(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-29
(45)【発行日】2023-10-10
(54)【発明の名称】シリコーン粘着剤用プライマー組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 183/06 20060101AFI20231002BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20231002BHJP
C09D 183/05 20060101ALI20231002BHJP
C09D 7/20 20180101ALI20231002BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20231002BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20231002BHJP
C09J 183/04 20060101ALI20231002BHJP
C09J 183/05 20060101ALI20231002BHJP
C09J 183/07 20060101ALI20231002BHJP
C09D 4/00 20060101ALI20231002BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20231002BHJP
C09J 7/50 20180101ALI20231002BHJP
【FI】
C09D183/06
C09D5/00 D
C09D183/05
C09D7/20
C09J7/38
C09D7/61
C09J183/04
C09J183/05
C09J183/07
C09D4/00
C09D7/63
C09J7/50
(21)【出願番号】P 2019184908
(22)【出願日】2019-10-08
【審査請求日】2021-10-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【氏名又は名称】小林 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】土田 理
【審査官】川嶋 宏毅
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-208923(JP,A)
【文献】特開2013-112686(JP,A)
【文献】特開昭52-029831(JP,A)
【文献】特開平03-028283(JP,A)
【文献】特公平01-038149(JP,B2)
【文献】特開平07-003215(JP,A)
【文献】特開昭60-115661(JP,A)
【文献】特開2013-139509(JP,A)
【文献】特開2012-149240(JP,A)
【文献】特表2006-506497(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 5/00,183/00
C09J 5/00,183/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記平均組成式(1)で表されるオルガノポリシロキサンを100質量部、
【化1】
(式中、R
1は同一又は異なっていてもよい炭素数1~10の脂肪族不飽和結合を有さない非置換もしくは置換の1価炭化水素基であり、100<a<10,000である。)
(B)1分子中に少なくとも3個のSi-H基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンを1~20質量部、
(C)ビニル基を含むケイ素化合物を50~300質量部、及び
(D)ルイス酸触媒を0.1~10質量部
を含
み、
前記(C)成分が下記一般式(2)
R
2
b
-Si-(OR
3
)
4-b
(2)
(式中、R
2
は独立にビニル基であり、R
3
は独立に炭素数1~5のアルキル基であり、bは1,2又は3である。)
で表されるケイ素化合物であることを特徴とするシリコーン粘着剤用プライマー組成物。
【請求項2】
さらに(E)有機溶剤を前記(A)成分100質量部に対し、0~10,000質量部含むものであることを特徴とする請求項1に記載のシリコーン粘着剤用プライマー組成物。
【請求項3】
前記(D)成分が金属触媒であることを特徴とする請求項1
又は請求項
2に記載のシリコーン粘着剤用プライマー組成物。
【請求項4】
請求項1から請求項
3のうちのいずれか1項に記載のシリコーン粘着剤用プライマー組成物の硬化物を基材の少なくとも片面に有するものであることを特徴とする物品。
【請求項5】
請求項
4に記載の物品の前記硬化物を有する面上にシリコーン粘着剤の硬化物を有するものであることを特徴とする粘着性物品。
【請求項6】
前記シリコーン粘着剤がヒドロシリル化硬化型粘着剤であることを特徴とする請求項
5に記載の粘着性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコーン粘着剤用のプライマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
粘着ラベルや粘着テープは、基材に粘着剤を塗工させた後に硬化させて使用するものであり、産業上の様々な場面で使用されている。基材としては、紙やプラスチックフィルムなどが用いられており、紙基材の粘着ラベルなどは、店頭の商品の識別などには必要不可欠であり、日常生活のあらゆる場面で見ることができる。
【0003】
一方、プラスチックフィルムを基材として用いるものとしては、セロハンテープなどの汎用的なものも存在するが、高耐熱フィルムを基材とする耐熱性テープなど、より条件の厳しい環境で使用される高機能なテープ類なども例として挙げられる。
【0004】
粘着剤の素材についてみると、ゴム系、アクリル系、シリコーン系などがあるが、これらの中ではシリコーン系のものが最も耐久性が優れていると考えられている。具体的には、耐熱性、耐寒性、耐候性、耐薬品性及び電気絶縁性などが良好であり、これらの特性が必要なケースではシリコーン粘着剤を用いる。他の有機系粘着剤と比較すると高価であるが、それらの性能では対応できない産業用の高機能粘着製品の材料として使用される。
【0005】
また、シリコーンは、その素材の構造上、表面への濡れ性に非常に優れており、貼り付けた際に気泡を巻き込みにくいという特長も有する。この特長を活かし、最近では携帯電話などのディスプレイを保護する粘着フィルム用の粘着剤として使用されている。また、タッチパネル構造のスマートフォンやタブレット端末などは、指が直接画面に接触することで汚れやすいということがあるため、防汚性コーティングされたフィルムを画面に貼り付けることが普及しており、使用量は増加している。
【0006】
このような理由から、シリコーン粘着剤は、プラスチックフィルムを基材として使用されることが多い。しかし、プラスチックフィルムは紙基材と比較して、塗工する樹脂との密着性が悪いことが指摘されている。密着性が悪いと、ロールで巻き取った際に裏移りしたり、被着体に貼り付けて時間が経過してから剥がす際に被着体に粘着層が移行してしまうなどの問題が発生することがある。
【0007】
以前より、この密着性の改善のために様々な対策がとられており、接着性の良い基材を使用する、基材をコロナ処理するなどの方法がある。また、プライマー処理も広く行われている方法であり、シリコーン粘着剤用のプライマー組成物についても開発が進められている。
【0008】
プライマー組成物については、シリコーンをベースとし、加熱により硬化膜を形成するタイプの材料が以前から提案されており、シラノール基を有するベース材料を用いた縮合型のタイプや、アルケニル基を有するベースとヒドロシリル基含有シロキサンとのヒドロシリル化で硬化させるタイプが提案されている(特許文献1~4)。
【0009】
しかし、縮合型のプライマーはシリコーン粘着剤が付加型の場合、一部の組成においてプライマー効果を十分に発揮できないケースがあることが課題のひとつとなっている。一方、付加型のプライマーは硬化性が悪いため、プライマー処理した基材を巻き取ると背面にシリコーンが移行するという問題があり、いずれのタイプにしても改良の余地が多分にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特公昭54-44017号公報
【文献】特公平06-39584号公報
【文献】特公昭60-11950号公報
【文献】特許第5117713号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、シリコーン粘着剤と基材との密着性を向上させることができるプライマー組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明では、
(A)下記平均組成式(1)で表されるオルガノポリシロキサンを100質量部、
【化1】
(式中、R
1は同一又は異なっていてもよい炭素数1~10の脂肪族不飽和結合を有さない非置換もしくは置換の1価炭化水素基であり、100<a<10,000である。)
(B)1分子中に少なくとも3個のSi-H基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンを1~20質量部、
(C)アルケニル基含有有機基を含むケイ素化合物を50~300質量部、及び
(D)ルイス酸触媒を0.1~10質量部
を含むものであることを特徴とするシリコーン粘着剤用プライマー組成物を提供する。
【0013】
このような本発明のシリコーン粘着剤用プライマー組成物であれば、シリコーン粘着剤と基材との密着性を向上させることができる。
【0014】
上記シリコーン粘着剤用プライマー組成物は、さらに(E)有機溶剤を前記(A)成分100質量部に対し、0~10,000質量部含むものであることができる。
【0015】
このようなシリコーン粘着剤用プライマー組成物であれば、作業性を向上させる、あるいは基材へ塗工したときの濡れ性を改善することができる。
【0016】
また、上記シリコーン粘着剤用プライマー組成物は、前記(C)成分が下記一般式(2)で表されるケイ素化合物であることが好ましい。
R2
b-Si-(OR3)4-b (2)
(式中、R2は独立にアルケニル基含有有機基であり、R3は独立に炭素数1~5のアルキル基であり、bは1,2又は3である。)
【0017】
このようなシリコーン粘着剤用プライマー組成物であれば、シリコーン粘着剤と基材との密着性を更に向上させることができる。
【0018】
また、上記シリコーン粘着剤用プライマー組成物は、前記(D)成分が金属触媒であることができる。
【0019】
このような(D)成分であれば、シリコーン粘着剤用プライマー組成物を良好に硬化させることができる。
【0020】
また、本発明は、上記シリコーン粘着剤用プライマー組成物の硬化物を基材の少なくとも片面に有する物品を提供する。
【0021】
このような物品であれば、シリコーン粘着剤と基材との密着性が向上したものとなる。
【0022】
また、本発明は、上記物品の前記硬化物を有する面(プライマー処理面)上にシリコーン粘着剤の硬化物を有する粘着性物品を提供する。
【0023】
このような粘着性物品であれば、シリコーン粘着剤と基材との密着性が向上したものとなる。
【0024】
この場合、前記シリコーン粘着剤がヒドロシリル化硬化型粘着剤であることが好ましい。
【0025】
このようなシリコーン粘着剤は、シリコーン粘着剤と基材との密着性がより好ましいものとなる。
【発明の効果】
【0026】
以上のように、本発明のシリコーン粘着剤用プライマー組成物を用いることによって、基材との密着性が良好なシリコーン粘着剤を用いた粘着性物品を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、縮合型のプライマー組成物中にアルケニル基を有するケイ素材料を添加することにより、これまでの縮合型のプライマー組成物では困難であった付加型のシリコーン粘着剤の一部組成において、基材密着性を大幅に改善できることを見出し、本発明をなすに至った。
【0028】
即ち、本発明は、(A)下記平均組成式(1)で表されるオルガノポリシロキサンを100質量部、(B)1分子中に少なくとも3個のSi-H基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンを1~20質量部、(C)アルケニル基含有有機基を含むケイ素化合物を50~300質量部、及び(D)ルイス酸触媒を0.1~10質量部を含むものであることを特徴とするシリコーン粘着剤用プライマー組成物である。
【化2】
(式中、R
1は同一又は異なっていてもよい炭素数1~10の脂肪族不飽和結合を有さない非置換もしくは置換の1価炭化水素基であり、100<a<10,000である。)
【0029】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0030】
[シリコーン粘着剤用プライマー組成物]
本発明のシリコーン粘着剤用プライマー組成物は、(A)特定のオルガノポリシロキサンを100質量部、(B)1分子中に少なくとも3個のSi-H基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンを1~20質量部、(C)アルケニル基含有有機基を含むケイ素化合物を50~300質量部、及び(D)ルイス酸触媒を0.1~10質量部を含む縮合型プライマー組成物である。上記シリコーン粘着剤用プライマー組成物は、必要に応じて、更に(E)有機溶剤等の他の成分を含むことができる。
本発明のプライマー組成物は、基材にこれを塗工し、その上にシリコーン粘着剤を塗工することによって基材密着性を向上させるものである。特に、これまでは困難だった付加型のシリコーン粘着剤への密着性の改善を縮合型のプライマーで行うことができる。
以下、本発明の組成物を構成する各成分について説明する。
【0031】
[(A)成分]
(A)成分は下記平均組成式(1)で表されるオルガノポリシロキサンである。
【化3】
(式中、R
1は同一又は異なっていてもよい炭素数1~10の脂肪族不飽和結合を有さない非置換もしくは置換の1価炭化水素基であり、100<a<10,000である。)
【0032】
R1は炭素数1~10の脂肪族不飽和結合を有さない1価炭化水素基であり、具体的には例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基等のアリール基などであり、更に、これらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部がハロゲン原子又はその他の基で置換されていてもよい。中でも飽和の脂肪族基あるいは芳香族基が好ましく、特にメチル基、フェニル基が好ましい。
【0033】
式(1)中のaについて、100<a<10,000であり、好ましくは200<a<8,000、より好ましくは500<a<6,000である。aが100以下だと、硬化した被膜が固くなりすぎて十分なプライマー効果を発揮できない可能性があり、10,000以上だと、分子の運動性低下により反応性が悪くなることで十分に硬化が進行せずにうまく被膜を形成できないことが懸念される。
【0034】
(A)は通常、オクタメチルシクロテトラシロキサンなどの環状低分子シロキサンを、末端シラノール基の形成のために少量の水と触媒を用いて開環重合させて製造するが、重合後は原料である環状低分子シロキサンを含有しているため、これを加熱および減圧下で、反応生成物中に不活性気体を通気させながら、留去したものを用いることが好ましい。
【0035】
(A)の具体的な構造を表したものとしては以下に示すようなものなどが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中のMe,Phはそれぞれメチル基、フェニル基を示す。
【化4】
(100<c<10,000,100<d+e<10,000,0≦e<500)
【0036】
[(B)成分]
(B)成分は1分子中に少なくとも3個のSi-H基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンであり、特に限定されないが、例えば以下の平均組成式(3)で示すことができる。
R4
fHgSiO(4-f-g)/2 (3)
(式中、R4は独立に非置換又は置換の炭素数1~10の1価炭化水素基を示し、f>0、g>0であり、さらに0<f+g≦3である。)
【0037】
R4の炭素数1~10の1価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基、ヘキセニル基、オクテニル基等のアルケニル基、フェニル基等のアリール基等が挙げられる。さらに、これらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部がハロゲン原子又はその他の基で置換されていてもよく、トリフルオロメチル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基等が例示される。中でも、飽和の脂肪族基又は芳香族基が好ましく、メチル基、フェニル基がより好ましい。上記平均組成式(3)中、f>0、g>0であり、0<f+g≦3である。
【0038】
また、(B)成分としては、下記一般式(4)のものを例示することができるが、これに限定されるものではない。
R5
3Si-O-(R6
2Si-O)h-(R7HSi-O)i-SiR8
3 (4)
(式中、R5,R8は炭素数1~10の1価炭化水素基又は水素原子を示し、R6,R7は炭素数1~10の1価炭化水素基を示し、hは0≦h≦100であり、iは3≦i≦80である。)
【0039】
R6,R7の炭素数1~10の1価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基、ヘキセニル基、オクテニル基等のアルケニル基、フェニル基等のアリール基等が挙げられる。さらに、これらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部がハロゲン原子又はその他の基で置換されていてもよく、置換基としては、トリフルオロメチル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基等が挙げられる。R6,R7としては、飽和の脂肪族基又は芳香族基が好ましく、メチル基、フェニル基がより好ましい。R5,R8は炭素数1~10の1価炭化水素基又は水素原子である。R5,R8の炭素数1~10の1価炭化水素基としては、上記と同様のものが例示される。hは0≦h≦100であり、0≦h≦80又は0<h≦80が好ましく、iは3≦i≦80であり、5≦i≦70が好ましい。
【0040】
(B)成分は、通常、オクタメチルシクロテトラシロキサン等の環状低分子シロキサンとテトラメチルシクロテトラシロキサン等のSi-Hを含有するシロキサンを、酸触媒を用いて開環重合させて製造するが、重合後は原料である環状低分子シロキサンを含有しているため、これを加熱及び減圧下で、反応生成物中に不活性気体を通気させながら、留去したものを用いることが好ましい。
【0041】
(B)成分の具体的な構造を表したものとしては以下に示すようなもの等が挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中のMeはそれぞれメチル基を示す。
【化5】
(0≦j≦100,3≦k≦80)
【0042】
(B)の成分の配合量は、(A)成分100質量部に対し1~20質量部である。1質量部よりも少ない場合は、組成物が十分に硬化しない可能性があり、20質量部よりも多い場合は、プライマーの硬化皮膜上に塗工して硬化させる粘着剤層との反応点が多すぎることにより粘着剤の硬化性が悪化する可能性がある。
【0043】
[(C)成分]
(C)成分はアルケニル基含有有機基を含むケイ素化合物であり、特に限定されないが、好ましくは下記一般式(2)で表されるものを挙げることができる。
R2
b-Si-(OR3)4-b (2)
(式中、R2は独立にアルケニル基含有有機基であり、R3は独立に炭素数1~5のアルキル基であり、bは1,2又は3である。)
【0044】
R2はアルケニル基含有有機基であり、アルケニル基含有有機基としては炭素数2~10のものが好ましく、例として、ビニル基、アリル基、ヘキセニル基、オクテニル基等のアルケニル基などが挙げられる。
【0045】
R3は独立に炭素数1~5のアルキル基であり、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基などが挙げられ、メチル基とエチル基が好ましく、特にメチル基が好ましい。
【0046】
(C)成分は(A)成分100質量部に対し50~300質量部であり、好ましくは70~280質量部、より好ましくは80~250質量部である。50質量部より少ない場合は、十分にプライマー効果が発揮できず粘着剤の基材密着性が向上しないことがあり、300質量部より多い場合は、プライマーの硬化皮膜上に塗工して硬化させる粘着剤層との反応点が多すぎることにより粘着剤の硬化性が悪化する可能性がある。
【0047】
(C)成分の具体的な構造を表したものとしては以下に示すようなもの等が挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中のMe、Etはそれぞれメチル基、エチル基を示す。
【化6】
【0048】
[(D)成分]
(D)成分はルイス酸触媒であり、硬化触媒として機能する。(D)成分は金属触媒であることができる。例として様々のものが挙げられ、錫化合物、アルミニウム化合物、チタン化合物、ジルコニウム化合物、スカンジウム化合物、バナジウム化合物、鉄化合物、コバルト化合物、ニッケル化合物、銅化合物、亜鉛化合物、ランタン化合物、セリウム化合物などがあり、金属化合物を含むものが好ましく、特に錫化合物、アルミニウム化合物、チタン化合物を用いたものが好まく、錫化合物がより好ましい。
化合物としては、塩化物、臭化物、ヨウ化物などのハロゲン化化合物、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、スルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、カルボン酸塩などが好適に用いられる。
【0049】
(D)成分は(A)成分100質量部に対し0.1~10質量部であり、0.1質量部よりも少ない場合、組成物が十分に硬化しない可能性があり、10質量部よりも多い場合、(A)成分と(B)成分が過剰に反応することで粘着剤と化学結合を形成する反応部位が少なくなってしまい十分なプライマー効果を得られない可能性がある。
(D)成分の具体例としては、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクトエート、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジアセテート、錫オクトエート、塩化アルミニウム、アルミニウムアセチルアセトナート、チタニウムアセチルアセトナート、テトラエトキシチタンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0050】
[(E)成分]
本発明のプライマー組成物は、粘度を低くして作業性を向上させる、あるいは基材へ塗工したときの濡れ性を改善するためなどに、成分(E)として有機溶剤を使用してもよい。有機溶剤としては、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶剤、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、デカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、イソパラフィンなどの脂肪族炭化水素系溶剤、工業用ガソリン(ゴム揮発油等)、石油ベンジン、ソルベントナフサなどの炭化水素系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、2-ペンタノン、3-ペンタノン、2-ヘキサノン、2-ヘプタノン、4-ヘプタノン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、アセトニルアセトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルなどのエステル系溶剤、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、1,4-ジオキサンなどのエーテル系溶剤、2-メトキシエチルアセタート、2-エトキシエチルアセタート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート、2-ブトキシエチルアセタートなどのエステルとエーテル部分を有する溶剤、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、トリス(トリメチルシロキシ)メチルシラン、テトラキス(トリメチルシロキシ)シランなどのシロキサン系溶剤、トリフルオロトルエン、ヘキサフルオロキシレン、メチルノナフルオロブチルエーテル、エチルノナフルオロブチルエーテルなどのフッ素系溶剤、又はこれらの混合溶剤などが挙げられ、使用するのに好ましいのは工業用ガソリン(ゴム揮発油等)やイソパラフィンである。
【0051】
(E)成分の添加量は、(A)成分の100質量部に対し、0~10,000質量部であり、好ましくは0~5,000質量部、より好ましくは0~3,000質量部である。10,000質量部以下であれば、塗工性が悪くなるおそれがない。
【0052】
[シリコーン粘着剤]
次に、本発明のプライマー組成物とともに使用されるシリコーン粘着剤について説明する。シリコーン粘着剤は、特に限定されないが、例えば以下に説明する成分を含んでいるものを挙げることができる。好ましくは、ヒドロシリル化により硬化する粘着剤(ヒドロシリル化硬化型粘着剤)である。なお、以下では、シリコーン粘着剤を「シリコーン粘着剤組成物」という場合がある。
【0053】
[(F)成分]
(F)成分は1分子中に少なくとも2つのアルケニル基含有有機基を有するオルガノポリシロキサンである。具体的な構造としては下記平均組成式(5)で表されるものが挙げられる。
【化7】
(R
9は同一または異なっていてもよい炭素数1~10の1価炭化水素基であり、R
9のうち少なくとも2個は炭素数2~10のアルケニル基含有有機基を含む。lは2以上の整数、mは1以上の整数、nおよびoは0以上の整数で、50≦l+m+n+o≦12,000である。)
【0054】
R9は炭素数1~10の1価炭化水素基であり、そのうち2個以上がアルケニル基含有有機基である。
【0055】
1価の炭化水素基としては、具体的には、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基等のアリール基などであり、更に、これらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部がハロゲン原子又はその他の基で置換されていてもよく、トリフルオロメチル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基等が例示される。飽和の脂肪族基あるいは芳香族基が好ましく、特にメチル基、フェニル基が好ましい。
【0056】
また、アルケニル基含有有機基としては炭素数2~10のものが好ましく、例として、ビニル基、アリル基、ヘキセニル基、オクテニル基等のアルケニル基、アクリロイルプロピル基、アクリロイルメチル基、メタクリロイルプロピル基等のアクリロイルアルキル基及びメタクリロイルアルキル基、シクロヘキセニルエチル基等のシクロアルケニルアルキル基、ビニルオキシプロピル基等のアルケニルオキシアルキル基などが挙げられる。使用する場合には、特にビニル基が好ましい。
【0057】
(F)に含まれるアルケニル基の量は、オルガノポリシロキサン100gあたり0.0005~0.05モルであり、0.0006~0.04モルであるものが好ましく、0.0007~0.03モルがより好ましい。0.0005モル以上であれば架橋密度が小さくなって粘着層の凝集破壊が生じることがなく、0.05モル以下であれば粘着層が硬くなり過ぎることなく、適切な粘着力やタックを得られる。
【0058】
平均組成式(5)におけるl~oについて、lは2以上の整数、mは1以上の整数、nおよびoは0以上の整数で、50≦l+m+n+o≦12,000であることができ、好ましくは100≦l+m+n+o≦10,000である。l+m+n+oが50以上であれば、架橋点が多くなりすぎて反応性が低下するおそれがなく、12,000以下であれば、組成物の粘度が高くなって撹拌混合しにくくなる等がなく、作業性が良好になる。
【0059】
(F)成分は通常、オクタメチルシクロテトラシロキサンなどの環状低分子シロキサンを、触媒を用いて開環重合させて製造するが、重合後は原料である環状低分子シロキサンを含有しているため、これを加熱および減圧下で、反応生成物中に不活性気体を通気させながら、留去したものを用いることが好ましい。
【0060】
(F)成分としては、例えば下記一般式で表されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
R9-1R9-2
2SiO(R9-2
2SiO)pSiR9-2
2R9-1
R9-1R9-2
2SiO(R9-2
2SiO)p(R9-1R9-2SiO)qSiR9-2
2R9-1
R9-1
3SiO(R9-2
2SiO)p(R9-1R9-2SiO)qSiR9-2
2R9-1
R9-2
3SiO(R9-2
2SiO)p(R9-1R9-2SiO)qSiR9-2
2R9-1
(式中、R9-1は同一又は異種のアルケニル基含有有機基であり、R9-2は同一又は異種の炭素数1~10の1価炭化水素基であり、p≧48、q≧1である(但し、分子中に(R9-1R9-2SiO)q以外にR9-1を有しない場合はq≧2である。)
【0061】
R9-1,R9-2としては、上記R9で例示されたものが挙げられる。なお、48≦p≦11,998が好ましく、1≦q≦1,000が好ましく、2≦q≦800がより好ましい。
【0062】
より具体的な(F)成分としては、下記一般式で表されるものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中のMe,Vi,Phはそれぞれメチル基、ビニル基、フェニル基を示す。
【化8】
【0063】
[(G)成分]
(G)成分はR10
3SiO1/2単位(式中、R10は独立に脂肪族不飽和結合を有さない炭素数1~10の1価炭化水素基又は炭素数2~6のアルケニル基を示す。)及びSiO4/2単位を含有し、(R10
3SiO1/2単位)/(SiO4/2単位)で表されるモル比が、0.5~1.0であるポリオルガノシロキサンである。このモル比が0.5以上であれば、粘着力やタックが低下するおそれがなく、1.0以下であれば、粘着力や保持力が低下するおそれもない。なお、上記モル比は0.6~0.9が好ましい。
【0064】
R10は独立に脂肪族不飽和結合を有さない炭素数1~10の1価炭化水素基又は炭素数2~6のアルケニル基を示し、炭素数1~10の1価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素数2~6のアルキル基、フェニル基、トリル基等の炭素数6~10のアリール基が好ましい。炭素数2~6のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基等が好ましい。
【0065】
(G)成分はR10以外にシラノール基や加水分解性のアルコキシ基を含んでいてもよく、その含有量は(G)成分の総質量の0.01~4.0質量%となるのが好ましく、0.05~3.5質量%となるのがより好ましい。上記含有量が0.01質量%以上であれば、粘着剤の凝集力が低くなるおそれがなく、4.0質量%以下であれば、粘着剤のタックが低下するおそれもない。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、フェノキシ基等を挙げることができ、使用する場合にはメトキシ基が好ましい。
【0066】
(G)成分は2種以上を併用してもよい。また、必要に応じて、R10
2SiO2/2単位、R10SiO3/2単位を含有させることも可能である。
【0067】
(G)成分は、触媒存在下において縮合反応させて得てもよい。これは、表面に存在する加水分解性基同士を反応させるものであり、粘着力の向上等の効果が見込める。アルカリ性触媒を用い、室温~還流下で反応させ、必要に応じて中和すればよい。また、この反応は(F)成分共存下で行ってもよい。
【0068】
アルカリ性触媒としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等の金属水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸塩;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の炭酸水素塩;ナトリウムメトキシド、カリウムブトキシド等の金属アルコキシド;ブチルリチウム等の有機金属;カリウムシラノレート;アンモニアガス、アンモニア水、メチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン等の窒素化合物等が挙げられるが、アンモニアガス又はアンモニア水が好ましい。縮合反応の温度は、室温から有機溶剤の還流温度で行えばよい。反応時間は、特に限定されないが、0.5~20時間、好ましくは1~16時間とすればよい。さらに、反応終了後、必要に応じて、アルカリ性触媒を中和する中和剤を添加してもよい。中和剤としては、塩化水素、二酸化炭素等の酸性ガス;酢酸、オクチル酸、クエン酸等の有機酸;塩酸、硫酸、リン酸等の鉱酸等が挙げられる。アルカリ性触媒としてアンモニアガス又はアンモニア水、低沸点のアミン化合物を用いた場合は、窒素等の不活性ガスを通気し留去してもよい。
【0069】
(F)成分の配合量は100~30質量部、(G)成分の配合量は70~0質量部であってよく、(G)成分が含まれない場合もある。(F)、(G)成分の配合質量比は、(F)/(G)=100/0~30/70であり、100/0~35/65が好ましい。
【0070】
[(B’)成分]
シリコーン粘着剤組成物には、前述の(B)成分と同様の化合物も含まれる。シリコーン粘着剤組成物に用いる(B’)成分(Si-H基を1分子中に3個以上有するポリオルガノハイドロジェンシロキサン)の配合量は、(F)成分中のアルケニル基に対する(B’)成分中のSi-H基のモル比(Si-H基/アルケニル基)が0.5~30となる量であってよく、1~25の範囲となるように配合することが好ましい。0.5以上では架橋密度が十分で、粘着特性が十分に得られ、30以下であれば粘着力やタックが十分で、処理浴の可使時間が短くなることもない。
【0071】
[(H)成分]
(H)成分は、(F)成分中のアルケニル基と(B’)成分中のSi-H基をヒドロシリル化付加して硬化させるための白金族金属系触媒であり、中心金属としては白金、パラジウム、イリジウム、ロジウム、オスミウム、ルテニウムなどが例として挙げられ、中でも白金が好適である。白金触媒としては、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、塩化白金酸とアルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン化合物との反応物、塩化白金酸とビニル基含有シロキサンとの反応物、白金とビニル基含有シロキサンの錯体などが挙げられる。
【0072】
(H)成分の含有量としては、(F),(G),(B’)成分の総量に対し、金属量が1~500ppmとなるような量が好ましく、2~450ppmがより好ましい。1ppm以上であれば、反応が十分速く、硬化も十分となり、粘着力や保持力などの各種特性が十分発揮される。500ppm以下であれば、硬化物の柔軟性が乏しくなることがない。
【0073】
[(I)成分]
(I)成分は制御剤であり、制御剤はシリコーン粘着剤組成物を調合ないし基材に塗工する際に加熱硬化の以前に付加反応が開始して処理液が増粘やゲル化を起こさないようにするために添加するものである。反応制御剤は付加反応触媒である白金族金属に配位して付加反応を抑制し、加熱硬化させるときには配位がはずれて触媒活性が発現する。付加反応硬化型シリコーン組成物に従来使用されている反応制御剤はいずれも使用することができる。具体例としては、3-メチル-1-ブチン-3-オール、3-メチル-1-ペンチン-3-オール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、1-エチニルシクロヘキサノール、3-メチル-3-トリメチルシロキシ-1-ブチン、3-メチル-3-トリメチルシロキシ-1-ペンチン、3,5-ジメチル-3-トリメチルシロキシ-1-ヘキシン、1-エチニル-1-トリメチルシロキシシクロヘキサン、ビス(2,2-ジメチル-3-ブチノキシ)ジメチルシラン、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ジビニルジシロキサン、マレイン酸エステル、アジピン酸エステル等が挙げられる。(I)成分の配合量は、(F)成分と(G)成分と(B’)成分の合計100質量部に対して0.01~5質量部が好ましく、0.05~2質量部がより好ましい。0.01質量部以上であれば反応を十分抑制でき、作業前に組成物が硬化してしまうこともなく、5質量部以下であれば反応が十分速く、硬化も十分になる。
【0074】
[(E’)成分]
上記を配合したシリコーン粘着剤の粘度が高くハンドリングが困難である場合には適当な有機溶剤を(E’)成分として用い希釈することができる。この(E’)有機溶剤は前述の(E)成分と同様のものを使用することができる。配合量は、(F)成分の100質量部に対し、0~2,000質量部であり、好ましくは0~1,500質量部、より好ましくは0~1,000質量部である。2,000質量部以下であれば、塗工性が悪くなることがない。
【0075】
[シリコーン粘着剤の調製等]
シリコーン粘着剤組成物は、上記各成分を均一に混合することにより調製できる。一般的に、シリコーン粘着剤組成物は、使用する直前に触媒を均一に混合して使用する。
【0076】
シリコーン粘着剤組成物の基材への塗工方法は、公知の塗工方式を用いて塗工すればよく、例えば、ワイヤーバー、コンマコーター、リップコーター、ロールコーター、ダイコーター、ナイフコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、キスコーター、グラビアコーター、スクリーン塗工、浸漬塗工、キャスト塗工等が挙げられる。
【0077】
硬化後の粘着層の厚みは1~500μmとすることができるが、この限りではない。硬化条件としては80~180℃、特に100~160℃で10秒~10分、特に30秒~8分加熱すればよいが、この限りではない。
【0078】
[プライマー処理物品]
本発明のシリコーン粘着剤用プライマー組成物は、該シリコーン粘着剤用プライマー組成物を基材の少なくとも片面に塗工し、硬化させることによって、前記シリコーン粘着剤用プライマー組成物の硬化物を基材の少なくとも片面に有する物品を得ることができる。
そして、物品の硬化物を有する面(プライマー処理面)上にシリコーン粘着剤を塗工、硬化させることによって、前記粘着剤の硬化物を有する粘着性物品を得ることができる。この場合、シリコーン粘着剤がヒドロシリル化硬化型粘着剤であることが好ましい。
【0079】
このように、本発明のシリコーン粘着剤用プライマー組成物は、該組成物を基材に塗工、硬化することでシリコーン粘着剤との密着性を向上させることのできる表面処理基材などの物品を提供することができる。
【0080】
上記組成物を塗工する基材としては、紙やプラスチックフィルム、ガラス、金属が選択される。紙としては、上質紙、コート紙、アート紙、グラシン紙、ポリエチレンラミネート紙、クラフト紙などが挙げられる。プラスチックフィルムとしては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリスチレンフィルム、エチレン-酢酸ビニル共重合体フィルム、エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルム、トリアセチルセルロースフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリフェニレンサルファイドフィルムなどが挙げられる。ガラスとしては、厚みや種類などについて特に制限はなく、化学強化処理などをしたものでもよい。また、ガラス繊維も適用でき、ガラス繊維は単体でも他の樹脂と複合したものを使用してもよい。金属としては、アルミニウム箔、銅箔、金箔、銀箔、ニッケル箔などが例示される。上記組成物を塗工、硬化させた後にシリコーン粘着剤を塗工して使用する場合にはポリエステルフィルムやポリイミドフィルムが好ましい。
【0081】
上記組成物の基材への塗工方法は、公知の塗工方式を用いて塗工すればよく、例えば、ワイヤーバー、コンマコーター、リップコーター、ロールコーター、ダイコーター、ナイフコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、キスコーター、グラビアコーター、スクリーン塗工、浸漬塗工、キャスト塗工等が挙げられる。
【0082】
上記組成物の基材への塗工量は、固形分で0.1~2g/m2の範囲、特に0.2~1.8g/m2の範囲が好ましく、硬化条件としては80~180℃、特に100~160℃で10秒~10分、特に30秒~8分加熱すればよいが、この限りではない。
【0083】
上記組成物により処理された表面上にシリコーン粘着剤を塗工、硬化することで基材との密着性が良好な粘着性物品を得ることができる。シリコーン粘着剤組成物としては、白金系触媒によって硬化させる付加硬化型のオルガノポリシロキサン組成物が好ましく、具体的には上述の各種成分を含有してなる組成物を用いることが好ましい。
【実施例】
【0084】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。また、下記例において、Meはメチル基、Viはビニル基、Etはエチル基を表す。
【0085】
[実施例1]
(プライマー組成物)
(A)成分として、30質量%の濃度となるようにトルエンに溶解したときの粘度が1,400mPa・sであり、分子末端がOH基で封鎖された下記式(a-1)で表されるジメチルポリシロキサンの100質量部、
(B)成分として、下記平均組成式(b-1)で表されるポリオルガノハイドロジェンシロキサンの1質量部、
(E)成分としてトルエンを1,900質量部加えてシリコーン溶液を作製し、
(C)成分として、下記式(c-1)で表されるケイ素化合物の100質量部、
(D)成分として、ジオクチル錫ジアセテートの5質量部を混合することでシリコーン粘着剤用プライマー組成物を作製した。
【0086】
【化9】
(Xは上記粘度を満たす値であり、100<X<10,000を満たす。)
【化10】
【化11】
【0087】
(シリコーン粘着剤組成物)
続いて、(F)成分として下記平均組成式(f-1)で表されるポリシロキサンを35質量部、
(G)成分として、Me
3SiO
1/2単位及びSiO
2単位を含有し、(Me
3SiO
1/2単位)/(SiO
2単位)のモル比が0.85であるメチルポリシロキサン(g-1)の60質量%トルエン溶液を不揮発分として65質量部、
(B’)成分として上記平均組成式(b-1)で表されるメチルハイドロジェンポリシロキサン0.35質量部、
(I)成分としてエチニルシクロヘキサノールの0.25質量部、
(H)成分として1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン白金(0)錯体の白金分を0.5質量%含むトルエン溶液の0.5質量部、
を添加し、シリコーン粘着剤組成物を作製した((B’)成分中のSi-H基は、(F)成分中のビニル基に対し、モル比で10.5倍)。
これらの組成物を用い、プライマー硬化性、密着性、伸びを評価した。
【化12】
【0088】
[実施例2]
(C)成分である(c-1)を80質量部とした以外は、実施例1と同様にした。
【0089】
[実施例3]
(C)成分である(c-1)を200質量部とした以外は、実施例1と同様にした。
【0090】
[実施例4]
(A)成分である(a-1)の代わりに、30質量%の濃度となるようにトルエンに溶解したときの粘度が350mPa・sであり、分子末端がOH基で封鎖された下記式で表されるジメチルポリシロキサン(a-2)を使用したこと以外は、実施例1と同様にした。
【化13】
(Yは上記粘度を満たす値であり、100<Y<10,000を満たす。)
【0091】
[実施例5]
(A)成分である(a-1)の代わりに、30質量%の濃度となるようにトルエンに溶解したときの粘度が5,000mPa・sであり、分子末端がOH基で封鎖された下記式で表されるジメチルポリシロキサン(a-3)を使用したこと以外は、実施例1と同様にした。
【化14】
(Zは上記粘度を満たす値であり、100<Z<10,000を満たす。)
【0092】
[実施例6]
(C)成分である(c-1)の代わりに下記式(c-2)で表されるケイ素化合物を使用したこと以外は、実施例1と同様にした。
【化15】
【0093】
[実施例7]
(C)成分である(c-1)の代わりに下記式(c-3)で表されるケイ素化合物を使用したこと以外は、実施例1と同様にした。
【化16】
【0094】
[実施例8]
シリコーン粘着剤組成物中の(F)成分である(f-1)を40質量部、(G)成分である(g-1)を60質量部、(B’)成分である(b-1)を0.40質量部としたこと以外は、実施例1と同様にした。
【0095】
[実施例9]
シリコーン粘着剤組成物中の(F)成分である(f-1)を45質量部、(G)成分である(g-1)を55質量部、(B’)成分である(b-1)を0.45質量部としたこと以外は、実施例1と同様にした。
【0096】
[実施例10]
シリコーン粘着剤組成物中の(F)成分である(f-1)の代わりに、下記平均組成式(f-2)で表されるポリシロキサンを35質量部、(G)成分である(g-1)の60質量%トルエン溶液を不揮発分として65質量部、(B’)成分である(b-1)を0.26質量部としたこと以外は、実施例1と同様にした((B’)成分中のSi-H基は、(F)成分中のビニル基に対し、モル比で5.6倍)。
【化17】
【0097】
[実施例11]
シリコーン粘着剤組成物中の(G)成分である(g-1)の代わりに、Me3SiO1/2単位及びSiO2単位を含有し、(Me3SiO1/2単位)/(SiO2単位)のモル比が0.76であるメチルポリシロキサン(g-2)の60質量%トルエン溶液を不揮発分として65質量部としたこと以外は、実施例1と同様にした。
【0098】
[比較例1]
(C)成分である(c-1)を配合しないこと以外は実施例1と同様にした。
【0099】
[比較例2]
(C)成分である(c-1)の代わりに、下記式(c-4)で表されるケイ素化合物100質量部を使用したこと以外は実施例1と同様にした。
【化18】
【0100】
[比較例3]
(C)成分である(c-1)の代わりに、下記式(c-5)で表されるケイ素化合物100質量部を使用したこと以外は実施例1と同様にした。
【化19】
【0101】
[評価]
<密着性>
シリコーン粘着剤用プライマー組成物を厚み25μm、幅25mmのポリエチレンテレフタラート(PET)に硬化後の固形分が0.5g/m2となるようにワイヤーバーを用いて塗工して120℃/30秒で風乾させた。この基材のプライマー処理面上に、シリコーン粘着剤組成物を、アプリケーターを用いて塗工し130℃/1分で硬化させて得られたテープの側方2mmを切断した。その後引き裂き、両側より引っ張り、粘着層が基材から浮き上がるかどうかを目視で確認し、下記のように評価した。
〇:浮き上がらない
×:浮き上がる
【0102】
<伸び>
密着性評価の項目において、テープを引き裂いていき、基材が分離した状態からさらに引っ張り、その際に生じた粘着層が伸びた量(mm)を測定した。この値は、小さいほど密着性が良好であることを示す。
評価結果を表1に示す。
【0103】
【0104】
表1に示すように、実施例1~11では、プライマー硬化性は十分であり、プライマー効果が十分に発揮され、シリコーン粘着剤と基材フィルムの密着性は良好であった。(C)成分としてアルケニル基を有するケイ素化合物の添加が効果的であることが確認でき、これはプライマーにアルケニル基が導入され、それがシリコーン粘着剤中のSi-H基と反応することにより、良好な基材密着性が実現できたものと推察される。
【0105】
一方、比較例として(C)成分未添加(比較例1)、およびアルケニル基を有さないケイ素化合物の添加(比較例2,3)を実施したが、前述の実施例と異なり、十分な基材密着性が確保できなかった。これは、プライマー中にシリコーン粘着剤の成分と反応できる官能基が不足していたためと予想される。
【0106】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。