(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-29
(45)【発行日】2023-10-10
(54)【発明の名称】レーザー加工装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20231002BHJP
【FI】
H01L21/78 B
(21)【出願番号】P 2019141077
(22)【出願日】2019-07-31
【審査請求日】2022-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202496
【氏名又は名称】鹿角 剛二
(74)【代理人】
【識別番号】100202692
【氏名又は名称】金子 吉文
(72)【発明者】
【氏名】中村 勝
【審査官】宮久保 博幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-229702(JP,A)
【文献】特開平04-163936(JP,A)
【文献】特開2019-063812(JP,A)
【文献】特開2018-008286(JP,A)
【文献】特開2018-098363(JP,A)
【文献】特開2007-005579(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のデバイスが、分割予定ラインによって区画され表面に形成されたウエーハにレーザー加工を施すレーザー加工装置であって、
複数のウエーハを収容したカセットを載置するカセット載置台と、該カセットからウエーハを搬出入する搬出入手段と、
該搬出入手段によって搬出されたウエーハを回転可能に保持する保持手段と、該保持手段に保持されたウエーハに対して透過性を有する波長のレーザー光線の集光点を分割予定ラインの内部に位置付けて照射し、分割の起点となる改質層を形成するレーザー光線照射手段と、該保持手段と該レーザー光線照射手段とを相対的に加工送りする送り手段と、ウエーハを撮像する撮像手段と、制御手段と、を含み、
該制御手段は、該搬出入手段によって加工済のウエーハをカセットに収容する際、ウエーハに形成された結晶方位を示すマークを、未加工のウエーハがカセットに収容されている際の方向とは異なる所定の方向に位置付けてカセットに収容
し、該搬出入手段が該カセットからウエーハを搬出し、該撮像手段によって撮像したウエーハの結晶方位を示すマークが第一の方向を向いている場合は、未加工のウエーハであると判断し、該マークが第二の方向を向いている場合は、加工済のウエーハであると判断する判断部を備えるレーザー加工装置。
【請求項2】
該判断部が加工済のウエーハと判断した際、警告を発する請求項1に記載のレーザー加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のデバイスが、分割予定ラインによって区画され表面に形成されたウエーハにレーザー加工を施すレーザー加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等の複数のデバイスが、分割予定ラインによって区画され、表面に形成されたウエーハは、ダイシング装置、レーザー加工装置によって個々のデバイスチップに分割され、携帯電話、パソコン等の電気機器に利用される。
【0003】
レーザー加工装置は、ウエーハを保持する保持手段と、該保持手段に保持されたウエーハに対して透過性を有する波長のレーザー光線の集光点を分割予定ラインの内部に位置付けて照射し、分割の起点となる改質層を形成するレーザー光線照射手段と、該保持手段と該レーザー光線照射手段と、を相対的に加工送りする送り手段と、ウエーハを撮像する撮像手段と、制御手段と、を含み構成されていて、ウエーハを高精度に分割することができる(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したように、ウエーハの分割予定ラインの内部にレーザー光線の集光点を位置付けて改質層を形成した場合、肉眼では容易に改質層の存在を確認することができず、そのウエーハが加工済であるのか否かの判別ができない。よって、カセットに収容されたウエーハが加工済であるにも関わらず、何等かの理由により、該カセットがレーザー加工装置にセットされて、該カセットに収容された加工済のウエーハに対し、再びレーザー加工を施してしまうという問題がある。仮に、分割予定ラインに対して既に改質層が形成された加工済のウエーハに対して、再びレーザー光線を照射してしまうと、既に形成された改質層でレーザー光線が乱反射して、デバイスを損傷させ、大きな損害となる。
【0006】
本発明は、上記事実に鑑みなされたものであり、その主たる技術課題は、既に加工されたウエーハに対して、再び加工することがないレーザー加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、複数のデバイスが、分割予定ラインによって区画され表面に形成されたウエーハにレーザー加工を施すレーザー加工装置であって、複数のウエーハを収容したカセットを載置するカセット載置台と、該カセットからウエーハを搬出入する搬出入手段と、該搬出入手段によって搬出されたウエーハを回転可能に保持する保持手段と、該保持手段に保持されたウエーハに対して透過性を有する波長のレーザー光線の集光点を分割予定ラインの内部に位置付けて照射し、分割の起点となる改質層を形成するレーザー光線照射手段と、該保持手段と該レーザー光線照射手段とを相対的に加工送りする送り手段と、ウエーハを撮像する撮像手段と、制御手段と、を含み、該制御手段は、該搬出入手段によって加工済のウエーハをカセットに収容する際、ウエーハに形成された結晶方位を示すマークを、未加工のウエーハがカセットに収容されている際の方向とは異なる所定の方向に位置付けてカセットに収容し、該搬出入手段が該カセットからウエーハを搬出し、該撮像手段によって撮像したウエーハの結晶方位を示すマークが第一の方向を向いている場合は、未加工のウエーハであると判断し、該マークが第二の方向を向いている場合は、加工済のウエーハであると判断する判断部を備えるレーザー加工装置が提供される。
【0008】
該判断部が加工済のウエーハと判断した際に警告を発するようにすることもできる。
【発明の効果】
【0009】
本発明のレーザー加工装置は、複数のデバイスが、分割予定ラインによって区画され表面に形成されたウエーハにレーザー加工を施すレーザー加工装置であって、複数のウエーハを収容したカセットを載置するカセット載置台と、該カセットからウエーハを搬出入する搬出入手段と、該搬出入手段によって搬出されたウエーハを回転可能に保持する保持手段と、該保持手段に保持されたウエーハに対して透過性を有する波長のレーザー光線の集光点を分割予定ラインの内部に位置付けて照射し、分割の起点となる改質層を形成するレーザー光線照射手段と、該保持手段と該レーザー光線照射手段とを相対的に加工送りする送り手段と、ウエーハを撮像する撮像手段と、制御手段と、を含み、該制御手段は、該搬出入手段によって加工済のウエーハをカセットに収容する際、ウエーハに形成された結晶方位を示すマークを、未加工のウエーハがカセットに収容されている際の方向とは異なる所定の方向に位置付けてカセットに収容し、該搬出入手段が該カセットからウエーハを搬出し、該撮像手段によって撮像したウエーハの結晶方位を示すマークが第一の方向を向いている場合は、未加工のウエーハであると判断し、該マークが第二の方向を向いている場合は、加工済のウエーハであると判断する判断部を備えることから、加工済のウエーハを再びレーザー加工装置によって加工することがなく、先に形成された改質層にレーザー光線が乱反射してデバイスを損傷させるという問題が解消する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】
図1に示すレーザー加工装置によって加工されるウエーハ、及び保護テープの斜視図である。
【
図3】(a)未加工のウエーハがカセットに収容されている状態を示す概念図、(b)加工済のウエーハがカセットに収容されている状態を示す概念図である。
【
図4】撮像手段によってウエーハが撮像されている態様を示す斜視図である。
【
図5】ウエーハに対しレーザー加工を実施している態様を示す斜視図である。
【
図6】(a)撮像手段によって撮像された未加工のウエーハが表示手段に表示されている状態を示す正面図、(b)加工済のウエーハが表示手段に表示されている状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に基づいて構成されるレーザー加工装置に係る具体的な実施形態について、添付図面を参照しながら、詳細に説明する。
【0012】
図1には、本実施形態のレーザー加工装置1の全体斜視図が示されている。レーザー加工装置1は、基台2上に配置され、被加工物であるウエーハに対してレーザー光線を照射する加工手段としてのレーザー光線照射手段4と、該ウエーハを保持する保持手段30と、保持手段30に保持されたウエーハを撮像する撮像手段6と、レーザー光線照射手段4及び保持手段30とを相対的に加工送りし、撮像手段6及び保持手段30とを相対的に移動させる送り手段20と、基台2上の奥側に立設される垂直壁部261及び垂直壁部261の上端部から水平方向に延びる水平壁部262からなる枠体26と、基台2の送り手段20に隣接して配設されるカセット載置機構40及び搬出入手段50と、レーザー加工装置1の各作動部を制御する制御手段100と、を備えている。
【0013】
枠体26の水平壁部262の内部には、レーザー光線照射手段4を構成する光学系(図示は省略)が収容される。レーザー光線照射手段4は、図示しないレーザー発振器、出力調整手段等を含み、水平壁部262の先端部下面側には、レーザー光線照射手段4の一部を構成する集光器4aが配設されている。
【0014】
撮像手段6は、レーザー光線照射手段4の集光器4aに対して図中矢印Xで示すX軸方向で隣接する位置に配設される。水平壁部262の上方には、制御手段100に接続され、レーザー加工装置2の加工条件を表示したり、オペレータが加工条件を入力したりするタッチパネル機能を備えた表示手段8が配置される。
【0015】
制御手段100は、コンピュータにより構成され、制御プログラムに従って演算処理する中央演算処理装置(CPU)と、制御プログラム等を格納するリードオンリメモリ(ROM)と、撮像手段6が撮像した画像、検出した検出値、及び演算結果等を一時的に格納するための読み書き可能なランダムアクセスメモリ(RAM)と、入力インターフェース、及び出力インターフェースとを備えている(詳細についての図示は省略)。制御手段100は、レーザー加工装置1の各作動部を制御すると共に、撮像手段6によって撮像された画像を含む適宜の情報を記録すると共に、撮像手段6によって撮像された画像を解析し、例えば、ウエーハが未加工であるか、加工済であるか否かを判断する判断部110(追って詳述する)を備える。なお、
図1では、説明の都合上、制御手段100をレーザー加工装置1の外部に示しているが、実際は、レーザー加工装置1の内部に収容されている。
【0016】
保持手段30は、
図1に示すように、X軸方向において移動自在に基台2に搭載された矩形状のX軸方向可動板31と、Y軸方向において移動自在にX軸方向可動板31に搭載された矩形状のY軸方向可動板32と、Y軸方向可動板32の上面に固定された円筒状の支柱33と、支柱33の上端に固定された矩形状のカバー板34とを含む。カバー板34にはカバー板34上に形成された長穴を通って上方に延びるチャックテーブル35が配設されている。チャックテーブル35は、円形状のウエーハを保持し、支柱33内に収容された図示しない回転駆動手段により矢印R1で示す方向に回転可能に構成される。チャックテーブル35の上面は、通気性を有する多孔質材料から形成され実質上水平に延在する保持面を構成する。チャックテーブル35は、支柱33内を通る図示しない流路によって吸引手段(図示は省略)に接続されている。
【0017】
送り手段20は、X軸送り手段21と、Y軸送り手段22と、上記した図示しない支柱33内に収容された回転駆動手段とを含む。X軸送り手段21は、図示しないモータの回転運動を、ボールねじを介して直線運動に変換してX軸方向可動板31に伝達し、基台2上の案内レール27、27に沿ってX軸方向可動板31をX軸方向において進退させる。Y軸送り手段21も略同様の構成を備えており、モータの回転運動を、ボールねじを介して直線運動に変換し、Y軸方向可動板32に伝達し、X軸方向可動板31上の案内レール36、36に沿ってY軸方向可動板32をY軸方向において進退させる。なお、基台2上の案内レール27、27、X軸方向可動板31上の案内レール36、36、及びチャックテーブル35には、適宜のスケール、及び読取手段からなる位置検出センサが配設されており、チャックテーブル35のX軸方向、Y軸方向、及び回転方向の正確な位置が検出可能に構成され、チャックテーブル35の位置を検出しながら、送り手段20を作動して、撮像手段6、及びレーザー光線照射手段4の集光器4aに対してチャックテーブル35を移動して所望の位置に位置付けることができる。
【0018】
撮像手段6は、可視光線により撮像する通常の撮像素子(CCD)と、被加工物に赤外線を照射する赤外線照射手段と、赤外線照射手段により照射された赤外線を捕える光学系と、該光学系が捕えた赤外線に対応する電気信号を出力する撮像素子(赤外線CCD)とを含む。撮像手段6によって保持手段30のチャックテーブル35に保持されたウエーハを撮像し、レーザー光線照射手段4の集光器4aによるレーザー照射位置と、該ウエーハの被加工領域との位置合わせを行うためのアライメントに利用される。
【0019】
本実施形態のカセット載置機構40は、複数のウエーハを収容する第1のカセット42、及び第2のカセット43を載置するカセット載置領域41、41を備えている。オペレータは、各カセット載置領域41、41に対して、未加工のウエーハが収容された第1のカセット42、第2のカセット43を所定の向きに揃えて載置する。第1のカセット42、第2のカセット43に収容された各ウエーハが加工されて、加工済のウエーハが第1のカセット42、第2のカセット43に収容されたならば、カセット載置領域41から後工程の適宜の装置に搬送される。
【0020】
搬出入手段50は、第1のカセット42の開口部42a、及び第2のカセット43の開口部43aと対向する領域に配設される。搬出入手段50は、駆動機構52と、アーム基台53と、複数のアーム部を備えたアーム機構54と、アーム機構54の先端に形成されたロボットハンド55とを備える。駆動機構52は、モータ52aの回転運動を、ボールねじ52bを介して直線運動に変換して搬出入用可動板52cに伝達し、X軸方向に架け渡された案内レール52dに沿って搬出入用可動板52cをX軸方向において所望の位置に正確に位置付ける。搬出入用可動板52cの前面には、上下方向に一対のレール52e、52eが形成され、レール52e、52eに沿って上下移動するアーム基台53が支持されている。詳細な図示は省略するが、搬出入用可動板52cとアーム基台53との間にも、例えば、モータと、該モータの回転運動を、ボールねじを介して直線運動に変換してアーム基台53に伝達する駆動機構を備え、アーム基台53を、一対のレール52e、52eに沿って矢印Zで示すZ軸方向(上下方向)における所望の位置に正確に位置付ける。
【0021】
アーム基台53の内部には、複数のアーム部を含むアーム機構54を駆動するための回転駆動機構(図示は省略)が収容されており、各アーム部の関節部に配設されるモータと協働して、アーム機構54の先端部に配設されたU字形状のロボットハンド55を所望の位置に位置付けることができる。ロボットハンド55には、複数の吸引孔が形成されており、アーム機構54、アーム基台53を介して該吸引孔に対して負圧が供給される。第1のカセット42の開口部42aから、又は第2のカセット43の開口部43aからウエーハを搬出入することが可能に構成されており、アーム機構54、及びロボットハンド55の動作により、所望のウエーハを吸着して、
図1にてチャックテーブル35が位置付けられている搬出入位置に搬送する。該搬出入位置に位置付けられたチャックテーブル35に搬送されたウエーハは、チャックテーブル35上に規定の角度で正確に載置され、吸引保持される。チャックテーブル35に吸引保持されたウエーハは、支柱33内に配設された回転駆動手段(図示は省略する)によって、所定の角度だけ回転させられた後、撮像手段6の直下に位置付けられてアライメントが実施され、レーザー光線照射手段4の集光器4aの直下に位置付けられて、レーザー加工が施される。
【0022】
ウエーハに対し、レーザー光線照射手段4によってレーザー加工が施されたならば、チャックテーブル35は、再び
図1に示す搬出入位置に位置付けられて、搬出入手段50のロボットハンド55によって加工済のウエーハが吸着されて、アーム機構54の作動により、ウエーハが加工前に収容されていた第1のカセット42、又は第2のカセット43の、いずれかの位置に戻される。
【0023】
本実施形態のレーザー加工装置1は、概ね上記したとおりの構成を備えており、その作用について、以下に説明する。
【0024】
図2には、本実施形態でレーザー加工が施されるウエーハ10の斜視図が示されている。ウエーハ10は、例えば、複数のデバイス12が格子状に形成された分割予定ライン14によって区画され表面に形成されたシリコンウエーハである。ウエーハ10の外周の所定の位置には、ウエーハ10の結晶方位を規定するためのノッチ16が形成されている。ウエーハ10の表面10aには、ウエーハ10と同一の形状で形成された保護テープTが貼着され一体化される。保護テープTが表面10aに貼着されたウエーハ10は、
図2の最下段に示されているように反転され、保護テープTを下側に向けウエーハ10の裏面10bを上方に向けた状態とされ、第1のカセット42、又は第2のカセット43に、所定の間隔を空けて複数枚収容される。
【0025】
レーザー加工装置1によってレーザー加工を実施する際には、オペレータが、未加工のウエーハ10を複数収容した第1のカセット42、及び第2のカセット43をレーザー加工装置1に運び、カセット載置領域41、41に載置する。
図3(a)には、第1のカセット42、又は第2のカセット43を上方から見た際の形状と、第1のカセット42、又は第2のカセット43内に収容された未加工のウエーハ10、及びノッチ16が示されている。
図3(a)に示すように、未加工のウエーハ10のノッチ16は、第1のカセット42の開口部42a、及び第2のカセット43の開口部43aの中央を通りY軸方向に延びる中央線C(一点鎖線で示す仮想線)上に位置付けられている。すなわち、ウエーハ10の中心Pからみたノッチ16の方向は、該中央線Cに沿う方向に向けられ、該中央線Cとなす角度は0°である。
【0026】
第1のカセット42、及び第2のカセット43をカセット載置領域41、41に載置したならば、オペレータは、レーザー加工装置1に対して、レーザー加工の加工条件等を設定した後、レーザー加工の開始を指示する。レーザー加工の開始が指示されたならば、上記した搬送手段50の駆動機構52、アーム機構54、ロボットハンド55が作動して、例えば、第1のカセット42から、所定のウエーハ10を吸着して搬出する。第1のカセット42から搬出されたウエーハ10は、
図1に示す位置(搬出入位置)に位置付けられたチャックテーブル35上に搬送され載置される。次いで、図示しない吸引手段が作動されて、ウエーハ10がチャックテーブル35に吸引保持される。ここで、チャックテーブル35に搬出入手段50によって搬送されたウエーハ10が載置される際、ウエーハ10は、常に一定の方向に位置付けられる。より具体的に説明すると、本実施形態のレーザー加工装置1では、第1のカセット42から搬送されたウエーハ10の方向が、第1のカセット42に収容されていた状態のまま維持されてチャックテーブル35上に載置される。したがって、チャックテーブル35上に載置された際のウエーハ10のノッチ16は、
図1中矢印Yで示す垂直壁部261が立設された方向に位置付けられる。
【0027】
チャックテーブル35上にウエーハ10を載置し吸引保持したならば、送り手段20を作動して、
図4に示すように、撮像手段6の直下にチャックテーブル35を位置付けて、チャックテーブル35上に吸引保持されたウエーハ10を撮像し、アライメント工程を実施する。アライメント工程を実施するに際しては、支柱33内に収容された図示しない回転駆動手段を作動して、ウエーハ10の結晶方位を所定の方向に位置付けるべく、ウエーハ10を保持したチャックテーブル35をR1で示す方向に180°回転させる。撮像手段6は、制御手段100、及び表示手段8に接続されており、アライメント工程によって、レーザー光線照射手段4の集光器4aによってレーザー光線LBが照射される位置と、ウエーハ10の被加工位置(分割予定ライン14)との位置合わせを行う。
【0028】
上記したようにアライメント工程を実施したならば、該アライメント工程によって得た位置情報に基づいて、
図5の(a)及び(b)に示すように、ウエーハ10の分割予定ライン14の内部にレーザー光線照射手段4の集光点Qを位置付ける。そして、上記したX軸送り手段21を作動することによってチャックテーブル35をX軸方向に加工送りしながら、レーザー光線LBを照射して、分割予定ライン14に沿って改質層18を形成する。所定の分割予定ライン14に沿って改質層18を形成したならば、Y軸送り手段22を作動することによってウエーハ10をY軸方向(割り出し送り方向)に割り出し送りして、未加工の分割予定ライン14に対してレーザー光線LBの照射を実施して改質層18を形成する。このようにして、所定の方向に形成された全ての分割予定ライン14に沿って改質層18を形成する。所定の方向に形成された全ての分割予定ライン14に沿って改質層18を形成したならば、チャックテーブル35を90°回転させて、該所定の方向に直交する未加工の分割予定ライン14をX軸方向に沿うように位置付ける。そして、未加工の分割予定ライン14の内部にレーザー光線照射手段4の集光点Qを位置付けて、X軸送り手段21を作動することによってチャックテーブル35をX軸方向に加工送りしながら、ウエーハ10の内部に分割予定ライン14に沿って改質層18を形成する。このようにして分割予定ライン14に沿って改質層18を形成したならば、Y軸送り手段22を作動することによってY軸方向(割り出し送り方向)に割り出し送りして、未加工の分割予定ライン14に対してレーザー光線LBの照射を実施して改質層18を形成する。上記した加工を繰り返すことにより、所定の方向に形成された全ての分割予定ライン14に沿って改質層18を形成する。
【0029】
上記したように、ウエーハ10の分割予定ライン14に沿ってウエーハ10の内部に改質層18を形成したならば、ウエーハ10を吸引保持しているチャックテーブル35を、
図1に示す搬出入位置に位置付け、チャックテーブル35を図示しない回転駆動手段の作動によって回転させることにより、加工前にウエーハ10をチャックテーブル35上に載置した際の方向に位置付ける。次いで、搬出入手段50を作動して、駆動機構52、アーム基台53、アーム機構54、ロボットハンド55等を作動して、チャックテーブル35上に保持されたウエーハ10を吸着して、第1のカセット42の所定の位置に収容する。
【0030】
なお、本実施形態のレーザー加工条件は、例えば、以下のように設定することができる。
波長 :1342nm
繰り返し周波数 :90kHz
平均出力 :1.2W
送り速度 :700mm/秒
【0031】
ここで、レーザー加工が完了した加工済みのウエーハ10を第1のカセット42に収容する際には、アーム機構54を適宜操作することにより、ウエーハ10に形成されたノッチ16(結晶方位を示すマーク)を、未加工のウエーハ10が第1のカセット42に収容されている際の方向(
図3(a)に示す)とは異なる所定の方向、例えば
図3(b)に示す方向になるように位置付けて第1のカセット42に収容する。なお、
図3(b)では、説明の都合上、レーザー加工により形成された改質層18を点線により示しているが、実際の加工済のウエーハ10では、改質層18を目視により確認することは困難である。また、
図3(b)は、ウエーハ10の中心Pと、ノッチ16を結ぶ方向が、未加工のウエーハ10が収容された際の方向、すなわち第1のカセット42の開口42aの中央を通りY軸方向に延びる中央線C上に対し時計回り方向に45°回転した状態に位置付けられている状態を示している。
【0032】
レーザー加工を終えたウエーハ10を第1のカセット42に収容したならば、第1のカセット42に収容された他の未加工のウエーハ10を順次搬出して、チャックテーブル35上に載置して、上記した手順により、ウエーハ10の内部に改質層18を形成するレーザー加工を実施する。レーザー加工が施された加工済のウエーハ10は、ウエーハ10の中心Pと、ノッチ16を結ぶ方向が、第1のカセット42の開口42aの中央を通りY軸方向に延びる中央線C上に対し時計回り方向に45°回転した方向に位置付けられ、第1のカセット42に収容される。
【0033】
上記したように、第1のカセット42に収容された複数のウエーハ10の全てに対してレーザー加工を施した場合、第1のカセット42に収容された全てのウエーハ10のノッチ16は、
図3(b)に示すように、第1のカセット42の開口42aの中央を通りY軸方向に延びる中央線C上に対し時計回り方向に45°回転した状態に位置付けられていることになる。すなわち、本実施形態によれば、制御手段100は、搬出入手段50によって加工済のウエーハ10をカセット(第1のカセット42、第2のカセット43)に収容する際、ウエーハ10に形成された結晶方位を示すマーク(ノッチ16)を、未加工のウエーハ10がカセット(第1のカセット42、第2のカセット43)に収容されている際の方向とは異なる所定の方向に位置付けてカセットに収容する。これにより、例えば、
図1に示すレーザー加工装置1において、第1のカセット42、又は第2のカセット43のいずれに収容されたウエーハ10が加工済であるのかを、瞬時に判断することが可能であり、確実に加工済のウエーハ10が収容されたカセットを選択することができ、加工済のウエーハ10を再びレーザー加工装置1によって加工してしまうという問題が解消する。
【0034】
さらに、本実施形態のレーザー加工装置1に配設された制御手段100は、搬出入手段50が第1のカセット42、又は第2のカセット43からウエーハ10を搬出し撮像手段6によって撮像したウエーハ6の結晶方位を示すマーク(ノッチ16)が第一の方向を向いている場合は、未加工のウエーハであると判断し、マーク(ノッチ16)が第二の方向を向いている場合は、加工済のウエーハであると判断する判断部110を備えている。当該判断部110について、以下により具体的に説明する。
【0035】
上記したように、本実施形態のレーザー加工装置1は、ウエーハ10に対してレーザー加工を実施するに際し、搬出入手段50を作動させることにより、例えば、第1のカセット42からウエーハ10を搬出して、所定の方向になるように、チャックテーブル35に載置する。チャックテーブル35上に載置されたウエーハ10は、第1のカセット42から搬送されたウエーハ10の方向が、該カセットに収容されていた状態のまま維持されてチャックテーブル35上に載置され、その後、アライメント工程を実施するに際して、支柱33内に収容された図示しない回転駆動手段を作動して、ウエーハ10の結晶方位を所定の方向に位置付けるべく、ウエーハ10を保持したチャックテーブル35をR1で示す方向に180°回転させる。このように回転させられたチャックテーブル35に保持されたウエーハ10を、撮像手段6の直下に位置付ける。
【0036】
撮像手段6の直下に位置付けられたウエーハ10が、仮に未加工である場合、撮像手段6の直下に位置付けられた状態でウエーハ10の全体像を撮像手段6によって撮像すると、
図6(a)に示す状態、すなわち、中心Pから見たノッチ16の方向が、表示画面8上でY軸方向に延びる方向に表示されるヘアラインHに沿う方向(第一の方向)となる。これに基づき、制御手段100が備える判断部110は、この撮像手段6によって撮像される画像を解析し、ノッチ16の方向が、第一の方向であるか否か、より具体的にはヘアラインHに対して許容できる誤差範囲、例えば±5°の範囲内であるか否かを判断する。判断部110が、ノッチ16が該第一の方向を向いていると判断した場合は、搬送されたウエーハ10が未加工であると判断する。ノッチ16の方向が第一の方向であること、すなわち、ウエーハ10が未加工であることが判断された後は、そのまま通常のレーザー加工で実施されるアライメント工程を実施し、上記したレーザー加工を実施する。
【0037】
他方、チャックテーブル35に保持したウエーハ10が仮に加工済であった場合、チャックテーブル35を撮像手段6の直下に位置付け、ウエーハ10の全体像を撮像手段6によって撮像した結果、ウエーハ10の中心Pから見たノッチ16の方向が、表示画面8上でY軸方向に沿って表示されるヘアラインHに対して、時計回り方向に45°回転した方向(第二の方向)であることが検出される。これは、
図3(b)に基づいて説明したように、加工済のウエーハ10をカセットに収容する際に、ウエーハ10のノッチ16の方向を時計回り方向に45°回転した状態で収容したことに起因する。
【0038】
上記したように、撮像手段6の直下に位置付けられたウエーハ10のノッチ16の方向が、第二の方向であるか、より具体的には、ノッチ16の方向が、ヘアラインHに対して許容できる誤差範囲、例えば40~50°の角度範囲にある否かを判断し、判断部110が、ノッチ16が該第二の方向を向いていると判断した場合には、搬送されたウエーハ10が既に加工済であると判断する。チャックテーブル35に保持されたウエーハ10が加工済である場合は、そのままレーザー加工を実施するとデバイス12が損傷するおそれがあるため、加工済のウエーハ10に対してレーザー加工を実施しようとしている旨をオペレータに知らせるべく、種々の警告を発する。該警告は、従来知られた様々な警告方法が採用され得るが、例えば、警告音(ブザー等)を発したり、警告メッセージを表示手段8に表示したり、スピーカーから音声で知らせたり、赤色灯の点滅でエラーを知らせたりする、又はそれらを組み合わせる等の方法が採用され得る。また、この警告を発する際には、レーザー加工がそのまま継続されないように、レーザー加工装置1を緊急停止させる。なお、撮像手段6の直下に位置付けられたウエーハ10のノッチ16の方向が、上記した第一の方向、第二の方向のいずれでもない場合にも警告を発するようにしてもよい。該ノッチの16の方向が上記した第一の方向、第二の方向のいずれでもない場合、搬出入手段50の動作トラブルや、外部からの強い振動(例えば地震等)等があったこと考えられ、オペレータに対して警告を発すると共に、レーザー加工装置1の動作チェックを促すメッセージを表示する。
【0039】
上記したように、制御手段100の判断部110を用いて、撮像手段6により撮像されたウエーハ10が未加工であるか、又は加工済であるかを判断することによっても、加工済のウエーハ10を再びレーザー加工装置によって加工することがなく、先に形成された改質層にレーザー光線が乱反射してデバイスを損傷させるという問題を解消することができる。
【0040】
本発明によれば、上記した実施形態に限定されず、種々の変形例が提供される。上記した実施形態では、未加工、及び加工済のウエーハを収容するカセットが、カセット載置台に2つ載置される例を示したが、本発明はこれに限定されず、1つ、又は3つ以上のカセットが載置されるレーザー加工装置であってもよい。
【0041】
上記した実施形態では、未加工のウエーハ10のノッチ16の方向と、加工済のウエーハ10のノッチ16の方向とが、45°異なるようにカセットに収容するようにしたが、本発明はこれに限定されず、他の角度、例えば30°程度異なるようにしてもよい。ただし、未加工のウエーハ10のノッチ16の方向に対し、加工済のウエーハ10のノッチ16の方向が近い場合は、オペレータが目視により確認する場合の判断が難しくなるため、適度に大きい角度(30°以上)が設けられる方が好ましい。
【0042】
上記した実施形態では、結晶方位を示すマークとして、ノッチ16を示したが、本発明はこれに限定されず、ウエーハの結晶方位を示すためのマークであればいかなるマークであってもよく、例えば、ウエーハの外周部に形成され、結晶方位を示すために設けられた直線部(オリエンテーションフラット)であってもよい。
【0043】
上記した実施形態では、加工済のウエーハ10をカセットに搬送して収容する際に、アーム機構54を適宜作動させることにより、未加工のウエーハ10がカセットに収容されている際の方向とは異なる所定の方向に位置付けるようにしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、加工済のウエーハ10がチャックテーブル35から搬出される際に、チャックテーブル35を予め所定角度(例えば45°)だけ回転させておき、アーム機構54によって、吸着したウエーハ10を、そのままカセットに収容させるようにしても、
図3(b)に示す状態で収容することができる。
【符号の説明】
【0044】
1:レーザー加工装置
2:基台
4:レーザー光線照射手段
4a:集光器
6:撮像手段
10:ウエーハ
16:ノッチ
20:送り手段
21:X軸送り手段
22:Y軸送り手段
26:枠体
261:垂直壁部
262:水平壁部
30:保持手段
31:X軸方向可動板
32:Y軸方向可働板
33:支柱
34:カバーテーブル
35:チャックテーブル
40:カセット載置機構
41、41:カセット載置領域
42:第1のカセット
43:第2のカセット
50:搬出入手段
52:駆動機構
53:アーム基台
54:アーム機構
55:ロボットハンド
100:制御手段
110:判断部