(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-28
(45)【発行日】2023-10-06
(54)【発明の名称】基板処理方法、半導体装置の製造方法、基板処理装置、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
H01L 21/316 20060101AFI20230929BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20230929BHJP
C23C 16/40 20060101ALI20230929BHJP
C23C 16/455 20060101ALI20230929BHJP
【FI】
H01L21/316 X
H01L21/31 B
C23C16/40
C23C16/455
(21)【出願番号】P 2022127071
(22)【出願日】2022-08-09
(62)【分割の表示】P 2020159426の分割
【原出願日】2020-09-24
【審査請求日】2022-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100091362
【氏名又は名称】阿仁屋 節雄
(72)【発明者】
【氏名】清水 富介
(72)【発明者】
【氏名】永戸 雅也
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 貴志
(72)【発明者】
【氏名】橋本 良知
(72)【発明者】
【氏名】原田 勝吉
【審査官】長谷川 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-058489(JP,A)
【文献】特開2019-062074(JP,A)
【文献】特表2017-531920(JP,A)
【文献】特開2014-183219(JP,A)
【文献】特開2008-135633(JP,A)
【文献】特表2019-503590(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/316
H01L 21/31
C23C 16/40
C23C 16/455
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)(a1)基板に対して、原子Xに第1官能基と第2官能基とが直接結合した部分構造を有する原料であって、前記第1官能基と前記原子Xとの結合エネルギーが前記第2官能基と前記原子Xとの結合エネルギーよりも高い原料を供給し、前記原子Xに前記第1官能基が結合した成分を含む第1層を形成する工程と、(a2)前記基板に対して、第1酸化剤を供給し、前記第1層を酸化させて、前記原子Xおよび酸素を含む第2層を形成する工程と、を非同時に行うサイクルをn
1回(n
1は1以上の整数)行い、前記原子Xを含む第1酸化膜を形成する工程と、
(b)(b1)前記基板に対して、前記原料を供給し、前記原子Xに前記第1官能基が結合した成分を含む第3層を形成する工程と、(b2)前記基板に対して、第2酸化剤を供給し、前記第3層を、前記第1層を酸化させる際の酸化力よりも高い酸化力にて、酸化させて、前記原子Xおよび酸素を含む第4層を形成する工程と、を非同時に行うサイクルをn
2回(n
2は1以上の整数)行い、前記原子Xを含む第2酸化膜を形成する工程と、
を交互に所定回数行うことで、前記基板上に、前記第1酸化膜と、前記第2酸化膜と、が交互に積層されてなる酸化膜を形成する工程を有
し、
前記原子Xは4つの結合手を有し、前記原子Xの4つの結合手のうち3つの結合手のそれぞれには前記第1官能基が結合しており、前記原子Xの4つの結合手のうち残りの1つの結合手には前記第2官能基が結合しており、
(a1)および(b1)では、前記原子Xの3つの結合手のそれぞれに前記第1官能基が結合した状態で、前記原子Xが前記基板の表面に吸着する処理条件下で、前記原料を供給する基板処理方法。
【請求項2】
(a)(a1)基板に対して、原子Xに第1官能基と第2官能基とが直接結合した部分構造を有する原料であって、前記第1官能基と前記原子Xとの結合エネルギーが前記第2官能基と前記原子Xとの結合エネルギーよりも高い原料を供給し、前記原子Xに前記第1官能基が結合した成分を含む第1層を形成する工程と、(a2)前記基板に対して、第1酸化剤を供給し、前記第1層を酸化させて、前記原子Xおよび酸素を含む第2層を形成する工程と、を非同時に行うサイクルをn
1
回(n
1
は1以上の整数)行い、前記原子Xを含む第1酸化膜を形成する工程と、
(b)(b1)前記基板に対して、前記原料を供給し、前記原子Xに前記第1官能基が結合した成分を含む第3層を形成する工程と、(b2)前記基板に対して、第2酸化剤を供給し、前記第3層を、前記第1層を酸化させる際の酸化力よりも高い酸化力にて、酸化させて、前記原子Xおよび酸素を含む第4層を形成する工程と、を非同時に行うサイクルをn
2
回(n
2
は1以上の整数)行い、前記原子Xを含む第2酸化膜を形成する工程と、
を交互に所定回数行うことで、前記基板上に、前記第1酸化膜と、前記第2酸化膜と、が交互に積層されてなる酸化膜を形成する工程を有し、
(a1)および(b1)では、前記原料に含まれる前記原子Xから、前記第1官能基が脱離することなく、前記第2官能基が脱離する処理条件であって、前記第2官能基が脱離し前記第1官能基との結合が維持された状態の前記原子Xが前記基板の表面に吸着する処理条件下で、前記原料を供給す
る基板処理方法。
【請求項3】
(a1)および(b1)では、前記第2官能基が脱離し前記第1官能基との結合が維持された状態の前記原子Xの前記基板の表面への吸着が、前記原子Xから脱離した前記第2官能基の前記基板の表面への吸着よりも支配的となる処理条件下で、前記原料を供給する請求項
2に記載の基板処理方法。
【請求項4】
(a)(a1)基板に対して、原子Xに第1官能基と第2官能基とが直接結合した部分構造を有する原料であって、前記第1官能基と前記原子Xとの結合エネルギーが前記第2官能基と前記原子Xとの結合エネルギーよりも高い原料を供給し、前記原子Xに前記第1官能基が結合した成分を含む第1層を形成する工程と、(a2)前記基板に対して、第1酸化剤を供給し、前記第1層を酸化させて、前記原子Xおよび酸素を含む第2層を形成する工程と、を非同時に行うサイクルをn
1
回(n
1
は1以上の整数)行い、前記原子Xを含む第1酸化膜を形成する工程と、
(b)(b1)前記基板に対して、前記原料を供給し、前記原子Xに前記第1官能基が結合した成分を含む第3層を形成する工程と、(b2)前記基板に対して、第2酸化剤を供給し、前記第3層を、前記第1層を酸化させる際の酸化力よりも高い酸化力にて、酸化させて、前記原子Xおよび酸素を含む第4層を形成する工程と、を非同時に行うサイクルをn
2
回(n
2
は1以上の整数)行い、前記原子Xを含む第2酸化膜を形成する工程と、
を交互に所定回数行うことで、前記基板上に、前記第1酸化膜と、前記第2酸化膜と、が交互に積層されてなる酸化膜を形成する工程を有し、
(a1)および(b1)では、前記原子Xに前記第1官能基が結合した状態で、前記原子Xが前記基板の表面に吸着する処理条件下で、前記原料を供給し、
(a1)および(b1)では、前記基板の表面に吸着した前記原子Xに結合した前記第1官能基により、前記基板の表面に吸着した前記原子Xへの原子および分子のうち少なくともいずれかの吸着を阻害すると共に、その周辺の前記基板の表面における吸着サイトへの原子および分子のうち少なくともいずれかの吸着を阻害す
る基板処理方法。
【請求項5】
(a)(a1)基板に対して、原子Xに第1官能基と第2官能基とが直接結合した部分構造を有する原料であって、前記第1官能基と前記原子Xとの結合エネルギーが前記第2官能基と前記原子Xとの結合エネルギーよりも高い原料を供給し、前記原子Xに前記第1官能基が結合した成分を含む第1層を形成する工程と、(a2)前記基板に対して、第1酸化剤を供給し、前記第1層を酸化させて、前記原子Xおよび酸素を含む第2層を形成する工程と、を非同時に行うサイクルをn
1
回(n
1
は1以上の整数)行い、前記原子Xを含む第1酸化膜を形成する工程と、
(b)(b1)前記基板に対して、前記原料を供給し、前記原子Xに前記第1官能基が結合した成分を含む第3層を形成する工程と、(b2)前記基板に対して、第2酸化剤を供給し、前記第3層を、前記第1層を酸化させる際の酸化力よりも高い酸化力にて、酸化させて、前記原子Xおよび酸素を含む第4層を形成する工程と、を非同時に行うサイクルをn
2
回(n
2
は1以上の整数)行い、前記原子Xを含む第2酸化膜を形成する工程と、
を交互に所定回数行うことで、前記基板上に、前記第1酸化膜と、前記第2酸化膜と、が交互に積層されてなる酸化膜を形成する工程を有し、
(a1)および(b1)では、前記原子Xに前記第1官能基が結合した状態で、前記原子Xが前記基板の表面に吸着する処理条件下で、前記原料を供給し、
(a1)および(b1)では、前記基板の表面に吸着した前記原子Xに結合した前記第1官能基により、その周辺の前記基板の表面における吸着サイトを保持させ
る基板処理方法。
【請求項6】
(a1)および(b1)では、前記原子Xを前記基板の表面に不連続に吸着させる請求項
1~5のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項7】
(a1)および(b1)では、前記原子Xの前記基板の表面への吸着反応が飽和するまで前記原料の供給を継続する請求項
1~6のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項8】
(a)(a1)基板に対して、原子Xに第1官能基と第2官能基とが直接結合した部分構造を有する原料であって、前記第1官能基と前記原子Xとの結合エネルギーが前記第2官能基と前記原子Xとの結合エネルギーよりも高い原料を供給し、前記原子Xに前記第1官能基が結合した成分を含む第1層を形成する工程と、(a2)前記基板に対して、第1酸化剤を供給し、前記第1層を酸化させて、前記原子Xおよび酸素を含む第2層を形成する工程と、を非同時に行うサイクルをn
1
回(n
1
は1以上の整数)行い、前記原子Xを含む第1酸化膜を形成する工程と、
(b)(b1)前記基板に対して、前記原料を供給し、前記原子Xに前記第1官能基が結合した成分を含む第3層を形成する工程と、(b2)前記基板に対して、第2酸化剤を供給し、前記第3層を、前記第1層を酸化させる際の酸化力よりも高い酸化力にて、酸化させて、前記原子Xおよび酸素を含む第4層を形成する工程と、を非同時に行うサイクルをn
2
回(n
2
は1以上の整数)行い、前記原子Xを含む第2酸化膜を形成する工程と、
を交互に所定回数行うことで、前記基板上に、前記第1酸化膜と、前記第2酸化膜と、が交互に積層されてなる酸化膜を形成する工程を有し、
(a1)および(b1)では、前記原子Xに前記第1官能基が結合した状態で、前記原子Xが前記基板の表面に吸着する処理条件下で、前記原料を供給し、
(a1)および(b1)では、前記原子Xの前記基板の表面への吸着反応が飽和するまで前記原料の供給を継続し、
前記原子Xの前記基板の表面への吸着反応が飽和した状態において、前記基板の表面へ吸着した原子Xにより構成される層は、1原子層未満の厚さであ
る基板処理方法。
【請求項9】
(a)(a1)基板に対して、原子Xに第1官能基と第2官能基とが直接結合した部分構造を有する原料であって、前記第1官能基と前記原子Xとの結合エネルギーが前記第2官能基と前記原子Xとの結合エネルギーよりも高い原料を供給し、前記原子Xに前記第1官能基が結合した成分を含む第1層を形成する工程と、(a2)前記基板に対して、第1酸化剤を供給し、前記第1層を酸化させて、前記原子Xおよび酸素を含む第2層を形成する工程と、を非同時に行うサイクルをn
1
回(n
1
は1以上の整数)行い、前記原子Xを含む第1酸化膜を形成する工程と、
(b)(b1)前記基板に対して、前記原料を供給し、前記原子Xに前記第1官能基が結合した成分を含む第3層を形成する工程と、(b2)前記基板に対して、第2酸化剤を供給し、前記第3層を、前記第1層を酸化させる際の酸化力よりも高い酸化力にて、酸化させて、前記原子Xおよび酸素を含む第4層を形成する工程と、を非同時に行うサイクルをn
2
回(n
2
は1以上の整数)行い、前記原子Xを含む第2酸化膜を形成する工程と、
を交互に所定回数行うことで、前記基板上に、前記第1酸化膜と、前記第2酸化膜と、が交互に積層されてなる酸化膜を形成する工程を有し、
(a1)および(b1)では、前記原子Xに前記第1官能基が結合した状態で、前記原子Xが前記基板の表面に吸着する処理条件下で、前記原料を供給し、
(a1)および(b1)では、前記原子Xの前記基板の表面への吸着反応が飽和するまで前記原料の供給を継続し、
前記原子Xの前記基板の表面への吸着反応が飽和した状態において、前記基板の表面の一部に吸着サイトを保持させ
る基板処理方法。
【請求項10】
(a)(a1)基板に対して、原子Xに第1官能基と第2官能基とが直接結合した部分構造を有する原料であって、前記第1官能基と前記原子Xとの結合エネルギーが前記第2官能基と前記原子Xとの結合エネルギーよりも高い原料を供給し、前記原子Xに前記第1官能基が結合した成分を含む第1層を形成する工程と、(a2)前記基板に対して、第1酸化剤を供給し、前記第1層を酸化させて、前記原子Xおよび酸素を含む第2層を形成する工程と、を非同時に行うサイクルをn
1
回(n
1
は1以上の整数)行い、前記原子Xを含む第1酸化膜を形成する工程と、
(b)(b1)前記基板に対して、前記原料を供給し、前記原子Xに前記第1官能基が結合した成分を含む第3層を形成する工程と、(b2)前記基板に対して、第2酸化剤を供給し、前記第3層を、前記第1層を酸化させる際の酸化力よりも高い酸化力にて、酸化させて、前記原子Xおよび酸素を含む第4層を形成する工程と、を非同時に行うサイクルをn
2
回(n
2
は1以上の整数)行い、前記原子Xを含む第2酸化膜を形成する工程と、
を交互に所定回数行うことで、前記基板上に、前記第1酸化膜と、前記第2酸化膜と、が交互に積層されてなる酸化膜を形成する工程を有し、
(a1)および(b1)では、前記原子Xに前記第1官能基が結合した状態で、前記原子Xが前記基板の表面に吸着する処理条件下で、前記原料を供給し、
(a1)および(b1)では、前記原子Xの前記基板の表面への吸着反応が飽和するまで前記原料の供給を継続し、
前記原子Xの前記基板の表面への吸着反応が飽和した状態において、前記基板の表面が前記第1官能基により覆われた状態とす
る基板処理方法。
【請求項11】
(a)(a1)基板に対して、原子Xに第1官能基と第2官能基とが直接結合した部分構造を有する原料であって、前記第1官能基と前記原子Xとの結合エネルギーが前記第2官能基と前記原子Xとの結合エネルギーよりも高い原料を供給し、前記原子Xに前記第1官能基が結合した成分を含む第1層を形成する工程と、(a2)前記基板に対して、第1酸化剤を供給し、前記第1層を酸化させて、前記原子Xおよび酸素を含む第2層を形成する工程と、を非同時に行うサイクルをn
1
回(n
1
は1以上の整数)行い、前記原子Xを含む第1酸化膜を形成する工程と、
(b)(b1)前記基板に対して、前記原料を供給し、前記原子Xに前記第1官能基が結合した成分を含む第3層を形成する工程と、(b2)前記基板に対して、第2酸化剤を供給し、前記第3層を、前記第1層を酸化させる際の酸化力よりも高い酸化力にて、酸化させて、前記原子Xおよび酸素を含む第4層を形成する工程と、を非同時に行うサイクルをn
2
回(n
2
は1以上の整数)行い、前記原子Xを含む第2酸化膜を形成する工程と、
を交互に所定回数行うことで、前記基板上に、前記第1酸化膜と、前記第2酸化膜と、が交互に積層されてなる酸化膜を形成する工程を有し、
(a2)では、前記第1層に含まれる前記原子Xと結合する前記第1官能基に含まれる第3官能基、および、前記原子Xと結合する前記第1官能基のうち少なくともいずれかが脱離する処理条件下で、前記第1酸化剤を供給し、
(b2)では、前記第3層に含まれる前記原子Xと結合する前記第1官能基に含まれる第3官能基、および、前記原子Xと結合する前記第1官能基が脱離する処理条件下で、前記第2酸化剤を供給す
る基板処理方法。
【請求項12】
(a)(a1)基板に対して、原子Xにアルコキシ基を含
む第1官能基とアミノ基、アルキル基、ハロゲノ基、ヒドロキシ基、ヒドロ基、アリール基、ビニル基、およびニトロ基のうち少なくともいずれか1つを含
む第2官能基とが直接結合した部分構造を有する原料であって、前記第1官能基と前記原子Xとの結合エネルギーが前記第2官能基と前記原子Xとの結合エネルギーよりも高い原料を供給し、前記原子Xに前記第1官能基が結合した成分を含む第1層を形成する工程と、(a2)前記基板に対して、第1酸化剤を供給し、前記第1層を酸化させて、前記原子Xおよび酸素を含む第2層を形成する工程と、を非同時に行うサイクルをn
1
回(n
1
は1以上の整数)行い、前記原子Xを含む第1酸化膜を形成する工程と、
(b)(b1)前記基板に対して、前記原料を供給し、前記原子Xに前記第1官能基が結合した成分を含む第3層を形成する工程と、(b2)前記基板に対して、第2酸化剤を供給し、前記第3層を、前記第1層を酸化させる際の酸化力よりも高い酸化力にて、酸化させて、前記原子Xおよび酸素を含む第4層を形成する工程と、を非同時に行うサイクルをn
2
回(n
2
は1以上の整数)行い、前記原子Xを含む第2酸化膜を形成する工程と、
を交互に所定回数行うことで、前記基板上に、前記第1酸化膜と、前記第2酸化膜と、が交互に積層されてなる酸化膜を形成する工程を有する基板処理方法。
【請求項13】
前記第1酸化剤は、O
2ガス、NOガス、N
2Oガス、NO
2ガスのうち少なくともいずれかを含み、前記第2酸化剤は、O
2ガス+H
2ガス、O
3ガス+H
2ガス、H
2O
2ガス+H
2ガス、H
2O+H
2ガス、O
3ガス、H
2O
2ガス、H
2Oガス、プラズマ励起させたO
2ガスのうち少なくともいずれかを含む請求項1~
12のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項14】
(a)(a1)基板に対して、原子Xに第1官能基と第2官能基とが直接結合した部分構造を有する原料であって、前記第1官能基と前記原子Xとの結合エネルギーが前記第2官能基と前記原子Xとの結合エネルギーよりも高い原料を供給し、前記原子Xに前記第1官能基が結合した成分を含む第1層を形成する工程と、(a2)前記基板に対して、第1酸化剤を供給し、前記第1層を酸化させて、前記原子Xおよび酸素を含む第2層を形成する工程と、を非同時に行うサイクルをn
1
回(n
1
は1以上の整数)行い、前記原子Xを含む第1酸化膜を形成する工程と、
(b)(b1)前記基板に対して、前記原料を供給し、前記原子Xに前記第1官能基が結合した成分を含む第3層を形成する工程と、(b2)前記基板に対して、第2酸化剤を供給し、前記第3層を、前記第1層を酸化させる際の酸化力よりも高い酸化力にて、酸化させて、前記原子Xおよび酸素を含む第4層を形成する工程と、を非同時に行うサイクルをn
2
回(n
2
は1以上の整数)行い、前記原子Xを含む第2酸化膜を形成する工程と、
を交互に所定回数行うことで、前記基板上に、前記第1酸化膜と、前記第2酸化膜と、が交互に積層されてなる酸化膜を形成する工程を有し、
前記酸化膜を形成する工程では、(a)および(b)を交互に繰り返し、最初に形成する前記第1酸化膜を、最初に形成する前記第2酸化膜よりも厚くする
こと、および、(a)および(b)を交互に繰り返し、最後に形成する前記第2酸化膜を、最後に形成する前記第1酸化膜よりも厚くすること、のうち少なくともいずれかを行う基板処理方法。
【請求項15】
(a)および(b)を交互に繰り返すにつれ、前記第2酸化膜の厚さに対する前記第1酸化膜の厚さの比が、段階的に小さくなるようにする請求項
14に記載の基板処理方法。
【請求項16】
(a)(a1)基板に対して、原子Xに第1官能基と第2官能基とが直接結合した部分構造を有する原料であって、前記第1官能基と前記原子Xとの結合エネルギーが前記第2官能基と前記原子Xとの結合エネルギーよりも高い原料を供給し、前記原子Xに前記第1官能基が結合した成分を含む第1層を形成する工程と、(a2)前記基板に対して、第1酸化剤を供給し、前記第1層を酸化させて、前記原子Xおよび酸素を含む第2層を形成する工程と、を非同時に行うサイクルをn
1回(n
1は1以上の整数)行い、前記原子Xを含む第1酸化膜を形成する工程と、
(b)(b1)前記基板に対して、前記原料を供給し、前記原子Xに前記第1官能基が結合した成分を含む第3層を形成する工程と、(b2)前記基板に対して、第2酸化剤を供給し、前記第3層を、前記第1層を酸化させる際の酸化力よりも高い酸化力にて、酸化させて、前記原子Xおよび酸素を含む第4層を形成する工程と、を非同時に行うサイクルをn
2回(n
2は1以上の整数)行い、前記原子Xを含む第2酸化膜を形成する工程と、
を交互に所定回数行うことで、前記基板上に、前記第1酸化膜と、前記第2酸化膜と、が交互に積層されてなる酸化膜を形成する工程を有
し、
前記原子Xは4つの結合手を有し、前記原子Xの4つの結合手のうち3つの結合手のそれぞれには前記第1官能基が結合しており、前記原子Xの4つの結合手のうち残りの1つの結合手には前記第2官能基が結合しており、
(a1)および(b1)では、前記原子Xの3つの結合手のそれぞれに前記第1官能基が結合した状態で、前記原子Xが前記基板の表面に吸着する処理条件下で、前記原料を供給する半導体装置の製造方法。
【請求項17】
(a)(a1)基板に対して、原子Xに第1官能基と第2官能基とが直接結合した部分構造を有する原料であって、前記第1官能基と前記原子Xとの結合エネルギーが前記第2官能基と前記原子Xとの結合エネルギーよりも高い原料を供給し、前記原子Xに前記第1官能基が結合した成分を含む第1層を形成する工程と、(a2)前記基板に対して、第1酸化剤を供給し、前記第1層を酸化させて、前記原子Xおよび酸素を含む第2層を形成する工程と、を非同時に行うサイクルをn
1
回(n
1
は1以上の整数)行い、前記原子Xを含む第1酸化膜を形成する工程と、
(b)(b1)前記基板に対して、前記原料を供給し、前記原子Xに前記第1官能基が結合した成分を含む第3層を形成する工程と、(b2)前記基板に対して、第2酸化剤を供給し、前記第3層を、前記第1層を酸化させる際の酸化力よりも高い酸化力にて、酸化させて、前記原子Xおよび酸素を含む第4層を形成する工程と、を非同時に行うサイクルをn
2
回(n
2
は1以上の整数)行い、前記原子Xを含む第2酸化膜を形成する工程と、
を交互に所定回数行うことで、前記基板上に、前記第1酸化膜と、前記第2酸化膜と、が交互に積層されてなる酸化膜を形成する工程を有し、
(a1)および(b1)では、前記原料に含まれる前記原子Xから、前記第1官能基が脱離することなく、前記第2官能基が脱離する処理条件であって、前記第2官能基が脱離し前記第1官能基との結合が維持された状態の前記原子Xが前記基板の表面に吸着する処理条件下で、前記原料を供給する半導体装置の製造方法。
【請求項18】
(a)(a1)基板に対して、原子Xにアルコキシ基を含む第1官能基とアミノ基、アルキル基、ハロゲノ基、ヒドロキシ基、ヒドロ基、アリール基、ビニル基、およびニトロ基のうち少なくともいずれか1つを含む第2官能基とが直接結合した部分構造を有する原料であって、前記第1官能基と前記原子Xとの結合エネルギーが前記第2官能基と前記原子Xとの結合エネルギーよりも高い原料を供給し、前記原子Xに前記第1官能基が結合した成分を含む第1層を形成する工程と、(a2)前記基板に対して、第1酸化剤を供給し、前記第1層を酸化させて、前記原子Xおよび酸素を含む第2層を形成する工程と、を非同時に行うサイクルをn
1
回(n
1
は1以上の整数)行い、前記原子Xを含む第1酸化膜を形成する工程と、
(b)(b1)前記基板に対して、前記原料を供給し、前記原子Xに前記第1官能基が結合した成分を含む第3層を形成する工程と、(b2)前記基板に対して、第2酸化剤を供給し、前記第3層を、前記第1層を酸化させる際の酸化力よりも高い酸化力にて、酸化させて、前記原子Xおよび酸素を含む第4層を形成する工程と、を非同時に行うサイクルをn
2
回(n
2
は1以上の整数)行い、前記原子Xを含む第2酸化膜を形成する工程と、
を交互に所定回数行うことで、前記基板上に、前記第1酸化膜と、前記第2酸化膜と、が交互に積層されてなる酸化膜を形成する工程を有する半導体装置の製造方法。
【請求項19】
基板に対して原子Xに第1官能基と第2官能基とが直接結合した部分構造を有する原料であって、前記第1官能基と前記原子Xとの結合エネルギーが前記第2官能基と前記原子Xとの結合エネルギーよりも高い原料を供給する原料供給系と、
基板に対して第1酸化剤を供給する第1酸化剤供給系と、
基板に対して第2酸化剤を供給する第2酸化剤供給系と、
基板を加熱するヒータと
、
(a)(a1)基板に対して、前記原料を供給し、前記原子Xに前記第1官能基が結合した成分を含む第1層を形成する処理と、(a2)前記基板に対して、前記第1酸化剤を供給し、前記第1層を酸化させて、前記原子Xおよび酸素を含む第2層を形成する処理と、を非同時に行うサイクルをn
1回(n
1は1以上の整数)行い、前記原子Xを含む第1酸化膜を形成する処理と、
(b)(b1)前記基板に対して、前記原料を供給し、前記原子Xに前記第1官能基が結合した成分を含む第3層を形成する処理と、(b2)前記基板に対して、前記第2酸化剤を供給し、前記第3層を、前記第1層を酸化させる際の酸化力よりも高い酸化力にて、酸化させて、前記原子Xおよび酸素を含む第4層を形成する処理と、を非同時に行うサイクルをn
2回(n
2は1以上の整数)行い、前記原子Xを含む第2酸化膜を形成する処理と、
を交互に所定回数行うことで、前記基板上に、前記第1酸化膜と、前記第2酸化膜と、が交互に積層されてなる酸化膜を形成する処理を行わせるように、前記原料供給系、前記第1酸化剤供給系、前記第2酸化剤供給系、および前記ヒータを制御することが可能なよう構成される制御部と、
を有
し、
前記原子Xは4つの結合手を有し、前記原子Xの4つの結合手のうち3つの結合手のそれぞれには前記第1官能基が結合しており、前記原子Xの4つの結合手のうち残りの1つの結合手には前記第2官能基が結合しており、
前記制御部は、さらに、(a1)および(b1)において、前記原子Xの3つの結合手のそれぞれに前記第1官能基が結合した状態で、前記原子Xが前記基板の表面に吸着する処理条件下で、前記原料を供給するように、前記原料供給系および前記ヒータを制御することが可能なよう構成される基板処理装置。
【請求項20】
基板に対して原子Xに第1官能基と第2官能基とが直接結合した部分構造を有する原料であって、前記第1官能基と前記原子Xとの結合エネルギーが前記第2官能基と前記原子Xとの結合エネルギーよりも高い原料を供給する原料供給系と、
基板に対して第1酸化剤を供給する第1酸化剤供給系と、
基板に対して第2酸化剤を供給する第2酸化剤供給系と、
基板を加熱するヒータと、
(a)(a1)基板に対して、前記原料を供給し、前記原子Xに前記第1官能基が結合した成分を含む第1層を形成する処理と、(a2)前記基板に対して、前記第1酸化剤を供給し、前記第1層を酸化させて、前記原子Xおよび酸素を含む第2層を形成する処理と、を非同時に行うサイクルをn
1
回(n
1
は1以上の整数)行い、前記原子Xを含む第1酸化膜を形成する処理と、
(b)(b1)前記基板に対して、前記原料を供給し、前記原子Xに前記第1官能基が結合した成分を含む第3層を形成する処理と、(b2)前記基板に対して、前記第2酸化剤を供給し、前記第3層を、前記第1層を酸化させる際の酸化力よりも高い酸化力にて、酸化させて、前記原子Xおよび酸素を含む第4層を形成する処理と、を非同時に行うサイクルをn
2
回(n
2
は1以上の整数)行い、前記原子Xを含む第2酸化膜を形成する処理と、
を交互に所定回数行うことで、前記基板上に、前記第1酸化膜と、前記第2酸化膜と、が交互に積層されてなる酸化膜を形成する処理を行わせ、
(a1)および(b1)において、前記原料に含まれる前記原子Xから、前記第1官能基が脱離することなく、前記第2官能基が脱離する処理条件であって、前記第2官能基が脱離し前記第1官能基との結合が維持された状態の前記原子Xが前記基板の表面に吸着する処理条件下で、前記原料を供給するように、前記原料供給系、前記第1酸化剤供給系、前記第2酸化剤供給系、および前記ヒータを制御することが可能なよう構成される制御部と、
を有する基板処理装置。
【請求項21】
基板に対して原子Xにアルコキシ基を含む第1官能基とアミノ基、アルキル基、ハロゲノ基、ヒドロキシ基、ヒドロ基、アリール基、ビニル基、およびニトロ基のうち少なくともいずれか1つを含む第2官能基とが直接結合した部分構造を有する原料であって、前記第1官能基と前記原子Xとの結合エネルギーが前記第2官能基と前記原子Xとの結合エネルギーよりも高い原料を供給する原料供給系と、
基板に対して第1酸化剤を供給する第1酸化剤供給系と、
基板に対して第2酸化剤を供給する第2酸化剤供給系と、
基板を加熱するヒータと、
(a)(a1)基板に対して、前記原料を供給し、前記原子Xに前記第1官能基が結合した成分を含む第1層を形成する処理と、(a2)前記基板に対して、前記第1酸化剤を供給し、前記第1層を酸化させて、前記原子Xおよび酸素を含む第2層を形成する処理と、を非同時に行うサイクルをn
1
回(n
1
は1以上の整数)行い、前記原子Xを含む第1酸化膜を形成する処理と、
(b)(b1)前記基板に対して、前記原料を供給し、前記原子Xに前記第1官能基が結合した成分を含む第3層を形成する処理と、(b2)前記基板に対して、前記第2酸化剤を供給し、前記第3層を、前記第1層を酸化させる際の酸化力よりも高い酸化力にて、酸化させて、前記原子Xおよび酸素を含む第4層を形成する処理と、を非同時に行うサイクルをn
2
回(n
2
は1以上の整数)行い、前記原子Xを含む第2酸化膜を形成する処理と、
を交互に所定回数行うことで、前記基板上に、前記第1酸化膜と、前記第2酸化膜と、が交互に積層されてなる酸化膜を形成する処理を行わせるように、前記原料供給系、前記第1酸化剤供給系、前記第2酸化剤供給系、および前記ヒータを制御することが可能なよう構成される制御部と、
を有する基板処理装置。
【請求項22】
(a)(a1)基板に対して、原子Xに第1官能基と第2官能基とが直接結合した部分構造を有する原料であって、前記第1官能基と前記原子Xとの結合エネルギーが前記第2官能基と前記原子Xとの結合エネルギーよりも高い原料を供給し、前記原子Xに前記第1官能基が結合した成分を含む第1層を形成する手順と、(a2)前記基板に対して、第1酸化剤を供給し、前記第1層を酸化させて、前記原子Xおよび酸素を含む第2層を形成する手順と、を非同時に行うサイクルをn
1回(n
1は1以上の整数)行い、前記原子Xを含む第1酸化膜を形成する手順と、
(b)(b1)前記基板に対して、前記原料を供給し、前記原子Xに前記第1官能基が結合した成分を含む第3層を形成する手順と、(b2)前記基板に対して、第2酸化剤を供給し、前記第3層を、前記第1層を酸化させる際の酸化力よりも高い酸化力にて、酸化させて、前記原子Xおよび酸素を含む第4層を形成する手順と、を非同時に行うサイクルをn
2回(n
2は1以上の整数)行い、前記原子Xを含む第2酸化膜を形成する手順と、
を交互に所定回数行うことで、前記基板上に、前記第1酸化膜と、前記第2酸化膜と、が交互に積層されてなる酸化膜を形成する手順をコンピュータによっ
て基板処理装置に実行させるプログラム
であって、
前記原子Xは4つの結合手を有し、前記原子Xの4つの結合手のうち3つの結合手のそれぞれには前記第1官能基が結合しており、前記原子Xの4つの結合手のうち残りの1つの結合手には前記第2官能基が結合しており、
さらに、(a1)および(b1)において、前記原子Xの3つの結合手のそれぞれに前記第1官能基が結合した状態で、前記原子Xが前記基板の表面に吸着する処理条件下で、前記原料を供給する手順をコンピュータによって基板処理装置に実行させるプログラム。
【請求項23】
(a)(a1)基板に対して、原子Xに第1官能基と第2官能基とが直接結合した部分構造を有する原料であって、前記第1官能基と前記原子Xとの結合エネルギーが前記第2官能基と前記原子Xとの結合エネルギーよりも高い原料を供給し、前記原子Xに前記第1官能基が結合した成分を含む第1層を形成する手順と、(a2)前記基板に対して、第1酸化剤を供給し、前記第1層を酸化させて、前記原子Xおよび酸素を含む第2層を形成する手順と、を非同時に行うサイクルをn
1
回(n
1
は1以上の整数)行い、前記原子Xを含む第1酸化膜を形成する手順と、
(b)(b1)前記基板に対して、前記原料を供給し、前記原子Xに前記第1官能基が結合した成分を含む第3層を形成する手順と、(b2)前記基板に対して、第2酸化剤を供給し、前記第3層を、前記第1層を酸化させる際の酸化力よりも高い酸化力にて、酸化させて、前記原子Xおよび酸素を含む第4層を形成する手順と、を非同時に行うサイクルをn
2
回(n
2
は1以上の整数)行い、前記原子Xを含む第2酸化膜を形成する手順と、
を交互に所定回数行うことで、前記基板上に、前記第1酸化膜と、前記第2酸化膜と、が交互に積層されてなる酸化膜を形成する手順と、
(a1)および(b1)において、前記原料に含まれる前記原子Xから、前記第1官能基が脱離することなく、前記第2官能基が脱離する処理条件であって、前記第2官能基が脱離し前記第1官能基との結合が維持された状態の前記原子Xが前記基板の表面に吸着する処理条件下で、前記原料を供給する手順と、
をコンピュータによって基板処理装置に実行させるプログラム。
【請求項24】
(a)(a1)基板に対して、原子Xにアルコキシ基を含む第1官能基とアミノ基、アルキル基、ハロゲノ基、ヒドロキシ基、ヒドロ基、アリール基、ビニル基、およびニトロ基のうち少なくともいずれか1つを含む第2官能基とが直接結合した部分構造を有する原料であって、前記第1官能基と前記原子Xとの結合エネルギーが前記第2官能基と前記原子Xとの結合エネルギーよりも高い原料を供給し、前記原子Xに前記第1官能基が結合した成分を含む第1層を形成する手順と、(a2)前記基板に対して、第1酸化剤を供給し、前記第1層を酸化させて、前記原子Xおよび酸素を含む第2層を形成する手順と、を非同時に行うサイクルをn
1
回(n
1
は1以上の整数)行い、前記原子Xを含む第1酸化膜を形成する手順と、
(b)(b1)前記基板に対して、前記原料を供給し、前記原子Xに前記第1官能基が結合した成分を含む第3層を形成する手順と、(b2)前記基板に対して、第2酸化剤を供給し、前記第3層を、前記第1層を酸化させる際の酸化力よりも高い酸化力にて、酸化させて、前記原子Xおよび酸素を含む第4層を形成する手順と、を非同時に行うサイクルをn
2
回(n
2
は1以上の整数)行い、前記原子Xを含む第2酸化膜を形成する手順と、
を交互に所定回数行うことで、前記基板上に、前記第1酸化膜と、前記第2酸化膜と、が交互に積層されてなる酸化膜を形成する手順をコンピュータによって基板処理装置に実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理方法、半導体装置の製造方法、基板処理装置、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程の一工程として、基板に対して原料を供給する工程と、基板に対して酸化剤を供給する工程と、を交互に繰り返すことで、基板上に酸化膜を形成する基板処理工程が行われる場合がある(例えば特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-135633号公報
【文献】特開2010-153776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、基板上に形成される酸化膜の特性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様によれば、
(a)(a1)基板に対して、原子Xに第1官能基と第2官能基とが直接結合した部分構造を有する原料であって、前記第1官能基と前記原子Xとの結合エネルギーが前記第2官能基と前記原子Xとの結合エネルギーよりも高い原料を供給し、前記原子Xに前記第1官能基が結合した成分を含む第1層を形成する工程と、(a2)前記基板に対して、第1酸化剤を供給し、前記第1層を酸化させて、前記原子Xおよび酸素を含む第2層を形成する工程と、を非同時に行うサイクルをn1回(n1は1以上の整数)行い、前記原子Xを含む第1酸化膜を形成する工程と、
(b)(b1)前記基板に対して、前記原料を供給し、前記原子Xに前記第1官能基が結合した成分を含む第3層を形成する工程と、(b2)前記基板に対して、(a2)において前記第1層を酸化させる際の酸化力よりも酸化力が高くなる処理条件下で、第2酸化剤を供給し、前記第3層を酸化させて、前記原子Xおよび酸素を含む第4層を形成する工程と、を非同時に行うサイクルをn2回(n2は1以上の整数)行い、前記原子Xを含む第2酸化膜を形成する工程と、
を交互に所定回数行うことで、前記基板上に、前記第1酸化膜と、前記第2酸化膜と、が交互に積層されてなる酸化膜を形成する技術が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、基板上に形成される酸化膜の特性を向上させることが可能な技術を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本開示の一態様で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉202部分を縦断面図で示す図である。
【
図2】
図2は、本開示の一態様で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉202部分を
図1のA-A線断面図で示す図である。
【
図3】
図3は、本開示の一態様で好適に用いられる基板処理装置のコントローラの概略構成図であり、コントローラ121の制御系をブロック図で示す図である。
【
図4】
図4は、本開示の一態様における第1酸化膜を形成する際のガス供給シーケンスを示すフロー図である。
【
図5】
図5は、本開示の一態様における第2酸化膜を形成する際のガス供給シーケンスを示すフロー図である。
【
図6】
図6は、本開示の一態様における、第1酸化膜と第2酸化膜とが交互に積層されてなる積層酸化膜が表面に形成されたウエハ200の表面における部分断面拡大図である。
【
図7】
図7は、本開示の一態様の変形例における、第1酸化膜と第2酸化膜とが交互に積層されてなる積層酸化膜が表面に形成されたウエハ200の表面における部分断面拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<本開示の一態様>
以下、本開示の一態様について、主に、
図1~
図6を用いて説明する。なお、以下の説明において用いられる図面は、いずれも模式的なものであり、図面上の各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。また、複数の図面の相互間においても、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は必ずしも一致していない。
【0009】
(1)基板処理装置の構成
図1に示すように、処理炉202は加熱機構(温度調整部)としてのヒータ207を有する。ヒータ207は円筒形状であり、保持板に支持されることにより垂直に据え付けられている。ヒータ207は、ガスを熱で活性化(励起)させる活性化機構(励起部)としても機能する。
【0010】
ヒータ207の内側には、ヒータ207と同心円状に反応管203が配設されている。反応管203は、例えば石英(SiO2)または炭化シリコン(SiC)等の耐熱性材料により構成され、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。反応管203の下方には、反応管203と同心円状に、マニホールド209が配設されている。マニホールド209は、例えばステンレス鋼(SUS)等の金属材料により構成され、上端および下端が開口した円筒形状に形成されている。マニホールド209の上端部は、反応管203の下端部に係合しており、反応管203を支持するように構成されている。マニホールド209と反応管203との間には、シール部材としてのOリング220aが設けられている。反応管203はヒータ207と同様に垂直に据え付けられている。主に、反応管203とマニホールド209とにより処理容器(反応容器)が構成される。処理容器の筒中空部には処理室201が形成される。処理室201は、基板としてのウエハ200を収容可能に構成されている。この処理室201内でウエハ200に対する処理が行われる。
【0011】
処理室201内には、第1供給部、第2供給部としてのノズル249a,249bが、マニホールド209の側壁を貫通するようにそれぞれ設けられている。ノズル249a,249bを、それぞれ第1ノズル、第2ノズルとも称する。ノズル249a,249bは、それぞれ、石英またはSiC等の耐熱性材料である非金属材料により構成されている。ノズル249a,249bには、第1配管、第2配管としてのガス供給管232a,232bがそれぞれ接続されている。ノズル249a,249bは、互いに隣接して設けられている。
【0012】
ガス供給管232a,232bには、ガス流の上流側から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)241a,241bおよび開閉弁であるバルブ243a,243bがそれぞれ設けられている。ガス供給管232aのバルブ243aよりも下流側には、ガス供給管232c,232dが接続されている。ガス供給管232c,232dには、ガス流の上流側から順に、MFC241c,241d、バルブ243c,243dがそれぞれ設けられている。ガス供給管232bのバルブ243bよりも下流側には、ガス供給管232eが接続されている。ガス供給管232eには、ガス流の上流側から順に、MFC241e、バルブ243eが設けられている。ガス供給管232a~232eは、例えばSUS等の金属材料により構成されている。
【0013】
図2に示すように、ノズル249a,249bは、反応管203の内壁とウエハ200との間における平面視において円環状の空間に、反応管203の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の配列方向上方に向かって立ち上がるようにそれぞれ設けられている。すなわち、ノズル249a,249bは、ウエハ200が配列されるウエハ配列領域の側方の、ウエハ配列領域を水平に取り囲む領域に、ウエハ配列領域に沿うようにそれぞれ設けられている。ノズル249a,249bの側面には、ガスを供給するガス供給孔250a,250bがそれぞれ設けられている。ガス供給孔250a,250bは、それぞれが、平面視においてウエハ200の中心に向かって開口しており、ウエハ200に向けてガスを供給することが可能となっている。ガス供給孔250a,250bは、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられている。
【0014】
ガス供給管232aからは、原料(原料ガス)が、MFC241a、バルブ243a、ノズル249aを介して処理室201内へ供給される。原料ガスとは、気体状態の原料、例えば、常温常圧下で液体状態である原料を気化することで得られるガスや、常温常圧下で気体状態である原料等のことである。本明細書では、便宜上、原料ガスを、単に、原料と称する場合もある。
【0015】
ガス供給管232bからは、酸化剤(酸化ガス)として、酸素(O)含有ガスが、MFC241b、バルブ243b、ノズル249bを介して処理室201内へ供給される。O含有ガスは、酸化ガス、すなわち、O源として作用する。
【0016】
ガス供給管232cからは、還元剤(還元ガス)として、水素(H)含有ガスが、MFC241c、バルブ243c、ガス供給管232a、ノズル249aを介して処理室201内へ供給される。H含有ガスは、それ単体では酸化作用は得られないが、後述する基板処理工程において、特定の条件下でO含有ガスと反応することで原子状酸素(atomic oxygen、O)等の酸化種を生成し、酸化処理の効率を向上させるように作用する。そのため、H含有ガスは、酸化剤に含めて考えることができる。
【0017】
ガス供給管232d,232eからは、不活性ガスが、それぞれ、MFC241d,241e、バルブ243d,243e、ガス供給管232a,232b、ノズル249a,249bを介して処理室201内へ供給される。不活性ガスは、パージガス、キャリアガス、希釈ガス等として作用する。
【0018】
主に、ガス供給管232a、MFC241a、バルブ243aにより、原料供給系、すなわち、原料ガス供給系が構成される。主に、ガス供給管232b、MFC241b、バルブ243bにより、酸化剤供給系(第1酸化剤供給系、第2酸化剤供給系)、すなわち、酸化ガス供給系(O含有ガス供給系)が構成される。ガス供給管232c、MFC241c、バルブ243cにより、還元剤供給系、すなわち、還元ガス供給系(H含有ガス供給系)が構成される。ガス供給管232c、MFC241c、バルブ243cを、酸化剤供給系に含めて考えてもよい。主に、ガス供給管232d,232e、MFC241d,241e、バルブ243d,243eにより、不活性ガス供給系が構成される。
【0019】
なお、原料および酸化剤のそれぞれ或いは両方を、成膜ガスとも称し、原料供給系および酸化剤供給系のそれぞれ或いは両方を、成膜ガス供給系とも称する。
【0020】
上述の各種供給系のうち、いずれか、或いは、全ての供給系は、バルブ243a~243eやMFC241a~241e等が集積されてなる集積型供給システム248として構成されていてもよい。集積型供給システム248は、ガス供給管232a~232eのそれぞれに対して接続され、ガス供給管232a~232e内への各種ガスの供給動作、すなわち、バルブ243a~243eの開閉動作やMFC241a~241eによる流量調整動作等が、後述するコントローラ121によって制御されるように構成されている。集積型供給システム248は、一体型、或いは、分割型の集積ユニットとして構成されており、ガス供給管232a~232e等に対して集積ユニット単位で着脱を行うことができ、集積型供給システム248のメンテナンス、交換、増設等を、集積ユニット単位で行うことが可能なように構成されている。
【0021】
反応管203の側壁下方には、処理室201内の雰囲気を排気する排気口231aが設けられている。排気口231aは、反応管203の側壁の下部より上部に沿って、すなわち、ウエハ配列領域に沿って設けられていてもよい。排気口231aには排気管231が接続されている。排気管231は、例えばSUS等の金属材料により構成されている。排気管231には、処理室201内の圧力を検出する圧力検出器(圧力検出部)としての圧力センサ245および圧力調整器(圧力調整部)としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ244を介して、真空排気装置としての真空ポンプ246が接続されている。APCバルブ244は、真空ポンプ246を作動させた状態で弁を開閉することで、処理室201内の真空排気および真空排気停止を行うことができ、更に、真空ポンプ246を作動させた状態で、圧力センサ245により検出された圧力情報に基づいて弁開度を調節することで、処理室201内の圧力を調整することができるように構成されている。主に、排気管231、APCバルブ244、圧力センサ245により、排気系が構成される。真空ポンプ246を排気系に含めて考えてもよい。
【0022】
マニホールド209の下方には、マニホールド209の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシールキャップ219が設けられている。シールキャップ219は、例えばSUS等の金属材料により構成され、円盤状に形成されている。シールキャップ219の上面には、マニホールド209の下端と当接するシール部材としてのOリング220bが設けられている。シールキャップ219の下方には、後述するボート217を回転させる回転機構267が設置されている。回転機構267の回転軸255は、例えばSUS等の金属材料により構成され、シールキャップ219を貫通してボート217に接続されている。回転機構267は、ボート217を回転させることでウエハ200を回転させるように構成されている。シールキャップ219は、反応管203の外部に設置された昇降機構としてのボートエレベータ115によって垂直方向に昇降されるように構成されている。ボートエレベータ115は、シールキャップ219を昇降させることで、ウエハ200を処理室201内外に搬入および搬出(搬送)する搬送系(搬送機構)として構成されている。
【0023】
マニホールド209の下方には、シールキャップ219を降下させボート217を処理室201内から搬出した状態で、マニホールド209の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシャッタ219sが設けられている。シャッタ219sは、例えばSUS等の金属材料により構成され、円盤状に形成されている。シャッタ219sの上面には、マニホールド209の下端と当接するシール部材としてのOリング220cが設けられている。シャッタ219sの開閉動作(昇降動作や回動動作等)は、シャッタ開閉機構115sにより制御される。
【0024】
基板支持具としてのボート217は、複数枚、例えば25~200枚のウエハ200を、水平姿勢で、かつ、互いに中心を揃えた状態で垂直方向に整列させて多段に支持するように、すなわち、間隔を空けて配列させるように構成されている。ボート217は、例えば石英やSiC等の耐熱性材料により構成される。ボート217の下部には、例えば石英やSiC等の耐熱性材料により構成される断熱板218が多段に支持されている。
【0025】
反応管203内には、温度検出器としての温度センサ263が設置されている。温度センサ263により検出された温度情報に基づきヒータ207への通電具合を調整することで、処理室201内の温度が所望の温度分布となる。温度センサ263は、反応管203の内壁に沿って設けられている。
【0026】
図3に示すように、制御部(制御手段)であるコントローラ121は、CPU(Central Processing Unit)121a、RAM(Random Access Memory)121b、記憶装置121c、I/Oポート121dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM121b、記憶装置121c、I/Oポート121dは、内部バス121eを介して、CPU121aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ121には、例えばタッチパネル等として構成された入出力装置122が接続されている。
【0027】
記憶装置121cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等で構成されている。記憶装置121c内には、基板処理装置の動作を制御する制御プログラムや、後述する基板処理の手順や条件等が記載されたプロセスレシピ等が、読み出し可能に格納されている。プロセスレシピは、後述する基板処理における各手順をコントローラ121に実行させ、所定の結果を得ることができるように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、制御プログラム、プロセスレシピ等を総称して、単に、プログラムともいう。また、プロセスレシピを、単に、レシピともいう。本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、レシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。RAM121bは、CPU121aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0028】
I/Oポート121dは、上述のMFC241a~241e、バルブ243a~243e、圧力センサ245、APCバルブ244、真空ポンプ246、温度センサ263、ヒータ207、回転機構267、ボートエレベータ115、シャッタ開閉機構115s等に接続されている。
【0029】
CPU121aは、記憶装置121cから制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置122からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置121cからレシピを読み出すことが可能なように構成されている。CPU121aは、読み出したレシピの内容に沿うように、MFC241a~241eによる各種ガスの流量調整動作、バルブ243a~243eの開閉動作、APCバルブ244の開閉動作および圧力センサ245に基づくAPCバルブ244による圧力調整動作、真空ポンプ246の起動および停止、温度センサ263に基づくヒータ207の温度調整動作、回転機構267によるボート217の回転および回転速度調節動作、ボートエレベータ115によるボート217の昇降動作、シャッタ開閉機構115sによるシャッタ219sの開閉動作等を制御することが可能なように構成されている。
【0030】
コントローラ121は、外部記憶装置123に格納された上述のプログラムを、コンピュータにインストールすることにより構成することができる。外部記憶装置123は、例えば、HDD等の磁気ディスク、CD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリやSSD等の半導体メモリ等を含む。記憶装置121cや外部記憶装置123は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成されている。以下、これらを総称して、単に、記録媒体ともいう。本明細書において記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶装置121c単体のみを含む場合、外部記憶装置123単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。なお、コンピュータへのプログラムの提供は、外部記憶装置123を用いず、インターネットや専用回線等の通信手段を用いて行ってもよい。
【0031】
(2)基板処理工程
上述の基板処理装置を用い、半導体装置の製造工程の一工程として、基板としてのウエハ200に対し処理を行うシーケンス例、すなわち、ウエハ200上に酸化膜を形成する成膜シーケンス例について、主に、
図4~
図6を用いて説明する。以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作はコントローラ121により制御される。
【0032】
本態様における成膜シーケンスでは、
ウエハ200に対して、原子Xに第1官能基と第2官能基とが直接結合した部分構造を有する原料ガスであって、第1官能基と原子Xとの結合エネルギーが第2官能基と原子Xとの結合エネルギーよりも高い原料ガスを供給し、原子Xに第1官能基が結合した成分を含む第1層を形成するステップa1と、ウエハ200に対して、第1酸化剤を供給し、第1層を酸化させて、原子XおよびOを含む第2層を形成するステップa2と、を非同時に行うサイクルをn1回(n1は1以上の整数)行い、原子Xを含む第1酸化膜を形成するステップAと、
ウエハ200に対して、上述の原料ガスを供給し、原子Xに第1官能基が結合した成分を含む第3層を形成するステップb1と、ウエハ200に対して、ステップa2において第1層を酸化させる際の酸化力よりも酸化力が高くなる処理条件下で、第2酸化剤を供給し、第3層を酸化させて、原子XおよびOを含む第4層を形成するステップb2と、を非同時に行うサイクルをn2回(n2は1以上の整数)行い、原子Xを含む第2酸化膜を形成するステップBと、
を交互に所定回数行うことで、ウエハ200上に、第1酸化膜と、第2酸化膜と、が交互に積層されてなる酸化膜(積層酸化膜)を形成する。
【0033】
以下、原子Xが、例えば、シリコン(Si)を含む場合について説明する。この場合、第1酸化剤として、例えば、O含有ガスを用いることができる。第2酸化剤として、例えば、O含有ガスおよびH含有ガスを用いることができる。この場合、第1層として、Siに第1官能基が結合した成分を含む層が形成され、第2層として、SiおよびOを含む層が形成され、第3層として、Siに第1官能基が結合した成分を含む層が形成され、第4層として、SiおよびOを含む層が形成されることとなる。また、この場合、第1酸化膜として、SiおよびOを含む膜、すなわち、第1シリコン酸化膜(第1SiO膜)が形成され、第2酸化膜として、SiおよびOを含む膜、すなわち、第2シリコン酸化膜(第2SiO膜)が形成されることとなる。ウエハ200上には、最終的に、第1SiO膜と、第2SiO膜と、が交互に積層されてなるSiO膜(積層SiO膜)が形成されることとなる。以下、この一例について、詳細に説明する。
【0034】
なお、
図4は、第1SiO膜を形成する際の成膜シーケンス(ガス供給シーケンス)を示しており、
図5は、第2SiO膜を形成する際の成膜シーケンス(ガス供給シーケンス)を示している。
図4における、a1はステップa1を、a2はステップa2を示している。
図5における、b1はステップb1を、b2はステップb2を示している。
【0035】
本明細書では、上述の成膜シーケンスを、便宜上、以下のように示すこともある。以下の変形例や他の態様の説明においても、同様の表記を用いる。
【0036】
(原料ガス→O含有ガス)×n1→(原料ガス→O含有ガス+H含有ガス)×n2→・・・
【0037】
なお、ステップAと、ステップBと、を非同時に行うセットを所定回数(n3回、n3は1以上の整数)行う場合は、上述の成膜シーケンスを、便宜上、以下のように示すこともできる。なお、この例は、最初にステップAを行い、最後にステップBを行う例を示している。
【0038】
[(原料ガス→O含有ガス)×n1→(原料ガス→O含有ガス+H含有ガス)×n2]×n3
【0039】
また、ステップAと、ステップBと、を非同時に行うセットを所定回数(n3回、n3は1以上の整数)行った後、ステップAを行う場合は、上述の成膜シーケンスを、便宜上、以下のように示すこともできる。なお、この例は、最初および最後にステップAを行う例を示している。
【0040】
[(原料ガス→O含有ガス)×n1→(原料ガス→O含有ガス+H含有ガス)×n2]×n3→(原料ガス→O含有ガス)×n1
【0041】
また、ステップBと、ステップAと、を非同時に行うセットを所定回数(n3回、n3は1以上の整数)行う場合は、上述の成膜シーケンスを、便宜上、以下のように示すこともできる。なお、この例は、最初にステップBを行い、最後にステップAを行う例を示している。
【0042】
[(原料ガス→O含有ガス+H含有ガス)×n2→(原料ガス→O含有ガス)×n1]×n3
【0043】
また、ステップBと、ステップAと、を非同時に行うセットを所定回数(n3回、n3は1以上の整数)行った後、ステップAを行う場合は、上述の成膜シーケンスを、便宜上、以下のように示すこともできる。なお、この例は、最初および最後にステップBを行う例を示している。
【0044】
[(原料ガス→O含有ガス+H含有ガス)×n2→(原料ガス→O含有ガス)×n1]×n3→(原料ガス→O含有ガス+H含有ガス)×n2
【0045】
これらの場合において、ステップAを複数回行う場合、複数回行うステップAのそれぞれにおけるn1を、それぞれ同一としてもよく、異ならせてもよい。ステップBを複数回行う場合、複数回行うステップBのそれぞれにおけるn2を、それぞれ同一としてもよく、異ならせてもよい。
【0046】
本明細書において「ウエハ」という言葉を用いた場合は、ウエハそのものを意味する場合や、ウエハとその表面に形成された所定の層や膜との積層体を意味する場合がある。本明細書において「ウエハの表面」という言葉を用いた場合は、ウエハそのものの表面を意味する場合や、ウエハ上に形成された所定の層等の表面を意味する場合がある。本明細書において「ウエハ上に所定の層を形成する」と記載した場合は、ウエハそのものの表面上に所定の層を直接形成することを意味する場合や、ウエハ上に形成されている層等の上に所定の層を形成することを意味する場合がある。本明細書において「基板」という言葉を用いた場合も、「ウエハ」という言葉を用いた場合と同義である。
【0047】
(ウエハチャージ、ボートロード)
複数枚のウエハ200がボート217に装填(ウエハチャージ)されると、シャッタ開閉機構115sによりシャッタ219sが移動させられて、マニホールド209の下端開口が開放される(シャッタオープン)。その後、
図1に示すように、複数枚のウエハ200を支持したボート217は、ボートエレベータ115によって持ち上げられて処理室201内へ搬入(ボートロード)される。この状態で、シールキャップ219は、Oリング220bを介してマニホールド209の下端をシールした状態となる。
【0048】
(圧力調整および温度調整)
ボートロードが終了した後、処理室201内、すなわち、ウエハ200が存在する空間が所望の圧力(真空度)となるように、真空ポンプ246によって真空排気(減圧排気)される。この際、処理室201内の圧力は圧力センサ245で測定され、この測定された圧力情報に基づきAPCバルブ244がフィードバック制御される(圧力調整)。また、処理室201内のウエハ200が所望の処理温度となるように、ヒータ207によって加熱される。この際、処理室201内が所望の温度分布となるように、温度センサ263が検出した温度情報に基づきヒータ207への通電具合がフィードバック制御される(温度調整)。また、回転機構267によるウエハ200の回転を開始する。処理室201内の排気、ウエハ200の加熱および回転は、いずれも、少なくともウエハ200に対する処理が終了するまでの間は継続して行われる。
【0049】
ウエハ200の表面は、水酸基、すなわち、ヒドロキシ基(-OH)により終端(OH終端)された状態となっている。すなわち、ウエハ200の表面には、OH終端が形成されている。ウエハ200の表面に存在するOH終端は、本態様において用いる原料ガスを構成する分子や原子の吸着サイトとしての機能を有している。
【0050】
(積層酸化膜形成)
その後、第1SiO膜を形成するステップAと、第2SiO膜を形成するステップBと、を所定の順序で交互に所定回数行う。
【0051】
〔ステップA〕
ステップAでは、次のステップa1,a2を順次行う。
【0052】
[ステップa1]
このステップでは、処理室201内のウエハ200に対して原料ガスを供給する。
【0053】
具体的には、バルブ243aを開き、ガス供給管232a内へ原料ガスを流す。原料ガスは、MFC241aにより流量調整され、ノズル249aを介して処理室201内へ供給され、排気口231aより排気される。このとき、ウエハ200に対して原料ガスが供給される(原料ガス供給)。このとき、バルブ243d,243eを開き、ノズル249a,249bを介して処理室201内へ不活性ガスを供給するようにしてもよい。
【0054】
本ステップでは、原料ガスに含まれる原子XとしてのSiから、第1官能基が脱離することなく、第2官能基が脱離する条件であって、第2官能基が脱離し第1官能基との結合が維持された状態のSiがウエハ200の表面に吸着する条件下で、原料ガスを供給する。原料ガスとして、Siが有する4つの結合手のうち3つの結合手のそれぞれに第1官能基が結合しており、Siの4つの結合手のうち残りの1つの結合手に第2官能基が結合しているガスを用いる場合、本ステップでは、Siの3つの結合手のそれぞれに第1官能基が結合した状態で、Siがウエハ200の表面に吸着する処理条件下で、原料ガスを供給する。なお、第1官能基とSiとの結合エネルギーEOは、第2官能基とSiとの結合エネルギーEAよりも高い。すなわち、第2官能基は、第1官能基に比べて、Siから脱離しやすい活性な特性を有している。
【0055】
本ステップをこのような処理条件下で行うことにより、原料ガスに含まれるSiから、第1官能基を脱離させることなく、第2官能基を脱離させることが可能となる。また、第2官能基が脱離し第1官能基との結合が維持された状態のSiを、ウエハ200の表面に吸着(化学吸着)させることが可能となる。結果として、例えば、Siの4つの結合手のうち3つの結合手に第1官能基が結合した状態で、Siをウエハ200の表面における吸着サイトの一部に吸着させることが可能となる。このようにして、ウエハ200の最表面上に、Siに第1官能基が結合した成分を含む第1層を形成することが可能となる。また、第1層の最表面を、化学的に安定な第1官能基で終端させた状態とすることが可能となる。
【0056】
また、本ステップでは、第2官能基が脱離し第1官能基との結合が維持された状態のSiのウエハ200の表面への吸着が、Siから脱離した第2官能基のウエハ200の表面への吸着よりも支配的(優勢)となる処理条件下で、原料ガスを供給する。
【0057】
本ステップをこのような処理条件下で行うことにより、原料ガスに含まれるSiから脱離した第2官能基のウエハ200の表面への吸着を抑制し、第2官能基を、ウエハ200の表面に吸着させないようにすることが可能となる。結果として、ウエハ200上に形成される第1層中への原料ガスに含まれるSiから脱離した第2官能基の混入を抑制し、第1層中に第2官能基を含ませないようにすることが可能となる。すなわち、ウエハ200上に形成される第1層を、第2官能基の含有量が少なく、第2官能基に由来する不純物、例えば、炭素(C)、窒素(N)等の不純物の少ない層とすることが可能となる。また、第1層の最表面を、化学的に安定な第1官能基で終端させた状態とすることが可能となる。
【0058】
また、本ステップでは、ウエハ200の表面に吸着したSiに結合した第1官能基により、すなわち、ウエハ200の表面に吸着したSiの結合手を第1官能基により埋めておく(塞いでおく)ことにより、ウエハ200の表面に吸着したSiへの原子または分子のうちの少なくともいずれかの吸着を阻害することが可能となる。また、本ステップでは、ウエハ200の表面に吸着したSiに結合した第1官能基を立体障害として作用させることにより、ウエハ200の表面に吸着したSiの周辺の、ウエハ200の表面における吸着サイト(OH終端)への原子または分子のうち少なくともいずれかの吸着を阻害することが可能となる。これらにより、ウエハ200上に形成される第1層の、ウエハ面内における厚さ均一性および段差被覆性を高めることが可能となる。
【0059】
また、本ステップでは、ウエハ200の表面に吸着したSiに結合した第1官能基により、その周辺のウエハ200の表面における吸着サイト(OH終端)を保持させることが可能となる。また、本ステップでは、Siをウエハ200の表面に不連続に吸着させることが可能となる。すなわち、本ステップでは、Siをウエハ200の表面に1原子層未満の厚さとなるように吸着させることが可能となる。これらにより、ウエハ200上に形成される第1層の、ウエハ面内における厚さ均一性および段差被覆性を高めることが可能となる。
【0060】
本ステップでは、Siのウエハ200の表面への吸着反応(化学吸着反応)が飽和するまで原料ガスの供給を継続することが好ましい。原料ガスの供給をこのように継続したとしても、Siに結合した第1官能基を立体障害として作用させることにより、Siを、ウエハ200の表面に不連続に吸着させることが可能となる。これにより、ウエハ200上に形成される第1層の、ウエハ面内における厚さ均一性および段差被覆性を高めることが可能となる。
【0061】
なお、Siのウエハ200の表面への吸着反応が飽和した状態において、ウエハ200の表面へ吸着したSiにより構成される第1層は、1原子層未満の厚さとなる。すなわち、Siのウエハ200の表面への吸着反応が飽和した状態において、ウエハ200の表面へ吸着したSiにより構成される第1層は、不連続層となる。これにより、ウエハ200上に形成される第1層の、ウエハ面内における厚さ均一性および段差被覆性を高めることが可能となる。
【0062】
また、Siのウエハ200の表面への吸着反応が飽和した状態において、ウエハ200の表面の一部は、吸着サイト(OH終端)が消費されることなく保持された状態となる。これにより、ウエハ200上に形成される第1層の、ウエハ面内における厚さ均一性および段差被覆性を高めることが可能となる。
【0063】
また、Siのウエハ200の表面への吸着反応が飽和した状態において、ウエハ200の表面は、Siに結合した第1官能基により覆われた状態となる。これにより、ウエハ200上に形成される第1層の、ウエハ面内における厚さ均一性および段差被覆性を高めることが可能となる。
【0064】
第1層が形成された後、バルブ243aを閉じ、処理室201内への原料ガスの供給を停止する。そして、処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留するガス等を処理室201内から排除する(パージ)。このとき、バルブ243d,243eを開き、処理室201内へ不活性ガスを供給する。不活性ガスはパージガスとして作用する。
【0065】
原料ガスとしては、原子XとしてのSiに第1官能基と第2官能基とが直接結合した部分構造を有し、第1官能基と原子XとしてのSiとの結合エネルギーEOが第2官能基と原子XとしてのSiとの結合エネルギーEAよりも高い物質を用いることが好ましい。第1官能基は、第3官能基を含んでいてもよい。
【0066】
第1官能基は、例えば、アルコキシ基を含む。アルコキシ基とは、第3官能基としてのアルキル基(R)が酸素(O)原子と結合した構造を有するものであり、-ORの構造式で表される1価の官能基のことである。アルコキシ基(-OR)には、メトキシ基(-OMe)、エトキシ基(-OEt)、プロポキシ基(-OPr)、ブトキシ基(-OBu)等が含まれる。アルコキシ基は、これらの直鎖状アルコキシ基だけでなく、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、セカンダリブトキシ基、ターシャリブトキシ基等の分岐状アルコキシ基であってもよい。また、上述の第3官能基としてのアルキル基(-R)には、メチル基(-Me)、エチル基(-Et)、プロピル基(-Pr)、ブチル基(-Bu)等が含まれる。アルキル基は、これらの直鎖状アルキル基だけでなく、イソプロピル基、イソブチル基、セカンダリブチル基、ターシャリブチル基等の分岐状アルキル基であってもよい。
【0067】
第2官能基は、例えば、アミノ基を含む。アミノ基とは、アンモニア(NH3)、第一級アミン、第二級アミンのいずれかから水素(H)を除去した構造を有するものであり、-NH2、-NHR、-NRR’のうちいずれかの構造式で表される1価の官能基のことである。構造式中に示したR、R’は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等を含むアルキル基である。R、R’は、これらの直鎖状アルキル基だけでなく、イソプロピル基、イソブチル基、セカンダリブチル基、ターシャリブチル基等の分岐状アルキル基であってもよい。R、R’は、同一のアルキル基であってもよく、異なるアルキル基であってもよい。アミノ基としては、例えば、ジメチルアミノ基(-N(CH3)2)、ジエチルアミノ基(-N(C2H5)2)等を例示することができる。
【0068】
メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基とSiとの結合エネルギーEOは、アミノ基とSiとの結合エネルギーEAよりも高い。すなわち、アミノ基は、アルコキシ基に比べて、Siから脱離しやすい活性な特性を有している。
【0069】
原料ガスとしては、例えば、トリメトキシ(ジメチルアミノ)シラン([(CH3)2N]Si(OCH3)3、略称:TMDMAS)ガス、トリエトキシ(ジエチルアミノ)シラン([(C2H5)2N]Si(OC2H5)3、略称:TEDEAS)ガス、トリエトキシ(ジメチルアミノ)シラン([(CH3)2N]Si(OC2H5)3、略称:TEDMAS)ガス、トリメトキシ(ジエチルアミノ)シラン([(C2H5)2N]Si(OCH3)3、略称:TMDEAS)ガス等を用いることができる。これらの原料に含まれるSiは4つの結合手を有しており、Siの4つの結合手のうち3つの結合手には第1官能基としてのアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基)が結合しており、Siの4つの結合手のうち残りの1つの結合手には第2官能基としてのアミノ基(ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基)が結合している。これらの原料に含まれるアミノ基の数とアルコキシ基の数との比率は、1:3となっている。原料ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0070】
また、原料ガスとしては、上述のガスに限らず、第1官能基とSiとの結合エネルギーEOが第2官能基とSiとの結合エネルギーENよりも高いガスであれば、同様の構造、すなわち、原子X(中心原子)としてのSiに第1官能基と第2官能基とが直接結合した部分構造を有する種々のガスを好適に用いることができる。すなわち、原料ガスとして、原子X(中心原子)としてのSiに第1官能基と第2官能基とが直接結合した部分構造を有するガスであって、第1官能基としてアルコキシ基を含み、第2官能基として、アミノ基、アルキル基、ハロゲノ基、ヒドロキシ基、ヒドロ基、アリール基、ビニル基、およびニトロ基のうち少なくともいずれか1つを含む種々のガスを好適に用いることができる。ここで、アルキル基には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が含まれる。また、ハロゲノ基には、クロロ基、フルオロ基、ブロモ基、ヨード基等が含まれる。すなわち、ハロゲノ基には、塩素(Cl)、フッ素(F)、臭素(Br)、ヨウ素(I)等のハロゲン元素が含まれる。
【0071】
不活性ガスとしては、例えば、窒素(N2)ガスや、アルゴン(Ar)ガス、ヘリウム(He)ガス、ネオン(Ne)ガス、キセノン(Xe)ガス等の希ガスを用いることができる。不活性ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。この点は、後述する各ステップにおいても同様である。
【0072】
[ステップa2]
ステップa1が終了した後、処理室201内のウエハ200、すなわち、ウエハ200上に形成された第1層に対して、第1酸化剤として、O含有ガスを供給する。
【0073】
具体的には、バルブ243bを開き、ガス供給管232b内へO含有ガスを流す。O含有ガスは、MFC241bにより流量調整され、ノズル249bを介して処理室201内へ供給され、排気口231aより排気される。このとき、ウエハ200に対してO含有ガスが供給される(O含有ガス供給)。このとき、バルブ243d,243eを開き、ノズル249a,249bを介して処理室201内へ不活性ガスを供給するようにしてもよい。
【0074】
本ステップでは、第1層に含まれるSiと結合する第1官能基に含まれる第3官能基、および、Siと結合する第1官能基のうち少なくともいずれかが脱離する処理条件下で、O含有ガスを供給する。
【0075】
本ステップをこのような処理条件下で行うことにより、第1層に含まれるSiと結合する第1官能基に含まれる第3官能基(その残基を含む)、および、Siと結合する第1官能基(その残基を含む)のうち少なくともいずれかを、第1層から脱離させることが可能となる。そして、ウエハ200上に形成された第1層の少なくとも一部を酸化(改質)させ、第2層として、SiおよびOを含む層であるシリコン酸化層(SiO層)を形成することが可能となる。第2層は、第1層よりも、第3官能基や第1官能基やそれらの残基に起因する不純物の含有量が少ない層、すなわち、第1層よりも、C,H等の不純物の含有量が少ない層となる。また、第2層の表面は、O含有ガスによる酸化処理の結果、OH終端された状態、すなわち、吸着サイトが形成された状態となる。なお、第1層から脱離したC,H等の不純物は、CやH等を含むガス状物質を構成し、処理室201内から排出される。
【0076】
第2層が形成された後、バルブ243bを閉じ、処理室201内へのO含有ガスの供給を停止する。そして、ステップa1におけるパージと同様の処理手順により、処理室201内に残留するガス等を処理室201内から排除する(パージ)。
【0077】
第1酸化剤、すなわち、O含有ガスとしては、例えば、酸素(O2)ガス、一酸化窒素(NO)ガス、亜酸化窒素(N2O)ガス、二酸化窒素(NO2)ガス、一酸化炭素(CO)ガス、二酸化炭素(CO2)ガス等を用いることができる。第1酸化剤としては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0078】
[所定回数実施]
上述のステップa1,a2を非同時に、すなわち、同期させることなく行うサイクルを所定回数(n1回、n1は1以上の整数)行うことにより、ウエハ200上に、所定組成および所定膜厚の第1SiO膜を形成することが可能となる。上述のサイクルは複数回繰り返すことが好ましい。すなわち、上述のサイクルを1回行うことで形成される第2層の厚さを所望の膜厚よりも小さくし、第2層を積層することで形成される第1SiO膜の膜厚が所望の膜厚になるまで、上述のサイクルを複数回繰り返すことが好ましい。第1SiO膜の厚さは、例えば、0.1nm以上5nm以下、好ましくは、0.5nm以上3nm以下の範囲内の厚さとすることができる。
【0079】
なお、第1SiO膜は、後述する第2SiO膜よりも、ウエハ面内膜厚均一性、段差被覆性に優れており、また、下地酸化量を良好な状態に維持できる特性を有している。第1SiO膜が第2SiO膜よりもウエハ面内膜厚均一性、段差被覆性に優れているのは、ステップa2において、後述するステップb2よりも酸化力が弱く(低く)なる処理条件下で、第1層を酸化させているためである。具体的には、ステップa2において、第1酸化剤として、O含有ガスを単体で用いているため、すなわち、後述するステップb2で用いる第2酸化剤よりも短時間で失活しにくいガスを用いているためである。この場合、ステップa2では、ウエハ200の周縁部においても、また、中央部においても、O含有ガスと第1層とを均等に反応させることができ、結果として、第1SiO膜を、ウエハ面内膜厚均一性、段差被覆性に優れた膜とすることが可能となる。また、第1SiO膜を形成する際に、第2SiO膜を形成する際よりも下地酸化量を良好な状態に維持できるのは、ステップa2において、後述するステップb2よりも酸化力が弱くなる処理条件下で、第1層を酸化させているためである。具体的には、ステップa2において、第1酸化剤として、後述するステップb2で用いる第2酸化剤よりも、酸化力の弱いガスを用いているためである。この場合、下地の酸化、すなわち、第1SiO膜と接するウエハ200の表面の酸化を充分に抑制することが可能となる。
【0080】
〔ステップB〕
ステップBでは、次のステップb1,b2を順次行う。
【0081】
[ステップb1]
このステップにおける処理手順、処理条件は、上述のステップa1における処理手順、処理条件と同様とする。
【0082】
すなわち、本ステップでは、原料ガスに含まれる原子XとしてのSiから、第1官能基が脱離することなく、第2官能基が脱離する条件であって、第2官能基が脱離し第1官能基との結合が維持された状態のSiがウエハ200の表面に吸着する条件下で、原料ガスを供給する。原料ガスとして、Siが有する4つの結合手のうち3つの結合手のそれぞれに第1官能基が結合しており、Siの4つの結合手のうち残りの1つの結合手に第2官能基が結合しているガスを用いる場合、本ステップでは、Siの3つの結合手のそれぞれに第1官能基が結合した状態で、Siがウエハ200の表面に吸着する処理条件下で、原料ガスを供給する。本ステップをこのような処理条件下で行うことにより、ウエハ200の最表面上に、Siに第1官能基が結合した成分を含む第3層を形成することが可能となる。また、第3層の最表面を、化学的に安定な第1官能基で終端させた状態とすることが可能となる。
【0083】
また、本ステップでは、第2官能基が脱離し第1官能基との結合が維持された状態のSiのウエハ200の表面への吸着が、Siから脱離した第2官能基のウエハ200の表面への吸着よりも支配的(優勢)となる処理条件下で、原料ガスを供給する。本ステップをこのような処理条件下で行うことにより、第3層を、第2官能基の含有量が少なく、第2官能基に由来する不純物、例えば、C,N等の不純物の少ない層とすることが可能となる。また、第3層の最表面を、化学的に安定な第1官能基で終端させた状態とすることが可能となる。
【0084】
また、本ステップでは、ステップa1と同様に、ウエハ200の表面に吸着したSiに結合した第1官能基により、ウエハ200の表面に吸着したSiへの原子または分子のうち少なくともいずれかの吸着を阻害することが可能となる。また、ウエハ200の表面に吸着したSiの周辺の、ウエハ200の表面における吸着サイト(OH終端)への原子または分子のうち少なくともいずれかの吸着を阻害することが可能となる。これらにより、ウエハ200上に形成される第3層の、ウエハ面内における厚さ均一性および段差被覆性を高めることが可能となる。
【0085】
また、本ステップでは、ステップa1と同様に、ウエハ200の表面に吸着したSiに結合した第1官能基により、その周辺のウエハ200の表面における吸着サイト(OH終端)を保持させることが可能となる。また、本ステップでは、Siをウエハ200の表面に不連続に吸着させることが可能となる。すなわち、本ステップでは、Siをウエハ200の表面に1原子層未満の厚さとなるように吸着させることが可能となる。これらにより、ウエハ200上に形成される第3層の、ウエハ面内における厚さ均一性および段差被覆性を高めることが可能となる。
【0086】
また、本ステップにおいても、ステップa1と同様に、Siのウエハ200の表面への吸着反応(化学吸着反応)が飽和するまで原料ガスの供給を継続することが好ましい。原料ガスの供給をこのように継続したとしても、Siをウエハ200の表面に不連続に吸着させることが可能となる。これにより、ウエハ200上に形成される第3層の、ウエハ面内における厚さ均一性および段差被覆性を高めることが可能となる。
【0087】
また、Siのウエハ200の表面への吸着反応が飽和した状態において、ウエハ200の表面へ吸着したSiにより構成される第3層は、1原子層未満の厚さの不連続層となる。これにより、ウエハ200上に形成される第3層の、ウエハ面内における厚さ均一性および段差被覆性を高めることが可能となる。
【0088】
また、Siのウエハ200の表面への吸着反応が飽和した状態において、ウエハ200の表面の一部は、吸着サイト(OH終端)が消費されることなく保持された状態となる。これにより、ウエハ200上に形成される第3層の、ウエハ面内における厚さ均一性および段差被覆性を高めることが可能となる。
【0089】
また、Siのウエハ200の表面への吸着反応が飽和した状態において、ウエハ200の表面は、Siに結合した第1官能基により覆われた状態となる。これにより、ウエハ200上に形成される第3層の、ウエハ面内における厚さ均一性および段差被覆性を高めることが可能となる。
【0090】
第3層が形成された後、バルブ243aを閉じ、処理室201内への原料ガスの供給を停止する。そして、ステップa1におけるパージと同様の処理手順により、処理室201内に残留するガス等を処理室201内から排除する(パージ)。
【0091】
原料ガスとしては、ステップa1で例示した各種の原料ガスを用いることができる。
【0092】
[ステップb2]
ステップb1が終了した後、処理室201内のウエハ200、すなわち、ウエハ200上に形成された第3層に対してO含有ガスおよびH含有ガスを供給する。
【0093】
具体的には、バルブ243b,243cを開き、ガス供給管232b,232c内へO含有ガス、H含有ガスをそれぞれ流す。ガス供給管232b,232c内を流れたO含有ガス、H含有ガスは、それぞれ、MFC241b,241cにより流量調整され、ノズル249b,249aを介して処理室201内へ供給される。O含有ガスとH含有ガスとは、処理室201内で混合して反応し、その後、排気口231aより排気される。このとき、ウエハ200に対して、O含有ガスとH含有ガスとの反応により生じた原子状酸素(atomic oxygen、O)等の酸素を含む水分(H2O)非含有の酸化種が供給される(O含有ガスおよびH含有ガス供給)。このとき、バルブ243d,243eを開き、ノズル249a,249bを介して処理室201内へ不活性ガスを供給するようにしてもよい。
【0094】
本ステップでは、第3層に含まれるSiと結合する第1官能基に含まれる第3官能基、および、Siと結合する第1官能基が脱離する処理条件下で、O含有ガスおよびH含有ガスを供給する。
【0095】
本ステップをこのような処理条件下で行うことにより、第3層に含まれるSiと結合する第1官能基に含まれる第3官能基(その残基を含む)、および、Siと結合する第1官能基(その残基を含む)を、第3層から脱離させることが可能となる。そして、ウエハ200上に形成された第3層の少なくとも一部を酸化(改質)させ、第4層として、SiおよびOを含む層であるシリコン酸化層(SiO層)を形成することが可能となる。第4層は、第3層よりも、第3官能基や第1官能基やそれらの残基に起因する不純物の含有量が少ない層、すなわち、第3層よりも、C,H等の不純物の含有量が少ない層となる。また、第4層の表面は、O含有ガスおよびH含有ガスによる酸化処理の結果、OH終端された状態、すなわち、吸着サイトが形成された状態となる。なお、第3層から脱離したC,H等の不純物は、CやH等を含むガス状物質を構成し、処理室201内から排出される。
【0096】
なお、本ステップにおいては、ステップa2よりも酸化力が高く(強く)なる処理条件下で、第3層を酸化させることができる。具体的には、本ステップでは、原子状酸素等の酸化種を用いることにより、第3層を酸化させる際の酸化力を、ステップa2において第1層を酸化させる際の酸化力よりも高くすることができる。これにより、ステップb2においては、第3層に含まれるSiと結合する第1官能基に含まれる第3官能基(その残基を含む)、および、Siと結合する第1官能基(その残基を含む)の脱離を、それぞれ促すことが可能となる。また、第3層に、第2官能基(その残基を含む)が含まれている場合は、その脱離を促すことも可能となる。結果として、第4層を、第2層よりも、C,H,N等の不純物の少ない層とすることが可能となる。
【0097】
第4層が形成された後、バルブ243b,243cを閉じ、処理室201内へのO含有ガス、H含有ガスの供給をそれぞれ停止する。そして、ステップa1におけるパージと同様の処理手順により、処理室201内に残留するガス等を処理室201内から排除する(パージ)。
【0098】
第2酸化剤、すなわち、O含有ガス+H含有ガスとしては、例えば、O2ガス+水素(H2)ガス、オゾン(O3)ガス+H2ガス、過酸化水素(H2O2)ガス+H2ガス、水蒸気(H2Oガス)+H2ガス等を用いることができる。この場合において、H含有ガスとして、H2ガスの代わりに重水素(2H2)ガスを用いることもできる。なお、本明細書において「O2ガス+H2ガス」というような2つのガスの併記記載は、H2ガスとO2ガスとの混合ガスを意味している。混合ガスを供給する場合は、2つのガスを供給管内で混合(プリミックス)させた後、処理室201内へ供給するようにしてもよいし、2つのガスを異なる供給管より別々に処理室201内へ供給し、処理室201内で混合(ポストミックス)させるようにしてもよい。第2酸化剤としては、この他、例えば、O3ガス、H2O2ガス、H2Oガス、プラズマ励起させたO2ガス(O2
*)等のO含有ガスを、反応性ガスとしては単独で、すなわち、H含有ガスを添加することなく用いることができる。第2酸化剤としては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0099】
[所定回数実施]
上述のステップb1,b2を非同時に、すなわち、同期させることなく行うサイクルを所定回数(n2回、n2は1以上の整数)行うことにより、ウエハ200上に、所定組成および所定膜厚の第2SiO膜を形成することが可能となる。上述のサイクルは複数回繰り返すことが好ましい。すなわち、上述のサイクルを1回行うことで形成される第4層の厚さを所望の膜厚よりも小さくし、第4層を積層することで形成される第2SiO膜の膜厚が所望の膜厚になるまで、上述のサイクルを複数回繰り返すことが好ましい。第2SiO膜の厚さは、例えば、0.1nm以上5nm以下、好ましくは、0.5nm以上3nm以下の範囲内の厚さとすることができる。
【0100】
なお、第2SiO膜は、上述の第1SiO膜よりも、加工耐性(ウェットエッチング耐性等、以下、単にエッチング耐性ともいう)に優れた膜となる。これは、ステップb2において、第2酸化剤としてO含有ガスおよびH含有ガスを用い、第3層を酸化させる際の酸化力を、ステップa2において第1層を酸化させる際の酸化力よりも高くしているためである。これにより、第2SiO膜を、第1SiO膜よりも、C,H,N等の不純物が少ない膜とすることができる。また、これにより、第2SiO膜を構成する原子の配列を整え、第2SiO膜を構成する原子同士の距離を、第1SiO膜を構成する原子同士の距離よりも短くし、第2SiO膜を構成する原子同士の結合を、第1SiO膜を構成する原子同士の結合よりも強固なものとすることができる。結果として、第2SiO膜の分子構造を、第1SiO膜の分子構造よりも安定な状態に近づけることが可能となる。これらの結果として、第2SiO膜は、第1SiO膜よりも、加工耐性に優れた膜となる。
【0101】
〔ステップA,Bの交互実施〕
上述のステップA,Bを所定の順序で交互に所定回数行うことで、
図6に示すように、ウエハ200上に、第1SiO膜と、第2SiO膜と、が交互に積層されてなる酸化膜(積層酸化膜)として、SiO膜(積層SiO膜)を形成することが可能となる。
【0102】
上述のように、第1SiO膜は、第2SiO膜よりも、ウエハ面内膜厚均一性、段差被覆性に優れており、また、下地酸化量を良好な状態に維持できる特性を有している。また、第2SiO膜は、第1SiO膜よりも、加工耐性に優れている。これらの理由から、第1SiO膜と第2SiO膜との積層構造(ラミネート構造)を有する積層酸化膜は、これらの特徴を併せ持つ膜、すなわち、ウエハ面内膜厚均一性、段差被覆性に優れ、また、下地酸化量を良好な状態に維持する特性を有し、さらに、加工耐性に優れた膜となる。
【0103】
なお、第1SiO膜および第2SiO膜のうち少なくともいずれかの膜の厚さを、好ましくは、両方の膜の厚さを、0.1nm以上5nm以下、好ましくは、0.5nm以上3nm以下、より好ましくは、0.5nm以上2nm以下、さらに好ましくは、0.5nm以上1.5nm以下の範囲内の厚さとすることで、第1SiO膜と第2SiO膜のそれぞれの特性、すなわち、優れたウエハ面内膜厚均一性、段差被覆性、加工耐性、下地酸化抑制作用等の特性が、より適正に融合した積層酸化膜を形成することが可能となる。
【0104】
なお、
図6に示すように、積層酸化膜を形成する際は、最初にステップAを行うことで、最初にウエハ200上に第1SiO膜を形成することが好ましい。また、積層酸化膜を形成する際は、最後にステップBを行うことで、最後に第2SiO膜を形成することが好ましい。すなわち、
図6に示すように、積層酸化膜の最下層の膜を、第1SiO膜とし、積層酸化膜の最上層の膜を、第2SiO膜とすることが好ましい。
【0105】
(処理条件)
以下、ステップA,Bにおける具体的な処理条件を例示する。以下の説明において、「1~2666Pa」のような数値範囲の表記は、下限値および上限値がその範囲に含まれることを意味する。よって、例えば、「1~2666Pa」とは「1Pa以上2666Pa以下」を意味する。他の数値範囲についても同様である。また、本明細書における処理温度とはウエハ200の温度のことを意味し、処理圧力とは処理室201内の圧力のことを意味する。また、ガス供給流量:0sccmとは、そのガスを供給しないケースを意味する。これらは、以下の説明においても同様である。
【0106】
ステップa1における処理条件としては、
原料ガス供給流量:0.01~2slm、好ましくは0.1~1slm
原料ガス供給時間:1~120秒、好ましくは1~60秒
不活性ガス供給流量(ガス供給管毎):0~10slm
処理温度:550~700℃、好ましくは600~650℃
処理圧力:1~2666Pa、好ましくは67~1333Pa
が例示される。
【0107】
ステップa2における処理条件としては、
O含有ガス供給流量:0.1~10slm
O含有ガス供給時間:1~120秒、好ましくは1~60秒
処理圧力:1~4000Pa、好ましくは1~3000Pa
が例示される。他の処理条件は、ステップa1における処理条件と同様な処理条件とすることができる。
【0108】
ステップb1における処理条件としては、
原料ガス供給流量:0.01~2slm、好ましくは0.1~1slm
原料ガス供給時間:1~120秒、好ましくは1~60秒
不活性ガス供給流量(ガス供給管毎):0~10slm
処理温度:550~700℃、好ましくは600~650℃
処理圧力:1~2666Pa、好ましくは67~1333Pa
が例示される。
【0109】
ステップb2における処理条件としては、
O含有ガス供給流量:0.1~10slm
H含有ガス供給流量:0.1~10slm
各ガス供給時間:1~120秒、好ましくは1~60秒
処理圧力:1~2000Pa、好ましくは1~1333Pa
が例示される。他の処理条件は、ステップb1における処理条件と同様とすることができる。
【0110】
なお、処理温度が550℃未満となると、ウエハ200上に形成される第1SiO膜および第2SiO膜中に、第1官能基や、第2官能基や、第3官能基や、それらの残基等に由来するC,H,N等の不純物が残留しやすくなり、ウエハ200上に形成される積層酸化膜の加工耐性、すなわち、エッチング耐性が低下する場合がある。処理温度を550℃以上の温度とすることで、第1SiO膜のエッチング耐性の低下を、第2SiO膜の高いエッチング耐性により補うことが可能となり、積層酸化膜全体でのエッチング耐性を、実用レベルとすることが可能となる。処理温度を600℃以上の温度とすることで、ここで述べた効果をさらに高めることが可能となる。
【0111】
また、処理温度が700℃を超えると、積層酸化膜全体でのウエハ面内膜厚均一性、段差被覆性が悪化し、また、下地酸化量が多くなり過ぎて、それらがそれぞれ実用レベルを下回る場合がある。処理温度を700℃以下の温度とすることで、第2SiO膜のウエハ面内膜厚均一性、段差被覆性の低下を、第1SiO膜の高いウエハ面内膜厚均一性、段差被覆性により、それぞれ補うことが可能となり、積層酸化膜全体でのウエハ面内膜厚均一性、段差被覆性を、実用レベルとすることが可能となる。また、下地酸化量を、実用レベルとすることが可能となる。処理温度を650℃以下とすることで、ここで述べた効果をさらに高めることが可能となる。
【0112】
(アフターパージおよび大気圧復帰)
ウエハ200上に所望の厚さの積層酸化膜が形成された後、ノズル249a,249bのそれぞれから、パージガスとしての不活性ガスを処理室201内へ供給し、排気口231aより排気する。これにより、処理室201内がパージされ、処理室201内に残留するガスや反応副生成物等が処理室201内から除去される(アフターパージ)。その後、処理室201内の雰囲気が不活性ガスに置換され(不活性ガス置換)、処理室201内の圧力が常圧に復帰される(大気圧復帰)。
【0113】
(ボートアンロード、ウエハディスチャージ)
その後、ボートエレベータ115によりシールキャップ219が下降され、マニホールド209の下端が開口される。そして、処理済のウエハ200が、ボート217に支持された状態でマニホールド209の下端から反応管203の外部に搬出(ボートアンロード)される。ボートアンロードの後は、シャッタ219sが移動させられ、マニホールド209の下端開口がOリング220cを介してシャッタ219sによりシールされる(シャッタクローズ)。処理済のウエハ200は、反応管203の外部に搬出された後、ボート217より取り出される(ウエハディスチャージ)。
【0114】
(3)本態様による効果
本態様によれば、以下に示す一つ又は複数の効果が得られる。
【0115】
(a)ステップAにおいては、下地酸化量を良好な状態に維持しつつ、第2SiO膜よりもウエハ面内膜厚均一性、段差被覆性に優れた第1SiO膜を形成することが可能となる。また、ステップBにおいては、第1SiO膜よりも加工耐性に優れた第2SiO膜を形成することが可能となる。本態様においては、これらのステップを交互に所定回数行うことで、下地酸化量を良好な状態に維持しつつ、ウエハ200上に形成される積層酸化膜を、ウエハ面内膜厚均一性、段差被覆性、加工耐性に優れた膜とすることが可能となる。
【0116】
(b)ステップa1およびステップb1では、上述の原料ガスを用いることにより、第1層および第3層の各最表面を、それぞれ、化学的に安定な第1官能基で終端させることができ、ウエハ200の表面に吸着したSiへの原子および分子のうち少なくともいずれかの吸着を阻害すると共に、その周辺のウエハ200の表面における吸着サイト(OH終端)への原子および分子のうち少なくともいずれかの吸着を阻害することが可能となる。その結果、第1層および第3層のウエハ面内における厚さ均一性および段差被覆性をそれぞれ高めることが可能となり、ウエハ200上に形成される積層酸化膜を、ウエハ面内膜厚均一性、段差被覆性に優れた膜とすることが可能となる。
【0117】
(c)ステップa1およびステップb1では、原料に含まれるSiから、第1官能基が脱離することなく、第2官能基が脱離する処理条件であって、第2官能基が脱離し第1官能基との結合が維持された状態のSiがウエハ200の表面に吸着する処理条件下で、原料ガスを供給する。これにより、第1層および第3層の最表面を、それぞれ、化学的に安定な第1官能基で終端させることが可能となる。その結果、第1層および第3層のウエハ面内における厚さ均一性および段差被覆性をそれぞれ高めることが可能となり、ウエハ200上に形成される積層酸化膜を、ウエハ面内膜厚均一性、段差被覆性に優れた膜とすることが可能となる。
【0118】
(d)ステップa1およびステップb1では、第2官能基が脱離し第1官能基との結合が維持された状態のSiのウエハ200の表面への吸着が、Siから脱離した第2官能基のウエハ200の表面への吸着よりも支配的(優勢)となる処理条件下で、原料を供給する。これにより、第1層中および第3層中に取り込まれ得る第2官能基由来の不純物の量(濃度)をそれぞれ低減させつつ、第1層および第3層の各最表面を、それぞれ、化学的に安定な第1官能基で終端させることが可能となる。その結果、ウエハ200上に形成される積層酸化膜を、加工耐性に優れ、また、ウエハ面内膜厚均一性、段差被覆性に優れた膜とすることが可能となる。
【0119】
(e)ステップa1およびステップb1では、ウエハ200の表面に吸着したSiに結合した第1官能基により、ウエハ200の表面に吸着したSiへの原子および分子のうち少なくともいずれかの吸着を阻害すると共に、その周辺のウエハ200の表面における吸着サイト(OH終端)への原子および分子のうち少なくともいずれかの吸着を阻害する。これにより、第1層および第3層のウエハ面内における厚さ均一性および段差被覆性をそれぞれ高めることが可能となり、ウエハ200上に形成される積層酸化膜を、ウエハ面内膜厚均一性、段差被覆性に優れた膜とすることが可能となる。
【0120】
(f)ステップa1およびステップb1では、ウエハ200の表面に吸着したSiに結合した第1官能基により、その周辺のウエハ200の表面における吸着サイト(OH終端)を保持させる。これにより、第1層および第3層のウエハ面内における厚さ均一性および段差被覆性をそれぞれ高めることが可能となり、ウエハ200上に形成される積層酸化膜を、ウエハ面内膜厚均一性、段差被覆性に優れた膜とすることが可能となる。
【0121】
(g)ステップa1およびステップb1では、Siを、ウエハ200の表面に、不連続に、すなわち、1原子層未満の厚さとなるように吸着させることが可能となる。これにより、第1層および第3層のウエハ面内における厚さ均一性および段差被覆性をそれぞれ高めることが可能となり、ウエハ200上に形成される積層酸化膜を、ウエハ面内膜厚均一性、段差被覆性に優れた膜とすることが可能となる。
【0122】
(h)ステップa1およびステップb1において、Siのウエハ200の表面への吸着反応(化学吸着反応)が飽和するまで原料ガスの供給を継続するようにした場合、第1層および第3層のウエハ面内における厚さ均一性および段差被覆性をそれぞれ高めることが可能となる。これは、Siのウエハ200の表面への吸着反応が飽和した状態において、ウエハ200の表面へ吸着したSiにより構成される層が1原子層未満の厚さの不連続層となり、また、ウエハ200の表面の一部には吸着サイト(OH終端)が保持され、また、ウエハ200の表面が、第1官能基により覆われた状態となるためである。これらの結果として、ウエハ200上に形成される積層酸化膜を、ウエハ面内膜厚均一性、段差被覆性により優れた膜とすることが可能となる。
【0123】
(i)ステップa2では、第1層に含まれるSiと結合する第1官能基に含まれる第3官能基、および、Siと結合する第1官能基のうち少なくともいずれかが脱離する処理条件下で、O含有ガスを供給し、ステップb2では、第3層に含まれるSiと結合する第1官能基に含まれる第3官能基、および、Siと結合する第1官能基が脱離する処理条件下で、O含有ガスおよびH含有ガスを供給する。これにより、第1層中および第3層中に含まれる第1官能基や、第3官能基や、それらの残基等に由来する不純物の量(濃度)をそれぞれ低減させつつ、第1層および第3層の各最表面に、吸着サイトを形成することが可能となる。これらの結果、ウエハ200上に形成される積層酸化膜を、加工耐性に優れ、また、ウエハ面内膜厚均一性、段差被覆性に優れた膜とすることが可能となる。
【0124】
(j)積層酸化膜を形成する際に、最初にステップAを行うことで、最初にウエハ200上に第1SiO膜を形成するようにすれば、その際の下地、すなわち、ウエハ200の表面の酸化を抑制することが可能となる。その後は、最初に形成した第1SiO膜を酸化ブロック層として作用させつつ、第2SiO膜を形成することで、その際の下地の酸化を抑制することが可能となる。これらにより、積層酸化膜を形成する際における下地の酸化を、抑制することが可能となる。
【0125】
また、積層酸化膜を形成する際に、最初にステップAを行うことで、最初にウエハ200上に第1SiO膜を形成するようにすれば、最初に形成される第1SiO膜が有する優れた特性、すなわち、ウエハ面内膜厚均一性および段差被覆性を、その後に第1SiO膜上に形成される膜へと引き継がせることができ、最終的に形成される積層酸化膜のウエハ面内膜厚均一性および段差被覆性を、向上させることが可能となる。
【0126】
(k)また、積層酸化膜を形成する際に、最後にステップBを行うことで、最後に第2SiO膜を形成するようにすれば、最終的に形成される積層酸化膜の最表面を、加工耐性に優れた第2SiO膜とすることが可能となる。これにより、最終的に形成される積層酸化膜の最表面の加工耐性を高めることができ、積層酸化膜全体での加工耐性を高めることが可能となる。
【0127】
また、積層酸化膜を形成する際に、最後にステップBを行うことで、最後に第2SiO膜を形成するようにすれば、第2SiO膜の下層となる第1SiO膜を改質して加工耐性を高めることができ、積層酸化膜全体での加工耐性をより高めることが可能となる。なお、ここで述べた効果は、第1SiO膜、第2SiO膜を、この順に形成することによる効果、すなわち、第1SiO膜の上に第2SiO膜を形成することによる効果であるともいえる。
【0128】
これらの効果を得ようとする場合、以下に示す成膜シーケンスのように、積層酸化膜を形成する際に、最初にステップAを行い、最後にステップBを行うことが好ましい。なお、以下に示す成膜シーケンスにおけるn1,n2,n3は、それぞれ、1以上の整数を示している。
【0129】
[(原料ガス→O含有ガス)×n1→(原料ガス→O含有ガス+H含有ガス)×n2]×n3
【0130】
(l)本態様による効果は、上述の各種原料ガスを用いる場合や、上述の各種酸化剤を用いる場合や、上述の各種不活性ガスを用いる場合にも、同様に得ることができる。
【0131】
(4)変形例
本態様における基板処理シーケンスは、以下に示す変形例のように変更することができる。
【0132】
(変形例1)
図7に示すように、積層酸化膜を形成する際に、ステップAおよびステップBを交互に繰り返し、最初(初期)に形成する第1SiO膜を、最初(初期)に形成する第2SiO膜よりも厚くするようにしてもよい。
【0133】
本変形例によれば、上述の態様と同様の効果が得られる。
【0134】
また、最初(初期)に形成する第1SiO膜の厚さを、最初(初期)に形成する第2SiO膜の厚さよりも厚くすることで、下地、すなわち、ウエハ200の表面の酸化が生じやすい最初(初期)における下地の酸化を抑制することが可能となる。
【0135】
また、最初(初期)に形成する第1SiO膜の厚さを、最初(初期)に形成する第2SiO膜の厚さよりも厚くすることで、最初(初期)に形成する第1SiO膜における優れたウエハ面内膜厚均一性および段差被覆性を、積層酸化膜全体に、引き継がせることが容易となり、最終的に形成される積層酸化膜のウエハ面内膜厚均一性および段差被覆性を、より向上させることが可能となる。
【0136】
なお、この場合において、最初に、ウエハ面内膜厚均一性および段差被覆性に優れた第1SiO膜を形成するようにすれば、最終的に形成される積層酸化膜のウエハ面内膜厚均一性および段差被覆性を、よりいっそう向上させることが可能となる。
【0137】
(変形例2)
図7に示すように、積層酸化膜を形成する際に、ステップAおよびステップBを交互に繰り返し、最後(後期)に形成する第2SiO膜を、最後(後期)に形成する第1SiO膜よりも厚くするようにしてもよい。
【0138】
本変形例によれば、上述の態様と同様の効果が得られる。
【0139】
また、最後(後期)に形成する第2SiO膜の厚さを、最後(後期)に形成する第1SiO膜の厚さよりも厚くすることで、最終的に形成される積層酸化膜の最表面側の加工耐性を高め、積層酸化膜全体での加工耐性を高めることが可能となる。
【0140】
なお、この場合において、最後に、加工耐性に優れた第2SiO膜を形成するようにすれば、最終的に形成される積層酸化膜の加工耐性を、よりいっそう向上させることが可能となる。
【0141】
(変形例3)
図7に示すように、積層酸化膜を形成する際に、ステップAおよびステップBを交互に繰り返すにつれ、第2SiO膜の厚さに対する第1SiO膜の厚さの比が、段階的に小さくなるようにしてもよい。すなわち、第1SiO膜の厚さに対する第2SiO膜の厚さの比が、段階的に大きくなるようにしてもよい。
【0142】
本変形例によれば、上述の態様と同様の効果が得られる。
【0143】
また、積層酸化膜の厚さ方向で、急激に膜の特性が変わるのではなく、段階的に膜の特性が変わるようにグラデーションをかけることができ、上述の態様や変形例で述べた各効果を、積層酸化膜全体でバランスよく得ることが可能となる。なお、積層酸化膜の厚さ方向に、このようなグラデーションをかけることにより、成膜初期は、下地の酸化を抑制しつつ、ウエハ面内膜厚均一性および段差被覆性を向上させる作用が強くなり、成膜後期は、加工耐性を高める作用が強くなる。すなわち、積層酸化膜の下地の酸化は抑制され、積層酸化膜の下部は、特に、ウエハ面内膜厚均一性および段差被覆性に優れた特性を有することとなり、積層酸化膜の上部は、特に、加工耐性に優れた特性を有することなる。なお、積層酸化膜の上部は、積層酸化膜の下部(初期に形成される酸化膜)の特性を引き継ぐ傾向があることから、積層酸化膜全体でのウエハ面内膜厚均一性および段差被覆性も良好なものとなる。
【0144】
(変形例4)
以下に示すガス供給シーケンスのように、積層酸化膜を形成する際に、ウエハ200に対してO含有ガスを先行して供給(プリフロー)した後に、ステップAと、ステップBと、を交互に所定回数行うようにしてもよい。
【0145】
O含有ガス→(原料ガス→O含有ガス)×n1→(原料ガス→O含有ガス+H含有ガス)×n2→・・・
【0146】
本変形例によれば、上述の態様と同様の効果が得られる。
【0147】
また、ウエハ200に対してO含有ガスをプリフローすることにより、積層酸化膜を形成する前のウエハ200の表面における吸着サイト(OH終端)を適正化させることが可能となる。これにより、第1SiO膜や第2SiO膜の形成を促し、積層酸化膜を形成する際のインキュベーションタイムを短縮させることが可能となる。なお、このときの処理条件は、ステップa2における処理条件と同様とすることができる。ただし、O含有ガス供給時間は、ステップa2におけるO含有ガス供給時間よりも長くすることが好ましい。例えば、O含有ガスをプリフローする際におけるO含有ガス供給時間は30~300秒、好ましくは60~180秒とすることができる。
【0148】
<本開示の他の態様>
以上、本開示の態様を具体的に説明した。しかしながら、本開示は上述の態様に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0149】
例えば、第1SiO膜を形成するステップAと、第2SiO膜を形成するステップBと、のうち少なくともいずれかで、ウエハ200に対してアンモニア(NH3)ガス等のN及びH含有ガスを供給するステップを行うようにしてもよい。N及びH含有ガスは、N含有ガスでもあり、H含有ガスでもある。N及びH含有ガスは、上述のH含有ガス供給系から供給することができる。N及びH含有ガスを供給するステップにおける処理手順、処理条件は、上述の態様におけるステップa2,b2におけるそれらと同様とすることができる。
【0150】
この場合、ウエハ200上に、
N含有第1SiO膜と、N含有第2SiO膜と、が交互に積層されてなるN含有SiO膜、
N含有第1SiO膜と、第2SiO膜と、が交互に積層されてなるN含有SiO膜、
第1SiO膜と、N含有第2SiO膜と、が交互に積層されてなるN含有SiO膜、
のうちいずれかを形成することが可能となる。いずれの場合においても、上述の態様と同様の効果が得られる。
【0151】
また例えば、第1SiO膜を形成するステップAと、第2SiO膜を形成するステップBと、のうち少なくともいずれかで、ウエハ200に対してプロピレン(C3H6)ガス等のC及びH含有ガスを供給するステップを行うようにしてもよい。C及びH含有ガスは、C含有ガスでもあり、H含有ガスでもある。C及びH含有ガスは、上述の原料ガス供給系から供給することができる。C及びH含有ガスを供給するステップにおける処理手順、処理条件は、上述の態様のステップa2,b2におけるそれらと同様とすることができる。
【0152】
この場合、ウエハ200上に、
C含有第1SiO膜と、C含有第2SiO膜と、が交互に積層されてなるC含有SiO膜、
C含有第1SiO膜と、第2SiO膜と、が交互に積層されてなるC含有SiO膜、
第1SiO膜と、C含有第2SiO膜と、が交互に積層されてなるC含有SiO膜、
のうちいずれかを形成することが可能となる。いずれの場合においても、上述の態様と同様の効果が得られる。
【0153】
また例えば、第1SiO膜を形成するステップAと、第2SiO膜を形成するステップBと、のうち少なくともいずれかで、ウエハ200に対してC3H6ガス等のC及びH含有ガスを供給するステップと、ウエハ200に対してNH3ガス等のN及びH含有ガスを供給するステップと、を行うようにしてもよい。C及びH含有ガスは、上述の原料ガス供給系から供給することができ、N及びH含有ガスは、上述のH含有ガス供給系から供給することができる。C及びH含有ガスを供給するステップ、および、N及びH含有ガスを供給するステップにおける処理手順、処理条件は、それぞれ、上述の態様のステップa2,b2におけるそれらと同様とすることができる。
【0154】
この場合、ウエハ200上に、
C及びN含有第1SiO膜と、C及びN含有第2SiO膜と、が交互に積層されてなるC及びN含有SiO膜、
C及びN含有第1SiO膜と、第2SiO膜と、が交互に積層されてなるC及びN含有SiO膜、
第1SiO膜と、C及びN含有第2SiO膜と、が交互に積層されてなるC及びN含有SiO膜、
のうちいずれかを形成することが可能となる。いずれの場合においても、上述の態様と同様の効果が得られる。
【0155】
また例えば、第1SiO膜を形成するステップAと、第2SiO膜を形成するステップBと、のうち少なくともいずれかで、ウエハ200に対してトリクロロボラン(BCl3)ガス等のB含有ガスを供給するステップを行うようにしてもよい。B含有ガスは、上述の原料ガス供給系から供給することができる。B含有ガスを供給するステップにおける処理手順、処理条件は、上述の態様のステップa2,b2におけるそれらと同様とすることができる。
【0156】
この場合、ウエハ200上に、
B含有第1SiO膜と、B含有第2SiO膜と、が交互に積層されてなるB含有SiO膜、
B含有第1SiO膜と、第2SiO膜と、が交互に積層されてなるB含有SiO膜、
第1SiO膜と、B含有第2SiO膜と、が交互に積層されてなるB含有SiO膜、
のうちいずれかを形成することが可能となる。いずれの場合においても、上述の態様と同様の効果が得られる。
【0157】
原料ガスに含まれる原子Xは、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、ルテニウム(Ru)等の金属元素であってもよい。これらの場合、ウエハ200上に、アルミニウム酸化膜(AlO)膜、チタン酸化膜(TiO膜)、ジルコニウム酸化膜(ZrO膜)、ハフニウム酸化膜(HfO膜)、タンタル酸化膜(TaO膜)、モリブデン酸化膜(MoO膜)、タングステン酸化膜(WO膜)、ルテニウム酸化膜(RuO膜)等の積層金属酸化膜を形成することが可能となる。これらの場合における処理手順、処理条件は、上述の態様におけるそれらと同様とすることができる。これらの場合においても、上述の態様と同様の効果が得られる。
【0158】
各処理に用いられるレシピは、処理内容に応じて個別に用意し、電気通信回線や外部記憶装置123を介して記憶装置121c内に格納しておくことが好ましい。そして、各処理を開始する際、CPU121aが、記憶装置121c内に格納された複数のレシピの中から、処理内容に応じて適正なレシピを適宜選択することが好ましい。これにより、1台の基板処理装置で様々な膜種、組成比、膜質、膜厚の膜を、再現性よく形成することができるようになる。また、オペレータの負担を低減でき、操作ミスを回避しつつ、各処理を迅速に開始できるようになる。
【0159】
上述のレシピは、新たに作成する場合に限らず、例えば、基板処理装置に既にインストールされていた既存のレシピを変更することで用意してもよい。レシピを変更する場合は、変更後のレシピを、電気通信回線や当該レシピを記録した記録媒体を介して、基板処理装置にインストールしてもよい。また、既存の基板処理装置が備える入出力装置122を操作し、基板処理装置に既にインストールされていた既存のレシピを直接変更してもよい。
【0160】
上述の態様では、一度に複数枚の基板を処理するバッチ式の基板処理装置を用いて膜を形成する例について説明した。本開示は上述の態様に限定されず、例えば、一度に1枚または数枚の基板を処理する枚葉式の基板処理装置を用いて膜を形成する場合にも、好適に適用できる。また、上述の態様では、ホットウォール型の処理炉を有する基板処理装置を用いて膜を形成する例について説明した。本開示は上述の態様に限定されず、コールドウォール型の処理炉を有する基板処理装置を用いて膜を形成する場合にも、好適に適用できる。
【0161】
これらの基板処理装置を用いる場合においても、上述の態様や変形例と同様な処理手順、処理条件にて各処理を行うことができ、上述の態様や変形例と同様の効果が得られる。
【0162】
また、上述の態様や変形例は、適宜組み合わせて用いることができる。このときの処理手順、処理条件は、例えば、上述の態様や変形例の処理手順、処理条件と同様とすることができる。
【0163】
<本開示の好ましい態様>
以下、本開示の好ましい態様について付記する。
【0164】
(付記1)
本開示の一態様によれば、
(a)(a1)基板に対して、原子Xに第1官能基と第2官能基とが直接結合した部分構造を有する原料であって、前記第1官能基と前記原子Xとの結合エネルギーが前記第2官能基と前記原子Xとの結合エネルギーよりも高い原料を供給し、前記原子Xに前記第1官能基が結合した成分を含む第1層を形成する工程と、(a2)前記基板に対して、第1酸化剤を供給し、前記第1層を酸化させて、前記原子Xおよび酸素を含む第2層を形成する工程と、を非同時に行うサイクルをn1回(n1は1以上の整数)行い、前記原子Xを含む第1酸化膜を形成する工程と、
(b)(b1)前記基板に対して、前記原料を供給し、前記原子Xに前記第1官能基が結合した成分を含む第3層を形成する工程と、(b2)前記基板に対して、(a2)において前記第1層を酸化させる際の酸化力よりも酸化力が高くなる処理条件下で、第2酸化剤を供給し、前記第3層を酸化させて、前記原子Xおよび酸素を含む第4層を形成する工程と、を非同時に行うサイクルをn2回(n2は1以上の整数)行い、前記原子Xを含む第2酸化膜を形成する工程と、
を交互に所定回数行うことで、前記基板上に、前記第1酸化膜と、前記第2酸化膜と、が交互に積層されてなる酸化膜を形成する工程を有する半導体装置の製造方法、または、基板処理方法が提供される。
【0165】
(付記2)
付記1に記載の方法であって、
前記原子Xは4つの結合手を有し、前記原子Xの4つの結合手のうち3つの結合手のそれぞれには前記第1官能基が結合しており、前記原子Xの4つの結合手のうち残りの1つの結合手には前記第2官能基が結合しており、
(a1)および(b1)では、前記原子Xの3つの結合手のそれぞれに前記第1官能基が結合した状態で、前記原子Xが前記基板の表面に吸着する処理条件下で、前記原料を供給する。
【0166】
(付記3)
付記1または2に記載の方法であって、
(a1)および(b1)では、前記原料に含まれる前記原子Xから、前記第1官能基が脱離することなく、前記第2官能基が脱離する処理条件であって、前記第2官能基が脱離し前記第1官能基との結合が維持された状態の前記原子Xが前記基板の表面に吸着する処理条件下で、前記原料を供給する。
【0167】
(付記4)
付記3に記載の方法であって、
(a1)および(b1)では、前記第2官能基が脱離し前記第1官能基との結合が維持された状態の前記原子Xの前記基板の表面への吸着が、前記原子Xから脱離した前記第2官能基の前記基板の表面への吸着よりも支配的(優勢)となる処理条件下で、前記原料を供給する。
【0168】
(付記5)
付記2~4のいずれか1項に記載の方法であって、
(a1)および(b1)では、前記基板の表面に吸着した前記原子Xに結合した前記第1官能基により、前記基板の表面に吸着した前記原子Xへの原子および分子のうち少なくともいずれかの吸着を阻害すると共に、その周辺の前記基板の表面における吸着サイト(OH終端)への原子および分子のうち少なくともいずれかの吸着を阻害する。
【0169】
(付記6)
付記2~5のいずれか1項に記載の方法であって、
(a1)および(b1)では、前記基板の表面に吸着した前記原子Xに結合した前記第1官能基により、その周辺の前記基板の表面における吸着サイト(OH終端)を保持させる。
【0170】
(付記7)
付記2~6のいずれか1項に記載の方法であって、
(a1)および(b1)では、前記原子Xを前記基板の表面に不連続に吸着させる。すなわち、(a1)および(b1)では、前記原子Xを前記基板の表面に1原子層未満の厚さとなるように吸着させる。
【0171】
(付記8)
付記2~7のいずれか1項に記載の方法であって、
(a1)および(b1)では、前記原子Xの前記基板の表面への吸着反応(化学吸着反応)が飽和するまで前記原料の供給を継続する。
【0172】
(付記9)
付記8に記載の方法であって、
前記原子Xの前記基板の表面への吸着反応が飽和した状態において、前記基板の表面へ吸着した原子Xにより構成される層は、1原子層未満の厚さである。すなわち、前記原子Xの前記基板の表面への吸着反応が飽和した状態において、前記基板の表面へ吸着した原子Xにより構成される層は、不連続層である。
【0173】
(付記10)
付記8または9に記載の方法であって、
前記原子Xの前記基板の表面への吸着反応が飽和した状態において、前記基板の表面の一部に吸着サイト(OH終端)を保持させる。
【0174】
(付記11)
付記8~10のいずれか1項に記載の方法であって、
前記原子Xの前記基板の表面への吸着反応が飽和した状態において、前記基板の表面が前記第1官能基により覆われた状態とする。
【0175】
(付記12)
付記1~11のいずれか1項に記載の方法であって、
(a2)では、前記第1層に含まれる前記原子Xと結合する前記第1官能基に含まれる第3官能基、および、前記原子Xと結合する前記第1官能基のうち少なくともいずれかが脱離する処理条件下で、前記第1酸化剤を供給し、
(b2)では、前記第3層に含まれる前記原子Xと結合する前記第1官能基に含まれる第3官能基、および、前記原子Xと結合する前記第1官能基が脱離する処理条件下で、前記第2酸化剤を供給する。
【0176】
(付記13)
付記1~12のいずれか1項に記載の方法であって、
前記第1官能基は、アルコキシ基を含み、
前記第2官能基は、アミノ基、アルキル基、ハロゲノ基、ヒドロキシ基、ヒドロ基、アリール基、ビニル基、およびニトロ基のうち少なくともいずれか1つを含む。付記12における前記第3官能基は、アルキル基を含む。
【0177】
(付記14)
付記1~13のいずれか1項に記載の方法であって、
前記第1酸化剤は、O2ガス、NOガス、N2Oガス、NO2ガスのうち少なくともいずれかを含み、前記第2酸化剤は、O2ガス+H2ガス、O3ガス+H2ガス、H2O2ガス+H2ガス、H2O+H2ガス、O3ガス、H2O2ガス、H2Oガス、プラズマ励起させたO2ガスのうち少なくともいずれかを含む。
【0178】
(付記15)
付記1~14のいずれか1項に記載の方法であって、
(a)における処理温度(前記基板の温度)を、550℃以上700℃以下とし、
(b)における処理温度(前記基板の温度)を、550℃以上700℃以下、好ましくは、600℃以上650℃以下とする。
【0179】
(付記16)
付記1~15のいずれか1項に記載の方法であって、
前記酸化膜を形成する工程では、最初に前記第1酸化膜を形成する。
【0180】
(付記17)
付記1~16のいずれか1項に記載の方法であって、
前記酸化膜を形成する工程では、最後に前記第2酸化膜を形成する。
【0181】
(付記18)
付記1~17のいずれか1項に記載の方法であって、
前記酸化膜を形成する工程では、(a)および(b)を交互に繰り返し、最初(初期)に形成する前記第1酸化膜を、最初(初期)に形成する第2酸化膜よりも厚くする。
【0182】
(付記19)
付記1~18のいずれか1項に記載の方法であって、
前記酸化膜を形成する工程では、(a)および(b)を交互に繰り返し、最後(後期)に形成する前記第2酸化膜を、最後(後期)に形成する第1酸化膜よりも厚くする。
【0183】
(付記20)
付記18または19に記載の方法であって、
(a)および(b)を交互に繰り返すにつれ、前記第2酸化膜の厚さに対する前記第1酸化膜の厚さの比が、段階的に小さくなるようにする。すなわち、第1酸化膜の厚さに対する第2酸化膜の厚さの比が、段階的に大きくなるようにする。
【0184】
(付記21)
本開示の他の態様によれば、
基板が処理される処理室と、
前記処理室内の基板に対して原子Xに第1官能基と第2官能基とが直接結合した部分構造を有する原料であって、前記第1官能基と前記原子Xとの結合エネルギーが前記第2官能基と前記原子Xとの結合エネルギーよりも高い原料を供給する原料供給系と、
前記処理室内の基板に対して第1酸化剤を供給する第1酸化剤供給系と、
前記処理室内の基板に対して第2酸化剤を供給する第2酸化剤供給系と、
前記処理室内の基板を加熱するヒータと、
前記処理室内において、付記1の各処理(各工程)を行わせるように、前記原料供給系、前記第1酸化剤供給系、前記第2酸化剤供給系、および前記ヒータを制御することが可能なよう構成される制御部と、
を有する基板処理装置が提供される。
【0185】
(付記22)
本開示の更に他の態様によれば、
付記1の各手順(各工程)をコンピュータによって基板処理装置に実行させるプログラム、または、該プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体が提供される。
【符号の説明】
【0186】
200 ウエハ(基板)