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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-28
(45)【発行日】2023-10-06
(54)【発明の名称】めっき装置およびめっき方法
(51)【国際特許分類】
   C25D 5/18 20060101AFI20230929BHJP
   C25D 7/12 20060101ALI20230929BHJP
   C25D 21/10 20060101ALI20230929BHJP
【FI】
C25D5/18
C25D7/12
C25D21/10 301
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023523573
(86)(22)【出願日】2022-12-16
(86)【国際出願番号】 JP2022046409
【審査請求日】2023-04-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100146710
【弁理士】
【氏名又は名称】鐘ヶ江 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100186613
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100138759
【弁理士】
【氏名又は名称】大房 直樹
(72)【発明者】
【氏名】下山 正
(72)【発明者】
【氏名】増田 泰之
(72)【発明者】
【氏名】樋渡 良輔
(72)【発明者】
【氏名】安田 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】早瀬 仁則
【審査官】菅原 愛
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第102011158(CN,A)
【文献】国際公開第2019/181905(WO,A1)
【文献】特開2021-011624(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 5/18
C25D 7/12
C25D 21/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上にバンプを形成するためのめっき装置であって、
前記基板を保持するように構成された基板ホルダと、
前記基板ホルダとともにめっき液を収容するように構成されためっき槽と、
前記基板ホルダに保持された前記基板と対向するように前記めっき槽内に配置されたアノードと、
前記基板と前記アノードの間に電流を供給するように構成された電源と、
前記めっき槽内の前記めっき液を撹拌するためのパドルと、
制御部と、を備え、
前記制御部は、前記めっき液から前記基板上に金属を析出させるための正方向電流が供給される第1期間と、前記正方向電流と反対方向に流れる少なくとも1つの逆電流パルスが供給される第2期間と、前記逆電流パルスから前記正方向電流へ遷移する途中に電流供給が停止される第3期間とを有する電流を、前記電源から出力させるように構成され、
前記制御部は、少なくとも前記第3期間の間、前記パドルによる撹拌強度を弱めるまたは撹拌を停止させるようにさらに構成される、
めっき装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第2期間および前記第3期間の間、前記パドルによる撹拌強度を弱めるまたは撹拌を停止させるように構成される、請求項1に記載のめっき装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第2期間と前記第3期間の組を複数有する電流を前記電源から出力させるように構成される、請求項1または2に記載のめっき装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第1期間における前記電源の出力電圧が、前記第1期間における前記電源の安定した出力電圧の90%以上となってから、前記逆電流パルスを供給するように構成される、請求項3に記載のめっき装置。
【請求項5】
前記基板は、金属シード層と、形成すべきバンプ以外の部分において前記金属シード層を前記めっき液から遮蔽する遮蔽膜とを有する、請求項1に記載のめっき装置。
【請求項6】
前記遮蔽膜は、径の異なる複数のバンプに対応したパターンを有する、請求項5に記載のめっき装置。
【請求項7】
前記遮蔽膜は、形成すべき複数のバンプが異なる密度で配置されたパターンを有する、請求項5に記載のめっき装置。
【請求項8】
複数の異なるパターン領域を備えた基板上にバンプを形成するためのめっき方法であって、
めっき槽内に配置された前記複数の異なるパターン領域を備えた前記基板とアノードの間に、前記めっき槽内の促進剤を含むめっき液から前記基板上に金属を析出させるための正方向電流が供給される第1期間と、前記第1期間で析出した金属の表面に付着した前記促進剤を脱離させるための前記正方向電流と反対方向に流れる少なくとも1つの逆電流パルスが供給される第2期間と、めっき液中における脱離した促進剤の濃度に前記パターン領域ごとの構造に応じた濃度差を形成するために、前記逆電流パルスから前記正方向電流へ遷移する途中に電流供給が停止される第3期間とを有する電流を供給することを含む、めっき方法。
【請求項9】
前記第1期間において前記めっき液を第1強度で撹拌し、前記第2期間と前記第3期間のうちの少なくとも前記第3期間において、前記第1強度より弱い第2強度で前記めっき液を撹拌する、または撹拌を停止することをさらに含む、請求項8に記載のめっき方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、めっき装置およびめっき方法に関する。特に、本発明は、基板上にバンプを形成するためのめっき装置およびめっき方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスや電子素子用基板の表面にCu等の金属めっき膜を形成することが行われている。たとえば、基板ホルダにめっき対象である基板を保持し、めっき液を収容しためっき槽中に基板ホルダごと基板を浸漬させて電気めっきを行うことがある。基板ホルダは、基板のめっき面を露出するように基板を保持する。めっき液中において、基板の露出面に対応するようにアノードが配置され、基板とアノードとの間に電圧を付与して基板の露出面に電気めっき膜を形成することができる。
【0003】
例えば、基板の表面には、複数の開口を有したフォトレジスト層が配置される。このようなフォトレジスト層付きの基板にめっきを行うことで、開口の部分にバンプを形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-131926号公報
【文献】特開2011-026708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
基板上に複数のバンプを均一な高さで形成することが求められる。
【0006】
特許文献1には、正電流のパルスと負電流のパルスを交互に供給してめっきを行うことでバンプを形成することが開示されているが、複数のバンプを均一な高さで形成する方法については開示されていない。特許文献2には、正電圧のパルスと逆電圧のパルスを用いて基板上にバンプを形成することが開示されている。また正電圧と負電圧の間に電圧ゼロの期間が設けられている(図16~18)。しかしながら、電流ではなく電圧を制御しているので、実際にめっき液中を流れる電流は時間とともに、すなわちめっき膜の成長とともに変化してしまい、そのため本発明の後述する作用(図9を参照して説明する促進剤分子の脱離)を安定して生じさせることができない。また、印加電圧がゼロであってもめっき液中には電流が流れる場合があるので、やはり本発明の後述する作用(図9を参照して説明する促進剤分子の密度差形成)を十分に生じさせることができない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態によれば、基板上にバンプを形成するためのめっき装置であって、前記基板を保持するように構成された基板ホルダと、前記基板ホルダとともにめっき液を収容するように構成されためっき槽と、前記基板ホルダに保持された前記基板と対向するように前記めっき槽内に配置されたアノードと、前記基板と前記アノードの間に電流を供給するように構成された電源と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記めっき液から前記基板上に金属を析出させるための正方向電流が供給される第1期間と、前記正方向電流と反対方向に流れる少なくとも1つの逆電流パルスが供給される第2期間と、前記逆電流パルスから前記正方向電流へ遷移する途中に電流供給が停止される第3期間とを有する電流を、前記電源から出力させるように構成される、めっき装置が提供される。
【0008】
また、一実施形態によれば、基板上にバンプを形成するためのめっき方法であって、めっき槽内に配置された前記基板とアノードの間に、前記めっき槽内のめっき液から前記基板上に金属を析出させるための正方向電流が供給される第1期間と、前記正方向電流と反対方向に流れる少なくとも1つの逆電流パルスが供給される第2期間と、前記逆電流パルスから前記正方向電流へ遷移する途中に電流供給が停止される第3期間とを有する電流を供給することを含む、めっき方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係るめっき装置の全体配置図である。
図2】本発明の一実施形態に係るめっきモジュールの概略側断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係るめっき装置を用いて形成されるバンプを示す模式図である。
図4】本発明の一実施形態に係るめっき装置において電源から出力されるめっき電流の時間波形を示すグラフである。
図5図4と異なるめっき電流の時間波形を示すグラフである。
図6】複数のバンプを形成するために使用したフォトレジスト層の開口パターンを示す模式図である。
図7図6のフォトレジスト層を用いて複数のバンプを形成したときのバンプ高さBHの測定例である。
図8】めっき電流の条件を様々に変えてバンプを形成したときの、各条件ごとのバンプ高さばらつきΔBHを示すグラフである。
図9】複数のバンプの高さの均一性が向上する原理を説明する概念図である。
図10】めっき液の撹拌を第3期間T3で停止させた場合とさせなかった場合のバンプ高さばらつきΔBHを比較したグラフである。
図11】本発明の一実施形態に係るめっき装置において電源から出力されるめっき電流の時間波形を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。以下で説明する図面において、同一の又は相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態に係るめっき装置10の全体配置図である。図1に示すように、めっき装置10は、2台のカセットテーブル102と、基板のオリエンテーションフラットやノッチなどの位置を所定の方向に合わせるアライナ104と、めっき処理後の基板を高速回転させて乾燥させるスピンリンスドライヤ106とを有する。カセットテーブル102は、半導体ウェハ等の基板を収納したカセット100を搭載する。スピンリンスドライヤ106の近くには、基板ホルダ30を載置して基板の着脱を行うロード/アンロードステーション120が設けられている。これらのユニット100,104,106,120の中央には、これらのユニット間で基板を搬送する搬送ロボット122が配置されている。
【0012】
ロード/アンロードステーション120は、レール150に沿って横方向にスライド自在な平板状の載置プレート152を備えている。2個の基板ホルダ30は、この載置プレート152に水平状態で並列に載置され、一方の基板ホルダ30と搬送ロボット122との間で基板の受渡しが行われた後、載置プレート152が横方向にスライドされ、他方の基板ホルダ30と搬送ロボット122との間で基板の受渡しが行われる。
【0013】
めっき装置10は、さらに、ストッカ124と、プリウェットモジュール126と、プリソークモジュール128と、第1リンスモジュール130aと、ブローモジュール132と、第2リンスモジュール130bと、めっきモジュール110と、を有する。ストッカ124では、基板ホルダ30の保管及び一時仮置きが行われる。プリウェットモジュール126では、基板が純水に浸漬される。プリソークモジュール128では、基板の表面に形成したシード層等の導電層の表面の酸化膜がエッチング除去される。第1リンスモジュール130aでは、プリソーク後の基板が基板ホルダ30と共に洗浄液(純水等)で洗浄される。ブローモジュール132では、洗浄後の基板の液切りが行われる。第2リンスモジュール130bでは、めっき後の基板が基板ホルダ30と共に洗浄液で洗浄される。ロード/アンロードステーション120、ストッカ124、プリウェットモジュール126、プリソークモジュール128、第1リンスモジュール130a、ブローモジュール132、第2リンスモジュール130b、及びめっきモジュール110は、この順に配置されている。
【0014】
めっきモジュール110は、例えば、オーバーフロー槽136の内部に複数のめっき槽114を収納して構成されている。図1の例では、めっきモジュール110は、8つのめっき槽114を有している。各めっき槽114は、内部に1つの基板を収納し、内部に保持しためっき液中に基板を浸漬させて基板表面に銅めっき等のめっきを施すように構成される。
【0015】
めっき装置10は、これらの各機器の側方に位置して、これらの各機器の間で基板ホルダ30を基板とともに搬送する、例えばリニアモータ方式を採用した搬送装置140を有する。この搬送装置140は、第1搬送装置142と、第2搬送装置144を有している。第1搬送装置142は、ロード/アンロードステーション120、ストッカ124、プリウェットモジュール126、プリソークモジュール128、第1リンスモジュール130a、及びブローモジュール132との間で基板を搬送するように構成される。第2搬送装置144は、第1リンスモジュール130a、第2リンスモジュール130b、ブローモジュール132、及びめっきモジュール110との間で基板を搬送するように構成される。めっき装置10は、第2搬送装置144を備えることなく、第1搬送装置142のみを備えるようにしてもよい。
【0016】
オーバーフロー槽136の両側には、各めっき槽114の内部に位置してめっき槽114内のめっき液を攪拌する掻き混ぜ棒としてのパドルを駆動する、パドル駆動部160及びパドル従動部162が配置されている。
【0017】
このめっき装置10による一連のめっき処理の一例を説明する。まず、カセットテーブル102に搭載したカセット100から、搬送ロボット122で基板を1つ取出し、アライナ104に基板を搬送する。アライナ104は、オリエンテーションフラットやノッチなどの位置を所定の方向に合わせる。このアライナ104で方向を合わせた基板を搬送ロボット122でロード/アンロードステーション120まで搬送する。
【0018】
ロード/アンロードステーション120においては、ストッカ124内に収容されていた基板ホルダ30を搬送装置140の第1搬送装置142で2基同時に把持して、ロード/アンロードステーション120まで搬送する。そして、2基の基板ホルダ30をロード/アンロードステーション120の載置プレート152の上に同時に水平に載置する。この状態で、それぞれの基板ホルダ30に搬送ロボット122が基板を搬送し、搬送した基板を基板ホルダ30で保持する。
【0019】
次に、基板を保持した基板ホルダ30を搬送装置140の第1搬送装置142で2基同時に把持し、プリウェットモジュール126に収納する。次に、プリウェットモジュール126で処理された基板を保持した基板ホルダ30を、第1搬送装置142でプリソークモジュール128に搬送し、プリソークモジュール128で基板上の酸化膜をエッチングする。続いて、この基板を保持した基板ホルダ30を、第1リンスモジュール130aに搬送し、この第1リンスモジュール130aに収納された純水で基板の表面を水洗する。
【0020】
水洗が終了した基板を保持した基板ホルダ30は、第2搬送装置144により、第1リンスモジュール130aからめっきモジュール110に搬送され、めっき液を満たしためっき槽114に収納される。第2搬送装置144は、上記の手順を順次繰り返し行って、基板を保持した基板ホルダ30を順次めっきモジュール110の各々のめっき槽114に収納する。
【0021】
各々のめっき槽114では、めっき槽114内のアノード(図示せず)と基板との間にめっき電流を供給し、同時にパドル駆動部160及びパドル従動部162によりパドルを基板の表面と平行に往復移動させることで、基板の表面にめっきを行う。
【0022】
めっきが終了した後、めっき後の基板を保持した基板ホルダ30を第2搬送装置144で2基同時に把持し、第2リンスモジュール130bまで搬送し、第2リンスモジュール130bに収容された純水に浸漬させて基板の表面を純水洗浄する。次に、基板ホルダ30を、第2搬送装置144によってブローモジュール132に搬送し、エアーの吹き付け等によって基板ホルダ30に付着した水滴を除去する。その後、基板ホルダ30を、第1搬送装置142によってロード/アンロードステーション120に搬送する。
【0023】
ロード/アンロードステーション120では、搬送ロボット122によって基板ホルダ30から処理後の基板が取り出され、スピンリンスドライヤ106に搬送される。スピンリンスドライヤ106は、高速回転によってめっき処理後の基板を高速回転させて乾燥させる。乾燥した基板は、搬送ロボット122によりカセット100に戻される。
【0024】
図2は、上述しためっきモジュール110の概略側断面図である。図示のように、めっきモジュール110は、アノード221を保持するように構成されたアノードホルダ220と、基板Wを保持するように構成された基板ホルダ30と、添加剤を含むめっき液Qを収容するめっき槽114と、めっき槽114からオーバーフローしためっき液Qを受けて排出するオーバーフロー槽136と、を有する。めっき槽114とオーバーフロー槽136は、仕切り壁255によって仕切られている。アノードホルダ220と基板ホルダ30は、めっき槽114の内部に収容されている。前述したように、基板Wを保持した基板ホルダ30は、第2搬送装置144(図1参照)によって搬送されて、めっき槽114に収容される。
【0025】
なお、図2にはめっき槽114が1つしか描かれていないが、前述したように、めっきモジュール110は、図2に示されるのと同じ構成のめっき槽114を複数備えるのであってよい。
【0026】
アノード221は、アノードホルダ220に設けられた電気端子223を介して電源270の正端子271に電気的に接続される。基板Wは、基板Wの周縁部に接する電気接点242及び基板ホルダ30に設けられた電気端子243を介して電源270の負端子272に電気的に接続される。電源270は、正端子271に接続されたアノード221と負端子272に接続された基板Wの間にめっき電流を供給するとともに、正端子271と負端子272の間の印加電圧を計測するように構成される。
【0027】
また、電源270は、電源270の動作を制御するための制御コントローラ260に接続され、制御コントローラ260は、コンピュータ265に接続される。コンピュータ265は、めっき装置10のオペレータのためのユーザインターフェイスを提供する。めっき装置10のオペレータは、コンピュータ265を介してめっき処理に関する各種設定情報を入力することができる。設定情報は、例えば、電源270が出力するめっき電流の設定値を含む。制御コントローラ260は、オペレータから入力されためっき電流の設定値に従って、電源270を動作させる。制御コントローラ260はまた、電源270において計測された端子271、272間の印加電圧の情報に基づくステータス情報を、コンピュータ265に提供する。めっき装置10のオペレータは、コンピュータ265を介してこのステータス情報を受け取ることができる。制御コントローラ260は、めっきモジュール110における電源270以外の各部、またはめっき装置10におけるめっきモジュール110以外の各ユニットの動作を制御し、またこれらの動作に関する各種のステータス情報をコンピュータ265に提供するように構成されてもよい。
【0028】
アノード221を保持したアノードホルダ220と基板Wを保持した基板ホルダ30は、めっき槽114内のめっき液Qに浸漬され、アノード221と基板Wの被めっき面W1が略平行になるように対向して配置される。アノード221と基板Wは、めっき槽114のめっき液Qに浸漬された状態で、電源270からめっき電流を供給される。これにより、めっき液Q中の金属イオンが基板Wの被めっき面W1において還元され、被めっき面W1に膜が形成される。
【0029】
アノードホルダ220は、アノード221と基板Wとの間の電界を調節するためのアノードマスク225を有する。アノードマスク225は、例えば誘電体材料からなる略板状の部材であり、アノードホルダ220の前面(基板ホルダ30に対向する側の面)に設けられる。すなわち、アノードマスク225は、アノード221と基板ホルダ30の間に配置される。アノードマスク225は、アノード221と基板Wとの間に流れる電流が通過する第1の開口225aを略中央部に有する。開口225aの径は、アノード221の径よりも小さいことが好ましい。アノードマスク225は、開口225aの径を調節可能に構成されてもよい。
【0030】
めっきモジュール110は、さらに、アノード221と基板Wとの間の電界を調節するためのレギュレーションプレート230を有する。レギュレーションプレート230は、例えば誘電体材料からなる略板状の部材であり、アノードマスク225と基板ホルダ30(基板W)との間に配置される。レギュレーションプレート230は、アノード221と基板Wとの間に流れる電流が通過する第2の開口230aを有する。開口230aの径は、基板Wの径より小さいことが好ましい。レギュレーションプレート230は、開口230aの径を調節可能に構成されてもよい。
【0031】
レギュレーションプレート230と基板ホルダ30との間には、基板Wの被めっき面W1近傍のめっき液Qを撹拌するためのパドル235が設けられる。パドル235は、略棒状の部材であり、鉛直方向を向くようにめっき槽114内に設けられる。パドル235の一端は、パドル駆動装置236に固定される。パドル駆動装置236の動作は、制御コントローラ260によって制御され、パドル235は、パドル駆動装置236により基板Wの被めっき面W1に沿って水平移動される。これによりめっき液Qが撹拌される。
【0032】
めっき槽114は、槽内部にめっき液Qを供給するためのめっき液供給口256を有する。オーバーフロー槽136は、めっき槽114からオーバーフローしためっき液Qを排出するためのめっき液排出口257を有する。めっき液供給口256はめっき槽114の底部に配置され、めっき液排出口257はオーバーフロー槽136の底部に配置される。
【0033】
めっき液Qがめっき液供給口256からめっき槽114に供給されると、めっき液Qはめっき槽114から溢れ、仕切り壁255を越えてオーバーフロー槽136に流入する。オーバーフロー槽136に流入しためっき液Qはめっき液排出口257から排出され、めっき液循環装置258が有するフィルタ等で不純物が除去される。不純物が除去されためっき液Qは、めっき液循環装置258によりめっき液供給口256を介してめっき槽114に供給される。
【0034】
図3は、本発明の一実施形態に係るめっき装置10を用いて基板Wの表面にめっきを行うことによって、基板W上に形成されるバンプを示す模式図である。基板Wの表面全面には金属の薄いシード層301があらかじめ形成されており、めっき中にこのシード層301を介して基板Wの表面が給電される。シード層301の上にはフォトレジスト層302が形成され、フォトレジスト層302は、バンプが形成されるべき部分に開口302aを有している。このようにフォトレジスト層302が形成された基板Wが基板ホルダ30に保持され、めっき槽114内のめっき液Qに浸漬されて、めっきが行われる。めっき中、基板Wの表面のうちフォトレジスト層302の開口302a以外の部分は、フォトレジスト層302によってめっき液Qから遮蔽されている。これにより、フォトレジスト層302の開口302aの底面にのみめっき膜が成長することで、基板W上にバンプ303が形成される。なお、めっき処理後にフォトレジスト層302は除去される(図3右参照)。
【0035】
基板W上には、所定の開口パターンを有するフォトレジスト層302を用いて、このようなバンプ303が多数形成される。開口の大きさ(すなわち開口径)や開口の密度(すなわち単位面積当たりの開口の数)によって、同一の基板Wであっても各開口に形成されるバンプ303の高さ(膜厚)にばらつきが生じることがある。そこで、基板W上に複数のバンプ303を均一な高さで形成することが求められる。
【0036】
図4は、本発明の一実施形態に係るめっき装置10において電源270から出力され、アノード221と基板Wとの間に流れるめっき電流の時間波形を示すグラフである。図4に示されるように、電源270は、第1期間T1において正方向電流を出力する。「正方向」とは、めっき液Q中をアノード221から基板Wへ向かって電流が流れる向きである。したがって、第1期間T1では、めっき液Q中の金属イオンが基板Wの被めっき面W1において還元されることで、被めっき面W1に金属が析出する(すなわちめっき膜が形成される)。第1期間T1の長さは、めっき膜が実質的に成長していくように、めっき処理が行われる全時間のうち大部分を占める長さの時間であってよい。言い換えると、第1期間T1の長さに比べて、後述する第2期間T2と第3期間T3の長さの和は無視できる程度であってよい。正方向電流の大きさは、例えば、第1期間T1の全体にわたって一定の電流値I1であってよい。あるいは、正方向電流の電流値I1は、時間とともに変化するよう制御されてもよい。
【0037】
第1期間T1の途中に設けられた第2期間T2において、電源270は、上述の正方向電流とは反対方向の電流を出力する。電流は、第2期間T2の間、I1とは符号が異なる電流値I2を持続する。第2期間T2の長さは、第1期間T1と比較してきわめて短い長さの時間である。したがって、第2期間T2における電流はパルス状であり、以下、本明細書ではこれを「逆電流パルス」と称する。例えば、第2期間T2の長さ、すなわち逆電流パルスのパルス幅は、0.1秒~数秒程度であってよい。第2期間T2では、第1期間T1における金属イオンの還元反応とは逆に、第1期間T1で被めっき面W1に形成されためっき膜の一部の金属がめっき液Qに再溶解するとともに、還元反応中にめっき膜の最表面に付着していた促進剤(めっき液Qに含まれる添加剤の1つ)が、めっき膜表面から脱離する。詳細は後述する。
【0038】
なお、逆電流パルスの電流値I2は、促進剤の脱離が十分に行われるような値に設定することが望ましい。また、電流値I2を電流値I1と等しく設定する場合は、上記のように正負両極性で出力する電源270に代えて、単一極性で出力する電源と、当該電源の出力の極性を反転できる極性反転スイッチとの組み合わせを用いてもよい。
【0039】
さらに、第2期間T2に引き続く第3期間T3において、電源270は、電流出力を停止する。すなわち、第3期間T3では、電流はめっき液Q中を正方向にも逆方向にも流れない。第2期間T2と同様、第3期間T3の長さは、第1期間T1と比較してきわめて短い長さの時間であり、例えば、0.1秒~数秒程度であってよい。やはり詳細は後述するが、第3期間T3では、めっき膜表面から脱離した促進剤のめっき液Q内での拡散が進行する。
【0040】
第3期間T3の後、再び電源270は、正方向電流(電流値I1)を出力する。正方向電流は、所定のめっき処理時間が終了するまで、例えば、形成されためっき膜の膜厚が所定の目標膜厚に達するまで、継続される。
【0041】
このように、図4に示される実施形態において、電源270は、正方向電流を出力する第1期間T1の途中で1つの逆電流パルスを供給し、この逆電流パルスの直後の短時間の間、電流を停止する。第1期間T1の全体における逆電流パルス(およびそれに続く電流停止)の時間的位置は、特段限定されるものではないが、基板W上に形成される複数のバンプ303の高さの均一化の観点からは、逆電流パルスは、めっき処理が行われる全期間の前半に開始されることが好ましい(理由は後述)。
【0042】
図5は、図4と異なるめっき電流の時間波形を示すグラフである。図5左のグラフは、めっき処理が行われる全期間(期間T1)にわたって正方向電流が供給され続けることを示している。図5右のグラフは、めっき処理期間T1中に1つの逆電流パルスが供給されるが(期間T2)、電流停止は行われないことを示している。
【0043】
次に、基板W上に形成される複数のバンプ303の高さの均一性に関する実験結果について説明する。図6は、この実験で複数のバンプ303を形成するために使用した、フォトレジスト層302の開口パターンを示す模式図である。図6に示される開口パターンにおいて、パターン領域P1には、開口径φ(図3参照)の小さい開口302aが高密度に配置され、パターン領域P2には、開口径φの小さい開口302aが低密度に(すなわち疎に)配置され、パターン領域P3には、開口径φの大きい開口302aが高密度に配置され、パターン領域P4には、開口径φの大きい開口302aが低密度に配置されている。
【0044】
図7は、図6に示したフォトレジスト層302を用いて基板W上に複数のバンプ303を形成したときの、各パターン領域のバンプ303の高さBH(図3参照)を測定した一例を示すグラフである。図7において、各パターン領域P1、P2、P3、P4に対応するそれぞれのバンプ高さBHは、当該パターン領域に含まれる複数のバンプ303の高さを測定しそれらを平均したものを表している。図7左のグラフは、図5左のグラフのようにめっき処理の全期間にわたって正方向電流を供給して、バンプ303を形成した場合の測定結果を示し、図7右のグラフは、図5右のグラフのようにめっき処理期間中に1つの逆電流パルスを供給して、バンプ303を形成した場合の測定結果を示す。
【0045】
図7に示されるように、基板W上に形成されるバンプ303の高さBHは同一基板内でもパターン領域ごとに異なり、全パターン領域の中で、パターン領域P1におけるバンプ高さBHが最も低く、パターン領域P4におけるバンプ高さBHが最も高いことが見てとれる。これは、開口302aの径φが小さいほど、また開口302aの配置密度が高いほど、開口302aの中へ金属イオンが十分に補充されにくいことにより、めっき膜の形成レートがより低くなるためである。ここで、図7中に記したように、基板内におけるバンプ高さBHの最大値と最小値との差を、バンプ高さばらつきΔBHと定義する。図7から、めっき処理期間中に逆電流パルスを供給した場合(図7右のグラフ)は、逆電流パルスを供給しない場合(図7左のグラフ)よりも、バンプ高さばらつきΔBHが小さいことが分かる。
【0046】
図8は、めっき電流の条件を様々に変えて基板Wにバンプ303を形成したときの、各条件ごとのバンプ高さばらつきΔBHを示したグラフである。条件1のめっき電流は、図5左のグラフに示されるめっき電流であり(すなわち、めっき処理の全期間にわたって正方向電流が供給される)、条件2のめっき電流は、図5右のグラフに示されるめっき電流である(すなわち、めっき処理期間中に正方向電流と1つの逆電流パルスが供給される)。これら2つの条件に対応するバンプ高さばらつきΔBHは、すでに図7のグラフに示したバンプ高さばらつきΔBHと同じである。
【0047】
図8において、条件3~6の各めっき電流は、図4に示されるめっき電流である。すなわち、条件3~6では、正方向電流の途中で1つの逆電流パルスの供給と、この逆電流パルスに続く短時間の電流停止とを行って、バンプ303が形成される。図8に示されるように、このようなめっき電流を用いてバンプ303を形成することにより、バンプ高さばらつきΔBHをより一層、具体的には条件2のめっき電流を用いる場合よりもさらに、低減することができる。つまり、基板W上に様々な径や配置密度の複数のバンプ303を、より均一な高さで形成することができる。
【0048】
図9は、図4に示されるめっき電流を用いることにより複数のバンプ303の高さの均一性が向上する原理を説明する概念図である。前述したように、基板Wの被めっき面W1において、フォトレジスト層302の開口302aの径が大きい場所、および開口302aの配置密度が低い場所(例えば図6におけるパターン領域P4)では、そうでない場所(例えばパターン領域P1)に比べてめっき膜の形成レートが高い。そのため正方向電流が供給される第1期間T1のうち、逆電流パルスが供給される第2期間T2よりも前の期間では、開口径が大きいおよび/または開口密度が低い場所におけるめっき膜厚は、開口径が小さいおよび/または開口密度が高い場所のめっき膜厚よりも厚くなる(図9のステージ(A))。
【0049】
ここで、めっき液Q中には、添加剤の1つとして、めっき膜の生成を促進する作用を有する促進剤(例えばSPS(ビス(3-スルホプロピル)ジスルフィド)等)が含まれている。このような促進剤分子は、めっき膜の表面に場所によらず一定の密度で濃縮して吸着しており、金属イオンの還元反応を促進する。逆電流パルスが供給される第2期間T2では、促進剤分子はめっき膜表面から脱離して、開口302aの内部およびその近傍に拡散する。このとき、促進剤分子はもともとめっき膜の表面に一定密度で濃縮して吸着しているため、めっき膜表面から脱離した促進剤分子の、個々の開口302aの内部における局所的な濃度は一定である(図9のステージ(B))。
【0050】
しかし、開口密度が高い場所では、近隣の開口302aにも同様に脱離した促進剤分子が存在するので、これら複数の開口302aの近傍における促進剤分子の濃度勾配が小さい。そのため、それらの促進剤分子のうち、開口302aから離れて遠くまで拡散してしまう分子は比較的少数であり、多数の促進剤分子が開口302aの近くに滞留する。これに対し、開口密度が低い場所では、近隣の開口302aからの影響が小さいので、複数の開口302aの近傍における促進剤分子の濃度勾配は大きい。そのため、めっき膜から脱離した促進剤分子の大部分は遠くへ拡散してしまい、開口302aの近くに残っている促進剤分子はわずかである。その結果、めっき液Q中を電流が流れない第3期間T3の間に、開口密度の高い場所にある開口302aの近傍では、開口密度の低い場所にある開口302aの近傍に比べて、促進剤分子の平均濃度が高くなる。つまり、開口密度の違いによって、促進剤分子の平均濃度に差が生じる。また、開口302aの大きさの違いも同様な促進剤分子の濃度差を作り出す(開口径が大きいと促進剤分子は開口302aの外部へ拡散しやすいので、径が大きい開口302aの近傍で促進剤分子の濃度が低くなる)。
【0051】
このように、めっき膜が形成される開口302aの構造(すなわち径および配置密度)に応じて開口302a近傍における促進剤分子の濃度が異なるので、第3期間T3後に再び正方向電流が供給された時に、開口302a内のめっき膜表面に再吸着される促進剤分子の量が、場所によって異なることとなる。具体的には、開口径が大きいおよび/または開口密度が低い場所では、促進剤分子の再吸着量は相対的に少なく、開口径が小さいおよび/または開口密度が高い場所では、促進剤分子の再吸着量は相対的に多い(図9のステージ(C))。
【0052】
そして、上述したように促進剤の脱離は一様に起きている(ステージ(B))ので、脱離から再吸着までのプロセスを全体として見れば、再吸着されてめっき膜の表面に存在している促進剤分子の密度(または量)は、開口径が大きいおよび/または開口密度が低い場所に配置された開口302aでは相対的に小さくなり、開口径が小さいおよび/または開口密度が高い場所に配置された開口302aでは相対的に大きくなる(図9のステージ(D))。したがって、開口径が小さいおよび/または開口密度が高い場所にあるめっき膜表面では、開口径が大きいおよび/または開口密度が低い場所よりも、促進剤の作用が大きくなり、めっきレートが増加する。これにより、当初存在していためっき膜の場所による膜厚差(ステージ(A)を参照)が補償され、その結果、開口302aの構造の差によらず、開口302a内に形成されるめっき膜(すなわちバンプ303)の膜厚が均一化される(図9のステージ(E))。
【0053】
以上の説明から理解されるように、バンプ303の高さの均一化のためには、脱離後に再吸着される促進剤分子に場所による密度差を生じさせることが重要である。そしてこの密度差は、上述したとおり、脱離した促進剤分子が第2期間T2および第3期間T3においてめっき膜から遠くへ拡散していく程度が、場所(すなわち開口302aの大きさや配置密度)によって異なることに起因している。そのため、パドル235によるめっき液Qの撹拌を常時(第2、第3期間にも)行った場合には、撹拌により促進剤分子の拡散が一様化されてしまい、再吸着される促進剤分子の場所による密度差が弱められてしまう。したがって、バンプ303の高さの均一性をより高めるため、第3期間T3において、または第2期間T2と第3期間T3の両方において、パドル235によるめっき液Qの撹拌を停止するか、撹拌強度を弱くすることが好ましい。
【0054】
図10は、パドル235によるめっき液Qの撹拌を第3期間T3で停止させた場合とさせなかった場合の、バンプ高さばらつきΔBHの比較を示したグラフである。このグラフから分かるように、めっき液Qの撹拌停止は、バンプ高さばらつきΔBHの低減に大きな効果を有している。
【0055】
また、上述のとおり、促進剤分子の脱離と再吸着を生じさせることで再吸着後のめっきレートは脱離前のめっきレートと反対の分布を持つようになるが、この再吸着後のめっきレートでのめっき時間を十分に長くとることが、めっき膜(バンプ303)の膜厚を均一にするのに効果的である。したがって、逆電流パルスの供給およびそれに続く電流の停止は、例えば、めっき処理が行われる全期間の前半に開始することが好ましい。
【0056】
前述の図4に示される実施形態では、第1期間T1の途中で逆電流パルスの供給と電流の停止を1回だけ行ったが、その回数は複数回であってもよい。前述したように、めっき膜の表面に再吸着される促進剤分子の密度は場所によって異なるが(図9のステージ(D))、第3期間T3後に正方向電流が供給されてから時間がたつと、再吸着される促進剤分子の数が徐々に増え、めっき膜表面に存在する促進剤分子の密度は次第に飽和し、場所によらず一様になっていってしまう。そこで、逆電流パルスの供給と電流の停止を複数回行うことで、促進剤分子の脱離と再吸着が繰り返され、再吸着の都度、促進剤分子の密度差を生じさせることができる。その結果、めっき膜(すなわちバンプ303)の膜厚をより均一にすることができる。
【0057】
図11は、逆電流パルスの供給と電流の停止を複数回行う実施形態における、めっき電流とそれに対応する電源270の出力電圧の時間波形を示すグラフである。図4および図11の実施形態において、電源270は、設定された(例えば一定の)電流値I1およびI2を出力するように制御コントローラ260によって制御される。したがって、図11に示されるように、電源270の出力電圧が逆電流パルスと電流停止の後に正方向電流I1に対応する電圧V1に戻るには、ある立ち上がり時間を要する。出力電圧のこのような時間変化は、めっき膜表面における添加剤(促進剤および抑制剤)の吸着状態が変わることで、カソードの表面、すなわちめっき膜表面の電気抵抗(分極抵抗)が変化することに起因している。
【0058】
具体的に、図11に示されるように、出力電圧は、逆電流パルスの印加によってV1からV0へ変化し、その後正方向電流I1を印加した直後に一旦V1に戻る(なお、この電圧変化は、図11の時間スケールではごく短い時間で起きるので、図中では縦の細い線で描かれている)。この時点、すなわち正方向電流I1の印加直後では、めっき膜表面に促進剤がほとんど吸着しておらず、その状態から徐々に促進剤の吸着が進行する。そのため、徐々に抵抗は小さくなり、よって出力電圧はV2に向かって小さくなっていく。その後、促進剤に加えて抑制剤も吸着し始め、抑制剤によるめっき膜形成の抑制作用が強くなる。すると、出力電圧は、V2を極値として低下から上昇へ転じ、V1に向かって次第に増大していく。この過程でも促進剤は吸着・濃縮を続けていき、やがて、促進剤と抑制剤の作用が平衡状態に達して、出力電圧はV1で安定する。つまり、促進剤のめっき膜表面における蓄積量は、ある一定量に飽和することになる。
【0059】
ここで、促進剤の蓄積量が飽和するということは、めっき膜表面に存在する促進剤分子の密度が場所によらず一様になるということであるから、このような飽和またはそれに近い状態が達成された時に促進剤の脱離を行えば、その後促進剤分子が再吸着される際に作られる場所による密度差が最も大きくなるということが、前述した図9に関連する説明から理解される。したがって、図11の実施形態のように複数の逆電流パルスを印加するにあたっては、電源270の出力電圧Vが、元の電圧V1に十分近い値(例えば元の電圧V1の90%)に戻ってから、次の逆電流パルスを印加するようにすることが好適である。
【0060】
以上、いくつかの例に基づいて本発明の実施形態について説明してきたが、上記した発明の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明には、その均等物が含まれることはもちろんである。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、特許請求の範囲および明細書に記載された各構成要素の任意の組み合わせ、または、省略が可能である。
【要約】
基板上に複数のバンプを均一な高さで形成する。
基板上にバンプを形成するためのめっき装置が提供される。めっき装置は、前記基板を保持するように構成された基板ホルダと、前記基板ホルダとともにめっき液を収容するように構成されためっき槽と、前記基板ホルダに保持された前記基板と対向するように前記めっき槽内に配置されたアノードと、前記基板と前記アノードの間に電流を供給するように構成された電源と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記めっき液から前記基板上に金属を析出させるための正方向電流が供給される第1期間と、前記正方向電流と反対方向に流れる少なくとも1つの逆電流パルスが供給される第2期間と、前記逆電流パルスから前記正方向電流へ遷移する途中に電流供給が停止される第3期間とを有する電流を、前記電源から出力させるように構成される。
図1
図2
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図10
図11