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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-29
(45)【発行日】2023-10-10
(54)【発明の名称】乳化剤及び乳化剤を含む乳化組成物
(51)【国際特許分類】
   C09K 23/54 20220101AFI20231002BHJP
   B01J 13/00 20060101ALI20231002BHJP
   C08F 293/00 20060101ALI20231002BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20231002BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20231002BHJP
   A61K 8/891 20060101ALI20231002BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20231002BHJP
   A61Q 5/00 20060101ALI20231002BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20231002BHJP
【FI】
C09K23/54
B01J13/00 A
C08F293/00
C08F290/06
A61K8/06
A61K8/891
A61Q1/00
A61Q5/00
A61Q19/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020089623
(22)【出願日】2020-05-22
(65)【公開番号】P2021183314
(43)【公開日】2021-12-02
【審査請求日】2022-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】弁理士法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今井 太郎
【審査官】井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-137775(JP,A)
【文献】特開平11-114401(JP,A)
【文献】特開2017-218595(JP,A)
【文献】GABOR, A. H. et al.,Group-Transfer Polymerization of tert-Butyl M ethacrylate and [3-(Methacryloxy)propyl]pentamethyldisiloxane:Synthesis and Characterization of Homopolymers and Random and Block Copolymers,Chem. Mater.,(1996), Vol.8,pp.2272-2281
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 23/00- 23/52
C08F290/00-290/14
B01J 13/00
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00- 90/00
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式[I]で示されるシリコーングラフト共重合体ブロック及び下記式[II]で示される極性共重合体ブロックで主鎖を構成し、
主鎖の一方の末端構造が式[III]で表されるものであり、他方の末端構造が式[IV]で表されるものであるジブロック型共重合体からなる乳化剤。
【化1】
(式[I]中、
1は水素原子又はメチル基を示し、
Aは下記一般式(1)で表されるオルガノポリシロキサン含有基又は下記一般式(2)で表されるオルガノポリシロキサン含有基を示し、
1は繰り返し単位の数を示し、1≦n1≦50である。)
【化2】
(一般式(1)で表されるオルガノポリシロキサン含有基は、繰り返し単位数mが0~100の直鎖状オルガノポリシロキサン構造を有し、
一般式(1)中、
Zは2価の有機基を示し、
2はそれぞれ独立に炭素数1~10の飽和炭化水素基又はフェニル基を示し、
3は炭素数1~10の飽和炭化水素基を示す。)
【化3】
【化4】
(一般式(2)で表されるオルガノポリシロキサン含有基は、階層数cが1~10の樹枝状オルガノポリシロキサン構造を有し、
一般式(2)及び一般式(3)中、iは樹枝状構造の各階層の番号を表し、1からcまでの各整数であり、
一般式(2)中、
iは一般式(3)で表されるシリルオルガノ基であり、iは1である。
一般式(3)中、
Zは2価の有機基を示し、
4は炭素数1~10の飽和炭化水素基又はフェニル基を示し、
5は炭素数1~8のアルキル基又はフェニル基を示し、
i+1は、階層iがc未満(最上階層未満)のとき、一般式(3)で表されるシリルオルガノ基Liであり、階層i=c(最上階層)のとき、水素原子、炭素数1~10の飽和炭化水素基又はフェニル基であり、
iは階層iにおけるOR4基の数を示し、0~3の範囲の数である。)
【化5】
(式[II]中、
1は水素原子またはメチル基を示し、
Bは-OB'、-NH2及び-OHから選ばれるいずれかの基(B’は炭素数2~21の一価炭化水素基に含まれる1つのメチレン基(-CH 2 -)を、炭素数1~20の(ポリ)オキシアルキレン基、-C(O)-、-O-、-S-、及び-NR-(Rは水素原子又は炭素数1~20の一価炭化水素基を示す)から選ばれる1種の2価の基に置き換えた基を示す(但し、-OB’の-O-に隣接する基はメチレン基であり、B’の末端はメチル基である)。)を示し、
2は繰り返し単位の数を示し、1≦n2≦50である。)
【化6】
(式[III]中、
6は炭素数1~4のアルキル基を示し、
7は互いに独立に水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を示す。)
【化7】
(式[IV]中、
1は水素原子又はメチル基を示し、
Xは上記式[I]中のA又は式[II]中のBで示されるものを示す。)
【請求項2】
ゲルパーミエーションクロマトグラフィによるポリスチレン換算の数平均分子量が2,000~25,000である請求項1に記載のジブロック型共重合体からなる乳化剤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の乳化剤、水相成分及び油相成分を含有する乳化組成物。
【請求項4】
乳化組成物の全質量に対して、
乳化剤が0.1~10質量%、
水相成分が5~90質量%、及び
油相成分が5~60質量%である請求項3に記載の乳化組成物。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の乳化組成物を含有する化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広範囲な乳化組成において高い保存安定性を発揮し、優れた乳化性能を有する乳化剤に関し、特に(メタ)アクリルシリコーン系ジブロック型共重合体の乳化剤に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に油中水型乳化組成物においては、さっぱりとしてべたつきが少なく、撥水性の優れた乳化組成物を得るために、油剤としてシリコーン油が多用されているが、このシリコーン油を含有する油中水型乳化組成物は、従来用いられているポリオキシアルキレン脂肪酸エステル系等の乳化剤を用いても、安定性に優れた乳化物を得ることが困難である。そこで、シリコーン油を油相とする乳化物に対しては、シリコーン油と相溶性の良いポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン(ポリエーテル変性シリコーン)を界面活性剤(乳化剤)として使用する方法が広く知られている(特許文献1~5等)。
【0003】
しかしながら、ポリエーテル変性シリコーンを用いても、みずみずしさを得ようと水相成分を多量に配合すると乳化物の安定性が損なわれ、経時で油相と水相が分離してしまったり、そもそも乳化物が得られない場合があった。そこで一般的には、油相を増粘あるいはゲル化させることで乳化物の安定性を得る手法が検討されている。
【0004】
しかし、増粘剤やゲル化剤が多くなると、かえってみずみずしさが失われ、ベタベタとした触感が生じてしまう。また、肌への塗布時に伸びが悪く、さっぱりとした触感が足りないという欠点があった。そのため、増粘剤やゲル化剤を添加せずとも、多量の水分を安定に配合できる乳化剤が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭61-293903号公報
【文献】特開昭61-293904号公報
【文献】特開昭62-187406号公報
【文献】特開昭62-215510号公報
【文献】特開昭62―216635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明は、広範囲な乳化組成において高い保存安定性を発揮し、優れた乳化性能を有する乳化剤、特に水相成分を多量に含有可能な油中水型乳化組成物に好適な乳化剤を提供することを目的とする。更に、該乳化剤を用いた乳化組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意研究を行った結果、疎水的なシリコーングラフト共重合体ブロックと、特定の極性基を官能基として有する極性共重合体ブロックとを構成成分として含むジブロック型共重合体が上記課題を解決することを見出し、本発明を完成した。
【0008】
従って、本発明は、下記のジブロック型共重合体からなる乳化剤を提供するものである。
【0009】
<1>
下記式[I]で示されるシリコーングラフト共重合体ブロック及び下記式[II]で示される極性共重合体ブロックで主鎖を構成し、
主鎖の一方の末端構造が式[III]で表されるものであり、他方の末端構造が式[IV]で表されるものであるジブロック型共重合体からなる乳化剤。
【化1】
(式[I]中、
1は水素原子又はメチル基を示し、
Aは下記一般式(1)で表されるオルガノポリシロキサン含有基又は下記一般式(2)で表されるオルガノポリシロキサン含有基を示し、
1は繰り返し単位の数を示し、1≦n1≦50である。)
【化2】
(一般式(1)で表されるオルガノポリシロキサン含有基は、繰り返し単位数mが0~100の直鎖状オルガノポリシロキサン構造を有し、
一般式(1)中、
Zは2価の有機基を示し、
2はそれぞれ独立に炭素数1~10の飽和炭化水素基又はフェニル基を示し、
3は炭素数1~10の飽和炭化水素基を示し、
mは0~100の数を示す。)
【化3】
【化4】
(一般式(2)で表されるオルガノポリシロキサン含有基は、階層数cが1~10の樹枝状オルガノポリシロキサン構造を有し、
一般式(2)及び一般式(3)中、iは樹枝状構造の各階層の番号を表し、1からcまでの各整数であり、
一般式(2)中、
iは一般式(3)で表されるシリルオルガノ基であり、iは1である。
一般式(3)中、
Zは2価の有機基を示し、
4は炭素数1~10の飽和炭化水素基又はフェニル基を示し、
5は炭素数1~8のアルキル基又はフェニル基を示し、
i+1は、階層iがc未満(最上階層未満)のとき、一般式(3)で表されるシリルオルガノ基Liであり、階層i=c(最上階層)のとき、水素原子、炭素数1~10の飽和炭化水素基又はフェニル基であり、
iは階層iにおけるOR4基の数を示し、0~3の範囲の数である。)
【化5】
(式[II]中、
1は水素原子またはメチル基を示し、
Bは-OB'、-NH2及び-OHから選ばれるいずれかの基(B'は炭素数1~20のポリオキシアルキレン基、-C(O)-、-O-、-S-、及び-NR-(Rは水素原子又は炭素数1~20の一価炭化水素基を示す)から選ばれる1種又は2種以上の2価の基を有する、炭素数1~20の一価炭化水素基を示す。)を示し、
2は繰り返し単位の数を示し、1≦n2≦50である。)
【化6】
(式[III]中、
6は炭素数1~4のアルキル基を示し、
7は互いに独立に水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を示す。)
【化7】
(式[IV]中、
1は水素原子又はメチル基を示し、
Xは上記式[I]中のA又は式[II]中のBで示されるものを示す。)
<2>
ゲルパーミエーションクロマトグラフィによるポリスチレン換算の数平均分子量が2,000~25,000である<1>に記載のジブロック型共重合体からなる乳化剤。
<3>
<1>又は<2>に記載の乳化剤、水相成分及び油相成分を含有する乳化組成物。
<4>
乳化組成物の全質量に対して、
乳化剤が0.1~10質量%、
水相成分が5~90質量%、及び
油相成分が5~60質量%である<3>に記載の乳化組成物。
<5>
<3>又は<4>に記載の乳化組成物を含有する化粧料。
【発明の効果】
【0010】
本発明のジブロック型共重合体からなる乳化剤は、疎水的なシリコーングラフト共重合体ブロック(セグメント[I])と、特定の極性基を官能基として有する極性共重合体ブロック(セグメント[II])とを構成成分として含む。該ジブロック型共重合体を用いて油中水型乳化組成物を調製すると、該極性基と水相との相互作用、およびシリコーン部分と油剤との相互作用が、ブロック構造に由来したより強力で効率的な相互作用となるため、広範囲な乳化組成において経時安定性に優れた乳化組成物が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明を詳細に説明する。また、本明細書で用いる用語「(メタ)アクリル」とは、メタクリル及びアクリルのことをいう。同様に、本明細書で用いる用語「(メタ)アクリレート」とは、メタクリル酸エステル及びアクリル酸エステルのことをいう。
【0012】
[乳化剤]
本発明の乳化剤であるジブロック型共重合体は、下記式[I]で表されるシリコーングラフト共重合体ブロック単位(セグメント[I])、及び下記式[II]で表される極性共重合体ブロック単位(セグメント[II])を主鎖に有し、主鎖の一方の末端構造が下記式[III]で表される構造であり、もう一方の末端構造が下記式[IV]で表される
構造である。
【0013】
セグメント[I]
【化8】
式[I]中、R1は水素原子又はメチル基である。Aは下記一般式(1)で表されるオルガノポリシロキサン含有基又は下記一般式(2)で表されるオルガノポリシロキサン含有基である。n1は繰り返し単位の数を表し、1~50であり、好ましくは1~20であり、より好ましくは3~10である。
【0014】
一般式(1)で表されるオルガノポリシロキサン含有基は、ジオルガノシロキシ基の繰り返し単位数mが0~100の直鎖状オルガノポリシロキサン構造を有する基である。
【化9】
一般式(1)中、Zは2価の有機基であり、炭素数2~12の飽和炭化水素基が好ましく、さらに好ましくはプロピレン基である。R2はそれぞれ独立に炭素数1~10の飽和炭化水素基又はフェニル基であり、好ましくは炭素数1~5の飽和炭化水素基、さらに好ましくはメチル基である。R3は炭素数1~10の飽和炭化水素基であり、好ましくは炭素数1~5の飽和炭化水素基、さらに好ましくはメチル基である。mは0~100の数で、好ましくは1~60の数、更に好ましくは5~30の数である。
【0015】
一般式(2)で表されるオルガノポリシロキサン含有基は、樹枝状の枝分かれ構造を有する基であり、その枝分かれ構造の数(階層数c)は1~10の整数であり、好ましくは1~6の整数であり、更に好ましくは1~4の整数である。
【化10】
【化11】
一般式(2)及び一般式(3)中、iは樹枝状構造の各階層の番号を表し、1からcまでの各整数である。
一般式(2)中、Liは一般式(3)で表されるシリルオルガノ基であり、一般式(2)における階層iは1である。
一般式(3)中、Zは2価の有機基であり、炭素数2~12の飽和炭化水素基が好ましく、さらに好ましくはプロピレン基である。R4は炭素数1~10の飽和炭化水素基又はフェニル基であり、好ましくは炭素数1~5の飽和炭化水素基、さらに好ましくはメチル基である。R5は炭素数1~8のアルキル基又はフェニル基であり、好ましくは炭素数1~3のアルキル基、さらに好ましくはメチル基である。Li+1は、階層iがc未満(最上階層未満)のとき、一般式(3)で表されるシリルオルガノ基Liであり、階層i=c(最上階層)のとき、水素原子、炭素数1~10の飽和炭化水素基又はフェニル基である。i=c(最上階層)のときのLiとしては、炭素数1~8の飽和炭化水素基が好ましく、炭素数1~4の飽和炭化水素基が更に好ましい。aiは階層iにおけるOR4基の数を示し、0~3の範囲の数である。
階層数1(c=1)の樹枝状オルガノポリシロキサンは下記一般式(3-1)で表され、式中のL2は水素原子、炭素数1~10の飽和炭化水素基又はフェニル基である。
【化12】
階層数2(c=2)の樹枝状オルガノポリシロキサンは下記一般式(3-2)で表され、式中のL3は水素原子、炭素数1~10の飽和炭化水素基又はフェニル基である。
【化13】
階層数3(c=3)の樹枝状オルガノポリシロキサンは下記一般式(3-3)で表され、式中の 4 は水素原子、炭素数1~10の飽和炭化水素基又はフェニル基である。
【化14】
一般式(3-1)~(3-3)において、Z、R4及びR5はそれぞれ上述したものと同じであり、a1、a2及びa3はそれぞれ0~3の範囲の数である。
【0016】
セグメント[II]
【化15】
式[II]中、R1は水素原子またはメチル基である。Bは-OB'、-NH2及び-OHから選ばれるいずれかの基(B'は炭素数1~20のポリオキシアルキレン基、-C(O)-、-O-、-S-、及び-NR-(Rは水素原子又は炭素数1~20の一価炭化水素基を示す)から選ばれる1種又は2種以上の2価の基を有する、炭素数1~20の一価炭化水素基を示す。)であり、好ましくは一般式(8’)又は(9’)で表される基である。また、n2は繰り返し単位の数を表し、1~50であり、好ましくは1~20であり、より好ましくは3~10である。
【化16】
(式(8’)中、R7は互いに独立に水素原子または炭素数1~4のアルキル基を示し、式(9’)中、R3は炭素数1~10の飽和炭化水素基を示し、n3は繰り返し単位の数を表し、1≦n3≦10である。)
【0017】
末端構造[III]
【化17】
式[III]中、R6は炭素数1~4のアルキル基であり、好ましくはメチル基である。R7は互いに独立に水素原子又は炭素数1~4のアルキル基であり、好ましくはメチル基である。
【0018】
末端構造[IV]
【化18】
式[IV]中、R1は水素原子又はメチル基である。Xは上記式[I]中のA又は式[II]中のBで示されるものを示す。
【0019】
前記セグメント[I]、及びセグメント[II]は、それぞれ少なくとも1種類の式[
I]で表される単位又は式[II]で表される単位から構成されていればよく、複数種の式[I]で表される単位又は式[II]で表される単位から構成されていてもよい。また、上記末端構造[III]及び[IV]に挟まれるセグメント[I]及びセグメント[I
I]は順不同である。
本発明において、ジブロック型共重合体とは、極性、水溶性、粉体への親和性の有無といった物理的性質の異なる2つのセグメント[I]及びセグメント[II]が連結した共重合体を指す。すなわち、本発明のジブロック型共重合体は、式[I]で表される単位が連続してセグメント[I]を構成し、式[II]で表される単位が連続してセグメント[II]を構成し、それらが連結した共重合体である。式[I]で表される複数種の単位からセグメント[I]が構成される場合、セグメント[I]は同種の式[I]で表される単位が連続したブロック構造を有していても、異種の式[I]で表される単位が秩序なく配列したランダム構造を有していてもよい。同様に、式[II]で表される複数種の単位からセグメント[II]が構成される場合、セグメント[II]は同種の式[II]で表される単位が連続したブロック構造を有していても、異種の式[II]で表される単位が秩序なく配列したランダム構造を有していてもよい。
【0020】
本発明の乳化剤であるジブロック型共重合体は、数平均分子量(Mn)が2,000~25,000であり、好ましくは2,000~20,000、さらに好ましくは3,000~15,000である。また、多分散度(Mw/Mn)は、1.00~3.00、好ましくは1.00~2.00、さらに好ましくは1.05~1.60である。
また、セグメント[I]およびセグメント[II]それぞれの繰り返し単位数は1~50であり、1~20であることが好ましく、3~10であることがより好ましい。
セグメント[I]の繰り返し単位数及びセグメント[II]の繰り返し単位数の比、すなわち、セグメント[I]の重合度n1とセグメント[II]の重合度n2の比は、n2/n1が0.02~10が好ましく、0.05~5がより好ましい。
なお、本発明において分子量は、ポリスチレンを標準物質としたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により下記条件で測定した数平均分子量である。
[測定条件]
測定器:HLC-8320GPC(東ソー製)
展開溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
流量:0.600mL/min
検出器:示差屈折率検出器(RI)
カラム:TSK Guardcolumn SuperH-H
(4.6mmI.D.×35mm)
TSKgel Super H2500
(充填材粒径:3.0μm,6mmI.D.×150mm)
TSKgel Super HM-N
(充填材粒径:3.0μm,6mmI.D.×150mm)
(いずれも東ソー社製)
カラム温度:40℃
試料注入量:50μL(濃度0.3質量%のTHF溶液)
【0021】
本発明の乳化剤であるジブロック型共重合体は、下記一般式(4)で表される化合物を開始剤として、一般式(5)で表されるモノマーをグループ移動重合する工程、及び一般式(6)で表される極性モノマーをグループ移動重合する工程を有する方法により製造することができる。すなわち、本発明のジブロック型共重合体は、一般式(4)で表される化合物を開始剤として、一般式(5)で表されるモノマーと、一般式(6)で表される極性モノマーとを、順次グループ移動重合することで合成することができ、一般式(5)で表されるモノマーと一般式(6)で表される極性モノマーとのグループ移動重合の順番を問わないものである。
【化19】
一般式(4)中、R6はそれぞれ独立に炭素数1~4のアルキル基であり、R7は互いに独立に水素原子または炭素数1~4のアルキル基を表す。

【化20】
一般式(5)中、R1及びAは上記式[I]の通りである。

【化21】
一般式(6)中、R1及びBは上記式[II]の通りである。
【0022】
一般式(4)で表される開始剤としては、例えば、以下の化合物を用いることができる。本発明のジブロック型共重合体の製造方法で用いることのできる開始剤が、以下に例示する開始剤に限られるわけではない。
【化22】
式中Meはメチル基、Etはエチル基、nPrはn-プロピル基、iPrはイソプロピル基、nBuはn-ブチル基を表す。
【0023】
一般式(5)で表されるモノマー(単量体)としては、例えば、次のようなものを用いることができる。本発明のジブロック型共重合体の製造方法で用いることのできるモノマーが、以下に例示するモノマーに限られるわけではない。
【0024】
一般式(5)中のAが一般式(1)で表されるオルガノポリシロキサン含有基の場合
【化23】
【0025】
一般式(5)中のAが一般式(2)で表されるオルガノポリシロキサン含有基の場合
【化24】
【0026】
一般式(6)で表される極性モノマー(単量体)としては、例えば、次のようなものを用いることができる。本発明のジブロック型共重合体の製造方法で用いることのできる極性モノマーが、以下に例示する極性モノマーに限られるわけではない。
具体的には、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ジ(エチレングリコール)モノメチルエーテル(メタ)アクリレート、フルフリル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、2-(メトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、アリルオキシエチル(メタ)アクリレート、1エトキシブチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロ-4H-ピラニル-2(メタ)アクリレート、エチルトリグリコール(メタ)アクリレート、ブチルジグリコール(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール)ジメチルエーテル(メタ)アクリレート及びポリ(エチレングリコール)アルキルエーテル(メタ)アクリレートなどのオキシアルキレン置換(メタ)アクリレート;
ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレートなどのアミノアルキル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリルアミド、4-(メタ)アクリロイルモルホリン、N-tert-ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-(ブトキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N-[3-(ジメチルアミノ)プロピル](メタ)アクリルアミド、N-ドデシル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0027】
一般式(6)で表される極性モノマーとしては、以下の一般式(8)又は一般式(9)で表される極性モノマーが好ましい。
【0028】
【化25】
一般式(8)中、R1は水素原子又はメチル基であり、好ましくはメチル基である。R7は互いに独立に水素原子又は炭素数1~4のアルキル基であり、好ましくはメチル基及びエチル基である。
【0029】
【化26】
一般式(9)中、R1は水素原子又はメチル基であり、好ましくはメチル基である。R3は炭素数1~10の飽和炭化水素基であり、好ましくは炭素数1~5の飽和炭化水素基、さらに好ましくはメチル基である。n3は繰り返し単位の数を表し、1≦n3≦10であり、好ましくは2≦n3≦8である。
【0030】
一般式(6)で表される極性モノマーとしては、特には、式(8-1)で表される2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレートが好ましい。
【化27】
【0031】
本発明のジブロック型共重合体の製造方法において、グループ移動重合は、次の2段階により行なう。第1の段階では、一般式(5)で表されるモノマー又は一般式(6)で表される極性モノマーのいずれか(以下、第1の段階で重合を行なうモノマーを第1のモノマーという)の重合を行ない、続いて第2の段階では、一般式(5)で表されるモノマー及び一般式(6)で表される極性モノマーのうち、第1の段階で重合を行なっていない、もう一方のモノマー(以下、第2の段階で重合を行なうモノマーを第2のモノマーという)の重合を行なう。
第1の段階では、開始剤である一般式(4)で表される化合物と、触媒と、第1のモノマーとの3成分のうち、予め2成分を混合しておき、残りの1成分を添加・混合することで、まず、第1のモノマーの重合が開始する。
次に、第1のモノマーの重合反応の停止を確認した後、第2のモノマーを反応系に添加することで、第2のモノマーの重合が開始する。
第2のモノマーの重合反応の停止を確認した後、反応停止剤を加え、反応を終了する。
反応終了後は、溶媒や未反応のモノマーを減圧留去する等、常法により精製することで目的物であるジブロック型共重合体を得ることができる。
上記の第1の段階及び第2の段階のグループ移動重合反応において、溶媒を用いることが好ましい。
【0032】
より具体的な製造方法の一例として、次の方法が挙げられる。
十分乾燥した三口フラスコに触媒を入れ、溶媒を加える。さらに、上記一般式(4)で表される開始剤を加え混合した後、滴下漏斗を用いて第1のモノマーを滴下し、撹拌する。発熱の程度に応じて、反応溶液を冷却し、適温に保つ。第1のモノマーの滴下後、第1のモノマーが消費されるまで撹拌し、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)分析等で、開始剤と第1のモノマーの仕込み比に応じた分子量の増加を確認することにより、第1のモノマーの重合反応の停止を確認する。次に、この反応系に第2のモノマーを滴下し、撹拌する。発熱の程度に応じて、反応溶液を冷却し、適温に保つ。第2のモノマーの滴下後、滴下した第2のモノマーが消費されるまで撹拌し、最後に反応停止剤を加え、反応を終了する。反応後、溶媒及び未反応のモノマーを減圧留去する等、常法により精製することで目的物であるジブロック型共重合体を得る。
【0033】
反応溶媒としては、非プロトン性の有機溶媒を用いることができる。例えば、酢酸エチル、プロピオニトリル、トルエン、キシレン、ブロモベンゼン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、ジエチルエーテル、テトラメチレンスルホン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、アニソール、2-ブトキシエトキシトリメチルシラン、セロソルブアセテート、クラウンエーテル、アセトニトリル、テトラヒドロフラン(THF)があげられる。反応効率の観点から、好ましくは、ジクロロメタン、トルエン、アセトニトリル、テトラヒドロフランであり、さらに好ましくはテトラヒドロフランである。
【0034】
グループ移動重合反応の反応温度は-100℃~150℃であり、好ましくは0℃~50℃、さらに好ましくは10℃~30℃である。
【0035】
溶媒及び未反応の単量体を減圧留去する際の温度は、80℃~300℃であり、好ましくは100℃~200℃、さらに好ましくは120℃~180℃である。また、ストリップ時の圧力は1atm以下であり、好ましくは0.1atm以下、さらに好ましくは0.007atm以下である。
【0036】
触媒としては、一般的に、グループ移動重合の触媒として知られている、アニオン系触媒、ルイス酸触媒、有機分子触媒の中から選択し、用いることができる。
【0037】
アニオン系触媒としては、例えば、トリス(ジメチルアミノ)スルホニウムジフルオロトリメチルシリケート、トリス(ジメチルアミノ)スルホニウムシアニド、テトラフェニルアルソニウムシアニド、トリス(ジメチルアミノ)スルホニウムアジド、テトラエチルアンモニウムアジド、ビス(ジアルキルアルミニウム)オキサイド、ボロントリフルオライドエーテレート、アルカリ金属フルオライド、アルカリ金属シアニド、アルカリ金属アジド、トリス(ジメチルアミノ)スルホニウムジフルオロトリフェニルスタネート、テトラブチルアンモニウムフルオライド、テトラメチルアンモニウムフルオライド、テトラエチルアンモニウムシアニド、テトラブチルアンモニウムベンゾエート、テトラブチルアンモニウムビベンゾエート、テトラブチルアンモニウムm-クロロベンゾエートが挙げられる。
【0038】
ルイス酸触媒としては、例えば、ヨウ化亜鉛、臭化亜鉛、塩化亜鉛、モノ及びジアルキルアルミニウムハライド、ジアルキルアルミニウムオキサイドが挙げられる。
【0039】
有機分子触媒としては、例えば、1,3-ジイソプロピル-4,5-ジメチルイミダゾール-2-イリデン、1,3-ジイソプロピルイミダゾール-2-イリデン、1,3-ジ-tert-ブチルイミダゾール-2-イリデン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン、2,8,9-トリメチル-2,5,8,9-テトラアザ-1-ホスファビシクロ[3.3.3]ウンデカン、2,8,9-トリイソブチル-2,5,8,9-テトラアザ-1-ホスファビシクロ[3.3.3]ウンデカン、1-tert-ブチル-2,2,4,4,4-ペンタキス(ジメチルアミノ)-2λ5,4λ5-カテナジ(ホスファゼン)、1-tert-ブチル-4,4,4-トリス(ジメチルアミノ)-2,2-ビス[トリス(ジメチルアミノ)-ホスホラニリデンアミノ]-2λ5,4λ5-カテナジ(ホスファゼン)、トリス(2,4,6-トリメトキシフェニル)ホスフィン、トリス-(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリフルオロメタンスルホン酸トリエチルシリル、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、トリフルオロメタンスルホンイミド、1-[ビス(トリフルオロメタンスルホニル)メチル]-2,3,4,5,6-ペンタフルオロベンゼンがある。
【0040】
反応停止剤としては、プロトンを供与できる化合物が用いられる。例えば、メタノール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、水が挙げられる。
【0041】
[乳化組成物]
本発明の乳化組成物は、上記乳化剤であるジブロック型共重合体、水相成分及び油相成分を含有する。乳化組成物の全質量に対して、乳化剤が0.1~10質量%、水相成分が5~90質量%、及び油相成分が5~60質量%であり、広範な乳化組成において、経時での分散安定性に優れた乳化組成物であり、特に、油中水型乳化組成物とすることが好ましい。
乳化組成物に含まれる水相成分及び油相成分としては、その用途及び目的に応じて適宜選択すればよく、例えば、後述する化粧料成分として公知の成分等が挙げられる。
乳化組成物に含まれる水相成分は、水を主成分とし、これに各種水溶性成分を含むものである。
乳化組成物に含まれる油相成分としては、シリコーン油、炭化水素油、高級脂肪酸、エステル油や天然動植物油等の極性油、半合成油、及び/又はフッ素系油等を挙げることができ、極性油、シリコーン油が好ましい。
【0042】
本発明の乳化剤であるジブロック型共重合体は、その乳化性能を利用して各種用途に使用することができるが、特に、化粧料原料として好適であり、例えば、乳液、クリーム、化粧水、パック、分散液、洗浄料等の基礎化粧料、ファンデーション、白粉、口紅、頬紅、アイシャドウ、アイライナー、マスカラ等のメーキャップ化粧料、シャンプー、リンス、ヘアートリートメント、整髪料等の頭髪化粧料などに配合することができる。この場合、本発明の乳化剤であるジブロック型共重合体の化粧料への配合量は0.01~10質量%の範囲が好ましい。0.01質量%未満では充分な乳化能を発揮しづらく、また、10質量%を越えると粘性が高くなってのびが重くなり、使用感が悪くなるので好ましくない。
【0043】
また、本発明の乳化剤であるジブロック型共重合体を化粧料に使用した場合、その他の化粧料成分には特に制限はなく、製品種、または化粧目的に応じて通常使用される化粧料成分を配合することができる。このような化粧料成分としては、例えば油脂、ロウ、炭化水素、シリコーン油、脂肪酸、アルコール、エステル、ラノリン等の油剤原料、白色顔料、着色顔料、体質顔料、光輝性顔料、有機粉体、疎水化処理顔料等の粉体原料、金属石鹸、界面活性剤、多価アルコール、高分子化合物、水、酸化防止剤、紫外線吸収剤、防腐剤、タール色素、天然色素、美容成分、香料等が挙げられ、本発明の効果を損なわない範囲で適宜配合することができる。
【0044】
本発明のジブロック型共重合体を乳化剤として用いて得られる乳化組成物、ならびに該乳化組成物を含んだ化粧料も、本発明の実施態様の一つである。
【実施例
【0045】
以下に、本発明を実施例によって更に詳述するが本発明はこれによって限定されるものではない。なお、下記の例において特に明記のない場合は、組成の「%」は質量%である。
【0046】
[合成例1]
減圧乾燥したテトラブチルアンモニウムm-クロロベンゾエート19.9mgをTHF25mLに溶かした。このテトラブチルアンモニウムm-クロロベンゾエートのTHF溶液に、窒素雰囲気下で、開始剤として1-メトキシ-1-(トリメチルシロキシ)-2-メチル-1-プロペン436.0mgを加え、下記シリコーンマクロマー(a)7.5gを30分かけて滴下し、反応液を調製した。室温でさらにこの反応液を2時間攪拌した。その後、この反応液に、2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート7.5gを5分かけて滴下し、室温で1時間攪拌した後、メタノール10mLを添加して反応を停止した。反応停止後の反応液を、105℃で1時間、0.007atm未満で減圧ストリップを行い、目的のジブロック型共重合体を得た。
なお、シリコーンマクロマー(a)のグループ移動重合が完結した時点、及び反応停止後の2点においてゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)分析を行ったところ、各段階において、開始剤とモノマーの仕込み比に応じた分子量の増加が確認され、目的のジブロック型共重合体が得られていることを確認した。
合成例1のジブロック型共重合体の数平均分子量、分子量の多分散度及び各モノマーの重合度比は次の通りであった。
数平均分子量(Mn)=5025、多分散度(Mw/Mn)=1.19、重合度比(n2/n1)=5.34
【化28】
【化29】
(Aはシリコーンマクロマー(a)の残基であり、Bは2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレートの残基である。シリコーンマクロマー(a)の平均重合度q=3.5であり、2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレートの平均重合度p=18.4である。)
【0047】
[合成例2]
減圧乾燥したテトラブチルアンモニウムm-クロロベンゾエート19.9mgをTHF25mLに溶かした。このテトラブチルアンモニウムm-クロロベンゾエートのTHF溶液に、窒素雰囲気下で、開始剤として1-メトキシ-1-(トリメチルシロキシ)-2-メチル-1-プロペン436.0mgを加え、シリコーンマクロマー(a)11.76gを30分かけて滴下し、反応液を調製した。室温でさらにこの反応液を1時間攪拌した。その後、この反応液に、下記単量体(b)3.24gを15分かけて滴下し、室温で3時間攪拌した後、メタノール10mLを添加して反応を停止した。反応停止後の反応液を、105℃で1時間、0.007atm未満で減圧ストリップを行い、目的のジブロック型共重合体を得た。
合成例1と同様にして、ジブロック型共重合体であることを確認した。合成例2のジブロック型共重合体の数平均分子量、分子量の多分散度及び各モノマーの重合度比は次の通りであった。
数平均分子量(Mn)=9318、多分散度(Mw/Mn)=1.21、重合度比(n2/n1)=1.00
【化30】
【化31】
(Aはシリコーンマクロマー(a)の残基であり、Bは単量体(b)の残基である。シリコーンマクロマー(a)の平均重合度q=7.9であり、単量体(b)の平均重合度p=7.9である。)
【0048】
[合成例3]
減圧乾燥したテトラブチルアンモニウムm-クロロベンゾエート19.9mgをTHF25mLに溶かした。このテトラブチルアンモニウムm-クロロベンゾエートのTHF溶液に、窒素雰囲気下で、開始剤として1-メトキシ-1-(トリメチルシロキシ)-2-メチル-1-プロペン436.0mgを加え、シリコーンマクロマー(a)9.67gを1時間かけて滴下し、反応液を調製した。室温でさらにこの反応液を2時間攪拌した。その後、この反応液に、下記単量体(c)5.33gを30分かけて滴下し、室温で5時間攪拌した後、メタノール10mLを添加して反応を停止した。反応停止後の反応液を、105℃で1時間、0.007atm未満で減圧ストリップを行い、目的のジブロック型共重合体を得た。
合成例1と同様にして、ジブロック型共重合体であることを確認した。合成例3のジブロック型共重合体の数平均分子量及び分子量の多分散度は次の通りであった。
数平均分子量(Mn)=9327、多分散度(Mw/Mn)=1.24、重合度比(n2/n1)=0.73
【化32】
【化33】
(Aはシリコーンマクロマー(a)の残基であり、Bは単量体(c)の残基である。シリコーンマクロマー(a)の平均重合度q=7.4であり、単量体(c)の平均重合度p=5.4である。)
【0049】
[比較合成例1]
減圧乾燥したテトラブチルアンモニウムm-クロロベンゾエート19.9mgをTHF25mLに溶かした。このテトラブチルアンモニウムm-クロロベンゾエートのTHF溶液に、窒素雰囲気下で、開始剤として1-メトキシ-1-(トリメチルシロキシ)-2-メチル-1-プロペン436.0mgを加え、シリコーンマクロマー(a)7.5g及び2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート7.5gを30分かけて滴下し、反応液を調製した。室温でこの反応液を1時間攪拌した後、メタノール10mLを添加して反応を停止した。反応停止後の反応液を、105℃で1時間、0.007atm未満で減圧ストリップを行い、目的のランダム型共重合体を得た。比較合成例1のランダム型共重合体の数平均分子量及び分子量の多分散度は次の通りであった。
数平均分子量(Mn)=5302、多分散度(Mw/Mn)=1.32
【化34】
(Aはシリコーンマクロマー(a)の残基であり、Bは2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレートの残基である。シリコーンマクロマー(a)の平均重合度q=2.9であり、2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレートの平均重合度p=16.9である。)
【0050】
[乳化組成物の安定性評価]
表1に示す組成にしたがって乳化組成物を作製し、得られた乳化組成物の保存安定性を、40℃3日保存した後の相分離、ゲル状物の有無などにより以下の基準で判定した。
〇:相の分離が完全に確認できない、かつ、ゲル状物が確認できない
×:液体が分離、または、ゲル状物が生成する

【0051】
【表1】
(*1)KF-6017(信越化学工業(株)製)
(*2)KF-96-6cs(信越化学工業(株)製)
(*3)精製水:1,3-ブチレングリコール:塩化ナトリウム=70:7.5:0.5の混合液
【0052】
上記の表1の結果より明らかな如く、本発明のジブロック型共重合体は、同じモノマーにより合成されたランダム型共重合体(比較合成例1)に比べ優れた乳化性能を有し、安定性に優れる乳化組成物を与えることがわかった。また、ポリエーテル変性シリコーンに比べ広範囲の水分量を許容した安定な乳化組成物を与えることが分かった。