液状、ゲル状、ペースト状、錠剤状、粉末状、顆粒状等が挙げられる。
【0044】
[薬剤組成物の設置方法及び薬剤成分の放出方法]
本発明の便器用衛生製品において、薬剤組成物は便蓋のボウル部側に設置される。このように便蓋のボウル部側に薬剤組成物を設置することにより、トイレを使用していない時(即ち、便器の便蓋を閉めた状態になっている際)に、便器の便蓋とボウル部で形成された空間内に薬剤成分が放出され、便器のボウル部の表面に薬剤成分を行き渡らせることが可能になり、ボウル部の衛生化効果を図ることができる。
【0045】
本発明の便器用衛生製品は、洋式便器、和式便器、和式便器を簡易に洋式に変更する改造用便器・便座が取り付けられた便器、ポータブル便器等のいずれにも使用できるが、好ましくは洋式便器が挙げられる。なお、和式便器の場合には、前記便蓋はトイレカバーに該当し、前記ボウル部とは便器容器に該当する。
【0046】
図1及び2に、薬剤組成物1を洋式便器の便蓋2のボウル部3側に設置した態様の模式図を示す。
図1では、洋式便器の便蓋2は空いた状態になっており、
図2では、洋式便器の便蓋2は閉めた状態になっている。なお、
図1及び2では、便宜上、貯水タンクからボウル部へのフラッシュ水の流路等については省略している。
【0047】
本発明において、「薬剤組成物から薬剤成分を放出させる」とは、薬剤組成物から薬剤成分のみを放出させる態様、薬剤成分と共に他の成分(基剤、添加剤)を放出させる態様の双方が含まれる。
【0048】
本発明の便器用衛生製品において、薬剤組成物から薬剤成分を放出させる方法については、便器の便蓋を閉めた状態になっている際に、便蓋を閉めた状態で形成される便器の内部空間(便蓋とボウル部等によって形成される空間)内に薬剤成分を放出できることを限度として特に制限されない。例えば、薬剤成分として揮散性薬剤成分を使用する場合には、当該揮散性薬剤成分を揮散(気化)させることにより、薬剤成分を放出させてもよい。また、薬剤組成物を噴霧又は滴下させることによって、薬剤成分を放出させてもよい。揮散性薬剤成分を揮散させて放出させる場合、使用される薬剤組成物は、液状、ゲル状、ペースト状、錠剤状、粉末状、顆粒状等のいずれの形態であってもよい。また、薬剤成分を噴霧又は滴下させて放出させる場合、使用される薬剤組成物は、液状であることが望ましい。
【0049】
これらの放出方法の中でも、ボウル部の表面全面に薬剤成分を行き渡らせて薬剤成分による衛生化効果をより一層有効に付与するという観点から、好ましくは、薬剤成分として揮散性薬剤成分を使用し、当該揮散性薬剤成分を揮散させる方法が挙げられる。
【0050】
薬剤組成物から揮散性薬剤成分を揮散させて放出させる場合、熱、超音波等の物理的手段を用いて揮散性薬剤成分を強制的に放出させてもよいが、使用簡便性や低コスト化等の観点から、自然揮散によって揮散性薬剤成分を放出させることが好ましい。
【0051】
また、薬剤組成物から薬剤成分を噴霧させて放出させる場合であれば、例えば、噴霧ノズルを介して薬剤成分を放出させればよい。また、薬剤組成物から揮散性薬剤を滴下させて放出させる場合であれば、例えば、重力滴下、ポンプ等の機械的な手段を用いた滴下等によって薬剤成分を放出させればよい。
【0052】
本発明の便器用衛生製品によって、放出させる薬剤成分の量については、使用する薬剤成分の種類等に応じて適宜調節すればよい。例えば、薬剤成分として二酸化塩素を揮散させて放出させて、洗浄、抗菌、消臭作用を付与する場合であれば、便器の便蓋を閉じた状態で12時間放置した際に、便蓋を閉めた状態で形成される便器の内部空間(便蓋とボウル部等によって形成される空間)内の二酸化塩素ガス濃度が0.01ppm以上、好ましくは0.01~100ppm、更に好ましくは0.02~10ppm、特に好ましくは0.1~1ppmとなるように設定することが望ましい。便蓋とボウル部によって形成される空間内の二酸化塩素ガス濃度を前記範囲になるようにコントロールすることによって、より一層優れた洗浄作用(汚れ除去効果と防汚効果)を付与することが可能になる。発生させる二酸化塩素ガス量は、薬剤組成物に含有させる二酸化塩素の含有量及び/又は二酸化塩素の発生源の組成や含有量を適宜調節することによってコントロールすることができる。
【0053】
[容器]
本発明の便器用衛生製品において、薬剤組成物は、容器に収容して便蓋のボウル部側に設置して使用されるが、薬剤組成物が粘着性を有するゲル状である場合であれば、当該薬剤組成物剤は、容器に収容せずに、そのまま設置部位に吸着させてもよい。
【0054】
薬剤組成物を収容する容器としては、具体的には、薬剤組成物を収容する収容部と、当該薬剤組成物から薬剤成分を容器外に放出するための放出部を有する容器を使用すればよい。当該容器は、便器の便蓋等に固定するために、粘着剤や吸盤等の固定部が設けられていればよい。以下、薬剤成分の放出方法毎に使用される容器について説明する。
【0055】
(揮散性薬剤成分を揮散させて放出させる容器)
揮散性薬剤成分を含む薬剤組成物を使用する場合であれば、当該薬剤組成物を収容する容器の一態様として、薬剤組成物を収容する収容部と、揮散性薬剤成分が透過可能な透過性フィルム(揮散性薬剤成分透過性フィルム)からなる放出部を有する容器が挙げられる。
【0056】
放出部として使用される揮散性薬剤成分透過性フィルムとしては、いわゆる香料透過性フィルムを使用でき、国際公開第98/23304号パンフレット、特開平6-219479号公報、米国特許第5,518,790号明細書等に開示されており、公知である。揮散性薬剤成分透過性フィルムの構成素材については、特に制限されるものではないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンエチルアクリレート、紙及びこれらの混合物等が挙げられる。これらの中でも、好ましくはリニアローデンシティポリエチレン(LLDPE)が挙げられる。放出部として使用される揮散性薬剤透過性フィルムは、1種の素材からなる単層フィルムであってもよく、また同一又は異なる素材からなる2以上の層が積層された複層フィルムであってもよい。
【0057】
揮散性薬剤成分透過性フィルムからなる放出部を有する容器は、揮散性薬剤成分透過性フィルムのみによって構成されていてもよく、また揮散性薬剤成分透過性フィルムと揮散性薬剤成分非透過性部材とを組み合わせて構成されているものであってもよい。本発明において、揮散性薬剤成分非透過性部材とは、薬剤組成物のみならず揮散性薬剤成分も透過させない部材のことである。このような揮散性薬剤成分非透過性部材については、例えば、ガラス、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレンテレフタレート、エチレン酢酸ビニルコポリマー、アルミニウム等を初めとして様々なタイプの部材が知られており、これらを適宜選択し使用できる。当該揮散性薬剤成分非透過性部材は、前記揮散性薬剤成分透過性フィルムと組み合わされて、薬剤組成物を包囲できる容器を形成できる限り、フィルム状、シート状、袋状、容器状等の様々な形態をとることができる。
【0058】
揮散性薬剤成分透過性フィルムからなる放出部を有する容器には、便蓋等に固定するために粘着剤や吸盤等の固定部が直接設けられていてもよいが、当該容器は、取り外し可能な支持体に支持され、当該支持体に便蓋等に固定するための固定部が設けられていてもよい。
【0059】
揮散性薬剤成分透過性フィルムからなる放出部を有する容器は、あらゆる形状の薬剤組成物に適用できるが、特に、液状又はゲル状の薬剤組成物を収容する容器として好適に使用される。
【0060】
また、例えば、揮散性薬剤成分を含み、保形性を有する形状(ゲル状、錠剤状、顆粒状、粉末状等)の薬剤組成物を使用する場合であれば、不織布からなる放出部を有する容器を使用してもよい。不織布からなる放出部を有する容器は、不織布のみによって容器状(袋状)に形成されていてもよく、また不織布と揮散性薬剤成分非透過性部材とを組み合わせて構成されているものであってもよい。揮散性薬剤成分非透過性部材の素材や形状等については、前述した通りである。
【0061】
不織布からなる放出部を有する容器には、便蓋等に固定するために粘着剤や吸盤等の固定部が直接設けられていてもよいが、当該容器は、取り外し可能な支持体に支持され、当該支持体に便蓋等に固定するための固定部が設けられていてもよい。
【0062】
更に、例えば、揮散性薬剤成分を含み、保形性を有する形状(ゲル状、錠剤状、顆粒状、粉末状等)の薬剤組成物を使用する場合には、薬剤組成物を固定した状態で維持できる収容部と、当該薬剤組成物から揮散される揮散性薬剤成分を容器外に放出するための開口部(放出部)を有する容器を使用してもよい。
【0063】
また、揮散性薬剤成分を含む薬剤組成物を使用し、熱、超音波等の物理的手段を用いて揮散性薬剤成分を強制的に放出させる場合であれば、使用する容器は、前記収容部及び前記放出部に加えて、熱、超音波等を付与するための物理的手段、及び当該物理的手段を稼働させるための電力供給源等を備えていればよい。
【0064】
(薬剤成分を噴霧させて放出させる容器)
薬剤組成物から薬剤成分を噴霧させて放出させる場合であれば、薬剤組成物を収容する収容部と、当該収容部から供給された薬剤組成物を噴霧させて容器外に放出させるための噴霧ノズル(放出部)を有する容器を使用すればよい。また、噴霧ノズルから薬剤組成物を噴霧させるために必要な電力供給源等を備えていてもよい。
【0065】
(薬剤成分を滴下させて放出させる容器)
薬剤組成物から薬剤成分を滴下させて放出させる場合であれば、薬剤組成物を収容する収容部と、当該収容部から供給された薬剤組成物を滴下させて容器外に放出させるための細孔部(放出部)を有する容器を使用すればよい。また、ポンプ等の機械的手段を用いて薬剤組成物を滴下する場合であれば、当該機械的手段を稼働させるために必要な電力供給源等を備えていてもよい。
【実施例】
【0066】
以下、実施例等に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0067】
試験例1:糞便の除去効果の評価
表1に示す組成のゲル状の薬剤組成物を調製し、糞便のモデル汚垢としてサラダ油及びカーボンブラックをサラダ油:カーボンブラックの質量比が100:2となるように混合したものを使用して、以下の試験を行った。
【0068】
各薬剤組成物30gを、収容部と当該収容部から容器外部に連通している開口部を有する容器に収容した。開閉可能な便蓋を有する便器[TOTO社製の貯水タンク(型番:S721)及びTOTO社製の便器(型番:C720)]のボウル部に、モデル汚垢3gを約200cm2となるように塗布した。次いで、便器の便蓋のボウル部側に、容器に収容した各ゲル状洗浄剤と取り付け、便蓋を閉めた状態で12時間放置した。その後、便器内空間(便蓋とボウル部等によって形成されている空間)から、100mlの空気をシリンジで吸引し、二酸化塩素の気体検知管(No.23M(測定範囲0.1~10ppm)、又はNo.23L(測定範囲0.025~1.2ppm)(いずれも株式会社ガステック製))を差し込み、二酸化塩素ガス濃度を測定した。更に、12時間放置後に、約13Lの水をフラッシュし、残存するモデル汚垢の残存量を目視で判断し、下記判定基準に従って、汚垢除去効果を評価した。
<汚垢除去効果の判定基準>
◎:モデル汚垢の残存率が5%未満である。
○:モデル汚垢の残存率が5%以上20%未満である。
△:モデル汚垢の残存率が20%以上50%未満である。
×:モデル汚垢の残存率が50%以上である。
【0069】
得られた結果を表1に示す。この結果、二酸化塩素の発生源を含む薬剤組成物を便蓋に設置することにより、便器内の空間に二酸化塩素ガスを放出でき、便器のボウル部における汚垢の除去効果が奏されることが確認された。
【0070】
【0071】
試験例2:糞便及び黒ずみの除去効果及び防汚効果の評価(フィールド試験)
前記試験例1で調製した薬剤組成物を使用し、以下のフィールド試験を行った。4人家族の家庭用便器の便蓋のボウル部側に、容器に収容した各薬剤組成物と取り付けた。使用した容器は、前記試験例1の場合と同様である。7日間便器の清掃をすることなく、家庭用便器を使用した。なお、便器を使用しない場合には、便蓋を閉めた状態にしておいた。また、4人家族の家庭用便器は、通常、1日当たりのトイレの使用回数は15~25回である。7日間使用後の便器について、糞便汚れ及び黒ずみの有無を目視にて確認し、下記判定基準に従って、糞便汚れ及び黒ずみの除去効果を評価した。
<汚垢除去効果の判定基準>
◎:糞便汚れ及び黒ずみの付着が全く認められない。
○:糞便汚れ又は黒ずみの付着が僅かに認められる。
△:糞便汚れ又は黒ずみの付着が少しだけ認められる。
×:糞便汚れ又は黒ずみの付着がかなり認められる。
【0072】
得られた結果を表2に示す。この結果、二酸化塩素の発生源を含むゲル状洗浄剤を便蓋に設置することにより、清掃することなくトイレを7日間使用しても、糞便汚れ及び黒ずみの付着が十分に抑制できており、便器内の空間に二酸化塩素ガスを放出させることにより、優れた汚れ除去効果と防汚効果が奏されることが確認された。
【0073】
【0074】
参考例1:黒ずみ発生防止効果の評価
表3に示す組成のゲル状の薬剤組成物を調製し、各薬剤組成物10gを用いて、黒ずみ発生防止効果の評価を行った。直径8.7cmのプラスチックシャーレにポテトデキストロース寒天培地を作成し、Cladosporium halotolerans(NBRC111839)(黒ずみの原因菌)を1×108 cells/ml濃度となるように調整した菌液を100μl塗布した。次いで、蓋付きのプラスチックケース(容量25cm×15cm×10cm)に、菌を塗布したシャーレ(蓋を開けた状態)と、容器に収容した薬剤組成物を入れて、当該プラスチックケースを密閉し、22.5℃で5日間静置した。なお、使用した容器は、前記試験例1の場合と同様である。その後、プラスチックシャーレ上の菌の繁殖状態を目視にて確認し、下記判定基準に従って、黒ずみ発生防止効果を評価した。ケース内の二酸化塩素濃度は、試験終了後(5日間静置後)にケースの蓋をわずかに開けた隙間から100mlの空気をシリンジで吸引し、そのシリンジを試験例1と同様の二酸化塩素の気体検知管に接続して、二酸化塩素ガス濃度を測定した。
<黒ずみ発生防止効果の判定基準>
○:シャーレに菌のコロニーが一切認められない。
△:シャーレに認められる菌のコロニー数が10個以下である。
×:シャーレに認められる菌のコロニー数が11個以上100個以下である。
××:シャーレに無数の菌のコロニー数が認められる。
【0075】
得られた結果を表3に示す。この結果、二酸化塩素の発生源を含む薬剤組成物を用いて二酸化塩素ガスを放出させることにより、黒ずみの原因菌となる菌の繁殖を効果的に抑制できることが確認された。
【0076】
【符号の説明】
【0077】
1 便器用衛生製品
2 便蓋
3 ボウル部
4 水