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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-28
(45)【発行日】2023-10-06
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/533 20060101AFI20230929BHJP
   A61F 13/475 20060101ALI20230929BHJP
   A61F 13/53 20060101ALI20230929BHJP
   A61F 13/511 20060101ALI20230929BHJP
   A61F 13/47 20060101ALI20230929BHJP
【FI】
A61F13/533 100
A61F13/475 112
A61F13/53 100
A61F13/511 110
A61F13/53 200
A61F13/47 300
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018096438
(22)【出願日】2018-05-18
(65)【公開番号】P2019198579
(43)【公開日】2019-11-21
【審査請求日】2020-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100139022
【弁理士】
【氏名又は名称】小野田 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100192463
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 剛規
(74)【代理人】
【識別番号】100169328
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 健治
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼阪 翔士
(72)【発明者】
【氏名】山本 純子
【審査官】横山 綾子
(56)【参考文献】
【文献】特表平11-513264(JP,A)
【文献】特開2008-154606(JP,A)
【文献】特開2006-122635(JP,A)
【文献】特開平08-215244(JP,A)
【文献】特表2015-536801(JP,A)
【文献】国際公開第01/10372(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/208729(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向、幅方向及び厚さ方向を有し、表面シートと、裏面シートと、前記表面シートと前記裏面シートの間に位置する吸収体とを備える吸収性物品であって、
前記吸収体が前記表面シートと前記厚さ方向に重複する重複領域において、前記表面シートから前記吸収体に向って前記厚さ方向に窪み、前記長手方向に沿って前記長手方向の中央部を通るように延設され、前記幅方向に間隔を空けて並んだ一対のエンボス部と、
前記吸収体が前記表面シートと前記厚さ方向に重複しない非重複領域において、前記長手方向の中央部における前記幅方向の両端部に位置し、前記長手方向に伸縮可能な一対のサイドフラップと、を備え、
前記幅方向において、平面視で、前記長手方向の中心での前記一対のエンボス部間の長さの1/2の長さよりも、前記吸収体における一方の端縁から当該端縁に対向する前記サイドフラップにおける外側の端縁までの距離が長く
前記表面シート及び前記裏面シートの前記長手方向の中央部が、平面視で、前記幅方向に括れた形状を有しており、
前記吸収性物品は、前記幅方向の両端部において、前記表面シート及び前記裏面シートの両端部を覆う一対のサイドシートを含み、
前記サイドフラップは、前記サイドシートのうちの、前記表面シート及び前記裏面シートにおける前記幅方向に括れた部分の端縁に対応する部分と、前記幅方向の外側の端縁とで囲まれた部分で形成されていて
前記一対のサイドフラップの各々は、
前記長手方向に延在し、前記幅方向の外側の端部に位置する第1弾性体と、
前記長手方向に延在し、前記第1弾性体よりも前記幅方向の内側の部分に位置する第2弾性体と、
を含み、
前記幅方向において、平面視で、前記長手方向の中心での前記一対のエンボス部間の長さの1/2の長さよりも、前記吸収体における前記一方の端縁から前記第2弾性体までの距離が長い、
吸収性物品。
【請求項2】
前記裏面シートの非肌側に粘着部を更に備え、
前記粘着部は、平面視で、前記幅方向における前記吸収体の両端縁の各々の内側に位置し、前記幅方向における前記吸収体の両端縁の各々の外側に位置しない、
請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記吸収体は、吸収性コアと、前記吸収性コアを包摂するコアラップとを含み、
前記吸収性コアは、高吸収性ポリマーを含み、パルプ繊維を含まない、
請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記吸収体における前記幅方向及び前記長手方向の中心部の厚みは5mm以内である、
請求項3に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記一対のエンボス部は、平面視で、前記長手方向において中心から両端部に向かうに連れて前記幅方向の互いの距離が増大する形状を有する、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記吸収体の前記長手方向の中心における前記幅方向の長さを100%としたとき、前記一対のエンボス部において、前記長手方向の中心部同士における前記幅方向の距離は20~50%であり、前記長手方向の端縁同士における前記幅方向の距離は35~95%である、
請求項5に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記吸収体は、平面視で、前記長手方向において中心から両端部に向かうに連れて前記幅方向の寸法が増加する形状を有する、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記一対のサイドフラップの各々における伸縮可能な領域の前記長手方向の長さは、前記一対のエンボス部の各々における前記長手方向の長さよりも短い、
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項9】
前記表面シートは、前記長手方向に延び、前記幅方向に間隔を空けて並んだ複数の凸部と、前記複数の凸部の間に形成された複数の凹部とを備える、
請求項1乃至のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項10】
前記一対のサイドシートの各々は、前記長手方向の伸張倍率が1.1~1.5倍のシートである、
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項11】
前記吸収体の前記幅方向の中心における前記長手方向の長さを100%としたとき、前記一対のエンボス部の各々の前記長手方向の長さは35%~85%である、
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
表面シートと、裏面シートと、表面シートと裏面シートとの間に位置する吸収体と、を備え、一対のエンボス部を有する吸収性物品が知られている。例えば、特許文献1には、表面シートと、裏面シートと、吸収体と、を備え、一対のエンボス部を有する吸収性物品が開示されている。この吸収性物品は、更に幅方向の両端縁よりも内側の領域に一対の防漏壁を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-221643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の吸収性物品は一対のエンボス部を有している。そのため吸収性物品が着用者に着用されて、幅方向の両側から両足に挟まれると、吸収性物品の幅方向の中央部が一対のエンボス部を起点として肌側に隆起する。それにより、その幅方向の中央部は着用者の排泄口に当接して、液状の排泄物(例示:尿)を容易に吸収できる。そのとき、その中央部で吸収されない排泄物は、その中央部の周囲から表面シートに沿って幅方向の外側に流れ出るが、肌側へ起立した一対の防漏壁で堰き止められ、一対のエンボス部に沿って長手方向に拡散される。それにより、排泄物を吸収性物品の広い領域で吸収でき、吸収性物品の吸収性能を高めることができる。
【0005】
ここで、着用者の体勢や足の動きによっては、その隆起した幅方向の中央部よりも幅方向の外側に排泄口がずれる場合が起こり得る。そのとき、排泄物はその中央部よりも外側の部分に直接排出される。その場合でも、排泄物が幅方向における一対の防漏壁の内側に排出されれば、排泄物の漏れは生じ難い。しかし、吸収性物品の着用時には、着用者の体勢や下着への装着のずれなどにより、起立した一対の防漏壁の肌側の端部(自由端)の間口は、通常、吸収性物品の幅よりも狭くなる。それに加えて、防漏壁の肌側の端部が内側に寄ったり、十分に起立しなかったりすることが起こり得る。そのような場合、排泄物が、防漏壁の肌側の端部よりも外側に放出され、あるいは、防漏壁を越えてしまい、吸収性物品の幅方向の外側へ漏れるおそれがある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、吸収性物品において、排泄物を長手方向に拡散させて吸収性能を高めつつ、着用者の体勢等に依らずに、排泄物の幅方向の漏れを抑制することが可能な吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の吸収性物品は次のとおりである。(1)長手方向、幅方向及び厚さ方向を有し、表面シートと、裏面シートと、前記表面シートと前記裏面シートの間に位置する吸収体とを備える吸収性物品であって、前記吸収体が前記表面シートと前記厚さ方向に重複する重複領域において、前記表面シートから前記吸収体に向って前記厚さ方向に窪み、前記長手方向に沿って前記長手方向の中央部を通るように延設され、前記幅方向に間隔を空けて並んだ一対のエンボス部と、前記吸収体が前記表面シートと前記厚さ方向に重複しない非重複領域において、前記長手方向の中央部における前記幅方向の両端部に位置し、前記長手方向に伸縮可能な一対のサイドフラップと、を備え、前記幅方向において、平面視で、前記長手方向の中心での前記一対のエンボス部間の長さの1/2の長さよりも、前記吸収体における一方の端縁から当該端縁に対向する前記サイドフラップにおける外側の端縁までの距離が長い、吸収性物品。
【0008】
本吸収性物品は、重複領域の長手方向の中央部に一対のエンボス部を備えている。そのため、吸収性物品が着用者に着用され、その長手方向の中央部が幅方向の両側から両足に挟まれることで、その長手方向の中央部における幅方向の中央部を一対のエンボス部を起点として長手方向に沿って肌側に容易に隆起させることができる。それにより、隆起した幅方向の中央部を、排泄口に密着させて、その中央部に液状の排泄物を容易に吸収させることができる。
また、本吸収性物品は、非重複領域の長手方向の中央部において、幅方向の両端部に、長手方向に伸縮可能な一対のサイドフラップを備えている。そのため、一対のサイドフラップの伸縮により、その幅方向の両端部の各々において、吸収性物品における吸収体の端縁から当該端縁に対向するサイドフラップの外側の端縁までの部分を肌側へ起立させることができる。すなわち、吸収性物品の幅方向の両端部を起立させて一種の防漏壁として機能させることができる。それにより、幅方向の中央部から表面シートに沿って幅方向の外側へ流れ出た排泄物を幅方向の両端部、すなわち吸収性物品における吸収体の両端縁から外側の部分(一対のサイドフラップを含む)で堰き止め、一対のエンボス部に沿って長手方向に拡散させることができる。それにより、排泄物を吸収性物品の広い領域で吸収でき、吸収性物品の吸収性能を高めることができる。
そのとき、幅方向において、吸収体の端縁からサイドフラップの外側の端縁までの距離が、一対のエンボス部間の長さの1/2の長さよりも長くなっている。したがって、幅方向Wにおいて、一対のサイドフラップを含む吸収性物品の両端部を、中央部よりも肌側へより高く起立させることができる。それにより、吸収性物品の長手方向の中央部において、一対のサイドフラップにおける幅方向の外側の端部を確実に着用者の股下の肌面に密着させることができる。それに加えて、幅方向において、サイドフラップの外側の端部は、吸収性物品の最も外側に位置するため、着用者の体勢等によって排泄口が中央部から外れても、一対のサイドフラップの両外側の両端部間にほぼ収めることができる。更に、起立したサイドフラップの幅方向の外側の端部が内側に寄ってしまう、あるいは、サイドフラップなどが十分に起立しないといったことも生じ難くすることができる。それにより、排泄物が幅方向の外側に放出され、あるいは、防漏壁を越えてしまい、吸収性物品の外側へ漏れる、ということを確実に抑制できる。
【0009】
本発明の吸収性物品は、(2)前記表面シート及び前記裏面シートの前記長手方向の中央部が、平面視で、前記幅方向に括れた形状を有しており、前記吸収性物品は、前記幅方向の両端部において、前記表面シート及び前記裏面シートの両端部を覆う一対のサイドシートを含み、前記サイドフラップは、前記サイドシートのうちの、前記表面シート及び前記裏面シートにおける前記幅方向に括れた部分の端縁に対応する部分と、前記幅方向の外側の端縁とで囲まれた部分で形成されている、上記(1)に記載の吸収性物品、でもよい。
本吸収性物品では、表面シート及び裏面シートの長手方向の中央部が幅方向に括れて、一対のサイドフラップが括れの幅方向の両外側を覆うように一対のサイドシートで形成されている。すなわち、一対のサイドフラップの大部分が表面シート及び裏面シートを含まずに一対のサイドシートで形成されている。したがって、一対のサイドフラップを相対的に薄くすること、すなわち低剛性にすることができる。それにより、一対のサイドフラップを、肌側へより容易に起立させることができると共に、一対のサイドフラップの外側の端部を着用者の股下の肌面により容易に密着させることができる。よって、排泄物が幅方向の外側に放出され、あるいは、防漏壁を越えてしまい、吸収性物品の外側へ漏れる、ということをより確実に抑制できる。
【0010】
本発明の吸収性物品は、(3)前記裏面シートの非肌側に粘着部を更に備え、前記粘着部は、平面視で、前記幅方向における前記吸収体の両端縁の各々の内側に位置し、前記幅方向における前記吸収体の両端縁の各々の外側に位置しない、上記(1)又は(2)に記載の吸収性物品、でもよい。
本吸収性物品では、吸収性物品を下着に固定するための粘着部が、平面視で幅方向における吸収体の両端縁の各々の内側に位置し、外側に位置しない。すなわち、吸収体の端縁から当該端縁に対向するサイドフラップの外側の端縁までの部分を、粘着部で下着に固定させない。それゆえ、吸収性物品における吸収体の両端縁から外側の部分(一対のサイドフラップを含む)を、肌側へより容易に起立させることができる。それにより、一対のサイドフラップの外側の端部を着用者の股下の肌面に確実に密着させることができる。よって、排泄物が幅方向の外側に放出され、あるいは、防漏壁を越えてしまい、吸収性物品の外側へ漏れる、ということをより確実に抑制できる。
【0011】
本発明の吸収性物品は、(4)前記吸収体は、吸収性コアと、前記吸収性コアを包摂するコアラップとを含み、前記吸収性コアは、高吸収性ポリマーを含み、パルプ繊維を含まない、上記(1)乃至(3)のいずれか一項に記載の吸収性物品、でもよい。
本吸収性物品では、吸収性コアは、高吸収性ポリマーを含み、パルプ繊維を含まないため、吸収性コアにパルプ繊維を含む場合と比較して、吸収体の厚さを薄くすることができる。したがって、吸収体、延いては吸収性物品を変形し易くすることができる。それにより、一対のエンボス部の幅方向の内側において、吸収性物品の中央部を容易に肌側に隆起させることができ、液体の排泄物をその中央部により吸収させることができる。
【0012】
本発明の吸収性物品は、(5)前記吸収体における前記幅方向及び前記長手方向の中心部の厚みは5mm以内である、上記(4)に記載の吸収性物品、であってもよい。
本吸収性物品では、吸収体の中心部の厚みが5mm以内であり、比較的薄いため、吸収体、延いては吸収性物品をより変形し易くすることができる。一対のエンボス部の幅方向の内側において、吸収性物品の中央部をより容易に肌側に隆起させることができ、液体の排泄物をその中央部により吸収させることができる。
【0013】
本発明の吸収性物品は、(6)前記一対のエンボス部は、平面視で、前記長手方向において中心から両端部に向かうに連れて前記幅方向の互いの距離が増大する形状を有する、上記(1)乃至(5)のいずれか一項に記載の吸収性物品、であってもよい。
本吸収性物品では、一対のエンボス部が、長手方向の中央部において互いに近接するように窄まった形状を有している。すなわち、装着時に幅方向の両側に位置する両足の外形に沿った形状を有している。そのため、幅方向の両側から両足に挟まれたとき、一対のエンボス部の内側において、幅方向の中央部を容易に肌側に隆起させることができると共に、吸収体の両端縁の各々から外側の部分(一対のサイドフラップを含む)を肌側へ容易に起立させることができる。
【0014】
本発明の吸収性物品は、(7)前記吸収体の前記長手方向の中心における前記幅方向の長さを100%としたとき、前記一対のエンボス部において、前記長手方向の中心同士における前記幅方向の距離は20~50%であり、前記長手方向の端縁同士における前記幅方向の距離は35~95%である、上記(6)に記載の吸収性物品、であってもよい。
本吸収性物品では、一対のエンボス部は長手方向の中央部が窄まった形状を有し、吸収体の長手方向の中心の幅を100%としたとき、長手方向の中心同士間の距離は20~50%であり、端縁同士間の距離は35~95%である。そのため、幅方向の両側から両足に挟まれたとき、一対のエンボス部の内側の、幅方向の中央部を肌側により容易に隆起させることができると共に、吸収体の両端縁の各々から外側の部分(一対のサイドフラップを含む)を肌側へより容易に起立させることができる。
【0015】
本発明の吸収性物品は、(8)前記吸収体は、平面視で、前記長手方向において中心から両端部に向かうに連れて前記幅方向の寸法が増加する形状を有する、上記(1)乃至(7)のいずれか一項に記載の吸収性物品。
本吸収性物品では、吸収体が、長手方向の中央部が窄まった形状を有している。すなわち、装着時に幅方向の両側に位置する両足の外形に沿った形状を有している。そのため、幅方向の両側から両足に挟まれたとき、吸収体の両端縁の各々から外側の部分(一対のサイドフラップを含む)を肌側へ容易に起立させることができる。
【0016】
本発明の吸収性物品は、(9)前記一対のサイドフラップの各々における伸縮可能な領域の前記長手方向の長さは、前記一対のエンボス部の各々における前記長手方向の長さよりも短い、上記(1)乃至(8)のいずれか一項に記載の吸収性物品、であってもよい。
本吸収性物品では、サイドフラップにおける伸縮可能な領域の長手方向の長さが、エンボス部における長手方向の長さよりも短い。そのため、吸収性物品における長手方向のエンボス部よりも両外側の前方部分及び後方部分を、サイドフラップによる伸縮及びエンボス部による変形の影響を受け難くすることができる。したがって、吸収性物品における長手方向の前方部及び後方部を比較的平坦な状態にすることができる。それにより、吸収性物品における前方部及び後方部を身体に密着させることができ、長手方向の排泄物の漏れを抑制することができる。
【0017】
本発明の吸収性物品は、(10)前記一対のサイドフラップの各々は、前記長手方向に延在し、前記幅方向の外側の端部に位置する第1弾性体と、前記長手方向に延在し、前記第1弾性体よりも前記幅方向の内側の部分に位置する第2弾性体と、を含み、前記幅方向において、平面視で、前記長手方向の中心での前記一対のエンボス部間の長さの1/2の長さよりも、前記吸収体における前記一方の端縁から前記第2弾性体までの距離が長い、上記(1)乃至(9)のいずれか一項に記載の吸収性物品、であってもよい。
本吸収性物品では、サイドフラップが、幅方向の外側に位置する第1弾性体と、内側に位置する第2弾性体と、を含んでいる。それゆえ、第1弾性体及び第2弾性体の伸縮によりサイドフラップが肌側へ起立するとき、サイドフラップにおける第1弾性体の部分だけでなく、第2弾性体の部分も着用者の股下の肌面に密着させることができる。すなわち、サイドフラップにおける第1弾性体及び第2弾性体により形成される面状の部分を着用者の股下の肌面に密着させることができる。それにより、幅方向の外側に排泄物が放出され、漏れることをより確実に抑制できる。
【0018】
本発明の吸収性物品は、(11)前記表面シートは、前記長手方向に延び、前記幅方向に間隔を空けて並んだ複数の凸部と、前記複数の凸部の間に形成された複数の凹部とを備える、上記(1)乃至(10)のいずれか一項に記載の吸収性物品、でもよい。
本吸収性物品では、表面シートが、長手方向に延び、幅方向に並んだ凹凸構造を備えている。そのため、幅方向の中央部が一対のエンボス部を起点として長手方向に沿って肌側により容易に隆起することができ、かつ、幅方向の吸収体の両端縁から外側の部分(一対のサイドフラップを含む)を長手方向に沿って肌側へより容易に起立させることができる。それにより、排泄口に密着することができ、液体の排泄物をより吸収できる。
【0019】
本発明の吸収性物品は、(12)前記一対のサイドシートの各々は、前記長手方向の伸張倍率が1.1~1.5倍のシートである、上記(2)に記載の吸収性物品、であってもよい。
本吸収性物品では、サイドフラップを形成するサイドシートが伸張倍率1.1~1.5倍のシートで形成されているので、サイドフラップを長手方向により伸縮し易くすることができる。そのサイドフラップの伸縮により、吸収性物品における吸収体の両端縁から外側の部分(一対のサイドフラップを含む)を肌側へより容易に起立させることができる。
【0020】
本発明の吸収性物品は、(13)前記吸収体の前記幅方向の中心における前記長手方向の長さを100%としたとき、前記一対のエンボス部の各々の前記長手方向の長さは35%~85%である、上記(1)乃至(12)のいずれか一項に記載の吸収性物品、であってもよい。
本吸収性物品では、吸収体の幅方向の中心における長手方向の長さを100%としたとき、エンボス部の長手方向の長さは35%~85%である。そのため、吸収性物品における長手方向のエンボス部よりも両外側の前方部及び後方部については、サイドフラップによる伸縮及びエンボス部による変形の影響をより受け難くして、身体により密着させることができる。一方、吸収性物品における長手方向のエンボス部の中央部については、幅方向の中央部を肌側により容易に隆起させ、吸収体の両端縁から外側の部分(一対のサイドフラップを含む)を肌側へより容易に起立させることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、吸収性物品において、排泄物を長手方向に拡散させて吸収性能を高めつつ、着用者の体勢等に依らずに、排泄物の幅方向の漏れを抑制することが可能な吸収性物品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施の形態に係る吸収性物品の構成を示す平面図である。
図2図1のII-II線に沿う断面図である。
図3】軽失禁パッドの作用を説明する模式図である。
図4】吸収体の構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、実施の形態に係る吸収性物品について軽失禁パッド1を例に説明する。この場合、軽失禁パッド1の吸収対象である排泄物は尿である。ただし、吸収性物品の種類及び用途はこの例に限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲を逸脱しない限り、他の吸収性物品でもよい。そのような吸収性物品として、例えばパンティライナー、生理用ナプキン、使い捨ておむつが挙げられる。
【0024】
図1図2は実施の形態に係る軽失禁パッド1の構成を示す図である。ただし、図1は展開した状態の軽失禁パッド1の平面図を示し、図2図1のII-II線に沿う断面図を示す。軽失禁パッド1は、互いに直交する長手方向L、幅方向W及び厚さ方向Tを有し、幅方向Wの中心を通り長手方向Lに延びる長手方向中心線CLと、長手方向Lの中心を通り幅方向Wに延びる幅方向中心線CWとを有する。また、軽失禁パッド1は、長手方向Lにおいて、股間部MPと、股間部MPの前方に位置する前方部FPと、股間部MPの後方に位置する後方部RPとを有する。股間部MPと前方部FP及び後方部RPは、軽失禁パッド1の中央と両端に位置するので、それぞれ中央部と両端部ともいえる。長手方向中心線CLに近づく方向及び遠ざかる方向をそれぞれ幅方向Wの内側及び外側の方向とする。幅方向中心線CWに近づく方向及び遠ざかる方向をそれぞれ長手方向Lの内側及び外側の方向とする。「平面視」とは長手方向L及び幅方向Wを含む平面に展開した状態の軽失禁パッド1を厚さ方向Tの上方側から見ることをいい、「平面形状」とは平面視で把握される形状をいう。「肌側」及び「非肌側」とは軽失禁パッド1が装着者に装着されたときに、厚さ方向Tにおいて相対的に装着者の肌面に近くなる側及び遠くなる側をそれぞれ意味する。「面内方向」とは幅方向W及び長手方向Lを含む面と平行な任意の方向である。これら定義は軽失禁パッド1だけでなく、軽失禁パッド1に配置された状態の各資材にも共通に用いる。
【0025】
本実施の形態では、軽失禁パッド1は、長手方向中心線CLに対して線対称、かつ、幅方向中心線CWに対して線対称な形状を有する。したがって、股間部MPは、長手方向中心線CL及び幅方向中心線CWに対して線対称な形状を有する。前方部FP及び後方部RPは長手方向中心線CLに対して線対称な形状を有する。前方部FP及び後方部RPは幅方向中心線CWに対して互いに線対称な関係にある。本実施の形態では、股間部MPは、長手方向Lにおいて、幅方向中心線CWの両側に、それぞれ軽失禁パッド1の長手方向Lの最大長の15~35%の範囲(全体で30~70%の範囲)の領域である。前方部FP及び後方部RPは、長手方向Lにおいて、それぞれ股間部MPを除いた前方及び後方の領域である。股間部MPは、後述される排泄口当接域XAを含む領域ということができる。
【0026】
なお、ある方向Dが長手方向Lに沿う方向であるとは、方向Dが長手方向Lに平行な場合だけでなく、方向Dの長手方向Lの成分Dxが、方向Dの幅方向Wの成分Dyよりも大きい場合(Dx>Dy)も含んでいる。同様に、ある方向Dが幅方向Wに沿う方向であるとは、方向Dが幅方向Wに平行な場合だけでなく、方向Dの幅方向Wの成分Dyが、方向Dの長手方向Lの成分Dxよりも大きい場合(Dy>Dx)も含んでいる。なお、曲線に関しては、曲線上の各点の接線について、ある方向Dを上記のように評価する。
【0027】
図1に示すように、軽失禁パッド1は、平面視にて、長手方向Lに延びる長辺と幅方向Wに延びる短辺とを有する長方形における長手方向Lの両端縁が円弧状に膨らんだ形状を有する。ただし、本実施の形態において軽失禁パッド1の形状は、このような形状に限定されず、長手方向Lの長さ寸法が幅方向Wの幅寸法よりも長い形状のものであれば、任意の縦長の形状(例示:長方形、角丸長方形、楕円形、小判形)とすることができる。
【0028】
図2に示すように、軽失禁パッド1は、表面シート2と、裏面シート3と、表面シート2と裏面シート3との間に位置する吸収体4と、を備えている。本実施の形態では、表面シート2及び裏面シート3の周縁部は、吸収体4の周囲の端縁4eから外側に向かって所定幅で延出し、吸収体4を内包している。すなわち、表面シート2及び裏面シート3の端縁2e、3eは吸収体4の端縁4eから所定幅だけ外側に位置する。したがって、軽失禁パッド1は、吸収体4が表面シート2と厚さ方向Tに重複する重複領域と、吸収体4が表面シート2と厚さ方向Tに重複しない非重複領域と、を有する。また、本実施の形態では、表面シート2及び裏面シート3は、平面視で、長手方向Lの中央部が幅方向Wに括れた形状を有する。したがって、長手方向Lにおいて、中心から両端部に向かうに連れて幅方向Wの寸法が増加する(両端部で減少する)。表面シート2及び裏面シート3における幅方向Wに括れた部分の両端縁2e及び両端縁3eは、幅方向Wの内側に凸な曲線を形成する。更に、本実施の形態では、吸収体4は、平面視で、長手方向Lの中央部が、幅方向Wに括れた形状を有する。したがって、長手方向Lにおいて中心から両端部に向かうに連れて幅方向Wの寸法が増加する(両端部で減少する)。吸収体4における幅方向Wに括れた部分の両端縁4eは、幅方向Wの内側に凸な曲線を形成する。長手方向Lの中央部が幅方向Wに括れた形状としては、例えば、平面視での瓢箪形、砂時計形が挙げられる。
【0029】
本実施の形態では、軽失禁パッド1は、更に、幅方向Wの両端部において、表面シート2及び裏面シート3の両端部を覆う一対のサイドシート7、7を含む。各サイドシート7は、一方の面における幅方向Wの略半分の部分を裏面シート3の非肌側の面に接合され、その一方の面における幅方向Wの残りの部分を表面シート2の肌側の面に接合される。したがって、一対のサイドシート7、7は、軽失禁パッド1おける幅方向Wの両端部の肌側及び非肌側の表面を覆うように配置される。各サイドシート7は、長手方向Lの伸張倍率が1.1~1.5倍のシートである。すなわち、各サイドシート7は、自然状態のシートを、長手方向Lに1.1~1.5倍だけ伸張した状態で表面シート2及び裏面シート3に接合されて形成される。したがって、長手方向Lの内側に向かって収縮しようとする内部応力を有する。別の実施の形態では、表面シート2側のサイドシートが表面シートと一体又は存在せず、裏面シート3側のサイドシートが裏面シートと一体又は存在しない。
【0030】
軽失禁パッド1は、吸収体4が表面シート2と厚さ方向Tに重複する重複領域において、幅方向Wに間隔を空けて並んだ一対のエンボス部5、5を備える。各エンボス部5は、長手方向Lに沿って長手方向Lの中央部(股間部MP)を通るように延設され、厚さ方向Tに表面シート2の肌側の表面から吸収体4の非肌側の表面に向って窪んだ構成を有する。本実施の形態では、一対のエンボス部5、5は、平面視で、長手方向Lにおいて中心から両端部に向かうに連れて幅方向Wの互いの距離が増大する形状を有する。すなわち、一対のエンボス部5、5の形状(又はパターン)は、平面視で、長手方向中心線CLに対して凸(幅方向Wの内側に凸)となる緩やかな円弧状(緩やかな弓なり)の形状である。その形状は、長手方向中心線CLに対して線対称、かつ、幅方向中心線CWに対して線対称の形状である。一対のエンボス部5、5は、長手方向Lにおいて吸収体4の両端部の近傍まで延設され、その吸収体4の両端部の近傍において、吸収体4の幅方向Wの両端部の近傍まで延設される。エンボス部5の幅は0.5~4mmが好ましく、1~2mmがより好ましい。ただし、一対のエンボス部5、5の形状は、この例に限定されず、他の形状を有してもよい。他の形状としては、例えば長手方向Lに平行な形状や、長手方向中心線CLに対して凹となる形状や、これらの形状(図1の形状を含む)の組み合わせが挙げられる。
【0031】
本実施の形態では、軽失禁パッド1は、更に、重複領域において、長手方向Lに間隔を空けて並んだ一対の他のエンボス部6、6を備える。各他のエンボス部6は、幅方向Wに沿って幅方向Wの中央部を通るように延設され、厚さ方向Tに表面シート2の肌側の表面から吸収体4の非肌側の表面に向って窪んだ構成を有する。一対のエンボス部6、6は、平面視で、幅方向Wにおいて中心から両端部に向かうに連れて長手方向Lの互いの距離が減少する形状を有する。すなわち、一対の他のエンボス部6、6の形状(又はパターン)は、平面視で、幅方向中心線CWに対して凹(長手方向Lの内側に凹)となる緩やかな円弧状(緩やかな弓なり)の形状である。その形状は、幅方向中心線CWに対して線対称、かつ、長手方向中心線CLに対して線対称の形状である。一対の他のエンボス部6、6は、長手方向Lにおいて吸収体4の両端部の近傍に延設される。他のエンボス部5の幅は0.5~4mmが好ましく、1~2mmがより好ましい。ただし、一対の他のエンボス部6、6の形状は、この例に限定されるものではなく、他の形状を有してもよい。一対の他のエンボス部6、6の他の形状としては、例えば幅方向Wに平行な形状や、幅方向中心線CWに対して凸となるような形状や、これらの形状(図1の形状を含む)の組み合わせが挙げられる。更に、一対の他のエンボス部6、6の長手方向Lの内側に、更に一対の他のエンボス部を有してもよい。
【0032】
各エンボス部5、6の形成方法は特に制限はなく、表面シート2、裏面シート3及び吸収体4の構成や各エンボス部5、6の構成に応じて適宜公知の方法を用いることができる。本実施の形態では、各エンボス部5、6は、表面シート2と吸収体4とを積層させた積層体を、表面シート2の肌側の表面から吸収体4の非肌側の表面に向って圧搾させつつ熱融着させる方法、すなわち熱エンボス加工の方法で形成される。そのとき、エンボス部5の厚さ方向Tの底部には、表面シート2及び吸収体4の資材が高濃度に圧縮され、熱溶融された熱融着部5tが形成される。
【0033】
軽失禁パッド1は、吸収体4が表面シート2と厚さ方向Tに重複しない非重複領域において、長手方向Lの中央部(股間部MP)における幅方向Wの両端部に位置し、長手方向Lに伸縮可能な一対のサイドフラップ10、10を更に備える。各サイドフラップ10の幅方向Wの外側の端縁10eは、軽失禁パッド1の幅方向Wの端縁の一部を構成する。本実施の形態では、各サイドフラップ10は、サイドシート7のうちの、表面シート2及び裏面シート3における幅方向Wに括れた部分の端縁2e、3eに対応する(端縁状の)部分と、幅方向Wの外側の端縁と、により囲まれた部分である。一対のサイドシート7、7のうちの当該部分は長手方向Lに伸縮可能である。したがって、各サイドフラップ10は、非重複領域のうちの、表面シート2及び裏面シート3が存在しない領域であるということができる。別の実施の形態では、各サイドフラップ10は、非重複領域のうちの、表面シート2及び裏面シート3の少なくとも一方が存在する領域である。
【0034】
軽失禁パッド1は、幅方向Wにおいて、平面視で、長手方向Lの中心での一対のエンボス部5、5間の長さdの1/2の長さdよりも、吸収体4における一方の端縁4eから当該端縁4eに対向するサイドフラップ10における外側の端縁10eまでの距離dが長い。すなわち、d(=d/2)<d、である。ここで、本実施の形態では、長手方向Lの中心とは、長手方向Lにおける幅方向中心線CWの位置である。ただし、その位置から長手方向Lの最大長の±5%の範囲を含んでもよい(以下同じ)。長手方向Lの中心での一対のエンボス部5、5間の長さdとは、平面視で、幅方向中心線CW上における、一方のエンボス部5の熱融着部5tの幅方向Wの内側の端縁と、他方のエンボス部5の熱融着部5tの内側の端縁との距離である。なお、幅方向中心線CW上に熱融着部5tがない場合には、幅方向中心線CWに最近接な熱融着部5tを用いる。一方、端縁4eから端縁10eまでの距離dとは、平面視で、幅方向中心線CW上における、吸収体4の一方の端縁4eから表面シート2及び裏面シートの端縁2e、3eまでの距離d21と、表面シート2及び裏面シートの端縁2e、3eからサイドフラップ10の端縁10eまでの距離d22との和である。すなわち、d=d21+d22、である。
【0035】
軽失禁パッド1には、表面シート2と吸収体4とが厚さ方向Tに重複する重複領域に、装着時に着用者の排泄口に当接する領域、すなわち排泄口当接域XAが存在する。本実施の形態では、排泄口当接域XAは、長手方向中心線CLと幅方向中心線CWとの交点を中心に、一対のエンボス部5、5及び一対の他のエンボス部6、6の内側の領域である。排泄物は、主に排泄口当接域XAに排泄され、吸収された後、その周囲に拡散してゆく。排泄口当接域XAは、典型的には、例えば吸収体4における長手方向Lの略中央部で幅方向Wの略中央部に、吸収体4全長の約1/4~3/5の長さ、吸収体4全幅の約1/2~1/3の幅の領域である。ただし、排泄口当接域XAは、吸収性物品の種類や、吸収性物品の着用者の性別や年齢層により、適宜変動し得る。
【0036】
表面シート2は、液透過性を有するシートである。表面シート2としては、液透過性を有するシートであれば特に制限はない。表面シート2としては、例えば液透過性の不織布や織布、液透過孔を有する合成樹脂フィルム、これらの複合シートが挙げられる。本実施の形態では、熱エンボス加工での熱融着の観点から熱融着性繊維で形成され、液透過性を有するエアスルー不織布を用いる。表面シート2の坪量は、例えば5g/m~100g/mが挙げられ、好ましくは20g/m~50g/mである。表面シート2の厚さは、例えば0.2~3mmが挙げられる。また、表面シート2は凹凸構造を備えてもよい。本実施の形態では、表面シート2は、長手方向Lに延び、幅方向Wに間隔を空けて並んだ複数の凸部(図示されず)と、複数の凸部の間に形成された複数の凹部(図示されず)とを備える。
【0037】
裏面シート3は、裏面シート3は、液不透過性を有するシートである。裏面シート3としては、液不透過性を有するシートであれば特に制限はなく、例えば液不透過性の不織布や合成樹脂フィルム、不織布と合成樹脂フィルムとの複合シート、SMS不織布が挙げられる。本実施の形態では、液不透過性を有するSMS不織布を用いる。
【0038】
表面シート2の非肌側の面と吸収体4の肌側の面とは相互に接合され、吸収体4の非肌側の面と裏面シート3の肌側の面とは相互に接合される(重複領域)。表面シート2の周縁部の非肌側の面と裏面シート3の周縁部の肌側の面とは相互に接合される(非重複領域)。接合方法は特に制限はなく、例えば、ホットメルト接着剤のような接着剤を用いる方法や、熱エンボスのような熱シールを用いる方法や、それらを組み合わせた方法が挙げられる。
【0039】
吸収体4は、液吸収性能及び液保持性能を有する層である。吸収体4は比較的薄く形成されており、その厚さは例えば1mm~5mmが挙げられる。本実施の形態では、吸収体4の幅方向W及び長手方向Lの中心部(長手方向中心線CLと幅方向中心線CWとの交点で計測)の厚みは5mm以内である。また、本実施の形態では、吸収体4は、吸収性コア4aと、吸収性コア4aを包摂するコアラップ4bと、を含む。
【0040】
吸収性コア4aは、高吸収性ポリマー20を有する。高吸収性ポリマー20としては、水分を吸収し保持できるポリマーであれば特に制限はなく、例えばデンプン系、アクリル酸系、アミノ酸系の粒子状又は繊維状の高吸収性ポリマー(SAP)が挙げられる。高吸収性ポリマー20の坪量は、軽失禁パッド1に要求される吸収性能に応じて適宜調整され得るが、例えば10~500g/mが挙げられ、好ましくは100~400g/mである。吸収性コア4aは、更に、パルプ繊維や吸水性繊維を有してもよい。吸水性繊維の含有量は、例えば高吸収性ポリマー20の質量の0~50%の範囲が挙げられる。本実施の形態では、吸収性コア4aは、エンボス部5、6の熱融着部(後述)の領域にはパルプ繊維を含まないように構成される。本実施の形態では、吸収性コア4aは、高吸収性ポリマー20のみで構成され、吸水性繊維を含まない。高吸収性ポリマー20は、ホットメルト接着剤等(図示されず)でコアラップ4bに固定されることが好ましいが、固定されずにコアラップ4bで包摂されて存在してもよい。別の実施の形態では、吸収性コア4aは、高吸収性ポリマー20の他に、パルプ繊維及び/又は吸水性繊維を含むが、エンボス部5の熱融着部(後述)にはパルプ繊維を含まないように構成される。
【0041】
コアラップ4bとしては、液透過性を有するシートであれば特に制限はない。コアラップ4bとしては、例えば液透過性の不織布や積層不織布、ティッシュなどの親水性の不織布が挙げられる。コアラップ4bの坪量は、例えば2g/m~80g/mが挙げられ、好ましくは10g/m~40g/mである。本実施の形態では、熱エンボス加工での熱融着の観点から熱融着性繊維で形成され、パルプ繊維を含まない、液透過性を有するエアスルー不織布を用いる。なお、コアラップ4bは、熱融着性繊維を含み、パルプ繊維を含まない複数のシートを積層した構成であってもよい。
【0042】
なお、表面シート2と吸収体4との間に、一枚又は複数枚の液透過性の他のシートを備えていてもよい。例えば、軽失禁パッド1に液拡散性や、クッション性を付与する公知のシートが挙げられる。その液透過性のシートとしては、熱エンボス加工での熱融着の観点から熱融着性繊維で形成され、パルプ繊維を含まなければ、特に制限はない。また、裏面シート3と吸収体4との間に吸収性性能を補完するためにティッシュを有してもよい。
【0043】
熱融着性繊維としては、熱エンボス加工による加熱により溶融し、熱融着することが可能な繊維であれば、特に制限はない。そのような熱融着性繊維としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコールのようなポリオレフィン系の単一繊維や、ポリエチレンテレフタレート(芯部)/ポリエチレン(鞘部)、ポリエチレンテレフタレート(芯部)/ポリプロピレン(鞘部)、ポリプロピレン(芯部)/ポリエチレン(鞘部)のような芯鞘型の複合繊維などが挙げられる。表面シート2や吸収性コア4aやコアラップ4bなどで使用する場合、親水性油剤等により親水処理を施してもよい。熱融着性材料としては、例えば熱可塑性樹脂のような合成樹脂が挙げられる。
【0044】
本実施の形態では、一対のエンボス部5、5の各々は、複数の熱融着部5tと、複数の非熱融着部5sと、を備えている。複数の熱融着部5tの各々は、エンボス部5において、長手方向Lに沿って間欠的に配置されている。熱融着部5tの平面形状は特に制限はなく、例えば円形、楕円系、四角形、多角形などが挙げられる。複数の非熱融着部5sの各々は、エンボス部5において、隣り合う熱融着部5t、5tの間に配置されている。言い換えると、エンボス部5は、長手方向Lに沿って、熱融着部5tと非熱融着部5sとが交互に配置されている。本実施の形態では、平面視で、長手方向中心線CLに対して凸となるように、熱融着部5tと非熱融着部5sとが交互に緩やかな円弧状に(緩やかな弓なりに)配置されている。
【0045】
熱融着部5tは、表面シート2と吸収体4における肌側のコアラップ4bとが厚さ方向Tの非肌側に向かって陥没し、吸収体4における非肌側のコアラップ4bと共に熱融着された構成を有する。熱融着部5tは、圧搾及び溶融によって周囲よりも材料密度の高い高密度部を有する。一方、非熱融着部5sは、隣り合う熱融着部5t、5t間の距離にも依るが、両側の熱融着部5t、5tの陥没により、表面シート2と吸収体4とが厚さ方向Tにやや窪んで構成を有する。ただし、非熱融着部5sは、窪んでいなくてもよい。
【0046】
熱融着部5tは、表面シート2と吸収体4のコアラップ4bとが厚さ方向Tに圧搾され熱融着されて構成されており、パルプ繊維を含まない。また、熱融着部5tは吸収性コア4aを含み得るが、吸収性コア4aにおける熱融着部の領域はパルプ繊維を含まないように構成されるので、その場合でも、熱融着部5tはパルプ繊維を含まない。なお、熱融着部5tは、吸収性コア4aとして高吸収性ポリマーを含んでもよい。高吸収性ポリマーは熱エンボス加工の時に熱で溶融し熱融着部5tの一部を構成し得るので、熱融着部5tの接着強度を低下させない。
【0047】
一方、非熱融着部5sは、表面シート2と吸収体4のコアラップ4b及び吸収性コア4aとが厚さ方向Tに積層されて構成される。したがって、非熱融着部5sは、吸収性コア4aが高吸収性ポリマー20のみであるなどパルプ繊維を含まない場合には、パルプ繊維を含まない。一方、非熱融着部5sは、吸収性コア4aが高吸収性ポリマー20及びパルプ繊維を含んでいるなどパルプ繊維を含む場合には、パルプ繊維を含み得る。本実施の形態では、熱エンボス加工での熱融着の観点から、吸収性コア4aは高吸収性ポリマー20のみなので、非熱融着部5sは吸収性コア4aとしてはパプル繊維を含まず、高吸収性ポリマーを含む。また、本実施の形態では、吸収体4において、非熱融着部5sに存在する高吸収性ポリマーの坪量は、非熱融着部5s以外の領域に存在する高吸収性ポリマーの坪量よりも高い。
【0048】
一対の他のエンボス部6、6の各々は、複数の他の熱融着部6tと、複数の他の非熱融着部6sと、を備える。複数の他の熱融着部6tの各々は、他のエンボス部6において、幅方向Wに沿って間欠的に配置されている。複数の他の非熱融着部6sの各々は、他のエンボス部6において、隣り合う他の熱融着部6t、6tの間に配置されている。言い換えると、他のエンボス部6は、幅方向Wに沿って、他の熱融着部6tと他の非熱融着部6sとが交互に配置されている。本実施の形態では、平面視で、幅方向中心線CWに対して凹となるように、他の熱融着部6tと他の非熱融着部6sとが交互に緩やかな円弧状に(緩やかな弓なりに)配置されている。
【0049】
他の熱融着部6t及び他の非熱融着部6sにおけるその他の構成、例えば具体的な形状や構造や材料については、それぞれ熱融着部5t及び非熱融着部5sの構成と同様である。したがって、その説明を省略する。
【0050】
本実施の形態では、軽失禁パッド1は、更に、裏面シート3の非肌側に粘着部9を備える。本実施の形態では、粘着部9として、裏面シート3における非肌側に、幅方向Wに間隔を空けて並んだ3本の粘着テープが設けられる。このとき、粘着部9は、平面視で、長手方向Lに沿って貼り付けられた細長い矩形形状を有し、幅方向Wにおける吸収体4の両端縁の各々の内側に位置し、幅方向Wにおける吸収体4の両端縁の各々の外側に位置しないように形成される。したがって、軽失禁パッド1では、幅方向Wにおける吸収体4の両端縁よりも外側の部分が、着用者の下着などに固定されない。なお、粘着部9は、軽失禁パッド1の個包装時にはセパレータ(図示されず)を介して軽失禁パッド1を包装シート(図示されず)に固定し、軽失禁パッド1の使用時には軽失禁パッド1を着用者の下着などに再固定する。
【0051】
本実施の形態では、軽失禁パッド1は、長手方向Lに延在し、幅方向Wの両外側の両端部に位置する一対の弾性体を備える。本実施の形態では、軽失禁パッド1は、一対の弾性体として、一対の第1弾性体11、11を備える。第1弾性体11は、軽失禁パッド1において、長手方向Lに延在し、幅方向Wの外側の端部に位置する。第1弾性体11は、長手方向Lの中央部(股間部MP)に位置する中央第1弾性体11aと、長手方向Lの両端部(前方部FP、後方部RP)に位置する端部第1弾性体11b、11bと、を含む。中央第1弾性体11aは、上側及び下側のサイドシート7に挟まれて、サイドフラップ10に含まれる。中央第1弾性体11aは、長手方向Lに伸縮性を有するので、サイドフラップ10に長手方向Lの伸縮性を付与する。一方、端部第1弾性体11bは、サイドシート7と表面シート2又は裏面シート3とに挟まれて、サイドフラップ10の長手方向Lの両外側の両端部(前方部FP、後方部RP)に含まれる。端部第1弾性体11bは、中央第1弾性体11aと連続しているが、伸縮性を有さない部分であるため、その両端部に伸縮性を付与しない。別の実施の形態では、端部第1弾性体11bは、伸縮性を有し、その両端部に伸縮性を付与する。
【0052】
本実施の形態では、軽失禁パッド1は、一対の弾性体として、更に、一対の第2弾性体12、12を備える。第2弾性体12は、軽失禁パッド1において、長手方向Lに延在し、第1弾性体11よりも幅方向Wの内側の部分に位置する。第2弾性体12は、長手方向Lの中央部(股間部MP)に位置する中央第2弾性体12aと、長手方向Lの両端部(前方部FP、後方部RP)に概ね位置する端部第2弾性体12b、12bと、を含む。中央第2弾性体12aは、上側及び下側のサイドシート7に挟まれて、サイドフラップ10に含まれる。中央第2弾性体12aは、長手方向Lに伸縮性を有するので、サイドフラップ10に長手方向Lの伸縮性を更に付与する。一方、端部第2弾性体12bは、サイドシート7と表面シート2又は裏面シート3とに挟まれて、サイドフラップ10の長手方向Lの両外側の両端部(前方部FP、後方部RP)に概ね含まれる。端部第2弾性体12bは、中央第2弾性体12aと連続しているが、伸縮性を有さない部分であるため、両端部に伸縮性を付与しない。別の実施の形態では、端部第2弾性体12bは、伸縮性を有し、その両端部に伸縮性を付与する。
【0053】
したがって、本実施の形態では、一対の弾性体は、軽失禁パッド1のうちの中央部(股間部MP)を長手方向Lに伸縮可能にする、すなわちサイドフラップ10を長手方向Lに伸縮可能にする。しかし、一対の弾性体は、両端部(前方部FP、後方部RP)を長手方向Lに伸縮可能にはしない、ということができる。
【0054】
次に、本実施の形態に係る軽失禁パッド1の製造方法の一例を説明する。
まず、吸収体4が例えば以下の方法で作製される。最初に、上述の吸収性コア4a(高吸収性ポリマー)を、接着剤を塗布したコアラップ4bにおける幅方向Wの中央の領域に配置する。次に、折り畳み装置により、吸収性コア4aが配置された領域の幅方向Wの両側に隣接する領域を、長手方向Lに延びる折畳み線に沿って幅方向Wの内側に折り畳む。ここで、折り重なったコアラップ4bの幅方向Wの両端部には予め接着剤を塗布してある。そこで、押圧装置により、その折り重なった両端部を押圧して、両端部を互いに接着する。それと共に、一方、吸収性コア4aが配置された領域の長手方向Lの両端部には予め接着剤を塗布してある。そこで、押圧装置により、その両端部を押圧して、両端部を互いに接着する。それにより、吸収性コア4aがコアラップ4bで包摂された吸収体が形成される。その後、周囲圧搾切断装置により、この吸収体の周囲を、所定形状で縁取るように圧搾しつつ切断することで、図1のような外形の吸収体4が形成される。このとき、例えば、完成品の軽失禁パッド1のエンボス部において、吸収性コア4a(高吸収性ポリマー)の坪量を相対的に大きくしたい場合には、コアラップ4bにおけるエンボス部が形成される領域の接着剤の坪量を相対的に大きくする方法を取り得る。その場合、接着剤を、例えば、エンボス部の平面視の形状と概ね同じ形状に配置してもよいし、エンボス部を含む矩形状又は帯状に配置してもよい。
【0055】
次いで、連続シート状の表面シートが搬送ベルトに供給される。その表面シートの一方の面にはホットメルト接着剤が塗布されている。押圧装置により、吸収体4は表面シートのその一方の面に押し付けられる。それにより、吸収体4と表面シートとが積層された積層体が形成される。次いで、その積層体が圧搾装置の一対のロールで加熱されつつエンボスされる(熱エンボス加工)。それにより、積層体に、図1図2により説明された複数の熱融着部5tを含む一対のエンボス部5、5及び複数の他の熱融着部6tを含む一対の他のエンボス部6、6が形成される。次いで、連続シート状の裏面シートが搬送ベルトに供給される。その裏面シートの一方の面にはホットメルト接着剤が塗布されている。裏面シートのその一方の面は、熱エンボス加工された積層体にロールで押し付けられる。それにより、表面シートと吸収体4と裏面シートとが積層された積層体が形成される。そして、周囲圧搾切断装置により、その積層体の周囲を、所定形状で縁取るように圧搾しつつ切断することで、図1のような外形の積層体が形成される。
【0056】
次いで、連続シート状の一対のサイドシートが搬送ベルトに供給される。その一対のサイドシートの一方の面には一対の第1弾性体及び一対の第2弾性体が配置され、かつ、ホットメルト接着剤が塗布されている。その後、押圧装置により、積層体の両端部の一方の面が一対のサイドシートのその一方の面の内側の部分に押し付けられる。次に、折り畳み装置により、一対のサイドシートのその一方の面の外側の部分を、積層体の両端部の他方の面に、長手方向Lに延びる折畳み線に沿って折り畳む。その後、周囲圧搾切断装置により、その積層体の周囲を、所定形状で縁取るように圧搾しつつ切断することで、図1のような外形の軽失禁パッド1(図1)が製造される。
【0057】
ただし、上記の製造方法は一例であり、公知の他の方法を用いることも可能である。
【0058】
次に、本実施の形態に係る軽失禁パッド1の作用について説明する。図3は、軽失禁パッド1の作用を説明する模式図である。本軽失禁パッド1は、重複領域の長手方向Lの中央部に一対のエンボス部5、5を備えている。そのため、軽失禁パッド1が着用者に着用され、その長手方向Lの中央部が幅方向Wの両側から両足に挟まれることで、その長手方向Lの中央部における幅方向Wの中央部を一対のエンボス部5、5を起点として長手方向Lに沿って肌側に容易に隆起させることができる。それにより、隆起した幅方向Wの中央部、すなわち排泄口当接域XAを含む部分を、排泄口に密着させて、その中央部に液状の排泄物を容易に吸収させることができる。
【0059】
それと共に、本軽失禁パッド1は、更に、非重複領域の長手方向Lの中央部において、幅方向Wの両端部に、長手方向Lに伸縮可能な一対のサイドフラップ10、10を備えている。そのため、一対のサイドフラップ10、10の伸縮により、その幅方向Wの両端部の各々において、軽失禁パッド1における吸収体4の端縁4eから当該端縁4eに対向するサイドフラップ10の外側の端縁10eまでの部分を肌側へ起立させることができる。すなわち、軽失禁パッド1の幅方向Wの両端部を起立させて一種の防漏壁として機能させることができる。それにより、幅方向Wの中央部から表面シート2に沿って幅方向Wの外側へ流れ出た排泄物(例示:尿)を幅方向Wの両端部、すなわち軽失禁パッド1における吸収体4の両端縁4eから外側の部分(一対のサイドフラップ10、10を含む)で堰き止め、一対のエンボス部5、5に沿って長手方向Lに拡散させることができる。それにより、排泄物を軽失禁パッド1の広い領域で吸収でき、軽失禁パッド1の吸収性能を高めることができる。
【0060】
そのとき、幅方向Wにおいて、吸収体4の端縁4eからサイドフラップ10の外側の端縁までの距離dが、一対のエンボス部5、5部間の長さdの1/2の長さdよりも長くなっている(d>d)。したがって、幅方向Wにおいて、一対のサイドフラップ10、10を含む軽失禁パッド1の両端部を、中央部よりも肌側へより高く起立させることができる。それにより、軽失禁パッド1の長手方向Lの中央部において、一対のサイドフラップ10、10における幅方向Wの外側の端部を確実に着用者の股下の肌面に密着させることができる。それに加えて、幅方向Wにおいて、サイドフラップ10の外側の端部は、軽失禁パッド1の最も外側に位置するため、着用者の体勢等によって排泄口が中央部から外れても、一対のサイドフラップ10、10の両外側の両端部間にほぼ収めることができる。更に、起立したサイドフラップ10の幅方向Wの外側の端部が内側に寄ってしまう、あるいは、サイドフラップなどが十分に起立しないといったことも生じ難くすることができる。それにより、排泄物が幅方向Wの外側に放出され、あるいは、防漏壁を越えてしまい、軽失禁パッド1の外側へ漏れる、ということを確実に抑制できる。
【0061】
更に、長手方向Lの中央部において、幅方向Wでは、一対のエンボス部5、5部間の長さdが比較的短い。そのため、軽失禁パッド1が着用されたとき、エンボス部5よりも内側の部分、及び、吸収体4の端縁4eよりも外側の部分は起立するが、エンボス部5よりも外側で吸収体4の端縁4eよりも内側の部分Pはあまり起立しない。したがって、吸収体4の高吸収性ポリマー20の量が多く吸収速度が相対的に遅い場合でも、中央部から流れ出た排泄液を、吸収体4により吸収が終了する前に、部分Pの領域に一時的に貯留することができる。この場合での部分Pを含む領域の幅は、エンボス部5の内側及び外側の部分が直ちに起立する場合で領域の幅と比較して広い。このように部分Pを含む領域の幅を広く取ることで、その領域に留まる排泄物の液面を低く抑えることができ、排泄時に液面が肌に触れて着用者が不快感を覚えることを抑制できる。
【0062】
本実施の形態では、好ましい態様として、軽失禁パッド1では、表面シート2及び裏面シート3が長手方向Lの中央部(股間部MP)が幅方向Wに括れて、一対のサイドフラップ10、10が括れの幅方向Wの両外側を覆うように一対のサイドシート7、7で形成されている。すなわち、一対のサイドフラップ10、10の大部分が表面シート2及び裏面シート3を含まずに一対のサイドシート7、7で形成されている。したがって、一対のサイドフラップ10、10を相対的に薄くすること、すなわち低剛性にすることができる。それにより、一対のサイドフラップ10、10を、肌側へより容易に起立させることができると共に、一対のサイドフラップ10、10の外側の端縁10eを着用者の股下の肌面により容易に密着させることができる。よって、排泄物が幅方向Wの外側に放出され、あるいは、防漏壁を越えてしまい、軽失禁パッド1の外側へ漏れる、ということをより確実に抑制できる。
【0063】
本実施の形態では、好ましい態様として、軽失禁パッド1では、軽失禁パッド1を下着に固定するための粘着部9が、平面視で幅方向Wにおける吸収体4の両端縁4e、4eの各々の内側に位置し、外側に位置しない。すなわち、吸収体4の端縁4eから当該端縁4eに対向するサイドフラップ10の外側の端縁10eまでの部分を、粘着部で下着に固定させない。それゆえ、軽失禁パッド1における吸収体4の両端縁4e、4eから外側の部分(一対のサイドフラップ10、10を含む)を、肌側へより容易に起立させることができる。それにより、一対のサイドフラップ10、10の外側の端部を着用者の股下の肌面に確実に密着させることができる。よって、排泄物が幅方向の外側に放出され、あるいは、防漏壁を越えてしまい、軽失禁パッド1の外側へ漏れる、ということをより確実に抑制できる。
【0064】
本実施の形態では、好ましい態様として、軽失禁パッド1は吸収性コア4aとコアラップ4bを備え、吸収性コア4aは、高吸収性ポリマーを含み、パルプ繊維を含まない。そのため、吸収性コア4aにパルプ繊維を含む場合と比較して、吸収体4の厚さを薄くすることができる。したがって、吸収体4、延いては軽失禁パッド1を変形し易くすることができる。それにより、一対のエンボス部5、5の幅方向Wの内側において、軽失禁パッド1の中央部を容易に肌側に隆起させることができ、液体の排泄物をその中央部により吸収させることができる。
【0065】
本実施の形態では、好ましい態様として、軽失禁パッド1では、吸収体4の中心部の厚みが5mm以内であり、比較的薄い。そのため、吸収体4、延いては軽失禁パッド1をより変形し易くすることができる。それゆえ、一対のエンボス部5,5の幅方向Wの内側において、軽失禁パッド1の中央部をより容易に肌側に隆起させることができ、液体の排泄物をその中央部により吸収させることができる。
【0066】
本実施の形態では、好ましい態様として、軽失禁パッド1では、一対のエンボス部5、5が、長手方向Lの中央部(股間部MP)において互いに近接するように窄まった形状を有している。すなわち、装着時に幅方向Wの両側に位置する両足の外形に沿った形状を有している。そのため、幅方向Wの両側から両足に挟まれたとき、一対のエンボス部5、5の内側において、幅方向Wの中央部(排泄口当接域XA)を容易に肌側に隆起させることができると共に、吸収体4の両端縁の各々から外側の部分(一対のサイドフラップ10、10を含む)を肌側へ容易に起立させることができる。
【0067】
本実施の形態では、好ましい態様として、軽失禁パッド1では、吸収体4が、長手方向Lの中央部が窄まった形状を有している。すなわち、装着時に幅方向Wの両側に位置する両足の外形に沿った形状を有している。そのため、幅方向Wの両側から両足に挟まれたとき、吸収体4の両端縁4e、4eの各々から外側の部分(一対のサイドフラップ10、10を含む)を肌側へ容易に起立させることができる。
【0068】
本実施の形態では、好ましい態様として、軽失禁パッド1では、サイドフラップ10における伸縮可能な領域の長手方向Lの長さが、エンボス部5における長手方向Lの長さよりも短い。例えば、サイドフラップ10に含まれる第1弾性体11(及び第2弾性体12)の長さが、エンボス部5の長さよりも短い。そのため、軽失禁パッド1における長手方向Lのエンボス部5よりも両外側の前方部FP及び後方部RPを、サイドフラップ10による伸縮及びエンボス部5による変形の影響を受け難くすることができる。したがって、軽失禁パッド1における前方部FP及び後方部RPを比較的平坦な状態にすることができる。それにより、軽失禁パッド1における前方部FP及び後方部RPを身体に密着させることができ、長手方向Lの排泄物の漏れを抑制することができる。
【0069】
本実施の形態では、好ましい態様として、軽失禁パッド1では、サイドフラップ10が、長手方向Lに延び、幅方向Wの外側に位置する第1弾性体11と、幅方向Wの内側に位置する第2弾性体12と、を含んでいる。それゆえ、図3に示すように、第1弾性体11及び第2弾性体12の伸縮によりサイドフラップ10が肌側へ起立するとき、サイドフラップ10における第1弾性体11の部分だけでなく、第2弾性体12の部分も着用者の股下の肌面に密着させることができる。すなわち、サイドフラップ10における第1弾性体11及び第2弾性体12により形成される面状の部分10fを着用者の股下の肌面に密着させることができる。それにより、幅方向Wの外側に排泄物が放出され、漏れることをより確実に抑制できる。
【0070】
本実施の形態では、好ましい態様として、軽失禁パッド1では、表面シート2が、長手方向Lに延び、幅方向Wに並んだ凹凸構造を備えている(図示されず)。そのため、幅方向Wの中央部(股間部MP)が一対のエンボス部5、5を起点として長手方向Lに沿って肌側により容易に隆起することができ、かつ、幅方向Wの吸収体4の両端縁4e、4eから外側の部分(一対のサイドフラップを含む)を長手方向Lに沿って肌側へより容易に起立させることができる。それにより、排泄口に密着することができ、液体の排泄物をより吸収することができる。
【0071】
本実施の形態では、好ましい態様として、軽失禁パッド1では、サイドフラップ10を形成するサイドシート7が伸張倍率1.1~1.5倍のシートで形成されている。そのため、サイドフラップ10を長手方向Lに、より伸縮し易くすることができる。そのサイドフラップ10の伸縮により、軽失禁パッド1における吸収体4の両端縁4e、4eから外側の部分及び当該部分に隣接する一対のサイドフラップを肌側へより容易に起立させることができる。
【0072】
図4は、吸収体4の構成を示す平面図である。
本実施の形態における好ましい態様として、吸収体4の幅方向Wの中心における長手方向Lの長さALを100%としたとき、一対のエンボス部5、5の各々における長手方向Lの長さE1Lは、35~85%が好ましく、40~80%がより好ましい。それにより、軽失禁パッド1における長手方向Lのエンボス部5よりも両外側の前方部FP及び後方部RPについては、サイドフラップ10による伸縮及びエンボス部5による変形の影響をより受け難くでき、身体に、より密着させることができる。一方、軽失禁パッド1における長手方向Lのエンボス部5の位置する中央部(股間部MP)については、幅方向Wの中央部を肌側に、より容易に隆起させ、吸収体4の両端縁から外側の部分(一対のサイドフラップを含む)を肌側へ、より容易に起立させることができる。
【0073】
本実施の形態における好ましい態様として、吸収体4の長手方向Lの中心における幅方向Wの長さAWを100%としたとき、一対のエンボス部5、5おいて、長手方向Lの中心同士における幅方向Wの距離E1Waは20~50%であり、長手方向Lの端縁同士における幅方向Wの距離E1Wbは35~95%であることが好ましい。距離E1Waは25~45%がより好ましく、距離E1Wbは、40~90%がより好ましい。それにより、幅方向Wの両側から両足に挟まれたとき、一対のエンボス部5、5の内側の、幅方向Wの中央部を肌側に、より容易に隆起させることができると共に、吸収体4の両端縁4e、4eの各々から外側の部分(一対のサイドフラップを含む)を肌側へ、より容易に起立させることができる。
【0074】
本実施の形態では、好ましい態様として、軽失禁パッド1では、一対のエンボス部5、5が、長手方向Lに間欠的に位置する複数の熱融着部5tを有し、各熱融着部5tはパルプ繊維を含んでいない。このように、熱融着部5tは、熱融着され難い吸収性材料であるパルプ繊維を含まずに形成される、すなわち熱融着され易い熱融着性繊維で作製された表面シート2やコアラップ4bで形成される。そのため熱融着部5tによる接着強度を強くすることができ、熱融着部5tを剥がれ難い状態にできる。よって熱融着部を長手方向Lに沿って連続的に溝状に形成する必要はなく、間欠的に形成された複数の熱融着部5tの間の領域を介して排泄物を広く拡散できる。また接着強度を高めるため熱融着部を軽失禁パッドに広く配置する必要はない。
【0075】
排泄物(例示:尿)は、軽失禁パッド1の中心部付近(排泄口当接域XA)に排泄され、まず、幅方向Wの一対のエンボス部5、5に到達する。その場合、幅方向Wにおいて、吸収体4による排泄物の吸収の初期、例えば1回目の排泄物の吸収のときには、幅方向Wへ拡散する排泄物を、熱融着部5tで塞き止めることができる。そして、塞き止められた排泄物を、高吸収性ポリマー20が存在する、隣り合う熱融着部5t、5tの間の領域、すなわち非熱融着部5sに誘導できる。それにより、非熱融着部5sに排泄物を流通させることができる。そして、非熱融着部5sを流通した排泄物、すなわち排泄物を、一対のエンボス部5、5よりも幅方向Wの外側の吸収体4へ誘導できる。それにより、その排泄物を、その外側の吸収体4で吸収できる。
【0076】
高吸収性ポリマー20が存在する、隣り合う熱融着部5t、5tの間の領域、すなわち非熱融着部5sを排泄物が流通するに連れて、非熱融着部5sに存在する高吸収性ポリマー20が排泄物を吸収し、徐々に膨潤する。その結果、やがて高吸収性ポリマー20は膨潤した高吸収性ポリマー20となり、高吸収性ポリマー20が非熱融着部5sを排泄物が流通困難になるよう閉塞する。したがって、後の吸収体4による排泄物の吸収、例えば2回目の排泄物の吸収のときには、排泄物は、複数の熱融着部5tと、隣り合う熱融着部5t、5tの間の領域である非熱融着部5sに存在する高吸収性ポリマー20とにより塞き止められる。その結果、排泄物を、一対のエンボス部5、5よりも幅方向Wの外側へ拡散できなくすることができる。それにより、排泄物を、吸収に余裕のある長手方向Lの前方及び後方へ拡散させることができる。また、排泄物が、一対のエンボス部5、5よりも幅方向Wの外側へ拡散しすぎて、幅方向Wの外側に漏れることを防止できる。
【0077】
このように、吸収体において、排泄物を、初期的には主に幅方向Wの領域に誘導し、その後に主に長手方向Lの領域に誘導して、すなわち幅方向W及び長手方向Lにおける広い範囲に誘導して、吸収することができる。それにより、吸収体4を全体的に効率良く使用することが可能となる。その結果、例えば複数回の排泄など、排泄物の量が多い場合でも、排泄物が吸収しきれずに漏れることを防止できる。
【0078】
本発明の吸収性物品は、上述した各実施の形態に制限されることなく、本発明の目的、趣旨を逸脱しない範囲内において、適宜組合せや変更等が可能である。
【符号の説明】
【0079】
1 軽失禁パッド(吸収性物品)
2 表面シート
4 吸収体
5 エンボス部
10 サイドフラップ
図1
図2
図3
図4