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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-02
(45)【発行日】2023-10-11
(54)【発明の名称】硬化性組成物、及び硬化物
(51)【国際特許分類】
   C08L 71/00 20060101AFI20231003BHJP
   C08G 65/336 20060101ALI20231003BHJP
   C08K 5/057 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
C08L71/00
C08G65/336
C08K5/057
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019216716
(22)【出願日】2019-11-29
(65)【公開番号】P2021085003
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-08-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】砂山 佳孝
(72)【発明者】
【氏名】中原 明暢
(72)【発明者】
【氏名】神保 裕介
【審査官】櫛引 智子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-172119(JP,A)
【文献】国際公開第2019/189492(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L,C08G,C08K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つの末端基に平均して1.0個より多くの下式1で表される反応性ケイ素基を有するオキシアルキレン重合体と、チタン含有化合物、ジルコニウム含有化合物、及びアルミニウム含有化合物からなる群から選択される1種以上の化合物と、を含み、前記オキシアルキレン重合体100質量部に対する前記化合物の含有量が0.1~20質量部であ前記化合物が下式3で表される化合物である、硬化性組成物(但し、シロキサン結合を形成することにより架橋し得るケイ素基を有する有機重合体であって、主鎖骨格がポリエステル系重合体、ポリアミド系重合体からなる群より選択される少なくとも1つである結晶性の有機重合体、及びシロキサン結合を形成することにより架橋し得るケイ素基を有する有機重合体であって、主鎖骨格がポリエステル系重合体、ポリカーボネート系重合体からなる群より選択される少なくとも1つである非結晶性の有機重合体を含む硬化性組成物を除く)
-SiX3-a 式1
式1中、Rは炭素数1~20の1価の有機基であって、加水分解性基以外の有機基を示し、Xは水酸基または加水分解性基を示し、aは1~3の整数を示し、aが1の場合、Rは互いに同一でも異なってもよく、aが2又は3の場合、Xは互いに同一でも異なってもよい。
M(OR 11 式3
前記式3中、R 11 は置換又は非置換の炭素数1~20の1価の有機基を示すか、又はいずれか2つ以上のOR 11 とMとが一体となって炭素数2~20である環構造を形成していることを示す。Mは、チタン、ジルコニウム、又はアルミニウムであり、Mがチタン又はジルコニウムであるときvは4であり、Mがアルミニウムであるときvは3である。
【請求項2】
前記オキシアルキレン重合体の少なくとも1つの末端基が下式2で表される原子団を含む、請求項1に記載の硬化性組成物。
【化1】
前記式2中、R、Rはそれぞれ独立に2価の炭素数1~6の結合基を示し、結合基中の炭素原子に結合している原子は、炭素原子、水素原子、酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子である。R、Rはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1~10の炭化水素基を示す。nは1から10の整数を示す。Rはそれぞれ独立に、炭素数1~20の1価の有機基であって、加水分解性基以外の有機基を示し、Yはそれぞれ独立に水酸基又は加水分解性基を示す。bは1~3の整数である。Rが複数存在する場合、Rは互いに同一でも異なってもよい。Yが複数存在する場合、Yは互いに同一でも異なってもよい。
【請求項3】
前記オキシアルキレン重合体の末端基は、前記式1で表される反応性ケイ素基、活性水素含有基、又は不飽和基のいずれかである基を含む、請求項1又は2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
前記オキシアルキレン重合体は、1分子中に末端基を2個又は3個有し、各末端基に前記式1で表される反応性ケイ素基、活性水素含有基、又は不飽和基のいずれかである基を2個有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
接着剤用である、請求項1~のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
請求項1~のいずれか一項に記載の硬化性組成物の硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性組成物、及び硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
反応性ケイ素基を有する重合体は、加水分解反応により硬化して、柔軟性を有するゴム状硬化物を形成し、シーリング材、接着剤等の用途に用いられる。上記加水分解反応の硬化触媒として有機錫触媒が用いられているが、有機錫触媒は生体に対して毒性を示すことが知られているものが多く、環境への影響も懸念されている。
【0003】
特許文献1には、シロキサン結合を形成することにより架橋し得るケイ素含有基を有する有機重合体と、非有機錫触媒であるチタン含有化合物、ジルコニウム含有化合物、及びアルミニウム含有化合物からなる群から選択される1種以上の化合物を硬化触媒として含有する硬化性組成物が開示されている。上記硬化性組成物は、有機錫触媒を使用した場合と同様の接着性を有することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2005/108500号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
床暖房などの局所的に熱がかかる建築部材の接着剤用途においては、熱により硬化物の伸びが低下し、ひび割れが発生することがある。
特許文献1に記載の硬化性組成物を上記建築部材の接着剤用途に用いた場合、耐熱試験前後で、硬化物の伸びが低下する。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、耐熱試験前後で伸びが低下しない硬化性組成物及び上記硬化性組成物の硬化物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、下記[1]~[]である。
[1] 1つの末端基に平均して1.0個より多くの下式1で表される反応性ケイ素基を有するオキシアルキレン重合体と、チタン含有化合物、ジルコニウム含有化合物、及びアルミニウム含有化合物からなる群から選択される1種以上の化合物と、を含み、上記オキシアルキレン重合体100質量部に対する上記化合物の含有量が0.1~20質量部であ前記化合物が下式3で表される化合物である、硬化性組成物(但し、シロキサン結合を形成することにより架橋し得るケイ素基を有する有機重合体であって、主鎖骨格がポリエステル系重合体、ポリアミド系重合体からなる群より選択される少なくとも1つである結晶性の有機重合体、及びシロキサン結合を形成することにより架橋し得るケイ素基を有する有機重合体であって、主鎖骨格がポリエステル系重合体、ポリカーボネート系重合体からなる群より選択される少なくとも1つである非結晶性の有機重合体を含む硬化性組成物を除く)
-SiX3-a 式1
式1中、Rは炭素数1~20の1価の有機基であって、加水分解性基以外の有機基を示し、Xは水酸基または加水分解性基を示し、aは1~3の整数を示し、aが1の場合、Rは互いに同一でも異なってもよく、aが2又は3の場合、Xは互いに同一でも異なってもよい。
M(OR 11 式3
前記式3中、R 11 は置換又は非置換の炭素数1~20の1価の有機基を示すか、又はいずれか2つ以上のOR 11 とMとが一体となって炭素数2~20である環構造を形成していることを示す。Mは、チタン、ジルコニウム、又はアルミニウムであり、Mがチタン又はジルコニウムであるときvは4であり、Mがアルミニウムであるときvは3である。
[2] 上記オキシアルキレン重合体の少なくとも1つの末端基が下式2で表される原子団を含む、[1]に記載の硬化性組成物。
【0008】
【化1】
上記式2中、R、Rはそれぞれ独立に2価の炭素数1~6の結合基を示し、結合基中の炭素原子に結合している原子は、炭素原子、水素原子、酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子である。R、Rはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1~10の炭化水素基を示す。nは1から10の整数を示す。Rはそれぞれ独立に、炭素数1~20の1価の有機基であって、加水分解性基以外の有機基を示し、Yはそれぞれ独立に水酸基又は加水分解性基を示す。bは1~3の整数である。Rが複数存在する場合、Rは互いに同一でも異なってもよい。Yが複数存在する場合、Yは互いに同一でも異なってもよい。
[3] 上記オキシアルキレン重合体の末端基は、上記式1で表される反応性ケイ素基、活性水素含有基、又は不飽和基のいずれかである基を含む、[1]又は[2]に記載の硬化性組成物。
[4] 上記オキシアルキレン重合体は、1分子中に末端基を2個又は3個有し、各末端基に上記式1で表される反応性ケイ素基、活性水素含有基、又は不飽和基のいずれかである基を2個有する、[1]~[3]のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
] 接着剤用である、[1]~[]のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
] [1]~[]のいずれか一項に記載の硬化性組成物の硬化物。
【発明の効果】
【0009】
本発明の硬化性組成物を用いた硬化物は、耐熱試験前後で伸びが低下しない。
本発明の硬化物は、耐熱試験前後で伸びが低下しない。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書における用語の定義は以下である。
「~」で表される数値範囲は、~の前後の数値を下限値及び上限値とする数値範囲を意味する。
「オキシアルキレン重合体」とは、環状エーテルに基づく単位から形成されるポリオキシアルキレン鎖を有する重合体を意味する。
【0011】
「前駆重合体」とは、開始剤の残基と、環状エーテルの開環付加重合により形成されたポリオキシアルキレン鎖と、上記ポリオキシアルキレン鎖の末端酸素原子を含む末端基とからなり、末端基が水酸基である重合体である。
「前駆重合体の誘導体」とは、前駆重合体の末端基である水酸基を、シリル化剤と反応し得る官能基を含む末端基に変換した重合体である。シリル化剤と反応し得る官能基としては、活性水素含有基、分子末端に存在する不飽和基等が挙げられる。
「活性水素含有基」は、水酸基、カルボキシ基、アミノ基、第二級アミノ基、ヒドラジド基及びスルファニル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基である。
「活性水素」とは、上記活性水素含有基に基づく水素原子である。
「シリル化剤」とは、前駆重合体又はその誘導体の末端基に含まれる活性水素含有基又は分子末端に存在する不飽和基と反応して反応性ケイ素基を導入し得る化合物である。
【0012】
反応性ケイ素基を有するオキシアルキレン重合体の「シリル化率」は、重合体の末端基に含まれる反応性ケイ素基、活性水素含有基、及び不飽和基の数の合計に対する上記反応性ケイ素基の数の割合である。シリル化率の値はNMR分析によって測定できる。
【0013】
数平均分子量(以下、「Mn」と記す。)及び質量平均分子量(以下、「Mw」と記す。)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定によって得られるポリスチレン換算分子量である。分子量分布は、MwとMnより算出した値であり、Mnに対するMwの比率(以下、「Mw/Mn」と記す。)である。
【0014】
本実施形態の硬化性組成物は、1つの末端基に平均して1.0個より多くの反応性ケイ素基を有するオキシアルキレン重合体(以下、「重合体A」という。)と、チタン含有化合物、ジルコニウム含有化合物、及びアルミニウム含有化合物からなる群から選択される1種以上の化合物(以下、「化合物a」という。)と、を含む。
【0015】
<反応性ケイ素基>
反応性ケイ素基は、下式1で表わされる。
-SiX3-a 式1
上記式1において、Rは炭素数1~20の1価の有機基を示す。Rは加水分解性基を含まない。
Rとしては、炭化水素基、ハロ炭化水素基及びトリオルガノシロキシ基が挙げられる。
【0016】
Rとしては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、1-クロロアルキル基及びトリオルガノシロキシ基が好ましい。炭素数1~4の直鎖又は分岐のアルキル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、1-クロロメチル基、トリメチルシロキシ基、トリエチルシロキシ基及びトリフェニルシロキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。反応性ケイ素基を有する重合体の硬化性と硬化性組成物の安定性が良い点からは、メチル基又はエチル基が好ましい。硬化物の硬化速度が速い点からは、1-クロロメチル基が好ましい。容易に入手できる点からは、メチル基が特に好ましい。
【0017】
上記式1において、Xは水酸基又は加水分解性基を示す。
加水分解性基としては、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、スルファニル基、アルケニルオキシ基が例示できる。
Xとしては、加水分解性が穏やかで取扱いやすい点から、アルコキシ基が好ましい。アルコキシ基は、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基が好ましく、メトキシ基又はエトキシ基がより好ましい。アルコキシ基がメトキシ基又はエトキシ基であると、シロキサン結合を速やかに形成し硬化物中に架橋構造を形成しやすく、硬化物の物性値がより良好となる。
【0018】
上記式1において、aは1~3の整数を示す。aが1の場合、Rは互いに同一でも異なってもよい。aが2以上の場合、Xは互いに同一でも異なってもよい。
aは1又は2が好ましく、aは2がより好ましい。
【0019】
上記式1で表される反応性ケイ素基としては、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリイソプロポキシシリル基、トリス(2-プロペニルオキシ)シリル基、トリアセトキシシリル基、ジメトキシメチルシリル基、ジエトキシメチルシリル基、ジメトキシエチルシリル基、ジイソプロポキシメチルシリル基、クロロメチルジメトキシシリル基、クロロメチルジエトキシシリル基が例示できる。活性が高く良好な硬化性が得られる点から、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、ジメトキシメチルシリル基、ジエトキシメチルシリル基が好ましく、ジメトキシメチルシリル基及びトリメトキシシリル基がより好ましい。
【0020】
<重合体A>
重合体Aは、開始剤残基と、環状エーテルの開環付加重合により形成されたポリオキシアルキレン鎖と、上記ポリオキシアルキレン鎖の末端酸素原子を含む末端基と、を有する。開始剤残基の価数と、ポリオキシアルキレン鎖の数と、末端基の数とは等しい。
環状エーテルとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2-ブチレンオキシド、2,3-ブチレンオキシド等のアルキレンオキシド、テトラヒドロフラン等のアルキレンオキシド以外の環状エーテルが挙げられる。特に、プロピレンオキシドが好ましい。
ポリオキシアルキレン鎖は2種以上のオキシアルキレン基を有する共重合鎖であってもよく、その場合、共重合鎖はブロック共重合鎖であってもよく、ランダム共重合鎖であってもよい。
重合体Aが有するポリオキシアルキレン鎖としては、ポリオキシプロピレン鎖、ポリオキシエチレン鎖、ポリ(オキシ-2-エチルエチレン)鎖、ポリ(オキシ-1、2-ジメチルエチレン)鎖、ポリ(オキシテトラメチレン)鎖、ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)鎖、ポリ(オキシプロピレン・オキシ-2-エチルエチレン)鎖が挙げられる。ポリオキシアルキレン鎖としては、ポリオキシプロピレン鎖及びポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)鎖が好ましく、ポリオキシプロピレン鎖が特に好ましい。
【0021】
重合体Aは、1つの末端基に平均して1.0個より多くの上記反応性ケイ素基を有し、伸び物性の観点から、1.1~3.0個であるものがより好ましく、1.2~2.0個であるものがさらに好ましい。
1つの末端基に含まれる2価以上の原子の合計数は、80個以下が好ましく、50個以下がより好ましく、40個以下がさらに好ましい。
1つの末端基に含まれる2価以上の原子の合計数は、1個以上が好ましく、4個以上がより好ましく、10個以上がさらに好ましく、20個以上が特に好ましい。
2価以上の原子としては、炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子及びケイ素原子から選ばれる1種以上の原子が好ましく、炭素原子、窒素原子、酸素原子及びケイ素原子から選ばれる1種以上の原子がより好ましく、炭素原子、酸素原子及びケイ素原子から選ばれる1種以上の原子がさらに好ましい。
【0022】
重合体AのMnは1,000~100,000が好ましく、2,000~50,000がより好ましく、3,000~40,000がさらに好ましい。Mnが上記範囲の下限値以上であると、重合体Aの質量あたりの反応性ケイ素基の導入量が多くなりすぎず、伸び物性と耐久性を両立させやすい点で好ましい。上限値以下であると、粘度が充分に低くなり作業性により優れる。
重合体Aの分子量分布は1.60以下が好ましく、1.40以下がより好ましく、1.20以下がさらに好ましく、1.17以下が特に好ましく、1.15以下が特別に好ましい。重合体Aの分子量分布は1.00以上が好ましい。分子量分布が上記上限値以下であると、硬化物の伸び物性が向上しやすい。
重合体Aの25℃における粘度は、0.1~70Pa・sが好ましく、0.5~60Pa・sがより好ましく、1~55Pa・sがさらに好ましい。上記範囲内であると作業性により優れる。
【0023】
重合体Aは、1分子中に末端基を2~8個有するものが好ましく、2~6個有するものがより好ましく、2個又は3個有するものがさらに好ましい。
重合体Aは、末端基に上記式1で表される反応性ケイ素基、活性水素含有基、又は不飽和基のいずれかである基を含むことが好ましい。
【0024】
重合体Aは、1分子中に末端基を2個又は3個有し、各末端基に上記式1で表される反応性ケイ素基、活性水素含有基、又は不飽和基のいずれかである基を2個有することが好ましい。
重合体Aは、1分子中に反応性ケイ素基、活性水素含有基、又は不飽和基のいずれかである基を4個~6個有することが好ましい。
【0025】
重合体Aの「シリル化率」は50モル%超100モル%以下が好ましく、60~97モル%がより好ましく、65~95モル%がさらに好ましい。
シリル化率は、前駆重合体の誘導体の末端基に含まれる不飽和基に対して反応させるシリル化剤の量によって調整することができる。
硬化性組成物が、2種類以上の重合体Aを含む場合、重合体A全体における平均のシリル化率が上記の範囲内であればよい。
【0026】
重合体Aの少なくとも1つの末端基に下式2で表される原子団を含むことが好ましい。
【0027】
【化2】
【0028】
上記式2において、R、Rはそれぞれ独立に2価の炭素数1~6の結合基を示し、結合基中の炭素原子に結合している原子は、炭素原子、水素原子、酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子である。
、Rとしては-CH-、-C-、-C-、-C-、-C10-、-C12-、-C(CH-、-CHO-、-CH-O-CH-、-CH-O-CH-O-CH-、-C=C-、-C≡C-、-CO-、-CO-O-、-CO-NH-、-CH=N-、-CH=N-N=CH-が例示できる。
は-CH-O-CH-、-CHO-、-CH-が好ましく、―CH-O-CH-がより好ましい。
は、-CH-、-C-が好ましく、-CH-がより好ましい。
【0029】
上記式2において、R、Rはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1~10の炭化水素基を示す。上記炭化水素基としては、直鎖又は分岐の炭素数1~10のアルキル基が好ましい。
直鎖のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基が例示できる。
分岐のアルキル基としては、イソプロピル基、s-ブチル基、t-ブチル基、2-メチルブチル基、2-エチルブチル基、2-プロピルブチル基、3-メチルブチル基、3-エチルブチル基、3-プロピルブチル基、2-メチルペンチル基、2-エチルペンチル基、2-プロピルペンチル基、3-メチルペンチル基、3-エチルペンチル基、3-プロピルペンチル基、4-メチルペンチル基、4-エチルペンチル基、4-プロピルペンチル基、2-メチルヘキシル基、2-エチルヘキシル基、2-プロピルヘキシル基、3-メチルヘキシル基、3-エチルヘキシル基、3-プロピルヘキシル基、4-メチルヘキシル基、4-エチルヘキシル基、4-プロピルヘキシル基、5-メチルヘキシル基、5-エチルヘキシル基、5-プロピルヘキシル基が例示できる。
、Rは、それぞれ、水素原子、メチル基、エチル基が好ましく、水素原子又はメチル基がより好ましい。
【0030】
上記式2において、nは1~10の整数を示す。nは1~7が好ましく、1~5がより好ましく、1がさらに好ましい。
【0031】
上記式2において、Rはそれぞれ独立に、炭素数1~20の1価の有機基であって、加水分解性基以外の有機基を示し、Yはそれぞれ独立に水酸基又は加水分解性基を示す。bは1~3の整数を示す。Rが複数存在する場合、Rは互いに同一でも異なってもよい。Yが複数存在する場合、Yは互いに同一でも異なってもよい。
上記式2のRは、上記式1のRと同様である。
上記式2のYは、上記式1のXと同様である。
上記式2のbは上記式1のaと同様である。
【0032】
重合体Aの少なくとも1つの末端基が下式4で表される末端基であることが好ましい。
【0033】
【化3】
上記式4のR~R、Y、b、nは、式2のR~R、Y、b、nと同様である。
【0034】
<重合体Aの製造方法>
重合体Aは、前駆重合体の1つの末端基に平均して上記反応性ケイ素基を1.0個より多く導入して得られる。
重合体Aの製造方法は、前駆重合体の末端基に平均して不飽和基を1.0個よりも多く導入した後、上記不飽和基と上記シリル化剤を反応させる方法が好ましい。
前駆重合体は、活性水素含有基を有する開始剤の活性水素に、開環重合触媒の存在下で、環状エーテルを開環付加重合させたオキシアルキレン重合体である。開始剤の活性水素の数と、前駆重合体の末端基の数と、重合体Aの末端基の数は同じである。
【0035】
前駆重合体は、水酸基を有する開始剤に環状エーテルを開環付加重合させた、末端基が水酸基である重合体が好ましい。
上記開始剤としては、水酸基を2~8個有する開始剤が好ましく、水酸基を2~6個有する開始剤がより好ましく、水酸基を2個又3個有する開始剤がさらに好ましい。開始剤は、2種類以上を併用してもよい。
【0036】
水酸基を2個有する開始剤としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、低分子量のポリオキシプロピレングリコールが例示できる。
水酸基を3個以上有する開始剤としては、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、低分子量のポリオキシプロピレントリオール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、シュクロースが例示できる。
上記開始剤は、2種類以上を併用してもよい。
【0037】
開始剤に環状エーテルを開環付加重合させる際の開環付加重合触媒としては、従来公知の触媒を用いることができ、例えば、アルカリ触媒(KOH等)、遷移金属化合物-ポルフィリン錯体触媒(有機アルミニウム化合物とポルフィリンとを反応させて得られる錯体等)、複合金属シアン化物錯体触媒、ホスファゼン化合物からなる触媒が例示できる。
【0038】
重合体Aの分子量分布を狭くすることができ、粘度の低い硬化性組成物が得られやすい点から複合金属シアン化物錯体触媒が好ましい。複合金属シアン化物錯体触媒は、従来公知の化合物を用いることができ、複合金属シアン化物錯体を用いた重合体の製造方法も公知の方法を採用できる。例えば、国際公開公報第2003/062301号、国際公開公報第2004/067633号、特開2004-269776号公報、特開2005-15786号公報、国際公開公報第2013/065802号、特開2015-010162号公報に開示される化合物及び製造方法を用いることができる。
【0039】
前駆重合体の1つの末端基に不飽和基を平均して1.0個よりも多く導入する方法としては、公知の方法を特に制限なく用いることができ、例えば、国際公開第2013/180203号公報、国際公開第2014/192842号公報、特開2015-105293号、特開2015-105322号、特開2015-105323号、特開2015-105324号、国際公開第2015/080067号公報、国際公開第2015/105122号公報、国際公開第2015/111577号公報、国際公開第2016/002907号公報、特開2016-216633号、特開2017-39782号に記載される方法を用いることができる。
【0040】
前駆重合体の1つの末端基に不飽和基を平均して1.0個よりも多く導入する方法としては、前駆重合体に、アルカリ金属塩を作用させた後、不飽和基を有するエポキシ化合物を反応させ、次いで不飽和基を有するハロゲン化炭化水素化合物を反応させる方法が好ましい。
【0041】
不飽和基を有するエポキシ化合物としては、アリルグリシジルエーテル、メタリルグリシジルエーテル、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、ブタジエンモノオキシド、1,4-シクロペンタジエンモノエポキシドが例示できる。アリルグリシジルエーテルが好ましい。
【0042】
不飽和基を有するエポキシ化合物としては、下式5で表される化合物が好ましい。
【0043】
【化4】
上記式5のR、Rは、上記式4のR、Rと同じである。
【0044】
上記反応により、前駆重合体の末端基に上記不飽和基を有するエポキシ化合物に由来する不飽和基が導入され、次いで上記ハロゲン化炭化水素化合物に由来する不飽和基が導入された前駆重合体の誘導体が得られる。前駆重合体の誘導体は末端基に未反応の活性水素含有基を含んでいてもよい。
上記前駆重合体の誘導体1分子中に含まれる活性水素含有基の数は、貯蔵安定性の点から0.3個以下が好ましく、0.1個以下がより好ましい。
【0045】
上記前駆重合体の誘導体の不飽和基とシリル化剤とを反応させて、末端基に反応性ケイ素基を導入して重合体Aを得る。
シリル化剤としては、不飽和基と反応して結合を形成し得る基(例えばスルファニル基)及び上記反応性ケイ素基の両方を有する化合物、ヒドロシラン化合物(例えばHSiX3-a、ただし、X、R及びaは上記式1と同様である。)が例示できる。具体的には、例えば、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリイソプロポキシシラン、トリス(2-プロペニルオキシ)シラン、トリアセトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、エチルジメトキシシラン、メチルジイソプロポキシシラン、(α-クロロメチル)ジメトキシシラン、(α-クロロメチル)ジエトキシシランが例示できる。活性が高く良好な硬化性が得られる点から、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシランが好ましく、メチルジメトキシシラン又はトリメトキシシランがより好ましい。
【0046】
上記反応により、1つの末端基に平均して1.0個より多くの上記反応性ケイ素基を有する重合体Aが得られる。
【0047】
<化合物a>
化合物aは、重合体Aの硬化触媒である。化合物aは、チタン含有化合物、ジルコニウム含有化合物、及びアルミニウム含有化合物からなる群から選択される1種以上の化合物である。化合物aは2種類以上を併用してもよい。
【0048】
化合物aとしては、下式3で表される化合物が好ましい。
M(OR11 式3
上記式3中、R11は置換又は非置換の炭素数1~20の1価の有機基を示すか、又はいずれか2つ以上のOR11とMとが一体となって炭素数2~20である環構造を形成していることを示す。Mは、チタン、ジルコニウム、又はアルミニウムであり、Mがチタン又はジルコニウムであるときvは4であり、Mがアルミニウムであるときvは3である。上記炭素数は、R11が置換基を有する場合、置換基の炭素数を含む。
【0049】
上記1価の有機基の炭素数は、1~20が好ましく、2~15がより好ましく、3~10がさらに好ましい。
【0050】
複数のR11は同一でも異なってもよい。式3における複数のR11の合計炭素数は3~80が好ましく、6~60がより好ましく、9~40がさらに好ましい。
【0051】
1価の有機基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基が挙げられ、相溶性がより良好であり、入手が容易である点で、アルキル基、アルケニル及びシクロアルキル基が好ましく、アルキル基及びアルケニル基がさらに好ましい。アルキル基及びアルケニル基は直鎖であってもよいし、分岐であってもよい。
【0052】
直鎖のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、ラウリル基、ステアリル基が例示でき、メチル基、エチル基が好ましい。分岐のアルキル基は、上記直鎖のアルキル基中の水素原子(但し、末端の炭素中の水素原子は除く)がアルキル基で置換された構造を有する。上記置換基としてのアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基が例示でき、メチル基、エチル基、n-プロピル基が好ましい。
【0053】
シクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基が例示でき、シクロペンチル基、シクロヘキシル基が好ましい。シクロアルキル基中の水素原子がアルキル基で置換された構造を有していてもよい。上記置換基としてのアルキル基は、上記分岐のアルキル基で例示した上記置換基としてのアルキル基と同様である。
【0054】
アルケニル基としては、上記アルキル基のいずれか一つの炭素原子間の単結合が、二重結合に置換されたものが例示できる。
【0055】
アリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントリル基が例示できる。アリール基中の水素原子がアルキル基で置換された構造を有していてもよい。上記置換基としてのアルキル基は、上記分岐のアルキル基で例示した上記置換基としてのアルキル基と同様である。
【0056】
11は、アルキル基以外の置換基を有していてもよく、上記置換基としては、アルコキシ基、ハロゲン原子、水酸基、=O、アミノ基、アミド基、カルボキシ基、エステル基が例示できる。
【0057】
11が置換基として=Oを有する場合、R11は-C(=O)R11’で表されるアシル基でもよい。R11’は置換又は非置換の炭素数1~20の1価の有機基であり、R11の例示と同様であり、置換基を有する場合には、R11と同様の置換基を有してもよい。
【0058】
上記式3で表されるチタン含有化合物としては、チタニウムテトラメトキシド、チタニウムテトラエトキシド、チタニウムテトラアリルオキシド、チタニウムテトラ-n-プロポキシド、チタニウムテトライソプロポキシド、チタニウムテトラ-n-ブトキシド、チタニウムテトライソブトキシド、チタニウムテトラ-s-ブトキシド、チタニウムテトラ-t-ブトキシド、チタニウムテトラ-n-ペンチルオキシド、チタニウムテトラシクロペンチルオキシド、チタニウムテトラへキシルオキシド、チタニウムテトラシクロへキシルオキシド、チタニウムテトラべンジルオキシド、チタニウムテトラオクチルオキシド、チタニウムテトラキス(2-エチルヘキシルオキシド)、チタニウムテトラデシルオキシド、チタウムテトラドデシルオキシド、チタニウムテトラステアリルオキシド、チタニウムテトラブトキシドダイマー、チタニウムテトラキス(8-ヒドロキシオクチルオキシド)、チタニウムジイソプロポキシドビス(2-エチル-1,3-ヘキサンジオラト)、チタニウムビス(2-エチルヘキシルオキシ)ビス(2-エチル-1,3-ヘキサンジオラト)、チタニウムテトラキス(2-クロロエトキシド)、チタニウムテトラキス(2-ブロモエトキシド)、チタニウムテトラキス(2-メトキシエトキシド)、チタニウムテトラキス(2-エトキシエトキシド)、チタニウムブトキシドトリメトキシド、チタニウムジブトキシドジメトキシド、チタニウムブトキシドトリエトキシド、チタニウムジブトキシドジエトキシド、チタニウムブトキシドトリイソプロポキシド、チタニウムジブトキシドジイソプロポキシド、チタニウムテトラフェノキシド、チタニウムテトラキス(o-クロロフェノキシド)、チタニウムテトラキス(m-ニトロフェノキシド)、チタニウムテトラキス(p-メチルフェノキシド)、チタニウムテトラキス(トリメチルシリルオキシド)が例示できる。
【0059】
上記式3で表されるジルコニウム含有化合物としては、ジルコニウムテトラメトキシド、ジルコニウムテトラエトキシド、ジルコニウムテトラアリルオキシド、ジルコニウムテトラ-n-プロポキシド、ジルコニウムテトライソプロポキシド、ジルコニウムテトラ-n-ブトキシド、ジルコニウムテトライソブトキシド、ジルコニウムテトラ-s-ブトキシド、ジルコニウムテトラ-t-ブトキシド、ジルコニウムテトラ-n-ペンチルオキシド、ジルコニウムテトラシクロペンチルオキシド、ジルコニウムテトラへキシルオキシド、ジルコニウムテトラシクロへキシルオキシド、ジルコニウムテトラべンジルオキシド、ジルコニウムテトラオクチルオキシド、ジルコニウムテトラキス(2-エチルヘキシルオキシド)、ジルコニウムテトラデシルオキシド、チタウムテトラドデシルオキシド、ジルコニウムテトラステアリルオキシド、ジルコニウムテトラブトキシドダイマー、ジルコニウムテトラキス(8-ヒドロキシオクチルオキシド)、ジルコニウムジイソプロポキシドビス(2-エチル-1,3-ヘキサンジオラト)、ジルコニウムビス(2-エチルヘキシルオキシ)ビス(2-エチル-1,3-ヘキサンジオラト)、ジルコニウムテトラキス(2-クロロエトキシド)、ジルコニウムテトラキス(2-ブロモエトキシド)、ジルコニウムテトラキス(2-メトキシエトキシド)、ジルコニウムテトラキス(2-エトキシエトキシド)、ジルコニウムブトキシドトリメトキシド、ジルコニウムジブトキシドジメトキシド、ジルコニウムブトキシドトリエトキシド、ジルコニウムジブトキシドジエトキシド、ジルコニウムブトキシドトリイソプロポキシド、ジルコニウムジブトキシドジイソプロポキシド、ジルコニウムテトラフェノキシド、ジルコニウムテトラキス(o-クロロフェノキシド)、ジルコニウムテトラキス(m-ニトロフェノキシド)、ジルコニウムテトラキス(p-メチルフェノキシド)、ジルコニウムテトラキス(トリメチルシリルオキシド)が例示できる。
【0060】
上記式3で表されるアルミニウム含有化合物としては、アルミニウムトリメトキシド、アルミニウムトリエトキシド、アルミニウムトリアリルオキシド、アルミウムトリ-n-プロポキシド、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムトリ-n-ブトキシド、アルミニウムトリイソブトキシド、アルミニウムトリ-s-ブトキシド、アルミニウムトリ-t-ブトキシド、アルミニウムトリ-n-ペンチルオキシド、アルミニウムトリシクロペンチルオキシド、アルミニウムトリへキシルオキシド、アルミニウムトリシクロへキシルオキシド、アルミニウムトリベンジルオキシド、アルミニウムトリオクチルオキシド、アルミニウムトリス(2-エチルヘキシルオキシド)、アルミニウムトリデシルオキシド、アルミニウムトリドデシルオキシド、アルミニウムトリステアリルオキシド、アルミニウムトリブトキシドダイマー、アルミニウムトリス(8-ヒドロキシオクチルオキシド)、アルミニウムイソプロポキシドビス(2-エチル-1,3-ヘキサンジオラト)、アルミニウムジイソプロポキシド(2-エチル-1,3-ヘキサンジオラト)、アルミニウム(2-エチルヘキシルオキシ)ビス(2-エチル-1,3-ヘキサンジオラト)、アルミニウムビス(2-エチルヘキシルオキシ)(2-エチル-1,3-ヘキサンジオラト)、アルミニウムトリス(2-クロロエトキシド)、アルミニウムトリス(2-ブロモエトキシド)、アルミニウムトリス(2-メトキシエトキシド)、アルミニウムトリス(2-エトキシエトキシド)、アルミニウムブトキシドジメトキシド、アルミニウムメトキシドジブトキシド、アルミニウムブトキシドジエトキシド、アルミニウムエトキシドジブトキシド、アルミニウムブトキシドジイソプロポキシド、アルミニウムイソプロポキシドジブトキシド、アルミニウムトリフェノキシド、アルミニウムトリス(o-クロロフェノキシド)、アルミニウムトリス(m-ニトロフェノキシド)、アルミニウムトリス(p-メチルフェノキシド)が例示できる。
【0061】
上記式3で表される化合物aとしては、少なくとも1つのR11がアルケニル基であり、上記アルケニル基は置換基として=Oを含み、上記酸素原子がMに配位していていることが、触媒活性がより高い点で好ましい。
このような化合物aとして、下式6又は下式7で表される化合物が好ましい。
【0062】
【化5】
上記式6中、Mは上記式3と同様であり、Mがチタン、又はジルコニウムであるときnは4であり、mは0~3の整数であり、Mがアルミニウムであるときnは3であり、mは0~2の整数である。R12はそれぞれ独立に置換又は非置換の炭素数1~20の1価の炭化水素基であり、R13はそれぞれ独立に水素原子、又は置換又は非置換の炭素数1~20の1価の炭化水素基であり、R14、R15はそれぞれ独立に炭素数1~20の置換又は非置換の1価の有機基である。上記炭素数は、R12、R13、R14又はR15がそれぞれ置換基を有する場合は、置換基の炭素数を含む。
【0063】
Mがチタン、又はジルコニウムであるとき、mは0~3が好ましく、2がより好ましい。mが0~2のとき、複数のR13、R14、R15はそれぞれ同一でも異なってもよい。mが2又は3のとき、複数のR12は同一でも異なってもよい。
【0064】
Mがアルミニウムであるとき、mは0~2が好ましく、1がより好ましい。mが0又は1のとき、複数のR13、R14、R15はそれぞれ同一でも異なってもよい。mが2のとき、複数のR12は同一でも異なってもよい。
【0065】
12、R13の1価の炭化水素基の炭素数は、2~15が好ましく、3~10がより好ましく、3~7がさらに好ましい。
【0066】
1価の炭化水素基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基が挙げられ、アルキル基、シクロアルキル基が好ましく、アルキル基がさらに好ましい。アルキル基及びアルケニル基は直鎖又は分岐である。
【0067】
アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基としては、上記式3のR11で例示したアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基と同様である。
【0068】
14、R15の1価の有機基は、それぞれ独立に、炭素数1~20の1価の炭化水素基又は-OR16で表される基であることが好ましい。R16は炭素数1~20の1価の炭化水素基である。
14、R15、R16の1価の炭化水素基の炭素数は1~20が好ましく、1~15がより好ましく、1~10がさらに好ましい。
【0069】
1価の炭化水素基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基が挙げられ、アルキル基、シクロアルキル基が好ましく、アルキル基がさらに好ましい。アルキル基及びアルケニル基は直鎖又は分岐である。
【0070】
アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基としては、上記式3のR11で例示したアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基と同様である。
14、R15、R16で表されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、ブチル基が好ましい。
-OR16で表される基としては、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基又はブトキシ基が好ましい。
【0071】
12、R13、R14、R15は、アルキル基以外の置換基を有していてもよく、上記置換基としては、アルコキシ基、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基が例示できる。
【0072】
化合物aとしては、上記式6において、Mがチタン又はジルコニウムであり、mが2であり、R12が炭素数1~10のアルキル基であり、R13が水素原子であり、R14が炭素数1~10のアルキル基であり、R15が炭素数1~10のアルコキシ基である化合物が、耐熱試験前後で硬化物の伸びの低下が抑制されやすい点で好ましい。
化合物aとしては、上記式6において、Mがチタン又はジルコニウムであり、mが2であり、R12が炭素数1~6のアルキル基であり、R13が水素原子であり、R14が炭素数1~4のアルキル基であり、R15が炭素数1~6のアルコキシ基である化合物が、耐熱試験前後で硬化物の伸びの低下が抑制されやすい点でより好ましい。
化合物aとしては、上記式6において、Mがチタン又はジルコニウムであり、mが2であり、R12が炭素数1~4のアルキル基であり、R13が水素原子であり、R14が炭素数1~3のアルキル基であり、R15が炭素数1~3のアルコキシ基である化合物が、耐熱試験前後で硬化物の伸びの低下が抑制されやすい点でさらに好ましい。
【0073】
化合物aとしては、上記式6において、Mがアルミニウムであり、mが1であり、R12が炭素数1~10のアルキル基であり、R13が水素原子であり、R14が炭素数1~10のアルキル基であり、R15が炭素数1~10のアルコキシ基である化合物が好ましい。
【0074】
【化6】
上記式7中、Mは上記式3と同様であり、Mがチタン、又はジルコニウムであるときpは2であり、Mがアルミニウムであるときpは1である。R13、R14、R15は上記式6と同様である。R16は炭素数1~20の置換又は非置換の2価の炭化水素基である。
【0075】
16の2価の炭化水素基の炭素数は2~20が好ましく、2~15がより好ましく、3~10がさらに好ましい。上記炭素数は、R16が置換基を有する場合は、置換基の炭素数を含む。
【0076】
2価の炭化水素基としては、アルキレン基、シクロアルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基が挙げられ、アルキレン基、シクロアルキレン基が好ましく、アルキレン基がさらに好ましい。アルキレン基及びアルケニレン基は直鎖又は分岐である。
【0077】
アルキレン基、シクロアルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基としては、上記式3のR11で例示したアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基から水素原子を1個除いた基が例示できる。
【0078】
16は、アルキル基以外の置換基を有していてもよく、上記置換基としては、アルコキシ基、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基が例示できる。
【0079】
上記式6又は7で表されるチタン含有化合物としては、チタニウムジメトキシビス(エチルアセトアセテート)、チタニウムジメトキドビス(アセチルアセトネート)、チタニウムジエトキシビス(エチルアセトアセテート)、チタニウムジエトキドビス(アセチルアセトネート)、チタニウムジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)、チタニウムジイソプロポキシビス(メチルアセトアセテート)、チタニウムジイソプロポキシビス(t-ブチルアセトアセテート)、チタニウムジイソプロポキシビス(メチル-3-オキソ-4,4-ジメチルヘキサノエート)、チタニウムジイソプロポキシビス(エチル-3-オキソ-4,4,4-トリフルオロペンタノエート)、チタニウムジイソプロポキシビス(アセチルアセトネート)、チタニウムジイソプロポキシビス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオネート)、チタニウムジ-n-ブトキシビス(エチルアセトアセテート)、チタニウムジ-n-ブトキシビス(アセチルアセトネート)、チタニウムジイソブトキシビス(アセチルアセトネート)、チタニウムジ-t-ブトキシビス(エチルアセトアセテート)、チタニウムジ-t-ブトキシビス(アセチルアセトネート)、チタニウムジ-2-エチルヘキソキシビス(エチルアセトアセテート)、チタニウムジ-2-エチルヘキソキシビス(アセチルアセトネート)、1,2-ジオキシエタンチタニウムビス(エチルアセトアセテート)、1,3-ジオキシプロパンチタニウムビス(エチルアセトアセテート)、2,4-ジオキシペンタンチタニウムビス(エチルアセトアセテート)、2,4-ジメチル-2,4-ジオキシペンタンチタニウムビス(エチルアセトアセテート)、チタニウムジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)、チタニウムテトラキス(エチルアセトアセテート)、チタニウムテトラキス(アセチルアセトネート)、チタニウムビス(トリメチルシロキシ)ビス(エチルアセトアセテート)、チタニウムビス(トリメチルシロキシ)ビス(アセチルアセトナート)が例示できる。耐熱試験前後で硬化物の伸びの低下が抑制されやすい点で、チタニウムジエトキシドビス(エチルアセトアセテート)、チタニウムジエトキドビス(アセチルアセトネート)、チタニウムジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)、チタニウムジイソプロポキシビス(アセチルアセトネート)、チタニウムジ-n-ブトキシビス(エチルアセトアセテート)、チタニウムジ-t-ブトキシビス(アセチルアセトネート)が好ましく、チタニウムジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)が特に好ましい。
【0080】
上記式6又は7で表されるジルコニウム含有化合物としては、ジルコニウムテトラ(アセチルアセトネート)、ジルコニウムジメトキシビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムジメトキドビス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムジエトキシビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムジエトキドビス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムジエトキシドビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムトリイソプロポキシ(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムトリ-n-ブトキシド(エチルアセトアセテート)ジルコニウムジイソプロポキシビス(メチルアセトアセテート)、ジルコニウムジイソプロポキシビス(t-ブチルアセトアセテート)、ジルコニウムジイソプロポキシビス(メチル-3-オキソ-4,4-ジメチルヘキサノエート)、ジルコニウムジイソプロポキシビス(エチル-3-オキソ-4,4,4-トリフルオロペンタノエート)、ジルコニウムジイソプロポキシビス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムジイソプロポキシビス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオネート)、ジルコニウムジ-n-ブトキシビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムジ-n-ブトキシビス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムジイソブトキシビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムジイソブトキシビス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムジ-t-ブトキシビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムジ-t-ブトキシビス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムジ-2-エチルヘキソキシビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムジ-2-エチルヘキソキシビス(アセチルアセトネート)、1,2-ジオキシエタンジルコニウムビス(エチルアセトアセテート)、1,3-ジオキシプロパンジルコニウムビス(エチルアセトアセテート)、2,4-ジオキシペンタンジルコニウムビス(エチルアセトアセテート)、2,4-ジメチル-2,4-ジオキシペンタンジルコニウムビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)、ジルコニウムイソプロポキシトリス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウム-n-ブトキシドトリス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムテトラキス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムテトラキス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムビス(トリメチルシロキシ)ビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムビス(トリメチルシロキシ)ビス(アセチルアセトナート)が例示できる。耐熱試験前後で硬化物の伸びの低下が抑制されやすい点で、ジルコニウムジエトキシドビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムジイソプロポキシドビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウム-n-ジブトキシビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムトリイソプロポキシ(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムトリ-n-ブトキシド(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムイソプロポキシドトリス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムテトラキス(アセチルアセトネート)ジルコニウム-n-ブトキシドトリス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウム-n-ブトキシド(アセチルアセトネート)ビス(エチルアセトアセテート)が好ましく、ジルコニウムテトラキス(アセチルアセトネート)及びジルコニウムジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)が特に好ましい。
【0081】
上記式6又は7で表されるアルミニウム含有化合物としては、アルミニウムメトキシビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムメトキドビス(アセチルアセトネート)、アルミニウムエトキシビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムエトキドビス(アセチルアセトネート)、アルミニウムイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムイソプロポキシビス(メチルアセトアセテート)、アルミニウムイソプロポキシビス(t-ブチルアセトアセテート)、アルミニウムジメトキシド(エチルアセトアセテート)、アルミニウムジメトキシ(アセチルアセトネート)、アルミニウムジエトキシ(エチルアセトアセテート)、アルミニウムジエトキシ(アセチルアセトネート)、アルミニウムジイソプロポキシ(エチルアセトアセテート)、アルミニウムジイソプロポキシ(メチルアセテート)、アルミニウムジイソプロポキシ(t-ブチルアセトアセテート)、アルミニウムジイソプロポキシ(メチルアセトアセテート)アルミニウムイソプロポキシビス(メチル-3-オキソ-4,4-ジメチルヘキサノエート)、アルミニウムイソプロポキシビス(エチル-3-オキソ-4,4,4-トリフルオロペンタノエート)、アルミニウムイソプロポキシビス(アセチルアセトネート)、アルミニウムイソプロポキシビス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオネート)、アルミニウム-n-ブトキシビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウム-n-ブトキシビス(アセチルアセトネート)、アルミニウムイソブトキシビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムイソブトキシビス(アセチルアセトネート)、アルミニウム-t-ブトキシビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウム-t-ブトキシビス(アセチルアセトネート)、アルミニウム-2-エチルヘキソキシビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウム-2-エチルヘキソキシビス(アセチルアセトネート)、1,2-ジオキシエタンアルミニウム(エチルアセトアセテート)、1,3-ジオキシプロパンアルミニウム(エチルアセトアセテート)、2,4-ジオキシペンタンアルミニウム(エチルアセトアセテート)、2,4-ジメチル-2,4-ジオキシペンタンアルミニウム(エチルアセトアセテート)、アルミニウムイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウム(アセチルアセトネート)ビス(エチルアセトアセテート)が例示できる。耐熱試験前後で硬化物の伸びの低下が抑制されやすい点で、アルミニウムエトキシドビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムエトキドビス(アセチルアセトネート)、アルミニウムイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムイソプロポキシビス(アセチルアセトネート)、アルミニウム-t-ブトキシドビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウム-t-ブトキシドビス(アセチルアセトネート)、アルミニウムジメトキシド(エチルアセトアセテート)、アルミニウムジメトキド(アセチルアセトネート)、アルミニウムジエトキシ(エチルアセトアセテート)、アルミニウムジエトキ(アセチルアセトネート)、アルミニウムジイソプロポキシ(エチルアセトアセテート)、アルミニウムジイソプロポキシ(メチルアセトアセテート)、アルミニウムジイソプロポキシ(t-ブチルアセトアセテート)、アルミニウム(アセチルアセトネート)ビス(エチルアセトアセテート)が好ましく、アルミニウムイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムジイソプロポキシド(エチルアセトアセテート)、アルミニウム(アセチルアセトネート)ビス(エチルアセトアセテート)が特に好ましい。
【0082】
化合物aとしては、市販のものを用いることができる。市販されている化合物aとしては、オルガチックスTC-401(チタニウムテトラキス(アセチルアセトネート))、オルガチックスTC-750(チタニウムジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート))、オルガチックスZC-150(ジルコニウムテトラ(アセチルアセトネート))、オルガチックスZC-162(ジルコニウム(テトラアセチルアセトネート)、粉砕品)、オルガチックスZC-700(ジルコニウムテトラアセチルアセトネート)、オルガチックスAL-3100(アルミニウムトリス(アセチルアセトネート))、オルガチックスAL-3200(アルミニウム(アセチルアセトネート)ビス(エチルアセトアセテート))、オルガチックスAL-3215(アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート))、いずれも松本ファインケミカル社製品名)が例示できる。
市販されている化合物aとしては、オルガチックスTC-750、オルガチックスAL-3200が耐熱試験前後で硬化物の伸びの低下が抑制される点で好ましい。
【0083】
[硬化性組成物の組成]
硬化性組成物は、重合体A及び化合物aに、さらに必要に応じた成分を添加し、混合して得られる。
硬化性組成物の総質量に対する重合体Aの含有割合は、5~70質量%が好ましく、7~60質量%がより好ましく、10~50質量%がさらに好ましい。重合体Aの含有割合が上記範囲内であると、硬化物の強度と伸びがより優れる。
硬化性組成物の総質量に対する化合物aの含有割合は、0.1~14質量%が好ましく、0.2~10.5質量%がより好ましく、0.3~7質量%がさらに好ましい。化合物aの含有割合が上記範囲内であると、耐熱試験前後で硬化物の伸びの低下が抑制される。
重合体Aの100質量部に対する化合物aの含有量は0.1~20質量部であり、0.5~15質量部が好ましく、0.8~12質量部がより好ましく、1.0~10質量部がさらに好ましい。化合物aの含有量が上記範囲の下限値以上であると、耐熱試験前後で硬化物の伸びの低下が抑制され、上限値以下であると、適切な作業時間を確保しやすく、作業性がより向上する。
【0084】
[その他の成分]
硬化性組成物は、1つの末端基に平均して1.0個以下の上記式1で表される反応性ケイ素基を有するオキシアルキレン重合体、上記式1で表される反応性ケイ素基を有するオキシアルキレン重合体以外の重合体、上記式1で表される反応性ケイ素基を有しない重合体を含んでいてもよい。オキシアルキレン重合体以外の重合体としては、アクリル酸系重合体、メタクリル酸系重合体等のビニル系重合体、飽和炭化水素系重合体、ポリエステル系重合体、ポリサルファイド系重合体、ポリアミド系重合体、ポリカーボネート系重合体、ジアリルフタレート系重合体が挙げられる。
硬化性組成物は、その他の成分を含んでもよい。その他の成分としては、充填材、可塑剤、チクソ性付与剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、脱水剤、接着性付与剤、アミン化合物、酸素硬化性化合物、光硬化性化合物、硬化触媒(シラノール縮合触媒)が例示できる。
その他の成分は、国際公開第2013/180203号、国際公開第2014/192842号、国際公開第2016/002907号、特開2014-88481号公報、特開2015-10162号公報、特開2015-105293号公報、特開2017-039728号公報、特開2017-214541号公報などに記載される従来公知のものを、制限なく組み合わせて用いることができる。
各成分は2種類以上を併用してもよい。
【0085】
本発明の硬化性組成物から得られる硬化物の、後述の実施例に示される引張試験により測定される耐熱試験前又は耐熱試験後の50%伸張したときの応力(M50)は、0.1N/mm以上となりやすく、さらには0.15N/mm以上となりやすい。0.2N/mm以上であれば、良好な強度が得られ、接着剤として好適である。
【0086】
本発明の硬化性組成物から得られる硬化物の、後述の実施例に示される引張試験により測定される耐熱試験前又は耐熱試験後の最大点凝集力は、0.3N/mm以上となりやすく、さらには0.5N/mm以上となりやすい。0.7N/mm以上であれば、良好な強度が得られ、接着剤として好適である。
【0087】
本発明の硬化性組成物から得られる硬化物の、後述の実施例に示される引張試験により測定される耐熱試験前の最大点伸びに対する耐熱試験後の最大点伸びの変化率は、0%以上となりやすく、さらには3%以上となりやすい。5%以上であれば、床暖房などの局所的に熱がかかる建築部材の接着剤用途においても、熱により硬化物にひび割れが発生しづらい。
【0088】
硬化性組成物は、すべての配合成分を予め配合し密封保存して、施工後に空気中の湿気により硬化させる1液型でもよく、少なくとも反応性ケイ素基を有する成分を含む主剤組成物と、少なくとも硬化触媒を含む硬化剤組成物とを別々に保存し、使用前に硬化剤組成物と主剤組成物を混合する2液型でもよい。施工が容易であるため、1液型の硬化性組成物が好ましい。
【0089】
1液型の硬化性組成物は水分を含まないことが好ましい。水分を含む配合成分を予め脱水乾燥するか、また配合混練中に減圧して脱水することが好ましい。
2液型の硬化性組成物において、硬化剤組成物は水を含んでもよい、主剤組成物は少量の水分を含んでもゲル化し難いが、貯蔵安定性の点からは配合成分を予め脱水乾燥することが好ましい。
貯蔵安定性を向上させるために、1液型の硬化性組成物又は2液型の主剤組成物に脱水剤を添加してもよい。
【0090】
硬化性組成物の用途としては、シーリング材(例えば建築用弾性シーリング材、複層ガラス用シーリング材、ガラス端部の防錆・防水用封止材、太陽電池裏面封止材、建造物用密封材、船舶用密封材、自動車用密封材、道路用密封材)、電気絶縁材料(電線・ケーブル用絶縁被覆材)、接着剤、ポッティング材が好適である。
特に、局所的に熱がかかる部分に使用される接着剤用途に好適であり、例えば床暖房等の建築部材に使用される接着剤用途に好適である。
【実施例
【0091】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0092】
<測定方法>
[水酸基換算分子量]
以下の例におけるオキシアルキレン重合体の前駆重合体の水酸基換算分子量は、上記前駆重合体の水酸基価をJIS K 1557(2007)に基づいて算出し、「56,100/(水酸基価)×(開始剤の活性水素の数、又は前駆重合体の末端基の数)」として算出した値である。
【0093】
[Mn及び分子量分布]
HLC-8220GPC(東ソー社製品名)を用いて、Mw、Mn及びMw/Mnを求めた。
【0094】
[重合体における1分子あたりの反応性ケイ素基の平均数(シリル基数)]
重合体の末端基中に塩化アリル及びアリルグリシジルエーテルを用いて不飽和基を導入し、シリル化剤を上記不飽和基と反応させて反応性ケイ素基を導入する方法において、末端基中の不飽和基に対する、シリル化剤の反応性ケイ素基の仕込み当量(モル比)をシリル化率とした。
塩化アリル及びアリルグリシジルエーテルを用いて導入された不飽和基とシリル化剤の反応において、副反応によりシリル化剤と反応しない不飽和基はおよそ10%である。したがって不飽和基の90モル%未満をシリル化剤と反応させる場合には、上記仕込み当量をシリル化率とする。
シリル化率に基づいて1分子あたりのシリル基数を算出した。
1分子あたりのシリル基数を末端基の数で除して、末端基あたりのシリル基数を算出した。
【0095】
[引張試験]
JIS A 1439の建築用シーリング材の試験方法に準拠して、アルミニウム板を被着体として、引張特性試験用の試験体を作製した。作成した試験体を温度23度、湿度50%で7日間養生し、更に温度50度、湿度65%で7日間養生を行い、標準サンプルを得た。この標準サンプルをテンシロン試験機にて23℃の条件下、引張速度50mm/分で引張試験を行い、50%伸張した時の応力(M50、単位:N/mm)、最大点凝集力(Tmax、単位:N/mm)、最大点伸び(単位:%)の引張特性を測定した。
上記標準サンプルをさらに温度110℃で7日間養生し、耐熱試験サンプルを得た。この耐熱試験サンプルを上記と同様にして引張試験を行い、50%伸張した時の応力(M50、単位:N/mm)、最大点凝集力(Tmax、単位:N/mm)、最大点伸び(単位:%)の引張特性を測定した。
耐熱試験前後の伸びの変化率は、下式8から算出した。
耐熱試験前後の伸びの変化率[%]=(耐熱試験サンプルの最大点伸び-標準サンプルの最大点伸び)/標準サンプルの最大点伸び×100 式8
【0096】
[接着性試験]
上記引張試験後の耐熱サンプルについて、被着体の表面を目視で確認し、被着体表面に樹脂成分が残存している場合をCF、被着体上に樹脂成分が残存していない場合をAFとして評価した。CFである場合には、被着体の面積を100%として、樹脂成分が残存している面積の割合(%)を算出した。
【0097】
<重合体Aの合成>
Mnが約2,000で、末端基として水酸基を1個ずつ有するオキシプロピレン重合体を開始剤とし、配位子がt-ブチルアルコールの亜鉛ヘキサシアノコバルテート錯体(以下、「TBA-DMC触媒」と記す。)を触媒として使用してプロピレンオキシドを付加重合し、水酸基換算分子量が12,000の前駆重合体a1を得た。続いて、前駆重合体a1の水酸基に対して1.15倍当量のナトリウムメトキシドのメタノール溶液を添加して前駆重合体a1における水酸基をアルコラート化した。次いで加熱減圧によりメタノールを留去し、さらに前駆重合体a1の水酸基に対して1.05倍当量のアリルグリシジルエーテルを添加し、130℃で2時間反応させた。次いで、前駆重合体a1の水酸基に対して、0.28モル当量のナトリウムメトキシドのメタノール溶液を添加してメタノールを除去し、さらに前駆重合体a1の水酸基に対して、2.10モル当量の塩化アリルを添加して130℃で2時間反応を行い、減圧下で系中から未反応の塩化アリルを除去し、末端基にアリル基が導入されたオキシプロピレン重合体(重合体Q1)を得た。重合体Q1の1つの末端基に導入されたアリル基は平均2.0個であった。次いで、白金ジビニルジシロキサン錯体の存在下、重合体Q1のアリル基に対して0.80モル当量のジメトキシメチルシランをシリル化剤として添加し、70℃にて5時間反応させた後、未反応のジメトキシメチルシランを減圧下で除去し、反応性ケイ素基としてジメトキシメチルシリル基が1つの末端基に平均して1.0個より多く導入された重合体(重合体A)を得た。
得られた重合体のMn、Mw/Mn、1分子あたりの反応ケイ素基の平均数、末端基あたりのシリル基数を表1に示す(以下、同様に示す。)。
【0098】
<重合体Bの合成>
プロピレングリコールを開始剤とし、TBA-DMC触媒の存在下に、プロピレンオキシドを付加重合し、水酸基換算分子量が12,000の前駆重合体b1を得た。続いて、前駆重合体b1の水酸基に対して1.15倍当量のナトリウムメトキシドのメタノール溶液を添加して前駆重合体b1における水酸基をアルコラート化した。次いで、加熱減圧によりメタノールを留去し、さらに前駆重合体b1の水酸基に対して過剰量の塩化アリルを添加してポリオキシアルキレン鎖の末端基に導入されたアルコラート基をアリル基に変換した。末端基に導入されたアリル基は、平均1.0個であった。次いで、塩化白金酸六水和物の存在下、前駆重合体b1の水酸基がアリルオキシ基に変換された化合物に対して0.80倍モルのジメトキシメチルシランをシリル化剤として添加し、70℃にて5時間反応させた後、未反応のジメトキシメチルシランを減圧下で除去し、反応性ケイ素基としてジメトキシメチルシリル基が1つの末端基に平均して1.0個以下導入された重合体(重合体B)を得た。
【0099】
【表1】
【0100】
硬化触媒として、チタニウムジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)(オルガチックスTC750、松本ファインケミカル株式会社製品名)、ジブチル錫ジラウレート(DBTDL、東京化成工業株式会社製)、ジブチル錫アセチルアセトナート(ネオスタンU220H、日東化成株式会社製品名)を使用した。
【0101】
<硬化性組成物の製造>
例1、2は実施例であり、例3~8は比較例である。
【0102】
(例1~8)
表2に示す配合(単位:質量部)の重合体、硬化触媒、及び重合体100質量部に対して、可塑剤(DINP、ジイソノニル二レート、ビニサイザー90、花王社製)の40質量部、安定剤(Songnox2450、Songwon社製品名)の1質量部、安定剤(Ti326、BASFジャパン株式会社製品名社製)の1質量部、チクソ性付与剤(水添ひまし油系チクソ性付与剤、ディスパロン6500、楠本化成社製品名)の3質量部、充填剤(膠質炭酸カルシウム、白艶化CCR、白石工業社製品名)の75質量部、充填剤(重質炭酸カルシウム、ホワイトンSB、白石工業社製品名)の75質量部、脱水剤(ビニルトリメトキシシラン、KBM-1003、信越化学社製品名)の3質量部、接着性付与剤(3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、KBM-603、信越化学社製品名)の1質量部、接着性付与剤(3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、KBM-403、信越化学社製品名)の1質量部を混合して硬化性組成物を調製した。
得られた硬化性組成物の硬化物について、上記の方法により、M50、Tmax、最大点伸び、接着性を評価した。結果を表2に示す。
【0103】
【表2】
【0104】
例1、2は耐熱試験前後で伸びが向上した。例3、4は1つの末端基に平均して1.0個以下の反応性ケイ素基を有するオキシアルキレン重合体を使用した比較例である。例5、7は有機錫触媒を使用した比較例である。例6、8は1つの末端基に平均して1.0個以下の反応性ケイ素基を有するオキシアルキレン重合体及び有機錫触媒を使用した比較例である。例3~8は耐熱試験前後で伸びが低下した。