(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-29
(45)【発行日】2023-10-10
(54)【発明の名称】成形物の製造方法、レプリカモールドの製造方法及びデバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/027 20060101AFI20231002BHJP
B29C 59/02 20060101ALI20231002BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20231002BHJP
【FI】
H01L21/30 502D
H01L21/30 541P
B29C59/02 Z
G03F7/20 504
(21)【出願番号】P 2020532524
(86)(22)【出願日】2019-07-26
(86)【国際出願番号】 JP2019029547
(87)【国際公開番号】W WO2020022514
(87)【国際公開日】2020-01-30
【審査請求日】2022-06-10
(31)【優先権主張番号】P 2018141682
(32)【優先日】2018-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成30年9月19日 The 17th International Conference on Nanoimprint and Nanoprint Technologies にて公開 平成30年9月24日 The 44th International Conference on Micro and Nano Engineering(MNE2018)にて公開 平成30年9月25日 The 44th International Conference on Micro and Nano Engineering(MNE2018)にて公開 平成30年11月13日 31st International Microprocesses and Nanotechnology Conference(MNC2018)にて公開 平成30年12月20日 ナノテスティング学会第13回電子線応用技術研究会にて公開 平成31年3月15日 2019年度精密工学会 春季大会学術講演会にて公開
(73)【特許権者】
【識別番号】000125370
【氏名又は名称】学校法人東京理科大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000222691
【氏名又は名称】東洋合成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【氏名又は名称】栗原 浩之
(72)【発明者】
【氏名】谷口 淳
(72)【発明者】
【氏名】岡部 貴雄
(72)【発明者】
【氏名】大幸 武司
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 貴士
【審査官】田中 秀直
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-323059(JP,A)
【文献】特開2014-154600(JP,A)
【文献】特開2015-019089(JP,A)
【文献】特開2017-050562(JP,A)
【文献】特開2002-122710(JP,A)
【文献】国際公開第2012/111656(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
B29C 59/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹部及び凸部の少なくとも一方を表面に有するモールドを、光硬化可能なポジ型電子線レジストに押し付ける工程と、
押し付けられた前記光硬化可能なポジ型電子線レジストに光を照射して硬化し、表面に凹部及び凸部を有するポジ型電子線レジスト成形物を得る工程と、
前記ポジ型電子線レジスト成形物の表面に電子線を照射して、前記照射した領域における前記ポジ型電子線レジスト成形物を部分的に分解する工程と、
を有する、成形物の製造方法。
【請求項2】
前記電子線の照射により前記ポジ型電子線レジスト成形物が部分的に分解して形成される電子線によるパターンの幅が、前記モールドの押し付けにより形成される凹部及び凸部の少なくとも一方の幅よりも小さい、請求項1に記載の成形物の製造方法。
【請求項3】
前記凹部及び凸部の少なくとも一方は、少なくとも一部において1μm~5mmの範囲内の幅を有する、請求項2に記載の成形物の製造方法。
【請求項4】
前記電子線によるパターンは、少なくとも一部において10nm~800nmの範囲内の幅を有する、請求項2又は請求項3に記載の成形物の製造方法。
【請求項5】
前記光硬化可能なポジ型電子線レジストは、光の照射によりラジカル重合可能な官能基又はカチオン重合可能な官能基を有する、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の成形物の製造方法。
【請求項6】
前記光硬化可能なポジ型電子線レジストは、(メタ)アクリル系化合物及びスチレン系化合物からなる群より選択される少なくとも一種のプレポリマーを含み、前記プレポリマーは光の照射によりラジカル重合可能な官能基を有する、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の成形物の製造方法。
【請求項7】
前記ポジ型電子線レジスト成形物は重合体を含み、前記重合体の主鎖は電子線の照射によって分解可能である、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の成形物の製造方法。
【請求項8】
前記押し付ける工程の前に、光硬化可能なポジ型電子線レジストに熱及び光照射の少なくとも一方の処理をあらかじめ行って部分的に重合反応させる工程を有する、請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の成形物の製造方法。
【請求項9】
前記部分的に分解する工程では、前記ポジ型電子線レジスト成形物に溝及び貫通穴の少なくとも一方を形成する、請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の成形物の製造方法。
【請求項10】
前記成形物が2種類以上の凹凸パターンを有するモールドである、
請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の成形物の製造方法。
【請求項11】
請求項10に記載の成形物の製造方法で得られたモールドと、レプリカモールド用樹脂組成物と、を準備する工程と、
前記モールドの前記2種類以上の凹凸パターンを前記レプリカモールド用樹脂組成物に転写・硬化してレプリカモールドを得る工程と、を含む、レプリカモールドの製造方法。
【請求項12】
請求項10に記載の成形物の製造方法で得られたモールド又は
請求項11に記載のレプリカモールドの製造方法で得られたレプリカモールドを準備する工程と、
前記モールド又は前記レプリカモールドの前記2種類以上の凹凸パターンを被転写用樹脂組成物に転写・硬化してパターンを形成する工程と、を含む、デバイスの製造方法。
【請求項13】
前記光硬化可能なポジ型電子線レジストは、光の照射の実施により重合可能な官能基を有するモノマーを含み、
前記モノマー
を光照射した後に得られる重合体は、
電子線の照射によって主鎖又は一部が分解
可能である、
請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の成形物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明のいくつかの態様は、成形物の製造方法、インプリント-電子描画の一括成形用レジスト、レプリカモールドの製造方法、デバイスの製造方法、及びインプリント材料に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロレベルからナノレベルの微細な3次元構造は、その有用性からますます重要性が高まっており、特に、高アスペクト比を持つ複雑なハイブリッドパターンの需要は大きい。高アスペクト比とは、凹凸構造を上から見たときの幅又は直径に対する凹凸の高さ又は深さをいう。ハイブリッドパターンとは、形状やサイズの異なる2種以上のパターンが組み合わされたものをいう。
【0003】
近年、マイクロサイズのパターンとナノサイズのパターンを含むハイブリッドパターンの重要性が高まっている。このようなハイブリッドパターンは、マイクロ流体デバイス、反射防止構造、撥水構造等の用途が想定される。マイクロ流体デバイスは、液溜部と流路とを有しており、流路と液溜部の加工サイズ差が著しく大きい。反射防止構造では、レンズの表面にナノサイズのパターンが規則的に配置されている。このような構造とすることで光の乱反射が防止される。他方、レンズがマイクロサイズに加工される場合がある。撥水構造は、鮫の肌構造やバラの花びらの表面構造等、生体に見られる繰り返しパターンを模写した構造である。生体の模写構造も、マイクロサイズのパターンとナノサイズのパターンを有する場合がある。
【0004】
しかしながら、アスペクト比が高く、形状が複雑なハイブリッドパターンになるほど製作が難しくなる。
ハイブリッドパターンの加工方法としては、例えば、マイクロサイズの加工を機械的に行い、ナノサイズの加工を光学的に行う方法が考えられる。
【0005】
光学的加工は機械的加工に比べて微細加工に適しており、特に電子線(EB)を用いる方法(EBL)では、100nmオーダー以下の加工も可能である。
【0006】
このような状況から、特許文献1に開示される方法が提案されている。特許文献1では、表面に凹凸を有する基板の上に電子線に感応するレジスト層を設け、電子線を照射してレジスト層を微細加工している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1には、表面に凹凸を有する基板を形成した後、改めて電子線リソグラフィ用のレジストを塗布する方法が開示されている。
【0009】
本発明のいくつかの態様の課題は、ハイブリッドパターンを効率的に形成可能な成形物の製造方法、及びインプリント-電子描画一括成形用レジストを提供することである。
また、本発明のいくつかの態様の課題は、ハイブリッドパターンを効率的に形成可能な成形物の製造方法、レプリカモールドの製造方法、デバイスの製造方法及びインプリント材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以下の形態を含む。
【0011】
<1> 凹部及び凸部の少なくとも一方を表面に有するモールドを、光硬化可能なポジ型電子線レジストに押し付ける工程と、
押し付けられた前記光硬化可能なポジ型電子線レジストに光を照射して硬化し、表面に凹部及び凸部を有するポジ型電子線レジスト成形物を得る工程と、
前記ポジ型電子線レジスト成形物の表面に電子線を照射して、前記照射した領域における前記ポジ型電子線レジスト成形物を部分的に分解する工程と、
を有する、成形物の製造方法。
【0012】
<2> 前記電子線の照射により前記ポジ型電子線レジスト成形物が部分的に分解して形成される電子線によるパターンの幅が、前記モールドの押し付けにより形成される凹部及び凸部の少なくとも一方の幅よりも小さい、<1>に記載の成形物の製造方法。
【0013】
<3> 前記凹部及び凸部の少なくとも一方は、少なくとも一部において1μm~5mmの範囲内の幅を有する、<2>に記載の成形物の製造方法。
【0014】
<4> 前記電子線によるパターンは、少なくとも一部において10nm~800nmの範囲内の幅を有する、<2>又は<3>に記載の成形物の製造方法。
【0015】
<5> 前記光硬化可能なポジ型電子線レジストは、光の照射によりラジカル重合可能な官能基又はカチオン重合可能な官能基を有する、<1>~<4>のいずれか1項に記載の成形物の製造方法。
【0016】
<6> 前記光硬化可能なポジ型電子線レジストは、(メタ)アクリル系化合物及びスチレン系化合物からなる群より選択される少なくとも一種のプレポリマーを含み、前記プレポリマーは光の照射によりラジカル重合可能な官能基を有する、<1>~<5>のいずれか1項に記載の成形物の製造方法。
【0017】
<7> 前記ポジ型電子線レジスト成形物は重合体を含み、前記重合体の主鎖は電子線の照射によって分解可能である、<1>~<6>のいずれか1項に記載の成形物の製造方法。
【0018】
<8> 前記押し付ける工程の前に、光硬化可能なポジ型電子線レジストに熱及び光照射の少なくとも一方の処理をあらかじめ行って部分的に重合反応させる工程を有する、<1>~<7>のいずれか1項に記載の成形物の製造方法。
【0019】
<9> 前記部分的に分解する工程では、前記ポジ型電子線レジスト成形物に溝及び貫通穴の少なくとも一方を形成する、<1>~<8>のいずれか1項に記載の成形物の製造方法。
【0020】
<10> 光照射によって重合可能な官能基を有するプレポリマーを含み、
前記プレポリマーを光照射した後に得られる重合体は、電子線の照射によって主鎖が分解可能である、インプリント-電子描画の一括成形用レジスト。
【0021】
<11> 第1の凹部及び第1の凸部の少なくとも一方を表面に有するモールドと、インプリント材料と、を準備する工程(a)と、
前記インプリント材料が前記第1の凹部及び前記第1の凸部の少なくとも一方の少なくとも一部に接した状態で前記インプリント材料に第1エネルギー線の照射及び加熱処理の少なくとも一方を実施することにより、前記インプリント材料を構成する複数の分子の間に結合を生じさせ、かつ前記インプリント材料を第2の凹部及び第2の凸部の少なくとも一方を有する第1の膜に変換させる工程(b)と、
前記第1の膜に第2エネルギー線を照射することにより、前記第1の膜の前記第2エネルギー線を照射した第1の部分と、前記第1の部分とは異なる第2の部分との間に物理的性質又は化学的性質の差を生じさせる工程(c)と、
前記第1の部分及び前記第2の部分のうちいずれか一方を除去することにより前記第1の膜に第3の凹部及び第3の凸部の少なくとも一方を有する構造が付与された成形物を形成する工程(d)と、を含む、成形物の製造方法。
【0022】
<12> 前記工程(b)において、前記第1の膜は重合体を含み、
前記重合体は、前記インプリント材料を前記第1エネルギー線の照射及び前記加熱処理の少なくとも一方の実施により重合して得られたものである、<11>に記載の成形物の製造方法。
【0023】
<13> 前記工程(c)において、前記第2エネルギー線の照射により、前記第1の部分における前記重合体の一部の結合又は開裂が誘起される、<12>に記載の成形物の製造方法。
【0024】
<14> 前記工程(d)において、前記第1の部分及び前記第2の部分のうちいずれか一方の除去を溶媒により行う、<11>~<13>のいずれか一項に記載の成形物の製造方法。
【0025】
<15> 前記工程(c)において、前記第2エネルギー線の照射角度は第1の膜の表面の法線に対し0~90°の範囲で設定される少なくとも一つの角度である、<11>~<14>のいずれか一項に記載の成形物の製造方法。
【0026】
<16> 前記第2エネルギー線は前記第1エネルギー線よりもエネルギーが大きい、<11>~<15>のいずれか一項に記載の成形物の製造方法。
【0027】
<17> 前記工程(d)において形成される第3の凹部及び第3の凸部の少なくとも一方の幅が、前記工程(b)において形成される前記第2の凹部及び前記第2の凸部の少なくとも一方の幅とサイズが異なる、<11>~<16>のいずれか1項に記載の成形物の製造方法。
【0028】
<18> 前記第2の凹部及び第2の凸部の少なくとも一方が、少なくとも一部において1μm~5mmの範囲内の幅を有する、<17>に記載の成形物の製造方法。
【0029】
<19> 前記第3の凹部及び第3の凸部の少なくとも一方が、少なくとも一部において10nm~800nmの範囲内の幅を有する、<17>又は<18>に記載の成形物の製造方法。
【0030】
<20> 前記インプリント材料が、第1エネルギー線の照射及び加熱処理の少なくとも一方の実施によりラジカル重合可能な官能基、カチオン重合可能な官能基及びアニオン重合可能な官能基からなる群より選択される少なくとも一つを有する化合物を少なくとも一種含む、<11>~<19>のいずれか1項に記載の成形物の製造方法。
【0031】
<21> 前記インプリント材料が、(メタ)アクリル系化合物及びスチレン系化合物からなる群より選択される少なくとも一種のモノマーを含み、
前記モノマーが、第1エネルギー線の照射及び加熱処理の少なくとも一方の実施によりラジカル重合可能な官能基、カチオン重合可能な官能基及びアニオン重合可能な官能基からなる群より選択される少なくとも一つを有する、<11>~<20>のいずれか1項に記載の成形物の製造方法。
【0032】
<22> 前記第1の膜が重合体を含み、前記重合体の一部が前記第2エネルギー線の照射によって分解可能又は架橋可能である、<11>~<21>のいずれか1項に記載の成形物の製造方法。
【0033】
<23> 前記工程(a)の前記インプリント材料を前記凹部及び凸部の少なくとも一方に接しさせる前に、前記インプリント材料に熱及び光照射の少なくとも一方の処理をあらかじめ行って部分的に重合反応させる工程を有する、<11>~<22>のいずれか1項に記載の成形物の製造方法。
【0034】
<24> 前記工程(d)では、前記第1の膜に溝及び貫通穴の少なくとも一方を形成する、<23>に記載の成形物の製造方法。
【0035】
<25> 前記成形物が2種類以上の凹凸パターンを有するモールドである、<11>~<24>のいずれか1項に記載の成形物の製造方法。
【0036】
<26> <25>に記載の成形物の製造方法で得られたモールドと、レプリカモールド用樹脂組成物と、を準備する工程と、
前記モールドの前記2種類以上の凹凸パターンを前記レプリカモールド用樹脂組成物に転写・硬化してレプリカモールドを得る工程と、を含む、レプリカモールドの製造方法。
【0037】
<27> <25>に記載の成形物の製造方法で得られたモールド又は<26>に記載のレプリカモールドの製造方法で得られたレプリカモールドを準備する工程と、
前記モールド又は前記レプリカモールドの前記2種類以上の凹凸パターンを被転写用樹脂組成物に転写・硬化してパターンを形成する工程と、を含む、デバイスの製造方法。
【0038】
<28> 第1エネルギー線の照射及び加熱処理の少なくとも一方の実施により重合可能な官能基を有するモノマーを含み、
前記モノマーを加熱又は光照射した後に得られる重合体は、第2エネルギー線の照射によって主鎖又は一部が分解可能又は架橋可能である、インプリント材料。
【発明の効果】
【0039】
本発明のいくつかの態様によれば、ハイブリッドパターンを効率的に形成可能な成形物の製造方法、及びインプリント-電子描画一括成形用レジストを提供することができる。
また、本発明のいくつかの態様によれば、ハイブリッドパターンを効率的に形成可能な成形物の製造方法、レプリカモールドの製造方法、デバイスの製造方法及びインプリント材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】本開示の成形物の製造方法の一例を説明する図である。
【
図2】本開示の成形物の製造方法の他の一例を説明する図である。
【
図3】モールド1を用いて得たインプリント成形物の走査型電子顕微鏡(SEM)による平面写真であり、(A)は300倍の平面写真、(B)はL&Sの部分をさらに拡大した平面写真、(C)はドットパターンの部分をさらに拡大した平面写真である。
【
図4】モールド2を用いて得たインプリント成形物のSEM画像であり、(A)は平面写真、(B)は斜視写真である。
【
図5】(A)は、モールド3を用いて得たインプリント成形物の斜視SEM画像であり、(B)は(A)のさらなる拡大写真である。
【
図6】モールド4を用いて得たインプリント成形物のSEM画像であり、(A)は平面写真、(B)は斜視写真である。
【
図7】(A)は、インプリントで形成したピラーパターンに、L&Sパターンを電子線描画した成形物の平面SEM画像である。(B)は、(A)のさらなる拡大写真である。
【
図8】インプリントで成形したホールパターンに、L&Sパターンを電子線描画した成形物の平面SEM画像である。(B)は、(A)のさらなる拡大写真である。
【
図9】インプリントで成形したピラーパターンに、ドットパターンを電子線描画した成形物の平面SEM画像である。(B)は、(A)のさらなる拡大写真であり、(C)は、斜視写真である。
【
図10】インプリントで成形したマイクロレンズアレイに、照射量:600μC/cm
2でドットパターンを電子線描画した成形物の平面SEM写真である。
【
図11】(B)は、インプリントで成形したマイクロレンズアレイに、照射量:1000μC/cm
2でドットパターンを電子線描画した成形物の斜視SEM写真である。(A)は、電子線照射部分(左側)と、電子線未照射部分(右側)の境目を撮影した写真であり、(C)は(B)の拡大写真、(D)は(C)のさらなる拡大写真である。
【
図12】インプリントで成形したマイクロレンズアレイに、照射量:(A)800μC/cm
2、(B)600μC/cm
2でドットパターンを電子線描画した成形物の斜視SEM写真である。
【
図13】本開示の成形物の製造方法で得られるイメージセンサの一例の断面図を示す。
【
図14】本開示の成形物の製造方法で得られるマイクロ流体デバイスの一例の斜視図を示す。
【
図15】本開示の成形物の製造方法で得られるプリズムシートの一例の斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明のいくつかの態様の実施形態の一例について詳細に説明する。
本開示において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。各図において同一又は対応する部材には同一符号を用いる。
【0042】
<成形物の製造方法1>
図1及び
図2に、成形物の製造方法1(以下、「製造方法1」と略称する場合がある)の一例を示すが、本発明のいくつかの態様の成形物の製造方法は、これに限定されない。
【0043】
成形物100の製造方法1は、凹部及び凸部の少なくとも一方を表面に有するモールド10を、光硬化可能なポジ型電子線レジスト(以下、「レジスト」と略称する場合がある)20に押し付ける工程(以下、「押圧工程」ともいう。
図1(A)、
図2(A))と、押し付けられた上記光硬化可能なポジ型電子線レジスト20に光30を照射して硬化し(
図1(B)、
図2(B)))、表面に凹部及び凸部を有するポジ型電子線レジスト成形物(以下、「インプリント成形物」ともいう)40を得る工程(以下、「光硬化工程」ともいう。)と、上記インプリント成形物40の表面に電子線50を照射して(
図1(D)、
図2(D))、前記照射した領域における上記ポジ型電子線レジスト成形物を部分的に分解する工程(以下、「電子線照射工程」ともいう。)と、を有する。
成形物100の製造方法は、さらに他の工程を有していてもよい。
【0044】
成形物100の製造方法1では、光硬化可能なポジ型電子線レジスト20をモールド10に押し付け、光硬化することで、レジスト硬化物の表面に凹凸を成形(インプリント)した後、その凹凸面に電子線50を照射する。つまり、インプリントで成形したパターン上に、直接電子線リソグラフィを行ってパターンを追加加工する。
【0045】
本開示の製造方法1では、インプリント成形物40が電子線50の照射領域において開裂してポジ型パターンを形成するため、インプリント成形したパターン上に、電子線リソグラフィ用のレジストを追加塗布しなくてよい。このため、本開示の製造方法1は、従来の方法よりも少ない工程で3Dハイブリッドパターンを作製でき、高スループット化が可能となる。
【0046】
また、本開示の製造方法1では、インプリント用の光硬化性レジストのほかに、電子線リソグラフィ用のレジストを追加塗布する必要がないため、ハイブリッドパターンを有する成形物を一体的に成形できる。このため、成形物中に界面が存在せず、光学部材に好適に適用することができる。
さらに、本開示の製造方法1で得られた成形物をインプリントのモールドとして使用することも可能である。インプリントのモールドとして使用することで、3Dハイブリッドパターンを有する成形物をさらに高スループット化して製造することが可能となる。
【0047】
なお、
図2は、モールド10の表面形状が異なる点が
図1との差異点であり、その他の工程は同様である。このように本開示の製造方法1では、インプリント用のモールドを取り替えることで、様々な形状やサイズのハイブリッドパターンを形成することができる。
以下、成形物の製造方法1を工程ごとに説明する。
【0048】
(押圧工程)
押圧工程では、凹部及び凸部の少なくとも一方を表面に有するモールド10を、レジスト20に押し付ける(
図1(A)、
図2(A))。
【0049】
モールド10の材質としては、例えば、グラファイト(C)、グラファイトとカーボンナノチューブの複合体等のカーボン材料;単結晶シリコン(Si)、ポリシリコン(α-Si)、炭化シリコン(SiC)、窒化シリコン(SiN)等の半導体材料;ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、銅(Cu)等の金属材料等が挙げられる。また、セラミックス等の誘電体材料でもよく、石英、ソーダガラス等の光学材料であってもよい。
【0050】
モールド10は、マスターモールドから複写したレプリカモールドであってもよい。レプリカモールドは、マスターモールドと同じ材質で作製されていても、異なる材質で作製されていてもよい。
【0051】
例えば、レプリカモールドは、レプリカモールド用樹脂組成物を用いて作製することができる。レプリカモールド用樹脂組成物としてはネガ型フォトレジストが挙げられ、UV-NIL(UV-nanoimprint lithography)法によりマスターモールドから転写して作製することができる。ネガ型フォトレジストは、(メタ)アクリル樹脂及びエポキシ樹脂であってもよい。
【0052】
エポキシ樹脂ベースのネガ型フォトレジストは、市販品として、例えば、商品名:SU-8 3005、SU-8 3010、SU-8 3025、SU-8 3035、SU-8 3050(いずれも、日本化薬株式会社製)として入手可能である。
【0053】
レプリカモールドの柔軟性を高めて離型不良の発生を抑える観点からは、レプリカモールドに用いる樹脂は、エポキシエステル等のメタアクリレート化合物であってもよい。エポキシエステルとしては、下記一般式(1)で表される化合物を挙げることができる。
【0054】
【0055】
式(1)中、Rは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、Xは(ポリ)アルキレンオキシ基を含む2価の基を表す。
【0056】
式(1)におけるXで表される(ポリ)アルキレンオキシ基を含む2価の基は、アルキレンオキシ基を1つ含むモノアルキレンオキシ基であっても、2以上含むポリアルキレンオキシ基であってもよい。Xにおけるアルキレンオキシ基の数は制限されない。(ポリ)アルキレンオキシ基としては、(ポリ)エチレンオキシ基、(ポリ)プロピレンオキシ基が挙げられる。
【0057】
式(1)におけるXで表される(ポリ)アルキレンオキシ基を含む2価の基は、(ポリ)アルキレンオキシ基以外のその他の基を含んでいてもよい。その他の基としては、ビスフェノール基等を挙げることができる。
【0058】
式(1)におけるXで表される(ポリ)アルキレンオキシ基を含む2価の基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、水酸基等を挙げることができる。
【0059】
一般式(1)で表される化合物のうち、Xがアルキレンオキシ基を含む2価の基である化合物(エポキシエステル)としては、下記化合物を挙げることができる。
【0060】
【0061】
エポキシエステルの市販品としては、例えば、共栄社化学株式会社の商品名:エポキシエステルM-600A、エポキシエステル40EM、エポキシエステル70PA、エポキシエステル200PA、エポキシエステル80MFA、エポキシエステル3002M(N)、エポキシエステル3002A(N)、エポキシエステル3000MK、及びエポキシエステル3000Aとして入手可能である。
【0062】
なお、後の光硬化工程において、モールド10側から光を照射してレジスト20を硬化させる場合には、モールド10の材質は、硬化に用いる波長の光を透過するものであることが好ましい。
【0063】
モールド10の凹部又は凸部の少なくとも一方は、少なくとも一部において1μm~5mm以下の範囲内の直径又は幅を有していてもよい。モールド10の凹部又は凸部は、少なくとも一部において、ナノオーダー(1nm~99nm)の直径又は幅を有していてもよく、ミリオーダー(1mm~5mm)であっても、サブミクロンオーダー(100μm~999μm)であっても、ミクロンオーダー(1μm~99μm)であってもよい。
【0064】
モールド10の凹部又は凸部の直径に対する高さの比(アスペクト比)はいずれであってもよく、アスペクト比は2以上とすることも可能である。成形物100の用途に応じて、アスペクト比は適宜設計することができる。
【0065】
モールド10の凹部又は凸部の形状は特に制限されない。例えば、
図1に示すように、突起部の形状が断面図において半球状であってもよく、逆に、空隙部分の形状が半球状であってもよい。また、
図2に示すように、突起部の形状が断面図において矩形であってもよい。また、図示しないが、突起部の形状が断面図において三角形状や多段形状であってもよい。
【0066】
モールド10に離型剤を付与して離型処理を施してもよい。離型処理を施すことで、モールド10をインプリント成形物40から引き剥がしやすくなる。離型剤としては、一般に知られているものを使用することができ、フッ素化合物、シランカップリング剤、界面活性剤等が挙げられる。
【0067】
レジスト20としては、光硬化可能であり、且つ光硬化した後の重合体が電子線照射によって開裂可能となるものを用いる。
なお、一般的に、光硬化可能なレジストは、ネガ型レジストである。一方、一般的に、電子線照射によって開裂可能なレジストは、ポジ型レジストである。このように、一般的に、光硬化可能なレジストは、電子線を照射するとさらに重合が進むため開裂しない。また、一般的に、電子線照射によって開裂可能なレジストは、光を照射しても硬化せずインプリントできない。
【0068】
上記相反する特性に対して、本開示の製造方法1で適用可能なレジスト20は、例えば、次のようにして得ることができる。
まず、電子線照射によって開裂可能な重合体を構成するモノマーをポジ型電子線レジストとして選択する。その重合体を構成するモノマーを光硬化能を有するように重合度を抑えて重合させて、上記モノマーの全部又は一部がプレポリマー化したものをレジストとして用いてもよい。プレポリマーは、モノマーに対して熱及び光照射の少なくとも一方の処理を行って部分的に重合させて得ることができる。
【0069】
このようなプレポリマーは、重合度を抑えて重合しているため、光照射によって重合反応が進行し、硬化して重合体となる。そして、光硬化した後は、電子線照射によって開裂可能な重合体となっている。すなわち、レジスト20を光硬化した後に得られるインプリント成形物40は、重合体を含み、この重合体の主鎖は電子線照射によって開裂可能となっていることが好ましい。
【0070】
ポジ型電子線レジストは、プレポリマーとモノマーとの混合物であってもよい。ポジ型電子線レジストがプレポリマーとモノマーとの混合物であるとき、該ポジ型電子線レジスト中のモノマーの含有率は、適宜設定することができる。例えば、薄膜状の成形物を製造する場合には、分子量が小さいモノマーを多く含む方が好ましい。一方、インプリントでの光硬化性の向上の観点からは、モノマーの含有率は少ない方が好ましい。
【0071】
レジスト20は、光の照射によりラジカル重合可能な官能基又はカチオン重合可能な官能基を有することが好ましく、光の照射によりラジカル重合可能な官能基を有することがより好ましく、(メタ)アクリル系化合物及びスチレン系化合物からなる群より選択される少なくとも一種のプレポリマー及び/又はモノマーを含むことがさらに好ましい。なお、このプレポリマー及び/又はモノマーは、光の照射によりラジカル重合可能な官能基が残存している。
【0072】
レジスト20は、非化学増幅型レジストに含まれる化合物をモノマー種として選択することができる。非化学増幅型レジストはラジカル重合可能なモノマーであり、例えば、α位にアルキル基、ハロゲン原子、又はハロゲン化アルキル基を有するα位置換アクリル酸エステル及びα位置換スチレンが挙げられる。α位が水素のアクリル酸エステル及びスチレンの重合体は、電子線照射によって開裂し難いのに対して、α位置換アクリル酸エステル及びα位置換スチレンの重合体は、電子線照射によって開裂可能である。
【0073】
α位置換アクリル酸エステルとしては、下記一般式(2)で表される化合物が挙げられ、α位置換スチレンとしては、下記一般式(3)で表される化合物が挙げられる。
【0074】
【0075】
式(2)中、R1は、アルキル基、ハロゲン原子、又はハロゲン化アルキル基を表す。R2は、鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基、該アルキル基の少なくとも1つのメチレン基が2価のヘテロ原子含有基で置換されたアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表し、これらは置換基を有してもよい。
上記置換基及び上記ヘテロ原子含有基については、後述する。
R3及びR4は、各々独立に、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、又はハロゲン化アルキル基を表す。
【0076】
式(3)中、R5は、アルキル基、ハロゲン原子、又はハロゲン化アルキル基を表す。R6及びR7は、各々独立に、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、又はハロゲン化アルキル基を表す。R8は、アルキル基、ハロゲン原子、又はハロゲン化アルキル基を表す。R9は、水素原子、アルキル基、又はハロゲン化アルキル基を表す。m及びnは、各々独立に、0~5の整数であり、m+nは0~5である。
【0077】
R1、R3、R4、R5、R6、R7及びR8で表されるハロゲン原子は、塩素原子又はフッ素原子であることが好ましい。R1~R9で表されるハロゲン化アルキル基におけるハロゲン原子は、フッ素原子であることが好ましい。R1~R9で表されるアルキル基は、炭素数が1~5であることが好ましく、メチル基又はエチル基であることがより好ましく、メチル基であることがさらに好ましい。
【0078】
一般式(2)で表される化合物としては、具体的には、メタクリル酸メチル(MMA)、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸tert-ブチル、メタクリル酸n-へキシル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸n-ステアリル、メタクリル酸メトキシポリエチレングリコール、メタクリル酸メトキシエチル、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェノキシエチル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸2-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、2-メタクリロイロキシエチルコハク酸、メタクリル酸グリシジル、2-メタクリロイロキシエチルアシッドホスフェート、メタクリル酸ジシクロペンタニル、メタクリル酸シクロへキシル、メタクリル酸1-アダマンチル、メタクリル酸2-メチル-2-アダマンチル、メタクリル酸3-ヒドロキシ-1-アダマンチル、メタクリル酸γ-ブチロラクトン、メタクリル酸3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8-トリデカフルオロ-n-オクチル、α-フルオロアクリル酸メチル、α-フルオロアクリル酸エチル、α-トリフルオロメチルアクリル酸メチル、α-トリフルオロメチルアクリル酸エチル、α-フルオロアクリル酸2,2,2-トリフルオロエチル、α-フルオロアクリル酸2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル、α-フルオロアクリル酸2-(パーフルオロブチル)エチル、α-フルオロアクリル酸2-(パーフルオロヘキシル)エチル、α-フルオロアクリル酸1H,1H,3H-テトラフルオロプロピル、α-フルオロアクリル酸1H,1H,5H-オクタフルオロペンチル、α-フルオロアクリル酸1H,1H,7H-ドデカフルオロヘプチル、α-フルオロアクリル酸1H-1-(トリフルオロメチル)トリフルオロエチル、α-フルオロアクリル酸1H,1H,3H-ヘキサフルオロブチル、及びα-フルオロアクリル酸1,2,2,2-テトラフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エチルが挙げられる。
【0079】
電子線照射による開裂性の観点からは、式(2)におけるR1は、塩素原子、フッ素原子又は炭素数1~5のフッ素化アルキル基であることが好ましく、塩素原子、フッ素原子又はパーフルオロメチル基であることがより好ましく、塩素原子又はフッ素原子であることがさらに好ましい。また、入手容易性の観点からは、式(2)中のR1は、アルキル基であることが好ましい。
【0080】
電子線照射による開裂性の観点からは、式(3)におけるR8は、各々独立に、アルキル基であることが好ましく、炭素数1~5のアルキル基であることがより好ましい。また、電子線照射による開裂性の観点からは、式(3)におけるR9は、各々独立に、水素原子又はアルキル基であることが好ましく、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基であることがより好ましく、水素原子であることがさらに好ましい。
電子線照射による開裂性の観点からは、式(3)におけるmが0であり、nが0であることが好ましい。
【0081】
一般式(3)で表される化合物としては、具体的には、下記で表されるα-メチルスチレン及びその誘導体が挙げられ、重合体の調製の容易性及び電子線照射による開裂性の観点からは、α-メチルスチレンが好ましい。
【0082】
【0083】
プレポリマーは、一般式(2)で表される化合物及び一般式(3)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも一種を用いて重合した単独重合体であっても、二種以上を併用して重合したプレコポリマーであってもよい。
【0084】
また、プレポリマーは、一般式(2)で表される化合物及び一般式(3)で表される化合物のほかに、これらと共重合可能な第1の他のモノマーを併用した共重合体としてもよい。第1の他のモノマーは、電子線照射による開裂を阻害しない範囲の量で用いることが好ましい。
レジストは、上記プレポリマー、プレコポリマー及び上記モノマー以外の第2の他のモノマーを含有してもよい。第2の他のモノマーのレジストにおける含有量は0.5質量%~20質量%が好ましい。
【0085】
プレポリマーは、気泡の発生を抑える観点から、溶剤を使用せず、バルク重合で製造することが好ましい。
【0086】
プレポリマー化のための重合には重合開始剤を用いることが好ましい。重合開始剤は、熱重合開始剤であっても光重合開始剤であってもよい。後の光硬化工程での重合反応にも利用する場合には、光重合開始剤を用いることが好ましい。
【0087】
光重合開始剤は、ラジカル重合開始剤であっても、カチオン重合開始剤であっても、アニオン重合開始剤であってもよい。ラジカル重合開始剤としては、炭素原子、酸素原子及び水素原子からなるラジカル重合開始剤、及び炭素原子、窒素原子、酸素原子及び水素原子からなるラジカル重合開始剤の少なくとも1種が挙げられる。具体的には、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタン-1-オン、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル、アセトフェノン、p-アニシル、ベンジル、ベンゾイン及びベンゾフェノンからなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。
【0088】
光重合開始剤の含有量は、モノマーの種類やその量に応じて適宜設計することができる。例えば、光重合開始剤の含有率は、モノマーと光重合開始剤の総量に対して、0.05質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましい。光重合開始剤の含有率は、1質量%~4質量%であることがより好ましく、1.5質量%~3.5質量%であることがさらに好ましい。
【0089】
重合開始剤がモノマーと混合し難い場合には、湯煎し、さらには超音波攪拌することが好ましい。湯煎と超音波攪拌は、交互に繰り返し行ってもよい。湯煎温度は、重合開始剤及びモノマーの種類によって適宜設定する。
【0090】
光重合開始剤を用いてプレポリマー化するのに使用する光の波長は、光重合開始剤の種類等により適宜選択することが好ましい。また、重合のための照射時間は、モノマーの種類、光の波長、重合開始剤の種類等によって適宜設定することが好ましい。重合のための照射量は、モノマーの量及び種類、光の波長、重合開始剤の量及び種類等によって適宜設定することが好ましく、0.1J/cm2~500J/cm2であることがより好ましく、例えば、1J/cm2~100J/cm2とすることができる。
【0091】
光重合開始剤を用いてプレポリマー化する場合には、適度な重合度で反応が停止するよう、重合反応後は冷暗所に保管することが好ましい。保管温度は、-20℃以下であることが好ましい。
【0092】
なお、一般に、インプリント法は、熱可塑性樹脂を用いる方法と光硬化性レジストを用いる方法とがある。光硬化性レジストはモノマーの状態でモールドに付与するため、モールドに付与するときの分子量が熱可塑性樹脂に比べて著しく小さく、モールドの狭い隙間まで入り込むことができ転写性に優れる。本開示におけるレジスト20は、プレポリマー化する場合があるが、適度な重合度で反応を止めているため、熱可塑性樹脂に比べて分子量が小さい。そのため、本開示のレジスト20は、熱可塑性樹脂に比べて、インプリントでの転写性に優れる。
【0093】
レジスト20にプレポリマーを含有させる場合、予めプレポリマーを合成して該プレポリマーをレジスト成分として調製してもよいが、モノマーを含むレジストの一部又は全部のモノマーをプレポリマー化してレジスト中にプレポリマーを含有させてもよい。
また、上記モノマーをレジストとして用いてもよい。レジストはモノマーだけでもよいが、操作性の点からレジストにプレポリマーを含有させるのがよい。レジストがプレポリマーを含む場合、レジストの重量平均分子量は500~150000であることが好ましく、1000~80000であることがより好ましい。また、レジストの数平均分子量(Mn)は500~120000であることが好ましく、800~60000であることがより好ましい。レジストの分散度(Mw/Mn)は1~50であることが好ましく、1~25であることがより好ましい。
レジストがプレポリマーを含有する場合のレジストの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定される、標準ポリスチレン分子量換算の値を示す。また、レジストの重量平均分子量を上記範囲とするには、レジスト中にプレポリマーを適宜含有させるか、又は、レジストをプレポリマー化する重合条件を前述の通りとすればよい。
【0094】
レジスト20はプレポリマーやモノマーのほかに、その他の成分を含んでもよい。その他の成分としては、増感剤、分散剤、消泡剤、可塑剤、界面活性剤、離型剤、フィラー、重合禁止剤、重合抑制剤、紫外線吸収剤、熱光安定剤等が挙げられる。なお、プレポリマーは1種のみでなく、複数種用いてもよい。
レジスト20中のモノマーの配合量は5質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましい。また、100質量%以下が好ましい。
【0095】
なお、プレポリマーは、第2エネルギー線の照射により化学的性質の差を生じる重合体として用いてもよい。さらに、第2エネルギー線の照射により化学的性質の差を生じる重合体は、上記レジストに用いられるモノマーを重合して得られるものや後述のインプリント材料に用いられるモノマーを重合して得られる重合体であってもよい。すなわちレジスト20は、あらかじめ重合した成分を含んでいてもよく、また成形物の製造方法の工程中で、具体的には上記押圧工程の前に、レジスト中のモノマーを一部重合させた成分を存在させてもよい。
第2エネルギー線の照射により化学的性質の差を生じる重合体は、通常の重合方法により合成したものを用いればよい。
【0096】
レジスト20の粘度は、付与性及び取り扱い性の観点から、10mPa・s~20000mPa・sであることが好ましく、50mPa・s~15000mPa・sであることがより好ましく、60mPa・s~5000mPa・sであることがさらに好ましい。
組成物の粘度は、JIS Z8803:2011に準じて測定したときの値をいう。
【0097】
レジスト20の硬化時間(光を照射し始めてから充分に硬化するまでの時間)は、60分以下であることが好ましく、10分以下であることが好ましく、60秒以下であることがさらに好ましい。
【0098】
準備したレジスト20にモールド10を押し付ける(
図1(A))。モールド10を押し付けることにより、レジスト20にモールド10の凹凸パターンが転写される。
【0099】
なお、
図1(A)に示すように、レジスト20を基板12に付与してから、レジスト20にモールド10を押し付けてもよく、あるいは、モールド10にレジスト20を付与してから、基板12に押し付けてもよい。
【0100】
さらには、モールド10とは別のモールド14を準備し、モールド10にレジスト20を付与してから、モールド14に押し付けてもよい。この方法では、モールド10とモールド14との間にレジスト20が介在するため、レジスト20の一方の表面には、モールド10による凹凸形状が形成され、他方の表面には、モールド14による凹凸形状が形成される。
【0101】
例えば、モールド10及び14がともに表面に凹の曲面を有するものを用いれば、得られるインプリント成形物40は、両面に凸の曲面を有するレンズ形状となる。モールド10及び14がともに表面に凸の曲面を有するものを用いれば、得られるインプリント成形物40は、両面に凹の曲面を有するレンズ形状となる。
【0102】
基板12又はモールド10にレジスト20に付与する方法は特に制限されず、通常用いられる方法を用いることができる。例えば、スクリーン印刷法、グラビア印刷法等の印刷法、刷毛塗り法、ドクターブレード法、ロールコート法等が挙げられる。大面積化の観点からは、連続的に付与できる方法であることが好ましい。
【0103】
押圧方法は特に制限されず、単純に基板12とモールド10とを互いに押し付ける方法、基板12とモールド10の積層体を2枚の平板で挟んで押圧する方法等が挙げられる。
【0104】
押圧力は100kPa~50MPaであることが好ましく、1MPa~10MPaであることがより好ましい。
【0105】
押圧力が100kPa以上であるとモールド10の凹凸の先端までレジスト20が入り込みやすくなり、50MPa以下であるとモールド10の破損が抑えられやすい。
【0106】
押圧時間は、10秒~1時間であることが好ましく、3分~10分であることがより好ましい。
【0107】
押圧時間が10秒以上であるとモールド10の凹凸の先端までレジスト20が入り込みやすくなり、1時間以下であるとレジスト20が過度に乾燥して流動性が悪くなるのが抑制される傾向にある。
【0108】
(光硬化工程)
光硬化工程では、モールド10が押し付けられたレジスト20に光30を照射して硬化する(
図1(B)、
図2(B))。光照射することで、レジスト20はインプリント成形物40となる。得られるインプリント成形物40の表面には、凹部及び凸部が形成されている。
【0109】
光照射条件は、用いる光硬化性樹脂の種類や量、さらに光重合開始剤を用いる場合には、その光重合開始剤の種類等に応じて適宜設定することができる。具体的には、紫外線域~青色域の波長の光を用いることができる。照度は、例えば、100lx~500lxとすることができる。また、照度は1mW/cm2~5000mW/cm2であることが好ましく、5mW/cm2~500mW/cm2であることがより好ましい。露光量は、好ましくは100mJ/cm2~300000mJ/cm2、より好ましくは、1000mJ/cm2~200000mJ/cm2であり、例えば、1000mJ/cm2~5000mJ/cm2とすることができる。
【0110】
光硬化工程で得られるインプリント成形物は重量平均分子量(Mw)が1000~500000であることが好ましく、2000~200000であることがより好ましく、5000~100000であることがさらに好ましく、数平均分子量(Mn)が500~300000であることが好ましく、1000~200000であることがより好ましく、2000~100000であることがさらに好ましく、分散度(Mw/Mn)が1~50であることが好ましく、1~25であることがより好ましい。
インプリント成形物の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定される、標準ポリスチレン分子量換算の値を示す。また、インプリント成形物の重量平均分子量を上記範囲とするには、光照射条件を前述の通りとすればよい。
光硬化工程で得られるインプリント成形物はガラス転移点が室温(例えば、25℃)以上であることが好ましく、室温(例えば、25℃)~300℃であることがより好ましく、室温(例えば、25℃)~150℃がさらに好ましい。
【0111】
モールド10が照射光を透過する材質で構成されている場合には、モールド10越しに光を照射することが好ましい。基板12が照射光を透過する材質で構成されている場合には、基板12越しに光を照射してもよい。モールド14を使用する場合であって、モールド14が照射光を透過する材質で構成されている場合には、モールド14越しに光を照射してもよい。
【0112】
モールド10、14越しに光を照射した場合には、光硬化工程の後で、インプリント成形物40からモールド10、14を取り外す(
図1(C)、
図2(C))。
【0113】
取り外したモールド10、14は、表面にレジスト20又はインプリント成形物40が残っていれば、残存するレジスト20及びインプリント成形物40を取り除くことで、再利用可能である。モールド10、14からのレジスト20及びインプリント成形物40の除去方法は、溶媒に浸漬して、レジスト20及びインプリント成形物40中の重合体を溶解させる方法等が挙げられる。溶媒に浸漬した後のモールド10、14は、乾燥して溶媒を除去することが好ましい。
【0114】
インプリント成形物40は、次の電子線照射工程(
図1(D)、
図2(D))の前に、必要に応じて洗浄(図示せず)、及び乾燥(図示せず)してもよい。
【0115】
(電子線照射工程)
電子線照射工程では、インプリント成形物40の表面に電子線50を照射する(
図1(D)、
図2(D))。電子線50の照射により、照射領域におけるインプリント成形物40が部分的に分解する。したがって、電子線の照射領域は、後の工程の現像により除去され、溝(非貫通穴)及び貫通穴の少なくとも一方が形成される。除去されて形成されるパターンの深さは、電子線の照射量や加速電圧を変えることで調節することができる。
【0116】
電子線50の照射条件は適宜選択することができる。例えば、加速電圧は、5kV~100kVとすることができる。加速電圧を高くするほど、線幅が細く、且つ高アスペクト比のパターンの形成が可能となる。電流値は、5pA~100pAとすることができる。照射量は、例えば、1μC/cm2~5000μC/cm2としてもよい。
【0117】
電子線50を照射した後、現像液60で現像すると(
図1(E)、
図2(E))、ポジ型電子線レジスト成形物の照射領域が除去され、未照射領域が残存し、3Dハイブリッドパターンを表面に有する成形物100が得られる(
図1(F)、
図2(F))。
【0118】
現像液60としては、溶媒であれば特に限定されることなく、例えば、フッ素系溶剤、アルコール、アルキル基を有する酢酸エステル、及びこれらの混合物を用いることができる。フッ素系溶剤としては、CF3CFHCFHCF2CF3、CF3CF2CHCl2、CClF2CF2CHClF、CF3CF2CF2CF2OCH3、C8F18等を挙げることができる。アルコールとしては、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール(イソプロピルアルコール)等を挙げることができる。アルキル基を有する酢酸エステルとしては、酢酸アミル、酢酸ヘキシル等を挙げることができる。
【0119】
現像後、リンス液でリンスしてもよい(図示せず)。リンス液としては、特に限定されることなく、使用する現像液の種類に応じて適宜選択することができる。
【0120】
本開示の製造方法1によれば、電子線50によって描画されるパターンの幅は、インプリントにより形成される凹部及び凸部の少なくとも一方の幅よりも小さくすることができ、成形物の表面に3Dハイブリッドパターンを形成することができる。
【0121】
<製造方法1により得られた成形物>
成形物100は、表面の少なくとも一部に、インプリント成形されたパターンと、電子線リソグラフィによって形成されたパターンと、を含む3Dハイブリッドパターンが形成されている。
【0122】
電子線50によって描画されるパターンの幅は、モールド10の押し付けにより形成される凹部及び凸部の少なくとも一方の幅よりも小さくすることができる。
【0123】
インプリント成形される凹部又は凸部は、少なくとも一部において1μm~5mm以下の直径又は幅を有することができ、ナノオーダー(1nm~99nm)であってもよく、ミリオーダー(1mm~5mm)であっても、サブミクロンオーダー(100μm~999μm)であっても、ミクロンオーダー(1μm~99μm)であってもよい。インプリント成形される凹部又は凸部の直径又は幅に対する深さ又は高さの比(アスペクト比)はいずれであってもよく、2以上とすることが可能である。
【0124】
電子線リソグラフィによって形成されるパターンは、少なくとも一部において10nm~800nmの範囲内の幅又は直径を有していてもよい。
【0125】
ハイブリッドパターンを効率的に作製する観点からは、ミクロンオーダー以上のサイズのパターンをインプリントで作製し、ナノオーダーのサイズのパターンを電子線リソグラフィで作製することが好ましい。
【0126】
成形物100は、様々な形状やサイズの3Dハイブリッドパターンを有することができる。そのため、成形物100は、マイクロ流体デバイス、反射防止構造、撥水構造等多様な用途に適用することができる。
【0127】
<成形物の製造方法2>
本発明のいくつかの態様の成形物の製造方法の実施形態は、上記成形物の製造方法1の方法に加えて以下の方法(以下、「製造方法2」と略称する場合がある。)が挙げられる。
上記製造方法2は、第1の凹部及び第1の凸部の少なくとも一方を表面に有するモールドと、インプリント材料と、を準備する工程(a)と、
上記インプリント材料が上記凹部及び凸部の少なくとも一方に接した状態で上記インプリント材料に第1エネルギー線の照射及び加熱処理の少なくとも一方を実施することにより、前記インプリント材料を構成する複数の分子の間に結合を生じさせ、かつ上記インプリント材料を第2の凹部及び第2の凸部の少なくとも一方を有する第1の膜に変換させる工程(b)と、
上記第1の膜に第2エネルギー線を照射することにより、上記第1の膜の前記第2エネルギー線を照射した第1の部分と、上記第1の部分とは異なる第2の部分との間に物理的性質又は化学的性質の差を生じさせる工程(c)と、
上記第1の部分及び上記第2の部分のうちいずれか一方を除去することにより上記第1の膜に第3の凹部及び第3の凸部の少なくとも一方を有する構造が付与された成形物を形成する工程(d)と、を含む、成形物の製造方法である。
【0128】
製造方法2では、工程(b)における第1の膜の形成を以下のように行う。上記インプリント材料が上記第1の凹部及び第1の凸部の少なくとも一方に接した状態で、上記インプリント材料に第1エネルギー線の照射及び加熱処理の少なくとも一方を実施し、インプリント材料を第1の膜に変換させることで第1の膜を形成する。得られた第1の膜の表面には第2の凹部及び第2の凸部の少なくとも一方が成形(インプリント)される。その後、その第2の凹部及び第2の凸面の少なくとも一方を有する第1の部分に第2エネルギー線を照射して、第1の部分及び第2の部分のうちいずれか一方を除去することで追加的にパターンを成形する。つまり、インプリントで成形したパターンを有する第1の膜上に、直接第2エネルギー線での照射を行うことで、さらにパターンを追加加工する。
【0129】
製造方法2は、上記製造方法1に記載される範囲を含むものである。製造方法2に関し、上記製造方法1に記載された範囲以外のいくつかの実施の形態を以下に説明する。
【0130】
(工程(a))
工程(a)において形成される第1の膜は、上記インプリント材料を構成する複数の分子の間に結合が生じることにより得られる。より具体的には、上記第1の膜は上記インプリント材料が重合して得られた重合体を含むものである。上記重合体は、架橋された架橋体であってもよい。上記重合体は、架橋された架橋体と架橋していない重合体との両方を含んでいてもよい。以下、「重合体」は「重合体及び/又は架橋体」を意味する。
モールドは、製造方法1におけるモールドと同様のモールドを用いることができる。
【0131】
上記インプリント材料は、第1エネルギー線の照射及び加熱処理の少なくとも一方の実施により複数の分子の間に結合を生じることで重合体が得られ、且つ、第2エネルギー線の照射により重合体の一部の結合又は開裂が誘起されるものを用いる。なお、「インプリント材料」は上記製造方法1に記載される「光硬化可能なポジ型電子線レジスト」を含む。
工程(b)の第1の膜を加熱処理の実施により得る場合、製造方法1におけるポジ型電子線レジストにおいて光ラジカル重合開始剤に代えて、熱ラジカル重合開始剤を含有したレジストを用いることができる。熱ラジカル重合開始剤としては、一般的なものを用いることができ、例えば過酸化物、アゾ化合物、アジド化合物、ジアゾ化合物、具体例としては、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチル-パーオキシベンゾエート、アゾビスイソブチロニトリル、アジドベンズアルデヒド、アジドベンザルメチルシクロヘキサノン類、アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル-2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)等のアゾビス化合物、芳香族ジアゾニウム塩及びナフトキノンジアジド化合物等からなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。
【0132】
製造方法1におけるポジ型電子線レジストにおいて光ラジカル重合開始剤に代えてカチオン重合開始剤を用いることができる。カチオン重合開始剤としては、塩酸、硫酸、過塩素酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、クロロスルホン酸、フルオロスルホン酸等のプロトン酸;三フッ化ホウ素、塩化アルミニウム、四塩化チタン、塩化第二スズ、塩化第二鉄等のルイス酸;UV感応性光酸発生剤;等が挙げられる。
製造方法1におけるポジ型電子線レジストにおいて光ラジカル重合開始剤に代えてアニオン重合開始剤を用いることができる。アニオン重合開始剤としては、メチルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、t-ブチルリチウム等の有機アルカリ金属;メチルマグネシウムクロリド、メチルマグネシウムブロミド等の有機アルカリ土類金属;リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;UV感応性光塩基発生剤;等が挙げられる。
【0133】
上記インプリント材料は、第1エネルギー線の照射及び加熱処理の少なくとも一方の実施によりラジカル重合可能な置換基、カチオン重合可能な置換基及びアニオン重合可能な置換基からなる群より選択されるいずれかを有する化合物を少なくとも一種含む。
上記ラジカル重合可能な置換基を有する化合物としては、上記製造方法1におけるポジ型電子線レジストに用いられるラジカル重合可能なモノマーが挙げられる。
上記カチオン重合可能な置換基を有する化合物としては、一般的なカチオン重合可能なモノマーが挙げられる。
上記アニオン重合可能な置換基を有する化合物としては、一般的なアニオン重合可能なモノマーが挙げられる。
【0134】
インプリント材料として、その他、下記組成物を用いることができる。
(1)酸反応性基含有化合物と、光重合開始剤又は熱重合開始剤と、第2エネルギー線に対し感応性を有する光酸発生剤と、を有するインプリント材料用組成物。上記光重合開始剤又は熱重合開始剤は、それぞれ光ラジカル重合開始剤又は熱ラジカル重合開始剤が好ましい。
上記インプリント材料用組成物は、上記工程(b)において、酸反応性基含有モノマーが、第1エネルギー線の照射により光重合開始剤で重合若しくは架橋し、又は、加熱処理の実施により熱重合開始剤で重合若しくは架橋し、酸反応性基を含有する重合体を生成する。
次いで、上記工程(c)において、第2エネルギー線を上記重合体に照射することにより、上記光酸発生が分解し酸を発生し、該酸により酸反応性基を含有する重合体の酸反応性基が極性変換をし、第1の部分と第2の部分との間に化学的性質の差を生じさせる。
上記酸反応性基としては、酸の作用で分解してカルボン酸又はフェノール性水酸基等を生成する酸解離性基が挙げられる。上記酸解離性基として具体的には、下記式(a-1)又は(a-2)等で示される基が挙げられる。上記酸解離性基含有化合物としては、上記式(2)におけるR2が下記式(a-1)又は(a-2)等で示される基である化合物が挙げられる。
【0135】
【0136】
上記式(a-1)中、R12及びR13は独立して各々に直鎖、分岐又は環状のアルキル基であり、例えばメチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、イソプロピル、t-ブチル、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンタン-1-イル基、アダマンタン-2-イル基、ノルボルナン-1-イル基及びノルボルナン-2-イル基等のアルキル基等が挙げられる。
【0137】
R14は置換基を有してもよい直鎖、分岐、又は環状のアルキル基であり、アルキル基としてはR12のアルキル基のそれぞれと同じ選択肢から選択され、これらの水素原子の一部が水酸基、アルコキシ基、オキソ基、アミノ基、アルキルアミノ基等に置換されていてもよい。上記R12、R13、及びR14は単結合で直接に又はメチレン基を介して環構造を形成してもよい。
【0138】
上記式(a-2)中、R15及びR16は独立して各々に、水素原子、及び、直鎖、分岐又は環状のアルキル基であり、アルキル基としてはR12のアルキル基のそれぞれと同じ選択肢から選択される。
【0139】
R17は置換基を有してもよい直鎖、分岐又は環状のアルキル基であり、アルキル基としてはR12のアルキル基のそれぞれと同じ選択肢から選択され、これらの水素原子の一部が水酸基、アルコキシ基、オキソ基、アミノ基、アルキルアミノ基等に置換されていてもよい。上記R15、R16及びR17は単結合で直接に又はメチレン基を介して環構造を形成してもよい。
【0140】
上記式(a-1)及び(a-2)として具体的に、下記に示す構造が例示できる。しかしながら、本発明はこれに限定されない。
【0141】
【0142】
上記インプリント材料用組成物は、上記酸反応性基含有化合物以外に、密着性向上及び強度向上の点から他の化合物を含有していてもよい。他の化合物としては、例えば下記式(4a)又は(4b)で表される化合物等が挙げられる。上記インプリント材料用組成物が上記酸反応性基含有化合物に加えて下記化合物を有する場合、上記重合体は共重合体となり得る。
上記インプリント材料用組成物における酸反応性基含有化合物の含有量は、1質量%~100質量%が好ましく、10質量%~90質量%がより好ましく、30質量%~80質量%がさらに好ましい。
【0143】
【0144】
上記式(4a)及び(4b)中、R1、R3~R7は独立して各々、上記式(2)及び(3)のR1、R3~R7の各々と同じ選択肢から選択される。
L1は、直接結合、カルボニルオキシ基、カルボニルアミノ基、置換基を有してもよい直鎖、分岐又は環状のアルキレンカルボニルオキシ基、及び、アルキレンカルボニルアミノ基からなる群より選択されるいずれか1種である。
R18は独立して各々に、アルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、アルキルスルファニル基、アルキルスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、及びハロゲン原子からなる群より選択されるいずれか1種である。
【0145】
R19は、-C(O)-O-、-SO2-及び-O-SO2-からなる群より選択される少なくともいずれかを含む環式基である。上記環式基としては、ラクトン骨格;スルトン骨格;スルホラン骨格を含有する基等が挙げられる。
pは0~4の整数であり、qは1~5の整数である。
【0146】
上記酸反応性基として、酸の作用で重合する酸架橋性基であってもよい。上記酸架橋性基として具体的には、エポキシ基、ビニルオキシ基及びオキセタニル基等が挙げられる。上記酸架橋性基含有化合物としては、上記式(2)におけるR2が酸架橋性基である化合物が挙げられる。
【0147】
上記インプリント材料用組成物中の光重合開始剤又は熱重合開始剤は、製造方法1で用いられるポジ型電子線レジスト中に含まれる光重合開始剤又は熱重合開始剤を用いることができる。
【0148】
上記インプリント材料用組成物中の光酸発生剤は、例えばArFレジストやEUVレジストに通常用いられる光酸発生剤を用いることができる。上記光酸発生剤として具体的には、特開2003-342254号公報、国際公報2011/93139号公報、国際公報2016/88648号公報、特開2016-212241号等に開示される光酸発生剤を用いることができる。
より具体的には、下記一般式(5)又は(6)で示されるオニウム塩が挙げられる。
【0149】
【0150】
上記一般式(5)中、R31~R33は各々独立して直鎖状、分岐状、単環式又は橋かけ環式アルキル基、アリール基及びヘテロアリール基のいずれかを示す。これらは置換基を有していてもよい。R31~R33のうち2つ以上は、単結合で直接に、又は、酸素原子、硫黄原子、窒素原子含有基及びメチレン基からなる群より選択されるいずれか1つを介して、これらが結合する硫黄原子と共に環構造を形成してもよい。
上記R31~R33中の少なくとも1つのメチレン基が2価のヘテロ原子含有基で置換されていてもよい。また、上記R31~R33中の少なくとも1つのメチレン基が炭素-炭素二重結合で置換されていてもよい。
【0151】
上記ヘテロ原子含有基は、-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、-O-CO-O-、-NHCO-、-CONH-、-NH-CO-O-、-O-CO-NH-、-NH-、-N(R)-、-N(Ar)-、-S-、-SO-及び-SO2-等が挙げられる。
上記置換基としては、ヒドロキシ基、シアノ基、メルカプト基、カルボキシ基、カルボニル基、アルキル基(-R)、アルコキシ基(-OR)、アシル基(-COR)、アルコキシカルボニル基(-COOR)、アリール基(-Ar)、アリーロキシ基(-OAr)、アミノ基、アルキルアミノ基(-NHR)、ジアルキルアミノ基(-N(R)2)、アリールアミノ基(-NHAr)、ジアリールアミノ基(-N(Ar)2)、N-アルキル-N-アリールアミノ基(-NRAr)ホスフィノ基、シリル基、ハロゲン原子、トリアルキルシリル基(-Si-(R)3)、該トリアルキルシリル基のアルキル基の少なくとも1つがArで置換されたシリル基、アルキルスルファニル基(-SR)及びアリールスルファニル基(-SAr)等を挙げることができるが、これらに制限されない。
なお、上記ヘテロ原子含有基は、成形物の製造方法1における上記式(2)のR2のヘテロ原子含有基としても用いられる。
【0152】
置換基等中の上記Rは、炭素原子数1以上のアルキル基であることが好ましい。また、炭素原子数20以下であることがより好ましい。炭素原子数1以上のアルキル基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基及びn-デシル基等の直鎖状アルキル基;イソプロピル基、イソブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、tert-ペンチル基、2-エチルエキシル基等の分岐状アルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンタン-1-イル基、アダマンタン-2-イル基、ノルボルナン-1-イル基及びノルボルナン-2-イル基等の脂環式アルキル基;これらの水素の1つがトリメチルシリル基、トリエチルシリル基及びジメチルエチルシリル基等のトリアルキルシリル基で置換されたシリル基置換アルキル基;これらの水素原子の少なくとも1つがシアノ基又はフルオロ基等で置換されたアルキル基;等が好ましく挙げられる。上記アルキル基中の炭素-炭素一重結合が、炭素-炭素二重結合に置き換わっていてもよい。
上記置換基は、成形物の製造方法1における上記式(2)のR2の置換基としても用いられる。
【0153】
置換基等中のArは、アリール基又はヘテロアリール基であることが好ましい。ヘテロアリール基とは、環構造中にヘテロ原子を1つ以上含むアリール基である。上記Arの具体例としては、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、クアテルフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントレニル基、ペンタレニル基、インデニル基、インダセニル基、アセナフチル基、フルオレニル基、ヘプタレニル基、ナフタセニル基、ピレニル基、クリセニル基、テトラセニル基、フラニル基、チエニル基、ピラニル基、スルファニルピラニル基、ピロリル基、イミダゾイル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、ピラゾイル基、及びピリジル基、イソベンゾフラニル基、ベンゾフラニル基、イソクロメニル基、クロメニル基、インドリル基、イソインドリル基、ベンゾイミダゾイル基、キサンテニル基、アクアジニル基及びカルバゾイル基等の炭素原子数20以下のものが好ましく挙げられる。
【0154】
なお、上記インプリント材料用組成物中の光酸発生剤は、上記式(2)のR2部分に結合した化合物であってもよい。また、上記一般式(5)又は(6)で示されるオニウム塩はモノカチオンであるが、ジカチオンであってもよい。
R31~R33が上記置換基を有し、且つオニウム塩が低分子化合物である場合、R31~R33それぞれの炭素原子数は上記置換基の炭素原子数も含めて炭素原子数1~30であることが好ましい。
【0155】
X-は対アニオンである。上記対アニオンとしては特に制限はなく、スルホン酸アニオン、カルボン酸アニオン、イミドアニオン、メチドアニオン、カーボアニオン、ボレートアニオン、ハロゲンアニオン、リン酸アニオン、アンチモン酸アニオン、ヒ素酸アニオン等のアニオンが挙げられる。
【0156】
インプリント材料は酸反応性基含有化合物と、光重合開始剤又は熱重合開始剤と、光酸発生剤とのほかに、その他の成分を含んでもよい。その他の成分としては、増感剤、分散剤、消泡剤、可塑剤、界面活性剤、離型剤、フィラー、重合禁止剤、重合抑制剤、紫外線吸収剤、熱光安定剤等が挙げられる。なお、酸反応性基含有化合物は一種のみでもよいが、複数種用いてもよい。酸反応性基含有化合物はモノマーであってもよく、プレポリマーであってもよい。
インプリント材料中のモノマーの配合量は5質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましい。また、100質量%以下が好ましい。
【0157】
(工程(b))
工程(b)においては、上記インプリント材料を凹部及び凸部の少なくとも一方を表面に有するモールドに接した状態とする。上記モールドの凹部及び凸部の少なくとも一方を上記インプリント材料に接するようにすればよい。上記製造方法1と同様にモールドを上記インプリント材料に押圧することも好ましい。上記インプリント材料を凹部及び凸部の少なくとも一方を表面に有するモールドに接した状態で第1エネルギー線の照射及び加熱処理の少なくとも一方を実施することにより、上記インプリント材料を第2の凹部及び第2の凸部の少なくとも一方を有する第1の膜に変換させる。
上記第1エネルギー線としては、上記製造方法1における光が挙げられる。該光とは、具体的に波長250nm以上の光が挙げられるが、これに限定されない。
上記工程(b)における第1の膜は、上記インプリント材料が重合又は架橋して得られた重合体を含む。上記第1の膜は、第1の凹部及び第1の凸部の少なくとも一方を有するモールドの凹凸が転写されて、第2の凹部及び第2の凸部の少なくとも一方を有する。
【0158】
工程(b)における第1エネルギー照射は、上記製造方法1の光硬化工程と同様に行えばよい。
工程(b)における加熱処理条件は、用いるインプリント材料の種類、量、膜厚等に応じて適宜設定することができる。具体的には、30℃~250℃で10秒~60分間加熱することで行うことができる。
工程(b)においては、第1エネルギー照射及び加熱処理の両方を実施してもよい。
また、第1エネルギー照射の前に又は加熱処理の前に、上記製造方法1と同様にインプリント材料はプレポリマー化したものを用いてもよい。
【0159】
(工程(c))
工程(c)において、「上記第1の膜に第2エネルギー線を照射することにより、上記第1の膜の上記第2エネルギー線を照射した上記第1の部分と、前記第1の部分とは異なる第2の部分との間に化学的性質の差を生じさせる」とは、第2エネルギー線の照射により、第1の膜に含まれる重合体の主鎖又は一部が分解(開裂)することで、上記第1の膜が極性変換を起こすことをいう。また、第2エネルギー線の照射により、第1の膜に含まれる重合体の酸反応性基同士が結合することでも第1の膜は極性変換するので、第2の部分と上記第1の部分との間に化学的性質の差を生じさせることが可能である。
工程(c)において、「上記第1の膜に第2エネルギー線を照射することにより、上記第1の膜の上記第2エネルギー線を照射した上記第1の部分と、前記第1の部分とは異なる第2の部分との間に物理的性質の差を生じさせる」とは、第2エネルギー線の照射により、重合体が溶融するか昇華すること等で、物理的変化を起こすことをいう。
【0160】
上記第2エネルギー線の照射角度は、第1の膜の表面の法線に対し0~90°の範囲で設定される少なくとも一つの角度であることが好ましい。より好ましい上記第2エネルギー線の照射角度は、第1の膜の表面の法線に対し0~30°である。
なお、「第1の膜の表面」とは、第2の凹部及び第2の凸部の少なくとも一方を形成する前のインプリント材料の表面と同一平面上とする。
【0161】
上記第2エネルギー線は上記第1エネルギー線よりもエネルギーが大きいことが好ましい。例えば、上記第1エネルギー線として400nm以上の波長の光を用いる場合、第2エネルギー線は波長400nm未満の波長の光を用いることができる。
具体的に上記第2エネルギー線は、上記製造方法1における電子線以外に、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、及びF2エキシマレーザー等の遠紫外線、EUV、X線等が挙げられる。
【0162】
(工程(d))
上記工程(d)において、第1の部分及び第2の部分のいずれか一方を除去するとは、製造方法1に記載される現像液での現像が挙げられる。上記現像の方法としては、アルカリ現像でも、有機溶媒現像でもよい。通常、アルカリ現像によりポジ型のレジストパターンが、有機溶媒現像によって、ネガ型のレジストパターンが形成される。
現像液としては、製造方法1に挙げられる現像液以外に、化学増幅レジストで一般的に用いられるアルカリ現像液等も使用することができる。
アルカリ現像の場合、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、珪酸ナトリウム、メタ珪酸ナトリウム、アンモニア水、エチルアミン、n-プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ-n-プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、エチルジメチルアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、ピロール、ピペリジン、コリン、1,8-ジアザビシクロ-[5.4.0]-7-ウンデセン、1,5-ジアザビシクロ-[4.3.0]-5-ノネン等のアルカリ性化合物の少なくとも1種を溶解したアルカリ水溶液等が挙げられる。これらの中でも、TMAH水溶液が好ましい。
有機溶媒現像の場合、例えば、炭化水素系溶媒、芳香族系溶媒、ケトン系溶媒、アルコール系溶媒、アミド系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒等の有機溶媒を主成分とする液等が挙げられる。
【0163】
<製造方法2により得られた成形物>
製造方法2により得られた成形物は、表面の少なくとも一部に、インプリント成形されたパターンと、上記工程(c)及び(d)によって形成されたパターンと、を含む3Dハイブリッドパターンを有することが好ましい。しかしながら、形状やサイズの異なる2種以上のパターンが一つの面でなく、異なる面に存在していてもよい。製造方法2により得られた成形物は、2種類以上の凹凸パターンを有するモールドであることが好ましい。
【0164】
上記工程(c)及び(d)によって形成されたパターンの幅も、上記製造方法1と同様にモールドの押し付けにより形成される凹部及び凸部の少なくとも一方の幅よりも小さくすることができる。ここで「幅」とは、凹部及び凸部がラインパターン等の矩形状の場合は凹部及び凸部の少なくとも一方の長手方向に直交する方向における距離である。
しかしながら、凹部及び凸部は、矩形状だけでなく、ドット状、さらには不定形であってもよい。その場合は、モールドの押し付けにより形成される凹部及び凸部の少なくとも一方のサイズが、上記工程(c)及び(d)によって形成されたパターンの凹部及び凸部の少なくとも一方のサイズと異なることが好ましい。例えば、工程(c)及び(d)によって形成されたパターンの凹部及び凸部の少なくとも一方のサイズがモールドの押し付けにより形成される凹部及び凸部の少なくとも一方のサイズより小さくてもよく、工程(c)及び(d)によって形成されたパターンの凹部及び凸部の少なくとも一方のサイズがモールドの押し付けにより形成される凹部及び凸部の少なくとも一方のサイズより大きくてもよい。
【0165】
インプリント成形される凹部又は凸部は、少なくとも一部において1μm~5mm以下の直径又は幅等のサイズを有することができ、ナノオーダー(1nm~99nm)であってもよく、ミリオーダー(1mm~5mm)であっても、サブミクロンオーダー(100μm~999μm)であっても、ミクロンオーダー(1μm~99μm)であってもよい。インプリント成形される凹部又は凸部の直径又は幅等のサイズに対する深さ又は高さの比(アスペクト比)はいずれであってもよく、2以上とすることが可能である。
【0166】
上記工程(c)及び(d)によって形成されたパターンは、少なくとも一部において10nm~800nmの範囲内の幅又は直径等のサイズを有していてもよい。
【0167】
ハイブリッドパターンを効率的に作製する観点からは、ミクロンオーダー以上のサイズのパターンをインプリントで作製し、ナノオーダーのサイズのパターンを第2エネルギー線照射で作製することが好ましい。
【0168】
成形物は、様々な形状やサイズの3Dハイブリッドパターンを有することができる。そのため、成形物は、マイクロ流体デバイス、反射防止構造及び撥水構造等を有する物品等、多様な用途に適用することができる。
【0169】
<レプリカモールドの製造方法>
本開示のレプリカモールドの製造方法は、製造方法2で得られたモールドと、上記レプリカモールド用樹脂組成物と、を準備する工程と、上記モールドの上記2種類以上の凹凸パターンを上記レプリカモールド用樹脂組成物に転写・硬化してレプリカモールドを得る工程と、を含む。モールド及びレプリカモールド用樹脂組成物の詳細は、上述の本開示の成形物の製造方法1に記載の通りである。
【0170】
<インプリント-電子描画の一括成形用レジスト>
本開示の成形物の製造方法は、インプリント用のレジストと、電子描画用のレジストとを使い分けず、一種のレジストを用いて一括して成形する。このインプリント-電子描画一括成形用レジストは、光照射によって重合可能な官能基を有するプレポリマーを含み、上記プレポリマーを光照射した後に得られる重合体は、電子線の照射によって主鎖が分解可能となっている。レジストの詳細は、上述の本開示の成形物の製造方法1及び2に記載の通りである。
【0171】
<インプリント材料>
本開示のインプリント材料は、第1エネルギー線の照射及び加熱処理の少なくとも一方の実施により重合可能な官能基を有するモノマーを含み、上記モノマーを加熱又は光照射した後に得られる重合体は、上記第2エネルギー線の照射によって主鎖又は一部が分解可能又は架橋可能である。重合可能な官能基を有するモノマー、上記モノマーを加熱又は光照射した後に得られる重合体の詳細は、上述の本開示の成形物の製造方法2に記載の通りである。
【0172】
<ハイブリッドパターンを表面に有する物品>
本発明の一つの態様の成形物の製造方法によれば、ハイブリッドパターンを表面に有する物品を製造できる。
ハイブリッドパターンを表面に有する物品としては、下記の物品が挙げられる。
・光学素子:マイクロレンズアレイ、光導波路素子、回折格子、導光板、プリズムシート等。
・反射防止部材:光学フィルム、光拡散フィルム、無反射膜等。
・チップ類:マイクロ流体デバイス、バイオチップ、マイクロリアクターチップ等。
・半導体:LED、パワー半導体、イメージセンサ等。
ハイブリッドパターンを表面に有する物品としてより具体的には、
図13~
図15に示すように、イメージセンサ、マイクロ流体デバイス及びプリズムシート等が挙げられる。
【0173】
<デバイスの製造方法>
本開示のデバイスの製造方法は、製造方法2で得られたモールド又は上記レプリカモールドの製造方法で得られたレプリカモールドを準備する工程と、上記モールド又は上記レプリカモールドの上記2種類以上の凹凸パターンを被転写用樹脂組成物に転写・硬化してパターンを形成する。被転写用樹脂組成物は、デバイスの構成に用いられる通常の樹脂組成物を用いることができる。
【実施例】
【0174】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明がこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0175】
[実施例1]
1.レジストの調製
光重合開始剤(IRGACURE369、BASFジャパン株式会社)の濃度が2.0質量%となるようにメチルメタクリレート(MMA)モノマーに溶解した。最適化波長365nmの水銀ランプを用い、照度が80lxとなるように光源の位置を調節し、得られた溶液に照射した。照射時間50分、照射量48J/cm2で照射を止め、-20℃の暗所に10分静置し、プレポリマーを含むレジストを得た。
【0176】
2.UV-NIL
2-1.モールド1によるインプリント
ナノオーダーからマイクロオーダーまでのドットパターン及びラインアンドスペース(L&S)パターンを有する透明な樹脂製モールド1を用意した。このモールド1のL&Sのライン幅は1μm~10μm、ドットの直径は800nm~10μmであった。モールド1の押圧面のサイズは10mm角であり、この範囲内に上記すべてのパターンが配置されていた。すべてのパターンにおいて、深さは320nmであった。
【0177】
モールド1に離型処理を行った。離型処理として、まず、スパッタ装置(株式会社エリオニクス、ESC101)を用いて、モールド1に白金をコーティングした。この上に、離型剤(ダイキン工業株式会社製、製品名オプツール、フッ素化合物を1質量%含有)を塗布し、85℃で2時間加熱し、その後、水で30分間リンスした。
【0178】
10mm角のシリコン基板上に、得られたレジストを1滴(およそ30μL)滴下し、その上から離型処理したモールド1を被せ、ボールねじ式UV-NIL装置(三井電気精機株式会社)を用いて200Nの荷重をかけた。シリコン基板にかかる圧力は2.4MPaであった。この状態で30秒間置いてから、最適化波長365nmの水銀ランプで、照度200lxで10分間の照射を行った。照射後にモールドを外し、インプリント成形物を得た。
【0179】
インプリント成形物を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。その平面写真を
図3に示す。
図3(A)は300倍の平面写真であり、
図3(B)はL&Sの部分をさらに拡大した平面写真であり、
図3(C)はドットパターンの部分をさらに拡大した平面写真である。
図3に示すように、モールドのドットパターンとL&Sパターンが明瞭に転写されていた。
【0180】
2-2.モールド2によるインプリント
さらに別のモールド2でも転写性を確認した。モールド2は、直径2μm、深さ1μmのホールパターンを有する。モールド2にも、モールド1と同様の離型処理を行った。モールド1を用いたインプリントでは、シリコン基板を用いたが、透明なポリエチレンフィルムを用いた。基板を変えた以外は、モールド1と同様の転写条件でインプリントを行った。
【0181】
図4に、得られたインプリント成形物のSEM画像を示す。
図4(A)は平面写真であり、
図4(B)は斜視写真である。
図4から、アスペクト比が0.86のピラーパターンが形成され、精度よく転写されている様子が確認できる。また、離型後のモールド側にはレジストの破損は見られなかった。
【0182】
2-3.モールド3によるインプリント
さらに別のモールド3でも転写性を確認した。モールド3は、高さが500nm~800nm程度の針状パターンを有する。モールド3にも、モールド1と同様の離型処理を行った。転写条件は、モールド1と同様とした。
【0183】
図5に、得られたインプリント成形物の斜視SEM画像を示す。
図5(B)は、
図5(A)のさらなる拡大写真である。
図5の写真から、高さ300nm~400nmの針状パターンが先端部分まで転写されている様子がわかる。
【0184】
2-4.モールド4によるインプリント
さらに別のモールド4でも転写性を確認した。モールド4は、インプリント法の適用においては比較的大きなパターンを有し、直径10μm、深さ8μm~10μmのパターンを有する。モールド4にも、モールド1と同様の離型処理を行った。転写条件は、モールド1と同様とした。
【0185】
図6に、得られたインプリント成形物のSEM画像を示す。
図6(A)は平面写真であり、直径10μmのパターンが再現性良く転写されていることがわかる。全体的にも、大きなパターンの欠損は見られなかった。
図6(B)は斜視写真であり、パターン高さが約5μmであることが確認できる。インプリント成形物におけるパターンの高さは、モールドの深さ8μm~10μmに対して40%~50%程度低くなっているが、これはレジストの粘度が高いことが理由であると考えられる。直径2μmのパターンを有するモールド2を使用したときの転写条件よりも、充填時間を長くすることで、高さ10μm程度のパターンの転写は可能と思われる。
【0186】
3.電子線の照射
3-1.ピラーパターンにL&Sパターンの電子線描画
モールド2を用いて製作した直径2μmのピラーパターン上に、電子線を照射した。電子線の照射には、描画機能を付与したSEM(ERA-8800FE:株式会社エリオニクス)を用いた。照射条件は、加速電圧:10kV、照射量:500μC/cm2、電流値:10pAとし、同一幅のラインを5μm間隔で描画した。
【0187】
電子線を照射したインプリント成形物を、酢酸n-アミルを含有する市販の現像液(ZED-N50、日本ゼオン株式会社)に30秒間漬けて現像した。現像後、純水で洗い流すようにして洗浄した。
【0188】
図7に、電子線描画後のパターンの平面SEM画像を示す。
図7(B)は、
図7(A)のさらなる拡大写真である。
図7(A)において最下のラインは目印であるため、他のパターンよりも太くなっている。
図7(B)から、インプリントで成形したピラーパターン上に、幅490nmのラインが良好なエッジで描画されたことがわかる。なお、
図7(B)の写真でピラーパターンが多少不明瞭に見えるのは、ラインに焦点を合わせて撮影しているためである。描画されたラインのエッジは明瞭で、パターン上からEB描画によってポジ型の追加加工が可能であることが確認された。
【0189】
3-2.ホールパターンにL&Sパターンの電子線描画
3-1のピラーへの電子線の描画に加えて、これを反転した直径2μmホールパターン上にも電子線で描画を行った。ホールパターンへの描画は、L&Sパターンのライン幅を変更して照射量200μC/cm2で行った。現像条件は、上記と同様である。
【0190】
図8に、電子線描画後のパターンの平面SEM画像を示す。
図8(B)は、
図8(A)のさらなる拡大写真である。
図8から、インプリントで成形したホールパターン上にもラインが描画されたことがわかる。
図8(A)に見える最小線幅のラインは210nm(
図8(B)参照)であった。
【0191】
3-3.ピラーパターンにドットパターンの電子線描画
3-1のL&Sのパターン描画に加えて、ドットパターンの描画を試みた。ピラーパターン上にドットパターンを描画したハイブリッドパターンは、反射防止構造や撥水構造に多く用いられており、実用的な形状である。
描画は、直径2μmのピラーパターン上に、10kVの加速電圧を用いて照射量500μC/cm
2で行った。現像には上記現像液を用いたが、現像時間は2倍長くして60秒とした。これは、現像される部分の体積が、
図7及び
図8の場合よりも多いことを考慮したためである。
【0192】
図9に、電子線描画後のパターンの平面SEM画像を示す。
図9(B)は、
図9(A)のさらなる拡大写真であり、
図9(C)は、斜視写真である。
図9(A)では、直径2μmのピラーパターン上及びパターン以外の部分に電子線で追加加工されたドットが見られる。
図9(B)から、このドットは直径230nmの凹部を形成しており、ポジ型パターンが得られていることがわかる。
図9(C)では、ピラー頂上に深さ100nm程度のホール(凹部)がみられ、側面は電子線が照射された部分がえぐられるようにへこんでいる様子が見られる。
以上の結果から、本発明の製造方法は、マイクロオーダー及びナノオーダーのパターンを組み合わせた三次元的な形状を加工するのに有用であることがわかる。
【0193】
[実施例2]
<反射防止構造を持つマイクロレンズアレイの作製>
実施例1で合成したプレポリマーを含むレジストを使用した。モールドとしては、凸レンズが複数配列された樹脂製のものを用いた。モールドを変えた以外は、実施例1と同様の方法でインプリントを行った。インプリント後、加速電圧:20kVで電子線を照射し、現像を行った。現像は、実施例1と同じ現像液を用い、現像時間を60秒とした。
【0194】
図10は、電子線の照射量を600μC/cm
2としたときに得られた成形物の平面SEM写真である。
図10から、直径3.8μmのレンズ上に、直径200nmのドットパターンが描画されていることがわかる。ドットパターン部分は、凹みのポジ型パターンとなっていた。
【0195】
図11は、電子線の照射量を1000μC/cm
2としたときに得られた成形物の斜視SEM写真である。
図11(A)は、電子線照射部分(左側)と、電子線未照射部分(右側)の境目を撮影したものである。
図11(C)は
図11(B)の拡大写真であり、
図11(D)は、
図11(C)のさらなる拡大写真である。
【0196】
図11(B)から、凹レンズ上に、アスペクト比1以上のパターンが追加加工されていることが確認できる。
図11(C)から、成形物はマイクロオーダーのパターンとナノオーダーのパターンとを含むハイブリッド構造となっていることがわかる。
図11(D)から、電子線照射によって加工された部分の高さは300nm~500nmであることがわかる。
【0197】
図12は、電子線の照射量を(A)800μC/cm
2、(B)600μC/cm
2とした場合の斜視SEM画像である。電子線の照射量を調節することで、アスペクト比の調節が可能であることがわかる。
【0198】
[実施例3]
1.インプリント材料の調製
(光酸発生剤トリフェニルスルホニウムノナフルオロ-1-ブタンスルホナートの合成)
【0199】
【0200】
トリフェニルスルホニウムブロミド9.9質量部(東京化成工業(株)製)とノナフルオロ-1-ブタンスルホン酸カリウム10.3質量部(東京化成工業(株)製)、水70g、ジクロロメタン100質量部を混合し、25℃で1時間撹拌した。
この混合溶液を分液後、有機層に対して水洗を4回行い、ロータリーエバポレーターにて濃縮乾固することでトリフェニルスルホニウムノナフルオロ-1-ブタンスルホナートを14.5質量部得た。この物質の1H NMR測定結果を以下に示す。
1H-NMR(400MHz/DMSO-d6):δ(ppm)=7.70-8.00(15H、m)
【0201】
(インプリント材料Aの調製)
ラジカル重合可能なモノマーとしてのメチルメタクリレート(東京化成工業(株)製)を73質量部と、酸解離性基含有化合物としてのメチルアダマンチルメタクリレート(大阪有機化学工業(株)製、商品名:MADMA)を20質量部と、光ラジカル重合開始剤としてのOmnirad369(IGM RESINS B.V.社製)を2質量部と、光酸発生剤としてのトリフェニルスルホニウムノナフルオロ-1-ブタンスルホナートを5質量部と、を混合し、さらにPTFEメンブレンフィルター(孔径0.2μm)を使用して濾過をすることにより、インプリント材料Aを調製した。
【0202】
2.モールドによるインプリント
(インプリント成形物Aの作製)
厚み1.1mmの無アルカリガラス基板(コーニング社製、商品名:イーグルXG)の上にインプリント材料Aを適量滴下し、周期7500nm、高さ4000nmのマイクロレンズ形状を有するフィルムモールド(綜研化学(株)製、品名:MLTP80-7500)を押し当て、パターンにインプリント材料Aを充填し、高圧水銀ランプを用いて波長365nm、照度1W/cm2で1時間照射した後、フィルムモールドを剥離しインプリント成形物Aを得た。
成形物Aの重量平均分子量(Mw)は45000、数平均分子量(Mn)は2200、分散度(Mw/Mn)は20.5であった。この重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定される、標準ポリスチレン分子量換算の値を示す。ガラス転移点は110℃であった。ガラス転移点はTG-DTAにて測定した値である。
【0203】
3.ArFエキシマレーザーの照射
(インプリント成形物Aへのドットパターンの形成)
パターンサイズの300~500nmのホールパターンとなるようにArFエキシマレーザーステッパー(波長193nm)によりインプリント成形物Aを露光し(照射角度は0°)、次いで、100℃のホットプレート上で1分間ベークを行う。その後、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液にて60秒間露光部の現像を行い、その後30秒間純水でリンスを行うことで、インプリント成形物Aのパターン上にさらに小さいパターンサイズの300~500nmのホールパターンを得た。
【0204】
[実施例4]
1.インプリント材料の調製
(インプリント材料Bの調製)
実施例3の方法と同様の操作によりインプリント材料Aを調製した。高圧水銀ランプを用いて、波長365nmでの照度150mW/cm2でインプリント材料Aに40分照射した後、-20℃に10分間静置し、プレポリマーを含むインプリント材料Bを得た。
プレポリマーを含むインプリント材料Bの重量平均分子量は30000、数平均分子量(Mn)は1500、分散度(Mw/Mn)は20.0であった。この重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定される、標準ポリスチレン分子量換算の値を示す。
【0205】
2.モールドによるインプリント
(インプリント成形物Bの作製)
インプリント材料Aに代えてインプリント材料Bを用いた以外は実施例3と同様にしてインプリント成形物Bを得た。
成形物Bの重量平均分子量(Mw)は50000、数平均分子量(Mn)は2200、分散度(Mw/Mn)は22.7であった。この重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定される、標準ポリスチレン分子量換算の値を示す。ガラス転移点は110℃であった。
【0206】
3.ArFエキシマレーザーの照射
(インプリント成形物Bへのドットパターンの形成)
パターンサイズの300~500nmのホールパターンとなるようにArFエキシマレーザーステッパー(波長193nm)によりインプリント成形物Bを露光し(照射角度は0°)、次いで、100℃のホットプレート上で1分間ベークを行う。その後、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液にて60秒間露光部の現像を行い、30秒間純水でリンスを行うことで、インプリント成形物Bのパターン上にさらに小さいパターンサイズの300~500nmのホールパターンを得た。
【0207】
[実施例5]
(インプリント成形物Aへのドットパターンの形成)
実施例3の方法と同様の操作により、インプリント成形物Aを得た。
パターンサイズの300~500nmのホールパターンとなるようにArFエキシマレーザーステッパー(波長193nm)によりインプリント成形物Aを露光し(照射角度は0°)、次いで、100℃のホットプレート上で1分間ベークを行う。その後トルエンにて60秒未露光部の現像を行い、乾燥させることで、インプリント成形物Aのパターン上にさらに小さいパターンサイズの300~500nmのホールパターンを得た。
【0208】
[実施例6]
1.インプリント材料の調製
(インプリント材料Cの調製)
光ラジカル重合性モノマーとしてのメチルメタクリレート(東京化成工業(株)製)を83質量部と、酸架橋性基含有化合物としてのグリシジルメタクリレート(東京化成工業(株)製)を10質量部と、光ラジカル重合開始剤としてのOmnirad369(IGM RESINS B.V.社製)を2質量部と、光酸発生剤として実施例3で合成したトリフェニルスルホニウムノナフルオロ-1-ブタンスルホナートを5質量部と、を混合し、さらにPTFEメンブレンフィルター(孔径0.2μm)を使用して濾過することにより、インプリント材料Cを調製した。
【0209】
2.モールドによるインプリント
(インプリント成形物Cの作製)
厚み1.1mmの無アルカリガラス基板(コーニング社製、商品名イーグルXG)の上にインプリント材料Cを適量滴下し、周期7500nm、高さ4000nmのマイクロレンズ形状を有するフィルムモールド(綜研化学(株)製、品名:MLTP80-7500)を押し当て、パターンにインプリント材料Cを充填し、高圧水銀ランプを用いて波長365nmでの照度150mW/cm2で1時間照射した後、フィルムモールドを剥離しインプリント成形物Cを得た。
インプリント成形物Cの重量平均分子量(Mw)は40000、数平均分子量(Mn)は2000、分散度(Mw/Mn)は20.0であった。この重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定される、標準ポリスチレン分子量換算の値を示す。ガラス転移点は105℃であった。
【0210】
3.ArFエキシマレーザーの照射
(インプリント成形物Cへのドットパターンの形成)
パターンサイズの300~500nmのホールパターンとなるようにArFエキシマレーザーステッパー(波長193nm)によりインプリント成形物Cを露光し(照射角度は0°)、次いで、100℃のホットプレート上で1分間ベークを行う。その後、酢酸アミルにて60秒未露光部の現像を行い乾燥させることで、インプリント成形物Bのパターン上にさらに小さいパターンサイズの300~500nmのホールパターンを得た。
【0211】
[実施例7]
1.インプリント材料の調製
(インプリント材料Eの調製)
ラジカル重合可能なモノマーとしてのメチルメタクリレート(東京化成工業(株)製)を98質量部と、光ラジカル重合開始剤としてのOmnirad369(IGM RESINS B.V.社製)を2質量部と、を混合し、さらにPTFEメンブレンフィルター(孔径0.2μm)を使用して濾過をすることにより、インプリント材料Dを調製した。実施例3の方法と同様の操作によりインプリント材料Dを調製した。高圧水銀ランプを用いて、波長365nmでの照度150mW/cm2でインプリント材料Dに40分照射した後、-20℃に10分間静置し、プレポリマーを含むインプリント材料Eを得た。
プレポリマーを含むインプリント材料Eの重量平均分子量(Mw)は29000、数平均分子量(Mn)は1500、分散度(Mw/Mn)は19.3であった。この重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定される、標準ポリスチレン分子量換算の値を示す。
【0212】
2.モールドによるインプリント
(インプリント成形物Eの作製)
インプリント材料Aに代えてインプリント材料Eを用いた以外は実施例3と同様にしてインプリント成形物Eを得た。
【0213】
3.ArFエキシマレーザーの照射
(インプリント成形物Eへのドットパターンの形成)
パターンサイズの300~500nmのホールパターンとなるようにArFエキシマレーザーステッパー(波長193nm)によりインプリント成形物Bを露光し、次いで、100℃のホットプレート上で1分間ベークを行う。その後、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液にて60秒間露光部の現像を行い、30秒間純水でリンスを行うことで、インプリント成形物Bのパターン上にさらに小さいパターンサイズの300~500nmのホールパターンを得た。
インプリント成形物Eの重量平均分子量(Mw)は35000、数平均分子量(Mn)は1900、分散度(Mw/Mn)は18.4であった。この重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定される、標準ポリスチレン分子量換算の値を示す。ガラス転移点は105℃であった。
【0214】
以上より、本発明の製造方法は、反射防止構造の作製に有用であることが示された。これをマスターモールドとしてインプリント(例えば、UV-NIL)を行うことで、高スループットにハイブリッド構造を持つマイクロレンズアレイを製作することができる可能性がある。
【符号の説明】
【0215】
10、14 モールド
20 レジスト
30 光
40 インプリント成形物
50 電子線
60 現像液
100 成形物
200 イメージセンサ
202 オンチップレンズ
204 カラーフィルター
206 配線
208 受光面
210 基板
212 フォトダイオード
214 入射光