(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-29
(45)【発行日】2023-10-10
(54)【発明の名称】基板処理装置、半導体装置の製造方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H01L 21/31 20060101AFI20231002BHJP
H01L 21/316 20060101ALI20231002BHJP
【FI】
H01L21/31 C
H01L21/316 C
(21)【出願番号】P 2022550286
(86)(22)【出願日】2020-09-18
(86)【国際出願番号】 JP2020035435
(87)【国際公開番号】W WO2022059163
(87)【国際公開日】2022-03-24
【審査請求日】2023-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】稲田 哲明
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 崇之
【審査官】長谷川 直也
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0198417(US,A1)
【文献】国際公開第2017/154245(WO,A1)
【文献】特表2012-519956(JP,A)
【文献】特開平10-219457(JP,A)
【文献】特開2019-067503(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/31
H01L 21/316
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理室を構成する処理容器と、
第1処理ガスを前記処理室内に供給する第1供給口を有する第1ガス供給系と、
第2処理ガスを前記処理室内に供給する第2供給口を有する第2ガス供給系と、
前記処理容器の外周に沿って設けられ、高周波電力が供給される電極により構成され、前記処理室内に供給された前記第1処理ガスをプラズマ励起するよう構成されたプラズマ生成部と、
基板を保持する基板保持台と、
を備え、
前記第2供給口は、前記処理室の天井面であって、前記第1供給口よりも前記処理容器の径方向における中央側の位置から、下方に延びるように設けられた供給管に設けられると共に、前記第1供給口よりも下方に設けられ
、
前記第2供給口は、前記プラズマ生成部を構成する前記電極の上端と下端の間に設けられる、基板処理装置。
【請求項2】
前記電極は、前記処理容器の外周に巻回して設けられた共振コイルにより構成される請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記共振コイルは、供給される高周波電力の波長の1/2、又は整数倍の電気的長さを有する請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記プラズマ生成部は、前記処理室内における前記処理容器の内周に沿った筒状又は円環状のプラズマ生成領域にプラズマを生成するように構成され、
前記第2供給口は、前記プラズマ生成領域の内周よりも前記処理容器の径方向における内側に設けられている請求項1~請求項3の何れか1項に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記処理室の前記天井面を構成するプレートと、前記プレートの上面に対向する下面を有する蓋部とを備え、
前記プレートの前記上面と前記蓋部の前記下面との間に、前記第2処理ガスが供給される第2バッファ部が設けられ、
前記供給管の上端は、前記第2バッファ部に接続されている請求項1~請求項4の何れか1項に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記処理室の前記天井面を構成するプレートを備え、
前記供給管は前記プレートに接続され、又は前記プレートを貫通し、その上端が前記第2処理ガスを供給する第2ガス供給管に接続されている請求項1~請求項4の何れか1項に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記処理容器の径方向外側端部に沿う領域に、前記第1処理ガスが供給される第1バッファ部が設けられ、
前記第1供給口は、前記第1バッファ部と連通し、前記処理容器の周方向に沿って設けられている請求項5又は請求項6に記載の基板処理装置。
【請求項8】
処理室を構成する処理容器と、
第1処理ガスを前記処理室内に供給する第1供給口を有する第1ガス供給系と、
第2処理ガスを前記処理室内に供給する第2供給口を有する第2ガス供給系と、
前記処理容器の外周に沿って設けられ、高周波電力が供給される電極により構成され、前記処理室内に供給された前記第1処理ガスをプラズマ励起するよう構成されたプラズマ生成部と、
基板を保持する基板保持台と、
を備え、
前記第2供給口は、前記処理室の天井面であって、前記第1供給口よりも前記処理容器の径方向における中央側の位置から、下方に延びるように設けられた供給管に設けられると共に、前記第1供給口よりも下方に設けられ、
前記電極は、前記処理容器の外周に巻回して設けられた共振コイルにより構成され、
前記第2供給口は、前記プラズマ生成部を構成する前記共振コイルの中点と略同一の高さに設けられ
る基板処理装置。
【請求項9】
第2供給口は、前記プラズマ生成部を構成する前記電極の下端よりも下方に設けられる請求項1~請求項7の何れか1項に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記第2供給口は、前記供給管の先端に設けられた複数の噴出口により構成される請求項1~請求項
7の何れか1項に記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記第2供給口は、前記基板の面の垂直方向に対して所定の角度を有する斜め下方に前記第2処理ガスを噴出するように構成された噴出口により構成される請求項1~請求項
7の何れか1項に記載の基板処理装置。
【請求項12】
前記所定の角度は、前記基板の中心から、前記第2供給口からの前記第2処理ガスの噴出方向と前記基板とが交わる位置までの距離が一定となるように、前記第2供給口と前記基板との距離に応じて設定されている請求項
11に記載の基板処理装置。
【請求項13】
前記第2処理ガスは、前記第1処理ガスと組成の異なるガスである請求項1~請求項
7の何れか1項に記載の基板処理装置。
【請求項14】
前記第1処理ガス及び前記第2処理ガスは、それぞれ第1ガスと第2ガスの混合ガスである請求項1~請求項
7の何れか1項に記載の基板処理装置。
【請求項15】
前記第1ガスは、酸素含有ガスである請求項
14に記載の基板処理装置。
【請求項16】
前記第2ガスは、水素含有ガス又は不活性ガスの少なくともいずれかである請求項
14又は請求項
15に記載の基板処理装置。
【請求項17】
前記第1処理ガスは第1ガスで構成され、且つ第2ガスを含まないガスであり、
前記第2処理ガスは第2ガスで構成され、且つ第1ガスを含まないガスである請求項
13に記載の基板処理装置。
【請求項18】
処理室を構成する処理容器と、
第1処理ガスを前記処理室内に供給する第1供給口を有する第1ガス供給系と、
第2処理ガスを前記処理室内に供給する第2供給口を有する第2ガス供給系と、
前記処理容器の外周に沿って設けられ、高周波電力が供給される電極により構成されたプラズマ生成部と、
基板を保持する基板保持台と、
を備え、
前記第2供給口は、前記処理室の天井面であって、前記第1供給口よりも前記処理容器の径方向における中央側の位置から、下方に延びるように設けられた供給管に設けられると共に、前記第1供給口よりも下方に設けられ
、
前記第2供給口は、前記プラズマ生成部を構成する前記電極の上端と下端の間に設けられる基板処理装置の前記処理室に前記基板を搬入する工程と、
前記第1供給口から前記第1処理ガスを前記処理室に供給するとともに、前記第2供給口から前記第2処理ガスを前記処理室に供給する工程と、
前記プラズマ生成部により前記処理室内に供給された前記第1処理ガスをプラズマ励起する工程と、
前記プラズマ励起された前記第1処理ガス、及び前記第2処理ガスを前記基板に供給して、前記基板を処理する工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【請求項19】
処理室を構成する処理容器と、
第1処理ガスを前記処理室内に供給する第1供給口を有する第1ガス供給系と、
第2処理ガスを前記処理室内に供給する第2供給口を有する第2ガス供給系と、
前記処理容器の外周に沿って設けられ、高周波電力が供給される電極により構成されたプラズマ生成部と、
基板を保持する基板保持台と、
を備え、
前記第2供給口は、前記処理室の天井面であって、前記第1供給口よりも前記処理容器の径方向における中央側の位置から、下方に延びるように設けられた供給管に設けられると共に、前記第1供給口よりも下方に設けられ
、前記第2供給口は、前記プラズマ生成部を構成する前記電極の上端と下端の間に設けられる基板処理装置の前記処理室に前記基板を搬入する手順と、
前記第1供給口から前記第1処理ガスを前記処理室に供給するとともに、前記第2供給口から前記第2処理ガスを前記処理室に供給する手順と、
前記プラズマ生成部により前記処理室内に供給された前記第1処理ガスをプラズマ励起する手順と、
前記プラズマ励起された前記第1処理ガス、及び前記第2処理ガスを前記基板に供給して、前記基板を処理する手順と、
をコンピュータにより前記基板処理装置に実行させるプログラム。
【請求項20】
処理室を構成する処理容器と、
第1処理ガスを前記処理室内に供給する第1供給口を有する第1ガス供給系と、
第2処理ガスを前記処理室内に供給する第2供給口を有する第2ガス供給系と、
前記処理容器の外周に沿って設けられ、高周波電力が供給される電極により構成され、前記処理室内に供給された前記第1処理ガスをプラズマ励起するよう構成されたプラズマ生成部と、
基板を保持する基板保持台と、
を備え、
前記第2供給口は、前記処理室の天井面であって、前記第1供給口よりも前記処理容器の径方向における中央側の位置から、下方に延びるように設けられた供給管に設けられると共に、前記第1供給口よりも下方に設けられ、
前記電極は、前記処理容器の外周に巻回して設けられた共振コイルにより構成され、
前記第2供給口は、前記プラズマ生成部を構成する前記共振コイルの中点と略同一の高さに設けられる基板処理装置の前記処理室に前記基板を搬入する工程と、
前記第1供給口から前記第1処理ガスを前記処理室に供給するとともに、前記第2供給口から前記第2処理ガスを前記処理室に供給する工程と、
前記プラズマ生成部により前記処理室内に供給された前記第1処理ガスをプラズマ励起する工程と、
前記プラズマ励起された前記第1処理ガス、及び前記第2処理ガスを前記基板に供給して、前記基板を処理する工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【請求項21】
処理室を構成する処理容器と、
第1処理ガスを前記処理室内に供給する第1供給口を有する第1ガス供給系と、
第2処理ガスを前記処理室内に供給する第2供給口を有する第2ガス供給系と、
前記処理容器の外周に沿って設けられ、高周波電力が供給される電極により構成され、前記処理室内に供給された前記第1処理ガスをプラズマ励起するよう構成されたプラズマ生成部と、
基板を保持する基板保持台と、
を備え、
前記第2供給口は、前記処理室の天井面であって、前記第1供給口よりも前記処理容器の径方向における中央側の位置から、下方に延びるように設けられた供給管に設けられると共に、前記第1供給口よりも下方に設けられ、
前記電極は、前記処理容器の外周に巻回して設けられた共振コイルにより構成され、
前記第2供給口は、前記プラズマ生成部を構成する前記共振コイルの中点と略同一の高さに設けられる基板処理装置の前記処理室に前記基板を搬入する手順と、
前記第1供給口から前記第1処理ガスを前記処理室に供給するとともに、前記第2供給口から前記第2処理ガスを前記処理室に供給する手順と、
前記プラズマ生成部により前記処理室内に供給された前記第1処理ガスをプラズマ励起する手順と、
前記プラズマ励起された前記第1処理ガス、及び前記第2処理ガスを前記基板に供給して、前記基板を処理する手順と、
をコンピュータにより前記基板処理装置に実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理装置、半導体装置の製造方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
フラッシュメモリ等の半導体装置のパターンを形成する際、製造工程の一工程として、基板に酸化処理や窒化処理等の所定の処理を行う工程が実施される場合がある。
【0003】
例えば、特開2014-75579号公報には、プラズマ励起した処理ガスを用いて基板上に形成されたパターン表面を改質処理することが開示されている。処理室の上部には、ガス供給部が設けられ、反応ガスを処理室内へ供給できるように構成されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来例では、1種類のガス又は事前に混合された複数種類のガスが、一定のガス濃度でガス供給部のガス吹出口から供給され、プラズマ励起されて基板に到達する。
しかしながら、処理ガスが処理室内に均等なガス濃度で拡散されたとしても、処理室内に生成されるプラズマの分布によって、基板の面内に対して所望の分布でプラズマ処理を行うことができないことがある。
本開示の目的は、基板の面内に対して所望の分布でプラズマ処理を行うことを可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様によれば、処理室を構成する処理容器と、第1処理ガスを前記処理室内に供給する第1供給口を有する第1ガス供給系と、前記第1処理ガスと組成の異なる第2処理ガスを前記処理室内に供給する第2供給口を有する第2ガス供給系と、前記処理容器の外周に沿うように設けられ、高周波電力が供給される電極により構成され、前記処理室内に供給された前記第1処理ガスをプラズマ励起するよう構成されたプラズマ生成部と、基板を保持する基板保持台と、を備え、前記第2供給口は、前記処理室の天井面であって、前記第1供給口よりも前記処理容器の径方向における中央側の位置から、下方に延びるように設けられた供給管の下端部に設けられると共に、前記第1供給口よりも下方に設けられている技術が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、基板の面内に対して所望の分布でプラズマ処理を行うことを可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本開示の一実施形態に係る基板処理装置において、プラズマ生成のためにICP電極を用いた例を示す概略断面図である。
【
図2】本開示の一実施形態に係る基板処理装置のプラズマ生成原理を説明する説明図である。
【
図3】本開示の一実施形態に係る基板処理装置の制御部(制御手段)の構成を示す図である。
【
図4】本開示の一実施形態に係る基板処理工程を示すフロー図である。
【
図5】本開示の一実施形態に係る基板処理装置において、プラズマ生成部にMMT方式を用いた例を示す概略断面図である。
【
図7】本開示の一実施形態に係る基板処理装置において、ノズルがプラズマ生成領域よりも上方に設けられた例を示す概略断面図である。
【
図8】本開示の一実施形態に係る基板処理装置において、ノズルがプラズマ生成領域の下方に設けられた例を示す概略断面図である。
【
図9】本開示の一実施形態に係る基板処理装置の変形例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示を実施するための形態を図面に基づき説明する。各図面において同一の符号を用いて示される構成要素は、同一又は同様の構成要素であることを意味する。なお、以下に説明する実施形態において重複する説明及び符号については、省略する場合がある。また、以下の説明において用いられる図面は、いずれも模式的なものであり、図面に示される、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。また、複数の図面の相互間においても、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は必ずしも一致していない。
【0009】
(1)基板処理装置の構成
本開示の第1実施形態に係る基板処理装置について、
図1を用いて以下に説明する。本実施形態に係る基板処理装置100は、主に基板面上に形成された膜に対して例えば酸化処理を行うように構成されている。基板処理装置100は、処理容器203と、第1ガス供給系としての第1ガス供給部1100と、第2ガス供給系としての第2ガス供給部1200と、プラズマ生成部1040と、基板保持台としてのサセプタ217と、を備えている。
【0010】
(処理室)
基板処理装置100は、基板としてのウエハ200をプラズマを用いて処理する処理炉202を備えている。処理炉202には、処理室201を構成する処理容器203が設けられている。処理容器203は、第1の容器であるドーム型の上側容器210と、第2の容器である碗型の下側容器211とを備えている。上側容器210が下側容器211の上に被さることにより、処理室201が形成される。上側容器210は、例えば酸化アルミニウム(Al2O3)または石英(SiO2)等の非金属材料で形成されており、下側容器211は、例えばアルミニウム(Al)で形成されている。
【0011】
処理室201の天井面、換言すれば上側容器210の天井面は、例えばプレート1004で構成されている。プレート1004の上方には、プレート1004の上面に対向する下面を有する蓋部1012が設けられている。
【0012】
また、下側容器211の下部側壁には、ゲートバルブ244が設けられている。ゲートバルブ244は、開いているとき、搬送機構(図示せず)を用いて、搬入出口245を介して、処理室201内へウエハ200を搬入したり、処理室201外へとウエハ200を搬出したりすることができるように構成されている。ゲートバルブ244は、閉まっているときには、処理室201内の気密性を保持する仕切弁となるように構成されている。
【0013】
処理室201は、周囲に共振コイル212が設けられているプラズマ生成空間201aと、プラズマ生成空間201aに連通し、ウエハ200が処理される基板処理空間201bを有する。プラズマ生成空間201aはプラズマが生成される空間であって、処理室の内、共振コイル212の下端より上方であって、且つ共振コイル212の上端より下方の空間を言う。一方、基板処理空間201bは、基板がプラズマを用いて処理される空間であって、共振コイル212の下端より下方の空間を言う。本実施形態では、プラズマ生成空間201aと基板処理空間201bの水平方向の径は略同一となるように構成されている。
【0014】
(サセプタ)
処理室201の底側中央には、ウエハ200を載置する基板載置部(基板保持台)を構成するサセプタ217が配置されている。サセプタ217は例えば窒化アルミニウム(AlN)、セラミックス、石英等の非金属材料から形成されている。
【0015】
サセプタ217の内部には、加熱機構としてのヒータ217bが一体的に埋め込まれている。ヒータ217bは、電力が供給されると、ウエハ200表面を例えば25℃から750℃程度まで加熱することができるように構成されている。
【0016】
サセプタ217は、下側容器211とは電気的に絶縁されている。インピーダンス調整電極217cはサセプタ217内部に設けられており、インピーダンス調整部としてのインピーダンス可変機構275を介して接地されている。インピーダンス可変機構275はコイルや可変コンデンサにより構成されており、コイルのインダクタンス及び抵抗並びに可変コンデンサの容量値を制御することにより、インピーダンスを変化させることができるように構成されている。これによって、インピーダンス調整電極217c及びサセプタ217を介して、ウエハ200の電位(バイアス電圧)を制御できる。なお、本実施形態においてインピーダンス調整電極217cを用いたバイアス電圧制御を行うか、もしくは行わないかは任意に選択することができる。
【0017】
サセプタ217には、サセプタを昇降させる駆動機構を備えるサセプタ昇降機構268が設けられている。また、サセプタ217には貫通孔217aが設けられるとともに、下側容器211の底面にはウエハ突上げピン266が設けられている。貫通孔217aとウエハ突上げピン266は互いに対向する位置に、少なくとも各3箇所ずつ設けられている。サセプタ昇降機構268によりサセプタ217が下降させられたときには、ウエハ突上げピン266が貫通孔217aを突き抜けるように構成されている。
【0018】
主に、サセプタ217及びヒータ217b、電極217cにより、本実施形態に係る基板載置部が構成されている。
【0019】
(第1ガス供給部)
第1ガス供給系としての第1ガス供給部1100は、第1処理ガスを処理室201内に供給する第1供給口1022を有している。以下において、第1ガス供給部1100から供給されるガスを第1処理ガスと称する。処理室201の中央上方には、処理室201の天井面を構成するプレート1004と、プレート1004の上面に対向する下面を有する蓋部1012とが設けられている。プレート1004及び蓋部1012は、光を透過する材料、例えば透明石英で構成されている。蓋部1012の上部には、処理室201内を加熱するためのランプヒータ1002が設けられている。ランプヒータ1002から放射される光は、蓋部1012及びプレート1004を通じて処理室201内に届くようになっている。
【0020】
処理容器203の上端の径方向外側端部に沿う領域には、第1処理ガスが供給される第1バッファ部1018が設けられている。一例として、処理容器203の上にはマニホールド1006が取り付けられており、該マニホールド1006に第1バッファ部1018が設けられている。第1バッファ部1018は、プレート1004の周囲に環状に形成されている。基板処理時には、第1バッファ部1018は減圧された空間となる。第1バッファ部1018には、第1処理ガスが供給されるようになっている。第1供給口1022は、第1バッファ部1018と連通し、処理容器203の周方向に沿って設けられている。この第1供給口1022を通じて、第1バッファ部1018から処理室201内に第1処理ガスを供給することにより、第1処理ガスを処理容器203の週方向において均等に供給することができる。
【0021】
第1処理ガスは、例えば第1ガスと第2ガスの混合ガスである。第1ガスは、プラズマ励起することで酸素活性種を生成するガス、つまり酸素含有ガスである。酸素含有ガスとしては、酸素(O2)、オゾン(O3)、水蒸気(H2O)、過酸化水素(H2O2)、一酸化窒素(NO)の少なくともいずれか、又はこれらの混合ガスが例示される。第2ガスは、水素含有ガス又は不活性ガスの少なくともいずれかである。本実施形態では、第2ガスとして水素含有ガスを用いる。水素含有ガスとしては、水素(H2)、H2O、H2O2の少なくともいずれか、又はこれらの混合ガスが例示される。不活性ガスとしては、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)等の希ガス、若しくは窒素(N2)の少なくともいずれか、又はこれらの混合ガスが例示される。なお、第1処理ガスは、第1ガスで構成され、且つ第2ガスを含まないガスであってもよい。なお、第1処理ガス及び第2処理ガス中の酸素と水素の比率を容易に調整可能であるという観点からは、酸素含有ガスとしてO2又はO3の少なくともいずれか、水素含有ガスとしてH2を好適に用いることができる。
【0022】
ガス導入路1020には、酸素含有ガスを供給する酸素含有ガス供給管232aの下流端と、水素含有ガスを供給する水素含有ガス供給管232bの下流端と、不活性ガス(例えばN2ガス)を供給する不活性ガス供給管232cと、が合流するように接続されている。酸素含有ガス供給管232aには、酸素含有ガス供給源250a、流量制御装置としてのマスフローコントローラ(MFC)252a、開閉弁としてのバルブ253aが設けられている。水素含有ガス供給管232bには、水素含有ガス供給源250b、MFC252b、バルブ253bが設けられている。不活性ガス供給管232cには、不活性ガス供給源250c、MFC252c、バルブ253cが設けられている。酸素含有ガス供給管232aと水素含有ガス供給管232bと不活性ガス供給管232cとが合流した下流側には、バルブ243aが設けられ、ガス導入路1020の上流端に接続されている。バルブ253a,253b,253c,243aを開閉させ、MFC252a,252b,252cによりそれぞれのガスの流量を調整しつつ、酸素含有ガス供給管232a、水素含有ガス供給管232b、不活性ガス供給管232cを介して、酸素含有ガス、水素ガス含有ガス、不活性ガス等の処理ガスを処理室201内へ供給できるように構成されている。
【0023】
主に、第1供給口1022、酸素含有ガス供給管232a、水素含有ガス供給管232b、不活性ガス供給管232c、MFC252a,252b,252c、バルブ253a,253b,253c,243aにより、本実施形態に係る第1ガス供給系としての第1ガス供給部1100が構成されている。第1ガス供給部1100は、処理室201内に、酸素を含有する酸化種源としてのガスを供給するよう構成されている。
【0024】
(第2ガス供給部)
第2ガス供給系としての第2ガス供給部1200は、第1処理ガスと組成の異なる第2処理ガスを処理室201内に供給する第2供給口としてのノズル孔1008aを有する。ノズル孔1008aは、天井面を構成するプレート1004の中央から下方に延びるように設けられた供給管としてのノズル1008に設けられている。また、ノズル孔1008aは、第1供給口1022よりも下方に設けられている。以下において、第2ガス供給部1200から供給されるガスを第2処理ガスと称する。
図1に示されるように、プレート1004の上面と蓋部1012の下面との間には、第2処理ガスが供給される第2バッファ部1028が設けられている。ノズル1008の上端は、第2バッファ部1028に接続されている。第2バッファ部1028を介して処理室201内に第2処理ガスを供給する構造とすることにより、例えばランプヒータ1002のような部品を蓋部1012の上方に配置する必要ある場合においても、簡易な構成で第2処理ガスをプレート1004の中央から供給できるようになっている。
【0025】
図1においては、ノズル孔1008aは、プラズマ生成部1040を構成する電極の上端と下端の間に設けられている。また、ノズル孔1008aは、プラズマ生成領域の上端と下端の間に設けられている。プラズマ生成領域は、プラズマPが生成される領域であり、詳細は後述する。また、ノズル孔1008aは、後述するプラズマ生成部1040を構成する共振コイル212の中点と略同一の高さに設けられてもよい。換言すれば、ノズル孔1008aは、共振コイル212に供給される高周波電力の波長λに対し、λ又はλ/2の共振コイル212の中点に形成されるリング状プラズマと同じ高さに設けられてもよい。
【0026】
更に、
図7に示されるように、ノズル孔1008aは、プラズマ生成部を構成する電極の上端よりも上方に設けられていてもよい。また、ノズル孔1008aは、プラズマ生成領域の上端よりも上方に設けられていてもよい。
【0027】
また、
図1において、ノズル孔1008aは、処理室201内における処理容器203の内周に沿って筒状又は円環状に形成されるプラズマ生成領域の内周よりも、処理容器203の径方向において内側に位置するように設けられている。
図7や
図8に示す場合についても同様である。つまり、本実施形態では、ノズル1008及びノズル孔1008aは、第2処理ガスを、処理容器203の内周に沿って筒状又は円環状に形成されるプラズマ生成領域の内周よりも、処理容器203の径方向において内側の領域に対して供給するように設けられている。
【0028】
更に、
図8に示されるように、ノズル孔1008aは、プラズマ生成部1040を構成する電極の下端よりも下方に設けられていてもよい。また、ノズル孔1008aは、プラズマ生成領域の下端よりも下方に設けられていてもよい。この場合、サセプタ217は、基板処理時に、該サセプタ217に保持されたウエハ200が電極の下端よりも下方に位置するように制御される。
【0029】
図8に示されるように、ノズル孔1008aは、ノズル1008の先端に設けられた複数の噴出口1008bにより構成されてもよい。この噴出口1008bは、例えばウエハ100の面の垂直方向に対して所定の角度θを有する斜め下方に第2処理ガスを噴出するように構成されている。所定の角度θは、ウエハ200の中心から、ノズル孔1008aからの第2処理ガスの噴出方向とウエハ200とが交わる位置までの距離rが一定となるように、ノズル孔1008aとウエハ200との距離hに応じて設定されている(
図7、
図8参照)。これにより、所定の角度θは、ノズル孔1008aとウエハ100の上面との距離が短いほど大きくなり、長いほど小さくなるように定められている。距離rを一定とすることで、距離hを変化させる際のパラメータの数を少なくし、後述する処理室201内の水素濃度分布の制御を容易とすることができる。
【0030】
図8に示される例では、ノズル1008の先端(下端)が閉じられており、ノズル1008の先端付近の外周面に複数の噴出口1008bが形成されている。ノズル1008の軸方向Sに対する噴出口1008bの角度が、上記した所定の角度θに設定されている。角度θは90°未満とすることにより、噴出口1008bから噴出させた第2処理ガスをウエハ200の表面に向かって直接供給することができる。角度θを90°以上とした場合、噴出口1008bから噴出させた第2処理ガスをウエハ200の表面に向かって直接供給することができないため、ウエハ200の処理面の近傍空間における第2処理ガスの濃度分布(より具体的には水素の濃度分布)を調整することが困難となる。
【0031】
また、距離h又は角度θの少なくともいずれかを調整することにより、噴出口1008bから噴出させた第2処理ガスが直接供給される、ウエハ200の処理面を含む平面領域の広さを調整することができる。例えば、第2処理ガスが直接供給される当該平面領域は、ウエハ200の処理面内の領域、より好ましくは、ウエハ200の外縁を含まないウエハ200の処理面内の領域とすることができる。このように第2処理ガスが直接供給される平面領域の大きさをウエハ200の処理面内の領域に調整することにより、ウエハ200の処理面の近傍空間における第2処理ガスの濃度分布の調整が容易になる。
【0032】
ノズル孔1008aは、第2処理ガスをウエハ200に対して直接噴射する、又はウエハ200の上の空間に直接供給するように構成されている。換言すれば、ノズル孔1008aとウエハ200との間には、ガス拡散板等の構成が設けられていない。
【0033】
なお、ノズル孔1008aは、ノズル1008の先端(下端)に設けられるものに限られず、ノズル1008の軸方向Sの中間部に設けられてもよい。また、例えばノズル1008の突出量を変化させてノズル孔1008aの高さ位置を調整可能な構成としてもよい。
【0034】
第2処理ガスは、例えば第1ガスと第2ガスの混合ガスである。なお、第2処理ガスは、第2ガスで構成され、且つ第1ガスを含まないガスであってもよい。さらに第1処理ガスを第1ガスで構成し、且つ第2ガスを含まないガスとすることにより、簡易な供給系で後述する処理室201内の水素濃度の調整を行うことができる。
【0035】
ガス導入路1030には、酸素含有ガスを供給する酸素含有ガス供給管232dの下流端と、水素含有ガスを供給する水素含有ガス供給管232eの下流端と、不活性ガスを供給する不活性ガス供給管232fと、が合流するように接続されている。酸素含有ガス供給管232dには、酸素含有ガス供給源250d、MFC252d、バルブ253dが設けられている。水素含有ガス供給管232eには、水素含有ガス供給源250e、MFC252e、バルブ253eが設けられている。不活性ガス供給管232fには、不活性ガス供給源250f、MFC252f、バルブ253fが設けられている。酸素含有ガス供給管232dと水素含有ガス供給管232eと不活性ガス供給管232fとが合流した下流側には、バルブ243cが設けられ、ガス導入路1030の上流端に接続されている。バルブ253d,253e,253f,243cを開閉させ、MFC252d,252e,252fによりそれぞれのガスの流量を調整しつつ、酸素含有ガス供給管232d、水素含有ガス供給管232e、不活性ガス供給管232fを介して、酸素含有ガス、水素ガス含有ガス、不活性ガス等の処理ガスを処理室201内へ供給できるように構成されている。
【0036】
主に、ノズル1008、ノズル孔1008a、酸素含有ガス供給管232d、水素含有ガス供給管232e、不活性ガス供給管232f、MFC252d,252e,252f、バルブ253d,253e,253f,243cにより、本実施形態に係る第2ガス供給系としての第2ガス供給部1200が構成されている。第2ガス供給部1200により処理室201内に供給された第2処理ガスは、水素を含有する水素濃度を調整するための水素濃度調整ガスとして機能する。
【0037】
第1ガス供給部1100は、処理室201の内壁に沿ったプラズマ生成空間201a(後述)内の第1の領域である外周領域に、第1処理ガスを供給するよう構成されている。また、第2ガス供給部1200は、外周領域に囲まれた領域であって、プラズマ生成空間201a内の第2の領域である中央領域に、第2処理ガスを供給するよう構成されている。つまり、第1処理ガスは、処理室201内の外周領域に供給され、第2処理ガスは、ウエハ200の処理面の上方領域を含み、且つ外周領域とはウエハ200の面方向において異なる領域である中央領域に供給される。処理室201内の空間は、処理室201の内壁に沿った外周領域と、外周領域に囲まれた中央領域とで構成されている。
【0038】
第1ガス供給部1100と第2ガス供給部1200によれば、第1ガスおよび第2ガスそれぞれについて、酸素含有ガスと水素含有ガスの混合比(流量比)やその総流量を調整することが可能である。よって、処理室201内の外周領域と中央領域との各領域に供給される酸素含有ガスと水素含有ガスの混合比やその総流量を、より一般的には、処理室201内の外周領域と中央領域との各領域に供給される酸素元素と水素元素の比率やその総流量を調整することが可能である。
【0039】
なお、第2ガス供給部1200の構成はこれに限られず、例えば
図9に示される変形例のような構成とすることも可能である。この変形例では、処理室201の天井面を構成するプレート1004を備え、ノズル1008はプレート1004に接続され、又はプレート1004を貫通し、その上端が第2処理ガスを供給する第2ガス供給管234に接続されている。つまり、
図1における第1バッファ部1018が省略されている。
【0040】
(排気部)
下側容器211の側壁には、処理室201内から反応ガスなどを排気するガス排気口235が設けられている。ガス排気口235には、ガス排気管231の上流端が接続されている。ガス排気管231には、圧力調整器としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ242、開閉弁としてのバルブ243b、真空排気装置としての真空ポンプ246が設けられている。
【0041】
主に、ガス排気口235、ガス排気管231、APCバルブ242、バルブ243bにより、本実施形態に係る排気部が構成されている。尚、真空ポンプ246を排気部に含めても良い。
【0042】
(プラズマ生成部(ICP方式))
プラズマ生成部1040は、処理容器203の外周に沿って設けられ、高周波電力が供給される電極により構成され、処理室201内に供給された第1処理ガス及び第2処理ガスをプラズマ励起するよう構成されている。電極は、例えば、処理容器203の外周に巻回して設けられた共振コイル212により構成される。
具体的には、処理室201の外周部、すなわち上側容器210の側壁の外側には、処理室201を囲うように、高周波電極としての、螺旋状の共振コイル212が設けられている。共振コイル212には、RFセンサ272、高周波電源273、高周波電源273のインピーダンスや出力周波数の整合を行う整合器274が接続される。
【0043】
高周波電源273は、共振コイル212に高周波電力(RF電力)を供給するものである。RFセンサ272は高周波電源273の出力側に設けられ、供給される高周波の進行波や反射波の情報をモニタする。RFセンサ272によってモニタされた反射波電力は整合器274に入力され、整合器274は、RFセンサ272から入力された反射波の情報に基づいて、反射波が最小となるよう、高周波電源273のインピーダンスや出力される高周波電力の周波数を制御する。
【0044】
共振コイル212は、所定の波長の定在波を形成するため、一定の波長で共振するように巻径、巻回ピッチ、巻数が設定される。すなわち、共振コイル212の電気的長さは、高周波電源273から供給される高周波電力の所定周波数における1波長の1/2、又は整数倍に相当する長さに設定される。
【0045】
具体的には、印加する電力や発生させる磁界強度または適用する装置の外形などを勘案し、共振コイル212は、例えば、800kHz~50MHz、0.1~5KWの高周波電力によって0.01~10ガウス程度の磁場を発生し得る様に、50~300mm2の有効断面積であって且つ200~500mmのコイル直径とされ、プラズマ生成空間201aの外周側に2~60回程度巻回される。なお、本明細書における「800kHz~50MHz」のような数値範囲の表記は、下限値および上限値がその範囲に含まれることを意味する。例えば、「800kHz~50MHz」とは「800kHz以上50MHz以下」を意味する。他の数値範囲についても同様である。
【0046】
共振コイル212の両端は電気的に接地され、そのうちの少なくとも一端は、装置の最初の設置の際又は処理条件の変更の際に共振コイル212の電気的長さを微調整するため、可動タップ213を介して接地される。
図1中の符号214は他方の固定グランドを示す。可動タップ213は、共振コイル212の共振特性を高周波電源273と略等しくするように位置が調整される。さらに、共振コイル212の接地された両端の間には、可動タップ215によって給電部が構成される。
【0047】
遮蔽板1223は、共振コイル212の外側の電界を遮蔽するために設けられる。
【0048】
主に、共振コイル212、RFセンサ272、整合器274により、本実施形態に係るプラズマ生成部1040が構成されている。尚、プラズマ生成部1040として高周波電源273を含めても良い。
【0049】
ここで、本実施形態に係る装置のプラズマ生成原理および生成されるプラズマの性質について
図2を用いて説明する。本実施形態におけるプラズマ生成部1040は、以下の通り、ICP(Inductively Coupled Plasma)方式によりプラズマを生成するように構成されている。
【0050】
本実施形態においては、プラズマ発生時の共振コイル212における共振のずれを電源側で補償するため、プラズマが発生した際の共振コイル212からの反射波電力をRFセンサ272において検出し、検出された反射波電力に基づいて整合器274が高周波電源273の出力を補正する機能を有する。
【0051】
具体的には、整合器274は、RFセンサ272において検出されたプラズマが発生した際の共振コイル212からの反射波電力に基づいて、反射波電力が最小となる様に高周波電源273のインピーダンス或いは出力周波数を増加または減少させる。
【0052】
本実施形態における共振コイル212では、共振コイル212の電気的長さが、高周波電力の所定周波数における1波長の1/2、又は整数倍に相当する長さに設定されており、
図2に示す様に、プラズマを含む当該共振コイルの実際の共振周波数による高周波電力が供給されるので、位相電圧と逆位相電圧が常に相殺される状態の定在波が形成される。共振コイル212の電気的長さが高周波電力の波長と同じ場合、コイルの電気的中点(電圧がゼロのノード)に最も高い位相電流が生起される。従って、電気的中点の近傍においては、処理室壁やサセプタ217との容量結合が殆どなく、電気的ポテンシャルの極めて低いリング状の誘導プラズマが形成される。
【0053】
かかる構成により、処理室201の外周に巻回するように共振コイル212が設けられている為、共振コイル212に高周波電力が供給されることにより、共振コイル212に近傍であって、処理室201における処理容器203の内周に沿ったプラズマ生成領域に筒状又は円環状のプラズマPが生成される。すなわち、この筒状又は円環状のプラズマPは処理室201内の外周領域内に生成される。特に本実施形態では、共振コイル212の電気的中点が位置する高さ、すなわち共振コイル212の上端と下端の中間高さ位置に円環状のプラズマPが生成される。
【0054】
(プラズマ生成部(MMT方式))
プラズマ生成部1040は、ICP方式に限られず、
図5に示されるように、MMT(Modified Magnetron Typed Plasma Source)方式によりプラズマを生成する構成であってもよい。
【0055】
プラズマ生成電極に高周波電力を印加して電界を形成すると共に、磁界を形成してマグネトロン放電を発生させる。これにより、プラズマ生成電極から放出された電子が、ドリフトしながらサイクロイド運動を続けて周回することで長寿命となって、電離生成率を高めることができる。したがって、MMT装置は高密度プラズマを生成可能である。
【0056】
MMT装置は、処理ガスを励起分解させて、例えば基板表面又は基板に形成された薄膜を酸化や窒化したり、基板上に薄膜を形成したり、基板表面をエッチングしたりする等、各種のプラズマ処理を施すことができる。
【0057】
処理容器203(上側容器210)の外周側には、放電機構として筒状、例えば円環状又は円筒状に形成されたプラズマ生成電極1215が設けられている。プラズマ生成電極1215は、処理室201内のプラズマ生成領域224を囲んでいる。プラズマ生成電極1215には、インピーダンスの整合を行うインピーダンス整合器1272を介して高周波電力を印加する高周波電源273が接続されている。プラズマ生成電極1215とインピーダンス整合器1272との間には、プラズマ生成電極1215のピーク間電圧を測定する電圧測定部1270が接続されている。電圧測定部1270で測定されたプラズマ生成電極1215のピーク間電圧値等のデータは、後述のコントローラ221へ出力されるようになっている。主に、プラズマ生成電極1215、インピーダンス整合器1272、及び高周波電源273によりプラズマ生成部1040が構成されている。なお、電圧測定部1270、インピーダンス整合器1272、及び高周波電源273は、後述のコントローラ221に接続されている。
【0058】
また、プラズマ生成電極1215の外表面の上下端近傍には、磁界形成機構として筒状、例えば円環状又は円筒状に形成された上部磁石1216a及び下部磁石1216bが、プラズマ生成電極1215を上下から挟むように配置されている。上部磁石1216a及び下部磁石1216bは、例えば永久磁石により構成されている。上部磁石1216a及び下部磁石1216bは、処理室201の半径方向に沿った両端(内周端と外周端)に磁極を有する。これら上部磁石1216a及び下部磁石1216bは、磁極の向きが互いに逆向きになるように設けられている。つまり、これら内周部の磁極同士が互いに異極になっている。これにより、上部磁石1216a及び下部磁石1216bの内周面に沿って円筒軸方向に磁力線が形成可能である。
【0059】
(制御部)
制御部としてのコントローラ221は、信号線Aを通じてAPCバルブ242、バルブ243b及び真空ポンプ246を、信号線Bを通じてサセプタ昇降機構268を、信号線Cを通じてヒータ電力調整機構276及びインピーダンス可変機構275を、信号線Dを通じてゲートバルブ244を、信号線Eを通じてRFセンサ272、高周波電源273及び整合器274を、信号線Fを通じてMFC252a~252f及びバルブ253a~253f,243a,243cを、それぞれ制御するように構成されている。
【0060】
図3に示すように、制御部(制御手段)であるコントローラ221は、CPU(Central Processing Unit)221a、RAM(Random Access Memory)221b、記憶装置221c、I/Oポート221dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM221b、記憶装置221c、I/Oポート221dは、内部バス221eを介して、CPU221aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ221には、例えばタッチパネルやディスプレイ等として構成された入出力装置222が接続されている。
【0061】
記憶装置221cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等で構成されている。記憶装置221c内には、基板処理装置の動作を制御する制御プログラムや、後述する基板処理の手順や条件などが記載されたプログラムレシピ等が読み出し可能に格納されている。プロセスレシピは、後述する基板処理工程における各手順をコントローラ221に実行させ、所定の結果を得ることが出来るように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、このプログラムレシピや制御プログラム等を総称して、単にプログラムともいう。なお、本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、プログラムレシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合がある。また、RAM221bは、CPU221aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0062】
I/Oポート221dは、上述のMFC252a~252f、バルブ253a~253f,243a,243b,243c、ゲートバルブ244、APCバルブ242、真空ポンプ246、RFセンサ272、高周波電源273、整合器274、サセプタ昇降機構268、インピーダンス可変機構275、ヒータ電力調整機構276、等に接続されている。
【0063】
CPU221aは、記憶装置221cからの制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置222からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置221cからプロセスレシピを読み出すように構成されている。そして、CPU221aは、読み出されたプロセスレシピの内容に沿うように、I/Oポート221d及び信号線Aを通じてAPCバルブ242の開度調整動作、バルブ243bの開閉動作、及び真空ポンプ246の起動・停止を、信号線Bを通じてサセプタ昇降機構268の昇降動作を、信号線Cを通じてヒータ電力調整機構276によるヒータ217bへの供給電力量調整動作や、インピーダンス可変機構275によるインピーダンス値調整動作を、信号線Dを通じてゲートバルブ244の開閉動作を、信号線Eを通じてRFセンサ272、整合器274及び高周波電源273の動作を、信号線Fを通じてMFC252a~252fによる各種ガスの流量調整動作、及びバルブ253a~253f,243a,243cの開閉動作、等を制御するように構成されている。
【0064】
コントローラ221は、外部記憶装置(例えば、磁気テープ、フレキシブルディスクやハードディスク等の磁気ディスク、CDやDVD等の光ディスク、MOなどの光磁気ディスク、USBメモリやメモリカード等の半導体メモリ)223に格納された上述のプログラムをコンピュータにインストールすることにより構成することができる。記憶装置221cや外部記憶装置223は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成されている。以下、これらを総称して、単に記録媒体ともいう。本明細書において、記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶装置221c単体のみを含む場合、外部記憶装置223単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合が有る。なお、コンピュータへのプログラムの提供は、外部記憶装置223を用いず、インターネットや専用回線等の通信手段を用いて行ってもよい。
【0065】
(半導体装置の製造方法)
半導体装置の製造方法は、基板処理装置100の処理室201にウエハ200(基板)を搬入する工程(例えば基板搬入工程S110)と、第1処理ガス及び第2処理ガスを処理室201に供給する工程(例えば反応ガス供給工程S130)と、ウエハ200をプラズマ処理する工程(例えばプラズマ処理工程S140)と、を有する。
【0066】
基板処理装置100は、処理室201を構成する処理容器203と、第1処理ガスを処理室203内に供給する第1供給口1022を有する第1ガス供給部1100(第1ガス供給系)と、第1処理ガスと組成の異なる第2処理ガスを処理室201内に供給するノズル孔1008a(第2供給口)を有する第2ガス供給部1200(第2ガス供給系)と、処理容器203の外周に沿って設けられ、高周波電力が供給される電極により構成され、処理室201内に供給された第1処理ガスをプラズマ励起するよう構成されたプラズマ生成部1040と、ウエハ200(基板)を保持するサセプタ217(基板保持台)と、を備え、ノズル孔1008aは、処理室201の天井面であって、前記第1供給口よりも前記処理容器の径方向における中央側の位置(より具体的には天井面の中央)から、下方に延びるように設けられたノズル1008に設けられると共に、第1供給口1022よりも下方に設けられている。
【0067】
(2)基板処理工程
次に、本実施形態に係る基板処理工程について、上述の基板処理装置100を用いて、例えばフラッシュメモリ等の半導体デバイスの製造工程の一工程として、例えばシリコン(Si)含有膜が形成されたウエハ200の表面を酸化して例えばシリコン酸化(SiO)膜を形成する方法の例について説明する。以下の説明において、基板処理装置100を構成する各部の動作は、コントローラ221により制御される。
【0068】
(基板搬入工程S110)
【0069】
まず、上記のウエハ200を処理室201内に搬入して収容する。具体的には、サセプタ昇降機構268がウエハ200の搬送位置までサセプタ217を下降させる。その結果、ウエハ突き上げピン266が、サセプタ217表面よりも所定の高さ分だけ貫通孔217aから突出した状態となる。
【0070】
続いて、ゲートバルブ244を開き、処理室201に隣接する真空搬送室から、ウエハ搬送機構(図示せず)を用いて処理室201内にウエハ200を搬入する。搬入されたウエハ200は、ウエハ突上げピン266上に水平姿勢で支持される。処理室201内にウエハ200を搬入したら、ゲートバルブ244を閉じて処理室201内を密閉する。そして、サセプタ昇降機構268がサセプタ217を上昇させることにより、ウエハ200はサセプタ217の上面に支持される。
【0071】
(昇温・真空排気工程S120)
続いて、処理室201内に搬入されたウエハ200の昇温を行う。ヒータ217bは予め加熱されており、ヒータ217bが埋め込まれたサセプタ217上にウエハ200を保持することで、例えば150~750℃の範囲内の所定値にウエハ200を加熱する。また、ランプヒータ1002によっても処理室201が加熱される。また、ウエハ200の昇温を行う間、真空ポンプ246によりガス排気管231を介して処理室201内を真空排気し、処理室201内の圧力を所定の値とする。真空ポンプ246は、少なくとも後述の基板搬出工程S160が終了するまで作動させておく。
【0072】
(反応ガス供給工程S130)
次に、第1ガス供給部1100から処理室201の外周領域に、酸素を含有する酸化種源ガスである第1処理ガスとしての酸素含有ガスと水素含有ガスの混合ガスの供給を開始する。具体的には、バルブ253a及びバルブ253bを開け、MFC252a及びMFC252bにて流量制御しながら、ガス吹出口239を介して処理室201内へ第1処理ガスの供給を開始する。
【0073】
MFC252a及びMFC252bにて流量制御を行うことにより、第1処理ガスの総流量および第1処理ガスの組成(特に水素の含有率)の少なくとも一方が調整される。本実施形態では、水素含有ガスと酸素含有ガスの混合比(流量比)を変えることで第1処理ガスの組成を容易に調整することが可能である。
【0074】
このとき、酸素含有ガスとして例えばO2ガスを、水素含有ガスとして例えばH2ガスを用いる場合、第1処理ガスの総流量を、例えば1000~10000sccmとし、第1処理ガス中の酸素含有ガスの流量を、例えば20~4000sccm、好ましくは20~2000sccmの範囲内の所定値とする。また、第1処理ガス中の水素含有ガスの流量を、例えば20~1000sccm、好ましくは20~500sccmの範囲内の所定値とする。第1処理ガスに含まれる水素と酸素の含有比率は、0:100~95:5の範囲の所定の値とする。
【0075】
処理室201の外周領域であって、後述するプラズマ処理工程S140において形成されるリング状のプラズマが生成される領域に対して直接第1処理ガスを供給することが望ましい。
【0076】
同時に、第2ガス供給部1200から処理室201の中央領域に、水素濃度調整ガスである第2処理ガスとしての酸素含有ガスと水素含有ガスの混合ガスの供給を開始する。具体的には、バルブ253d及びバルブ253eを開け、MFC252d及びMFC252eにて流量制御しながら、ノズル1008に設けられたノズル孔1008aを介して処理室201内へ第2処理ガスの供給を開始する。
【0077】
MFC252d及びMFC252eにて流量制御を行うことにより、第2処理ガスの総流量および第2処理ガスの組成(特に水素の含有率)の少なくとも一方が調整される。第1処理ガスと同様に、酸素含有ガスと水素含有ガスの混合比を変えることで第2処理ガスの組成を容易に調整することが可能である。
【0078】
このとき、酸素含有ガスとして例えばO2ガスを、水素含有ガスとして例えばH2ガスを用いる場合、第2処理ガスの総流量を、第1処理ガスの総流量と同等又はそれ以下であって、例えば100~5000sccmとし、第2処理ガス中の酸素含有ガスの流量を、例えば0~5000sccm、好ましくは0~500sccmの範囲内の所定値とする。また、第2処理ガス中の水素含有ガスの流量を、例えば0~5000sccm、好ましくは0~500sccmの範囲内の所定値とする。本実施形態では、第2処理ガスに含まれる水素含有ガスの比率(すなわち第1処理ガスの水素含有率)を0~100%の範囲内の所定値とする。第2処理ガスの流量が第1処理ガスの流量よりも大きい場合、処理室201内のプラズマ生成領域における水素と酸素の濃度や含有比率が第2処理ガスによる影響を大きく受けるため、プラズマ生成領域におけるプラズマ励起の制御やプラズマにより生成される酸化種の生成制御などが困難となるためである。
【0079】
すなわち、本実施形態では、コントローラ221は、少なくともMFC252a、252b、252d、252eを制御して、第1処理ガスと第2処理ガスにおける第1ガスと第2ガスの濃度比、又は前記第1処理ガスと前記第2処理ガスの流量比の少なくとも一方を調整する。
【0080】
本実施形態では、ノズル孔1008aから水素を含む第2処理ガスを供給することで、プラズマ励起により生成される活性種によりウエハ200の表面に対する処理を行う際、当該処理による基板面内分布を調整することが容易となる。換言すれば、面内分布の制御性を向上させることができる。
【0081】
処理室201内で生成されるプラズマ密度に偏り、特に処理室201の中央を中心とした径方向の偏りが生じる場合において、プラズマ密度によるウエハ200の表面に対する処理の面内分布の偏りを調整、具体的には、低減等することが容易となる。
【0082】
また、ノズル1008を処理室201の天井面であるプレート1004から下方に延びるように設けることにより、プラズマ生成部1040の電極(例えば、共振コイル212)を処理容器203の側方に配置した場合であっても、ノズル1008と電極との干渉がなく、装置設計が容易となる。
【0083】
ノズル孔1008aを有するノズル1008の長さ(ノズル孔1008aからウエハ200までの距離)は、第2処理ガスの流量や処理室201内の圧力(処理圧力)、RF電力値等の要素や、所望のプラズマ処理の基板面内分布によって、最適な値が異なる。本実施形態では、ノズル1008の長さを変えることにより、プラズマ処理の面内分布を調整することができる。
【0084】
ノズル1008が長いほど、つまりウエハ200までの距離が短いほど、第2処理ガスの供給による、第1供給口1022から供給される第1処理ガスの処理室201内の流れへの影響を小さくすることができる。また、ノズル孔1008aとウエハ200の表面との距離を小さくすることにより、ノズル孔1008aからのガス供給を用いたウエハ200近傍の空間におけるガス分布の調整が容易となる。これらの効果を得るためには、特に、ノズル孔1008aを、プラズマ生成部1040を構成する電極の下端よりも下方に設ける、若しくは、ノズル孔1008aを、プラズマ生成領域の下端よりも下方に設けることが好ましい。
【0085】
一方、ノズル1008が短いほど、つまりウエハ200までの距離が長いほど、第2処理ガスの供給による、第1供給口1022から供給される第1処理ガスの処理室201内の流れへの影響が大きくなる。そのため、第2処理ガスの供給により、第1処理ガスの処理室201内の流れを調整するため、ノズル1008を短くすることができる。これらの効果を得るためには、特に、ノズル孔1008aを、プラズマ生成部1040を構成する電極の上端よりも上方に設ける、若しくは、ノズル孔1008aを、プラズマ生成領域の上端よりも上方に設けることが好ましい。
【0086】
また、ノズル孔1008aは、プラズマ生成部1040を構成する電極の上端と下端の間に設けられてもよく、プラズマ生成領域の上端と下端の間に設けられてもよい。このようにノズル孔1008aを設けることにより、プラズマ生成領域に第2処理ガスが直接供給されることを抑制し、プラズマ生成領域における活性種の生成状態を制御することが容易となる。更にノズル孔1008aは、プラズマ生成部を構成する共振コイル212の中点と略同一の高さに設けられてもよい。このようにノズル孔1008aを設けることにより、最もプラズマ密度の大きいプラズマ生成領域に第2処理ガスが直接供給されることを抑制し、プラズマ生成領域における活性種の生成状態を制御することが容易となる。
【0087】
(水素の濃度分布制御)
本工程においては、第1処理ガス、第2処理ガスのそれぞれについて、流量および水素含有率の少なくとも一方を制御することにより、処理室201内、特にウエハ200の処理面の近傍空間における水素濃度分布を制御することが可能である。水素濃度分布は、後述するプラズマ処理工程における酸化種の密度分布が所望のものとなるように制御される。第2処理ガスの水素含有率は、第1処理ガスの水素含有率と異なるように調整されることが望ましい。第1処理ガスとは水素含有率が異なる第2処理ガスを用いることにより、第1処理ガスと第2処理ガスの流量をそれぞれ制御して、処理室201内の水素濃度分布を調整することが容易になる。第2処理ガスの水素含有率を第1処理ガスの水素含有率よりも高くして調整することもでき、第1処理ガスに含まれる水素の含有率よりも低くして調整することもできる。
【0088】
処理室201内の圧力は、例えば5~260Paの範囲内の所定圧力となるように、APCバルブ242の開度を調整して処理室201内の排気を制御する。このように、処理室201内を適度に排気しつつ、後述のプラズマ処理工程S140の終了時まで第1処理ガスおよび第2処理ガスの供給を継続する。
【0089】
(プラズマ処理工程S140)
処理室201内の圧力が安定したら、共振コイル212に対して高周波電源273から高周波電力の印加を開始する。これにより、第1処理ガスが供給されているプラズマ生成空間201a内に高周波電磁界が形成され、係る電磁界により、プラズマ生成空間の共振コイル212の電気的中点に相当する高さ位置に、最も高いプラズマ密度を有するリング状の誘導プラズマが励起される。酸素及び水素を含むプラズマ状の第1処理ガスは解離し、Oを含むOラジカルやヒドロキシラジカル(OHラジカル)等の酸素ラジカル、原子状酸素(O)、オゾン(O3)、酸素イオン等の酸素を含有する活性種が生成される。これらの酸素を含有する活性種は、酸化種として作用する。
【0090】
本工程において、第1処理ガスは、プラズマが第2のプラズマ密度で生成される領域であるプラズマ生成領域に供給される。本実施形態では、共振コイル212に近い処理室201内の外周領域内であって、リング状のプラズマが励起される領域であるプラズマ生成領域に対して第1処理ガスが供給され、主に第1処理ガスがプラズマ励起されることによって、上述の活性種が生成される。
【0091】
一方、本工程において、第2処理ガスは、プラズマが第2のプラズマ密度よりも低い第1のプラズマ密度で生成される領域、又はプラズマが生成されない領域(第1のプラズマ密度が実質的に0である領域)であるプラズマ非生成領域に供給される。すなわち、第2処理ガスは、第1処理ガスとはプラズマの密度が異なる領域に供給される。本実施形態では特に、リング状のプラズマの内側に形成されるプラズマ非生成領域に第2処理ガスが供給される。
【0092】
つまり本実施形態においては、処理室201の外周領域の少なくとも一部が、処理室201の内壁に沿ったリング状のプラズマが生成されるプラズマ生成領域となり、処理室201の中央領域が、プラズマ非生成領域となる。
【0093】
(活性種の密度分布制御)
ここで、プラズマによって生成された酸素を含有する活性種は、雰囲気中の水素と反応するとその酸化種としての能力(酸化能力)を失うか、又は低下させる(すなわち失活する)。そのため、活性種が存在する雰囲気中の水素濃度に応じて、その雰囲気中における活性種の密度(濃度)の減衰速度(減衰量)が変化する。水素濃度が高いほど活性種の減衰量は増大し、水素濃度が低いほど活性種の減衰量は低下する。
【0094】
本実施形態では、プラズマ生成領域で生成された活性種がプラズマ非生成領域において拡散する際に、プラズマ非生成領域中の水素と反応して徐々に失活していく。したがって、プラズマ非生成領域で拡散する活性種の密度は、当該領域内の水素濃度によってその減衰量が調整されうる。すなわち、プラズマ非生成領域における活性種の密度分布は、当該領域内の水素濃度分布を制御することによって任意に調整されうる。
【0095】
具体的には、上述の反応ガス供給工程において、プラズマ非生成領域に主に供給される第2処理ガスの流量又は水素の含有率の少なくともいずれかを調整することにより、当該領域内におけるウエハ200の面内方向における水素濃度分布を制御する。そして、この水素濃度分布を制御することにより、ウエハ200の上方空間で拡散する活性種の密度分布を調整する。このようにしてウエハ200の面内方向における密度分布が調整された活性種がウエハ200表面に供給される。
【0096】
プラズマ非生成領域における水素の濃度分布は、プラズマ生成領域からの距離、より具体的には、処理室201の外周から中央に向かう方向におけるリング状のプラズマが形成された領域からの距離に応じて制御される。
【0097】
外周領域において形成されたリング状のプラズマにより生成された活性種は、ウエハ200の外周から中心方向に向かってウエハ200の処理面の上方領域(上方空間)で拡散されながらウエハ200に供給される。本実施形態においては、リング状のプラズマが処理室201の内周方向において略均一な密度(強度)で形成され、そのプラズマにより生成される活性種の密度も、処理室201の内周方向においては略均一とみなすことが可能である。したがって、処理室201の径方向(すなわちウエハ200の径方向)におけるプラズマ生成領域からの距離に応じて水素の濃度分布に勾配をつけることによって、処理室201の内周方向において活性種の密度分布を均一としながら、ウエハ200の面内方向における活性種の密度分布を任意の分布となるように制御することができる。
【0098】
また、本実施形態では、密度分布が制御される活性種の種類は特に限定されないが、処理室201内において電磁界により加速されずに拡散する酸素ラジカルや原子状酸素の密度分布を制御するのに本実施形態は好適である。
【0099】
その後、所定の処理時間、例えば10~900秒が経過したら、高周波電源273からの電力の出力を停止して、処理室201内におけるプラズマ放電を停止する。また、バルブ253a,253b,253d,253eを閉めて、第1処理ガス及び第2処理ガスの処理室201内への供給を停止する。以上により、プラズマ処理工程S140が終了する。
【0100】
(真空排気工程S150)
第1処理ガス及び第2処理ガスの供給を停止したら、ガス排気管231を介して処理室201内を真空排気する。これにより、処理室201内の第1処理ガス、第2処理ガス、これらガスの反応により発生した排ガス等を処理室201外へと排気する。その後、APCバルブ242の開度を調整し、処理室201内の圧力を処理室201に隣接する真空搬送室と同じ圧力に調整する。
【0101】
(基板搬出工程S160)
その後、サセプタ217をウエハ200の搬送位置まで下降させ、ウエハ突上げピン266上にウエハ200を支持させる。そして、ゲートバルブ244を開き、ウエハ搬送機構を用いてウエハ200を処理室201外へ搬出する。以上により、本実施形態に係る基板処理工程を終了する。
【0102】
[他の実施形態]
以上、本開示の実施形態の一例について説明したが、本開示の実施形態は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。