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特許7357845ウェットエッチングのための光子的に調整されたエッチング液の反応性
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-29
(45)【発行日】2023-10-10
(54)【発明の名称】ウェットエッチングのための光子的に調整されたエッチング液の反応性
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/308 20060101AFI20231002BHJP
   C25F 3/02 20060101ALI20231002BHJP
【FI】
H01L21/308 A
C25F3/02 C
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021510192
(86)(22)【出願日】2019-08-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-16
(86)【国際出願番号】 US2019048884
(87)【国際公開番号】W WO2020051068
(87)【国際公開日】2020-03-12
【審査請求日】2022-07-27
(31)【優先権主張番号】62/726,603
(32)【優先日】2018-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/548,481
(32)【優先日】2019-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】アベル,ポール
(72)【発明者】
【氏名】ザンディ,オミット
【審査官】川原 光司
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-297802(JP,A)
【文献】特開平06-049662(JP,A)
【文献】特表2015-526880(JP,A)
【文献】特表2008-504714(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0144463(US,A1)
【文献】国際公開第2007/058284(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2006-0087847(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0108102(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/306
H01L 21/308
C23F 1/00-4/04
C25F 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板をエッチングする方法であって、当該方法は、
基板の作業面からエッチングされる材料を有する、前記基板の前記作業面上に液体エッチング溶液を堆積させる工程であって、前記液体エッチング溶液は、初期pH値及び初期酸化電位値を有し、前記液体エッチング溶液は、第1の光の波長に反応する第1の光反応剤と、第2の光の波長に反応する第2の光反応剤とを含む、工程と、
前記第1の光の波長を用いて、前記基板の前記作業面上の前記液体エッチング溶液に照射する工程であって、前記第1の光反応剤により、前記液体エッチング溶液のpH値が、前記初期pH値から第2のpH値に変化し、前記基板の前記作業面からの前記材料のエッチング速度が増加又は減少する、工程と、
前記基板の前記作業面から前記液体エッチング溶液を除去する工程と、
を有する、方法。
【請求項2】
さらに、前記第2の光の波長を用いて、前記基板の前記作業面上の前記液体エッチング溶液に照射する工程であって、前記第2の光反応剤により、前記液体エッチング溶液の酸化電位値が、前記初期酸化電位値から第2の酸化電位値に変化し、前記基板の前記作業面からの前記材料の前記エッチング速度が増加又は減少する、工程を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の光反応剤は光酸又は光塩基であり、前記第2の光反応剤は光酸化剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の光の波長は、前記第2の光の波長とは異なる、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記基板の前記作業面上の前記液体エッチング溶液に照射する工程は、前記液体エッチング溶液に照射する光の強度を空間的に変更する工程を有し、その結果、前記基板の前記作業面上の異なる領域は、異なる強度の光を受ける、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
空間的照射は、以前のエッチングプロセスからのエッチングデータに基づく、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
空間的照射は、前記基板の前記作業面のリアルタイムの温度測定に基づく、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
空間的照射は、前記基板の前記作業面上に前記液体エッチング溶液を堆積する前に測定された前記基板の計測データに基づく、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
さらに、前記作業面上に前記液体エッチング溶液を堆積したまま、前記基板を回転させる工程を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
所与のエッチング処理がエッチングの終点に接近するにつれて、前記液体エッチング溶液への照射を低減させる工程を更に含む、請求項2に記載の方法。
【請求項11】
前記エッチングされる材料は、金属、半導体、及び誘電体を含む群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
基板上で周期的エッチングプロセスを実施する方法であって、当該方法は、
基板の作業面からエッチングされる材料を有する、前記基板の前記作業面上に液体エッチング溶液を堆積させる工程であって、前記液体エッチング溶液は、初期pH値及び初期酸化電位値を有し、前記液体エッチング溶液は、第1の光の波長に反応する第1の光反応剤と、第2の光の波長に反応する第2の光反応剤とを含む、工程と、
前記第1の光の波長を用いて、前記基板の前記作業面上の前記液体エッチング溶液に照射する工程であって、前記第1の光反応剤により、前記液体エッチング溶液のpH値が、前記初期pH値から第2のpH値に変化し、前記基板の前記作業面上に、改質された層が形成される、工程と、
前記第1の光の波長を用いた前記液体エッチング溶液の照射を停止し、前記第2の光の波長を用いて、前記液体エッチング溶液に照射する工程であって、前記第2の光反応剤により、前記液体エッチング溶液のpH値が、前記第2のpH値から第3のpH値に変化し、前記基板の前記作業面から前記改質された層が溶解する、工程と、
基板の作業面上に液体エッチング溶液を堆積させる前記工程と、前記第1の光の波長を用いて、前記基板の前記作業面上の前記液体エッチング溶液に照射する前記工程と、前記第1の光の波長を用いた前記液体エッチング溶液の前記照射を停止し、前記第2の光の波長を用いて、前記基板の前記作業面上の前記液体エッチング溶液に照射する前記工程とを、所望のエッチング量に至るまで、この順序で繰り返す工程と、
前記基板の前記作業面から前記液体エッチング溶液を除去する工程と、
を有する、方法。
【請求項13】
前記光反応剤は光塩基又は光酸である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
基板上で周期的エッチングプロセスを実施する方法であって、当該方法は、
基板の作業面からエッチングされる材料を有する、前記基板の前記作業面上に液体エッチング溶液を堆積させる工程であって、前記液体エッチング溶液は、初期pH値及び初期酸化電位値を有し、前記液体エッチング溶液は、第1の光の波長に反応する第1の光酸化剤と、第2の光の波長に反応する第2の光酸化剤とを含む、工程と、
前記第1の光の波長を用いて、前記基板の前記作業面上の前記液体エッチング溶液に照射する工程であって、前記第1の光酸化剤により、前記液体エッチング溶液の酸化電位値が、前記初期酸化電位値から第2の酸化電位値に変化し、前記基板の前記作業面上に、改質された層が形成される、工程と、
前記第1の光の波長を用いた前記液体エッチング溶液の照射を停止し、第2の光の波長を用いて前記液体エッチング溶液に照射する工程であって、前記第2の光酸化剤により、前記液体エッチング溶液の酸化電位値が、前記第2の酸化電位値から第3の酸化電位値に変化し、前記改質された層が前記基板の前記作業面から溶解する、工程と、
基板の作業面上に液体エッチング溶液を堆積させる前記工程と、前記第1の光の波長を用いて、前記基板の前記作業面上の前記液体エッチング溶液に照射する前記工程と、前記第1の光の波長を用いた前記液体エッチング溶液の前記照射を停止し、前記第2の光の波長を用いて前記液体エッチング溶液に照射する前記工程とを、所望のエッチング量に至るまで、この順序で繰り返す工程と、
前記基板の前記作業面から前記液体エッチング溶液を除去する工程と、
を有する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年9月4日に出願された「PHOTONICALLY TUNED ETCHANT REACTIVITY FOR WET ETCHING」と題する米国仮特許出願第62/726,603号、及び、2019年8月22日に出願された「PHOTONICALLY TUNED ETCHANT REACTIVITY FOR WET ETCHING」と題する米国非仮特許出願第16/548,481号に基づいており、その利益及び優先権を主張し、その全ての内容が参照として本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本出願は、半導体基板のエッチングに関し、特にウェハーのウェットエッチングに関する。より具体的には、本出願は、空間的に変化する光強度で液体溶液に放射することによって、ウェハー上に適用された液体溶液のエッチング速度を調節するための方法及びシステムに関する。
【0003】
関連技術の説明
半導体製造は、ウェハーについての堆積、成長、パターニング、除去、及び洗浄の多くの異なるステップを伴う。様々な異なる材料が追加、及び除去されるか又は部分的に除去される一方で、他の材料は残る。除去技術の1つは、ウェットエッチングである。ウェットエッチングは、典型的には、エッチング液を含む溶液にウェハーを浸漬すること、又はそのような溶液をウェハー表面に分配することを伴う。液体溶液は、基板と接触すると、ターゲット材料と化学的に反応して、基板からターゲット材料を放出する。エッチングされた材料は、典型的には、エッチング溶液中に溶解するか、又はエッチング溶液によって物理的に運び去られる。
【0004】
従来のウェットエッチング溶液は、設定された溶液酸化電位及びpHを有する。これにより、エッチング溶液はプールベ(電位/pH)ダイアグラムの単一の点に配置される。溶液パラメータは、溶液の組成によって設定される。これにより、エッチングされる表面に溶液を接触させたときに存在することになる熱力学的に平衡な化学種が独自に設定される。これはまた、エッチング生成物の溶解度を制御する。いったん特定のエッチング組成が決定されると、対応するシステムのエッチング挙動は主に溶液の温度に基づく。
【0005】
溶液の組成及び温度は、いくつかの目的を同時に達成するために使用される。所与の材料に対するエッチング速度は、好ましくは所望の範囲内にある。総エッチング時間は大量生産と両立することが好ましいが、それでも、基板からエッチングされる量の正確な制御を可能にするために、エッチング速度は依然として十分に遅い。ターゲット材料と共に、エッチング溶液に接触している他の材料の反応速度を最小限に抑えるべきである。コストを最小限に抑えながら、所与の溶液の安定性を最大化することも望まれる。この多変数最適化では、これらの領域のうちの1つ以上において性能を妥協して、他の領域において特定の又は所望の性能を達成することが必要となり得る。理想的なエッチング溶液は、妥協することなく、上で挙げた目的の全てを同時に達成する。本明細書で開示される技術は、エッチング挙動を制御するための、溶液に関する様々な変数に対して追加の制御を提供し、したがってエッチングプロセス開発におけるいくつかの妥協を低減させる。
【0006】
加えて、ウェハーの表面にわたる、エッチング液の組成及び温度の不均一性は、エッチング速度の不均一性を引き起こす可能性がある。これは、ウェハー上にアンダーエッチングされた領域又はオーバーエッチングされた領域のいずれかが存在するという点で、エッチング停止場所について妥協が必要であるということにつながる。このような不均一なエッチングは、歩留まりの低下又はデバイス性能の低下につながる可能性がある。従来のウェット化学エッチング液のエッチング挙動は、組成及び温度によって決定される。多くのプロセスでは、所望のエッチング挙動を達成するために必要な組成及び温度は、エッチング液を不安定にする。これらのプロセスを制御するために、エッチング液を使用直前に配合することができるが、これはコストを増加させる。分配中に他の課題がある。高温では、気化冷却により、ウェットエッチング溶液中のエッチング液がウェハーの中心からスピンチャンバの縁部へと流れるにつれて、エッチング液の温度が大幅に変化する可能性がある。エッチング速度の温度依存性が大きい場合、エッチング速度はウェハーの縁部に向かって減少し、不均一なエッチングをもたらすことになる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書の技術は、ウェハー上の空間分解能を使用して液体溶液のエッチング速度を調節して、ウェハー表面にわたるエッチング液の組成及び温度の不均一性を補正するための方法及びシステムを提供する。技術は、エッチング溶液に光活性成分を添加することを含む。そのような光活性成分は、照射下でpHを調節するための光酸又は光塩基、及び照射下で溶液酸化電位を変化させるための光酸化剤も含み得る。そのようなエッチング溶液を分配することにより、ウェハー上の溶液への照射条件を変更することによりアクセス可能なプールベダイアグラム上の領域にアクセスすることが可能になる。この技術は、単一の溶液で実現できるエッチング挙動の範囲を大幅に拡大する。そのような溶液は、暗所では不活性且つ安定し、照射下では活性なエッチング液になるように配合することができる。
【0008】
それに応じて、そのような溶液は、貯蔵及び不安定なエッチング溶液に関連する問題を解決する。その上、照射は空間的に分解できるので、エッチング液の反応性を、ウェハーの表面全体にわたって1点毎に調節できる。ウェハー表面全体のそのような空間的な制御は、ウェハー全体にわたって温度変化を補償するために使用することができる。別の利点は、単一の安定した溶液を保存して、エッチングする必要のある材料の特性に基づいて、照射を場所と強度の両方で変化させて、リアルタイムで所望のエッチング速度を構築して、多くの異なるタイプのエッチング作業を伴って使用できることである。加えて、光強度の空間的変動を使用して、フィードフォワード制御を使用して、ウェハー全体にわたって厚さの変動を補正することができる。したがって、ここでの技術は、ウェットエッチングプロセスに対して大幅な改善と制御を提供する。
【0009】
本明細書に開示される方法は、ウェハー上でのエッチング速度の時間的及び空間的制御を可能にする。フィードフォワード制御を使用して、ウェハー全体にわたって平らでない層の厚さを補正することができる。加えて、この方法により、エッチング液を、より反応性の低い状態で貯蔵できるので、エッチング液はより安定し、貯蔵タンク、分配ライン、フィルタ、又はバルブウェット材料(valve wetted material)と反応する可能性が低くなり、廃棄用ストリームにおいて反応性が低くなる。エッチング液は、特定の波長での照射下で反応性がより高くなる。
【0010】
本明細書に提示される他の技術では、単一の光活性エッチング溶液への時間変動する照射、例えば照射状態と暗状態との間の切り換え、を使用することで周期的エッチングプロセスが実行され、それにより、材料表面を化学的に改質するために1つのエッチング溶液を使用し、そして改質された層を溶解するために別のエッチング溶液を使用することは必要ない。
【0011】
本明細書で説明されるような異なるステップの順序は、明確にするために提示されている。一般に、これらのステップは、任意の好適な順序で実施され得る。加えて、本明細書における様々な特徴、技術、構成等の各々が本開示の様々な場所で説明されている場合があるが、それら概念の各々は、互いに独立して又は互いに組み合わされて実行され得ることが意図される。それに応じて、本出願の特徴は、多くの異なる方法で具現化及び検討することができる。
【0012】
この概要のセクションは、本出願の全ての実施形態及び/又は新規の態様を特定するものではない。むしろ本概要は、様々な実施形態と、これに対応する、従来技術に対する新規点の予備的説明を提供するに過ぎない。開示される実施形態の更なる詳細及び/又は予想される観点については、以下で更に議論するように、本開示の発明を実施するための形態セクション及び対応する図面に記載されている。
【0013】
本出願は、以下の添付の図面を伴って非限定的な形で与えられる記載を考慮すれば、よりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】コバルトについてのプールベダイアグラムの例である。
図2】エッチング溶液に照射が与えられているときのコバルトについての正規化された膜厚対時間のプロットである。
図3】暗所及びUV照射下でのエッチングされたコバルトを示す。
図4】LEDアレイによるスピンチャンバ内でウェハー上にエッチング液が分配される例示的なエッチングシステムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
この明細書の全体を通して「一実施形態」又は「実施形態」に言及することは、その実施形態に関して記載する特定の特徴、構造、材料又は特性が本出願の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味するが、それらが全ての実施形態に存在することを示すものではない。したがって、本明細書を通した様々な箇所における「一実施形態では」又は「実施形態では」という語句の出現は、必ずしも本出願の同じ実施形態を参照するわけではない。更には、特定の特徴、構造、材料又は特性は、1つ以上の実施形態において任意の好適な形態で組み合わされ得る。
【0016】
従来のウェットエッチング溶液は、典型的には、所与の材料に対して、溶液の組成及び温度に基づいて、設定された反応性及びエッチング速度を有する。しかしながら、本明細書における技術は、所与の温度において所与の組成を有する溶液のエッチング速度をリアルタイムで調節するための方法及びシステムを提供する。加えて、そのような方法は、基板上の位置に応じたエッチング速度の調節を可能にし、これはフィードフォワード制御に基づくことができ、その結果、ウェハー全体にわたる均一性が向上する。
【0017】
従来のエッチング溶液は、設定された溶液電位及びpHを有する。この組成により、溶液はプールベダイアグラムの単一の点に配置される。ダイアグラムのパラメータは、溶液の組成によって設定される。それに応じて、エッチングされる表面に接触して溶液が配置されるときに存在することになる熱力学的に平衡な化学種、並びにエッチング生成物の溶解度が既に設定されている。したがって、初期の組成は、対応するプロセス又はシステムのエッチング挙動を決定する。
【0018】
本明細書の技術は、1つ以上の光活性成分を液体エッチング溶液に添加する。照射下でpHを選択的に調節するために、光酸及び/又は光塩基が添加される。また、照射下での溶液酸化電位を選択的に変化させるために、光酸化剤を液体エッチング溶液に添加してもよい。光活性成分によって吸収され得る光の波長を提供するために、1つ又は複数の所与の光源を選択して、液体エッチング溶液のpHを上げる/下げる又は電位を上げる/下げることによって、対応する分子に所望の変化を引き起こすことができる。これらの2つの化学種は、プールベダイアグラム上の溶液の場所を移動させ、光の波長及び強度に基づいて溶液のエッチング挙動を根本的に変化させる。様々な光波長に反応するように光酸/光塩基、及び光酸化剤を選択することにより、独立して制御できる光活性剤が得られる。プールベダイアグラム上の単一の点を占める代わりに、本発明の溶液はパラメータ空間の広い領域にアクセスし、対応するエッチング挙動が、所与の光誘起された溶液パラメータに従って選択的に調節される。
【0019】
液体エッチング溶液に含めるために選択できる多数の光酸及び光酸化剤が存在する。このような選択肢により、吸収スペクトルが重なり合わないように、光反応剤を選択することができる。それに応じて、様々な光源又は波長が、含まれる光反応剤のいずれかに選択的にアクセスすることができる。1つ又は複数の照射の波長及び強度をリアルタイムで又は空間分解能を伴って調節して、エッチング挙動を時間分解能、空間分解能、又はその両方を伴って調節することができる。所与の溶液に任意の数の光反応剤を添加することができることに留意されたい。したがって、光酸発生剤及び光破壊塩基発生剤(photo destructive base generator)、並びに光酸化発生剤(photo-oxidizer generator)の両方が存在することができる。いくつかの実施形態は、それぞれが異なる光波長に反応する複数の光酸発生剤を有し得る。
【0020】
エッチング速度に対する時間的制御により、所与のエッチングプロセスがエッチング終点に近づくにつれて、エッチング速度を遅くすることが可能である。このような技術により、エッチング時間を最小化し、総エッチング深さの精度を最大化することができる。エッチング速度に対する空間的制御により、エッチング速度を、例えば材料が最も厚い場所で増加させることにより、ウェハー表面全体にわたる不均一な層の厚さを補正することが可能になる。
【0021】
ここで図を参照すると、図1はコバルトのプールベダイアグラムの例を示す。エッチングされる他の材料については、値がコバルトとは異なるであろうが、エッチングに対するウィンドウは類似している。このコバルトのプールベダイアグラム上の点は、エッチング液の場所を表す。ボックスは、光子的に調整可能なエッチング液がアクセス可能なパラメータ空間を表す。低pHでは、コバルトはCo2+又はCo3+イオンとして溶液中に溶解することになる。高pHでは、コバルト表面は水酸化コバルト又は酸化コバルトとして不動態化されることになる。光酸を使用することにより、pHを光子的に低下させてコバルトの溶解を増加させることができる。個々の光酸はいずれも溶液のpHを約1pH単位で調節できるので、所与の光酸が所望のpH範囲に対して選択される。選択された光酸は、図1のx軸に沿ったエッチング液のパラメータ空間の幅に影響を及ぼす。
【0022】
エッチング溶液の酸化電位は、光酸化剤を使用して、一定のpHにおいて増加させることができる。この酸化電位の変化は、図1に示すプールベダイアグラムのy軸に沿った移動を生じさせる。併せると、pHと酸化電位の独立した制御により、プールベダイアグラム上での2次元移動が可能になる。これにより、エッチング挙動をリアルタイムで制御して、基板処理をより良好に制御することが可能になる。
【0023】
図2は、溶液に照射して、液体エッチング溶液のpH及び酸化電位を変化させることにより、コバルトのエッチング速度を7倍に増加させ得ることを示す。この例では、水性エッチング液は溶存酸素と光酸化剤としての色素光増感剤とを含む。照射が与えられている場合、染料は溶存酸素を励起状態に励起させ、溶液の酸化電位を約1.23Vから約2.2Vに増加させる。これにより、エッチング速度が約7倍に増加する。
【0024】
図3は、本明細書の技術の利点を示す画像である。この例では、Hが光酸化剤として選択されている。この例では、コバルトエッチングは、酸化剤がCoをCoOに酸化する酸化/溶解メカニズムによって推進される(速度定数koxで)。次いで、CoOは、エッチング液分子(クエン酸アニオン)との錯体化によって、速度定数kにて溶液中に溶解する。暗所での処理では、k>>koxであって、粒界でのエッチングが不均一になり、表面の孔食及び粗面化がもたらされる。ここで、UV光で照射すると、Hが分解して2つのOH*ラジカルが形成される。これにより、溶液の酸化電位は、約1.8Vから約2.8Vに増加する。反応性OH*ラジカルは、kox>>kとなる程度にまで酸化反応を加速する。酸化が速くなると、表面におけるエッチング速度がバランスし、コバルトの均一なエッチングがもたらされる。換言すれば、UV放射は、H-クエン酸塩混合物の溶液中でのエッチング液の反応性をバランスさせ、多結晶コバルトの滑らかなエッチングをもたらす。
【0025】
選択された光酸/光塩基及び光酸化剤が短い半減期を有する液体エッチング組成物では、対応するエッチング速度を空間的に分解することができる。各化学種の半減期は、対流又は拡散による移動が空間分解能の長さスケールと比較して短くなるように、十分に短いことが好ましい。そのとき、空間的に変動する強度で照射されたウェハーは、空間的に変動するエッチング速度を効果的に有することになる。このエッチング速度を、ウェハー全体にわたって、除去する必要のある材料の厚さに合わせることができ、フィードフォワード制御データに基づくことができる。
【0026】
スピナーに実装された場合、任意選択で、照射光源を基板の動きに同期させて、ウェハーの個々の領域を時間に対して不変な強度で照射することが可能である。例えば、空間的に分解された照射は、LEDアレイで実行される。LEDアレイは、低い空間分解能が許容可能な場合に良好に機能する。アレイを、スピンチャンバ内の基板に同期して回転させることができ、又はアレイの空間強度をウェハーの動きに同期させることができる。より高い空間分解能が望まれる場合は、レーザー源及びスキャナを使用して照射が実行される。より高いエッチング速度を必要とするウェハーの領域に、より大きい光強度を提供するような動きで、レーザーをウェハー表面にわたって移動/スキャンさせることができる。これらの例示的な実装の両方を使用して、単一の波長又は複数の波長でウェハーに照射して、エッチング溶液中の1つ又は複数の光活性化学種を活性化することができる。他の光源を使用することができる。その上、例えば、所与の光源を組み合わせて、精密なレーザースキャンで強化されたゾーンフラッド曝露(zone flood exposure)を可能にすることができる。
【0027】
図4はシステム構成の例を示す。システムAの例では、LEDアレイは、アレイ内に種々のエミッタを散在させることにより、単一の波長又は複数の波長を放出することができる。個々のエミッタの電力をリアルタイムで調節して、ウェハーの表面全体にわたる照射強度を制御することができる。LEDアレイは、ウェハーの動きに機械的に同期させること、又は個々のエミッタの強度をウェハーの動きに同期させながらアレイを静止させたままにすること、のいずれかを行うことができる。システムBの例では、スピンチャンバ内の基板上に分配されたエッチング液への照射は、レーザー源によって送達される。複数のレーザーを使用して、複数の波長でウェハーに照射することができる。ステアリング光学系を使用して、ウェハー表面にわたってレーザービームがラスター走査される。ウェハー上の個々のポイント上でのレーザースポットの滞留時間が、そのポイントでのエッチングの強化を制御する。レーザービームの動きを、基板の動きに同期させることができる。
【0028】
本明細書の光子的に調整可能なエッチング溶液は、光活性成分及び他のエッチング化学種を相溶性の溶媒中に溶解することによって作製することができる。この光子的に調整可能なエッチング溶液は、各ウェハーの表面が個々に照射を受けるように配置されている限り、シングルウェハーエッチャーで分配されるか、又はマルチウェハーエッチングバスで使用することができる。
【0029】
光酸化剤には、過酸化物種の光分解によって生成されるヒドロキシルラジカル、Cl、次亜塩素酸、塩化オキサリル、及び塩化ビニル種の光分解によって生成される塩素ラジカルが含まれるが、これらに限定されない。一重項酸素は、光増感剤色素を使用して、化学的、熱的、又は光子的に生成することができる。
【0030】
光酸は、スピロピラン、準安定カルバニオン、ヒドロキシピレンなどに基づく化学物質を含むが、これらに限定されない。光塩基は、マラカイトグリーンカルビノール基、アクリジノール、ヒドロキシカルコンなどに基づく化学物質が含まれるが、これらに限定されない。
【0031】
一実施形態は、基板をエッチングする方法を含む。基板が収容され、基板の作業面にはエッチングされる材料が存在する。例えば、特定の金属が基板上にあり、除去する必要がある。基板を処理チャンバ内に収容することができ、処理チャンバは、液体が基板の表面に分配されている間に基板を回転させるためのスピンチャンバを含むことができる。
【0032】
液体エッチング溶液は、基板の作業面上に堆積される。液体エッチング溶液は、初期pH値及び初期酸化電位値を有する。液体溶液は、第1の光の波長に反応する第1の光反応剤と、第2の光の波長に反応する第2の光反応剤とを含む。
【0033】
第1の光の波長の放射を使用して、基板の作業面上の液体エッチング溶液に放射し、第1の光反応剤に、液体エッチング溶液のpH値を、初期pH値から第2のpH値へと変化させる。この第2のpH値は、基板の作業面からの材料のエッチング速度を増加させる。
【0034】
第2の光の波長の放射を使用して、基板の作業面上の液体エッチング溶液に放射し、第2の光反応剤に、液体エッチング溶液の酸化電位値を、初期酸化電位値から第2の酸化電位値へと変化させる。この第2の酸化電位値は、基板の作業面からの材料のエッチング速度を増加させる。次いで、液体エッチング溶液が基板の作業面から除去される。これは、スピン分配システムを使用しているときに、分配を停止し、全ての溶液が除去されるまで基板の回転を継続することで引き起こすことができる。
【0035】
この実施形態では、第1の光反応剤は光酸又は光塩基である一方で、第2の光反応剤は光酸化剤である。第1の光の波長は、任意選択で、第2の光の波長とは異なる。放射することは、光の強度を空間的に変更して、基板の作業面の異なる領域が異なる強度の光を受けるようにすることを含み得る。例えば、作業面の周辺部分は、蒸発冷却効果に対処するために、作業面の中央部分と比較して、より多くの光放射を受ける。
【0036】
他の実施形態では、空間照射は、以前のエッチングプロセスからのエッチングデータに基づいている。例えば、処理されたウェハーを検査した後に、エッチングが多い場所又は少ない場所を特定し、その後のウェットエッチングプロセスにおいて光の空間座標投影による補正を実行することができる。このゾーン又はピクセルベースの投影はまた、リアルタイム測定に、フィードフォワード制御を使用する場合には以前の計測測定に、又は類似ウェハーからの測定値に基づき得る。例えば、温度センサ又はヒートカメラはウェハーの作業面全体にわたる温度をモニターすることができ、蒸発冷却効果又は他の温度差に対処するために、基板の温度シグネチャを使用して、特定の領域に光又は熱を追加することができる。所与の材料のエッチングが終点に近づくにつれて、放射を漸減又は低減させることもできる。
【0037】
他の実施形態では、照射を使用して、全体的なエッチング速度を減少させる、及び/又は全体的なエッチング速度を増加させることができる。エッチング速度を減少させると、表面形態又はエッチング後の表面パシベーション層を改善することができる。したがって、光強度を増加させるとエッチング速度が減少するように、溶液が構成され得る。例えば、高pHにおいて、より容易にエッチングされる金属を考えると、エッチング溶液が光酸を含む場合、このpHは照射下で低下する可能性がある。したがって、照射を、エッチングを遅らせるメカニズムとして使用することができる。エッチング化学物質の調整をこのように外すことは、可溶性化学種を形成するために複数の表面反応が必要とされるエッチングにおいて、例えば金属が最初に酸化され、次いで酸化物が溶解される場合に、有用であり得る。酸化ステップが自己制限的である場合は、酸化物溶解の速度定数を低下させることにより、エッチング後の表面形態を改善することができる。
【0038】
いくつかの実施形態では、液体溶液は、照射時にエッチングプロセスが開始し、照射がオフのときに停止するように構成され得る。すなわち、照射が存在しない場合、特定の溶液のpHの反応性は、エッチングプロセスを推進するには不十分である。したがって、照射がなければ、液体溶液に放射が与えられるまで、作業面のエッチングは生じない(又は僅かである)。エッチング速度は、放射強度によって更に制御することができる。例えば、光強度が増加すると、溶液のエッチング速度が増加する。
【0039】
本明細書に提示される技術の他の実施形態では、照射を使用して、周期的エッチングプロセスを推進することができる。従来の周期的エッチングプロセスでは、材料表面は、1つのエッチング溶液を使用して化学的に改質され、改質された層は第2のエッチング溶液を使用して溶解される。改質されていない材料が除去されないように、改質された層は自己制限的である必要があり、溶解は選択的である必要がある。これらのデジタル的なエッチングは、総エッチング量がサイクル数にのみ依存するので有利である。反応の自己制限的な性質により、ウェハー内の優れた均一性が得られる。周期的プロセスは、エッチング溶液を切り替えるのに必要な時間と、各サイクルで除去される材料の量が少ないことに起因して遅くなる傾向がある。
【0040】
同じタイプの周期的エッチングプロセスは、単一の光活性エッチング溶液の時間変動する照射を使用して達成することができる。改質された表面層は、第1のpH及び第1の酸化電位によって定義されるプールベダイアグラム上の1つの場所に形成され得る。次いで、溶液は、溶液中の化学種の光活性を切り換えることにより、第2のpH及び第2の酸化電位に調節することができる。溶液中の化学種の光活性を切り換えることは、現在、化学種に照射されている場合は照射を停止すること、又は現在、化学種に照射されていない場合は照射を始めることを指す。第2のpH及び酸化電位は、改質された表面層を溶解するのに適切である。周期的エッチングは、ウェハーにわたって単一のエッチング溶液を分配し、照射状態と暗状態とを交互に繰り返すことで実現される。照射条件を変更することは、エッチング溶液の切り替えよりもはるかに高速であるため、より速いサイクルが、したがって、より速い全体的なエッチング速度が可能である。
【0041】
コバルトについての非限定的な例が与えられる。高い酸化電位及び高いpHにおいて、パシベーション層がコバルト表面に形成される。この条件は、溶液中の光酸化剤を活性化する波長λ1でエッチング溶液に照射することによって構築される。このパシベーション層は酸化コバルトからなる。次いで、溶液の酸化電位及びpHを低下させることにより、酸化コバルトは溶解する。これは、波長λ1での照射を停止して光酸化を停止し、波長λ2での照射を始めて溶液中の光酸を活性化することによって行われる。光酸に照射するとpHが低下し、そのとき酸化物層は溶解する。リガンドなどの追加の添加剤(光活性又は不活性)をエッチング溶液に添加して、パシベーション層の溶解を促進させてもよい。
【0042】
別の変形形態では、照射時に反応性になる光活性錯化剤を使用して、改質層の溶解を促進することができる。コバルトエッチングの例では、波長λ1の照射による光酸化の後、波長λ2にて溶液(光活性錯化剤を含む)に照射が与えられ、それにより、錯化、したがって改質された層のエッチングが始動される。場合によっては、材料に応じて、第1のステップ(改質ステップ)が必要な場合又は不要な場合がある。
【0043】
光活性錯化剤の例には、スピロピラン及びナフトピランの誘導体及び化合物などの分子光スイッチが含まれる。
【0044】
それに応じて、本明細書の技術は、ウェハー上でのエッチング速度の時間的及び空間的制御を可能にする。ウェットエッチング液の活性又は反応性は、ウェハー全体にわたる温度変化を補償するための座標場所によって光子的に調整することができる。本明細書で使用されるエッチング液及び組成物は、より反応性の低い状態で貯蔵できるので、組成物はより安定し、貯蔵タンク、分配ライン、フィルタ、又はバルブウェット材料と反応する可能性が低くなり、廃棄用ストリームにおいて反応性が低くなる。エッチング液は、特定の波長での照射下で反応性がより高くなり、光反応剤が基板表面上にあるときに、その中の光反応剤を調整することによって、保存安定性を有する単一の組成物は、複数の異なるエッチングプロセス及び除去される材料に対してであることができる。
【0045】
前述の説明では、処理システムの特定の形状並びにそこで使用される様々な構成要素及びプロセスの説明など、特定の詳細を説明してきた。しかしながら、本明細書における技術は、これらの特定の詳細から逸脱する他の実施形態で実施することができ、そのような詳細は、説明のためのものであり、限定のためのものではないことを理解されたい。本明細書で開示される実施形態が添付の図面を参照して説明されてきた。同様に、説明の目的のため、詳細な理解を提供するために特定の数字、材料、及び構成が示されてきた。それにもかかわらず、そのような特定の詳細なしで実施形態を実施することができる。実質的に同じ機能的構成を有する構成要素は、同様の参照記号によって示され、したがって、冗長な説明は省略される場合がある。
【0046】
様々な実施形態の理解を支援するために、様々な技術が複数の個別の作業として説明されてきた。説明の順序は、これらの作業が必ず順序に依存することを意味すると解釈されるべきではない。実際に、これらの作業は、提示した順序で実行される必要はない。説明された作業は、説明された実施形態とは異なる順序で実行されてもよい。追加の実施形態では、様々な追加の作業を実行することができ、且つ/又は説明した作業を省略することができる。
【0047】
本明細書で使用される「基板」又は「ターゲット基板」は、本出願に従って処理される物体を総称して指す。基板は、デバイス、特に半導体又は他の電子デバイスの任意の材料部分又は構造を含む場合があり、例えば半導体ウェハー、レチクルなどのベース基板構造、又は薄膜などのベース基板構造上の若しくはそれに重なる層であり得る。したがって、基板は、いかなる特定のベース構造、下層又は上層、パターン付き又はパターンなしにも限定されず、むしろ任意のそのような層若しくはベース構造並びに層及び/又はベース構造の任意の組み合わせを含むことが企図されている。説明では、特定の種類の基板を参照している場合があるが、これは、説明のみを目的とするものである。
【0048】
また、当業者であれば、同じ目的を達成しながらも、上述した技術の作業に対してなされる多くの変形形態が存在し得ることを理解するであろう。そのような変形形態は、本開示の範囲に包含されることが意図されている。したがって、実施形態の前述の説明は、限定することを意図したものではない。むしろ、実施形態に対するいかなる限定も、以下の特許請求の範囲に提示されている。
図1
図2
図3
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