(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-02
(45)【発行日】2023-10-11
(54)【発明の名称】状況判定装置、方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G16H 20/70 20180101AFI20231003BHJP
【FI】
G16H20/70
(21)【出願番号】P 2019213279
(22)【出願日】2019-11-26
【審査請求日】2022-04-11
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 1.2019年3月11日 https://www.ieice.org/ken/paper/20190516n1m9/ にて公開 2.2019年5月9日 https://www.ieice.org/ken/program/index.php?tgs_regid=e8e6965ba488c5d86aac2b0268f4caf6ebfee8539f015591f893824b39ecbaf0 https://www.ieice.org/ken/paper/20190516n1m9/ https://www.ieice.org/ken/user/index.php?cmd=participation&tgs_regid=e8e6965ba488c5d86aac2b0268f4caf6ebfee8539f015591f893824b39ecbaf0&lang= にて公開 3.2019年5月16日 一般社団法人電子情報通信学会 ヒューマンコミュニケーション基礎(HCS)研究会・ヒューマン情報処理(HIP)研究会にて公開 4.2019年3月11日 https://www.ieice.org/ken/paper/20190516j1mo/ にて公開 5.2019年5月9日 https://www.ieice.org/ken/program/index.php?tgs_regid=e8e6965ba488c5d86aac2b0268f4caf6ebfee8539f015591f893824b39ecbaf0 https://www.ieice.org/ken/paper/20190516j1mo/ https://www.ieice.org/ken/user/index.php?cmd=participation&tgs_regid=e8e6965ba488c5d86aac2b0268f4caf6ebfee8539f015591f893824b39ecbaf0&lang= にて公開 6.2019年5月16日 一般社団法人電子情報通信学会 ヒューマンコミュニケーション基礎(HCS)研究会・ヒューマン情報処理(HIP)研究会にて公開 (備考欄に続く)
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】800000068
【氏名又は名称】学校法人東京電機大学
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 妙
(72)【発明者】
【氏名】青木 良輔
(72)【発明者】
【氏名】渡部 智樹
(72)【発明者】
【氏名】犬童 拓也
(72)【発明者】
【氏名】武川 直樹
(72)【発明者】
【氏名】大島 直樹
(72)【発明者】
【氏名】小安 宗徳
(72)【発明者】
【氏名】篠▲崎▼ 一慶
【審査官】森田 充功
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/083610(WO,A1)
【文献】特開2016-085703(JP,A)
【文献】特開2019-082965(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00 - 80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザのターゲット行動に対する取り組みの程度を複数の状態で定義した行動変容ステージの、前記複数の状態の各々に関連付けて当該状態を判定するためのステージ判定条件を記憶する第1の記憶部と、
前記行動変容ステージの前記複数の状態のうち特定の状態について前記ターゲット行動に対する計画および実施の進捗度合いを複数の段階で定義した進捗フェーズの、前記複数の段階の各々に関連付けて当該段階を判定するためのフェーズ判定条件を記憶する第2の記憶部と、
対象ユーザの前記ターゲット行動に対する意識を表すユーザ特徴量を取得する第1の取得処理部と、
取得された前記ユーザ特徴量と、前記第1の記憶部に記憶された前記ステージ判定条件および前記第2の記憶部に記憶された前記フェーズ判定条件とに基づいて、前記対象ユーザの状況が前記行動変容ステージのどの状態でかつ前記進捗フェーズのどの段階に該当するかを判定する第1の判定処理部と
、
前記行動変容ステージの前記複数の状態と前記進捗フェーズの前記複数の段階との各組み合わせの各々に関連付けて、前記ターゲット行動に影響を及ぼす動機要因および阻害要因の少なくとも一方と、当該動機要因および阻害要因の少なくとも一方による影響の度合いを表す情報を記憶する第3の記憶部と、
前記対象ユーザに関するシチュエーション情報を取得する第2の取得処理部と、
取得された前記シチュエーション情報と、前記第3の記憶部に記憶された前記動機要因および阻害要因の少なくとも一方とその影響の度合いを表す情報とに基づいて、前記対象ユーザの行動可能性を推定する推定処理部と
を具備する状況判定装置。
【請求項2】
前記第1の判定処理部により判定された前記対象ユーザの状況と、前記推定処理部により推定された前記対象ユーザの行動可能性とをもとに、前記対象ユーザに対する介入の適否を判定する第2の判定処理部を、さらに具備する請求項
1に記載の状況判定装置。
【請求項3】
前記第1の判定処理部は、
前記取得された前記ユーザ特徴量と、前記第1の記憶部に記憶された前記ステージ判定条件とに基づいて、前記対象ユーザの前記ターゲット行動に対する取り組みの程度が前記行動変容ステージのどの状態に該当するかを判定し、
前記取り組みの程度が前記行動変容ステージの複数の状態のうち前記特定の状態に該当すると判定された場合に、前記取得された前記ユーザ特徴量と、前記第2の記憶部に記憶された前記フェーズ判定条件とに基づいて、前記対象ユーザの前記ターゲット行動に対する計画と実施の進捗度合いが前記進捗フェーズのどの段階に該当するかを判定する
請求項1に記載の状況判定装置。
【請求項4】
前記行動変容ステージにより定義された前記複数の状態および前記進捗フェーズにより定義された前記複数の段階間の状態遷移の方向を二次元的に表した状態遷移図上に、前記第1の判定処理部により判定された前記対象ユーザの現在の状態および段階の位置と、前記第2の判定処理部の判定結果に基づく次の遷移の方向と、前記推定処理部により推定された行動可能性を表す値とを表示した表示情報を生成し、出力する表示データ生成処理部を、さらに具備する請求項
2に記載の状況判定装置。
【請求項5】
前記表示データ生成処理部は、前記状態遷移図上に、前記次の状態遷移に対する前記動機要因および阻害要因の少なくとも一方の影響の度合いを表す値をさらに表示する、請求項
4に記載の状況判定装置。
【請求項6】
ユーザのターゲット行動に対する取り組みの程度を複数の状態で定義した行動変容ステージの、前記複数の状態の各々に関連付けて当該状態を判定するためのステージ判定条件を記憶する第1の記憶部と、前記行動変容ステージの前記複数の状態のうち特定の状態について前記ターゲット行動に対する計画と実施の進捗度合いを複数の段階で定義した進捗フェーズの、前記複数の段階の各々に関連付けて当該段階を判定するためのフェーズ判定条件を記憶する第2の記憶部と
、前記行動変容ステージの前記複数の状態と前記進捗フェーズの前記複数の段階との各組み合わせの各々に関連付けて、前記ターゲット行動に影響を及ぼす動機要因および阻害要因の少なくとも一方と、当該動機要因および阻害要因の少なくとも一方による影響の度合いを表す情報を記憶する第3の記憶部とに接続される状況判定装置が実行する状況判定方法であって、
対象ユーザの前記ターゲット行動に対する意識を表すユーザ特徴量を取得する第1の過程と、
取得された前記ユーザ特徴量と、前記第1の記憶部に記憶された前記ステージ判定条件および前記第2の記憶部に記憶された前記フェーズ判定条件とに基づいて、前記対象ユーザの前記ターゲット行動に対する状況が前記行動変容ステージのどの状態でかつ前記進捗フェーズのとの段階に該当するかを判定する第2の過程と
、
前記対象ユーザに関するシチュエーション情報を取得する第3の過程と、
取得された前記シチュエーション情報と、前記第3の記憶部に記憶された前記動機要因および阻害要因の少なくとも一方とその影響の度合いを表す情報とに基づいて、前記対象ユーザの行動可能性を推定する第4の過程と
を具備する状況判定方法。
【請求項7】
請求項1乃至
5のいずれかに記載の状況判定装置が具備する前記各処理部の処理を、前記状況判定装置が備えるプロセッサに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明の一態様は、ユーザの行動変容を支援する装置においてユーザの状況を判定するために用いられる状況判定装置、方法、プログラムおよびデータ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
生活習慣病は不健全な生活の積み重ねを改善することで予防が可能である。そこで、対象ユーザの特徴やニーズ、受け入れやすさに関する情報を調べ、これらの情報に基づいて対象ユーザに対し健康行動の変容を支援する情報を提供する技術が種々提案されている。例えば、非特許文献1には、個人の行動を変容させることを目的として定義されたトランスセオレティカル・モデル(Transtheoretical Model:TTM)に着目し、対象ユーザの属性情報や行動情報、環境情報等をもとに対象ユーザの状況がどの行動変容ステージに位置するかを推定し、その推定結果に応じて対象ユーザに適合した行動を推奨する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】櫻田好司、「行動変容型生活習慣改善システム」、OKIテクニカルレビュー、2016年12月/第228号 Vol.83 No.2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、非特許文献1に記載された技術では、対象ユーザの状況を主として行動変容ステージにより判定しているが、これだけでは判定精度が十分ではなく、さらなる判定精度の向上が求められている。
【0005】
この発明は上記事情に着目してなされたもので、一側面では、対象ユーザの状況を高精度に判定できるようにする技術を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためにこの発明の一態様は、ユーザのターゲット行動(例えば、週1回に30分以上運動する、といったユーザが取り組むべき行動)に対する取り組みの程度を複数の状態で定義した行動変容ステージの、前記複数の状態の各々に関連付けて当該状態を判定するためのステージ判定条件を記憶する第1の記憶部と、前記行動変容ステージの前記複数の状態のうち特定の状態について前記ターゲット行動に対する計画および実施の進捗度合いを複数の段階で定義した進捗フェーズの、前記複数の段階の各々に関連付けて当該段階を判定するためのフェーズ判定条件を記憶する第2の記憶部と、対象ユーザの前記ターゲット行動に対する意識を表すユーザ特徴量を取得する第1の取得処理部と、取得された前記ユーザ特徴量と、前記第1の記憶部に記憶された前記ステージ判定条件および前記第2の記憶部に記憶された前記フェーズ判定条件とに基づいて、前記対象ユーザの状況が前記行動変容ステージのどの状態でかつ前記進捗フェーズのとの段階に該当するかを判定する第1の判定処理部とを具備し、さらに前記行動変容ステージの前記複数の状態と前記進捗フェーズの前記複数の段階との各組み合わせの各々に関連付けて、前記ターゲット行動に影響を及ぼす動機要因および阻害要因の少なくとも一方と、当該動機要因および阻害要因の少なくとも一方による影響の度合いを表す情報を記憶する第3の記憶部と、前記対象ユーザに関するシチュエーション情報を取得する第2の取得処理部と、取得された前記シチュエーション情報と、前記第3の記憶部に記憶された前記動機要因および阻害要因の少なくとも一方とその影響の度合いを表す情報とに基づいて、前記対象ユーザの行動可能性を推定する推定処理部とを具備するようにしたものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明の一態様によれば、対象ユーザの状況を、複数のステージと複数のフェーズにより表される行動変容モデルの状態遷移図上で表すことが可能となり、これにより対象ユーザの状態をステージのみにより判定する場合に比べ、正確に判定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、この発明の一実施形態に係る行動変容モデルの構成を示す図である。
【
図2】
図2は、
図1に示した行動変容モデルにおける状態遷移の方向を示す図である。
【
図3】
図3は、この発明の一実施形態に係る行動変容支援システムの構成を示す図である。
【
図4】
図4は、
図3に示したシステムにおいて状況判定装置として動作するサーバ装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、
図3に示したシステムにおいて状況判定装置として動作するサーバ装置のソフトウェア構成を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、
図5に示したサーバ装置による処理手順と処理内容を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、ユーザ特徴量およびシチュエーション情報の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、
図5に示したサーバ装置に入力されるユーザ特徴量の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、
図5に示したサーバ装置に入力されるシチュエーション情報の一例を示す図である。
【
図10】
図10は、行動可能性の判定しきい値の一例を示す図である。
【
図11】
図11は、行動変容ステージの判定条件の一例を示す図である。
【
図12】
図12は、進捗フェーズの判定条件の一例を示す図である。
【
図13】
図13は、動機要因および阻害要因の種類とその影響確率の一例を示す図である。
【
図14】
図14は、対象ユーザの行動に対する阻害要因の判定結果を対象ユーザ本人向けに生成した表示データの一例を示す図である。
【
図15】
図15は、対象ユーザの行動に対する阻害要因の判定結果をサポータ向けに生成した表示データの一例を示す図である。
【
図16】
図16は、行動変容モデルの状態遷移図に、対象ユーザの現在の状態を示す位置と、前回からの状態遷移の方向および次の状態遷移の方向およびそれぞれの行動可能性の値を表示した表示データの一例を示す図である。
【
図17】
図17は、行動変容モデルの状態遷移図に、対象ユーザの現在の状態の位置と、次の状態遷移の方向およびその際の行動可能性の値と、阻害要因の判定結果を表示した表示データの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照してこの発明に係わる実施形態を説明する。
[一実施形態]
(構成例)
(1)行動変容モデル
図1はこの発明の一実施形態に係る状況判定装置で使用される行動変容モデルの構成の一例を示すものである。
行動変容モデルは、ユーザのターゲット行動に対する取り組みの程度を複数の状態で定義した行動変容ステージと、上記ターゲット行動に対する計画および実施の進捗度合いを複数の段階で定義した進捗フェーズとにより構成される。
【0010】
ここで、ユーザのターゲット行動とはユーザが取り組む行動であり、準備行動とはターゲット行動のために事前に行う必要のある行動である。例えば、ユーザのターゲット行動を「週1回に30分以上運動する」とした場合、準備行動は「運動用のスニーカーを買ったり、何曜日のどの時間に運動を行うか等の計画を立てる」ことを指す。
【0011】
この例では、上記行動変容ステージの複数の状態として、無関心期ST1、関心期ST2、準備期ST3、実行期ST4、維持期ST5からなる5つのステージ(状態)が定義される。一方、進捗フェーズは、上記行動変容ステージの5つのステージのうち、準備期ST3および実行期ST4に対し定義されるもので、計画フェーズP1、行動意志フェーズP2、行動フェーズP3の3段階のフェーズにより構成される。
【0012】
より具体的には、無関心期ST1はターゲット行動(準備行動)をする予定がない状態を、関心期ST2はターゲット行動をするつもりがある状態をそれぞれ示す。また、準備期ST3における計画フェーズP1は近いうちに準備行動をする予定がある段階を、行動意志フェーズP2は準備行動をしようとする段階を、行動フェーズP3は準備行動を実施する段階をそれぞれ示す。さらに、実行期ST4における計画フェーズP1は近いうちにターゲット行動をする予定がある段階を、行動意志フェーズP2はターゲット行動をしようとする段階を、行動フェーズP3はターゲット行動を実施する段階をそれぞれ示す。最後に、維持期ST5はターゲット行動が継続されている(あるいは習慣化されている)状態を示している。
【0013】
以上述べた行動変容モデルでは、無関心期ST1からスタートして維持期ST5に至るまで各ステージおよびフェーズを順に遷移することが期待される。
図2はその状態遷移の方向を矢印で示したものである。なお、
図2における(1) はステージ移行可能性を、(2) は計画フェーズから行動意志フェーズへの上昇可能性を、(3) は行動意志フェーズから行動フェーズへの移行可能性をそれぞれ示すものである。
【0014】
なお、実際のユーザのステージおよびフェーズの遷移は、矢印とは逆向きに遷移したり、同じ状態に止まるように遷移することが起こり得るので、必要に応じてさらに状態遷移を設定することができる。また、ステージやフェーズについても、判定基準とともに必要に応じて適宜増減して設定してもよい。
【0015】
(2)システム
図3は、この発明の一実施形態に係る行動変容支援システムの全体構成を示す図である。この行動変容支援システムは、この発明の一実施形態に係る状況判定装置として動作するサーバ装置SVと、複数のユーザが各々使用するユーザ端末MT1~MTnとの間で、ネットワークNWを介してデータ通信を可能にしたものである。
【0016】
ユーザ端末MT1~MTnは、スマートフォンやタブレット型端末、ウェアラブル端末、パーソナルコンピュータ等からなり、対象ユーザだけでなく、対象ユーザの行動変容をサポートする家族やトレーナ、医療関係者等のサポータにより使用されてもよい。
【0017】
ネットワークNWは、例えば、インターネット等のIP(Internet Protocol)ネットワークと、このIPネットワークにアクセスするためのアクセスネットワークとにより構成される。アクセスネットワークとしては、例えば有線および無線の公衆ネットワークや、有線および無線のLAN(Local Area Network)が使用される。
【0018】
(3)サーバ装置SV
図4および
図5は、それぞれ上記サーバ装置SVのハードウェア構成およびソフトウェア構成を示すブロック図である。
サーバ装置SVは、例えばクラウドサーバやWebサーバにより構成される。サーバ装置SVは、中央処理ユニット(Central Processing Unit:CPU)等のハードウェアプロセッサを有する制御部1を備え、この制御部1に対し、記憶部2および通信インタフェース(通信I/F)3を、バス4を介して接続したものとなっている。
【0019】
通信I/F3は、例えば、公衆データネットワークに対応したインタフェースを有し、ネットワークNWを介してユーザ端末MT1~MTnとの間でデータ伝送を行う。なお、通信I/F3は、設置場所や運用者によっては有線LAN等のその他のインタフェースを備えていてもよい。
【0020】
記憶部2は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)またはSolid State Drive(SSD)等の随時書込みおよび読出しが可能な不揮発性メモリと、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)とを組み合わせて構成される記憶媒体を備えるもので、プログラム記憶領域とデータ記憶領域とを有する。なお、記憶媒体の構成は上記構成に限るものではない。プログラム記憶領域には、OS(Operating System)等のミドルウェアに加えて、この発明の一実施形態に係る各種制御処理を実行するために必要なプログラムが格納されている。
【0021】
データ記憶領域には、第1の記憶部として使用されるユーザ特徴量記憶部21と、第2の記憶部として使用されるシチュエーション情報記憶部22と、ステージ判定条件記憶部23と、フェーズ判定条件記憶部24と、第3の記憶部として使用される動機・阻害要因記憶部25と、判定データ記憶部26とが設けられている。
【0022】
ユーザ特徴量記憶部21は、ユーザ端末MT1~MTnから送られる対象ユーザの特徴量を表す情報を、入力日時または受信日時順に、ユーザ識別情報(ユーザID)またはユーザ端末の識別情報(端末ID)と関連付けて記憶する。ユーザ特徴量の具体例については後述する。
【0023】
シチュエーション情報記憶部22は、ユーザ端末MT1~MTnから送られる対象ユーザのスケジュール情報、生体情報および環境情報等のシチュエーション情報を、入力または検出日時、或いは受信日時順に、ユーザIDまたは端末IDと関連付けて記憶する。シチュエーション情報の具体例についても後述する。
【0024】
ステージ判定条件記憶部23には、
図1に例示した行動変容モデルの5つのステージの各々に対応付けて、対象ユーザの状態がどのステージに対応するか判定するためのステージ判定条件が記憶されている。
【0025】
フェーズ判定条件記憶部24には、
図1に例示した行動変容モデルの3段階のフェーズの各々に対応付けて、対象ユーザの段階がどのフェーズに対応するか判定するためのステージ判定条件が記憶されている。
【0026】
動機・阻害要因記憶部25には、上記行動変容モデルの5つのステージと3段階のフェーズとのすべての組み合わせに対応付けて、ユーザが行動する際の動機・阻害要因となる情報がカテゴリ別に記憶されている。なお、上記ステージ判定条件、フェーズ判定条件および動機・阻害要因の具体例は後述する。
【0027】
判定データ記憶部26は、対象ユーザの状態および段階の判定結果と、対象ユーザの行動に影響を及ぼす動機・阻害要因の判定結果と、対象ユーザの行動に対する介入の適否の判定結果を保存するために用いられる。
【0028】
制御部1は、この発明の一実施形態に係る各種制御機能として、第1の取得処理部として使用されるユーザ特徴量取得部11と、第2の取得処理部として使用されるシチュエーション情報取得部12と、第1の判定処理部として機能する行動変容ステージ判定部13およびフェーズ判定部14と、動機・阻害要因判定部15と、行動可能性推定部16と、介入適否判定部17と、判定データ出力部18とを有している。これらの制御機能は、何れも記憶部2のプログラム記憶領域に格納されたプログラムを、制御部1のハードウェアプロセッサに実行させることにより実現される。
【0029】
ユーザ特徴量取得部11は、対象ユーザのユーザ端末MT1~MTnに対し、例えばアンケート形式の質問リストを送信する。質問リストは、対象ユーザのターゲット行動に対する意識を調査するためのもので、例えばユーザ特徴量記憶部21に記憶されている複数のリストの中から選択される。
【0030】
またユーザ特徴量取得部11は、上記質問リストに対する回答情報がユーザ端末MT1~MTnから返送された場合に、この回答情報を通信I/F3を介して受信し、受信された回答情報をユーザ特徴量として送信元のユーザIDまたは端末IDと関連付けてユーザ特徴量記憶部21に記憶させる処理を行う。
【0031】
シチュエーション情報取得部12は、例えばユーザ端末MT1~MTnから送信される、ユーザのスケジュールデータ、生体データ、周囲の温度や湿度等の環境データ等を通信I/F3を介して受信し、受信された上記各データをシチュエーション情報として送信元のユーザIDまたは端末IDと関連付けてシチュエーション情報記憶部22に記憶させる処理を行う。
【0032】
行動変容ステージ判定部13は、上記ユーザ特徴量記憶部21に新たなユーザ特徴量が記憶されるごとに、当該ユーザ特徴量を読み出す。そして、読み出されたユーザ特徴量を、ステージ判定条件記憶部23に記憶されている複数のステージ判定条件と照合することにより、上記対象ユーザの現在の状態がどのステージに対応するかを判定する処理を行う。
【0033】
フェーズ判定部14は、上記行動変容ステージ判定部13により上記対象ユーザの現在の状態が「準備期」または「実行期」に対応していると判定された場合に、上記ユーザ特徴量を、フェーズ判定条件記憶部24に記憶されている複数のフェーズ判定条件と照合し、上記対象ユーザの現在の状態がどのフェーズに対応するかを判定する処理を行う。またフェーズ判定部14は、上記対象ユーザの現在の状態の判定結果を、ユーザIDまたは端末IDと関連付けて判定データ記憶部26に記憶させる処理も行う。
【0034】
動機・阻害要因判定部15は、上記シチュエーション情報記憶部22に対象ユーザの新たなシチュエーション情報が記憶されるごとに、当該シチュエーション情報を読み出す。そして、読み出されたシチュエーション情報を、動機・阻害要因記憶部25に記憶されている動機・阻害要因と照合することにより、上記対象ユーザが行動を実行しようとするときに影響を及ぼす動機要因または阻害要因の種類と、その影響の度合い(例えば影響確率)を判定する処理を行う。また、動機・阻害要因判定部15は、判定された上記動機要因または阻害要因の種類とその影響確率を、ユーザIDまたは端末IDと関連付けて判定データ記憶部26に記憶させる処理も行う。
【0035】
行動可能性推定部16は、上記動機・阻害要因判定部15により判定された動機要因または阻害要因の種類とその影響確率をもとに、上記対象ユーザの現在の行動可能性を表すスコアを算出する処理を行う。
【0036】
介入適否判定部17は、算出された上記行動可能性を表すスコアを、予め設定されている判定しきい値と比較することにより、上記対象ユーザに対する介入の適否を判定し、その判定結果を上記行動可能性を表すスコアと共に、判定データ記憶部26に記憶させる処理を行う。
【0037】
判定データ出力部18は、上記判定データ記憶部26に記憶された、介入の適否の判定結果と、行動変容モデルにおける対象ユーザの現在の状態の位置と、行動可能性スコアと、動機要因または阻害要因の種類とその影響確率とに基づいて表示データを生成し、当該表示データを通信I/F3から対象ユーザまたはそのサポータのユーザ端末MT1~MTnへ送信させる処理を行う。
【0038】
(動作例)
次に、以上のように構成されたサーバ装置SVの動作を説明する。
図6はサーバ装置SVによる状況判定制御の処理手順と処理内容を示すフローチャートである。
【0039】
(1)ユーザ特徴量の取得
サーバ装置SVは、ユーザ特徴量取得部11の制御の下、先ずステップS10において、対象ユーザごとにその特徴量を取得する処理を以下のように実行する。
すなわち、ユーザ特徴量取得部11は、先ず対象ユーザのユーザ端末MT1~MTnに対し、例えば1日のうちの予め設定された取得タイミングになるごとに、アンケート形式の質問リストを送信する。この動作は、例えば、サーバ装置SVのURL(Uniform Resource Locator)を含む電子メールをユーザ端末MT1~MTnに送信し、ユーザが上記URLをもとにサーバ装置SVに対しアクセスして質問リストをダウンロードすることにより行われる。
【0040】
質問リストは、例えばユーザ特徴量記憶部21に記憶されている複数のリストの中から選択される。なお、対象ユーザの属性情報が事前に取得されている場合には、この属性情報に対応するリストを選択するようにしてもよい。このようにすると、対象ユーザごとに、その年齢や性別、職業、病歴等に応じた適切な質問リストを選択し送信することが可能となる。
【0041】
ユーザ端末MT1~MTnにおいて対象ユーザは、表示された質問リストを見ながら回答を入力する。そして、回答の入力終了後にユーザが終了操作を行うと、上記入力された回答の内容とその入力日時、およびユーザIDまたはユーザ端末IDを含む回答情報がユーザ端末MT1~MTnからサーバ装置SVへ送信される。
【0042】
これに対しサーバ装置SVは、ユーザ端末MT1~MTnから回答情報が送信されると、ユーザ特徴量取得部11の制御の下、上記回答情報を通信I/F3を介して受信する。そして、受信された上記回答情報をユーザ特徴量として送信元のユーザIDまたは端末IDと関連付けてユーザ特徴量記憶部21に記憶させる。その際ユーザ特徴量取得部11は、上記回答情報に含まれている入力日時をもとに、回答情報を日時順にユーザ特徴量記憶部21に記憶させる。なお、回答情報に入力日時が含まれていない場合には、回答情報をその受信日時の順にユーザ特徴量記憶部21に記憶させるようにしてもよい。
【0043】
(2)シチュエーション情報の取得
サーバ装置SVは、上記ユーザ特徴量の取得動作と並行して、シチュエーション情報取得部12の制御の下、ステップS11において、シチュエーション情報の取得動作を以下のように実行する。
【0044】
すなわち、シチュエーション情報取得部12は、先に述べたユーザ特徴量の取得動作と同様に、取得タイミングになるごとに、シチュエーション用の質問リストをユーザ端末MT1~MTnへ送信する。その送信方法は、ユーザ特徴量の場合と同様に、電子メールによりユーザ端末MT1~MTnにURLを通知し、このURLに基づくアクセスに応じて質問リストをダウンロードすることにより行われる。
【0045】
対象ユーザは、ユーザ端末MT1~MTnにおいて、表示された上記質問リストに従いスケジュールデータや衣食住に関するデータ等を入力する。またユーザ端末MT1~MTnは、内蔵または外部に設置されたセンサから、ユーザの周辺温度等の環境データや疲労度合い等を表す生体データを取得する。なお、環境データについてはWebサイトから取得するようにしてもよい。また、家族構成や居住形態等の属性情報を取得してもよいが、これらの属性情報は定期的に取得する必要はなく、システムの利用開始時にのみ取得すればよい。
【0046】
ユーザ端末MT1~MTnは、入力された上記スケジュールデータや衣食住に関するデータ、および取得された上記環境データ等を、ユーザIDまたは端末IDと共にサーバ装置SVへ送信する。なお、上記スケジュールデータや衣食住に関するデータ、および環境データ等には入力日時または検出日時が含まれる。
【0047】
サーバ装置SVは、シチュエーション情報取得部12の制御の下、ユーザ端末MT1~MTnから送信される、上記スケジュールデータや衣食住に関するデータ、および取得された上記環境データ等を通信I/F3を介して受信し、受信された上記各データをシチュエーション情報として送信元のユーザIDまたは端末IDと関連付けてシチュエーション情報記憶部22に記憶させる。その際、上記各データには入力日時または検出日時が含まれているので、シチュエーション情報取得部12は上記シチュエーション情報を入力日時または検出日時の順に記憶させる。なお、各データに入力日時または検出日時が含まれていない場合には、シチュエーション情報取得部12は各データをその受信日時の順に記憶させる。
【0048】
図7は、ユーザ特徴量およびシチュエーション情報の種別とその収集方法および収集タイミングの一例を示したものである。
図8はユーザ特徴量を取得するための質問リストとその回答の一例を示し、また
図9はシチュエーション情報の回答の一例を示す。なお、質問リストの項目は任意に設定することができ、また質問に対する回答には漏れがあっても構わない。
【0049】
(3)行動変容ステージの判定
サーバ装置SVは、上記新たなユーザ特徴量が取得されると、行動変容ステージ判定部13の制御の下、ステップS12において、ユーザ特徴量記憶部21から上記新たなユーザ特徴量を読み出す。そして、読み出されたユーザ特徴量を、ステージ判定条件記憶部23に記憶されているステージ判定条件と照合することにより、上記対象ユーザの現在の状態がどのステージに対応するかを判定する。
【0050】
例えば、いまステージ判定条件記憶部23に
図11に示す複数のステージ判定条件が記憶されているものとする。この状態で、例えば
図8に示すユーザ特徴量が取得されたとすると、行動変容ステージ判定部13はユーザ特徴量の内容が「ターゲット実行計画:あり」で、かつ「いま行動しようと思っているか:はい」となっていることから、対象ユーザの現在の状態は「実行期」であると判定する。
【0051】
(4)フェーズの判定
サーバ装置SVは、上記行動変容ステージの判定において、対象ユーザの現在の状態が「実行期」に対応していると判定されると、フェーズ判定部14の制御の下、ステップS13において、上記ユーザ特徴量をフェーズ判定条件記憶部24に記憶されている複数のフェーズ判定条件と照合し、ユーザの現在の状況がどのフェーズに対応するかを判定する。
【0052】
例えば、いまフェーズ判定条件記憶部24に
図12に示すフェーズ判定条件が記憶されているものとする。この状態で、例えば
図8に示すユーザ特徴量が取得されたとすると、フェーズ判定部14はユーザ特徴量に含まれる「行動の実施計画:あり」、「今行動しようと思っているか:はい」、「今行動しているか:いいえ」を、フェーズ判定条件記憶部24に記憶されているフェーズ判定条件と照合する。その結果、ユーザの現在の段階は「行動意志フェーズ」であると判定される。
【0053】
以上のように得られた対象ユーザの状態(ステージ)と段階(フェーズ)の判定結果は、フェーズ判定部14の制御の下、判定時刻およびユーザIDまたは端末IDと関連付けられた状態で判定データ記憶部26に記憶される。
【0054】
(5)動機・阻害要因の判定
上記したように対象ユーザの状態(ステージ)と段階(フェーズ)の判定が終了すると、サーバ装置SVは次に動機・阻害要因判定部15の制御の下、ステップS14において、シチュエーション情報記憶部22から対象ユーザの最新のシチュエーション情報を読み出す。そして、読み出されたシチュエーション情報を、動機・阻害要因記憶部25に記憶されているステージ×フェーズの各組み合わせに対応する動機・阻害要因のうち、「実行期×行動意志フェーズ」に対応する動機・阻害要因と照合することにより、対象ユーザがターゲット行動を実行しようとするときに影響を及ぼす動機要因または阻害要因を判定する。
【0055】
例えば、いま動機・阻害要因記憶部25には、「実行期×行動意志フェーズ」に対応する動機・阻害要因として
図13に示す情報が記憶されているものとする。この情報は、例えば、カテゴリ別に複数の動機要因および阻害要因を定義し、さらに要因ごとに行動実行に対する影響確率を定義したものである。
【0056】
この状態で、対象ユーザのシチュエーション情報に、例えば
図9に示すように「やや疲れている」、「外気温:9℃」が含まれていたとすると、対象ユーザの現在のシチュエーションは「外気温:寒い」、「疲労度:やや疲れ」に該当するため、影響確率はp=0.3、p=0.4となる。このとき、影響確率pがp≧0.5のときは動機要因、p<0.5のときは阻害要因と定義されている。このため、上記の場合、「外気温」および「疲労度」のいずれも「阻害要因」と判定される。
【0057】
上記の判定結果、つまり「阻害要因:寒い(p=0.3)」、「阻害要因:やや疲れ(p=0.4)」は、動機・阻害要因判定部15の制御の下、判定日時およびユーザIDまたは端末IDに関連付けられた状態で判定データ記憶部26に記憶される。
【0058】
(6)行動可能性の推定
サーバ装置SVは、上記動機・阻害要因の判定結果が得られると、次に行動可能性推定部16の制御の下、ステップS16において、上記判定された動機・阻害要因の種類とその影響確率pの値をもとに、対象ユーザの現在の行動可能性を表す値(行動可能性スコア)を算出する。
【0059】
例えば、行動可能性スコアをaとすると、aは
a=Πpk
により表されるので、上記の例では
a=0.3×0.4
=0.12
となる。
【0060】
(7)介入の適否判定
サーバ装置SVは、続いて介入適否判定部17の制御の下、ステップS17において、上記算出された行動可能性のスコアaを予め設定されている判定しきい値と比較することで、対象ユーザに対する介入の適否を判定する。
【0061】
例えば、判定しきい値が
図10に示すように0.1<a<0.9に設定されているものとすると、上記の例では行動可能性スコアa=0.12であるため、対象ユーザに対する介入は“適”と判定される。ちなみに、行動可能性スコアaが0.1以下の場合には、対象ユーザにとって阻害要因が大きく行動を実行する可能性が低いため、介入は“不適”と判定される。これに対し、行動可能性スコアaが0.9以上の場合には、対象ユーザは既に十分に大きな動機要因を有しているため、対象ユーザは自力で行動を実行することが可能であると見なされ、介入の必要がないと判定される。
【0062】
上記介入の適否の判定結果は、介入適否判定部17の制御の下、判定日時およびユーザIDまたは端末IDと関連付けられた状態で判定データ記憶部26に記憶される。
【0063】
(8)判定データの出力
サーバ装置SVは、判定データ出力部18の制御の下、ステップS15において以下のように上記各判定結果の表示制御を行う。
【0064】
すなわち、判定データ出力部18は、先ずステップS151において、上記動機・阻害要因判定部15による判定結果を判定データ記憶部26から読み出し、動機・阻害要因の判定結果を対象ユーザに通知するための表示データを生成する。そして、生成された上記表示データを通信I/F3から対象ユーザが使用するユーザ端末へ送信し、ユーザ端末の表示部に表示させる。
図14は対象ユーザ向けの表示データの表示例を示すもので、阻害要因の種類が影響確率と共に表示される。
【0065】
また判定データ出力部18は、読み出された上記動機・阻害要因の判定結果を上記対象ユーザのサポータに通知させるための表示データを生成し、当該表示データをサポータが使用するユーザ端末に向け送信して表示させる。
図15は上記サポータ向けの表示データの表示例を示すものである。
【0066】
判定データ出力部18は、次にステップS152において、対象ユーザの現在の状態(ステージ)と段階(フェーズ)の判定結果を実行可能性スコアと共に対象ユーザに通知するための表示データを生成する。そして、生成された表示データを通信I/F3から対象ユーザが使用するユーザ端末に向け送信し、表示させる。
【0067】
この場合の表示データの構成としては、以下の2種類が考えられる。
図16はその第1の例を示すものである。この表示データは、行動変容モデルの構造とその状態遷移の方向を示す行動変容モデルの状態遷移図上に、対象ユーザの現在の状態(ステージ)と段階(フェーズ)の位置を星印で明示し、さらに現在のユーザ状態から次の状態へ遷移する際の行動可能性スコアを矢印の太さで表現したものである。なお、ユーザの現在の状態以外の行動可能性スコアを算出し、同時に表示してもよい。
図16では、実行期の行動計画→行動意志フェーズ上の行動可能性スコアを求め、このスコアを矢印の太さで追記した例を示している。
【0068】
図17は表示データの第2の例を示す。この表示データは、行動変容モデルの状態遷移図上に、対象ユーザの現在の状態(ステージ)と段階(フェーズ)の位置を星印で明示し、さらに現在の状態から次の状態へ遷移する際の動機要因または阻害要因の種類と影響確率の値を円の大きさで表現したものである。
【0069】
なお、判定データ出力部18は、上記行動変容モデルの状態遷移図を用いた表示データを、対象ユーザ向け以外に、サポータ向けに生成し送信するようにしてもよい。
【0070】
(作用効果)
以上述べたように一実施形態では、行動変容モデルの構造を5つの状態(ステージ)と3つの段階(フェーズ)を二次元配置した状態遷移図で表し、対象ユーザの特徴量をもとに、当該対象ユーザの現在の状況がどのステージのどのフェーズに位置するかを判定する。またそれと共に、対象ユーザのシチュエーション情報をもとに、当該対象ユーザの行動実行に影響を及ぼす動機・阻害要因の種類と影響確率を判定し、この影響確率をもとに行動可能性スコアを算出して介入の適否を判定するようにしている。
【0071】
従って、対象ユーザの状況を、5つの状態(ステージ)と3つの段階(フェーズ)により表される行動変容モデルの状態遷移図上で表すことが可能となり、これにより対象ユーザの状態をステージのみにより判定する場合に比べ、正確に判定することが可能となる。
【0072】
また対象ユーザのシチュエーション情報をもとに、対象ユーザの行動実行に影響を及ぼす動機・阻害要因の種類と影響確率を判定し、この影響確率をもとに行動可能性を推定して介入の適否を判定するようにしているので、ユーザの動機・阻害要因まで考慮した上で介入の適否を設定することができる。
【0073】
しかも、対象ユーザの動機・阻害要因の判定結果をユーザまたはサポータに通知することで、ユーザまたはサポータはユーザが行動を実行しようとする際に影響する動機の強化、或いは阻害要因の排除を検討することが可能となる。
【0074】
さらに、行動変容モデルの状態遷移図上にユーザの現在の状態とフェーズの段階が表示され、かつ行動可能性スコアが表示されるので、ユーザまたはサポータはユーザの現在の状態を明確に把握することができ、行動変容に対する意欲を高めることが可能となる。
【0075】
[他の実施形態]
なお、この発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、前記一実施形態では、状況判定装置の機能をWebサーバまたはクラウドサーバ等のサーバ装置に設けた場合を例にとって説明したが、状況判定装置の機能をユーザが使用するスマートフォンやタブレット型端末、パーソナルコンピュータ等のユーザ端末に設けてもよい。
【0076】
一実施形態では、新たなユーザ特徴量およびシチュエーション情報が得られるごとにユーザの状況の判定および介入の適否の判定を行う場合を例にとって説明したが、過去の任意の日時を指定することでユーザ特徴量記憶部21およびシチュエーション情報記憶部22に記憶されている情報をもとに過去の所望の日時におけるユーザの状況を判定するようにしてもよい。このようにすると過去の任意の日時におけるユーザの状況を振り返ることが可能となる。
【0077】
また、ユーザの状況の判定結果や行動可能性スコアおよび介入の有無等の判定データの履歴を記憶しておくことで、ユーザの過去の状況の遷移の傾向性を推定し、将来の状況の遷移またはそのための方法を予測してユーザまたはサポータに通知するようにしてもよい。
【0078】
さらに、一実施形態では、行動変容モデルの構造を5つの状態(ステージ)と3つの段階(フェーズ)を二次元配置した状態遷移図により表したが、状態(ステージ)数および段階(フェーズ)の数は2以上の他の数でもよい。また、複数の状態(ステージ)と複数の段階(フェーズ)を一次元(直線的な)配置した状態遷移図により表したり、三次元(立体的な)配置した状態遷移図により表してもよい。
【0079】
さらに、この発明が対象とする行動変容の種類としては、生活習慣病予防やダイエットのための生活改善ばかりでなく、運動の習慣づけ、食事の習慣づけ、学習の習慣づけ、禁煙のための行動および維持等が考えられる。その他、ユーザの状況の判定に使用するユーザ特徴量の種類、動機・阻害要因の判定に使用するやシチュエーション情報の種類、行動可能性スコアの判定しきい値、表示データの構成等についても、この発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施可能である。
【0080】
要するにこの発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【符号の説明】
【0081】
SV…サーバ装置
MT1~MTn…ユーザ端末
NW…ネットワーク
1…制御部
2…記憶部
3…通信I/F
4…バス
11…ユーザ特徴量取得部
12…シチュエーション情報取得部
13…行動変容ステージ判定部
14…フェーズ判定部
15…動機・阻害要因判定部
16…行動可能性推定部
17…介入適否判定部
18…判定データ出力部
21…ユーザ特徴量記憶部
22…シチュエーション情報記憶部
23…ステージ判定条件記憶部
24…フェーズ判定条件記憶部
25…動機・阻害要因記憶部
26…判定データ記憶部