(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-03
(45)【発行日】2023-10-12
(54)【発明の名称】粒度分布を有するシリカゾル及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C01B 33/149 20060101AFI20231004BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20231004BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20231004BHJP
C08K 5/17 20060101ALI20231004BHJP
C08K 9/06 20060101ALI20231004BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
C01B33/149
C08K3/22
C08K3/36
C08K5/17
C08K9/06
C08L63/00 C
(21)【出願番号】P 2023528171
(86)(22)【出願日】2023-01-13
(86)【国際出願番号】 JP2023000839
【審査請求日】2023-05-10
(31)【優先権主張番号】P 2022003956
(32)【優先日】2022-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒木 恵
(72)【発明者】
【氏名】末村 尚彦
(72)【発明者】
【氏名】中田 豪
(72)【発明者】
【氏名】大西 耀
(72)【発明者】
【氏名】杉澤 雅敏
(72)【発明者】
【氏名】劉 佳昊
【審査官】佐藤 慶明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/230823(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/179555(WO,A1)
【文献】特開2008-297183(JP,A)
【文献】特開2020-111474(JP,A)
【文献】特開2014-031397(JP,A)
【文献】特表2013-519756(JP,A)
【文献】特開2008-169233(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00 - 33/193
C08K 3/00 - 13/08
C08L 1/00 - 101/14
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つのピークを有する
粒子径分布を有するシリカ粒子と塩基性物質とを含むシリカゾルであって、
前記少なくとも2つのピークとして、D50~D90の範囲にある最も大きなピークaが35nm以上200nm以下の範囲に存在し、D10~D50の範囲にある最も大きなピークbが5nm以上35nm未満の範囲に存在し、
該シリカ粒子が少なくともその一部の表面に、Si-C結合によりケイ素原子に直結した有機基と、メトキシ基又はエトキシ基からなるアルコキシ基とを含み、前記アルコキシ基が0.6~3.0個/nm
2の割合で該シリカ粒子の表面に結合しているものであることを特徴とする、上記シリカゾル。
【請求項2】
前記ピークaの域に存在するシリカ粒子A、前記ピークbの域に存在するシリカ粒子B、又はその両者がシラン化合物で被覆されているものである、請求項1に記載のシリカゾル。
【請求項3】
前記シリカ粒子の少なくとも一部が、ケイ素原子に直結した有機基を有するシラン化合物で被覆されたものであり、
前記ケイ素原子に直結した有機基を有するシラン化合物が式(1)乃至式(3):
【化1】
(式(1)中、
R
1は、Si-C結合によりケイ素原子に結合する基であって、それぞれアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルケニル基、もしくはアリール基を示すか、又はエポキシ基、(メタ)アクリロイル基、メルカプト基、アミノ基、ウレイド基、もしくはシアノ基を有する有機基を示し、
R
2は、ケイ素原子に結合する基又は原子であって、それぞれアルコキシ基、アシルオキシ基、又はハロゲン原子を示し、
aは1~3の整数を示し、
式(2)及び式(3)中、
R
3及びR
5は、Si-C結合によりケイ素原子に結合する基であって、それぞれ炭素原子数1~3のアルキル基、又は炭素原子数6~30のアリール基を示し、
R
4及びR
6は、ケイ素原子に結合する基又は原子であって、それぞれアルコキシ基、アシルオキシ基、又はハロゲン原子を示し、
Yは、ケイ素原子に結合する基又は原子であって、アルキレン基、NH基、又は酸素原子を示し、
bは1~3の整数であり、cは0又は1の整数であり、dは1~3の整数である。)
からなる群より選ばれる少なくとも1種のシラン化合物である、請求項1
に記載のシリカゾル。
【請求項4】
前記シリカ粒子A、前記シリカ粒子B、又はその両者が、ラジカル重合性、又はカチオン重合性の重合性官能基を有するシラン化合物で被覆されているものである、請求項2
に記載のシリカゾル。
【請求項5】
前記重合性官能基を有するシラン化合物の重合性官能基が、(メタ)アクリロイル基、又は、エポキシ基、エポキシ基含有有機基若しくは窒素原子含有エポキシ基含有有機基である、請求項4に記載のシリカゾル。
【請求項6】
シリカ濃度が60質量%の前記シリカゾルを50℃14日間保管した後の粘度の値が、該シリカゾルに用いられる分散媒のみの25℃の粘度の値に比べて1.0~30倍の範囲である、請求項1
に記載のシリカゾル。
【請求項7】
前記シリカゾルは、その分散媒が、カルボニル構造、エーテル構造、又は炭素と炭素の結合構造を有する有機溶媒である、請求項1
に記載のシリカゾル。
【請求項8】
前記シリカゾルは、その分散媒が、ケトン、エステル、エーテル、アミド、又は炭化水素である、請求項1
に記載のシリカゾル。
【請求項9】
前記シリカゾルは、その分散媒が、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイ
ソプロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、又はプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートである、請求項1
に記載のシリカゾル。
【請求項10】
前記シリカゾルは、その分散媒が、重合性基を有する重合性モノマーである、請求項1
に記載のシリカゾル。
【請求項11】
前記重合性モノマーの重合性基が、(メタ)アクリロイル基、又は、エポキシ基、エポキシ基含有有機基若しくは窒素原子含有エポキシ基含有有機基である、請求項10に記載のシリカゾル。
【請求項12】
前記シリカ粒子を被覆するシラン化合物と、前記シリカゾルの分散媒が、互いに共重合可能な官能基の組み合わせを有する、請求項3
に記載のシリカゾル。
【請求項13】
前記塩基性物質が、アミン、アンモニア、無機アルカリ化合物、又は第4級アンモニウム化合物から選択される、請求項1
に記載のシリカゾル。
【請求項14】
下記(A):
(A)工程:35nm以上200nm以下の平均粒子径を有するシリカ粒子AからなるシリカゾルAと、5nm以上35nm未満の平均粒子径を有するシリカ粒子BからなるシリカゾルBとを、シリカ粒子A:シリカ粒子Bの質量比で99:1~60:40の割合で混合する工程、を含む請求項1乃至請求項13のいずれか1項に記載のシリカゾルの製造方法。
【請求項15】
(A)工程のシリカゾルA及びシリカゾルBは、同一の分散媒を有してなるか又は互いに相溶性のある分散媒を有してなり、該分散媒は水、炭素原子数1~4のアルコール、カルボニル構造、エーテル構造若しくは炭素と炭素の結合構造を有する有機溶媒、又は重合性基を有する重合性モノマーである、請求項14に記載のシリカゾルの製造方法。
【請求項16】
(A)工程において、前記シリカゾルA及びシリカゾルBの分散媒は、水から炭素原子数1~4のアルコールに溶媒変換され、さらにカルボニル構造、エーテル構造若しくは炭素と炭素の結合構造を有する有機溶媒、又は重合性基を有する重合性モノマーに溶媒変換される、請求項14に記載のシリカゾルの製造方法。
【請求項17】
(A)工程において、前記シリカゾルA及びシリカゾルBの分散媒が炭素原子数1~4のアルコールであるとき、シリカゾルA及び/又はシリカゾルBのシリカ粒子を下記式(1)乃至式(3)からなる群から選ばれた少なくとも1種のシラン化合物で被覆する段階を含む、請求項14に記載のシリカゾルの製造方法。
【化2】
(式(1)中、
R
1は、Si-C結合によりケイ素原子に結合する基であって、それぞれアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルケニル基、もしくはアリール基を示すか、又はエポキシ基、(メタ)アクリロイル基、メルカプト基、アミノ基、ウレイド基、もしくはシアノ基を有する有機基を示し、
R
2は、ケイ素原子に結合する基又は原子であって、それぞれアルコキシ基、アシルオキシ基、又はハロゲン原子を示し、
aは1~3の整数を示し、
式(2)及び式(3)中、
R
3及びR
5は、Si-C結合によりケイ素原子に結合する基であって、それぞれ炭素原子数1~3のアルキル基、又は炭素原子数6~30のアリール基を示し、
R
4及びR
6は、ケイ素原子に結合する基又は原子であって、それぞれアルコキシ基、アシルオキシ基、又はハロゲン原子を示し、
Yは、ケイ素原子に結合する基又は原子であって、アルキレン基、NH基、又は酸素原子を示し、
bは1~3の整数であり、cは0又は1の整数であり、dは1~3の整数である。)
【請求項18】
(A)工程において、シリカゾルA及びシリカゾルBの分散媒が炭素原子数1~4のアルコールであるとき、塩基性物質を添加する段階を含む、請求項14に記載のシリカゾルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粒度分布を有するシリカゾルとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
粒子径分布において、大きな平均粒子径の範囲と小さな平均粒子径の範囲に少なくとも2つのピーク(粒子径分布の極大値)を有するシリカゾルが知られている。
例えば、シリカゾルのコロイド粒子の平均径分布曲線が2つ以上の異なるピークをもち、それぞれを与える粒子径をD1、D2とした時に、20nm≦D1≦40nm、150nm≦D2≦600nmであるシリカゾルを用いたビールの歩留まり改良方法が開示されている(特許文献1参照)。
(粒子径が体積基準でのモード径以下の粒子の体積)/(残りの粒子の体積)が1.0以上となる微小粒子を含む組成物が開示されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平9-173045号公報
【文献】特開2007-051187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、室温乃至加温時の保管でも粘度変化の少ないシリカゾルであって、シリカ粒子の表面を重合可能な官能基を有するシラン化合物で被覆し、これを有機溶媒又は重合性モノマーに安定に分散したシリカゾルと、その製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、第1観点として、少なくとも2つのピークを有する平均粒子径分布を有するシリカ粒子と塩基性物質とを含むシリカゾルであって、前記少なくとも2つのピークとしてD50~D90の範囲にある最も大きなピークaが35nm以上200nm以下の範囲に存在し、D10~D50の範囲にある最も大きなピークbが5nm以上35nm未満の範囲に存在し、該シリカ粒子が少なくともその一部の表面に、Si-C結合によりケイ素原子に直結した有機基と、メトキシ基又はエトキシ基からなるアルコキシ基とを含み、前記アルコキシ基が0.6~3.0個/nm
2の割合で該シリカ粒子の表面に結合しているものであることを特徴とする上記シリカゾル、
第2観点として、前記ピークaの域に存在するシリカ粒子A、前記ピークbの域に存在するシリカ粒子B、又はその両者がシラン化合物で被覆されているものである、第1観点に記載のシリカゾル、
第3観点として、前記シリカ粒子の少なくとも一部が、ケイ素原子に直結した有機基を有するシラン化合物で被覆されたものであり、前記ケイ素原子に直結した有機基を有するシラン化合物が式(1)乃至式(3):
【化1】
(式(1)中、R
1は、Si-C結合によりケイ素原子に結合する基であって、それぞれアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルケニル基、もしくはアリール基を示すか、又はエポキシ基、(メタ)アクリロイル基、メルカプト基、アミノ基、ウレイド基、もしくはシアノ基を有する有機基を示し、R
2は、ケイ素原子に結合する基又は原子であって、それぞれアルコキシ基、アシルオキシ基、又はハロゲン原子を示し、aは1~3の整数を示し、
式(2)及び式(3)中、R
3及びR
5は、Si-C結合によりケイ素原子に結合する基であって、それぞれ炭素原子数1~3のアルキル基、又は炭素原子数6~30のアリール基を示し、R
4及びR
6は、ケイ素原子に結合する基又は原子であって、それぞれアルコキシ基、アシルオキシ基、又はハロゲン原子を示し、Yは、ケイ素原子に結合する基又は原子であって、アルキレン基、NH基、又は酸素原子を示し、bは1~3の整数であり、cは0又は1の整数であり、dは1~3の整数である。)
からなる群より選ばれる少なくとも1種のシラン化合物である、第1観点又は第2観点に記載のシリカゾル、
第4観点として、前記シリカ粒子A、前記シリカ粒子B、又はその両者が、ラジカル重合性、又はカチオン重合性の重合性官能基を有するシラン化合物で被覆されているものである、第2観点又は第3観点に記載のシリカゾル、
第5観点として、前記重合性官能基を有するシラン化合物の重合性官能基が、(メタ)アクリロイル基、又は、エポキシ基、エポキシ基含有有機基若しくは窒素原子含有エポキシ基含有有機基である、第4観点に記載のシリカゾル、
第6観点として、シリカ濃度が60質量%の前記シリカゾルを50℃14日間保管した後の粘度の値が、該シリカゾルに用いられる分散媒のみの25℃の粘度の値に比べて1.0~30倍の範囲である、第1観点乃至第5観点のいずれか一つに記載のシリカゾル、
第7観点として、前記シリカゾルは、その分散媒が、カルボニル構造、エーテル構造、又は炭素と炭素の結合構造を有する有機溶媒である、第1観点乃至第6観点のいずれか一つに記載のシリカゾル、
第8観点として、前記シリカゾルは、その分散媒が、ケトン、エステル、エーテル、アミド、又は炭化水素である、第1観点乃至第6観点のいずれか一つに記載のシリカゾル、
第9観点として、前記シリカゾルは、その分散媒が、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、又はプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートである、第1観点乃至第6観点のいずれか一つに記載のシリカゾル、
第10観点として、前記シリカゾルは、その分散媒が、重合性基を有する重合性モノマーである、第1観点乃至第6観点のいずれか一つに記載のシリカゾル、
第11観点として、前記重合性モノマーの重合性基が、
(メタ)アクリロイル基、又は、エポキシ基、エポキシ基含有有機基若しくは窒素原子含有エポキシ基含有有機基である、第10観点に記載のシリカゾル、
第12観点として、前記シリカ粒子を被覆するシラン化合物と、前記シリカゾルの分散媒が、互いに共重合可能な官能基の組み合わせを有する、第3観点乃至第11観点の何れか一つに記載のシリカゾル、
第13観点として、前記塩基性物質が、アミン、アンモニア、無機アルカリ化合物、又は第4級アンモニウム化合物から選択される、第1観点乃至第12観点のいずれか一つに記載のシリカゾル、
第14観点として、下記(A):
(A)工程:35nm以上200nm以下の平均粒子径を有するシリカ粒子AからなるシリカゾルAと、5nm以上35nm未満の平均粒子径を有するシリカ粒子BからなるシリカゾルBとを、シリカ粒子A:シリカ粒子Bの質量比で99:1~60:40の割合で混合する工程、を含む第1観点乃至第13観点のいずれか一つに記載のシリカゾルの製造方法、
第15観点として、(A)工程のシリカゾルA及びシリカゾルBは、同一の分散媒を有してなるか又は互いに相溶性のある分散媒を有してなり、該分散媒は水、炭素原子数1~4のアルコール、カルボニル構造、エーテル構造若しくは炭素と炭素の結合構造を有する有機溶媒、又は重合性基を有する重合性モノマーである、第14観点に記載のシリカゾルの製造方法、
第16観点として、(A)工程において、前記シリカゾルA及びシリカゾルBの分散媒は、水から炭素原子数1~4のアルコールに溶媒変換され、さらにカルボニル構造、エーテル構造若しくは炭素と炭素の結合構造を有する有機溶媒、又は重合性基を有する重合性モノマーに溶媒変換される、第14観点に記載のシリカゾルの製造方法、
第17観点として、(A)工程において、前記シリカゾルA及びシリカゾルBの分散媒が炭素原子数1~4のアルコールであるとき、シリカゾルA及び/又はシリカゾルBのシリカ粒子を下記式(1)乃至式(3)からなる群から選ばれた少なくとも1種のシラン化合物で被覆する段階を含む、第14観点に記載のシリカゾルの製造方法
【化2】
(式(1)中、
R
1は、Si-C結合によりケイ素原子に結合する基であって、それぞれアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルケニル基、もしくはアリール基を示すか、又はエポキシ基、(メタ)アクリロイル基、メルカプト基、アミノ基、ウレイド基、もしくはシアノ基を有する有機基を示し、
R
2は、ケイ素原子に結合する基又は原子であって、それぞれアルコキシ基、アシルオキシ基、又はハロゲン原子を示し、
aは1~3の整数を示し、
式(2)及び式(3)中、
R
3及びR
5は、Si-C結合によりケイ素原子に結合する基であって、それぞれ炭素原子数1~3のアルキル基、又は炭素原子数6~30のアリール基を示し、
R
4及びR
6は、ケイ素原子に結合する基又は原子であって、それぞれアルコキシ基、アシルオキシ基、又はハロゲン原子を示し、
Yは、ケイ素原子に結合する基又は原子であって、アルキレン基、NH基、又は酸素原子を示し、
bは1~3の整数であり、cは0又は1の整数であり、dは1~3の整数である。)、及び
第18観点として、(A)工程において、シリカゾルA及びシリカゾルBの分散媒が炭素原子数1~4のアルコールであるとき、塩基性物質を添加する段階を含む、第14観点に記載のシリカゾルの製造方法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明のシリカゾルは、粒子径の大きなシリカ粒子と、粒子径の小さなシリカ粒子が存在することにより、分散媒中で高いパッキング性を実現した分散体となり、またシリカ濃度の高濃度化が可能である。また本発明のシリカゾルを基材上で硬化させた際、シリカ粒子のパッキング性が高い硬化塗膜となるため、優れた塗膜物性を発揮する。
また本発明のシリカゾルは、シリカ粒子表面の電気的な反発により粒子同士が反発し、分散媒中で分散安定性の高いシリカ粒子の分散体となる。
一般に、シリカ粒子の濃度が高くなるほど、シリカ粒子表面のシラノール基同士の結合による凝集しやすくなる。一方本発明では、シリカ粒子の表面のシラノール基を、部分的にメトキシ基又はエトキシ基からなる親水性がある低分子アルコキシ基と、Si-C結合によりケイ素原子に直結し部分的に疎水性のある有機基とで被覆させたものとすることにより、シラノール基同士の結合による凝集を防ぐことができ、すなわち本発明のシリカゾルは凝集を抑制することができる。
本発明のシリカゾルにおいて、前記メトキシ基又はエトキシ基からなるアルコキシ基は0.6~3.0個/nm2の割合でシリカ粒子に結合してなる。前記メトキシ基やエトキシ基などの低分子アルコキシ基は適度な親水性を有し、一方Si-C結合によりケイ素原子に結合した有機基は有機溶媒のみならずモノマー分子を分散媒とする分散媒中であっても、これら分散媒と相溶性が高い。水性シリカゾルから溶媒置換を経て上記分散媒に溶媒置換する過程で、シリカ粒子表面に(有機基)と(アルコキシ基)が存在することで、シリカ粒子が高濃度であっても種々の分散媒中で分散性の高いシリカゾルを得ることができる。
そして本発明の分散性の高いオルガノシリカゾルは、分散媒を重合性モノマーに置換しても同様に高い分散性を維持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明は、少なくとも2つのピークを有する平均粒子径分を有するシリカ粒子と塩基性物質とを含むシリカゾルであって、前記少なくとも2つのピークとして、D50~D90の範囲にある最も大きなピークaが35nm以上200nm以下の範囲に存在し、D10~D50の範囲にある最も大きなピークbが5nm以上35nm未満の範囲に存在し、該シリカ粒子が少なくともその一部の表面にSi-C結合によりケイ素原子に直結した有機基と、メトキシ基又はエトキシ基からなるアルコキシ基とを含み、前記アルコキシ基が0.6~3.0個/nm2の割合で該シリカ粒子の表面に結合しているものであることを特徴とする。
【0008】
前記D10、D50、D90は累積粒度分布を示す微粒子側から累積10%、50%、90%を示す粒子径である。本発明では例えば累積粒度分布の値を画像解析による粒度分布により測定することができる。画像解析による粒度分布の測定では、測定サンプルを透過型電子顕微鏡画像として解析する。D値の解析方法には、個数分布法と体積分布法がある。個数分布法は、粒子をその粒子の面積と同じ面積の真円として捉え、一定の視野に特定粒子径を有する粒子がどのくらいの%で存在するかを測定する。また体積分布法では、粒子の密度が一定なら体積と重量は比例関係にあるとして、一定量サンプル中に特定粒子径の粒子がどのくらいの質量%で存在するかを測定する。本発明では体積分布法でD値(D10、D50、D90)を求めることが好ましい。
【0009】
本発明のシリカゾルは、平均粒子径分布において少なくとも2つのピークを有するシリカ粒子を含むものである。ここで、少なくとも2つのピークとして、D50~D90の範囲にある最も大きなピークaが35nm以上200nm以下の範囲に存在するとは、累積粒度分布がD50~D90の範囲で最も大きなピークが存在し、またD10~D50の範囲にある最も大きなピークbが5nm以上35nm未満の範囲に存在するとは、累積粒度分布がD10~D50の範囲で最も大きなピークが存在することを意味する。本発明において、前記ピークaと前記ピークbの高さは、どちらのピークの高さ(出現頻度)が高くてもよい。しかし、後述の製造方法で示す様に、ピークaに相当する(ピークaの域に存在する)シリカ粒子Aを含むシリカゾルAと、ピークbに相当する(ピークbの域に存在する)シリカ粒子Bを含むシリカゾルBとを、好ましくはシリカ粒子A:シリカ粒子Bの質量比で99:1~60:40の割合で、シリカゾルA、Bを混合する方法にて、本発明のシリカゾルを得ることができるので、ピークaがピークbよりも大きくなることがある。
【0010】
本発明では、前記シリカ粒子の少なくとも一部を、ケイ素原子に直結した有機基を有するシラン化合物で被覆することができる。被覆はシリカ粒子Aのみを行う方法、シリカ粒子Bのみを行う方法、シリカ粒子A及びシリカ粒子Bの両方を行う方法のいずれの方法も行うことができる。
上記シラン化合物は前記式(1)乃至式(3)からなる群より選ばれたシラン化合物で被覆することができる。これらシラン化合物はその加水分解物がシリカ粒子のシラノール基との間で脱水縮合により結合することができる。
【0011】
なお、本発明において、「シラン化合物で被覆する」とは、シラン化合物によってシリカ粒子表面が被覆されている態様を指し、またシラン化合物がシリカ粒子表面に結合している態様のいずれをも含む。
「シラン化合物によってシリカ粒子表面が被覆されている態様とは、シラン化合物がシリカ粒子表面の少なくとも一部を被覆した態様であればよく、すなわち、該シラン化合物がシリカ粒子の表面の一部を覆う態様、該シラン化合物がシリカ粒子の表面全体を覆う態様を包含するものである。この態様は、シラン化合物とシリカ粒子表面との結合の有無は問わない。
また「シラン化合物がシリカ粒子表面に結合している態様」とは、シラン化合物がシリカ粒子表面の少なくとも一部に結合した態様であればよく、すなわち、該シラン化合物がシリカ粒子の表面の一部に結合してなる態様、該シラン化合物がシリカ粒子の表面の一部に結合し表面の少なくとも一部を覆う態様、さらには、該シラン化合物がシリカ粒子の表面全体に結合し表面全体を覆う態様などを包含するものである。
【0012】
式(1)中、R1は、Si-C結合によりケイ素原子に結合する基であって、それぞれアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルケニル基、もしくはアリール基を示すか、又はエポキシ基、(メタ)アクリロイル基、メルカプト基、アミノ基、ウレイド基、もしくはシアノ基を有する有機基を示し、R2は、ケイ素原子に結合する基又は原子であって、それぞれアルコキシ基、アシルオキシ基、又はハロゲン原子を示し、aは1~3の整数を示す。
式(2)及び式(3)中、R3及びR5は、Si-C結合によりケイ素原子に結合する基であって、それぞれ炭素原子数1~3のアルキル基、又は炭素原子数6~30のアリール基を示し、R4及びR6は、ケイ素原子に結合する基又は原子であって、それぞれアルコキシ基、アシルオキシ基、又はハロゲン原子を示し、Yは、ケイ素原子に結合する基又は原子であって、アルキレン基、NH基、又は酸素原子を示し、bは1~3の整数であり、cは0又は1の整数であり、dは1~3の整数である。
【0013】
上記アルキル基は、炭素原子数1~18のアルキル基であり、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよく、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、シクロプロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、シクロブチル基、1-メチル-シクロプロピル基、2-メチル-シクロプロピル基、n-ペンチル基、1-メチル-n-ブチル基、2-メチル-n-ブチル基、3-メチル-n-ブチル基、1,1-ジメチル-n-プロピル基、1,2-ジメチル-n-プロピル基、2,2-ジメチル-n-プロピル基、1-エチル-n-プロピル基、シクロペンチル基、1-メチル-シクロブチル基、2-メチル-シクロブチル基、3-メチル-シクロブチル基、1,2-ジメチル-シクロプロピル基、2,3-ジメチル-シクロプロピル基、1-エチル-シクロプロピル基、2-エチル-シクロプロピル基、n-ヘキシル基、1-メチル-n-ペンチル基、2-メチル-n-ペンチル基、3-メチル-n-ペンチル基、4-メチル-n-ペンチル基、1,1-ジメチル-n-ブチル基、1,2-ジメチル-n-ブチル基、1,3-ジメチル-n-ブチル基、2,2-ジメチル-n-ブチル基、2,3-ジメチル-n-ブチル基、3,3-ジメチル-n-ブチル基、1-エチル-n-ブチル基、2-エチル-n-ブチル基、1,1,2-トリメチル-n-プロピル基、1,2,2-トリメチル-n-プロピル基、1-エチル-1-メチル-n-プロピル基、1-エチル-2-メチル-n-プロピル基、シクロヘキシル基、1-メチル-シクロペンチル基、2-メチル-シクロペンチル基、3-メチル-シクロペンチル基、1-エチル-シクロブチル基、2-エチル-シクロブチル基、3-エチル-シクロブチル基、1,2-ジメチル-シクロブチル基、1,3-ジメチル-シクロブチル基、2,2-ジメチル-シクロブチル基、2,3-ジメチル-シクロブチル基、2,4-ジメチル-シクロブチル基、3,3-ジメチル-シクロブチル基、1-n-プロピル-シクロプロピル基、2-n-プロピル-シクロプロピル基、1-i-プロピル-シクロプロピル基、2-i-プロピル-シクロプロピル基、1,2,2-トリメチル-シクロプロピル基、1,2,3-トリメチル-シクロプロピル基、2,2,3-トリメチル-シクロプロピル基、1-エチル-2-メチル-シクロプロピル基、2-エチル-1-メチル-シクロプロピル基、2-エチル-2-メチル-シクロプロピル基、2-エチル-3-メチル-シクロプロピル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0014】
また、上記アルキレン基は、上述のアルキル基の水素原子を更に一つ取り除いてから誘導される二価の基であり、直鎖状、分岐鎖状、環状のアルキレン基を挙げることができる。
【0015】
上記アリール基は、炭素原子数6~30のアリール基であり、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセン基、ピレン基等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0016】
上記アルケニル基としては、炭素原子数2~10のアルケニル基が挙げられ、例えばエテニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、1-メチル-1-エテニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、2-メチル-1-プロペニル基、2-メチル-2-プロペニル基、1-エチルエテニル基、1-メチル-1-プロペニル基、1-メチル-2-プロペニル基、1-ペンテニル基、2-ペンテニル基、3-ペンテニル基、4-ペンテニル基、1-n-プロピルエテニル基、1-メチル-1-ブテニル基、1-メチル-2-ブテニル基、1-メチル-3-ブテニル基、2-エチル-2-プロペニル基、2-メチル-1-ブテニル基、2-メチル-2-ブテニル基、2-メチル-3-ブテニル基、3-メチル-1-ブテニル基、3-メチル-2-ブテニル基、3-メチル-3-ブテニル基、1,1-ジメチル-2-プロペニル基、1-i-プロピルエテニル基、1,2-ジメチル-1-プロペニル基、1,2-ジメチル-2-プロペニル基、1-シクロペンテニル基、2-シクロペンテニル基、3-シクロペンテニル基、1-ヘキセニル基、2-ヘキセニル基、3-ヘキセニル基、4-ヘキセニル基、5-ヘキセニル基、1-メチル-1-ペンテニル基、1-メチル-2-ペンテニル基、1-メチル-3-ペンテニル基、1-メチル-4-ペンテニル基、1-n-ブチルエテニル基、2-メチル-1-ペンテニル基、2-メチル-2-ペンテニル基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0017】
上記アルコキシ基としては、炭素原子数1~10のアルコキシ基が挙げられ、例えばメトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、i-ブトキシ基、s-ブトキシ基、t-ブトキシ基、n-ペンチロキシ基、1-メチル-n-ブトキシ基、2-メチル-n-ブトキシ基、3-メチル-n-ブトキシ基、1,1-ジメチル-n-プロポキシ基、1,2-ジメチル-n-プロポキシ基、2,2-ジメチル-n-プロポキシ基、1-エチル-n-プロポキシ基、n-ヘキシロキシ基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0018】
上記アシルオキシ基として炭素原子数2~10のアシルオキシ基が挙げられ、例えばメチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、n-プロピルカルボニルオキシ基、i-プロピルカルボニルオキシ基、n-ブチルカルボニルオキシ基、i-ブチルカルボニルオキシ基、s-ブチルカルボニルオキシ基、t-ブチルカルボニルオキシ基、n-ペンチルカルボニルオキシ基、1-メチル-n-ブチルカルボニルオキシ基、2-メチル-n-ブチルカルボニルオキシ基、3-メチル-n-ブチルカルボニルオキシ基、1,1-ジメチル-n-プロピルカルボニルオキシ基、1,2-ジメチル-n-プロピルカルボニルオキシ基、2,2-ジメチル-n-プロピルカルボニルオキシ基、1-エチル-n-プロピルカルボニルオキシ基、n-ヘキシルカルボニルオキシ基、1-メチル-n-ペンチルカルボニルオキシ基、2-メチル-n-ペンチルカルボニルオキシ基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0019】
上記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0020】
また上記エポキシ基を有する有機基としては、例えば、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル基、3-グリシドキシプロピル基等が挙げられる。
上記(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基とメタクリロイル基の双方を表す。(メタ)アクリロイル基を有する有機基としては、例えば、3-メタクリロキシプロピル基、3-アクリロキシプロピル基等が挙げられる。
メルカプト基を有する有機基としては、例えば、3-メルカプトプロピル基等が挙げられる。
アミノ基を有する有機基としては、例えば、2-アミノエチル基、3-アミノプロピル基、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピル基、N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)アミノプロピル基、N-フェニル-3-アミノプロピル基、N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピル基等が挙げられる。
ウレイド基を有する有機基としては、例えば、3-ウレイドプロピル基等が挙げられる。
シアノ基を有する有機基としては、例えば、3-シアノプロピル基等が挙げられる。
【0021】
上記式(2)及び式(3)で表される化合物としては、トリメチルシリル基をシリカ粒子の表面に形成できる化合物が好ましい。
それら化合物としては以下に例示することができる。
【化3】
上記式中、R
12はアルコキシ基であり、例えばメトキシ基、エトキシ基が挙げられる。
上記シラン化合物は信越化学工業(株)製のシラン化合物を使用することができる。
【0022】
上記シリカ粒子の少なくとも一部を、ケイ素原子に直結した有機基を有するシラン化合物で被覆するとは、シリカ粒子の表面のヒドロキシ基(例えばシリカ粒子であればシラノール基)と上記シラン化合物(該シラン化合物の加水分解物)を反応(脱水縮合)させ、シロキサン結合によりシリカ粒子の表面に上記シラン化合物を被覆する工程である。反応温度は20℃からその分散媒の沸点の範囲までの温度で行うことができるが、例えば20℃~100℃の範囲で行うことができる。反応時間は0.1~6時間程度で行うことができる。
【0023】
上記シラン化合物によるシリカ粒子表面の被覆量として、シラン化合物中のケイ素原子の個数が0.6個/nm2~5.0個/nm2の被覆量に相当するシラン化合物を、シリカゾルに添加してシリカ粒子表面の被覆を行うことができる。
【0024】
上記シラン化合物の加水分解には水が必要であるが、水性溶媒のゾルであればそれら水性溶媒が加水分解に係る“水”として用いられる。また水性媒体をメタノールやエタノールからなる有機溶媒に溶媒置換した場合には、溶媒中に残存する水分を加水分解に係る“水”として用いることができる。例えば系内に0.01~1質量%にて存在する水分を加水分解に用いることができる。また、加水分解は触媒を用いて行うことも、触媒なしで行うこともできる。
【0025】
触媒なしで加水分解を行う場合とは、シリカ粒子表面が酸性サイドに存在する場合である。
加水分解に触媒を用いる場合、加水分解触媒として金属キレート化合物、有機酸、無機酸、有機塩基、無機塩基を挙げることができる。加水分解触媒としての金属キレート化合物は、例えばトリエトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリエトキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム等が挙げられる。加水分解触媒としての有機酸は、例えば酢酸、シュウ酸等が挙げられる。加水分解触媒としての無機酸は、例えば塩酸、硝酸、硫酸、フッ酸、リン酸等が挙げられる。加水分解触媒としての有機塩基は、例えばピリジン、ピロール、ピペラジン、第4級アンモニウム塩が挙げられる。加水分解触媒としての無機塩基としては、例えばアンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが挙げられる。
【0026】
シリカ粒子A、シリカ粒子B、又はその両者は、ラジカル重合性、又はカチオン重合性の重合性官能基を有するシラン化合物で被覆されているものとすることができる。
上記重合性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、又は、エポキシ基、エポキシ基含有有機基若しくは窒素原子含有エポキシ基含有有機基を挙げることができる。
【0027】
本発明のシリカゾルにおいて固形分は、0.1~70質量%、又は1~60質量%、又は10~60質量%とすることができる。ここで固形分とは、シリカゾルの全成分から溶媒成分を除いたものである。
【0028】
本発明のシリカゾルは安定性が高く、例えばシリカ濃度が60質量%である本発明のシリカゾルを、50℃14日間保管した後の粘度の値が、該シリカゾルに用いられる分散媒のみの25℃の粘度の値に比べて、例えば1.0~30倍の範囲に保つことができる。
【0029】
本発明のシリカゾルは、下記(A):
(A)工程:35nm以上200nm以下の平均粒子径を有するシリカ粒子AからなるシリカゾルAと、5nm以上35nm未満の平均粒子径を有するシリカ粒子BからなるシリカゾルBとを、シリカ粒子A:シリカ粒子Bの質量比で99:1~60:40の割合で混合する工程、を含む製造方法により製造することができる。
【0030】
(A)工程のシリカゾルA及びシリカゾルBの分散媒は、同一の分散媒を有してなるか又は互いに相溶性のある分散媒を有してなり、該分散媒は水、又は炭素原子数1~4のアルコール、又はカルボニル構造、エーテル構造若しくは炭素と炭素の結合構造を有する有機溶媒、又は重合性基を有する重合性モノマーとすることができる。
【0031】
上記炭素原子数1~4のアルコールとしては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、i-プロパノール、ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。
【0032】
上記カルボニル構造を有する有機溶媒としては、ケトン、エステル、アルデヒド、又はアミド等を例示することができる。
【0033】
上記ケトンとしては、炭素原子数3~30の直鎖又は環状の脂肪族ケトンが挙げられ、例えばメチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン等が挙げられる。
上記エーテルとしては、炭素原子数3~30の直鎖又は環状の脂肪族エーテルが挙げられ、例えばジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
上記エステルとしては、炭素原子数2~30の直鎖又は環状のエステルが挙げられ、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル(酢酸n-ブチル、酢酸sec-ブチル等)、酢酸メトキシブチル、酢酸アミル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、乳酸エチル、乳酸ブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、酢酸フェニル、乳酸フェニル、プロピオン酸フェニル等が挙げられる。
上記アミドとしては、炭素原子数3~30の脂肪族アミドが挙げられ、例えばジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン等が挙げられる。
上記炭素と炭素の結合構造を有する有機溶媒は炭化水素であり、例えば炭素原子数6~30の直鎖又は環状の脂肪族又は芳香族炭化水素であり、具体的には、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。
【0034】
上記分散媒は、中でも、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを挙げることができる。
【0035】
また、シリカゾルの分散媒として、重合性基を有する重合性モノマーを用いることができる。
上記重合性モノマーとして、上記重合性基が(メタ)アクリロイル基、又はエポキシ基、エポキシ基を有する有機基若しくは窒素原子含有エポキシ基を有する有機基を分子内に少なくとも1つ有する、液状の重合性モノマーであるものを好ましく使用することができる。上記重合性モノマーとして、1官能性、又は2官能性、3官能性等の多官能性モノマーが挙げられる。
【0036】
(A)工程において、シリカゾルA及びシリカゾルBの分散媒は、水から炭素原子数1~4のアルコールに溶媒変換され、さらにカルボニル構造、エーテル構造若しくは炭素と炭素の結合構造を有する有機溶媒、又は重合性基を有する重合性モノマーに溶媒変換されることが好ましい。
【0037】
(A)工程において、シリカゾルA及びシリカゾルBの分散媒が炭素原子数1~4のアルコールであるとき、シリカゾルA及び/又はシリカゾルBのシリカ粒子を、前述の式(1)乃至式(3)からなる群から選ばれた少なくとも1種のシラン化合物で被覆する段階を含むことが好ましい。
【0038】
(A)工程において、シリカゾルA及びシリカゾルBの分散媒が炭素原子数1~4のアルコールであるとき、塩基性物質を添加することができる。塩基性物質の添加は上述のシラン化合物によるシリカ粒子の被覆をする段階後に実施することが好ましい。
【0039】
上記塩基性物質量は、シリカゾルのpHが4.0~10.0となる量にて添加することが好ましい。塩基性物質の添加量は、シリカゾル中にその添加量として存在する。本発明のシリカゾルのpHは、シリカゾルとメタノールと純水を質量比で1:1:1ないしは1:2:1で混合した液体のpHを測定したものを採用する。
【0040】
上記塩基性物質としては、アミン、アンモニア、無機アルカリ化合物、第4級アンモニウム化合物を挙げることができる。
【0041】
上記アミンとしては、総炭素原子数が5~35の第2級アミン及び第3級アミンを例示することができる。
上記第2級アミンとしては、例えばエチルn-プロピルアミン、エチルイソプロピルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、エチルブチルアミン、n-プロピルブチルアミン、ジブチルアミン、エチルペンチルアミン、n-プロピルペンチルアミン、イソプロピルペンチルアミン、ジペンチルアミン、エチルオクチルアミン、イソプロピルオクチルアミン、ブチルオクチルアミン、ジオクチルアミン等が挙げられる。
上記第3級アミンとしては、例えばトリエチルアミン、エチルジnプロピルアミン、ジエチルn-プロピルアミン、トリn-プロピルアミン、トリイソプロピルアミン、エチルジブチルアミン、ジエチルブチルアミン、イソプロピルジブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジイソプロピルブチルアミン、トリブチルアミン、エチルジペンチルアミン、ジエチルペンチルアミン、トリペンチルアミン、メチルジオクチルアミン、ジメチルオクチルアミン、エチルジオクチルアミン、ジエチルオクチルアミン、トリオクチルアミン、ベンジルジブチルアミン、ジアザビシクロウンデセン等が挙げられる。
上記アミンの中でも総炭素原子数が6~35のアルキル基を有する第2級アミン及び第3級アミンが好ましく、例えばジイソプロピルアミン、トリペンチルアミン、トリイソプロピルアミン、ジメチルオクチルアミン、トリオクチルアミン等が挙げられる。
【0042】
上記第4級アンモニウム化合物として、例えば水酸化第4級アンモニウムが挙げられる。
水酸化第4級アンモニウムとしては、総炭素原子数が4~40の水酸化テトラアルキルアンモニウムが好ましい。例えば水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラn-プロピルアンモニウム、水酸化テトラi-プロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化エチルトリメチルアンモニウム等が挙げられる。
【0043】
上記無機アルカリ化合物として、水酸化アルカリ金属塩、アルカリ金属アルコキシド、脂肪族カルボン酸アルカリ金属塩、芳香族カルボン酸アルカリ金属塩等が挙げられる。
水酸化アルカリ金属塩としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリム等が挙げられる。
アルカリ金属アルコキシドとしては、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド等が挙げられる。
脂肪族カルボン酸アルカリ金属塩としては、炭素原子数2~30の飽和脂肪族カルボン酸アルカリ金属塩、不飽和脂肪族カルボン酸アルカリ金属塩が挙げられる。ここでアルカリ金属はナトリウム、カリウムが挙げられる。飽和脂肪族カルボン酸アルカリ金属塩としてはラウリン酸アルカリ金属塩、ミリスチン酸アルカリ金属塩、パルミチン酸アルカリ金属塩、ステアリン酸アルカリ金属塩等が挙げられる。不飽和脂肪族カルボン酸アルカリ金属塩としてはオレイン酸アルカリ金属塩、リノール酸アルカリ金属塩、リノレン酸アルカリ金属塩等が挙げられる。特にオレイン酸カリウム等の不飽和脂肪族カルボン酸アルカリ金属塩は好ましく用いることができる。
また芳香族カルボン酸アルカリ金属塩としては、上記に挙げたアルカリ金属の安息香酸塩、サリチル酸塩、フタル酸塩等が挙げられる。
【0044】
本発明ではシリカ粒子を被覆するシラン化合物の官能基が重合性基(重合性官能基)であり、前記重合性基が(メタ)アクリロイル基、又はエポキシ基、エポキシ基含有有機基若しくは窒素原子含有エポキシ基含有有機基とすることができる。
【0045】
そして本発明のシリカゾルを構成するシリカ粒子と分散媒として、シリカ粒子を被覆するシラン化合物と、シリカゾルの分散媒とが、互いに共重合可能な官能基の組み合わせを有するものを用いることができる。即ち、シリカ粒子を被覆するシラン化合物の官能基が(メタ)アクリロイル基、又はエポキシ基、エポキシ基含有有機基若しくは窒素原子含有エポキシ基含有有機基であるシラン化合物と、シリカゾルの分散媒が(メタ)アクリロイル基、又はエポキシ基、エポキシ基含有有機基若しくは窒素原子含有エポキシ基含有有機基を含む化合物である、組み合わせを選択することができる。
【0046】
本発明のシリカゾルは、ケトン、エーテル、エステル、アミド、及び炭化水素から成る群より選ばれる少なくとも1種の疎水性有機溶媒に前述のシリカ粒子を分散したシリカゾルとすることができる。また、重合性モノマーに前述のシリカ粒子を分散したシリカゾルとすることもできる。
【0047】
本発明のシリカゾルは、分散媒を重合性モノマーにすることで重合性組成物とすることや、更に熱硬化性又は光硬化性の樹脂と混合することによりワニスを製造することができる。
そして、本発明のシリカゾルは、アミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤、又は酸発生剤系硬化剤(熱酸発生剤、又は光酸発生剤)等の硬化剤を含み硬化物とすることができる。本発明のシリカゾルと硬化性樹脂と硬化剤を含むワニスを基材に塗布又は充填して、加熱、光照射、又はその組み合わせにより硬化物を形成することができる。前記硬化性樹脂としては、例えば(メタ)アクリロイル基、又はエポキシ基、エポキシ基含有有機基若しくは窒素原子含有エポキシ基含有有機基等の官能基を有する樹脂が挙げられる。
【0048】
本発明に係るこれらのシリカゾルは、例えば接着剤、離型剤、半導体封止材、LED封止材、塗料、フィルム内添材、ハードコート剤、フォトレジスト材、印刷インキ、洗浄剤、クリーナー、各種樹脂用添加剤、絶縁用組成物、防錆剤、潤滑油、金属加工油、フィルム用塗布剤、剥離剤等の用途に使用することができる。
【実施例】
【0049】
以下、実施例および比較例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0050】
〔シリカ(SiO2)濃度の測定〕
シリカゾルを坩堝に取り、130℃で乾燥(溶媒除去)後、1000℃で30分間焼成し、焼成残分を計量して、シリカ濃度を算出した。
【0051】
〔平均一次粒子径(窒素吸着法粒子径)の測定〕
シリカゾルにおけるシリカ粒子の平均一次粒子径は、窒素吸着法により測定した該シリカ粒子の比表面積の値(SN2)から算出した。
シリカゾルを300℃にて乾燥して得た粉末を測定試料とし、該試料の比表面積値(SN2)を比表面積測定装置モノソーブ(登録商標)MS-16(ユアサアイオニクス(株)製)を用いて測定した。得られた比表面積値SN2(m2/g)から、下記式を用い、球状粒子に換算して、平均一次粒子径を算出した。
平均一次粒子径(nm)=2720/SN2(m2/g)
【0052】
〔D50~D90の範囲にある最も大きなピークa、D10~D50の範囲にある最も大きなピークbの測定〕
透過型電子顕微鏡(日本電子(株)、JEM-1010)を用いて、倍率10万倍でシリカゾルの画像を10視野撮影した。得られた画像に含まれる全てのシリカ粒子について各粒子の粒子直径を測定し、その結果からシリカゾルの粒子径分布(体積分布)を算出した。得られた粒子径分布曲線から、D50~D90の範囲にある最も大きなピークに相当する粒子径a、及び、D10~D50の範囲にある最も大きなピークに相当する粒子径bを求めた。
【0053】
〔粘度の測定〕
有機溶媒分散シリカゾルの粘度はオストワルド粘度計を用いて測定した。
また、樹脂モノマー分散ゾルの粘度はB型回転粘度計(東機産業(株)製)を用いて測定した。
【0054】
〔粒子表面に結合したアルコキシ基量の分析方法〕
シリカゾル4mLにメチルエチルケトン4mLを添加した後、n-ヘキサン20mLを添加し、遠心分離(遠心力:2770G)後に上澄みを捨て、沈降物を分離した。さらに沈降物をアセトン2~4mLを加え再溶解した後、再びn-ヘキサンを凝集するまで添加し、遠心分離(遠心力:2770G)で沈降物を分離する操作を2回行い。得られた沈降物を150℃で真空乾燥して乾燥粉末を得た。
重合性モノマーへ分散したシリカゾルの場合は、重合性モノマーへ分散したシリカゾル3gにトルエン20mLを添加し溶解後、遠心分離(遠心力:44280G)後に上澄みを捨て、沈降物を分離した。さらに沈降物を、アセトン2mLを加え再溶解した後、トルエン12mLを添加し遠心分離(遠心力:44280G)で沈降物を分離する操作を2回行った。得られた沈降物を150℃で真空乾燥して乾燥粉末を得た。
上記で得られた乾燥粉末0.2gを0.05N水酸化ナトリウム水溶液10mLと混合して超音波洗浄機(40kHz)で20分間分散させた後、1日室温で置いたのち、溶液部分をガスクロマトグラフィー測定することで、シリカ表面の単位面積当たりのアルコキシ基結合量(個/nm2)を測定した。
【0055】
〔pHの測定〕
pH(1+1):シリカゾルと純水を質量比で1:1で混合した液をpHメーターで測定した。
pH(1+1+1):シリカゾルとメタノールと純水を質量比で1:1:1で混合した液をpHメーターで測定した。
【0056】
〔ゾル中の有機溶媒含有量の測定〕
ゾル中の有機溶媒含有量は、ガスクロマトグラフィーで測定した。
【0057】
(実施例1)
水分散シリカゾル1(平均一次粒子径85nm、pH3、シリカ濃度34.5質量%、日産化学(株)製)及び水分散シリカゾル2(平均一次粒子径12nm、pH3、シリカ濃度33質量%、日産化学(株)製)を準備した。
上記水分散シリカゾル1の800g及び上記水分散シリカゾル2の93gを、撹拌機、コンデンサー、温度計及び注入口2個を備えた内容積2Lのガラス製反応器に仕込み、反応器内のゾルを沸騰させたままの状態で、別のボイラーで発生させたメタノールの蒸気を反応器内のシリカゾル中に連続的に吹き込んで、メタノールによる水の置換を行った。留出液の体積が9Lになったところで置換を終了して、メタノール分散シリカゾル1を870g得た。得られたメタノール分散シリカゾル1のSiO2濃度35.0質量%、水分1.6質量%、pH(1+1)は3であった。
【0058】
メタノール分散シリカゾル1の800gを2Lナスフラスコに仕込み、マグネチックスターラーを用いてゾルを攪拌しながら、フェニルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、商品名KBM-103)14.2g(シリカ粒子表面の単位面積(nm2)当たり3個)を添加した後、液温を60℃で3時間保持した。その後、トリn-ペンチルアミンを添加してシリカゾルのpH(1+1+1)を7.8に調整した後、ロータリーエバポレーターにて、浴温80℃、500~350Torrの減圧下で、メチルエチルケトンを供給しながら蒸留を行うことにより、メチルエチルケトン分散シリカゾル1(SiO2濃度30.5質量%、粘度(20℃)1mPa・s、水分0.1質量%、メタノール0.1質量%、D50~D90の範囲にある最も大きなピークa:115nm、D10~D50の範囲にある最も大きなピークb:13nm、pH(1+1+1)7.8、シリカ粒子表面にSi-C結合によるケイ素原子に直結した有機基はフェニル基であり、シリカ粒子表面に結合したメトキシ基は1.5個/nm2であった。)を得た。
【0059】
得られたメチルエチルケトン分散シリカゾル1の400gに、重合性モノマーとしてビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合物モノマー(DIC(株)製、商品名EXA-830LVP、25℃におけるB型粘度は1,500mPa・sであった。)77gを添加し、浴温100℃、200~30Torrで脱溶媒を行い、ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合樹脂モノマー分散シリカゾルを得た。得られた混合樹脂モノマー分散シリカゾルは、SiO2濃度60.0質量%、メタノール含有量0.1質量%未満、メチルエチルケトン含有量0.1質量%未満、25℃におけるB型粘度27,000mPa・s、50℃で14日保管後の粘度31,000mPa・s、50℃で28日保管後の粘度33,000mPa・sであり、シリカ粒子表面に結合したメトキシ基は1.2個/nm2であった。実施例1の混合樹脂モノマー分散シリカゾルは、シリカ濃度が60質量%であるときの50℃14日間保管後の粘度が、分散媒(上記ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合樹脂モノマー)のみの25℃の粘度の21倍であり、低粘度且つ安定であった。
【0060】
(実施例2)
実施例1において、水分散シリカゾル2の添加量を209gに変更した以外は実施例1と同様に実施し、メタノール分散シリカゾル2(SiO2濃度35.0質量%、水分1.6質量%、pH(1+1)3)を得た。
メタノール分散シリカゾル2を用いて、実施例1と同様に、フェニルトリメトキシシラン(添加量はシリカ粒子表面の単位面積(nm2)当たり3個)の添加及び加熱反応、その後トリn-ペンチルアミンによるpH調整、更にはメチルエチルケトンによる溶媒置換を実施し、メチルエチルケトン分散シリカゾル2(SiO2濃度30.5質量%、粘度(20℃)1mPa・s、水分0.1質量%、メタノール0.1質量%、D50~D90の範囲にある最も大きなピークa:113nm、D10~D50の範囲にある最も大きなピークb:15nm、pH(1+1+1)7.4、シリカ粒子表面にSi-C結合によるケイ素原子に直結した有機基はフェニル基であり、シリカ粒子表面に結合したメトキシ基は1.7個/nm2であった。)を得た。
メチルエチルケトン分散シリカゾル2を用いて、実施例1と同様な操作によって、ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合樹脂モノマー分散シリカゾルを得た。得られた混合樹脂モノマー分散シリカゾルは、SiO2濃度60.0質量%、メタノール含有量0.1質量%未満、メチルエチルケトン含有量0.1質量%未満、25℃におけるB型粘度25,000mPa・s、50℃で14日保管後の粘度32,000mPa・s、50℃で28日保管後の粘度40,000mPa・sであった。実施例2の混合樹脂モノマー分散シリカゾルは、シリカ濃度が60質量%であるときの50℃14日間保管後の粘度が、分散媒(上記ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合樹脂モノマー)のみの25℃の粘度の21倍であり、低粘度且つ安定であった。
【0061】
(実施例3)
実施例1において、水分散シリカゾル2の添加量を44gに変更した以外は実施例1と同様に実施し、メタノール分散シリカゾル3(SiO2濃度35.0質量%、水分1.6質量%、pH(1+1)3)を得た。
メタノール分散シリカゾル3を用いて、実施例1と同様に、フェニルトリメトキシシラン(添加量はシリカ粒子表面の単位面積(nm2)当たり3個)の添加及び加熱反応、その後トリn-ペンチルアミンによるpH調整、更にはメチルエチルケトンによる溶媒置換を実施し、メチルエチルケトン分散シリカゾル3(SiO2濃度30.5質量%、粘度(20℃)1mPa・s、水分0.1質量%、メタノール0.1質量%、D50~D90の範囲にある最も大きなピークa:111nm、D10~D50の範囲にある最も大きなピークb:16nm、pH(1+1+1)7.9、シリカ粒子表面にSi-C結合によるケイ素原子に直結した有機基はフェニル基であり、シリカ粒子表面に結合したメトキシ基は1.2個/nm2であった。)を得た。
メチルエチルケトン分散シリカゾル3を用いて、実施例1と同様な操作によって、ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合樹脂モノマー分散シリカゾルを得た。得られた混合樹脂モノマー分散シリカゾルは、SiO2濃度60.0質量%、メタノール含有量0.1質量%未満、メチルエチルケトン含有量0.1質量%未満、25℃におけるB型粘度32000mPa・s、50℃で14日保管後の粘度35,000mPa・s、50℃で28日保管後の粘度38,000mPa・sであり、シリカ粒子表面に結合したメトキシ基は1.0個/nm2であった。実施例3の混合樹脂モノマー分散シリカゾルは、シリカ濃度が60質量%であるときの50℃14日間保管後の粘度が、分散媒(上記ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合樹脂モノマー)のみの25℃の粘度の23倍であり、低粘度且つ安定であった。
【0062】
(実施例4)
水分散シリカゾル3(平均一次粒子径22nm、pH3、シリカ濃度40.5質量%、日産化学(株)製)を準備した。
実施例1において、水分散シリカゾル2の代わりに水分散シリカゾル3を76g添加した以外は実施例1と同様に実施し、メタノール分散シリカゾル4(SiO2濃度35.0質量%、水分1.6質量%、pH(1+1)3)を得た。
メタノール分散シリカゾル4を用いて、フェニルトリメトキシシラン(添加量はシリカ粒子表面の単位面積(nm2)当たり4個)の添加及び加熱反応、その後トリn-ペンチルアミンによるpH調整、更にはメチルエチルケトンによる溶媒置換を実施し、メチルエチルケトン分散シリカゾル4(SiO2濃度30.5質量%、粘度(20℃)1mPa・s、水分0.1質量%、メタノール0.1質量%、D50~D90の範囲にある最も大きなピークa:113nm、D10~D50の範囲にある最も大きなピークb:31nm、pH(1+1+1)7.8、シリカ粒子表面にSi-C結合によるケイ素原子に直結した有機基はフェニル基であり、シリカ粒子表面に結合したメトキシ基1.7個/nm2であった。)を得た。
メチルエチルケトン分散シリカゾル4を用いて、実施例1と同様な操作によって、ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合樹脂モノマー分散シリカゾルを得た。得られた混合樹脂モノマー分散シリカゾルは、SiO2濃度60.0質量%、メタノール含有量0.1質量%未満、メチルエチルケトン含有量0.1質量%未満、25℃におけるB型粘度35,000mPa・s、50℃で14日保管後の粘度36,000mPa・s、50℃で28日保管後の粘度38,000mPa・sであり、シリカ粒子表面に結合したメトキシ基は0.8個/nm2であった。実施例4の混合樹脂モノマー分散シリカゾルは、シリカ濃度が60質量%であるときの50℃14日間保管後の粘度が分散媒(上記ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合樹脂モノマー)のみの25℃の粘度の24倍であり、低粘度且つ安定であった。
【0063】
(実施例5)
実施例1で調製した上記メタノール分散シリカゾル1の800gにトリn-ペンチルアミンを添加してpH(1+1+1)を7.0に調整した。2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(KBM-303、信越化学工業(株)製)5.9g(:シリカ粒子表面の単位面積(nm2)当たり1個)を添加し、60℃2時間加熱した後、フェニルトリメトキシシラン14.2g(:シリカ粒子表面の単位面積(nm2)当たり3個)を添加して60℃2時間加熱した。その後、メチルエチルケトンによる溶媒置換を実施し、メチルエチルケトン分散シリカゾル8(SiO2濃度30.5質量%、粘度(20℃)1mPa・s、水分0.1質量%、メタノール0.1質量%、D50~D90の範囲にある最も大きなピークa:115nm、D10~D50の範囲にある最も大きなピークb:13nm、pH(1+1+1)7.4、シリカ粒子表面にSi-C結合によるケイ素原子に直結した有機基は2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル基及びフェニル基であり、シリカ粒子表面に結合したメトキシ基1.7個/nm2であった。)を得た。
得られたメチルエチルケトン分散シリカゾル8の400gに、重合性モノマーとして窒素原子含有3官能エポキシ樹脂モノマーである商品名TEPIC-VL(日産化学(株)製、成分はトリス-(4,5-エポキシペンチル)-イソシアヌレート)54g及び商品名TEPIC-FL(日産化学(株)製、成分はトリス-(7,8-エポキシオクチル)-イソシアヌレート)23gを添加し、浴温100℃、200~30Torrで脱溶媒を行い、窒素原子含有3官能エポキシ樹脂モノマー混合物分散シリカゾルを得た。得られた窒素原子含有3官能エポキシ樹脂モノマー混合物分散シリカゾルは、SiO2濃度60.0質量%、メタノール含有量0.1質量%未満、メチルエチルケトン含有量0.1質量%未満、25℃におけるB型粘度34,000mPa・s、50℃で14日保管後の粘度35,000mPa・s、50℃で28日保管後の粘度35,000mPa・sであった。尚、上記TEPIC-VL54g及びTEPIC-FL23gを混合した樹脂モノマー混合物の25℃におけるB型粘度は、3,660mPa・sであった。実施例5の窒素原子含有3官能エポキシ樹脂モノマー混合物分散シリカゾルは、シリカ濃度が60質量%であるときの50℃14日間保管後の粘度が、分散媒(上記窒素原子含有3官能エポキシ樹脂モノマーであるTEPIC-VLとTEPIC-FLの混合物)のみの25℃の粘度の10倍であり、低粘度且つ安定であった。
【0064】
(実施例6)
水分散シリカゾル4(平均一次粒子径45nm、pH3、シリカ濃度20.5質量%、日産化学(株)製)を準備した。
実施例1において、水分散シリカゾル1の800gの代わりに水分散シリカゾル4の1346gを用いた以外は実施例1と同様の操作により、メタノール分散シリカゾル7(SiO2濃度35.0質量%、水分1.6質量%、pH(1+1)3)を得た。その後、メタノール分散シリカゾル7を用いて、実施例5と同様に、トリn-ペンチルアミンによるpH調整及び2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(添加量はシリカ粒子表面の単位面積(nm2)当たり1個)及びフェニルトリメトキシシラン(添加量はシリカ粒子表面の単位面積(nm2)当たり3個)の添加及び加熱反応を実施した。その後、メチルエチルケトンによる溶媒置換を実施し、メチルエチルケトン分散シリカゾル9(SiO2濃度30.5質量%、粘度(20℃)1mPa・s、水分0.1質量%、メタノール0.1質量%、D50~D90の範囲にある最も大きなピークa:56nm、D10~D50の範囲にある最も大きなピークb:15nm、pH(1+1+1)7.1、シリカ粒子表面にSi-C結合によるケイ素原子に直結した有機基は2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル基及びフェニル基であり、シリカ粒子表面に結合したメトキシ基1.8個/nm2であった。)を得た。
メチルエチルケトン分散シリカゾル9を用いて、実施例5と同様の操作によって、窒素原子含有3官能エポキシ樹脂モノマー混合物分散シリカゾルを得た。得られた窒素原子含有3官能エポキシ樹脂モノマー混合物分散シリカゾルは、SiO2濃度60.0質量%、メタノール含有量0.1質量%未満、メチルエチルケトン含有量0.1質量%未満、25℃におけるB型粘度64,000mPa・s、50℃で14日保管後の粘度68,000mPa・s、50℃で28日保管後の粘度72,000mPa・sであった。実施例6の窒素原子含有3官能エポキシ樹脂モノマー混合物分散シリカゾルは、シリカ濃度が60質量%であるときの50℃14日間保管後の粘度が、分散媒(上記窒素原子含有3官能エポキシ樹脂モノマーであるTEPIC-VLとTEPIC-FLの混合物)のみの25℃の粘度の19倍であり、低粘度且つ安定であった。
【0065】
(実施例7)
メタノール分散シリカゾル1の800gを2Lナスフラスコに仕込み、マグネチックスターラーを用いてゾルを攪拌しながら、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、商品名KBM-503)17.8g(シリカ粒子表面の単位面積(nm
2)当たり3個)を添加した後、液温を60℃で3時間保持した。その後、トリn-ペンチルアミンを添加してシリカゾルのpH(1+1+1)を9.1に調整することでメタノール分散シリカゾル8(SiO
2濃度35質量%、粘度(20℃)1mPa・s、水分1.6質量%、メタノール0.1質量%、D50~D90の範囲にある最も大きなピークa:115nm、D10~D50の範囲にある最も大きなピークb:13nm、pH(1+1+1)9.1、シリカ粒子表面にSi-C結合によるケイ素原子に直結した有機基はメタクリルオキシプロピル基であり、粒子表面に結合したメトキシ基1.4個/nm
2であった)を得た。
得られたメタノール分散シリカゾル8の400gにメタクリレートモノマーである商品名X-850-1066(ESSTECH社製)43.1g及び商品名ライトエステル3EG(共栄社化学(株)製)43.1gを添加し、浴温60℃、200~30Torrで脱溶媒を行い、メタクリレートモノマー混合物分散シリカゾルを得た。尚、上記X-850-106650g及びライトエステル3EG50gを混合したメタクリレートモノマー混合物の25℃におけるB型粘度は、87mPa・sであった。得られたメタクリレートモノマー混合物分散シリカゾルは、SiO
2濃度60.0質量%、メタノール含有量0.1質量%未満、25℃におけるB型粘度1870mPa・s、50℃で14日保管後の粘度1,900mPa・s、50℃で28日保管後の粘度1,920mPa・sであり、低粘度且つ安定であった。実施例7のメタクリレート混合モノマー混合物分散シリカゾルは、シリカ濃度が60質量%であるときの50℃14日間保管後の粘度が、分散媒(上記メタクリレートモノマーであるX-850-1066とライトエステル3EGの混合物)のみの25℃の粘度の22倍であり、低粘度且つ安定であった。
なお、商品名X-850-1066(ESSTECH社製)は下記の構造を有する化合物の混合物であった。
【化4】
また、商品名ライトエステル3EG(共栄社化学(株)製)は以下の構造を有する化合物であった。
【化5】
【0066】
(実施例8)
実施例5で調製した上記メチルエチルケトン分散シリカゾル8を用いて、実施例1と同様な操作によって、ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合樹脂モノマー分散シリカゾルを得た。得られた混合樹脂モノマー分散シリカゾルは、SiO2濃度60.0質量%、メタノール含有量0.1質量%未満、メチルエチルケトン含有量0.1質量%未満、25℃におけるB型粘度20,000mPa・s、50℃で14日保管後の粘度21,000mPa・s、50℃で28日保管後の粘度22,000mPa・sであり、シリカ粒子表面に結合したメトキシ基は1.6個/nm2であった。実施例8の混合樹脂モノマー分散シリカゾルは、シリカ濃度が60質量%であるときの50℃14日間保管後の粘度が、分散媒(上記ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合樹脂モノマー)のみの25℃の粘度の14倍であり、低粘度且つ安定であった。
【0067】
(比較例1)
実施例1において、トリn-ペンチルアミンを添加しなかった以外は、実施例1と同様に実施し、メチルエチルケトン分散シリカゾル5(SiO2濃度30.5質量%、粘度(20℃)1mPa・s、水分0.1質量%、メタノール0.1質量%、D50~D90の範囲にある最も大きなピークa:113nm、D10~D50の範囲にある最も大きなピークb:15nm、pH(1+1+1)3.5、シリカ粒子表面にSi-C結合によるケイ素原子に直結した有機基はフェニル基であり、シリカ粒子表面に結合したメトキシ基0.8個/nm2であった。)を得た。
メチルエチルケトン分散シリカゾル5を用いて、実施例1と同様な操作によって、ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合樹脂モノマー分散シリカゾルを得た。得られた混合樹脂モノマー分散シリカゾルは、SiO2濃度60.0質量%、メタノール含有量0.1質量%未満、メチルエチルケトン含有量0.1質量%未満、25℃におけるB型粘度56,000mPa・s、50℃で14日保管後の粘度150,000mPa・sと高くなり、50℃で28日保管後にはゲル化していた。比較例1の混合樹脂モノマー分散シリカゾルは、シリカ濃度が60質量%であるときの50℃14日間保管後の粘度が、分散媒(上記ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合樹脂モノマー)のみの25℃の粘度の100倍であり顕著に増粘しており、安定性は悪かった。
【0068】
(比較例2)
実施例1において、水分散シリカゾル2を使用しなかった以外は、実施例1と同様に実施し、メタノール分散シリカゾル5(SiO2濃度35.0質量%、水分1.6質量%、pH(1+1)3)を得た。
メタノール分散シリカゾル5を用いて、実施例1と同様に、フェニルトリメトキシシラン(添加量はシリカ粒子表面の単位面積(nm2)当たり3個)の添加及び加熱反応、その後トリn-ペンチルアミンによるpH調整、更にはメチルエチルケトンによる溶媒置換を実施し、メチルエチルケトン分散シリカゾル6(SiO2濃度30.5質量%、粘度(20℃)1mPa・s、水分0.1質量%、メタノール0.1質量%、D50~D90の範囲にある最も大きなピークa:113nm、D10~D50の範囲にあるピークb:なし、pH(1+1+1)7.6、シリカ粒子表面にSi-C結合によるケイ素原子に直結した有機基はフェニル基であり、シリカ粒子表面に結合したメトキシ基1.2個/nm2であった。)を得た。
メチルエチルケトン分散シリカゾル6を用いて、実施例1と同様な操作によって、ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合樹脂モノマー分散シリカゾルを得た。得られた混合樹脂モノマー分散シリカゾルは、SiO2濃度60.0質量%、メタノール含有量0.1質量%未満、メチルエチルケトン含有量0.1質量%未満、25℃におけるB型粘度71,000mPa・s、50℃で14日保管後の粘度115,000mPa・s、50℃で28日保管後の粘度165,000mPa・sであり、25℃における粘度は分散媒である混合樹脂モノマーの30倍以上であった。比較例2の混合樹脂モノマー分散シリカゾルは、シリカ濃度が60質量%であるときの50℃14日間保管後の粘度が、分散媒(上記ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合樹脂モノマー)のみの25℃の粘度の77倍であり顕著に増粘しており、安定性は悪かった。
【0069】
(比較例3)
実施例1において、留出液の体積が5Lになったところで置換を終了して、メタノール分散シリカゾル6(SiO2濃度35.0質量%、水分20質量%、pH(1+1)3)を得た。
メタノール分散シリカゾル6を用いて、フェニルトリメトキシシラン(添加量はシリカ粒子表面の単位面積(nm2)当たり3個)の添加及び反応、その後トリn-ペンチルアミンによるpH調整、更にはメチルエチルケトンによる溶媒置換を実施し、メチルエチルケトン分散シリカゾル7(SiO2濃度30.5質量%、粘度(20℃)1mPa・s、水分0.1質量%、メタノール0.1質量%、D50~D90の範囲にある最も大きなピークa:114nm、D10~D50の範囲にある最も大きなピークb:15nm、pH(1+1+1)7.6、シリカ粒子表面にSi-C結合によるケイ素原子に直結した有機基はフェニル基であり、シリカ粒子表面に結合したメトキシ基0.5個/nm2であった。)を得た。
メチルエチルケトン分散シリカゾル7を用いて、実施例1と同様な操作によって、ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合樹脂モノマー分散シリカゾルを得た。得られた混合樹脂モノマー分散シリカゾルは、SiO2濃度60.0質量%、メタノール含有量0.1質量%未満、メチルエチルケトン含有量0.1質量%未満、25℃におけるB型粘度65,000mPa・s、50℃で14日保管後の粘度89,000mPa・s、50℃で28日保管後の粘度120,000mPa・sであり、シリカ粒子表面に結合したメトキシ基は0.3個/nm2であった。比較例3の混合樹脂モノマー分散シリカゾルは、シリカ濃度が60質量%であるときの50℃14日間保管後の粘度が、分散媒(上記ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合樹脂モノマー)のみの25℃の粘度の59倍であり増粘しており、安定性は悪かった。
【0070】
(比較例4)
比較例2で得られたメタノール分散シリカゾル5を用いて、実施例5と同様に、トリn-ペンチルアミンによるpH調整及び2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(添加量はシリカ粒子表面の単位面積(nm2)当たり1個)及びフェニルトリメトキシシラン(添加量はシリカ粒子表面の単位面積(nm2)当たり3個)の添加及び加熱反応を実施した。その後、メチルエチルケトンによる溶媒置換を実施し、メチルエチルケトン分散シリカゾル10(SiO2濃度30.5質量%、粘度(20℃)1mPa・s、水分0.1質量%、メタノール0.1質量%、D50~D90の範囲にある最も大きなピークa:115nm、D10~D50の範囲にあるピークb:なし、pH(1+1+1)7.4、シリカ粒子表面にSi-C結合によるケイ素原子に直結した有機基は2-(3,4-ポキシシクロヘキシル)エチル基及びフェニル基、シリカ粒子表面に結合したメトキシ基1.3個/nm2であった。)を得た。
メチルエチルケトン分散シリカゾル10を用いて、実施例5と同様の操作によって、窒素原子含有3官能エポキシ樹脂モノマー混合物分散シリカゾルを得た。得られた窒素原子含有3官能エポキシ樹脂モノマー混合物分散シリカゾルは、SiO2濃度60.0質量%、メタノール含有量0.1質量%未満、メチルエチルケトン含有量0.1質量%未満、25℃におけるB型粘度175,000mPa・s、50℃で14日保管後の粘度190,000mPa・s、50℃で28日保管後の粘度210000mPa・sであった。比較例4の窒素原子含有3官能エポキシ樹脂モノマー混合物分散シリカゾルは、シリカ濃度が60質量%であるときの50℃14日間保管後の粘度が、分散媒(上記窒素原子含有3官能エポキシ樹脂モノマーであるTEPIC-VLとTEPIC-FLの混合物)のみの25℃の粘度の52倍であり増粘しており、安定性は悪かった。
【0071】
(比較例5)
実施例6において、水分散シリカゾル2を使用しなかった以外は、実施例6と同様に実施し、メタノール分散シリカゾル8を得た。(SiO2濃度35.0質量%、水分1.6質量%、pH(1+1)3)を得た。
その後、実施例5と同様に、トリn-ペンチルアミンによるpH調整及び2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(添加量はシリカ粒子表面の単位面積(nm2)当たり1個)及びフェニルトリメトキシシラン(添加量はシリカ粒子表面の単位面積(nm2)当たり3個)の添加及び加熱反応を実施した。その後、メチルエチルケトンによる溶媒置換を実施し、メチルエチルケトン分散シリカゾル11(SiO2濃度30.5質量%、粘度(20℃)1mPa・s、水分0.1質量%、メタノール0.1質量%、D50~D90の範囲にある最も大きなピークa:56nm、D10~D50の範囲にあるピークb:なし、pH(1+1+1)7.6、シリカ粒子表面にSi-C結合によるケイ素原子に直結した有機基は2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル基及びフェニル基、シリカ粒子表面に結合したメトキシ基1.4個/nm2であった。)を得た。
メチルエチルケトン分散シリカゾル11を用いて、実施例5と同様の操作によって、窒素原子含有3官能エポキシ樹脂モノマー混合物分散シリカゾルを得た。得られた窒素原子含有3官能エポキシ樹脂モノマー混合物分散シリカゾルは、SiO2濃度60.0質量%、メタノール含有量0.1質量%未満、メチルエチルケトン含有量0.1質量%未満、25℃におけるB型粘度210,000mPa・s、50℃で14日保管後の粘度225,000mPa・s、50℃で28日保管後の粘度245,000mPa・であった。比較例5の窒素原子含有3官能エポキシ樹脂モノマー混合物分散シリカゾルは、シリカ濃度が60質量%であるときの50℃14日間保管後の粘度が、分散媒(上記窒素原子含有3官能エポキシ樹脂モノマーであるTEPIC-VLとTEPIC-FLの混合物)のみの25℃の粘度の61倍であり増粘しており、安定性は悪かった。
【0072】
(比較例6)
実施例5において、メタノール分散シリカゾル1の代わりにメタノール分散シリカゾル6を用いた以外は、実施例5と同様に実施し、メチルエチルケトン分散シリカゾル12(SiO2濃度30.5質量%、粘度(20℃)1mPa・s、水分0.1質量%、メタノール0.1質量%、D50~D90の範囲にある最も大きなピークa:113nm、D10~D50の範囲にある最も大きなピークb:14nm、pH(1+1+1)7.4、シリカ粒子表面にSi-C結合によるケイ素原子に直結した有機基は2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル基及びフェニル基、シリカ粒子表面に結合したメトキシ基0.4個/nm2であった。)を得た。
メチルエチルケトン分散シリカゾル12を用いて、実施例5と同様の操作によって、窒素原子含有3官能エポキシ樹脂モノマー混合物分散シリカゾルを得た。得られた、窒素原子含有3官能エポキシ樹脂モノマー混合物分散シリカゾルは、SiO2濃度60.0質量%、メタノール含有量0.1質量%未満、メチルエチルケトン含有量0.1質量%未満、25℃におけるB型粘度198,000mPa・s、50℃で14日保管後の粘度230,000mPa・s、50℃で28日保管後の粘度280,000mPa・sであった。比較例6の窒素原子含有3官能エポキシ樹脂モノマー混合物分散シリカゾルは、シリカ濃度が60質量%であるときの50℃14日間保管後の粘度が、分散媒(上記窒素原子含有3官能エポキシ樹脂モノマーであるTEPIC-VLとTEPIC-FLの混合物)のみの25℃の粘度の63倍であり増粘しており、安定性は悪かった。
【0073】
(比較例7)
比較例2で得られたメタノール分散シリカゾル5を用いて、実施例7と同様に、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(添加量はシリカ粒子表面の単位面積(nm2)当たり3個)の添加及び加熱反応を実施し、その後、トリn-ペンチルアミン添加によるpH
調整を行うことで、メタノール分散シリカゾル9(SiO2濃度35質量%、粘度(20℃)1mPa・s、水分1.6質量%、メタノール0.1質量%、D50~D90の範囲にある最も大きなピークa:115nm、D10~D50の範囲にあるピークb:なし、pH(1+1+1)9、シリカ粒子表面にSi-C結合によるケイ素原子に直結した有機基はメタクリルオキシプロピル基であり、粒子表面に結合したメトキシ基1.2個/nm2であった)を得た。
得られたメタノール分散シリカゾル9の400gにメタクリレートモノマーである商品名X-850-1066(ESSTECH社製)44.4g及び商品名ライトエステル3EG(共栄社化学(株)製)44.4gを添加し、浴温100℃、200~30Torrで脱溶媒を行い、メタクリレートモノマー混合物分散シリカゾルを得た。得られたメタクリレートモノマー混合物分散シリカゾルは、SiO2濃度60.0質量%、メタノール含有量0.1質量%未満、25℃におけるB型粘度4,980mPa・s、50℃で14日保管後の粘度5,400mPa・s、50℃で28日保管後の粘度6,000mPa・sであった。比較例7のメタクリレートモノマー混合物分散シリカゾルは、シリカ濃度が60質量%で50℃14日間保管後の粘度が、分散媒(上記メタクリレートモノマーであるX-850-1066とライトエステル3EGの混合物)のみの25℃の粘度の62倍であり、増粘していた。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明のシリカゾルは、室温乃至加温時の保管でも粘度変化の少ないシリカゾルであって、シリカ粒子の表面をシラン化合物で被覆して有機溶媒又は重合性モノマーに安定に分散したシリカゾルである。
【要約】
【課題】室温乃至加温時の保管でも粘度変化の少ないシリカゾルであって、シリカ粒子の表面をシラン化合物で被覆して有機溶媒又は重合性モノマーに安定に分散したシリカゾルと製造方法を提供すること。
【解決手段】少なくとも2つのピークを有する平均粒子径分布を有するシリカ粒子を含むシリカゾルであって、前記少なくとも2つのピークとして、D50~D90の範囲にある最も大きなピークaが35nm以上200nm以下の範囲に存在し、D10~D50の範囲にある最も大きなピークbが5nm以上35nm未満の範囲に存在し、該シリカ粒子が少なくともその一部の表面にSi-C結合によりケイ素原子に直結した有機基と、メトキシ基又はエトキシ基からなるアルコキシ基とを含み、前記アルコキシ基が0.6~3.0個/nm2の割合で該シリカ粒子の表面に結合しているものであることを特徴とする上記シリカゾル。前記ピークaの域に存在するシリカ粒子A、前記ピークbの域に存在するシリカ粒子B、又はその両者がシラン化合物で被覆されている。
【選択図】 なし