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特許7360120熱電変換装置、電子機器および熱電変換装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-03
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】熱電変換装置、電子機器および熱電変換装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H10N 10/17 20230101AFI20231004BHJP
   H10N 10/13 20230101ALI20231004BHJP
   H10N 10/851 20230101ALI20231004BHJP
【FI】
H10N10/17 A
H10N10/13
H10N10/851
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019099309
(22)【出願日】2019-05-28
(65)【公開番号】P2020194873
(43)【公開日】2020-12-03
【審査請求日】2022-03-18
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成31年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業、チーム型研究(CREST)「フォノンエンジニアリングの学理探求と熱電変換デバイス開発/熱電給電ワイヤレスセンサーモジュールの作製とセンシングシステムの構築」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504097823
【氏名又は名称】SCIVAX株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野村 政宏
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 亮人
(72)【発明者】
【氏名】塩谷 俊人
(72)【発明者】
【氏名】粟屋 信義
(72)【発明者】
【氏名】田邊 大二
【審査官】宮本 博司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/065185(WO,A1)
【文献】特開2012-044029(JP,A)
【文献】国際公開第2018/042708(WO,A1)
【文献】特開2016-187008(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10N 10/17
H10N 10/13
H10N 10/851
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱伝導性が良好な材料により形成される上部構造と基板との間に、表面に平行な方向の両端の温度差に応じて電圧が生じる複数の熱電変換素子が第1の幅の第1間隙および第2の幅の第2間隙を交互にもちながら並んで配置されている熱電変換素子層を備える熱電変換装置であって、
前記上部構造と前記熱電変換素子層との間に配置され、前記上部構造を支持する上部支持構造と、
前記基板と前記熱電変換素子層との間に配置され、前記熱電変換素子層を支持する下部支持構造と、
を備え、
前記上部支持構造は、
前記第1間隙に配置された第1上部支持体と、
前記第2間隙に配置された第2上部支持体と、
を有し、
前記下部支持構造は、
前記第1間隙に配置された第1下部支持体と、
前記第2間隙に配置された第2下部支持体と、
を有し、
前記上部構造と前記第1,第2上部支持体との間に柔軟性の高い柔軟材料
を備える熱電変換装置。
【請求項2】
請求項1記載の熱電変換装置であって、
前記上部構造と前記基板との間に形成されている空隙には、空気または熱伝導率の低い低熱伝導率材料が充填されている、
熱電変換装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の熱電変換装置であって、
前記第2上部支持体は、前記第1上部支持体に比して、前記熱電変換素子層の表面に平行な断面の面積が小さくなるように形成されている、
熱電変換装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1つの請求項に記載の熱電変換装置であって、
前記第1下部支持体は、前記第2下部支持体に比して、前記熱電変換素子層の表面に平行な断面の面積が小さくなるように形成されている。
熱電変換装置。
【請求項5】
熱伝導性が良好な材料により形成される上部構造と基板との間に、表面に平行な方向の両端の温度差に応じて電圧が生じる複数の熱電変換素子が第1の幅の第1間隙および第2の幅の第2間隙を交互にもちながら並んで配置されている熱電変換素子層を備える熱電変換装置であって、
前記上部構造と前記熱電変換素子層との間に配置され、前記上部構造を支持する上部支持構造と、
前記基板と前記熱電変換素子層との間に配置され、前記熱電変換素子層を支持する下部支持構造と、
を備え、
前記上部支持構造は、
前記第1間隙に配置された第1上部支持体と、
前記第2間隙に配置された第2上部支持体と、
を有し、
前記下部支持構造は、
前記第1間隙に配置された第1下部支持体と、
前記第2間隙に配置された第2下部支持体と、
を有し、
前記熱電変換素子層は、半導体により形成されており、
前記熱電変換素子は、
p型の第1半導体領域と、
複数の前記熱電変換素子の並び方向に略垂直な方向に前記第1半導体領域と間隔をおいて並んで配置されたn型の第2半導体領域と、
前記第1,第2半導体領域が電気的に直列接続されるように、前記第1,第2半導体領域の前記並び方向の両端部に接続される複数の電極と、
を有する
熱電変換装置。
【請求項6】
請求項記載の熱電変換装置であって、
前記第1,第2半導体領域には、複数の孔が形成されている、
熱電変換装置。
【請求項7】
請求項1ないしのいずれか1つの請求項に記載の熱電変換装置と、
前記熱電変換装置により発電された電力を用いて作動する電子回路と、
を備える電子機器。
【請求項8】
熱伝導性が良好な材料により形成される上部構造と基板との間に、表面に平行な方向の両端の温度差に応じて電圧が生じる複数の熱電変換素子が第1の幅の第1間隙および第2の幅の第2間隙を交互にもちながら並んで配置されている熱電変換素子層を備える熱電変換装置であって、
前記上部構造と前記熱電変換素子層との間に配置され、前記上部構造を支持する上部支持構造と、
前記基板と前記熱電変換素子層との間に配置され、前記熱電変換素子層を支持する下部支持構造と、
を備え、
前記上部支持構造は、
前記第1間隙に配置された第1上部支持体と、
前記第2間隙に配置された第2上部支持体と、
を有し、
前記下部支持構造は、
前記第1間隙に配置された第1下部支持体と、
前記第2間隙に配置された第2下部支持体と、
を有する、
熱電変換装置の製造方法であって、
前記基板上に、前記熱電変換素子層を形成する第1ステップと、
前記熱電変換素子層上に前記上部支持構造を形成する第2ステップと、
前記基板と前記熱電変換素子層との間に、エッチングにより前記下部支持構造を形成する第3ステップと、
前記上部支持構造上に前記上部構造を接合する第4ステップと、
を備える熱電変換装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱電変換装置、電子機器および熱電変換装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の熱電変換装置としては、複数の熱電変換素子と、上部構造(熱浴)と、複数の上部支持体(熱伝導部)を有する上部支持構造と、を備えるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。複数の熱電変換素子は、基板の表面に間隙をもって並んで配置されている。上部構造は、熱伝導性が良好な材料により形成されている。上部支持構造は、基板と上部構造との間に配置されている。複数の上部支持体は、上部構造を支持している。この熱電変換装置では、基板に比して上部構造が高温になると、上部構造の熱が上部支持構造を介して熱電変換素子の一端へ伝わり、熱電変換素子の基板の表面に平行な方向の両端で温度差が生じる。熱電変換素子は、この温度差を電気に変換して発電する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-37542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の熱電変換装置では、熱電変換素子が基板と密着して基板の面内方向に形成されていることから、熱電変換素子の両端の温度差が小さくなり、電圧、発電量が共に低下してしまう。また、複数の上部支持体で上部構造を支持しているが、上部支持体での支持の機械的強度が十分ではない場合がある。
【0005】
本発明の熱電変換装置、電子機器および熱電変換装置の製造方法は、電圧、発電量および機械的強度の向上を図ることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の熱電変換装置、電子機器および熱電変換装置の製造方法は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の熱電変換装置は、
熱伝導性が良好な材料により形成される上部構造と基板との間に、表面に平行な方向の両端の温度差に応じて電圧が生じる複数の熱電変換素子が第1の幅の第1間隙および第2の幅の第2間隙を交互にもちながら並んで配置されている熱電変換素子層を備える熱電変換装置であって、
前記上部構造と前記熱電変換素子層との間に配置され、前記上部構造を支持する上部支持構造と、
前記基板と前記熱電変換素子層との間に配置され、前記熱電変換素子層を支持する下部支持構造と、
を備え、
前記上部支持構造は、
前記第1間隙に配置された第1上部支持体と、
前記第2間隙に配置された第2上部支持体と、
を有し、
前記下部支持構造は、
前記第1間隙に配置された第1下部支持体と、
前記第2間隙に配置された第2下部支持体と、
を有する、
ことを要旨とする。
【0008】
この本発明の熱電変換装置では、上部構造と熱電変換素子層との間に配置され、上部構造を支持する上部支持構造と、基板と熱電変換素子層との間に配置され、熱電変換素子層を支持する下部支持構造と、を備える。上部支持構造は、第1間隙に配置された第1上部支持体と、第2間隙に配置された第2上部支持体と、を有する。下部支持構造は、第1間隙に配置された第1下部支持体と、少なくとも一部が記熱電変換素子にかかるように第2間隙に配置された第2下部支持体と、を有する。上部構造は、外部と良好に熱交換を行なう。上部構造からの熱は、主として、第1間隙に配置された上部支持構造の第1上部支持体を介して熱電変換素子の一端に伝わる。基板からの熱は、主として、第2間隙に配置された下部支持構造の第2下部支持体を介して熱電変換素子の別の一端に伝わる。したがって、熱電変換素子の表面に平行な方向の両端は、上部構造と基板との温度差に対応する温度差となり、熱電変換素子が間隙なしで基板に密着して形成されているものに比して、温度差が大きくなる。これにより、熱電変換装置の電圧と発電量との向上を図ることができる。また、熱電変換素子間の第1,第2間隙に設けられた第1,第2上部支持体で上部構造を支持すると共に、第1,第2下部支持体で熱電変換素子層を支持するから、十分な機械的強度を得ることができる。この結果、電圧、発電量および機械的強度の向上を図ることができる。なお、「第1の幅」と「第2の幅」とは、同じ幅でもよいし、異なる幅でもよい。また、熱電変換素子層では、上部構造との間に、複数の熱電変換素子が、隣の熱電変換素子と線対称または点対称に並んで配置されていてもよい。
【0009】
こうした本発明の熱電変換装置において、前記上部構造と前記基板との間に形成されている空隙には、空気または熱伝導率の低い低熱伝導率材料が充填されていてもよい。こうすれば、空隙が熱伝導率の比較的高い材料で充填されているものに比して、熱電変換素子の両端の温度差を大きくすることができ、熱電変換装置の電圧、発電量の向上を図ることができる。ここで、「低熱伝導率材料」は、例えば、樹脂やエアロゲルなど、第1,第2上部支持体、第1,第2下部支持体、熱電変換層を形成する材料に比して熱伝導率が低いものであればよい。
【0010】
また、本発明の熱電変換装置において、前記第2上部支持体は、前記第1上部支持体に比して、前記熱電変換素子層の表面に平行な断面の面積が小さくなるように形成されていてもよい。こうすれば、上部構造から第1上部支持体を介して熱電変換素子の一端へ伝わる熱が、上部構造から第2上部支持体を介して熱電変換素子の他端へ伝わる熱より多くなるから、熱電変換素子の両端の温度差を大きくすることができる。これにより、熱電変換装置の電圧、発電量の向上を図ることができる。
【0011】
さらに、本発明の熱電変換装置において、前記第1下部支持体は、前記第2下部支持体に比して、前記熱電変換素子層の表面に平行な断面の面積が小さくなるように形成されていてもよい。こうすれば、熱電変換素子の一端から第1下部支持体を介して基板へ伝わる熱が、熱電変換素子の他端から第2下部支持体を介して基板へ伝わる熱よりも少なくなるから、熱電変換素子の両端の温度差を大きくすることができる。これにより、熱電変換装置の電圧、発電量の向上を図ることができる。
【0012】
そして、本発明の熱電変換装置において、前記上部構造と前記第1,第2上部支持体との間に柔軟性の高い柔軟材料、を備えていてもよい。こうすれば、柔軟材料を介して上部構造と第1,第2上部支持体との接触性を向上させることができる。
【0013】
また、本発明の熱電変換装置において、前記熱電変換素子層は、半導体により形成されており、前記熱電変換素子は、p型の第1半導体領域と、複数の前記熱電変換素子の並び方向に略垂直な方向に前記第1半導体領域と間隔をおいて並んで配置されたn型の第2半導体領域と、前記第1,第2半導体領域が電気的に直列接続されるように、前記第1,第2半導体領域の前記所定方向の両端部に接続される複数の電極と、を有していてもよい。この場合において、前記第1,第2半導体領域には、複数の孔が形成されていてもよい。こうすれば、熱電変換素子において、フォノンの表面散乱を増大させることで熱抵抗を増加させることができる。これにより、熱電変換素子の両端の温度差を大きくすることができ、熱電変換装置の電圧、発電量をより向上させることができる。
【0014】
本発明の電子機器は、
上述したいずれかの態様の熱電変換装置、即ち、基本的には、熱伝導性が良好な材料により形成される上部構造と基板との間に、表面に平行な方向の両端の温度差に応じて電圧が生じる複数の熱電変換素子が第1の幅の第1間隙および第2の幅の第2間隙を交互にもちながら並んで配置されている熱電変換素子層を備える熱電変換装置であって、前記上部構造と前記熱電変換素子層との間に配置され、前記上部構造を支持する上部支持構造と、前記基板と前記熱電変換素子層との間に配置され、前記熱電変換素子層を支持する下部支持構造と、を備え、前記上部支持構造は、前記第1間隙に配置された第1上部支持体と、前記第2間隙に配置された第2上部支持体と、を有し、前記下部支持構造は、前記第1間隙に配置された第1下部支持体と、前記第2間隙に配置された第2下部支持体と、を有する、熱電変換装置と、
前記熱電変換装置により発電された電力を用いて作動する電子回路と、
を備えることを要旨とする。
【0015】
この本発明の電子機器では、上述したいずれかの態様の本発明の熱電変換装置を備えるから、上述したいずれかの態様の本発明の熱電変換装置が奏する効果、例えば、電圧、発電量および機械的強度の向上を図ることができる効果などと同一の効果を奏する。
【0016】
本発明の熱電変換装置の製造方法は、
熱伝導性が良好な材料により形成される上部構造と基板との間に、表面に平行な方向の両端の温度差に応じて電圧が生じる複数の熱電変換素子が第1の幅の第1間隙および第2の幅の第2間隙を交互にもちながら並んで配置されている熱電変換素子層を備える熱電変換装置であって、
前記上部構造と前記熱電変換素子層との間に配置され、前記上部構造を支持する上部支持構造と、
前記基板と前記熱電変換素子層との間に配置され、前記熱電変換素子層を支持する下部支持構造と、
を備え、
前記上部支持構造は、
前記第1間隙に配置された第1上部支持体と、
前記第2間隙に配置された第2上部支持体と、
を有し、
前記下部支持構造は、
前記第1間隙に配置された第1下部支持体と、
前記第2間隙に配置された第2下部支持体と、
を有する、
熱電変換装置の製造方法であって、
前記基板上に、前記熱電変換素子層を形成する第1ステップと、
前記熱電変換素子層上に前記上部支持構造を形成する第2ステップと、
前記基板と前記熱電変換素子層との間に、エッチングにより前記下部支持構造を形成する第3ステップと、
前記上部支持構造上に前記上部構造を接合する第4ステップと、
を備えることを要旨とする。
【0017】
この本発明の熱電変換装置の製造方法では、基板上に、熱電変換素子層を形成する。そして、熱電変換素子層上に上部支持構造を形成する。さらに、基板と熱電変換素子層との間に、エッチングにより下部支持構造を形成する。そして、上部支持構造上に上部構造を接合する。これにより、熱電変換装置、即ち、基本的には、表面に平行な方向の両端の温度差に応じて発電する複数の熱電変換素子が第1,第2間隙を交互にもちながら対称に並ぶように配置されている熱電変換素子層を、基板と熱伝導性が良好な材料により形成される上部構造との間に備える熱電変換装置であって、上部構造と熱電変換素子層との間に配置され、上部構造を支持する上部支持構造と、基板と熱電変換素子層との間に配置され、熱電変換素子層を支持する下部支持構造と、を備え、上部支持構造は、第1間隙に配置された第1上部支持体と、第2間隙に配置された第2上部支持体と、を有し、下部支持構造は、第1間隙に配置された第1下部支持体と、第2間隙に配置された第2下部支持体と、を有する、熱電変換装置を製造することができる。これにより、熱電変換装置において、電圧、発電量および機械的強度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施例としての熱電変換装置20を搭載したセンサノード(無線端末)10の構成の概略を示す構成図である。
図2】本発明の一実施例としての熱電変換装置20の外観の概略を示す概略図である。
図3図2において上部構造24を除いた様子の概略を示す概略図である。
図4】熱電変換装置20の要部の概略を示す概略図である。
図5図4のAA線での断面の概略を示す概略図である。
図6】上部構造24を基板22より高温としたときの熱電変換装置20の隣合う2つの熱電変換素子32の上面における温度の分布の一例を示す説明図である。
図7】熱電変換装置20の製造工程の一例を示す工程図である。
図8】熱電変換装置20を形成する基板22の断面および平面の構成を説明するための説明図である。
図9】p型の半導体領域R1,n型の半導体領域R2を形成した後の基板22の断面および平面の構成を説明するための説明図である。
図10】複数の電極ELを形成した後の基板22の断面および平面の構成を説明するための説明図である。
図11】上部支持構造40を形成した後の基板22の断面および平面の構成を説明するための説明図である。
図12】下部支持構造42を形成した後の基板22の断面および平面の構成を説明するための説明図である。
図13】上部構造24を形成した後の基板22の断面の構成を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例
【0020】
図1は、本発明の一実施例としての熱電変換装置20を搭載したセンサノード(無線端末)10の構成の概略を示す構成図である。センサノード10は、センサ12と、情報送信器14と、電源装置16と、を備える。
【0021】
センサ12は、トンネル内の状態、例えば、温度や湿度、圧力、漏水の有無など検出や特定のガスの検出を可能な検出装置として構成されている。センサ12は、検出値を情報送信器14へ送信している。
【0022】
情報送信器14は、センサ12から入力される検出値を無線通信により、図示しない他のセンサノード10や中継器、ホストコンピュータ(いずれも図示せず)などへ送信している。センサ12および情報送信器14は、電源装置16からの電力で作動する。
【0023】
電源装置16は、蓄電器18と、熱電変換装置20と、電力調整回路19と、を備える。熱電変換装置20は、温度差を電力を変換することで環境発電を行なう装置として構成されている。熱電変換装置20の詳細な構成については、後述する。蓄電器18は、熱電変換装置20により発電された電力を蓄電すると共に、電力調整回路19へ供給する。電力調整回路19は、蓄電器18からの電力で作動し、蓄電器18からの電力の電圧を調整して情報送信器14に供給する。なお、蓄電器18としては、コンデンサや、電池や鉛蓄電池などの充放電可能な二次電池、などが挙げられる。
【0024】
センサノード10は、例えば、トンネルの内壁面に複数配置され、ワイヤレスセンサネットワークの一部をなす。センサノード10は、他のセンサノード10やホストコンピュータなどとの間でセンサ12により検出された検出値や各種信号をやり取りする。センサ12により検出された検出値や各種信号のやり取りは、情報送信器14による無線通信で行なわれる。
【0025】
次に、こうして構成されるセンサノード10に搭載される熱電変換装置20の構成について説明する。図2は、本発明の一実施例としての熱電変換装置20の外観の概略を示す概略図である。図3は、図2において上部構造24を除いた様子の概略を示す概略図である。図4は、熱電変換装置20の要部の概略を示す概略図である。図5は、図4のAA線での断面の概略を示す概略図である。なお、図2図5において、円孔Rcの個数は、説明のため、実際より少なく記載されている。
【0026】
熱電変換装置20は、基板22と、上部構造24と、熱電変換素子層30と、上部支持構造40と、下部支持構造42と、を備える。
【0027】
基板22は、熱伝導性が良好な材料、例えば、単結晶のシリコンにより形成されている。
【0028】
上部構造24は、熱伝導性が良好な材料、例えば、シリコンや窒化アルミニウムなどの半導体、アルミニウムや銅などの金属、カーボンナノチューブなどのカーボン系材料、樹脂材料のいずれかなどにより形成されている。上部構造24は、熱電変換素子層30に形成された後述の熱電変換素子32との間の放射熱伝導や構造の平坦性、上部構造24の面内寸法に基づく機械的強度を考慮して、1~5μmの厚さ、好ましくは、3μmの厚さに形成されている。
【0029】
熱電変換素子層30は、熱電変換材料、例えば、多結晶のシリコンにより、基板22と上部構造24との間に形成されている。熱電変換素子層30は、後述する半導体領域R1,R2に円孔Rcを形成しても割れない機械的強度を有する厚さ、例えば、100nm~500nm、好ましくは、300nmの厚さに形成されている。熱電変換素子層30において、複数の熱電変換素子32は、幅W1(例えば、8μm~12μm)の間隙34と幅W2(実施例では、幅W1と同一の幅)の間隙36を交互にもちながら線対称に並んで配置されている。間隙34には、複数のスリットSが形成されている。なお、実施例では、幅W2は、幅W1と同一の幅としているが、異なる幅としてもよい。
【0030】
熱電変換素子32は、p型の半導体領域R1と、半導体領域R1と対となるn型の半導体領域R2と、複数の電極ELと、を備えている。半導体領域R1,R2は、隣合う熱電変換素子32が対称な配置となるように、複数の熱電変換素子32の並び方向DLおよび並び方向DLに略垂直な方向に間隔をおいて交互に並んで配置されている。半導体領域R1,R2は、複数の熱電変換素子32の並び方向DLにおいて、5μm~7μm、好ましくは6μmの長さで、並び方向DLに垂直な方向において、10μm~14μm、好ましくは12μmの長さに形成されている。半導体領域R1,R2には、半径が90nm~130nm、好ましくは、100nmの複数の円孔Rcが300nmの間隔もって並ぶように形成されている。
【0031】
複数の電極ELは、電気伝導性が良好な材料、例えば、アルミニウムにより形成されている。複数の電極ELは、50nm~300nm、好ましくは、250nmの厚さに形成されており、対となる半導体領域R1,R2が電気的に直列に接続されるように、半導体領域R1,R2の複数の熱電変換素子32の並び方向DLの両端部に接続されている。
【0032】
上部支持構造40は、上部構造24と熱電変換素子層30との間に配置されている。上部支持構造40は、熱伝導性が良好なレジスト材料、例えば、Clariant社製AZ1500などにより、1μm~5μmの厚さ、好ましくは、3μmの厚さに形成されている。上部支持構造40は、一部が熱電変換素子32の電極ELにかかるように間隙34上に配置された複数の上部支持体40aと、間隙36上に配置された複数の上部支持体40bと、を備えており、上部支持体40a,40bで上部構造24を支持している。複数の上部支持体40aは、1つの間隙34に対して略平行に2つの割合で配置されており、互いに同一の形状となっている。複数の上部支持体40bは、1つの間隙36に対して図2,3における奥行き方向に間隔をおいて3つ配置されており、互いに同一の形状となっている。上部支持体40aと上部支持体40bとの間の空隙40gには、空気が充填されている。上部支持体40bは、上部支持体40aに比して、熱電変換素子層30の表面に平行な方向の断面の面積が小さくなるように形成されている。なお、複数の上部支持体40aは、電極ELの上部からはみださないように電極ELの上部のみに形成されていても構わない。
【0033】
下部支持構造42は、基板22と熱電変換素子層30との間に配置されている。下部支持構造42は、シリコン酸化物(SiO2)により形成されている。下部支持構造42は、基板22と熱電変換素子層30の放射熱伝導や下部支持構造42の面内寸法をもちいて機械的強度を考慮して、1μm~3μmの厚さ、好ましくは、2μmの厚さに形成されている。下部支持構造42は、間隙34下に配置された複数の下部支持体42aと、一部が熱電変換素子32にかかるように間隙36下に配置された複数の下部支持体42bと、を備えており、複数の下部支持体42a,42bで熱電変換素子層30を支持している。下部支持体42aと下部支持体42bとの間の空隙42gには、空気が充填されている。下部支持体42aは、下部支持体42bに比して、熱電変換素子層30の表面に平行な方向の断面が小さくなるように形成されている。
【0034】
次に、こうして構成された熱電変換装置20において、上部構造24を基板22より高温としたときの動作について説明する。
【0035】
図6は、上部構造24を基板22より高温としたときの隣合う2つの熱電変換素子32の上面における温度の分布の一例を示す説明図である。図6では、上部構造24の温度は、基板22に比して高くなっている。なお、図中、温度が低いほど色が濃くなるように記載されている。また、上部構造24については記載を省略している。図示するように、熱電変換素子32では、並び方向DLの両端で温度差ΔTが生じている。熱電変換素子32にこうした温度差ΔTが生じるのは、以下の理由に基づく。
【0036】
上部構造24の熱は、上部支持構造40の上部支持体40a,40bを介して熱電変換素子32に伝わる。上部支持体40aは、一部が熱電変換素子32にかかるように間隙34に配置されており、上部支持体40bは、間隙36に配置されている。また、上部支持体40bは、上部支持体40aに比して、熱電変換素子層30の表面に平行な方向の断面が小さくなるように形成されている。したがって、上部構造24からの熱は、上部支持体40aを介して、熱電変換素子32の間隙34に近い領域に伝わる。下部支持体42bは、一部が熱電変換素子32にかかるように間隙36に配置されており、下部支持体42aは、間隙34に配置されている。したがって、基板22からの熱は、下部支持体42bを介して、熱電変換素子32の間隙36に近い領域に伝わる。これにより、熱電変換素子層30の熱電変換素子32の並び方向DLの両端には、上部構造24と基板22との温度差に対応する温度差ΔTが生じる。
【0037】
熱電変換素子32が基板22に密着して形成されている従来の熱電変換装置では、熱電変換素子32の並び方向DLの両端間で基板22を介して熱が伝わる。そのため、熱電変換素子32の並び方向DLの両端にかかる温度差ΔTが小さくなり、電圧および発電量が小さくなる。実施例の熱電変換装置20では、熱電変換素子32が基板22に形成されておらず、上述した構成であることから、従来の熱電変換装置に比して、熱電変換素子32の並び方向DLの両端にかかる温度差ΔTが大きくなる。さらに、熱電変換素子32のp型の半導体領域R1とn型の半導体領域R2とに複数の円孔Rcが形成されていることから、熱電変換素子32において、フォノン散乱が増大することで熱伝導率が低下する。したがって、熱電変換素子32の両端にかかる温度差ΔTがさらに大きくなるから、熱電変換素子32、ひいては、熱電変換装置20の電圧、発電量の向上が図られている。
【0038】
また、熱電変換素子32間の間隙34,36に設けられた上部支持体40a,40bで上部構造24を支持すると共に、下部支持体42a,42bで熱電変換素子層30を支持するから、間隙34に上部支持体を配置せずに間隙36のみに上部支持体を配置するものや、間隙36に下部支持体を配置せずに間隙34のみに下部支持体を配置するものに比して、外部からの衝撃に対して機械的強度の向上を図ることができる。これにより、電圧、発電量および機械的強度の向上を図ることができる。
【0039】
次に、こうした熱電変換装置20の製造方法について説明する。図7は、熱電変換装置20の製造工程の一例を示す工程図である。図8は、熱電変換装置20を形成する基板22の断面および平面の構成を説明するための説明図である。図9は、p型の半導体領域R1,n型の半導体領域R2を形成した後の基板22の断面および平面の構成を説明するための説明図である。図10は、複数の電極ELを形成した後の基板22の断面および平面の構成を説明するための説明図である。図10は、複数の電極ELを形成した後の基板22の断面および平面の構成を説明するための説明図である。図11は、上部支持構造40を形成した後の基板22の断面および平面の構成を説明するための説明図である。図12は、下部支持構造42を形成した後の基板22の断面の構成を説明するための説明図である。図13は、上部構造24を形成した後の基板22の断面および平面の構成を説明するための説明図である。図8図12において、断面の概略を図面上部、平面の概略を図面下部に配置している。上部構造24については、記載を省略している。
【0040】
熱電変換装置20を製造するに当たり、シリコンにより形成された基板22上に1μm~3μm、好ましくは、2μmの厚さのシリコン酸化膜102と、100~500nm、好ましくは、300nmの多結晶のシリコン層104と、がこの順で積層されたSOIウェハ100を準備する(図8)。
【0041】
最初に、SOIウェハ100に複数の熱電変換素子32を有する熱電変換素子層30を形成する(ステップS100)。熱電変換素子層30、即ち、複数の熱電変換素子32の形成は、まず、SOIウェハ100のシリコン層104にp型の半導体領域R1,n型の半導体領域R2を間隙34,36を交互にもちながら並ぶと共に並び方向DLに垂直な方向に半導体領域R1,R2が交互に間隔をおいて並ぶように形成し(図9)、半導体領域R1,R2の並び方向DLの端部に50nm~300nmの厚さ、好ましくは、250nmの厚さの複数の電極ELを形成する(図10)。不純物が導入された(ドープされた)半導体領域R1,R2の形成は、塗布したレジストをフォトリソグラフィや電子線描画、ナノインプリント法を用いてパターニングし、レジストをマスクとした不純物のドーピングやエッチングにより行なわれる。ドープされた半導体領域R1,R2は、並び方向DLに6μm、並び方向DLと垂直な方向に12μmの長方形となり、半径100nmの複数の円孔Rcが300nm間隔で並ぶように形成される。このとき、間隙34には、複数のスリットSも形成する。電極ELの形成は、SOIウェハ100の全面にレジストを塗布し、フォトリソグラフィ法を用いて電極ELが配置される部分のレジストが除去されるように露光、現像し、蒸着やスパッタリングで電極ELを構成する金属(実施例では、アルミニウム)を蒸着し、レジストと共にレジスト上の金属をリフトオフすることにより行なわれる。
【0042】
次に、上部支持構造40を形成する(ステップS110)。上部支持構造40の形成は、スピンコート法などによりレジスト材料(例えば、Clariant社製AZ1500など)を厚さ3μm~5μm、好ましくは、4μm塗布し、フォトリソグラフィなどにより、一部が熱電変換素子32にかかるように間隙34に配置された上部支持体40aと、上部支持体40aと間隔をおいて間隙36に配置された上部支持体40bと、を形成することにより行なわれる(図11)。
【0043】
そして、下部支持構造42を形成する(ステップS120)。下部支持構造42の形成は、ドープされた半導体領域R1,R2の複数の円孔RcやスリットSから気相フッ化水素をシリコン酸化膜102へ導入して、シリコン酸化膜102を等方性エッチングすることにより行なわれる。したがって、半導体領域R1,R2の複数の円孔RcやスリットSから遠い位置のシリコン酸化膜102が残されて、下部支持体42a,42bが形成される(図12)。スリットSは、こうしたエッチングにより形成する下部支持体42a,42bの位置を考慮して配置される。
【0044】
こうした下部支持構造42を形成すると、上部支持構造40の上部にシリコンからなるウェハを貼り合わせて、上部構造24を形成して(ステップS130)、本製造工程を終了する(図13)。こうした製造工程により、電圧、発電量および機械的強度が向上した熱電変換装置20を製造できる。
【0045】
以上説明した実施例の熱電変換装置20では、上部構造24と熱電変換素子層30との間に配置され、上部構造24を支持する上部支持構造40と、基板22と熱電変換素子層30との間に配置され、熱電変換素子層30を支持する下部支持構造42と、を備え、上部支持構造40は、間隙34に配置された上部支持体40aと、間隙36に配置された上部支持体40bと、を有し、下部支持構造42は、間隙34に配置された下部支持体42aと、間隙36に配置された下部支持体42bと、を有することにより、電圧、発電量および機械的強度の向上を図ることができる。
【0046】
また、上部構造24と基板22との間の空隙(空隙40g,42g)には、空気が充電されているから、熱電変換素子32の両端の温度差ΔTをより大きくすることができ、熱電変換装置20の電圧、発電量の更なる向上を図ることができる。
【0047】
さらに、上部支持体40bは、上部支持体40aに比して、熱電変換素子層30の表面に平行な断面の面積が小さくなるように形成されているから、熱電変換素子32の上部構造24から上部支持体40bを介して各熱電変換素子32に伝わる熱が、上部構造24から上部支持体40bを介して各熱電変換素子32に伝わる熱より多くなる。これにより、熱電変換素子32の両端の温度差ΔTをより大きくすることができ、熱電変換装置20の電圧、発電量の更なる向上を図ることができる。
【0048】
そして、下部支持体42aは、下部支持体42bに比して、熱電変換素子層30の表面に平行な断面の面積が小さくなるように形成されているから、熱電変換素子32の一端から下部支持体42aを介して基板22へ伝わる熱が、熱電変換素子32の他橋から下部支持体42bを介して基板22へ伝わる熱よりも少なくなる。これにより、熱電変換素子32の両端の温度差ΔTをより大きくすることができ、熱電変換装置20の電圧、発電量の更なる向上を図ることができる。
【0049】
また、半導体領域R1,R2には、複数の円孔Rcが形成されているから、熱電変換素子32の両端の温度差ΔTをより大きくすることができ、熱電変換装置20の電圧、発電量の更なる向上を図ることができる。
【0050】
さらに、実施例の熱電変換装置20では、上述した熱電変換装置20を製造できるから、電圧、発電量および機械的強度の向上を図ることができる。
【0051】
また、実施例の熱電変換装置20と、情報送信器14と、を備えるセンサノード10では、電圧、発電量および機械的強度の向上を図ることができる。
【0052】
さらに、実施例の熱電変換装置20を製造する方法では、基板22上に、熱電変換素子層30を形成し、熱電変換素子層30上に上部支持構造40を形成し、基板22と熱電変換素子層30との間に、エッチングにより下部支持構造42を形成し、上部支持構造40上に上部構造24を接合することにより、電圧、発電量および機械的強度の向上が図られた熱電変換装置20を製造することができる。即ち、熱電変換装置20において、電圧、発電量および機械的強度を向上させることができる。
【0053】
実施例の熱電変換装置20では、上部支持体40bを、上部支持体40aに比して、熱電変換素子層30の表面に平行な断面の面積が小さくなるように形成している。しかしながら、熱起電力が打ち消しあわないように電極ELの配線を適切に設計したうえで、上部支持体40a,40bの熱電変換素子層30の表面に平行な断面の面積を同一の面積としてもよい。
【0054】
実施例の熱電変換装置20では、下部支持体42aと下部支持体42bとで形成する空隙42gに空気が充填されているが、樹脂やエアロゲルなど熱伝導率の低い低熱伝導率材料が充填されていてもよい。
【0055】
実施例の熱電変換装置20では、上部支持体40aを、1つの間隙34に対して2つの割合で配置している。しかしながら、上部支持体40aを、1つの間隙34に対して1つ配置していてもよい。また、上部支持体40aを、1つの間隙34に対して図2図3における奥行き方向において間隔をおいて複数配置していてもよい。この間隔は、等間隔でもよいし、異なる間隔でもよい。
【0056】
実施例の熱電変換装置20では、上部支持体40bを、1つの間隙36に対して図2,3における奥行き方向に間隔をおいて3つ配置している。しかしながら、上部支持体40bを、1つの間隙36に対して図2,3における奥行き方向に間隔をおいて3つより多い個数配置したり、1つの間隙36に対して1つの割合で配置してもよい。
【0057】
実施例の熱電変換装置20では、下部支持体42a,42bを、1つの間隙34,36に対して1つの割合で配置している。しかしながら、下部支持体42a,42bを、1つの間隙34,36に対して図2図3における奥行き方向に間隔をおいて複数配置していてもよい。この間隔は、等間隔でもよいし、異なる間隔でもよい。
【0058】
実施例の熱電変換装置20では、複数の上部支持体40a,40b,下部支持体42a,42bを、互いに同一の形状としているが、互いに異なる形状としてもよい。
【0059】
実施例の熱電変換装置20では、熱電変換素子32をp型の半導体領域R1とn型の半導体領域R2とを備えるものとしている。しかしながら、熱電変換素子32をp型の半導体領域R1やn型の半導体領域R2のみを備えるものとしてもよい。また、必ずしも規則正しく並んでいなくてもよいし、大きさに違いがあってもよい。
【0060】
実施例の熱電変換装置20では、半導体領域R1,R2は、隣合う熱電変換素子32が対称な配置となるように、複数の熱電変換素子32の並び方向DLおよび並び方向DLに略垂直な方向に交互に並んで配置されている。しかしながら、複数の熱電変換素子32の並び方向DLにおいては導電型が同じ半導体領域R1または半導体領域R2が並ぶように配置し、並び方向DLに略垂直な方向においては半導体領域R1,R2が交互に並んで配置されるようにしてもよい。
【0061】
実施例の熱電変換装置20では、熱電変換素子32の半導体領域R1,R2に複数の円孔Rcを形成している。しかしながら、半導体領域R1,R2に形成される孔の形状は、円形のものに限定されるものではなく、種々の形状に形成してもよい。また、半導体領域R1,R2には、複数の円孔Rcの間隔が等間隔となっている。しかしながら、半導体領域R1,R2に形成される複数の孔の間隔を等間隔にしてなくてもよい。さらに、半導体領域R1,R2に孔を形成しなくてもよい。半導体領域R1,R2に孔を形成しない場合には、熱電変換素子層30を、500nmより厚く1μm以下の厚さに形成してもよい。さらに、複数の円孔Rcは、規則正しく並んでいなくてもよいし、大きさに違いがあってもよい。
【0062】
実施例の熱電変換装置20では、熱電変換素子層30において、複数の熱電変換素子32は、線対称に並んで配置されている。しかしながら、熱電変換素子層30において、複数の熱電変換素子32は、点対称に並んで配置されていてもよいし、対称に配置されていなくてもよい。
【0063】
実施例の熱電変換装置20では、上部支持構造40(上部支持体40a,40b)上に上部構造24を接合している。しかしながら、上部支持構造40と上部構造24との間にハンダなど柔軟性の高い柔軟材料を備えていてもよい。こうすれば、上部支持構造40と上部構造24との接触抵抗が低減するから、上部構造24から上部支持構造40へ良好に熱を伝導させることができる。
【0064】
実施例の熱電変換装置20では、熱電変換素子層30には複数のスリットSが形成されている。しかしながら、複数のスリットSは、下部支持構造42を形成した後に、多結晶のシリコンなどにより埋められてもよい。
【0065】
実施例の熱電変換装置20では、上部構造24を基板22より高温としているが、上部構造24を基板22より低温としてもよい。
【0066】
実施例の熱電変換装置20では、基板22をシリコンにより形成しているが、シリコンと異なる半導体や、銅やアルミニウムなどの金属、炭化ケイ素などのセラミックス、炭素系材料、高熱伝導性樹脂などにより形成してもよい。
【0067】
実施例では、本発明をセンサ12と情報送信器14と電源装置16とを備えるセンサノード(無線端末)10に適用する場合について説明した。しかしながら、本発明は、センサノード10に適用する場合に限定されるものではなく、熱電変換装置20により発電された電力を用いて作動する電子回路、例えば、画像を撮影する撮像装置など備える電子機器であれば、如何なるものに適用しても構わない。
【0068】
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、熱電変換装置について、熱電変換素子層30が「熱電変換素子層」に相当し、上部構造24が「上部構造」に相当し、基板22が「基板」に相当し、上部支持構造40が「上部支持構造」に相当し、下部支持構造42が「下部支持構造」に相当し、上部支持体40aが「第1上部支持体」に相当し、上部支持体40bが「第2上部支持体」に相当し、下部支持体42aが「第1下部支持体」に相当し、下部支持体42bが「第2下部支持体」に相当する。また、実施例では、熱電変換装置の製造方法について、ステップS100が「第1ステップ」に相当し、ステップS110が「第2ステップ」に相当し、ステップS120が「第3ステップ」に相当し、ステップS130が「第4ステップ」に相当する。
【0069】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、熱電変換装置の製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0071】
10 センサノード(無線端末)、12 センサ、14 情報送信器、16 電源装置、18 蓄電器、19 電力調整回路、20 熱電変換装置、22 基板、24 上部構造、30 熱電変換素子層、32 熱電変換素子、34,36 間隙、40 上部支持構造、40a,40b 上部支持体、40g 空隙、42 下部支持構造、42a,42b 下部支持体、42g 空隙、100 SOIウェハ、102 シリコン酸化膜、104 シリコン層、R1,R2 半導体領域。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13