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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-29
(45)【発行日】2023-10-10
(54)【発明の名称】香料としての脂肪族アルコールの合成
(51)【国際特許分類】
   C07C 33/025 20060101AFI20231002BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20231002BHJP
   A61Q 13/00 20060101ALI20231002BHJP
   C11B 9/00 20060101ALI20231002BHJP
   C11D 3/50 20060101ALI20231002BHJP
【FI】
C07C33/025 CSP
A61K8/34
A61Q13/00 101
C11B9/00 C
C11D3/50
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020520543
(86)(22)【出願日】2018-10-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-17
(86)【国際出願番号】 EP2018076953
(87)【国際公開番号】W WO2019072669
(87)【国際公開日】2019-04-18
【審査請求日】2021-10-01
(31)【優先権主張番号】17196267.3
(32)【優先日】2017-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヒックマン,フォルカー
(72)【発明者】
【氏名】ヒンデールカー,シュリラング
(72)【発明者】
【氏名】グプテ,ニティン
(72)【発明者】
【氏名】アルデカー,サダナンド
(72)【発明者】
【氏名】ジーゲル,ヴォルフガング
(72)【発明者】
【氏名】スワミナサン,ヴィジャイ ナラヤナン
(72)【発明者】
【氏名】ペルツァー,ラルフ
【審査官】神野 将志
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-525315(JP,A)
【文献】特開昭50-157309(JP,A)
【文献】特開2002-179667(JP,A)
【文献】スイス国特許発明第00549635(CH,A)
【文献】米国特許第03959396(US,A)
【文献】特開2000-239691(JP,A)
【文献】特開昭55-157511(JP,A)
【文献】BRUNEL, Yves et al.,TETRAHEDRON LETTERS,NL,ELSEVIER,1996年05月,37(22),3853 - 3856,http://dx.doi.org/10.1016/0040-4039(96)00698-3
【文献】YUS, Miguel et al.,Tetrahedron,2003年,59,8525-8542
【文献】CAS Registry No.1823874-23-2,DATABASE REGISTRY [online], Retrieved from STN,Entered STN,2015年12月06日
【文献】CAS Registry No.1823869-26-6,DATABASE REGISTRY [online], Retrieved from STN,Entered STN,2015年12月06日
【文献】CAS Registry No.1601152-22-0,DATABASE REGISTRY [online], Retrieved from STN,Entered STN,2014年05月09日
【文献】CAS Registry No.1597246-04-2,DATABASE REGISTRY [online], Retrieved from STN,Entered STN,2014年05月05日
【文献】CAS Registry No.1596604-82-8,DATABASE REGISTRY [online], Retrieved from STN,Entered STN,2014年05月04日
【文献】GUIGNARD, Guillaume et al.,Organic Letters,2016年,18(8),1788-1791, Supp.Info. S1-S59
【文献】FRISONE, Marino del Todesco et al.,Organometallics,1993年,12,148-156
【文献】RENZ, Michael et al.,Eur.J.Org.Chem.,1999年,737-750
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 33/025
A61K 8/34
A61Q 13/00
C11B 9/00
C11D 3/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A.a2)、式(A.b2)、式(A.c2)、式(A.a3)、式(A.b3)、及び式(A.c3)の化合物、
【化1】
並びにその立体異性体から選択される化合物。
【請求項2】
請求項1に記載の少なくとも1種の化合物を含む組成物。
【請求項3】
請求項1に記載の式(A.a)、式(A.b)、及び式(A.c)の化合物の混合物を含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
請求項1に記載の化合物又は請求項2又は3に記載の組成物の、香料としての使用。
【請求項5】
i)請求項1に記載の化合物から選択される、少なくとも1種の化合物を、ミュゲ及び/若しくはローズの香調を有するフレグランス及び/若しくはアロマを製造するのに使用する、
並びに/又は
ii)請求項1に記載の化合物から選択される、少なくとも1種の化合物を、ローズ及び/若しくはミュゲの香調を有するフレグランス及び/若しくはアロマを製造するのに使用する、
並びに/又は
iii)請求項1に記載の化合物から選択される、少なくとも1種の化合物を、ウッディ及び/若しくはダスティの香調を有するフレグランス及び/若しくはアロマを製造するのに使用する、
請求項4に記載の使用。
【請求項6】
i)式(A.a1)、式(A.b1)、及び式(A.c1)の化合物から選択される、少なくとも1種の化合物を、ミュゲ及び/若しくはローズの香調を有するフレグランス及び/若しくはアロマを製造するのに使用する、
【化2】
請求項5に記載の使用。
【請求項7】
ii)式(A.a2)、式(A.b2)、及び式(A.c2)の化合物から選択される、少なくとも1種の化合物を、ローズ及び/若しくはミュゲの香調を有するフレグランス及び/若しくはアロマを製造するのに使用する、
【化3】
請求項5又は6に記載の使用。
【請求項8】
iii)式(A.a3)、式(A.b3)、及び式(A.c3)の化合物から選択される、少なくとも1種の化合物を、ウッディ及び/若しくはダスティの香調を有するフレグランス及び/若しくはアロマを製造するのに使用する、
【化4】
請求項5から7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
i)請求項1に記載の化合物を、ミュゲ及び/若しくはローズの香調を有するフレグランス及び/若しくはアロマを製造するのに使用する、
並びに/又は
ii)請求項1に記載の化合物を、ローズ及び/若しくはミュゲの香調を有するフレグランス及び/若しくはアロマを製造するのに使用する、
並びに/又は
iii)請求項1に記載の化合物を、ウッディ及び/若しくはダスティの香調を有するフレグランス及び/若しくはアロマを製造するのに使用する、
請求項5から8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
i)式(A.a1)、式(A.b1)、及び式(A.c1)の化合物の混合物を、ミュゲ及び/若しくはローズの香調を有するフレグランス及び/若しくはアロマを製造するのに使用する、
【化5】
請求項5から9のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
ii)式(A.a2)、式(A.b2)、及び式(A.c2)の化合物の混合物を、ローズ及び/若しくはミュゲの香調を有するフレグランス及び/若しくはアロマを製造するのに使用する、
【化6】
請求項5から10のいずれか一項に記載の使用。
【請求項12】
iii)式(A.a3)、式(A.b3)、及び式(A.c3)の化合物の混合物を、ウッディ及び/若しくはダスティの香調を有するフレグランス及び/若しくはアロマを製造するのに使用する、
【化7】
請求項5から11のいずれか一項に記載の使用。
【請求項13】
香水、洗剤及び洗浄組成物、化粧料、ボディケア剤、衛生用品、口内衛生及び歯科衛生のための製品、香りディスペンサー、フレグランス、並びに医薬品から選択される組成物における、請求項5から12のいずれか一項に記載の使用。
【請求項14】
i)請求項1に記載の少なくとも1種の化合物、又は請求項2又は3に記載の組成物、
ii)場合により、成分i)とは異なる少なくとも1種の更なる香料、及び
iii)場合により、少なくとも1種の希釈剤
を含む、アロマ物質及び/又はフレグランス組成物であって、
但し、組成物が、少なくとも1種の成分ii)又は成分iii)を含む、アロマ物質及び/又はフレグランス組成物。
【請求項15】
請求項1に記載の少なくとも1種の化合物、又は請求項2又は3に記載の組成物を含む、付香製品又はフレグランス製品。
【請求項16】
請求項1に記載の少なくとも1種の化合物が使用される及び/又は請求項2又は3に記載の組成物が使用される、製品に付香する方法。
【請求項17】
匂い又は香気を付与する及び/又は高める、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式(I)の化合物を製造する方法に関する。本発明はまた、式(A)の化合物、又は立体異性体の形態の化合物にも関する。本発明は、式(A)の化合物の香料としての使用に更に関する。
【背景技術】
【0002】
独国特許第1,311,600号には、ジエチルケトンから出発して、ラセミ体の6-エチル-2-メチル-オクテン-(5)-オール-(1)及び6-エチル-2-メチル-オクテン-(6)-オール-(1)の混合物を製造する方法が記載されている。この方法では、ジエチルケトンを、cis-及びtrans-ペンテン-(2)-イン-(4)-オール-(1)の混合物と共に水酸化カリウムの存在下で濃縮して、cis-及びtrans-6-エチル-オクテン-(2)-イン-(4)-ジオール-(1,6)の混合物を得、それを水素及びラネーNiの存在下で水素化して、6-エチル-オクタンジオール-(1,6)を得る。飽和ジオールは、硫酸水素カリウムの存在下で、温度150~160℃で脱水して、炭酸ナトリウム溶液及び水で繰り返し洗浄した後、cis-及びtrans-6-エチル-オクテン-(5)-オール-(1)並びに6-エチル-オクテン-(6)-オール-(1)の粗製混合物を得る。cis-及びtrans-6-エチル-オクテン-(5)-オール-(1)並びに6-エチル-オクテン-(6)-オール-(1)の混合物を、酸化亜鉛の存在下で、ナトリウムメチラートと更に反応させて、6-エチル-2-メチル-オクテン-(5)-オール-(1)及び6-エチル-2-メチル-オクテン-(6)-オール-(1)の混合物を得る。この合成は、面倒な後処理手順及び低い収率を考慮すると、産業プロセスにあまり好適ではないと思われる。
【0003】
(6E)-3,6-ジメチルオクタ-6-エン-1-オール及び(6Z)-3,6-ジメチルオクタ-6-エン-1-オールの製造は、欧州特許第1,029,841号において、グリニャール試薬であるTHP保護5-ブロモ-3-メチルペンタン-1-オールをアセトアルデヒドと反応させ、その後デス・マーチン酸化を行い、続いて臭化エチルトリフェニルホスホニウムとのウィッティヒ反応、及び酸触媒脱保護を行うことによって達成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】独国特許第1,311,600号
【文献】欧州特許第1,029,841号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、香料としての脂肪族アルコールを製造する方法に関する。本発明の目的は、収率を低下させることなく、脂肪族アルコールを製造するための反応ステップの数を減らすか、又は最小限にすることである。本発明の目的はまた、ステップの数を更に増やすことなく、様々な置換脂肪族アルコールを製造する柔軟性をもたらすことである。本発明はまた、式(A)の化合物、又は立体異性体の形態の化合物にも関する。本発明は、式(A)の化合物の香料としての使用に更に関する。
【0006】
発明者らは、驚くべきことに、この目的が達成され、本発明の方法が以下の利点をもたらすことを明らかにした。
- 方法は、産業規模で実行可能である。
- ステップの数を増やすことなく、又は収率を低下させることなく、脂肪族アルコール鎖の置換基の修飾が行われる。
- 通常、保護基により、合成ステップの数が増え、もたらされる廃棄物量が増えるので、本発明の方法シーケンスは、いずれの保護基も使用しない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって、本発明は、式(I)の化合物を製造する方法であって、
【化1】
(式中、
【化2】
は、単結合又は二重結合である)
式(I)が、
式(Ia)の化合物、
【化3】
式(Ib)の化合物、及び
【化4】
式(Ic)の化合物、
【化5】
(式中、mが0の場合、R1、R3、R4、及びR5は同じであるか又は異なり、H、C1~C4-アルキル、及びC3~C4-シクロアルキルからなる群から選択され、
mが1、2、又は3の場合、R1、R2、R3、R4、及びR5は同じであるか又は異なり、H、C1~C4-アルキル、及びC3~C4-シクロアルキルからなる群から選択される)
並びにその立体異性体を含み、
少なくとも以下のステップ:
a)式(IIa)の化合物を用意するステップ
【化6】
(式中、mが0の場合、R3、R4、及びR5は同じであるか又は異なり、H、C1~C4-アルキル、及びC3~C4-シクロアルキルからなる群から選択され、
mが1、2、又は3の場合、R2、R3、R4、及びR5は同じであるか又は異なり、H、C1~C4-アルキル、及びC3~C4-シクロアルキルからなる群から選択される)、
b)式(IIa)の化合物を、ペルオキシ酸及びペルオキシドから選択される化合物にさらして、式(IIb)の化合物を得るステップ、
【化7】
c)式(IIb)の化合物を、式(IIc)の化合物と反応させて、式(IId)の化合物を得るステップ
R1CH2MgX
式(IIc)
(式中、R1は、H、C1~C4-アルキル、及びC3~C4-シクロアルキルからなる群から選択され、Xは、Cl、Br、又はIである)、
【化8】
(式中、mが0の場合、R1、R3、R4、及びR5は同じであるか又は異なり、H、C1~C4-アルキル、及びC3~C4-シクロアルキルからなる群から選択され、
mが1、2、又は3の場合、R1、R2、R3、R4、及びR5は同じであるか又は異なり、H、C1~C4-アルキル、及びC3~C4-シクロアルキルからなる群から選択される)、
d)式(IId)の化合物を脱水反応に付して、式(I)の化合物を得るステップ
を含む、方法を提供する。
【0008】
好ましい一実施形態において、本発明は、式(I')の化合物を製造する方法であって、
【化9】
(式中、
【化10】
は、単結合又は二重結合である)
式(I')が、
式(Ia')の化合物、
【化11】
式(Ib')の化合物、及び
【化12】
式(Ic')の化合物、
【化13】
(式中、R1、R2、R3、R4、及びR5は同じであるか又は異なり、H、C1~C4-アルキル、及びC3~C4-シクロアルキルからなる群から選択される)
並びにその立体異性体を含み、
少なくとも以下のステップ:
a)式(IIa')の化合物を用意するステップ
【化14】
(式中、R2、R3、R4、及びR5は同じであるか又は異なり、H、C1~C4-アルキル、及びC3~C4-シクロアルキルからなる群から選択される)、
b)式(IIa')の化合物を、ペルオキシ酸及びペルオキシドから選択される化合物にさらして、式(IIb')の化合物を得るステップ、
【化15】
c)式(IIb')の化合物を、式(IIc')の化合物と反応させて、式(IId')の化合物を得るステップ
R1CH2MgX
式(IIc')
(式中、R1は、H、C1~C4-アルキル、及びC3~C4-シクロアルキルからなる群から選択され、Xは、Br、Cl、又はIである)、
【化16】
(式中、R1、R2、R3、R4、及びR5は同じであるか又は異なり、H、C1~C4-アルキル、及びC3~C4-シクロアルキルからなる群から選択される)、
d)式(IId')の化合物を脱水反応に付して、式(I')の化合物を得るステップ
を含む、方法を提供する。
【0009】
本発明は、式Aの化合物であって、
【化17】
(式中、
【化18】
は、単結合又は二重結合である)
式Aが、
式(A.a)の化合物、
【化19】
式(A.b)の化合物、及び
【化20】
式(A.c)の化合物
【化21】
(式中、R1、R2、及びR5は同じであるか又は異なり、H、C1~C4-アルキル、及びC3~C4-シクロアルキルからなる群から選択され、
R4は、H、C2~C4-アルキル、及びC3~C4-シクロアルキルからなる群から選択され、
R3はHである)、
並びにその立体異性体を含み、但し、R1、R2、R4、及びR5のうちの少なくとも1つがHではない、化合物を更に提供する。
【0010】
本発明は、式Aの化合物から選択される少なくとも1種の化合物、好ましくは、式(A.a)、式(A.b)、及び式(A.c)の化合物の混合物を含む組成物に更に関する。本発明はまた、式Aの化合物の香料としての使用にも関する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
一実施形態において、本発明は、式(I)の化合物を製造する方法であって、
【化22】
(式中、
【化23】
は、単結合又は二重結合である)
式(I)が、
式(Ia)の化合物、
【化24】
式(Ib)の化合物、及び
【化25】
式(Ic)の化合物、
【化26】
(式中、mが0の場合、R1、R3、R4、及びR5は同じであるか又は異なり、H、C1~C4-アルキル、及びC3~C4-シクロアルキルからなる群から選択され、
mが1、2、又は3の場合、R1、R2、R3、R4、及びR5は同じであるか又は異なり、H、C1~C4-アルキル、及びC3~C4-シクロアルキルからなる群から選択される)
並びにその立体異性体を含み、
以下のステップ:
a)式(IIa)の化合物を用意するステップ
【化27】
(式中、mが0の場合、R3、R4、及びR5は同じであるか又は異なり、H、C1~C4-アルキル、及びC3~C4-シクロアルキルからなる群から選択され、
mが1、2、又は3の場合、R2、R3、R4、及びR5は同じであるか又は異なり、H、C1~C4-アルキル、及びC3~C4-シクロアルキルからなる群から選択される)、
b)式(IIa)の化合物を、ペルオキシ酸及びペルオキシドから選択される化合物にさらして、式(IIb)の化合物を得るステップ、
【化28】
c)式(IIb)の化合物を、式(IIc)の化合物と反応させて、式(IId)の化合物を得るステップ
R1CH2MgX
式(IIc)
(式中、R1は、H、C1~C4-アルキル、及びC3~C4-シクロアルキルからなる群から選択される)、
【化29】
(式中、mが0の場合、R1、R3、R4、及びR5は同じであるか又は異なり、H、C1~C4-アルキル、及びC3~C4-シクロアルキルからなる群から選択され、
mが1、2、又は3の場合、R1、R2、R3、R4、及びR5は同じであるか又は異なり、H、C1~C4-アルキル、及びC3~C4-シクロアルキルからなる群から選択される)、
d)式(IId)の化合物を脱水反応に付して、式(I)の化合物を得るステップ
を含む、方法を提供する。
【0012】
本発明は、特定の実施形態について記載されているが、この記述は、限定的な意味と解釈されるものではない。
【0013】
本発明の、例示的な実施形態を詳細に説明する前に、本発明を理解するのに重要な定義を示す。本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される際、文脈から明らかにそうでないと示されない限り、「a」及び「an」の単数形は、それぞれの複数形も含む。本発明に関し、用語「約」及び「およそ」は、当業者であれば理解する、当該の特徴の技術的効果を更に確保するための精度の幅を示す。用語は、典型的には、示された数値から、±20%、好ましくは、±15%、より好ましくは、±10%、及び更により好ましくは、±5%の偏差を示す。用語「含む(comprising)」は、非限定的であると理解されたい。本発明において、用語「からなる(consisting of)」は、用語「で構成される(comprising of)」の好ましい一実施形態であると考えられる。
【0014】
好ましい一実施形態において、本発明は、式(I')の化合物を製造する方法であって、
【化30】
(式中、
【化31】
は、単結合又は二重結合である)
式(I')が、
式(Ia')の化合物、
【化32】
式(Ib')の化合物、及び
【化33】
式(Ic')の化合物、
【化34】
(式中、R1、R2、R3、R4、及びR5は同じであるか又は異なり、H、C1~C4-アルキル、及びC3~C4-シクロアルキルからなる群から選択される)
並びにその立体異性体を含み、
少なくとも以下のステップ:
a)式(IIa')の化合物を用意するステップ
【化35】
(式中、R2、R3、R4、及びR5は同じであるか又は異なり、H、C1~C4-アルキル、及びC3~C4-シクロアルキルからなる群から選択される)、
b)式(IIa')の化合物を、ペルオキシ酸及びペルオキシドから選択される化合物にさらして、式(IIb')の化合物を得るステップ、
【化36】
c)式(IIb')の化合物を、式(IIc')の化合物と反応させて、式(IId')の化合物を得るステップ
R1CH2MgX
式(IIc')
(式中、R1は、H、C1~C4-アルキル、及びC3~C4-シクロアルキルからなる群から選択され、Xは、Br、Cl、又はIである)、
【化37】
(式中、R1、R2、R3、R4、及びR5は同じであるか又は異なり、H、C1~C4-アルキル、及びC3~C4-シクロアルキルからなる群から選択される)、
d)式(IId')の化合物を脱水反応に付して、式(I')の化合物を得るステップ
を含む、方法を提供する。
【0015】
別の実施形態において、方法の、ステップ(b)、ステップ(c)、及びステップ(d)並びに/又はステップ(b)及びステップ(c)並びに/又はステップ(c)及びステップ(d)は、単一容器で行われる。
【0016】
更に別の実施形態において、ステップb)のペルオキシ酸は、ペルオキシ一硫酸、ペルオキシリン酸、ペルオキシ酢酸、ペルオキシギ酸、ペルオキシトリフルオロ酢酸、ペルオキシ一硫酸カリウム、過ホウ酸ナトリウム、ペルオキシ硝酸、及びペルオキシ安息香酸からなる群から選択される。好ましい一実施形態において、ペルオキシ安息香酸は、メタクロロペルオキシ安息香酸である。
【0017】
更に別の好ましい実施形態において、ステップb)のペルオキシドは、過酸化水素である。好ましい一実施形態において、ステップb)の温度は、0℃以上70℃以下の範囲であり、特に、温度は、20℃以上60℃以下の範囲である。
【0018】
別の実施形態において、ステップb)で、ペルオキシ酸及びペルオキシドから選択される化合物と、式(IIa)の化合物とのモル比は、1以上3.0以下の範囲であり、特に、1.1以上2.0以下の範囲である。
【0019】
別の好ましい実施形態において、ステップc)で、温度は、-20℃以上50℃以下の範囲であり、好ましくは、温度は、0℃以上20℃以下の範囲である。
【0020】
更に別の実施形態において、ステップc)で、式(IIc)の化合物と、式(IIb)の化合物とのモル比は、2以上5.0以下の範囲であり、特に、2.5以上5.0以下の範囲である。
【0021】
一実施形態において、ステップd)は、酸の存在下で行われ、特に、酸は、メタンスルホン酸、リン酸、p-トルエンスルホン酸、ギ酸、硫酸、塩酸、及び酢酸からなる群から選択され、好ましくは、p-トルエンスルホン酸であり、より好ましくは、メタンスルホン酸である。
【0022】
別の実施形態において、ステップd)で、温度は、0℃以上80℃以下の範囲であり、好ましくは、10℃以上40℃以下の範囲である。
【0023】
更に別の実施形態において、ステップd)で、酸と式(IIc)の化合物とのモル比は、0.2以上4.0以下の範囲であり、特に、0.2以上2.5以下の範囲である。
【0024】
一実施形態において、本発明は、式Aの化合物であって、
【化38】
(式中、
【化39】
は、単結合又は二重結合である)
式Aが、
式(A.a)の化合物、
【化40】
式(A.b)の化合物、及び
【化41】
式(A.c)の化合物
【化42】
(式中、R1、R2、及びR5は同じであるか又は異なり、H、C1~C4-アルキル、及びC3~C4-シクロアルキルからなる群から選択され、
R4は、H、C2~C4-アルキル、及びC3~C4-シクロアルキルからなる群から選択され、
R3はHである)、
並びにその立体異性体を含み、但し、R1、R2、R4、及びR5のうちの少なくとも1つがHではない、化合物を提供する。
【0025】
好ましい実施形態において、R1は、H又はメチルであり、R3はHである。
【0026】
更に別の好ましい実施形態において、R2及びR5は同じであるか又は異なり、H、メチル、エチル、1-プロピル、1-メチルエチル、及びシクロプロピルからなる群から選択される。
【0027】
特に、R2はH又はメチルである。より好ましくは、R5は、メチル又は1-メチルエチルである。
【0028】
一実施形態において、本発明は、式Aの化合物であって、
【化43】
(式中、
【化44】
は、単結合又は二重結合である)
式Aが、
式(A.a)の化合物、
【化45】
式(A.b)の化合物、及び
【化46】
式(A.c)の化合物
【化47】
(式中、R1、R2、及びR5は同じであるか又は異なり、H、C1~C4-アルキル、及びC3~C4-シクロアルキルからなる群から選択され、
R4は、H、C2~C4-アルキル、及びC3~C4-シクロアルキルからなる群から選択され、
R3はHである)、
並びにその立体異性体を含み、但し、R1がH又はメチルである場合、R2、R4、及びR5のうちの少なくとも1つがHではない、化合物を提供する。
【0029】
好ましい実施形態において、本発明は、式Aの化合物であって、式中、R1が、H又はメチルであり、R2が、H、メチル、エチル、1-プロピル、1-メチルエチル、及びシクロプロピルからなる群から選択され、R5が、メチル、エチル、1-プロピル、1-メチルエチル、及びシクロプロピルからなる群から選択され、R4が、H、エチル、1-プロピル、1-メチルエチル、及びシクロプロピルからなる群から選択され、R3がHである、化合物を提供する。
【0030】
更に別の好ましい実施形態において、R4は、H、エチル、1-プロピル、1-メチルエチル、及びシクロプロピルからなる群から選択される。
【0031】
好ましい実施形態において、式Aの化合物は、式(A.a2)、式(A.b2)、式(A.c2)、式(A.a3)、式(A.b3)、及び式(A.c3)の化合物、
【化48】
並びにその立体異性体から選択される。
【0032】
一実施形態において、本発明は、式Aの化合物から選択される少なくとも1種の化合物、好ましくは、式(A.a)、式(A.b)、及び式(A.c)の化合物の混合物を含む組成物に関する。
【0033】
好ましい一実施形態において、本発明の組成物は、式Aの化合物から選択される少なくとも2種の化合物、好ましくは、式(A.a)、式(A.b)、及び式(A.c)の化合物の混合物を含む。
【0034】
別の実施形態において、本発明は、式Aの化合物の香料としての使用、又は式Aの化合物から選択される少なくとも1種の化合物、好ましくは、式(A.a)、式(A.b)、及び式(A.c)の化合物の混合物を含む組成物の香料としての使用に関する。
【0035】
好ましい実施形態において、本発明は、式Aの化合物、好ましくは、式(A.a)、式(A.b)、及び式(A.c)の化合物の混合物の香料としての使用に関する。
【0036】
更に別の実施形態において、本発明は、式Aの化合物の香料としての使用、又は式Aの化合物から選択される少なくとも2種の化合物、より好ましくは、式(A.a)、式(A.b)、及び式(A.c)の化合物の混合物を含む組成物の香料としての使用に関する。
【0037】
更に別の実施形態において、本発明は、
i)式Aの化合物から、好ましくは、式(A.a1)、式(A.b1)、及び式(A.c1)の化合物から選択される少なくとも1種の化合物を、ミュゲ及び/若しくはローズの香調(note)を有するフレグランス及び/若しくはアロマを製造するのに使用する、
【化49】
並びに/又は
ii)式Aの化合物から、好ましくは、式(A.a2)、式(A.b2)、及び式(A.c2)の化合物から選択される少なくとも1種の化合物を、ローズ及び/若しくはミュゲの香調を有するフレグランス及び/若しくはアロマを製造するのに使用する、
【化50】
並びに/又は
iii)式Aの化合物から、好ましくは、式(A.a3)、式(A.b3)、及び式(A.c3)の化合物から選択される少なくとも1種の化合物を、ウッディ及び/若しくはダスティの香調を有するフレグランス及び/若しくはアロマを製造するのに使用する、
【化51】
香料としての使用に関する。
【0038】
好ましい一実施形態において、本発明は、
i)式Aの化合物、好ましくは、式(A.a1)、式(A.b1)、及び式(A.c1)の化合物の混合物を、ミュゲ及び/若しくはローズの香調を有するフレグランス及び/若しくはアロマを製造するのに使用する、
【化52】
並びに/又は
ii)式Aの化合物、好ましくは、式(A.a2)、式(A.b2)、及び式(A.c2)の化合物の混合物を、ローズ及び/若しくはミュゲの香調を有するフレグランス及び/若しくはアロマを製造するのに使用する、
【化53】
並びに/又は
iii)式Aの化合物、好ましくは、式(A.a3)、式(A.b3)、及び式(A.c3)の化合物の混合物を、ウッディ及び/若しくはダスティの香調を有するフレグランス及び/若しくはアロマを製造するのに使用する、
【化54】
香料としての使用に関する。
【0039】
更に別の好ましい実施形態において、本発明は、式(A.a)、式(A.b)、及び式(A.c)の化合物から選択される化合物の香料としての使用、又は式(A.a)、式(A.b)、及び式(A.c)の化合物から選択される少なくとも2種の化合物の組成物の香料としての使用に関する。
【0040】
好ましい一実施形態において、香水、洗剤及び洗浄組成物、化粧料、ボディケア剤、衛生用品、口内衛生及び歯科衛生のための製品、香りディスペンサー、フレグランス、並びに医薬品から選択される組成物における、式Aの化合物の香料としての使用。特に、香水、洗剤及び洗浄組成物、化粧料、ボディケア剤、衛生用品、口内衛生及び歯科衛生のための製品、香りディスペンサー、フレグランス、並びに医薬品から選択される組成物における、式(A.a)、式(A.b)、及び式(A.c)の混合物の使用。
【0041】
好ましい一実施形態において、本発明は、
i)少なくとも1種の式(A)の化合物、又は式Aの化合物から選択される少なくとも1種の化合物、好ましくは、式(A.a)、式(A.b)、及び式(A.c)の化合物の混合物を含む組成物、
ii)場合により、成分i)とは異なる少なくとも1種の更なる香料、並びに
iii)場合により、少なくとも1種の希釈剤
を含む、アロマ物質及び/又はフレグランス組成物であって、
但し、組成物が、少なくとも1種の成分ii)又は成分iii)を含む、アロマ物質及び/又はフレグランス組成物に関する。
【0042】
一実施形態において、本発明は、少なくとも1種の式(A)の化合物、又は式Aの化合物から選択される少なくとも1種の化合物、好ましくは、式(A.a)、式(A.b)、及び式(A.c)の化合物の混合物を含む組成物を含む、付香製品又はフレグランス製品に関する。
【0043】
更に別の好ましい実施形態において、本発明は、少なくとも1種の式(A)の化合物が使用される及び/又は式Aの化合物から選択される少なくとも1種の化合物、好ましくは、式(A.a)、式(A.b)、及び式(A.c)の化合物の混合物を含む組成物が使用される、製品に付香する方法、特に、匂い又は香気を付与する及び/又は高める方法に関する。
【0044】
化合物を、例えば、核磁気共鳴分光学(NMR)によって及び/又はガスクロマトグラフィー(GC)によって特性決定することができる。
【実施例
【0045】
合成例
[実施例1]
6-エチル-3-メチル-オクタ-6-エン-1-オールの調製
ステップ1:5-メチルオキセパン-2-オン
4-メチルシクロヘキサノン(50g、0.45モル)のジクロロメタン(DCM)300mL中溶液に、メタクロロ過安息香酸(mCPBA、約77%、130g、0.58モル)のDCM1L中溶液を、20℃で、1時間で添加した。室温で、2時間撹拌し続け、反応をGCでモニターした。2時間後、GCにより、出発物質の完全な変換が示された。沈殿した固体を濾別し、濾液を、チオ硫酸塩溶液で、続いて重炭酸塩溶液で洗浄した。有機相を乾燥させ、溶媒を蒸発させて、GC純度98%を有する生成物(ラクトン)53gを得た。収率90%。
【0046】
ステップ2:6-エチル-3-メチル-オクタン-1,6-ジオール
三ツ口フラスコ中の、0~5℃で冷却された、臭化エチルマグネシウム溶液(500mL、1.75モル)に、前のステップからのラクトン45g(0.35モル)の無水THF50mL中溶液をN2雰囲気下で添加した。30分後、添加を完了し、反応混合物を室温に戻し、2時間撹拌した。TLCにより、反応の完了を確認した。次いで、反応を、飽和塩化アンモニウム溶液800mLで反応停止し、酢酸エチル(3×500mL)で抽出した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を蒸発させて、GC純度99%を有する第三級アルコールである粗製生成物58gを得た。収率87%。
【0047】
ステップ3:6-エチル-3-メチル-オクタ-6-エン-1-オール
前のステップからの第三級アルコール(75g、0.40モル)及びパラトルエンスルホン酸(pTSA、17g、0.089モル)のニ塩化エチレン500mL中溶液を60℃で撹拌した。反応をTLCでモニターし、7時間後、出発物質の完全な消失を示した。反応を、重炭酸塩溶液で反応停止し、相が分離した。有機層を乾燥させ、溶媒を蒸発させて、GC純度75%を有する生成物65gを得た。収率72%。
【0048】
[実施例2]
6-エチル-2-メチル-オクタ-6-エン-1-オールの調製
ステップ1:6-メチルオキセパン-2-オン
3-メチル-シクロヘキサノン(20g、0.18モル)のDCM200mL中溶液を、撹拌された、mCPBA(約77%、48.2g、0.21モル)及びNaHCO3(18g、0.21モル)のDCM200mL中懸濁液に添加した。室温で6時間撹拌した。次いで、飽和KI水溶液30mL、続いて亜硫酸水素塩溶液を添加することによって、反応を停止した。層を分離し、有機層を水で洗浄し、乾燥させた。溶媒を蒸発させて、GC純度約90%を有する、濃厚な、無色の液体(21.5g)を得た。収率84%。
【0049】
ステップ2:6-エチル-2-メチル-オクタン-1,6-ジオール
前のステップからのラクトン(4.5g、0.035モル)のTHF30mL中溶液を、1M臭化エチルマグネシウム(175mL、0.175モル)のTHF中溶液に、5~10℃で、N2雰囲気下で、滴下添加した。添加完了後、反応混合物を室温にし、3時間撹拌した。次いで、反応を冷たい飽和NH4Cl溶液(100mL)で反応停止し、酢酸エチル(2×50mL)で抽出した。合わせた有機層を乾燥させ、溶媒を蒸発させて、GC純度90%を有する、粗製の6-エチル-2-メチル-オクタン-1,6-ジオール6gを得た。収率82%。
【0050】
ステップ3:6-エチル-2-メチル-オクタ-6-エン-1-オール
前のステップからの第三級アルコール(6g、0.032モル)のDCM50mL中溶液に、メタンスルホン酸を10分で添加した。反応混合物を、3時間撹拌し、次いで重炭酸塩溶液で反応停止した。相を分離し、有機層を水で洗浄し、乾燥させた。溶媒を蒸発させて、粗製の脱水生成物5gを得た(粗収率92%)。これを、カラムクロマトグラフィーで更に精製して、純度98%を有する生成物2gを得た。
【0051】
[実施例3]
7-エチルノナ-7-エン-2-オールの調製
ステップ1:7-メチルオキセパン-2-オン
2-メチル-シクロヘキサノン(5g、0.045モル)のDCM50mL中溶液に、mCPBA(約77%、16g、0.072モル)のDCM100mL中溶液を、20℃で、30分間かけて添加した。反応混合物を室温で5時間撹拌した。沈殿物を濾別し、濾液を、チオ硫酸塩溶液で、続いて重炭酸塩溶液で洗浄した。有機層を乾燥させ、溶媒を蒸発させて、GC純度>98%を有する、粗製ラクトン5.1gを得た。収率87%。
【0052】
ステップ2:7-エチルノナン-2,7-ジオール
前のステップからのラクトン(3g、0.023モル)のTHF20mL中溶液に、臭化エチルマグネシウム(THF中1M、120mL、0.12モル)の溶液を、10~20℃で、N2雰囲気下で、滴下添加した。添加完了後、反応混合物を室温にし、4時間撹拌した。次いで、反応を2NのHCl(50mL)で反応停止し、MTBE(2×50mL)で抽出した。合わせた有機層を乾燥させ、溶媒を蒸発させて、GC純度>90%を有する粗製アルコール4gを得た。収率83%。
【0053】
ステップ3:7-エチルノナ-7-エン-2-オール
前のステップからのアルコール(4g、0.021モル)のジクロロエタン70mL中溶液に、pTSA(0.6g、0.00324モル)を添加した。反応混合物を、60℃まで加熱し、この温度で3時間撹拌し、その後、重炭酸塩溶液で反応停止した。層を分離し、有機層を水で洗浄し、乾燥させた。溶媒を蒸発させて、粗製の脱水生成物3.4gを得た(粗収率95%)。これを、カラムクロマトグラフィーで更に精製して、純度98%を有する生成物1.2gを得た。
【0054】
[実施例4]
8-エチル-2,6-ジメチル-デカ-8-エン-3-オールの調製
ステップ1:7-イソプロピル-4-メチル-オキセパン-2-オン
メントン(10g、0.065モル)のDCM60mL中溶液に、mCPBA(約77%、26g、0.116モル)のDCM200mL中溶液を、20℃で、30分間かけて添加した。反応混合物を室温で18時間撹拌した。次いで、反応混合物を、チオ硫酸塩溶液で、続いて重炭酸塩溶液で洗浄した。有機層を乾燥させ、溶媒を蒸発させて、GC純度97%を有する粗製ラクトン11gを得た。収率96%。
【0055】
ステップ2:8-エチル-2,6-ジメチル-デカン-3,8-ジオール
臭化エチルマグネシウム(THF中1M、88mL、0.088モル)の溶液に、前のステップからのTHF25mL中のラクトン(3g、0.018モル)を、5~10℃で、N2雰囲気下で、滴下添加した。添加完了後、反応混合物を室温にし、1.5時間撹拌した。次いで、反応を、飽和NH4Cl溶液で反応停止し、酢酸エチル(2×50mL)で抽出した。合わせた有機層を乾燥させ、溶媒を蒸発させて、GC純度88%を有する粗製第三級アルコール4gを得た(粗収率85%)。それを、カラムクロマトグラフィーで精製して、GC純度98%の生成物2gを得た。
【0056】
ステップ3:8-エチル-2,6-ジメチル-デカ-8-エン-3-オール
10~20℃に冷却した、前のステップからのアルコール(6g、0.026モル)のDCM20mL中溶液に、メタンスルホン酸0.5mLを添加し、反応混合物を室温で3時間撹拌した。次いで、反応を重炭酸塩溶液で反応停止し、層を分離した。有機層を水で洗浄し、乾燥させ、溶媒を蒸発させて、粗製の脱水生成物5gを得た。これを、カラムクロマトグラフィーで精製し、2つの分画:分画1:2g、GC=95%及び分画2:2g、GC=90%として得た。収率67%。
本発明は、以下の実施形態を包含する。
(実施形態1)
式(I)の化合物を製造する方法であって、
【化55】
(式中、
【化56】
は、単結合又は二重結合である)
式(I)が、
式(Ia)の化合物、
【化57】
式(Ib)の化合物、及び
【化58】
式(Ic)の化合物、
【化59】
(式中、mが0の場合、R 1 、R 3 、R 4 、及びR 5 は同じであるか又は異なり、H、C 1 ~C 4 -アルキル、及びC 3 ~C 4 -シクロアルキルからなる群から選択され、
mが1、2、又は3の場合、R 1 、R 2 、R 3 、R 4 、及びR 5 は同じであるか又は異なり、H、C 1 ~C 4 -アルキル、及びC 3 ~C 4 -シクロアルキルからなる群から選択される)
並びにその立体異性体を含み、
少なくとも以下のステップ:
a)式(IIa)の化合物を用意するステップ
【化60】
(式中、mが0の場合、R 3 、R 4 、及びR 5 は同じであるか又は異なり、H、C 1 ~C 4 -アルキル、及びC 3 ~C 4 -シクロアルキルからなる群から選択され、
mが1、2、又は3の場合、R 2 、R 3 、R 4 、及びR 5 は同じであるか又は異なり、H、C 1 ~C 4 -アルキル、及びC 3 ~C 4 -シクロアルキルからなる群から選択される)、
b)式(IIa)の化合物を、ペルオキシ酸及びペルオキシドから選択される化合物にさらして、式(IIb)の化合物を得るステップ、
【化61】
c)式(IIb)の化合物を、式(IIc)の化合物と反応させて、式(IId)の化合物を得るステップ
R 1 CH 2 MgX
式(IIc)
(式中、R 1 は、H、C 1 ~C 4 -アルキル、及びC 3 ~C 4 -シクロアルキルからなる群から選択され、Xは、Br、Cl、又はIである)、
【化62】
(式中、mが0の場合、R 1 、R 3 、R 4 、及びR 5 は同じであるか又は異なり、H、C 1 ~C 4 -アルキル、及びC 3 ~C 4 -シクロアルキルからなる群から選択され、
mが1、2、又は3の場合、R 1 、R 2 、R 3 、R 4 、及びR 5 は同じであるか又は異なり、H、C 1 ~C 4 -アルキル、及びC 3 ~C 4 -シクロアルキルからなる群から選択される)、
d)式(IId)の化合物を脱水反応に付して、式(I)の化合物を得るステップ
を含む、方法。
(実施形態2)
式(I')の化合物を製造する方法であって、
【化63】
(式中、
【化64】
は、単結合又は二重結合である)
式(I')が、
式(Ia')の化合物、
【化65】
式(Ib')の化合物、及び
【化66】
式(Ic')の化合物、
【化67】
(式中、R 1 、R 2 、R 3 、R 4 、及びR 5 は同じであるか又は異なり、H、C 1 ~C 4 -アルキル、及びC 3 ~C 4 -シクロアルキルからなる群から選択される)
並びにその立体異性体を含み、
少なくとも以下のステップ:
a)式(IIa')の化合物を用意するステップ
【化68】
(式中、R 2 、R 3 、R 4 、及びR 5 は同じであるか又は異なり、H、C 1 ~C 4 -アルキル、及びC 3 ~C 4 -シクロアルキルからなる群から選択される)、
b)式(IIa')の化合物を、ペルオキシ酸及びペルオキシドから選択される化合物にさらして、式(IIb')の化合物を得るステップ、
【化69】
c)式(IIb')の化合物を、式(IIc')の化合物と反応させて、式(IId')の化合物を得るステップ
R 1 CH 2 MgX
式(IIc')
(式中、R 1 は、H、C 1 ~C 4 -アルキル、及びC 3 ~C 4 -シクロアルキルからなる群から選択され、Xは、Br、Cl、又はIである)、
【化70】
(式中、R 1 、R 2 、R 3 、R 4 、及びR 5 は同じであるか又は異なり、H、C 1 ~C 4 -アルキル、及びC 3 ~C 4 -シクロアルキルからなる群から選択される)、
d)式(IId')の化合物を脱水反応に付して、式(I')の化合物を得るステップ
を含む、実施形態1に記載の方法。
(実施形態3)
ステップ(b)、ステップ(c)、及びステップ(d)並びに/又はステップ(b)及びステップ(c)並びに/又はステップ(c)及びステップ(d)が、単一容器で行われる、実施形態1に記載の方法。
(実施形態4)
ステップb)のペルオキシ酸が、ペルオキシ一硫酸、ペルオキシリン酸、ペルオキシ酢酸、ペルオキシギ酸、ペルオキシトリフルオロ酢酸、ペルオキシ一硫酸カリウム、過ホウ酸ナトリウム、ペルオキシ硝酸、及びペルオキシ安息香酸からなる群から選択される、実施形態1又は2に記載の方法。
(実施形態5)
ペルオキシ安息香酸が、メタクロロペルオキシ安息香酸である、実施形態4に記載の方法。
(実施形態6)
ステップb)のペルオキシドが、過酸化水素からなる群から選択される、実施形態1に記載の方法。
(実施形態7)
ステップd)が、酸の存在下で行われる、実施形態1に記載の方法。
(実施形態8)
酸が、メタンスルホン酸、リン酸、p-トルエンスルホン酸、ギ酸、硫酸、塩酸、及び酢酸からなる群から選択される、実施形態7に記載の方法。
(実施形態9)
式Aの化合物であって、
【化71】
(式中、
【化72】
は、単結合又は二重結合である)
式Aが、
式(A.a)の化合物、
【化73】
式(A.b)の化合物、及び
【化74】
式(A.c)の化合物
【化75】
(式中、R 1 、R 2 、及びR 5 は同じであるか又は異なり、H、C 1 ~C 4 -アルキル、及びC 3 ~C 4 -シクロアルキルからなる群から選択され、
R 4 は、H、C 2 ~C 4 -アルキル、及びC 3 ~C 4 -シクロアルキルからなる群から選択され、
R 3 はHである)、
並びにその立体異性体を含み、但し、R 1 がH又はメチルである場合、R 2 、R 4 、及びR 5 のうちの少なくとも1つがHではない、化合物。
(実施形態10)
R 1 が、H又はメチルであり、
R 2 が、H、メチル、エチル、1-プロピル、1-メチルエチル、及びシクロプロピルからなる群から選択され、R 5 が、メチル、エチル、1-プロピル、1-メチルエチル、及びシクロプロピルからなる群から選択され、
R 4 が、H、エチル、1-プロピル、1-メチルエチル、及びシクロプロピルからなる群から選択され、R 3 がHである、実施形態9に記載の化合物。
(実施形態11)
式(A.a2)、式(A.b2)、式(A.c2)、式(A.a3)、式(A.b3)、及び式(A.c3)の化合物、
【化76】
並びにその立体異性体から選択される、実施形態9又は10に記載の化合物。
(実施形態12)
実施形態9から11のいずれか一項に記載の式Aの化合物から選択される少なくとも1種の化合物、好ましくは、実施形態9から11のいずれか一項に記載の式(A.a)、式(A.b)、及び式(A.c)の化合物の混合物を含む組成物。
(実施形態13)
実施形態9から11のいずれか一項に記載の式Aの化合物、又は実施形態12に記載の組成物の香料としての使用。
(実施形態14)
i)式Aの化合物から、好ましくは、式(A.a1)、式(A.b1)、及び式(A.c1)の化合物から選択される、少なくとも1種の化合物を、ミュゲ及び/若しくはローズの香調を有するフレグランス及び/若しくはアロマを製造するのに使用する、
【化77】
並びに/又は
ii)式Aの化合物から、好ましくは、式(A.a2)、式(A.b2)、及び式(A.c2)の化合物から選択される、少なくとも1種の化合物を、ローズ及び/若しくはミュゲの香調を有するフレグランス及び/若しくはアロマを製造するのに使用する、
【化78】
並びに/又は
iii)式Aの化合物から、好ましくは、式(A.a3)、式(A.b3)、及び式(A.c3)の化合物から選択される、少なくとも1種の化合物を、ウッディ及び/若しくはダスティの香調を有するフレグランス及び/若しくはアロマを製造するのに使用する、
【化79】
実施形態13に記載の使用。
(実施形態15)
i)式Aの化合物、好ましくは、式(A.a1)、式(A.b1)、及び式(A.c1)の化合物の混合物を、ミュゲ及び/若しくはローズの香調を有するフレグランス及び/若しくはアロマを製造するのに使用する、
【化80】
並びに/又は
ii)式Aの化合物、好ましくは、式(A.a2)、式(A.b2)、及び式(A.c2)の化合物の混合物を、ローズ及び/若しくはミュゲの香調を有するフレグランス及び/若しくはアロマを製造するのに使用する、
【化81】
並びに/又は
iii)式Aの化合物、好ましくは、式(A.a3)、式(A.b3)、及び式(A.c3)の化合物の混合物を、ウッディ及び/若しくはダスティの香調を有するフレグランス及び/若しくはアロマを製造するのに使用する、
【化82】
実施形態13又は14のいずれか一項に記載の使用。
(実施形態16)
香水、洗剤及び洗浄組成物、化粧料、ボディケア剤、衛生用品、口内衛生及び歯科衛生のための製品、香りディスペンサー、フレグランス、並びに医薬品から選択される組成物における、実施形態13から15のいずれか一項に記載の使用。
(実施形態17)
i)実施形態9から11のいずれか一項に記載の少なくとも1種の式(A)の化合物、又は実施形態12に記載の組成物、
ii)場合により、成分i)とは異なる少なくとも1種の更なる香料、及び
iii)場合により、少なくとも1種の希釈剤
を含む、アロマ物質及び/又はフレグランス組成物であって、
但し、組成物が、少なくとも1種の成分ii)又は成分iii)を含む、アロマ物質及び/又はフレグランス組成物。
(実施形態18)
実施形態9から11のいずれか一項に記載の少なくとも1種の式(A)の化合物、又は実施形態12に記載の組成物を含む、付香製品又はフレグランス製品。
(実施形態19)
実施形態9から11のいずれか一項に記載の少なくとも1種の式(A)の化合物が使用される及び/又は実施形態12に記載の組成物が使用される、製品に付香する方法、特に、匂い又は香気を付与する及び/又は高める方法。