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特許7357600試験測定プローブ・システム及びAC成分及びLF成分抽出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-28
(45)【発行日】2023-10-06
(54)【発明の名称】試験測定プローブ・システム及びAC成分及びLF成分抽出方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 13/20 20060101AFI20230929BHJP
   G01R 19/00 20060101ALI20230929BHJP
【FI】
G01R13/20 F
G01R19/00 K
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020501529
(86)(22)【出願日】2018-07-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-09-10
(86)【国際出願番号】 US2018042134
(87)【国際公開番号】W WO2019014622
(87)【国際公開日】2019-01-17
【審査請求日】2021-06-24
(31)【優先権主張番号】62/532,765
(32)【優先日】2017-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391002340
【氏名又は名称】テクトロニクス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】TEKTRONIX,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(74)【代理人】
【識別番号】110001209
【氏名又は名称】特許業務法人山口国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・ジェイ・メンデ
【審査官】田口 孝明
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-544250(JP,A)
【文献】特表2011-505568(JP,A)
【文献】特開平06-197019(JP,A)
【文献】特公昭46-024161(JP,B1)
【文献】特開2015-040858(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102062797(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103884895(CN,A)
【文献】独国特許出願公開第102015203651(DE,A1)
【文献】特許第5432651(JP,B2)
【文献】米国特許第05034698(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0372779(US,A1)
【文献】特開昭54-080782(JP,A)
【文献】特許第4602416(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G01R 19/00-19/32、
13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流(DC)成分及び交流(AC)成分を有する入力信号を受ける入力部と、
上記入力信号を受けて上記入力信号から上記AC成分及び上記DC成分を分離する抽出回路であって、反転入力端子と出力端子の間が第1フィードバック・ループで結合されて上記出力端子に上記DC成分を反転した反転DC成分を生成する差動増幅器を有する上記抽出回路と、
上記差動増幅器の上記出力端子と上記入力部との間を結合して上記反転DC成分を上記入力信号に加えるための第2フィードバック・ループと、
試験測定装置に上記AC成分を出力する第1出力部と、
上記試験測定装置に上記反転DC成分を出力する第2出力部と
を具える試験測定プローブ・システム。
【請求項2】
上記反転DC成分を受けて、該反転DC成分をデジタル化してデジタル化反転DC成分に変換するアナログ・デジタル・コンバータを更に具えるよう構成される請求項1の試験測定プローブ・システム。
【請求項3】
上記デジタル化反転DC成分をデジタル的に反転させて、上記DC成分に対応するデジタル化DC成分を生成するデジタル処理回路を更に具えるよう構成される請求項2の試験測定プローブ・システム。
【請求項4】
バッファを更に具え、該バッファは、上記反転DC成分を受けて、上記第2出力部を通して上記反転DC成分を出力するよう構成される請求項1の試験測定プローブ・システム。
【請求項5】
上記反転DC成分を受けて、アイソレーションされた反転DC成分を上記第2出力部に出力するアイソレーション・デバイスを更に具える請求項1の試験測定プローブ・システム。
【請求項6】
低周波数(LF)成分と交流電流(AC)成分とを含む入力信号を試験測定プローブ・システムの入力部で受ける処理と、
反転入力端子と出力端子の間が第1フィードバック・ループで結合された差動増幅器の上記反転入力端子で上記入力信号を受けて上記出力端子に上記LF成分を反転した反転LF成分を生成する処理と、
上記差動増幅器の上記出力端子と上記入力部との間に結合された第2フィードバック・ループを通して上記反転LF成分を上記入力信号に加えることによって、上記入力信号から上記AC成分を抽出する処理と、
第1出力部を介して試験測定装置に上記AC成分を伝送する処理と、
第2出力部を介して試験測定装置に上記反転LF成分を伝送する処理と
を具えるAC成分及びLF成分抽出方法。
【請求項7】
上記反転LF成分をデジタル化してデジタル化反転LF成分に変換する処理を更に具える請求項6のAC成分及びLF成分抽出方法。
【請求項8】
上記デジタル化反転LF成分をデジタル的に反転させて、上記LF成分に対応するデジタル化LF成分を生成する処理を更に具える請求項のAC成分及びLF成分抽出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示発明は、2017年7月14日に出願されたアメリカ合衆国仮特許出願番号第62/532,765号、発明の名称「DC阻止、ACカップリング又はアイソレーション入力部を使用する場合にDC/LF信号成分を測定するためのシステム、装置及び方法」の利益を主張するものであり、言及することにより、その全体が本願に組み込まれる。
【0002】
本開示発明は、試験測定システムに関連するシステム及び方法に関し、特に、入力信号の交流成分と直流や低周波数成分との両方を出力する試験測定プローブ・システム及びAC成分及びLF成分抽出方法に関する。
【背景技術】
【0003】
オシロスコープなどの試験測定装置を使用して、より大きな可変直流(DC)オフセット成分に重ね合わせた低振幅交流(AC)信号を測定するには、通常、AC信号を抽出し、DC又は低周波数(LF)成分を阻止するためにACカップリング(結合)又はDC阻止を利用する必要がある。ACカップリング又はDC阻止は、典型的にはACカップリングされるスペクトラム・アナライザのような試験測定装置と共にプローブを使用する場合にも有用であろう。
【0004】
ACカップリング又はDC阻止回路を使用する場合、DC/LF成分の信号情報は、ブロック又は阻止されることで失われる。しかし、この情報は、例えば、電力解析など、回路の性能の全体的な分析において有用であるか又は必要となる場合がある。従来の試験測定装置を使用すると、DC/LF成分信号情報が失われたので、その結果得られる試験測定装置の自動で実行された測定結果は、DC/LF成分が自動実行された測定結果に反映されていないので、本当の入力信号を正確には表していない。
【0005】
これを改善するために、ユーザは、静的なDCオフセットをなくすために、試験測定装置のプローブのオフセット制御を手動で調整しても良く、これは、自動実行される測定で考慮されることになろう。しかし、このようなやり方は時間がかかり、静的なDC/LF成分だけに、うまく機能することになろう、即ち、これは、ダイナミックなDC/LF成分にはうまく機能しないであろう。更に、プローブのオフセット制御の調整は、試験測定装置の入力オフセット・レンジにも制限され、これは、通常、電圧設定で、特に最も感度の高い垂直ゲイン設定で制限される。
【0006】
この開示発明の実施形態は、従来技術のこれらや他の欠点を解決しようとするものである。
【0007】
本開示発明の実施形態の態様、特徴及び効果は、添付の図面を参照し、以下の実施形態の説明を読むことで明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、開示発明のいくつかの実施形態による直流(DC)阻止回路を有する例示的なシングル・エンドの試験測定プローブ・システムのブロック図である。
図2図2は、開示発明の他の実施形態によるDC阻止回路を有する別の例示的な差動試験測定プローブ・システムのブロック図である。
図3図3は、本開示発明の他の実施形態によるACカップリング回路を用いた別の例示的なシングルエンド試験測定プローブ・システムのブロック図である。
図4図4は、本開示発明の他の実施形態によるDC阻止回路を用いた別の例示的なシングルエンド試験測定プローブ・システムのブロック図である。
図5図5は、本開示発明の他の実施形態によるDC阻止回路を用いた別の例示的な差動試験測定プローブ・システムのブロック図である。
図6図6は、本開示発明の他の実施形態によるACカップリング回路を用いた別の例示的なシングルエンド試験測定プローブ・システムのブロック図である。
図7図7は、本開示発明の他の実施形態によるDC阻止回路を用いた別の例示的なシングルエンドのアイソレーション試験測定プローブ・システムのブロック図である。
図8図8は、本開示発明の他の実施形態によるACカップリング回路を用いた別の例示的なシングルエンドのアイソレーション試験測定プローブ・システムのブロック図である。
図9図9は、本開示発明の他の実施形態によるDC阻止回路を用いた別の例示的なシングルエンドのアイソレーション試験測定プローブ・システムのブロック図である。
図10図10は、本開示発明の他の実施形態によるACカップリング回路を用いた別の例示的なシングルエンドのアイソレーション試験測定プローブ・システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
開示発明の実施形態は、入力信号の小振幅のAC成分に加えて、入力信号のDC/LF成分の両方を測定し、表示する。説明を簡単にするために、入力信号のDC及びLF成分について、一緒に説明する。しかし、以下の実施形態では、DC/LF成分について説明するが、当業者には理解されるように、DC/LF成分は、入力信号のDC及びLF成分の一方又は両方を言及するものであり得る。いくつかの実施形態では、以下でより詳細に説明されるように、これは、入力信号のDC/LF成分を直接又は間接的にデジタル化し、入力信号のDC/LF成分を試験測定装置にデジタル的に伝送することによって行われても良い。分離されるか又は予めブロック(遮断)されたDC/LF成分を、測定結果の一部として含めることやAC成分の表示波形の一部として含めることは、試験測定装置で従来はできていない貴重な情報をユーザに提供する。
【0010】
他の実施形態において、以下でより詳細に説明されるように、入力信号のDC/LF成分は、試験測定装置のチャンネル、又は、試験測定装置のデジタル・マルチメータ入力部のような他の入力部に接続されるよう構成されるターミナル・ポイント(terminal point)に送られても良い。このような実施形態では、ユーザが信号をチャンネルその他の入力部に接続できるように信号のDC/LF成分をバッファリングしてもよい。これらの構成は両方とも、ユーザが、試験測定装置のディスプレイ上で、入力信号の大きなDC/LF成分の上に乗っている入力信号の小振幅のAC成分と、入力信号のもっと大きなDC/LF成分とを別々に見ることを可能にし、被試験回路の動作をより良く理解できるようにする。
【0011】
多数の試験測定プローブ・システムが、図1~10に見られるような本願で説明される実施形態の機能を実行するために提供できる。しかしながら、以下に説明する実施形態は単なる例であり、開示発明は、図1~10に示す例示的な実施形態のみに限定されない。開示発明の実施形態は、ユーザが従来の試験測定プローブを使用して入手してきていない情報を、ユーザの測定及び分析において、ユーザに円滑に(シームレスに)提供する。
【0012】
図1~10は、当業者には理解されるように、以下の説明される実施形態で説明されない、追加のコンデンサ、受信装置、又は他の電気部品のような追加の電気部品を含んでいても良い。
【0013】
図1は、開示発明のいくつかの実施形態による例示的な試験測定プローブ・システムを示すブロック図である。図1は、被試験デバイス(DUT)102に接続されたプローブ・ヘッド100を示す。図1では、プローブ・ヘッド100は、補償ボックス104にも接続されている。しかしながら、当業者には理解できるように、補償ボックス104は、独立したコンポーネントではなくて、プローブ・ヘッド100内に含まれていてもよいし、あるいは、全体は省略し、その内部のコンポーネントをプローブ・ヘッド100内に直接含めるようにしても良い。
【0014】
図1において、プローブ・ヘッド100には、DUT102からの入力信号を受けるシングルエンドのプローブ入力端子106があってもよい。プローブ・ヘッド100には、入力信号を増幅する増幅器108があってもよい。補償ボックス104には、入力信号からAC成分とDC/LF成分を抽出する抽出回路110があってよい。図1の例では、抽出回路110は、DC阻止回路である。補償ボックス104には、また、DC阻止イネーブル・スイッチ112があり、これは、抽出回路110(これは、本願では、図1に関して、DC阻止回路と呼ばれることもある)をイネーブルする場合に閉じられる。
【0015】
このDC阻止回路110には、差動増幅器114とコンデンサ116とがあり、DC阻止回路110に局部的なフィードバックと安定性を与え、入力信号の反転DC/LF成分を出力する。DC/LF成分の反転成分は、オフセット制御ライン120を介してプローブ・ヘッド100に送信され、入力信号に加算されてDC/LF成分を除去し、このため、AC成分のみが増幅器108によって増幅されて出力端子118へ送られる。出力端子118は、試験測定装置のチャンネルに接続されることがある。
【0016】
DC/LF成分の反転成分は、アナログ・デジタル・コンバータ(ADC)122にも送られ、これをプロセッサ124によって更に処理し、例えば、試験測定装置への通信インタフェース(図示せず)へ出力して、デジタル的にDC/LF成分を試験測定装置に伝送する前に、信号の反転成分を反転しても良い。当業者には理解できるように、通信インタフェースは、例えば、ユニバーサル・シリアル・バス(USB)又はI2C(inter-integrated circuit)バスのような有線若しくは無線の通信機構又はこれらの任意の組み合わせであっても良い。
【0017】
試験測定装置は、先に説明したように、DC/LF成分を測定結果の一部として含むか、AC成分の表示波形の一部として含むように、AC成分とDC/LF成分の両方を別々に受けても良い。
【0018】
図2~10は、図1に示す実施形態の様々な代替を提供する。このため、図2~10と図1の間の違いのみを説明することとするが、当業者であれば、図1の特徴と効果が、図2~10に示された実施形態の夫々に当てはまることがわかるであろう。
【0019】
図2は、開示発明の他の実施形態による別の例示的な試験測定プローブ・システムを示すブロック図である。図2に示すプローブ・システムには、図1の補償ボックス104に類似した補償ボックス104があっても良く、よって、類似のコンポーネントには同じ参照番号を付与し、図2に関して更になる説明は行わない。
【0020】
図2では、プローブ・ヘッド200は、DUT202から差動信号対を受ける差動入力プローブ・ヘッドとしてもよい。プローブ・ヘッド200には、DUT202からの差動信号対の一方を受ける第1入力端子204と、DUT202からの差動信号対の他方を受ける第2入力端子206がある。差動増幅器208は、入力端子204及び206からの差動信号対を受け、差動信号対間の差分を出力端子118に出力する。DC/LF成分の反転成分は、プローブ100と同様のオフセット制御ライン120を介してプローブ200で受信され、差動信号対からDC/LF成分を除去する。スプリッタ210は、相補的なアナログ信号を提供する差動スプリッタ又は差動増幅器のようなもので、オフセット制御ライン120上のDC/LF成分を、差動増幅器の入力端子の夫々で受けて、差動信号対からDC/LF成分を除去するための2つの信号に分割する。
【0021】
図1及び2の両方は、抽出回路110のような抽出回路に関してDC阻止回路の使用を示しているが、いくつかの実施形態では、ACカップリング回路を、入力信号のDC/LF成分を分離する抽出回路として用いてもよい。図3は、上述のDC阻止回路ではなくて、ACカップリング回路302をプローブ・ヘッド300に用いた別の例示的な試験測定プローブ・システムを示すブロック図である。抽出回路302には、コンデンサ304及び306並びに抵抗器308及び310がある。入力端子312からの入力信号は、コンデンサ304に送られるが、これは、入力信号のAC成分のみ、コンデンサ304を通過可能とし、これが、増幅器314を通って、出力端子118と同様の出力端子316に送られる。
【0022】
また、AC成分は、コンデンサ306を通過し、残るDC/LF成分は、ADC318によってデジタル化される。補償ボックス320には、図1及び2に示し、上述した試験測定プローブ・システムと同様に、通信インタフェースに出力される前に、DC/LF成分を更に処理するプロセッサ322があっても良い。
【0023】
ACカップリング回路302及びDC阻止回路11の両方に関して低周波数の遮断(カットオフ)は、典型的には7Hz未満であるので、正確に測定を行えるようにADCが校正されていれば、低速で8ビットより大きいADCを、ADCを有する上述の様々な試験測定プローブ・システムで利用しても良い。しかし、10ビット、12ビット、14ビット、16ビット、又は、もっと大きいビット分解能のADCを用いて、信号のDC/LF成分の高い精度と正確さを達成しても良く、このため、実施形態によっては、もっと高い分解能のADCが好ましいこともある。
【0024】
当業者には理解されるように、ADCを用いる上述の全ての実施形態において、DC/LF信号パスのデジタル化の結果に対してアナログ信号パスを正規化するために、信号パスのスケーリング(振幅の増減調整)を行うことが必要となることがある。
【0025】
いくつかの実施形態では、図1~3に示すように、補償ボックス104やプローブ・ヘッド300において入力信号のDC/LF成分をデジタル化するのではなく、入力信号のアナログのDC/LF成分を試験測定装置に送って、試験測定装置のディスプレイ上で表示しても良い。これら実施形態では、詳しくは後述のように、ユーザが、別個の試験測定装置のチャンネル又はデジタル・マルチメータ入力部に、アナログDC/LF成分を送信するパスを接続できるようにバッファを使用しても良い。
【0026】
例えば、図4は、図1の試験測定プローブ・システムに類似する試験測定プローブ・システムを示すブロック図である。実際、図4のプローブ・ヘッド100は、図1のプローブ・ヘッド100と同じであり、このため、図4に関して、更に詳細な説明は行わない。また、同様のコンポーネントには同じ参照番号を付与し、図4に関して、更なる説明は行わない。
【0027】
プローブ・ヘッド100は、補償ボックス400と組み合わせてもよい。図4では、ADC122によってDC/LF成分をデジタル化し、通信インタフェースを介してDC/LF成分を送信するのではなくて、アナログDC/LF成分を出力端子404を通して送信する前に、バッファ402にバッファリングして、ユーザが、別個の試験測定装置のチャンネル又は試験測定装置のデジタル・マルチメータ入力部へとDC/LF成分を伝送するパスを接続する時間を持てるようにする。試験測定装置は、次いで、当業者には理解されるように、DC/LF成分を更に処理しても良い。
【0028】
図5は、DUT202から差動入力信号が供給されることを除けば、図4と類似する。即ち、プローブ・ヘッド200は、補償ボックス400と組み合わせても良く、このため、オフセット制御ライン120上のDC/LF成分は、出力端子404を介して独立した試験測定装置のチャンネルへと送られる前に、デジタル化されるのではなく、バファリングされても良い。
【0029】
最後に、バッファは、図6のプローブ・ヘッド600が示すように、プローブ・ヘッドにおいてACカップリング回路302が使用される場合にも使用して良い。プローブ・ヘッド600は、プローブ・ヘッド300と同様であり、従って同様のコンポーネントには同じ参照番号を付与し、図6に関して、本願では更なる説明は行わない。プローブ・ヘッド600では、プローブ・ヘッド300で行われたようにDC/LF成分をデジタル化するのではなく、図4及び5と同様に、DC/LF成分をバッファ602に送ってもよい。補償ボックス604は、プローブ・ヘッド600に接続され、また、アナログDC/LF成分を試験測定装置に送信する出力端子606に加えて、出力端子316を有していても良い。
【0030】
上述した種々の実施形態において、ACカップリング回路302は、入力信号のDC/LF成分の極(R1C1)とDC/LFデジタル化信号パスの高周波数の極(R2C2)とのマッチング(整合回路)を含んでも良い。
【0031】
実施形態によっては、図7~10に見られるように、アイソレーションされた試験測定プローブ・システムを実現しても良い。DC/LF成分をアイソレーションすると、従来のアイソレーション構造に比べて、ノイズが少なくなり、コストが低くなる可能性がある。図7~10に示す実施形態は、上述のいくつかの実施形態と類似している。
【0032】
図7は、DC阻止回路110とADC122を有するプローブ・ヘッド700を含むアイソレーションされた試験測定プローブ・システムを示すブロック図である。即ち、プローブ・ヘッド700は、図1のプローブ・ヘッド100と補償ボックス104の多くのコンポーネントを1つのプローブ・ヘッド700に組み合わせている。このため、同様のコンポーネントには、同様の参照番号を付与し、図7に関して詳細な説明は行わない。プローブ・ヘッド700は、補償ボックス702に接続され、これは、アイソレーションされた通信バス704を有していても良い。デジタル化されたDC/LF成分は、アイソレーション通信バス704に送られても良い。アイソレーション通信バス704からの出力信号は、プロセッサ124で更に処理され、次いで、図1と同様に、通信インタフェースに出力されても良い。当業者には理解できるように、同様の補償ボックス70を、図2と同様の差動プローブ・ヘッドと共に用いても良いが、これは、図1のようなDC阻止回路及びADCを有している。
【0033】
アイソレーション出力信号は、図8に示すように、ACカップリング回路302と共に利用されても良い。図8のアイソレーション試験測定プローブ・システムにおいて、図3に関して上述したプローブ・ヘッド300が補償ボックス800に接続される。補償ボックス800は、ADC318からデジタル化されたDC/LF成分を受けるアイソレーション通信バス802を有し、これは、図7に関して上述したものと同様である。即ち、図8のアイソレーション試験測定プローブ・システムは、アイソレーションされた出力信号を供給することを除けば、図3に示す試験測定プローブ・システムと動作が同様である。
【0034】
アイソレーション試験測定プローブ・システムも、図及びに示すような、デジタル化されたDC/LF成分に限定されない。アイソレーション試験測定プローブ・システムも、図9及び図10に示すような、アイソレーションされたアナログのDC/LF成分を出力することが含まれて良い。
【0035】
図9のプローブ・ヘッド900には、DC阻止回路110とバッファ402がある。DC/LF成分は、バッファ402から、補償ボックス902のアナログ・アイソレーション904に送られ、出力端子04に出力される。即ち、図9のアイソレーション試験測定プローブ・システムは、アイソレーションされた出力信号が提供される以外は、図に示す試験測定プローブ・システムと動作が同様である。図と同様に、差動アンプ208を用いて差動入力信号で、同様の形式のアイソレーション試験測定プローブ・システムを使用しても良い。
【0036】
図10は、プローブ・ヘッド600でDC/LF成分をデジタル化しない別のアイソレーション試験測定プローブ・システムを示す。即ち、図6のプローブ・ヘッド600は、図9の補償ボックス902と組み合わせて、試験測定装置にアイソレーションされたDC/LF成分を出力できる。
【0037】
当業者であれば理解されるであろうし、様々な実施形態で先に説明したように、異なるプローブ・ヘッド及び補償ボックスは、シングルエンド入力信号又は差動信号対のような受けた入力信号の種類、望ましい抽出回路や出力時間に応じて様々な組み合わせで接続されても良い。しかしながら、実施形態の夫々には、入力信号をそのDC/LF成分とAC成分とに分離する処理と、各成分を試験測定装置に別々に出力する処理とがある。これにより、試験測定システムは、AC成分を円滑(シームレス)に分析し、従来のACカップリング又はDC阻止回路を使用して、以前よりも多くの情報をユーザに表示できる。
【0038】
本開示発明の態様は、特別に作成されたハードウェア、ファームウェア、デジタル・シグナル・プロセッサ又はプログラムされた命令に従って動作するプロセッサを含む特別にプログラムされた汎用コンピュータ上で動作できる。本願における「コントローラ」又は「プロセッサ」という用語は、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、ASIC及び専用ハードウェア・コントローラ等を意図する。本開示発明の態様は、1つ又は複数のコンピュータ(モニタリング・モジュールを含む)その他のデバイスによって実行される、1つ又は複数のプログラム・モジュールなどのコンピュータ利用可能なデータ及びコンピュータ実行可能な命令で実現できる。概して、プログラム・モジュールとしては、ルーチン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、データ構造などを含み、これらは、コンピュータその他のデバイス内のプロセッサによって実行されると、特定のタスクを実行するか、又は、特定の抽象データ形式を実現する。コンピュータ実行可能命令は、ハードディスク、光ディスク、リムーバブル記憶媒体、ソリッド・ステート・メモリ、RAMなどのコンピュータ可読記憶媒体に記憶しても良い。当業者には理解されるように、プログラム・モジュールの機能は、様々な実施例において必要に応じて組み合わせられるか又は分散されても良い。更に、こうした機能は、集積回路、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)などのようなファームウェア又はハードウェア同等物において全体又は一部を具体化できる。特定のデータ構造を使用して、本発明の1つ以上の態様をより効果的に実施することができ、そのようなデータ構造は、本願に記載されたコンピュータ実行可能命令及びコンピュータ使用可能データの範囲内と考えられる。
【0039】
開示された態様は、場合によっては、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア又はそれらの任意の組み合わせで実現されても良い。開示された態様は、1つ以上のプロセッサによって読み取られ、実行され得る1つ又は複数のコンピュータ可読媒体によって運搬されるか又は記憶される命令として実現されても良い。そのような命令は、コンピュータ・プログラム・プロダクトと呼ぶことができる。本願で説明するコンピュータ可読媒体は、コンピューティング装置によってアクセス可能な任意の媒体を意味する。限定するものではないが、一例としては、コンピュータ可読媒体は、コンピュータ記憶媒体及び通信媒体を含むことができる。
【0040】
コンピュータ記憶媒体は、コンピュータ読み取り可能な情報を記憶するために使用することができる任意の媒体を意味する。限定するものではないが、例としては、コンピュータ記憶媒体としては、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、電気消去可能プログラマブル読み出し専用メモリ(EEPROM)、フラッシュメモリやその他のメモリ技術、コンパクト・ディスク読み出し専用メモリ(CD-ROM)、DVD(Digital Video Disc)やその他の光ディスク記憶装置、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク記憶装置やその他の磁気記憶装置、及び任意の技術で実装された任意の他の揮発性又は不揮発性の取り外し可能又は取り外し不能の媒体を含んでいても良い。コンピュータ記憶媒体としては、信号そのもの及び信号伝送の一時的な形態は排除される。
【0041】
通信媒体は、コンピュータ可読情報の通信に利用できる任意の媒体を意味する。限定するものではないが、例としては、通信媒体には、電気、光、無線周波数(RF)、赤外線、音又はその他の形式の信号の通信に適した同軸ケーブル、光ファイバ・ケーブル、空気又は任意の他の媒体を含むことができる。
実施例
【0042】
以下では、本願で開示される技術の理解に有益な実施例が提示される。この技術の実施形態は、以下で記述する実施例の1つ以上及び任意の組み合わせを含んでいても良い。
【0043】
実施例1は、試験測定プローブ・システムであって、直流(DC)成分及び交流(AC)成分を有する入力信号を受ける入力部と、上記入力信号を受けて上記入力信号から上記AC成分及び上記DC成分を分離する抽出回路と、試験測定装置に上記AC成分を出力する第1出力部と、上記試験測定装置に上記DC成分を出力する第2出力部とを具えている。
【0044】
実施例2は、実施例1の試験測定プローブ・システムであって、上記DC成分を受けて、該DC成分をデジタル化DC成分に変換するアナログ・デジタル・コンバータを更に具え、このとき、上記第2出力部が、上記デジタル化DC成分を出力するよう構成される。
【0045】
実施例3は、実施例1又は2のいずれかの試験測定プローブ・システムであって、バッファを更に具え、該バッファは、上記DC成分を受けて、上記第2出力部を通して上記DC成分を出力するよう構成される。
【0046】
実施例4は、実施例1~3のいずれかの試験測定プローブ・システムであって、このとき、上記抽出回路は、上記入力信号を受けて上記DC成分を出力するよう構成されるDC阻止回路である。
【0047】
実施例5は、実施例4の試験測定プローブ・システムであって、このとき、上記DC成分は、上記AC成分を分離するために、上記入力信号にフィードバックされるフィードバック信号である。
【0048】
実施例6は、実施例1~3のいずれかの試験測定プローブ・システムであって、上記抽出回路には、ACカップリング回路がある。
【0049】
実施例7は、実施例1~6のいずれかの試験測定プローブ・システムであって、このとき、上記入力信号としては、差動信号がある。
【0050】
実施例8は、実施例1~7のいずれかの試験測定プローブ・システムであって、このとき、上記第1出力部は、上記試験測定装置の第1チャンネルに接続され、上記第2出力部は、上記第1チャンネルとは異なる上記試験測定装置の第2チャンネルに接続される。
【0051】
実施例9は、実施例1~8のいずれかの試験測定プローブ・システムであって、更に、上記DC成分を受けて、アイソレーションされたDC成分を上記第2出力部に出力するアイソレーション・デバイスを具える。
【0052】
実施例10は、実施例1~9のいずれかの試験測定プローブ・システムであって、このとき、上記第2出力部は、上記試験測定装置のデジタル・マルチメータ入力部に接続される。
【0053】
実施例11は、低周波数(LF)成分と交流電流(AC)成分とを含む入力信号を受ける処理と、上記入力信号から上記LF成分を抽出する処理と、上記入力信号から上記AC成分を抽出する処理と、第1出力部を介して試験測定装置に上記AC成分を伝送する処理と、第2出力部を介して試験測定装置に上記LF成分を伝送する処理とを具える方法である。
【0054】
実施例12は、実施例11の方法であって、更に、上記LF成分をデジタル化LF成分に変換する処理を具え、上記LF成分を伝送する処理が、上記デジタル化LF成分を伝送する処理を含む。
【0055】
実施例13は、実施例11又は12のいずれかの方法であって、更に、上記試験測定装置のデジタル・マルチメータ入力部に上記LF成分を伝送する処理を含む。
【0056】
実施例14は、実施例1~13のいずれかの方法であって、上記LF成分の上記第2出力部を介した伝送を遅延させるために、上記LF成分をバッファリングする処理を更に具える。
【0057】
実施例15は、実施例11~14のいずれかの方法であって、上記入力信号から上記LF成分を抽出する処理及び上記入力信号から上記AC成分を抽出する処理は、DC阻止回路によって上記LF成分を上記入力信号に加算して上記AC成分を抽出することによって、上記LF成分と上記AC成分を抽出する処理を含む。
【0058】
実施例16は、実施例11~15のいずれかの方法であって、上記入力信号から上記LF成分を抽出する処理及び上記入力信号から上記AC成分を抽出する処理は、ACカップリング(結合)回路によって上記LF成分及び上記AC成分を抽出する処理を含む。
【0059】
実施例17は、実施例11~16のいずれかの方法であって、上記第2出力部は、通信インタフェースである。
【0060】
実施例18は、実施例11~17のいずれかの方法であって、このとき、上記第1出力部を介して上記試験測定装置に上記AC成分を伝送する処理は、上記第1出力部を介して上記AC成分を試験測定装置の第1チャンネルに送信する処理を含み、上記第2出力部を介して上記試験測定装置に上記LF成分を伝送する処理は、上記第2出力部を介して上記LF成分を上記第1チャンネルと異なる上記試験測定装置の第2チャンネルに伝送する処理を含む。
【0061】
実施例19は、実施例11~18のいずれかの方法であって、上記LF成分を伝送する前に、上記LF成分をアイソレーションする処理を更に具える。
【0062】
実施例20は、実施例11~19のいずれかの方法であって、上記入力信号の上記AC成分及び上記LF成分を同時に表示する処理を更に具えている。
【0063】
開示された主題の上述のバージョンは、記述したか又は当業者には明らかであろう多くの効果を有する。それでも、開示された装置、システム又は方法のすべてのバージョンにおいて、これらの効果又は特徴のすべてが要求されるわけではない。
【0064】
加えて、本願の記述は、特定の特徴に言及している。本明細書における開示には、これらの特定の特徴の全ての可能な組み合わせが含まれると理解すべきである。ある特定の特徴が特定の態様又は実施例の状況において開示される場合、その特徴は、可能である限り、他の態様及び実施例の状況においても利用できる。
【0065】
また、本願において、2つ以上の定義されたステップ又は工程を有する方法に言及する場合、これら定義されたステップ又は工程は、状況的にそれらの可能性を排除しない限り、任意の順序で又は同時に実行しても良い。
【0066】
説明の都合上、本発明の具体的な実施例を図示し、説明してきたが、本発明の要旨と範囲から離れることなく、種々の変更が可能なことが理解できよう。従って、本発明は、添付の特許請求の範囲を除いて限定されるべきではない。
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