(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-29
(45)【発行日】2023-10-10
(54)【発明の名称】光モジュール及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 6/12 20060101AFI20231002BHJP
G02B 6/42 20060101ALI20231002BHJP
G02B 6/13 20060101ALI20231002BHJP
H01S 5/0234 20210101ALI20231002BHJP
H01S 5/0236 20210101ALI20231002BHJP
H01S 5/0237 20210101ALI20231002BHJP
【FI】
G02B6/12 301
G02B6/42
G02B6/13
H01S5/0234
H01S5/0236
H01S5/0237
(21)【出願番号】P 2019222297
(22)【出願日】2019-12-09
【審査請求日】2022-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000190688
【氏名又は名称】新光電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】柳沢 賢司
(72)【発明者】
【氏名】戸谷 公一
【審査官】堀部 修平
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-206377(JP,A)
【文献】特開2008-216712(JP,A)
【文献】特開2013-097147(JP,A)
【文献】特開2019-200373(JP,A)
【文献】特開2006-059883(JP,A)
【文献】特開2011-081071(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0266062(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/12 - 6/14
G02B 6/40 - 6/42
H01S 5/022 - 5/0239
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極を有する配線基板と、
前記配線基板の上に設けられた光導波路と、
前記光導波路の上に設けられ、第2電極を有する光素子と、
前記第1電極に前記第2電極を接合する第1導電性接合材と、
前記光素子を前記光導波路に固定する固定部材と、
前記光導波路と前記光素子との間に充填され、前記光素子が出力又は入力する光が透過するアンダーフィル樹脂と、
を有し、
前記光導波路は、コア層と、前記コア層の前記配線基板側に設けられた第1クラッド層と、前記コア層の前記配線基板とは反対側に設けられた第2クラッド層と、前記コア層または前記第2クラッド層に設けられた光路変換ミラーと、を有し、
前記光素子は、前記光路変換ミラーを介して前記コア層の一端に光結合されており、
前記アンダーフィル樹脂の軟化点は、前記第1導電性接合材の融点よりも低く、
前記固定部材の軟化点は、前記第1導電性接合材の融点よりも高いことを特徴とする光モジュール。
【請求項2】
前記第1導電性接合材は、はんだであることを特徴とする請求項1に記載の光モジュール。
【請求項3】
前記配線基板の上に設けられ、第3電極を有する電子回路チップと、
前記第1電極に前記第3電極を接合する第2導電性接合材と、
を有し、
前記固定部材の軟化点は、前記第2導電性接合材の融点よりも高いことを特徴とする請求項1又は2に記載の光モジュール。
【請求項4】
前記第2導電性接合材は、はんだであることを特徴とする請求項3に記載の光モジュール。
【請求項5】
前記固定部材は、ポッティング樹脂であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の光モジュール。
【請求項6】
前記固定部材は、平面視で、少なくとも、前記コア層が延在する第1方向に直交する第2方向において、前記光素子の両端部を前記光導波路に固定することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の光モジュール。
【請求項7】
前記固定部材は、平面視で、前記第1方向において、前記光素子の前記光路変換ミラーから離間する側の端部を前記光導波路に固定することを特徴とする請求項6に記載の光モジュール。
【請求項8】
前記光導波路には、前記第1クラッド層、前記コア層及び前記第2クラッド層を厚さ方向で貫通する貫通孔が形成されており、
前記第2電極は、前記貫通孔を通じて前記第1導電性接合材により前記第1電極に接合されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の光モジュール。
【請求項9】
第1電極を有する配線基板の上に光導波路を設ける工程と、
第2電極を有する光素子
を前記光導波路の上に設け、第1導電性接合材により前記第1電極に前記第2電極を接合する工程と、
前記光素子を前記光導波路に固定する固定部材を形成する工程と、
前記固定部材を形成する工程の後に、前記光導波路と前記光素子との間に、前記光素子が出力又は入力する光が透過
するアンダーフィル樹脂を充填する工程と、
を有し、
前記光導波路は、コア層と、前記コア層の前記配線基板側に設けられた第1クラッド層と、前記コア層の前記配線基板とは反対側に設けられた第2クラッド層と、前記コア層または前記第2クラッド層に設けられた光路変換ミラーと、を有し、
前記光素子は、前記光路変換ミラーを介して前記コア層の一端に光結合され、
前記アンダーフィル樹脂の軟化点は、前記第1導電性接合材の融点よりも低く、
前記固定部材の軟化点は、前記第1導電性接合材の融点よりも高く、
前記固定部材を形成する工程は、
未硬化の樹脂を塗布する工程と、
前記未硬化の樹脂を前記第1導電性接合材の融点よりも低い温度で硬化させて前記固定部材に変化させる工程と、
を有することを特徴とする光モジュールの製造方法。
【請求項10】
前記第1導電性接合材として、はんだを用いることを特徴とする請求項9に記載の光モジュールの製造方法。
【請求項11】
前記配線基板の上に、第3電極を有する電子回路チップを、前記第1電極と前記第3電極との間に第2導電性接合材を挟んで載置する工程と、
前記第2導電性接合材の融点よりも高く、前記固定部材の軟化点よりも低い温度でリフローを行うことで、前記第2導電性接合材により前記第1電極に前記第3電極を接合する工程と、
を有することを特徴とする請求項9又は10に記載の光モジュールの製造方法。
【請求項12】
前記第2導電性接合材として、はんだを用いることを特徴とする請求項11に記載の光モジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光モジュール及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
配線基板の上に光導波路が設けられ、光導波路の上に光素子が設けられた光モジュールがある。光素子の電極が配線基板の電極に接合されて、光素子が配線基板に固定されている。光モジュールでは、光素子が送信又は受信する光信号が光導波路を伝播する。光素子と光導波路との間にアンダーフィル樹脂が設けられることもある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-102312号公報
【文献】特開2016-126039号公報
【文献】特開2000-347051号公報
【文献】特開2015-230481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の光モジュールにおいて、光素子が出力又は入力する光信号に損失が生じることがある。
【0005】
本開示は、光信号の損失を低減することができる光モジュール及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一形態によれば、第1電極を有する配線基板と、前記配線基板の上に設けられた光導波路と、前記光導波路の上に設けられ、第2電極を有する光素子と、前記第1電極に前記第2電極を接合する第1導電性接合材と、前記光素子を前記光導波路に固定する固定部材と、前記光導波路と前記光素子との間に充填され、前記光素子が出力又は入力する光が透過するアンダーフィル樹脂と、を有し、前記光導波路は、コア層と、前記コア層の前記配線基板側に設けられた第1クラッド層と、前記コア層の前記配線基板とは反対側に設けられた第2クラッド層と、前記コア層または前記第2クラッド層に設けられた光路変換ミラーと、を有し、前記光素子は、前記光路変換ミラーを介して前記コア層の一端に光結合されており、前記アンダーフィル樹脂の軟化点は、前記第1導電性接合材の融点よりも低く、前記固定部材の軟化点は、前記第1導電性接合材の融点よりも高い光モジュールが提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、光信号の損失を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る光モジュールの概要を示す平面図である。
【
図2】実施形態に係る光モジュールを示す断面図である。
【
図3】実施形態に係る光モジュールの製造方法を示す断面図(その1)である。
【
図4】実施形態に係る光モジュールの製造方法を示す断面図(その2)である。
【
図5】実施形態に係る光モジュールの製造方法を示す断面図(その3)である。
【
図6】実施形態に係る光モジュールの製造方法を示す断面図(その4)である。
【
図7】実施形態に係る光モジュールの製造方法を示す断面図(その5)である。
【
図8】実施形態に係る光モジュールの製造方法を示す断面図(その6)である。
【
図9】実施形態に係る光モジュールの製造方法を示す断面図(その7)である。
【
図10】実施形態に係る光モジュールの製造方法を示す断面図(その8)である。
【
図11】変形例における固定部材の配置を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本願発明者らは、光素子が送信又は受信する光信号に損失が生じる原因を究明すべく鋭意検討を行った。この結果、従来は認識されていない光素子と光導波路との間での位置ずれが生じ得ることが判明した。上記のように、光素子の電極は配線基板に設けられた電極に接合されている。この接合は高精度で行うことができる。従って、光素子の搭載直後においては、光素子と光導波路とは高精度で位置合わせされている。ところが、光素子の搭載の後で、配線基板の上に電子回路チップが搭載され、この搭載の際にリフローが行われる。例えば、光素子が発光素子であれば、ドライバのチップが搭載され、光素子が受光素子であれば、トランスインピーダンスアンプ(TransImpedance Amplifier:TIA)のチップが搭載される。このため、電子回路チップの搭載の際に、光素子の電極を配線基板の電極に接合しているはんだが溶融し、光素子の位置がずれたり、光素子が傾いたりして、光素子と光導波路との間での位置ずれが生じ得る。光素子と光導波路との間にアンダーフィル樹脂が設けられていたとしても、光素子と光導波路との間に設けられるアンダーフィル樹脂は低温で軟化するため、このような位置ずれを抑制することはできない。光素子と光導波路との間での位置ずれは、光素子のチャンネル数が多いほど顕著である。
【0010】
本願発明者らは、このような新たな知見に基づき、電子回路チップの搭載の際に生じ得る位置ずれを抑制すべく更に鋭意検討を行った。この結果、電子回路チップの搭載の前に、ポッティング樹脂等の所定の物性を備えた固定部材、例えば樹脂製の固定部材によって光素子を光導波路に固定しておくことで、光信号の損失を抑制できることが判明した。
【0011】
以下、実施形態について添付の図面を参照しながら具体的に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省くことがある。
【0012】
[光モジュールの構造]
まず、実施形態に係る光モジュールの構造について説明する。
図1は、実施形態に係る光モジュールの概要を示す平面図である。
図2は、実施形態に係る光モジュールを示す断面図である。
【0013】
図1及び
図2に示すように、実施形態に係る光モジュール1は、配線基板100と、光導波路200と、発光素子300と、光学部品400と、電子回路チップ500と、固定部材600とを有している。光導波路200、光学部品400及び電子回路チップ500は配線基板100上に設けられている。発光素子300は光導波路200上に設けられている。本開示において、配線基板の主面の法線方向をZ軸方向とし、右手系でZ軸方向に垂直な面内における互いに直交する2つの方向をX軸方向及びY軸方向とする。また、プラスのZ軸方向を上方とする。また、本開示において、平面視とは、Z軸方向、すなわち配線基板の主面に垂直な方向から視ることをいう。但し、光モジュールは天地逆の状態で用いることができ、任意の角度で配置することもできる。
【0014】
配線基板100において、コア基板130の両面に配線層及び絶縁層が積層されている。具体的には、配線基板100において、コア基板130の一方の面(上面)上には、配線層132と、絶縁層133と、配線層134と、絶縁層135と、配線層136と、ソルダレジスト層137とが順次積層されている。また、コア基板130の他方の面(下面)上には、配線層142と、絶縁層143と、配線層144と、ソルダレジスト層145とが順次積層されている。
【0015】
コア基板130としては、例えば、ガラスクロスにエポキシ系樹脂等の絶縁性樹脂を含浸させた所謂ガラスエポキシ基板等を用いることができる。コア基板130として、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維等の織布や不織布にエポキシ系樹脂やポリイミド系樹脂等を含浸させた基板等を用いてもよい。コア基板130の厚さは、例えば、60μm~400μm程度とすることができる。コア基板130には、コア基板130を厚さ方向に貫通する貫通孔130xが設けられている。貫通孔130xの平面形状は例えば円形である。
【0016】
配線層132は、コア基板130の上面上に形成されている。また、配線層142は、コア基板130の下面上に形成されている。配線層132と配線層142とは、貫通孔130x内に形成された貫通配線131により電気的に接続されている。配線層132及び142は、各々所定の平面形状にパターニングされている。配線層132及び142、並びに貫通配線131の材料としては、例えば、Cu等を用いることができる。配線層132及び142の厚さは、例えば、10μm~30μm程度とすることができる。なお、配線層132と配線層142と貫通配線131とは一体に形成されたものであってもよい。
【0017】
絶縁層133は、コア基板130の上面上に配線層132を覆うように形成されている。絶縁層133の材料としては、例えば、エポキシ系樹脂やポリイミド系樹脂を主成分とする絶縁性樹脂等を用いることができる。絶縁層133の厚さは、例えば30μm~40μm程度とすることができる。絶縁層133は、シリカ(SiO2)等のフィラーを含有することができる。
【0018】
配線層134は、絶縁層133の上側に形成されている。配線層134は、絶縁層133を貫通し配線層132の上面を露出するビアホール133x内に充填されたビア配線と、絶縁層133の上面上に形成された配線パターンとを含んでいる。配線層134は、配線層132と電気的に接続されている。ビアホール133xは、絶縁層135側に開口されている開口部の径が配線層132の上面によって形成された開口部の底面の径よりも大きい逆円錐台状の凹部とすることができる。配線層134の材料や配線層134を構成する配線パターンの厚さは、例えば、配線層132と同様とすることができる。
【0019】
絶縁層135は、絶縁層133の上面上に配線層134を覆うように形成されている。絶縁層135の材料や厚さは、例えば、絶縁層133と同様とすることができる。絶縁層135は、シリカ等のフィラーを含有することができる。
【0020】
配線層136は、絶縁層135の上側に形成されている。配線層136は、絶縁層135を貫通し配線層134の上面を露出するビアホール135x内に充填されたビア配線と、絶縁層135の上面上に形成された配線パターン136A及び136Bとを含んでいる。配線パターン136Aは、発光素子300及び電子回路チップ500に接続される。配線パターン136Bは、配線パターン136Aから絶縁され、電子回路チップ500に接続される。配線層136は、配線層134と電気的に接続されている。ビアホール135xは、ソルダレジスト層137側に開口されている開口部の径が配線層134の上面によって形成された開口部の底面の径よりも大きい逆円錐台状の凹部とすることができる。配線層136の材料や厚さは、例えば、配線層134と同様とすることができる。配線パターン136Aは第1電極の一例である。
【0021】
ソルダレジスト層137は、配線基板100の上側の最外層であり、絶縁層135の上面上に、配線層136を覆うように選択的に形成されている。ソルダレジスト層137は、例えば、エポキシ系樹脂やアクリル系樹脂等の感光性樹脂等から形成することができる。ソルダレジスト層137の厚さは、例えば15μm~35μm程度とすることができる。
【0022】
ソルダレジスト層137は、複数の開口部137xを有し、開口部137xの底部には配線層136の上面の一部が露出している。例えば、開口部137xの底部には配線パターン136Aの上面が露出している。開口部137xの平面形状は、例えば、円形とすることができる。必要に応じ、開口部137x内に露出する配線層136の上面に金属膜を形成したり、OSP(Organic Solderability Preservative)処理等の酸化防止処理を施したりしてもよい。金属膜の例としては、Au層や、Ni/Au層(Ni層とAu層をこの順番で積層した金属膜)、Ni/Pd/Au層(Ni層とPd層とAu層をこの順番で積層した金属膜)等を挙げることができる。
【0023】
開口部137x内に露出する配線層136の複数箇所上にそれぞれ導電性接合材170が設けられている。複数の導電性接合材170は、配線パターン136A上に設けられた導電性接合材170Aを含む。導電性接合材170は、例えば、はんだバンプである。はんだバンプの材料としては、例えばPbを含む合金、SnとCuの合金、SnとAgの合金、SnとAgとCuの合金等を用いることができる。導電性接合材170Aは第2導電性接合材の一例である。
【0024】
絶縁層143は、コア基板130の下面上に配線層142を覆うように形成されている。絶縁層143の材料や厚さは、例えば、絶縁層133と同様とすることができる。絶縁層143は、シリカ等のフィラーを含有することができる。
【0025】
配線層144は、絶縁層143の下側に形成されている。配線層144は、絶縁層143を貫通し配線層142の下面を露出するビアホール143x内に充填されたビア配線と、絶縁層143の下面上に形成された配線パターンとを含んでいる。配線層144は、配線層142と電気的に接続されている。ビアホール143xは、ソルダレジスト層145側に開口されている開口部の径が配線層142の下面によって形成された開口部の底面の径よりも大きい円錐台状の凹部とすることができる。配線層144の材料や厚さは、例えば、配線層132と同様とすることができる。
【0026】
ソルダレジスト層145は、配線基板100の下側の最外層であり、絶縁層143の下面上に、配線層144を覆うように形成されている。ソルダレジスト層145の材料や厚さは、例えば、ソルダレジスト層137と同様とすることができる。ソルダレジスト層145は、開口部145xを有し、開口部145x内には配線層144の下面の一部が露出している。開口部145xの平面形状は、例えば、円形とすることができる。開口部145x内に露出する配線層144は、マザーボード等の実装基板(図示せず)と電気的に接続するためのパッドとして用いることができる。必要に応じ、開口部145x内に露出する配線層144の下面に前述の金属膜を形成したり、OSP処理等の酸化防止処理を施したりしてもよい。
【0027】
光導波路200は、絶縁層135の上面上でソルダレジスト層137が形成されてない領域に形成されている。光導波路200は、第1クラッド層210と、コア層220と、第2クラッド層230と、金属膜251及び252とを備えている。
【0028】
第1クラッド層210は、絶縁層135の上面上に形成されている。第1クラッド層210は、例えば、ポリイミド系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリノルボルネン系樹脂等のポリマーにより形成できる。第1クラッド層210の厚さは、例えば、10μm~30μm程度とすることができる。
【0029】
コア層220は、第1クラッド層210の上面上に選択的に形成されている。
図1の例では、X方向に延在する細長状の4本のコア層220がY方向に並置されているが、これは一例であり、コア層220の数は1本、2本又は3本であってもよく、5本以上であってもよい。並置されるコア層220のピッチは、例えば、200μm~300μm程度とすることができる。コア層220は、第1クラッド層210と同様の材料により形成できる。コア層220の厚さは、例えば、15μm~35μm程度とすることができる。コア層220の短手方向の断面形状は、例えば、正方形とすることができる。
【0030】
第2クラッド層230は、第1クラッド層210の上面上にコア層220の周囲を覆うように形成されている。第2クラッド層230は、第1クラッド層210と同様の材料により形成できる。第2クラッド層230の厚さは、例えば、10μm~30μm程度とすることができる。なお、本開示での第2クラッド層230の厚さは、平面視でコア層220と重なり合っている部分の厚さ、すなわちコア層220上の部分の厚さである。
【0031】
上記のように、第1クラッド層210、コア層220及び第2クラッド層230は同一の材料から形成できるが、コア層220の屈折率は、第1クラッド層210及び第2クラッド層230の屈折率よりも高い。コア層220に、例えば、Ge等の屈折率制御用添加剤を含むことにより、コア層220の屈折率を第1クラッド層210及び第2クラッド層230の屈折率よりも高くすることができる。第1クラッド層210及び第2クラッド層230の屈折率は例えば1.5、コア層220の屈折率は例えば1.6とすることができる。
【0032】
光導波路200には、コア層220を露出する溝部241及び242が形成されている。溝部241は溝部242よりソルダレジスト層137の開口部137x側に形成されている。溝部241及び242は、コア層220の上面からコア層220を貫通して第1クラッド層210の厚さ方向の途中まで形成され、コア層220を分断するようにして形成されている。
【0033】
溝部241は、光路を90度変換するための傾斜面241Aと、傾斜面241Aと交差する側壁面241Bとを有している。例えば、側壁面241Bが光導波路200(コア層220)の延在方向と直交する垂直面に形成され、傾斜面241Aが光導波路200(コア層220)の延在方向に対して所定の角度、例えば45度傾斜して形成されている。すなわち、傾斜面241Aは、コア層220を伝播する光の進行方向に対して45度傾斜して形成されている。このため、溝部241の断面形状は、略直角三角形状に形成されている。傾斜面241Aは側壁面241Bよりソルダレジスト層137の開口部137x側に設けられている。なお、側壁面241Bは垂直面である必要はなく、例えば光導波路200の内側に多少傾いた傾斜面であってもよい。すなわち、溝部241を断面視略V字状に形成するようにしてもよい。
【0034】
溝部241内において、傾斜面241Aに金属膜251が形成されている。金属膜251は、少なくとも傾斜面241Aにてコア層220を覆っている。金属膜251が、傾斜面241Aにてコア層220に加えて、第1クラッド層210を覆っていてもよい。例えば、金属膜251の厚さは0.2μm~0.5μmであり、金属膜251の材料には、良好な光反射性を有するAu、Ag及びAl等を用いることができる。金属膜251は光路変換ミラーの一例である。
【0035】
溝部242は、光路を90度変換するための傾斜面242Aと、傾斜面242Aと交差する側壁面242Bとを有している。例えば、側壁面242Bが光導波路200(コア層220)の延在方向と直交する垂直面に形成され、傾斜面242Aが光導波路200(コア層220)の延在方向に対して所定の角度、例えば45度傾斜して形成されている。すなわち、傾斜面242Aは、コア層220を伝播する光の進行方向に対して45度傾斜して形成されている。このため、溝部242の断面形状は、略直角三角形状に形成されている。側壁面242Bは傾斜面242Aよりソルダレジスト層137の開口部137x側に設けられている。なお、側壁面242Bは垂直面である必要はなく、例えば光導波路200の内側に多少傾いた傾斜面であってもよい。すなわち、溝部242を断面視略V字状に形成するようにしてもよい。
【0036】
溝部242内において、傾斜面242Aに金属膜252が形成されている。金属膜252は、少なくとも傾斜面242Aにてコア層220を覆っている。金属膜252が、傾斜面242Aにてコア層220に加えて、第1クラッド層210を覆っていてもよい。例えば、金属膜252の厚さは0.2μm~0.5μmであり、金属膜252の材料には、良好な光反射性を有するAu、Ag及びAl等を用いることができる。
【0037】
第2クラッド層230は、溝部241及び242を埋め、金属膜251及び252を覆うように形成されている。
【0038】
光導波路200に、配線パターン136Aの上面を露出する開口部260が形成されている。そして、開口部260内に露出する配線パターン136A上に導電性接合材160が設けられている。導電性接合材160は、例えば、はんだバンプである。はんだバンプの材料としては、例えばPbを含む合金、SnとCuの合金、SnとAgの合金、SnとAgとCuの合金等を用いることができる。導電性接合材160は第1導電性接合材の一例である。
【0039】
発光素子300は、基部310と、発光部320と、バンプ330とを有しており、光導波路200に光を出射する。バンプ330は、例えばAuバンプであり、開口部260内で導電性接合材160と電気的に接続されている。導電性接合材160はバンプ330を配線パターン136Aに機械的に固定している。発光部320は、金属膜251の表面に光を照射可能な位置に配置されている。発光部320としては、例えば、面発光レーザ(Vertical Cavity Surface Emitting Laser:VCSEL)、発光ダイオード(Light Emitting Diode:LED)等を用いることができる。発光素子300は光素子の一例であり、バンプ330は第2電極の一例である。
【0040】
光導波路200と発光素子300との間に、発光素子300が発光部320から出力する光が透過可能なアンダーフィル樹脂340が充填されている。アンダーフィル樹脂340は、発光部320の出射面を保護する。
【0041】
固定部材600は、発光素子300を光導波路200に固定する。固定部材600は、例えばポッティング樹脂等の樹脂製である。固定部材600の軟化点は、導電性接合材160の融点より高い。例えば、導電性接合材160の融点は150℃~240℃程度であり、固定部材600の軟化点は250℃以上である。固定部材600は、少なくとも、Y方向において、発光素子300の両端部に設けられていることが好ましい。この場合、固定部材600は、Y方向において、発光素子300の両端部を光導波路200に固定できる。更に、固定部材600は、X方向において、発光素子300の金属膜251から離間する側の端部に設けられていることが好ましい。この場合、固定部材600は、X方向において、発光素子300の金属膜251から離間する側の端部を光導波路200に固定できる。固定部材600は、複数箇所に互いに分離して設けられていてもよく、一体となって連続的に設けられていてもよい。
【0042】
発光部320から出射された光は、アンダーフィル樹脂340及び第2クラッド層230を透過し、金属膜251により反射され、コア層220に向けて導かれる。この光は、コア層220内を伝播し、金属膜252により反射され、光学部品400に向けて導かれる。
【0043】
光学部品400は、金属膜252の表面により反射された光の経路にレンズ(図示せず)を有している。レンズを通過した光は、例えば光ファイバ(図示せず)に導入され、光ファイバにより伝送される。光学部品400は、配線基板100上に、光導波路200の一部を覆うように設けられている。
【0044】
電子回路チップ500は、発光素子300を駆動する駆動回路(ドライバ)を含む本体510と、駆動回路に接続された複数の外部電極520とを有している。複数の外部電極520は、それぞれが導電性接合材170を介して、配線基板100の配線層136に接続されている。複数の外部電極520は、導電性接合材170Aによって配線パターン136Aに接合された外部電極520Aを含む。外部電極520Aは、導電性接合材170Aと、配線パターン136Aと、導電性接合材160とを介して、発光素子300のバンプ330に電気的に接続されている。外部電極520Aは第3電極の一例である。導電性接合材170の融点は、固定部材600の軟化点より低い。例えば、導電性接合材170の融点は150℃~240℃程度である。
【0045】
電子回路チップ500は発光素子300よりも厚く形成されている。また、光学部品400は電子回路チップ500よりも厚く形成されている。
【0046】
[光モジュールの製造方法]
次に、実施形態に係る光モジュール1の製造方法について説明する。
図3~
図10は、実施形態に係る光モジュール1の製造方法を示す断面図である。
【0047】
まず、
図3に示すように、配線基板100を準備する。配線基板100は、例えば、周知のビルドアップ工法を用いて作製することができる。
【0048】
次いで、同じく
図3に示すように、第1クラッド層210及びコア層220を形成する。第1クラッド層210は、例えば、液状又はペースト状の樹脂材料を、絶縁層135の上面に塗布した後、紫外線照射及び加熱し硬化させることにより形成できる。液状又はペースト状の樹脂材料の塗付に代えて、フィルム状の樹脂材料をラミネートしてもよい。第1クラッド層210の材料や厚さは前述の通りである。コア層220は、例えば、液状又はペースト状の樹脂材料を、第1クラッド層210の上面の全面に塗布した後、紫外線照射及び加熱し硬化させ、その後フォトリソグラフィ法でパターニングすることにより形成できる。液状又はペースト状の樹脂材料の塗付に代えて、フィルム状の樹脂材料をラミネートしてもよい。コア層220の材料や厚さは前述の通りである。
【0049】
その後、
図4に示すように、溝部241及び242を形成する。例えば、溝部241及び242は、例えば切削装置の回転ブレード(図示せず)を用いて形成することができる。溝部241及び242をレーザ光の照射により形成してもよい。
【0050】
続いて、同じく
図4に示すように、溝部241の傾斜面241A上に金属膜251を形成し、溝部242の傾斜面242A上に金属膜252を形成する。金属膜251及び252は、例えば蒸着法又はスパッタリング法により形成することができる。
【0051】
次いで、
図5に示すように、第2クラッド層230を、溝部241及び242を埋め、金属膜251及び252を覆うようにして形成する。これにより、コア層220の周囲は、第1クラッド層210及び第2クラッド層230に覆われる。第2クラッド層230は、第1クラッド層210と同様の方法により形成できる。第2クラッド層230の材料や厚さは前述の通りである。
【0052】
その後、
図6に示すように、光導波路200に開口部260を形成する。開口部260は、例えば、CO
2レーザを用いたレーザ加工法により形成できる。開口部260内に、配線パターン136Aの上面が露出する。
【0053】
続いて、
図7に示すように、発光素子300を光導波路200上に搭載する。発光素子300の搭載の際には、配線パターン136Aの開口部260から露出する上面上に導電性接合材160を設ける。また、例えば、吸着ヘッド及びヒータを備えたチップマウンタ装置を用い、吸着ヘッドに発光素子300を吸着させる。このとき、発光素子300はバンプ330が下側になって吸着ヘッドに吸着される。さらに、ヒータに通電し、吸着ヘッドを通じて、バンプ330を含む発光素子300を加熱する。この時、バンプ330の温度は、導電性接合材160の融点より高くする。そして、バンプ330を開口部260に挿入し、導電性接合材160に接触させる。この結果、導電性接合材160が溶融し始める。導電性接合材160が溶融した状態で光導波路200に対する発光素子300の位置合わせを行い、位置合わせが完了すると、ヒータへの通電を停止する。この結果、導電性接合材160が凝固し始める。導電性接合材160の凝固が完了すると、吸着ヘッドを発光素子300から離す。このようにして、発光素子300は光導波路200に対して位置合わせが行われた状態で、導電性接合材160により配線パターン136Aに固定される。なお、発光素子300を光導波路200上に搭載する際の加熱は、配線基板100が載置されたステージ(図示せず)側から行ってもよい。
【0054】
次いで、
図8に示すように、固定部材600を形成する。固定部材600の形成では、例えば、未硬化の樹脂を発光素子300の側面及び光導波路200の上面に接するように塗布し、加熱により硬化(キュア)させる。固定部材600用の樹脂としては、硬化温度が導電性接合材160の融点よりも低く、かつ硬化した後の軟化点が導電性接合材160の融点よりも高いものを用いる。導電性接合材160の融点よりも低い温度で樹脂を硬化させて固定部材600に変化させることで、樹脂の硬化時における導電性接合材160の溶融に起因する発光素子300の位置ずれ及び傾きを防止することができる。固定部材600用の樹脂としては、例えばポッティング樹脂を用いることができる。固定部材600用の樹脂は、例えばエポキシ系の樹脂である。固定部材600用の樹脂がアクリル系又はシリコーン系の樹脂であってもよい。
【0055】
続いて、同じく
図8に示すように、光導波路200と発光素子300との間に、アンダーフィル樹脂340を充填する。アンダーフィル樹脂340の材料としては、発光素子300が発光部320から出力する光が透過可能な材料を用いる。アンダーフィル樹脂340は、例えばエポキシ系の樹脂である。
【0056】
次いで、
図9に示すように、電子回路チップ500を配線基板100上に搭載する。電子回路チップ500の搭載の際には、配線層136の開口部137xから露出する上面上に導電性接合材170を設ける。また、外部電極520が導電性接合材170と接するようにして、電子回路チップ500が配線基板100上に載置される。配線基板100の載置には、例えば、吸着ヘッドを備えたチップマウンタ装置を用いることができる。配線基板100の載置後、リフローにより導電性接合材170を溶融、凝固させる。導電性接合材170としては、その融点が固定部材600の軟化点よりも低いものを用いる。導電性接合材170の材料が導電性接合材160の材料と同じであってもよい。固定部材600の軟化点より低い温度でリフローを行うことで、固定部材600により発光素子300が光導波路200に固定された状態が維持される。このため、リフロー中に、導電性接合材160が溶融したり、アンダーフィル樹脂340が軟化したりしたとしても、発光素子300の位置ずれ及び傾きは防止される。
【0057】
その後、
図10に示すように、光学部品400を配線基板100上に搭載する。
【0058】
実施形態に係る光モジュール1では、固定部材600の軟化点が導電性接合材160及び170の融点よりも高いため、電子回路チップ500の搭載時に導電性接合材160が溶融したとしても、発光素子300の位置ずれ及び傾きを防止することができる。従って、発光素子300の位置ずれ及び傾きに起因する光信号の損失を抑制することができる。また、固定部材600用の樹脂の硬化温度が導電性接合材160の融点よりも低いため、導電性接合材160の融点よりも低い温度で樹脂を硬化させることで、樹脂の硬化時における導電性接合材160の溶融に起因する発光素子300の位置ずれ及び傾きを防止することができる。
【0059】
また、電子回路チップ500は発光素子300よりも厚い。このため、電子回路チップ500を発光素子300よりも先に搭載すると、発光素子300を搭載する際に吸着ヘッドを移動させることができる範囲が電子回路チップ500により制限される。同様に、光学部品400を電子回路チップ500よりも先に搭載すると、電子回路チップ500を搭載する際に吸着ヘッドを移動させることができる範囲が光学部品400により制限される。本実施形態では、発光素子300を電子回路チップ500よりも先に搭載し、電子回路チップ500を光学部品400よりも先に搭載するため、吸着ヘッドの移動範囲の制限を抑制することができる。
【0060】
なお、アンダーフィル樹脂340が設けられなくてもよい。
【0061】
また、発光素子300に代えてフォトダイオード等の受光素子が用いられてもよい。この場合、電子回路チップ500として、TIAのチップを用いることができる。また、光路変換ミラーの一例である金属膜251及び252が第2クラッド層230に形成されてもよい。
【0062】
次に、実施形態の種々の変形例について説明する。これら変形例は、固定部材の配置の点で実施形態と相違する。
図11は、変形例における固定部材の配置を示す平面図である。
【0063】
第1変形例では、
図11(a)に示すように、平面視で、発光素子300のY方向の両側面に接するように固定部材600が設けられており、固定部材600は発光素子300のX方向の側面に接していない。
【0064】
第2変形例では、
図11(b)に示すように、平面視で、発光素子300のX方向で光学部品400から離間する側の側面の2箇所に接するように固定部材600が設けられており、固定部材600は発光素子300のY方向の側面及びX方向で光学部品400側の側面に接していない。平面視で、固定部材600は、Y方向で全てのコア層220を間に挟むようにして2箇所に配置されている。
【0065】
第3変形例では、
図11(c)に示すように、平面視で、発光素子300のX方向で光学部品400から離間する側の側面の全体に接し、更に、Y方向の両側面の一部分に接するように固定部材600が設けられており、固定部材600はX方向で光学部品400側の側面に接していない。
【0066】
第4変形例では、
図11(d)に示すように、平面視で、発光素子300の側面の全体に接するように固定部材600が設けられている。
【0067】
固定部材600は、第4変形例のように、平面視でコア層220の光が伝播する部分と重なるように設けられてもよいが、固定部材600を形成する際に用いるディスペンサの衝突に伴う損傷等を避けるために、固定部材600は平面視でコア層220の光が伝播する部分と重ならないように設けられることが好ましい。
【0068】
以上、好ましい実施形態等について詳説したが、上述した実施形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0069】
1:光モジュール
100:配線基板
200:光導波路
300:発光素子
340:アンダーフィル樹脂
400:光学部品
500:電子回路チップ
600:固定部材