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特許7358610繰り返し率のずれによって誘発される波長誤差を補償する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-29
(45)【発行日】2023-10-10
(54)【発明の名称】繰り返し率のずれによって誘発される波長誤差を補償する方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20231002BHJP
   H01S 3/00 20060101ALI20231002BHJP
   H01S 3/139 20060101ALI20231002BHJP
【FI】
G03F7/20 502
H01S3/00 A
H01S3/139
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2022502017
(86)(22)【出願日】2020-06-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-30
(86)【国際出願番号】 US2020039520
(87)【国際公開番号】W WO2021015919
(87)【国際公開日】2021-01-28
【審査請求日】2022-03-07
(31)【優先権主張番号】62/877,796
(32)【優先日】2019-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513192029
【氏名又は名称】サイマー リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】テン,クオ-タイ
(72)【発明者】
【氏名】アラワット,ラーフル
【審査官】植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-526313(JP,A)
【文献】特表2017-538963(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
H01S 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射パルスを制御するための放射システムであって、
前記放射パルスの特性を制御するために前記放射パルスと相互作用するように構成された光学素子と、
ントローラから受信した制御信号によって前記光学素子を作動させるように構成されたアクチュエータであって、前記制御信号が前記放射システムの基準パルス繰り返し率に少なくとも部分的に依存する、アクチュエータと、を備え、前記コントローラが、パルス情報を受け取り、前記パルス情報を用いて前記制御信号の調整を決定及び適用するように構成され、
前記パルス情報が前記放射システムの動作パルス繰り返し率を含む、放射システム。
【請求項2】
前記特性が前記放射パルスの波長である、請求項1の放射システム。
【請求項3】
記調整が、前記基準パルス繰り返し率と前記動作パルス繰り返し率との差異を少なくとも部分的に考慮する、請求項1の放射システム。
【請求項4】
前記調整が前記制御信号の大きさを変化させる、請求項1の放射システム。
【請求項5】
放射パルスを制御するための放射システムであって、
前記放射パルスの特性を制御するために前記放射パルスと相互作用するように構成された光学素子と、
コントローラから受信した制御信号によって前記光学素子を作動させるように構成されたアクチュエータであって、前記制御信号が前記放射システムの基準パルス繰り返し率に少なくとも部分的に依存する、アクチュエータと、を備え、前記コントローラが、パルス情報を受け取り、前記パルス情報を用いて前記制御信号の調整を決定及び適用するように構成され、
前記調整が前記制御信号の大きさを変化させ、
前記制御信号の前記大きさが、
【数28】
であり、
ここでU(f)が周波数領域における前記アクチュエータの前記制御信号であり、λTが前記放射パルスの目標波長であり、nがパルス数であり、P(f)が前記周波数領域における前記アクチュエータの動的モデルである、放射システム。
【請求項6】
前記アクチュエータが、前記放射パルスの前記光学素子への入射角が変化するように前記光学素子を回転させるように構成されたピエゾ素子を備えた、請求項1の放射システム。
【請求項7】
前記光学素子が、選択された帯域の放射波長が前記放射システムの出力に送信されるように波長依存的に前記放射パルスを反射するように構成された格子を備えた、請求項1の放射システム。
【請求項8】
前記光学素子が、選択された帯域の放射波長が前記放射システムの出力に送信されるように波長依存的に前記放射パルスを屈折させるように構成されたプリズムを備えた、請求項1の放射システム。
【請求項9】
放射パルスを受け取り、前記放射パルスにパターン付与し、パターン付与した前記放射パルスをターゲット上に投影するように構成されたリソグラフィ装置と、
請求項1に記載の放射システムと、を備えたリソグラフィシステム。
【請求項10】
放射パルスを制御する方法であって、
前記放射パルスの特性を制御するために前記放射パルスと相互作用する光学素子を使用すること、
前記放射パルスの基準パルス繰り返し率に少なくとも部分的に依存する制御信号によって前記光学素子を作動させるアクチュエータを使用すること、
パルス情報を受け取ること、及び
前記制御信号の調整を決定及び適用するために前記パルス情報を使用すること、を含み、
前記パルス情報が前記放射パルスの動作パルス繰り返し率を含む、方法。
【請求項11】
前記特性が前記放射パルスの波長である、請求項10の方法。
【請求項12】
記調整が、前記基準パルス繰り返し率と前記動作パルス繰り返し率との差異を少なくとも部分的に考慮する、請求項11の方法。
【請求項13】
前記調整が前記制御信号の大きさを変化させる、請求項11の方法。
【請求項14】
放射パルスを制御する方法であって、
前記放射パルスの特性を制御するために前記放射パルスと相互作用する光学素子を使用すること、
前記放射パルスの基準パルス繰り返し率に少なくとも部分的に依存する制御信号によって前記光学素子を作動させるアクチュエータを使用すること、
パルス情報を受け取ること、及び
前記制御信号の調整を決定及び適用するために前記パルス情報を使用すること、を含み、
前記調整が前記制御信号の大きさを変化させ、
前記制御信号の前記大きさが、
【数29】
であり、
ここでU(f)が前記アクチュエータの前記制御信号であり、λTが前記放射パルスの目標波長であり、nがパルス数であり、P(f)が前記アクチュエータの動的モデルである、方法。
【請求項15】
放射パルスを含むパターン付与された放射ビームをターゲット上に投影する方法であって、
前記放射パルスの特性を制御するために前記放射パルスと相互作用する光学素子を使用すること、
前記放射パルスの基準パルス繰り返し率に少なくとも部分的に依存する制御信号によって前記光学素子を作動させるアクチュエータを使用すること、
パルス情報を受け取ること、及び
前記制御信号の調整を決定及び適用するために前記パルス情報を使用すること、を含む方法に従って前記放射パルスを制御することを更に含み、
前記パルス情報が前記放射パルスの動作パルス繰り返し率を含む、方法。
【請求項16】
プロセッサ可読命令を記憶するメモリと、前記メモリに記憶された命令を読み出し実行するように構成されたプロセッサとを備えた、放射パルスを制御するためのコンピュータ装置であって、前記プロセッサ可読命令が、前記放射パルスを制御する方法を実行するように前記コンピュータを制御するように構成された命令を含み、前記方法が、
前記放射パルスの特性を制御するために前記放射パルスと相互作用する光学素子を使用すること、
前記放射パルスの基準パルス繰り返し率に少なくとも部分的に依存する制御信号によって前記光学素子を作動させるアクチュエータを使用すること、
パルス情報を受け取ること、及び
前記制御信号の調整を決定及び適用するために前記パルス情報を使用すること、を含み、
前記パルス情報が前記放射パルスの動作パルス繰り返し率を含む、コンピュータ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001] この出願は、2019年7月23日に出願された、METHOD OF COMPENSATING WAVELENGTH ERROR INDUCED BY REPETITION RATE DEVIATIONと題する米国特許出願第62/877,796号の優先権を主張し、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
[0001] この開示は、例えばリソグラフィ装置で使用される放射パルスを発生させるためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
[0002] リソグラフィ装置は、基板に所望のパターンを適用するように構築された機械である。リソグラフィ装置は、例えば集積回路(IC)の製造において使用可能である。リソグラフィ装置は、例えばパターニングデバイス(例えばマスク)のパターン(「設計レイアウト」又は「設計」と称されることも多い)を、基板(例えばウェーハ)上に提供された放射感応性材料(レジスト)層に投影し得る。
【0004】
[0003] 半導体製造プロセスが進歩し続けるにつれ、回路素子の寸法は継続的に縮小されてきたが、その一方で、デバイス当たりのトランジスタなどの機能素子の数は、「ムーアの法則」と通称される傾向に従って、数十年にわたり着実に増加している。ムーアの法則に対応するために、半導体産業はますます小さなフィーチャを作り出すことを可能にする技術を追求している。基板上にパターンを投影するために、リソグラフィ装置が電磁放射を使用することがある。この放射の波長は、基板上のレジストにパターン形成されるフィーチャの最小サイズを決定する。現在使用されている典型的な波長は、365nm(i線)、248nm、193nm及び13.5nmである。例えば193nmの波長を有する放射を使用するリソグラフィ装置よりも小さなフィーチャを基板上に形成するためには、4nm~20nmの範囲内、例えば6.7nm又は13.5nmの波長を有する極端紫外線(EUV)放射を使用するリソグラフィ装置が使用されることがある。
【0005】
[0004] 一般に、エキシマレーザが特定のガス混合物で動作するように設計されるため、波長を変化させることが複雑になる可能性がある。特に、中心波長を放電毎に(「パルス毎」)に変化させることは困難である。しかしながら、波長を変化させる能力を有することが望まれる場合があり得る。例えば、多層3D NANDメモリ(つまり、構造が積み重ねられたNAND(「NOT-AND」)ゲートに類似しているメモリ)。2Dから3DへのNANDアーキテクチャの移行には製造プロセスの大幅な変更が必要である。3D NAND製造では、課題は主として極端なアスペクト比(すなわち、穴径とその深さとの比)でのエッチングプロセス及び堆積プロセスによって引き起こされる。非常に高アスペクト比(HAR)のフィーチャを有する複雑な3D構造を構築することは複雑であり、極めて高い精度と、最終的には規模の経済を達成するためのプロセス均一性及びプロセス再現性とを必要とする。また、多層スタック高さが高くなるにつれて、スタック、例えばメモリアレイの上部及び底部において一貫したエッチング及び堆積結果を得ることの難しさが増す。
【0006】
[0005] これらの考慮事項は、より大きい焦点深度の必要性につながる。単一波長光のリソグラフィ焦点深度DOFが、関係DOF=±mλ/(NA)によって決定される。ここでλは照明光の波長、NAは開口数、mはレジストプロセスに依存する実用的係数である。3D NANDリソグラフィにおける焦点深度要件はより高いため、ときには2つ以上の露光パスがパス毎に異なるレーザ波長を用いてウェーハ上で実行される。
【0007】
[0006] また、レーザ放射を合焦させるレンズを構成する材料は分散性があるため、様々な波長がレジスト内の様々な深度で合焦できるようになる。これは、波長を変化させる能力を有することが望まれ得る別の理由である。
【0008】
[0007] 深紫外線(DUV)放射システムなどの放射システムが、発生した放射の波長を制御するためのシステムを含む。通常、これらの波長制御システムは、波長安定性を向上させるためのフィードバック補償器及びフィードフォワード補償器を含む。特徴的に、目標波長又は基準波長、つまり、波長制御システムにより指示された波長がレーザ動作中に急激に変化しないことが予想される。したがって、補償器は主に一過性の外乱を除去することに従事する。フィードフォワード補償器はまた、波長目標の指示された変化、つまり、稀であることが予想される波長変化イベントを補償する。このようなイベントが発生して、例えば600fmの波長設定点の変化を達成するとき、システムが安定して新しい波長に落ち着くために、典型的には約100msのオーダーの整定時間が許容されなければならない。これは通常、目標波長設定点がパルス間で約500fm変化する使用事例において、そのような制御システムが所望のパルス間波長追跡性能を発揮することができないように、パルス間の時間(典型的には約1ms以下)を上回る。
【0009】
[0008] 特定の例として、2つの異なる波長のDUV光を発生させる適用例では、基準波長は、露光中に2つの設定点、すなわち第1の波長における第1の設定点及び第2の波長における第2の設定点を有する。そして、基準波長はこれら2つの設定点の間で変調されることになる。
【0010】
[0009] 波長などの制御された特性を有する放射パルスを発生させる能力を有することが望ましい。制御された特性を放射パルス間で、すなわちパルス間基準で変化させることが望ましい。また、制御された特性の精度を低下させ得る誤差を減らす或いは取り除くことが望ましい。
【発明の概要】
【0011】
[00010] 第1の態様によれば、放射パルスを制御するための放射システムであって、放射パルスの特性を制御するために放射パルスと相互作用するように構成された光学素子と、コントローラから受信した制御信号によって光学素子を作動させるように構成されたアクチュエータとを備えた放射システムが提供される。制御信号は、放射システムの基準パルス繰り返し率に少なくとも部分的に依存する。コントローラは、パルス情報を受け取り、パルス情報を用いて制御信号の調整を決定及び適用するように構成される。
【0012】
[00011] 様々な実施例では、放射システムは、放射パルスの特性に関連する誤差を減らすことによって、既知の放射システムと比較して放射システムの精度を向上させることができる。
【0013】
[00012] 光学素子は反射型又は透過型である場合がある。コントローラは、所与の目的のために制御された放射パルスを受け取っている装置、例えばリソグラフィ露光で使用されるリソグラフィ装置からパルス情報を受け取ることがある。
【0014】
[00013] 放射システムの基準パルス繰り返し率は、あらかじめ決められている及び/又は固定されていることがある。
【0015】
[00014] パルス情報は、動作パルス繰り返し率及び/又はパルス数を含むことがある。動作パルス繰り返し率は基準パルス繰り返し率と異なることがある。例えば、動作パルス繰り返し率は、発生した放射パルスが提供するエネルギードーズ量を変更することを目的とした量だけ基準パルス繰り返し率と異なることがある。パルス情報はオフラインで決定され、必要とされる場合にコントローラに提供されることがある。代替的に、パルス情報は放射システムの動作中に決定されることがある。
【0016】
[00015] 調整は制御信号の位相を変化させることがある。
【0017】
[00016] 特性は放射パルスの波長である場合がある。
【0018】
[00017] 放射パルスの波長を制御すること(例えば変化させる)ことは、多くの様々な光学システムにおいて望ましい。例えば、多焦点イメージングモードで動作するリソグラフィシステムが、様々な放射波長間、様々な放射パルス間で変化することになる。放射システムは、放射パルスの波長誤差を減らすことによって、例えばこの放射システムを含むリソグラフィシステムの精度を向上させることができる。
【0019】
[00018] パルス情報は放射システムの動作パルス繰り返し率を含むことがあり、調整は、基準パルス繰り返し率と動作パルス繰り返し率との差異を少なくとも部分的に考慮することがある。
【0020】
[00019] 基準パルス繰り返し率と動作パルス繰り返し率との差異は、意図的である(例えば、放射パルスのエネルギードーズ量を変更するため)及び/又は意図的でない(例えば、放射システムのコンポーネントに影響を及ぼす熱的誤差)場合がある。これらの差異は、アクチュエータがもはや放射パルスと所望の同期状態にはないことがあるため、放射パルスの所望の特性(例えば波長)の誤差を引き起こすことがある。放射システムは、基準パルス繰り返し率と動作パルス繰り返し率との差異から生じる、放射パルスの特性の誤差を減らすことができる。
【0021】
[00020] 調整は、例えば制御信号の大きさ又は振幅を変化させることがある。
【0022】
[00021] 調整は制御信号の位相を変化させることがある。しかしながら、一部の放射システムのアクチュエータは、とても高い周波数(例えば約60kHz以上)で振動するため減衰が不足する傾向がある。したがって、減衰不足のアクチュエータのために制御信号の位相を変化させることは、それ自体の誤差を引き起こすかなりの過渡振動を発生させる可能性がある。制御信号の大きさを変化させることは、制御信号の位相を変化させることに関連する欠点を招くことなく、放射パルスの特性に関連する誤差を減らすことができる。
【0023】
[00022] 制御信号の大きさは、
【0024】
【数1】
【0025】
である場合があり、ここでU(f)は周波数領域におけるアクチュエータの制御信号であり、λは放射パルスの目標波長であり、nはパルス数であり、P(f)は周波数領域におけるアクチュエータの動的モデルである。
【0026】
[00023] パルス情報はパルス数を含むことがある。制御信号の変化させた大きさは、
【0027】
【数2】
【0028】
である場合があり、ここでCは補正係数である。
【0029】
[00024] 補正係数は、
【0030】
【数3】
【0031】
である場合があり、ここでRは放射システムの基準パルス繰り返し率であり、Δは動作パルス繰り返し率と基準パルス繰り返し率との差異である。
【0032】
[00025] 補正係数は、既知の(オフラインで)測定可能な量から予測可能である場合がある。発明者らは、驚くべきことに補正係数が全体的な波長ピーク分離誤差の可逆成分であることに気付いた。補正係数は、パルス繰り返し率のずれから(理想的には)ゼロ誘導誤差をもたらすために既存のアクチュエータ制御信号に適用されることがある。補正係数は、放射パルスの波長誤差を減らすことができる。
【0033】
[00026] 補正係数は、放射システムが発生させた放射パルス毎に計算され、制御信号に適用されることがある。
【0034】
[00027] アクチュエータは、放射パルスの光学素子への入射角が変化するように光学素子を回転させるように構成されたピエゾ素子を備えることがある。
【0035】
[00028] 光学素子は、選択された帯域の放射波長が放射システムの出力に送信されるように波長依存的に放射パルスを反射するように構成された格子を備えることがある。
【0036】
[00029] 放射システムの出力に送信される選択された帯域の波長は、放射パルスの格子に対する入射角に依存することがある。
【0037】
[00030] 光学素子は、選択された帯域の放射波長が放射システムの出力に送信されるように波長依存的に放射パルスを屈折させるように構成されたプリズムを含むことがある。
【0038】
[00031] 放射システムの出力に送信される選択された帯域の波長は、放射パルスのプリズムに対する入射角に依存することがある。
【0039】
[00032] 第2の態様によれば、放射パルスを受け取り、放射パルスにパターン付与し、パターン付与した放射パルスをターゲット上に投影するように構成されたリソグラフィ装置と、第1の態様に係る放射システムと、を備えたリソグラフィシステムが提供される。
【0040】
[00033] 様々な実施例では、放射システムが、ターゲット上に投影される放射パルスの波長誤差を減らすことによって、多焦点イメージングモードで動作しているリソグラフィ装置の精度を向上させる。様々な実施例では、放射システムが、多焦点イメージングリソグラフィシステムに適合する繰り返し率の範囲を、例えば少なくとも約±10Hzだけ拡大する。様々な実施例では、放射システムが、例えば波長誤差に起因するリソグラフィシステムのスループット損失のリスクを減らし、リソグラフィシステムの制御ソフトウェアの大幅かつ高価な修正の必要をなくす。
【0041】
[00034] 第3の態様によれば、放射パルスを制御する方法であって、放射パルスの特性を制御するために放射パルスと相互作用する光学素子を使用すること、放射システムの基準パルス繰り返し率に少なくとも部分的に依存する制御信号によって光学素子を作動させるアクチュエータを使用すること、パルス情報を受け取ること、及び制御信号の調整を決定及び適用するためにパルス情報を使用すること、を含む方法が提供される。
【0042】
[00035] 特性は放射パルスの波長である場合がある。
【0043】
[00036] パルス情報は放射システムの動作パルス繰り返し率を含むことがあり、調整は、基準パルス繰り返し率と動作パルス繰り返し率との差異を少なくとも部分的に考慮することがある。
【0044】
[00037] 調整は制御信号の大きさを変化させることがある。
【0045】
[00038] 制御信号の大きさは、
【0046】
【数4】
【0047】
である場合があり、ここでU(f)はアクチュエータの制御信号であり、λは放射パルスの目標波長であり、nはパルス数であり、P(f)はアクチュエータの動的モデルである。
【0048】
[00039] パルス情報はパルス数を含むことがある。制御信号の変化させた大きさは、
【0049】
【数5】
【0050】
である場合があり、ここでCは補正係数である。
【0051】
[00040] 補正係数は、
【0052】
【数6】
【0053】
である場合があり、ここでRは放射システムの基準パルス繰り返し率であり、Δは動作パルス繰り返し率と基準パルス繰り返し率との差異である。
【0054】
[00041] 補正係数は、放射システムが発生させた放射パルス毎に計算され、制御信号に適用されることがある。
【0055】
[00042] 第4の態様によれば、放射パルスを含むパターン付与された放射ビームをターゲット上に投影する方法であって、第3の態様の方法に従って放射パルスを制御することを更に含む方法が提供される。
【0056】
[00043] 第5の態様によれば、コンピュータに第3及び/又は第4の態様に係る方法を実行させるように構成されたコンピュータ可読命令を含むコンピュータプログラムが提供される。
【0057】
[00044] 第6の態様によれば、第5の態様に係るコンピュータプログラムを実行するコンピュータ可読媒体が提供される。
【0058】
[00045] 第7の態様によれば、プロセッサ可読命令を記憶するメモリと、上記メモリに記憶された命令を読み出し実行するように構成されたプロセッサとを備えた、放射パルスを制御するためのコンピュータ装置であって、上記プロセッサ可読命令が、第3及び/又は第4の態様に係る方法を実行するようにコンピュータを制御するように構成された命令を含むコンピュータ装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0059】
[00046] システム及び方法の様々なバージョンを、添付の概略図を参照して、単なる例示として以下に説明する。
【0060】
図1】[00047] リソグラフィ装置の概観を概略的に示す。
図2】[00048] 開示された主題のある態様に係るリソグラフィシステムの全体的な広い概念を概略的に示す。
図3】[00049] 開示された主題のある態様に係る照明システムの全体的な広い概念を概略的に示す。
図4】[00050] ある実施形態のある態様に係る2チャンバレーザシステムの機能ブロック図である。
図5】[00051] ある実施形態のある態様に係る2つのレーザチャンバにおける考えられる放電の相対的タイミングを示すフローチャートである。
図6】[00052] ある実施形態のある態様に係る2つのレーザチャンバにおける別の考えられる放電の相対的タイミングを示すフローチャートである。
図7】[00053] ある実施形態に係る放射パルスを制御するための放射システムを概略的に示す。
図8】[00054] 放射システムの基準パルス繰り返し率と動作パルス繰り返し率との差異が、放射システムにより制御される放射の波長の精度にどのような影響を及ぼし得るかを示すグラフである。
図9】[00055] ある実施形態に係る放射パルスを制御する方法を示すフローチャートである。
図10】[00056] 調整された制御信号を有しない放射システムを、ある実施形態に係る調整された制御信号を有する放射システムと比較したシミュレーションの結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0061】
[00057] 本文献では、「放射」及び「ビーム」という用語は、紫外線(例えば、波長が365nm、248nm、193nm、157nm又は126nmの波長)及びEUV(極端紫外線放射、例えば、約5~100nmの範囲の波長を有する)を含む、すべてのタイプの電磁放射を包含するために使用される。
【0062】
[00058] 「レチクル」、「マスク」、又は「パターニングデバイス」という用語は、本文で用いる場合、基板のターゲット部分に生成されるパターンに対応して、入来する放射ビームにパターン付き断面を与えるため使用できる汎用パターニングデバイスを指すものとして広義に解釈され得る。また、この文脈において「ライトバルブ」という用語も使用できる。古典的なマスク(透過型又は反射型マスク、バイナリマスク、位相シフトマスク、ハイブリッドマスク等)以外に、他のそのようなパターニングデバイスの例は、プログラマブルミラーアレイ及びプログラマブルLCDアレイを含む。
【0063】
[00059] 図1は、リソグラフィ装置LAを概略的に示す。リソグラフィ装置LAは、放射ビームB(例えばUV放射、DUV放射、又はEUV放射)を調節するように構成された照明システム(イルミネータとも呼ばれる)ILと、パターニングデバイス(例えばマスク)MAを支持するように構築され、特定のパラメータに従ってパターニングデバイスMAを正確に位置決めするように構成された第1のポジショナPMに連結されたマスクサポート(例えばマスクテーブル)MTと、基板(例えばレジストコートウェーハ)Wを保持するように構成され、特定のパラメータに従って基板を正確に位置決めするように構築された第2のポジショナPWに連結された基板サポート(例えばウェーハテーブル)WTと、パターニングデバイスMAによって放射ビームBに付与されたパターンを基板Wのターゲット部分C(例えば、1つ以上のダイを含む)上に投影するように構成された投影システム(例えば、屈折投影レンズシステム)PSと、を含む。
【0064】
[00060] 動作中、照明システムILは、例えばビームデリバリシステムBDを介して放射源SOから放射ビームを受ける。照明システムILは、放射を誘導し、整形し、及び/又は制御するための、屈折型、反射型、磁気型、電磁型、静電型、及び/又はその他のタイプの光学コンポーネント、又はそれらの任意の組み合わせなどの様々なタイプの光学コンポーネントを含むことができる。イルミネータILを使用して放射ビームBを調節し、パターニングデバイスMAの平面において、その断面にわたって所望の空間及び角度強度分布が得られるようにしてもよい。
【0065】
[00061] 本明細書で用いられる「投影システム」PSという用語は、使用する露光放射、及び/又は液浸液の使用や真空の使用のような他のファクタに合わせて適宜、屈折光学システム、反射光学システム、反射屈折光学システム、アナモルフィック光学システム、磁気光学システム、電磁気光学システム、及び/又は静電気光学システム、又はそれらの任意の組み合わせを含む様々なタイプの投影システムを包含するものとして広義に解釈するべきである。本明細書で「投影レンズ」という用語が使用される場合、これは更に一般的な「投影システム」PSという用語と同義と見なすことができる。
【0066】
[00062] リソグラフィ装置LAは、投影システムPSと基板Wとの間の空間を充填するように、基板の少なくとも一部を例えば水のような比較的高い屈折率を有する液体で覆うことができるタイプでもよい。これは液浸リソグラフィとも呼ばれる。液浸技法に関する更なる情報は、援用により本願に含まれる米国特許第6952253号に与えられている。
【0067】
[00063] リソグラフィ装置LAは、2つ以上の基板サポートWTを有するタイプである場合もある(「デュアルステージ」とも呼ばれる)。こうした「マルチステージ」機械において、基板サポートWTを並行して使用するか、及び/又は、一方の基板サポートWT上の基板Wにパターンを露光するためこの基板を用いている間に、他方の基板サポートWT上に配置された基板Wに対して基板Wの以降の露光の準備ステップを実行することができる。
【0068】
[00064] 基板サポートWTに加えて、リソグラフィ装置LAは測定ステージを含むことができる。測定ステージは、センサ及び/又はクリーニングデバイスを保持するように配置されている。センサは、投影システムPSの特性又は放射ビームBの特性を測定するよう配置できる。測定ステージは複数のセンサを保持することができる。クリーニングデバイスは、例えば投影システムPSの一部又は液浸液を提供するシステムの一部のような、リソグラフィ装置の一部をクリーニングするよう配置できる。基板サポートWTが投影システムPSから離れている場合、測定ステージは投影システムPSの下方で移動することができる。
【0069】
[00065] 動作中、放射ビームBは、マスクサポートMT上に保持されている、例えばマスクのようなパターニングデバイスMAに入射し、パターニングデバイスMA上に存在するパターン(設計レイアウト)によってパターンが付与される。パターニングデバイスMAを横断した放射ビームBは投影システムPSを通過し、投影システムPSはビームを基板Wのターゲット部分Cに集束させる。第2のポジショナPW及び位置測定システムIFを用いて、例えば、放射ビームBの経路内の集束し位置合わせした位置に様々なターゲット部分Cを位置決めするように、基板サポートWTを正確に移動させることができる。同様に、第1のポジショナPMと、場合によっては別の位置センサ(図1には明示的に図示されていない)を用いて、放射ビームBの経路に対してパターニングデバイスMAを正確に位置決めすることができる。パターニングデバイスMA及び基板Wは、マスクアライメントマークM1、M2及び基板アライメントマークP1、P2を用いて位置合わせすることができる。図示されている基板アライメントマークP1、P2は専用のターゲット部分を占有するが、それらをターゲット部分間の空間に位置付けることも可能である。基板アライメントマークP1、P2は、これらがターゲット部分C間に位置付けられている場合、スクライブラインアライメントマークとして知られている。
【0070】
[00066] 明確にするため、デカルト座標系が用いられる。デカルト座標系は3つの軸、すなわちx軸、y軸及びz軸を有する。3つの軸の各々は他の2つの軸に対して直交している。x軸を中心とした回転をRx回転と称する。y軸を中心とした回転をRy回転と称する。z軸を中心とした回転をRz回転と称する。x軸及びy軸は水平面を画定し、z軸は垂直方向を画定する。デカルト座標系は本発明を限定せず、単に明確さのため使用される。代わりに、円筒座標系のような別の座標系を用いて明確にすることもある。デカルト座標系の配向は、例えばz軸が水平面に沿った成分を有するように異なることがある。
【0071】
[00067] 図2は、照明システム105を含むフォトリソグラフィシステム100を概略的に示している。以下でより詳しく説明するように、照明システム105は、パルス光ビーム110を生成し、そのビームを、ウェーハ120上にマイクロ電子フィーチャをパターン形成するフォトリソグラフィ露光装置又はスキャナ115に向ける光源を含む。ウェーハ120は、ウェーハ120を保持するように構築され、かつ、特定のパラメータに従ってウェーハ120を正確に位置決めするように構成されたポジショナに接続されたウェーハテーブル125上に置かれる。
【0072】
[00068] フォトリソグラフィシステム100は、例えば248ナノメートル(nm)又は193nmの波長を伴う深紫外線(DUV)範囲の波長を有する光ビーム110を使用する。ウェーハ120上にパターン形成され得るマイクロ電子フィーチャの最小サイズは、光ビーム110の波長に依存し、波長がより低くなると最小のフィーチャサイズがより小さくなる。光ビーム110の波長が248nm又は193nmである場合、マイクロ電子フィーチャの最小サイズは、例えば、50nm以下とすることができる。光ビーム110の帯域幅は、光ビーム110の光エネルギーが異なる波長にわたってどのように分布しているかという情報を含む光スペクトル(又は発光スペクトル)の、実際の瞬間的な帯域幅とすることができる。スキャナ115は、例えば、1つ以上の集光レンズ、マスク、及び対物系構成を有する光学的構成を含む。マスクは、1つ以上の方向に沿って、例えば、光ビーム110の光軸に沿って、又は光軸に垂直な面内で移動可能である。対物系構成は投影レンズを含み、マスクからウェーハ120上のフォトレジストへの像転写の発生を可能にする。照明システム105は、マスクに衝突する光ビーム110の角度の範囲を調整する。照明システム105はまた、マスク全体にわたる光ビーム110の強度分布を均質化(均一化)する。
【0073】
[00069] スキャナ115は、とりわけ、リソグラフィコントローラ130、空調デバイス、及び様々な電気部品用の電源を含むことができる。リソグラフィコントローラ130は、ウェーハ120上にどのように層がプリントされるのかを制御する。リソグラフィコントローラ130は、プロセスレシピなどの情報を記憶するメモリを含む。プロセスプログラム又はレシピが、ウェーハ120上での露光の長さを、例えば使用するマスク、及び露光に影響を与える他の要因に基づいて決定する。リソグラフィ中に、光ビーム110の複数のパルスがウェーハ120の同じエリアを照明して照明ドーズを構成する。
【0074】
[00070] フォトリソグラフィシステム100はまた、制御システム135を含むことが好ましい。一般的に、制御システム135は、デジタル電子回路、コンピュータハードウェア、ファームウェア、及びソフトウェアのうちの1つ以上を含む。制御システム135は、読み出し専用メモリ及び/又はランダムアクセスメモリであり得るメモリも含む。コンピュータプログラム命令及びデータを有形に具現化するのに適したストレージデバイスとしては、例として、EPROM、EEPROM、及びフラッシュメモリデバイスなどの半導体メモリデバイスを含む全ての形態の不揮発性メモリ、内蔵ハードディスク及びリムーバブルディスクなどの磁気ディスク、光磁気ディスク、及びCD-ROMディスクが挙げられる。
【0075】
[00071] 制御システム135は、1つ以上の入力デバイス(例えば、キーボード、タッチスクリーン、マイクロホン、マウス、手持ち式入力デバイスなど)及び1つ以上の出力デバイス(例えば、スピーカやモニタ)を含むこともできる。制御システム135は、1つ以上のプログラマブルプロセッサ、及び1つ以上のプログラマブルプロセッサにより実行される機械可読ストレージデバイス内に有形に具現化された1つ以上のコンピュータプログラム製品も含む。1つ以上のプログラマブルプロセッサはそれぞれ、命令のプログラムを実行して、入力データを操作し適切な出力を発生させることによって所望の機能を実行することができる。一般的に、プロセッサは、メモリから命令及びデータを受け取る。前述のいずれもが、特別に設計されたASIC(特定用途向け集積回路)によって補完されるか、又はこれに組み込まれることがある。制御システム135は、集中させるか、又はフォトリソグラフィシステム100全体にわたって部分的に又は全面的に分散させることができる。
【0076】
[00072] 図3を参照すると、例示的な照明システム105が、光ビーム110としてパルスレーザビームを生成するパルスレーザ源である。図3は、開示される主題の特定の態様のある実施形態に係るガス放電レーザシステムを例示的にブロック図で示している。ガス放電レーザシステムは、例えば、固体又はガス放電シードレーザシステム140、増幅ステージ、例えば、パワーリング増幅器(「PRA」)ステージ145、リレー光学部品150及びレーザシステム出力サブシステム160を含むことがある。シードシステム140は、例えば、主発振器(「MO」)チャンバ165を含むことがある。
【0077】
[00073] シードレーザシステム140はまた、主発振器出力カプラ(「MOOC」)175を含むことがあり、このMOOC175は、シードレーザ140が発振してシードレーザ出力パルスを形成する発振器キャビティをライン狭隘化モジュール(「LNM」)170内の反射格子(図示せず)と共に形成する、すなわち主発振器(「MO」)を形成する、部分反射ミラーを含むことがある。このシステムは、ライン中心分析モジュール(「LAM」)180を含むこともある。LAM180は、微細な波長測定用のエタロンスペクトロメータ及びより粗い解像度の格子スペクトロメータを含むことがある。MO波面エンジニアリングボックス(「WEB」)185は、MOシードレーザシステム140の出力を増幅ステージ145に方向転換する働きをすることがあり、また、例えば、マルチプリズムビームエキスパンダ(図示せず)を用いたビーム拡大、及び、例えば、光学遅延路(図示せず)の形態でのコヒーレンス破壊を含むことがある。
【0078】
[00074] 増幅ステージ145は、例えばPRAレージングチャンバ200を含むことがあり、PRAレージングチャンバ200もまた、例えば、シードビーム注入及び出力結合光学系(図示せず)により形成される発振器である場合があり、この結合光学系は、PRA WEB210に組み込まれることがあり、また、ビーム反転器220によってチャンバ200内の利得媒体を通過して戻るように方向転換されることがある。PRA WEB210は、部分反射型入出力カプラ(図示せず)と、公称動作波長(例えば、ArFシステムの場合には約193nm)に対して最大限に反射するミラーと、1つ以上のプリズムとを包含することがある。
【0079】
[00075] 増幅ステージ145の出力部にある帯域幅分析モジュール(「BAM」)230は、増幅ステージから出力されたレーザ光ビームのパルスを受け取り、その光ビームの一部を計測目的のために取り出して、例えば、出力帯域幅及びパルスエネルギーを測定することがある。次いで、レーザ出力光ビームのパルスは、光パルスストレッチャ(「OPuS」)240及び出力結合自動シャッタ計測モジュール(「CASMM」)250を通過し、CASMM250は、パルスエネルギーメータが置かれる場所である場合もある。OPuS240の目的の1つは、例えば、単一の出力レーザパルスをパルス列に変換することである場合がある。元の単一の出力パルスから生成される二次パルスは、互いに対して遅延されることがある。元のレーザパルスエネルギーを二次パルス列に分配することによって、レーザの有効パルス長を拡大することができ、同時に、ピークパルス強度を低下させることができる。したがって、OPuS240は、BAM230を介してPRA WEB210からレーザビームを受け取り、OPuS240の出力をCASMM250に向けることができる。他の実施形態では他の適切な構成が使用されることもある。
【0080】
[00076] PRAレージングチャンバ200及びMO165は、当分野で周知のように、相対的に非常に狭い帯域幅にライン狭隘化され得る相対的に広い帯域放射、及びライン狭隘化モジュール(「LNM」)170内で選択される中心波長を生成するために、例えばAr、Kr、及び/又はXeを含む高エネルギー分子の反転分布を作るために、電極間の放電がレージングガス内にレージングガス放電を生じさせ得る、チャンバとして構成される。
【0081】
[00077] 一般的に、同調はLNMで行われる。レーザのライン狭隘化及び同調に用いられる一般的な手法は、LNMに入るときにレーザビームの一部が通過するレーザの放電キャビティの後部に窓を設けることである。そこでビームの一部はプリズムビームエキスパンダで拡大され、光学素子、例えば、レーザのより広域のスペクトルの選択された狭い部分を増幅が行われる放電チャンバに戻るように反射する格子に向けられる。レーザは通常、ビームが格子を照明する角度をアクチュエータ、例えばピエゾアクチュエータなどを使用して変化させることによって同調される。代替的に、プリズムなどの透過型光学素子を使用して、レーザのより広域のスペクトルの選択された狭い部分を増幅が行われる放電チャンバに戻るように透過させることがある。レーザは、ビームがプリズムを照明する角度をアクチュエータ、例えばピエゾアクチュエータなどを使用して変化させることによって同調されることがある。
【0082】
[00078] 上述したように、一部の適用例では、ある波長を有する1つ以上のパルスのバーストの発生が可能であり、次に異なる波長を有する1つ以上のパルスのバーストの発生に切り替え可能であることが有益である。しかしながら、パルス間で波長を切り替えることは困難である。理由の1つは、整定時間、すなわちシステムが波長変化後に安定するのにかかる時間が一般的にはパルス間隔よりも長いことである。一態様によれば、基準波長を変化させることにより生じる過渡整定期間は、バースト間の次の新しい目標波長を得るために、バースト間にアクチュエータを事前に配置してアクチュエータの準備を行うことによって短くなる。
【0083】
[00079] 別の態様によれば、アクチュエータの動的モデルを使用して、アクチュエータを実波長と波長目標との差異を最小限に抑えるように作動させるための最適制御波形を計算する。
【0084】
[00080] 最適制御波形は、いくつかの方法のいずれか1つを用いて計算することができる。例えば、最適制御波形はダイナミックプログラミングを用いて計算されることがある。この方法は、非線形ダイナミクスを含む複雑なモデルを処理するのによく適応する。強い非線形ダイナミクスを有するアクチュエータモデルを採用する場合、ダイナミックプログラミングを用いて所与の波長目標に対する最適制御信号を発生させることがある。ただし、ダイナミックプログラミングは、リアルタイムで実装され得ないかなりの計算資源を必要とするという課題を提示する。この課題を克服するために、光源が動作され得る様々な繰り返し率の少なくとも一部に対する最適制御パラメータを含む、あらかじめ用意されたルックアップテーブルやあらかじめプログラムされたフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)などのデータストレージデバイスが使用されることがある。
【0085】
[00081] 別の例として、最適制御波形は逆モデルのフィードフォワード制御を用いて決定されることがある。この方法は、アクチュエータダイナミクスを反転させるデジタルフィルタを構築するアクチュエータの動的モデルに依存する。所望のアクチュエータ軌道のための所望の波形をこのフィルタに通すことによって、最適制御波形をリアルタイムで発生させてゼロ定常状態誤差トラッキングを達成することができる。
【0086】
[00082] 別の例として、2つの別個の波長を安定的に得るための最適な解決策が、数回の反復学習を通じて誤差収束を保証するための学習アルゴリズムを用いて遂行される。
【0087】
[00083] 本明細書で開示されるシステム及び方法の実施形態は、1000fmにより分離され、分離誤差が20fm未満の2つの別個の波長を得る可能性がある。
【0088】
[00084] 別の態様によれば、最適制御波形は、FPGAを使用することによって非常に高速でアクチュエータに供給されることがある。
【0089】
[00085] 制御システムは、フィードフォワード制御と反復学習制御(ILC)の組み合わせを含むことがある。図4に示すように、フィードフォワード制御信号Aが、以下で説明されるようにストリーミングデータ収集ユニット330からの波長測定値及びILC更新則を用いてILCモジュール300によってオフラインで計算される。帯域幅波長制御モジュール(BWCM)340が、フィードフォワード制御信号Aを使用して、BWCM340に含まれるFPGAなどのデータストレージユニット内の事前定義されたデータを更新する。次にBWCM340は、レーザがパルス発振しているときに、ピエゾトランスデューサPZT350を、例えば60kHzで作動させる。レーザ放射の波長は、ライン中心(中心波長)解析モジュール(LAM)360及び発射制御プラットフォーム又はプロセッサ(FCP)370によって測定され、波長測定値は6kHzでデータ収集ユニット330に提供される。
【0090】
[00086] 図4に示すシステムが複数の周波数領域を包含するように構成され得ることが理解されるであろう。破線ボックス内のエリアは、基本的にオフラインで行われ得るプロセスを示す。PZT350は、約60kHzのレートで更新される制御信号で駆動されることがある。波長データが約6kHzで収集されることがある。
【0091】
[00087] PZT電圧の変化に対する制約を考慮するために、制約付きの2次計画法を用いて、実行可能な動作領域内で最適なフィードフォワード信号を求めることを支援することがある。2次計画法(QP)は、様々な数理最適化問題を解決するための手法である。QPは、制約付きの所与の2次費用関数に対する最適解を数学的に求めるのに使用されることがある。本開示との関連では、QPは、所望の目標値のレーザ波長を提供するためにピエゾトランスデューサを作動させるのに使用され得る最適制御波形を求めるのに使用されることがある。最適化は、PZT動的応答(例えば、電気入力に対する機械的応答)のあるモデルに基づく可能性がある。最適化手法の様々な実施例において、QPにより発生した波形が、PZTをオープンループで駆動するための最適化された制御波形(以下「U」で表される)として使用されることがある。例えば、レーザシステムが動作中に様々な外乱を経験する様々な実施例において、レーザ波長測定に基づくフィードバック制御が安定性を確保するのに役立つことがある。考えられる1つの外乱源は、以下で考察されるが、パルスレーザの指示された繰り返し率が予想基準率からずれる「繰り返し率のずれ」である。
【0092】
[00088] 標準的なQPソルバは次の構造に関する問題を解決することができる。
【0093】
【数7】
【0094】
ここでXは、LX≦bを満たさなければならないことを除いて自由に選ばれ得る設計パラメータである。換言すれば、QPソルバは、LX≦bにより定義された実行可能領域内で費用関数を最小限に抑える最適なXを求める。式1は2次計画問題の標準的な定式化を示している。発明者らは、以下で「u」又は「U」と表される有用な最適化された制御波形を特定するためにこの形式を利用できることを発見した。以下の考察は、標準的なQP形式における問題の提起の概要を示す。以下の考察において、「P」は、式2に示すPZTダイナミクスの表現であり、「H」は、重み付け「Q」を含む、「P」の2次式である。したがって、「H」は基本的にQP形式のPZTダイナミクスを持つ。
【0095】
[00089] 本明細書で説明される手法は、アクチュエータ位置と所望の制御波形との間の誤差を最小限に抑えながらアクチュエータ制約を満たすフィードフォワード制御を求めることを目的とする。PZTダイナミクスは次の状態空間形式で表現することができる。
【0096】
【数8】
【0097】
ここでA、B、Cは、それぞれPZTダイナミクスを記述する状態、入力、及び出力行列であり、xは状態ベクトル、uは入力ベクトル、yはPZTからの出力である。
【0098】
[00090] 上記の動的モデルを置換して、元の費用関数を次のように書き換えることができる。
【0099】
【数9】
【0100】
[00091] これは次の場合の標準的なQP形式に適合する。
【0101】
【数10】
【0102】
ここでPはPZT入出力ダイナミクスを表し、Qは重み関数であり、Rは所望の制御波形を示し、Dはアクチュエータ制約を表し、lはアクチュエータ制約の閾値である。
【0103】
[00092] 別の態様によれば、ILC制御を次の式によって記述することができる。
【0104】
【数11】
【0105】
[00093] ここでUkはk回目の反復で使用されたフィードフォワード制御信号であり、LはILCアルゴリズムの収束を決定する学習関数であり、Ekはk回目の反復における誤差である。
【0106】
[00094] ILC制御の安定性及び収束特性は、ILC制御則を次式のようなシステムの動的モデルと組み合わせることによって得ることができる。
【0107】
【数12】
【0108】
[00095] ここでPはシステムの入出力関係を記述する行列であり、Iは単位行列である。安定性は、(I-PL)の全ての固有値の絶対値が1よりも小さい場合に保証される。収束率もまた行列(I-PL)によって決定される。(I-PL)=0の場合、誤差は1回の反復の後に0に収束することになる。
【0109】
[00096] 図5は、ある実施形態の一態様に係る放射源を制御する方法を示すフローチャートである。ステップS100において、前のパルスのバーストが終了する。ステップS110において、アクチュエータは、第1の周波数を有するパルスを生成するためにあるべき位置と、第2の周波数を有するパルスを生成するためにあるべき位置との間にある位置に事前配置することによって準備が行われる。ステップS120において、最適制御波形が上記の手法の1つ以上を用いて計算される。ステップS130において、新しいバーストがトリガされたかどうかが判定される。新しいバーストがトリガされていない場合、ステップS130は繰り返される。新しいバーストがトリガされた場合、ステップS140において、指示された繰り返し率及び周波数での動作のためのパラメータが、例えばFPGAを使用して放射源に中継される。ステップS150において、現在のバーストが終了したかどうかが判定される。現在のバーストが終了していない場合、ステップS140が繰り返される。バーストが終了した場合、プロセスはステップS160で終了する。
【0110】
[00097] 図6は、ILCにより実行される、初期QPフィードフォワード制御信号を用いてその更新則を計算する方法を示している。ステップS210において、2次計画法を用いて初期フィードフォワード制御信号を展開する。ステップS220において、フィードフォワード制御信号を使用してレーザを発射する。ステップS230において、フィードフォワード信号の誤差が収束したかどうかが判定される。誤差が収束していない場合、ステップS250において反復学習を用いて制御信号を更新する。次いでステップS220において、新しい制御信号を使用してレーザを発射する。誤差が収束した場合、プロセスはステップS240で終了する。
【0111】
[00098] 放射を基板のレジスト内の様々な深度で合焦させるために様々な放射波長間で切り替える方法は、多焦点イメージングと呼ばれることがある。多焦点イメージング中に使用する制御信号を発生させる方法は、放射システムのパルス繰り返し率が基準パルス繰り返し率に固定されていると仮定することがある。基準パルス繰り返し率は、例えば約6000Hzである場合がある。放射システムの動作パルス繰り返し率(すなわち指示されたパルス繰り返し率)が基準パルス繰り返し率と異なることがある。基準パルス繰り返し率と動作パルス繰り返し率との差異は、意図的である及び/又は意図的でない場合がある。例えば、リソグラフィ装置が、多くの様々な制約の下で多くの様々な変数(例えば基板のスキャン速度)を受け取り、この情報を処理して所望の放射ドーズ量を基板のターゲット部分にどう提供するのがベストかを決定することがある。一部の例では、リソグラフィ装置のコントローラ又はプロセッサが、所望の放射ドーズ量を基板のターゲット部分に提供する好適な方法が、基板のターゲット部分がスキャン中により多い又はより少ない放射ドーズ量を受け取るように光源の動作パルス繰り返し率を変化させることであると決定することがある。例えば、リソグラフィ装置の動作中、動作パルス繰り返し率は基準パルス繰り返し率±約5Hzに等しいことがある。発明者らは、基準パルス繰り返し率と動作パルス繰り返し率との差異が波長誤差などの誤差を引き起こすことがあることが分かった。つまり、光源は、放射が基板のレジスト内の誤った深度で合焦する結果となり得る不正確な波長を有する放射パルスを発生させることがある。このことがひいては欠陥のあるデバイスがリソグラフィ装置により形成される原因となる可能性がある。
【0112】
[00099] 放射システムの動作パルス繰り返し率と基準パルス繰り返し率との差異がどのようにして波長誤差を引き起こし得るかをより良く理解するために、まずは放射システムのコンポーネントが互いにどのように相互作用するかを理解することが役に立つ。図7は、放射パルス410a~cを制御するための放射システム400のある例を概略的に示している。放射システム400は、放射パルス410aと相互作用して放射パルス410b~cの特性を制御するように構成された光学素子420を含む。図7の例では、光学素子420は格子を含む。格子420は、選択された帯域の放射波長が放射システム400の出力430に送信されるように波長依存的に入射する放射パルス410aを反射するように構成される。放射システム400の出力430に送信される選択された帯域の波長は、放射パルス410aの格子420に対する入射角に依存することがある。代替的に、光学素子420は、選択された帯域の放射波長が放射システム400の出力430に送信されるように波長依存的に放射パルス410aを屈折させるように構成されたプリズムを含むことがある。放射システム400の出力430に送信される選択された帯域の波長は、放射パルス410aのプリズムに対する入射角に依存することがある。
【0113】
[000100] 放射システム400は更に、コントローラ460から受信した制御信号450によって光学素子420を作動させるように構成されたアクチュエータ440を含む。アクチュエータ440は、放射パルス410aの光学素子420への入射角が変化するように、光学素子420を回転軸425を軸として回転させるように構成されたピエゾ素子を含むことがある。光学素子420により放射システム400の出力430に送信される選択された帯域の放射波長は、放射パルスの光学素子420に対する入射角に依存する。したがって、光学素子420は、正しい帯域の放射波長が放射システム400の出力に送信されるように、各放射パルス410aが光学素子420に到達しこれと相互作用するときに正しい回転位置にある必要がある。
【0114】
[000101] 制御信号450は、少なくとも部分的に放射システム400の基準パルス繰り返し率に依存することがある。放射システム400の出力430は、例えば制御された放射パルス410cをリソグラフィ露光に使用されるリソグラフィ装置又はスキャナ115に向けることがある。制御された放射パルス410cはリソグラフィ装置115によってパターン形成され、図1に示すような基板Wのターゲット部分Cなどのターゲット上に投影されることがある。
【0115】
[000102] 光学素子420が光学素子420に入射する放射パルス410aから所望の放射波長の帯域を選択するために、光学素子420は、放射パルス410aが光学素子420と相互作用するときに放射パルス410aに対して正しい位置にある必要がある。つまり、放射パルス410aが光学素子420と相互作用する時間は、所望の放射波長の帯域が光学素子420によって選択されるように光学素子420の動きと正しく同期していなければならない。アクチュエータ440を制御することにより光学素子420の回転位置を制御するのに使用される制御信号450は、例えば概ね正弦波形状を有し、光学素子420を2つの回転位置間で振動させることがある。この振動の周波数は、少なくとも部分的に放射パルス410aの繰り返し率によって決定される。放射システム400は、正しい放射波長の帯域が光学素子420によって選択されることを保証するために、正弦波制御信号450がピーク及び/又はトラフにあるときに各放射パルス410aが光学素子420に到達すべきように設計されることがある。
【0116】
[000103] 図8は、放射システムの基準パルス繰り返し率と動作パルス繰り返し率との差異が、放射システムにより制御される放射波長の精度にどのような影響を及ぼし得るかを示すグラフである。動作パルス繰り返し率と基準パルス繰り返し率とに差異が存在する場合、光学素子420の動きは、もはや放射パルス410aの到達時間と正しく同期してはいない。これは、放射パルス410aが光学素子420に到達したときに、光学素子420が正しい角度位置にないことを意味する。したがって、光学素子420と放射パルス410aとの間の入射角は、光学素子420により選択された放射波長が不正確となるようにパルスが光学素子420と相互作用するときは正しくない。光学素子420の動きが、放射パルス410aのバースト(すなわちグループ)全体にわたって放射パルス410aの到達時間とそれ以上同期しなくなることによって、バーストが継続するにつれて問題は悪化する。この効果は図8に見ることができる。
【0117】
[000104] 図8の例では、放射システムの基準パルス繰り返し率は6000Hzである。グラフのx軸は、300個の放射パルスのバースト内のパルス数を示す。グラフのy軸は、2つの所望の中心放射波長間の分離を示す。図8の例では、放射システムは、1000fmにより分離される2つの放射波長間の切り替えを試みている。グラフは、300個の放射パルスのバーストが進行するときの6個の異なる動作繰り返し率(6000Hz、5999Hz、5998Hz、5997Hz、5996Hz及び5995Hz)に関連する波長誤差を示す。動作パルス繰り返し率が6000Hzである場合(すなわち、基準繰り返し率と動作パルス繰り返し率とが等しい場合)、中心波長分離はバーストの全体を通じて所望の1000fmにとどまる。つまり波長誤差が生じていない。動作パルス繰り返し率が6000Hzと異なる場合(すなわち、基準繰り返し率と動作パルス繰り返し率とが等しくない場合)、中心波長分離は所望の1000fmからずれる。このずれはバーストの全体を通じて大きくなり、重大な波長誤差をもたらす。図8により示されるように、動作パルス繰り返し率と基準パルス繰り返し率との差異が大きくなればなるほど、結果として生じる波長誤差は大きくなる。例えば、動作パルス繰り返し率が5998Hz(すなわち2Hzの差異)である場合、最終パルスの波長誤差は約50fmである。動作パルス繰り返し率が5995Hz(すなわち5Hzの差異)である場合、最終パルスの波長誤差は約300fmである。したがって、動作パルス繰り返し率のずれが比較的小さくても、アクチュエータの動的応答と制御信号との間に位相誤差が誘発される可能性があるため、バースト全体にわたって悪化する重大な波長誤差がもたらされる恐れがある。
【0118】
[000105] 制御手法の様々な実施例では、動作パルス繰り返し率のずれに関連する誤差が、少なくとも部分的にずれを考慮するようにアクチュエータの制御信号を調整することによって減らされることがある。再度図7を参照すると、リソグラフィ装置115はコントローラ460と通信することがある。例えば、コントローラ460は、パルス数や動作繰り返し率などのパルス情報をリソグラフィ装置115から受け取り、このパルス情報を用いて制御信号の調整を決定することがある。繰り返し率のずれが制御信号と放射パルスの到達時間との間の位相差をもたらすと仮定すると、位相差を補償する1つの方法は、制御信号が放射パルスの到達時間と常に位相が一致するように制御信号の位相を調整することである。しかしながら、アクチュエータは、とても高い周波数(例えば約60kHz)で振動するため減衰が不足する傾向がある。したがって、減衰不足のアクチュエータのために制御信号の位相を変化させることは、それ自体の誤差を引き起こすかなりの過渡振動を発生させる可能性がある。より好ましい選択肢は、繰り返し率のずれにより誘発される、光学素子の動きとパルスの到達時間との間の位相差を少なくとも部分的に考慮するように制御信号の大きさを調整することである。
【0119】
[000106] 繰り返し率のずれによりバーストのn番目のパルスに生じた波長誤差は、次の式によって記述することができる。
【0120】
【数13】
【0121】
ここでλは放射パルス410cの目標波長であり、nはパルス数であり、P(f)は周波数領域におけるアクチュエータ440の動的モデルであり、U(f)は周波数領域におけるアクチュエータ440の制御信号450であり、fは関心周波数を表し、Δは動作パルス繰り返し率と基準パルス繰り返し率との差異(すなわち繰り返し率のずれ)である。したがって、|P(f)|は、周波数fにおけるアクチュエータ440の動的モデルの大きさであり、|U(f)|は、周波数fにおけるアクチュエータ440の制御信号450の大きさである。以上で考察したように、制御信号はいくつかの方法、例えば、ダイナミックプログラミング、モデル反転フィードフォワード制御、及び/又は数回の反復学習を通じて誤差収束を保証するための学習アルゴリズムのうちの1つを用いて決定されることがある。
【0122】
[000107] 関心周波数は、制御信号450が少なくとも部分的に放射システム400の基準パルス繰り返し率に依存するため、放射システム400の基準パルス繰り返し率に依存することがある。例えば、制御信号450は、アクチュエータ440に基準パルス繰り返し率の約半分の周波数で光学素子420を作動させるように構成されることがある。これを実現するために、制御信号450はそのエネルギーの大部分を基準パルス繰り返し率の約半分で有することがある。したがって、関心周波数は基準パルス繰り返し率の約半分である場合がある。例えば、基準パルス繰り返し率が約6000Hzである場合、関心周波数は約3000Hzとなる。放射システム400が、連続した放射パルス410aの波長を2つの目標中心波長間で切り替えることを含む多焦点イメージングモードにある場合、n番目のパルスにおける波長誤差は次の式によって記述されることがある。
【0123】
【数14】
【0124】
ここでRは放射システム400の基準パルス繰り返し率である。この場合、|P(R/2)|は、(R/2)Hzの周波数におけるアクチュエータ440の動的モデルの大きさであり、|U(R/2)|は、(R/2)Hzの周波数におけるアクチュエータ440の制御信号450の大きさである。これら2つの項の掛け算(すなわち、|P(R/2)|×|U(R/2)|)は、制御信号が(R/2)Hzの周波数(すなわち関心周波数)におけるエネルギーを含む場合のアクチュエータ出力を表す。つまり、制御信号450がそのエネルギーの大部分を(R/2)Hzの周波数で有するため、アクチュエータの出力は、(R/2)Hzの周波数におけるアクチュエータ動的応答モデルを用いて予測することができる。
【0125】
[000108] 動作パルス繰り返し率と基準パルス繰り返し率との差異がない場合(すなわちΔ=0の場合)、式8は次のように書き換えることができる。
【0126】
【数15】
【0127】
[000109] 放射パルス410cの波長誤差がゼロ(すなわちλΔ(n)=0)であることを保証するために、制御信号450の大きさは、次の式に従うように設定することができる。
【0128】
【数16】
【0129】
[000110] 動作パルス繰り返し率と基準パルス繰り返し率との差異が存在し(すなわちΔ≠0の場合)、制御信号450の大きさが式10に設定される場合(すなわち、|U(R/2)|=λ(n)/|P(R/2)|の場合)、放射パルス410cの波長誤差(すなわち式8)は、次の式によって記述することができる。
【0130】
【数17】
【0131】

[000111] 放射パルス410cの波長誤差を減らすために制御信号450に調整が行われることがある。調整は、調整された制御信号を生成するために制御信号450に適用され得る補正係数の形をとることがある。調整された制御信号は次の形式をとることがある。
【0132】
【数18】
【0133】
ここでCは補正係数である。
【0134】
[000112] 調整された制御信号は式8に代入されることがあり、式8は、次式により示されるように、放射パルスの波長誤差がゼロとなるようにゼロに設定されることがある。
【0135】
【数19】
【0136】
[000113] 式13は次式に再整理されることがある。
【0137】
【数20】
【0138】
[000114] 式14は補正係数を定義するように再整理することができる。つまり、補正係数は次の形式をとることがある。
【0139】
【数21】
【0140】
つまり、補正係数は、基準パルス繰り返し率、基準パルス繰り返し率と動作パルス繰り返し率との差異、及びパルス数の関数である場合がある。したがって、いったんパルス数が1より大きく(すなわちn>1)なると、補正係数は後続の放射パルス毎に計算することができる。
【0141】
[000115] 図9は、ある実施形態に係る放射パルスを制御する方法を示している。ステップS300は、新しいパルス又は放射パルスのバーストに備えることを含む。これは、例えば光学素子を所望の位置又は振動状態に移動又は作動させることを含むことがある。ステップS310は、パルス数が1よりも大きいか否かを判定する決定を含む。このステップが行われるのは、パルス数が1よりも大きくなった後にのみ動作パルス繰り返し率を決定できるためである。例えば、動作パルス繰り返し率は、2つの連続したパルス間の間隔の逆数をとることによって決定されることがあり、したがって、動作パルス繰り返し率は早くても第2のパルスについてしか計算することができない。パルス数が1より大きくない場合、方法は、未調整の制御信号をアクチュエータに適用することを含むステップ320Aに進む。パルス数が1より大きい場合、方法は、式15に規定されるように動作繰り返し率及びパルス数を用いて補正係数を決定することを含むステップS320Bに進む。次に方法は、制御信号の大きさを調整するために制御信号に補正係数を適用することを含むステップS325に進む。調整された制御信号は、繰り返し率のずれを少なくとも部分的に補償するためにアクチュエータに適用されることによって、放射システムの波長誤差を減らす。
【0142】
[000116] 図10は、調整された制御信号を用いないモデル化された放射システム(パネル(a))対調整された制御信号を用いたモデル化された放射システム(パネル(b))についての波長安定性を比較したシミュレーション結果を示している。図10の例では、放射システムは、1000fmにより分離される2つの放射波長間の切り替えを試みている。
【0143】
[000117] 図10の破線は、各システムにおけるPZTの軌道を表す。軌道上の大きなドット1001、1002が、レーザパルスが到達する時間に印をつけ、大きいドットは隣接するドット間が重複するために太線のように見える。繰り返し率のずれが存在する(すなわち、実際の指示された繰り返し率が基準繰り返し率と異なる)場合、レーザパルスの到達時間はPZT軌道と同期していない。パネル(a)では、この同期性の欠如によって、時間と共に成長する誤差がもたらされ、ドット1001は、+/-500fmの波長調整をもたらす時間目標を達成しない場合もある。パネル(b)では、繰り返し率のずれは、PZT軌道の大きさを適切に増加させることによって補償されている。入力信号の適切な調整は、以上で考察した手法を用いて決定されることがある。その結果、ドット1002は、所望の+/-500fmの波長調整をもたらす時間目標をより一貫して達成する。
【0144】
[000118] 図10から分かるように、調整された制御信号を決定及び適用しない放射システム(パネル(a))は、放射パルスのバーストを通じた時間の増加に伴う波長誤差の増加に苦しむ。0.05秒後、調整された制御信号を用いない放射システム500は、約200fmを越える波長誤差に苦しむ。これに対して、調整制御信号を決定し、アクチュエータに適用する放射システム(パネル(b))は、放射パルスのバーストにわたって約1000fmの所望の波長分離を維持する。
【0145】
[000119] 本文ではICの製造におけるリソグラフィ装置の使用に特に言及しているが、本明細書で説明するリソグラフィ装置には他の用途もあることを理解されたい。考えられる他の用途は、集積光学システム、磁気ドメインメモリ用のガイダンス及び検出パターン、フラットパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッドなどの製造である。
【0146】
[000120] 本明細書ではリソグラフィ装置に関連して本発明の実施形態について具体的な言及がなされているが、本発明の実施形態は他の装置に使用することもできる。本発明の実施形態は、マスク検査装置、メトロロジ装置、又はウェーハ(あるいはその他の基板)もしくはマスク(あるいはその他のパターニングデバイス)などのオブジェクトを測定又は処理する任意の装置の一部を形成してよい。これらの装置は一般にリソグラフィツールと呼ばれることがある。このようなリソグラフィツールは、真空条件又は周囲(非真空)条件を使用することができる。
【0147】
[000121] 文脈上許される場合、本発明の実施形態は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、又はそれらの任意の組み合わせにおいて実装することができる。本発明の実施形態は、1つ以上のプロセッサにより読み取られて実行され得る、機械可読媒体に記憶された命令として実装することも可能である。機械可読媒体は、機械(例えばコンピューティングデバイス)により読み取り可能な形態で情報を記憶又は伝送するための任意の機構を含むことができる。例えば機械可読媒体は、読み取り専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、磁気記憶媒体、光記憶媒体、フラッシュメモリデバイス、電気、光、音響又は他の形態の伝搬信号(例えば搬送波、赤外信号、デジタル信号など)、及び他のものを含むことができる。さらに、ファームウェア、ソフトウェア、ルーチン、命令は、特定のアクションを実行するものとして本明細書で説明されることがある。しかしながら、そのような説明は単に便宜上のものであり、そのようなアクションは実際には、ファームウェア、ソフトウェア、ルーチン、命令などを実行するコンピューティングデバイス、プロセッサ、コントローラ、又は他のデバイスから生じ、実行する際、アクチュエータ又は他のデバイスが物質世界と相互作用し得ることを理解すべきである。
【0148】
[000122] 本発明の他の態様を以下の番号付けされた条項に記載する。
1.放射パルスを制御するための放射システムであって、 放射パルスの特性を制御するために放射パルスと相互作用するように構成された光学素子と、
放射システムの基準パルス繰り返し率に少なくとも部分的に依存する、コントローラから受信した制御信号によって光学素子を作動させるように構成されたアクチュエータと、を備え、コントローラが、パルス情報を受け取り、パルス情報を用いて制御信号の調整を決定及び適用するように構成された、放射システム。
2.特性が放射パルスの波長である、条項1の放射システム。
3.パルス情報が放射システムの動作パルス繰り返し率を含み、調整が、基準パルス繰り返し率と動作パルス繰り返し率との差異を少なくとも部分的に考慮する、条項1の放射システム。
4.調整が制御信号の大きさを変化させる、条項1の放射システム。
5.制御信号の大きさが、
【数22】
であり、
ここでU(f)が周波数領域におけるアクチュエータの制御信号であり、λが放射パルスの目標波長であり、nがパルス数であり、P(f)が周波数領域におけるアクチュエータの動的モデルである、条項4の放射システム。
6.パルス情報がパルス数を含み、制御信号の変化させた大きさが、
【数23】
であり、
ここでCが補正係数である、条項5の放射システム。
7.補正係数が
【数24】
であり、
ここでRが放射システムの基準パルス繰り返し率であり、Δが動作パルス繰り返し率と基準パルス繰り返し率との差異である、条項6の放射システム。
8.補正係数が、放射システムが発生させた放射パルス毎に計算され、制御信号に適用される、条項7の放射システム。
9.アクチュエータが、放射パルスの光学素子への入射角が変化するように光学素子を回転させるように構成されたピエゾ素子を備えた、条項1の放射システム。
10.光学素子が、選択された帯域の放射波長が放射システムの出力に送信されるように波長依存的に放射パルスを反射するように構成された格子を備えた、条項1の放射システム。
11.光学素子が、選択された帯域の放射波長が放射システムの出力に送信されるように波長依存的に放射パルスを屈折させるように構成されたプリズムを備えた、条項1の放射システム。
12.放射パルスを受け取り、放射パルスにパターン付与し、パターン付与した放射パルスをターゲット上に投影するように構成されたリソグラフィ装置と、
条項1に記載の放射システムと、を備えたリソグラフィシステム。
13.放射パルスを制御する方法であって、
放射パルスの特性を制御するために放射パルスと相互作用する光学素子を使用すること、
放射システムの基準パルス繰り返し率に少なくとも部分的に依存する制御信号によって光学素子を作動させるアクチュエータを使用すること、
パルス情報を受け取ること、及び
制御信号の調整を決定及び適用するためにパルス情報を使用すること、を含む方法。
14.特性が放射パルスの波長である、条項13の方法。
15.パルス情報が放射システムの動作パルス繰り返し率を含み、調整が、基準パルス繰り返し率と動作パルス繰り返し率との差異を少なくとも部分的に考慮する、条項14の方法。
16.調整が制御信号の大きさを変化させる、条項14の方法。
17.制御信号の大きさが、
【数25】
であり、
ここでU(f)がアクチュエータの制御信号であり、λが放射パルスの目標波長であり、nがパルス数であり、P(f)がアクチュエータの動的モデルである、条項16の方法。
18.パルス情報がパルス数を含み、制御信号の変化させた大きさが、
【数26】
であり、
ここでCが補正係数である、条項17の方法。
19.補正係数が
【数27】
であり、
ここでRが放射システムの基準パルス繰り返し率であり、Δが動作パルス繰り返し率と基準パルス繰り返し率との差異である、条項18の方法。
20.補正係数が、放射システムが発生させた放射パルス毎に計算され、制御信号に適用される、条項19の方法。
21.放射パルスを含むパターン付与された放射ビームをターゲット上に投影する方法であって、
放射パルスの特性を制御するために放射パルスと相互作用する光学素子を使用すること、
放射システムの基準パルス繰り返し率に少なくとも部分的に依存する制御信号によって光学素子を作動させるアクチュエータを使用すること、
パルス情報を受け取ること、及び
制御信号の調整を決定及び適用するためにパルス情報を使用すること、を含む方法に従って放射パルスを制御することを更に含む方法。
22.コンピュータに放射パルスを制御する方法を実行させるように構成されたコンピュータ可読命令を含むコンピュータプログラムであって、方法が、
放射パルスの特性を制御するために放射パルスと相互作用する光学素子を使用すること、
放射システムの基準パルス繰り返し率に少なくとも部分的に依存する制御信号によって光学素子を作動させるアクチュエータを使用すること、
パルス情報を受け取ること、及び
制御信号の調整を決定及び適用するためにパルス情報を使用すること、を含むコンピュータプログラム。
23.プロセッサ可読命令を記憶するメモリと、メモリに記憶された命令を読み出し実行するように構成されたプロセッサとを備えた、放射パルスを制御するためのコンピュータ装置であって、プロセッサ可読命令が、放射パルスを制御する方法を実行するようにコンピュータを制御するように構成された命令を含み、方法が、
放射パルスの特性を制御するために放射パルスと相互作用する光学素子を使用すること、
放射システムの基準パルス繰り返し率に少なくとも部分的に依存する制御信号によって光学素子を作動させるアクチュエータを使用すること、
パルス情報を受け取ること、及び
制御信号の調整を決定及び適用するためにパルス情報を使用すること、を含むコンピュータ装置。
【0149】
[000123] 以上、本発明の特定の実施形態を説明したが、説明とは異なる方法でも本発明を実践できることは理解されよう。上記の説明は例示的であり、限定的ではない。したがって、請求の範囲から逸脱することなく、記載されたような本発明を変更できることが当業者には明白である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10