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  • 特許-加工装置 図1
  • 特許-加工装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-02
(45)【発行日】2023-10-11
(54)【発明の名称】加工装置
(51)【国際特許分類】
   B23Q 1/72 20060101AFI20231003BHJP
   B23Q 5/22 20060101ALI20231003BHJP
   B23Q 17/00 20060101ALI20231003BHJP
   B24B 49/10 20060101ALI20231003BHJP
   B24B 7/04 20060101ALI20231003BHJP
   B24B 47/04 20060101ALN20231003BHJP
【FI】
B23Q1/72 A
B23Q5/22 520D
B23Q17/00 A
B24B49/10
B24B7/04 A
B24B47/04
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020021390
(22)【出願日】2020-02-12
(65)【公開番号】P2021126715
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】望月 陽平
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-147231(JP,A)
【文献】特開2001-047342(JP,A)
【文献】特開2017-164837(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 1/72,5/22,17/00;
B24B 7/04,49/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持面によって被加工物を保持する保持手段と、該保持手段に保持された被加工物を加工する加工具を装着した加工手段と、該加工手段を保持面に垂直な上下方向に移動させる移動手段と、エアシリンダにエアを供給し該加工手段を上昇させるカウンタバランスとを備える加工装置であって、
該移動手段は、該上下方向に延在するボールネジと、
該ボールネジを回転させるサーボモータと、
該加工手段を所定の高さ位置で停止させ続けるために該サーボモータに供給する電力の少なくとも電流値を制御する制御手段と、を備え、
該加工手段の位置を認識する位置認識部と、
該制御手段によって該加工手段を所定の高さ位置に位置させ続けるために、該カウンタバランスにより該加工手段を上昇させる力に対抗して該加工手段を下降させようとして該サーボモータに供給される電流値が、予め設定した閾値を下回ったら該カウンタバランスが故障していると判断する判断部と、を備える加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
研削装置は、特許文献1、2に開示のように、研削砥石を備えた研削手段を用いて保持面に保持された被加工物を所定の厚みに研削している。研削手段は、研削砥石を基台に環状に配置した研削ホイールをマウントに装着して研削ホイールの中心を軸に回転させている。そして、研削手段を保持面に対して垂直な方向に移動させて、研削砥石を被加工物に押し付けながら研削している。
研削手段を保持面に垂直な方向に移動させるために、研削手段を移動させる移動手段は、保持面に垂直な方向に延在するボールネジと、ボールネジを回転させるサーボモータとを備え、ボールネジを回転させてボールネジに螺合するナットを連結した研削手段を移動させている。そのため、ボールネジには研削手段の重さがかかる。
【0003】
ボールネジのねじ山の下面とナットのねじ山の上面とを接触させて、がたつきが無い状態で研削手段を上下移動させたい。そのため、特許文献3に開示のように、研削手段を上方向に持ち上げておくためのバランスシリンダ(カウンタバランス)を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-194471号公報
【文献】特開2006-303161号公報
【文献】特開2005-001047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
被加工物を所定の厚みに研削した後、研削砥石を被加工物から離間させる。そのため、研削手段を下降させる際に回転させていた回転方向とは逆方向にボールネジを回転させ研削手段を上昇させる。ボールネジを逆回転させた際に、ボールネジのねじ山の下面とナットのねじ山の上面との間に隙間ができ、被加工物から研削砥石を離間させるタイミングが遅れて、所定の厚みより薄く研削して被加工物を所定の厚みにすることができなくなるという問題がある。
従って、研削装置のようにバランスシリンダを必要とする加工装置は、バランスシリンダの劣化または故障を認識するという解決すべき課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、保持面によって被加工物を保持する保持手段と、該保持手段に保持された被加工物を加工する加工具を装着した加工手段と、該加工手段を保持面に垂直な上下方向に移動させる移動手段と、エアシリンダにエアを供給し該加工手段を上昇させるカウンタバランスとを備える加工装置であって、該移動手段は、該上下方向に延在するボールネジと、該ボールネジを回転させるサーボモータと、該加工手段を所定の高さ位置で停止させ続けるために該サーボモータに供給する電力の少なくとも電流値を制御する制御手段と、を備え、該加工手段の位置を認識する位置認識部と、該制御手段によって該位置認識部が認識する所定の高さ位置に該加工手段を停止させ続けるために、該カウンタバランスにより該加工手段を上昇させる力に対抗して該加工手段を下降させようとして該サーボモータに供給される電流値が、予め設定した閾値を下回ったら該カウンタバランスが故障していると判断する判断部と、を備える加工装置である。
【発明の効果】
【0007】
本加工装置においては、制御手段を用いたサーボモータのフィードバック制御により変化するサーボモータへの供給電圧の値を監視して、電流値が閾値を下回った場合にカウンタバランスが故障していると判断することができる。
そして、研削砥石が被加工物を所定の厚みに研削した後、研削砥石を被加工物から離間させるときに遅延することがないので、被加工物を所定の厚みに研削することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】加工装置全体を表す斜視図である。
図2】カウンタバランスが取り除かれた状態の加工装置のうち、特に研削手段及び移動手段を示す部分拡大図である。
図3】サーボモータに供給する電流値を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1 加工装置の構成
図1に示す加工装置1は、研削砥石310を用いて保持面200に保持された被加工物12を加工する加工装置である。以下、加工装置1の構成について説明する。
【0010】
図1に示すように、加工装置1は、Y軸方向に延設されたベース10と、ベース10の上における+Y方向側に立設されたコラム11とを備えている。
ベース10の上には、回転可能な円板状のテーブルである保持手段2が配設されている。吸引部20の上面は、被加工物12を保持する保持面200となっている。枠体21の上面210は保持面200に面一に形成されている。
【0011】
保持手段2の周囲にはカバー27が配設されており、カバー27には蛇腹28がY軸方向に伸縮自在に連結されている。例えば、図示しない水平移動手段等により駆動されて保持手段2がY軸方向に移動すると、これに伴ってカバー27が保持手段2と一体的にY軸方向に移動して、蛇腹28が伸縮することとなる。
【0012】
コラム11の-Y方向側には、加工手段3が配設されている。
加工手段3は、Z軸方向の回転軸35を軸にして回転するスピンドル30と、スピンドル30を回転可能に支持するハウジング33と、回転軸35を軸にしてスピンドル30を回転駆動するモータ32と、スピンドル30の下端に接続された円環状のマウント34と、マウント34の下面に着脱可能に装着された加工具31とを備えている。加工具31は、例えば、ホイール基台312と、ホイール基台312の下面に環状に配列された略直方体形状を有する複数の研削砥石310とを備えており、研削砥石310の下面は被加工物12を研削する研削面311となっている。
モータ32を用いて回転軸35を軸にスピンドル30を回転させることにより、研削砥石310が回転軸35を軸に回転することとなる。
【0013】
コラム11の-Y方向側の側面には、加工手段3を昇降可能に支持する移動手段4が配設されている。図2においては、カウンタバランス5が取り除かれた状態の加工装置1の一部が示されている。移動手段4は、Z軸方向の軸心を有するボールネジ42と、ボールネジ42に対して平行に配設された一対のガイドレール41と、ボールネジ42の上端に連結され、ボールネジ42を回動させるサーボモータ44と、内部のナットがボールネジ40に螺合し側部がガイドレール41に摺接する昇降板43と、昇降板43に連結されスピンドル30を支持するホルダ45とを備えている。
サーボモータ44には、図示しないモータドライバと電源とが接続されている。
また、サーボモータ44に接続されるモータドライバには、サーボモータ44の回転数を測定し、加工手段3の高さ位置を認識するエンコーダ等を有する位置認識部440が接続されている。なお、位置認識部440は、スケールユニット等を有するものであってもよい。
【0014】
加工装置1は、カウンタバランス5を備えている。カウンタバランス5は、例えば、コラム11に配設された2つの支持板54と、支持板54に吊持された有底筒状のエアシリンダ50を備えている。支持板54は、例えばX軸方向から見て略凹状を有しており、コラム11の上面に連結されている。
エアシリンダ50には、Z軸方向に延びるピストン51が収容されている。ピストン51の一部は、例えばエアシリンダ50の-Z方向側に形成されている開口から突出しており、ピストン51の-Z方向側の端部は、連結部52を介してホルダ45の側面に連結されている。
【0015】
エアシリンダ50は、エア供給源8に接続されている。エアシリンダ50とエア供給源8との間には、エア供給源8からエアシリンダ50に供給されるエアの圧力を計測する圧力計53と、エア供給源8とエアシリンダ50との連通状態を切り替えるバルブ80とが配設されている。
【0016】
バルブ80が開いている状態で、エア供給源8からエアシリンダ50にエアを供給することにより、ピストン51が+Z方向に上昇して、ピストン51のエアシリンダ50から突出している部分がエアシリンダ50の内部に収容されていき、ピストン51に連結されているホルダ45及びホルダ45に支持されている加工手段3を上方向(+Z方向)に持ち上げることができる。
エア供給源8から供給されるエアの圧力の値は、圧力計53により測定されている。
【0017】
該モータドライバからサーボモータ44に電力を供給して、ボールネジ40を駆動させることにより、ボールネジ40が回転すると、これに伴って、昇降板43がガイドレール41に案内されてZ軸方向に昇降移動するとともにホルダ45に支持されている加工手段3がZ軸方向に移動する構成となっている。
【0018】
加工装置1は、加工装置1の各種の機構を制御する制御手段9を備えている。
制御手段9は、カウンタバランス5から+Z方向への力を受けて上昇しようとする加工手段3を、所定の高さ位置に停止させ続けるために、移動手段4のサーボモータ44に供給される電流値を制御する機能を有している。
なお、サーボモータがACサーボモータであったら、制御手段9は、周波数を制御して回転速度を調整し、電流の方向を換え回転軸の回転方向を切り換える制御をする機能を備える。
また、サーボモータがDCサーボモータであったら、制御手段9は、電圧を制御して回転速度を調整し、電流の方向を換え回転軸の回転方向を切り換える制御をする機能を備える。
【0019】
本実施形態におけるサーボモータ44の制御は、制御手段9によりサーボモータ44に供給される電流値が制御されて、サーボモータ44に一方の方向の所定の電流(3.0A)が供給されると、加工手段3は上昇していき、他方の方向の所定の電流が供給されると、加工手段3は下降していくという構成となっている。
【0020】
位置認識部440には、判断部90が接続されている。判断部90は、CPU、メモリ等を有しており、予め設定された電流の閾値70が記憶されている。
判断部90は、サーボモータ44に供給される電流値が伝達されており、記憶している閾値70と伝達されたサーボモータ44に供給される電流値とに基づいて、カウンタバランス5が故障しているかどうかを判断することができる。
【0021】
2 加工装置の動作
(カウンタバランスの故障判断)
以下、正常に作動していたカウンタバランス5が故障したときに、判断部90によりカウンタバランス5が故障していると判断する際の加工装置1の動作について、図3に示すサーボモータ44に供給される電流69の電流値のグラフを参照しながら説明する。
【0022】
予め閾値70を例えば1Aに設定して、判断部90に記憶しておく。
【0023】
加工手段3の重量よりカウンタバランス5が加工手段3を上昇させる力が大きい状態では、加工手段3を上昇させる力に抗する下向きの力が移動手段4により加工手段3に加えられている。このとき、サーボモータ44に供給されている電流69の電流値は、例えば3.0Aとする(図3における平常時67)。
【0024】
いま、カウンタバランス5が加工手段3を上昇させる力の方が加工手段3の重量よりも大きい状態から、カウンタバランス5が加工手段3を上昇させる力が加工手段3の重量より小さくなるという状態に変化し、異常時68に移行したとする。
すると、制御手段9により、サーボモータ44に供給する電流を少なくする制御が行われる。
これにより、サーボモータ44に3.0Aの電流が供給されていた状態から、図3に示すように、サーボモータ44の電流値が閾値70を下回る(図3における異常時68)。これを受けて、判断部90は、カウンタバランス5が故障していると判断する。
【0025】
従来、カウンタバランス5の故障を判断することができなかった。
これに対して、本加工装置では、制御手段9を用いたサーボモータ44へのフィードバック制御により変化する電流値を監視して、電流値が閾値70を下回った場合にカウンタバランス5が故障していると判断するため、上記のような場合にもカウンタバランス5が故障していると判断することができる。
【0026】
(被加工物の研削加工)
カウンタバランス5が正常に作動しており、カウンタバランス5が故障していないと判断された場合には、その後、加工装置1による被加工物12の研削加工が行われる。
加工装置1を用いて被加工物12の研削加工を行う際には、まず、図1に示した保持手段2の保持面200に被加工物12を保持する。そして、図示しない水平移動手段等を用いて保持手段2を+Y方向に移動させて、被加工物12を加工手段3の下方に位置付ける。
【0027】
次いで、図示しない回転手段等を用いて保持手段2を回転させて、保持面200に保持されている被加工物12を回転させるとともに、モータ32を用いて回転軸35を軸にして研削砥石310を回転させる。
【0028】
保持面200に保持されている被加工物12が回転しており、かつ、研削砥石310が回転軸35を軸にして回転している状態で、移動手段4を用いて研削砥石310を-Z方向に下降させる。
これにより、研削砥石310の研削面311が被加工物12の上面120に接触する。研削砥石310の研削面311が被加工物12の上面120に接触している状態で、さらに研削砥石310を-Z方向に下降させることにより、被加工物12が研削加工される。
【0029】
本加工装置は、加工手段3を下降させる前にカウンタバランス5が正常か否かを確認しているため、加工手段3を適切に作動させることができる。従って、研削砥石310が被加工物12を所定の厚みに研削した後、研削砥石310を被加工物12から離間させるときに遅延することがなく、被加工物12を所定の厚みに研削できる。
【符号の説明】
【0030】
1:加工装置 10:ベース 11:コラム
2:保持手段 20:吸引部 200:保持面 21:枠体 210:上面
27:カバー 28:蛇腹
3:加工手段 30:スピンドル 31:加工具 310:研削砥石
311:研削面 312:ホイール基台 32:モータ 33:ハウジング
34:マウント 35:回転軸
4:移動手段 40:ボールネジ 41:ガイドレール 42:ボールネジ
43:昇降板 44:サーボモータ 440:位置認識部 45:ホルダ
5:カウンタバランス 50:エアシリンダ 51:ピストン
52:連結部 53:圧力計 54:支持板
7:オペレーションパネル 8:エア供給源 80:バルブ
9:制御手段 90:判断部
67~69:制御 61:第1ステップ 62:第2ステップ
70:閾値 72:電圧 73:電圧 12:被加工物 120:被加工物の上面
図1
図2
図3