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  • 特許-粘着テープ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-02
(45)【発行日】2023-10-11
(54)【発明の名称】粘着テープ
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20231003BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J201/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019078092
(22)【出願日】2019-04-16
(65)【公開番号】P2020176185
(43)【公開日】2020-10-29
【審査請求日】2022-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177426
【弁理士】
【氏名又は名称】粟野 晴夫
(74)【代理人】
【識別番号】100178685
【弁理士】
【氏名又は名称】田浦 弘達
(72)【発明者】
【氏名】古川 智
(72)【発明者】
【氏名】竹内 友一
【審査官】川嶋 宏毅
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-098356(JP,A)
【文献】特開2010-194699(JP,A)
【文献】特開2010-150512(JP,A)
【文献】国際公開第03/025078(WO,A1)
【文献】特開2004-075844(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂フィルムである基材層と、当該基材層の一方側の表面上に設けられた第1粘着剤層と、当該基材層の他方側の表面上に設けられた第2粘着剤層とを備え、
少なくとも、前記第1粘着剤層の一方側の表面には、当該表面より窪む凹部が設けられ、
前記凹部は、前記第1粘着剤層の端部で開口し、
前記第1粘着剤層の接着力は、前記第2粘着剤層の接着力よりも低いとともに、6~14N/20mmであり、
前記第2粘着剤層の接着力は、14~22N/20mmであり、
前記第1粘着剤層の85℃における損失正接は0.1~0.5であり、
前記第2粘着剤層の85℃における損失正接は0.5~1.0であり、
前記第1粘着剤層の接着力と前記第2粘着剤層の接着力との差が3~16N/20mmであることを特徴とする、粘着テープ。
【請求項2】
前記凹部は、幅が5~150μmであり、深さが5~80μmである、請求項1に記載の粘着テープ。
【請求項3】
前記樹脂フィルムの厚さは、5~75μmである、請求項1または2に記載の粘着テープ。
【請求項4】
前記第1粘着剤層は、前記凹部を複数有し、
前記第1粘着剤層の表面を一方側から見たときに、1つの前記凹部が他の前記凹部と交わる交点において、1つの前記凹部が2つ以上の他の前記凹部と交わる、請求項1~のいずれかに記載の粘着テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
粘着テープは、作業性に優れ、且つ、接着信頼性が高いので、接合手段として種々の産業分野において、様々な大きさの部材について、部材間の固定に広範に用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-111232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、粘着テープを用いて部材同士を貼り合わせる際、従来の粘着テープでは部材と粘着テープとの間に空気溜まりが発生することがあり、部材同士を十分に固定しにくくなったり、又は、空気溜まりにより凹凸が発生する問題があった。このような問題を改善するための技術として、表面にエンボス加工(表面に凸が形成)された剥離ライナーを使用することで粘着テープの粘着剤層の表面に窪みを形成し、当該窪みが部材間の貼り合わせの際に空気を排出しやすくし空気溜まりを低減する技術がある(例えば特許文献1)。しかし、当該技術は、粘着テープの両面に同じ粘着剤を用いているので、例えば誤って貼り合わせた後に位置合わせするために、または、貼り合わせた部材を回収してリワークするために、粘着テープから部材を剥がす場合(部材同士を分離させる場合)において、部材を粘着テープから剥がしにくかったり、部材同士を剥がした際の各部材への粘着テープの残留状態がまちまちになったりし、作業性の向上が望まれていた。
【0005】
そこで、本発明は、部材の固定時に粘着テープと部材の間に空気溜まりが発生するのを抑制するとともに、部材同士を剥がす際の作業性を向上させることが可能な粘着テープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は下記の通りである。
〔1〕樹脂製フィルムである基材層と、当該基材層の一方側の表面上に設けられた第1粘着剤層と、当該基材層の他方側の表面上に設けられた第2粘着剤層とを備え、
少なくとも、前記第1粘着剤層の一方側の表面には、当該表面より窪む凹部が設けられ、
前記凹部は、前記第1粘着剤層の端部で開口し、
前記第1粘着剤層の接着力は、前記第2粘着剤層の接着力よりも低いとともに、6~14N/20mmであり、
前記第2粘着剤層の接着力は、14~22N/20mmであることを特徴とする、粘着テープ。
〔2〕前記凹部は、幅が5~150μmであり、深さが5~80μmである、上記〔1〕に記載の粘着テープ。
〔3〕前記第1粘着剤層の85℃における損失正接は0.1~0.5であり、
前記第2粘着剤層の85℃における損失正接は0.5~1.0である、上記〔1〕または〔2〕に記載の粘着テープ。
〔4〕前記第1粘着剤層の接着力と前記第2粘着剤層の接着力との差が3~16N/20mmである、上記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の粘着テープ。
〔5〕前記樹脂フィルムの厚さは、5~75μmである、上記〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の粘着テープ。
〔6〕前記第1粘着剤層は、前記凹部を複数有し、
前記第1粘着剤層の表面を一方側から見たときに、1つの前記凹部が他の前記凹部と交わる交点において、1つの前記凹部が2つ以上の他の前記凹部と交わる、上記〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の粘着テープ。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、部材の固定時に粘着テープと部材の間に空気溜まりが発生するのを抑制するとともに、部材同士を剥がす際の作業性を向上させることが可能な粘着テープを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る粘着テープを示す、断面図である。
図2図1に示す粘着テープを、剥離ライナーを除いた状態で示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態(以下、「本実施形態」という。)を、図面を用いて詳細に説明するが、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
《粘着テープ》
本実施形態の粘着テープは、種々の分野、用途において用いることができ、特に限定されないが例えば、電子機器中の部材の固定、印刷、具体的にはフレキソ印刷における印版の固定に用いることができる。
本実施形態の粘着テープ1は、図1の断面図に示すように、樹脂製フィルムである基材層2と、基材層2の一方側の表面上に設けられた第1粘着剤層3と、基材層2の他方側の表面上に設けられた第2粘着剤層とを備えている。また、本実施形態の粘着テープ1では、少なくとも、第1粘着剤層3の一方側の表面には、当該表面より窪む凹部31が設けられ、当該凹部31が、第1粘着剤層3の端部で開口している。さらに、本実施形態の粘着テープ1では、第1粘着剤層3の接着力が、第2粘着剤層4の接着力よりも低いとともに、6~14N/20mmであり、第2粘着剤層4の接着力は、14~22N/20mmである。
本実施形態の粘着テープ1によれば、部材の固定時に粘着テープ1と部材の間に空気溜まりが発生するのを抑制し、また、部材を粘着テープ1から剥がす際(固定した部材同士を分離させる際)の作業性を向上させることができる。具体的には、本実施形態の粘着テープ1の第1粘着剤層3が凹部31を有するので、粘着テープ1を用いて部材同士を貼り合わせる際、空気が凹部31を流路として第1粘着剤層3の端部から抜け、部材と粘着テープ1との間に空気溜まりが発生することを十分に抑制することができる。
また、本実施形態の粘着テープ1は、第1粘着剤層3の接着力が、第2粘着剤層4の接着力よりも低いとともに、それぞれ所定の範囲の接着力を有するので、例えば誤って貼り合わせた後に位置合わせするためや、貼り合わせた部材を回収してリワークするために、粘着テープ1から部材を剥がす場合(一方の部材と他方の部材を分離させる場合)において、粘着剤層の接着力の差により、粘着テープ1の第2粘着剤層4が一方の部材の表面に貼り付いたままの状態で、第1粘着剤層3側で他方の部材から剥がすことができる。したがって、部材同士を剥がした際の粘着テープ1の残留状態が定まりやすいので、作業性を向上させることができる。
特に、例えば部材を貼り合わせた後に位置合わせして再接着する場合、部材を剥がした後の粘着テープ1は、粘着テープ1の第2粘着剤層4が部材に貼り付き、凹部31を有する第1粘着剤層3が再貼合せ可能な状態となる。したがって、部材同士を再び貼り合わせする場合であっても、凹部31によって空気溜まり抑制しながら貼り合わせすることができる。
【0010】
以下、粘着テープ1の各層について説明する。
〈樹脂フィルム〉
本実施形態の粘着テープ1において、基材層2は樹脂フィルムにより形成される。樹脂フィルムにより形成することにより、適切な厚さの粘着テープ1を得ることができる。
本実施形態において、樹脂フィルムとしては、特に限定されないが、例えばポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリイミドフィルム等のプラスチックフィルムを挙げることができ、粘着テープ1の作業性の観点からポリエステルフィルムが好ましい。
【0011】
また、本実施形態において樹脂フィルムの厚さは、5~75μmであることが好ましく、より好ましくは10~45μmであり、さらに好ましくは10~20μmである。厚さが当該範囲内であることにより、粘着テープ1の取扱性が向上する。また厚さが75μm以下であることにより、樹脂フィルムのコストを抑えることができ、部材同士を容易に剥がすことができる。
なお、本実施形態において、厚さは、JIS K6250に従いダイヤルゲージを用いた方法で測定し、具体的には、粘着テープ1への接触面が径8mmの平面であるダイヤルゲージを、0.51Nの力で接触させた際に測定された値である。
【0012】
なお、本実施形態において、基材層2と粘着剤との密着性を向上させるため、樹脂フィルムにはプライマー処理、コロナ処理、プラズマ処理等の易接着処理を施すことができる。
【0013】
〈第1粘着剤層、第2粘着剤層〉
本実施形態の粘着テープ1では、基材層2の一方側の表面上に第1粘着剤層3、基材層2の他方側の表面上に第2粘着剤層が設けられている。
【0014】
本実施形態において、第1粘着剤層3の接着力は、第2粘着剤層4の接着力よりも低いとともに、6~14N/20mmである。また、第2粘着剤層4の接着力は14~22N/20mmである。
また、第1粘着剤層3の接着力は、好ましくは、6~14N/20mmであり、より好ましくは7~12N/20mmであり、さらに好ましくは8~11N/20mmである。第2粘着剤層4の接着力は、好ましくは、14~22N/20mmであり、より好ましくは16~21N/20mmであり、さらに好ましくは18~21N/20mmである。
本実施形態において、第1粘着剤層3の接着力を第2粘着剤層4の接着力よりも低くすることより、上述のように、粘着テープ1を用いて部材同士を貼り合わせた後、部材を剥がす場合において、当該剥離作業の作業性を向上させることができる。また第1粘着剤層3の接着力を6N/20mm以上にし、第2粘着剤層4の接着力を22N/20mm以下にすることにより、粘着テープ1による適切な接着力を得ることができる。また、第1粘着剤層3の接着力を14N/20mm以下にし、また、第2粘着剤層4の接着力を14N/20mm以上にすることにより、部材同士を剥がした後に、粘着テープ1の第2粘着剤層4が部材の表面に貼り付いたままの状態で、粘着テープ1の第1粘着剤層3側で剥がしやすくすることができる。
【0015】
また、本実施形態において、第1粘着剤層3の接着力と第2粘着剤層4の接着力との差は3~16N/20mmであることが好ましく、より好ましくは4~14N/20mmであり、さらに好ましくは5~12N/20mmである。当該差を3N/20mm以上にすることにより、部材を剥がした後に、粘着テープ1の第2粘着剤層4が部材の表面に貼り付いたままの状態にしやすくすることができる。また、当該差を16N/20mm以下にすることにより、部材から第2粘着剤層4も剥がせることで部材を再利用等することができる。
【0016】
なお、本実施形態において、接着力は、実施例に記載の方法での方法で測定することができる。
また、本実施形態において、第1粘着剤層3、第2粘着剤層4の接着力を上記の範囲にするには、粘着剤層の粘着剤組成、分子量、架橋剤などを特定の範囲することにより調整することができる。
【0017】
本実施形態において、第1粘着剤層3の85℃における損失正接は0.1~0.5であり、第2粘着剤層4の85℃における損失正接は0.5~1.0であることが好ましい。
第1粘着剤層3の85℃における損失正接を0.1以上にすることにより、部材との密着が良好となり、優れた接着性を有することが出来る。
また、第1粘着剤層3の85℃における損失正接を0.5以下にすることにより、第1粘着剤層3の凹部31の形状を保持しやすく、粘着テープ1を貼り合わせした後において、部材同士を剥がす際の作業性を向上させることができる。具体的には、粘着テープ1から剥離ライナー5を剥がした後にも凹部31の形状が保持されやすく、一方で粘着テープ1を用いて部材同士を貼り合わせる際には、粘着テープ1が加圧されることで凹部31が閉塞し部材同士を確実に貼り合わせることができる。また、例えば部材同士を貼り合わせた後に位置合わせするとき、部材同士を剥がした後にも粘着テープ1の凹部31の形状を保持することができ、再貼り合わせする際に、空気溜まりが形成するのを抑制することができる。
第2粘着剤層4の85℃における損失正接を0.5以上にすることにより、各部材との密着が良好することができる。また損失正接を1.0以下にすることにより、粘着テープ1の保存性を向上させることができる。具体的には、例えば、粘着テープ1の縁からの糊のはみ出し等を抑制し、ロール形状を保持することができる。
【0018】
なお、本実施形態において、損失正接は、粘弾性試験機(レオメトリックス社製、商品名:アレス2KSTD)を用いて測定することができる。具体的には、同試験機の測定部である平行円盤の間に試験片を挟み込み、温度85℃、周波数1Hzでの損失正接を測定し求める。上記測定で使用する試験片としては、粘着剤層の粘着剤を用いて作製する厚さ1mmで直径8mmの円形試験片を使用する。
また、本実施形態において、第1粘着剤層3、第2粘着剤層4の85℃における損失正接を上記の範囲にするには、粘着剤層の粘着剤組成、分子量、架橋剤などを特定の範囲にすることにより調整することができる。
【0019】
第1粘着剤層3の好ましい厚さは、20~70μmであり、より好ましくは30~65μmであり、さらに好ましくは35~55μmである。第2粘着剤層4の好ましい厚さは、40~90μmであり、より好ましくは50~80μmであり、さらに好ましくは55~75μmである。
第1粘着剤層3および第2粘着剤層4を上記の厚さにすることにより、適切な接着力を発現しやすくするとともに、作業性のよい粘着テープ1を得やすくすることができる。
【0020】
なお、第1粘着剤層3、第2粘着剤層4の厚さは、粘着テープ1の任意の5箇所の厚さを測定した値を平均した値とする。具体的には、粘着テープ1の任意の5箇所の付近を試験片として切り出し、各試験片を液体窒素中に1分間浸漬した後、ピンセットを用いて液体窒素中で、粘着テープ1の幅方向を折り目として折り曲げて割り、該粘着テープ1の厚さ方向の割断面観察用の切片を作製する。前記切片をデシケータ内で常温に戻した後、前記割断面に対して電子線が垂直に入射するように試料台に固定し、電子顕微鏡(Miniscope(登録商標) TM3030Plus、日立ハイテクノロジー株式会社製)を用いて、前記割断面の観察を行う。電子顕微鏡のスケールを元に、前記粘着テープ1における第1粘着剤層3、第2粘着剤層4の厚さを5箇所(凹部31以外の部分)測定し、その平均値を各層の厚さとする。なお、第1粘着剤層3、第2粘着剤層4の厚さは、粘着剤層の表面から基材層2の表面までを積層方向に沿って測った長さである。
【0021】
ここで、本実施形態の粘着テープ1に用いる第1粘着剤層3及び第2粘着剤層4を構成する粘着剤としては、公知のアクリル系、シリコーン系やゴム系の粘着性樹脂を使用することができ、第1粘着剤層3および第2粘着剤層4は、相互に異なる種類の粘着剤としてもよく、同じ種類の粘着剤としてもよい。
【0022】
ゴム系粘着剤としては、スチレン-イソプレン-スチレン等のブロックコポリマー系や、ポリブタジエン、ポリブチレン等の合成ゴム系粘着剤、及び天然ゴム等を使用できる。天然ゴムを使用する場合、硫黄を含有しないことが好ましい。硫黄を含有すると、例えば粘着テープ1を電子機器に用いた場合、接点不良等を生じる恐れがある。
【0023】
また、シリコーン系粘着剤としては、過酸化物架橋タイプや付加縮合タイプを単体または混合で使用してもよい。さらにアクリル系やゴム系粘着剤と混合して使用することもできるし、アクリル系粘着剤のポリマー主鎖や側鎖にシリコーン成分をペンダントした粘着剤を使用してもよい。
【0024】
粘着剤としてアクリル系樹脂を用いる場合は、単量体成分として炭素数1~14のアルキル側鎖を有するアクリル酸エステルを含有するラジカル重合性モノマーを反応させた樹脂を用いることが好ましい。炭素数1~14のアルキル側鎖を有するアクリル酸エステルとしては、例えば、
(1群)メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、sce-ブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、n-ヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、n-オクチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、イソノニルアクリレート、イソデシルアクリレート、ラウリルアクリレートメチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、sce-ブチルメタクリレート、t-ブチルメタクリレート、n-ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、n-オクチルメタクリレート、イソオクチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、イソノニルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート等があげられる。その中でも、アクリル酸エステルとしては、炭素数が4~9のアルキル側鎖を有するメタアクリル酸アルキルエステル又は炭素数が4~9のアルキル側鎖を有するアクリル酸アルキルエステルを使用することが好ましく、また、炭素数が4~9のアルキル側鎖を有するアクリル酸アルキルエステルを使用することがより好ましい。
【0025】
また、単量体成分として、側鎖に水酸基、カルボキシル基、アミノ基などの極性基を有する、アクリル酸エステルやその他のビニル系単量体を添加するのが好ましい。
水酸基を含有するモノマーとしては、
(2群)2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。水酸基を含有するモノマーとしては、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等が好ましい。
【0026】
また、水酸基以外の極性基を有するモノマーとしては、
(3群)アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、クロトン酸、アクリル酸ダイマー、エチレンオキサイド変性コハク酸アクリレートなどのカルボキシル基を有するモノマー、N-ビニル-2-ピロリドン、n-ビニルカプロラクタム、アクリロイルモルホリン、アクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、2-(パーヒドロフタルイミド-N-イル)エチルアクリレートなどのアミド基を有するモノマー、アクリロニトリル、無水マレイン酸、無水イタコン酸などが挙げられる。
【0027】
特に、本実施形態の粘着テープ1に用いる第1粘着剤層3を構成する粘着剤としては、上記(1群)のモノマーに加えて、下記式(I)で表される化合物、下記式(II)で表される化合物及び下記式(III)で表される化合物を含有する重合性モノマーを反応して得られる粘着性樹脂を用いることが好ましい。
【0028】
【化1】
(式中、Xは水素原子又はメチル基、R1は分岐鎖を有していてもよい炭素数1~12のアルキレン基、R2は分岐鎖を有していてもよい炭素数1~12のアルキル基を表す。)
【0029】
【化2】
(式中、Xは水素原子又はメチル基、R1は分岐鎖を有していてもよい炭素数1~12のアルキレン基を表す。)
【0030】
【化3】
(式中、Xは水素原子又はメチル基を表す。)
【0031】
また粘着性樹脂のTgは-60~-10℃が好ましい。そのなかでも-50~-20℃であることがより好ましく、-40~-20℃が特に好ましい。-60℃未満であると粘着剤の凝集力が低下し、耐熱性が低下しやすくなる。-10℃を越えると、落下での剥がれ割れが発生しやすくなる。
【0032】
上記式(I)で表される化合物としては、式(I)中、Xが水素原子であり、R1が-CH2CH2-であり、R2が-CH3、-CH2CH3、-CH2CH2CH3、-CH2CH2CH2CH3であることが好ましく、Xが水素原子であり、R1が-CH2CH2-であり、R2が-CH3であることが特に好ましい。
また、上記式(II)で表される化合物としては、式(II)中、Xが水素原子であり、R1が-CH2CH2-、-CH2CH2CH2-、-CH2CH2CH2CH2-であることが好ましく、Xが水素原子であり、R1が-CH2CH2-であることが特に好ましい。
更に、式(III)中、Xが水素原子であることが好ましい。
上記式(I)で表される化合物は、全モノマーに対して2~15質量%使用するのが好ましく、5~10質量%使用するのがより好ましい。また、上記式(II)で表される化合物は、全モノマーに対して0.5~15質量%使用するのが好ましく、2~10質量%使用するのがより好ましい。更に、式(III)で表される化合物は、全モノマーに対して0.05~5質量%使用するのが好ましく、0.1~3質量%使用するのがより好ましい。
本実施形態の第1粘着剤層3に用いる樹脂として、上記の如く式(I)~式(III)で表されるモノマーを反応させた樹脂を用いると、第1粘着剤層3の接着力を6~14N/20mmとなるようにした場合であっても、リペア時及びテープ加工時に摩擦や引っ掻き等の機械的シェアを受けても粘着剤層の脱落や傷つき等の欠損が起きにくい。
【0033】
アクリル系共重合体は、溶液重合法、隗状重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の公知の重合方法で共重合させることにより得ることができる。重合の開始方法も、過酸化ベンゾイルや過酸化ラウロイル等の過酸化物系、アゾビスイソブチルニトリル等のアゾ系の熱重合開始剤を用いた熱による開始方法や、アセトフェノン系、ベンゾインエーテル系、ベンジルケタール系、アシルフォスフィンオキシド系、ベンゾイン系、ベンゾフェノン系の光重合開始剤を用いた紫外線照射による開始方法や、電子線照射による方法を任意に選択できる。
【0034】
また、前記アクリル系共重合体の重量平均分子量は、40万~220万であることが好ましく、より好ましくは50万~180万であり、さらに好ましくは60万~160万である。重量平均分子量を上記範囲にすることで部材との密着が良好となり、優れた接着性を有することが出来る。なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエッションクロマトグラフ(GPC)で測定される標準ポリスチレン換算での重量平均分子量である。
【0035】
前記GPC法による分子量の測定は、東ソー株式会社製GPC装置(HLC-8329GPC)を用いて測定し、ポリスチレン換算した値である。
【0036】
サンプル濃度:0.5質量%(テトラヒドロフラン溶液)
サンプル注入量:100μL
溶離液:THF
流速:1.0mL/分
測定温度:40℃
本カラム:TSKgel GMHHR-H(20)2本
ガードカラム:TSKgel HXL-H
検出器:示差屈折計
スタンダードポリスチレン分子量:1万~2000万(東ソー株式会社製)
【0037】
また第1粘着剤層3および第2粘着剤層4の凝集力を上げるために、粘着剤に架橋剤を添加してもよい。架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、キレート系架橋剤、光硬化型架橋剤等が挙げられる。架橋剤の添加量としては、第1粘着剤層3はゲル分率が50~99%に調整するのが好ましく、そのなかでも60~90%に調整するのが最も好ましい。一方、第2粘着剤層4はゲル分率が10~50%に調整するのが好ましく、そのなかでも20~45%に調整するのが最も好ましい。ゲル分率は、養生後の第1粘着剤層3および第2粘着剤層4の組成物をトルエン中に浸漬し、24時間放置後に残った不要分の乾燥後の質量を測定し、元の重量に対する百分率で表す。
【0038】
上記の粘着剤には、必要に応じて性能を阻害しない範囲で各種添加剤、例えば粘着付与樹脂、酸化防止剤、紫外線吸収剤、充填剤、顔料、増粘剤等を添加してもよい。
【0039】
第1粘着剤層3および第2粘着剤層4を形成するための塗工液は、上記粘着剤、必要に応じその他の添加剤を、有機溶媒に溶解させて調製する。有機溶媒としては、上記配合成分が溶解すれば特に限定されるものではないが、酢酸エチル、トルエン、キシレン、メタノール、イソプリピルアルコール等公知慣用の有機溶剤を単独で、あるいは混合して使用することができる。
【0040】
〈〈粘着剤層の表面形状〉〉
本実施形態において、粘着テープ1の第1粘着剤層3は、図1に示すように、一方側の表面に、当該表面より窪む凹凸部31を有しており、また、図2に示すように、この凹部31は、第1粘着剤層3の端部で開口している。本実施形態において、当該凹部31が、部材同士を貼り合わせる際に、空気が流れる流路となり、空気溜まりが生じるのを抑制することができる。
具体的な凹部31としては、図2に示すように、第1粘着剤層3の一方側の表面を、例えば直線状、曲線状(図示の例では直線状)に延在し、平面視で凹部31の少なくとも一端(図示の例では両端)が第1粘着剤層3の端部に開口している。さらに、凹部31は、第1粘着剤層3の表面上に複数設けることができる。凹部31の配置は任意にすることができ、例えば図2の上下方向を粘着テープ11のMD方向、左右方向をTD方向とする場合、平面視で、TD方向に延びる凹部31をMD方向に複数配置するとともに、MD方向に対して傾斜する凹部31を複数配置することができる。より具体的には、図2の例では、TD方向に延びる複数の凹部31と、MD方向に対して一方側に傾斜する凹部31と、MD方向に対して他方側に傾斜する凹部31とが配置され、それにより、凹部31に囲まれる部位が三角形となっている。
このように、第1粘着剤層3の表面を一方側から見たときに、1つの凹部31が他の前記凹部31と交わる交点において、1つの凹部31が2つ以上の他の凹部31と交わることにより、部材同士を貼り合わせる際に、空気溜まりを効果的に取り除くことができる。
【0041】
本実施形態において、第1粘着剤層3の表面に凹部31を形成する方法は、特に限定されず、例えば、凹部31に対応する形状がエンボス加工された剥離ライナー5上に粘着剤を塗布することにより形成することができる。
【0042】
本実施形態において、凹部31の断面形状は、特に限定されず任意の形状にすることができる。例えば、当該断面形状としては、断面視で複数の直線つなぎ合わせて凹部31内に角が1つ以上存在する形状、曲線のみ、または図1の例のように直線と曲線との組合せの形状(例えばU字状、円弧状)とすることができる。
【0043】
本実施形態において、凹部31の幅は5~150μmであることが好ましく、より好ましくは10~120μmである。当該幅を5μm以上とすることにより、部材同士を貼り合わせる際に空気溜まりが十分に残存しないようにすることができ、また、当該幅を150μm以下とすることにより、十分な接着力を確保することができる。
また、本実施形態において、凹部31の深さは5~80μmであることが好ましく、より好ましくは10~60μmである。当該深さを5μm以上とすることにより、部材同士を貼り合わせる際に空気溜まりが十分に残存しないようにすることができる。また、当該深さを80μm以下とすることにより、十分な接着力を確保することができる。
なお、凹部31の幅とは、凹部31の延在方向に直交する方向での断面視において、凹部31が第1粘着剤層3の表面に開口する開口部で測定した長さであり、また、深さとは、同様な断面視において、凹部31が設けられた第1粘着剤層3の表面から凹部31の底までを、当該表面に直交する方向(粘着テープ1の積層方向)に沿って測った長さである。
【0044】
なお、本実施形態において、凹部31は、その表面の断面形状、幅、深さ等を、1つの凹部31内、または複数の凹部31間で、同じとすることまたは異なるようにすることもできる。
【0045】
本実施形態では、粘着テープ1の第1粘着剤層3の平面視において、複数の凹部31同士が交わる交点の間の距離は、0.3~3.0mmであることが好ましく、より好ましくは0.5~2.0mmであり、更に好ましくは0.7~1.5mmである。当該距離を0.3mm以上とすることにより、優れた接着性を有することができる。また、当該距離を3.0mm以下とすることにより、部材同士を貼り合わせる際に空気溜まりが十分に残存しないようにすることができる。
【0046】
本実施形態において、粘着テープ1の第1粘着剤層3の平面視で、第1粘着剤層3の表面の面積に対する、第1粘着剤層3の表面の面積から凹部31の面積を減じた面積の割合は、50~99%であることが好ましく、より好ましくは70~90%である。当該割合を50%以上とすることにより、優れた接着性を有することができる。また、当該割合を99%以下とすることにより、部材同士を貼り合わせる際に空気溜まりが十分に残存しないようにすることができる。
【0047】
また、本実施形態の粘着テープ1は、第1粘着剤層3の一方側の表面に凹部31を有するが、第2粘着剤層4の他方側の表面にも、凹部31を設けることもできる。
【0048】
〈剥離ライナー〉
本実施形態において、粘着テープ1は、第1粘着剤層3、第2粘着剤層4の表面上に剥離ライナー5を備えることができる。剥離ライナー5を備えることにより、粘着テープ1の粘着面側を保護することができる。
特に第1粘着剤層3の表面上に備える剥離ライナー5としては、突出部51を有し、突出部51が、当該剥離ライナー5が粘着テープ1の表面上に貼り合わされた状態で、第1粘着剤層3の凹部31に対応する形状であり、凹部31に対応する位置に存在することが好ましい。このような剥離ライナー5を備えることにより、第1粘着剤層3の凹部31の形状を維持しやすくすることができる。
なお、本実施形態の粘着テープ1が第2粘着剤層4の表面上に凹部31を有する場合には、第2粘着剤層4の表面上に備える剥離ライナー5も、上記と同様に突出部51を有することが好ましい。
【0049】
本実施形態において、剥離ライナー5としては、粘着剤層に対して離型性を有すれば特に限定されず、例えばクラフト紙やグラシン紙、上質紙などの紙類や、ポリエチレン、ポリプロピレン(OPP、CPP)、ポリエチレンテレフタレートなどの樹脂フィルム、前記紙類と樹脂フィルムを積層したラミネート紙、前記紙類にクレーやポリビニルアルコールなどで目止め処理を施したものの片面もしくは両面に、シリコン系樹脂等の剥離処理を施したものなど従来公知のものを用いることができる。剥離ライナーの厚みは特に限定されるものではないが、25μm~250μmが好ましく、さらに好ましくは50μm~150μmである。
離型剤は特に限定されるものではないが、シリコン系のものが剥離力の調整が容易なため好ましい。
【0050】
〈粘着テープの特性〉
粘着テープ1は、平面視において、粘着テープ1中のそれぞれの層が積層して全体としてシート状になっており、粘着テープ1の基材層2と粘着剤層との合計の厚さは、50~250μmとすることが好ましい。また、当該合計の厚さは、より好ましくは、75~200μmであり、さらに好ましくは100~175μmである。粘着テープ1をこのような厚さにすることにより、部材の固定時に粘着テープと部材の間に空気溜まりが発生するのを抑制するとともに、部材を粘着テープから剥がす際の作業性を向上させることができる。
なお、粘着テープ1の上記厚さは、JIS K6250に従いダイヤルゲージを用いた方法で測定し、具体的には、粘着テープ1への接触面が径8mmの平面であるダイヤルゲージを、0.51Nの力で接触させた際に測定された値である。なお、当該厚さには、剥離ライナー5の厚さは含まない。また、例えば、尾崎製作所製の厚さ計FFG-6を用いて測定することができる。
【0051】
〈粘着テープの製造方法〉
本実施形態の粘着テープ1は、特に限定されなく例えば、公知の方法により製造することができる。具体的には、第1粘着剤層3の形成は、第1粘着剤層3の凹部31に対応する位置におよび対応する形状を有する突出部51が形成された剥離ライナー5を用い、当該突出部51が存在する剥離ライナー5の表面上に、第1粘着剤層3の粘着剤を塗布し乾燥等することによって第1粘着剤層3を形成する。第2粘着剤層4は、表面に凹部31を有しない場合には、平滑な剥離ライナーを用い、剥離ライナーの表面上に、第2粘着剤層4の粘着剤を塗布し乾燥等することによって第2粘着剤層4を形成する。そして、得られた各粘着剤層3、4を、基材の両表面に対し、上記の剥離ライナーを有する状態の粘着剤層3、4を貼り合わせ、必要に応じて加圧等することで粘着テープ1を得ることができる。
また、粘着テープ1の第2粘着剤層4が凹部31を有する場合には、第1粘着剤層3を形成のために用いた剥離ライナー5と同様に突出部51が形成されたものを用いる。
【0052】
以上、図面を参照して本発明の実施形態を説明したが、本発明の粘着テープは、上記の例に限定されることは無く、上記の粘着テープには適宜変更を加えることができる。
【実施例
【0053】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記の実施例になんら限定されるものではない。
【0054】
まず、実施例・比較例において用いた測定方法、評価方法について説明する。
(1)第1粘着剤層、第2粘着剤層の厚さ
第1粘着剤層、第2粘着剤層の厚さは、粘着テープの任意の5箇所の厚さを測定した値を平均した値とした。具体的には、粘着テープの任意の5箇所の付近を試験片として切り出し、各試験片を液体窒素中に1分間浸漬した後、ピンセットを用いて液体窒素中で、粘着テープの幅方向を折り目として折り曲げて割り、該粘着テープの厚さ方向の割断面観察用の切片を作製した。前記切片をデシケータ内で常温に戻した後、前記割断面に対して電子線が垂直に入射するように試料台に固定し、電子顕微鏡(Miniscope(登録商標) TM3030Plus、日立ハイテクノロジー株式会社製)を用いて、前記割断面の観察を行った。電子顕微鏡のスケールを元に、前記粘着テープにおける第1粘着剤層、第2粘着剤層の厚さを5箇所(凹部以外の部分)測定し、その平均値を各層の厚さとした。なお、第1粘着剤層、第2粘着剤層の厚さは、粘着剤層の表面から基材層の表面までを積層方向に沿って測った長さである。
【0055】
(2)第1粘着剤層、第2粘着剤層の接着力
各粘着剤層の接着力の測定は、次のようにして行った。まず、接着力を測定する対象でない粘着剤層に、厚さ25μmのポリエステルフィルムを貼り合わせ、20mm幅に裁断して試験片を作製した。そして、当該試験片をステンレス板に貼り合わせて、常温で、重さ2kgのローラーを試験片上を1往復させて加圧貼付した。続いて、1時間放置した後、常温で剥離速度300mm/minで180度剥離接着力を測定した。
【0056】
(3)第1粘着剤層、第2粘着剤層の損失正接
各粘着剤層の損失正接の測定は、次のようにして行った。粘弾性試験機(レオメトリックス社製、商品名:アレス2KSTD)を用いて、同試験機の測定部である平行円盤の間に試験片を挟み込み、温度25℃、周波数1Hzでの損失正接を測定し求めた。試験片としては、粘着剤層の粘着剤を厚さ1mmになるように重ね合わせ直径8mmの円形に裁断したものを使用した。
【0057】
(4)エア抜け性
エア抜け性は、次のように評価した。まず、第2粘着剤層に、厚さ25μmのポリエステルフィルムを貼り合わせ、10cm×5cmに裁断して試験片を作製した。そして、当該試験片をガラス板に第1粘着剤層が接するように載置し、さらに、試験片よりも大きなポリカーボネート板(重さ14g)と500gの重りを載せて5秒間静置した。次いで、ポリカーボネート板と重りを取り除き、試験片を2kgのローラーを試験片上を一往復させた。続いて、試験片が貼付されたガラス板を介して、第1粘着剤層とガラス板との間のエア溜まり状況を目視し、下記にて評価した。
○:5mm以上の大きさのエア溜まりが無い
×:5mm以上の大きさのエア溜まりが有る
【0058】
(5)リワーク性
感光性樹脂板(デュポン社製感光性樹脂「Cyrel」)に、25mm×50mmの大きさの粘着テープの試験片の第2粘着剤層をローラーで貼付し、その後、第1粘着剤層をポリ塩化ビニル樹脂にローラーで貼付した。そして、感光性樹脂板を引き剥がし、下記にて評価をした。
◎:ポリ塩化ビニルに粘着テープの試験片が残らずに剥がせ、ウレタンプレートからは粘着テープの剥がれがない。
○:ポリ塩化ビニルに粘着テープの試験片が残らずに剥がせるが、ウレタンプレートから粘着テープの剥がれが試験片の0%超33%以下生じる。
△:ポリ塩化ビニルに粘着テープの試験片が残らずに剥がせるが、ウレタンプレートから粘着テープの剥がれ33%超50%以下生じる。
×;ポリ塩化ビニルに粘着テープの試験片が残っており、ウレタンプレートから粘着テープが全て剥がれる。
【0059】
続いて、実施例・比較例で用いた各成分について説明する。
・製造例1:エンボス剥離ライナーa
基材シートとして上質紙を使用し、その両面にポリエチレンをラミネートした。次に、その片面に凸部(高さ30μm、幅70μm)を形成するエンボス加工を、図2に示すように形成された凹部に対応するように施した。なお、複数の凸部同士が交わる交点の間の距離は1.0mmであった(図2において、凹部により区画形成される三角形の1辺の長さが1.0mm)。次に、エンボス加工を施した基材の両面にシリコン系樹脂の剥離処理を施しエンボス剥離ライナーaを得た。
【0060】
・製造例2:剥離ライナーb
剥離ライナーaのエンボス加工を施さない以外は同様の方法で剥離ライナーbを得た。
【0061】
・調製例1:粘着剤A
攪拌機、環流冷却器、温度計、滴下漏斗及び窒素ガス導入口を備えた反応容器を用いて、n-ブチルアクリレート89.9質量部、アクリル酸10.0質量部、4-ヒドロキシブチルアクリレート0.1質量部、重合開始剤として2,2’-アゾビスイソニトリ0.03質量部とを、酢酸エチル63質量部とアセトン100質量部からなる混合溶媒に溶解した。次いで、65℃で6時間重合し、これに追加の2,2’-アゾビスイソブチルニトリル0.2質量部と酢酸エチル45質量部を加え、さらに6時間重合を行い、重量平均分子量90万のアクリル系粘着剤組成物を得た。このアクリル共重合体溶液に酢酸エチルを加えて、不揮発分30質量%のアクリル系粘着剤組成物を調整した。
上記で得られたアクリル系粘着剤組成物に、アクリル系粘着剤組成物100質量部に対して、エポキシ系架橋剤(総研化学社製「E-05X」、固形分0.5質量%)を0.5質量部添加し攪拌してアクリル系粘着剤Aを調整した。
【0062】
・調製例2:粘着剤B
冷却管、撹拌機、温度計、滴下漏斗及び窒素ガス導入口を備えた反応容器にn-ブチルアクリレート75.0質量部、2-エチルヘキシルアクリレート19.0質量部、酢酸ビニル3.9部、アクリル酸2.0部、2-ヒドロキシエチルアクリレート0.1質量部と重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチルニトリル0.1質量部とを酢酸エチル100質量部に溶解し、窒素置換後、80℃で12時間重合し、重量平均分子量60万のアクリル系共重合体を得た。このアクリル系共重合体溶液の固形分100質量部に対し、重合ロジンペンタエリスリトールエステル(荒川化学(株)製、ペンセルD-135、軟化点135℃)10質量部、不均化ロジングリセリンエステル(荒川化学(株)製、スーパーエステルA-100、軟化点100℃)10質量部を配合し、酢酸エチルで樹脂固形分濃度を45質量%に調整して、アクリル系粘着剤組成物を調整した。
上記で得られたアクリル系粘着剤組成物に、アクリル系粘着剤組成物100質量部に対して、イソシアネート系架橋剤(大日本インキ化学工業社製『バーノックNC-40』、固形分40質量%、酢酸エチル溶液)を2.1質量部添加し攪拌してアクリル系粘着剤Bを調整した。
【0063】
・調製例3:粘着剤C
上記粘着剤Bのイソシアネート系架橋剤(大日本インキ化学工業社製『バーノックNC-40』、固形分40質量%、酢酸エチル溶液)を1.7質量部に変えた以外は同様の方法で粘着剤Cを調整した。
【0064】
・調製例4:粘着剤D
攪拌機、還流冷却器、温度計、滴下漏斗および窒素ガス導入口を備えた反応容器に、n-ブチルアクリレート93.4質量部、アクリル酸3.5質量部、酢酸ビニル3質量部、2-ヒドロキシエチルアクリレート0.1質量部、重合開始剤として2、2’-アゾビスイソブチロニトリル0.1質量部とを、酢酸エチル100質量部からなる溶剤に溶解し、85℃で12時間重合して、重量平均分子量が160万のアクリル系共重合体を得た。次に、アクリル系共重合体100質量部に対し、荒川化学社製「スーパーエステルA100」(不均化ロジンのグリセリンエステル)9.4質量部と、ハリマ化成社製「ハリタックPCJ」(重合ロジンのペンタエリスリトールエステル)9.4質量部を配合し、酢酸エチルで樹脂固形分濃度を45質量%に調整して、アクリル系粘着剤組成物を調整した。
上記で得られたアクリル系粘着剤組成物に、アクリル系粘着剤組成物100質量部に対して、イソシアネート系架橋剤(大日本インキ化学工業社製『バーノックNC-40』、固形分40質量%、酢酸エチル溶液)を1.24質量部添加し攪拌してアクリル系粘着剤Dを調整した。
【0065】
次いで、実施例・比較例について説明する。
・実施例1
エンボス剥離ライナーaの表面に、アクリル系粘着剤Aを乾燥後の粘着剤層の厚さが65μmとなるように、バーコーターを用いて前記粘着剤を塗工し、80℃で3分間乾燥させることによって第1粘着剤層を作製した。次に前記第1粘着剤層を基材層としての樹脂製フィルム(厚さ16μmのPETフィルム)の片面に貼付した。
次に剥離ライナーbの表面に、アクリル系粘着剤Bを乾燥後の粘着剤層の厚さが50μmとなるように、バーコーターを用いて前記粘着剤を塗工し、80℃で3分間乾燥させることによって第2粘着剤層を作製した。前記基材のもう一方の面に前記第2粘着剤層を貼付し、40℃の環境下で48時間養生することによって粘着テープを作製した。
【0066】
・実施例2
実施例1のアクリル系粘着剤Aの厚さを50μm、アクリル系粘着剤Bの厚さを65μmに変えた以外は同様の方法で粘着テープを作製した。
【0067】
・実施例3
実施例1のアクリル系粘着剤Aの厚さを40μm、アクリル系粘着剤Bの厚さを65μmに変えた以外は同様の方法で粘着テープを作製した。
【0068】
・実施例4
実施例3のアクリル系粘着剤Bをアクリル系粘着剤Cに変えた以外は同様の方法で粘着テープを作製した。
【0069】
・実施例5
実施例3のアクリル系粘着剤Bをアクリル系粘着剤Dに変えた以外は同様の方法で粘着テープを作製した。
【0070】
・比較例1
実施例1のアクリル系粘着剤Bをアクリル系粘着剤Aに変えた以外は同様の方法で粘着テープを作製した。
【0071】
・比較例2
実施例3のアクリル系粘着剤Bをアクリル系粘着剤Aに変えた以外は同様の方法で粘着テープを作製した。
【0072】
・比較例3
実施例1のアクリル系粘着剤Aをアクリル系粘着剤Bに変えた以外は同様の方法で粘着テープを作製した。
【0073】
・比較例4
実施例2のエンボス剥離ライナーaを剥離ライナーbに、アクリル系粘着剤Bをアクリル系粘着剤Aに変えた以外は同様の方法で粘着テープを作製した。
【0074】
・比較例5
実施例3のエンボス剥離ライナーaを剥離ライナーbに変えた以外は同様の方法で粘着テープを作製した。
【0075】
【表1】
【0076】
【表2】
【0077】
表1に示すように、実施例1~5は、少なくとも、第1粘着剤層の一方側の表面に、当該表面より窪む凹部が設けられ、凹部は、第1粘着剤層の端部で開口し、第1粘着剤層の接着力は、第2粘着剤層の接着力よりも低いとともに、6~14N/20mmであり、第2粘着剤層の接着力は、14~22N/20mmであるので、高いエア抜け性、リワーク性を有する粘着テープを得ることができた。
また、表2に示すように、第2接着剤層の接着力が14N/20mm未満である比較例1、2は、第2粘着剤層の接着力が小さいためリワーク性が低かった。また、第1接着剤層の接着力が14N/20mm超である比較例3は、第1粘着剤層の接着力が大きいためリワーク性が低かった。さらに、第1粘着剤層が凹部を有していない比較例4、5は、凹部を有しないため、エア抜け性が低かった。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明によれば、部材の固定時に粘着テープと部材の間に空気溜まりが発生するのを抑制するとともに、部材同士を剥がす際の作業性を向上させることが可能な粘着テープを提供することができる。
【符号の説明】
【0079】
1:粘着テープ
2:基材層
3:第1粘着剤層
31:凹部
4:第2粘着剤層
5:剥離ライナー
51:突出部
図1
図2