(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-02
(45)【発行日】2023-10-11
(54)【発明の名称】硬化性組成物、化合物、塩基変換増殖剤及び硬化物
(51)【国際特許分類】
C08G 59/40 20060101AFI20231003BHJP
C07D 233/60 20060101ALI20231003BHJP
C07C 279/24 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
C08G59/40
C07D233/60 104
C07C279/24
(21)【出願番号】P 2020518305
(86)(22)【出願日】2019-05-07
(86)【国際出願番号】 JP2019018290
(87)【国際公開番号】W WO2019216322
(87)【国際公開日】2019-11-14
【審査請求日】2022-02-04
(31)【優先権主張番号】P 2018089281
(32)【優先日】2018-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000125370
【氏名又は名称】学校法人東京理科大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】有光 晃二
【審査官】佐藤 のぞみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-151536(JP,A)
【文献】特開2019-156801(JP,A)
【文献】特開2015-184325(JP,A)
【文献】特開2002-265454(JP,A)
【文献】特開2017-155204(JP,A)
【文献】特開2000-330270(JP,A)
【文献】特開2000-297093(JP,A)
【文献】特開2006-282657(JP,A)
【文献】特開平10-139860(JP,A)
【文献】特開平09-040750(JP,A)
【文献】米国特許第04749729(US,A)
【文献】M.S.Fedoseev, V.A.Glushkov, A.A.Gorbunov, L.F.Derzhavinskaya, and T.E.Oshchepkova,Synthesis and Properties of Polymeric Materials Prepared by Polymerization of Epoxy Oligomers with N,Russian Jounal of Applied Chemistry,ロシア,2012年03月,Vol.85, No.3,456-459
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00-59/72
C07C 279/24
C07D 233/60
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物と、
下記一般式(1)で表される化合物と、
を含み、前記一般式(1)で表される化合物は、下記一般式(1)-Aで表される化合物及び一般式(1)-Bで表される化合物の少なくとも一方を含む硬化性組成物。
【化1】
(式中、Gは、隣接するカルボニル基とエステル構造を形成する酸素原子と、前記酸素原子と結合し、前記エステル構造に対するβ位の水素原子のpKaが27以上であるか、若しくは、前記エステル構造に対するβ位に水素原子が結合していない若しくはβ位が存在しない、置換基を有していてもよい炭化水素基と、を含む基、又は、隣接するカルボニル基とアミド構造を形成する窒素原子と、前記窒素原子と結合し、前記アミド構造に対するβ位の水素原子のpKaが27以上であるか、若しくは、前記アミド構造に対するβ位に水素原子が結合していない若しくはβ位が存在しない、置換基を有していてもよい炭化水素基と、を含む基であり、Xは下記一般式(1)-11、(1)-12、(1)-13又は(1)-14で表される基である。)
【化2】
(式中、R
11、R
12、R
13、R
21、R
22、R
23、R
24、R
31、R
32、R
33、R
41、R
42、R
43及びR
44は、それぞれ独立に水素原子又は炭化水素基であり、R
11、R
12及びR
13のうちの2種以上が炭化水素基である場合、これら炭化水素基は相互に結合して環を形成していてもよく、R
21、R
22、R
23及びR
24のうちの2種以上が炭化水素基である場合、これら炭化水素基は相互に結合して環を形成していてもよく、R
31、R
32及びR
33のうちの2種以上が炭化水素基である場合、これら炭化水素基は相互に結合して環を形成していてもよく、R
41、R
42、R
43及びR
44のうちの2種以上が炭化水素基である場合、これら炭化水素基は相互に結合して環を形成していてもよく;符号*を付した結合は、Xの結合先である炭素原子に対して形成されている。)
【化3】
(式中、R
1は隣接するエステル構造に対するβ位の水素原子のpKaが27以上であるか、又は、隣接するエステル構造に対するβ位に水素原子が結合していない若しくはβ位が存在しない、置換基を有していてもよい炭化水素基であり、R
2及びR
3はそれぞれ独立に水素原子又は隣接するアミド構造に対するβ位の水素原子のpKaが27以上であるか、又は、隣接するアミド構造に対するβ位に水素原子が結合していない若しくはβ位が存在しない、置換基を有していてもよい炭化水素基であり、Xはそれぞれ独立に前記一般式(1)-11、(1)-12、(1)-13又は(1)-14で表される基である。R
2及びR
3の少なくとも一方は隣接するアミド構造に対するβ位の水素原子のpKaが27以上であるか、又は、隣接するアミド構造に対するβ位に水素原子が結合していない若しくはβ位が存在しない、置換基を有していてもよい炭化水素基である。R
2及びR
3が隣接するアミド構造に対するβ位の水素原子のpKaが27以上であるか、又は、隣接するアミド構造に対するβ位に水素原子が結合していない若しくはβ位が存在しない、置換基を有していてもよい炭化水素基である場合、これら炭化水素基は相互に結合して環を形成していてもよい。Xが一般式(1)-11で表される基である場合、R
2及びR
3の一方が水素原子であり、R
1並びにR
2及びR
3の他方が、それぞれ独立に、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基又はイコシル基である。Xが一般式(1)-12、(1)-13又は(1)-14で表される基である場合、R
2及びR
3の一方が水素原子であり、R
1並びにR
2及びR
3の他方が置換基を有していてもよいアルキル基であり、前記アルキル基における前記置換基は、アルコキシ基、アリールオキシ基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、アルキルアリールアミノ基、アルキルカルボニル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、シアノ基(-CN)、ハロゲン原子、ニトロ基、ハロアルキル基(ハロゲン化アルキル基)、水酸基(-OH)又はメルカプト基(-SH)である。)
【請求項2】
光照射又は加熱により塩基を発生する塩基発生剤を更に含む請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
1分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物と、
下記一般式(1)で表される化合物と、
を含み、光照射又は加熱により塩基を発生する塩基発生剤を更に含み、
前記一般式(1)で表される化合物は、下記一般式(1)-Aで表される化合物及び一般式(1)-Bで表される化合物の少なくとも一方を含む硬化性組成物。
【化4】
(式中、Gは、隣接するカルボニル基とエステル構造を形成する酸素原子と、前記酸素原子と結合し、前記エステル構造に対するβ位の水素原子のpKaが27以上であるか、若しくは、前記エステル構造に対するβ位に水素原子が結合していない若しくはβ位が存在しない、置換基を有していてもよい炭化水素基と、を含む基、又は、隣接するカルボニル基とアミド構造を形成する窒素原子と、前記窒素原子と結合し、前記アミド構造に対するβ位の水素原子のpKaが27以上であるか、若しくは、前記アミド構造に対するβ位に水素原子が結合していない若しくはβ位が存在しない、置換基を有していてもよい炭化水素基と、を含む基であり、Xは下記一般式(1)-11、(1)-12、(1)-13又は(1)-14で表される基である。)
【化5】
(式中、R
11、R
12、R
13、R
21、R
22、R
23、R
24、R
31、R
32、R
33、R
41、R
42、R
43及びR
44は、それぞれ独立に水素原子又は炭化水素基であり、R
11、R
12及びR
13のうちの2種以上が炭化水素基である場合、これら炭化水素基は相互に結合して環を形成していてもよく、R
21、R
22、R
23及びR
24のうちの2種以上が炭化水素基である場合、これら炭化水素基は相互に結合して環を形成していてもよく、R
31、R
32及びR
33のうちの2種以上が炭化水素基である場合、これら炭化水素基は相互に結合して環を形成していてもよく、R
41、R
42、R
43及びR
44のうちの2種以上が炭化水素基である場合、これら炭化水素基は相互に結合して環を形成していてもよく;符号*を付した結合は、Xの結合先である炭素原子に対して形成されている。)
【化6】
(式中、R
1は隣接するエステル構造に対するβ位の水素原子のpKaが27以上であるか、又は、隣接するエステル構造に対するβ位に水素原子が結合していない若しくはβ位が存在しない、置換基を有していてもよい炭化水素基であり、R
2及びR
3はそれぞれ独立に水素原子又は隣接するアミド構造に対するβ位の水素原子のpKaが27以上であるか、又は、隣接するアミド構造に対するβ位に水素原子が結合していない若しくはβ位が存在しない、置換基を有していてもよい炭化水素基であり、Xはそれぞれ独立に前記一般式(1)-11、(1)-12、(1)-13又は(1)-14で表される基である。R
2及びR
3の少なくとも一方は隣接するアミド構造に対するβ位の水素原子のpKaが27以上であるか、又は、隣接するアミド構造に対するβ位に水素原子が結合していない若しくはβ位が存在しない、置換基を有していてもよい炭化水素基である。R
2及びR
3が隣接するアミド構造に対するβ位の水素原子のpKaが27以上であるか、又は、隣接するアミド構造に対するβ位に水素原子が結合していない若しくはβ位が存在しない、置換基を有していてもよい炭化水素基である場合、これら炭化水素基は相互に結合して環を形成していてもよい。R
2及びR
3の一方が水素原子であり、R
1並びにR
2及びR
3の他方が置換基を有していてもよいアルキル基であり、前記アルキル基における前記置換基は、アルコキシ基、アリールオキシ基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、アルキルアリールアミノ基、アルキルカルボニル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、シアノ基(-CN)、ハロゲン原子、ニトロ基、ハロアルキル基(ハロゲン化アルキル基)、水酸基(-OH)又はメルカプト基(-SH)である。)
【請求項4】
下記一般式(1)-Aで表される化合物又は一般式(1)-Bで表される化合物である化合物。
【化7】
(式中、R
1は隣接するエステル構造に対するβ位の水素原子のpKaが27以上であるか、又は、隣接するエステル構造に対するβ位に水素原子が結合していない若しくはβ位が存在しない、置換基を有していてもよい炭化水素基であり、R
2及びR
3はそれぞれ独立に水素原子又は隣接するアミド構造に対するβ位の水素原子のpKaが27以上であるか、又は、隣接するアミド構造に対するβ位に水素原子が結合していない若しくはβ位が存在しない、置換基を有していてもよい炭化水素基であり、一般式(1)-Aで表される化合物において、X
は下記一般式(1)-11、(1)-12、(1)-13又は(1)-14で表される基であり、一般式(1)-Bで表される化合物において、Xは
下記一般
式(1)-12、(1)-13又は(1)-14で表される基である。R
2及びR
3の少なくとも一方は隣接するアミド構造に対するβ位の水素原子のpKaが27以上であるか、又は、隣接するアミド構造に対するβ位に水素原子が結合していない若しくはβ位が存在しない、置換基を有していてもよい炭化水素基である。R
2及びR
3が隣接するアミド構造に対するβ位の水素原子のpKaが27以上であるか、又は、隣接するアミド構造に対するβ位に水素原子が結合していない若しくはβ位が存在しない、置換基を有していてもよい炭化水素基である場合、これら炭化水素基は相互に結合して環を形成していてもよい。Xが一般式(1)-11で表される基である場合、R
2及びR
3の一方が水素原子であり、R
1並びにR
2及びR
3の他方が、それぞれ独立に、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基又はイコシル基である。Xが一般式(1)-12、(1)-13又は(1)-14で表される基である場合、R
2及びR
3の一方が水素原子であり、R
1並びにR
2及びR
3の他方が置換基を有していてもよいアルキル基であり、前記アルキル基における前記置換基は、アルコキシ基、アリールオキシ基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、アルキルアリールアミノ基、アルキルカルボニル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、シアノ基(-CN)、ハロゲン原子、ニトロ基、ハロアルキル基(ハロゲン化アルキル基)、水酸基(-OH)又はメルカプト基(-SH)である。)
【化8】
(式中、R
11、R
12、R
13、R
21、R
22、R
23、R
24、R
31、R
32、R
33、R
41、R
42、R
43及びR
44は、それぞれ独立に水素原子又は炭化水素基であり、R
11、R
12及びR
13のうちの2種以上が炭化水素基である場合、これら炭化水素基は相互に結合して環を形成していてもよく、R
21、R
22、R
23及びR
24のうちの2種以上が炭化水素基である場合、これら炭化水素基は相互に結合して環を形成していてもよく、R
31、R
32及びR
33のうちの2種以上が炭化水素基である場合、これら炭化水素基は相互に結合して環を形成していてもよく、R
41、R
42、R
43及びR
44のうちの2種以上が炭化水素基である場合、これら炭化水素基は相互に結合して環を形成していてもよく;符号*を付した結合は、Xの結合先である炭素原子に対して形成されている。)
【請求項5】
下記一般式(1)で表される化合物を含み、
塩基と、エポキシ基を有するエポキシ化合物と、の作用により、新たに塩基を発生するとともに、前記新たに発生した塩基と、前記エポキシ化合物と、の作用によっても、新たに塩基を発生し
前記一般式(1)で表される化合物は、下記一般式(1)-Aで表される化合物及び一般式(1)-Bで表される化合物の少なくとも一方を含む、塩基変換増殖剤。
【化9】
(式中、Gは、隣接するカルボニル基とエステル構造を形成する酸素原子と、前記酸素原子と結合し、前記エステル構造に対するβ位の水素原子のpKaが27以上であるか、若しくは、前記エステル構造に対するβ位に水素原子が結合していない若しくはβ位が存在しない、置換基を有していてもよい炭化水素基と、を含む基、又は、隣接するカルボニル基とアミド構造を形成する窒素原子と、前記窒素原子と結合し、前記アミド構造に対するβ位の水素原子のpKaが27以上であるか、若しくは、前記アミド構造に対するβ位に水素原子が結合していない若しくはβ位が存在しない、置換基を有していてもよい炭化水素基と、を含む基であり、Xは下記一般式(1)-11、(1)-12、(1)-13又は(1)-14で表される基である。)
【化10】
(式中、R
11、R
12、R
13、R
21、R
22、R
23、R
24、R
31、R
32、R
33、R
41、R
42、R
43及びR
44は、それぞれ独立に水素原子又は炭化水素基であり、R
11、R
12及びR
13のうちの2種以上が炭化水素基である場合、これら炭化水素基は相互に結合して環を形成していてもよく、R
21、R
22、R
23及びR
24のうちの2種以上が炭化水素基である場合、これら炭化水素基は相互に結合して環を形成していてもよく、R
31、R
32及びR
33のうちの2種以上が炭化水素基である場合、これら炭化水素基は相互に結合して環を形成していてもよく、R
41、R
42、R
43及びR
44のうちの2種以上が炭化水素基である場合、これら炭化水素基は相互に結合して環を形成していてもよく;符号*を付した結合は、Xの結合先である炭素原子に対して形成されている。)
【化11】
(式中、R
1は隣接するエステル構造に対するβ位の水素原子のpKaが27以上であるか、又は、隣接するエステル構造に対するβ位に水素原子が結合していない若しくはβ位が存在しない、置換基を有していてもよい炭化水素基であり、R
2及びR
3はそれぞれ独立に水素原子又は隣接するアミド構造に対するβ位の水素原子のpKaが27以上であるか、又は、隣接するアミド構造に対するβ位に水素原子が結合していない若しくはβ位が存在しない、置換基を有していてもよい炭化水素基であり、Xはそれぞれ独立に前記一般式(1)-11、(1)-12、(1)-13又は(1)-14で表される基である。R
2及びR
3の少なくとも一方は隣接するアミド構造に対するβ位の水素原子のpKaが27以上であるか、又は、隣接するアミド構造に対するβ位に水素原子が結合していない若しくはβ位が存在しない、置換基を有していてもよい炭化水素基である。R
2及びR
3が隣接するアミド構造に対するβ位の水素原子のpKaが27以上であるか、又は、隣接するアミド構造に対するβ位に水素原子が結合していない若しくはβ位が存在しない、置換基を有していてもよい炭化水素基である場合、これら炭化水素基は相互に結合して環を形成していてもよい。R
2及びR
3の一方が水素原子であり、R
1並びにR
2及びR
3の他方が置換基を有していてもよいアルキル基であり、前記アルキル基における前記置換基は、アルコキシ基、アリールオキシ基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、アルキルアリールアミノ基、アルキルカルボニル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、シアノ基(-CN)、ハロゲン原子、ニトロ基、ハロアルキル基(ハロゲン化アルキル基)、水酸基(-OH)又はメルカプト基(-SH)である。)
【請求項6】
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の硬化性組成物を反応させて得られる硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性組成物、化合物、塩基変換増殖剤及び硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
光の照射によって硬化(重合)する光硬化性材料は、比較的簡単な操作で硬化反応の精密な制御が可能であることから、広く実用化されており、例えば、電子材料分野や印刷材料分野等で重要な位置を占めている。
光硬化性材料としては、例えば、光照射によりラジカル種を発生する光開始剤と、ラジカル重合性のモノマー又はオリゴマーと、を含有するラジカル重合系の光硬化性組成物、光照射により酸を発生する光酸発生剤と、酸の作用により硬化するモノマー又はオリゴマーと、を含有する酸触媒系の光硬化性組成物が、これまで盛んに検討されてきている。
【0003】
一方、光硬化性材料としては、光照射により塩基を発生する光塩基発生剤と、塩基の作用により硬化するモノマー又はオリゴマーと、を含有する塩基触媒系のものも知られている。塩基の作用により硬化するモノマー又はオリゴマーとしては、エポキシ基を有するエポキシ化合物を用いるのが一般的である。光塩基発生剤としては、光照射により第1級アミン又は第2級アミンを生じる非イオン型の光塩基発生剤、光照射によりグアニジン型の強塩基を生じる非イオン型の光塩基発生剤が知られている(非特許文献1~3参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】J.F.Cameron,J.M.J.Frechet,J.Am.Chem.Soc.1991,113,4303.
【文献】M.Shirai,M.Tsunooka,Prog.Polym.Sci.1996,21,1.
【文献】K.Arimitsu,R.Endo,Chem.Mater.2013,25,4461-4463.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1~3で開示されている塩基触媒系の光硬化性組成物以外にも、光照射又は加熱により硬化する新規の硬化性組成物の開発が望まれている。また、光照射又は加熱により塩基を発生する塩基発生剤を用いた場合に、硬化性により優れる硬化性組成物が求められている。
【0006】
本発明の一形態は、新規の硬化性組成物、この硬化性組成物に用いる、化合物及び塩基変換増殖剤、並びにこの硬化性組成物を用いて得られた硬化物を提供することを目的とする。
また、本発明の他の一形態は、光照射又は加熱により塩基を発生する塩基発生剤を用いた、硬化性により優れる硬化性組成物、この硬化性組成物に用いる、化合物及び塩基変換増殖剤、並びにこの硬化性組成物を用いて得られた硬化物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための具体的手段は以下の通りである。
<1> 1分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物と、下記一般式(1)で表される化合物と、を含む硬化性組成物。
【0008】
【0009】
(式中、Gは、隣接するカルボニル基とエステル構造を形成する酸素原子と、前記酸素原子と結合し、前記エステル構造に対するβ位の水素原子のpKaが27以上であるか、前記エステル構造に対するβ位に水素原子が結合していない若しくはβ位が存在しないか、置換基を有していてもよい炭化水素基と、を含む基、又は、隣接するカルボニル基とアミド構造を形成する窒素原子と、前記窒素原子と結合し、前記アミド構造に対するβ位の水素原子のpKaが27以上であるか、若しくは、前記アミド構造に対するβ位に水素原子が結合していない若しくはβ位が存在しない、置換基を有していてもよい炭化水素基と、を含む基であり、Xは下記一般式(1)-11、(1)-12、(1)-13又は(1)-14で表される基である。)
【0010】
【0011】
(式中、R11、R12、R13、R21、R22、R23、R24、R31、R32、R33、R41、R42、R43及びR44は、それぞれ独立に水素原子又は炭化水素基であり、R11、R12及びR13のうちの2種以上が炭化水素基である場合、これら炭化水素基は相互に結合して環を形成していてもよく、R21、R22、R23及びR24のうちの2種以上が炭化水素基である場合、これら炭化水素基は相互に結合して環を形成していてもよく、R31、R32及びR33のうちの2種以上が炭化水素基である場合、これら炭化水素基は相互に結合して環を形成していてもよく、R41、R42、R43及びR44のうちの2種以上が炭化水素基である場合、これら炭化水素基は相互に結合して環を形成していてもよく;符号*を付した結合は、Xの結合先である炭素原子に対して形成されている。)
<2> 光照射又は加熱により塩基を発生する塩基発生剤を更に含む<1>に記載の硬化性組成物。
<3> 前記一般式(1)で表される化合物は、下記一般式(1)-Aで表される化合物及び一般式(1)-Bで表される化合物の少なくとも一方を含む<1>又は<2>に記載の硬化性組成物。
【0012】
【0013】
(式中、R1は隣接するエステル構造に対するβ位の水素原子のpKaが27以上であるか、又は、隣接するエステル構造に対するβ位に水素原子が結合していない若しくはβ位が存在しない、置換基を有していてもよい炭化水素基であり、R2及びR3はそれぞれ独立に水素原子又は隣接するアミド構造に対するβ位の水素原子のpKaが27以上であるか、又は、隣接するアミド構造に対するβ位に水素原子が結合していない若しくはβ位が存在しない、置換基を有していてもよい炭化水素基であり、Xはそれぞれ独立に前記一般式(1)-11、(1)-12、(1)-13又は(1)-14で表される基である。R2及びR3の少なくとも一方は隣接するアミド構造に対するβ位の水素原子のpKaが27以上であるか、又は、隣接するアミド構造に対するβ位に水素原子が結合していない若しくはβ位が存在しない、置換基を有していてもよい炭化水素基である。R2及びR3が隣接するアミド構造に対するβ位の水素原子のpKaが27以上であるか、又は、隣接するアミド構造に対するβ位に水素原子が結合していない若しくはβ位が存在しない、置換基を有していてもよい炭化水素基である場合、これら炭化水素基は相互に結合して環を形成していてもよい。)
<4> 前記一般式(1)で表される化合物が前記一般式(1)-Aで表される化合物である場合、R1は置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基であり、前記一般式(1)で表される化合物が前記一般式(1)-Bで表される化合物である場合、R2及びR3の一方は水素原子であり、R2及びR3の他方は置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基である<3>に記載の硬化性組成物。
【0014】
<5> 下記一般式(1)で表される化合物。
【0015】
【0016】
(式中、Gは、隣接するカルボニル基とエステル構造を形成する酸素原子と、前記酸素原子と結合し、前記エステル構造に対するβ位の水素原子のpKaが27以上であるか、若しくは、前記エステル構造に対するβ位に水素原子が結合していない若しくはβ位が存在しない、置換基を有していてもよい炭化水素基と、を含む基、又は、隣接するカルボニル基とアミド構造を形成する窒素原子と、前記窒素原子と結合し、前記アミド構造に対するβ位の水素原子のpKaが27以上であるか、若しくは、前記アミド構造に対するβ位に水素原子が結合していない若しくはβ位が存在しない、置換基を有していてもよい炭化水素基と、を含む基であり、Xは下記一般式(1)-11、(1)-12、(1)-13又は(1)-14で表される基である。)
【0017】
【0018】
(式中、R11、R12、R13、R21、R22、R23、R24、R31、R32、R33、R41、R42、R43及びR44は、それぞれ独立に水素原子又は炭化水素基であり、R11、R12及びR13のうちの2種以上が炭化水素基である場合、これら炭化水素基は相互に結合して環を形成していてもよく、R21、R22、R23及びR24のうちの2種以上が炭化水素基である場合、これら炭化水素基は相互に結合して環を形成していてもよく、R31、R32及びR33のうちの2種以上が炭化水素基である場合、これら炭化水素基は相互に結合して環を形成していてもよく、R41、R42、R43及びR44のうちの2種以上が炭化水素基である場合、これら炭化水素基は相互に結合して環を形成していてもよく;符号*を付した結合は、Xの結合先である炭素原子に対して形成されている。)
<6> 下記一般式(1)-Aで表される化合物又は一般式(1)-Bで表される化合物である<5>に記載の化合物。
【0019】
【0020】
(式中、R1は隣接するエステル構造に対するβ位の水素原子のpKaが27以上であるか、又は、隣接するエステル構造に対するβ位に水素原子が結合していない若しくはβ位が存在しない、置換基を有していてもよい炭化水素基であり、R2及びR3はそれぞれ独立に水素原子又は隣接するアミド構造に対するβ位の水素原子のpKaが27以上であるか、又は、隣接するアミド構造に対するβ位に水素原子が結合していない若しくはβ位が存在しない、置換基を有していてもよい炭化水素基であり、Xはそれぞれ独立に前記一般式(1)-11、(1)-12、(1)-13又は(1)-14で表される基である。R2及びR3の少なくとも一方は隣接するアミド構造に対するβ位の水素原子のpKaが27以上であるか、又は、隣接するアミド構造に対するβ位に水素原子が結合していない若しくはβ位が存在しない、置換基を有していてもよい炭化水素基である。R2及びR3が隣接するアミド構造に対するβ位の水素原子のpKaが27以上であるか、又は、隣接するアミド構造に対するβ位に水素原子が結合していない若しくはβ位が存在しない、置換基を有していてもよい炭化水素基である場合、これら炭化水素基は相互に結合して環を形成していてもよい。)
<7> 前記一般式(1)で表される化合物が前記一般式(1)-Aで表される化合物である場合、R1は置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基であり、前記一般式(1)で表される化合物が前記一般式(1)-Bで表される化合物である場合、R2及びR3の一方は水素原子であり、R2及びR3の他方は置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基である<6>に記載の化合物。
【0021】
<8> 下記一般式(1)で表される化合物を含み、塩基と、エポキシ基を有するエポキシ化合物と、の作用により、新たに塩基を発生するとともに、前記新たに発生した塩基と、前記エポキシ化合物と、の作用によっても、新たに塩基を発生する、塩基変換増殖剤。
【0022】
【0023】
(式中、Gは、隣接するカルボニル基とエステル構造を形成する酸素原子と、前記酸素原子と結合し、前記エステル構造に対するβ位の水素原子のpKaが27以上であるか、若しくは、前記エステル構造に対するβ位に水素原子が結合していない若しくはβ位が存在しない、置換基を有していてもよい炭化水素基と、を含む基、又は、隣接するカルボニル基とアミド構造を形成する窒素原子と、前記窒素原子と結合し、前記アミド構造に対するβ位の水素原子のpKaが27以上であるか、若しくは、前記アミド構造に対するβ位に水素原子が結合していない若しくはβ位が存在しない、置換基を有していてもよい炭化水素基と、を含む基であり、Xは下記一般式(1)-11、(1)-12、(1)-13又は(1)-14で表される基である。)
【0024】
【0025】
(式中、R11、R12、R13、R21、R22、R23、R24、R31、R32、R33、R41、R42、R43及びR44は、それぞれ独立に水素原子又は炭化水素基であり、R11、R12及びR13のうちの2種以上が炭化水素基である場合、これら炭化水素基は相互に結合して環を形成していてもよく、R21、R22、R23及びR24のうちの2種以上が炭化水素基である場合、これら炭化水素基は相互に結合して環を形成していてもよく、R31、R32及びR33のうちの2種以上が炭化水素基である場合、これら炭化水素基は相互に結合して環を形成していてもよく、R41、R42、R43及びR44のうちの2種以上が炭化水素基である場合、これら炭化水素基は相互に結合して環を形成していてもよく;符号*を付した結合は、Xの結合先である炭素原子に対して形成されている。)
【0026】
<9> <1>~<4>のいずれか1つに記載の硬化性組成物を反応させて得られる硬化物。
【発明の効果】
【0027】
本発明の一形態によれば、新規の硬化性組成物、この硬化性組成物に用いる、化合物及び塩基変換増殖剤、並びにこの硬化性組成物を用いて得られた硬化物を提供することができる。
本発明の他の一形態によれば、光照射又は加熱により塩基を発生する塩基発生剤を用いた、硬化性により優れる硬化性組成物、この硬化性組成物に用いる、化合物及び塩基変換増殖剤、並びにこの硬化性組成物を用いて得られた硬化物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】実施例6において、FT-IRスペクトルの測定結果を示すグラフである。
【
図2】実施例6、7及び参考例2、3における、加熱時間とエポキシ基に起因するピーク面積比率との関係を示すグラフである。
【
図3】実施例9において、FT-IRスペクトルの測定結果を示すグラフである。
【
図4】実施例8、9及び参考例4における、加熱時間とエポキシ基に起因するピーク面積比率との関係を示すグラフである。
【
図5】実施例10~12における、加熱時間とエポキシ基に起因するピーク面積比率との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0030】
<化合物(1)>
本開示の化合物(以下、「化合物(1)」と称することがある)は、下記一般式(1)で表される。
【0031】
【0032】
一般式(1)中、Gは、隣接するカルボニル基とエステル構造を形成する酸素原子と、前記酸素原子と結合し、前記エステル構造に対するβ位の水素原子のpKaが27以上であるか、若しくは、前記エステル構造に対するβ位に水素原子が結合していない若しくはβ位が存在しない、置換基を有していてもよい炭化水素基と、を含む基、又は、隣接するカルボニル基とアミド構造を形成する窒素原子と、前記窒素原子と結合し、前記アミド構造に対するβ位の水素原子のpKaが27以上であるか、若しくは、前記アミド構造に対するβ位に水素原子が結合していない若しくはβ位が存在しない、置換基を有していてもよい炭化水素基と、を含む基であり、Xは下記一般式(1)-11、(1)-12、(1)-13又は(1)-14で表される基である。
【0033】
【0034】
一般式(1)-11~(1)-14中、R11、R12、R13、R21、R22、R23、R24、R31、R32、R33、R41、R42、R43及びR44は、それぞれ独立に水素原子又は炭化水素基であり、R11、R12及びR13のうちの2種以上が炭化水素基である場合、これら炭化水素基は相互に結合して環を形成していてもよく、R21、R22、R23及びR24のうちの2種以上が炭化水素基である場合、これら炭化水素基は相互に結合して環を形成していてもよく、R31、R32及びR33のうちの2種以上が炭化水素基である場合、これら炭化水素基は相互に結合して環を形成していてもよく、R41、R42、R43及びR44のうちの2種以上が炭化水素基である場合、これら炭化水素基は相互に結合して環を形成していてもよく;符号*を付した結合は、Xの結合先である炭素原子に対して形成されている。
【0035】
化合物(1)は、前記一般式(1)で表され、X中の窒素原子とカルボニル基の炭素原子とが結合して形成されているカルボン酸アミド結合を有する化合物である。
また、化合物(1)は、一般式(1)中に記載されているカルボニル基とXとの間の結合が特定の条件下で切断されて、前記カルボニル基の炭素原子と結合していたX中の窒素原子が、水素原子と結合した構造の塩基性化合物(本明細書においては、単に「塩基」と略記することがある)を生じるという、共通の特性を有する。この特性については、後ほど詳細に説明する。
【0036】
また、化合物(1)は、後述するように塩基の作用で別途塩基を発生させる塩基変換作用を有するとともに、自己増殖的に塩基を発生させる塩基増殖作用を有する。更に、化合物(1)自体も塩基として作用するため、後述のエポキシ化合物と混合し加熱等することによりエポキシ化合物は硬化反応する。
【0037】
一般式(1)中、Gは隣接するカルボニル基とエステル構造を形成する酸素原子と、前記酸素原子と結合し、前記エステル構造に対するβ位の水素原子のpKaが27以上であるか、若しくは、前記エステル構造に対するβ位に水素原子が結合していない若しくはβ位が存在しない、置換基を有していてもよい炭化水素基と、を含む基、又は、隣接するカルボニル基とアミド構造を形成する窒素原子と、前記窒素原子と結合し、前記アミド構造に対するβ位の水素原子のpKaが27以上であるか、若しくは、前記アミド構造に対するβ位に水素原子が結合していない若しくはβ位が存在しない、置換基を有していてもよい炭化水素基と、を含む基である。
【0038】
エステル構造及びアミド構造に対するβ位の水素原子のpKaが27以上であることにより、例えば光照射又は加熱により塩基を発生する塩基発生剤を含む硬化性組成物に光照射又は加熱を行うことにより、塩基を発生させた場合に、塩基とβ位の水素原子との反応性が低いため、塩基によりβ位の水素原子が引き抜かれるβ脱離反応が生じにくい。これにより、一般式(1)中のGの一部が分解されて多重結合を有する分解物が発生したり、エステル構造に由来する二酸化炭素等が発生したりすることが抑制できるため、硬化性組成物の硬化不良を抑制できる。前述の塩基とβ位の水素原子との反応をより好適に抑制する点から、エステル構造及びアミド構造に対するβ位の水素原子のpKaが、それぞれ独立に、30以上であることが好ましく、35以上であることがより好ましい。
エステル構造及びアミド構造に対するβ位の水素原子のpKaは、例えば、炭化水素基について、置換基の有無、置換基の種類、位置や数等、共役構造の有無、共役構造の種類、位置などによって調節することができる。
【0039】
エステル構造及びアミド構造に対するβ位に水素原子が結合していない又はβ位が存在しないことにより、例えば塩基発生剤を含む硬化性組成物に光照射又は加熱を行うことにより塩基を発生させた場合に、β位に水素原子が存在しない又はβ位自体が存在しないため、水素原子が引き抜かれることによるβ脱離反応が生じない。これにより、一般式(1)中のGの一部が分解されて多重結合を有する分解物が発生したり、エステル構造に由来する二酸化炭素等が発生したりすることが抑制できるため、硬化性組成物の硬化不良を抑制できる。
エステル構造及びアミド構造に対するβ位に水素原子が結合していない置換基を有していてもよい炭化水素基としては、β位が四級炭素である炭化水素、β位に1つ以上の置換基が結合し、かつ水素原子が結合していない炭化水素、β位が芳香族炭素である炭化水素等が挙げられる。
エステル構造及びアミド構造に対するβ位が存在しない置換基を有していてもよい炭化水素基としては、置換基を有していてもよいメチル基が挙げられる。
【0040】
化合物(1)は、下記一般式(1)-Aで表される化合物又は一般式(1)-Bで表される化合物であることが好ましく、エポキシ化合物の存在下における熱安定性に優れる点から、下記一般式(1)-Aで表される化合物であることがより好ましい。
【0041】
【0042】
一般式(1)-A及び一般式(1)-B中、R1は隣接するエステル構造に対するβ位の水素原子のpKaが27以上であるか、又は、前記エステル構造に対するβ位に水素原子が結合していない若しくはβ位が存在しない、置換基を有していてもよい炭化水素基であり、R2及びR3はそれぞれ独立に水素原子又は隣接するアミド構造に対するβ位の水素原子のpKaが27以上であるか、又は、前記アミド構造に対するβ位に水素原子が結合していない若しくはβ位が存在しない、置換基を有していてもよい炭化水素基であり、Xはそれぞれ独立に前記一般式(1)-11、(1)-12、(1)-13又は(1)-14で表される基である。R2及びR3の少なくとも一方は隣接するアミド構造に対するβ位の水素原子のpKaが27以上であるか、又は、前記アミド構造に対するβ位に水素原子が結合していない若しくはβ位が存在しない、置換基を有していてもよい炭化水素基である。R2及びR3が隣接するアミド構造に対するβ位の水素原子のpKaが27以上であるか、又は、前記アミド構造に対するβ位に水素原子が結合していない若しくはβ位が存在しない、置換基を有していてもよい炭化水素基である場合、これら炭化水素基は相互に結合して環を形成していてもよい。
【0043】
ここで「炭化水素基が置換基を有する」とは、炭化水素基を構成する1個以上の水素原子が、水素原子以外の基(置換基)で置換されているか、又は炭化水素基を構成する1個以上の炭素原子が、若しくは前記炭素原子がこれに結合している1個以上の水素原子とともに、炭素原子又は1個以上の水素原子が結合している炭素原子とは異なる基(置換基)で置換されていることを意味する。そして、水素原子及び炭素原子がともに置換基で置換されていてもよい。
【0044】
前記炭化水素基は、脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基(アリール基)のいずれでもよく、1個以上の水素原子が芳香族炭化水素基で置換された脂肪族炭化水素基であってもよいし、環状の脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基とが縮環してなる多環状の炭化水素基であってもよい。
前記脂肪族炭化水素基は、飽和脂肪族炭化水素基(アルキル基)及び不飽和脂肪族炭化水素基のいずれでもよい。
前記アルキル基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでもよく、環状である場合、単環状及び多環状のいずれでもよい。そして、前記アルキル基は、炭素数が1~20であることが好ましく、2~20であることがより好ましい。
【0045】
直鎖状又は分岐鎖状の前記アルキル基は、炭素数が1~20であることが好ましく、前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、1-メチルブチル基、n-ヘキシル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、2,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、n-ヘプチル基、2-メチルヘキシル基、3-メチルヘキシル基、2,2-ジメチルペンチル基、2,3-ジメチルペンチル基、2,4-ジメチルペンチル基、3,3-ジメチルペンチル基、3-エチルペンチル基、2,2,3-トリメチルブチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基等が挙げられる。
【0046】
環状の前記アルキル基は、炭素数が3~20であることが好ましく、前記アルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、1-アダマンチル基、2-アダマンチル基、トリシクロデシル基等が挙げられ、さらに、これら環状のアルキル基の1個以上の水素原子が、直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基で置換されたものが挙げられる。ここで、水素原子を置換する直鎖状、分岐鎖状及び環状のアルキル基としては、アルキル基として例示した上記のものが挙げられる。
【0047】
前記不飽和脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでもよく、環状である場合、単環状及び多環状のいずれでもよい。そして、前記不飽和脂肪族炭化水素基は、炭素数が2~20であることが好ましい。
前記不飽和脂肪族炭化水素基としては、前記アルキル基中の、炭素原子間の1個以上の単結合(C-C)が、不飽和結合である二重結合(C=C)又は三重結合(C≡C)で置換されてなる基が挙げられる。
前記不飽和脂肪族炭化水素基において、不飽和結合の数は1個のみでもよいし、2個以上でもよく、2個以上である場合、これら不飽和結合は二重結合のみでもよいし、三重結合のみでもよく、二重結合及び三重結合が混在していてもよい。
前記不飽和脂肪族炭化水素基において、不飽和結合の位置は特に限定されない。
【0048】
前記不飽和脂肪族炭化水素基で好ましいものとしては、例えば、前記不飽和結合が1個のものに相当する、直鎖状又は分岐鎖状のものであるアルケニル基及びアルキニル基、並びに環状のものであるシクロアルケニル基及びシクロアルキニル基が挙げられる。
前記アルケニル基としては、例えば、エテニル基(ビニル基)、2-プロペニル基(アリル基)、シクロヘキセニル基等が挙げられる。
【0049】
前記アリール基は、単環状及び多環状のいずれでもよく、炭素数が6~20であることが好ましい。このようなアリール基としては、例えば、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、o-トリル基、m-トリル基、p-トリル基、キシリル基(ジメチルフェニル基)等が挙げられ、これらアリール基の1個以上の水素原子が、さらにこれらアリール基や、前記アルキル基で置換されたものも挙げられる。これら置換基を有するアリール基は、置換基も含めて炭素数が6~20であることが好ましい。
【0050】
前記炭化水素基のうち、1個以上の水素原子が芳香族炭化水素基(アリール基)で置換された脂肪族炭化水素基としては、例えば、水素原子の置換数が1であるものであれば、フェニルメチル基(ベンジル基)、2-フェニルエチル基(フェネチル基)等のアリールアルキル基(アラルキル基)が挙げられる。
【0051】
前記炭化水素基において、1個以上の水素原子が置換される置換基としては、例えば、アルコキシ基、アリールオキシ基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、アルキルアリールアミノ基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、シアノ基(-CN)、ハロゲン原子、ニトロ基、ハロアルキル基(ハロゲン化アルキル基)、水酸基(-OH)、メルカプト基(-SH)等が挙げられる。
【0052】
前記炭化水素基において、水素原子を置換する前記置換基は、1個のみでもよいし、2個以上でもよく、すべての水素原子が前記置換基で置換されていてもよい。
前記炭化水素基において、水素原子を置換する前記置換基が2個以上である場合、これら置換基は、すべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよく、一部のみ同一であってもよい。
【0053】
置換基である前記アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、シクロプロポキシ基等、前記アルキル基が酸素原子に結合してなる1価の基が挙げられる。
置換基である前記アリールオキシ基としては、例えば、フェニルオキシ基(フェノキシ基)、1-ナフチルオキシ基、2-ナフチルオキシ基等、前記アリール基が酸素原子に結合してなる1価の基が挙げられる。
【0054】
置換基である前記ジアルキルアミノ基としては、例えば、ジメチルアミノ基、メチルエチルアミノ基等、アミノ基(-NH2)の2個の水素原子が、前記アルキル基で置換されてなる1価の基が挙げられる。前記ジアルキルアミノ基において、窒素原子に結合している2個のアルキル基は、互いに同一でも、異なっていてもよい。
置換基である前記ジアリールアミノ基としては、例えば、ジフェニルアミノ基、フェニル-1-ナフチルアミノ基等、アミノ基の2個の水素原子が、前記アリール基で置換されてなる1価の基が挙げられる。前記ジアリールアミノ基において、窒素原子に結合している2個のアリール基は、互いに同一でも、異なっていてもよい。
置換基である前記アルキルアリールアミノ基としては、例えば、メチルフェニルアミノ基等、アミノ基の2個の水素原子のうち、1個の水素原子が前記アルキル基で置換され、1個の水素原子が前記アリール基で置換されてなる1価の基が挙げられる。
【0055】
置換基である前記アルキルカルボニル基としては、例えば、メチルカルボニル基(アセチル基)等、前記アルキル基がカルボニル基(-C(=O)-)に結合してなる1価の基が挙げられる。
置換基である前記アリールカルボニル基としては、例えば、フェニルカルボニル基(ベンゾイル基)等、前記アリール基がカルボニル基に結合してなる1価の基が挙げられる。
【0056】
置換基である前記アルキルオキシカルボニル基としては、例えば、メチルオキシカルボニル基(メトキシカルボニル基)等、前記アルコキシ基がカルボニル基に結合してなる1価の基が挙げられる。
置換基である前記アリールオキシカルボニル基としては、例えば、フェニルオキシカルボニル基(フェノキシカルボニル基)等、前記アリールオキシ基がカルボニル基に結合してなる1価の基が挙げられる。
【0057】
置換基である前記アルキルカルボニルオキシ基としては、例えば、メチルカルボニルオキシ基等、前記アルキル基がカルボニルオキシ基(-C(=O)-O-)の炭素原子に結合してなる1価の基が挙げられる。
置換基である前記アリールカルボニルオキシ基としては、例えば、フェニルカルボニルオキシ基等、前記アリール基がカルボニルオキシ基の炭素原子に結合してなる1価の基が挙げられる。
【0058】
置換基である前記アルキルチオ基としては、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、n-プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、シクロプロピルチオ基等、前記アルキル基が硫黄原子に結合してなる1価の基が挙げられる。
置換基である前記アリールチオ基としては、例えば、フェニルチオ基、1-ナフチルチオ基、2-ナフチルチオ基等、前記アリール基が硫黄原子に結合してなる1価の基が挙げられる。
【0059】
置換基である前記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子(-F)、塩素原子(-Cl)、臭素原子(-Br)、ヨウ素原子(-I)が挙げられる。
【0060】
置換基である前記ハロアルキル基としては、前記アルキル基の1個以上の水素原子がハロゲン原子で置換されてなる基が挙げられる。
ハロアルキル基におけるハロゲン原子としては、置換基であるハロゲン原子として例示した上記のものが挙げられる。
ハロアルキル基におけるハロゲン原子の数は、特に限定されず、1個でもよいし、2個以上でもよい。ハロアルキル基におけるハロゲン原子の数が2個以上である場合、これら複数個のハロゲン原子は、すべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよく、一部のみ同一であってもよい。ハロアルキル基は、アルキル基中のすべての水素原子がハロゲン原子で置換されたパーハロアルキル基であってもよい。
ハロアルキル基としては、例えば、クロロメチル基、ジクロロメチル基、トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0061】
前記炭化水素基において、水素原子を置換する前記置換基の数は、置換可能な水素原子の数にもよるが、1~4個であることが好ましく、1~3個であることがより好ましく、1又は2個であることが特に好ましい。
【0062】
前記炭化水素基において、1個以上の炭素原子が、又は前記炭素原子がこれに結合している1個以上の水素原子とともに置換される置換基としては、例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子が挙げられる。
【0063】
前記炭化水素基において、炭素原子又は水素原子が結合している炭素原子を置換する前記置換基は、1個のみでもよいし、2個以上でもよく、すべての炭素原子が単独で若しくは前記炭素原子に結合している水素原子とともに、置換基で置換されていてもよい。
前記炭化水素基において、炭素原子又は水素原子が結合している炭素原子を置換する前記置換基が2個以上である場合、これら置換基は、すべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよく、一部のみ同一であってもよい。
【0064】
ヘテロ原子で置換されている前記炭化水素基のうち、芳香族炭化水素基、すなわち、芳香族複素環式基(ヘテロアリール基)としては、各種の芳香族複素環化合物から、その環骨格を構成する炭素原子又はヘテロ原子に結合している1個の水素原子を除いてなる基が挙げられる。
前記芳香族複素環化合物で好ましいものとしては、含硫黄芳香族複素環化合物(芳香族複素環骨格を構成する原子として1個以上の硫黄原子を有する化合物)、含窒素芳香族複素環化合物(芳香族複素環骨格を構成する原子として1個以上の窒素原子を有する化合物)、含酸素芳香族複素環化合物(芳香族複素環骨格を構成する原子として1個以上の酸素原子を有する化合物)、硫黄原子、窒素原子及び酸素原子から選択される互いに異なる2個のヘテロ原子を、芳香族複素環骨格を構成する原子として有する化合物が挙げられる。
【0065】
前記含硫黄芳香族複素環化合物としては、例えば、チオフェン、ベンゾチオフェン等が挙げられる。
【0066】
前記含窒素芳香族複素環化合物としては、例えば、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、インドール、イソインドール、ベンゾイミダゾール、プリン、インダゾール、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン等が挙げられる。
【0067】
前記含酸素芳香族複素環化合物としては、例えば、フラン、ベンゾフラン(1-ベンゾフラン)、イソベンゾフラン(2-ベンゾフラン)等が挙げられる。
【0068】
上述の互いに異なる2個のヘテロ原子を、芳香族複素環骨格を構成する原子として有する化合物としては、例えば、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾイソオキサゾール、ベンゾチアゾール等が挙げられる。
【0069】
前記炭化水素基において、炭素原子又は水素原子が結合している炭素原子を置換する前記置換基の数は、置換可能な炭素原子にもよるが、1~3個であることが好ましく、1又は2個であることがより好ましい。
【0070】
R1~R3は、それぞれ独立に置換基を有していてもよい、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、又はアリールアルキル基であることが好ましく、置換基を有していてもよい、アルキル基又はアリール基であることがより好ましく、置換基を有していてもよいアルキル基であることがさらに好ましい。ここでの置換基は、炭化水素基が有するものとして説明した上述の置換基と同じである。
また、R1及びR2はそれぞれ独立に置換基を有していてもよい、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、又はアリールアルキル基であり、かつR3は水素原子であることが好ましく、R1及びR2は置換基を有していてもよい、アルキル基又はアリール基であり、かつR3は水素原子であることがより好ましく、R1及びR2は置換基を有していてもよいアルキル基であり、かつR3は水素原子であることがさらに好ましい。
【0071】
一般式(1)中、Xは前記一般式(1)-11、(1)-12、(1)-13又は(1)-14で表される基である。そして、符号*を付した結合は、Xの結合先である炭素原子、すなわち、一般式(1)中の、Gが結合しているカルボニル基中の炭素原子に対して形成されている。
【0072】
一般式(1)-11、(1)-12、(1)-13又は(1)-14中、R11、R12、R13、R21、R22、R23、R24、R31、R32、R33、R41、R42、R43及びR44は、それぞれ独立に水素原子又は炭化水素基である。
すなわち、一般式(1)-11中、R11、R12及びR13(以下、「R11~R13」と略記することがある)は、すべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよく、一部のみ同一であってもよい。
同様に、一般式(1)-12中、R21、R22、R23及びR24(以下、「R21~R24」と略記することがある)は、すべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよく、一部のみ同一であってもよい。
同様に、一般式(1)-13中、R31、R32及びR33(以下、「R31~R33」と略記することがある)は、すべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよく、一部のみ同一であってもよい。
同様に、一般式(1)-14中、R41、R42、R43及びR44(以下、「R41~R44」と略記することがある)は、すべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよく、一部のみ同一であってもよい。
【0073】
R11~R13、R21~R24、R31~R33、及びR41~R44における前記炭化水素基は、脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基(アリール基)のいずれでもよく、1個以上の水素原子が芳香族炭化水素基で置換された脂肪族炭化水素基であってもよいし、環状の脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基とが縮環してなる多環状の炭化水素基であってもよい。
【0074】
前記脂肪族炭化水素基は、飽和脂肪族炭化水素基(アルキル基)及び不飽和脂肪族炭化水素基のいずれでもよい。
【0075】
前記アルキル基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでもよく、環状である場合、単環状及び多環状のいずれでもよい。そして、前記アルキル基は、炭素数が1~20であることが好ましい。
【0076】
直鎖状又は分岐鎖状の前記アルキル基は、炭素数が1~20であることが好ましく、前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、1-メチルブチル基、n-ヘキシル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、2,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、n-ヘプチル基、2-メチルヘキシル基、3-メチルヘキシル基、2,2-ジメチルペンチル基、2,3-ジメチルペンチル基、2,4-ジメチルペンチル基、3,3-ジメチルペンチル基、3-エチルペンチル基、2,2,3-トリメチルブチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基等が挙げられる。
【0077】
環状の前記アルキル基は、炭素数が3~20であることが好ましく、前記アルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、1-アダマンチル基、2-アダマンチル基、トリシクロデシル基等が挙げられ、さらに、これら環状のアルキル基の1個以上の水素原子が、直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基で置換されたものが挙げられる。ここで、水素原子を置換する直鎖状、分岐鎖状及び環状のアルキル基としては、アルキル基として例示した上記のものが挙げられる。
【0078】
前記不飽和脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでもよく、環状である場合、単環状及び多環状のいずれでもよい。そして、前記不飽和脂肪族炭化水素基は、炭素数が2~20であることが好ましい。
前記不飽和脂肪族炭化水素基としては、前記アルキル基中の、炭素原子間の1個以上の単結合(C-C)が、不飽和結合である二重結合(C=C)又は三重結合(C≡C)で置換されてなる基が挙げられる。
前記不飽和脂肪族炭化水素基において、不飽和結合の数は1個のみでもよいし、2個以上でもよく、2個以上である場合、これら不飽和結合は二重結合のみでもよいし、三重結合のみでもよく、二重結合及び三重結合が混在していてもよい。
前記不飽和脂肪族炭化水素基において、不飽和結合の位置は特に限定されない。
【0079】
前記不飽和脂肪族炭化水素基で好ましいものとしては、例えば、前記不飽和結合が1個のものに相当する、直鎖状又は分岐鎖状のものであるアルケニル基及びアルキニル基、並びに環状のものであるシクロアルケニル基及びシクロアルキニル基が挙げられる。
前記アルケニル基としては、例えば、エテニル基(ビニル基)、2-プロペニル基(アリル基)、シクロヘキセニル基等が挙げられる。
【0080】
前記アリール基は、単環状及び多環状のいずれでもよく、炭素数が6~20であることが好ましい。このようなアリール基としては、例えば、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、o-トリル基、m-トリル基、p-トリル基、キシリル基(ジメチルフェニル基)等が挙げられ、これらアリール基の1個以上の水素原子が、さらにこれらアリール基、前記アルキル基等で置換されたものも挙げられる。これら置換基を有するアリール基は、置換基も含めて炭素数が6~20であることが好ましい。
【0081】
一般式(1)-11中、R11、R12及びR13のうちの2種以上が炭化水素基である場合、これら炭化水素基は相互に結合して、これら炭化水素基が結合している炭素原子(イミダゾール骨格を構成している炭素原子)とともに、環を形成していてもよい。ここで、「2種以上の炭化水素基が相互に結合する」とは、R11~R13のうちの2種のみ又はすべて(3種)が炭化水素基であり、いずれか2種の炭化水素基のみが相互に結合する場合と、R11~R13のすべて(3種)が炭化水素基であり、これらすべての炭化水素基が相互に結合する場合とがある。そして、いずれの場合もこれら炭化水素基は、炭素原子同士が相互に結合するものとする。
【0082】
2種以上の炭化水素基が相互に結合する場合、その結合する炭素原子の位置(結合位置)は特に限定されない。例えば、結合する炭化水素基が直鎖状又は分岐鎖状である場合には、結合位置は炭化水素基の末端の炭素原子であってもよいし、炭化水素基のイミダゾール骨格を構成している炭素原子に直接結合している、いわゆる根元の炭素原子であってもよく、これら末端及び根元間の中間位置の炭素原子であってもよい。一方、結合する炭化水素基が環状であるか、又は鎖状構造及び環状構造の両方を有する場合には、結合位置は根元の炭素原子であってもよいし、それ以外の炭素原子であってもよい。
【0083】
R11~R13のうちの2種の炭化水素基が相互に結合する場合、それによって形成される環は、単環状及び多環状のいずれでもよい。一般式(1)-11で表される基は、イミダゾール骨格と、これら炭化水素基の相互の結合によって形成される環と、が縮環した構造を有する。
【0084】
一般式(1)-12中、R21、R22、R23及びR24のうちの2種以上が炭化水素基である場合、これら炭化水素基は相互に結合して、これら炭化水素基が結合している窒素原子と、この窒素原子に結合している炭素原子(3個の窒素原子がともに結合している同一の炭素原子)とともに、環を形成していてもよい。ここで、「2種以上の炭化水素基が相互に結合する」とは、上述のようにR11~R13のいずれかの炭化水素基が相互に結合する場合と同様のことを意味する。例えば、このように結合するのには、R21~R24のうちの2種のみ、3種のみ又はすべて(4種)が炭化水素基であり、いずれか2種又は3種の炭化水素基のみが相互に結合する場合と、R21~R24のすべて(4種)が炭化水素基であり、これらすべての炭化水素基が相互に結合する場合とがあり、炭化水素基同士の結合の仕方も、R11~R13の場合と同じである。
【0085】
一般式(1)-13中、R31、R32及びR33のうちの2種以上が炭化水素基である場合、これら炭化水素基は相互に結合して、これら炭化水素基が結合している窒素原子又は炭素原子と、この窒素原子に結合している炭素原子、又は炭素原子に結合している窒素原子とともに、環を形成していてもよい。ここで、「2種以上の炭化水素基が相互に結合する」とは、上述のようにR11~R13のいずれかの炭化水素基が相互に結合する場合と同様のことを意味する。例えば、このように結合するのには、R31~R33のうちの2種のみ又はすべて(3種)が炭化水素基であり、いずれか2種の炭化水素基のみが相互に結合する場合と、R31~R33のすべて(3種)が炭化水素基であり、これらすべての炭化水素基が相互に結合する場合とがあり、炭化水素基同士の結合の仕方も、R11~R13の場合と同じである。
【0086】
一般式(1)-14中、R41、R42、R43及びR44のうちの2種以上が炭化水素基である場合、これら炭化水素基は相互に結合して、これら炭化水素基が結合している窒素原子と、この窒素原子に結合している炭素原子(3個の窒素原子がともに結合している同一の炭素原子)とともに、環を形成していてもよい。ここで、「2種以上の炭化水素基が相互に結合する」とは、上述のようにR11~R13のいずれかの炭化水素基が相互に結合する場合と同様のことを意味する。例えば、このように結合するのには、R41~R44のうちの2種のみ、3種のみ又はすべて(4種)が炭化水素基であり、いずれか2種又は3種の炭化水素基のみが相互に結合する場合と、R41~R44のすべて(4種)が炭化水素基であり、これらすべての炭化水素基が相互に結合する場合とがあり、炭化水素基同士の結合の仕方も、R11~R13の場合と同じである。
【0087】
化合物(1)は、下記一般式(1)-1で表される化合物(以下、「化合物(1)-1」と略記することがある)、下記一般式(1)-2で表される化合物(以下、「化合物(1)-2」と略記することがある)、下記一般式(1)-3で表される化合物(以下、「化合物(1)-3」と略記することがある)、及び下記一般式(1)-4で表される化合物(以下、「化合物(1)-4」と略記することがある)に分類される。
【0088】
【0089】
一般式(1)-1~一般式(1)-4中、G、R11、R12、R13、R21、R22、R23、R24、R31、R32、R33、R41、R42、R43及びR44は、前記と同じである。)
【0090】
化合物(1)-1で好ましいものとしては、例えば、下記一般式(1)-1Aで表される化合物(以下、「化合物(1)-1A」と略記することがある)、及び下記一般式(1)-1Bで表される化合物(以下、「化合物(1)-1B」と略記することがある)が挙げられる。
【0091】
【0092】
一般式(1)-1A及び一般式(1)-1B中、Gは前記と同じであり;R11’、R12’及びR13’は、それぞれ独立に水素原子又は炭化水素基であり;R011は炭化水素環である。
【0093】
一般式(1)-1A及び一般式(1)-1B中、R11’、R12’及びR13’は、それぞれ独立に水素原子又は炭化水素基である。
R11’、R12’及びR13’における前記炭化水素基は、相互に結合して環を形成することがない点以外は、上述のR11~R13における前記炭化水素基と同じである。すなわち、化合物(1)-1Aは、R11’、R12’及びR13’がいずれの基であっても、一般式(1)-1A中に記載されているイミダゾール骨格が縮環した構造を有しない。
R11’、R12’及びR13’は、水素原子、アルキル基又はアリール基であることが好ましい。
【0094】
一般式(1)-1B中、R011は炭化水素環である。すなわち、一般式(1)-1Bにおいて、R011は、イミダゾール骨格中の隣接する2個の炭素原子を、このイミダゾール骨格と共有して、このイミダゾール骨格と縮環している炭化水素環(環状の炭化水素基)である。
化合物(1)-1Bは、化合物(1)-1のうち、炭化水素基であるR12及びR13が相互に結合して環を形成しているものである。
R011は、単環状及び多環状のいずれでもよく、シクロヘキサン環等の飽和脂肪族炭化水素環、又はベンゼン環、ナフタレン環等の芳香族炭化水素環であることが好ましい。
【0095】
化合物(1)-1Aで好ましいものとしては、例えば、R11’、R12’及びR13’の少なくとも1種が水素原子であるものが挙げられる。
化合物(1)-1Bで好ましいものとしては、例えば、R011が芳香族炭化水素環であるものが挙げられる。
【0096】
化合物(1)-2で好ましいものとしては、例えば、下記一般式(1)-2Aで表される化合物(以下、「化合物(1)-2A」と略記することがある)、下記一般式(1)-2Bで表される化合物(以下、「化合物(1)-2B」と略記することがある)、下記一般式(1)-2Cで表される化合物(以下、「化合物(1)-2C」と略記することがある)、下記一般式(1)-2Dで表される化合物(以下、「化合物(1)-2D」と略記することがある)、及び下記一般式(1)-2Eで表される化合物(以下、「化合物(1)-2E」と略記することがある)が挙げられる。
【0097】
【0098】
一般式(1)-2A~一般式(1)-2E中、Gは前記と同じであり;R21’、R22’、R23’及びR24’は、それぞれ独立に水素原子又は炭化水素基であり;R021、R022及びR023は、それぞれ独立に含窒素環である。
【0099】
一般式(1)-2A~一般式(1)-2E中、R21’、R22’、R23’及びR24’は、それぞれ独立に水素原子又は炭化水素基である。
R21’、R22’、R23’及びR24’における前記炭化水素基は、相互に結合して環を形成することがない点以外は、上述のR11~R13における前記炭化水素基と同じである。
R21’、R22’、R23’及びR24’は、水素原子、アルキル基又はアリール基であることが好ましく、アルキル基又はアリール基であることがより好ましい。
【0100】
一般式(1)-2B中、R021は含窒素環である。なお、本明細書において「含窒素環」とは、炭素原子及び水素原子以外に窒素原子を有する環状構造を意味する。すなわち、一般式(1)-2Bにおいて、R021は、この一般式中に記載されているカルボニル基の炭素原子に結合している窒素原子と、R23’が結合している窒素原子と、これら2個の窒素原子の間に位置する1個の炭素原子を、環骨格の構成原子とする環構造(含窒素環式基)である。R021は、単環状及び多環状のいずれでもよく、通常は、脂肪族含窒素環である。
化合物(1)-2Bは、化合物(1)-2のうち、炭化水素基であるR21及びR22が相互に結合して環を形成しているものである。
【0101】
一般式(1)-2C中、R022は含窒素環である。すなわち、一般式(1)-2Cにおいて、R022は、この一般式中に記載されている3個の窒素原子のうち、R21’及びR24’がともに結合していない1個の窒素原子を、環骨格の構成原子とする環構造(含窒素環式基)である。R022は、単環状及び多環状のいずれでもよく、脂肪族含窒素環及び芳香族含窒素環のいずれでもよい。
化合物(1)-2Cは、化合物(1)-2のうち、炭化水素基であるR22及びR23が相互に結合して環を形成しているものである。
【0102】
一般式(1)-2D中、R023は含窒素環である。すなわち、一般式(1)-2Dにおいて、R023は、この一般式中に記載されている3個の窒素原子のうち、R21’が結合していない2個の窒素原子と、これら2個の窒素原子の間に位置する1個の炭素原子を、環骨格の構成原子とする環構造(含窒素環式基)である。R023は、単環状及び多環状のいずれでもよく、脂肪族含窒素環及び芳香族含窒素環のいずれでもよい。
化合物(1)-2Dは、化合物(1)-2のうち、炭化水素基であるR23及びR24が相互に結合して環を形成しているものである。
【0103】
一般式(1)-2E中、R021及びR023は含窒素環であり、R021は一般式(1)-2B中のR021と同じであり、R023は一般式(1)-2D中のR023と同じである。
化合物(1)-2Eは、化合物(1)-2のうち、炭化水素基であるR21及びR22が相互に結合して環を形成し、炭化水素基であるR23及びR24が相互に結合して環を形成しているものである。
【0104】
化合物(1)-2Aで好ましいものとしては、例えば、R21’、R22’、R23’及びR24’がすべてアルキル基又はアリール基であるものが挙げられる。
化合物(1)-2Cで好ましいものとしては、例えば、R022が脂肪族含窒素環であるものが挙げられる。
化合物(1)-2Dで好ましいものとしては、例えば、R023が脂肪族含窒素環であるものが挙げられる。
化合物(1)-2Eで好ましいものとしては、例えば、R023が脂肪族含窒素環であるもの(R021及びR023がともに脂肪族含窒素環であるもの)が挙げられる。
【0105】
化合物(1)-3で好ましいものとしては、例えば、下記一般式(1)-3Aで表される化合物(以下、「化合物(1)-3A」と略記することがある)、下記一般式(1)-3Bで表される化合物(以下、「化合物(1)-3B」と略記することがある)、下記一般式(1)-3Cで表される化合物(以下、「化合物(1)-3C」と略記することがある)、及び下記一般式(1)-3Dで表される化合物(以下、「化合物(1)-3D」と略記することがある)が挙げられる。
【0106】
【0107】
一般式(1)-3A~一般式(1)-3D中、Gは前記と同じであり;R31’、R32’及びR33’は、それぞれ独立に水素原子又は炭化水素基であり;R031、R032及びR033は、それぞれ独立に含窒素環である。
【0108】
一般式(1)-3A~一般式(1)-3D中、R31’、R32’及びR33’は、それぞれ独立に水素原子又は炭化水素基である。
R31’、R32’及びR33’における前記炭化水素基は、相互に結合して環を形成することがない点以外は、上述のR11~R13における前記炭化水素基と同じである。
R31’、R32’及びR33’は、水素原子、アルキル基又はアリール基であることが好ましい。
【0109】
一般式(1)-3B中、R031は含窒素環である。すなわち、一般式(1)-3Bにおいて、R031は、この一般式中に記載されている2個の窒素原子のうち、R31’が結合していない1個の窒素原子と、これら2個の窒素原子の間に位置する1個の炭素原子を、環骨格の構成原子とする環構造(含窒素環式基)である。R031は、単環状及び多環状のいずれでもよく、脂肪族含窒素環及び芳香族含窒素環のいずれでもよい。
化合物(1)-3Bは、化合物(1)-3のうち、炭化水素基であるR32及びR33が相互に結合して環を形成しているものである。
【0110】
一般式(1)-3C中、R032は含窒素環である。すなわち、一般式(1)-3Cにおいて、R032は、この一般式中に記載されている2個の窒素原子と、これら2個の窒素原子の間に位置する1個の炭素原子を、環骨格の構成原子とする環構造(含窒素環式基)である。R032は、単環状及び多環状のいずれでもよく、脂肪族含窒素環及び芳香族含窒素環のいずれでもよい。
化合物(1)-3Cは、化合物(1)-3のうち、炭化水素基であるR31及びR33が相互に結合して環を形成しているものである。
【0111】
一般式(1)-3D中、R033は含窒素環である。すなわち、一般式(1)-3Dにおいて、R033は、この一般式中に記載されている2個の窒素原子のうち、R33’が結合していない1個の窒素原子と、これら2個の窒素原子の間に位置する1個の炭素原子を、環骨格の構成原子とする環構造(含窒素環式基)である。R033は、単環状及び多環状のいずれでもよく、通常は、脂肪族含窒素環である。
化合物(1)-3Dは、化合物(1)-3のうち、炭化水素基であるR31及びR32が相互に結合して環を形成しているものである。
【0112】
化合物(1)-3Aで好ましいものとしては、例えば、R31’、R32’及びR33’の少なくとも1種が水素原子であるものが挙げられる。
化合物(1)-3Bで好ましいものとしては、例えば、R031が脂肪族含窒素環であるものが挙げられる。
化合物(1)-3Cで好ましいものとしては、例えば、R032が脂肪族含窒素環であるものが挙げられる。
【0113】
化合物(1)-4で好ましいものとしては、例えば、下記一般式(1)-4Aで表される化合物(以下、「化合物(1)-4A」と略記することがある)、下記一般式(1)-4Bで表される化合物(以下、「化合物(1)-4B」と略記することがある)、下記一般式(1)-4Cで表される化合物(以下、「化合物(1)-4C」と略記することがある)、下記一般式(1)-4Dで表される化合物(以下、「化合物(1)-4D」と略記することがある)、及び下記一般式(1)-4Eで表される化合物(以下、「化合物(1)-4E」と略記することがある)が挙げられる。
【0114】
【0115】
一般式(1)-4A~一般式(1)-4E中、Gは前記と同じであり;R41’、R42’、R43’及びR44’は、それぞれ独立に水素原子又は炭化水素基であり;R041、R042及びR043は、それぞれ独立に含窒素環である。
【0116】
一般式(1)-4A~一般式(1)-4E中、R41’、R42’、R43’及びR44’は、それぞれ独立に水素原子又は炭化水素基である。
R41’、R42’、R43’及びR44’における前記炭化水素基は、相互に結合して環を形成することがない点以外は、上述のR11~R13における前記炭化水素基と同じである。
一般式(1)-4A~(1)-4E中、R41’、R42’、R43’及びR44’は、水素原子、アルキル基又はアリール基であることが好ましく、アルキル基又はアリール基であることがより好ましい。
【0117】
一般式(1)-4B中、R041は含窒素環である。すなわち、一般式(1)-4Bにおいて、R041は、この一般式中に記載されている3個の窒素原子のうち、カルボニル基の炭素原子に結合している窒素原子と、R43’及びR44’がともに結合している窒素原子と、のいずれにも該当しない窒素原子を、環骨格の構成原子とする環構造(含窒素環式基)である。R041は、単環状及び多環状のいずれでもよく、脂肪族含窒素環及び芳香族含窒素環のいずれでもよい。
化合物(1)-4Bは、化合物(1)-4のうち、炭化水素基であるR41及びR42が相互に結合して環を形成しているものである。
【0118】
一般式(1)-4C中、R042は含窒素環である。すなわち、一般式(1)-4Cにおいて、R042は、この一般式中に記載されている3個の窒素原子のうち、カルボニル基の炭素原子に結合している窒素原子以外の2個の窒素原子と、これら2個の窒素原子の間に位置する1個の炭素原子を、環骨格の構成原子とする環構造(含窒素環式基)である。R042は、単環状及び多環状のいずれでもよく、通常、脂肪族含窒素環である。
化合物(1)-4Cは、化合物(1)-4のうち、炭化水素基であるR42及びR43が相互に結合して環を形成しているものである。
【0119】
一般式(1)-4D中、R043は含窒素環である。すなわち、一般式(1)-4Dにおいて、R043は、この一般式中に記載されている3個の窒素原子のうち、カルボニル基の炭素原子に結合している窒素原子と、R41’及びR42’がともに結合している窒素原子と、のいずれにも該当しない窒素原子を、環骨格の構成原子とする環構造(含窒素環式基)である。R043は、単環状及び多環状のいずれでもよく、脂肪族含窒素環及び芳香族含窒素環のいずれでもよい。
化合物(1)-4Dは、化合物(1)-4のうち、炭化水素基であるR43及びR44が相互に結合して環を形成しているものである。
【0120】
一般式(1)-4E中、R041及びR043は含窒素環であり、R041は一般式(1)-4B中のR041と同じであり、R043は一般式(1)-4D中のR043と同じである。
化合物(1)-4Eは、化合物(1)-4のうち、炭化水素基であるR41及びR42が相互に結合して環を形成し、炭化水素基であるR43及びR44が相互に結合して環を形成しているものである。
【0121】
化合物(1)-4Aで好ましいものとしては、例えば、R41’、R42’、R43’及びR44’がすべてアルキル基又はアリール基であるものが挙げられる。
化合物(1)-4Bで好ましいものとしては、例えば、R041が脂肪族含窒素環であるものが挙げられる。
化合物(1)-4Dで好ましいものとしては、例えば、R043が脂肪族含窒素環であるものが挙げられる。
化合物(1)-4Eで好ましいものとしては、例えば、R041及びR043が脂肪族含窒素環であるものが挙げられる。
【0122】
化合物(1)の中でも、更に好ましいものとしては、化合物(1)-1A、化合物(1)-2E、化合物(1)-3A及び化合物(1)-4Aが挙げられる。
化合物(1)の中でも、特に好ましいものとしては、化合物(1)-1A-1及び化合物(1)-1A-2が挙げられる。
【0123】
【0124】
一般式(1)-1A-1及び一般式(1)-1A-2中、R1、R2、R11’、R12’及びR13’は、前記と同じである。
【0125】
<化合物(1)の製造方法>
化合物(1)は、例えば、エステル構造又はアミド構造を形成する手法を用いて、製造できる。
化合物(1)の好ましい例である一般式(1)-Aで表される化合物及び一般式(1)-Bで表される化合物の製造方法としては、例えば、下記一般式(1a)で表される化合物(以下、「化合物(1a)」と略記することがある)又は下記一般式(1b)で表される化合物(以下、「化合物(1b)」と略記することがある)と、下記一般式(1c)で表される化合物(以下、「化合物(1c)」と略記することがある)とをそれぞれ反応させて、一般式(1)-Aで表される化合物又は一般式(1)-Bで表される化合物を得る工程を有する製造方法が挙げられる。
【0126】
【0127】
一般式(1a)~一般式(1c)中のR1~R3は、一般式(1)-A及び一般式(1)-B中のR1~R3と同様であり、一般式(1c)中のXは、一般式(1)中のXと同様である。
【0128】
化合物(1a)又は化合物(1b)と化合物(1c)との反応は、溶媒を用いて行うことが好ましい。
前記溶媒は、特に限定されず、化合物(1a)~化合物(1c)の種類に応じて適宜選択すればよい。好ましい前記溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)等のケトン;ジクロロメタン(DCM)などが挙げられる。
溶媒は、例えば、化合物(1a)~化合物(1c)等の溶媒以外のいずれかの成分と混合して、この成分を予め溶解又は分散させておくことで用いてもよいし、このように溶媒以外のいずれかの成分を予め溶解又は分散させておくことなく、溶媒をこれら成分と混合することで用いてもよい。
【0129】
溶媒は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
【0130】
反応時における溶媒の使用量は、特に限定されないが、例えば、化合物(1a)又は化合物(1b)及び化合物(1c)の合計使用量に対して、1質量倍~100質量倍であることが好ましく、2質量倍~60質量倍であることがより好ましい。
【0131】
化合物(1a)又は化合物(1b)と化合物(1c)との反応時の温度及び反応時間は、適宜調整すればよい。
化合物(1a)又は化合物(1b)と化合物(1c)との反応は、反応系の水分量を低減して行うことが好ましく、例えば、乾燥溶媒を用いて反応を行ったり、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等の不活性ガス雰囲気下で反応を行ったりすることが好ましい。
【0132】
化合物(1)は、例えば、核磁気共鳴(NMR)分光法、質量分析法(MS)、赤外分光法(IR)等、公知の手法で構造を確認できる。
【0133】
なお、化合物(1)の好ましい例である一般式(1)-Aで表される化合物としては、例えば、下記一般式(1d)で表される化合物(以下、「化合物(1d)」と略記することがある)と、下記一般式(1e)で表される化合物(以下、「化合物(1e)」と略記することがある)とを反応させて製造してもよい。
【0134】
【0135】
一般式(1d)及び一般式(1e)中、R1及びXは前記と同じであり;Lはハロゲン原子である。Lは、塩素原子又は臭素原子であることが好ましく、塩素原子であることがより好ましい。
化合物(1d)と化合物(1e)との反応の好ましい条件は、化合物(1a)又は化合物(1b)と化合物(1c)との反応の好ましい条件と同様である。
【0136】
<塩基変換増殖剤>
本開示の塩基変換増殖剤は、下記一般式(1)で表される化合物を含み、塩基と、エポキシ基を有するエポキシ化合物と、の作用により、新たに塩基を発生するとともに、前記新たに発生した塩基と、前記エポキシ化合物と、の作用によっても、新たに塩基を発生するものである。
【0137】
【0138】
一般式(1)中、Gは、隣接するカルボニル基とエステル構造を形成する酸素原子と、前記酸素原子と結合し、前記エステル構造に対するβ位の水素原子のpKaが27以上であるか、若しくは、前記エステル構造に対するβ位に水素原子が結合していない若しくはβ位が存在しない、置換基を有していてもよい炭化水素基と、を含む基、又は、隣接するカルボニル基とアミド構造を形成する窒素原子と、前記窒素原子と結合し、前記アミド構造に対するβ位の水素原子のpKaが27以上であるか、若しくは、前記アミド構造に対するβ位に水素原子が結合していない若しくはβ位が存在しない、置換基を有していてもよい炭化水素基と、を含む基であり、Xは下記一般式(1)-11、(1)-12、(1)-13又は(1)-14で表される基である。
【0139】
【0140】
一般式(1)-11~一般式(1)-14中、R11、R12、R13、R21、R22、R23、R24、R31、R32、R33、R41、R42、R43及びR44は、それぞれ独立に水素原子又は炭化水素基であり、R11、R12及びR13のうちの2種以上が炭化水素基である場合、これら炭化水素基は相互に結合して環を形成していてもよく、R21、R22、R23及びR24のうちの2種以上が炭化水素基である場合、これら炭化水素基は相互に結合して環を形成していてもよく、R31、R32及びR33のうちの2種以上が炭化水素基である場合、これら炭化水素基は相互に結合して環を形成していてもよく、R41、R42、R43及びR44のうちの2種以上が炭化水素基である場合、これら炭化水素基は相互に結合して環を形成していてもよく;符号*を付した結合は、Xの結合先である炭素原子に対して形成されている。
【0141】
化合物(1)は、1分子のエポキシ化合物が有しているエポキシ基の数によらず、塩基変換増殖剤として機能する。ただし、後述する硬化性組成物が硬化可能であるためには、この硬化性組成物において、1分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物が必要となる。
【0142】
前記塩基変換増殖剤は、以下のように作用すると推測される。
すなわち、光照射又は加熱により塩基を発生する塩基発生剤(本明細書においては、単に「塩基発生剤」と称することがある)が、光照射又は加熱により下記一般式(9)-1で表される塩基(以下、「塩基(9)-1」と称する)を発生させると、この塩基(9)-1は、下記一般式(9)-2で表されるエポキシ化合物(以下、「エポキシ化合物(9)-2」と称する)に作用して、下記一般式(9)-3で表される化合物を生成させる。この化合物は、さらに塩基(9)-1の作用で、水酸基(-OH)がアニオン(-O-)となり、アニオン型化合物(以下、「アニオン型化合物(9)-3」と称する)となる。このアニオン型化合物(9)-3は、塩基変換増殖剤である化合物(1)に作用し、化合物(1)を分解させて、新たに塩基として化合物(1e)を発生させるとともに、下記一般式(9)-4で表される化合物(以下、「化合物(9)-4」と称する)を生成させる。発生した塩基(化合物(1e))は、さらにエポキシ化合物(9)-2に作用して、下記一般式(9)-5で表されるアニオン型化合物(以下、「アニオン型化合物(9)-5」と称する)を生成させる。このアニオン型化合物(9)-5の一部は、さらにエポキシ化合物(9)-2に作用して、最終的に硬化物となり、さらに一部は新たに化合物(1)に作用して、この塩基変換増殖剤からさらに新たに塩基を発生させる。
このように、本開示の塩基変換増殖剤は、塩基の作用で別途塩基を発生させる塩基変換作用を有するとともに、自己増殖的に塩基を発生させる塩基増殖作用を有する。
なお、下式中、R91、R92及びR93は、それぞれ独立に有機基である。
【0143】
【0144】
一方、先に挙げた「J.F.Cameron,J.M.J.Frechet,J.Am.Chem.Soc.1991,113,4303.」(非特許文献1)、「M.Shirai,M.Tsunooka,Prog.Polym.Sci.1996,21,1.」(非特許文献2)、「K.Arimitsu,R.Endo,Chem.Mater.2013,25,4461-4463.」(非特許文献3)等の文献で開示されている、従来の光塩基発生剤は、露光による分解で塩基だけでなく、二酸化炭素(CO2)も発生してしまう。
これに対して、本開示の塩基変換増殖剤は、上記のように、アニオン型化合物の作用によって分解した際に、塩基を発生する一方で、二酸化炭素を発生させることがなく、塩基の発生による残基は、硬化物の内部に取り込まれる。すなわち、本開示の塩基変換増殖剤は、その作用を発現する上で、二酸化炭素やその他の不要な分解物を発生しないという利点を有する。
【0145】
<硬化性組成物>
本開示の硬化性組成物は、1分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物と、上記一般式(1)で表される化合物と、を含むものである。また、本開示の硬化性組成物は、光照射又は加熱により塩基を発生する塩基発生剤を更に含むことが好ましい。
【0146】
[エポキシ化合物]
本開示の硬化性組成物は、1分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物を含む。エポキシ化合物は特に限定されず、目的に応じて任意に選択できる。
エポキシ化合物は、例えば、モノマー、オリゴマー及びポリマーのいずれであってもよいし、低分子化合物及び高分子化合物のいずれであってもよい。
【0147】
硬化性組成物に含まれるエポキシ化合物は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に設定できる。
【0148】
[一般式(1)で表される化合物]
本開示の硬化性組成物は、前述の一般式(1)で表される化合物を含む。硬化性組成物に含まれる一般式(1)で表される化合物は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に設定できる。
【0149】
また、一般式(1)で表される化合物は、前述の一般式(1)-Aで表される化合物及び一般式(1)-Bで表される化合物の少なくとも一方を含むことが好ましく、前述の一般式(1)-Aで表される化合物を含むことがより好ましい。
硬化性組成物が前述の一般式(1)-Aで表される化合物を含むことにより、当該化合物及びエポキシ化合物を含む硬化性組成物の熱安定性に優れる。そのため、光照射により塩基を発生する塩基発生剤を更に併用した場合に、光を照射していない場合に硬化性組成物が反応することを抑制でき、硬化性組成物における優れた保存安定性及び硬化性を両立することができる。更に、硬化性組成物における光を照射していない領域は加熱された場合であっても、硬化性組成物の反応が抑制されるため、光照射されていない領域の硬化を抑制して光照射した領域を硬化させることができ、パターン形成性に優れている。
【0150】
硬化性組成物において、一般式(1)で表される化合物の含有量は、エポキシ化合物の含有量に対して、3質量%~15質量%であることが好ましく、4質量%~12質量%であることがより好ましく、5質量%~10質量%であることが更に好ましい。一般式(1)で表される化合物の含有量が3質量%以上であることにより、後述の塩基発生剤との併用により塩基増殖作用がより顕著に得られる。また、一般式(1)で表される化合物の含有量が15質量%以下であることにより、この化合物の過剰使用が抑制される。
【0151】
[塩基発生剤]
本開示の硬化性組成物は、光照射又は加熱により塩基を発生する塩基発生剤を更に含むことが好ましい。これにより、光照射又は加熱により塩基発生剤から発生した塩基と、エポキシ化合物と、の作用により、一般式(1)で表される化合物は、新たに塩基を発生するとともに、前記新たに発生した塩基と、エポキシ化合物と、の作用によっても、新たに塩基を発生する。すなわち、本開示の硬化性組成物では、一般式(1)で表される化合物は、塩基発生剤から発生した塩基の作用で別途塩基を発生させる塩基変換作用を有するとともに、自己増殖的に塩基を発生させる塩基増殖作用を有する。
したがって、本開示の硬化性組成物では、組成物層を厚く形成した場合であっても、硬化不良が抑制され、硬化性に優れる。これは、組成物層における表面及びその近傍の浅い領域が光照射又は加熱されれば、塩基増殖作用によって、光照射又は加熱されていない深部にまで連鎖的に塩基が発生するため、組成物層が厚く形成されていても、深部での硬化が容易なためである。
【0152】
塩基発生剤は、光照射又は加熱により塩基を発生するものであれば特に限定されず、公知の化合物であってもよい。
【0153】
光照射により塩基を発生させる塩基発生剤としては、例えば、波長1nm~400nmの光の照射(露光)により、塩基を発生させるものが挙げられる。
例えば、先の非特許文献1~3等の文献で開示されている、露光により第1級アミン又は第2級アミンを発生させる非イオン型の光塩基発生剤、露光によりグアニジン型の強塩基を発生させる非イオン型の光塩基発生剤等が挙げられる。
【0154】
加熱により塩基を発生させる塩基発生剤としては、60℃~160℃の加熱により、塩基を発生させるものが挙げられる。
加熱により塩基を発生させる塩基発生剤としては、例えば以下の化学式における反応前の化合物が挙げられる。
【0155】
【0156】
硬化性組成物に含まれる塩基発生剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に設定できる。
【0157】
硬化性組成物において、塩基発生剤の含有量は、エポキシ化合物の含有量に対して、3質量%~35質量%であることが好ましく、5質量%~30質量%であることがより好ましく、10質量%~25質量%であることが更に好ましい。塩基発生剤の含有量が3質量%以上であることにより、硬化性組成物の硬化がより容易に進行する。また、塩基発生剤の含有量が35質量%以下であることにより、塩基発生剤の過剰使用が抑制される。
【0158】
[他の成分]
本開示の硬化性組成物は、エポキシ化合物、一般式(1)で表される化合物及び塩基発生剤以外に、他の成分を更に含んでいてもよい。
他の成分は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されず、目的に応じて任意に選択できる。
硬化性組成物に含まれる他の成分は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に設定できる。
他の成分としては、例えば、1分子中にエポキシ基を1個のみ有するエポキシ化合物、増感剤、充填材、顔料、溶媒等が挙げられる。なお、本開示において、単なる「エポキシ化合物」との記載は、特に断りのない限り、先に説明した「1分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物」を意味するものとする。
【0159】
(1分子中にエポキシ基を1個のみ有するエポキシ化合物)
硬化性組成物は、1分子中にエポキシ基を1個のみ有するエポキシ化合物を含んでもよい。これにより、硬化性組成物の粘度等の特性を調節し得る。
1分子中にエポキシ基を1個のみ有するエポキシ化合物は、例えば、モノマー、オリゴマー及びポリマーのいずれであってもよいし、低分子化合物及び高分子化合物のいずれであってもよい。
硬化性組成物に含まれる、1分子中にエポキシ基を1個のみ有するエポキシ化合物は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に設定できる。
硬化性組成物の、1分子中にエポキシ基を1個のみ有するエポキシ化合物の含有量は、特に限定されず、例えば、1分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物の含有量等に応じて、適宜調節すればよい。
【0160】
(増感剤)
硬化性組成物は、光照射により塩基を発生させる塩基発生剤とともに増感剤(光増感剤)を含んでいてもよい。これにより、より広い波長範囲の光の照射によって、硬化しやすくなる。例えば、光照射により塩基を発生させる塩基発生剤としては、波長1nm~400nm等の紫外線(紫外光)の照射によって、塩基を発生させるものが汎用される。そこで、このような塩基発生剤を用いた場合、増感剤を併用することで、紫外線よりも長波長である可視光の照射によっても、硬化性組成物は硬化しやすくなる。この場合、可視光等を吸収して励起された増感剤が、光照射により塩基を発生させる塩基発生剤に作用することで、増感剤を用いなかった場合と同様に、この塩基発生剤から塩基が発生する。
増感剤は、例えば、ベンゾフェノン等、公知のものでよく、特に限定されない。
硬化性組成物に含まれる増感剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に設定できる。ただし、通常は、1種で十分である。
硬化性組成物の増感剤の含有量は、特に限定されず、適宜調節すればよい。
【0161】
(充填材)
硬化性組成物は、充填材(フィラー)を含んでいてもよい。これにより、硬化性組成物の粘度、硬化物の強度等の特性を調節し得る。
充填材としては、公知のものでよく、特に限定されない。例えば、充填材は、繊維状、板状及び粒状のいずれでもよく、その形状、大きさ及び材質は、いずれも目的に応じて適宜選択すればよい。
硬化性組成物に含まれる充填材は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に設定できる。
硬化性組成物の充填材の含有量は、特に限定されず、目的に応じて適宜調節すればよい。
【0162】
(顔料)
硬化性組成物は、顔料を含んでいてもよい。これにより、硬化物の光透過性等を調節し得る。
硬化性組成物に含まれる顔料は、公知のものでよく、例えば、白色、青色、赤色、黄色、緑色等のいずれの顔料でもよく、特に限定されない。
硬化性組成物に含まれる顔料は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に設定できる。
硬化性組成物の顔料の含有量は、特に限定されず、目的に応じて適宜調節すればよい。
【0163】
(溶媒)
硬化性組成物は、溶媒を含んでいてもよい。これにより、硬化性組成物の取り扱い性が向上し得る。
溶媒は、特に限定されず、エポキシ化合物、一般式(1)で表される化合物及び塩基発生剤の溶解性、安定性等を考慮して、適宜選択すればよい。
溶媒としては、具体的には、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素;トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン等の芳香族炭化水素;ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素;酢酸エチル、酢酸ブチル等のカルボン酸エステル;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、1,2-ジメトキシエタン(ジメチルセロソルブ)等のエーテル;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、シクロヘキサノン、シクロペンタノン等のケトン;アセトニトリル等のニトリル;N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミドなどが挙げられる。
硬化性組成物に含まれる溶媒は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に設定できる。
【0164】
硬化性組成物における溶媒の含有量は、硬化性組成物の全量に対して20質量%~80質量%であることが好ましく、30質量%~75質量%であることがより好ましく、40質量%~70質量%であることが更に好ましい。溶媒の含有量がこのような範囲であることで、硬化性組成物の取り扱い性がより向上し得る。
【0165】
硬化性組成物は、エポキシ化合物、一般式(1)で表される化合物、塩基発生剤、及び必要に応じて他の成分を配合することで得られる。各成分の配合後は、得られたものをそのまま硬化性組成物としてもよいし、必要に応じて引き続き公知の精製操作等を行って得られたものを硬化性組成物としてもよい。
【0166】
各成分の配合時には、すべての成分を添加してからこれらを混合してもよいし、一部の成分を順次添加しながら混合してもよく、すべての成分を順次添加しながら混合してもよい。
混合方法は特に限定されず、撹拌子又は撹拌翼等を回転させて混合する方法;ミキサー等を用いて混合する方法;超音波を加えて混合する方法等、公知の方法から適宜選択すればよい。
【0167】
配合時の温度は、各配合成分が劣化しない限り特に限定されず、例えば、3℃~30℃とすることができる。
配合時間も、各配合成分が劣化しない限り特に限定されず、例えば、0.5時間~1時間とすることができる。
ただし、これら配合条件は、一例に過ぎない。
【0168】
<硬化物>
本開示の硬化物は、本開示の硬化性組成物を反応させて得られるものである。より具体的には、本開示の硬化性組成物に光を照射する、あるいは、本開示の硬化性組成物を加熱することにより、硬化物が得られる。また、必要に応じて光照射と加熱を組み合わせてもよい。
光を照射して硬化物を製造する場合、硬化性組成物は光照射により塩基を発生する塩基発生剤を含んでいることが好ましい。一方、加熱により硬化物を製造する場合、硬化性組成物は加熱により塩基を発生する塩基発生剤を含んでいることが好ましい。
硬化物の形状は、例えば、膜状、線状等、目的に応じて任意に選択できる。
【0169】
硬化性組成物は、例えば、公知の手法で目的物に付着させ、必要に応じてプリベークして(乾燥させて)から光照射又は加熱により硬化させればよい。
例えば、膜状の硬化物(硬化膜)を製造する場合には、エアーナイフコーター、ブレードコーター、バーコーター、グラビアコーター、ロールコーター、ロールナイフコーター、カーテンコーター、ダイコーター、ナイフコーター、スクリーンコーター、マイヤーバーコーター、キスコーター等の各種コーター、又はアプリケーター等の塗工手段を利用して、硬化性組成物を目的物に塗工するか、あるいは目的物を硬化性組成物に浸漬することにより、目的物に硬化性組成物を付着させればよい。
例えば、膜状又は線状の硬化物(硬化膜)を製造する場合には、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット式印刷法、ディスペンサー式印刷法、ジェットディスペンサー式印刷法、グラビア印刷法、グラビアオフセット印刷法、パッド印刷法等の印刷手段を利用することにより、目的物に硬化性組成物を付着させればよい。
プリベークは、例えば、50℃~80℃、1分~10分の条件で行うことができるが、条件はこれに限定されない。
【0170】
硬化性組成物に光を照射して硬化物を製造する場合、硬化性組成物の光照射時における光の波長は、例えば、200nm~500nmであることが好ましい。
また、光照射時における光の照度は、例えば、30mW/cm2~100mW/cm2であることが好ましく、光照射量は、例えば、800mJ/cm2~8000mJ/cm2であることが好ましい。
【0171】
硬化性組成物の光照射により得られた硬化物は、更にポストベーク(露光後加熱処理)が行われてもよい。
ポストベークは、例えば、100℃~160℃、0.5時間~2時間の条件で行うことができるが、条件はこれに限定されない。
【0172】
硬化性組成物を加熱して硬化物を製造する場合、硬化性組成物の加熱温度は、例えば、80℃~160℃であることが好ましい。
また、加熱時における加熱時間は、例えば、0.5時間~2時間であることが好ましい。
【0173】
硬化物の厚さは、目的に応じて適宜設定すればよく、特に限定されない。前述のように、本開示の硬化性組成物は、組成物層が厚くても、組成物層の表面から離れた深部での硬化性が高いという優れた効果を奏するため、硬化物の厚さを大きくすることも可能である。硬化物の厚さとしては、例えば、1μm~500μmであってもよく、5μm~200μmであってもよく、10μm~100μmであってもよい。このような厚さの硬化物を形成するためには、組成物層の厚さも同様の範囲とすればよい。
【0174】
硬化物は、例えば、鉛筆硬度が5B以上とすることが可能であり、例えば、5B、4B、3B、2B、B、HB、F、H、2H、3H等のいずれかの鉛筆硬度の硬化物を得ることができる。ここで、「鉛筆硬度」とは、JIS K5600-5-4:1999に準拠して測定したものを意味する。
【実施例】
【0175】
以下に実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって制限されるものではない。
【0176】
<化合物(1)-A-101の製造>
[実施例1]
以下に示すように、1-ブタノールとカルボニルジイミダゾールとを反応させて、化合物(1)-A-101を製造した。
すなわち、カルボニルジイミダゾール(3.4g)を乾燥テトラヒドロフラン(THF)(10mL)に溶解させた。また、別途、1-ブタノール(1.48g)を乾燥テトラヒドロフラン(THF)(10mL)及び水酸化カリウム(3滴)と混合した。
次いで、上記で得られたカルボニルジイミダゾールのTHF溶液を加熱しながら、ここへ、上記で得られた1-ブタノールのTHF溶液を滴下し、滴下終了後、得られた混合液を60℃で4時間撹拌することで、反応を行った。
次いで、得られた反応液に塩化メチレンを添加し、さらに飽和塩化ナトリウム水溶液を添加して、室温で攪拌した後、水相を除去することで、反応液を洗浄した。さらに、同様の飽和塩化ナトリウム水溶液による反応液の洗浄を2回繰り返して行った後、有機層を濃縮することで、目的物である化合物(1)-A-101を無色液体として得た(収量2.1g、収率63%)
得られた化合物(1)-A-101の1H-NMRによる分析結果を表1に示す。
【0177】
【0178】
【0179】
化合物(1)-A-101の熱分解温度を以下の条件にて測定したところ、165℃であった。なお測定試料の質量変化が見られた温度前後のDTA曲線の接線の交点を熱分解温度とした。
装置:TG-DTA(TG-DTA2000s及びMTC1000s、(株)マックサイエンス製)
雰囲気:窒素雰囲気
昇温速度:10℃/min
【0180】
<化合物(1)-B-101の製造>
[実施例2]
以下に示すように、1-アミノブタンとカルボニルジイミダゾールとを反応させて、化合物(1)-B-101を製造した。
すなわち、カルボニルジイミダゾール(3.6g)を乾燥テトラヒドロフラン(THF)(10mL)に溶解させた。また、別途、1-アミノブタン(1.4g)を乾燥テトラヒドロフラン(THF)(10mL)と混合した。
次いで、上記で得られたカルボニルジイミダゾールのTHF溶液へ、上記で得られた1-アミノブタンのTHF溶液を滴下し、滴下終了後、得られた混合液を室温で0.5時間撹拌することで、反応を行った。
次いで、得られた反応液に塩化メチレンを添加し、さらに飽和塩化ナトリウム水溶液を添加して、室温で攪拌した後、水相を除去することで、反応液を洗浄した。さらに、同様の飽和塩化ナトリウム水溶液による反応液の洗浄を2回繰り返して行った後、有機層を濃縮することで、目的物である化合物(1)-B-101を無色液体として得た(収量2.5g、収率78%)
得られた化合物(1)-B-101の
1H-NMRによる分析結果を表2に示す。
【化25】
【0181】
【0182】
実施例1と同様にして化合物(1)-B-101の熱分解温度を測定したところ、134℃であった。
【0183】
<化合物(1)-A-102の製造>
[実施例3]
以下に示すように、ブトキシカルボニルクロリドと2-エチル-4-メチルイミダゾールとを反応させて、化合物(1)-A-102を製造した。
すなわち、2-エチル-4-メチルイミダゾール(1.13g)を乾燥テトラヒドロフラン(THF)(20mL)に溶解させた。また、別途、ブトキシカルボニルクロリド(0.7g)を乾燥テトラヒドロフラン(THF)(10mL)と混合した。
次いで、上記で得られた2-エチル-4-メチルイミダゾールのTHF溶液へ、上記で得られたブトキシカルボニルクロリドのTHF溶液を滴下し、滴下終了後、得られた混合液を0℃で3時間撹拌することで、反応を行った。
次いで、得られた反応液に塩化メチレンを添加し、さらに飽和塩化ナトリウム水溶液を添加して、室温で攪拌した後、水相を除去することで、反応液を洗浄した。さらに、同様の飽和塩化ナトリウム水溶液による反応液の洗浄を2回繰り返して行った後、有機層を濃縮することで、目的物である化合物(1)-A-102を黄色液体として得た(収量0.82g、収率78%)
得られた化合物(1)-A-102の1H-NMRによる分析結果を表3に示す。
【0184】
【0185】
<化合物(1)-A-103の製造>
[実施例4]
以下に示すように、ブトキシカルボニルクロリドと2-メチルイミダゾールとを反応させて、化合物(1)-A-103を製造した。
すなわち、2-メチルイミダゾール(0.82g)を乾燥テトラヒドロフラン(THF)(20mL)に溶解させた。また、別途、ブトキシカルボニルクロリド(0.68g)を乾燥テトラヒドロフラン(THF)(10mL)と混合した。
次いで、上記で得られた2-メチルイミダゾールのTHF溶液へ、上記で得られたブトキシカルボニルクロリドのTHF溶液を滴下し、滴下終了後、得られた混合液を0℃で3時間撹拌することで、反応を行った。
次いで、得られた反応液に塩化メチレンを添加し、さらに飽和塩化ナトリウム水溶液を添加して、室温で攪拌した後、水相を除去することで、反応液を洗浄した。さらに、同様の飽和塩化ナトリウム水溶液による反応液の洗浄を2回繰り返して行った後、有機層を濃縮することで、目的物である化合物(1)-A-103を無色液体として得た(収量0.667g、収率74%)
得られた化合物(1)-A-103の1H-NMRによる分析結果を表4に示す。
【0186】
【0187】
【0188】
<化合物(1)-A-104の製造>
[実施例5]
以下に示すように、ブトキシカルボニルクロリドと1,1,3,3-テトラメチルグアニジンとを反応させて、化合物(1)-A-104を製造した。
すなわち、1,1,3,3-テトラメチルグアニジン(1.13g)を乾燥テトラヒドロフラン(THF)(20mL)に溶解させた。また、別途、ブトキシカルボニルクロリド(0.7g)を乾燥テトラヒドロフラン(THF)(10mL)と混合した。
次いで、上記で得られた1,1,3,3-テトラメチルグアニジンのTHF溶液へ、上記で得られたブトキシカルボニルクロリドのTHF溶液を滴下し、滴下終了後、得られた混合液を0℃で3時間撹拌することで、反応を行った。
次いで、得られた反応液に塩化メチレンを添加し、さらに飽和塩化ナトリウム水溶液を添加して、室温で攪拌した後、水相を除去することで、反応液を洗浄した。さらに、同様の飽和塩化ナトリウム水溶液による反応液の洗浄を2回繰り返して行った後、有機層を濃縮することで、目的物である化合物(1)-A-104を無色液体として得た(収量1.118g、収率94%)
得られた化合物(1)-A-104の1H-NMRによる分析結果を表5に示す。
【0189】
【0190】
【0191】
<参考化合物(1)の製造>
[参考例1]
以下に示すように、4-メトキシベンゾイルクロリドとイミダゾールとを反応させて、参考化合物(1)を製造した。
すなわち、イミダゾール(1.4g、20mmol)を乾燥テトラヒドロフラン(THF)(20mL)に溶解させた。また、別途、4-メトキシベンゾイルクロリド(1.7g、10mmol)を乾燥テトラヒドロフラン(THF)(10mL)に溶解させた。
次いで、上記で得られたイミダゾールのTHF溶液を氷浴で冷却しながら、ここへ、上記で得られた4-メトキシベンゾイルクロリドのTHF溶液を滴下し、滴下終了後、得られた混合液を室温で2時間撹拌することで、反応を行った。
次いで、得られた反応液に塩化メチレンを添加し、さらに飽和塩化ナトリウム水溶液を添加して、室温で攪拌した後、水相を除去することで、反応液を洗浄した。さらに、同様の飽和塩化ナトリウム水溶液による反応液の洗浄を4回繰り返して行った後、有機層を濃縮することで、目的物である参考化合物(1)を淡黄色固体として得た(収量1.0g、収率50%)
得られた参考化合物(1)の1H-NMRによる分析結果を表6に示す。
【0192】
【0193】
【0194】
実施例1と同様にして参考化合物(1)の熱分解温度を測定したところ、247℃であった。
【0195】
<硬化性組成物の製造>
[実施例6]
エポキシ化合物であるビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル株式会社、jER828、0.20g)、前述の化合物(1)-A-101(エポキシ化合物に対して17mol%)及びクロロホルム(0.60g)を配合し、25℃で1分撹拌することで、硬化性組成物を得た。
【0196】
(硬化性組成物の硬化)
アプリケーターを用いて、上記で得られた硬化性組成物を、シリコン基板上に塗工した。次いで、塗膜(組成物層)を60℃で3分加熱(プリベーク)した後、140℃で60分加熱した。加熱後の塗膜を用いて、FT-IR(フーリエ変換赤外分光法)により、FT-IRスペクトルを測定した。結果を
図1に示す。
図1に示すように、加熱により910cm
-1付近のエポキシ基に起因するピークの減少が確認された。また、加熱によるエポキシ基に起因するピーク面積比率の変化を
図2に示す。
図2に示すように、60分加熱後の塗膜では、加熱前に対するピーク面積比率が0.6程度となっており、加熱により約40%のエポキシ基が反応し、硬化物が形成されていることが推測される。
【0197】
<硬化性組成物の製造>
[実施例7]
エポキシ化合物であるビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル株式会社、jER828、0.20g)、前述の化合物(1)-B-101(エポキシ化合物に対して17mol%)及びクロロホルム(0.60g)を配合し、25℃で1分撹拌することで、硬化性組成物を得た。
実施例6と同様にして塗膜(組成物層)を形成し、かつ加熱した。加熱後の塗膜を用いて、FT-IRスペクトルを測定した。
図2に示すように、60分加熱後の塗膜では、加熱前に対するピーク面積比率がほぼ0となっており、加熱により約99%以上のエポキシ基が反応し、硬化物が形成されていることが推測される。
以上により、実施例6の硬化性組成物は、実施例7の硬化性組成物よりも熱安定性に優れることが推測される。
【0198】
<硬化性組成物の製造>
[参考例2]
エポキシ化合物であるビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル株式会社、jER828、0.20g)、前述の参考化合物(1)(エポキシ化合物に対して17mol%)及びクロロホルム(0.60g)を配合し、25℃で1分撹拌することで、硬化性組成物を得た。
実施例6と同様にして塗膜(組成物層)を形成し、かつ加熱した。加熱後の塗膜を用いて、FT-IRスペクトルを測定した。
図2に示すように、60分加熱後の塗膜では、加熱前に対するピーク面積比率がほぼ0となっており、加熱により約99%以上のエポキシ基が反応し、硬化物が形成されていることが推測される。
以上により、実施例6の硬化性組成物は、参考例2の硬化性組成物よりも熱安定性に優れることが推測される。
【0199】
<硬化性組成物の製造>
[参考例3]
エポキシ化合物であるビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル株式会社、jER828、0.20g)、イミダゾール(エポキシ化合物に対して17mol%)及びクロロホルム(0.60g)を配合し、25℃で1分撹拌することで、硬化性組成物を得た。
実施例6と同様にして塗膜(組成物層)を形成し、かつ加熱した。加熱後の塗膜を用いて、FT-IRスペクトルを測定した。
図2に示すように、60分加熱後の塗膜では、加熱前に対するピーク面積比率がほぼ0となっており、加熱により約99%以上のエポキシ基が反応し、硬化物が形成されていることが推測される。
以上により、実施例6の硬化性組成物は、参考例3の硬化性組成物よりも熱安定性に優れることが推測される。
【0200】
<硬化性組成物の製造>
[実施例8]
エポキシ化合物であるビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル株式会社、jER828、0.20g)、前述の化合物(1)-A-101(0.01g、エポキシ化合物に対して5質量%)及びクロロホルム(0.60g)を配合し、25℃で1分撹拌することで、硬化性組成物を得た。
【0201】
(硬化性組成物の硬化)
アプリケーターを用いて、上記で得られた硬化性組成物を、シリコン基板上に塗工した。次いで、塗膜(組成物層)を60℃で3分加熱(プリベーク)した後、LEDランプを用いて、照度50mW/cm
2、露光量5000mJ/cm
2の条件で波長365nmの紫外線を塗膜に照射した。
次いで、光照射後の塗膜を140℃で60分加熱することで、厚さが15μmの硬化物を得た。加熱後の硬化物を用いて、FT-IR(フーリエ変換赤外分光法)により、FT-IRスペクトルを測定した。
FT-IRスペクトルの測定結果から、加熱によるエポキシ基に起因するピーク面積比率の変化を求めた。結果を
図4に示す。
図4に示すように、60分加熱後の塗膜では、加熱前に対するピーク面積比率が0.6程度となっており、加熱により約40%のエポキシ基が反応し、硬化物が形成されていることが推測される。
【0202】
<硬化性組成物の製造>
[参考例4]
エポキシ化合物であるビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル株式会社、jER828、0.20g)、下記式(8)-101で表される塩基発生剤(0.01g、エポキシ化合物の質量に対して5質量%)及びクロロホルム(0.60g)を配合し、25℃で1分撹拌することで、硬化性組成物を得た。
【0203】
【0204】
(硬化性組成物の硬化)
実施例8と同様にして塗膜(組成物層)を形成し、塗膜に紫外線を照射した後に塗膜を加熱した。加熱後の塗膜を用いて、FT-IRスペクトルを測定した。
FT-IRスペクトルの測定結果から、加熱によるエポキシ基に起因するピーク面積比率の変化を求めた。結果を
図4に示す。
図4に示すように、60分加熱後の塗膜では、加熱前に対するピーク面積比率が0.81程度となっており、加熱により約19%のエポキシ基が反応し、硬化物が形成されていることが推測される。
【0205】
<硬化性組成物の製造>
[実施例9]
エポキシ化合物であるビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル株式会社、jER828、0.20g)、前述の化合物(1)-A-101(0.01g、エポキシ化合物に対して5質量%)、前述の式(8)-101で表される塩基発生剤(0.01g、エポキシ化合物の質量に対して5質量%)及びクロロホルム(0.60g)を配合し、25℃で1分撹拌することで、硬化性組成物を得た。
【0206】
(硬化性組成物の硬化)
実施例8と同様にして塗膜(組成物層)を形成し、塗膜に紫外線を照射した後に塗膜を加熱した。加熱後の塗膜を用いて、FT-IRスペクトルを測定した。結果を
図3に示す。
FT-IRスペクトルの測定結果から、加熱によるエポキシ基に起因するピーク面積比率の変化を求めた。結果を
図4に示す。
図3に示すように、加熱により、910cm
-1付近のエポキシ基に起因するピークの減少及び1750cm
-1付近のウレタン結合に起因するピークの減少、並びに1800cm
-1付近の炭酸エステル構造に起因するピークの増加が確認された。すなわち、加熱によりエポキシ化合物の硬化反応が進み、かつウレタン結合を有する化合物(1)-A-101が分解されて新たな塩基が生成されるとともに炭酸エステル構造が形成されていることが推測される。
図4に示すように、60分加熱後の塗膜では、加熱前に対するピーク面積比率が0.08程度となっており、加熱により約92%のエポキシ基が反応し、硬化物が形成されていることが推測される。
実施例8及び参考例4と実施例9との比較により、化合物(1)-A-101及び式(8)-101で表される塩基発生剤を併用した硬化性組成物は、硬化性により優れることが分かる。
【0207】
<硬化性組成物の製造>
[実施例10]
エポキシ化合物であるビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル株式会社、jER828、0.20g)、前述の化合物(1)-A-101(0.01g、エポキシ化合物に対して5質量%)、前述の式(8)-101で表される塩基発生剤(0.04g、エポキシ化合物の質量に対して20質量%)及びクロロホルム(0.60g)を配合し、25℃で1分撹拌することで、硬化性組成物を得た。
【0208】
(硬化性組成物の硬化)
アプリケーターを用いて、上記で得られた硬化性組成物を、シリコン基板上に塗工した。次いで、塗膜(組成物層)を60℃で3分加熱(プリベーク)した後、LEDランプを用いて、照度50mW/cm
2、露光量5000mJ/cm
2の条件で波長365nmの紫外線を塗膜に照射した。
次いで、光照射後の塗膜を140℃で60分加熱することで、厚さが15μmの硬化物を得た。加熱後の硬化物を用いて、FT-IR(フーリエ変換赤外分光法)により、FT-IRスペクトルを測定した。
FT-IRスペクトルの測定結果から、加熱によるエポキシ基に起因するピーク面積比率の変化を求めた。結果を
図5に示す。
図5に示すように、60分加熱後の塗膜では、加熱前に対するピーク面積比率が0.14程度となっており、加熱により約86%のエポキシ基が反応し、硬化物が形成されていることが推測される。
【0209】
<硬化性組成物の製造>
[実施例11]
エポキシ化合物であるビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル株式会社、jER828、0.20g)、前述の化合物(1)-A-102(0.01g、エポキシ化合物に対して5質量%)、前述の式(8)-101で表される塩基発生剤(0.04g、エポキシ化合物の質量に対して20質量%)及びクロロホルム(0.60g)を配合し、25℃で1分撹拌することで、硬化性組成物を得た。
【0210】
(硬化性組成物の硬化)
実施例10と同様にして塗膜(組成物層)を形成し、塗膜に紫外線を照射した後に塗膜を加熱した。加熱後の塗膜を用いて、FT-IRスペクトルを測定した。
FT-IRスペクトルの測定結果から、加熱によるエポキシ基に起因するピーク面積比率の変化を求めた。結果を
図5に示す。
図5に示すように、60分加熱後の塗膜では、加熱前に対するピーク面積比率がほぼ0%となっており、加熱により約100%のエポキシ基が反応し、硬化物が形成されていることが推測される。
【0211】
<硬化性組成物の製造>
[実施例12]
エポキシ化合物であるビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル株式会社、jER828、0.20g)、前述の化合物(1)-A-103(0.01g、エポキシ化合物に対して5質量%)、前述の式(8)-101で表される塩基発生剤(0.04g、エポキシ化合物の質量に対して20質量%)及びクロロホルム(0.60g)を配合し、25℃で1分撹拌することで、硬化性組成物を得た。
【0212】
(硬化性組成物の硬化)
実施例10と同様にして塗膜(組成物層)を形成し、塗膜に紫外線を照射した後に塗膜を加熱した。加熱後の塗膜を用いて、FT-IRスペクトルを測定した。
FT-IRスペクトルの測定結果から、加熱によるエポキシ基に起因するピーク面積比率の変化を求めた。結果を
図5に示す。
図5に示すように、60分加熱後の塗膜では、加熱前に対するピーク面積比率が8%程度となっており、加熱により約92%のエポキシ基が反応し、硬化物が形成されていることが推測される。
【0213】
2018年5月7日に出願された日本国特許出願2018-089281の開示はその全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。