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特許7359072水性固体ゲル球状粒子の分散体及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-02
(45)【発行日】2023-10-11
(54)【発明の名称】水性固体ゲル球状粒子の分散体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/25 20060101AFI20231003BHJP
   A61K 8/04 20060101ALI20231003BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20231003BHJP
   A61K 8/891 20060101ALI20231003BHJP
   A61Q 1/12 20060101ALI20231003BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
A61K8/25
A61K8/04
A61K8/73
A61K8/891
A61Q1/12
A61Q19/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020071395
(22)【出願日】2020-04-13
(65)【公開番号】P2021167291
(43)【公開日】2021-10-21
【審査請求日】2022-04-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井口 良範
【審査官】池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0077880(US,A1)
【文献】特開2006-160714(JP,A)
【文献】特開2004-224709(JP,A)
【文献】特開2002-282677(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
B01J 13/00-13/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)体積平均粒径が0.5~50μmであ、水性固体ゲル球状粒子、
(B)B-2)体積平均粒径が1~1,500nmであり、かつ(A)水性固体ゲル球状粒子の体積平均粒径の1/10以下である疎水性粒子から選ばれる1種以上、及び
(C)油性成分
を含む、(A)水性固体ゲル球状粒子の分散体。
【請求項2】
(A)体積平均粒径が0.5~50μmである、水性固体ゲル球状粒子、
(B)(B-2)体積平均粒径が1~1,500nmであり、かつ(A)水性固体ゲル球状粒子の体積平均粒径の1/10以下である疎水性粒子から選ばれる1種以上、及び
(C)油性成分
を含む、(A)水性固体ゲル球状粒子の分散体(但し、界面活性剤及び粘土鉱物を含むものを除く。)。
【請求項3】
(A)水性固体ゲル球状粒子が、(A-1)水性ゲル化剤及び(A-2)水を含み、(A-1)水性ゲル化剤の含有量が(A)水性固体ゲル球状粒子中の0.1~20質量%である請求項1又は2記載の分散体。
【請求項4】
(A-1)水性ゲル化剤が、植物系天然高分子化合物、微生物廃生高分子化合物、動物系天然高分子化合物及び半合成高分子化合物から選択される1種以上である請求項記載の分散体。
【請求項5】
(A)水性固体ゲル球状粒子のゼリー強度(JIS K 6503に規定)が、500g以上である請求項1~4のいずれか1項記載の水性の固体ゲル粒子の分散体。
【請求項6】
(B-2)疎水性粒子が疎水性シリカである請求項1~のいずれか1項記載の分散体。
【請求項7】
下記(i)~(iii)の工程を含む請求項のいずれか1項に記載の固体ゲル粒子の分散体を製造する製造方法。
(i)(A-2)水に、(A-1)水性ゲル化剤を溶解して溶解液を得る工程、
(ii)工程(i)で得られた溶解液、B-2)体積平均粒径が1~1,500nmであり、かつ(A)水性固体ゲル球状粒子の体積平均粒径の1/10以下である疎水性粒子から選ばれる1種以上、及び(C)油性成分を混合し、W/O型エマルジョンを作製する工程、及び
(iii)工程(ii)で得られたW/O型エマルジョンの水相をゲル化させる工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧料に有用な水性固体ゲル球状粒子の分散体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シリコーンゴム粒子、ウレタン粒子及び架橋ポリアクリル酸エステル粒子等のゴム弾性を有する粒子は、ファンデーション等の化粧品において、柔らかな感触、なめらかさ等の使用感及び伸展性を付与する目的で使用されている。
【0003】
一方、直径5mm以下の微細な非水溶性プラスチックであるマイクロプラスチックは、それ自体、含有又は吸着する化学物質が食物連鎖に取り込まれるおそれがある等、生態系への影響が懸念され、世界的にも関心の高い課題となっており、各国、各種業界団体が規制を検討している。前記のような粒子として製造されたマイクロプラスチックは、サイズが非常に小さいため、河川、海洋、池沼等に流れ出した場合、回収は困難である。また、前記のゴム弾性を有する粒子は自然環境中で分解もしない。
【0004】
自然環境中で、微生物等により分解される生分解性を有する物質より構成される粒子であれば、生態系への影響はなくなると考えられる。例えば、特開昭63-130108号公報には、含水アルギン酸カリウムの小球状物質を配合した皮膚化粧料、特開2014-181224号公報には寒天ゲル粒子を水性媒体に分散してなる化粧料、特開2001-187710号公報には化粧料有効成分を担持したハイドロゲル粒子を含有する化粧料が提案されており、それら粒子を構成している水性のゲル化剤は、生分解性を有するものである。しかしながら、それらの水性ゲル粒子は粒径が大きく、また、肌への塗擦によって崩壊するものであるため、柔らかな感触、なめらかさ等の使用感及び伸展性を付与する効果はない。
【0005】
特開2001-131528号公報には、水性ゲルからなる芯物質を疎水性粉体で被覆してなる含水粉末が提案されている。しかしながら、粉砕により粉末化していることより粒子形状は不定形であり、また粒径も大きいため、柔らかな感触、なめらかさ等の使用感及び伸展性を付与する効果はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開昭63-130108号公報
【文献】特開2014-181224号公報
【文献】特開2001-187710号公報
【文献】特開2001-131528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、粒子形状が球形であり、粒径が小さい水性の固体ゲル粒子が分散した分散体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、水性ゲル化剤を含む水溶液を用いW/O型エマルジョンとする方法により、水性固体ゲル球状粒子が分散した分散体とすることで、上記課題を解決できることを知見し、本発明をなすに至ったものである。
【0009】
従って、本発明は下記発明を提供する。
1.(A)体積平均粒径が0.5~50μmであり、水性固体ゲル球状粒子、
(B)(B-1)界面活性剤及び(B-2)体積平均粒径が1~1,500nmであり、かつ(A)水性固体ゲル球状粒子の体積平均粒径の1/10以下である疎水性粒子から選ばれる1種以上、及び
(C)油性成分
を含む、(A)水性固体ゲル球状粒子の分散体。
2.(A)水性固体ゲル球状粒子が、(A-1)水性ゲル化剤及び(A-2)水を含み、(A-1)水性ゲル化剤の含有量が(A)水性固体ゲル球状粒子中の0.1~20質量%である1記載の分散体。
3.(A)水性固体ゲル球状粒子のゼリー強度(JIS K 6503に規定)が、500g以上である1又は2記載の水性の固体ゲル粒子の分散体。
4.(A-1)水性ゲル化剤が、植物系天然高分子化合物、微生物廃生高分子化合物、動物系天然高分子化合物及び半合成高分子化合物から選択される1種以上である2又は3記載の分散体。
5.(B-2)疎水性粒子が疎水性シリカである1~4のいずれかに記載の分散体。
6.下記(i)~(iii)の工程を含む2~5のいずれかに記載の固体ゲル粒子の分散体を製造する製造方法。
(i)(A-2)水に、(A-1)水性ゲル化剤を溶解して溶解液を得る工程、
(ii)工程(i)で得られた溶解液、(B)(B-1)界面活性剤及び(B-2)体積平均粒径が1~1,500nmであり、かつ(A)水性固体ゲル球状粒子の体積平均粒径の1/10以下である疎水性粒子から選ばれる1種以上、及び(C)油性成分を混合し、W/O型エマルジョンを作製する工程、及び
(iii)工程(ii)で得られたW/O型エマルジョンの水相をゲル化させる工程。
【発明の効果】
【0010】
本発明の水性固体ゲル球状粒子の分散体は、ファンデーション等の化粧品において、柔らかな感触、なめらかさ等の使用感及び伸展性を付与する目的で好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1の水性固体ゲル粒子の光学顕微鏡写真である。
図2】実施例2の水性固体ゲル粒子の光学顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
[水性固体ゲル球状粒子の分散体]
本発明の水性固体ゲル球状粒子の分散体は、(A)水性固体ゲル球状粒子、(B)(B-1)界面活性剤及び(B-2)疎水性粒子から選ばれる1種以上、及び(C)油性成分を含む組成物である、(A)水性固体ゲル球状粒子が、(C)油性成分に分散してなる分散体である。
【0013】
[(A)成分]
(A)成分は、体積平均粒径が0.5~50μmである、水性固体ゲル球状粒子である。以下、(A)成分を「ゲル粒子」と記載する場合がある。
【0014】
(A)ゲル粒子の体積平均粒径(MV値)は0.5~50μmであり、好ましくは1~40μmの範囲である。化粧料に柔らかな感触、なめらかさ等の使用感及び伸展性付与できる点から、この範囲が好ましい。体積平均粒径は、顕微鏡法、光散乱法、レーザー回折法、液相沈降法、電気抵抗法等から適宜選択して測定できるが、上記範囲内であれば、レーザー回折・散乱法で測定する。例えば、レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置(装置名:LA-960、(株)堀場製作所製)等の装置を用いることができる。
【0015】
本発明において、「球状」とは、粒子の形状が、真球だけを意味するものではなく、最長軸の長さ/最短軸の長さ(アスペクト比)が平均して、通常1~4、好ましくは1~2、より好ましくは1~1.6、さらにより好ましくは1~1.4の範囲にある変形した楕円体も含むことを意味する。粒子の形状は、粒子を光学顕微鏡にて観察することにより確認することができる。
【0016】
(A)ゲル粒子の硬さや強度は、特に限定されないが、高い方が好ましい。硬さや強度が低いと肌に塗布した際に塗擦力で粒子が崩壊するおそれがある。硬さについては、例えば、日本ゴム協会標準規格(SRIS)に規定されているアスカーゴム硬度計C型による測定で、1以上が好ましく、より好ましくは5以上である。上限は特に制限されないが、90とすることもできる。強度については、例えば、JIS K 6503に規定されているゼリー強度が、500g以上が好ましく、より好ましくは1,000g以上である。上限は特に制限されないが、10,000gとすることもできる。なお、ゲル粒子の強度を測定するサンプルは後述する実施例の方法である。
【0017】
なお、本発明において「水性」とは、ゲルの分散媒が水であることを意味する。「固体」とは、流動性を有しない、形を有するものをいい、前記要件を満たすゲルも含まれる。
【0018】
(A)ゲル粒子は、(A-1)水性ゲル化剤及び(A-2)水を含むことが好ましい。(A-1)水性ゲル化剤とは、水に溶解又は膨潤することにより水をゲル化するものである。例えば、寒天、グァーガム、ローカストビーンガム、クインスシードガム、タマリンドシードガム、タラガム、カシアガム、ファーセンラン、カラギーナン、アルギン酸ナトリウム、デンプン、ペクチン、アラビノガラクタン、コンニャク等の植物系天然高分子化合物、キサンタンガム、スクレログルカン、プルラン、デキストラン、ジェランガム、カードラン等の微生物廃生高分子化合物、ゼラチン、アルブミン、カゼイン等の動物系天然高分子化合物、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体等の半合成高分子化合物、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー、アルキル変性カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸ソーダ、ポリメタクリル酸ソーダ、ポリビニルピロリドン等の合成高分子化合物、ケイ酸ナトリウムマグネシウム、含水ケイ酸アルミニウム、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、フッ素四ケイ素雲母等の水膨潤性粘土鉱物等が挙げられ、1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。中でも、微生物等により分解される生分解性を有する水性ゲル化剤として、植物系天然高分子化合物、微生物廃生高分子化合物、動物系天然高分子化合物、半合成高分子化合物が好ましい。
【0019】
(A-1)水性ゲル化剤の含有量は、ゲル粒子の硬さや強度を高くし、肌に塗布した際に塗擦力で粒子が崩壊せず、かつゴム弾性を有する物性とする点から、(A)ゲル粒子中の0.1~20質量%が好ましく、1~15質量%がより好ましい。(A)ゲル粒子中には、他の水溶性成分を含有してもよく、例えば、パラオキシ安息酸エステル、フェノキシエタノール等の防腐剤、1,3-ブチレングリコールジプロピレングリコール、エチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン等の保湿剤、エタノール、メントール等の清涼剤、ビタミンC等の酸化防止剤等が挙げられる。
【0020】
[(B)成分]
(B)成分は、(B-1)界面活性剤及び(B-2)体積平均粒径が1~1,500nmであり、かつ(A)水性固体ゲル球状粒子の体積平均粒径の1/10以下である疎水性粒子から選ばれる1種以上であり、1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。(B)成分は、後述する本発明の分散体の製造方法のW/O型のエマルジョンの製造工程において、乳化剤として作用する。また、(C)油性成分中の(A)ゲル粒子の分散安定剤として作用する。(B)成分は、界面活性剤及び疎水性粒子を両方使用してもよいし、界面活性剤又は疎水性粒子のいずれかとしてもよい。
【0021】
界面活性剤は、特に限定されず、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤及び両イオン性界面活性剤のいずれでもよく、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0022】
(B-1)非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド等が挙げられる。
【0023】
また、非イオン性界面活性剤として、シリコーン系界面活性剤も挙げられ、ポリオキシエチレン変性オルガノポリシロキサン、ポリオキシプロピレン変性オルガノポリシロキサン、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン変性オルガノポリシロキサン等のポリエーテル変性シリコーン、ポリグリセリン変性シリコーン、ポリエーテル・アルキル共変性シリコーン、ポリグリセリン・アルキル共変性シリコーン、ポリエーテル・シリコーン・アルキル共変性シリコーン、ポリグリセリン・シリコーン・アルキル共変性シリコーン等が挙げられる。これらは、それぞれ直鎖型、分岐型、架橋型のものが挙げられる。
【0024】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、脂肪酸アルキロールアミドの硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、α-スルホ脂肪酸エステル塩、アルキルナフタレンスルホン酸、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、N-アシルタウリン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、モノアルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルスルホコハク酸塩、脂肪酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、N-アシルアミノ酸塩、モノアルキルリン酸エステル塩、ジアルキルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩等が挙げられる。
【0025】
カチオン性界面活性剤としては、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、ポリオキシエチレンアルキルジメチルアンモニウム塩、ジポリオキシエチレンアルキルメチルアンモニウム塩、トリポリオキシエチレンアルキルアンモニウム塩、アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩、アルキルピリジウム塩、モノアルキルアミン塩、モノアルキルアミドアミン塩等が挙げられる。
【0026】
両イオン性界面活性剤としては、アルキルジメチルアミンオキシド、アルキルジメチルカルボキシベタイン、アルキルアミドプロピルジメチルカルボキシベタイン、アルキルヒドロキシスルホベタイン、アルキルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等が挙げられる。
【0027】
界面活性剤は、HLB値が10以下のものが好ましく、8以下のものがより好ましい。少量で、かつ且つ微細な固体ゲル粒子を得る点から、ノニオン性界面活性剤が好ましい。
【0028】
(B-2)疎水性粒子は、体積平均粒径が1~1,500nmであり、かつ(A)水性固体ゲル球状粒子の体積平均粒径の1/10以下である疎水性粒子であり、乳化剤として作用すると共に、(A)ゲル粒子の分散安定剤として作用するように、(A)ゲル粒子と(C)油性成分との間の界面上に吸着する。すなわち、ピッカリングエマルジョンの乳化剤として作用しているものである。
【0029】
(B)疎水性粒子の体積平均粒径(MV値)は1~1,500nmであり、5~1,000nmが好ましい。かつ(A)水性固体ゲル球状粒子の体積平均粒径の1/10以下であり、1/20以下の粒径が好ましい。体積平均粒径は、(A)の体積平均粒径の測定と同じ装置が使用できるが、例えば、動的光散乱法粒度分布測定装置(装置名:マイクロトラックUPA-EX150、日機装(株)製)等の装置を用いることができる。
この粒径の範囲外であると、後述する本発明の分散体の製造方法中のW/O型のエマルジョンの製造工程において、エマルジョンが得られない、あるいは水性相固体ゲル粒子(A)の粒径を小さくすることが困難となるおそれがある。
【0030】
(B)疎水性粒子の形状は、球状、多面体状、紡錘状、針状、板状等いずれでもよく、また、無孔質、多孔質のいずれでもよい。
【0031】
粒子が疎水性であるか否かは、粒子を水に分散させることにより判断され、撹拌しても分散や沈降したりせず、水に浮いた状態となるものが疎水性とされる。(B)疎水性粒子は、特に限定されず、例えば、シリカ、タルク、カーボン、無機顔料等の無機粒子、ナイロン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、シリコーン樹脂、セルロースファイバー、でんぷん、有機顔料等の有機粒子が挙げられる。このうち、ナイロン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、シリコーン樹脂等の合成樹脂の粒子は、マイクロプラスチックに該当するため、それ以外の粒子とすることが好ましい。安定な分散体を得る点から、シリカが好ましい。
【0032】
粒子の材料が親水性の場合には、粒子表面を疎水化剤により処理することにより、疎水性とされる。疎水化剤は、特に限定されず、例えば、アルキルクロロシラン、アルキルアルコキシシラン、アルキルシラザン、アルキルポリシロキサン、アルキルハイドロジェンポリシロキサン、脂肪酸、金属石鹸等が挙げられる。
【0033】
[(C)成分]
(C)油性成分は、水性の固体ゲル粒子(A)の分散媒であり、1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。油性成分は特に限定されず、室温で固体、半固体、液状のいずれであってもよく、また、揮発性、不揮発性のいずれであってもよい。例えばシリコーン油及び炭化水素油等の非極性油や、脂肪族アルコール及びエステル等の極性油が挙げられ、またそれらの混合物であってもよく、非極性油が好ましい。
【0034】
シリコーン油としては、例えば、ジメチルポリシロキサン、トリストリメチルシロキシメチルシラン、カプリリルメチコン、フェニルトリメチコン、テトラキストリメチルシロキシシラン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルヘキシルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体等の低粘度から高粘度の直鎖あるいは分岐状のオルガノポリシロキサンや、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、テトラメチルテトラハイドロジェンシクロテトラシロキサン、テトラメチルテトラフェニルシクロテトラシロキサン等の環状オルガノポリシロキサン、ガム状のジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体等のシリコーンゴム、シリコーンガムやゴムの環状オルガノポリシロキサン溶液、アルキル変性シリコーン、長鎖アルキル変性シリコーン、シリコーン樹脂、シリコーンレジンの溶解物等が挙げられる。中でも、ジメチルポリシロキサン、フェニルトリメチコン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルヘキシルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体等の低粘度から高粘度の直鎖又は分岐状のオルガノポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン等の環状オルガノポリシロキサン等が挙げられる。
【0035】
上記シリコーン油は有機変性されていてもよい。有機変性されたシリコーン油とは、前記シリコーン油の構造中に1以上の有機官能基を有するシリコーン油であり、例えば、アミノ変性シリコーン油、エポキシ変性シリコーン油、ポリエーテル変性シリコーン油、カルボキシ変性シリコーン油、アルコール変性シリコーン油、アルキル変性シリコーン油、アンモニウム塩変性シリコーン油及びフッ素変性シリコーン油等の変性シリコーン油等が挙げられる。
【0036】
炭化水素油としては、例えば、直鎖状、分岐状、又は環状であってよい、炭素数6~16の低級アルカンが挙げられる。例えば、ヘキサン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン及びイソパラフィン等である。又は、炭素原子を17個以上有する直鎖状又は分岐状の炭化水素であってもよく、例えば、流動パラフィン、流動ワセリン、ポリデセン、水素化ポリイソブテン、オリーブ油、ごま油、米ぬか油、サフラワー油、大豆油、とうもろこし油、菜種油、パーム油、パーム核油、ひまわり油、アルモンド油、綿実油、やし油、落花生油、魚油、スクワレン、スクワラン等が挙げられる。
【0037】
脂肪族アルコールは、R-OH構造を有し、Rは炭素原子数4~40、好ましくは炭素原子数6~30、より好ましくは炭素原子数12~20の、飽和又は不飽和の直鎖状又は分岐状の1価炭化水素基である。例えば、炭素数12~20のアルキル基及びアルケニル基が挙げられる。Rは、少なくとも1つのヒドロキシル基で置換されていてもよい。脂肪族アルコールとしては、例えば、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ウンデシレニルアルコール、ミリスチルアルコール、オクチルドデカノール、ヘキシルデカノール、及びそれらの混合物等を挙げることができる。
【0038】
エステル油は、飽和又は不飽和の直鎖状又は分岐状のC1~C26脂肪族一酸、又はポリ酸と、飽和又は不飽和の直鎖状あるいは分岐状のC1~C26脂肪族モノアルコール、又はポリアルコールとの縮合反応から得られる液体エステルであり、このエステルの炭素原子の総数は10以上であることが望ましい。エステル油は、アジピン酸ジイソブチル、コハク酸ジエチルヘキシル、2-エチルヘキサン酸セチル、トリ2 - エチルヘキサン酸グリセリル、エチルヘキサン酸ヘキシルデシル、トリエチルヘキサノイン、ジエチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、トリエチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、イソノナン酸エチルヘキシル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソデシル、イソノナン酸イソトリデシル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸イソセチル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸エチルヘキシル、パルミチン酸オクチル、ステアリン酸エチル、ステアリン酸オクチル、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸エチル、イソステアリン酸イソプロピル、イソステアリン酸ヘキシルデシル、イソステアリン酸イソステアリル、トリイソステアリン酸グリセリル、トリイソステアリン酸ポリグリセリル、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトライソステアリン酸ペンタエリスリチル、オレイン酸エチル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル、及び1,2-ステアロイルステアリン酸オクチルドデシル等が挙げられる。
【0039】
本発明の分散体中の(A)成分の含有量は、20~94.9質量%が好ましく、30~90質量%がより好ましい。(B)成分の含有量は、0.1~20質量%が好ましく、1~10質量%がより好ましい。(C)成分の含有量は、5~79.9質量%が好ましく、10~70質量%がより好ましい。
【0040】
[分散体の製造方法]
本発明の水性の固体ゲル粒子の分散体は、例えば、下記(i)~(iii)の工程を含む方法によって製造される。
(i)(A-2)水に、(A-1)水性ゲル化剤を溶解して溶解液を得る工程、
(ii)工程(i)で得られた溶解液、(B)(B-1)界面活性剤及び(B-2)体積平均粒径が1~1,500nmであり、かつ(A)水性固体ゲル球状粒子の体積平均粒径の1/10以下である疎水性粒子から選ばれる1種以上、及び(C)油性成分を混合し、W/O型エマルジョンを作製する工程、及び
(iii)工程(ii)で得られたW/O型エマルジョンの水相をゲル化させる工程。
【0041】
(i)の工程の(A-2)水に、(A-1)水性ゲル化剤を溶解して溶解液を得る工程では、例えば、(A-2)水に(A-1)水性ゲル化剤を添加し、撹拌混合すればよい。撹拌混合する装置としては、特に限定されず、プロペラ羽根、タービン羽根及びパドル翼等の撹拌機、ホモディスパー等の高速回転遠心放射型撹拌機、ホモミキサー等の高速回転せん断型撹拌機等を使用すればよい。混合時には加熱してもよいが、高温で水に溶解させ、工程(iii)におけるゲル化を冷却により行う場合には、ゲル化する温度より高い温度としておく必要がある。工程(iii)における水相のゲル化を、金属塩、酸、アルカリ等で行う場合には、それらを予め水に溶解しておけばよい。この方法によりゲル化を行う場合には、ゲル化が起こる前に、工程(ii)まで終了させる必要がある。(A)ゲル粒子中に他の水溶性成分を含有させる場合には、工程(i)で添加し溶解させる。なお、ゲル化は、冷却と、金属塩、酸、アルカリ等を併用してもよい。
【0042】
工程(ii)のW/O型エマルジョンの製造方法は、特に限定されず、従来公知の製造方法にて行うことができるが、(C)油性成分と、(B)成分を混合し、得られた混合物に、工程(i)で得られた溶解液を添加して乳化する方法が好ましい。乳化装置としては、ホモディスパー等の高速回転遠心放射型撹拌機、ホモミキサー等の高速回転せん断型撹拌機等の乳化分散機を用いて行えばよい。また、(A)ゲル粒子の粒径を小さくするためやゲル粒子の分散体の保存安定性を高くするために、得られたW/O型エマルジョン組成物を、圧力式ホモジナイザー等の高圧噴射式乳化分散機、コロイドミル、及び超音波乳化機等の乳化機でさらに処理してもよい。
【0043】
工程(iii)における水相のゲル化を冷却により行う場合には、(C)油性成分と(B)成分の混合物を、ゲル化する温度より高い温度としておき、乳化中もゲル化する温度より高い温度に維持しておく必要がある。
【0044】
工程(iii)における水相のゲル化を、金属塩、酸、アルカリ等で行う場合には、撹拌は、例えば、プロペラ羽根、タービン羽根及びパドル翼等の撹拌機、ホモディスパー等の高速回転遠心放射型撹拌機、ホモミキサー等の高速回転せん断型撹拌機等を用いればよい。
【0045】
工程(iii)における水相のゲル化を、電子線やガンマ線等の放射線の照射によりゲル化させる場合には、工程(iii)において、撹拌しながら照射すればよい。
【実施例
【0046】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において特に明記のない場合は、濃度及び含有率を表す「%」は質量%を示す。動粘度及び粘度は25℃において測定した値である。なお、(B)疎水性粒子の体積平均粒径は、動的光散乱法粒度分布測定装置(装置名:マイクロトラックUPA-EX150、日機装(株)製)を用いて測定したものである。
【0047】
[実施例1]
塩化カリウム3g及び水579gを錨型撹拌翼による撹拌装置の付いた容量1リットルのガラスフラスコに仕込んだ。撹拌しながらカラギーナン(商品名:ゲニューゲルSWG-J、三晶(株)製)18gを添加し、80℃まで加熱し、カラギーナンを水に溶解させ、カラギーナンの水溶液を得た。
【0048】
動粘度6mm2/sのジメチルポリシロキサン(商品名:KF-96A-6cs、信越化学工業(株)製)60g及び体積平均粒径が30nmの疎水化球状シリカ(商品名:QSG-30、信越化学工業(株)製)10gを500ミリリットルのガラスビーカーに仕込み、70℃まで加熱した。ホモミキサーで撹拌しながら前記で得たカラギーナンの水溶液130gを添加し、さらに7,000rpmの回転数で10分間撹拌を行いW/O型エマルジョンを得た。この間、温度を60~70℃に保った。
得られたエマルジョンをガラス瓶に移し、蓋をして室温下で24時間放冷してカラギーナンの水溶液をゲル化させ、ジメチルポリシロキサン分散物を分散媒体とした水性固体ゲル粒子の分散物を得た。分散物はペースト状であった。水性固体ゲル粒子の形状を光学顕微鏡で観察したところ、球状であった。写真を図1に示す。水性固体ゲル粒子の体積平均粒径を、レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置(装置名:LA-960、(株)堀場製作所製)を用いて測定したところ、11μmであった。
【0049】
別途、上記で得られたカラギーナンの水溶液を、底部の内径が70mmのガラス瓶に60mmの高さまで入れ、蓋をして室温下で24時間放冷し、水性の固体ゲルを得た。ガラス瓶を10℃の恒温水槽に17時間入れ冷却した後、ゼリー強度を、テクスチャーアナライザー(商品名:テクスチャーアナライザーCT3-1000、ブルックフィールド社製)を用い、侵入距離4mm、侵入速度1mm/sの条件で測定したところ、1,000gより高い値であった。
【0050】
さらに、上記で得られたカラギーナンの水溶液を内径が60mm、高さが10mmのアルミシャーレにふちまで入れ、ポリエチレンフィルムで密閉し、23℃の恒温室内で24時間放冷し、水性の固体ゲルを得た。ゴム硬度をアスカーC硬度計で測定したところ、21であった。
【0051】
[実施例2]
動粘度6mm2/sのジメチルポリシロキサン(商品名:KF-96A-6cs、信越化学工業(株)製)60g及びHLB値が4.0のポリオキシエチレン変性メチルポリシロキサン(商品名:KF-6028、信越化学工業(株)製)10gを500ミリリットルのガラスビーカーに仕込み、70℃まで加熱した。ホモミキサーで撹拌しながら実施例1で得たカラギーナンの水溶液130gを添加し、さらに7,000rpmの回転数で10分間撹拌を行いW/O型のエマルジョンを得た。この間、温度を60~70℃に保った。
【0052】
エマルジョンをガラス瓶に移し、蓋をして室温下で24時間放冷してカラギーナンの水溶液をゲル化させ、ジメチルポリシロキサン分散物を分散媒体とした水性の固体ゲル粒子の分散物を得た。分散物は粘度280mPa・sの液状であった。水性の固体ゲル粒子の形状を光学顕微鏡で観察したところ、球状であった。写真を図2に示す。水性の固体ゲル粒子の体積平均粒径を、レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置(装置名:LA-960、(株)堀場製作所製)を用いて測定したところ、6μmであった。
【0053】
[実施例3]
塩化カリウム2.5g及び水487.5gを錨型撹拌翼による撹拌装置の付いた容量1リットルのガラスフラスコに仕込んだ。撹拌しながらカラギーナン(商品名:ゲニューゲルSWG-J、三晶(株)製)10gを添加し、80℃まで加熱し、カラギーナンを水に溶解させ、カラギーナンの水溶液を得た。
【0054】
動粘度が6mm2/sのジメチルポリシロキサン(商品名:KF-96A-6cs、信越化学工業(株)製)60g及び体積平均粒径が30nmの疎水化球状シリカ(商品名:QSG-30、信越化学工業(株)製)10gを500ミリリットルのガラスビーカーに仕込み、70℃まで加熱した。ホモミキサーで撹拌しながら前記で得たカラギーナンの水溶液130gを添加し、さらに7,000rpmの回転数で10分間撹拌を行いW/O型のエマルジョンを得た。この間、温度を60~70℃に保った。エマルジョンをガラス瓶に移し、蓋をして室温下で24時間放冷してカラギーナンの水溶液をゲル化させ、ジメチルポリシロキサン分散物を分散媒体とした水性の固体ゲル粒子の分散物を得た。分散物はペースト状であった。水性の固体ゲル粒子の形状を光学顕微鏡で観察したところ、球形であった。水性の固体ゲル粒子の体積平均粒径を、レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置(装置名:LA-960、(株)堀場製作所製)を用いて測定したところ、10μmであった。
【0055】
別途、得られたカラギーナンの水溶液を底部の内径が70mmのガラス瓶に60mmの高さまで入れ、蓋をして室温下で24時間放冷し、水性の固体ゲルを得た。ガラス瓶を10℃の恒温水槽に17時間入れ冷却した後、ゼリー強度を、テクスチャーアナライザー(商品名:テクスチャーアナライザーCT3-1000、ブルックフィールド社製)を用い、侵入距離4mm、侵入速度1mm/sの条件で測定したところ、1,000gより高い値であった。
【0056】
さらに、上記で得られたカラギーナンの水溶液を内径が60mm、高さが10mmのアルミシャーレにふちまで入れ、ポリエチレンフィルムで密閉し、23℃の恒温室内で24時間放冷し、水性の固体ゲルを得た。ゴム硬度をアスカーC硬度計で測定したところ、7であった。
【0057】
[実施例4]
1%塩化カルシウム2水塩水溶液7.5g及び水462.5gを錨型撹拌翼による撹拌装置の付いた容量1リットルのガラスフラスコに仕込んだ。撹拌しながらジェランガム(商品名:ケルコゲルCG-LA、三晶(株)製)30gを添加し、90℃まで加熱し、ジェランガムを水に溶解させた。
【0058】
動粘度が6mm2/sのジメチルポリシロキサン(商品名:KF-96A-6cs、信越化学工業(株)製)60g及び体積平均粒径が30nmの疎水化球状シリカ(商品名:QSG-30、信越化学工業(株)製)10gを500ミリリットルのガラスビーカーに仕込み、70℃まで加熱した。ホモミキサーで撹拌しながら前記で得たジェランガムの水溶液130gを添加し、さらに7,000rpmの回転数で10分間撹拌を行いW/O型のエマルジョンを得た。この間、温度を60~70℃に保った。
【0059】
エマルジョンをガラス瓶に移し、蓋をして室温下で24時間放冷してジェランガムの水溶液をゲル化させ、ジメチルポリシロキサン分散物を分散媒体とした水性の固体ゲル粒子の分散物を得た。分散物はペースト状であった。水性の固体ゲル粒子の形状を光学顕微鏡で観察したところ、球状であった。水性の固体ゲル粒子の体積平均粒径を、レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置(装置名:LA-960、(株)堀場製作所製)を用いて測定したところ、13μmであった。
【0060】
別途、得られたジェランガムの水溶液を底部の内径が70mmのガラス瓶に60mmの高さまで入れ、蓋をして室温下で24時間放冷し、水性の固体ゲルを得た。ガラス瓶を10℃の恒温水槽に17時間入れ冷却した後、ゼリー強度を、テクスチャーアナライザー(商品名:テクスチャーアナライザーCT3-1000、ブルックフィールド社製)を用い、侵入距離4mm、侵入速度1mm/sの条件で測定したところ、1,000gより高い値であった。
【0061】
また、上記で得られたジェランガムの水溶液を内径が60mm、高さが10mmのアルミシャーレにふちまで入れ、ポリエチレンフィルムで密閉し、23℃の恒温室内で24時間放冷し、水性の固体ゲルを得た。ゴム硬度をアスカーC硬度計で測定したところ、45であった。
【0062】
[評価]
実施例1~4で得られた水性固体ゲル粒子のジメチルポリシロキサン分散物について、肌に塗布後、なめらかさ及び柔らかさの感触が得られるかを、水性固体ゲル粒子を含まないジメチルポリシロキサンに比べて評価したところ、なめらかさ及び柔らかさの感触が良いことを確認した。
【0063】
【表1】
図1
図2