(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-02
(45)【発行日】2023-10-11
(54)【発明の名称】チクングニアウイルスに対する抗体またはその抗原結合断片、およびその用途
(51)【国際特許分類】
C07K 16/10 20060101AFI20231003BHJP
C12Q 1/06 20060101ALI20231003BHJP
G01N 33/569 20060101ALI20231003BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
C07K16/10 ZNA
C12Q1/06
G01N33/569 L
C12N15/13
(21)【出願番号】P 2019571171
(86)(22)【出願日】2019-02-08
(86)【国際出願番号】 JP2019004667
(87)【国際公開番号】W WO2019156223
(87)【国際公開日】2019-08-15
【審査請求日】2022-01-25
(31)【優先権主張番号】P 2018022084
(32)【優先日】2018-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度 国立研究開発法人日本医療研究開発機構 感染症研究国際展開戦略プログラム「大阪大学タイ感染症共同研究拠点の戦略的新展開」に係る委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(73)【特許権者】
【識別番号】516115647
【氏名又は名称】マヒドン ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100115255
【氏名又は名称】辻丸 光一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154081
【氏名又は名称】伊佐治 創
(74)【代理人】
【識別番号】100194515
【氏名又は名称】南野 研人
(72)【発明者】
【氏名】塩田 達雄
(72)【発明者】
【氏名】中山 英美
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 正大
(72)【発明者】
【氏名】プイプロム オラピム
(72)【発明者】
【氏名】トゥクプラコン エカチャイ
(72)【発明者】
【氏名】リューンウイオン ポンサワン
(72)【発明者】
【氏名】リュラートロップ ナタネー
【審査官】田ノ上 拓自
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/168417(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
C12Q 1/06
G01N 33/569
C12N 15/00-15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(1)、(2)、または(3)の重鎖可変領域と、下記(4)の軽鎖可変領域とを含むことを特徴とする、チクングニアウイルスに対する抗体またはその抗原結合断片。
(1)重鎖相補性決定領域(CDRH)1、CDRH2、およびCDRH3を含み、
CDRH1が、下記(H1-A1)のアミノ酸配列を含むポリペプチドであり、
CDRH2が、下記(H2-A1)のアミノ酸配列を含むポリペプチドであり、
CDRH3が、下記(H3-A1)のアミノ酸配列を含むポリペプチドである重鎖可変領域
(H1-A1)配列番号1(GYTFTSYW)のアミノ酸配列
(H2-A1)配列番号2(IYPGDGDTRYT)のアミノ酸配列
(H3-A1)配列番号3(SYDPFDY)のアミノ酸配列
(2)CDRH1、CDRH2、およびCDRH3を含み、
CDRH1が、下記(H1-B1)のアミノ酸配列を含むポリペプチドであり、
CDRH2が、下記(H2-B1)のアミノ酸配列を含むポリペプチドであり、
CDRH3が、下記(H3-B1)のアミノ酸配列を含むポリペプチドである重鎖可変領域
(H1-B1)配列番号4(GYAFSTSW)のアミノ酸配列
(H2-B1)配列番号5(IYPGDGDT)のアミノ酸配列
(H3-B1)配列番号6(SNDGYYVGY)のアミノ酸配列
(3)CDRH1、CDRH2、およびCDRH3を含み、
CDRH1が、下記(H1-C1)のアミノ酸配列を含むポリペプチドであり、
CDRH2が、下記(H2-C1)のアミノ酸配列を含むポリペプチドであり、
CDRH3が、下記(H3-C1)のアミノ酸配列を含むポリペプチドである重鎖可変領域
(H1-C1)配列番号7(GYTFTSYY)のアミノ酸配列
(H2-C1)配列番号8(INPSNGGT)のアミノ酸配列
(H3-C1)配列番号9(GYYGNPFFAY)のアミノ酸配列
(4)軽鎖相補性決定領域(CDRL)1、CDRL2、およびCDRL3を含み、
CDRL1が、下記(L1-A1)のアミノ酸配列を含むポリペプチドであり、
CDRL2が、下記(L2-A1)のアミノ酸配列を含むポリペプチドであり、
CDRL3が、下記(L3-A1)のアミノ酸配列を含むポリペプチドである軽鎖可変領域
(L1-A1)配列番号10(ENVVTY)のアミノ酸配列
(L2-A1)配列番号11(GAS)のアミノ酸配列
(L3-A1)配列番号12(GQGYSYPYT)のアミノ酸配列
【請求項2】
下記(1)、(2)、または(3)の重鎖可変領域と、下記(4)の軽鎖可変領域とを含むことを特徴とする、チクングニアウイルスに対する抗体またはその抗原結合断片。
(1)下記(H-A)のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含み、下記(H-A)のアミノ酸配列からなるポリペプチドが、配列番号1のアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号2のアミノ酸配列からなるCDRH2、及び配列番号3のアミノ酸配列からなるCDRH3を含み、前記CDRH1、前記CDRH2、及び前記CDRH3のアミノ酸配列が不変異である重鎖可変領域
(H-A)下記(H-A1)、(H-A2)または(H-A3)のアミノ酸配列
(H-A1)配列番号13のアミノ
酸配列
(H-A2)配列番号13のアミノ酸配列に対して、
90%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(H-A3)配列番号13のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
(2)下記(H-B)のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含み、下記(H-B)のアミノ酸配列からなるポリペプチドが、配列番号4のアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号5のアミノ酸配列からなるCDRH2、及び配列番号6のアミノ酸配列からなるCDRH3を含み、前記CDRH1、前記CDRH2、及び前記CDRH3のアミノ酸配列が不変異である重鎖可変領域
(H-B)下記(H-B1)、(H-B2)または(H-B3)のアミノ酸配列
(H-B1)配列番号14のアミノ酸配列
(H-B2)配列番号14のアミノ酸配列に対して、
90%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(H-B3)配列番号14のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
(3)下記(H-C)のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含み、下記(H-C)のアミノ酸配列からなるポリペプチドが、配列番号7のアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号8のアミノ酸配列からなるCDRH2、及び配列番号9のアミノ酸配列からなるCDRH3を含み、前記CDRH1、前記CDRH2、及び前記CDRH3のアミノ酸配列が不変異である重鎖可変領域
(H-C)下記(H-C1)、(H-C2)または(H-C3)のアミノ酸配列
(H-C1)配列番号15のアミノ酸配列
(H-C2)配列番号15のアミノ酸配列に対して、
90%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(H-C3)配列番号15のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
(4)下記(L-A)のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含み、下記(L-A)のアミノ酸配列からなるポリペプチドが、配列番号10のアミノ酸配列からなるCDRL1、配列番号11のアミノ酸配列からなるCDRL2、及び配列番号12のアミノ酸配列からなるCDRL3を含み、前記CDRL1、前記CDRL2、及び前記CDRL3のアミノ酸配列が不変異である軽鎖可変領域
(L-A)下記(L-A1)、(L-A2)または(L-A3)のアミノ酸配列
(L-A1)配列番号16のアミノ酸配列
(L-A2)配列番号16のアミノ酸配列に対して、
90%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(L-A3)配列番号16のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
【請求項3】
下記(1)、(2)、または(3)の重鎖と、下記(4)の軽鎖とを含むことを特徴とする、チクングニアウイルスに対する抗体またはその抗原結合断片。
(1)下記(HA)のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含み、下記(HA)のアミノ酸配列からなるポリペプチドが、配列番号1のアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号2のアミノ酸配列からなるCDRH2、及び配列番号3のアミノ酸配列からなるCDRH3を含み、前記CDRH1、前記CDRH2、及び前記CDRH3のアミノ酸配列が不変異である重鎖
(HA)下記(HA1)、(HA2)または(HA3)のアミノ酸配列
(HA1)配列番号17のアミノ酸配列
(HA2)配列番号17のアミノ酸配列に対して、
90%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(HA3)配列番号17のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
(2)下記(HB)のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含み、下記(HB)のアミノ酸配列からなるポリペプチドが、配列番号4のアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号5のアミノ酸配列からなるCDRH2、及び配列番号6のアミノ酸配列からなるCDRH3を含み、前記CDRH1、前記CDRH2、及び前記CDRH3のアミノ酸配列が不変異である重鎖
(HB)下記(HB1)、(HB2)または(HB3)のアミノ酸配列
(HB1)配列番号18のアミノ酸配列
(HB2)配列番号18のアミノ酸配列に対して、
90%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(HB3)配列番号18のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
(3)下記(HC)のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含み、下記(HC)のアミノ酸配列からなるポリペプチドが、配列番号7のアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号8のアミノ酸配列からなるCDRH2、及び配列番号9のアミノ酸配列からなるCDRH3を含み、前記CDRH1、前記CDRH2、及び前記CDRH3のアミノ酸配列が不変異である重鎖
(HC)下記(HC1)、(HC2)または(HC3)のアミノ酸配列
(HC1)配列番号19のアミノ酸配列
(HC2)配列番号19のアミノ酸配列に対して、
90%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(HC3)配列番号19のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
(4)下記(LA)のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含み、下記(LA)のアミノ酸配列からなるポリペプチドが、配列番号10のアミノ酸配列からなるCDRL1、配列番号11のアミノ酸配列からなるCDRL2、及び配列番号12のアミノ酸配列からなるCDRL3を含み、前記CDRL1、前記CDRL2、及び前記CDRL3のアミノ酸配列が不変異である軽鎖
(LA)下記(LA1)、(LA2)または(LA3)のアミノ酸配列
(LA1)配列番号20のアミノ酸配列
(LA2)配列番号20のアミノ酸配列に対して、
90%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(LA3)配列番号20のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
【請求項4】
前記チクングニアウイルスは、チクングニアウイルスのエンベロープ糖タンパク質である、請求項1から3のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合断片を含むことを特徴とする、チクングニアウイルスの検出キット。
【請求項6】
チクングニアウイルスと前記抗体またはその抗原結合断片との結合を検出する検出試薬を含む、請求項5記載の検出キット。
【請求項7】
試料と、請求項1から4のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合断片とを接触させ、前記試料中のチクングニアウイルスと、前記抗体またはその抗原結合断片とを結合させることにより、前記試料中のチクングニアウイルスを検出する検出工程を含むことを特徴とする、チクングニアウイルスの検出方法。
【請求項8】
前記検出工程は、前記試料と前記抗体またはその抗原結合断片とを接触させて、前記試料中のチクングニアウイルスと前記抗体またはその抗原結合断片とを結合させる接触工程と、前記チクングニアウイルスと前記抗体またはその抗原結合断片との結合を検出する結合検出工程とを含む、請求項7記載の検出方法。
【請求項9】
前記試料は、体液または尿である、請求項7または8記載の検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規のチクングニアウイルスに対する抗体またはその抗原結合断片、およびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
東南アジア等では、ネッタイシマカ、ヒトスジシマカ等の蚊によって伝染病が媒介される。前記伝染病は、デング熱、チクングニア熱およびジカ熱がある。
【0003】
前記伝染病が疑われる場合、治療に先立っていずれの伝染病に該当するのかを確定する必要がある。このため、原因ウイルスの検査が行われている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、チクングニア熱の病原体であるチクングニアウイルス(以下、「CHIKV」ともいう)のエンベロープ糖タンパク質(以下、「Envタンパク質」ともいう)を構成するE1タンパク質に結合するCK47抗体およびCK119抗体を取得した。しかしながら、CK47抗体は、3つある遺伝子型(ECSA(East/Central/South African)、WA(West African)、Asian)のCHIKVのうち、1つの遺伝子型(ECSA)のCHIKVにしか強く結合しなかった。また、CK119抗体は3つの遺伝子型のCHIKVに結合するものの、同じアルファウイルス属のシンドビスウイルス(SINV)に対する交差反応性が強い。このため、3つの遺伝子型のCHIKVに結合し、且つSINVに結合しない抗体が求められている。
【0005】
そこで、本発明は、3つの遺伝子型のCHIKV、すなわち、ECSA型CHIKV、WA型CHIKV、およびAsian型CHIKVに対する新たな抗体またはその抗原結合断片の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明のチクングニアウイルスに対する抗体またはその抗原結合断片(以下、「抗体等」ともいう)は、下記(1)、(2)、または(3)の重鎖可変領域と、下記(4)の軽鎖可変領域とを含むことを特徴とする。
【0007】
(1)重鎖相補性決定領域(CDRH)1、CDRH2、およびCDRH3を含み、
CDRH1が、下記(H1-A)のアミノ酸配列を含むポリペプチドであり、
CDRH2が、下記(H2-A)のアミノ酸配列を含むポリペプチドであり、
CDRH3が、下記(H3-A)のアミノ酸配列を含むポリペプチドである重鎖可変領域
(H1-A)下記(H1-A1)、(H1-A2)または(H1-A3)のアミノ酸配列
(H1-A1)配列番号1(GYTFTSYW)のアミノ酸配列
(H1-A2)配列番号1のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(H1-A3)配列番号1のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
(H2-A)下記(H2-A1)、(H2-A2)または(H2-A3)のアミノ酸配列
(H2-A1)配列番号2(IYPGDGDTRYT)のアミノ酸配列
(H2-A2)配列番号2のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(H2-A3)配列番号2のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
(H3-A)下記(H3-A1)、(H3-A2)または(H3-A3)のアミノ酸配列
(H3-A1)配列番号3(SYDPFDY)のアミノ酸配列
(H3-A2)配列番号3のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(H3-A3)配列番号3のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
【0008】
(2)CDRH1、CDRH2、およびCDRH3を含み、
CDRH1が、下記(H1-B)のアミノ酸配列を含むポリペプチドであり、
CDRH2が、下記(H2-B)のアミノ酸配列を含むポリペプチドであり、
CDRH3が、下記(H3-B)のアミノ酸配列を含むポリペプチドである重鎖可変領域
(H1-B)下記(H1-B1)、(H1-B2)または(H1-B3)のアミノ酸配列
(H1-B1)配列番号4(GYAFSTSW)のアミノ酸配列
(H1-B2)配列番号4のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(H1-B3)配列番号4のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
(H2-B)下記(H2-B1)、(H2-B2)または(H2-B3)のアミノ酸配列
(H2-B1)配列番号5(IYPGDGDT)のアミノ酸配列
(H2-B2)配列番号5のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(H2-B3)配列番号5のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
(H3-B)下記(H3-B1)、(H3-B2)または(H3-B3)のアミノ酸配列
(H3-B1)配列番号6(SNDGYYVGY)のアミノ酸配列
(H3-B2)配列番号6のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(H3-B3)配列番号6のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
【0009】
(3)CDRH1、CDRH2、およびCDRH3を含み、
CDRH1が、下記(H1-C)のアミノ酸配列を含むポリペプチドであり、
CDRH2が、下記(H2-C)のアミノ酸配列を含むポリペプチドであり、
CDRH3が、下記(H3-C)のアミノ酸配列を含むポリペプチドである重鎖可変領域
(H1-C)下記(H1-C1)、(H1-C2)または(H1-C3)のアミノ酸配列
(H1-C1)配列番号7(GYTFTSYY)のアミノ酸配列
(H1-C2)配列番号7のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(H1-C3)配列番号7のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
(H2-C)下記(H2-C1)、(H2-C2)または(H2-C3)のアミノ酸配列
(H2-C1)配列番号8(INPSNGGT)のアミノ酸配列
(H2-C2)配列番号8のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(H2-C3)配列番号8のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
(H3-C)下記(H3-C1)、(H3-C2)または(H3-C3)のアミノ酸配列
(H3-C1)配列番号9(GYYGNPFFAY)のアミノ酸配列
(H3-C2)配列番号9のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(H3-C3)配列番号9のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
【0010】
(4)軽鎖相補性決定領域(CDRL)1、CDRL2、およびCDRL3を含み、
CDRL1が、下記(L1-A)のアミノ酸配列を含むポリペプチドであり、
CDRL2が、下記(L2-A)のアミノ酸配列を含むポリペプチドであり、
CDRL3が、下記(L3-A)のアミノ酸配列を含むポリペプチドである軽鎖可変領域
(L1-A)下記(L1-A1)、(L1-A2)または(L1-A3)のアミノ酸配列
(L1-A1)配列番号10(ENVVTY)のアミノ酸配列
(L1-A2)配列番号10のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(L1-A3)配列番号10のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
(L2-A)下記(L2-A1)、(L2-A2)または(L2-A3)のアミノ酸配列
(L2-A1)配列番号11(GAS)のアミノ酸配列
(L2-A2)配列番号11のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(L2-A3)配列番号11のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
(L3-A)下記(L3-A1)、(L3-A2)または(L3-A3)のアミノ酸配列
(L3-A1)配列番号12(GQGYSYPYT)のアミノ酸配列
(L3-A2)配列番号12のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(L3-A3)配列番号12のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
【0011】
本発明のチクングニアウイルスに対する抗体またはその抗原結合断片は、下記(1)、(2)、または(3)の重鎖可変領域と、下記(4)の軽鎖可変領域とを含むことを特徴とする。
【0012】
(1)下記(H-A)のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含む重鎖可変領域
(H-A)下記(H-A1)、(H-A2)または(H-A3)のアミノ酸配列
(H-A1)配列番号13のアミノ酸配列
(H-A2)配列番号13のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(H-A3)配列番号13のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
【0013】
(2)下記(H-B)のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含む重鎖可変領域
(H-B)下記(H-B1)、(H-B2)または(H-B3)のアミノ酸配列
(H-B1)配列番号14のアミノ酸配列
(H-B2)配列番号14のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(H-B3)配列番号14のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
【0014】
(3)下記(H-C)のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含む重鎖可変領域
(H-C)下記(H-C1)、(H-C2)または(H-C3)のアミノ酸配列
(H-C1)配列番号15のアミノ酸配列
(H-C2)配列番号15のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(H-C3)配列番号15のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
【0015】
(4)下記(L-A)のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含む軽鎖可変領域
(L-A)下記(L-A1)、(L-A2)または(L-A3)のアミノ酸配列
(L-A1)配列番号16のアミノ酸配列
(L-A2)配列番号16のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(L-A3)配列番号16のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
【0016】
本発明のチクングニアウイルスに対する抗体またはその抗原結合断片は、下記(1)、(2)、または(3)の重鎖と、下記(4)の軽鎖とを含むことを特徴とする、
【0017】
(1)下記(HA)のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含む重鎖
(HA)下記(HA1)、(HA2)または(HA3)のアミノ酸配列
(HA1)配列番号17のアミノ酸配列
(HA2)配列番号17のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(HA3)配列番号17のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
【0018】
(2)下記(HB)のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含む重鎖
(HB)下記(HB1)、(HB2)または(HB3)のアミノ酸配列
(HB1)配列番号18のアミノ酸配列
(HB2)配列番号18のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(HB3)配列番号18のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
【0019】
(3)下記(HC)のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含む重鎖
(HC)下記(HC1)、(HC2)または(HC3)のアミノ酸配列
(HC1)配列番号19のアミノ酸配列
(HC2)配列番号19のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(HC3)配列番号19のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
【0020】
(4)下記(LA)のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含む軽鎖
(LA)下記(LA1)、(LA2)または(LA3)のアミノ酸配列
(LA1)配列番号20のアミノ酸配列
(LA2)配列番号20のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(LA3)配列番号20のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
【0021】
本発明のチクングニアウイルスの検出キット(以下、「検出キット」ともいう)は、前記本発明の抗体またはその抗原結合断片を含むことを特徴とする。
【0022】
本発明のチクングニアウイルスの検出方法(以下、「検出方法」ともいう)は、試料と、前記本発明の抗体またはその抗原結合断片とを接触させ、前記試料中のチクングニアウイルスと、前記抗体またはその抗原結合断片とを結合させることにより、前記試料中のチクングニアウイルスを検出する検出工程を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、3つの遺伝子型のCHIKV、すなわち、ECSA型CHIKV、WA型CHIKV、およびAsian型CHIKVに結合する新たな抗体を提供できる。このため、本発明の抗体等によれば、例えば、遺伝子型によらず、CHIKVを検出できるため、CHIKVの検出キットに好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、実施例2におけるエンベロープタンパク質を発現する細胞の染色結果を示す写真である。
【
図2】
図2は、実施例3におけるSINV感染細胞の染色結果を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
<抗体またはその抗原結合断片>
本発明のチクングニアウイルスに対する抗体またはその抗原結合断片は、前述のように、前記(1)、(2)、または(3)の重鎖可変領域または重鎖と、前記(4)の軽鎖可変領域または軽鎖とを含むことを特徴とする。本発明の抗体等は、前記(1)、(2)、または(3)の重鎖可変領域または重鎖と、前記(4)の軽鎖可変領域または軽鎖とを含むことが特徴であり、その他の構成および条件は、特に制限されない。本発明の抗体等は、ECSA型CHIKV、WA型CHIKV、およびAsian型CHIKVに結合する。また、本発明の抗体等は、例えば、シンドビスウイルスに結合しない。このため、本発明の抗体等は、例えば、後述のCHIKVの検出キット等に好適に使用できる。
【0026】
本発明において、「チクングニアウイルス」は、トガウイルス科アルファウイルス属に属するChikungunya virusを意味する。
【0027】
本発明において、「シンドビスウイルス」は、トガウイルス科アルファウイルス属に属するSindbis virusを意味する。
【0028】
本発明の抗体等は、前述のように、ECSA型CHIKV、WA型CHIKV、およびAsian型CHIKVに結合する。前記ECSA型CHIKV、前記WA型CHIKV、および前記Asian型CHIKVは、例えば、下記参考文献1を参照して分類できる。本発明の抗体等は、より具体的には、例えば、ECSA型CHIKVのEnvタンパク質、WA型CHIKVのEnvタンパク質、およびAsian型CHIKVのEnvタンパク質に結合する。前記Envタンパク質は、例えば、CHIKVのエンベロープタンパク質を意味する。前記Envタンパク質は、例えば、6K-E1タンパク質、E2タンパク質、およびE3タンパク質から構成されるため、E3-E2-6K-E1タンパク質ともいう。CHIKVのEnvタンパク質のアミノ酸配列は、例えば、既存のデータベースに登録されている情報を参照できる。具体例として、ECSA型CHIKV由来Envタンパク質は、例えば、NCBIアクセッション番号BAP74220.1で登録されているアミノ酸配列において、268番目から1247番目の下記のアミノ酸配列(配列番号21)があげられる。WA型CHIKV由来Envタンパク質は、例えば、NCBIアクセッション番号AAU43881.1で登録されているアミノ酸配列において、268番目から1247番目の下記のアミノ酸配列(配列番号22)があげられる。Asian型CHIKV由来Envタンパク質は、例えば、NCBIアクセッション番号ADG95938.1で登録されているアミノ酸配列において、268番目から1247番目の下記のアミノ酸配列(配列番号23)があげられる。
参考文献1:Aekkachai Tuekprakhon et.al., “Variation at position 350 in the Chikungunya virus 6K-E1 protein determines the sensitivity of detection in a rapid E1-antigen test”, Scientific Report, vol.8, Article Number:1094, 2018
【0029】
ECSA型CHIKV由来Envタンパク質(配列番号21)
MCLLANTTFPCSQPPCTPCCYEKEPEETLRMLEDNVMRPGYYQLLQASLTCSPHRQRRSTKDNFNVYKATRPYLAHCPDCGEGHSCHSPVALERIRNEATDGTLKIQVSLQIGIKTDDSHDWTKLRYMDNHMPADAERAGLFVRTSAPCTITGTMGHFILARCPKGETLTVGFTDSRKISHSCTHPFHHDPPVIGREKFHSRPQHGKELPCSTYVQSTAATTEEIEVHMPPDTPDRTLMSQQSGNVKITVNGQTVRYKCNCGGSNEGLTTTDKVINNCKVDQCHAAVTNHKKWQYNSPLVPRNAELGDRQGKIHIPFPLANVTCRVPKARNPTVTYGKNQVIMLLYPDHPTLLSYRNMGEEPNYQEEWVMHKKEVVLTVPTEGLEVTWGNNEPYKYWPQLSTNGTAHGHPHEIILYYYELYPTMTVVVVSVATFILLSMVGMAAGMCMCARRRCITPYELTPGATVPFLLSLICCIRTAKAATYQEAAIYLWNEQQPLFWLQALIPLAALIVLCNCLRLLPCCCKTLAFLAVMSVGAHTVSAYEHVTVIPNTVGVPYKTLVNRPGYSPMVLEMELLSVTLEPTLSLDYITCEYKTVIPSPYVKCCGTAECKDKNLPDYSCKVFTGVYPFMWGGAYCFCDAENTQLSEAHVEKSESCKTEFASAYRAHTASASAKLRVLYQGNNITVTAYANGDHAVTVKDAKFIVGPMSSAWTPFDNKIVVYKGDVYNMDYPPFGAGRPGQFGDIQSRTPESKDVYANTQLVLQRPAVGTVHVPYSQAPSGFKYWLKERGASLQHTAPFGCQIATNPVRAVNCAVGNMPISIDIPEAAFTRVVDAPSLTDMSCEVPACTHSSDFGGVAIIKYAASKKGKCAVHSMTNAVTIREAEIEVEGNSQLQISFSTALASAEFRVQVCSTQVHCAAECHPPKDHIVNYPASHTTLGVQDISATAMSWVQKITGGVGLVVAVAALILIVVLCVSFSRH
【0030】
WA型CHIKV由来Envタンパク質(配列番号22)
LCLLANTTFPCSQPPCTPCCYEKEPESTLRMLEDNVMRPGYYQLLKASLTCSPHRQRRSTKDNFNVYKATRPYLAHCPDCGEGHSCHSPIALERIRNEATDGTLKIQVSLQIGIKTDDSHDWTKLRYMDSHTPADAERAGLLVRTSAPCTITGTMGHFILARCPKGETLTVGFTDSRKISHTCTHPFHHEPPVIGRERFHSRPQHGKELPCSTYVQSTAATAEEIEVHMPPDTPDRTLMTQQSGNVKITVNGQTVRYKCNCGGSNEGLTTTDKVINNCKIDQCHAAVTNHKNWQYNSPLVPRNAELGDRKGKIHIPFPLANVTCRVPKARNPTVTYGKNQVTMLLYPDHPTLLSYRNMGQEPNYHEEWVTHKKEVTLTVPTEGLEVTWGNNEPYKYWPQMSTNGTAHGHPHEIILYYYELYPTMTVVIVSVASFVLLSMVGTAVGMCVCARRRCITPYELTPGATVPFLLSLLCCVRTTKAATYYEAAAYLWNEQQPLFWLQALIPLAALIVLCNCLKLLPCCCKTLAFLAVMSIGAHTVSAYEHVTVIPNTVGVPYKTLVNRPGYSPMVLEMELQSVTLEPTLSLDYITCEYKTVIPSPYVKCCGTAECKDKSLPDYSCKVFTGVYPFMWGGAYCFCDAENTQLSEAHVEKSESCKTEFASAYRAHTASASAKLRVLYQGNNITVAAYANGDHAVTVKDAKFVVGPMSSAWTPFDNKIVVYKGDVYNMDYPPFGAGRPGQFGDIQSRTPESKDVYANTQLVLQRPAAGTVHVPYSQAPSGFKYWLKERGASLQHTAPFGCQIATNPVRAVNCAVGNIPISIDIPDAAFTRVVDAPSVTDMSCEVPACTHSSDFGGVAIIKYTASKKGKCAVHSMTNAVTIREADVEVEGNSQLQISFSTALASAEFRVQVCSTQVHCAAACHPPKDHIVNYPASHTTLGVQDISTTAMSWVQKITGGVGLIVAVAALILIVVLCVSFSRH
【0031】
Asian型CHIKV由来Envタンパク質(配列番号23)
MCLLANTTFPCSQPPCTPCCYEKEPEKTLRMLEDNVMSPGYYQLLQASLTCSPRRQRRSIKDNFNVYKATRPYLAHCPDCGEGHSCHSPVALERIRNEATDGTLKIQVSLQIGIKTDDSHDWTKLRYMDNHMPADAERAGLFVRTSAPCTITGTMGHFILARCPKGETLTVGFTDGRKISHSCTHPFHHDPPVIGREKFHSRPQHGRELPCSTYAQSTAATAEEIEVHMPPDTPDRTLMSQQSGNVKITVNSQTVRYKCNCGDSNEGLTTTDKVINNCKVDQCHAAVTNHKKWQYNSPLVPRNAELGDRKGKVHIPFPLANVTCRVPKARNPTVTYGKNQVIMLLYPDHPTLLSYRNMGEEPNYQEEWVTHKKEIRLTVPTEGLEVTWGNNEPYKYWPQLSTNGTAHGHPHEIILYYYELYPTMTVVVVSVASFVLLSMVGVAVGMCMCARRRCITPYELTPGATVPFLLSLICCIRTAKAATYQEAAVYLWNEQQPLFWLQALIPLAALIVLCNCLRLLPCCCKTLTFLAVLSVGAHTVSAYEHVTVIPNTVGVPYKTLVNRPGYSPMVLEMELLSVTLEPTLSLDYITCEYKTVIPSPYVKCCGTAECKDKSLPDYSCKVFTGVYPFMWGGAYCFCDTENTQLSEAHVEKSESCKTEFASAYRAHTASASAKLRVLYQGNNVTVSAYANGDHAVTVKDAKFIVGPMSSAWTPFDNKIVVYKGDVYNMDYPPFGAGRPGQFGDIQSRTPESEDVYANTQLVLQRPSAGTVHVPYSQAPSGFKYWLKERGASLQHTAPFGCQIATNPVRAMNCAVGNMPISIDIPDAAFTRVVDAPSLTDMSCEVSACTHSSDFGGVAIIKYAASKKGKCAVHSMTNAVTIREAEIEVEGNSQLQISFSTALASAEFRVQVCSTQVHCAAECHPPKDHIVNYPASHTTLGVQDISATAMSWVQKITGGVGLVVAVAALILIVVLCVSFSRH
【0032】
本発明の抗体等は、CHIKV、より具体的には、前記Envタンパク質の全長アミノ酸配列からなるタンパク質に結合する抗体の他に、例えば、前記Envタンパク質のペプチド断片に結合する抗体の意味も含む。また、前記Envタンパク質は、例えば、前記配列番号21のアミノ酸配列における826番目(E1タンパク質の284番目、6K-E1タンパク質の350番目)のアミノ酸と対応するアミノ酸(配列番号21では、下線で示すグルタミン酸(E))が、アスパラギン酸(D)に置換された変異Envタンパク質(E350D)を含む。また、前記Envタンパク質は、例えば、前記配列番号22または23のアミノ酸配列における826番目(E1タンパク質の284番目、6K-E1タンパク質の350番目)のアミノ酸と対応するアミノ酸(配列番号22または23では、下線で示すアスパラギン酸(D))が、グルタミン酸(E)に置換された変異Envタンパク質(D350E)を含む。以下、前記Envタンパク質は、特に示さない限り、例えば、全長アミノ酸配列からなる、Envタンパク質、変異Envタンパク質(E350D)、または変異Envタンパク質(D350E)の他に、これらのペプチド断片の意味も含む。前述のCK47抗体は、変異Envタンパク質(E350D)、WA型CHIKV由来Envタンパク質およびAsian型CHIKV由来Envタンパク質への結合が特に弱い。本発明の抗体等によれば、例えば、変異Envタンパク質(E350D)、WA型CHIKV由来Envタンパク質およびAsian型CHIKV由来Envタンパク質も検出できる。
【0033】
本発明は、例えば、分子構造がイムノグロブリンである、いわゆる「抗体」でもよいし、その抗原結合断片でもよい。本発明の抗体等は、前述の前記重鎖可変領域および前記軽鎖可変領域を有していればよい。本発明が抗体の場合、例えば、そのイムノグロブリンクラスおよびアイソタイプは、特に制限されない。前記イムノグロブリンクラスは、例えば、IgG、IgM、IgA、IgD、IgE等があげられる。前記IgGは、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4等があげられる。
【0034】
前記抗体は、例えば、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、組み換え抗体、ヒト(例えば、完全ヒト)抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、多特異的抗体等であってもよい。
【0035】
本発明における「抗原結合断片」は、前記抗体の一部分、例えば、部分断片であり、且つ、前記チクングニアウイルスを認識(結合)するものを意味する。前記抗原結合断片は、例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、可変領域断片(Fv)、ジスルフィド結合Fv、一本鎖Fv(scFv)、二重特異性抗体およびこれらの重合体等があげられる。
【0036】
本発明の抗体等は、前述の前記重鎖可変領域および前記軽鎖可変領域の他に、例えば、定常領域を有してもよく、前記定常領域は、例えば、ヒト定常領域、またはマウス定常領域である。抗体(イムノグロブリン)の場合、重鎖の定常領域は、例えば、CH1、CH2、およびCH3という領域を含み、軽鎖の定常領域は、例えば、CLという領域を含む。本発明の抗体等が前記定常領域を有する場合、例えば、前記重鎖可変領域は、CH1、CH2、およびCH3の少なくとも1つと結合し、前記軽鎖可変領域は、前記CLと結合しており、前記重鎖可変領域は、例えば、CH1と直接結合している。
【0037】
一般に、抗体分子の重鎖および軽鎖は、それぞれ、3箇所の相補性決定領域(CDR:Complemetarity determining region)を有している。CDRは、超可変領域(hypervariable domain)ともいう。CDRは、前記重鎖および軽鎖の可変領域でも、特に一次構造の変異性が高い領域であり、一次構造上において、通常、3箇所に分離している。本発明においては、重鎖における3ヶ所のCDRを、重鎖のアミノ酸配列におけるアミノ末端側から、重鎖CDR1(CDRH1)、重鎖CDR2(CDRH2)、および重鎖CDR3(CDRH3)と表し、軽鎖における3ヶ所のCDRを、軽鎖のアミノ酸配列におけるアミノ末端側から、軽鎖CDR1(CDRL1)、軽鎖CDR2(CDRL2)、および軽鎖CDR3(CDRL3)と表す。これらの部位は、立体構造の上で相互に近接し、結合する抗原に対する特異性を決定している。
【0038】
以下に、本発明の抗体等について、前記重鎖可変領域または重鎖と前記軽鎖可変領域または軽鎖との組合せを説明する。各組合せにおける重鎖可変領域および重鎖の説明は、互いに援用できる。また、各組合せにおける軽鎖可変領域および軽鎖の説明は、互いに援用できる。
【0039】
本発明の抗体等において、前記重鎖可変領域または重鎖と前記軽鎖可変領域または軽鎖との組合せは、前記(1)と(4)との組合せ、前記(2)と(4)との組合せ、または前記(3)と(4)との組合せである。
【0040】
組合せ(1)および(4)
組合せ(1)および(4)の抗体等は、例えば、抗体3D11群ともいう。前記組合せ(1)および(4)において、前記(1)の重鎖可変領域は、重鎖相補性決定領域(CDRH)1、CDRH2、およびCDRH3を含み、CDRH1が、下記(H1-A)のアミノ酸配列を含むポリペプチドであり、CDRH2が、下記(H2-A)のアミノ酸配列を含むポリペプチドであり、CDRH3が、下記(H3-A)のアミノ酸配列を含むポリペプチドである。また、前記(4)の軽鎖可変領域は、軽鎖相補性決定領域(CDRL)1、CDRL2、およびCDRL3を含み、CDRL1が、下記(L1-A)のアミノ酸配列を含むポリペプチドであり、CDRL2が、下記(L2-A)のアミノ酸配列を含むポリペプチドであり、CDRL3が、下記(L3-A)のアミノ酸配列を含むポリペプチドである。
【0041】
(H1-A)下記(H1-A1)、(H1-A2)または(H1-A3)のアミノ酸配列
(H1-A1)配列番号1(GYTFTSYW)のアミノ酸配列
(H1-A2)配列番号1のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(H1-A3)配列番号1のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
【0042】
(H2-A)下記(H2-A1)、(H2-A2)または(H2-A3)のアミノ酸配列
(H2-A1)配列番号2(IYPGDGDTRYT)のアミノ酸配列
(H2-A2)配列番号2のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(H2-A3)配列番号2のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
【0043】
(H3-A)下記(H3-A1)、(H3-A2)または(H3-A3)のアミノ酸配列
(H3-A1)配列番号3(SYDPFDY)のアミノ酸配列
(H3-A2)配列番号3のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(H3-A3)配列番号3のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
【0044】
(L1-A)下記(L1-A1)、(L1-A2)または(L1-A3)のアミノ酸配列
(L1-A1)配列番号10(ENVVTY)のアミノ酸配列
(L1-A2)配列番号10のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(L1-A3)配列番号10のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
【0045】
(L2-A)下記(L2-A1)、(L2-A2)または(L2-A3)のアミノ酸配列
(L2-A1)配列番号11(GAS)のアミノ酸配列
(L2-A2)配列番号11のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(L2-A3)配列番号11のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
【0046】
(L3-A)下記(L3-A1)、(L3-A2)または(L3-A3)のアミノ酸配列
(L3-A1)配列番号12(GQGYSYPYT)のアミノ酸配列
(L3-A2)配列番号12のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(L3-A3)配列番号12のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
【0047】
前記各CDRにおいて、「同一性」は、例えば、比較する配列同士を適切にアライメントしたときの同一性の程度であり、前記配列間のアミノ酸の正確な一致の出現率(%)を意味する。前記「同一性」は、それぞれ、例えば、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上である。前記同一性は、例えば、BLAST、FASTA等の解析ソフトウェアを用いて、デフォルトのパラメータにより算出できる(以下、同様)。
【0048】
前記各CDRにおいて、置換等に関する「1個または数個」は、それぞれ、例えば、1~5個、1~4個、1~3個、1または2個、1個である。
【0049】
前記アミノ酸の置換は、例えば、保存的置換であってもよい(以下、同様)。前記保存的置換は、タンパク質の機能を実質的に改変しないように、1個または数個のアミノ酸を、他のアミノ酸および/またはアミノ酸誘導体に置換することを意味する。「置換するアミノ酸」と「置換されるアミノ酸」とは、例えば、性質および/または機能が類似していることが好ましい。具体的には、例えば、疎水性および親水性の指標(ハイドロパシー)、極性、電荷等の化学的性質、または、二次構造等の物理的性質等が類似していることが好ましい。前記性質および/または機能が類似するアミノ酸またはアミノ酸誘導体は、例えば、当該技術分野において公知である。具体例として、非極性アミノ酸(疎水性アミノ酸)は、例えば、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、プロリン、トリプトファン、フェニルアラニン、メチオニン等があげられ、極性アミノ酸(中性アミノ酸)は、グリシン、セリン、スレオニン、チロシン、グルタミン、アスパラギン、システイン等があげられ、陽電荷を有するアミノ酸(塩基性アミノ)酸は、アルギニン、ヒスチジン、リジン等があげられ、負電荷を有するアミノ酸(酸性アミノ酸)は、アスパラギン酸、グルタミン酸等があげられる。
【0050】
前記組合せ(1)および(4)において、前記(1)の重鎖可変領域は、例えば、下記(H-A)のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含む。また、前記(4)の軽鎖可変領域は、例えば、下記(L-A)のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含む。
【0051】
(H-A)下記(H-A1)、(H-A2)または(H-A3)のアミノ酸配列
(H-A1)配列番号13のアミノ酸配列
配列番号13:QVQLQQSGAELARPGASVKLSCKASGYTFTSYWMQWVKQRPGQGLEWIGAIYPGDGDTRYTQKFKGKATLTADKSSSTAYMQLSSLASEDSAVYYCARSYDPFDYWGQGTTLTVSS
(H-A2)配列番号13のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(H-A3)配列番号13のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
【0052】
(L-A)下記(L-A1)、(L-A2)または(L-A3)のアミノ酸配列
(L-A1)配列番号16のアミノ酸配列
配列番号16:NIVMTQSPKSMSMSVGERVTLTCKASENVVTYVSWYQQKPEQSPKLLIYGASNRYTGVPDRFTGSGSATDFTLTISSVQAEDLADYHCGQGYSYPYTFGGGTKLEI
(L-A2)配列番号16のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(L-A3)配列番号16のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
【0053】
前記(H-A1)のアミノ酸配列は、例えば、CDRH1の(H1-A1)、CDRH2の(H2-A1)、およびCDRH3の(H3-A1)のアミノ酸配列を含む配列である。前記(H-A2)のアミノ酸配列は、例えば、CDRH1の(H1-A1)、CDRH2の(H2-A1)、およびCDRH3(H3-A1)のアミノ酸配列を含み、且つ、配列番号13のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列であってもよい。前記(H-A3)のアミノ酸配列は、例えば、CDRH1の(H1-A1)、CDRH2の(H2-A1)、およびCDRH3(H3-A1)のアミノ酸配列を含み、且つ、配列番号13のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列であってもよい。
【0054】
前記(L-A1)のアミノ酸配列は、例えば、CDRL1の(L1-A1)、CDRL2の(L2-A1)、およびCDRL3の(L3-A1)のアミノ酸配列を含む配列である。前記(L-A2)のアミノ酸配列は、例えば、CDRL1の(L1-A1)、CDRL2の(L2-A1)、およびCDRL3の(L3-A1)のアミノ酸配列を含み、且つ、配列番号16のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列であってもよい。前記(L-A3)のアミノ酸配列は、例えば、CDRL1の(L1-A1)、CDRL2の(L2-A1)、およびCDRL3の(L3-A1)のアミノ酸配列を含み、且つ、配列番号16のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列であってもよい。
【0055】
本発明の抗体は、例えば、前記重鎖可変領域が、前記(H-A1)であり、前記軽鎖可変領域が、前記(L-A1)であり、この組合せの抗体を、以下、「抗体3D11」ともいう。
【0056】
前記重鎖可変領域のポリペプチドおよび前記軽鎖可変領域のポリペプチドにおいて、前記「同一性」は、それぞれ、例えば、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上である。
【0057】
前記重鎖可変領域のポリペプチドおよび前記軽鎖可変領域のポリペプチドにおいて、置換等に関する「1個または数個」は、それぞれ、例えば、1~20個、1~15個、1~10個、1~9個、1~8個、1~7個、1~6個、1~5個、1~4個、1~3個、1または2個、1個である。
【0058】
前記組合せ(1)および(4)において、前記(1)の重鎖は、例えば、下記(HA)のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含む。また、前記(4)の軽鎖は、例えば、下記(LA)のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含む。
【0059】
(1)下記(HA)のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含む重鎖
(HA)下記(HA1)、(HA2)または(HA3)のアミノ酸配列
(HA1)配列番号17のアミノ酸配列
(HA2)配列番号17のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(HA3)配列番号17のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
【0060】
(4)下記(LA)のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含む軽鎖
(LA)下記(LA1)、(LA2)または(LA3)のアミノ酸配列
(LA1)配列番号20のアミノ酸配列
(LA2)配列番号20のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(LA3)配列番号20のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
【0061】
前記(HA1)のアミノ酸配列は、CDRH1の(H1-A1)、CDRH2の(H2-A1)、およびCDRH3の(H3-A1)のアミノ酸配列を含む配列、および/または前記(H-A1)のアミノ酸配列を含む配列である。前記(HA2)のアミノ酸配列は、例えば、CDRH1の(H1-A1)、CDRH2の(H2-A1)、およびCDRH3(H3-A1)のアミノ酸配列を含み、且つ、配列番号17のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列であってもよい。前記(HA2)のアミノ酸配列は、例えば、前記(H-A1)のアミノ酸配列を含み、且つ、配列番号17のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列であってもよい。前記(HA3)のアミノ酸配列は、例えば、CDRH1の(H1-A1)、CDRH2の(H2-A1)、およびCDRH3(H3-A1)のアミノ酸配列を含み、且つ、配列番号17のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列であってもよい。前記(HA3)のアミノ酸配列は、例えば、前記(H-A1)のアミノ酸配列を含み、且つ、配列番号17のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列であってもよい。
【0062】
前記(LA1)のアミノ酸配列は、CDRL1の(L1-A1)、CDRL2の(L2-A1)、およびCDRL3の(L3-A1)のアミノ酸配列を含む配列、および/または前記(L-A1)のアミノ酸配列を含む配列である。前記(LA2)のアミノ酸配列は、例えば、CDRL1の(L1-A1)、CDRL2の(L2-A1)、およびCDRL3(L3-A1)のアミノ酸配列を含み、且つ、配列番号20のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列であってもよい。前記(LA2)のアミノ酸配列は、例えば、前記(L-A1)のアミノ酸配列を含み、且つ、配列番号20のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列であってもよい。前記(LA3)のアミノ酸配列は、例えば、CDRL1の(L1-A1)、CDRL2の(L2-A1)、およびCDRL3(L3-A1)のアミノ酸配列を含み、且つ、配列番号20のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列であってもよい。前記(LA3)のアミノ酸配列は、例えば、前記(L-A1)のアミノ酸配列を含み、且つ、配列番号20のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列であってもよい。
【0063】
本発明の抗体は、例えば、前記重鎖が、前記(HA1)であり、前記軽鎖が、前記(LA1)であり、この組合せの抗体を、以下、「3D11」ともいう。
【0064】
前記重鎖のポリペプチドおよび前記軽鎖のポリペプチドにおいて、前記「同一性」は、それぞれ、例えば、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上である。
【0065】
前記重鎖のポリペプチドおよび前記軽鎖のポリペプチドにおいて、置換等に関する「1個または数個」は、それぞれ、例えば、1~80個、1~60個、1~40個、1~30個、1~20個、1~15個、1~10個、1~9個、1~8個、1~7個、1~6個、1~5個、1~4個、1~3個、1または2個、1個である。
【0066】
組合せ(2)および(4)
組合せ(2)および(4)の抗体等は、例えば、抗体13H11群ともいう。前記組合せ(2)および(4)において、前記(2)の重鎖可変領域は、CDRH1、CDRH2、およびCDRH3を含み、CDRH1が、下記(H1-B)のアミノ酸配列を含むポリペプチドであり、CDRH2が、下記(H2-B)のアミノ酸配列を含むポリペプチドであり、CDRH3が、下記(H3-B)のアミノ酸配列を含むポリペプチドである。また、前記(4)の軽鎖可変領域は、前述のように、CDRL1、CDRL2、およびCDRL3を含み、CDRL1が、前記(L1-A)のアミノ酸配列を含むポリペプチドであり、CDRL2が、前記(L2-A)のアミノ酸配列を含むポリペプチドであり、CDRL3が、前記(L3-A)のアミノ酸配列を含むポリペプチドである。
【0067】
(H1-B)下記(H1-B1)、(H1-B2)または(H1-B3)のアミノ酸配列
(H1-B1)配列番号4(GYAFSTSW)のアミノ酸配列
(H1-B2)配列番号4のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(H1-B3)配列番号4のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
【0068】
(H2-B)下記(H2-B1)、(H2-B2)または(H2-B3)のアミノ酸配列
(H2-B1)配列番号5(IYPGDGDT)のアミノ酸配列
(H2-B2)配列番号5のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(H2-B3)配列番号5のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
【0069】
(H3-B)下記(H3-B1)、(H3-B2)または(H3-B3)のアミノ酸配列
(H3-B1)配列番号6(SNDGYYVGY)のアミノ酸配列
(H3-B2)配列番号6のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(H3-B3)配列番号6のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
【0070】
前記各CDRにおいて、「同一性」は、それぞれ、例えば、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上である。
【0071】
前記各CDRにおいて、置換等に関する「1個または数個」は、それぞれ、例えば、1~5個、1~4個、1~3個、1または2個、1個である。
【0072】
前記組合せ(2)および(4)において、前記(2)の重鎖可変領域は、例えば、下記(H-B)のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含む。また、前記(4)の軽鎖可変領域は、例えば、前記(L-A)のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含む。
【0073】
(H-B)下記(H-B1)、(H-B2)または(H-B3)のアミノ酸配列
(H-B1)配列番号14のアミノ酸配列
配列番号14:QVQLQQSGPELVKPGASVKISCKASGYAFSTSWMNWVKQRPGQGLEWIGRIYPGDGDTNYNGKFKGKATLTADKSSSTAYMQLSSLTSVDSAVYFCARSNDGYYVGYWGQGTTLTVSS
(H-B2)配列番号14のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(H-B3)配列番号14のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
【0074】
前記(H-B1)のアミノ酸配列は、例えば、CDRH1の(H1-B1)、CDRH2の(H2-B1)、およびCDRH3の(H3-B1)のアミノ酸配列を含む配列である。前記(H-B2)のアミノ酸配列は、例えば、CDRH1の(H1-B1)、CDRH2の(H2-B1)、およびCDRH3(H3-B1)のアミノ酸配列を含み、且つ、配列番号14のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列であってもよい。前記(H-B3)のアミノ酸配列は、例えば、CDRH1の(H1-B1)、CDRH2の(H2-B1)、およびCDRH3(H3-B1)のアミノ酸配列を含み、且つ、配列番号14のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列であってもよい。
【0075】
本発明の抗体は、例えば、前記重鎖可変領域が、前記(H-B1)であり、前記軽鎖可変領域が、前記(L-A1)であり、この組合せの抗体を、以下、「抗体13H11」ともいう。
【0076】
前記重鎖可変領域のポリペプチドおよび前記軽鎖可変領域のポリペプチドにおいて、前記「同一性」は、それぞれ、例えば、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上である。
【0077】
前記重鎖可変領域のポリペプチドおよび前記軽鎖可変領域のポリペプチドにおいて、置換等に関する「1個または数個」は、それぞれ、例えば、1~20個、1~15個、1~10個、1~9個、1~8個、1~7個、1~6個、1~5個、1~4個、1~3個、1または2個、1個である。
【0078】
前記組合せ(2)および(4)において、前記(2)の重鎖は、例えば、下記(HB)のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含む。また、前記(4)の軽鎖は、例えば、前記(LA)のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含む。
【0079】
(2)下記(HB)のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含む重鎖
(HB)下記(HB1)、(HB2)または(HB3)のアミノ酸配列
(HB1)配列番号18のアミノ酸配列
(HB2)配列番号18のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(HB3)配列番号18のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
【0080】
前記(HB1)のアミノ酸配列は、CDRH1の(H1-B1)、CDRH2の(H2-B1)、およびCDRH3の(H3-B1)のアミノ酸配列を含む配列、および/または前記(H-B1)のアミノ酸配列を含む配列である。前記(HB2)のアミノ酸配列は、例えば、CDRH1の(H1-B1)、CDRH2の(H2-B1)、およびCDRH3(H3-B1)のアミノ酸配列を含み、且つ、配列番号18のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列であってもよい。前記(HB2)のアミノ酸配列は、例えば、前記(H-B1)のアミノ酸配列を含み、且つ、配列番号18のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列であってもよい。前記(HB3)のアミノ酸配列は、例えば、CDRH1の(H1-B1)、CDRH2の(H2-B1)、およびCDRH3(H3-B1)のアミノ酸配列を含み、且つ、配列番号18のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列であってもよい。前記(HB3)のアミノ酸配列は、例えば、前記(H-B1)のアミノ酸配列を含み、且つ、配列番号18のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列であってもよい。
【0081】
本発明の抗体は、例えば、前記重鎖が、前記(HB1)であり、前記軽鎖が、前記(LA1)であり、この組合せの抗体を、以下、「13H11」ともいう。
【0082】
前記重鎖のポリペプチドおよび軽鎖のポリペプチドにおいて、前記「同一性」は、それぞれ、例えば、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上である。
【0083】
前記重鎖のポリペプチドおよび軽鎖のポリペプチドにおいて、置換等に関する「1個または数個」は、それぞれ、例えば、1~80個、1~60個、1~40個、1~30個、1~20個、1~15個、1~10個、1~9個、1~8個、1~7個、1~6個、1~5個、1~4個、1~3個、1または2個、1個である。
【0084】
組合せ(3)および(4)
組合せ(3)および(4)の抗体等は、例えば、抗体15B2群ともいう。前記組合せ(3)および(4)において、前記(3)の重鎖可変領域は、CDRH1、CDRH2、およびCDRH3を含み、CDRH1が、下記(H1-C)のアミノ酸配列を含むポリペプチドであり、CDRH2が、下記(H2-C)のアミノ酸配列を含むポリペプチドであり、CDRH3が、下記(H3-C)のアミノ酸配列を含むポリペプチドである。また、前記(4)の軽鎖可変領域は、前述のように、CDRL1、CDRL2、およびCDRL3を含み、CDRL1が、前記(L1-A)のアミノ酸配列を含むポリペプチドであり、CDRL2が、前記(L2-A)のアミノ酸配列を含むポリペプチドであり、CDRL3が、前記(L3-A)のアミノ酸配列を含むポリペプチドである。
【0085】
(H1-C)下記(H1-C1)、(H1-C2)または(H1-C3)のアミノ酸配列
(H1-C1)配列番号7(GYTFTSYY)のアミノ酸配列
(H1-C2)配列番号7のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(H1-C3)配列番号7のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
【0086】
(H2-C)下記(H2-C1)、(H2-C2)または(H2-C3)のアミノ酸配列
(H2-C1)配列番号8(INPSNGGT)のアミノ酸配列
(H2-C2)配列番号8のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(H2-C3)配列番号8のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
【0087】
(H3-C)下記(H3-C1)、(H3-C2)または(H3-C3)のアミノ酸配列
(H3-C1)配列番号9(GYYGNPFFAY)のアミノ酸配列
(H3-C2)配列番号9のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(H3-C3)配列番号9のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
【0088】
前記各CDRにおいて、「同一性」は、それぞれ、例えば、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上である。
【0089】
前記各CDRにおいて、置換等に関する「1個または数個」は、それぞれ、例えば、1~5個、1~4個、1~3個、1または2個、1個である。
【0090】
前記組合せ(3)および(4)において、前記(3)の重鎖可変領域は、例えば、下記(H-C)のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含む。また、前記(4)の軽鎖可変領域は、例えば、前記(L-A)のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含む。
【0091】
(H-C)下記(H-C1)、(H-C2)または(H-C3)のアミノ酸配列
(H-C1)配列番号15のアミノ酸配列
配列番号15:QVQLQQSGAELVKPGASVKLSCKASGYTFTSYYMYWVKQRPGQGLEWIGEINPSNGGTNFNEKFKNKATLTVDKSSNTAYMQLNSLTSEDSAVYYCTRGYYGNPFFAYWGQGTLVTVSA
(H-C2)配列番号15のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(H-C3)配列番号15のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
【0092】
前記(H-C1)のアミノ酸配列は、例えば、CDRH1の(H1-C1)、CDRH2の(H2-C1)、およびCDRH3の(H3-C1)のアミノ酸配列を含む配列である。前記(H-C2)のアミノ酸配列は、例えば、CDRH1の(H1-C1)、CDRH2の(H2-C1)、およびCDRH3(H3-C1)のアミノ酸配列を含み、且つ、配列番号15のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列であってもよい。前記(H-C3)のアミノ酸配列は、例えば、CDRH1の(H1-C1)、CDRH2の(H2-C1)、およびCDRH3(H3-C1)のアミノ酸配列を含み、且つ、配列番号15のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列であってもよい。
【0093】
本発明の抗体は、例えば、前記重鎖可変領域が、前記(H-C1)であり、前記軽鎖可変領域が、前記(L-A1)であり、この組合せの抗体を、以下、「抗体15B2」ともいう。
【0094】
前記重鎖可変領域のポリペプチドおよび前記軽鎖可変領域のポリペプチドにおいて、前記同一性は、それぞれ、例えば、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上である。
【0095】
前記重鎖可変領域のポリペプチドおよび前記軽鎖可変領域のポリペプチドにおいて、置換等に関する「1個または数個」は、それぞれ、例えば、1~20個、1~15個、1~10個、1~9個、1~8個、1~7個、1~6個、1~5個、1~4個、1~3個、1または2個、1個である。
【0096】
前記組合せ(3)および(4)において、前記(3)の重鎖は、例えば、下記(HC)のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含む。また、前記(4)の軽鎖は、例えば、前記(LA)のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含む。
【0097】
(3)下記(HC)のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含む重鎖
(HC)下記(HC1)、(HC2)または(HC3)のアミノ酸配列
(HC1)配列番号19のアミノ酸配列
(HC2)配列番号19のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(HC3)配列番号19のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
【0098】
前記(HC1)のアミノ酸配列は、CDRH1の(H1-C1)、CDRH2の(H2-C1)、およびCDRH3の(H3-C1)のアミノ酸配列を含む配列、および/または前記(H-C1)のアミノ酸配列を含む配列である。前記(HC2)のアミノ酸配列は、例えば、CDRH1の(H1-C1)、CDRH2の(H2-C1)、およびCDRH3(H3-C1)のアミノ酸配列を含み、且つ、配列番号19のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列であってもよい。前記(HC2)のアミノ酸配列は、例えば、前記(H-C1)のアミノ酸配列を含み、且つ、配列番号19のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列であってもよい。前記(HC3)のアミノ酸配列は、例えば、CDRH1の(H1-C1)、CDRH2の(H2-C1)、およびCDRH3(H3-C1)のアミノ酸配列を含み、且つ、配列番号19のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列であってもよい。前記(HC3)のアミノ酸配列は、例えば、前記(H-C1)のアミノ酸配列を含み、且つ、配列番号19のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列であってもよい。
【0099】
本発明の抗体は、例えば、前記重鎖が、前記(HC1)であり、前記軽鎖が、前記(LA1)であり、この組合せの抗体を、以下、「15B2」ともいう。
【0100】
前記重鎖のポリペプチドおよび軽鎖のポリペプチドにおいて、前記「同一性」は、それぞれ、例えば、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上である。
【0101】
前記重鎖のポリペプチドおよび軽鎖のポリペプチドにおいて、置換等に関する「1個または数個」は、それぞれ、例えば、1~80個、1~60個、1~40個、1~30個、1~20個、1~15個、1~10個、1~9個、1~8個、1~7個、1~6個、1~5個、1~4個、1~3個、1または2個、1個である。
【0102】
本発明において、前記配列番号1~20のアミノ酸配列は、例えば、マウス由来のアミノ酸配列である。
【0103】
本発明の抗体等とCHIKVとの結合は、例えば、後述の本発明の検出方法の説明におけるCHIKVと前記抗体等との結合の検出方法により、確認できる。前記検出方法は、免疫染色法が好ましく、より好ましくは、間接法である。前記間接法において、対象の抗体が、例えば、CHIKVに結合する場合および/またはEnvタンパク質に結合し、且つこれらへの結合を示すシグナルが、CHIKVおよびEnvタンパク質を含まないネガティブコントロールと比較して、結合を示すシグナルが強い場合、前記対象の抗体は、CHIKVまたはEnvタンパク質に結合していると判断できる。
【0104】
本発明の抗体等は、例えば、さらに標識物質を有してもよい。前記標識物質は、特に制限されず、例えば、蛍光物質、色素、同位体、酵素等があげられる。前記蛍光物質は、例えば、ピレン、TAMRA、フルオレセイン、Cy3色素、Cy5色素、FAM色素、ローダミン色素、テキサスレッド色素、JOE、MAX、HEX、TYE等の蛍光団があげられ、前記色素は、例えば、Alexa488、Alexa647等のAlexa色素等があげられる。
【0105】
本発明の抗体等は、例えば、担体、多孔質体等に固定化されてもよい。前記担体は、特に制限されず、例えば、基板、ビーズ、容器等があげられ、前記容器は、例えば、マイクロプレート、チューブ等があげられる。
【0106】
本発明の抗体等の製造方法は、特に制限されず、例えば、前述のアミノ酸配列情報に基づいて、遺伝子工学的に製造することができる。具体的には、例えば、以下のようにして行うことができる。なお、本発明は、この例示には限定されない。
【0107】
まず、本発明の抗体等における、前記各領域、前記重鎖、および/または軽鎖のアミノ酸配列をコードする核酸配列を含むベクターを宿主に導入し、形質転換体を得る。そして、前記形質転換体を培養し、前記チクングニアウイルス、具体的には、Envタンパク質に結合する抗体を含む画分を回収し、得られた回収画分から、前記抗体を単離または精製する。
【0108】
前記ベクターとしては、例えば、前記重鎖可変領域をコードする核酸配列を含むベクター、前記軽鎖可変領域をコードする核酸配列を含むベクター、前記重鎖をコードする核酸配列を含むベクター、前記軽鎖をコードする核酸配列を含むベクター等があげられる。前記宿主は、特に制限されず、前記ベクターを導入でき、前記ベクター内の前記核酸配列を発現できるものであればよい。前記宿主としては、例えば、HEK細胞、CHO細胞、COS細胞、NSO細胞、SP2/0細胞等の哺乳類細胞等があげられる。前記ベクターを宿主に導入する方法は、特に制限されず、公知の方法が採用できる。
【0109】
前記形質転換体の培養方法は、特に制限されず、前記宿主の種類に応じて、適宜決定できる。前記抗体を含む画分は、例えば、培養した前記形質転換体を破砕し、液体画分として回収できる。前記抗体の単離または精製は、特に制限されず、公知の方法が採用できる。
【0110】
本発明において、前記抗体は、例えば、モノクローナル抗体である。前記モノクローナル抗体は、例えば、動物への免疫により得られるモノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体(完全ヒト抗体ともいう)等があげられる。
【0111】
前記キメラ抗体は、ヒト以外の動物由来抗体の可変領域と、ヒト抗体の定常領域とを連結した抗体である。前記キメラ抗体は、例えば、以下のようにして作製できる。まず、ヒト以外の動物由来のモノクローナル抗体について、チクングニアウイルス、具体的には、Envタンパク質と結合する可変領域(V領域)の遺伝子を調製し、前記可変領域の遺伝子と、ヒト抗体の定常領域(C領域)の遺伝子とを連結し、これを、さらに発現ベクターに連結する。そして、前記発現ベクターをトランスフェクトした細胞を培養し、培養液中に分泌される目的のキメラ抗体を回収する。これによりキメラ抗体を調製できる。前記可変領域の遺伝子の由来動物は、特に制限されず、例えば、ラット、マウス等があげられる。前記キメラ抗体の製造方法は、これには制限されず、例えば、特公平3-73280号公報に記載の方法等の、公知の方法を参照して製造できる。
【0112】
前記ヒト化抗体は、前記CDRのみをヒト以外の動物由来とし、他の領域をヒト由来とする抗体である。前記ヒト化抗体は、例えば、以下のようにして製造できる。まず、ヒト以外の動物由来のモノクローナル抗体について、前記CDRの遺伝子を調製し、ヒト抗体の遺伝子、例えば、定常領域に移植(CDRグラフティング)し、これを、さらに発現ベクターに連結する。そして、前記発現ベクターをトランスフェクトした細胞を培養することによって、培養液中に、目的のCDRを移植したヒト化抗体が分泌される。分泌されるヒト化抗体を回収することによって、調製できる。前記CDRの由来動物は、特に制限されず、例えば、ラット、マウス等があげられる。ヒト化抗体の製造方法は、これには限定されず、例えば、特表平4-506458号公報および特開昭62-296890号公報等に記載の方法等の、公知の方法を参照して製造できる。
【0113】
前記ヒト抗体は、全ての領域がヒト由来の抗体である。前記ヒト抗体は、例えば、ヒト以外の動物への、ヒト抗体遺伝子の導入によって作製できる。前記ヒト抗体遺伝子を導入する動物は、例えば、ヒト抗体産生用のトランスジェニック動物が使用できる。前記動物の種類は、特に制限されず、マウス等があげられる。前記ヒト抗体の製造方法は、例えば、Nature Genetics, Vol.7, p.13-21, 1994; Nature Genetics, Vol.15, p.146-156, 1997; 特表平4-504365号公報; 特表平7-509137号公報; WO94/25585号公報; Nature, Vol.368, p.856-859, 1994;および特表平6-500233号公報等に記載の、公知の方法を参照して製造できる。また、前記ヒト抗体は、例えば、ファージディスプレイ法を用いて製造することもでき、例えば、Marks, J. D. et al.: J. Mol. Biol., Vol.222, p.581-597, 1991等に記載の、公知の方法を参照して製造できる。
【0114】
本発明の抗体等は、例えば、抗原を動物に免疫することによっても調製できる。前記抗原は、例えば、チクングニアウイルス、具体的には、Envタンパク質の全長アミノ酸配列からなるタンパク質またはそのペプチド断片があげられる。前記抗原は、複数回免疫することが好ましい。この場合、各回で免疫する抗原は、例えば、異なる遺伝子型のチクングニアウイルスもしくはEnvタンパク質、またはそのペプチド断片であることが好ましい。前記ペプチド断片は、例えば、抗原決定基(エピトープ)のみからなるペプチド断片でもよいし、前記抗原決定基を含むペプチド断片でもよい
【0115】
前記動物への免疫により得られるモノクローナル抗体は、例えば、『Current Protocols in Molecular Biology』(John Wiley & Sons (1987))、Antibodies: A Laboratory Manual, Ed. Harlow and David Lane, Cold Spring Harbor Laboratory(1988))等に記載の方法等の、公知の方法を参照して製造できる。具体的には、例えば、抗原で動物を免疫し、前記免疫動物から採取した抗体産生細胞と、自己抗体産生能を欠く骨髄腫細胞(ミエローマ細胞)とを融合させ、ハイブリドーマを作製する。続いて、前記ハイブリドーマから抗体産生細胞をスクリーニングして、クローニングによりハイブリドーマの単一クローンを作製する。そして、このハイブリドーマクローンを動物に投与し、得られた腹腔からモノクローナル抗体を精製する。または、前記ハイブリドーマを培養して、その培養液からモノクローナル抗体を精製する。このように、前記ハイブリドーマクローンを作製することで、特異性が均一なモノクローナル抗体を安定に供給できる。
【0116】
前記骨髄腫細胞は、例えば、マウス、ラット、ヒト等の由来であることが好ましい。前記骨髄腫細胞と前記抗体産生細胞とは、例えば、それぞれの由来が同一種でも異種でもよいが、同一種であることが好ましい。
【0117】
本発明の抗体等は、例えば、前述の本発明の抗体等に代えて、ECSA型CHIKV、WA型CHIKV、およびAsian型CHIKVに結合し、シンドビスウイルスに結合しない、チクングニアウイルスに対する抗体またはその抗原結合断片、より具体的には、例えば、ECSA型CHIKVのEnvタンパク質、WA型CHIKVのEnvタンパク質、およびAsian型CHIKVのEnvタンパク質に結合し、シンドビスウイルスに結合しない抗体等であってもよい。また、本発明の抗体等は、例えば、前述の本発明の抗体等に代えて、ECSA型CHIKV、WA型CHIKV、およびAsian型CHIKVに結合し、シンドビスウイルスに結合せず、ECSA型CHIKV、WA型CHIKV、およびAsian型CHIKVへの結合に対して、基準抗体と競合し、前記基準抗体は、前述の本発明の抗体等、すなわち、抗体3D11群、抗体13H11群もしくは抗体15B2群、抗体3D11、抗体13H11もしくは抗体15B2、または3D11、13H11もしくは15B2である抗体等であってもよい。また、本発明の抗体等は、例えば、前述の本発明の抗体等に代えて、ECSA型CHIKVのEnvタンパク質、WA型CHIKVのEnvタンパク質、およびAsian型CHIKVのEnvタンパク質に結合し、シンドビスウイルスに結合せず、ECSA型CHIKVのEnvタンパク質、WA型CHIKVのEnvタンパク質、およびAsian型CHIKVのEnvタンパク質への結合に対して、基準抗体と競合し、前記基準抗体は、前述の本発明の抗体等、すなわち、抗体3D11群、抗体13H11群もしくは抗体15B2群、抗体3D11、抗体13H11もしくは抗体15B2、または3D11、13H11もしくは15B2である抗体等であってもよい。ECSA型CHIKVのEnvタンパク質は、例えば、前記配列番号21のアミノ酸配列からなるタンパク質があげられる。WA型CHIKVのEnvタンパク質は、例えば、前記配列番号22のアミノ酸配列からなるタンパク質があげられる。Asian型CHIKVのEnvタンパク質は、例えば、前記配列番号23のアミノ酸配列からなるタンパク質があげられる。前記SINVは、例えば、後述のR68株があげられる。
【0118】
<遺伝子、発現ベクターおよび形質転換体>
本発明のコード遺伝子は、チクングニアウイルスに対する抗体またはその抗原結合断片のコード遺伝子であり、前記本発明の抗体または抗原結合断片のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドを含むことを特徴とする。
【0119】
本発明のコード遺伝子を発現させることによって、前述した本発明の抗体等を得ることができる。本発明のコード遺伝子の配列は、特に制限されず、前記本発明の抗体等のアミノ酸配列をコードする配列であればよく、センス配列でもアンチセンス配列でもよい。
【0120】
本発明の発現ベクターは、チクングニアウイルスに対する抗体またはその抗原結合断片の発現ベクターであり、前記本発明のコード遺伝子を含むことを特徴とする。前記発現ベクターにおいて、前記コード遺伝子は、例えば、前記本発明の抗体またはその抗原結合断片を発現可能に、前記連結用ベクターに連結されている。本発明の発現ベクターは、前記本発明の抗体等を発現できればよく、その他の構成は特に制限されない。
【0121】
本発明の発現ベクターは、例えば、前記重鎖可変領域をコードする核酸配列と前記軽鎖可変領域をコードする核酸配列とを含む発現ベクターでもよいし、前記重鎖可変領域をコードする核酸配列を含む発現ベクターと、前記軽鎖可変領域をコードする核酸配列を含む発現ベクターとのセットでもよい。本発明の発現ベクターは、例えば、前記本発明のコード遺伝子を、連結用ベクターに連結することで調製できる。前記コード遺伝子を連結する前記連結用ベクターの種類は、特に制限されず、例えば、pUC等があげられる。前記連結用ベクターは、例えば、前記発現ベクターを導入する宿主に応じて、適宜設定することもできる。前記宿主は、特に制限されず、例えば、CHO細胞等の哺乳類細胞等があげられる。
【0122】
本発明の形質転換体は、本発明の抗体等を発現する形質転換体であり、宿主と、前記本発明のコード遺伝子を含むことを特徴とする。本発明の形質転換体は、前記本発明のコード遺伝子を発現可能に有していればよい。前記形質転換体は、例えば、前記本発明の発現ベクターを有することが好ましい。前記発現ベクターを前記宿主に導入する方法は、特に制限されず、公知の方法が採用できる。
【0123】
<検出キット>
本発明のチクングニアウイルスの検出キットは、前述のように、前記本発明の抗体またはその抗原結合断片を含むことを特徴とする。本発明の検出キットは、前記本発明の抗体等を含むことが特徴であり、その他の構成および条件は、特に制限されない。本発明のキットによれば、例えば、後述の本発明の検出方法を簡便に実施できる。本発明の検出キットは、例えば、前記本発明の抗体等の説明を援用できる。
【0124】
本発明の検出キットは、例えば、さらに、CHIKVと前記本発明の抗体等との結合、より具体的には、例えば、前記Envタンパク質と前記本発明等との結合を検出する検出物質を含んでもよい。前記検出物質は、例えば、前記抗体等に対する検出可能な標識化抗体と、前記標識に対する基質等の組合せがあげられる。
【0125】
本発明の検出キットは、例えば、前記本発明の抗体等の他に、その他の構成要素を含んでもよい。前記構成要素は、例えば、前記担体、緩衝液、使用説明書等があげられる。
【0126】
本発明の検出キットにおいて、例えば、前記抗体等および前記緩衝液等のその他の構成要素は、それぞれ別個の容器に収容されてもよいし、同一の容器に混合または未混同で収容されてもよい。前記抗体等と前記その他の構成要素とが同一の容器に混合され収容されている場合、本発明の検出キットは、検出試薬ということもできる。
【0127】
<検出方法>
本発明のチクングニアウイルスの検出方法は、前述のように、試料と、前記本発明の抗体またはその抗原結合断片とを接触させ、前記試料中のチクングニアウイルスと、前記抗体またはその抗原結合断片とを結合させることにより、前記試料中のチクングニアウイルスを検出する検出工程を含むことを特徴とする。本発明の検出方法は、前記本発明の抗体またはその抗原結合断片を用いることが特徴であり、その他の工程および条件は、特に制限されない。本発明の検出方法は、前記本発明の抗体等、検出キット等の説明を援用できる。
【0128】
本発明の検出方法は、前記本発明の抗体等を用いる。前記抗体等は、ECSA型CHIKV、WA型CHIKV、およびAsian型CHIKVに結合し、より具体的には、例えば、ECSA型CHIKVのEnvタンパク質、WA型CHIKVのEnvタンパク質、およびAsian型CHIKVのEnvタンパク質に結合する。このため、本発明の検出方法は、例えば、CHIKVのEnvタンパク質を検出することにより、間接的にCHIKVを検出できる。本発明の検出方法によれば、ECSA型CHIKV、WA型CHIKV、およびAsian型CHIKVのいずれのCHIKVも検出できる。また、前記抗体等は、例えば、例えば、シンドビスウイルスに結合しない。このため、本発明の検出方法は、例えば、CK119抗体を用いた場合と比較して、SINVを含む試料について、CHIKVを含むと誤って検出する可能性を低減できる。さらに、前記本発明の抗体等は、例えば、Envタンパク質に結合する。このため、本発明の検出方法は、Envタンパク質の検出方法ということもできる。
【0129】
本発明の検出方法によれば、試料中のCHIKVの有無またはCHIKVの量を分析可能である。このため、本発明の検出方法は、例えば、分析方法ということもできる。
【0130】
本発明の検出方法において、前記試料の由来は、特に制限されず、例えば、ヒト、ヒトを除く非ヒト動物等があげられ、前記非ヒト動物は、前述のように、例えば、マウス、ラット、イヌ、サル、ウサギ、ヒツジ、ウマ等の哺乳類があげられる。
【0131】
前記試料の種類は、特に制限はされず、例えば、生体から分離した、体液、尿、体液由来細胞、器官、組織または細胞等の生体試料があげられる。前記体液は、例えば、血液、滑液等の体腔液、リンパ液、組織液等があげられ、具体例として、例えば、全血、血清、血漿等があげられる。前記生体試料は、全血、血清、または血漿が好ましく、より好ましくは、血清または血漿である。前記試料は、例えば、採取した試料を、そのまま本発明の検出方法に使用してもよいし、液体等による希釈等の他の処理を実施した上で使用してもよい。前記液体は、特に制限されず、例えば、水、生理食塩水、緩衝液、培地等があげられる。また、前記試料は、例えば、予め酸処理してもよい。これにより、本発明の検出方法は、例えば、前記試料中のチクングニアウイルスと抗体とが抗原抗体複合体を形成している際に、前記抗体とチクングニアウイルスとを解離できるため、より感度よくチクングニアウイルスを検出できる。前記酸処理に用いる酸は、特に制限されず、例えば、塩酸、酢酸等があげられる。
【0132】
前記試料は、例えば、CHIKVを含む試料でもよいし、CHIKVを含まない試料でもよいし、CHIKVを含むか否かが不明の試料でもよい。
【0133】
前記試料は、例えば、液体試料でもよいし、固体試料でもよい。前記固体試料の場合、例えば、前記抗体等と接触させ易く、取扱いが簡便であることから、前記液体と混合して、液体試料として使用することが好ましい。
【0134】
前記検出工程は、例えば、前記試料と前記抗体等とを接触させて、前記試料中のCHIKVと前記抗体等とを結合させる接触工程と、前記CHIKVと前記抗体等との結合を検出する結合検出工程とを含む。また、前記検出工程は、例えば、さらに、前記結合検出工程の結果に基づいて、前記試料中のCHIKVの有無または量を分析する工程を含む。
【0135】
前記接触工程において、前記試料と前記抗体等との接触方法は、特に制限されない。前記試料と前記抗体等との接触は、例えば、液体中で行われることが好ましい。前記液体は、特に制限されず、例えば、水、生理食塩水、緩衝液等があげられる。
【0136】
前記接触工程において、前記試料と前記抗体等との接触条件は、特に制限されない。接触温度は、例えば、4~37℃である。接触時間は、例えば、10~120分である。前記試料と前記抗体等の混合物における、前記抗体等の濃度は、特に制限されず、例えば、0.1μg/mL~1mg/mLである。
【0137】
前記接触工程において、前記抗体等は、例えば、担体に固定化された固定化抗体等でもよいし、未固定の遊離した抗体等でもよい。後者の場合、前記抗体等は、例えば、容器内で、前記試料と接触させる。前記抗体等は、例えば、取扱性に優れることから、前記固定化抗体等が好ましい。前記担体は、特に制限されず、例えば、基板、ビーズ、容器等があげられ、前記容器は、例えば、マイクロプレート、チューブ等があげられる。
【0138】
前記結合検出工程は、前述のように、前記試料中のCHIKVと前記抗体等との結合を検出する工程である。前記両者の結合の有無を検出することによって、例えば、前記試料中のCHIKVの有無を分析(定性)でき、また、前記両者の結合の程度(結合量)を検出することによって、例えば、前記試料中のCHIKVの量を分析(定量)できる。
【0139】
そして、CHIKVと前記抗体等との結合が検出できなかった場合は、前記試料中にCHIKVは存在しないと判断でき、前記結合が検出された場合は、前記試料中にCHIKVが存在すると判断できる。また、予め、CHIKVの数と、結合量との相関関係を求めておき、前記相関関係に基づいて、前記結合量から、前記試料中のCHIKVの量を分析することもできる。
【0140】
CHIKVと前記抗体等との結合の検出方法は、特に制限されず、例えば、抗体または抗原結合断片と抗原との結合を利用する、公知の方法が採用できる。具体例として、検出方法は、例えば、免疫抗体法、免疫染色法、ELISA法、フローサイトメトリー、ウエスタンブロット法等があげられる。
【0141】
本発明の検出方法は、例えば、前記試料が被検者由来の生体試料の場合、前記被検者の生体試料(以下、被検生体試料ともいう)におけるCHIKVの量を、基準値と比較することにより、前記被検者のCHIKV感染の危険度を試験する試験工程を含んでもよい。この場合、本発明の検出方法は、例えば、CHIKV感染の危険度を試験する方法ということもできる。前記基準値は、特に制限されず、例えば、健常者、CHIKVの感染者等におけるCHIKVの量があげられる。予後の評価の場合、前記基準値は、例えば、同じ被検者の治療後のCHIKVの量であってもよい。
【0142】
前記基準値は、例えば、前述のような、健常者および/または感染者から単離した生体試料(以下、「基準生体試料」ともいう)を用いて、得ることができる。前記基準値は、例えば、前記被検者の被検生体試料と同時に測定してもよいし、予め測定してもよい。後者の場合、例えば、前記被検者の被検生体試料を測定する度に、基準値を得ることが不要となるため、好ましい。前記被検者の被検生体試料と前記基準生体試料は、例えば、同じ条件で採取し、同じ条件でCHIKVの検出(例えば、定量)を行うことが好ましい。
【0143】
前記試験工程において、被検者のCHIKV感染の危険度の評価方法は、特に制限されず、前記基準値の種類によって適宜決定できる。具体例として、前記被検者の被検生体試料におけるCHIKVの量が、前記健常者の基準生体試料におけるCHIKVの量よりも有意に高い場合、前記感染者の基準生体試料におけるCHIKVの量と同じ場合(有意差がない場合)、および/または、前記感染者の基準生体試料におけるCHIKVの量よりも有意に高い場合、前記被検者は、CHIKVに感染している危険性がある、または危険性が高いと評価できる。また、前記被検者の被検生体試料におけるCHIKVの量が、前記健常者の基準生体試料におけるCHIKVの量と同じ場合(有意差がない場合)、前記健常者の基準生体試料におけるCHIKVの量よりも有意に低い場合、および/または、前記感染者の基準生体試料におけるCHIKVの量の発現量よりも有意に低い場合、前記被検者は、CHIKVに感染している危険性がない、または危険性が低いと評価できる。
【0144】
前記試験工程において、予後の状態を評価する場合、例えば、前述と同様に評価してもよいし、基準値として、同じ被検者の治療後の基準生体試料におけるCHIKVの量を使用して評価することもできる。具体例として、前記被検者の被検生体試料におけるCHIKVの量が、前記基準値よりも有意に高い場合、前記被検者は、前記治療後、再発または悪化(重症化)の危険性があると評価できる。また、前記被検者の被検生体試料におけるCHIKVの量が、前記基準値と同じ場合(有意差がない場合)、および/または、前記基準値よりも有意に低い場合、前記被検者は、前記治療後、再発の危険性がない、もしくは危険性が低いと評価できる。
【0145】
本発明においては、例えば、同じ被検者の生体試料を経時的に採取し、前記生体試料におけるCHIKVの量を比較してもよい。これによって、例えば、経時的に発現量が増加すれば、重症化の可能性が高くなった等の判断が可能であり、経時的に発現量が低下すれば、重症化の可能性が低くなったまたは治癒してきた等の判断が可能である。
【0146】
<チクングニアウイルスの診断方法および診断キット>
本発明のチクングニアウイルスの診断方法は、試料と、前記本発明の抗体またはその抗原結合断片とを接触させ、前記試料中のチクングニアウイルスと、前記抗体またはその抗原結合断片とを結合させることにより、前記試料中のチクングニアウイルスを検出する検出工程を含むことを特徴とする。また、本発明のチクングニアウイルスの診断キットは、前記本発明の抗体またはその抗原結合断片を含むことを特徴とする。本発明は、前記本発明の抗体等、検出キット、検出方法等の説明を援用できる。
【実施例】
【0147】
次に、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明は、下記実施例により制限されない。市販の試薬は、特に示さない限り、それらのプロトコルに基づいて使用した。
【0148】
[実施例1]
本発明の抗CHIKV抗体を作製した。特に示さない限り、一般的な方法を採用した。
【0149】
抗原としては、ECSA型CHIKVが感染した培養細胞およびAsian型CHIKVの6K-E1タンパク質を発現するセンダイウイルスを用いた。具体的には、前記培養細胞とCFA(Complete Freund's adjuvan)との混合物にて、4-6週齢のマウス(Balb/c)に対して初回免疫を実施した。初回免疫後2週間において、前記培養細胞とIFA(Incomplete Freund's adjuvant)との混合物にて、前記マウスに2度目の免疫を実施した。2回目の免疫後2週間において、前記ウイルスとIFAとの混合物にて、前記マウスに3度目の免疫を実施した。3度目の免疫後3日目に、前記マウスからB細胞を調製し、前記B細胞から常法によりハイブリドーマを調製した。得られたハイブリドーマについて、その培養液を用いて、抗CHIKV抗体産生ハイブリドーマのスクリーニングを行なった。
【0150】
この結果、3種類のハイブリドーマ(3D11、13H11、および15B2株)を単離した。これらのハイブリドーマから生成される抗CHIKV抗体として、3種類のモノクローナル抗体(3D11、13H11、および15B2)を得た。3D11、13H11、および15B2のアイソタイプは、それぞれ、IgG2aκ、IgG1κ、およびIgG2bκであった。
【0151】
抗CHIKV抗体である3D11、13H11、および15B2について、アミノ酸配列を決定した。これらの結果を以下に示す。なお、3D11、13H11、および15B2の軽鎖は、いずれも同じアミノ酸配列である。また、各アミノ酸配列において、下線で示すアミノ酸配列が、N端からC端に向かって、それぞれ、CDR1、CDR2、およびCDR3のアミノ酸配列に対応する。また、各アミノ酸配列において、括弧で囲ったアミノ酸配列が、可変領域のアミノ酸配列に対応する。
【0152】
3D11重鎖(配列番号17)
[QVQLQQSGAELARPGASVKLSCKASGYTFTSYWMQWVKQRPGQGLEWIGAIYPGDGDTRYTQKFKGKATLTADKSSSTAYMQLSSLASEDSAVYYCARSYDPFDYWGQGTTLTVSS]AKTTAPSVYPLAPVCGDTTGSSVTLGCLVKGYFPEPVTLTWNSGSLSSGVHTFPAVLQSDLYTLSSSVTVTSSTWPSQSITCNVAHPASSTKVDKKIEPRGPTIKPCPPCKCPAPNLLGGPSVFIFPPKIKDVLMISLSPIVTCVVVDVSEDDPDVQISWFVNNVEVHTAQTQTHREDYNSTLRVVSALPIQHQDWMSGKEFKCKVNNKDLPAPIERTISKPKGSVRAPQVYVLPPPEEEMTKKQVTLTCMVTDFMPEDIYVEWTNNGKTELNYKNTEPVLDSDGSYFMYSKLRVEKKNWVERNSYSCSVVHEGLHNHHTTKSFSRTPGK
【0153】
13H11重鎖(配列番号18)
[QVQLQQSGPELVKPGASVKISCKASGYAFSTSWMNWVKQRPGQGLEWIGRIYPGDGDTNYNGKFKGKATLTADKSSSTAYMQLSSLTSVDSAVYFCARSNDGYYVGYWGQGTTLTVSS]AKTTPPSVYPLAPGSAAQTNSMVTLGCLVKGYFPEPVTVTWNSGSLSSGVHTFPAVLQSDLYTLSSSVTVPSSTWPSETVTCNVAHPASSTKVDKKIVPRDCGCKPCICTVPEVSSVFIFPPKPKDVLTITLTPKVTCVVVDISKDDPEVQFSWFVDDVEVHTAQTQPREEQFNSTFRSVSELPIMHQDWLNGKEFKCRVNSAAFPAPIEKTISKTKGRPKAPQVYTIPPPKEQMAKDKVSLTCMITDFFPEDITVEWQWNGQPAENYKNTQPIMDTDGSYFVYSKLNVQKSNWEAGNTFTCSVLHEGLHNHHTEKSLSHSPGK
【0154】
15B2重鎖(配列番号19)
[QVQLQQSGAELVKPGASVKLSCKASGYTFTSYYMYWVKQRPGQGLEWIGEINPSNGGTNFNEKFKNKATLTVDKSSNTAYMQLNSLTSEDSAVYYCTRGYYGNPFFAYWGQGTLVTVSA]AKTTPPSVYPLAPGCGDTTGSSVTLGCLVKGYFPESVTVTWNSGSLSSSVHTFPALLQSGLYTMSSSVTVPSSTWPSQTVTCSVAHPASSTTVDKKLEPSGPISTINPCPPCKECHKCPAPNLEGGPSVFIFPPNIKDVLMISLTPKVTCVVVDVSEDDPDVQISWFVNNVEVHTAQTQTHREDYNSTIRVVSTLPIQHQDWMSGKEFKCKVNNKDLPSPIERTISKIKGLVRAPQVYILPPPAEQLSRKDVSLTCLVVGFNPGDISVEWTSNGHTEENYKDTAPVLDSDGSYFIYSKLNMKTSKWEKTDSFSCNVRHEGLKNYYLKKTISRSPGK
【0155】
3D11、13H11、および15B2軽鎖(配列番号20)
[NIVMTQSPKSMSMSVGERVTLTCKASENVVTYVSWYQQKPEQSPKLLIYGASNRYTGVPDRFTGSGSATDFTLTISSVQAEDLADYHCGQGYSYPYTFGGGTKLEI]KRADAAPTVSIFPPSSEQLTSGGASVVCFLNNFYPKDINVKWKIDGSERQNGVLNSWTDQDSKDSTYSMSSTLTLTKDEYERHNSYTCEATHKTSTSPIVKSFNRNEC
【0156】
なお、以下の実施例においては、前記ハイブリドーマをマウス腹腔に投与し、得られた腹水から精製した抗体を、抗体サンプルとして使用した。
【0157】
[実施例2]
本発明の抗体が各遺伝子型のCHIKVのEnvタンパク質に結合することを、間接蛍光抗体法(免疫染色法)により確認した。
【0158】
(1)ベクターの調製
CHIKVのEnvタンパク質またはキャプシドタンパク質を含む発現ベクターは、以下の手順で調製した。具体的には、CHIKVのキャプシドタンパク質、またはECSA型(CP10株)、WA型(37997株)、もしくはAsian型(CK12-686株)のEnvタンパク質をコードするcDNAについて、それぞれをコドン最適化したcDNAを調製した。Envタンパク質をコードするcDNAについては、NCBIに登録されている核酸配列情報を参照した。具体的には、ECSA型(CP10株)のEnvタンパク質は、NCBIアクセッション番号AB857761.1で登録されている核酸配列情報を参照した。WA型(37997株)のEnvタンパク質は、NCBIアクセッション番号AY726732で登録されているゲノム情報を参照した。Asian型(CK12-686株)のEnvタンパク質は、NCBIアクセッション番号CWIH01000001.1で登録されているゲノム情報を参照した。CHIKVのキャプシドタンパク質またはEnvタンパク質をコードするcDNAカセットは、pCAGGS MSIIプラスミドに導入した。また、変異Envタンパク質(E350D)または変異Envタンパク質(D350E)を含む発現ベクターは、オーバラッププライマーを用いて作製した。CP10株のEnvタンパク質については、グルタミン酸(E)をアスパラギン酸(D)に置換した。また、CK12-686株および37997株のEnvタンパク質については、アスパラギン酸(D)をグルタミン酸(E)に置換した。
【0159】
(2)Envタンパク質発現細胞の調製
96ウェルプレートにHEK293T細胞を、2×104細胞/100μL/ウェルとなるように播種した。培養液は、10%(v/v)熱不活化胎児牛血清(FBS、Life Technologies社製)を含むDMEM培地(Dulbecco’s Modified Eagle Medium、Life technologies社製)とした。培養条件は、37℃、5%CO2とした(以下、同様)。前記播種20時間において、前記発現ベクターおよびトランスフェクション試薬(Lipofectamine(登録商標)2000、Invitrogen社製)を用い、添付のプロトコルにしたがって、HEK293T細胞にトランスフェクションした。
【0160】
(3)間接蛍光抗体法
前記トランスフェクションの48時間後、各ウェルの細胞は、3.7%(v/v)ホルムアルデヒドを含むリン酸緩衝液(PBS)を用いて固定し、さらに、1% Triton(登録商標)X-100を用いて透過処理した。50μLの上清または2μg/mLとなるように、精製された3D11、13H11、または15B2を一次抗体として添加し、37℃で1時間インキュベートした。
【0161】
前記インキュベート後、各ウェルをPBSで洗浄し、50μLの二次抗体を添加した。前記二次抗体は、Alexa Flour 488標識化ヤギ抗マウスIgG抗体(Invitrogen社製)とした。前記添加後、37℃で45分間インキュベートした。つぎに、各ウェルをPBSで洗浄し、蛍光顕微鏡(IX71、Olympus社製)を用いて各ウェルを観察した。Envタンパク質を発現する細胞の結果を
図1に示す。
【0162】
図1は、Envタンパク質を発現する細胞の染色結果を示す写真である。
図1において、(A)は、3D11の染色結果、(B)は、13H11の染色結果、(C)15B2の染色結果を示す。また、
図1において、各写真は、左列から右列に向かって、ECSA型のEnvタンパク質(1)、ECSA型のE350Dの変異Envタンパク質(2)、WA型のEnvタンパク質(3)、WA型のD350Eの変異Envタンパク質(4)、Asian型のEnvタンパク質(5)、およびAsian型のD350Eの変異Envタンパク質(6)を発現する細胞の結果を示す。図中の矢印は、各抗体で染色された細胞の一例を示す。
図1(A)~(C)において、矢印で示すように、3D11、13H11、および15B2は、いずれのEnvタンパク質に対しても結合することがわかった。この結果から、本発明の抗体等が3つの遺伝子型のCHIKV、より具体的には、3つの遺伝子型のCHIKVのEnvタンパク質の検出に利用できることがわかった。なお、図示していないが、いずれの抗体も、ベクター非導入細胞およびキャプシドタンパク質を発現する細胞を染色しなかった。
【0163】
また、図示していないが、Envタンパク質を発現する細胞について、CK47抗体またはCK119抗体による染色結果と、3D11、13H11、および15B2による染色結果とを比較した場合、3D11、13H11、および15B2は、CK47抗体またはCK119抗体と同様に細胞表面を染色できるのに加え、細胞質内領域についても強く染色した。これは、3D11、13H11、および15B2は、CK47抗体またはCK119抗体とは異なり、Envタンパク質のミスフォールディングタンパク質にも結合することによると推定された。なお、この推定は、本発明を何ら制限しない。
【0164】
[実施例3]
本発明の抗体がSINVに結合しないことを、間接蛍光抗体法(免疫染色法)により確認した。
【0165】
(1)SINV感染細胞の調製
96ウェルプレートにBaby Hamster Kidney fibroblast cell line(BHK)細胞を、2×104細胞/100μL/ウェルとなるように播種した。SINV(R68株、山梨大学森石恆司教授より分与)をBHK細胞にMOI 0.01で感染させることにより、SINV感染細胞を調製した。BHK細胞は、SINV未感染時には、10%(v/v)熱不活化FBSを含むDMEM培地で培養した。また、BHK細胞は、SINV感染後には、2%(v/v)熱不活化FBSを含むDMEM培地で培養した。
【0166】
(2)間接蛍光抗体法
SINV感染細胞の染色は、トランスフェクション後の細胞に代えて、SINV感染細胞を用いた以外は、前記実施例2(3)と同様にして染色し、前記蛍光顕微鏡を用いて各ウェルを観察した。この結果を
図2に示す。
【0167】
図2は、SINV感染細胞の染色結果を示す写真である。
図2において、(A)は、3D11の染色結果、(B)は、13H11の染色結果、(C)は、15B2の染色結果を、(D)は、CK119抗体の染色結果を示す。
図2(D)に示すように、CK119抗体は、SINV感染細胞を染色し、SINVとの交差反応性を示した。これに対して、
図2(A)~(C)に示すように、3D11、13H11、および15B2は、SINV感染細胞を染色せず、SINVとの交差反応性を示さなかった。これらの結果から、本発明の抗体等は、SINVに結合しないことがわかった。
【0168】
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。
【0169】
この出願は、2018年2月9日に出願された日本出願特願2018-022084を基礎とする優先権を主張し、その開示のすべてをここに取り込む。
【産業上の利用可能性】
【0170】
以上説明したように、本発明の抗体等は、3つの遺伝子型のCHIKV、すなわち、ECSA型CHIKV、WA型CHIKV、およびAsian型CHIKVに結合する。このため、本発明の抗体等によれば、例えば、遺伝子型によらず、CHIKVを検出できるため、CHIKVの検出キットに好適に使用できる。このため、本発明は、臨床検査の分野等において、極めて有用といえる。
【配列表】