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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-29
(45)【発行日】2023-10-10
(54)【発明の名称】酸化物積層体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/08 20060101AFI20231002BHJP
   C23C 14/34 20060101ALI20231002BHJP
   H01L 21/28 20060101ALI20231002BHJP
【FI】
C23C14/08 K
C23C14/34 Z
H01L21/28 301R
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2020549323
(86)(22)【出願日】2019-09-26
(86)【国際出願番号】 JP2019037751
(87)【国際公開番号】W WO2020067235
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2022-06-09
(31)【優先権主張番号】P 2018180754
(32)【優先日】2018-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019042338
(32)【優先日】2019-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(73)【特許権者】
【識別番号】000226242
【氏名又は名称】日機装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上岡 義弘
(72)【発明者】
【氏名】笘井 重和
(72)【発明者】
【氏名】勝又 聡
(72)【発明者】
【氏名】久志本 真希
(72)【発明者】
【氏名】出来 真斗
(72)【発明者】
【氏名】本田 善央
(72)【発明者】
【氏名】天野 浩
【審査官】佐藤 靖史
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-120829(JP,A)
【文献】特開2013-042107(JP,A)
【文献】特開2010-053454(JP,A)
【文献】特開平08-245220(JP,A)
【文献】特表2014-500403(JP,A)
【文献】国際公開第2009/072365(WO,A1)
【文献】特開2005-209734(JP,A)
【文献】特開2007-019488(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/08
C23C 14/34
H01L 21/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
III-V族窒化物半導体を含む半導体層と、
電極層と、を有し、
前記電極層がマグネシウム酸化物と亜鉛酸化物とを含み、
前記電極層の、前記マグネシウム及び亜鉛の合計に対するマグネシウムのモル比[Mg/(Mg+Zn)]が0.25以上0.75以下であり、
前記電極層の導電率が1.0×10-2S/cm以上である、積層体。
【請求項2】
前記電極層の、前記マグネシウム及び亜鉛の合計に対するマグネシウムのモル比[Mg/(Mg+Zn)]が0.4以上0.75以下である、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記電極層の、前記マグネシウム及び亜鉛の合計に対するマグネシウムのモル比[Mg/(Mg+Zn)]が0.5以上0.75以下である、請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項4】
前記電極層が、さらに、前記Mg及びZn以外の3価又は4価の元素Xを含み、
前記元素Xの全金属元素に対するモル比[元素X/全金属元素]が0.0001以上0.20以下である、請求項1~3のいずれかに記載の積層体。
【請求項5】
前記元素Xが、B、Al、Ga、In、Tl、C、Si、Ge、Sn及びPbからなる群より選択される少なくとも1つの元素である、請求項4に記載の積層体。
【請求項6】
前記電極層のX線回折測定において、2θ=34.8±0.5degに回折ピークが観測される、請求項1~5のいずれかに記載の積層体。
【請求項7】
前記電極層の波長260nmの光線透過率が4%以上である、請求項1~6のいずれかに記載の積層体。
【請求項8】
前記電極層が微結晶からなり、かつ相分離している、請求項1~7のいずれかに記載の積層体。
【請求項9】
前記電極層が柱状に結晶成長している、請求項1~8のいずれかに記載の積層体。
【請求項10】
前記電極層のマグネシウム酸化物を主とする領域の粒径が20nm以上200nm以下である、請求項1~9のいずれかに記載の積層体。
【請求項11】
前記半導体層がAlN、GaN、InN又はそれらの混晶を含む、請求項1~10のいずれかに記載の積層体。
【請求項12】
前記電極層の一部に接する配線層を有し、
前記配線層が、Ni、Pd、Pt、Rh、Zn、In、Sn、Ag、Au、Mo、Ti、Cu及びAlから選択される1以上を含む金属、ITO、SnO、ZnO、In、Ga、RhO、NiO、CoO、PdO、PtO、CuAlO及びCuGaOから選択される酸化物、TiN、TaN及びSiNxから選択される窒化物、並びに、poly-Siからなる群より選択される少なくとも一つを含む、請求項1~11のいずれかに記載の積層体。
【請求項13】
前記電極層の厚さが10nm以上1μm以下である、請求項1~12のいずれかに記載の積層体。
【請求項14】
前記電極層の90質量%以上がマグネシウム酸化物及び亜鉛酸化物である、請求項1~13のいずれかに記載の積層体。
【請求項15】
請求項1~14のいずれかに記載の積層体を含む、半導体装置。
【請求項16】
請求項1~14のいずれかに記載の積層体を製造する方法であって、
前記電極層を、750℃以上の温度で熱処理することにより形成する、積層体の製造方法。
【請求項17】
前記電極層の一部に接するように配線層を形成し、
前記配線層が、Ni、Pd、Pt、Rh、Zn、In、Sn、Ag、Au、Mo、Ti、Cu及びAlから選択される1以上を含む金属、ITO、SnO、ZnO、In、Ga、RhO、NiO、CoO、PdO、PtO、CuAlO及びCuGaOから選択される酸化物、TiN、TaN及びSiNxから選択される窒化物、並びに、poly-Siからなる群より選択される少なくとも一つを含む、請求項16に記載の製造方法。
【請求項18】
前記電極層を、O、Ar及びNから選択される少なくとも一つをスパッタガスに使用したスパッタ、又はイオンプレーティングで形成する、請求項16又は7に記載の製造方法。
【請求項19】
前記配線層を、O、Ar及びNから選択される少なくとも一つをスパッタガスに使用したスパッタ、又は蒸着により形成する、請求項17に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線を透過する電極層を有する酸化物積層体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
窒化ガリウム等の窒化物半導体を用いた深紫外線発光ダイオード及び深紫外線レーザーダイオード等の深紫外線発光半導体装置は、軽量且つ長寿命な深紫外線光源として注目されている。深紫外線光源は、殺菌やセンシング、工業用途等、様々な分野で応用が可能である。従来の深紫外線光源である水銀ランプは、水銀の環境問題を有するため、深紫外線発光半導体装置はその代替として期待されている。
【0003】
可視光の発光ダイオードでは、p型窒化物半導体の電極として、透明導電性材料である、スズをドープした酸化インジウム(ITO)が広く使用されている。
透明導電性材料の透明性は、バンド端吸収波長(吸収端波長)と関係がある。バンド端吸収波長とは、材料の価電子帯から伝導帯への電子遷移により生じる光吸収が始まる波長を意味する。バンド端吸収波長は分光光度計を用いて反射法や透過法により測定することができる。ITOは、バンド端吸収波長が450nm付近にあるため、これより長波長側の光を吸収しない。これは、ITOが可視領域の短波長領域を除くほぼ全域にわたって透明性を有することを意味する。実際、ITOを使用した半導体装置では、可視光領域において光吸収による発光ロスが少ない。加えて、ITOは金属に匹敵するキャリア濃度と、酸化物としては比較的大きいキャリア移動度を有し、100S/cm以上の高い導電率(電気伝導率)を有する。そのため、可視光を発するダイオードの透明電極にはITOが広範に使われている。
【0004】
一方、紫外線発光半導体装置の電極としては、紫外線領域で透明性を有することが望ましい。現在広く使用されているITOは、短波長(波長400nm以下)の光を吸収する。そのため、発光層で発生した紫外線がITOに吸収され、装置の発光効率の低下の原因となる。
また、バンド端吸収波長が短い材料、例えばSiOは400nm以下の紫外線を透過するものの絶縁体であり、電極としては不適である。
そのため、400nmより短波長領域での光線透過率が高く、且つ、良好な導電率を有する新規な電極が求められていた。
【0005】
上記の課題に対し、例えば特許文献1には、バンド端吸収波長が450nmより短波長側にある材料として、複数のインジウム酸化物が報告されている。しかしながら、いずれの酸化物もバンド端吸収波長が340nm以上であり、紫外線発光半導体装置の電極としては不十分であった。
【0006】
特許文献2には、バンド端吸収波長が450nmより短波長側にある材料として、マグネシウムを含有する酸化亜鉛が報告されている。酸化亜鉛マグネシウムの吸収端波長は350nmにある。しかしながら、導電率が0.02μS/cm程度と低いため、電極としては不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平8-245220号公報
【文献】特開2014-129230号公報
【発明の概要】
【0008】
本発明の目的の1つは、紫外線領域(例えば、波長が400nm未満の領域)において透明性を有し、且つ、導電性の高い電極-窒化物半導体の積層体を提供することである。
【0009】
本発明によれば、以下の積層体等が提供される。
1.III-V族窒化物半導体を含む半導体層と、
電極層と、を有し、
前記電極層がマグネシウム酸化物と亜鉛酸化物とを含み、
前記電極層の、前記マグネシウム及び亜鉛の合計に対するマグネシウムのモル比[Mg/(Mg+Zn)]が0.25以上0.75以下であり、
前記電極層の導電率が1.0×10-2S/cm以上である、積層体。
2.前記電極層の、前記マグネシウム及び亜鉛の合計に対するマグネシウムのモル比[Mg/(Mg+Zn)]が0.4以上0.75以下である、1に記載の積層体。
3.前記電極層の、前記マグネシウム及び亜鉛の合計に対するマグネシウムのモル比[Mg/(Mg+Zn)]が0.5以上0.75以下である、1又は2に記載の積層体。
4.前記電極層が、さらに、前記Mg及びZn以外の3価又は4価の元素Xを含み、
前記元素Xの全金属元素に対するモル比[元素X/全金属元素]が0.0001以上0.20以下である、1~3のいずれかに記載の積層体。
5.前記元素Xが、B、Al、Ga、In、Tl、C、Si、Ge、Sn及びPbからなる群より選択される少なくとも1つの元素である、4に記載の積層体。
6.前記電極層のX線回折測定において、2θ=34.8±0.5degに回折ピークが観測される、1~5のいずれかに記載の積層体。
7.前記電極層の波長260nmの光線透過率が4%以上である、1~6のいずれかに記載の積層体。
8.前記電極層が微結晶からなり、かつ相分離している、1~7のいずれかに記載の積層体。
9.前記電極層が柱状に結晶成長している、1~8のいずれかに記載の積層体。
10.前記電極層のマグネシウム酸化物を主とする領域の粒径が20nm以上200nm以下である、1~9のいずれかに記載の積層体。
11.前記半導体層がAlN、GaN、InN又はそれらの混晶を含む、1~10のいずれかに記載の積層体。
12.前記電極層の一部に接する配線層を有し、
前記配線層が、Ni、Pd、Pt、Rh、Zn、In、Sn、Ag、Au、Mo、Ti、Cu及びAlから選択される1以上を含む金属、ITO、SnO、ZnO、In、Ga、RhO、NiO、CoO、PdO、PtO、CuAlO及びCuGaOから選択される酸化物、TiN、TaN及びSiNxから選択される窒化物、並びに、poly-Siからなる群より選択される少なくとも一つを含む、1~11のいずれかに記載の積層体。
13.前記電極層の厚さが10nm以上1μm以下である、1~12のいずれかに記載の積層体。
14.1~13のいずれかに記載の積層体を含む、半導体装置。
15.1~13のいずれかに記載の積層体を製造する方法であって、
III-V族窒化物半導体を含む半導体層上に、マグネシウム酸化物と亜鉛酸化物とを含む電極層を形成する、積層体の製造方法。
16.前記電極層を750℃以上の温度で熱処理する、15に記載の製造方法。
17.前記電極層の一部に接するように配線層を形成し、
前記配線層が、Ni、Pd、Pt、Rh、Zn、In、Sn、Ag、Au、Mo、Ti、Cu及びAlから選択される1以上を含む金属、ITO、SnO、ZnO、In、Ga、RhO、NiO、CoO、PdO、PtO、CuAlO及びCuGaOから選択される酸化物、TiN、TaN及びSiNxから選択される窒化物、並びに、poly-Siからなる群より選択される少なくとも一つを含む、15又は16に記載の製造方法。
18.前記電極層を、O、Ar及びNから選択される少なくとも一つをスパッタガスに使用したスパッタ、又はイオンプレーティングで形成する、15~17のいずれかに記載の製造方法。
19.前記配線層を、O、Ar及びNから選択される少なくとも一つをスパッタガスに使用したスパッタ、又は蒸着により形成する、17に記載の製造方法。
【0010】
本発明によれば、紫外線領域において透明性を有し、且つ、導電性の高い電極-窒化物半導体の積層体が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る発光ダイオード(LED)の概略構成図である。。
図2】本発明の他の実施形態に係るLEDの概略構成図である。
図3】本発明の他の実施形態に係るLEDの概略構成図である。
図4】実施例及び比較例で作製した評価試料の概略断面図である。
図5】実施例2及び比較例3の電極層のX線回折パターンである。
図6】実施例2及び比較例3の電極層の光線透過スペクトルである。
図7】電極層上面の走査型電子顕微鏡(SEM)像であり、(a)は比較例3のSEM像であり、(b)は実施例2のSEM像である。
図8】電極層上面の原子間力顕微鏡(AFM)像であり、(a)は比較例3のAFM像であり、(b)は実施例2のAFM像である。
図9】電極層断面の透過電子顕微鏡(TEM)像であり、(a)は実施例2のTEM像であり、(b)は比較例3のTEM像である。
図10】実施例2の電極層断面のTEM像及びエネルギー分散型X線分析(EDX)像である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態に係る積層体は、III-V族窒化物半導体を含む半導体層と、電極層と、を有する。電極層は、半導体層の表面の一部又は全面に接するように形成される。
【0013】
[半導体層]
本実施形態において、半導体層はIII-V族窒化物半導体を含む。該半導体としては、GaN、InGaN、AlGaN、AlInGaN、AlN、InN等が挙げられる。半導体層は、AlN、GaN、InN又はそれらの混晶が好ましい。
半導体層はn型半導体であってもよく、また、p型半導体であってもよい。n型ドーパントとしてはSi等が使用できる。p型ドーパントとしてはMg等が使用できる。Si及びMgの他、公知のドーパントを使用できる。
【0014】
半導体層は、例えば、半導体層を形成するための支持基板上にエピタキシャル成長させることにより形成できる。支持基板は、半導体層を形成できれば、特に限定されないが、例えば、GaN、InGaN、AlGaN、AlN、InN、SiC、Si、サファイアを好適に用いることができる。
また、半導体層を異なる材料の上に形成することもできる。例えば、電極層に接する面にGaNを用い、その支持基板としてSiを用いることができる。
【0015】
半導体層の厚さは、所望の電気特性が得られるように、適宜調整することができる。例えば、10nm~2mmの範囲が好ましい。
【0016】
半導体層が、p型半導体又はn型半導体であるかは、ホール効果測定により判定する。高抵抗でホール効果測定が困難である場合は、フォトルミネッセンス(PL)によるアクセプタ由来のピーク(385~400nm)の有無や、二次イオン質量分析法(SIMS)によって、アクセプタ元素(Mg等)及びドナー元素(Si等)の含有量を比較し、どちらが1桁以上多く含まれているか否かで判定する。
【0017】
[電極層]
本実施形態において、電極層はマグネシウム酸化物と亜鉛酸化物とを含み、電極層におけるマグネシウム及び亜鉛の合計に対するマグネシウムのモル比[Mg/(Mg+Zn)]が0.25以上0.75以下である。
本実施形態では、マグネシウム酸化物と亜鉛酸化物を所定の比率で混合し、且つ、電極層のモルフォロジー(形態)を制御することにより、紫外線領域において透明性を有し、且つ、高い導電性を有する電極層を得ている。
尚、本願においてマグネシウム酸化物及び亜鉛酸化物には、マグネシウムと亜鉛の固溶体(MgZnOx)が含まれていてもよく、また、含まれていなくてもよい。
【0018】
本実施形態の電極層は、導電性を有するものの紫外線透過性を有さない亜鉛酸化物(ZnO等)を主とする領域と、導電性はないものの紫外線透過性を有するマグネシウム酸化物(MgO等)を主とする領域が、それぞれ分散した状態になっている(電極層断面のTEM像及びEDX像である図10参照)。そして、導電性は亜鉛酸化物を主とする領域が担い、紫外線透過性はマグネシウム酸化物を主とする領域が担っていると推定される。これにより、導電性及び紫外線透過性をともに有する電極層となる。本導電現象は、パーコレーション伝導モデルで説明できると考えられる。
【0019】
導電性及び紫外線透過性を発現させるためには、電極層におけるマグネシウム及び亜鉛の合計に対するマグネシウムのモル比[Mg/(Mg+Zn)]を0.25以上0.75以下にする。
かかるモル比[Mg/(Mg+Zn)]は、例えば、0.25以上、0.30以上、0.33以上、0.35以上、0.37以上、0.40以上、0.43以上、0.45以上、0.47以上又は0.5以上であり得、また、0.75以下又は0.70以下であり得る。
一実施形態において、かかるモル比[Mg/(Mg+Zn)]は、0.30以上0.75以下、0.33以上0.75以下、0.40以上0.75以下、さらには0.50以上0.75以下であることが好ましい。
【0020】
本実施形態では、電極層がさらに、Mg及びZn以外の3価又は4価の元素Xを含むことが好ましい。元素Xの全金属元素に対するモル比[元素X/全金属元素]が0.0001以上0.20以下であることが好ましく、0.001以上0.10以下であることがより好ましい。元素Xを含ませることにより、亜鉛酸化物中に元素Xがドーピングされ、導電性がより向上する場合がある。
元素Xとしては、例えば、B、Al、Ga、In、Tl、C、Si、Ge、Sn、Pbが挙げられる。好ましくは、B,Al又はGaである。
【0021】
電極層の組成は、例えば、スパッタで形成する場合はスパッタリングターゲットの組成を調製することにより制御できる。また、マグネシウム酸化物(MgOx)の焼結体ターゲット及び亜鉛酸化物(ZnOx)の焼結体ターゲットと、任意に、元素Xを含む焼結体ターゲットを用いたコスパッタで、それぞれの成膜速度を調整することによっても制御することができる。他の成膜方法についても、電極層の組成は蒸着源等、原料の組成を調製することにより制御できる。
尚、スパッタや蒸着により電極層を形成する場合、スパッタリングターゲット及び蒸着源の組成と電極層の組成はほぼ一致する。
電極層の各元素のモル比は、例えば、二次イオン質量分析法で測定できる。
【0022】
導電性及び紫外線透過性を発現するモルフォロジーとするためには、例えば、成膜後の電極層を高温で熱処理することが挙げられる。成膜直後の電極層は、亜鉛酸化物とマグネシウム酸化物が均一に混合した状態である。該状態の電極層を熱処理することにより、酸化物の凝集、分離等が生じ、結果として亜鉛酸化物がネットワークを形成することで導電性が発現し、一方で、亜鉛酸化物のネットワークの間隙にマグネシウム酸化物が凝集することで、紫外線が透過するものと推定する。
電極層の熱処理温度は、750℃以上が好ましく、900℃以上がより好ましい。上限は格別限定されず、例えば1200℃以下であり得る。
【0023】
本実施形態では、電極層の導電率(25℃)は、1.0×10-2S/cm以上が好ましい。導電率が1.0×10-2S/cm以上であれば、例えば、半導体装置の電極として使用した際に、導電性が十分であり、電流注入効率も高い。電極層の導電率は、1.0×10-1S/cm以上がより好ましい。上限は格別限定されず、例えば10000S/cm以下であり得る。
尚、電極層の導電率とは、絶縁体であるガラス基板等の上に電極層単体を形成した試料の測定値である。導電率は、例えば、ホール効果測定装置で測定できる。
【0024】
電極層は本質的に、マグネシウム酸化物及び亜鉛酸化物からなるか、又はマグネシウム酸化物、亜鉛酸化物及び元素Xの酸化物からなることが好ましい。例えば、90質量%以上、95質量%以上、又は99質量%以上が、マグネシウム酸化物及び亜鉛酸化物であってもよく、又はマグネシウム酸化物、亜鉛酸化物及び元素Xの酸化物であってもよい。また、電極層は、マグネシウム酸化物及び亜鉛酸化物のみからなってもよく、又はマグネシウム酸化物、亜鉛酸化物及び元素Xの酸化物のみからなっていてもよい。この場合、不可避不純物を含んでもよい。
【0025】
本発明の一実施形態では、電極層のX線回折測定において、2θ=34.8±0.5degに回折ピークが観測されることが好ましい。電極層のモルフォロジーの変化が上記ピークに表れると推測している(実施例2、比較例3、図5参照)。
【0026】
本発明の一実施形態では、電極層の波長260nmの光線透過率が4%以上であることが好ましく、5%以上、6%以上、7%以上、8%以上、9%以上、さらには10%以上であることがより好ましい。上限は格別限定されず、例えば80%以下である。本実施形態では深紫外線である波長260nmの光でも十分に透過することができる。深紫外領域(260nm以下の領域)での光線透過率が高く(あるいは該深紫外領域での透明性を有し)、且つ、良好な導電性を有する本実施形態に係る電極(電極層)は、水銀ランプの代替技術として好適に利用できる。
尚、光線透過率は、サファイア基板等、波長260nmの光線透過率が高い基板上に、電極層を100nmの厚さに形成した試料を、分光光度計で測定した値である。
【0027】
電極層の厚さは、所望の光線透過率及び導電性が得られるように、適宜調整することができる。例えば、1nm~10μmの範囲が好ましく、さらに、10nm以上1μm以下であることが好ましい。厚さ等の断面形状は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)又は透過型電子顕微鏡(TEM)により確認することができる。
【0028】
電極層は、電子を流す領域が電気的につながっていれば、非晶質層であってもよく、また、多結晶層であってもよい。さらに、非晶質成分と結晶成分が混在した層であってもよい。電極層の結晶性は、TEMの格子像から判別できる。
特に縦方向の導電性と透過性を改善する上では、電極層は微結晶からなり、かつ相分離していることが好ましい。また、電極層は、柱状に結晶成長していること(微結晶が柱状であること)が好ましい。そのような微結晶は、例えば、マグネシウム酸化物を主とする領域と亜鉛酸化物を主とする領域の微結晶であり得る。図10に示すように、紫外線透過性をより良好に実現する上では、マグネシウム酸化物を主とする領域の粒径は、20nm以上であることが好ましい。これにより波長300nm未満の領域における透過率がさらに向上する。また、マグネシウム酸化物を主とする領域の粒径は200nm以下であることが好ましい。これにより導電性がさらに向上する。なお、ここでいう「粒径」は、実施例に記載の方法により測定される値である。
【0029】
本発明の一実施形態では、電極層の25℃における吸収端波長が400nm未満である。好ましくは350nm以下、より好ましくは300nm以下である。ここで、吸収端波長とは紫外線領域において光線透過率が1%となる最も長波長側の波長とする。吸収端波長が400nm以上である場合、紫外線発光半導体装置の電極とした際に、装置内部で発した紫外線が電極を透過しないため、装置の発光効率が低下する。吸収端波長は、例えば、分光光度計で測定できる。
【0030】
本発明の一実施形態では、電極層の一部に接するように、配線層を形成してもよい。配線層は、電極層の電気伝導を補助するものであり、高電流が必要な半導体装置において有用である。
本実施形態では、電極層を通して紫外線を装置外部に取り出すことから、配線層は可能な限り紫外線を遮断しないように形成することが好ましい。具体的には、電極層の端部付近に線状(ストライプ状)に形成してもよく、また、電極層上に、開口度の大きな格子状に形成してもよい。いずれの形状においても、配線層の幅をなるべく細くすることが好ましい。
【0031】
配線層は、電極層の半導体層と接している反対側の面上に形成することが好ましい。また、電極層よりも高い導電性を有する材料で形成することが好ましい。例えば、Ni、Pd、Pt、Rh、Zn、In、Sn、Ag、Au、Mo、Ti、Cu及びAlから選択される1以上を含む金属(2以上が選択される場合、該金属は合金であり得る。),ITO、SnO、ZnO、In、Ga、RhO、NiO、CoO、PdO、PtO、CuAlO、CuGaO等の酸化物,TiN、TaN、SiNx等の窒化物,poly-Si(ポリシリコン)が挙げられる。
電極層を通過させて紫外線とともに可視光を取り出す場合、配線層は光透過性を有する透明導電性酸化物又は透明導電性窒化物であることが好ましい。
【0032】
配線層は、単層であってもよく、また、2層以上の積層であってもよい。例えば、電極層に接する方に、Niを含む層を形成し、Ni層上に酸化を防ぐために、Au層を積層することができる。また、配線層を構成する各層が、上述した金属、酸化物及び窒化物からなる群より選択される少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0033】
配線層の厚さは、所望の電気特性が得られるように適宜調整することができる。例えば、10nm~10μmの範囲が好ましい。
【0034】
本実施形態の積層体は、例えば、III-V族窒化物半導体を含む半導体層上に、マグネシウム酸化物と亜鉛酸化物とを含む電極層を形成することにより製造できる。
【0035】
上記製法において、半導体層、電極層及び配線層の形成方法は特に限定されない。例えば、抵抗線加熱蒸着、電子ビーム(EB)蒸着、スパッタ、原子層堆積(ALD)成膜、熱化学気相成長(熱CVD)、平行平板型プラズマCVD、有磁場マイクロ波プラズマCVD、又は誘導結合プラズマCVD、スピンコート、イオンプレーティングを用いることができる。
スパッタによる成膜の場合、酸素含有雰囲気下で、金属ターゲットの反応性スパッタも好適に用いることができる。これにより、絶縁体ターゲットを用いるスパッタに比べて成膜レートが向上する。
また、マグネシウム酸化物(MgOx)の焼結体ターゲットと、亜鉛酸化物(ZnOx)の焼結体ターゲットと、任意に、元素Xを含む焼結体ターゲットとを用いたコスパッタで、それぞれの成膜速度を調整することで連続的に組成を制御することによっても製膜できる。
【0036】
また、半導体層形成後に電極層を形成する場合、半導体層の熱ダメージを低減する観点から、電極層は、O、Ar及びNから選択される少なくとも一つをスパッタガスに使用したスパッタ、又は、イオンプレーティングで形成することが好ましい。
尚、マグネシウム酸化物及び亜鉛酸化物を含む焼結体ターゲットは、例えば、国際公開第2012/014688号を参照することで作製できる。
同様に、配線層も、O、Ar及びNから選択される少なくとも一つをスパッタガスに使用したスパッタ又は蒸着で形成することが好ましい。
【0037】
本発明の一実施形態では、電極層を750℃以上の温度で熱処理する工程を有することが好ましい。これにより、電極層に導電性及び紫外線透過性を発現するモルフォロジーを形成できる。電極層の熱処理温度は900℃以上がより好ましい。尚、上限は1200℃程度である。
熱処理時間は、処理温度、電極層の厚さ等により適宜調整することができる。通常、30秒~1時間である。
熱処理は、窒素雰囲気のような不活性雰囲気や、水素雰囲気のような還元雰囲気で実施することが好ましい。
【0038】
本発明の一実施形態では、サファイア基板等、紫外線の透過率が高い基板上に、マグネシウム酸化物と亜鉛酸化物とを含む電極層を形成し、電極層を熱処理した後、電極層上にIII-V族窒化物半導体を含む半導体層を形成してもよい。また、紫外線の透過率が高い基板に配線層を形成し、次に、マグネシウム酸化物と亜鉛酸化物とを含む電極層を形成し、電極層を熱処理した後、電極層上にIII-V族窒化物半導体を含む半導体層を形成してもよい。
本実施形態では、電極層の熱処理後に半導体層を形成するため、半導体層の熱ダメージを低減できる。
【0039】
本実施形態の積層体は、例えば、窒化ガリウム半導体を用いた可視光及び/又は紫外線を発する短波長発光ダイオード、同レーザーダイオード等の半導体装置の構成部材に使用できる。
以下、本実施形態の積層体を使用した半導体装置として、発光ダイオードの具体例を、図面を用いて説明する。尚、本発明の半導体装置は以下の例に限定されない。
【0040】
図1は、本発明の一実施形態に係る発光ダイオードの概略構成図である。
発光ダイオード1では、基板20上に、n型GaN系半導体層21が積層され、該半導体層21上の端部付近の一部には電極層23(陰極)が、n型GaN系半導体層21上の、電極層23及びその周辺以外の箇所には、発光層22が形成されている。発光ダイオード1は、発光層22上に、本発明の積層体10(半導体層(p型GaN系半導体層)11、電極層12)が形成された構造を有する。また、電極層12の上面端部付近には、配線層13が形成してある。
【0041】
図2は、本発明の他の実施形態に係る発光ダイオードの概略構成図である。
発光ダイオード2は、電極層23(陰極)と、基板20と、n型GaN系半導体層21と、発光層22と、本発明の積層体10(半導体層(p型GaN系半導体層)11、電極層12)が、この順に積層された構造を有する。また、電極層12上面の一端部付近には、配線層13が形成してある。
【0042】
図3は、本発明の他の実施形態に係る発光ダイオードの概略構成図である。
発光ダイオード3は、基板20と、電極層23(陰極)と、n型GaN系半導体層21と、発光層22と、本発明の積層体10(半導体層(p型GaN系半導体層)11、電極層12)が、この順に積層された構造を有する。また、電極層12の上面端部付近には、配線層13が形成してある。
【0043】
上記発光ダイオード1~3では、配線層13を介して電極層12と電極23間に電圧を印加すると、半導体層11にはホールが、n型GaN系半導体層21には電子が注入される。注入されたホール及び電子が発光層22で再結合することにより発光する。
尚、発光ダイオード1~3では、配線層13を形成しているが、省略してもよい。この場合、配線層を使用せずに電極層12と電極層23間に電圧を印加する。また、発光ダイオード3(図3)では、電極層23とn型GaN系半導体層21とに本発明の積層体を採用してもよい。
【0044】
上述した各実施形態の構成部材は、特に制限はなく、公知のものを使用できる。また公知の成膜技術を適用することにより、製造することができる。
本発明では、優れた電流-電圧特性及び紫外線透過性の高い電極層を有する半導体装置が得られる。
【実施例
【0045】
実施例1
(1)電極層の作製
実施例及び比較例で作製した評価試料の概略断面図を図4に示す。
支持基板30であるサファイア基板(厚さ0.5mm)を、超音波洗浄器中に入れ、トリクロロエチレンで5分間、アセトンで5分間、メタノールで5分間、最後に蒸留水で5分間洗浄した。
その後、支持基板30をスパッタリング装置(ULVAC製:ACS-4000)にセットし、Mgのモル比[Mg/(Mg+Zn)]が0.33であるマグネシウム酸化物-亜鉛酸化物スパッタリングターゲット(フルウチ化学製)を用いて、スパッタガスにArを用い、25℃で支持基板30上に電極層12を100nm成膜した。
【0046】
(2)熱処理
上記(1)で作製した電極層12を有する基板を、窒素雰囲気にて950℃で5分間熱処理(活性化アニール)した。
【0047】
(3)配線層の形成
熱処理後の基板を、エリアマスクとともにEB蒸着装置(アルバック社製)にセットし、Ni層13-1(厚さ20nm)及びAu層13-2(厚さ200nm)を成膜し、積層構造を有する配線層を形成した。
【0048】
得られた評価試料について、比抵抗/ホール測定システム(東陽テクニカ製:ResiTest8300)を使用して導電率を測定した。また、分光光度計(島津製作所製:UV-2600)を使用し、吸収端波長及び光線透過率を評価した。
評価結果を表1に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
比較例1
実施例1(2)の熱処理を実施しなかった他は、実施例1と同様にして評価試料を作製し評価した。結果を表1に示す。
【0051】
比較例2
実施例1(2)の熱処理温度を700℃とした他は、実施例1と同様にして評価試料を作製し評価した。結果を表1に示す。
【0052】
実施例2
実施例1(1)において、Mgのモル比[Mg/(Mg+Zn)]が0.50であるマグネシウム酸化物-亜鉛酸化物スパッタリングターゲット(フルウチ化学製)を用いた他は、実施例1と同様にして評価試料を作製し評価した。結果を表2に示す。
【0053】
【表2】
【0054】
比較例3
実施例1(2)の熱処理を実施しなかった他は、実施例1と同様にして評価試料を作製し評価した。結果を表2に示す。
【0055】
比較例4
実施例1(2)の熱処理温度を700℃とした他は、実施例1と同様にして評価試料を作製し評価した。結果を表2に示す。
【0056】
実施例2及び比較例3の電極層について、X線回折測定した。測定条件は以下のとおりである。
装置:(株)リガク製Ultima-III
X線:Cu-Kα線(波長1.5406Å、グラファイトモノクロメータにて単色化)
出力:40kV-40mA
2θ-θ反射法、連続スキャン(1.0°/分)
サンプリング間隔:0.02°
スリット DS、SS:2/3°、RS:0.6mm
【0057】
図5は、実施例2及び比較例3の電極層のX線回折パターンである。
実施例2において、1番強い回折ピーク(2θ=34.8deg)は、酸化亜鉛(ZnO(002))の回折ピークである。
【0058】
図6は、実施例2及び比較例3の電極層の光線透過スペクトルである。
熱処理をしない比較例3では、紫外線を通さない酸化亜鉛が膜全体に分散した状態であるため、350nm付近より緩やかに透過率が0%まで減少していく。一方、高温で熱処理した実施例2では、350nm付近で透過率が20%程度まで低下した後、350~200nm付近まで透過率の減少度合が小さい。これは、熱処理によって、酸化亜鉛(吸収端波長358nm)を主とする領域と酸化マグネシウム(吸収端波長159nm)を主とする領域に分離し、酸化マグネシウムを主とする領域から一定量の紫外線が透過しているためと考えられる。
【0059】
図7は、電極層上面の走査型電子顕微鏡(SEM)像であり、(a)は比較例3のSEM像であり、(b)は実施例2のSEM像である。
図8は、電極層上面の原子間力顕微鏡(AFM)像であり、(a)は比較例3のAFM像であり、(b)は実施例2のAFM像である。
比較例3(図7(a)、図8(a))ではSEM像での表面形状は平滑であった。一方、実施例2(図7(b)、図8(b))ではSEM像に明暗が見られ、相分離していることが観察された。また、XRDの結果(図5)から、34°付近にZnO相(0002)のピークと、37°付近にMgO相(111)のピークがそれぞれ観察され、SEM像に対応していると考えられる。酸化亜鉛相が導電性を示す一方、酸化マグネシウム相が紫外透明性を担うことで、導電性と紫外線透過性とが両立されていると考えられる。
図9は、電極層断面の透過電子顕微鏡(TEM)像であり、(a)は実施例2のTEM像であり、(b)は比較例3のTEM像である。
図10は、実施例2の電極層断面のTEM像及びエネルギー分散型X線分析(EDX)像である。
図10より、電極層が微結晶からなり、かつ相分離していることがわかる。また、電極層が柱状に結晶成長していることがわかる。さらに、電極層において、亜鉛酸化物(ZnO等)を主とする領域と、マグネシウム酸化物(MgO等)を主とする領域が、それぞれ分散した状態になっていることがわかる。マグネシウム酸化物を主とする領域の粒径は、70nmであった。なお、マグネシウム酸化物を主とする領域の粒径は、TEMにより測定される値である。具体的には、積層体の中心から半径10μmの範囲で任意の垂直方向の断面を10箇所選ぶ。それぞれの箇所について、倍率50万倍で幅400nmの範囲で観察し、電極層の中央部に直線を引く。その直線と粒界との各交点間の距離を測定し平均をとる。さらに、10視野全体の平均をとり、その値を「マグネシウム酸化物を主とする領域の粒径」とする。
【0060】
実施例3
実施例1(1)において、Mgのモル比[Mg/(Mg+Zn)]が0.70あるマグネシウム酸化物-亜鉛酸化物スパッタリングターゲット(フルウチ化学製)を用いた他は、実施例1と同様にして評価試料を作製し評価した。結果を表3に示す。
【0061】
【表3】
【0062】
比較例5
実施例1(1)において、Mgのモル比[Mg/(Mg+Zn)]が0.80あるマグネシウム酸化物-亜鉛酸化物スパッタリングターゲット(フルウチ化学製)を用いた他は、実施例1と同様にして評価試料を作製し評価した。結果を表3に示す。
【0063】
比較例6
実施例1(1)において、Mgのモル比[Mg/(Mg+Zn)]が0.90あるマグネシウム酸化物-亜鉛酸化物スパッタリングターゲット(フルウチ化学製)を用いた他は、実施例1と同様にして評価試料を作製し評価した。結果を表3に示す。
【0064】
実施例4
電極層12に、元素XとしてAlを添加した他は、実施例1と同様にして積層体を作製し評価した。電極層12は、支持基板30をスパッタリング装置にセットし、Mgのモル比[Mg/(Mg+Zn)]が0.54であり、Alのモル比[Al/(Mg+Zn+Al)]が0.007である、Alを添加したマグネシウム酸化物-亜鉛酸化物スパッタリングターゲット(フルウチ化学製)を用いて、スパッタガスにArを用い、25℃で支持基板30上に電極層12を100nm成膜した。
評価結果を表4に示す。
【0065】
実施例5
実施例4において、Alのモル比[Al/(Mg+Zn+Al)]を0.00005に調整した他は、実施例4と同様にして評価試料を作製し評価した。結果を表4に示す。
【0066】
実施例6
実施例4において、Alのモル比[Al/(Mg+Zn+Al)]を0.0001に調整した他は、実施例4と同様にして評価試料を作製し評価した。結果を表4に示す。
【0067】
実施例7
実施例4において、Alのモル比[Al/(Mg+Zn+Al)]を0.018に調整した他は、実施例4と同様にして評価試料を作製し評価した。結果を表4に示す。
【0068】
実施例8
実施例4において、Alのモル比[Al/(Mg+Zn+Al)]を0.25に調整した他は、実施例4と同様にして評価試料を作製し評価した。結果を表4に示す。
【0069】
実施例9
実施例4において、元素XとしてAlに代えてGaを添加し、Gaのモル比[Ga/(Mg+Zn+Ga)]を0.01に調整した他は、実施例4と同様にして評価試料を作製し評価した。結果を表4に示す。
【0070】
【表4】
【0071】
上記に本発明の実施形態及び/又は実施例を幾つか詳細に説明したが、当業者は、本発明の新規な教示及び効果から実質的に離れることなく、これら例示である実施形態及び/又は実施例に多くの変更を加えることが容易である。従って、これらの多くの変更は本発明の範囲に含まれる。
この明細書に記載の文献、及び本願のパリ条約による優先権の基礎となる出願の内容を全て援用する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10