(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-29
(45)【発行日】2023-10-10
(54)【発明の名称】リニアレギュレータ
(51)【国際特許分類】
G05F 1/56 20060101AFI20231002BHJP
【FI】
G05F1/56 320C
G05F1/56 320R
(21)【出願番号】P 2019211387
(22)【出願日】2019-11-22
【審査請求日】2022-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】森 裕樹
【審査官】町田 舞
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-103140(JP,A)
【文献】特開2013-206381(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0213908(US,A1)
【文献】特開2006-155501(JP,A)
【文献】特開2015-064866(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05F 1/445
G05F 1/56
G05F 1/613
G05F 1/618
H02M 3/00-3/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力電圧を入力する入力端子と出力電圧を出力する出力端子との間に設けられている出力トランジスタと、
前記出力電圧を分圧して帰還電圧を生成する帰還電圧生成回路と、
前記帰還電圧に基づいて、前記出力電圧が設定値に一致または近似するように第1のノードを介して前記出力トランジスタの制御端子の電圧を制御する主制御回路と、
前記出力トランジスタを流れる出力電流を監視し、前記出力電流が所定の制限値を超えたときに、前記第1のノードを介して前記出力トランジスタの制御端子の電圧を制御し、垂下特性で前記出力電流を制限する過電流制限回路と、
前記帰還電圧および前記出力電流を監視し、前記出力電流が前記過電流制限回路による制限を受け、かつ前記帰還電圧が所定の電圧閾値を下回っている状態が一定の限度を超えたときに、前記出力トランジスタを完全にオフ状態にして前記主制御回路の制御動作を止め、予め設定した休止時間を計時した後に、前記出力トランジスタのオフ状態を解除して、前記主制御回路の制御動作を再開させる遮断・復帰回路と
を有
し、
前記過電流制限回路は、前記入力端子と前記第1のノードとの間に設けられている第1のトランジスタを有し、前記出力電流が前記制限値を超えているときに前記出力電流に対応する第1の内部電流を前記第1のトランジスタに流して、前記出力トランジスタの制御端子の電圧を制御し、
前記過電流制限回路は、
制御端子が前記第1のノードに接続され、前記出力電流に対応する第2の内部電流を流す第2のトランジスタと、
前記第2の内部電流に応じた電圧降下を発生する抵抗と、
前記抵抗の電圧降下を制御電圧として入力し、前記出力電流が前記制限値を超えているときにオンする第3のトランジスタと、
前記入力端子と基準電圧端子との間で前記第3のトランジスタと直列に接続され、かつ前記第1のトランジスタとカレントミラー回路を構成する第4のトランジスタと
を有するリニアレギュレータ。
【請求項2】
前記遮断・復帰回路は、前記入力端子と前記第1のノードとの間に設けられている第5のトランジスタを有し、前記出力電流が前記過電流制限回路による制限を受け、かつ前記帰還電圧が所定の電圧閾値を下回っている状態が一定の限度を超えたときに、前記第5のトランジスタをオンさせて前記出力トランジスタをオフさせる、請求項
1に記載のリニアレギュレータ。
【請求項3】
前記遮断・復帰回路は、
前記帰還電圧を制御電圧として入力し、前記帰還電圧が予め設定した電圧閾値を下回ったときにオンする第6のトランジスタと、
前記出力電流が前記制限値を超えているときに、オン状態の前記第6のトランジスタを介して前記出力電流に対応する第3の内部電流を流す第7のトランジスタと、
前記第3の内部電流によって充電されるコンデンサと、
前記コンデンサの充電電圧と所定の監視値とを比較して両者の高低関係を表す二値論理の比較結果を出力するコンパレータと、
前記コンデンサの充電電圧が前記監視値を超えたときに、前記コンパレータの出力に応動して前記第5のトランジスタをオンさせるラッチ回路と
を有し、
前記充電電圧が前記監視値を超える前に前記帰還電圧が前記電圧閾値より高くなったときは、前記第6のトランジスタがオフして、前記第3の内部電流による前記コンデンサの充電が停止し、前記コンデンサが放電する、
請求項
2に記載のリニアレギュレータ。
【請求項4】
前記第7のトランジスタは、前記出力電流を監視するために前記過電流制限回路内で生成される内部電流をカレントミラーして前記第3の内部電流を生成する、請求項
3に記載のリニアレギュレータ。
【請求項5】
前記主制御回路は、
前記出力電圧の設定値に対応する第1の基準電圧を出力する基準電圧源と、
コンデンサの充放電によりグランド電位から入力電圧レベルまで可変する第2の基準電圧を出力する基準電圧回路と、
前記帰還電圧を前記第1および第2の基準電圧のうちの低い方と比較して比較誤差を表す誤差信号を生成する誤差増幅器と、
前記誤差信号に応じて前記出力トランジスタの制御端子に与えるための電圧を出力するドライバ回路と
を有し、
前記遮断・復帰回路は、前記出力トランジスタのオフ状態を持続している間は、前記基準電圧回路における前記第2の基準電圧を前記グランド電位に保持し、前記出力トランジスタのオフ状態を解除する時は、前記第2の基準電圧を前記グランド電位から前記入力電圧レベルまで漸次的に上昇させる、
請求項1~
4のいずれか一項に記載のリニアレギュレータ。
【請求項6】
前記ドライバ回路は、
前記入力端子と前記第1のノードとの間に設けられている抵抗と、
前記第1のノードと基準電位端子との間に接続され、その制御端子に前記誤差増幅器からの前記誤差信号を入力する第8のトランジスタと
を有する、請求項
5に記載のリニアレギュレータ。
【請求項7】
前記遮断・復帰回路は、前記出力トランジスタのオフ状態を解除して前記主制御回路の制御動作を再開させるときは、前記第2の基準電圧が所定の判定用基準電圧を超えてから前記帰還電圧および前記出力電流の監視を開始する、請求項
5または請求項
6に記載のリニアレギュレータ。
【請求項8】
前記遮断・復帰回路は、前記休止時間を計時するためのタイマ回路を有する、請求項1~
7のいずれか一項に記載のリニアレギュレータ。
【請求項9】
入力電圧を入力する入力端子と出力電圧を出力する出力端子との間に設けられている出力トランジスタと、
前記出力電圧を分圧して帰還電圧を生成する帰還電圧生成回路と、
前記帰還電圧に基づいて、前記出力電圧が設定値に一致または近似するように第1のノードを介して前記出力トランジスタの制御端子の電圧を制御する主制御回路と、
前記出力トランジスタを流れる出力電流を監視し、前記出力電流が所定の制限値を超えたときに、前記第1のノードを介して前記出力トランジスタの制御端子の電圧を制御し、垂下特性で前記出力電流を制限する過電流制限回路と、
前記帰還電圧および前記出力電流を監視し、前記出力電流が前記過電流制限回路による制限を受け、かつ前記帰還電圧が所定の電圧閾値を下回っている状態が一定の限度を超えたときに、前記出力トランジスタを完全にオフ状態にして前記主制御回路の制御動作を止め、予め設定した休止時間を計時した後に、前記出力トランジスタのオフ状態を解除して、前記主制御回路の制御動作を再開させる遮断・復帰回路と
を有し、
前記遮断・復帰回路は、前記入力端子と前記第1のノードとの間に設けられている第5のトランジスタを有し、前記出力電流が前記過電流制限回路による制限を受け、かつ前記帰還電圧が所定の電圧閾値を下回っている状態が一定の限度を超えたときに、前記第5のトランジスタをオンさせて前記出力トランジスタをオフさせる、リニアレギュレータ。
【請求項10】
入力電圧を入力する入力端子と出力電圧を出力する出力端子との間に設けられている出力トランジスタと、
前記出力電圧を分圧して帰還電圧を生成する帰還電圧生成回路と、
前記帰還電圧に基づいて、前記出力電圧が設定値に一致または近似するように第1のノードを介して前記出力トランジスタの制御端子の電圧を制御する主制御回路と、
前記出力トランジスタを流れる出力電流を監視し、前記出力電流が所定の制限値を超えたときに、前記第1のノードを介して前記出力トランジスタの制御端子の電圧を制御し、垂下特性で前記出力電流を制限する過電流制限回路と、
前記帰還電圧および前記出力電流を監視し、前記出力電流が前記過電流制限回路による制限を受け、かつ前記帰還電圧が所定の電圧閾値を下回っている状態が一定の限度を超えたときに、前記出力トランジスタを完全にオフ状態にして前記主制御回路の制御動作を止め、予め設定した休止時間を計時した後に、前記出力トランジスタのオフ状態を解除して、前記主制御回路の制御動作を再開させる遮断・復帰回路と
を有し、
前記主制御回路は、
前記出力電圧の設定値に対応する第1の基準電圧を出力する基準電圧源と、
コンデンサの充放電によりグランド電位から入力電圧レベルまで可変する第2の基準電圧を出力する基準電圧回路と、
前記帰還電圧を前記第1および第2の基準電圧のうちの低い方と比較して比較誤差を表す誤差信号を生成する誤差増幅器と、
前記誤差信号に応じて前記出力トランジスタの制御端子に与えるための電圧を出力するドライバ回路と
を有し、
前記遮断・復帰回路は、前記出力トランジスタのオフ状態を持続している間は、前記基準電圧回路における前記第2の基準電圧を前記グランド電位に保持し、前記出力トランジスタのオフ状態を解除する時は、前記第2の基準電圧を前記グランド電位から前記入力電圧レベルまで漸次的に上昇させる、リニアレギュレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流の入力電圧をトランジスタのオン抵抗により降圧して直流の出力電圧に変換するリニアレギュレータに係わり、特にLDO(低ドロップアウト)型のリニアレギュレータに関する。
【背景技術】
【0002】
今日、リニアレギュレータは、電圧リップルや電圧ノイズの少ない安定した電源電圧を出力できる小型・簡便な直流安定化電源として随所に用いられている。一般に、リニアレギュレータは、負荷と直列に接続される出力トランジスタのオン抵抗を可変して入力電圧VINを降圧し、入力電圧VINが変動しても出力電圧VOUTを設定値または定格値VRATに保つように作られている。特に、LDO型のリニアレギュレータは、入力電圧VINが定格値VRATの近くまで低下しても(入出力間の電圧差つまりドロップアウトが相当小さくなっても)、安定動作できるように作られている。
【0003】
従来より、LDO型のリニアレギュレータは、装置回路を過電流による発熱や破壊から保護するために、出力トランジスタより出力される電流(出力電流)I
OUTを監視し、出力電流I
OUTが所定の制限値I
LIMを超えて過電流状態になったときは、出力電流I
OUTおよび出力電圧V
OUTを
図8に示すようなフの字特性で制御するフォールドバック制御型の過電流制御回路を備えている。これによれば、過電流状態になったときは過電流制御回路が動作して、出力電流I
OUTを絞りながら出力電圧V
OUTを下げ、出力電圧V
OUTの低下に応じてさらに出力電流I
OUTを絞りこむようにして、出力電流I
OUTと出力電圧V
OUTをフの字に倣って同時に減少・低下させ、出力短絡の場合にはV
OUT=0,I
OUT=I
Sの出力停止状態に至らせる。
【0004】
ここで、出力停止状態の間も一定の電流(下限電流)ISを流し続けるのは、短絡状態が解除されたときに自動復帰するためである。この種のリニアレギュレータでは、負荷と並列に出力コンデンサが接続されており、短絡状態が解除されれば、下限電流ISにより出力コンデンサの充電電圧つまり出力電圧VOUTが立ち上がり、フの字特性によって出力電圧VOUTの上昇とともに出力電流IOUTも増大し、やがて正常な出力電圧VOUTおよび出力電流IOUTに復帰するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-155501号公報
【文献】特開2015-64866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のようなフォールドバック制御においては、フの字特性にしたがって出力電流IOUTを絞り込んでいく過程で相当量の発熱を伴うだけでなく、出力電圧VOUTが零になっている間も一定の下限電流ISを流し続けるので、出力トランジスタは発熱し続け、電力損失も大きい。また、地絡やレアショートのようにそれほど低くないインピーダンスで過電流が生じた場合には、出力電圧VOUTが零まで下がらず、しかも下限電流ISよりも大きな電流量で出力電流IOUTが出力停止中に流れ続け、負荷側でも発熱が避けられない。さらに、出力電流IOUTと出力電圧VOUTをフの字に倣って制御する過程で主制御回路のフィードバック制御系が異常発振を起しやすい。このため、主制御回路の誤差増幅器回り等に位相補償用のコンデンサを設けなければならず、回路設計が面倒であるという不利点もある。
【0007】
本発明は、上記従来技術の課題を解決するものであり、短絡状態が発生したときに電源回路や負荷回路等の発熱ないし破壊を少なくするとともに位相補償の回路設計を不要とするリニアレギュレータを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のリニアレギュレータは、入力電圧を入力する入力端子と出力電圧を出力する出力端子との間に接続されている出力トランジスタと、前記出力電圧を分圧して帰還電圧を生成する帰還電圧生成回路と、前記帰還電圧に基づいて、前記出力電圧が一致または近似するように第1のノードを介して前記出力トランジスタの制御端子の電圧を制御する主制御回路と、前記出力トランジスタを流れる出力電流を監視し、前記出力電流が所定の制限値を超えたときに、前記第1のノードを介して前記出力トランジスタの制御端子の電圧を制御し、垂下特性で前記出力電流を制限する過電流制限回路と、前記帰還電圧および前記出力電流を監視し、前記出力電流が前記過電流制限回路による制限を受け、かつ前記帰還電圧が所定の電圧閾値を下回っている状態が一定の限度を超えたときに、前記出力トランジスタを完全にオフ状態にして前記主制御回路の制御動作を止め、予め設定した休止時間を計時した後に、前記出力トランジスタのオフ状態を解除して、前記主制御回路の制御動作を再開させる遮断・復帰回路とを有する。
【0009】
上記構成のリニアレギュレータにおいて、主制御回路は、出力電圧を設定値付近に保つように負帰還制御の動作を行い、出力電圧が低下すれば出力電流を増やす方向に出力トランジスタの制御電圧を制御し、出力電圧が上昇すれば出力電流を減らす方向に出力トランジスタの制御電圧を制御する。
【0010】
しかし、出力電流が制限値を超えると、過電流制限回路が動作して、垂下特性によって出力電流を制限値以下ないしその付近に制限する。そして、帰還電圧生成回路より得られる帰還電圧が電圧閾値を下回ると、遮断・復帰回路が動作を開始し、過電流制限回路により出力電流が制限値付近に制限され、かつ帰還電圧が電圧閾値を下回っている状態が一定の限度を超えたときは、出力トランジスタを強制的に完全なオフ状態にし、主制御回路の制御動作を止める。
【0011】
この出力停止期間中は出力電圧が零になるだけでなく出力電流も全く流れないため、出力トランジスタの発熱は全くない。そして、一定の休止時間経過後に、遮断・復帰回路が出力トランジスタのオフ状態を解除して主制御回路の制御動作を再開させるので、休止時間の間に短絡状態が解除されていれば、正常な出力状態に戻すことができる。
【0012】
また、本発明における遮断・復帰回路は、ロジック制御の動作を行うため、主制御回路のフィードバック制御系が異常発振を起すことがない。したがって、位相補償用コンデンサを設けるなどの面倒な位相補償設計は不要である。
【発明の効果】
【0013】
本発明のリニアレギュレータによれば、上記のような構成と作用により、短絡状態が発生したとき電源回路や負荷回路等の発熱ないし破壊を少なくするとともに位相補償の回路設計を不要とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態におけるリニアレギュレータの全体構成を示すブロック図である。
【
図3A】
図2のリニアレギュレータにおいて、出力短絡によって過電流の状態が起きた場合の各部の状態または波形を示す図である。
【
図3B】
図2のリニアレギュレータにおいて、地絡またはレアショートによって過電流の状態が起きた場合の各部の状態または波形を示す図である。
【
図3C】一時的な過負荷によって過電流の状態が起きた場合の各部の状態または波形を示す図である。
【
図4A】
図3Aの場合における出力電流I
OUT-出力電圧V
OUTの特性を示す図である。
【
図4B】
図3Bの場合における出力電流I
OUT-出力電圧V
OUTの特性を示す図である。
【
図4C】
図3Cの場合における出力電流I
OUT-出力電圧V
OUTの特性を示す図である。
【
図5】
図2のリニアレギュレータにおいて、短絡状態がしばらく続いた場合の自動復帰動作の周期とその作用(出力電流の波形)を示す図である。
【
図6】
図5の周期および電流波形をマクロ的にみた図である。
【
図7】本発明の適用可能な複合電源ICのレイアウト構成を示す図である。
【
図8】従来技術における出力電流-出力電圧のフの字特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図を参照して本発明の好適な実施形態を説明する。
[実施形態におけるリニアレギュレータの全体構成]
【0016】
図1に、本発明の一実施形態におけるリニアレギュレータの全体構成を示す。このリニアレギュレータは、シリーズレギュレータとして構成され、負荷と直列でV
IN入力端子10とV
OUT出力端子12との間に出力トランジスタ14を設けている。
【0017】
VIN入力端子10には、電池、蓄電池または他の直流電源(図示せず)より出力電圧VOUTの設定値または定格値VRATより高い直流の電圧VINが入力される。VOUT出力端子12とグランド電位端子との間には、負荷だけでなく、出力コンデンサ16も接続される。
【0018】
このリニアレギュレータは、基本要素として主制御回路20および帰還電圧生成回路22を備えている。帰還電圧生成回路22は、VOUT出力端子12とグランド電位端子との間に直列に接続されている2つの抵抗24,26からなり、両抵抗間のノードN0より出力電圧VOUTに比例する分圧電圧を帰還電圧FBとして取り出すようにしている。
【0019】
主制御回路20は、出力電圧VOUTが定格値VRATに一致または近似するように、帰還電圧FBに応じて出力トランジスタ14のオン抵抗を可変するように構成されている。より詳しくは、主制御回路20は、固定の基準電圧VREF1を出力する基準電圧源28と、可変の基準電圧SSTを出力する基準電圧回路30と、基準電圧VREF1,SSTのうちの低い方を比較基準電圧に用いてそれと帰還電圧FBとの比較誤差を表す誤差信号ERを生成する誤差増幅器32と、誤差信号ERに応じて出力トランジスタ14の制御端子をノードN1を介して駆動するドライバ回路34とを有している。
【0020】
ここで、基準電圧源28より出力される固定の基準電圧VREF1は、出力電圧VOUTの定格値VRATに対応する固定の電圧レベルを有し、起動完了または復帰完了後の比較基準電圧に用いられる。これに対して、基準電圧回路30より出力される可変の基準電圧SSTは、第1の基準電圧VREF1より低いグランド電位とVREF1より高いVINレベル(入力電圧レベル)との間で可変の電圧レベルを有し、起動時または復帰時の比較基準電圧に用いられる。
【0021】
このリニアレギュレータは、LDO型のリニアレギュータとしても構成され、過電流制限回路36を備えている。この過電流制限回路36は、出力トランジスタ14を流れる出力電流IOUTを監視し、出力電流IOUTが予め設定された制限値ILIMを超えたときは、主制御回路20に優先してノードN1を介して出力トランジスタ14のゲート電圧を制御し、垂下特性で出力電流IOUTを制限するように構成されている。
【0022】
なお、シリーズレギュータにおいては、出力トランジスタ14の入力側で流れる電流IINと出力側で流れる電流IOUTとは全く同じ(電界効果型トランジスタの場合)か実質的に同じ(バイポーラ型トランジスタの場合)である。したがって、過電流制限回路36は、出力トランジスタ14の入力側で流れる電流IINを出力電流IOUTとして検出してもよい。
【0023】
さらに、このリニアレギュレータは、出力短絡、地絡、レアショート等の各種短絡状態が発生したときに電源回路および負荷回路を発熱や破壊から保護するための遮断・復帰回路(保護回路)40を具備している。
【0024】
遮断・復帰回路40は、帰還電圧生成回路22および過電流制限回路36を介して帰還電圧FBおよび出力電流IOUTを監視し、出力電流IOUTが過電流制限回路36による制限を受け、かつ帰還電圧FBが所定の電圧閾値FBTHを下回っている状態が一定の限度を超えたときに、出力トランジスタ14を完全にオフ状態にして主制御回路20の制御動作を止め、予め設定した休止時間DTを計時してから、出力トランジスタ14のオフ状態を解除して、主制御回路20の制御動作を再開させるように構成されている。
[実施形態におけるリニアレギュレータの具体的構成]
【0025】
図2に、この実施形態におけるリニアレギュレータの具体的な構成を示す。
【0026】
出力トランジスタ14はPMOSトランジスタからなり、ソースがVIN入力端子10に接続され、ドレインがVOUT出力端子12に接続され、ゲートがノードN1に接続されている。
【0027】
主制御回路20において、可変の基準電圧SSTを出力する直流電圧回路30は、VIN入力端子10に相当するVIN供給端子とグランド電位端子との間で定電流源42とコンデンサ44とを直列に接続し、両者間のノードN2より可変の基準電圧SSTを出力するようにしている。
【0028】
ノードN2は、誤差増幅器32の一方の非反転入力端子(+)に接続されるとともに、後述する遮断・復帰回路40のNMOSトランジスタ94のドレインおよびコンパレータ82の反転入力端子(-)にも接続されている。NMOSトランジスタ94がオフしている間は、コンデンサ44が定電流源42からの定電流によって満充電されており、ノードN2よりVINレベルの基準電圧SSTが誤差増幅器32およびコンパレータ82に与えられる。しかし、NMOSトランジスタ94がオンすると、コンデンサ44はノードN2およびオン状態のNMOSトランジスタ94を介して放電し、ノードN2よりグランド電位の基準電圧SSTが誤差増幅器32およびコンパレータ82に与えられる。そして、NMOSトランジスタ94がオン状態からオフ状態に変わると、定電流源42からの定電流がコンデンサ44に流れ込んで、コンデンサ44の充電電圧つまりノードN2上の基準電圧SSTがグランド電位からVINレベルまで線形的に上昇するようになっている。
【0029】
ドライバ回路34は、VIN供給端子とグランド電位端子との間で抵抗46とNMOSトランジスタ48とをノードN1を介して直列に接続している。ここで、NMOSトランジスタ48は、ソースがグランド電位端子に接続され、ドレインがノードN1に接続され、ゲートに誤差増幅器32からの誤差信号ERを入力する。
【0030】
かかる構成の主制御回路20においては、比較基準電圧(VREF1もしくはSST)に対して帰還電圧FBが低くなると、誤差信号ERの電圧レベルが高くなってNMOSトランジスタ48のドレイン電流i48ひいては抵抗46の電圧降下が増大して、ノードN1の電位つまり出力トランジスタ(PMOSトランジスタ)14のゲート電圧が下がる。これにより、出力トランジスタ14のドレイン電流つまり出力電流IOUTが増大する。反対に、帰還電圧FBが高くなると、各部が上記と反対方向に変化し、それによって出力電流IOUTが減少するようになっている。
【0031】
もっとも、後述する過電流制限回路36および遮断・復帰回路40もノードN1に接続されており、それらの回路36,40が動作するときは主制御回路20に優先して出力トランジスタ14のゲート電圧を制御するようになっている。
【0032】
過電流制限回路36は、PMOSトランジスタ50,52,54、抵抗56およびNMOSトランジスタ58を含んでいる。
【0033】
より詳しくは、PMOSトランジスタ50は、ソースがVIN入力端子10に接続され、ドレインがノードN3および抵抗56を介してグランド電位端子に接続され、ゲートがノードN1に接続されている。PMOSトランジスタ52は、ソースがVIN入力端子10に接続され、ドレインがノードN4に接続され、ゲートが該ドレインおよびノードN4に接続されている。PMOSトランジスタ54は、ソースがVIN入力端子10に接続され、ドレインがノードN1に接続され、ゲートがPMOSトランジスタ52のゲートおよびドレインに接続されている。両PMOSトランジスタ52,54はカレントミラー回路を構成している。NMOSトランジスタ58は、ソースがグランド電位端子に接続され、ドレインがノードN4に接続され、ゲートがノードN3に接続されている。
【0034】
この過電流制限回路36においては、PMOSトランジスタ50のゲートがノードN1を介して出力トランジスタ(PMOSトランジスタ)14のゲートと共通接続されている。これにより、PMOSトランジスタ50には出力電流IOUTに応じたドレイン電流i50が流れ、ノードN3に抵抗56の電圧降下としてドレイン電流i50ひいては出力電流IOUTに応じた電圧VN3が生成されるようになっている。
【0035】
そして、ノードN3の電圧VN3がNMOSトランジスタ58の閾値TH58を超えると、NMOSトランジスタ58がオンして、PMOSトランジスタ52のドレイン電流i52が流れるようになり、さらにはカレントミラー効果によりPMOSトランジスタ54でも同量または比例量のドレイン電流i54が流れるようになっている。このように、PMOSトランジスタ50,52,54をそれぞれ流れる電流は出力電流IOUTに対応している。この実施形態では、出力電流IOUTが許容値ILIMを超えたときにノードN3の電圧VN3がNMOSトランジスタ58の閾値TH58を超えるように、抵抗56の抵抗値が設定されている。なお、PMOSトランジスタ54のドレイン電流i54は、ノードN1を介してドライバ回路34のNMOSトランジスタ48のドレイン電流i48の一部となる。そのため、抵抗46の電圧降下が減少してN1の電圧が上昇し、過電流を抑制する。
【0036】
なお、ノードN3の電圧VN3がNMOSトランジスタ58の閾値TH58より低いときは、NMOSトランジスタ58はオフ状態になり、PMOSトランジスタ52,54にドレイン電流i52,i54は流れない。
【0037】
遮断・復帰回路40は、出力状態監視回路60、判定回路62、イネーブル回路64、ラッチ回路66およびタイマ回路100を有している。
【0038】
出力状態監視回路60は、VIN入力端子10とノードN5との間で2つのPMOSトランジスタ70,72を直列に接続している。ここで、一方のPMOSトランジスタ70は、出力電流IOUTを監視するためのものであり、ソースがVIN入力端子10に接続され、ドレインがPMOSトランジスタ72のソースに接続され、ゲートがノードN4を介して過電流制限回路36のPMOSトランジスタ52のドレインおよびゲートに接続されている。PMOSトランジスタ72がオンしているときに、PMOSトランジスタ70は、PMOSトランジスタ52のドレイン電流i52をカレントミラーまたはコピーしたドレイン電流i70を流すようになっている。
【0039】
PMOSトランジスタ72は、出力電圧VOUTまたは帰還電圧FBを監視するためのものであり、そのソースがPMOSトランジスタ70のドレインに接続され、そのドレインがノードN5に接続され、ゲートに帰還電圧生成回路22からの帰還電圧FBを入力する。PMOSトランジスタ72は、そのゲート電圧つまり帰還電圧FBが所定の電圧閾値FBTHより高いときはオフ状態を保ち、帰還電圧FBが該電圧閾値FBTHを下回るとオンするようになっている。なお、電圧閾値FBTHは、帰還電圧FBが異常低下したときにそれを早期に検知できる値が好ましく、たとえばFBTH=0.7~0.8VREF1に設定されてよい。
【0040】
ノードN5には、判定回路62およびイネーブル回路64も接続されている。判定回路62は、過電流状態になったときに、それが短絡によるものなのか、一時的な過負荷によるものなのかを判定するためのもので、コンデンサ74,抵抗76およびコンパレータ78を有している。コンデンサ74および抵抗76は、ノードN5とグランド電位端子との間で並列に接続されている。コンパレータ78は、一方の入力端子(+)がノードN5に接続され、他方の入力端子(-)が基準電圧源80に接続されている。基準電圧源80は、判定用の基準電圧VREF2を与える。
【0041】
コンデンサ74は、PMOSトランジスタ72がオンしている時にPMOSトランジスタ70のドレイン電流i70によって充電される。コンデンサ74の充電電圧つまりノードN5の電圧VCHGは、コンパレータ78により判定基準電圧VREF2と比較される。コンパレータ78の出力DETは、VCHG<VREF2のときはLレベルであり、VCHG>VREF2のときにHレベルになる。コンパレータ78の出力DETがLレベルからHレベルに変わると、後述するラッチ回路66がこれに応動するようになっている。
【0042】
イネーブル回路64は、コンパレータ82、基準電圧源84およびNMOSトランジスタ86を有する。コンパレータ82の一方の入力端子(-)には、主制御回路20の基準電圧回路30より可変基準電圧SSTが入力される。他方の入力端子(+)には、基準電圧源84より所定の基準電圧VREF3が入力される。コンパレータ82の出力は、SST<VREF3のときはHレベルであり、SST>VREF3のときはLレベルになる。なお、基準電圧VREF3はSSTの最大値であるVIレベルより幾らか低い値に設定される。
【0043】
NMOSトランジスタ86は、ソースがグランド電位端子に接続され、ドレインがノードN5に接続され、ゲートにコンパレータ82の出力を受ける。SST<VREF3のときは、コンパレータ82の出力はHレベルであり、NMOSトランジスタ86がオンしている。この状態では、コンデンサ74が充電不能であり、判定回路62はディスエーブル状態に置かれる。
【0044】
しかし、SST>VREF3になると、コンパレータ82の出力がLレベルになり、NMOSトランジスタ86がオフして、コンデンサ74が充電可能となり、判定回路62はイネーブル状態になる。
【0045】
ラッチ回路66は、RSフリップフロップ88、NMOSトランジスタ90,92,94、PMOSトランジスタ96および抵抗98を含んでいる。
【0046】
RSフリップフロップ88は、セット入力端子(S)が判定回路62のコンパレータ78の出力端子に接続され、出力端子(Q)がNMOSトランジスタ90,92,94のゲートおよびタイマ回路100の入力端子に接続され、リセット入力端子(R)がタイマ回路100の出力端子に接続されている。
【0047】
RSフリップフロップ88は、コンパレータ78の出力DETがLレベルからHレベルに変わったときに、これをラッチして(Q)出力SETをHレベルにセットし、各NMOSトランジスタ90,92,94に遮断のためのスイッチ動作を行わせるとともにタイマ回路100に自動復帰のための計時動作を行わせる。
【0048】
各NMOSトランジスタ90,92,94は、RSフリップフロップ88の(Q)出力SETに応じて連動してオン・オフする。すなわち、(Q)出力SETがLレベルのときは各NMOSトランジスタ90,92,94がオフしていて、(Q)出力SETがHレベルになると各NMOSトランジスタ90,92,94がオンするようになっている。
【0049】
NMOSトランジスタ90は、出力トランジスタ14を強制的にオフするためのスイッチとして機能し、ソースがグランド電位端子に接続され、ドレインがPMOSトランジスタ96のゲートに接続されるとともに抵抗98を介してVIN入力端子10に接続されている。PMOSトランジスタ96のソースはVIN入力端子10に接続され、ドレインはノードN1に接続されている。PMOSトランジスタ96は、NMOSトランジスタ90と主従関係を有するスイッチとして機能する。
【0050】
すなわち、NMOSトランジスタ90がオフしているときは、PMOSトランジスタ96もオフしていて、NMOSトランジスタ90がオンすると、PMOSトランジスタ96もオンするようになっている。PMOSトランジスタ96がオンすると、ノードN1がオン状態のPMOSトランジスタ96を介してVINレベルにクランプされ、出力トランジスタ14は完全なオフ状態になる。
【0051】
そして、復帰動作を行うときは、後述するようにRSフリップフロップ88の(Q)出力SETがHレベルからLレベルに変わることにより、NMOSトランジスタ90がオフし、それに伴ってPMOSトランジスタ96がオフ状態に切り替わる。
【0052】
NMOSトランジスタ92は、出力トランジスタ14を強制的にオフするときに、それと連動してドライバ回路34のNMOSトランジスタ48を強制的にオフするためのスイッチとして機能する。NMOSトランジスタ92のソースはグランド電位端子に接続され、ドレインはNMOSトランジスタ48のゲートに接続されている。
【0053】
NMOSトランジスタ92がオフしているとき、NMOSトランジスタ48は、誤差増幅器32からの誤差信号ERに応じて出力トランジスタ14を駆動することができる。しかし、NMOSトランジスタ92がオンすると、NMOSトランジスタ48のゲートがグランド電位にクランプされ、NMOSトランジスタ48は完全なオフ状態になる。
【0054】
そして、復帰動作を行うときは、RSフリップフロップ88の(Q)出力SETがHレベルからLレベルに変わって、NMOSトランジスタ92がオフすることにより、ドライバ回路34のNMOSトランジスタ48はイネーブル状態になる。
【0055】
NMOSトランジスタ94は、出力トランジスタ14を強制的にオフするときに、それと連動して基準電圧回路30の可変の基準電圧SSTをVINレベルからグランド電位に下げるためのスイッチとして機能する。NMOSトランジスタ94のソースはグランド電位端子に接続され、ドレインは基準電圧回路30のノードN2に接続されている。
【0056】
NMOSトランジスタ94がオフしているときは、基準電圧回路30において定電流源42がコンデンサ44を充電し、または満充電状態を維持し、コンデンサ44の充電電圧が基準電圧SSTとしてノードN2より誤差増幅器32およびコンパレータ82に出力される。しかし、NMOSトランジスタ94がオンすると、コンデンサ44が放電して、ノードN2上の基準電圧SSTは瞬時にVINレベルからグランド電位に下がる。
【0057】
復帰動作を行うときは、RSフリップフロップ88の(Q出力)SETがHレベルからLレベルに変わって、NMOSトランジスタ94がオフすることにより、基準電圧回路30ではコンデンサ44が定電流源42からの定電流によって充電され、ノードN2上の基準電圧SSTはグランド電位からVINレベルまで漸次的に上昇する。
【0058】
タイマ回路100は、たとえばクロック生成回路およびカウンタ回路を有し、RSフリップフロップ88の(Q)出力SETがLレベルからHレベルに変わったときにそれに応動して計時動作を開始し、予め設定した休止時間DTを計時してから、RSフリップフロップ88のリセット入力端子(R)にHレベルのリセット信号RESETを与えるように構成されている。なお、休止時間DTは、任意の長さに設定可能であり、たとえば数100ミリ秒に設定される。
【0059】
RSフリップフロップ88は、タイマ回路100からのリセット信号RESETを受け取ると、それに応動して(Q)出力SETをそれまでのHレベルからLレベルに変える。そうすると、各NMOSトランジスタ90,92,94がオン状態からオフ状態に変わり、復帰動作が開始される。
[実施形態におけるリニアレギュレータの作用]
【0060】
以下に、
図3A~
図3C、4A~
図4C、
図5および
図6を参照してこのリニアレギュレータの過電流状態における作用を説明する。
《出力短絡の場合》
【0061】
図3Aは、出力短絡によって過電流の状態が起きた場合の各部の状態または波形を示す。
図4Aは、
図3Aの場合における出力電流I
OUT-出力電圧V
OUTの特性を示す。
【0062】
この場合、時点t0までは出力状態が安定しており、過電流制限回路36および遮断・復帰回路40のいずれも動作していない。過電流制限回路36においては、PMOSトランジスタ50が出力電流IOUTをカレントミラーしたドレイン電流i50を流しているが、ノードN3の電圧VN3がNMOSトランジスタ58の閾値TH58より低いため、制限動作スイッチのNMOSトランジスタ58はオフ状態にあり、それによってカレントミラー回路の両PMMOSトランジスタ52,54がオフしている。
【0063】
遮断・復帰回路40においても、帰還電圧監視用スイッチのPMOSトランジスタ72がオフしているため、ノードN5の電圧VCHGはグランド電位にあり、判定回路62においてコンパレータ78の出力DETはLレベル、ラッチ回路66においてRSフリップフロップ88の(Q)出力SETはLレベル、NMOSトランジスタ90,92,94はオフ状態、PMOSトランジスタ96もオフ状態に置かれている。タイマ回路100は計時動作を行っていない。
【0064】
これにより、出力トランジスタ14のゲート電圧は、ノードN1を介して専ら主制御回路20により制御される。この時、ドライバ回路34のNMOSトランジスタ48は誤差信号ERに応じたドレイン電流i48を流し、抵抗46にも同じ電流i48が流れ、入力電圧VINより抵抗46の電圧降下だけ低い電圧がノードN1を介して出力トランジスタ14のゲートに与えられる。主制御回路20の負帰還制御が働くことにより、入力電圧VINや出力電流IOUTに多少の変動があっても、出力電圧VOUTが定格値VRAT付近で安定に維持されている。
【0065】
しかし、時点t0で出力短絡が起こり、それによって出力電流IOUTが急激に増大して制限値ILIMを超えるや否や、過電流制限回路36が動作する。すなわち、出力電流IOUTが制限値ILIMを超えた瞬間に、ノードN3の電圧VN3がNMOSトランジスタ58の閾値TH58を超え、制限動作スイッチのNMOSトランジスタ58がオンする。そうすると、PMOSトランジスタ52がドレイン電流i52を流し始め、PMOSトランジスタ54がドレイン電流i52をカレントミラーまたはコピーしたドレイン電流i54を流す。このPMOSトランジスタ54のドレイン電流i54は、PMOSトランジスタ50のドレイン電流i50に対応し、ひいては出力トランジスタ14を流れる出力電流IOUTに対応している。
【0066】
PMOSトランジスタ54のドレイン電流i54は、抵抗46を流れる電流にノードN1で合流して、ドライバ回路34のNMOSトランジスタ48のドレイン電流i48の一部となる。これによって、NMOSトランジスタ48のドレイン電流i48が同じでも、抵抗46を流れる電流はPMOSトランジスタ54のドレイン電流i54のぶんだけ減少する。こうして、出力トランジスタ14のゲート電圧はPMOSトランジスタ54のドレイン電流i54により律速されて高くなり、出力電流IOUTが制限値ILIM以下またはその近辺に制限される。
【0067】
本来、主制御回路20においては、出力電圧VOUTが低下すれば、誤差増幅器32の出力電圧つまり誤差信号ERの電圧が高くなって、ドライバ回路34のNMOSトランジスタ48のドレイン電流i48が増加し、それによってノードN1の電圧つまり出力トランジスタ14のゲート電圧が下がり、出力電流IOUTが増加するはずである。しかし、過電流制限回路36が動作するときは、PMOSトランジスタ54のドレイン電流i54がノードN1の電圧つまり出力トランジスタ14のゲート電圧を支配的に制御し、出力電流IOUTを制限値ILIM付近に制限するようになっている。
【0068】
一方、出力短絡が起きると、負荷側で出力コンデンサ16が瞬時に放電して、出力電圧VOUTがグランド電位付近まで急激に下がり、それに応じて帰還電圧FBもグランド電位付近まで急激に下がる。この時、正確には帰還電圧FBが電圧閾値FBTHを下回った時(時点t1)、遮断・復帰回路40で出力状態監視回路60のPMOSトランジスタ72がオンし、PMOSトランジスタ70が出力トランジスタ14の出力電流IOUTをカレントミラーしたドレイン電流i70を流し始め、このドレイン電流i70によるコンデンサ74の充電が開始される。なお、イネーブル回路64では、SST>VREF3であるから、コンパレータ82の出力がLレベルで、NMOSトランジスタ86はオフしている。
【0069】
そして、過電流制限回路36が上記のようにして出力電流IOUTを制限値ILIM付近に制限し、かつ帰還電圧FBが電圧閾値FBTHを下回っている状態がそのまま持続すると、やがて遮断・復帰回路40の判定回路62においてノードN5の電圧VCFGが監視値VREF2を超えた時(時点t2)、コンパレータ78の出力DETがLレベルからHレベルに変わる。そうすると、これに応動してラッチ回路66のRSフリップフロップ88の(Q)出力SETがLレベルからHレベルに変わり、NMOSトランジスタ90,92,94,96がそれぞれオンすることによって、出力トランジスタ14を強制的に完全なオフ状態にし、主制御回路20の制御動作を止める。
【0070】
こうして、出力トランジスタ14が完全にオフ状態になることで、出力電流IOUTは全く流れなくなり、出力電圧VOUTもグランド電位に保持され、完全な出力停止状態になる。このような完全出力停止状態の下では、負荷はもちろん出力トランジスタ14が発熱することも一切ない。なお、出力電流IOUTが遮断されると、過電流制限回路36内でも内部電流は一切流れなくなり、各トランジスタ50,52,54,58はオフ状態に置かれる。また、遮断・復帰回路40内でも、PMOSトランジスタ70がオフしてドレイン電流i70を流さなくなり、コンデンサ74はNMOSトランジスタ86により放電する。
【0071】
一方、RSフリップフロップ88の(Q)出力SETがLレベルからHレベルに変わった時(時点t2)から、タイマ回路100が計時動作を開始する。そして、所定の休止時間DTを計時した時(時点t3)に、タイマ回路100がリセット信号RESETを出力し、それに応動してRSフリップフロップ88が(Q)出力SETをLレベルに戻す。そうすると、NMOSトランジスタ90,92,94,96がそれぞれオフし、出力トランジスタ14、ドライバ回路34のNMOSトランジスタ48および基準電圧回路30が遮断・復帰回路40から解放される。そして、次のようなソフトスタートによる復帰動作が開始される。
【0072】
すなわち、遮断・復帰回路40のNMOSトランジスタ90およびPMOSトランジスタ96がオフすることによって、出力トランジスタ14のゲートまたはノードN1が強制オフのクランプ電位(VIN)から解放される。また、NMOSトランジスタ92がオフすることによって、主制御回路20内でドライバ回路34のNMOSトランジスタ48のゲートが強制オフのクランプ電位(グランド電位)から解放される。一方、NMOSトランジスタ94がオフすることによって、基準電圧回路30内でコンデンサ44が充電され、ノードN2上の基準電圧SSTがグランド電位からVINレベルに漸次的に上昇する。
【0073】
こうして、過電流制限回路36および遮断・復帰回路40の双方が停止状態にある中で、主制御回路20がイネーブル状態となり、基準電圧回路30内で漸次的に上昇する可変の基準電圧SSTが固定の基準電圧VREF1を超えるまで誤差増幅器32の比較基準電圧に用いられることにより、休止時間DTの間に出力短絡が解除されていたと仮定すれば、
図3Aに示すように、基準電圧SSTの上昇とともに出力電流I
OUT,出力電圧V
OUTおよび帰還電圧FBも漸次的に増大または上昇し、正常な出力状態に復帰する。
【0074】
このように、このリニアレギュレータにおいて、負荷側のインピーダンスが略零で出力短絡が起こった場合は、
図4Aに示すような出力電流I
OUT-出力電圧V
OUTの特性が得られる。従来技術のフの字特性(
図8)とは異なり、出力停止期間中は出力電圧V
OUTが零になるだけでなく出力電流I
OUTも全く流れないため、出力トランジスタ14の発熱は全くない。しかも、出力短絡に対して出力トランジスタ14を完全にオフ状態にした後、一定の休止時間DTが経過すれば自動的に復帰動作を行って正常な出力状態に戻すことができる。
【0075】
また、本実施形態における遮断・復帰回路40は、所定の閾値(FBTH)や監視値(VREF2)を用いて当該過電流が短絡によるものであると判定したときは、直ちに出力トランジスタ14を強制的にオフする。このように、遮断・復帰回路40は、主制御回路20のフィードバック制御系から独立して、ロジック的な制御動作を行う。このため、主制御回路20のフィードバック制御系が異常発振を起すことがなく、位相補償用のコンデンサが不要となっている。
《レアショートの場合》
【0076】
図3Bは、それほど低くないインピーダンスの短絡(たとえば地絡あるいはレアショート)が起こった場合の各部の状態または波形を示す。
図4Bは、
図3Bの場合における出力電流I
OUT-出力電圧V
OUTの特性を示す。
【0077】
この場合も、時点t
0までは出力状態が安定しており、上述した出力短絡の場合(
図3A)と同様に、過電流制限回路36および遮断・復帰回路40のいずれも動作しておらず、入力電圧V
INや出力電流I
OUTに多少の変動があっても、主制御回路20の負帰還制御により出力電圧V
OUTが定格値V
RAT付近で安定に維持されている。
【0078】
そして、時点t
0付近で地絡あるいはレアショートが起きて出力電流I
OUTが制限値I
LIMを超えた直後の各部の動作も上述した出力短絡の場合(
図3A)と大体同じである。ただし、出力短絡の場合とは異なり、負荷のインピーダンスが極端に低くはならないので、出力電圧V
OUTは出力コンデンサ14の放電特性に倣って比較的緩やかに下がる。このため、帰還電圧FBが電圧閾値FB
THを下回る時のタイミングが少し遅くなり、それによって遮断・復帰回路40において監視スイッチのPMOSトランジスタ72がオンするタイミングおよび判定回路62のコンデンサ74が充電を開始するタイミング(t
1’)が遅くなる。
【0079】
しかし、この場合でも、過電流制限回路36が出力電流IOUTを制限値ILIM近辺に制限し、かつ帰還電圧FBが電圧閾値FBTHを下回る状態がしばらく持続する限り、遮断・復帰回路40においてコンデンサ74の充電電圧VCHGが監視値VREF2を超え、このタイミング(時点t2’)でコンパレータ78の出力DETがLレベルからHレベルに変わって、RSフリップフロップ88の(Q)出力SETがLレベルからHレベルに変わる。その結果、上記と同様な仕方で、出力トランジスタ14が完全なオフ状態となり、主制御回路20の制御動作も止まる。そして、その後の措置も出力短絡の場合と全く同じであり、休止時間DTの経過後に上記のようなソフトスタートによる復帰動作が行われる。
【0080】
こうして、負荷側のインピーダンスがそれほど低くならない短絡が起こった場合は、
図4Bに示すような出力電流I
OUT-出力電圧V
OUTの特性が得られる。この場合も、従来技術のフの字特性(
図8)とは異なり、出力停止期間中は出力電流I
OUTが全く流れない(しかも出力電圧V
OUTが零になる)ため、出力トランジスタ14の発熱は全くなく、負荷の発熱も全くない。また、出力トランジスタ14を完全にオフ状態に保持しても、所定の休止時間DTの経過後に自動的に復帰動作を行って正常な出力電流I
OUTおよび出力電圧V
OUTに戻すことができる。さらには、出力電流I
OUTおよび出力電圧V
OUTを制御する過程で主制御回路20のフィードバック制御系が発振を起すこともない。
《一時的な過負荷の場合》
【0081】
図3Cは、一時的な過負荷による過電流が生じた場合の各部の状態または波形を示す。
図4Cは、
図3Cの場合における出力電流I
OUT-出力電圧V
OUTの特性を示す。
【0082】
この場合、先ず過電流制限回路36が動作して出力電流IOUTを制限値ILIM付近に制限する。そして、帰還電圧FBが電圧閾値FBTHを下回れば、遮断・復帰回路40も動作を開始し、コンデンサ74の充電電圧VCHGが上昇する。しかし、今回の過電流が過負荷による一時的なものであって、出力電圧VOUTが直ぐに定格値VRAT付近まで回復し、帰還電圧FBが電圧閾値FBTHより高くなると、そのタイミング(時点ta)で監視スイッチのPMOSトランジスタ72がオフし、コンデンサ74の充電が監視値VREF2に到達する前に止まる。
【0083】
こうして、遮断・復帰回路40内では、コンパレータ78の出力DETがLレベルの状態を保ち、RSフリップフロップ88の(Q)出力SETもLレベルの状態を保つ。その結果、遮断・復帰回路40が、出力トランジスタ14を強制的にオフ状態にすることはなく、また、ドライバ回路32の制御動作を止めることもなければ、基準電圧回路30の可変基準電圧SSTをグランド電位に下げることもない。
【0084】
こうして、一時的な過負荷による過電流が生じた場合は、
図4Cに示すような出力電流I
OUT-出力電圧V
OUTの特性が得られる。従来技術のフの字特性(
図8)とは異なり、制限値I
LIMを超えた出力電流I
OUTが過電流制限回路36によって制限され、出力電圧V
OUTがいったん下がっても、すぐに過負荷状態が解除されて出力電圧V
OUTが電圧閾値FB
THより高くなれば、遮断・復帰回路40が出力トランジスタ14の強制オフを見送るようになっている。また、過負荷による過電流が長引いて遮断・復帰回路40が出力トランジスタ14をいったんオフにしても、休止時間DTの経過後に上記のようなソフトスタートの復帰動作が自動的に行われるので、過負荷状態が解除され次第正常な出力状態に戻すことができる。
【0085】
なお、
図3Aおよび
図3Bのように各種短絡が起きて遮断・復帰回路40が出力トランジスタ14をいったんオフ状態にした後も、当該短絡状態がしばらく持続する場合は、
図5に示すように、ソフトスタートにより一定の勾配で立ち上がった出力電流I
OUTがそのまま制限値I
LIMを超えて過電流制限回路36による制限を受け、かつ遮断・復帰回路40により遮断される。こうして、ソフトスタートの復帰動作が休止時間DTを挟んで数回ないし多数回繰り返される。
【0086】
この場合、休止時間DTが数100ミリ秒であるのに対し、ソフトスタート中に出力電流I
OUTが流れる時間FTはほんの数ミリ程度である。したがって、マクロ的にみれば、
図6に示すように、短絡状態が継続している間にソフトスタートの復帰動作によって間欠的に出力電流I
OUTが流れる時間はほんの一瞬であり、消費電流や発熱は無視できるほど少ない。
[他の実施形態又は変形例]
【0087】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、上述した実施形態は本発明を限定するものではない。当業者にあっては、具体的な実施態様において本発明の技術思想および技術範囲から逸脱せずに種々の変形・変更を加えることが可能である。
【0088】
たとえば、上述した実施形態において、遮断・復帰回路40は、過電流制限回路36の内部電流を介して出力電流IOUTを監視したが、過電流制限回路36を介さずに直接出力電流IOUTを監視する構成とすることも可能である。
【0089】
上述した実施形態においては、遮断・復帰回路40が出力トランジスタ14を完全にオフ状態にして主制御回路20の制御動作を止めるときは、PMOSトランジスタ70をオンし、出力トランジスタ14のゲートをノードN1およびオン状態のPMOSトランジスタ70を介してVINレベルにクランプする第1の遮断動作と、主制御回路20に対してはNMOSトランジスタ94をオンして、ドライバ回路34のNMOSトランジスタ48のゲートをグランド電位にクランプする第2の遮断動作とを併用した。このように、出力トランジスタ14のオフ動作および主制御回路20の停止動作を同時かつ個別に行う二重の遮断動作により、本発明による完全オフ状態への移行を高速確実に行うことができる。しかし、高速確実性の一定の低下を伴うが、上記第1の遮断動作または第2の遮断動作の一方を省く構成も可能である。
【0090】
また、上述した実施形態では、出力トランジスタ14の出力状態として出力電流IOUTおよび帰還電圧FBを監視したが、他のパラメータ(たとえばドライバ回路34の入出力状態など)の監視で代替することも可能である。
【0091】
本発明のリニアレギュレータは、MOSトランジスタを主たる回路素子とする半導体集積回路(IC)として製作される。その場合、1チップの半導体基板上に単一の電源ICとして製作されてもよいが、複合電源ICの中に作り込まれてもよい。
【0092】
図7に、複合電源ICの一例を示す。この複合電源ICは、1チップの半導体基板上に2つのスイッチングレギュレータ100,102と1つのリニアレギュレータ104を搭載する。ここで、リニアレギュレータ104は、スイッチングレギュレータ100の出力電圧V
OUT1をV
IN入力端子10に入力し、V
OUT出力端子12から電圧V
OUT1より電圧レベルは低いが低リップルおよび低ノイズの出力電圧V
OUT3を出力する。
【0093】
このような複合電源ICにおいては、リニアレギュレータ104の発熱が多いと、そこから隣のスイッチングレギュレータ100,102に熱が伝わるだけでなく、半導体基板に熱歪が生じることによって、スイッチングレギュレータ100,102の誤動作を引き起こすことがある。かかる課題は、リニアレギュレータ104に本発明を適用することによって解決することができる。
【符号の説明】
【0094】
10 VIN入力端子
12 VOUT出力端子
14 出力トランジスタ
20 主制御回路
22 帰還電圧生成回路
28 (固定)基準電圧源
30 (可変)基準電圧回路
32 誤差増幅器
34 ドライバ回路
36 過電流制限回路
40 遮断・復帰回路
50,52,54 PMOSトランジスタ
58 NMOSトランジスタ
70,72 PMOSトランジスタ
74 コンデンサ
78 コンパレータ
88 RSフリップフロップ
90,92,94 NMOSトランジスタ
96 PMOSトランジスタ
100 タイマ回路