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特許7359203酸化ガリウム基板、および酸化ガリウム基板の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-02
(45)【発行日】2023-10-11
(54)【発明の名称】酸化ガリウム基板、および酸化ガリウム基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C30B 29/16 20060101AFI20231003BHJP
   C30B 33/00 20060101ALI20231003BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
C30B29/16
C30B33/00
H01L21/304 621A
H01L21/304 622D
H01L21/304 622W
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021513541
(86)(22)【出願日】2020-03-18
(86)【国際出願番号】 JP2020011995
(87)【国際公開番号】W WO2020209022
(87)【国際公開日】2020-10-15
【審査請求日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】P 2019073548
(32)【優先日】2019-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】平林 佑介
【審査官】末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-024960(JP,A)
【文献】特開2008-105883(JP,A)
【文献】特開2016-013932(JP,A)
【文献】国際公開第2019/188747(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 1/00-35/00
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主表面と、前記第1主表面とは反対向きの第2主表面とを有する、酸化ガリウム基板であって、
前記第1主表面は、{001}面又は{001}面に対して所望のオフ角を有し、
前記第1主表面の最小二乗平面を基準面とする前記第1主表面の高低差の測定データz(r,θ)を、下記式(1)のz(r,θ)で近似すると、
前記第2主表面を水平な平坦面に向かい合せて載置した時の、jが4、9、16、25、36、49、64、81である全てのanmnm(r,θ)を足した成分の第1最大高低差(PV1)を、前記第1主表面の直径(D)で割った値(PV1/D)が0.39×10-4以下であり、
前記第2主表面を平坦なチャック面に向い合せて全面吸着した時の、jが4以上81以下である全てのanmnm(r,θ)を足した成分の第2最大高低差(PV2)を、前記第1主表面の直径(D)で割った値(PV2/D)が0.59×10-4以下である、酸化ガリウム基板。
【数1】
【数2】
【数3】
【数4】
【数5】
上記式(1)~(5)において、(r,θ)は基準面上の極座標であり、nは0以上k以下の自然数であり、kは16であり、nが偶数の場合にはmは-nから+nまでの範囲の偶数のみであり、nが奇数の場合にはmは-nから+nまでの範囲の奇数のみであり、jはnとkの組合せを示す指数であり、anmは係数である。
【請求項2】
前記第1最大高低差(PV1)が2μm以下であり、
前記第2最大高低差(PV2)が3μm以下である、請求項1に記載の酸化ガリウム基板。
【請求項3】
第1主表面と、前記第1主表面とは反対向きの第2主表面とを有する、酸化ガリウム基板の製造方法であって、
前記第1主表面は、{001}面又は{001}面に対して所望のオフ角を有し、
前記製造方法は、モース硬度が7以下である粒子を含む研磨スラリーによって、前記第1主表面と前記第2主表面とを同時に研磨することを含む、酸化ガリウム基板の製造方法。
【請求項4】
前記研磨スラリーに含まれる前記粒子の動的光散乱法で測定した粒子径分布における体積基準の積算分率の50%径が、1μm以下である、請求項3に記載の酸化ガリウム基板の製造方法。
【請求項5】
前記第1主表面と前記第2主表面とを同時に研磨する時間の前半期の50%以上で、研磨圧が9.8kPa以下である、請求項3または4に記載の酸化ガリウム基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、酸化ガリウム基板、および酸化ガリウム基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、シリコン半導体基板に代えて、化合物半導体基板を用いることが提案されている。化合物半導体としては、炭化ケイ素、窒化ガリウム、酸化ガリウムなどが挙げられる。化合物半導体は、シリコン半導体に比べて、大きなバンドギャップを有する点で優れている。化合物半導体基板は研磨され、その研磨面にはエピタキシャル膜が形成される。
【0003】
特許文献1には、酸化ガリウム基板の製造方法が記載されている。その製造方法は、コロイダルシリカを含むスラリーを用いて、酸化ガリウム基板の片方の面のみを研磨することを含む。特許文献1の課題は、結晶系が対称性の良くない単斜晶系であって且つ劈開性が非常に強い酸化ガリウム基板の形状性を改良することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】日本国特開2016-13932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
片面研磨装置は、一般的に、下定盤と、上定盤と、ノズルとを有する。下定盤は水平に配置され、下定盤の上面には研磨パッドが貼付される。上定盤は水平に配置され、上定盤の下面には酸化ガリウム基板が固定される。酸化ガリウム基板は、第1主表面と、第1主表面とは反対向きの第2主表面とを有する。上定盤は、酸化ガリウム基板を水平に保持し、酸化ガリウム基板の第1主表面を研磨パッドに押し付ける。下定盤は、その鉛直な回転中心線を中心に回転させられる。上定盤は、下定盤の回転に伴って受動的に回転する。ノズルは、研磨パッドに対して上方から研磨スラリーを供給する。研磨スラリーは、酸化ガリウム基板と研磨パッドとの間に供給され、酸化ガリウム基板の第1主表面を平坦に研磨する。酸化ガリウム基板の第2主表面は上定盤の下面に固定されるので、上定盤の下面の凹凸が第2主表面に転写される。
【0006】
片面研磨装置は第1主表面のみを研磨するので、研磨後に第1主表面と第2主表面とで残留応力に差が生じてしまう。その結果、トワイマン効果(Twyman Effect)によって、反りが生じてしまう。また、酸化ガリウム基板の第2主表面を、上定盤から取外し、平坦なチャック面に向い合せて全面吸着すると、第1主表面が上定盤の下面と同じ形状に変形してしまい、上定盤の下面の凹凸が第1主表面に表れてしまう。
【0007】
従来、酸化ガリウム基板の平坦度が悪く、酸化ガリウム基板に対する露光パターンの転写精度が悪かった。
【0008】
本開示の一態様は、酸化ガリウム基板の平坦性を向上でき、酸化ガリウム基板に対して露光パターンを精度良く転写できる、技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様に係る酸化ガリウム基板は、
第1主表面と、前記第1主表面とは反対向きの第2主表面とを有する、酸化ガリウム基板であって、
前記第1主表面は、{001}面又は{001}面に対して所望のオフ角を有し、
前記第1主表面の最小二乗平面を基準面とする前記第1主表面の高低差の測定データz(r,θ)を、下記式(1)のz(r,θ)で近似すると、
前記第2主表面を水平な平坦面に向かい合せて載置した時の、jが4、9、16、25、36、49、64、81である全てのanmnm(r,θ)を足した成分の第1最大高低差(PV1)を、前記第1主表面の直径(D)で割った値(PV1/D)が0.39×10-4以下であり、
前記第2主表面を平坦なチャック面に向い合せて全面吸着した時の、jが4以上81以下である全てのanmnm(r,θ)を足した成分の第2最大高低差(PV2)を、前記第1主表面の直径(D)で割った値(PV2/D)が0.59×10-4以下である。

【0010】
【数1】
【0011】
【数2】
【0012】
【数3】
【0013】
【数4】
【0014】
【数5】
上記式(1)~(5)において、(r,θ)は基準面上の極座標であり、nは0以上k以下の自然数であり、kは16であり、nが偶数の場合にはmは-nから+nまでの範囲の偶数のみであり、nが奇数の場合にはmは-nから+nまでの範囲の奇数のみであり、jはnとkの組合せを示す指数であり、anmは係数である。
【発明の効果】
【0015】
本開示の一態様によれば、酸化ガリウム基板の平坦性を向上でき、酸化ガリウム基板に対して露光パターンを精度良く転写できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、一実施形態に係る酸化ガリウム基板の製造方法を示すフローチャートである。
図2図2は、図1の一次片面研磨を実施する片面研磨装置の一例を示す斜視図である。
図3図3は、図1の一次片面研磨を実施する片面研磨装置の一例を示す断面図である。
図4図4は、図1の両面研磨を実施する両面研磨装置の一例を示す斜視図である。
図5図5は、図1の両面研磨を実施する両面研磨装置の一例を示す断面図である。
図6図6は、第1最大高低差(PV1)を測定する時の、酸化ガリウム基板の状態の一例を示す断面図である。
図7図7は、j=1(n=0、m=0)、j=2(n=1、m=1)、j=4(n=2、m=0)、j=9(n=4、m=0)のそれぞれのznm(r,θ)を示す図である。
図8図8は、第2最大高低差(PV2)を測定する時の、酸化ガリウム基板の状態の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。なお、本明細書の結晶学的記載においては、個別方位を[]、集合方位を<>、個別面を()、集合面を{}でそれぞれ示す。結晶学上の指数が負であることは、通常、数字の上にバーを付すことによって表現されるが、本明細書では数字の前に負の符号を付すことによって結晶学上の負の指数を表現する。
【0018】
図1は、一実施形態に係る酸化ガリウム基板の製造方法を示すフローチャートである。図1に示すように、酸化ガリウム基板の製造方法は、酸化ガリウム基板を一次片面研磨すること(S1)を含む。酸化ガリウム基板として、例えば、予めβ-Ga単結晶を、ワイヤーソーなどで板状にスライスし、続いて、研削装置などで所定の厚さに研削したものが用いられる。酸化ガリウム基板は、ドーパントを含んでもよいし、含まなくてもよい。ドーパントとして、例えばSi、Sn、AlまたはInなどが用いられる。
【0019】
図2は、図1の一次片面研磨を実施する片面研磨装置の一例を示す斜視図である。図3は、図1の一次片面研磨を実施する片面研磨装置の一例を示す断面図である。図3において、上定盤120の下面121の凹凸を、誇張して図示する。なお、図1の二次片面研磨(S2)を実施する片面研磨装置は、図2および図3に示す片面研磨装置100と同様であるので、図示を省略する。
【0020】
片面研磨装置100は、下定盤110と、上定盤120と、ノズル130とを有する。下定盤110は水平に配置され、下定盤110の上面111には下研磨パッド112が貼付される。上定盤120は水平に配置され、上定盤120の下面121には酸化ガリウム基板10が固定される。上定盤120は、酸化ガリウム基板10を水平に保持し、酸化ガリウム基板10を下研磨パッド112に押し付ける。なお、下研磨パッド112は無くてもよく、その場合、上定盤120は酸化ガリウム基板10を下定盤110に押し付ける。上定盤120の直径は下定盤110の半径よりも小さく、下定盤110の回転中心線C1よりも径方向外側に上定盤120が配置される。上定盤120の回転中心線C2は、下定盤110の回転中心線C1と平行にずらして配置される。下定盤110は、その鉛直な回転中心線C1を中心に回転させられる。上定盤120は、下定盤110の回転に伴って受動的に回転する。なお、上定盤120と下定盤110とは、独立に回転してもよく、別々の回転モータによって回転させられてもよい。
【0021】
酸化ガリウム基板10は、円形状の第1主表面11と、第1主表面11とは反対向きの円形状の第2主表面12とを有する。酸化ガリウム基板10の外周には、酸化ガリウムの結晶方位を示す不図示のノッチなどが形成される。ノッチの代わりに、オリエンテーションフラットが形成されてもよい。第1主表面11は、例えば{001}面である。{001}面は、<001>方向に対して垂直な結晶面であり、(001)面および(00-1)面のいずれでもよい。
【0022】
なお、第1主表面11は、{001}面以外の結晶面であってもよい。また、第1主表面11は、予め設定された結晶面に対し、いわゆるオフ角を有してもよい。オフ角は、研磨後の第1主表面11に形成されるエピタキシャル膜の結晶性を向上する。
【0023】
ノズル130は、下研磨パッド112に対して研磨スラリー140を供給する。研磨スラリー140は、例えば、粒子と、水とを含む。粒子が分散質であり、水が分散媒である。なお、分散媒は、有機溶剤でもよい。研磨スラリー140は、酸化ガリウム基板10と下研磨パッド112との間に供給され、酸化ガリウム基板10の下面を平坦に研磨する。
【0024】
一次片面研磨(S1)では、粒子として、例えばダイヤモンド粒子が用いられる。ダイヤモンド粒子のモース硬度は10である。ダイヤモンド粒子のD50は、特に限定されないが、例えば50μmである。「D50」とは、動的光散乱法で測定した粒子径分布における体積基準の積算分率の50%径のことである。動的光散乱法は、研磨スラリー140にレーザー光を照射し、その散乱光を光検出器で観測することにより、粒子径分布を測定する方法である。
【0025】
一次片面研磨(S1)では、酸化ガリウム基板10の第1主表面11が、下研磨パッド112に押し付けられ、下研磨パッド112と研磨スラリー140とで平坦に研磨される。一方、酸化ガリウム基板10の第2主表面12は上定盤120の下面121に固定されるので、その下面121の凹凸が第2主表面12に転写される。
【0026】
なお、下定盤110の上面111も上定盤120の下面121と同様に凹凸を有するが、その凹凸は酸化ガリウム基板10の第1主表面11にほとんど転写されない。下定盤110は、上定盤120とは異なり、酸化ガリウム基板10に対して相対的に変位するからである。
【0027】
図1に示すように、酸化ガリウム基板の製造方法は、酸化ガリウム基板を二次片面研磨すること(S2)を含む。二次片面研磨(S2)では、一次片面研磨(S1)と同様に、酸化ガリウム基板10の第1主表面11が、下研磨パッド112に押し付けられ、下研磨パッド112と研磨スラリー140とで平坦に研磨される。
【0028】
二次片面研磨(S2)では、一次片面研磨(S1)よりも、D50の小さく、且つモース硬度の小さい(つまり柔らかい)粒子が用いられてよい。粒子として、例えばコロイダルシリカが用いられる。一方、酸化ガリウム基板10の第2主表面12は、上定盤120の下面121に固定されるので、その下面121の凹凸が第2主表面12に転写される。
【0029】
なお、上記の通り、下定盤110の上面111も上定盤120の下面121と同様に凹凸を有するが、その凹凸は酸化ガリウム基板10の第1主表面11にほとんど転写されない。下定盤110は、上定盤120とは異なり、酸化ガリウム基板10に対して相対的に変位するからである。
【0030】
ところで、一次片面研磨(S1)および二次片面研磨(S2)では第1主表面11のみを研磨するので、研磨後に第1主表面11と第2主表面12とで残留応力に差が生じてしまう。その結果、トワイマン効果によって、反りが生じてしまう。また、酸化ガリウム基板10の第2主表面12を、上定盤120から取外し、平坦なチャック面に向い合せて全面吸着すると、第1主表面11が上定盤120の下面121と同じ形状に変形してしまい、その下面121の凹凸が第1主表面11に表れてしまう。
【0031】
そこで、図1に示すように、酸化ガリウム基板の製造方法は、酸化ガリウム基板を両面研磨すること(S3)を含む。両面研磨(S3)は、一次片面研磨(S1)および二次片面研磨(S2)とは異なり、第1主表面11と第2主表面12とを同時に研磨することを含む。
【0032】
図4は、図1の両面研磨を実施する両面研磨装置の一例を示す斜視図である。図5は、図1の両面研磨を実施する両面研磨装置の一例を示す断面図である。両面研磨装置200は、下定盤210と、上定盤220と、キャリア230と、サンギヤ240と、インターナルギヤ250とを有する。下定盤210は水平に配置され、下定盤210の上面211には下研磨パッド212が貼付される。上定盤220は水平に配置され、上定盤220の下面221には上研磨パッド222が貼付される。キャリア230は、下定盤210と上定盤220との間に、酸化ガリウム基板10を水平に保持する。キャリア230は、サンギヤ240の径方向外側に配置され、且つ、インターナルギヤ250の径方向内側に配置される。サンギヤ240とインターナルギヤ250とは、同心円状に配置され、キャリア230の外周ギヤ231と噛み合う。
【0033】
両面研磨装置200は例えば4Way方式であり、下定盤210と、上定盤220と、サンギヤ240と、インターナルギヤ250とは、同一の鉛直な回転中心線を中心に回転する。下定盤210と上定盤220とは、反対方向に回転すると共に、下研磨パッド212を酸化ガリウム基板10の下面に押し付け、且つ上研磨パッド222を酸化ガリウム基板10の上面に押し付ける。また、下定盤210および上定盤220のうちの少なくとも1つは、酸化ガリウム基板10に対して研磨スラリーを供給する。研磨スラリーは、酸化ガリウム基板10と下研磨パッド212との間に供給され、酸化ガリウム基板10の下面を研磨する。また、研磨スラリーは、酸化ガリウム基板10と上研磨パッド222との間に供給され、酸化ガリウム基板10の上面を研磨する。
【0034】
例えば、下定盤210と、サンギヤ240と、インターナルギヤ250とは、上方視で同じ方向に回転する。これらの回転方向は、上定盤220の回転方向とは逆方向である。キャリア230は、公転しながら、自転する。キャリア230の公転方向は、サンギヤ240とインターナルギヤ250の回転方向と同じ方向である。一方、キャリア230の自転方向は、サンギヤ240の回転数とピッチ円直径の積と、インターナルギヤ250の回転数とピッチ円直径の積との大小で決まる。インターナルギヤ250の回転数とピッチ円直径の積がサンギヤ240の回転数とピッチ円直径の積がよりも大きいと、キャリア230の自転方向とキャリア230の公転方向とは同じ方向になる。一方、インターナルギヤ250の回転数とピッチ円直径の積がサンギヤ240の回転数とピッチ円直径の積よりも小さいと、キャリア230の自転方向とキャリア230の公転方向とは逆方向になる。
【0035】
なお、両面研磨装置200は、3Way方式または2Way方式であってもよい。3Way方式は、例えば、(1)インターナルギヤ250が固定され、下定盤210と上定盤220とサンギヤ240が回転するもの、(2)上定盤220が固定され、下定盤210とサンギヤ240とインターナルギヤ250とが回転するもの、のいずれでもよい。また、2Way方式は、例えば、下定盤210と上定盤220とが固定され、サンギヤ240とインターナルギヤ250とが回転するものである。
【0036】
キャリア230は、例えば、酸化ガリウム基板10の第1主表面11を下に向けて、酸化ガリウム基板10を水平に保持する。なお、キャリア230は、酸化ガリウム基板10の第1主表面11を上に向けて、酸化ガリウム基板10を水平に保持してもよい。いずれにしろ、酸化ガリウム基板10の第1主表面11と第2主表面12とが同時に研磨される。
【0037】
両面研磨(S3)では、一次片面研磨(S1)および二次片面研磨(S2)とは異なり、第1主表面11と第2主表面12とを同時に研磨するので、研磨後に第1主表面11と第2主表面12との残留応力差を低減できる。その結果、トワイマン効果による反りを低減できる。
【0038】
トワイマン効果による反りは、後述する第1最大高低差(PV1)で評価する。図6は、第1最大高低差(PV1)を測定する時の、酸化ガリウム基板の状態を示す側面図である。図6に示すように、第1最大高低差(PV1)は、酸化ガリウム基板10を変形しないように、第2主表面12を水平な平坦面20に向い合せて載置した状態で測定する。図6において、互いに直交するx軸とy軸を含むxy平面は、第1主表面11の最小二乗平面である。第1主表面11の最小二乗平面とは、第1主表面11を最小二乗法で近似した平面である。また、図6において、x軸およびy軸に対して垂直なz軸は、第1主表面11の中心を通るように設定される。
【0039】
第1主表面11の最小二乗平面を基準面13とする第1主表面11の高低差の測定データz(r,θ)は、下記式(1)のz(r,θ)で近似される。
【0040】
【数6】
【0041】
【数7】
【0042】
【数8】
【0043】
【数9】
【0044】
【数10】
上記式(1)~(5)において、(r,θ)は基準面13上の極座標であり、nは0以上k以下の自然数であり、kは16であり、nが偶数の場合にはmは-nから+nまでの範囲の偶数のみであり、nが奇数の場合にはmは-nから+nまでの範囲の奇数のみであり、jはnとkの組合せを示す指数であり、anmは係数である。上記式(4)から明らかなように、2つの指数n、mの組合せを1つの指数jで表現する方法として、フリンジ(Fringe)による記法を用いる。上記式(2)はゼルニケ多項式(Zernike Polynomials)であり、ゼルニケ多項式は直交多項式であるので、係数anmは上記式(5)により求めることができる。
【0045】
図7は、j=1(n=0、m=0)、j=2(n=1、m=1)、j=4(n=2、m=0)、j=9(n=4、m=0)のそれぞれのznm(r,θ)を示す図である。
【0046】
図7に実線で示すように、j=1のznm(r,θ)は、xy平面に対して平行なオフセット面である。j=1のznm(r,θ)は、rにもθにも依存しない。
【0047】
図7に破線で示すように、j=2のznm(r,θ)は、xy平面をy軸の周りに回転した傾斜面である。なお、j=3(n=1、m=-1)のznm(r,θ)は、xy平面をx軸の周りに回転した傾斜面である。
【0048】
図7に一点鎖線で示すように、j=4のznm(r,θ)は、xz平面上でz軸に対して線対称な2次曲線を、z軸を中心に180°回転させることにより得られる曲面である。j=4のznm(r,θ)は、rのみに依存し、θには依存しない。
【0049】
図7に二点鎖線で示すように、j=9のznm(r,θ)は、xz平面上でz軸に対して線対称な4次曲線を、z軸を中心に180°回転させることにより得られる曲面である。j=9のznm(r,θ)は、rのみに依存し、θには依存しない。
【0050】
jが自然数の2乗(例えば4、9、16、25、36、49、64、81・・・)であるznm(r,θ)は、rのみに依存し、θには依存しない。なお、j=1(n=0、m=0)のznm(r,θ)は、上記の通り、rにもθにも依存しない。
【0051】
トワイマン効果による反りは、第1主表面11と第2主表面12との残留応力差によって生じる。その残留応力差は、rのみに依存し、θには依存しない。
【0052】
そこで、トワイマン効果による反りは、jが4、9、16、25、36、49、64、81である全てのanmnm(r,θ)を足した成分の第1最大高低差(PV1)で評価する。第1最大高低差(PV1)とは、基準面13に対して最も高い点と、基準面13に対して最も低い点との高低差である。トワイマン効果による反りが小さいほど、第1最大高低差(PV1)が小さい。
【0053】
なお、jが81よりも大きいanmnm(r,θ)は、第1主表面11の凹凸にほとんど影響を与えないので、また、計算を簡単にすべく、無視する。
【0054】
両面研磨(S3)では、一次片面研磨(S1)および二次片面研磨(S2)とは異なり、第1主表面11と第2主表面12とを同時に研磨するので、上記の通り、トワイマン効果による反りを低減できる。その結果、第1最大高低差(PV1)を第1主表面11の直径(D)で割った値(PV1/D)を、0.39×10-4以下に低減できる。また、第1最大高低差(PV1)を2μm以下に低減できる。なお、PV1/Dは無次元量であり、PV1/Dの数値のうちの「10-4」は「μm/cm」と等価である。
【0055】
PV1/Dは、上記の通り、例えば0.39×10-4以下である。PV1/Dが0.39×10-4以下であると、トワイマン効果による反りを低減できるので、酸化ガリウム基板10の平坦度を向上でき、ひいては、酸化ガリウム基板10に対して露光パターンを精度良く転写できる。PV1/Dは、好ましくは0.2×10-4以下であり、より好ましくは0.1×10-4以下である。また、PV1/Dは、生産性の観点から、好ましくは0.02×10-4以上である。
【0056】
PV1は、上記の通り、例えば2μm以下である。PV1が2μm以下であると、トワイマン効果による反りを低減できるので、酸化ガリウム基板10の平坦度を向上でき、ひいては、酸化ガリウム基板10に対して露光パターンを精度良く転写できる。PV1は、好ましくは1μm以下であり、より好ましくは0.5μm以下である。また、PV1は、生産性の観点から、好ましくは0.1μm以上である。
【0057】
Dは、特に限定されないが、例えば5cm以上31cm以下である。Dは、好ましくは10cm以上21cm以下であり、より好ましくは12cm以上15cm以下である。
【0058】
ところで、両面研磨(S3)では、一次片面研磨(S1)および二次片面研磨(S2)とは異なり、下定盤210だけではなく上定盤220も酸化ガリウム基板10に対し相対的に変位する。その結果、上定盤220の下面221の凹凸が酸化ガリウム基板10の上面に転写するのを抑制でき、酸化ガリウム基板10の上面を酸化ガリウム基板10の下面に対して平行に研磨できる。従って、酸化ガリウム基板10の第2主表面12を平坦なチャック面30に向い合せて全面吸着した時に、上定盤220の下面221の凹凸が第1主表面11に表れるのを抑制できる。
【0059】
酸化ガリウム基板10に対する上定盤220の形状転写は、後述する第2最大高低差(PV2)で評価する。図8は、第2最大高低差(PV2)を測定する時の、酸化ガリウム基板の状態を示す側面図である。図8に示すように、第2最大高低差(PV2)は、第2主表面12を平坦なチャック面30に向い合せて全面吸着した状態で測定する。吸着は例えば真空吸着であり、チャック面30は多孔質体で形成される。図8において、互いに直交するx軸とy軸を含むxy平面は、第1主表面11の最小二乗平面である。また、図8において、x軸およびy軸に対して垂直なz軸は、第1主表面11の中心を通るように設定される。
【0060】
第1主表面11の最小二乗平面を基準面13とする第1主表面11の高低差の測定データz(r,θ)は、上記(1)のz(r,θ)で近似される。j=1、2、3のznm(r,θ)は、上記の通り、いずれも平坦面であるので、第2最大高低差(PV2)を測定する時には意味のない成分である。
【0061】
そこで、酸化ガリウム基板10に対する上定盤220の形状転写は、jが4以上81以下である全てのanmnm(r,θ)を足した成分の第2最大高低差(PV2)で評価する。第2最大高低差(PV2)とは、基準面13に対して最も高い点と、基準面13に対して最も低い点との高低差である。酸化ガリウム基板10に対する上定盤220の形状転写が小さいほど、第2最大高低差(PV2)が小さい。
【0062】
なお、jが81よりも大きいanmnm(r,θ)は、第1主表面11の凹凸にほとんど影響を与えないので、また、計算を簡単にすべく、無視する。
【0063】
両面研磨(S3)では、一次片面研磨(S1)および二次片面研磨(S2)とは異なり、第1主表面11と第2主表面12とを同時に研磨するので、上記の通り、酸化ガリウム基板10に対する上定盤220の形状転写を抑制できる。その結果、第2最大高低差(PV2)を第1主表面11の直径(D)で割った値(PV2/D)を、0.59×10-4以下に低減できる。また、第2最大高低差(PV2)を3μm以下に低減できる。なお、PV2/Dは無次元量であり、PV2/Dの数値のうちの「10-4」は「μm/cm」と等価である。
【0064】
PV2/Dは、上記の通り、例えば0.59×10-4以下である。PV2/Dが0.59×10-4以下であると、酸化ガリウム基板10に対する上定盤220の形状転写を抑制できるので、酸化ガリウム基板10の平坦度を向上でき、ひいては、酸化ガリウム基板10に対して露光パターンを精度良く転写できる。PV2/Dは、好ましくは0.2×10-4以下であり、より好ましくは0.1×10-4以下である。また、PV2/Dは、生産性の観点から、好ましくは0.02×10-4以上である。
【0065】
PV2は、上記の通り、例えば3μm以下である。PV2が3μm以下であると、酸化ガリウム基板10に対する上定盤220の形状転写を抑制できるので、酸化ガリウム基板10の平坦度を向上でき、ひいては、酸化ガリウム基板10に対して露光パターンを精度良く転写できる。PV2は、好ましくは1μm以下であり、より好ましくは0.5μm以下である。また、PV2は、生産性の観点から、好ましくは0.1μm以上である。
【0066】
両面研磨(S3)は、モース硬度が7以下である粒子を含む研磨スラリーによって、酸化ガリウム基板10の互いに反対向きの第1主表面11と第2主表面12とを同時に研磨することを含む。モース硬度が7以下であると、粒子が柔らかいので、酸化ガリウム基板10の傷の発生を抑制でき、酸化ガリウム基板10の割れを抑制できる。モース硬度は、好ましくは6以下であり、より好ましくは5以下である。モース硬度は、研磨速度の観点から、好ましくは2以上である。
【0067】
モース硬度が7以下である粒子として、例えばコロイダルシリカが用いられる。コロイダルシリカのモース硬度は7である。なお、モース硬度が7以下である粒子の材料は、SiOには限定されず、TiO、ZrO、Fe、ZnO、またはMnOなどでもよい。TiOのモース硬度は6であり、ZrOのモース硬度は6.5であり、Feのモース硬度は6であり、ZnOのモース硬度は4.5であり、MnOのモース硬度は3である。両面研磨(S3)で用いる研磨スラリーは、モース硬度が7を超える粒子を含まなければよく、モース硬度が7以下の粒子を2種類以上含んでもよい。
【0068】
両面研磨(S3)では、研磨スラリーに含まれる粒子のD50が例えば1μm以下である。D50が1μm以下であると、粒子が小さいので、局所的に過大な応力が酸化ガリウム基板10に作用するのを抑制でき、酸化ガリウム基板10の割れを抑制できる。D50は、好ましくは0.7μm以下であり、より好ましくは0.5μm以下である。D50は、研磨速度の観点から、好ましくは0.01μm以上である。
【0069】
両面研磨(S3)の前半期の50%以上で、研磨圧が例えば9.8kPa以下である。両面研磨(S3)の前半期には、第1主表面11および第2主表面12が十分に平坦化されていないので、凹凸が大きく、応力集中が生じやすい。両面研磨(S3)の前半期の50%以上で、研磨圧が9.8kPa以下であると、局所的に過大な応力が酸化ガリウム基板10に作用するのを抑制でき、酸化ガリウム基板10の割れを抑制できる。両面研磨(S3)の前半期の50%以上で、研磨圧は好ましくは8.8kPa以下であり、より好ましくは7.8kPa以下である。また、研磨速度の観点から、両面研磨(S3)の前半期の50%以上で、研磨圧は好ましくは3kPa以上である。
【0070】
なお、両面研磨(S3)の全期間で、研磨圧は一定でもよい。また、両面研磨(S3)では、時間の経過と共に、第1主表面11および第2主表面12が徐々に平坦化され、凹凸が小さくなるので、研磨速度を向上すべく、研磨圧が段階的に大きくなってもよい。
【0071】
なお、酸化ガリウム基板の製造方法は、図1に示すものに限定されず、両面研磨(S3)を含むものであればよい。また、酸化ガリウム基板の製造方法は、図1に示す処理以外の処理を含んでもよく、例えば、酸化ガリウム基板10の付着物(例えば粒子)を洗い流す洗浄を含んでもよい。洗浄は、例えば、一次片面研磨(S1)と二次片面研磨(S2)との間、および二次片面研磨(S2)と両面研磨(S3)との間に実施される。
【実施例
【0072】
以下、実施例および比較例について説明する。下記の例1~例7のうち、例1~例3が実施例であり、例4~例7が比較例である。
【0073】
[例1~例3]
例1~例3では、直径50.8mm、厚さ0.7mmのβ-Ga単結晶基板に対して、図1に示すように一次片面研磨(S1)、二次片面研磨(S2)、および両面研磨(S3)を同一の条件で実施した。
【0074】
一次片面研磨(S1)では、β-Ga単結晶基板の(001)面を、図2に示す片面研磨装置100で研磨した。錫製の下定盤110と、粒径0.5μmのダイヤモンド粒子を用いて研磨した。一次片面研磨(S1)では、下研磨パッド112を用いずに、基板を下定盤110に押し付け、研磨した。
【0075】
二次片面研磨(S2)では、β-Ga単結晶基板の(001)面を、図2に示す片面研磨装置100で研磨した。二次片面研磨(S2)では、一次片面研磨(S1)とは異なり、下研磨パッド112を用いた。二次片面研磨(S2)では、ポリウレタン製の下研磨パッド112と、粒径0.05μmのコロイダルシリカ粒子を用いて研磨した。
【0076】
両面研磨(S3)では、β-Ga単結晶基板の(001)面と(00-1)面とを、図4に示す両面研磨装置200で同時に研磨した。両面研磨装置200はスピードファム製の商品名DSM9Bであって、下研磨パッド212および上研磨パッド222はFILWEL製の商品名N7512であった。研磨スラリーはコロイダルシリカを20質量%含み、水を80質量%含むものであり、コロイダルシリカのD50は0.05μmであった。両面研磨(S3)の全期間で、研磨圧は9.8kPaであって、下定盤210の回転数は40rpmであり、上定盤220の回転数は14rpmであり、サンギヤ240の回転数は9rpmであり、インターナルギヤ250の回転数は15rpmであった。サンギヤ240のピッチ円直径は207.4mmであり、インターナルギヤ250のピッチ円直径は664.6mmであった。
【0077】
[例4~例6]
例4~例6では、直径50.8mm、厚さ0.7mmのβ-Ga単結晶基板に対して、一次片面研磨(S1)および二次片面研磨(S2)のみを、例1~例3と同一の条件で実施した。例4~例6では、両面研磨(S3)は実施しなかった。
【0078】
[例7]
例7では、両面研磨(S3)の粒子として粒径0.5μmのダイヤモンド粒子を用い、ダイヤモンド粒子用の研磨パッドとしてエポキシ樹脂製のものを用いた以外、例1~例3と同一の条件で一次片面研磨(S1)、二次片面研磨(S2)および両面研磨(S3)を実施した。その結果、両面研磨(S3)中に酸化ガリウム基板10が割れてしまった。
【0079】
[研磨結果]
第1主表面11である(001)面の第1最大高低差(PV1)は、図6に示すように酸化ガリウム基板10を変形しないように、第2主表面12である(00-1)面を水平な平坦面20に向い合せて載置した状態で測定した。測定装置として、三鷹光器製の商品名PF-60を用いた。
【0080】
第1主表面11である(001)面の第2最大高低差(PV2)は、図8に示すように第2主表面12である(00-1)面を平坦なチャック面30に向い合せて全面吸着した状態で測定した。測定装置として、三鷹光器製の商品名PF-60を用いた。
【0081】
例1~例6の研磨結果を表1に示す。なお、例7では上記の通り、両面研磨(S3)中に酸化ガリウム基板10が割れてしまった。
【0082】
【表1】
表1から明らかなように、例1~例3は、例4~例6とは異なり、両面研磨(S3)を実施したので、PV1/Dが0.39×10-4以下であり、PV1が2μm以下であった。両面研磨(S3)によって、トワイマン効果による反りを低減できることが分かった。
【0083】
また、表1から明らかなように、例1~例3は、例4~例6とは異なり、両面研磨(S3)を実施したので、PV2/Dが0.59×10-4以下であり、PV2が3μm以下であった。両面研磨(S3)によって、酸化ガリウム基板10に対する上定盤220の形状転写を抑制できることが分かった。
【0084】
また、例1~例3は、両面研磨(S3)で使用される粒子のモース硬度が7以下であり、その粒子のD50が1μm以下であり、且つ、前半期の50%以上で研磨圧が9.8kPa以下であったので、両面研磨中に酸化ガリウム基板10が割れることはなかった。一方、例7では、両面研磨(S3)で使用される粒子のモース硬度が7を超えたので、両面研磨中に酸化ガリウム基板10が割れてしまった。
【0085】
なお、一次片面研磨(S1)ではモース硬度が10であるダイヤモンド粒子を用いて研磨したが、酸化ガリウム基板10が割れることはなかった。片面研磨では両面研磨に比べて酸化ガリウム基板10が割れにくく、そのことが特許文献1で片面研磨を採用する理由であると推定される。
【0086】
以上、本開示に係る酸化ガリウム基板、および酸化ガリウム基板の製造方法の実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態などに限定されない。特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更、修正、置換、付加、削除、および組合わせが可能である。それらについても当然に本開示の技術的範囲に属する。
【0087】
本出願は、2019年4月8日に日本国特許庁に出願された特願2019-073548号に基づく優先権を主張するものであり、特願2019-073548号の全内容を本出願に援用する。
【符号の説明】
【0088】
10 酸化ガリウム基板
11 第1主表面
12 第2主表面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8