(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-29
(45)【発行日】2023-10-10
(54)【発明の名称】加工装置、及び、ウェーハの加工方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20231002BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20231002BHJP
【FI】
H01L21/78 N
H01L21/78 F
H01L21/78 Q
H01L21/304 611Z
(21)【出願番号】P 2019170167
(22)【出願日】2019-09-19
【審査請求日】2022-07-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100142804
【氏名又は名称】大上 寛
(72)【発明者】
【氏名】杉山 智瑛
(72)【発明者】
【氏名】名嘉眞 惇
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 芳昌
【審査官】宮久保 博幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-016188(JP,A)
【文献】特開2007-266352(JP,A)
【文献】特開2010-087141(JP,A)
【文献】特開2016-219523(JP,A)
【文献】特開2007-019379(JP,A)
【文献】特開2011-018850(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面の交差する複数のストリートで区画された各領域にそれぞれデバイスが形成されたデバイス領域に対応する裏面に凹部が形成されるとともに該凹部を囲繞する外周凸部が形成されたウェーハを準備するウェーハ準備ステップと、
該ウェーハの表面に透明な保護部材を配設する保護部材配設ステップと、
該保護部材を介して該ウェーハの該表面側を
透明材からなる保持部を有した回転可能な保持テーブルで保持する保持ステップと、
該保持テーブルで保持された該ウェーハの該外周凸部に対し
て第一切削ブレードの先端を該凹部の底面に至らない高さに切り込ませて切削し該外周凸部の高さを減ずる第一切削ステップと、
該第一切削ステップを実施した後、下方撮像カメラで該保持部と該保護部材を介して該ウェーハの該表面を撮像してストリートを検出するストリート検出ステップと、
該ストリート検出ステップで検出した該ストリートに沿っ
て第二切削ブレードで該ウェーハを切削する第二切削ステップと、を含
み、
該ウェーハは、第一切削ステップ、ストリート検出ステップ、第二切削ステップの間において該保持テーブルで終始保持される、ウェーハの加工方法。
【請求項2】
請求項1に記載のウェーハの加工方法を実施するための加工装置であって、
表面の交差する複数のストリートで区画された各領域にそれぞれデバイスが形成されたデバイス領域に対応する裏面に凹部が形成されるとともに該凹部を囲繞する外周凸部が形成されたウェーハを加工する加工装置であって、
該ウェーハの該表面側を保持する、透明材からなる保持部を有した回転可能な保持テーブルと、
該保持テーブルで保持された該ウェーハの該表面を該保持部を介して撮像する下方撮像カメラと、
該ウェーハの裏面の該外周凸部を切削して該外周凸部の高さを減ずる第一切削ブレードを有する第一切削ユニットと、該下方撮像カメラで撮像した該ウェーハの該表面の該ストリートに沿って該ウェーハを切削する第二切削ブレードを有する第二切削ユニットと、を備えた切削機構と、
該保持テーブルと該切削機構とを相対移動させる移動機構と、を備えた加工装置。
【請求項3】
該保持テーブルで保持されたウェーハの該裏面を撮像する上方撮像カメラを更に備えた、ことを特徴とする請求項
2に記載の加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、裏面の円形の凹部により外周凸部が形成されるウェーハを加工する加工装置、及び加工装置を用いた加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハの加工工程において、薄化されたウェーハの裏面に金属膜を成膜する工程では、ウェーハの強度不足によりウェーハ破損が生じることが懸念される。
【0003】
このウェーハ破損を防ぐため、ウェーハの裏面を研削する際に外周余剰領域は研削せずに、元の厚みのままで残存させて外周凸部を形成し、外周凸部にて補強部を構成する技術が知られている。
【0004】
そして、金属膜を成膜した後に個々のチップへとダイシングする際には、ウェーハの表面を上にした状態で切削する必要があるため、外周凸部に囲まれた円形の凹部の形状に対応する保持テーブルが利用されるものであり、例えば、特許文献1では、円形の凹部に嵌合する円盤状ポーラス吸着部を備えた所謂凸型の保持テーブルについて開示している。
【0005】
他方、特許文献2では、ウェーハの裏面のうちデバイス領域に相当する領域の研削により円形の凹部を形成して外周凸部を形成し、裏面研削後のウェーハのデバイス領域または裏面に追加加工を施した後に、追加加工後のウェーハの外周凸部を除去する技術について開示がされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2010-016146号公報
【文献】特開2007-019379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、補強部である外周凸部の幅はウェーハのパターン(チップサイズやデバイス領域のサイズ)等によって異なるものである。このため、特許文献1に開示されるような凸型の保持テーブルによる構成では、各ウェーハの幅の異なる外周凸部に対応する保持テーブルを製作する必要が生じるとともに、その管理負担も生じ、煩雑なものとなる。また、加工の際に交換する手間が生じ、これにより、装置の稼働時間も削減されてしまうことになる。
【0008】
凸型の保持テーブルを用いない方法として、ウェーハの裏面を上にして露出させた状態でウェーハの切削することが考えられるが、ウェーハの裏面に金属膜が成膜されているとIRカメラで表面側が撮像できないため、ストリートが検出できず、アライメントができないという問題がある。
【0009】
以上を踏まえ、外周凸部の上端を成膜せずに、この領域をIRカメラで撮像してストリートを検出することも考えられるが、外周部分はパターン精度が低く、高精度のアライメントをすることが難しいことになり、この方法も採用することは難しい。
【0010】
他方、特許文献2のように、外周凸部を除去してウェーハの裏面を平坦にした後、ウェーハの表面を上にしてダイシングすることが考えられる。これによれば、凸型の保持テーブルを用いる必要がない。
【0011】
この場合、ウェーハの表面を露出して加工するために、ウェーハの裏面にテープを貼着する作業が必要となるが、薄化されたウェーハの補強部である外周凸部が除去されることでウェーハの強度が弱くなっているため、テープを貼着する作業の際にウェーハを破損してしまうおそれがある。
【0012】
本発明は、以上の問題に鑑み、裏面に円形の凹部と外周凸部が形成されるウェーハにおいて、保持テーブルからウェーハを取り外すことなくウェーハの個片化を可能とする技術を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様によれば、
表面の交差する複数のストリートで区画された各領域にそれぞれデバイスが形成されたデバイス領域に対応する裏面に凹部が形成されるとともに該凹部を囲繞する外周凸部が形成されたウェーハを加工する加工装置であって、
該ウェーハの該表面側を保持する、透明材からなる保持部を有した回転可能な保持テーブルと、
該保持テーブルで保持された該ウェーハの該表面を該保持部を介して撮像する下方撮像カメラと、
該ウェーハの裏面の該外周凸部を切削して該外周凸部の高さを減ずる第一切削ブレードを有する第一切削ユニットと、該下方撮像カメラで撮像した該ウェーハの該表面の該ストリートに沿って該ウェーハを切削する第二切削ブレードを有する第二切削ユニットと、を備えた切削機構と、
該保持テーブルと該切削機構とを相対移動させる移動機構と、を備えた加工装置とする。
【0014】
また、本発明の一態様によれば、
該保持テーブルで保持されたウェーハの該裏面を撮像する上方撮像カメラを更に備えたこととする。
【0015】
また、本発明の一態様によれば、
ウェーハの加工方法であって、
表面の交差する複数のストリートで区画された各領域にそれぞれデバイスが形成されたデバイス領域に対応する裏面に凹部が形成されるとともに該凹部を囲繞する外周凸部が形成されたウェーハを準備するウェーハ準備ステップと、
該ウェーハの表面に透明な保護部材を配設する保護部材配設ステップと、
該保護部材を介して該ウェーハの該表面側を該保持テーブルで保持する保持ステップと、
該保持テーブルで保持された該ウェーハの該外周凸部に対して該第一切削ブレードの先端を該凹部の底面に至らない高さに切り込ませて切削し該外周凸部の高さを減ずる第一切削ステップと、
該第一切削ステップを実施した後、該下方撮像カメラで該保持部と該保護部材を介して該ウェーハの該表面を撮像してストリートを検出するストリート検出ステップと、
該ストリート検出ステップで検出した該ストリートに沿って該第二切削ブレードで該ウェーハを切削する第二切削ステップと、を含むウェーハの加工方法とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の構成によれば、裏面に円形の凹部と外周凸部が形成されるウェーハにおいて、保持テーブルからウェーハを取り外すことなくウェーハの個片化が可能となり、保持テーブルからウェーハを取り外して取り扱う際に生じるウェーハの破損の恐れを防ぐことができる。
【0017】
また、外周凸部が第一切削ブレードにより加工され、外周凸部の部分の厚みが薄くなっているため、第二切削ブレードの刃先出し量を過度に多く設定する必要がなく、適正な刃先出し量で切削が可能となる。これにより、切削ブレードの割れや、ブレの発生などの不具合の発生を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明第一実施形態の加工装置の略斜視図である。
【
図2】支持ボックス及び保持テーブル部分の分解斜視図である。
【
図3】(A)支持ボックス上に搭載された保持テーブルの斜視図である。(B)は下方撮像カメラ及びその支持構造の斜視図である。
【
図4】保持テーブルと下方撮像カメラの位置関係について説明する図である。
【
図5】(A)は被加工物の一例であるウェーハの表面について説明する図である。(B)はウェーハの裏面について説明する図である。
【
図6】(A)は保護部材の貼着について説明する図である。(B)はウェーハユニットについて説明する図である。
【
図7】(A)は第一切削ブレードにて外周凸部を取り除く第一切削ステップについて説明する図である。(B)は外周凸部を取り除いた状態について示す図である。
【
図8】(A)は保持パッドを介してウェーハの表面を撮像することについて説明する図である。(B)は第二切削ユニットによる切削加工について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る加工装置2の斜視図である。加工装置2は2つの切削ブレードが対向して配設されたフェイシングデュアルスピンドルタイプの切削装置として構成される。
【0020】
加工装置2の基台4には、保持テーブル27が移動機構12(
図3(A))によりX軸方向に往復動可能に配設されている。保持テーブル27の周囲にはウォーターカバー14が配設されており、このウォーターカバー14と基台4にわたり蛇腹16が連結されている。
【0021】
基台4の前側角部には、後述する被加工物を収容するカセット20を載置するためのカセット載置台21が設けられる。
【0022】
基台4上には門型形状のコラム24が立設されており、コラム24にはY軸方向に伸長する一対のガイドレール26が固定されている。コラム24には第一Y軸移動ブロック28が、ボールねじ30とパルスモータ(不図示)とからなる第一Y軸移動機構34によりガイドレール26に案内されてY軸方向に移動可能に搭載されている。
【0023】
第一Y軸移動ブロック28にはZ軸方向に伸長する一対のガイドレール36が固定されている。第一Y軸移動ブロック28上には、第一Z軸移動ブロック38がボールねじ40とパルスモータ42とからなる第一Z軸移動機構44によりガイドレール36に案内されてZ軸方向に移動可能に搭載されている。
【0024】
第一Z軸移動ブロック38には第一切削ユニット46及び上方撮像カメラ52が取り付けられている。第一切削ユニット46は、
図7(A)に示すように、モータ(不図示)により回転駆動されるスピンドル48の先端部に第一切削ブレード50を着脱可能に装着して構成されている。
【0025】
門型形状のコラム24には更に、第二Y軸移動ブロック28aがボールねじ30aとパルスモータ32aとからなる第二Y軸移動機構34aによりガイドレール26に案内されてY軸方向に移動可能に搭載されている。
【0026】
第二Y軸移動ブロック28aにはZ軸方向に伸長する一対のガイドレール36aが固定されている。第二Y軸移動ブロック28a上には、第二Z軸移動ブロック38aがボールねじ40a及びパルスモータ42aからなる第二Z軸移動機構44aによりガイドレール36aに案内されてZ軸方向に移動可能に搭載されている。
【0027】
第二Z軸移動ブロック38aには第二切削ユニット46aが取り付けられている。第二切削ユニット46aは、モータ(不図示)により回転駆動されるスピンドルの先端部に第二切削ブレードが着脱可能に装着されて構成されている。
【0028】
基台4上には、スピンナーテーブル56を有するスピンナー洗浄ユニット54が設けられており、切削加工後の被加工物をスピンナーテーブル56で吸引保持してスピンナー洗浄し、洗浄後更にスピン乾燥するものである。
【0029】
図2は、保持テーブル27の構成について説明する図である。
保持テーブル27は環状支持部材62と、円盤状の保持パッド74とを有する。環状支持部材62は、嵌合凸部64と、嵌合凸部64より大径のベルト巻回部66と、嵌合凸部64と略同一径の環状収容部68と、軸方向に貫通する貫通部65と、貫通部65を形成する内周面65aと、を有する。
【0030】
環状収容部68は保持パッド74の外形と略同一の内径を有しており、環状収容部68の内側底部には保持パッド74を支持する環状支持部70が形成されている。
【0031】
保持パッド74は、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、サファイア、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、フッ化マグネシウム等の透明物質から形成されており、その表面の保持部74aには、多数の細孔76が開口されている。なお、透明物質の「透明」とは、「可視光の少なくとも一部の波長の光を透過し、吸収、散乱しない」ことをいうものであり、後述する外周凸部検出ステップや、ストリート検出ステップの実行を可能とするものであればよく、着色されたものであってもよい。また、細孔76の配置については、特に
図2に示されるように円周上に配置されるものに限定されず、例えば、保持部74aの全面に配置されるものであってもよい。
【0032】
各細孔76は保持パッド74の内部に形設した吸引溝78a(
図4)に連通しており、環状支持部材62の環状支持部70には保持パッド74の吸引溝78a(
図4)に連通する連通路72が形成されている。連通路72は吸引源80に接続されている。
【0033】
保持パッド74を環状支持部材62の環状支持部70上に搭載し、環状支持部材62の嵌合凸部64を支持ボックス15の円形開口15a中に嵌合すると、
図3(A)に示すように保持テーブル27が支持ボックス15に回転可能に搭載された状態となる。
【0034】
支持ボックス15の連結板15bにはモータ17が取り付けられており、モータ17の出力軸に連結されたプーリー17aと環状支持部材62のベルト巻回部66に渡りベルト29が巻回されている。モータ17を駆動すると、ベルト29を介して保持テーブル27が回転される。
【0035】
モータ17は例えばパルスモータから構成され、アライメント遂行時にモータ17を所定パルスで駆動すると、保持テーブル27が所定量回転(θ回転)されて、
図5(A)示すウェーハ10のストリート(分割予定ライン)13のアライメントを行うことができる。
【0036】
支持ボックス15の上板15cには、複数(本実施形態では4個)のフレーム支持台15dが形成されており、これらのフレーム支持台15dの上面で後述する環状フレームを支持する。
【0037】
図3(A)に示すように、支持ボックス15は、X軸方向に固定的に延在する一対のガイドレール31にスライド可能に載置されており、移動機構23によりX軸方向に移動される。移動機構23は、ガイドレール31の間に平行に配置されるボールネジ23aと、パルスモータ23bを有して構成される。
【0038】
図3(A)に示すように、ボールネジ23aは支持ボックス15の下板15eの下面に設けた雌ネジ部に螺合され、パルスモータ23bを駆動してボールネジ23aを回転させることで、支持ボックス15がX軸方向に移動する。
【0039】
図3(A)に示すように、保持テーブル27の支持ボックス15の近傍には、保持テーブル27に保持された半導体ウェーハ等の被加工物を保持パッド74の下側から撮像する下方撮像カメラ82が設けられている。
【0040】
図3(A)に示すように、下方撮像カメラ82は、Y軸移動ブロック83に立設されるコラム96に設けられる。Y軸移動ブロック83は、Y軸方向に固定的に延在する一対のガイドレール81にスライド可能に載置されており、駆動手段85によりY軸方向に移動される。駆動手段85は、ガイドレール81の間に平行に配置されるボールネジ85aと、パルスモータ85bを有して構成される。
【0041】
図3(A)に示すように、ボールネジ85aはY軸移動ブロック83の下面に設けた雌ネジ部に螺合され、パルスモータ85bを駆動してボールネジ85aを回転させることで、Y軸移動ブロック83がY軸方向に移動する。
【0042】
図3(B)に示すように、下方撮像カメラ82は低倍率カメラ86及び高倍率カメラ88を有するカメラユニット84を有する。カメラユニット84の側面にはカメラユニット84での撮像時に撮像箇所を照明するための2個の照明装置90,92が取り付けられる。
【0043】
図3(B)に示すように、カメラユニット84は支持プレート94により支持され、支持プレート94の基端部はZ軸移動ブロック98に固定されている。Y軸移動ブロック83に立設されるコラム96には、ボールねじ100及びパルスモータ102から構成されるZ軸移動手段104により、下方撮像カメラ82を構成するカメラユニット84は一対のガイドレール106に沿ってZ軸方向(上下方向)に移動される。
【0044】
図4に示すように、支持ボックス15は、上板15c、下板15e、及び、連結板15bにて側面視において略コ字をなしており、連結板15bの反対側には、上板15cと下板15eの間の空間に下方撮像カメラ82の進入を可能とする開口部15gが形成される。
【0045】
次に、以上の装置構成を用いた加工方法の例について説明する。
<ウェーハ準備ステップ>
まず、
図5(A)(B)に示される被加工物の一例であるウェーハ10を準備する。
【0046】
図5(A)はウェーハ10の表面10aを示すものであり、デバイス11が格子状に配列され、ストリート13に沿って切削加工などの分割加工が施されることにより、チップに分割されるものである。
【0047】
図5(B)はウェーハ10の裏面10bを示すものであり、円盤状のウェーハ10と同心上の円形の凹部18と、凹部18の周囲を取り囲むように外周凸部19が形設されている。凹部18は、表面10aにおいてデバイス11が形成されるデバイス領域に対応する部分に構成される。なお、凹部18や外周凸部19には、その表面に金属膜が形成されている場合がある。
【0048】
<保護部材配設ステップ>
以上のウェーハ10について、
図6(A)に示すように、ウェーハ10の表面10a側にデバイスを保護する保護部材として透明のテープTを貼着するとともに、
図6(B)に示すように、テープTを介して環状フレームFに貼着させ、ウェーハユニット8を構成する。なお、ここで言うテープTの「透明」とは、「可視光の少なくとも一部の波長の光を透過し、吸収、散乱しない」ことをいうものであり、後述する外周凸部検出ステップや、ストリート検出ステップの実行を可能とするものであればよく、着色されたものであってもよい。また、保護部材としては、伸縮性のある樹脂製のテープのほか、ハードプレート(ガラスや樹脂等)であってもよい。
【0049】
テープTは、例えば、10~200μmの厚みを有する塩化ビニール、ポリエチレンテレフタレート(PET)、又はポリイミド(PI)等の基材とアクリルやゴム系の糊層とで構成される。
【0050】
<保持ステップ>
次いで、
図4に示すように、ウェーハユニット8を保持テーブル27の上に配置し、ウェーハ10をテープTを介して保持テーブル27にて保持する状態とする。具体的には、ウェーハユニット8のテープTが保持テーブル27の保持パッド74上に載置し、吸引源80による吸引を開始して、細孔76を通じてテープTの裏面側を吸引保持する。また、この際ウェーハユニット8の環状フレームFは、フレーム支持台15dに載置される。
【0051】
<外周凸部検出ステップ>
次いで、
図4に示すように、上方撮像カメラ52により、ウェーハ10の外周凸部19の位置を検出する。具体的には、上方撮像カメラ52で撮像した画像を画像解析し、外周凸部19の外周縁の位置、すなわちウェーハの外周縁の位置を検出する。また、外周凸部19の幅W(ウェーハ10の半径方向の幅)やウェーハ径は、ウェーハの種類毎にウェーハ10の属性情報として予め加工装置側で認識されている。
【0052】
なお、このように上方撮像カメラ52(
図4)の撮像画像により外周凸部19の外周縁の位置を検出する代わりに、下方撮像カメラ82で下側からウェーハ10を撮像し、撮像した画像を画像解析することで、外周凸部19の外周縁(ウェーハの外周縁)の位置を検出することとしてもよい。これによれば、上方撮像カメラ52(
図4)による撮像を省略することや、装置構成によっては、上方撮像カメラ52(
図4)の設置を省略することができる。
【0053】
<第一切削ステップ>
次いで、
図7(A)に示すように、第一切削ユニット46の第一切削ブレード50を外周凸部19に位置づけるとともに、第一切削ブレード50を外周凸部19に切り込ませることで、外周凸部19を切削により取り除く。
【0054】
より具体的には、外周凸部19の上方に位置づけた第一切削ブレード50を第一の所定高さまで下降して切り込ませるとともに、保持テーブル27を回転させることで、外周凸部19を切削により取り除く。保持テーブル27の回転は、
図3(A)に示すように、モータ17を駆動してベルト29を介して保持テーブル27を回転させることにより行なわれる。第一切削ブレード50と保持テーブル27(外周凸部19)の位置合わせは、上述した外周凸部検出ステップにより求められたウェーハ10の外周凸部19の外周縁(ウェーハの外周縁)の座標を利用することで行うことができる。
【0055】
ここで、「第一の所定高さ」とは、第一切削ブレード50がデバイス領域の裏面10b(
図7(A))の例では金属膜18a)に到達しない高さであり、ウェーハ10の厚みや、凹部18の深さに基づいて規定されるものである。
【0056】
以上のように外周凸部19が取り除かれることで、
図7(B)に示すような状態となる。なお、
図7(A)(B)に示すウェーハ10においては、凹部18の範囲に金属膜18aが形成されているが、金属膜18aが形成されていないウェーハ10についても、本願発明は適用できるものである。
【0057】
また、以上のように外周凸部19と第一切削ブレード50の位置合わせを厳密に行って切削により取り除くことに代えて、次のように実施をしてもよい。まず、第一切削ブレード50を上述した第一の所定高さに位置づける。次いで、保持テーブル27のX軸方向移動(
図1)と第一切削ブレード50のY軸方向(
図1)のインデックス送りを繰り返し、ウェーハ10の全範囲をカバーするようにウェーハ10と第一切削ブレード50
を相対移動させる。これにより、ウェーハ10の全範囲の外周凸部19を取り除くことができる。
【0058】
また、保持テーブル27が360度回転可能な構成において、外周凸部検出ステップを実施せず、ウェーハ10の直径と保持テーブル27の中心位置をもとに第一切削ブレード50をウェーハ10の外周縁に位置付け、保持テーブル27を360度の範囲で回転させることで第1切削ステップを実施することとしてもよい。
【0059】
さらに、保持テーブル27が180度回転可能とする構成において、外周凸部検出ステップを実施せず、ウェーハ10の直径と保持テーブル27の中心位置をもとに第一切削ブレード50をウェーハ10の外周縁の一端側に位置付け、保持テーブル27を時計回りに180度の範囲で回転させてウェーハ10の180度の範囲の外周凸部19を取り除いた後、第一切削ブレード50をウェーハ10の中心を挟んで該一端側と対面する他端側に位置付け、保持テーブル27を反時計回りに180度の範囲で回転させて、残りの外周凸部19を取り除くことで、第1切削ステップを実施することとしてもよい。
【0060】
以上のような形態では、上方撮像カメラ52、或いは、下方撮像カメラ82による外周凸部19の外周縁を検出するための撮像を省略することができ、外周凸部検出ステップを省略できる。
【0061】
<ストリート検出ステップ>
次いで、
図4及び
図8(A)に示すように、Y軸移動ブロック83を移動させることで、下方撮像カメラ82をウェーハ10の下方に位置づけ、保持テーブル27の保持パッド74、テープTを介して、ウェーハ10の表面10a(
図8(A)において下側の面)を撮像し、ウェーハ10のストリート13(
図5(A))の検出がされる。
【0062】
<第二切削ステップ>
次いで、
図8(B)に示すように、検出されたストリート13(
図5(A))に沿って、第二切削ユニット46aの第二切削ブレード50aによる切削加工が行われる。
【0063】
この切削加工を行う前には、アライメントが実施される。即ち、
図3(A)に示すように、モータ17を駆動してベルト29を介して保持テーブル27を回転させて角度変更し、ストリート13(
図5(A))がX軸方向、或いは、Y軸方向と平行になるようにするとともに、第二切削ユニット46aをY軸方向に移動させることで、ストリート13(
図5(A))と第二切削ユニット46aの第二切削ブレード50aの位置を一致させる。
【0064】
アライメントを実施した後に、第二切削ユニット46aの第二切削ブレード50aを先端がウェーハに切り込む第二の所定の高さに位置づけつつ、保持テーブル27をX軸方向(
図1)に加工送りし、第二切削ユニット46aをY軸方向(
図1)にインデックス送りして、第一の方向に伸びる全てのストリート13について第二切削ブレード50aによる切削加工を行う。次いで、保持テーブル27を90度回転させ、同様に第一の方向に伸びる全てのストリート13について第二切削ブレード50aにて切削加工を行う。第2の所定の高さを、保護部材にブレードの先端が切り込む高さに設定することで、ウェーハ10がチップに分割される。
【0065】
この第二切削ステップにおいては、
図7(B)に示すように、外周凸部19が第一切削ブレード50により加工され、外周凸部19の部分の厚みが薄くなっているため、第二切削ブレード50aの刃先出し量を過度に多く設定する必要がなく、適正な刃先出し量で切削が可能となる。即ち、仮に、外周凸部19が存在する場合には、外周凸部19を切削しつつ刃先をウェーハ10の表面側まで到達する必要があり、刃先出し量は多く設定する必要があり、切削ブレードの割れや、ブレの発生などの不具合が懸念されるが、このような不具合の発生を回避することが可能となる。また、刃先出し量が少なく済むことで、より薄い切削ブレードを選択することが可能となり、これにより、より精密な切削加工を実現することが可能となる。
【0066】
なお、第二切削ステップにおいては、ウェーハ10の厚み方向においてウェーハ10の貫通させるように切削するフルカットを行うこととするほか、ウェーハ10の厚み方向において途中の位置まで切削するハーフカットを行うこととしてもよい。
【0067】
以上のようにして本発明を実現することができる。
即ち、
図1乃至
図8に示すように、
表面10aの交差する複数のストリート13で区画された各領域にそれぞれデバイス11が形成されたデバイス領域に対応する裏面10bに凹部18が形成されるとともに凹部18を囲繞する外周凸部19が形成されたウェーハ10を加工する加工装置であって、
ウェーハ10の表面10a側を保持する、透明材からなる保持部74aを有した回転可能な保持テーブル27と、
保持テーブル27で保持されたウェーハ10の表面10aを保持部74aを介して撮像する下方撮像カメラ82と、
ウェーハ10の裏面10bの外周凸部19を切削して外周凸部19の高さを減ずる第一切削ブレード50を有する第一切削ユニット46と、下方撮像カメラ82で撮像したウェーハ10の表面10aのストリート13に沿ってウェーハ10を切削する第二切削ブレード50aを有する第二切削ユニット46aと、を備えた切削機構(第一切削ユニット46,第二切削ユニット46a)と、
保持テーブル27と切削機構とを相対移動させる移動機構23と、を備えた加工装置2、とするものである。
【0068】
これにより、裏面10bに円形の凹部18と外周凸部19が形成されるウェーハ10において、保持テーブル27からウェーハを取り外すことなくウェーハ10の個片化が可能となり、保持テーブル27からウェーハ10を取り外して取り扱う際に生じるウェーハ10の破損の恐れを防ぐことができる。
【0069】
また、外周凸部19が第一切削ブレード50により加工され、外周凸部19の部分の厚みが薄くなっているため、第二切削ブレード50aの刃先出し量を過度に多く設定する必要がなく、適正な刃先出し量で切削が可能となる。これにより、切削ブレードの割れや、ブレの発生などの不具合の発生を抑えることができる。
【0070】
また、
図4に示すように、保持テーブル27で保持されたウェーハ10の裏面10bを撮像する上方撮像カメラ52を更に備えることとするものである。
【0071】
これにより、外周凸部19の位置を検出することが可能となり、第一切削ブレード50の位置を外周凸部19に合わせて外周凸部19の加工を行うことが可能となる。
【0072】
また、即ち、
図1乃至
図8に示すように、
表面10aの交差する複数のストリート13で区画された各領域にそれぞれデバイス11が形成されたデバイス領域に対応する裏面10bに凹部18が形成されるとともに凹部18を囲繞する外周凸部19が形成されたウェーハ10を準備するウェーハ10準備ステップと、
ウェーハ10の表面10aに透明な保護部材(テープT)を配設する保護部材配設ステップと、
保護部材を介してウェーハ10の表面10a側を保持テーブル27で保持する保持ステップと、
保持テーブル27で保持されたウェーハ10の外周凸部19に対して第一切削ブレード50の先端を凹部18の底面に至らない高さに切り込ませて切削し外周凸部19の高さを減ずる第一切削ステップと、
第一切削ステップを実施した後、下方撮像カメラ82で保持部74aと保護部材を介してウェーハ10の表面10aを撮像してストリート13を検出するストリート検出ステップと、
ストリート検出ステップで検出したストリート13に沿って第二切削ブレード50aでウェーハ10を切削する第二切削ステップと、を含む加工方法とするものである。
【0073】
これにより、裏面10bに円形の凹部18と外周凸部19が形成されるウェーハ10において、保持テーブル27からウェーハを取り外すことなくウェーハ10の個片化が可能となり、保持テーブル27からウェーハ10を取り外して取り扱う際に生じるウェーハ10の破損の恐れを防ぐことができる。
【符号の説明】
【0074】
2 加工装置
10 ウェーハ
10a 表面
10b 裏面
11 デバイス
13 ストリート
18 凹部
18a 金属膜
19 外周凸部
23 移動機構
27 保持テーブル
46 第一切削ユニット
46a 第二切削ユニット
50 第一切削ブレード
50a 第二切削ブレード
52 上方撮像カメラ
74 保持パッド
74b 保持部
82 下方撮像カメラ
T テープ