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特許7358333ウレタン基を有するポリマーを製造する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-29
(45)【発行日】2023-10-10
(54)【発明の名称】ウレタン基を有するポリマーを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 71/04 20060101AFI20231002BHJP
   C08G 75/06 20060101ALI20231002BHJP
   C08G 59/40 20060101ALN20231002BHJP
   C07D 327/04 20060101ALN20231002BHJP
【FI】
C08G71/04
C08G75/06
C08G59/40
C07D327/04
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020508453
(86)(22)【出願日】2018-08-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-05
(86)【国際出願番号】 EP2018071335
(87)【国際公開番号】W WO2019034470
(87)【国際公開日】2019-02-21
【審査請求日】2021-08-06
(31)【優先権主張番号】17186543.9
(32)【優先日】2017-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ペーター ルドルフ
(72)【発明者】
【氏名】ハンネス ブラットマン
(72)【発明者】
【氏名】インドレ ティール
(72)【発明者】
【氏名】ハンス-ヨーゼフ トーマス
【審査官】松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-520144(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02468791(EP,A1)
【文献】特表2020-531431(JP,A)
【文献】M Luo et al.,Synthesis of cyclic monothiocarbonates via the coupling reaction of carbonyl sulfide (COS) with epoxides,Catal. Sci. Technol.,2016年,Vol.6,p.188-192
【文献】R C Forster et al.,Dithiols. Part 28. Conversion of 1,3-dithiolan-2-ones, 1,3-oxathiolan-2-ones, and 1,3-oxathiolan-2-thiones into 1,3-dithiolan-2-thiones,J. Chem. Soc., Perkin Trans. 1,1978年,p.822-829
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 75/00 - 75/06
C08G 71/00 - 71/04
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の代替形態については、
A) 5員環状モノチオカーボネートと、
B) 第一級または第二級アミノ基から選択される少なくとも2個のアミノ基を有する化合物と、
C) -SH基と反応する少なくとも2個の官能基を有する化合物と、または-SH基と反応する官能基としての炭素-炭素三重結合の場合、少なくとも1個の炭素-炭素三重結合を有する化合物と
を反応させる、または第二の代替形態については、
A) 5員環状モノチオカーボネートと、
D) 少なくとも1個の第一級または第二級アミノ基、および-SH基と反応する少なくとも1個の官能基を有する化合物と
を反応させ、
A)が、式I:
【化1】
[式中、 ~R は、水素を表し、R は、水素を表すか、または有機基を表し、有機基は、30個までの炭素原子を有するアルキル基、-CH -O-R 基、-CH -O-C(=O)-R 基、または-CH -NR 基から選択され、R ~R は、30個までの炭素原子を有する有機基である
のモノチオカーボネートである、ウレタン基を有するポリマーを製造する方法。
【請求項2】
が有機基を表し、前記有機基は、30個までの炭素原子を有するアルキル基、CH-O-R基、CH-O-C(=O)-R基または-CH-NR基から選択され、R~Rは30個までの炭素原子を有する有機基である、請求項記載の方法。
【請求項3】
が、-CH-O-R基、または-CH-O-C(=O)-R基、または-CH-NR基を表し、R~Rが、30個までの炭素原子を有する有機基である、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
B)が、2個の第一級アミノ基を有する化合物である、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
-SHと反応する前記化合物C)の前記官能基が、非芳香族エチレン性不飽和基、エポキシ基、イソシアネート基、非芳香族炭素-窒素二重結合を有する基、カルボニル基、またはハロゲン化物から選択される、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
-SHと反応する前記化合物C)の前記官能基が、非芳香族エチレン性不飽和基またはエポキシ基から選択される、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
-SHと反応する前記化合物C)の前記官能基が、非芳香族エチレン性不飽和基から選択される、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
-SHと反応する前記化合物C)の前記官能基がメタクリル基である、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記第一の代替形態の前記反応が、1段階で、A)、B)およびC)を同時に反応させることにより、または2段階で、まずA)をB)と反応させ、その後、得られた中間体をC)と反応させることにより実施される、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
D)が、1個の第一級アミノ基、および1個の非芳香族炭素-炭素二重結合または三重結合を有する化合物である、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
A) 請求項1~のいずれで定義される、5員環状モノチオカーボネートと、
B) 第一級または第二級アミノ基から選択される少なくとも2個のアミノ基を有する化合物と、
C) -SH基と反応する少なくとも2個の官能基を有する化合物と、または-SH基と反応する官能基としての三重結合の場合、少なくとも1個の炭素-炭素三重結合を有する化合物と
を含む、
または2種の前記成分A)およびB)と、さらにC)との反応生成物を含む、
硬化性組成物。
【請求項12】
第一の成分A)およびC)と、第二の成分B)とを含む、二成分硬化系であって、
A) 請求項1~のいずれで定義される、5員環状モノチオカーボネートと、
B) 第一級または第二級アミノ基から選択される少なくとも2個のアミノ基を有する化合物と、
C) -SH基と反応する少なくとも2個の官能基を有する化合物と、または-SH基と反応する官能基としての三重結合の場合、少なくとも1個の炭素-炭素三重結合を有する化合物である、前記二成分硬化系。
【請求項13】
式I:
【化2】
[式中、R~Rが水素を表し、Rが、-CH-O-R基、または-CH-O-C(=O)-R基であり、R、Rが、C1~C14アルキル基である]のモノチオカーボネート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の対象は、第一の代替形態については、
A) 5員環状モノチオカーボネートと、
B) 第一級または第二級アミノ基から選択される少なくとも2個のアミノ基を有する化合物と、
C) -SH基と反応する少なくとも2個の官能基を有する化合物と、または-SH基と反応する官能基としての炭素-炭素三重結合の場合、少なくとも1個の炭素-炭素三重結合を有する化合物と
を反応させる、または第二の代替形態については、
A) 5員環状モノチオカーボネートと、
D) 少なくとも1個の第一級または第二級アミノ基、および-SH基と反応する少なくとも1個の官能基を有する化合物と
を反応させる、ウレタン基を有するポリマーを製造する方法である。
【0002】
ポリウレタンは、重要な工業用ポリマーである。ポリウレタンは、機械的特性が非常に良好であり、よって、多くの工業用途で使用される。ポリウレタンは、例えば、熱可塑性樹脂、発泡体またはコーティングとして、またはこれらの中で使用される。ポリウレタンは、イソシアネート基、特にジイソシアネートおよびポリイソシアネートを有する化合物と、ジオールおよび/またはポリオールとを反応させることにより製造されることが一般的である。イソシアネート基を有する化合物は、反応性が高いことが一般的である。そのような反応性により感湿性が上昇し、これは幾つかの工業用途において問題となる。イソシアネート基を有する幾つかの化合物は、有害であると考えられ、皮膚接触または吸入時にアレルギーを引き起こすことがある。
【0003】
したがって、イソシアネート基を有する化合物の使用を回避する、ポリウレタンを製造する代替的な方法を見つける必要がある。
【0004】
国際公開第2013/144299号には、環状5員カーボネート環系(アルキリデン-1,3-ジオキソラン-2-オン)を有するラジカル重合性化合物が開示されている。ウレタン基は、これらの化合物またはそれらのポリマーとアミノ化合物とを反応させることにより形成される。国際公開第2011/157671号には、エポキシ樹脂において反応性希釈剤として使用するための類似した化合物が開示されている。しかしながら、そのような化合物の合成は煩雑である。合成に必要な前駆体は、市販で入手することができない。
【0005】
欧州特許出願公開第1506964号明細書および米国特許第6372871号明細書から、環状ジチオカーボネートが知られている。チオウレタン基(-NH-(C=S)-O)は、環状ジチオカーボネートとアミンとを反応させることにより得られる。ポリチオウレタンは、ポリウレタンの適切な代替物ではない。
【0006】
欧州特許出願公開第2468791号明細書の対象は、酸素および硫黄を含む5員環状環系を有する化合物を含むエポキシ組成物である。欧州特許出願公開第2468791号明細書で使用される化合物はジチオカーボネートである。欧州特許出願公開第2468791号明細書で引用されているJ.Org.Chem.1995、60、473~475には、ジチオカーボネートしか開示されていない。
【0007】
D.D.Reynolds、D.L.FieldsおよびD.L.Johnson.JOC、26、1961、5111~5115頁には、5員環状チオカーボネート環系を有する化合物、およびその反応が開示されている。とりわけ、アミノ化合物との反応が述べられている。
【0008】
2015年8月13日に承認されたM.Luo、X.-H.ZhangおよびD.J.Darensbourgの論文、Catalysis Science&Technology、2015(DOI:10.1039/c5cy00977d)には、硫化カルボニルとエポキシドとのカップリング反応により得られる幾つかの特定の環状モノチオカーボネートが開示されている。
【0009】
また、Yi-Ming Wang、Bo Li、Hui Wang、Zhi-Chao ZhangおよびXiao-Bing Lu、Appl.Organometal.Chem.2012、26、614~618にも、硫化カルボニルとエポキシドとのカップリング反応により得られる幾つかの特定の環状モノチオカーボネートが開示されている。
【0010】
ウレタン基を有するポリマーを製造する代替的な方法を提供し、イソシアネート基を有する化合物の使用を回避することが、本発明の対象であった。さらに、ウレタン基を含むハイブリッドポリマー、例えばエポキシ樹脂系ハイブリッドポリマーを提供することも本発明の対象であった。ポリマーは、適度な温度と、例えば水またはアルコールとしての縮合副生成物の不足と、溶媒の不在または少なくとも溶媒量の低減とを含む、単純かつ効果的な製造方法により得られるべきである。得られるポリマーは、満足のいくまたはさらに改善された特性を有するべきであり、そのような特性は、例えば、機械的特性、光学的特性、UVとしての安定性、および防食性である。化学反応を容易に起こし、したがってポリマーの修飾または架橋を容易にする官能基を有するポリマーにも関心が注がれている。
【0011】
このようにして、上記の方法およびこの方法により得られるポリマーが発見された。
【0012】
モノチオカーボネートA)について
5員環状モノチオカーボネートA)は、1個の5員環状モノチオカーボネート基を有する化合物である。5員環状モノチオカーボネート基は、5員を有する環系であり、これらのうち3員は、モノチオカーボネート-O-C(=O)-S-からのものであり、さらなる2員は、5員環を閉鎖する炭素原子である。
【0013】
モノチオカーボネートは、ヘテロ原子、例えば、酸素、硫黄、窒素、または塩化物、またはケイ素を、例えば、エポキシ基、エーテル基、ヒドロキシ基、ケトもしくはアルデヒドもしくはエステル基、ヒドロキシル基、カルボキシ基、チオエーテルもしくはチオール基、または第三級アミノ基、またはケイ素官能基から選択される官能基の形態でさらに含んでいてもよい。好ましい実施形態において、モノチオカーボネートは、モノチオカーボネート基の他に、最大1個のさらなる官能基を有する。
【0014】
モノチオカーボネートは、104g/mol~例えば100,000g/molの分子量を有していてもよい。後者は、モノチオカーボネートが、高分子化合物、例えば1個のモノチオカーボネート基のみを含むポリマーである場合に当てはまることがある。好ましいモノチオカーボネートは、104g/mol~5000g/molの分子量を有する。104g/mol~1000g/molの分子量を有するモノチオカーボネートがより好ましく、104g/mol~500g/molの分子量を有するモノチオカーボネートが最も好ましい。
【0015】
好ましい実施形態において、化合物A)は、第一級または第二級アミノ基を含まず、化合物C)について列挙した-SH基と反応する官能基を含まない。
【0016】
特に好ましい実施形態において、化合物A)は、モノチオカーボネート基、カルボン酸エステル基またはエーテル基以外の官能基を含まない。
【0017】
式I:
【化1】
[式中、R~Rは、互いに独立して、水素を表すか、または50個までの炭素原子を有する有機基を表し、また代替的には、Rと、Rと、チオカーボネート基の2個の炭素原子とが、5~10員の炭素環を一緒に形成してもよい]
のモノチオカーボネートが好ましい。
【0018】
~Rのいずれかが有機基を表す場合、そのような有機基は、好ましくは30個までの炭素原子、より好ましくは20個までの炭素原子を有する有機基である。さらなる好ましい実施形態において、RおよびRは、チオカーボネート基の2個の炭素原子と一緒には、5~10員の炭素環を形成しない。
【0019】
~Rのいずれかが有機基を表す場合、そのような有機基は、先に列挙したヘテロ原子および官能基を含んでいてもよい。特に、これは、酸素、窒素、硫黄、ケイ素および塩化物を含んでいてもよい。好ましい実施形態において、有機基は、酸素または塩化物を含んでいてもよい。R~Rは、酸素を、例えば、エーテル基、ヒドロキシ基、アルデヒド基、ケト基またはカルボキシ基の形態で含んでいてもよい。好ましい実施形態において、有機基は、酸素、窒素または塩化物、特に酸素を含み得る、30個までの炭素原子を有する脂肪族有機基である。
【0020】
より好ましい実施形態において、有機基は、アルキル基、-CH-O-R基、または-CH-O-C(=O)-R基、または-CH-NR基から選択され、R~Rは、30個までの炭素原子、好ましくは20個までの炭素原子を有する有機基である。特に、R~Rは、酸素を、例えばエーテル基の形態で含み得る脂肪族基または芳香族基を表す。好ましい実施形態において、R~Rは、脂肪族炭化水素基、例えば1~10個の炭素原子を有するアルキル基、アルコキシ基、またはポリアルコキシ基を表す。最も好ましい実施形態において、R~Rは、脂肪族炭化水素基、特に1~10個の炭素原子を有するアルキル基を表す。
【0021】
最も好ましい実施形態において、有機基は、-CH-O-R基または-CH-O-C(=O)-R基である。
【0022】
式I中のR~Rのうちの2個~4個すべてが水素を表し、R~Rのうちの残基が有機基を表すことが好ましい。
【0023】
式I中のR~Rのうちの2個または3個が水素を表し、R~Rのうちの残基が有機基を表すことがより好ましい。
【0024】
式I中のR~Rのうちの3個が水素を表し、R~Rのうちの残基が有機基を表すことが最も好ましい。好ましい実施形態において、RまたはRは、有機基を表す残基である。Rは、有機基を表す残基であることが最も好ましい。
【0025】
式Iの特に好ましい化合物は、式I中のR~Rが水素を表し、Rが、-CH-O-R基、または-CH-O-C(=O)-R基、または-CH-NR基であり、R~Rが、C1~C14アルキル基、好ましくはC4~C14アルキル基である化合物である。
【0026】
好ましいモノチオカーボネートとしては、以下のものを挙げることができる:
【化2】
【0027】
モノチオカーボネートA)の合成について
モノチオカーボネートを合成する幾つかの方法は、従来技術に記載されている。
【0028】
米国特許第3072676号明細書および米国特許第3201416号明細書によると、エチレンモノチオカーボネートは、2段階の方法で製造することが可能である。第一の段階では、メルカプトエタノールとクロロカルボキシレートとを反応させてヒドロキシエチルチオカーボネートを生成し、第二の段階でこれを金属塩触媒の存在下で加熱して、エチレンモノチオカーボネートにする。
【0029】
米国特許第3517029号明細書によると、アルキレンモノチオカーボネートは、メルカプトエタノールと炭酸ジエステルとをトリウムの触媒活性塩の存在下で反応させることにより得られる。
【0030】
米国特許第3349100号明細書に開示されている方法によると、アルキレンモノチオカーボネートは、エポキシドと硫化カルボニルとを反応させることにより得られる。硫化カルボニルの利用性は限定されている。得られるアルキレンモノチオカーボネートの収率および選択率は低い。
【0031】
ホスゲンを出発材料として使用する合成は、米国特許第2828318号明細書から知られている。ホスゲンは、ヒドロキシメルカプタンと反応させられる。モノチオカーボネートの収率はなおも低く、重合による副生成物が観察される。
【0032】
モノチオカーボネートA)、特に式Iのモノチオカーボネートを製造する好ましい方法は、
a) 1個のエポキシ基を有する化合物(略してエポキシ化合物と称する)を出発材料として使用し、
b) この化合物をホスゲンまたはアルキルクロロホルマートと反応させ、それにより付加物を生成し、
c) この付加物を、アニオン性硫黄を含む化合物と反応させ、モノチオカーボネートA)を生成する、
方法である。
【0033】
1個のエポキシ基を有する化合物a)について
1個のエポキシ基を有する化合物は、5000g/mol未満、特に1000g/mol未満、または500g/mol未満の分子量を有する低分子量化合物であることが好ましい。1個のエポキシ基を有する化合物は、例えば、エピクロロヒドリン、グリシドール、またはグリシジルエーテル、またはグリシジルエステル、またはプロピレンオキシドである。
【0034】
第一の方法段階b)である付加物の形成について
第一の方法段階では、1個のエポキシ基を有する化合物をホスゲンまたはアルキルクロロホルマートと反応させ、それにより付加物を生成する。これをホスゲンと反応させることが好ましい。ホスゲンという用語は、いかなるホスゲン代替物も含み、ホスゲン代替物とは、ホスゲンを遊離させる化合物である。ホスゲン代替物は、例えばトリホスゲンである。以下で、反応物としてのRで置換された特定のエポキシ化合物とホスゲンとについて、b)の反応を例示的に示す。
【0035】
【化3】
【0036】
β-クロロアルキルクロロホルマートの2種の構造異性体であるT1およびT2が得られる。この生成物が、構造異性体について高い選択率を有することが有利である。特に、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、通常少なくとも95%の付加物が、異性体T1に相応する。
【0037】
1個のエポキシ基を有する化合物をホスゲンまたはアルキルクロロホルマートと任意の化学量論比で反応させてもよい。少なくとも1個のエポキシ基を有する化合物が非常に大過剰になることを回避することが好ましい。というのも、そのように大過剰であると、未反応の開始化合物の量が多くなり、得られた生成物組成物の後処理においてこれらを除去する必要があるからである。
【0038】
ホスゲンまたはクロロホルマートを、エポキシ基1molあたり、0.1~5mol、特に0.5~2molの量で使用することが好ましい。特に好ましい実施形態において、ホスゲンまたはクロロホルマートは、過剰に使用される。
【0039】
少なくとも等モル量のホスゲンまたはクロロホルマートを用いて、未反応のままのエポキシ基を回避することができる。したがって、好ましい実施形態において、ホスゲンまたはクロロホルマートは、エポキシ基1molあたり、0.9~5mol、より好ましくは1~2mol、特に1~1.5molの量で使用される。
【0040】
ホスゲンおよびクロロホルマートは、式II:
【化4】
[式中、Xは、ホスゲンの場合Clであり、またはクロロホルマートの場合O-R基であり、RはC1~C4アルキル基を示す]
の化合物であることが好ましい。
【0041】
好ましい実施形態では、この化合物をホスゲンと反応させる。
【0042】
この反応を触媒の存在下で実施することが好ましい。適切な触媒は、第四級アンモニウムカチオンを有する塩、例えば、テトラアルキルアンモニウムハロゲン化物、特に塩化物、例えば、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラヘキシルアンモニウムクロリド、ベンジルトリブチルアンモニウムクロリド、またはトリオクチルメチルアンモニウムクロリドである。
【0043】
さらなる適切な触媒は、例えば、ヘキサアルキルグアニジニウムハロゲン化物、特に塩化物、第四級ホスホニウムハロゲン化物、特に塩化物、ピリジン、または窒素を含む環系を有するその他の化合物、例えば、イミダゾールまたはアルキル化イミダゾールである。
【0044】
好ましい触媒は、第四級アンモニウムカチオンを有する塩、特にテトラアルキルアンモニウムの塩、例えば塩化テトラ(n-ブチル)アンモニウムである。
【0045】
触媒を、エポキシ基1molあたり、0.001~0.1molの量、特に0.005~0.05molの量で使用することが好ましい。
【0046】
ホスゲンまたはアルキルクロロホルマートを、少なくとも1個のエポキシ基を有する化合物に添加することが好ましい。この反応は発熱性であるため、ホスゲンまたはアルキルクロロホルマートの添加を、反応混合物の温度が望ましい値に維持されるようにゆっくりと行うことが好ましい。反応混合物を添加の間に冷却することが好ましい。
【0047】
反応混合物の温度を、-40~60℃、特に5~50℃に維持することが好ましい。
【0048】
1個のエポキシ基を有する低分子化合物は、液体状であることが一般的であり、したがって、さらなる溶媒は必要とされない。化合物が21℃で固体状の場合に溶媒を使用することが好ましい。適切な溶媒は、特に非プロトン性溶媒である。適切な溶媒は、例えば、芳香族炭化水素および塩素化炭化水素を含む炭化水素である。
【0049】
この反応が完了したら、未反応のホスゲンまたはクロロホルマートを蒸留により混合物から除去してもよい。さらなる後処理は必要ではない。
【0050】
得られる生成物混合物は、少なくとも1個のβ-クロロアルキルクロロホルマート基を有する化合物を含む。次の方法段階が直ちに続いてもよい。
【0051】
第二の方法段階c)であるモノチオカーボネート基の形成
以下で、反応物としてのRで置換された特定のエポキシ化合物とホスゲンとについて、b)の反応を例示的に示す。先で形成されたβ-クロロアルキルクロロホルマート基を有する化合物で出発して、反応物としてのNaSについて、第二の方法段階c)を以下の通り例示的に示すことができる:
【化5】
【0052】
この段階では、第一の段階で得られる構造異性体T1およびT2の比、したがって選択率が維持される。
【0053】
b)で得られる生成物混合物を、さらなる後処理なしに方法段階c)で使用することが好ましい。
【0054】
段階c)では溶媒を添加してもよい。適切な溶媒は、特に非プロトン性溶媒である。適切な溶媒は、例えば、芳香族炭化水素および塩素化炭化水素を含む炭化水素であるか、または親水性非プロトン性溶媒、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサンのようなエーテル、グリムのようなポリエーテル、アセトニトリル、もしくはジメチルスルホキシドである。
【0055】
段階b)からの生成物混合物を、アニオン性硫黄を含む化合物と反応させる。アニオン性硫黄を含む化合物は、塩であることが好ましい。
【0056】
アニオン性硫黄は、S2-、式(S2-のポリスルフィドであることが好ましく、pは、2~200、好ましくは2~10の整数、またはHS1-である。
【0057】
この塩のカチオンは、有機カチオンであっても、または無機カチオンであってもよい。これは、無機カチオン、特に金属であることが好ましい。一般的な金属カチオンは、例えば、アルカリ金属またはアルカリ土類金属、例えばナトリウムまたはカリウムのカチオンである。
【0058】
好ましい塩は、NaS、KS、NaSHもしくはKSH、またはそれらの水和物である。
【0059】
この塩を、塩基性化合物、特に金属水酸化物、例えば、特にNaOHまたはKOHと組み合わせて使用してもよい。SHをアニオンとして有する塩の場合に、そのようなさらなる塩基性化合物を使用することが好ましい。
【0060】
また、硫黄から、または硫黄を非イオン形態で含む化合物から出発して、アニオン性硫黄をその場で生成してもよい。例えば、HSをアニオン性硫黄源として使用してもよい。塩基性化合物、例えばNaOH(上記参照)が存在する場合、アニオン性硫黄は、HSからその場で得られる。
【0061】
アニオン性硫黄を有する塩、またはアニオン性硫黄をその場で生成する化合物(本明細書ではともに硫黄化合物と称される)を、b)で得られる生成物混合物に添加することが好ましい。硫黄化合物を、そのまま添加しても、または、例えば水のような適切な溶媒に入れた溶液として添加してもよい。本発明の好ましい実施形態では、硫黄化合物を、溶媒、特に水に溶解させ、この溶液を添加する。
【0062】
硫黄化合物を水中で溶液として添加する場合、有機相と水相とを含む二相系が得られ、反応は、そのような二相系中で行われる。代わりに単相系が望まれる場合、水相と有機相とを1つの相に再び合するための媒介として機能する適切な溶媒を添加してもよい。適切な溶媒は、親水性非プロトン性溶媒、例えば先に列挙した親水性非プロトン性溶媒であってもよい。
【0063】
この反応は発熱性であるため、塩または塩溶液の添加を、反応混合物の温度が望ましい値に維持されるようにゆっくりと行うことが好ましい。反応混合物を添加の間に冷却することが好ましい。
【0064】
反応混合物の温度を、-40~60℃、特に-10~50℃に維持することが好ましい。
【0065】
塩を、β-クロロアルキルクロロホルマート基を有する化合物1molあたり0.5~2.0molの量で添加することが好ましい。
【0066】
塩を、β-クロロアルキルクロロホルマート基を有する化合物1molあたり1.0~2.0molの量で添加することが好ましい。
【0067】
最も好ましい実施形態では、すべてのβ-クロロアルキルクロロホルマート基の迅速かつ完全な反応を達成するのに著しく過剰な塩は必要とされないため、塩を、少なくとも1個のβ-クロロアルキルクロロホルマート基を有する化合物1molあたり1.0~1.3molの量で添加する。
【0068】
塩との反応により、β-クロロアルキルクロロホルマート基は、5員環状モノチオカーボネート基、特に式Iのモノチオカーボネートに変換される。
【0069】
必要に応じて、第二の方法段階を触媒の存在下で実施してもよい。そのような触媒は、例えば、アンモニウム塩、複素環式アンモニウム塩およびホスホニウム塩のような相間移動触媒である。
【0070】
c)で得られる最終生成物を、親水性溶媒、好ましくは水で抽出することにより後処理してもよい。アニオン性硫黄の上記の塩を水溶液の形態で使用した場合、さらなる水は必要とされなくてもよい。有機相および水相を分離する。有機相を、好ましくは4~10のpH、特に少なくとも7のpHを有する水で洗浄してもよい。有機相は、少なくとも1個のモノチオカーボネート基を有する化合物を含む。水相は、未反応の硫化物/硫化水素塩および/または金属塩化物(NaCl)、ならびに少なくとも部分的に添加された触媒を含む。
【0071】
溶媒を蒸留により有機相から除去してもよい。少なくとも1個のモノチオカーボネート基を有する得られた化合物を、蒸留によりさらに精製しても、またはさらなる精製なしで使用してもよい。
【0072】
式Iの好ましいモノチオカーボネートを製造する方法は、
a) 出発材料としての式III:
【化6】
[式中、R~Rは、式Iと同じ意味を有する]
のエポキシ化合物を生成する段階、
b) エポキシ化合物を式II:
【化7】
[式中、Xは、Cl(ホスゲン)またはO-R基であり、Rは、C1~C4アルキル基(クロロホルマート)を表す]
の化合物と反応させて、式IV:
【化8】
[式中、R~Rは、上記の意味を有する]
の付加物を生成する段階、および
c) 式IVの付加物を、アニオン性硫黄を含む化合物と反応させて、式I:
【化9】
のモノチオカーボネートを生成する段階
を含む。
【0073】
方法段階b)およびc)に関連する本特許出願中の開示はすべて、式Iの好ましいモノチオカーボネートの上記の製造に当てはまる。
【0074】
式I:
【化10】
[式中、R~Rのうちの2個または3個は水素を表し、R~Rのうちの水素ではない基は、-CH-O-R基、または-CH-O-C(=O)-R基、または-CH-NR基を表し、R~Rは、30個までの炭素原子を有する有機基である]
の化合物は、従来技術の方法では製造されておらず、現在では、以下で特許請求される新たな方法により入手することが可能である。
【0075】
化合物B)について
化合物B)は、第一級または第二級アミノ基から選択される少なくとも2個のアミノ基を有する化合物である。本特許出願において、アミノ基という用語は、他に示されていないか、または本内容から別のように解釈されることが明らかでない場合、第一級または第二級アミノ基を意味する。
【0076】
化合物B)は、例えば500,000g/molまでの分子量を有していてもよい。後者は、化合物B)が、高分子化合物、例えばアミノ基を含むポリマーである場合に当てはまることがある。
【0077】
好ましい化合物B)は、1000g/molまでの分子量を有する。60g/mol~500g/molの分子量を有する化合物B)が最も好ましい。
【0078】
化合物B)は、例えば、1000個までのアミノ基、特に500個までのアミノ基、好ましくは100個までのアミノ基を有していてもよい。ポリマー化合物B)、例えば、直鎖状または分枝鎖状ポリビニルアミン、ポリエチレンイミン、ポリリジンまたはポリプロピレンイミンを用いる場合、アミノ基が多数であり得る。
【0079】
好ましい実施形態において、化合物B)は、2~10個のアミノ基、好ましくは2個または3個のアミノ基を含み、最も好ましい実施形態において、化合物B)は、2個のアミノ基を含む。
【0080】
好ましい実施形態において、アミノ基のうちの少なくとも1個は、第一級アミノ基である。
【0081】
特に好ましい実施形態において、アミノ基のうちの少なくとも2個は、第一級アミノ基である。
【0082】
最も好ましい実施形態において、化合物B)は、2個の第一級アミノ基を有する化合物である。
【0083】
好ましい実施形態において、化合物B)は、いずれのモノチオカーボネート基も含まず、化合物C)について列挙した-SH基と反応するいずれの官能基も含まない。
【0084】
特に好ましい実施形態において、化合物B)は、第一級または第二級アミノ基、カルボン酸エステル基またはエーテル基以外の官能基を含まない。
【0085】
適切な化合物B)は、例えば、
アルキレンジアミンまたはアルキレンポリアミン、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ネオペンタンジアミン、オクタメチレンジアミン、1,3-ジアミノペンタン、2-メチルペンタン-1,5-ジアミン
エーテル基を含むアルキレンジアミンまたはアルキレンポリアミン(ポリエーテルアミン)、例えば、ポリグリコールジアミン、オキシプロピレンジアミンまたはポリオキシプロピレンジアミンである。
【0086】
2個のアミノ基を有するアミノ酸は、例えば、リジンおよびオルニチンである。
【0087】
その他のジアミンは、例えば、4,7,10-トリオキサトリデカン-1,13-ジアミン、4,9-ジオキサドデカン-1,12-ジアミン、3,6-ジオキサ-1,8-オクタンジアミン、4,7-ジオキサ-1,10-デカンジアミン、
脂環式ジアミン、例えば、シクロヘキシルジアミン、例えば、1,2-ジアミノシクロヘキサン、1-メチル-2,4-ジアミノシクロヘキサン、1-メチル-2,6-ジアミノシクロヘキサンまたはこれらの混合物、イソホロンジアミン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、
1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、2,5-ビスアミノメチルテトラヒドロフラン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン
芳香族ジアミン、例えば、1,2-フェニレンジアミンまたは1,4-フェニレンジアミン、トルエンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、2,5-ビスアミノメチルフラン、
第一級および第二級アミノ基を有するアミノ化合物、例えば、N-アミノエチルピペラジン、ジアルキレントリアミンまたはポリアルキレントリアミン、例えば、ジエチレントリアミンまたはトリエチレンテトラミン、ジプロピレントリアミン、N,N-ビス(3-アミノプロピル)メチルアミン、脂肪ジアミンである。
【0088】
2個より多くのアミノ基を有するさらなる化合物B)は、例えば、ポリイミン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、ポリリジン、TMP系ポリエーテルアミン、Di-TMP、グリセロール、ペンタエリトリット、ポリグリセロール、グルコサミン、エポキシアミン(モル過剰のジアミノ化合物+エポキシ樹脂からのもの)、3-(2-アミノエチル-1,5-ペンタンジアミン、3,3’,3’’-トリアミノトリプロピルアミン、ポリアミドアミン、アミノアルキルメラミン、アミノ官能化された無機ハイブリッド材料、例えば金属有機骨格である。
【0089】
また、化合物Bを、アミノ基が保護基で保護された形態で使用してもよい。必要または所望された際にはすぐに、保護基は除去され、それにより、遊離アミノ基を有する上記の化合物B)が得られる。保護基の除去は、反応条件下で行われることが一般的である。アミノ基の場合、一般的な保護されたアミノ基は、例えば、ケタミン、アルジミン、イミダゾリジン、オキサゾリジン、ルイス酸錯体化アミン(lewis acid complexed amine)、カルバメート、ベンジルオキシカルボニルアミン、アシルオキシム、ホルマニリジン(formanilidine)である。脱保護反応は、例えば、温度、光、pHまたは水/湿度の存在により引き起こすことが可能である。
【0090】
化合物C)について
化合物C)は、-SH基と反応する少なくとも2個の官能基を含むか、または-SH基と反応する官能基としての炭素-炭素三重結合の場合、化合物C)は、少なくとも1個の炭素-炭素三重結合を含む。
【0091】
炭素-炭素三重結合は、-SHと2回反応することが可能である。第一の反応において、-SH基は三重結合に付加反応を起こし、それにより、三重結合は二重結合になる。形成された二重結合は、さらなる-SH基と反応することが可能である。したがって、1個の三重結合は、-SH基と反応するその他の官能基2個と等価である。
【0092】
化合物C)は、例えば500,000g/molまでの分子量を有していてもよい。後者は、化合物C)が、高分子化合物、例えば-SH基と反応する官能基を含むポリマーである場合に当てはまることがある。
【0093】
好ましい化合物C)は、1000g/molまでの分子量を有する。60g/mol~500g/molの分子量を有する化合物C)が最も好ましい。
【0094】
化合物C)は、例えば、-SH基と反応する官能基を1000個まで、特に-SH基と反応する官能基を500個まで、好ましくは100個まで有していてもよい。
【0095】
好ましい実施形態において、化合物C)は、-SH基と反応する官能基を2~10個含むが、不飽和基としての炭素-炭素三重結合の場合、好ましい化合物C)は、1~5個の三重結合を含む。
【0096】
最も好ましい実施形態において、化合物C)は、-SH基と反応する官能基を2個または3個含むが、不飽和基としての三重結合の場合、最も好ましい化合物C)は、1個または2個の三重結合を含む。
【0097】
好ましい実施形態において、化合物C)は、第一級または第二級アミノ基を含まず、モノチオカーボネート基を含まない。
【0098】
特に好ましい実施形態において、化合物C)は、-SH基と反応する官能基、カルボン酸エステル基またはエーテル基から選択される官能基以外の官能基を含まない。
【0099】
好ましい実施形態において、化合物C)の官能基と-SH基との反応により、硫黄-炭素結合が形成される。
【0100】
C)の官能基と-SH基との反応は、付加反応、縮合反応または求核置換反応であり得る。
【0101】
-SH基と付加反応を起こす化合物C)は、例えば、非芳香族炭素-炭素二重結合または炭素-炭素三重結合から選択されるエチレン性不飽和基を有する化合物であるか、またはエポキシ基を有する化合物であるか、またはイソシアネート基を官能基として有する化合物である。
【0102】
-SH基と縮合反応を起こす化合物C)は、例えば、カルボニル基を官能基として有する化合物、例えば、ジカルボニル化合物、例えばジアルデヒドまたはジケトンである。
【0103】
-SH基と求核置換反応を起こす化合物C)は、例えば、ハロゲン化物、特に塩化物を官能基として有する化合物、例えば二ハロゲン化物、好ましくは二塩化物である。
【0104】
-SHと反応する化合物C)の官能基は、非芳香族エチレン性不飽和基、エポキシ基、イソシアネート基、非芳香族炭素-窒素二重結合を有する基、カルボニル基、またはハロゲン化物から選択されることが好ましい。非芳香族エチレン性不飽和基は、非芳香族炭素-炭素二重結合または炭素-炭素三重結合である。
【0105】
-SHと反応する化合物C)の官能基は、エチレン性不飽和基またはエポキシ基から選択されることがより好ましい。
【0106】
-SHと反応する化合物C)の官能基は、エチレン性不飽和基であることが最も好ましい。
【0107】
本発明の特定の好ましい一実施形態において、-SH基と反応する化合物C)の官能基は、メタクリル基である。
【0108】
本発明の一実施形態において、エポキシ基は、-SHと反応する化合物C)の官能基としては除外される。
【0109】
エチレン性不飽和基を官能基として有する化合物C)について
非芳香族炭素-炭素二重結合または炭素-炭素三重結合から選択される不飽和基を有する化合物C)は、ラジカル、カチオンまたはアニオン重合機構により重合可能であることが好ましい。
【0110】
好ましい実施形態において、化合物C)の不飽和基は、非芳香族炭素-炭素二重結合である。
【0111】
好ましい化合物C)は、2~10個、特に2個または3個の不飽和基を含み、不飽和基としての三重結合の場合、好ましい化合物C)は、1~5個、特に1個または2個の三重結合を含む。
【0112】
三重結合を有する化合物Cは、例えば、アセチレンもしくはプロピンのようなアルキン、プロピン/アレンの混合物、またはプロパルギルアルコール、プロパルギルアルコールエーテルもしくはプロパルギルアルコールエステルである。
【0113】
好ましい化合物C)は、炭素-炭素二重結合が、ビニル基CH=CH-;ビニレン基-CH=CH-、不飽和カルボニル基CH=CR-C(=O)-[式中、R=H、アルキル];アクリル基CH=CH-C(=O)-O-;メタクリル基CH=C(CH)-C(=O)-O、アクリルアミド基CH=CH-C(=O)-N、またはシアナクリル基CH=C(CN)-C(=O)-O、またはメチレンマロネート基CH=C[-C(=O)-O]、またはビニレン-1,3-ジカルボニル基CH=C[-C(=O)-]、またはアリル基CH=CH-CH-、特にアリルエーテルCH=CH-CH-O-、またはマレイミド基であるものである。
【0114】
以下では、「(メタ)アクリル」という用語を使用する。「(メタ)アクリル」という用語は、アクリル基またはメタクリル基を指し、(メタ)アクリル化合物とは、アクリル基もしくはメタクリル基または双方を含む化合物である。
【0115】
好ましい化合物C)は、特に、少なくとも2個のアクリル基もしくはメタクリル基、少なくとも2個のビニル基または少なくとも2個の炭素-炭素二重結合を有するオレフィンを有する化合物、不飽和ポリエステル、あるいは少なくとも2個の不飽和基により置換されたシアヌレートもしくはイソシアヌレートである。
【0116】
2個の炭素-炭素二重結合を有するオレフィンは、例えば、ブタジエン、シクロオクタジエン、シクロドデカトリエン、イソプレン、リモネン、ジビニルシクロヘキサン、またはポリブタジエンもしくはポリイソプレンである。
【0117】
少なくとも2個のアクリル基またはメタクリル基を有する化合物C)は、特に、多官能性アルコールまたはアルコキシル化多官能性アルコールの(メタ)アクリルエステルである。
【0118】
そのようなアルコールの例は、二官能性アルコール、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、アルコキシル化フェノール化合物、例えばエトキシル化またはプロポキシル化ビスフェノール、シクロヘキサンジメタノール、三官能性以上の官能性アルコール、例えば、グリセロール、トリメチロールプロパン、ブタントリオール、トリメチロールエタン、ペンタエリトリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリトリトール、ソルビトール、マンニトール、および相応するアルコキシル化、特にエトキシル化およびプロポキシル化アルコールである。
【0119】
ポリエステロールの(メタ)アクリルエステルもオリゴマーとして言及されてもよい。
【0120】
適切なポリエステロールは、例えば、ポリカルボン酸、好ましくはジカルボン酸をポリオール、好ましくはジオールによりエステル化することにより製造可能なものである。ヒドロキシル基を含むそのようなポリエステルの出発材料は、当業者に公知である。好ましく使用されるジカルボン酸は、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、o-フタル酸、それらの異性体および水素化生成物、ならびにエステル化可能な誘導体、例えば上記の酸の無水物もしくはジアルキルエステルである。マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸またはそれらの無水物も適している。適切なポリオールは、先に言及したアルコール、好ましくは、エチレングリコール、1,2および1,3-プロピレングリコール、ブタン-1,4-ジオール、ヘキサン-1,6-ジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、ならびにエチレングリコールおよびプロピレングリコールのタイプのポリグリコールである。
【0121】
ポリエステロールの(メタ)アクリレートは、例えば欧州特許第279303号明細書に記載のように、アクリル酸、ポリカルボン酸およびポリオールから、複数段階または1段階で製造することが可能である。
【0122】
また、エポキシド(メタ)アクリレートまたはウレタン(メタ)アクリレートも、適切なオリゴマーであり得る。
【0123】
エポキシド(メタ)アクリレートは、例えば、エポキシ化されたオレフィンまたはポリグリシジルエーテルまたはモノグリシジルエーテルまたはジグリシジルエーテル、例えばビスフェノールAジグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸とを反応させることにより得られるものである。
【0124】
この反応は、当業者に公知であり、例えばR.Holmann、U.V. and E.B. Curing Formulation for Printing Inks and Paints、London 1984に記載されている。
【0125】
ウレタン(メタ)アクリレートは、特に、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとポリイソシアネートまたはジイソシアネートとの反応生成物である(R.Holmann、U.V. and E.B. Curing Formulation for Printing Inks and Paints、London 1984も参照)。
【0126】
さらなるオリゴマーは、例えば、マレイン酸またはフマル酸またはイタコン酸の含量の結果として特に二重結合を有する低分子量不飽和ポリエステルである。
【0127】
少なくとも2個のビニル基を有するオリゴマーは、例えば、ジエチレングリコールジビニルエーテルまたはトリエチレングリコールジビニルエーテルのようなジビニルエーテルである。
【0128】
さらなるオリゴマーは、例えば、ジビニルスルホン、または
【化11】
である。
【0129】
好ましい実施形態において、エチレン性不飽和基を-SH反応性基として有する化合物C)は、アクリル化合物またはメタクリル化合物、特に多官能性アルコールの(メタ)アクリレート、またはビニルエーテル基を有する化合物、または不飽和ポリエステルである。特に好ましい実施形態において、エチレン性不飽和基を-SH反応性基として有する化合物C)は、メタクリル化合物である。
【0130】
エポキシ基を官能基として有する化合物C)について
少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物C)は、例えば、少なくとも2個のアルコール基を有する化合物とエピクロロヒドリンとを反応させることにより得られる化合物である。挙げられ得る例は、ビスフェノールAもしくはビスフェノールFもしくはビスフェノールSのジグリシジルエーテル、および水素化ビスフェノールAもしくはビスフェノールFのジグリシジルエーテル、または脂肪族ジオールのジグリシジルエーテル、例えばポリアルコキシレンジオール(polyalkoxylene diols)のジグリシジルエーテルである。オリゴアルコール(oligoalcohols)系のオリゴグリシジルエーテルも挙げることができる。少なくとも2個のアルコール基を有する化合物をエピクロロヒドリンに比べて過剰に使用することにより得られるエポキシ樹脂も例である。そのようなエポキシ樹脂において、少なくとも2個のアルコール基を有する化合物の重合度は、2~25、特に2~10であることが好ましい。
【0131】
さらなる例は、少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ化脂肪酸、脂肪酸エステル、または脂肪酸アルコールである。
【0132】
少なくとも2個のエポキシ基を有するその他の化合物は、例えば、テトラグリシジルメチレンジアニリン(TGMDA)、トリグリシジルアミノフェノールおよびトリグリシジルイソシアヌレートであるが、以下を参照されたい。
【0133】
【化12】
【0134】
1個より多くのエポキシ基を有するその他の化合物C)は、グリシジル(メタ)アクリレートまたはグリシジルビニルエーテルを重合または共重合することにより得ることが可能である。
【0135】
イソシアネート基を官能基として有する化合物C)について
イソシアネート基を官能基として有する化合物C)は、ジイソシアネート、および少なくとも3個のイソシアネート基を有するポリイソシアネートである。
【0136】
ジイソシアネートまたはポリイソシアネートは、脂肪族化合物であっても、脂環式化合物であっても、または芳香族化合物であってもよい。
【0137】
ジイソシアネートは、例えば、2,2’-、2,4’-および4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、2,4-または2,6-トルイレンジイソシアネート(TDI)、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ナフチレンジイソシアネート、またはジイソシアネートのウレトジオンである。
【0138】
ポリイソシアネートは、例えばジイソシアネートのイソシアヌレートである。
【0139】
また、ジイソシアネートまたはポリイソシアネートは、上記のジイソシアネートおよびポリイソシアネートと、少なくとも2個のヒドロキシ基を有するポリオール、または第一級もしくは第二級アミノ基から選択される少なくとも2個のアミノ基を有するポリアミンとを反応させることにより得られるプレポリマーであってもよい。
【0140】
異なる官能基を有する化合物C)について
化合物C)は、-SHと反応する異なる官能基、例えば1個のエポキシ基および1個の(メタ)アクリル基を有していてもよい。そのような化合物は、例えば、ビニル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートまたはアリルグリシジルエーテルであるか、異なる官能基を有するポリマー化合物である。
【0141】
少なくとも1個の第一級または第二級アミノ基、および-SH基と反応する少なくとも1個の官能基を有する化合物D)について
化合物D)は、少なくとも1個のアミノ基、および-SH基と反応する少なくとも1個の官能基を有する化合物である。-SHと反応する官能基は、化合物C)に関して挙げたものと同じ基である。
【0142】
化合物D)は、例えば500,000g/molまでの分子量を有していてもよい。後者は、化合物D)が、高分子化合物、例えば少なくとも1個の第一級または第二級アミノ基、および-SH基と反応する少なくとも1個の官能基を有するポリマーである場合に当てはまることがある。
【0143】
好ましい化合物D)は、1000g/molまでの分子量を有する。500g/molまでの分子量を有する化合物D)が最も好ましい。
【0144】
化合物D)において、第一級または第二級アミノ基、および-SH基と反応する官能基の数は、合計で1000まで、または500まで、好ましくは100までであってもよい。ポリマー化合物D)を用いる場合、アミノ基が多数であり得る。
【0145】
好ましい実施形態において、化合物D)は、合計で1~3個の第一級または第二級アミノ基、好ましくは1個または2個の第一級または第二級アミノ基を含み、最も好ましい実施形態において、化合物D)は、アミノ基を1個のみ含む。
【0146】
好ましい実施形態において、化合物D)は、少なくとも1個の第一級アミノ基を含む。
【0147】
特に好ましい実施形態において、化合物D)は、アミノ基を1個のみ含み、アミノ基は第一級アミノ基である。
【0148】
好ましい実施形態において、化合物D)は、-SH基と反応する官能基を合計1~3個含む。より好ましい実施形態において、化合物D)は、-SH基と反応する官能基を1個または2個含む。最も好ましい実施形態において、化合物D)は、-SH基と反応する官能基を1個のみ含む。
【0149】
-SH基と反応する化合物D)の官能基は、非芳香族炭素-炭素二重結合または三重結合であることが好ましい。
【0150】
好ましい実施形態において、化合物D)はモノチオカーボネート基を含まない。
【0151】
特に好ましい実施形態において、化合物D)は、-SH基と反応する官能基、第一級もしくは第二級アミノ基、またはカルボン酸エステル基、またはエーテル基から選択される官能基以外の官能基を含まない。
【0152】
特に好ましい実施形態において、化合物D)は、第一級アミノ基1個と、特に非芳香族炭素-炭素二重結合である、-SHと反応する基1個とを有する化合物である。
【0153】
最も好ましい実施形態において、化合物D)は、第一級アミノ基1個と、非芳香族炭素-炭素二重結合1個とを有する化合物であり、その他の官能基を含まない。
【0154】
適切な化合物D)は、例えば、アミノプロピルアミンビニルエーテルおよびアリルアミンであり、以下の式を参照されたい。
【0155】
【化13】
【0156】
ウレタン基を有するポリマーの合成についての第一の代替形態
A)とB)およびC)との反応の原理は、以下の通りである:
チオカーボネートA)の環は、A)と化合物B)のアミノ基との反応により開環する。B)は2個のアミノ基を有するため、反応は2回起こる。開環反応の生成物は、本明細書において中間体と称される、ウレタン基を有する化合物である。
【0157】
この開環反応は、特定の化合物A)およびB)について以下に例示的に示されている。
【0158】
【化14】
【0159】
先の例において、中間体は、2個のチオール基-SHと2個のウレタン基とにより形成される。
【0160】
-SH基は、反応性が高く、先に記載の化合物C)の反応性基と容易に反応する。
【0161】
2個の-SH基を有する中間体と、2個の反応性基を有する化合物C)との反応は、重合反応であり、ウレタン基を有するポリマーが形成される。
【0162】
したがって、ウレタン基を有するポリマーは、本発明の方法により得ることが可能である。このポリマーは、式V:
【化15】
の構造要素を含むことが一般的である。
【0163】
変数A~Eは、置換基による置換を表す。
【0164】
一般的な構造要素は、硫黄原子がエチレン基を介してウレタン基の酸素に結合したウレタン基である。
【0165】
ウレタン基を有するポリマーは、反応が1段階で実施されるか、または2段階で実施されるかどうかにかかわらず、この方法により得ることが可能である。ポリマーは、ウレタン基を式Vの構造要素の形態で含む。
【0166】
この方法により得られるポリマーは、式Vの構造要素の含量が、ポリマー100gあたり、0.0001~0.3mol、特に0.001~0.2molであることが好ましく、それにより、式Vの構造要素は、分子量が3×12+2×16+14+32=114g/molであると計算され、これは、式V中のすべての原子C、O、NおよびSの分子量の合計である。
【0167】
第一の代替形態の反応は、1段階で、A)、B)およびC)を同時に反応させることにより、または2段階で、まずA)をB)と反応させ、その後、得られた中間体をC)と反応させることにより実施されることが好ましい。
【0168】
2段階の合成の化学量論は、以下の通りである:
2molの化合物A)を化合物B)の2molのアミノ基と反応させ、2molの-SH基を有する得られた中間体を化合物C)の2molの反応性基と反応させる。B)およびC)のどちらも、2個以上の反応性基を有していてもよいため、アミノ基および化合物C)の反応性基に対するモノチオカーボネート基の得られる化学量論的モル関係は、
x molA:x/n molB:x/m molC
[式中、xは整数であり、nは化合物Bの第一級および第二級アミノ基の数であり、mは化合物C)の反応性基の数である]
である。好ましい実施形態において、x、nおよびmは、互いに独立して、1、2または3である。先のモル関係は、三重結合を有する化合物C)にも同様に当てはまるが、1個の三重結合は、反応性基としての二重結合2個と等価である。
【0169】
大過剰な化合物を回避し、化合物A)、B)およびC)のいずれかを、反応の化学量論に相応する等モル量から50%以下、または20%以下ずれた量で使用することが好ましい。
【0170】
また、化合物A)、B)およびC)を、同時に1段階(以下で1段階反応と称する)で反応させてもよい。この1段階反応の結果は、化合物C)の反応性基が化合物B)のアミノ基とも反応して、それにより開環反応に対するアミノ基の利用性が減少し得るため、化合物C)の性質に応じ、これについては先を参照されたい。以下のケースで区別する必要がある。
【0171】
ケース1
化合物A)とB)のアミノ基との反応性が、化合物C)とアミノ基との反応性よりもはるかに高い場合、A)、B)およびC)の1段階反応の結果は、A)およびB)がまず反応し、得られた中間体とC)との反応が続くため、2段階反応の結果に相応する。
【0172】
ケース2
化合物A)およびC)とアミノ基との反応性が同程度の大きさの場合、A)、B)およびC)の1段階反応により、ウレタン基を含むハイブリッドポリマーが生じる。
【0173】
ケース3
化合物A)とB)のアミノ基との反応性が、化合物C)とアミノ基との反応性よりもはるかに低い場合、A)、B)およびC)の1段階反応の結果、少量のウレタン基を有するポリマーが生じる。
【0174】
さらなる開示は、特定の化合物C)に関する。
【0175】
少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物C)での合成について
これはしばしば、用いられる出発材料の反応性のパターンに応じてケース2であり得る。C)のエポキシ基とB)のアミノ基との反応性は、しばしば、化合物A)とB)のアミノ基との反応性に類似している。3種すべての成分の1段階反応において、化合物B)のアミノ基と、化合物A)(モノチオカーボネートの開環)または化合物C)(アミノ化合物によるエポキシ化合物の架橋/鎖延長)との競争反応が起こる。この1段階反応の生成物として、ハイブリッドポリマーが得られる。化合物A)~C)のモル比によりハイブリッドポリマーの性質が決まる。化合物A)の方が少量の場合、得られるハイブリッドポリマーは、ウレタン基で修飾されたエポキシ樹脂に相応する。得られるウレタン修飾エポキシ樹脂では、塗布性が改善されており、エポキシ樹脂の利点と、ウレタン基の含量から得られる利点とが組み合わされている。
【0176】
したがって、A)、B)およびC)を1段階で反応させることは本発明の一実施形態であり、ここで、C)は、少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物である。C)のエポキシ基のモルに対する化合物A)のモル比は、1:100~100:1であることが好ましい。C)のエポキシ基のモルに対する化合物A)の比は、50:1~1:50であることがより好ましい。反応性の高いチオカーボネート誘導体、例えば非置換環状モノチオカーボネートを用いると、反応経路をケース1に従うようにシフトさせることができる。
【0177】
少なくとも2個のエポキシ基を官能基として有する化合物C)を、2段階合成に従って、まず化合物A)をB)と反応させ、その後、得られた中間体を化合物C)と先に記載のように反応させることにより、A)およびB)と反応させることが好ましい。
【0178】
少なくとも2個のメタクリル基を不飽和基として有する化合物C)での合成について
これらの系はケース1に従うことが一般的である。というのも、メルカプタンの付加が低温で進行可能である一方で、メタクリレートへのアミンのアザマイケル付加は、望ましくないと考えられるからである。そのような挙動は、(Polymer preprints 2010、51、281)に記載されている。
【0179】
少なくとも2個のアクリル基を不飽和基として有する化合物C)での合成について
これらの系はケース3に従うことが一般的である。
【0180】
文献では、アクリレートによるアザマイケル付加反応を特定の反応条件(溶媒依存性)下で抑制することができると知られている。アザマイケル付加の得られる反応速度に応じて、系全体は、後にケース2またはケース1にさえ従ってもよい。
【0181】
ビニルエーテルまたはオレフィンなどの非活性化二重結合であるその他の不飽和基を有する化合物C)での合成について
これらの系はケース1に従うことが一般的である。化合物Cの不飽和基への-SHの付加をラジカル反応により達成することができることが好ましい。ラジカル反応を、熱により触媒しても、かつ/または光開始させてもよい。
【0182】
少なくとも2個のイソシアネート基を不飽和基として有する化合物C)での合成について
これはケース3である。よって、1段階反応は好ましくない。
【0183】
この方法の一般的な問題
化合物A)、B)およびC)を混合して、
A) 5員環状モノチオカーボネートと、
B) 第一級または第二級アミノ基から選択される少なくとも2個のアミノ基を有する化合物と、
C) -SH基と反応する少なくとも2個の官能基を有する化合物、または-SH基と反応する官能基としての三重結合の場合、少なくとも1個の三重結合を有する化合物と
を含む硬化性混合物を得ることができる。
【0184】
2段階反応の場合、第二の段階のために、2種の成分A)およびB)と、さらにC)との反応生成物を含む硬化性混合物が製造される。
【0185】
貯蔵のために、化合物A)、B)およびC)を個別に保ってもよい。成分A)およびC)を合し、B)を個別に保つことが可能であり、それにより、第一の成分A)およびC)と第二の成分B)とを含む二成分硬化系が得られる。
【0186】
A)、B)およびC)の反応を、-20~250℃、好ましくは20~100℃の温度で実施することが好ましい。これは、1段階反応に、かつ2段階反応の双方の段階に当てはまる。あるいは、反応のための活性化エネルギーを、高エネルギーの放射線、例えば可視光または紫外光により供給してもよい。
【0187】
1段階反応または2段階反応を、溶媒を用いて実施してもよい。溶媒の使用は、化合物A)、B)およびC)のうちの少なくとも1個が固体状であり、その他の液体状の化合物A)、B)またはC)が固体状化合物のための溶媒としてすでに作用していない場合に、役立ち得る。適切な溶媒は、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、ジオキサン、メタノール、エタノール、水、テトラヒドロフラン、およびジメチルホルムアミドである。化合物A)、B)およびC)のうちの少なくとも1個が通常液体状であり、すでに溶媒として機能しているためにさらなる溶媒が通常必要とされないことが、この方法の利点である。
【0188】
さらに、二成分硬化系の場合、A)、B)およびC)の先の組成物または個別の組成物は、さらなる添加剤、例えば触媒もしくは阻害剤、または得られるポリマーの意図される使用に必要なもしくは望ましい添加剤を含んでいてもよい。
【0189】
例えば、付加反応を介して-SH基に付加する化合物C)の場合、触媒を使用してもよい。付加反応は、イオンまたはラジカル機構に従っていてもよい。イオン機構は、通常、塩基性化合物が触媒として存在することを必要とする。塩基性触媒は、化合物B)自体であってもよい。エチレン性不飽和基への付加の場合、化合物B)が存在すれば、しばしば十分である。官能基としてのエポキシ基の場合、塩基性触媒、例えば、第三級アミン、例えばVersamin(登録商標)を添加することが好ましい。そのような触媒を、エポキシ基1molあたり触媒0.1~3molの量で使用することが一般的である。その他の触媒は、アミジンまたはグアニジンベースの系またはホスフィンであってよい。付加反応のラジカル機構を、ラジカルを形成する開始剤で補助する。そのような開始剤は、ラジカル重合でよく知られた熱開始剤または光活性開始剤のいずれかである。
【0190】
さらに、二成分硬化系の場合、A)、B)およびC)の先の組成物または個別の組成物は、安定剤を含んでいてもよい。そのような安定剤は、組成物を長時間にわたり貯蔵または輸送する場合に、分解または早期の重合を回避するのに役立ち得る。
【0191】
特に、副反応であるS-H基の酸化を低減または回避するレドックス安定剤を添加してもよい。S-H基の酸化により、隣接する分子の間にジスルフィド架橋を生成することができ、それにより、化合物Cとの反応に利用可能なS-H基の量が低減される。そのような安定剤の例は、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)である。
【0192】
あるいは、添加剤または安定剤を、得られるポリマーへの反応の後に添加してもよい。
【0193】
先の反応では、さらなる化合物、特にアミノ基を1個のみ有する化合物、または三重結合以外の-SH基と反応する官能基を1個のみ有する化合物を使用してもよい。そのような化合物は、得られるポリマーの分子量を制限する調節剤として作用するだろう。好ましい実施形態において、本発明の方法により得られるポリマーは、少なくとも60重量%、特に少なくとも80重量%が、化合物A)、B)およびC)から成る。より好ましい実施形態において、本発明の方法により得られるポリマーは、少なくとも90重量%、特に少なくとも95重量%、または少なくとも98重量%が、化合物A)、B)およびC)から成る。
【0194】
得られるポリマーは、室温で透明、非粘着性かつ固体状であることが一般的である。
【0195】
ウレタン基を有するポリマーの合成の第二の代替形態について
第二の代替形態のポリマーは、化合物A)およびD)を反応させることにより得られる。
【0196】
A)およびD)を反応させる場合、D)のアミノ基によるモノチオカーボネートの開環と、ウレタン基の形成とが最初に起こる。得られる中間体は、-SH基、および-SHと反応する少なくとも1個の官能基を有する。この中間体は、ある分子の-SH基と別の分子の官能基との反応によりポリマー鎖を重合および構築することができる。
【0197】
この反応の化学量論によると、1molのモノチオカーボネートA)は、すべてのモノチオカーボネートを完全に転化させるために化合物D)のアミノ基を1mol必要とする。各モノチオカーボネートは、開環により1個の-SH基を生成し、よって、化合物D)の1molの官能基は、1molの-SH基と反応してポリマーを形成する。化合物A)またはD)を過剰に使用してもよい。過剰な化合物A)またはD)は、得られるポリマーの分子量に影響を与える。大過剰な化合物を回避し、化合物A)およびD)を、反応の化学量論に相応する等モル量から50%以下、または20%以下ずれた量で使用することが好ましい。最も好ましい実施形態では、反応の化学量論に相応する等モル量を使用する。
【0198】
A)、B)およびC)の反応の性能、ならびに添加剤、安定剤および触媒の使用に関する先の開示は、化合物A)およびD)の反応にも当てはまる。特に、化合物C)に関して先に記載された、-SH基と反応する官能基に関する開示はすべて、同様に化合物D)にも関するべきである。
【0199】
ウレタン基を有するポリマーは、同様に第二の代替形態による方法でも得られる。ポリマーは、ウレタン基を、式Vの構造要素の形態で、第一の代替形態の場合についてすでに先に記載した量と同じ量で含む。
【0200】
A)およびD)から得られるポリマーは、通常、室温で無色の固形物であり、非粘着性である。
【0201】
本発明の方法により、ウレタン基を有するポリマーを製造する代替的な方法が提供される。この方法では、イソシアネート基を有する化合物の使用を回避する。本発明の方法は、単純かつ効果的な製造方法、特に高エネルギーまたは高温を必要としない方法である。固体状かつ透明なポリマーは、容易に利用可能であり、様々な工業用途、例えば、コーティング、接着剤、あらゆる形状の注型品を成形するための熱可塑性材料または熱硬化性材料に有用である。ウレタン基がエポキシ樹脂のようなポリマーに導入されているため、特性が修正されたハイブリッドポリマーが入手可能である。高い屈折率を有する光学ポリマーを得ることができる。得られるポリマーは、高い熱安定性を示す。この方法はさらに、酸素の存在と適合した低温硬化の硬化機構をもたらす。
【0202】
実施例
1個の5員環状モノチオカーボネート基を有する以下の化合物を実施例において使用した:
【化16】
【0203】
環状モノチオカーボネートの合成
第一の段階
表1に列挙したエポキシドを反応器に充填し、-30℃に保った。エポキシドのモル量を同様に表1に列挙する。エポキシド1molあたり0.01molのテトラ-n-ブチルアンモニウムクロリドを添加した。その後、反応が発熱性であるため、ホスゲンをゆっくりと添加する。ホスゲンを添加する際、冷却により温度を20℃未満に保った。ホスゲンの総量は、エポキシド1molあたり1.1molであった。ホスゲンの添加が完了したら、反応混合物を約2時間にわたりさらに撹拌した。未反応のホスゲンを窒素ストリッピングにより除去した。さらなる後処理は必要なかった。得られたβ-クロロアルキルクロロホルマートを、チオカーボネートの形成である次の段階で直接使用することができた。
【0204】
エポキシド、得られたβ-クロロアルキルクロロホルマート、および反応のさらなる詳細は、表1に列挙されている。
【0205】
第二の段階
各β-クロロアルキルクロロホルマート(50g)およびジクロロメタン(50mL)を、KPG三日月型スターラーと、滴下漏斗と、温度計と、還流凝縮器とを備えた500mLの四つ口丸底フラスコに入れる。この溶液を氷浴で0℃に冷却し、それから、NaS(1当量、15重量%の水溶液)をゆっくりと添加し、温度を5℃に維持した。添加が完了した後に、氷浴を除去し、反応混合物を室温に温めた。4時間にわたり撹拌した後に、相を分離し、水相をジクロロメタンで抽出した(2×50mL)。合した有機相から溶媒を減圧下で除去し、残留液を(クーゲルロール)蒸留により精製し、望ましい環状チオカーボネートを得た。
【0206】
【表1】
【0207】
ポリマーの製造
実施例1:メチルモノチオカーボネート、ジアミンおよび化合物Cと二重結合とのポリマー
メカニカルスターラーを備えたフラスコ内で、メチルモノチオカーボネート(3.00160g、0.025405mol)と、1,4-ブタンジオールジメタクリレート(95%、3.00981g、0.0127mol)と、レドックス安定剤である5mgのトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)とを合し、次にこの混合物を均質化した。フラスコを窒素でパージした。この溶液に、1,5-ペンタンジアミン(1.29922g、0.0127mol、1当量)をシリンジにより添加した。反応混合物をN2雰囲気のもとT=60℃で穏やかに撹拌した。
【0208】
反応スキームは、以下の通りである:
【化17】
【0209】
22時間後に、無色透明のポリマーが得られた。熱重量測定実験(空気雰囲気)では、高い熱安定性が示され、280~300℃で劣化が観察された。
【0210】
熱安定性は、熱重量測定分析(TGA)による分解温度(Td)で明らかとなった(空気、10K min-1、50~650℃)。
【0211】
【表2】
【0212】
実施例2:n-ブチルグリシジルモノチオカーボネート、ジアミンおよび化合物Cと二重結合とのポリマー
マグネチックスターラーを備えたフラスコ内で、n-ブチルグリシジルチオカーボネート(5.0g、0.026mol、1当量)と、トリメチロールプロパントリメタクリレート(工業グレード、2.97g、1/3当量)とを合し、次に均質化した。この溶液に、1,5-ペンタンジアミン(1.34g)を迅速に添加した。室温での激しい撹拌の10秒後に、反応混合物を金属製の型に注型した(棒型、それぞれ体積10ml)。これらの型を、60℃で12時間にわたり貯蔵し、次に試料を型から取り出した。高い透明度を有する無色の固形物としてポリマーが得られた。ポリマーは、高い熱安定性を示した。
【0213】
熱安定性は、熱重量測定分析(TGA)による分解温度(Td)で明らかとなった(空気、10K min-1、50~650℃)。
【0214】
【表3】
【0215】
反応スキームは、以下の通りである:
【化18】
【0216】
実施例3:メチルモノチオカーボネート、メチルシクロヘキサンジアミン(MCDA)および化合物Cとエポキシ基とのポリマー
Leuna Harze GmbHから得られるビスフェノールAジグリシジルエーテルであるEpiloxA19-03樹脂(297.48g)を容器に入れた。真空を適用して気泡を除去した(高速ミキサー)。38.83gのn-ブチルグリシジルモノチオカーボネートおよびメチルシクロヘキサンジアミン(MCDA、52.04g)を添加し、1分間にわたり撹拌を続けた(2000rpm)。触媒Versamin(登録商標)EH50(11.66g)を添加し、1分間にわたり混合を続けた(1000rpm)。真空を適用して気泡を除去した。次に、反応混合物を型(およそ32×22cm)に注型し、80℃で3時間にわたり硬化させた。
【0217】
反応スキームは、以下の通りである:
【化19】
【0218】
得られたポリマーは、固体状であり、透明であった。化合物は型内で硬化し、固体状の透明なパネルになった。
【0219】
実施例4:n-ブチルグリシジルモノチオカーボネート、ジアミン(ポリエーテルジアミン)および化合物Cとエポキシ基とのポリマー
Leuna Harze GmbHから得られるビスフェノールAジグリシジルエーテルであるEpilox(登録商標)A19-03(266.14g)を容器に入れた。真空を適用して気泡を除去した(高速ミキサー)。38.83gのn-ブチルグリシジルモノチオカーボネートと、ポリエーテルジアミンであるJeffamineD230(83.38g)とを添加し、1分間にわたり撹拌を続けた(2000rpm)。触媒(第三級アミンであるVersamid(登録商標)EH50、11.65g)を添加し、1分間にわたり混合を続けた(1000rpm)。真空を適用して気泡を除去した。次に、反応混合物を型(およそ32×22cm)に注型し、80℃で3時間にわたり硬化させた。
【0220】
得られたポリマーは、固体状であり、無色であった。化合物は型内で硬化し、固体状の透明なパネルになった。
【0221】
比較例1
モノチオカーボネートなしで実施例4を繰り返した。したがって、起こる反応は、エポキシ化合物とアミンとのよく知られた架橋のみである。
【0222】
EpiloxA19-03(266.14g)を容器に入れた。真空を適用して気泡を除去した(高速ミキサー)。Jeffamine(登録商標)D230(83.38g)を添加し、1分間にわたり撹拌を続けた(2000rpm)。触媒(第三級アミンであるVersamid(登録商標)EH50、11.65g)を添加し、1分間にわたり混合を続けた(1000rpm)。真空を適用して気泡を除去した。次に、反応混合物を型(およそ32×22cm)に注型し、80℃で3時間にわたり硬化させた。
【0223】
得られたポリマーは、固体状であり、黄色がかっていた。化合物は型内で硬化し、固体状の黄色がかったパネルになった。
【0224】
実施例5~10、ならびに比較例2および3
モノチオカーボネート、ジアミンおよび化合物Cとエポキシ基とのポリマー
すべての反応を、25℃で開始して、DSC装置内で実施した。反応のエネルギープロファイルを、5K/分の温度勾配を200℃まで適用することによりDSCで辿った。次に、試料を10分間にわたり等温に保った。その後、試料を-50℃に冷却(勾配:20℃/分)し、次に、15分間にわたり等温に保った。特定された、反応の開始に相応する開始温度、発熱ピーク(複数可)の最大値(複数可)に相応する発熱温度、およびエンタルピーは、表に列挙されている。
【0225】
得られたポリマーのTgを求めるために、試料を200℃に再加熱した(勾配:20K/分)。
【0226】
実施例5
エポキシ樹脂EpiloxA19-03(0.685g)をDSC試料受皿に加えた。ブトキシ置換モノチオカーボネート(0.1g)を添加し、続いて、Jeffamine(登録商標)D230(0.215g)を添加した。触媒(Versamin(登録商標)EH50、0.028g)を添加した後に、試料受皿を25℃のDCSチャンバ内に入れた。
【0227】
実施例6~10、ならびに比較例2および3
さらなる例において、実施例5の組成を変更し、例えば、Jeffamine(登録商標)をMCDAと交換し、n-ブチルグリシジルモノチオカーボネート(BTC)をメチルモノチオカーボネート(MTC)と交換した。各実施例および比較例では、その他の成分すべての合計100重量部あたり8重量部のVersamin(登録商標)EH50を添加した。
【0228】
すべてのポリマーについて、これらの結果は、エポキシ化合物およびジアミンから得られた純粋なエポキシ樹脂に比べて、モノチオカーボネートの存在下では、Tgの減少が非常に穏やかであることを示す。
【0229】
Jeffamine(登録商標)D230をジアミンとして有するすべての例の組成および結果を、表1に示す。
【0230】
MCDAをジアミンとして有するすべての例の組成および結果を、表2に示す。
【0231】
表1および2中のすべての%は重量%である。
【0232】
【表4】
【0233】
【表5】
【0234】
反応性の特定
系の反応性をレオロジー測定により求めた。パラレルプレートシステム(parallel plate system)を備えたレオメーター(MCR302、Anton Paar)内にて、調製物を70℃で反応させた。
【0235】
10Pasの粘度に達するために必要な時間、およびゲル化時間を、比較例2および実施例5について求めた。
【0236】
【表6】
【0237】
このデータは、環状モノチオカーボネートを含む例の場合において、反応性の増加を反映している。
【0238】
機械的性能
硬化した試料の最大貯蔵弾性率およびコンプライアンスを求めることにより、試料の機械的性能を試験した。コンプライアンスの値が高いことは、弾性特性が良好であることに相応する。
【0239】
【表7】
【0240】
このデータは、ウレタン/エポキシハイブリッド材料が、貯蔵弾性率の低下の問題を起こさず、同時に、著しく向上したコンプライアンスを示すことを証明している。
【0241】
実施例11:メチル-1,3-オキサチオラン-2-オン、ジアミンおよび化合物Cと二重結合とのポリマー
マグネチックスターラーを備えた50mlフラスコ内で、5-メチル-1,3-オキサチオラン-2-オン(8.86g)と、トリメチロールプロパントリメタクリレート(8.46g)とを合し、次に均質化した。この溶液に、2,2’-(エチレンジオキシ)ビス(エチルアミン)(5.56g)を迅速に添加した。この混合物を撹拌し、室温で均質化した。
【0242】
混合物の温度および混合物の粘度は、経時的に上昇し、試料は、20時間後に完全に硬化した(透明なポリマー)。
【0243】
実施例12:n-ブチルグリシジルモノチオカーボネート、トリアミンおよび化合物Cと二重結合とのポリマー
マグネチックスターラーを備えた50mlフラスコ内で、5-(ブトキシメチル)-1,3-オキサチオラン-2-オン(5.71g)と、トリメチロールプロパントリメタクリレート(3.38g)とを合し、次に均質化した。この溶液に、トリス(2-アミノエチル)アミン(1.46g)を迅速に添加した。この混合物を撹拌し、室温で均質化した。
【0244】
この混合物の粘度は、およそ10分以内に2倍になり、試料は、20時間後に完全に硬化した(透明なポリマー)。