(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-03
(45)【発行日】2023-10-12
(54)【発明の名称】漏洩同軸ケーブル敷設構造、漏洩同軸ケーブルの敷設方法、漏洩同軸ケーブルを収納するトラフ本体及び漏洩同軸ケーブル敷設構造を用いた通信方法並びに通信システム
(51)【国際特許分類】
H02G 9/04 20060101AFI20231004BHJP
H01Q 13/22 20060101ALI20231004BHJP
H02G 1/06 20060101ALI20231004BHJP
F16L 3/10 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
H02G9/04
H01Q13/22
H02G1/06
F16L3/10 A
(21)【出願番号】P 2019224006
(22)【出願日】2019-12-11
【審査請求日】2022-11-02
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【復代理人】
【識別番号】100156410
【氏名又は名称】山内 輝和
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】和田 直人
(72)【発明者】
【氏名】平野 大介
(72)【発明者】
【氏名】小澤 聡
(72)【発明者】
【氏名】堀 高誌
(72)【発明者】
【氏名】天辰 直樹
(72)【発明者】
【氏名】高橋 誠一郎
【審査官】鈴木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】実開昭52-118996(JP,U)
【文献】実開昭63-131528(JP,U)
【文献】特開平06-284544(JP,A)
【文献】実開昭62-119117(JP,U)
【文献】実開昭61-098330(JP,U)
【文献】特開2017-038449(JP,A)
【文献】特開2019-186998(JP,A)
【文献】特開2014-011881(JP,A)
【文献】特開2016-060849(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02975717(EP,A1)
【文献】実開平04-031811(JP,U)
【文献】実開昭48-000093(JP,U)
【文献】特開平09-083243(JP,A)
【文献】特開2003-189437(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 9/00-9/12
H02G 1/06
H01Q 13/22
F16L 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製のトラフ本体およびトラフ蓋と、
前記トラフ本体に収容される漏洩同軸ケーブルと、
を具備し、
前記トラフ本体は、底部と、前記底部の両側に起立する側壁部を有し、前記トラフ本体に前記トラフ蓋が被冠されたトラフが形成する閉空間において、前記トラフの長手方向の所定位置に、樹脂製及び/またはゴム製のケーブル支持部材が配置され、前記ケーブル支持部材の支持部に、支持線を下側に向けて前記漏洩同軸ケーブルが載置され、
前記トラフ本体は略U字型断面を有しており、前記トラフ本体と前記トラフ蓋の一方の端部と他方の端部にそれぞれ接続部が形成され、それぞれの前記接続部を接続することで複数の前記トラフを連結することが可能なものであり、
さらに、相互に隣接する前記トラフ本体と前記トラフ蓋が被冠された前記トラフを所定個数連接して形成されたトラフ構造体において、前記トラフ構造体が形成する閉空間の内部の長手方向の所定位置に、所定間隔で複数の前記ケーブル支持部材が配置され、前記ケーブル支持部材は、いずれの位置に配置された前記ケーブル支持部材においても、前記ケーブル支持部材の所定高さに形成された前記支持部に前記漏洩同軸ケーブルが載置され、
前記ケーブル支持部材の前記支持部が、前記漏洩同軸ケーブルが収納可能なように略半円形状に形成され、前記漏洩同軸ケーブルが、前記ケーブル支持部材の前記支持部に、前記トラフの前記底部から所定の高さで、所定角度に支持されるもので、
前記トラフ本体の前記底部には、トラフ固定用ボルト挿通孔が設けられ、前記トラフ固定用ボルト挿通孔に挿通されたアンカーボルトによって、前記トラフ本体がコンクリート地盤へ固定される漏洩同軸ケーブル敷設構造において、
前記トラフ本体の底部の裏面の幅方向の中央にトラフ長手方向に沿って所定長さを有する溝を挟んで相互に対向する下方に向かって突出する一対のリブが形成され、
前記トラフ固定用ボルト挿通孔は、前記リブ間の長手方向と幅方向の略中央に、前記トラフ本体の長手方向に向けて形成された長穴状の既設の
トラフ固定用ボルト挿通孔、また
は前記リブ間の溝の
任意の位置に形成する
ことが可能な前記トラフ固定用ボルト挿通孔のいずれか
の挿通孔に挿通されたアンカーボルトによって、前記トラフ本体がコンクリート地盤へ固定される際に、アンカー
ナットの固定位置に対応するように前記トラフ固定用ボルト挿通孔の形成位置を調整することが可能なものであることを特徴とする漏洩同軸ケーブル敷設構造。
【請求項2】
前記トラフ本体の接続部の接続角度を左右方向、上下方向の少なくともいずれかに調整することで、前記トラフ固定用ボルト挿通孔へのアンカーボルト挿通時におけるボルト固定位置調整によるトラフ本体の長手方向の形成位置の距離の調整の他、トラフ本体の幅方向及びまたは垂直方向の固定位置の位置ずれの両者を調整することが可能なことを特徴とする請求項1に記載の漏洩同軸ケーブル敷設構造。
【請求項3】
前記ケーブル支持部材が、前記トラフ構造体の2m以上6m以下の間隔ごとに
直線状に設けられることを特徴とする
請求項1または
請求項2に記載の漏洩同軸ケーブル敷設構造。
【請求項4】
複数の前記ケーブル支持部材の少なくとも一部の前記支持部が、前記ケーブル支持部材の幅方向の中心から所定距離オフセットした位置に形成されており、前記漏洩同軸ケーブルが、前記ケーブル支持部材の幅方向の中心から交互に左右に所定距離オフセットした位置に配置された
前記ケーブル支持部材の前記支持部上に、
前記トラフ構造体の長手方向に対して連続した曲がり部が交互に形成されるように略S字状に湾曲して弛み配置されることを特徴とする
請求項1から
請求項3のいずれかに記載の漏洩同軸ケーブル敷設構造。
【請求項5】
前記ケーブル支持部材が、樹脂製の前記トラフ本体の長手方向の所定位置に、前記トラフ本体と一体に形成されるか、あるいは前記ケーブル支持部材が前記トラフ本体と別体に形成され、前記トラフの断面内側に固定部が形成され、前記固定部に前記ケーブル支持部材が固定され、前記固定部は、前記トラフ本体の内側
面に前記ケーブル支持部材が挿入されて固定できるように形成された相互に対向する内リブであり、前記内リブの間に前記ケーブル支持部材が挿入されて固定される
かのいずれかであることを特徴とする
請求項1から
請求項4のいずれかに記載の漏洩同軸ケーブル敷設構造。
【請求項6】
前記ケーブル支持部材に載置された前記漏洩同軸ケーブルの少なくとも一部が、紐状固定部材で前記ケーブル支持部材に縛りつけられて、前記漏洩同軸ケーブルが漏洩同軸ケーブルの断面変形が生じないように前記ケーブル支持部材に固定されることを特徴とする
請求項1から
請求項5のいずれかに記載の漏洩同軸ケーブル敷設構造。
【請求項7】
前記漏洩同軸ケーブル同士を相互に接続する接続部間において、給電点からの距離が遠くなる程、前記漏洩同軸ケーブルの所定間隔毎に、前記漏洩同軸ケーブルのスロットの配置角度がケーブル軸方向に対して大きくなるか、あるいは前記スロットが高密度になるように小さな配置間隔で前記スロットが配置されることを特徴とする
請求項1から
請求項6のいずれかに記載の漏洩同軸ケーブル敷設構造。
【請求項8】
前記漏洩同軸ケーブル同士を相互に接続する接続部は、前記トラフ構造体の前記ケーブル支持部材の配置部以外の位置に配置されることを特徴とする
請求項1から
請求項7のいずれかに記載の漏洩同軸ケーブル敷設構造。
【請求項9】
前記トラフ構造体を形成する樹脂の静電容量法で測定を行った周波数400~440MHz帯域における誘電率が3.15以下であり、前記トラフ構造体を構成する前記トラフ蓋と前記トラフ本体の最大壁厚さが10mm以下に形成され
、さらに漏洩同軸ケーブル敷設構造を形成する樹脂の吸水性がASTM D570相当のJISK7209に基づく、23℃×24時間吸水後の吸水率が0.15%以下を満足するものであることを特徴とする
請求項1から
請求項8のいずれかに記載の漏洩同軸ケーブル敷設構造。
【請求項10】
前記トラフ本体に前記トラフ蓋が被冠された前記トラフを連接して構成した前記トラフ構造体が形成する閉空間の内部の樹脂製の前記ケーブル支持部材上に前記漏洩同軸ケーブルを所定高さ、所定角度に載置した場合の400~440MHz帯域における所定条件における通信特性は、前記トラフ構造体が存在せずにコンクリート地盤上に配置された前記ケーブル支持部材上に前記漏洩同軸ケーブルを所定高さ、所定角度に載置した場合と比べた際に、伝送損失が±2dB/km以内、結合損失が±2dB以内の範囲の通信特性を有することを特徴とする
請求項9記載の漏洩同軸ケーブル敷設構造。
【請求項11】
前記トラフ本体に前記トラフ蓋が被冠された前記トラフを連接して構成した前記トラフ構造体が形成する閉空間の内部の樹脂製の前記ケーブル支持部材上に前記漏洩同軸ケーブルを所定高さ、所定角度に載置した場合の前記トラフ構造体の400~440MHz帯域における通信特性確認試験での試験結果として、前記トラフ構造体の外表面及び内表面を水で濡らして吸水させた前記トラフ構造体を用いた場合も、前記トラフ構造体の外表面及び内表面が乾燥状態の場合と同等の通信特性が得られ、さらに前記トラフ構造体が存在せずにコンクリート地盤上の高さ調整した前記ケーブル支持部材上に前記漏洩同軸ケーブルを所定高さ、所定角度に載置したと比べた場合に、伝送損失が±2dB/km以内、結合損失が±2dB以内の範囲の通信特性を有することを特徴とする
請求項9記載の漏洩同軸ケーブル敷設構造。
【請求項12】
前記トラフ構造体を形成する樹脂材料が、無機物を含むポリオレフィン系リサイクル樹脂または無機物を含むポリオレフィン樹脂であることを特徴とする
請求項1から
請求項11のいずれかに記載の漏洩同軸ケーブル敷設構造。
【請求項13】
底部と、前記底部の両側に起立する側壁部を有し、略U字型断面を有する樹脂製のトラフ本体に、前記トラフ本体
とトラフ蓋の一方の端部と他方の端部にそれぞれ接続部が形成され、それぞれの前記接続部を接続することで複数
のトラフを連結することが可能であり、
前記トラフ本体に前記トラフ蓋が被冠されたトラフが形成する閉空間において、前記トラフの長手方向の所定位置にケーブル支持部材を配置して、前記ケーブル支持部材の支持部に
、漏洩同軸ケーブルが載置可能なものであり、
前記トラフ本体の前記底部には、トラフ固定用ボルト挿通孔が設けられ、前記トラフ固定用ボルト挿通孔に挿通されたアンカーボルトによって、前記トラフ本体がコンクリート地盤へ固定される
前記漏洩同軸ケーブルを収納するトラフ本体において、
前記トラフ本体の底部の裏面の幅方向の中央にトラフ長手方向に沿って所定長さを有する溝を挟んで相互に対向する下方に向かって突出する一対のリブが形成され、
前記トラフ固定用ボルト挿通孔は、前記リブ間の長手方向と幅方向の略中央に、前記トラフ本体の長手方向に向けて形成された長穴状の既設の
前記トラフ固定用ボルト挿通孔、または前記リブ間の溝の任意の位置に形成することが可能な前記トラフ固定用ボルト挿通孔のいずれかの挿通孔に挿通された
前記アンカーボルトによって、前記トラフ本体が
前記コンクリート地盤へ固定される際に、アンカーナットの固定位置に対応するように前記トラフ固定用ボルト挿通孔の形成位置を調整することが可能なことを特徴とする漏洩同軸ケーブルを収納するトラフ本体。
【請求項14】
前記トラフ本体の接続部の接続角度を左右方向、上下方向の少なくともいずれかに調整することで、前記トラフ固定用ボルト挿通孔へのアンカーボルト挿通時におけるボルト固定位置調整による
前記トラフ本体の長手方向の形成位置の距離の調整の他、
前記トラフ本体の幅方向及びまたは垂直方向の固定位置の位置ずれの両者を調整することが可能なことを特徴とする請求項13に記載の漏洩同軸ケーブルを収納するトラフ本体。
【請求項15】
前記トラフ本体の断面内側の長手方向の所定位置に、
前記ケーブル支持部材が前記トラフ本体と一体で形成されているか、あるいは前記トラフ本体の内側面に前記ケーブル支持部材が挿入されて固定できるように相互に対向する内リブが形成されているかのいずれかであることを特徴とする請求項13または請求項14に記載の漏洩同軸ケーブルを収納するトラフ本体。
【請求項16】
前記トラフ本体の前記既設のトラフ固定用ボルト挿通孔と前記一対のリブ間の溝のいずれかの位置に
前記トラフ固定用ボルト挿通孔を設ける代わりに、アンカ―ナット挿通孔を設けることで、
前記コンクリート地盤に設けたアンカーボルトにより固定可能な構造であることを特徴とする請求項13~請求項15のいずれかに記載の漏洩同軸ケーブルを収納するトラフ本体。
【請求項17】
前記トラフ本体は、機械的特性として、引張強さが20MPa以上、曲げ弾性率が1000MPa以上であると同時に、
JISK7111に基づくシャルピー衝撃試験により得られたシャルピー衝撃値が5kJ/m
2以上の特性を有するものであり、
さらに湿度50%の環境下にて、90mW/cm
2の照射強度の紫外光を、2000時間照射する耐候性促進試験後における、前記トラフ本体を形成する樹脂の、引張強度の残率は、紫外光照射前の引張強度の95%以上であり、同様の紫外線照射後のシャルピー衝撃値の残率は、紫外光照射前のシャルピー衝撃値の90%以上であることを特徴とする請求項13~請求項16のいずれかに記載の漏洩同軸ケーブルを収納するトラフ本体。
【請求項18】
前記トラフ本体は、ASTM D570相当のJISK7209に基づいて測定された、23℃×24時間吸水後の吸水率が、0.15%以下
であり、さらにJISK7114に準拠した、室温で24時間浸漬を行う試験において、海水模擬液である3%NaCl水溶液の浸漬試験と、融雪剤模擬液としての30%CaCl
2
浸漬試験、及び酸性雨模擬液としてのH
2
SO
4
とHNO
3
を2:1の割合で混合した液体を1%濃度に希釈した試験液での浸漬試験における、前記トラフ本体を形成する樹脂の質量変化率は、いずれの試験においても、0.1%以下であることを特徴とする
請求項13から
請求項17のいずれかに記載の漏洩同軸ケーブルを収納するトラフ本体。
【請求項19】
漏洩同軸ケーブルの敷設方法であって、
底部と、前記底部の両側に起立する側壁部を有し、略U字型断面を有する樹脂製のトラフ本体を、コンクリート地盤に固定する工程と、
前記トラフ本体の内部にケーブル支持部材を配置し、前記ケーブル支持部材の支持部に、支持線を下側に向けて漏洩同軸ケーブルを配置する工程と、
を具備し、
前記コンクリート地盤に固定する工程では、
前記トラフ本体の前記底部には、トラフ固定用ボルト挿通孔が設けられ、前記トラフ固定用ボルト挿通孔に挿通されたアンカーボルトによって、前記トラフ本体がコンクリート地盤へ固定される漏洩同軸ケーブル敷設
方法において、
前記トラフ本体の底部の裏面の幅方向の中央にトラフ長手方向に沿って所定長さを有する溝を挟んで相互に対向する下方に向かって突出する一対のリブが形成され、
前記トラフ固定用ボルト挿通孔は、前記リブ間の長手方向と幅方向の略中央に、前記トラフ本体の長手方向に向けて形成された長穴状の既設の
トラフ固定用ボルト挿通孔、また
は前記リブ間の溝の
任意の位置に形成する
ことが可能な前記トラフ固定用ボルト挿通孔のいずれか
の挿通孔に挿通されたアンカーボルトによって、前記トラフ本体がコンクリート地盤へ固定される際に、アンカー
ナットの固定位置に対応するように前記トラフ固定用ボルト挿通孔の形成位置を調整することが可能なことを特徴とする漏洩同軸ケーブルの敷設方法。
【請求項20】
前記トラフ本体をコンクリート地盤に固定する工程では、前記トラフ本体の一方の端部と他方の端部にそれぞれ接続部が形成され、それぞれの前記接続部を
左右方向及び/または上下方向に所定角度相互に傾けて接続することで、コンクリート地盤に設けられたアンカーナットの形成位置の位置ずれを吸収するように敷設することが可能なことを特徴とする
請求項19に記載の漏洩同軸ケーブルの敷設方法。
【請求項21】
前記トラフ本体の内部に前記ケーブル支持部材を配置し、前記ケーブル支持部材の支持部に、支持線を下側に向けて前記漏洩同軸ケーブルを配置する工程において、
前記ケーブル支持部材は、前記ケーブル支持部材の支持部が前記ケーブル支持部材の中心に形成され、前記ケーブル支持部材は、複数のトラフを連接させたトラフ構造体の長手方向の所定位置にそれぞれ所定間隔で設けることで、
前記漏洩同軸ケーブルを前記ケーブル支持部材上の支持部に直線状に配置する工程を含むことを特徴とする請求項19または請求項20に記載の漏洩同軸ケーブルの敷設方法。
【請求項22】
前記トラフ本体の内部に前記ケーブル支持部材を配置し、前記ケーブル支持部材の支持
部に、支持線を下側に向けて前記漏洩同軸ケーブルを配置する工程において、前記ケーブル支持部材は、前記ケーブル支持部材の支持部が前記ケーブル支持部材の中心から所定距離オフセットして形成され、隣接する前記ケーブル支持部材を交互に反転して配置することで、前記漏洩同軸ケーブルを前記ケーブル支持部材上の支持部に略S字状にゆるみ配置する工程を含むことを特徴とする
請求項19または
請求項20に記載の漏洩同軸ケーブルの敷設方法。
【請求項23】
前記コンクリート地盤に固定する工程では、
前記トラフ本体の前記底部には、トラフ固定用ボルト挿通孔の代わりにアンカ―ナット挿通孔が設けられ、コンクリート地盤にはアンカーボルトが設けられることを特徴とする請求項19~請求項22のいずれかに記載の漏洩同軸ケーブルの敷設方法。
【請求項24】
請求項1から請求項8のいずれかに記載の漏洩同軸ケーブルの敷設構造において、トラフ構造体を構成する無機物を含む樹脂材料の、周波数400~440MHz帯域における誘電率が3.15以下のポリオレフィン系リサイクル樹脂であり、
前記ポリオレフィン系リサイクル樹脂の、引張強さが20MPa以上、曲げ弾性率が1000MPa以上であると同時に、
JISK7111に基づくシャルピー衝撃試験により得られたシャルピー衝撃値が5kJ/m
2以上の特性を有するものであり、
前記誘電率が3.15以下を満足するとともに、最大壁厚さが10mm以下に形成され、
JISK7209に基づく、23℃×24時間吸水後の吸水率が0.15%以下を満足する前記トラフ構造体の内部に載置された漏洩同軸ケーブルと列車の車両上アンテナとの間で400MHz帯の周波数帯域で通信を行う通信方法で、
漏洩同軸ケーブルの直上1.5mの高さ位置に設置した半波長ダイポールアンテナによりネットワークアナライザまたはスぺクトラムアナライザを用いて通信を行う場合に、前記トラフ表面が乾燥状態またはトラフの外表面及び内表面を水で濡らして吸水させた状態のいずれの状態においても、
前記トラフ構造体を用いずにコンクリート地盤上の高さ調整した前記ケーブル支持部材に前記漏洩同軸ケーブルを所定高さ、所定角度に載置した場合との比較において、伝送損失が±2dB/km以内、結合損失が±2dB以内の範囲の通信特性を得ることが可能であることを特徴とする漏洩同軸ケーブル敷設構造を用いた通信方法。
【請求項25】
請求項1から請求項8のいずれかに記載の漏洩同軸ケーブルの敷設構造を用い、前記漏洩同軸ケーブルの敷設構造におけるトラフ構造体を構成する無機物を含む樹脂材料が、周波数400~440MHz帯域における誘電率が3.15以下のポリオレフィン系リサイクル樹脂であり、
前記ポリオレフィン系リサイクル樹脂の、引張強さが20MPa以上、曲げ弾性率が1000MPa以上であると同時に、
JISK7111に基づくシャルピー衝撃試験により得られたシャルピー衝撃値が5kJ/m
2以上の特性を有するものであり、
前記誘電率が3.15以下を満足するとともに最大壁厚さが10mm以下に形成され、JISK7209に基づく、23℃×24時間吸水後の吸水率が0.15%以下を満足する前記トラフ構造体の内部に載置された漏洩同軸ケーブルと列車の車両上アンテナとの間で400MHz帯の周波数帯域で通信を行う通信システムで、
漏洩同軸ケーブルの直上1.5mの高さ位置に設置した半波長ダイポールアンテナによりネットワークアナライザまたはスぺクトラムアナライザを用いて、通信を行う場合に、
前記トラフ表面が乾燥状態またはトラフの外表面及び内表面を水で濡らして吸水させた状態のいずれの状態においても、
前記トラフ構造体を用いずにコンクリート地盤上の高さ調整した前記ケーブル支持部材上に前記漏洩同軸ケーブルを所定高さ、所定角度に載置した場合との比較において、伝送損失が±2dB/km以内、結合損失が±2dB以内の範囲の通信特性を得ることが可能であることを特徴とする漏洩同軸ケーブル敷設構造を用いた通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラフの内部に漏洩同軸ケーブルが敷設された漏洩同軸ケーブル敷設構造、漏洩同軸ケーブルの敷設方法、漏洩同軸ケーブルを収納するトラフ本体及び漏洩同軸ケーブル敷設構造を用いた通信方法並びに通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば鉄道等の軌道脇に、漏洩同軸ケーブル(Leaky Coaxial cable)が、軌道に沿って設置される場合がある。このような、漏洩同軸ケーブルは、内部導体と、内部導体の外周に配置される絶縁体と、絶縁体の外周に配置され、所定の位置にスロット(開口部)を有する外部導体と、外部導体を被覆する外被と、これらにより構成される漏洩同軸ケーブル本体を支持する支持線等から構成される。
【0003】
漏洩同軸ケーブルは、信号を伝送すると同時に、ケーブルに沿った空間に信号エネルギーの一部を電波として放出するために、外部導体に使用周波数に応じたスロットが多数設けられたアンテナ機能を有する導体である。このような漏洩同軸ケーブルは、特に、無線電波が伝わりにくいような鉄道線路、トンネル、地下街等に沿って敷設され、列車無線などの業務無線、FM放送、携帯電話、無線LANなどの用途に利用される。
【0004】
ここで、漏洩同軸ケーブルが地面に直接敷設されると、漏洩同軸ケーブルの盗難や、漏洩同軸ケーブルの表面の水濡れ、汚染、風による振動などによる性能低下の可能性がある。そこで、一般的な漏洩同軸ケーブルは、同軸ケーブルの外周に支持線を有しており、フェンスや支柱などに支持部材によって支持線が支持されて漏洩同軸ケーブルが敷設される。
【0005】
このような漏洩同軸ケーブルの支持部材としては、例えば、車両無線通信用に軌道に沿って敷設される漏洩同軸ケーブルを把持するケーブルホルダと、該ケーブルホルダを取り付ける固定金具とを備えた漏洩同軸ケーブル用支持具が提案されている(特許文献1)。
【0006】
特許文献1の漏洩同軸ケーブル用支持具のケーブルホルダは、可撓性を有する弾性材料で形成される。固定金具に対する取付け部位には、屈曲自在な弾性板部が設けられる。漏
洩同軸ケーブルを保持する円筒部は弾性板部と一体で成形され、その弾性板部によって、固定金具が軌道側から風圧を受けた際に、漏洩同軸ケーブルを揺動可能に支持することができる。
【0007】
また、特許文献1における漏洩同軸ケーブルの固定方法は、漏洩同軸ケーブルが揺れ動いても、ケーブルホルダの撓み変形によって応力集中を分散させることができる。このため、漏洩同軸ケーブルが、局部的な屈折疲労による損傷を受けることが防止され、耐久性が向上して、漏洩同軸ケーブルの寿命を飛躍的に延ばすことができる。
【0008】
また、トンネルや屋内などの閉空間内の深部に設定された信号漏洩空間に、支持線を備えた自己支持型の漏洩同軸ケーブルを吊り下げ敷設するとともに、この漏洩同軸ケーブルに対して閉空間の外部から信号を給電する給電ケーブルを吊り下げ敷設する、閉空間における信号漏洩システムのケーブル敷設方法が提案されている(特許文献2)。
【0009】
特許文献2は、トンネルや屋内などの閉空間での無線送信に利用される信号漏洩システムにおけるケーブル布設方法、および、これに用いる給電ケーブルに関するものである。特許文献2の給電ケーブルは、リングコルゲート管からなる外部導体と、その中心に配備される内部導体との間に発泡樹脂からなる絶縁体が介在され、同軸ケーブル本体に沿って支持線が備えられた自己支持型のケーブルである。特許文献2では、漏洩同軸ケーブルと給電ケーブルとが、閉空間の適所に配備した固定金具にそれぞれの支持線を介して支持される。漏洩同軸ケーブルは、閉空間において、逆L形のベース金具に一対のクランプ金具をボルト及びナットで締め付けることで固定される。
【0010】
また、通信用ケーブルをドラムから引き出すときに、高い張力を加えなくても直線的に敷設ができ、巻き癖等が残らないケーブルの敷設方法が提案されている(特許文献3)。
【0011】
特許文献3では、高剛性支持体と漏洩同軸ケーブルとが一体でシースによって被覆される。また、高剛性支持体の剛性が、高剛性支持体を除く漏洩同軸ケーブルとシースの複合体の剛性よりも大きくなるように、高剛性支持体の素材もしくは断面形状が選定される。これにより、通信用ケーブル全体の直線性を確保することができる。
【0012】
より具体的には、特許文献3の発明では、高剛性支持体が、シースを介して支持金具で把持される。そしてボルトを用いて高剛性支持体が支持金具に締め付け固定され、これが壁面や電柱に固定される。このようにして、通信用ケーブルが支持固定される。このとき、通信用ケーブル全体が均一な直線性を保持しているため、漏洩同軸ケーブルの外部導体に設けられたスロットが、常に一方向に正確に向けられて配置される。このため、良好な通信が可能になる。
【0013】
また、複数の漏洩同軸ケーブルを、一定の間隔を設けて離間した状態で平行に並べて配置した結束漏洩伝送線路を、アレイアンテナとして用いる通信装置の漏洩同軸ケーブル用連結具が提案されている(特許文献4)。
【0014】
特許文献4の複数の漏洩同軸ケーブルは、送信側と受信側にそれぞれ複数のアンテナを用いるMIMO(Multiple-Input and Multiple-Output)通信システムに用いられるものである。漏洩同軸ケーブルは、線状の中心導体と、中心導体を同心円状に被覆する絶縁体と、絶縁体を同心円状に被覆すると共に、延長方向に周期的に並ぶ複数のスロットが開口して設けられた外部導体と、外部導体を同心円状に被覆するシースとを有する。この複数の漏洩同軸ケーブルが互いに一定の間隔を設けて並列されて、漏洩同軸ケーブル用連結具で連結される。漏洩同軸ケーブル用連結具は、漏洩同軸ケーブルを把持する複数の把持部と、複数の把持部の各間を連結する連結部と、把持部の一部を開放する開放部とを備える。
【0015】
また、低コストで漏洩同軸ケーブルを敷設することができる漏洩同軸ケーブルの敷設方法および低コストで構築することができるケーブル架設構造が提案されている(特許文献5)。
【0016】
特許文献5の漏洩同軸ケーブルの敷設方法は、まず、支柱間に金属の架線を掛け渡し(掛架工程)、架線に沿って漏洩同軸ケーブルを仮止めする(仮止め工程)。次に、螺旋状の非金属線材からなる吊り下げ具を架線および漏洩同軸ケーブルの軸周りに巻回す。この吊り下げ具が形成する空洞部に、架線および漏洩同軸ケーブルを挿通しながら、該吊り下げ具を支柱間に配置する(張設工程)。最後に、漏洩同軸ケーブルの仮止めを解除する(仮止め解除工程)。以上により、漏洩同軸ケーブルを敷設することができる。特許文献5の漏洩同軸ケーブルの敷設方法は、螺旋状の非金属線材からなる吊り下げ具を架線および漏洩同軸ケーブルの軸周りに巻回して、吊り下げ具が形成する空洞部に架線および漏洩同軸ケーブルを挿通しながら、吊り下げ具を支柱間に張設する張設工程に特徴がある。
【0017】
また、支持線と漏洩同軸ケーブルと光ユニット送通用のパイプとが共通被覆され、漏洩同軸ケーブル、支持線、光ユニット送通用のパイプが下から上方に順次配列されてなる構造を有する光ユニット送通用パイプ付き漏洩同軸ケーブルが提案されている(特許文献6)。
【0018】
通常、漏洩同軸ケーブルが線路の近傍に敷設された場合、列車が通過する度に、漏洩同軸ケーブルは列車の風圧をもろに受けて大きな振動が起こり、金属材料が疲労破壊を引き起こすおそれがある。このため、漏洩同軸ケーブルを強固に固定する必要があるが、このように強固に固定すると、切り離し作業の作業性が悪く、切離し作業を行なった後に、何らかの手段で支持線を漏洩同軸ケーブル及びパイプに繋ぎ止める必要がある。
【0019】
これに対し、特許文献6の光ユニット送通用パイプ付き漏洩同軸ケーブルでは、パイプが支持線の上部に、漏洩同軸ケーブルが支持線の下部に夫々配置されているので、支持線とパイプとを止め金具で固定でき、支持されないのは漏洩同軸ケーブルだけである。このため、強い風圧を受ける列車の線路近くに漏洩同軸ケーブルが敷設されても、従来の漏洩同軸ケーブルと比較して揺れにくく、振動による疲労破壊が起きにくくなる。また、漏洩同軸ケーブルと支持線との結合部を切り離すだけで手軽に漏洩同軸ケーブルを分離でき、パイプと支持線との結合部を切り離すだけで手軽にパイプを分離することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【文献】特開2005-130543号公報
【文献】特開2002-135931号公報
【文献】特開2007-273247号公報
【文献】特開2016-019047号公報
【文献】特開2008-220161号公報
【文献】特開平09-26533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
ここで、漏洩同軸ケーブルのスロットを介して電波を送受信する際には、送受信対象に対するスロットの形成方向が重要である。このスロットの向きは、スロット間隔と波長との相対的な関係によって決定される。したがって、このような漏洩同軸ケーブルを列車との送受信に用いる場合には、漏洩同軸ケーブルのスロットが受信側のアンテナに対して所定角度及び所定間隔で適切に配置されるように、漏洩同軸ケーブルを敷設する必要がある。
【0022】
しかし、特許文献1のように、漏洩同軸ケーブルを揺動可能としたのでは、スロットの方向を所定の方向に一定に保つことは困難である。また、漏洩同軸ケーブル表面の水濡れや汚染などによる性能低下や、風による振動などによる性能低下の可能性がある。
【0023】
同様に、特許文献2の敷設方法も、新幹線の線路脇などの空気圧変動が大きい場所に敷設することは考慮されておらず、空気圧変動の影響を受ける場合の固定方法でない。また、特許文献1と同様に、漏洩同軸ケーブル表面の水濡れや汚染、または、風による振動などによる性能低下の可能性がある。
【0024】
また、特許文献3も、特許文献1、2と同様の問題を有し、また、高剛性支持体と、同軸ケーブルとシースの複合体の剛性や断面形状を調整する必要があることから、適用可能な漏洩同軸ケーブルに制限がある。
【0025】
同様に、特許文献4~6も、風や汚れ等による影響を抑制するとともに、スロットの方向を一定に保つことは困難である。
【0026】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、スロットの向きを一定に保つことができるとともに、列車等からの風の影響や、水濡れや汚染等による影響を抑制することが可能で、環境温度変化や紫外線照射によるケーブルの劣化を緩和することが可能な漏洩同軸ケーブル敷設構造、漏洩同軸ケーブルの敷設方法、及び漏洩同軸ケーブルの敷設構造を用いた通信方法ならびに通信システムを提供し、上記通信方法及び上記通信システムを使用して、車両上アンテナと良好な無線通信を行うことなどを目的とする。特に、そのため、漏洩同軸ケーブル用のトラフの敷設構造においては、耐候性や衝撃特性に加えて、トラフ内のケーブルと列車との間で通信を行うことから、トラフによる電波の吸収あるいは、トラフによる伝送特性の劣化が問題となるため、漏洩同軸ケーブルの敷設構造に用いるトラフ構造体の誘電率や通信特性にも配慮した発明とした。さらに、これを用いた通信方法及び通信システムの発明をなすに至った。
【課題を解決するための手段】
【0027】
樹脂製のトラフ本体およびトラフ蓋と、前記トラフ本体に収容される漏洩同軸ケーブルと、を具備し、前記トラフ本体は、底部と、前記底部の両側に起立する側壁部を有し、前記トラフ本体に前記トラフ蓋が被冠されたトラフが形成する閉空間において、前記トラフの長手方向の所定位置に、樹脂製及び/またはゴム製のケーブル支持部材が配置され、前記ケーブル支持部材の支持部に、支持線を下側に向けて前記漏洩同軸ケーブルが載置され、前記トラフ本体は略U字型断面を有しており、前記トラフ本体と前記トラフ蓋の一方の端部と他方の端部にそれぞれ接続部が形成され、それぞれの前記接続部を接続することで複数の前記トラフを連結することが可能なものであり、さらに、相互に隣接する前記トラフ本体と前記トラフ蓋が被冠された前記トラフを所定個数連接して形成されたトラフ構造体において、前記トラフ構造体が形成する閉空間の内部の長手方向の所定位置に、所定間隔で複数の前記ケーブル支持部材が配置され、前記ケーブル支持部材は、いずれの位置に配置された前記ケーブル支持部材においても、前記ケーブル支持部材の所定高さに形成された前記支持部に前記漏洩同軸ケーブルが載置され、前記ケーブル支持部材の前記支持部が、前記漏洩同軸ケーブルが収納可能なように略半円形状に形成され、前記漏洩同軸ケーブルが、前記ケーブル支持部材の前記支持部に、前記トラフの前記底部から所定の高さで、所定角度に支持されるもので、前記トラフ本体の前記底部には、トラフ固定用ボルト挿通孔が設けられ、前記トラフ固定用ボルト挿通孔に挿通されたアンカーボルトによって、前記トラフ本体がコンクリート地盤へ固定される漏洩同軸ケーブル敷設構造において、前記トラフ本体の底部の裏面の幅方向の中央にトラフ長手方向に沿って所定長さを有する溝を挟んで相互に対向する下方に向かって突出する一対のリブが形成され、前記トラフ固定用ボルト挿通孔は、前記リブ間の長手方向と幅方向の略中央に、前記トラフ本体の長手方向に向けて形成された長穴状の既設のトラフ固定用ボルト挿通孔、または前記リブ間の溝の任意の位置に形成することが可能な前記トラフ固定用ボルト挿通孔のいずれかの挿通孔に挿通されたアンカーボルトによって、前記トラフ本体がコンクリート地盤へ固定される際に、アンカーナットの固定位置に対応するように前記トラフ固定用ボルト挿通孔の形成位置を調整することが可能なものであることを特徴とする漏洩同軸ケーブル敷設構造である。
前記トラフ本体の接続部の接続角度を左右方向、上下方向の少なくともいずれかに調整することで、前記トラフ固定用ボルト挿通孔へのアンカーボルト挿通時におけるボルト固定位置調整によるトラフ本体の長手方向の形成位置の距離の調整の他、トラフ本体の幅方向及びまたは垂直方向の固定位置の位置ずれの両者を調整することが可能なことを特徴とする漏洩同軸ケーブル敷設構造である。
このトラフを用いた漏洩同軸ケーブルの敷設構造では、トラフが高剛性で直線状の形状を有し、さらにコルゲート構造の保護部材に比べて、曲げ弾性率に優れる材料を使用するため、直線施工性に優れた敷設構造を得ることができ、その結果優れた美観を得ることができる。
また、トラフ構造体を形成する樹脂に誘電率が3.15以下の材料を用いれば、後述するように伝送損失や結合損失が少ない通信特性に優れた漏洩同軸ケーブルの敷設構造を得ることができる。
そのため、前記トラフ構造体に用いる樹脂に、無機物を含む樹脂を使用することで、通信特性の他、引張強さ、曲げ弾性率、衝撃強度などの機械的特性に加えて、耐食性や耐候性と難燃性に優れたトラフ構造体を用いた漏洩同軸ケーブルの敷設構造とすることができる。
本発明の漏洩同軸ケーブルの敷設構造の特徴は、上記の諸特性を向上させるため、樹脂材料に無機物を含有させても誘電率を3.15以下の所定値に抑えることに成功し、漏洩同軸ケーブルをトラフ内に収納しても、コンクリート地盤上に露出配置した場合と同等の通信特性を得ることに成功したものである。
【0028】
前記トラフ本体は略U字型断面を有しており、前記トラフ本体と前記トラフ蓋の一方の端部と他方の端部にそれぞれ接続部が形成され、それぞれの前記接続部を接続することで複数の前記トラフを連結可能であることが望ましい。この際、前記漏洩同軸ケーブルの最大曲げ角度を超えない4°以下の範囲での曲げ角度で前記トラフの連結が可能である。前記漏洩同軸ケーブルを曲がり部に敷設する場合には、曲がり部は、左右方向だけで無く、上下方向の曲がりにも対応可能であるが、トラフ接続部の曲がり角度は4°以下であることが望ましい。
ちなみに、漏洩同軸ケーブルの最大曲げ角度は、5°以下と言われているが外部導体が銅製の場合には、余裕を見て4°以下が望ましい。この際、最大曲げ角度は、漏洩同軸ケーブルを所定距離拘束して、ケーブルを片側に曲げた時の許容最大曲げ角度を言う。ここで、漏洩同軸ケーブルの外部導体がアルミニウムの場合には、漏洩同軸ケーブルの曲げ部の曲げ角度は、アルミニウム導体の場合の最大曲げ角度の2°を超えない2°以下に形成されることが望ましい。
【0029】
相互に隣接する前記トラフ本体と前記トラフ蓋が被冠された前記トラフを所定個数連接して形成されたトラフ構造体において、前記トラフ構造体が形成する閉空間の内部の長手方向の所定位置に、所定間隔で複数の前記ケーブル支持部材が配置され、前記ケーブル支持部材は、いずれの位置に配置されたケーブル支持部材においても、前記ケーブル支持部材の所定高さに形成された前記支持部に前記漏洩同軸ケーブルが載置されることが望ましい。
【0030】
前記ケーブル支持部材の前記支持部が、前記漏洩同軸ケーブルが収納可能なように略半円形状に形成され、前記漏洩同軸ケーブルが、前記ケーブル支持部材で、前記トラフの前記底部から所定の高さで、所定角度に支持されることが望ましい。このように、外部シースで被覆された支持線を、ケーブル支持部材に所定角度で形成された溝に収納することで、漏洩同軸ケーブルが所定高さ、所定角度に支持されれば、漏洩同軸ケーブルのスロットを所定角度に向けて配置することができる。
【0031】
複数の前記ケーブル支持部材の少なくとも一部の前記支持部が、前記ケーブル支持部材の幅方向の中心から所定距離オフセットした位置に形成されており、前記漏洩同軸ケーブルが、前記ケーブル支持部材の幅方向の中心から交互に左右に所定距離オフセットした位置に配置された前記ケーブル支持部材の前記支持部上に、前記トラフ構造体の長手方向に対して連続した曲がり部が交互に形成されるように略S字状に湾曲して弛み配置されてもよい。このように、水平方向に略S字状に弛み配置されることで、温度伸縮だけでなく、地震による張力変化にも対応することが可能であり、漏洩同軸ケーブルの変形を防止することができる。
【0032】
ここで、略S字形状に弛み配置された前記漏洩同軸ケーブルの曲げ部の曲げ角度は、0.5°以上2°以下に形成されることが望ましい。特に、漏洩同軸ケーブルの外部導体がアルミニウムの場合には、漏洩同軸ケーブルの曲げ部の曲げ角度は、アルミニウム導体の場合の最大曲げ角度の2°を超えない2°以下に形成されることが望ましい。尚、本発明でいう漏洩同軸ケーブルの曲げ角度とは、隣接する支持部材で支持される支持部間における漏洩同軸ケーブル断面中心を結ぶ直線が、トラフ本体の長手方向の中心線となす角である。これは、隣接する支持部材の支持部中心同士を結ぶ直線がトラフ本体の長手方向の中心線となす角と一致するため、見かけ上の曲げ角である。実際の漏洩同軸ケーブルは、この見かけ上の曲げ角に対してS字状に弛みを以って配置される。したがって、見かけ上の曲げ角が4°の場合には、漏洩同軸ケーブルはS字状に弛み配置されるため、支持部材の両側に対応する最大曲げ部の曲げ角度は、それぞれ4°よりは小さくなる。略S字状に弛み配置された前記漏洩同軸ケーブルの曲げ角度が、ケーブルの外部導体の許容曲げ角度である2°以下0.5°以上であることが望ましい。
【0033】
前記ケーブル支持部材は前記トラフ構造体の1m以上(トラフの単位長さ以上)6m以下の間隔に配置することができるが、前記ケーブル支持部材が、2m以上6m以下の間隔ごとに設けられることが望ましい。特に、前記漏洩同軸ケーブルの支持部材の間隔は、ケーブルの自重による撓みを抑制するためには、6m以下とする必要がある。
前記ケーブル支持部材が、前記トラフ構造体の2m以上6m以下の間隔ごとに直線状に設けられる漏洩同軸ケーブル敷設構造としてもよい。
【0034】
前記ケーブル支持部材が樹脂製の前記トラフ本体と一体に形成されてもよい。ここで、前記トラフ本体は、樹脂製であれば良いが、誘電特性と耐吸水性に優れるポリオレフィン樹脂で構成されることが望ましい。ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレンやこれらの混合樹脂を用いることができる。ポリオレフィン樹脂としては、ポリオレフィン系リサイクル樹脂を用いることができる。ポリオレフィン系リサイクル樹脂のポリエチレンとポリプロピレンの質量割合は約9:1であることが望ましい。このポリオレフィン系リサイクル樹脂は、強度、難燃性、耐候性向上などのために、所定量の無機物を含んでもよい。例えば、無機物は、無機物を含むリサイクル樹脂の全質量に対して、最大40質量%までは含有させることができるが、望ましくは36質量%以下である。ここで、リサイクル樹脂の全質量に対して、最大36質量%まで含有させるとは、無機物を含有させた後の樹脂の全質量を100質量%とした場合の無機物の含有割合である。
【0035】
上述したように、ポリオレフィン系リサイクル樹脂には、強度、難燃性、耐候性などを考慮して、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化チタンなどの無機物がそれぞれ所定量加えられる。ここでは、通常、例えば、それぞれの無機物の質量割合は、無機物を含むポリオレフィン系リサイクル樹脂材料全体の質量に対する質量割合で、水酸化マグネシウム19質量%、炭酸カルシウム15質量%、酸化チタン2質量%の割合を目標として配合される。量産品においては、水酸化マグネシウムと炭酸カルシウムの含有量は、それぞれの±2質量%程度、酸化チタンは±0.5質量%まで許容されるものとする。もちろん、バラツキにより多めに配合されたとしても、衝撃値やコストなどの関係で、最大でもポリオレフィン系リサイクル樹脂の全質量の40質量%を超えないようにする必要がある。
【0036】
前記ケーブル支持部材が、樹脂製の前記トラフ本体の長手方向の所定位置に、前記トラフ本体と一体に形成されるか、あるいは前記ケーブル支持部材が前記トラフ本体と別体に形成され、前記トラフの断面内側に固定部が形成され、前記固定部に前記ケーブル支持部材が固定され、前記固定部は、前記トラフ本体の内側面に前記ケーブル支持部材が挿入されて固定できるように形成された相互に対向する内リブであり、前記内リブの間に前記ケーブル支持部材が挿入されて固定されるかのいずれかであってもよい。
【0037】
この際、トラフ内底面に内リブが形成されずに、トラフ内側面のみに内リブが形成されて、さらにケーブル支持部材の底部に水捌け用の溝が形成されていることが望ましい。このような構造とすることでトラフ底部に雨水などが溜ることがない。
【0038】
ここで、ケーブル支持部材は、樹脂製またはゴム製のいずれでも良く、樹脂製のケーブル支持部材の少なくとも支持部にゴムシートを貼り付けたものでも良い。このようにすることで、漏洩同軸ケーブルに張力が付与された時には、摩擦力が大きくなり、地震などの際の漏洩同軸ケーブルがずれにくい。
【0039】
前記ケーブル支持部材に載置された前記漏洩同軸ケーブルの少なくとも一部が、紐状固定部材で前記ケーブル支持部材に縛りつけられて、前記漏洩同軸ケーブルが漏洩同軸ケーブルの断面変形が生じないように前記ケーブル支持部材に固定されてもよい。
【0040】
前記トラフ蓋が前記トラフ本体に固定用ボルトで固定される際に、前記漏洩同軸ケーブルが載置される前記ケーブル支持部材の配置部の少なくとも一部において、ポリエチレン発泡シートからなる押圧体が、前記漏洩同軸ケーブルの上部に配置され、前記押圧体を前記漏洩同軸ケーブルの断面変形歪み率が0.2%の範囲内で押圧することで前記ケーブル支持部材上に載置された前記漏洩同軸ケーブルが固定される漏洩同軸ケーブルの固定構造としてもよい。
また、前記トラフ蓋が前記トラフ本体に固定用ボルトで固定される際に、前記漏洩同軸ケーブルが載置される前記ケーブル支持部材の配置部の少なくとも一部において、ポリエチレン発泡シートからなる押圧体が、前記漏洩同軸ケーブルの上部に配置され、前記押圧体を前記漏洩同軸ケーブルの断面変形歪み率が0.2%の範囲内で押圧することで前記ケーブル支持部材上に載置された前記漏洩同軸ケーブルの100m当たりの引き抜き力を300Kg以上とするように固定することが可能であることを特徴とする漏洩同軸ケーブル敷設構造としても良い。
【0041】
前記トラフ本体の前記底部には、トラフ固定用ボルト挿通孔が設けられ、前記トラフ固定用ボルト挿通孔に挿通されたアンカーボルトによって、前記トラフ本体がコンクリート地盤へ固定されてもよい。
【0042】
前記トラフ本体の長手方向と幅方向の略中央に、前記トラフ本体の長手方向に向けて形成された長穴状の既設の前記トラフ固定用ボルト挿通孔、または前記底部の裏面の幅方向の中央にトラフ長手方向に沿って所定長さを有する相互に対向するリブが形成され、前記リブ間の溝のいずれかの位置に形成された前記トラフ固定用ボルト挿通孔のいずれかに挿通されたアンカーボルトによって、前記トラフ本体がコンクリート地盤へ固定される際に、アンカーボルトの固定位置に対応するように前記トラフ固定用ボルト挿通孔の形成位置を調整することが可能であってもよい。また、トラフ本体の接続部は、左右方向、上下方向の4°以下の曲がりにも対応可能であるため、前記トラフ固定用ボルト挿通孔の形成位置の他、トラフ本体の幅方向の固定位置の位置ずれ(角度ずれ)の両者を調整することが可能になる。
【0043】
前記漏洩同軸ケーブル同士を相互に接続する接続部間において、給電点からの距離が遠くなる程、前記漏洩同軸ケーブルの所定間隔毎に、前記漏洩同軸ケーブルのスロットの配置角度がケーブル軸方向に対して大きくなるか、あるいは前記スロットが高密度になるように小さな配置間隔で前記スロットが配置されてもよい。
【0044】
前記漏洩同軸ケーブル同士を相互に接続する接続部は、前記トラフ構造体の前記ケーブル支持部材の配置部以外の位置に配置されることが望ましい。
【0045】
前記トラフ本体に前記トラフ蓋が被冠された前記トラフを連接して構成した前記トラフ構造体が形成する閉空間の内部の樹脂製の前記ケーブル支持部材上に前記漏洩同軸ケーブルを所定高さ、所定角度に載置した場合の400~440MHz帯域における所定条件における通信特性は、前記トラフ構造体が存在せずにコンクリート地盤上に配置された前記ケーブル支持部材上に前記漏洩同軸ケーブルを所定高さ、所定角度に載置した場合と比べた際に、伝送損失が±2dB/km以内、結合損失が±2dB以内の範囲の通信特性を有するようにすることができるが、伝送損失を±1dB/km以内、結合損失を±1dB以内の範囲の通信特性を有することが望ましい。
【0046】
さらに、前記トラフ本体に前記トラフ蓋が被冠された前記トラフを連接して構成した前記トラフ構造体が形成する閉空間の内部の樹脂製の前記ケーブル支持部材上に前記漏洩同軸ケーブルを所定高さ、所定角度に載置した場合の前記トラフ構造体の400~440MHz帯域における通信特性確認試験での試験結果として、前記トラフ構造体の外表面及び内表面を水で濡らして吸水させた前記トラフ構造体を用いた場合も、前記トラフ構造体の外表面及び内表面が乾燥状態の場合と同等の通信特性が得られ、さらに前記トラフ構造体が存在せずにコンクリート地盤上の高さ調整した前記ケーブル支持部材上に前記漏洩同軸ケーブルを所定高さ、所定角度に載置したと比べた場合に、伝送損失が±2dB/km以内、結合損失が±2dB以内の範囲の通信特性とすることが望ましい。
【0047】
前記トラフ構造体を形成する樹脂材料が、無機物を含むポリオレフィン系リサイクル樹脂または無機物を含むポリオレフィン樹脂であることが望ましい。
【0048】
前記トラフ構造体を形成するポリオレフィン系リサイクル樹脂の静電容量法で測定を行った周波数400~440MHzにおける誘電率が3.15以下であり、前記トラフ構造体を構成する前記トラフ蓋と前記トラフ本体の最大壁厚さが10mm以下に形成されることが望ましい。このように、誘電率とトラフ最大壁厚さが所定値以下になることで、良好な通信特性を得ることができる。前記トラフ構造体は、ASTM D570相当のJIS K7209に基づいて測定された、23℃×24時間吸水後の吸水率が、0.15%以下の材料から形成されてもよい。
【0049】
第1の発明によれば、トラフの内部に配置されたケーブル支持部材上に漏洩同軸ケーブルを配置するのみで漏洩同軸ケーブルを敷設することができるため、その他の固定部材や把持部材等が不要である。特に、樹脂製のトラフが用いられるため、内部に配置された漏電同軸ケーブルの電波が遮蔽されることを抑制することができる。例えば、高強度、高耐食性、高耐候性に加えて難燃性に優れたリサイクル樹脂製のトラフを用いることで、電波の吸収が少なく、安定した送受信が可能な漏洩同軸ケーブル敷設構造を得ることができる。さらに、本発明の漏洩同軸ケーブルの敷設構造では、コルゲート構造の保護部材に比べて、曲げ剛性に優れる材料からなる直線性に優れるトラフを使用するため、高剛性で直線施工性に優れる漏洩同軸ケーブルの敷設構造を実現できる。
【0050】
また、トラフ構造体の剛性が高く、環境温度変化によっても、敷設状態を維持して湾曲することがないので、例えば、線路と略平行な敷設状態を維持することできる。さらに鉄製アングルやトラフ橋などを使用しないため、これらのトラフ構造体の支持部材による電波の吸収などがない。このため、第1の発明の漏洩同軸ケーブル敷設構造は、特に、高速鉄道の線路脇に敷設した場合に、高速鉄道などとの通信に適する。
【0051】
また、漏洩同軸ケーブルは、トラフの内部のケーブル支持部材で支持されているため、スロットを常に所定高さで所定の方向(交互に対向して配置される場合を含む)に向けて所定位置に正確に配置することが可能である。このため、漏洩同軸ケーブルのスロットから発信される電磁波の方向を安定させることができる。例えば、列車の車体外枠と室内との間の空間に埋設されたアンテナと、漏洩同軸ケーブルとの間で良好な信号の送受信が可能になる。たとえば、漏洩同軸ケーブルをトラフ底部に直置きした場合に生じる、トラフ底部からの反射の影響や漏洩同軸ケーブルの巻き癖による漏洩同軸ケーブルの蛇行やねじれを防止することが可能になる。
【0052】
また、トラフが密閉されるため、漏洩同軸ケーブルの外傷、動物の食害、汚染による損傷や性能低下から保護することができる。また、トラフ蓋が配置されているため、トラフ内部への雨水の浸入を防止することができる。
【0053】
また、漏洩同軸ケーブルが、空気圧変動の少ないトラフ内の閉空間に敷設されるため、列車通過時に繰り返される空気の圧力変動によるケーブルの振動疲労を大幅に緩和することができる。このため、ケーブルの表面の水濡れや紫外線照射による劣化を防止することにより、通信特性の安定化と同時に漏洩同軸ケーブルの寿命を延ばすことができる。
【0054】
また、トラフ本体及びトラフ蓋の両端部に接続部が形成されることで、複数のトラフを容易に連結して、トラフ構造体を形成することができる。なお、トラフ本体及びトラフ蓋の両端部に接続部が形成されていなくても、少なくとも複数のトラフ本体の両端部の断面形状が同一形状をしていれば、このようなトラフ本体の長手方向の両端部を相互に連接してトラフ構造体を形成することもできる。いずれにしても、所定長さの連続した閉空間を有するトラフ構造体を形成することが可能である。
【0055】
また、漏洩同軸ケーブルがトラフの底面から所定距離離間して支持されるため、トラフ内に水が浸入したとしても、ケーブルの水濡れを防止することができる。このため、漏洩同軸ケーブルへの水の付着や、これによる電波の遮蔽等を抑制することができる。また、漏洩同軸ケーブルがケーブル支持部材によって、トラフの内部に所定の高さに配置されるため、トラフ内部、あるいはコンクリート地盤からの反射波の影響を弱めると同時に蛇行を防止することができる。
【0056】
また、ケーブル支持部材の支持部が、漏洩同軸ケーブルが収納可能な形状に形成されていれば、漏洩同軸ケーブルをより安定して支持することができる。このため、漏洩同軸ケーブルのスロットから送信される電磁波が、受信側のアンテナに対して適切な角度となるように、漏洩同軸ケーブルを配置することができる。
【0057】
また、漏洩同軸ケーブルの巻癖やねじれを除去するために、漏洩同軸ケーブルの敷設時には、漏洩同軸ケーブルに張力を負荷して、上記の巻癖やねじれをある程度除去してから漏洩同軸ケーブルを敷設する。ここで、ケーブル支持部材の設置間隔を6m以下とすることで、漏洩同軸ケーブルの弛みを抑制することができる。例えば、漏洩同軸ケーブルの自重による弛みによって、スロットから出射される電磁波の放射方向が変化することを抑制して、安定した送受信が可能となる。また、漏洩同軸ケーブルの弛みによって、漏洩同軸ケーブルがトラフの底部に接触することがなく、トラフ内に雨水が浸入した場合の漏洩同軸ケーブルの水濡れを防止することができるとともに、漏洩同軸ケーブルの損傷を保護することができる。
【0058】
また、ケーブル支持部材の設置間隔は、トラフの長さに一致させ1m以上とすることもできるが、2m以上とすることが望ましい。これ以上設置間隔が短くなると、ケーブルを安定して支持できるものの、ケーブル支持部材の設置個数が増加しコスト高になる。したがって、ケーブルの自重による弛みを防止しケーブルを安定して支持し、コスト増加を招かないためには、ケーブル支持部材の設置間隔は、2m以上6m以下とする必要がある。このように2m以上6m以下の間隔でケーブル支持部材を配置することで、環境温度変化による漏洩同軸ケーブルの温度伸縮を吸収することができる。
【0059】
また、ケーブル支持部材の幅方向の中心から交互に左右に所定距離オフセットした位置のトラフ長手方向を向いた位置の支持部をトラフ構造体の長手方向に対して千鳥状に配置して、漏洩同軸ケーブルをS字状に連続した曲がり部を形成するように弛み配置することで、漏洩同軸ケーブルを緩んだ状態で配置することが可能となる。このため、所定間隔にケーブル支持部材を配置することで垂直方向に弛みを持たせるだけでなく、水平方向にS字状配置にすることで、環境温度変化への対応のみでなく、地震などにより漏洩同軸ケーブルが外部から張力を受けた時にも応力を緩和することができ、漏洩同軸ケーブルの変形や破断を防止できる。
【0060】
S字状配置における漏洩同軸ケーブルの曲げ角度は、0.5°以上2°以下であることが望ましい。このようにS字状に弛み配置することで、地震や環境温度変化による漏洩同軸ケーブルの伸縮を吸収することができる。この際、漏洩同軸ケーブルの山部谷部の近傍は、ケーブル支持部材により管軸方向に平行に支持されるので、山部谷部の頂部への曲げ
応力の集中を避けることができる。S字状配置の場合のケーブル支持部材の設置間隔は、0.5°のような少ない曲げ角度において漏洩同軸ケーブルに曲げを安定して付与し、さらにケーブルのS字状曲げの山部谷部への局部的な応力集中を避けるためには、2m以上である必要があるが、6m以下とすることで、自重による弛みの影響をなくすことができる。したがって、S字状配列のための安定した曲げを行ない、自重による弛みの影響を無くすためには、ケーブル支持部材の配置間隔は、2m以上6m以下が好ましく、2m以上6m以下の範囲において、漏洩同軸ケーブルの曲げ角度は、0.5°以上2°以下の範囲で適宜曲げ角を調整することができる。この際、ケーブル支持部材のオフセット量は、ケーブルの配置間隔と曲げ角度に応じて適宜調整できる。
【0061】
前記ケーブル支持部材とトラフ蓋が樹脂製であり、前記ケーブル支持部材が樹脂製の前記トラフ本体と一体または別体に形成されてもよい。トラフ本体とケーブル支持部材が一体で形成されていれば、トラフ本体にケーブル支持部材を固定する作業が不要になる。トラフ本体及びトラフ蓋に用いる樹脂としては、疎水性で、吸水率が低いポリオレフィン樹脂を用いることが望ましい。また、ポリオレフィン樹脂としては、環境に対する配慮やコストダウンを考慮すると、ポリオレフィン製リサイクル樹脂を用いることが望ましい。ポリオレフィン製リサイクル樹脂を用いても、トラフ構造部材としての使用が可能で、電気通信特性も満足することができる。
【0062】
一方、トラフ本体とケーブル支持部材が別体で設けられる場合は、ケーブル支持部材をトラフ本体の底部の所定位置に固定する必要がある。この場合には、トラフ本体の断面内側に固定部を形成し、固定部にケーブル支持部材を固定することで、ケーブル支持部材を所定の位置に確実に配置とすることができるとともに、容易にケーブル支持部材をトラフ本体に固定することができる。
【0063】
例えば、トラフ本体の内側面に相互に対向する内リブを形成して固定部とし、この内リブの間にケーブル支持部材を配置することで、容易にケーブル支持部材をトラフ本体に固定することができる。したがって、別途の固定用のボルトなどを必要とせずに、ケーブル支持部材をトラフ本体の所定の位置に固定することができる。
【0064】
さらに、前記ケーブル支持部材の支持部をケーブル支持部材の断面中央部からオフセット配置して形成されたケーブル支持部材を、トラフ構造体の長手方向に、交互にオフセット位置がトラフ断面に中央に対して反対になるように反転して所定間隔で内リブに配置することで、漏洩同軸ケーブルのトラフ長さ方向の所定周期でのオフセット配置が可能になる。ケーブル支持部材の漏洩同軸ケーブルのS字状配置における漏洩同軸ケーブルの曲げ角度は、2°以下であることが望ましく、0.5°以下であると、曲げ角度が小さくて効果が期待できないため、0.5°以上2°以下であることが望ましい。また、S字状配置の場合には、S字状配置の余長を調整するため、漏洩同軸ケーブルに必要に応じて張力を付与しても良い。
【0065】
また、漏洩同軸ケーブルを、紐状固定部材でケーブル支持部材に固定することで、地震などの際に、ケーブル支持部材の支持部から漏洩同軸ケーブルがずれることを抑制することができる。また、漏洩同軸ケーブルを固定する紐状固定部材の締め付け力を強くすることで、漏洩同軸ケーブルを安定して固定できる。ここで、紐状固定部材の締め付け力は、通常は漏洩同軸ケーブルの断面変形が起こらない範囲の締め付け力で締め付けることが望ましい。また、後述する漏洩同軸ケーブルを押圧体で押圧しない場合には、紐状固定部材の締め付け力を漏洩同軸ケーブルの断面変形歪み率が0.2%の範囲内で加えることができる。
この際、紐状固定部材の締め付け力を漏洩同軸ケーブルの断面変形歪み率が0.2%の範囲内で加えるように制約を設ける必要がある理由は以下の通りである。内部導体の外周
に設けられる樹脂製の絶縁体紐の各断面において、絶縁体紐は、内部導体の外周に中心方向に向くように立ててスパイラル状に巻き付けられ、ケーブル内部において、内部導体は、中空部が形成される断面構造を有している。このため、通常の導体の外周が全て絶縁体で被覆された電力ケーブルなどと比べると、ケーブル断面の剛性が低いためである。
【0066】
また、押圧体によって漏洩同軸ケーブルを押圧することで、漏洩同軸ケーブルに押圧力を前記漏洩同軸ケーブルの断面変形歪み率が0.2%の範囲内で加えることができる。このため、漏洩同軸ケーブルと押圧体との接触によって、漏洩同軸ケーブルに摩擦力を加えることができ、漏洩同軸ケーブルの熱膨張伸縮によるケーブル軸方向の伸縮に対する抵抗並びに外部からの引き抜き抵抗を大きくすることができる。この結果、漏洩同軸ケーブルの熱膨張伸縮によるケーブル軸方向の伸縮を抑制し、さらにトラフ内部から漏洩同軸ケーブルを一方向に引っ張り出すことが困難となる。したがって、漏洩同軸ケーブルの熱膨張による寸法変化を緩和して、漏洩同軸ケーブルが盗難されることを抑制することができる。このように、漏洩同軸ケーブルの断面変形歪み率を0.2%の範囲内で加えることで、押圧による漏洩同軸ケーブルの断面のクリープ変形などを防止することができる。これにより、ケーブル断面の変形及び長手方向のケーブル軸方向の寸法変化を抑制すると同時に、ケーブル自体の長期耐久性を維持することができる。また、漏洩同軸ケーブルに引き抜き力が作用した時に、漏洩同軸ケーブルの断面変形歪を所定範囲に抑えても、所定長さ、例えばケーブル長さ100m当たりのけーブルの引き抜き力を300kg以上とすることができ、盗難防止効果を得ることができる。
【0067】
また、トラフ本体をコンクリート地盤へアンカーボルトによって固定することで、トラフ本体がコンクリート地盤に直接固定されているため、地震などの際にも、トラフ本体が動くことがない。また、この場合でも、アンカーボルトの頂部と漏洩同軸ケーブルの下部は、所定距離離間して配置されるため、両者が干渉することがない。また、別途のトラフ固定用の支持部材やアングル部材などを配置する手間が不要である。さらに、トラフ固定用の支持部材としてアングル部材等が使用されないため、アングル部材等による電磁波の影響を抑制することができる。
【0068】
ここで、トラフ固定用ボルト挿通孔は、トラフ本体の長手方向と幅方向の略中央に、トラフ本体の長手方向に向けて形成された長穴状の既設の挿通孔であってもよく、トラフ長手方向に沿って所定長さを有する相互に対向するリブ間にトラフ固定用ボルト挿通孔を形成してもよい。リブを用いる場合には、リブを、固定用ボルト挿通孔を形成する際のガイドとして機能させることができる。このようにすることで、コンクリート地盤に配置したアンカーナットの形成位置に誤差があったとしても、トラフ固定用ボルト挿通孔の形成位置はリブに沿って自由度があるので、トラフの固定には支障がない。ここで、コンクリート地盤に配置したアンカーナットの形成位置が、トラフ本体の幅方向にずれて形成されていたとしても、トラフ本体の接続部の接続角度が4°以下での調整が可能であることから、アンカーナットの形成位置のずれを、トラフ本体の接続部の接続角度を調整することで対応可能である。
【0069】
また、漏洩同軸ケーブルは、スロットの設計により、電波の漏れ量(結合損失)の制御が可能になる。この特性を利用して、例えば、スロットの配置角度と密度が終電点に近づくほど漏洩同軸ケーブルの所定間隔毎に大きくなるように設計された漏洩同軸ケーブルを使用することで、給電点から遠い位置に行くにつれて、結合損失が小さく電波の漏れ量が大きくなる。このため、給電点から遠い位置まで一定の結合損失の漏洩同軸ケーブルを使うよりも、中継間隔が大きく、しかも受信レベルの幅を大きくすることができる。
【0070】
また、漏洩同軸ケーブル同士を相互に接続するケーブル接続部を、トラフ構造体におけるケーブル支持部材の配置部以外の位置に配置することで、ケーブル接続部とケーブル支
持部材との干渉を避けることができる。
【0071】
また、前記トラフ本体に前記トラフ蓋が被冠された前記トラフを連接して構成したトラフ構造体内部の閉空間の内部のケーブル支持部材上に漏洩同軸ケーブルを所定高さ、所定角度に載置した場合の400~440MHz帯域における所定条件における通信特性が、トラフ構造体が存在せずにコンクリート地盤上に配置されたケーブル支持部材上に漏洩同軸ケーブルを所定高さ、所定角度に載置した場合と比べた場合に、伝送損失が±1dB/km以内、結合損失が±1dB以内の範囲の通信特性を満足する漏洩同軸ケーブル敷設構造を得ることができる。そのため、伝送損失が±2dB/km以内、結合損失が±2dB以内の範囲の通信特性を満足することは可能である。
【0072】
また、トラフ構造体の外表面及び内表面を水で濡らして吸水させた構造体を用いた場合も、トラフ構造体の外表面及び内表面が乾燥状態の場合と同等の通信特性を得ることができる。すなわち、トラフ構造体が存在せずにコンクリート地盤上の高さ調整したケーブル支持部材上に漏洩同軸ケーブルを所定高さ、所定角度に載置したと比べた場合に、伝送損失が±1dB/km以内、結合損失が±1dB以内の範囲の通信特性を有する漏洩同軸ケーブル敷設構造を得ることができる。そのため、この場合でも、伝送損失が±2dB/km以内、結合損失が±2dB以内の範囲の通信特性を満足することは可能である。
【0073】
このように、樹脂製のトラフ構造体の閉空間の内部のケーブル支持部材上に漏洩同軸ケーブルを所定高さに載置した場合と、漏洩同軸ケーブルをトラフ構造体の内部に載置せずに、コンクリート地盤上のケーブル支持部材上に漏洩同軸ケーブルを所定高さで載置した場合との比較では、上記の通信特性評価試験における、伝送損失が±1dB/km以内、結合損失が±1dB以内の範囲の通信特性を満足するため、伝送損失が±2dB/km以内、結合損失が±2dB以内の範囲の通信特性を満足することは可能である。さらに、樹脂製のトラフ構造体の表面から吸水させた場合でも、乾燥状態の樹脂製のトラフ構造体の内部に載置した場合との通信特性の比較においても、無機物を含んでいるにも関わらず、通信特性が変わらないことが判る。
【0074】
通信特性を満足するトラフ構造体の漏洩同軸ケーブルの敷設構造としては、ポリオレフィン系リサイクル樹脂製トラフ構造体を用いたが、ポリオレフィン樹脂を用いる漏洩同軸ケーブルの敷設構造とすることもできる。ポリオレフィン系リサイクル樹脂製トラフ構造体を用いることで、伝送損失が±1dB/km以内、結合損失が±1dB以内の範囲の通信特性を満足することができる。そのため、伝送損失が±2dB/km以内、結合損失が±2dB以内の範囲の通信特性を満足することは可能となる。この理由は、ポリオレフィン系リサイクル樹脂は疎水性であり、吸水率が著しく低いことによるものと考えられる。
【0075】
また、トラフ構造体を形成するポリオレフィン系リサイクル樹脂の静電容量法で測定を行った周波数400~440MHzにおける誘電率が3.15以下であり、トラフ本体を構成するトラフ蓋とトラフ本体の最大壁厚さが10mm以下に形成されれば、トラフ本体内部の漏洩同軸ケーブルとの通信特性に優れた漏洩同軸ケーブルの敷設構造を得ることができる。
【0076】
第2の発明は、底部と、前記底部の両側に起立する側壁部を有し、略U字型断面を有する樹脂製のトラフ本体に、前記トラフ本体とトラフ蓋の一方の端部と他方の端部にそれぞれ接続部が形成され、それぞれの前記接続部を接続することで複数のトラフを連結することが可能であり、前記トラフ本体に前記トラフ蓋が被冠されたトラフが形成する閉空間において、前記トラフの長手方向の所定位置にケーブル支持部材を配置して、前記ケーブル支持部材の支持部に、漏洩同軸ケーブルが載置可能なものであり、前記トラフ本体の前記底部には、トラフ固定用ボルト挿通孔が設けられ、前記トラフ固定用ボルト挿通孔に挿通されたアンカーボルトによって、前記トラフ本体がコンクリート地盤へ固定される前記漏洩同軸ケーブルを収納するトラフ本体において、前記トラフ本体の底部の裏面の幅方向の中央にトラフ長手方向に沿って所定長さを有する溝を挟んで相互に対向する下方に向かって突出する一対のリブが形成され、前記トラフ固定用ボルト挿通孔は、前記リブ間の長手方向と幅方向の略中央に、前記トラフ本体の長手方向に向けて形成された長穴状の既設の前記トラフ固定用ボルト挿通孔、または前記リブ間の溝の任意の位置に形成することが可能な前記トラフ固定用ボルト挿通孔のいずれかの挿通孔に挿通された前記アンカーボルトによって、前記トラフ本体が前記コンクリート地盤へ固定される際に、アンカーナットの固定位置に対応するように前記トラフ固定用ボルト挿通孔の形成位置を調整することが可能なことを特徴とする漏洩同軸ケーブルを収納するトラフ本体である。
前記トラフ本体の接続部の接続角度を左右方向、上下方向の少なくともいずれかに調整することで、前記トラフ固定用ボルト挿通孔へのアンカーボルト挿通時におけるボルト固定位置調整による前記トラフ本体の長手方向の形成位置の距離の調整の他、前記トラフ本体の幅方向及びまたは垂直方向の固定位置の位置ずれの両者を調整することが可能な漏洩同軸ケーブルを収納するトラフ本体であってもよい。
【0077】
また、前記トラフ本体の断面内側に前記ケーブル支持部材を固定するための固定部として、前記トラフ本体の長手方向の所定位置に、前記トラフ本体の内側面に前記ケーブル支持部材が挿入されて固定できるように相互に対向する内リブが形成されていてもよい。この際、トラフ内側面のみに内リブが形成されていて、さらに前記ケーブル支持部材の底部に水捌け用の溝が形成されていることが望ましい。このような構造とすることでトラフ底部に雨水などが溜ることがない。
前記トラフ本体の断面内側の長手方向の所定位置に、前記ケーブル支持部材が前記トラフ本体と一体で形成されているか、あるいは前記トラフ本体の内側面に前記ケーブル支持部材が挿入されて固定できるように相互に対向する内リブが形成されているかのいずれかの漏洩同軸ケーブルを収納するトラフ本体であってもよい。
前記トラフ本体の前記既設のトラフ固定用ボルト挿通孔と前記一対のリブ間の溝のいずれかの位置に前記トラフ固定用ボルト挿通孔を設ける代わりに、アンカ―ナット挿通孔を設けることで、前記コンクリート地盤に設けたアンカーボルトにより固定可能な構造である漏洩同軸ケーブルを収納するトラフ本体であってもよい。
【0078】
あるいは、前記トラフ本体の断面内側の、前記トラフ本体の長手方向の所定位置に、漏洩同軸ケーブルを支持するための前記ケーブル支持部材が前記トラフ本体と一体で形成されていてもよい。
【0079】
前記トラフ本体に樹脂製の前記トラフ蓋が被冠され、前記トラフ本体と前記トラフ蓋の一方の端部と他方の端部にそれぞれ接続部が形成され、前記トラフ本体に前記トラフ蓋が被冠された状態で、それぞれの前記接続部を接続することで複数の前記トラフ蓋が被冠された前記トラフ本体が連結可能であってもよい。
【0080】
前記トラフ本体が、無機物を含むポリオレフィン樹脂系材料で形成され、前記トラフ本体の静電容量法により測定された400~440MHz帯における誘電率が3.15以下であることが望ましい。ポリオレフィン樹脂が無機物を含むことにより、誘電特性が低下するため、無機物の含有量が許容範囲内かどうかを確認する必要がある。ここで、静電容量法により測定された400~440MHz帯におけるポリエチレンの誘電率は、2.35、ポリプロピレンの誘電率は、2.65であるが、ポリオレフィン系リサイクル樹脂の誘電率は、3.15以下を満足し、無機物を含有することで、誘電率は増加するものの極端な増加には至らない。
【0081】
前記トラフ本体は、機械的特性として、引張強さが20MPa以上、曲げ弾性率が1000MPa以上であると同時に、JISK7111に基づくシャルピー衝撃試験により得られたシャルピー衝撃値が5kJ/m2以上の特性を有するものであり、さらに湿度50%の環境下にて、90mW/cm2の照射強度の紫外光を、2000時間照射する耐候性促進試験後における、前記トラフ本体を形成する樹脂の、引張強度の残率は、紫外光照射前の引張強度の95%以上であり、同様の紫外線照射後のシャルピー衝撃値の残率は、紫外光照射前のシャルピー衝撃値の90%以上の特性を有する材料により形成されてもよい。
【0082】
前記トラフ本体は、ASTM D570相当のJISK7209に基づいて測定された、23℃×24時間吸水後の吸水率が、0.15%以下であり、さらにJISK7114に準拠した、室温で24時間浸漬を行う試験において、海水模擬液である3%NaCl水溶液の浸漬試験と、融雪剤模擬液としての30%CaCl
2
浸漬試験、及び酸性雨模擬液としてのH
2
SO
4
とHNO
3
を2:1の割合で混合した液体を1%濃度に希釈した試験液での浸漬試験における、前記トラフ本体を形成する樹脂の質量変化率は、いずれの試験においても、0.1%以下である材料から形成されてもよい。
【0083】
前記トラフ本体が、400~440MHz帯における誘電率が3.15以下の材料により形成されることで、良好な通信特性を確保することができる。また、前記トラフ本体の引張強さが20MPa以上、曲げ弾性率が1000MPa以上とすることで、トラフ本体として必要な材料強度を満足し、さらにシャルピー衝撃値が5kJ/m2以上を満足することで、実用上十分な機械的特性を満足することができる。
【0084】
前記漏洩同軸ケーブル用トラフ本体と前記トラフ蓋に対して、ポリオレフィン樹脂を用いてこれらを形成することができるが、ポリオレフィン系リサイクル樹脂を用いて形成する方が望ましい。例えば、トラフ本体をポリオレフィン系リサイクル樹脂で形成することで、実用上必要な強度を満足するばかりでなく、海水模擬試験、融雪剤模擬試験、酸性雨模擬試験等の耐食性確認試験及び耐候性促進試験においても優れた耐食性や耐候性を示す。このため、環境配慮やコストダウンが可能になると同時に、トラフの長期間の耐久性が保障される。なお、段落0081、段落0082の段落において、トラフ本体の引張強さ、曲げ弾性率、シャルピー衝撃値、吸水率、耐食性、耐候性等について記載したが、トラフ蓋に関しても、トラフ本体と同様のポリオレフィン系リサイクル材料を使用すれば、引張強さ、曲げ弾性率、シャルピー衝撃値、吸水率、耐食性、耐候性などの特性は同様の特性が得られる。トラフ蓋の特性についても同様の発明を得ることができる。
【0085】
また、後述するように、誘電率が3.15以下を満足するポリオレフィン系リサイクル樹脂を用いて形成されたトラフ構造体を用いると、400から440MHz帯域における通信特性を確認する試験において、伝送損失、結合損失ともに樹脂製トラフを使用しないコンクリート地盤に直置きした場合とほぼ同等の特性が得られて、伝送損失、結合損失の平均値の差異をそれぞれ±1dB/km以内、±1dB以下とすることができる。そのため、伝送損失、結合損失がそれぞれ±2dB/km以内、±2dB以内の範囲の通信特性を満足することは可能となる。また、前述したように、トラフ構造体を構成するトラフ本体及びトラフ蓋の吸水率が低いことから、雨水などに濡れたとしても安定した通信特性が得られる。そのため、トラフを形成する材料の誘電率と並んでトラフ構造体を形成する材料の吸水率は、電気通信特性を維持する上で、重要な特性である。
【0086】
第3の発明は、無機物を含むポリオレフィン系リサイクル樹脂材料であって、少なくとも無機物として水酸化マグネシウムと酸化チタンを含む誘電率が3.15以下であり、さらに水酸化マグネシウムの含有量が前記ポリオレフィン系リサイクル樹脂材料の全質量に対して18質量%以上であることを特徴とする難燃性と通信特性に優れるポリオレフィン系リサイクル樹脂材料である。
【0087】
ここで、本発明では、トラフ内に配置された漏洩同軸ケーブルから送受信するため、難燃性と電気通信特性を確保するため、誘電率を所定値とするポリオレフィン樹脂材料が必要になる。そこで、難燃性と電気通信特性を有する無機物を含むポリオレフィン樹脂が必要になる。ポリオレフィン樹脂に難燃性や耐候性を確保するためには、難燃剤として水酸化マグネシウムを、紫外線吸収剤として酸化チタンを添加するが、無機物の添加により、誘電率が増加するため、無機物添加による誘電率の増加を所定値以下である3.15以下に抑えた無機物を含むポリオレフィン系リサイクル樹脂を得ることができる。さらに、この材料を用いることで、難燃性や耐候性に加えて無機物の含有量の増加による電気通信特性の低下や衝撃特性の低下を防止することができるポリオレフィン系リサイクル樹脂材料を得ることができる。
【0088】
前記無機物を含むポリオレフィン系リサイクル樹脂材料の、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化チタンの3種であり、前記無機物のポリオレフィン系リサイクル樹脂の全質量に対するそれぞれの含有割合が水酸化マグネシウム18~21.3質量%、炭酸カルシウム14~16.5質量%、酸化チタン2~2.2質量%の範囲で含有され、前記無
機物の含有量の合計が前記ポリオレフィン系リサイクル樹脂の全質量の34質量%以上40質量%以下であることが望ましい。
【0089】
上記のような組成とすることで、誘電率を所定値以下とした上で、強度や衝撃特性を低下させることなく、吸水性、耐食性、さらには難燃性や耐候性のバランスを向上させることができる。特に、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化チタンを上記の配合量とすることで、誘電率と難燃性と耐候性とを最適化することができる。
【0090】
前記ポリオレフィン系リサイクル樹脂材料において、前記ポリオレフィン系リサイクル樹脂の代わりに、ポリオレフィン樹脂にバージン樹脂を用いてもよい。バージン材の場合においても、組成が同様であれば、同様の電気通信特性や機械的特性が得られる。
【0091】
前記ポリオレフィン系リサイクル樹脂材料が、電気通信用の構造体又は部材用の材料であってもよい。
【0092】
前記ポリオレフィン系リサイクル樹脂材料は、誘電率を所定値以下とすることができるため、良好な電気通信特性を得ることができ、さらに所定の強度を有することから、電気通信用の構造体や部材に使用することができる。
【0093】
具体的には、ポリオレフィン系リサイクル樹脂材料は、難燃性に優れると同時に誘電率を3.15以下とすることで、良好な電気通信特性を得ることができる。さらに所定の強度、例えば、引張強さ20MPa以上を有することから、電気通信用の構造体や部材への使用に適する。
【0094】
第4の発明は、第3の発明に係るポリオレフィン系リサイクル樹脂材料を、トラフ構造体に用いることを特徴とするポリオレフィン系リサイクル樹脂の使用方法である。
【0095】
前記のように、前記ポリオレフィン系リサイクル樹脂材料は、電気通信用の構造体や部材に使用することができるため、漏洩同軸ケーブルを収納するトラフ本体及びトラフ蓋に用いることができる。したがって、ポリオレフィン系リサイクル樹脂材料を、トラフ構造体に用いるポリオレフィン系リサイクル樹脂の使用方法を提供することができる。
【0096】
第5の発明は、漏洩同軸ケーブルの敷設方法であって、底部と、前記底部の両側に起立する側壁部を有し、略U字型断面を有する樹脂製のトラフ本体を、コンクリート地盤に固定する工程と、前記トラフ本体の内部にケーブル支持部材を配置し、前記ケーブル支持部材の支持部に、支持線を下側に向けて漏洩同軸ケーブルを配置する工程と、を具備し、前記コンクリート地盤に固定する工程では、前記トラフ本体の前記底部裏面の幅方向の中央に、前記長手方向に沿って所定長さを有する相互に対向する一対のリブが形成され、前記リブ間の前記トラフ本体の長手方向と幅方向の略中央に、前記トラフ本体の長手方向に向けて形成された長穴状の既設のトラフ固定用ボルト挿通孔、または前記底部の裏面の前記一対のリブ間の溝の任意の位置に形成された別の挿通孔のいずれかの挿通孔にアンカーボルトを挿通することで前記コンクリート地盤にトラフを固定する際に、前記トラフ固定用ボルト挿通孔の形成位置を調整して固定することが可能なことを特徴とする漏洩同軸ケーブルの敷設方法である。
【0097】
また、前記トラフ本体をコンクリート地盤に固定する工程では、前記トラフ本体の一方の端部と他方の端部にそれぞれ接続部が形成され、それぞれの前記接続部を左右方向及び/または上下方向に所定角度相互に傾けて接続することで、コンクリート地盤に設けられたアンカーナットの形成位置の位置ずれを吸収するように敷設することが可能な漏洩同軸ケーブルの敷設方法であってもよい。このようにすることで、コンクリート地盤に配置したアンカーナットの形成位置が、トラフ本体の幅方向にずれたとしても、トラフ接続部の接続角度を調整することで、アンカーナットの形成位置の長手方向の位置ずれだけでなく、幅方向の位置ずれに対しても対応可能である。
【0098】
前記トラフ本体の内部に前記ケーブル支持部材を配置し、前記ケーブル支持部材の支持部に、支持線を下側に向けて前記漏洩同軸ケーブルを配置する工程において、前記ケーブル支持部材は、前記ケーブル支持部材の支持部が前記ケーブル支持部材の中心に形成され、前記ケーブル支持部材は、複数のトラフを連接させたトラフ構造体の長手方向の所定位置にそれぞれ所定間隔で設けることで、前記漏洩同軸ケーブルを前記ケーブル支持部材上の支持部に直線状に配置する工程を含むことを特徴とする漏洩同軸ケーブルの敷設方法であってもよい。
前記トラフ本体の内部に前記ケーブル支持部材を配置し、前記ケーブル支持部材の支持部に、支持線を下側に向けて前記漏洩同軸ケーブルを配置する工程において、前記ケーブル支持部材は、前記ケーブル支持部材の支持部が前記ケーブル支持部材の中心から所定距離オフセットして形成され、隣接する前記ケーブル支持部材を交互に反転して配置することで、前記漏洩同軸ケーブルを前記ケーブル支持部材上の支持部に略S字状配置する工程を含むことを特徴とする漏洩同軸ケーブルの敷設方法であってもよい。
【0099】
前記ケーブル支持部材を交互に所定距離オフセット配置することで、漏洩同軸ケーブルを略S字状配置してもよい。このように、ケーブル支持部材上に漏洩同軸ケーブルのS字状配置が可能になることで、地震などの際にケーブルにかかる応力を緩和して、漏洩同軸ケーブルが変形することを防止できる。
前記コンクリート地盤に固定する工程では、前記トラフ本体の前記底部には、トラフ固定用ボルト挿通孔の代わりにアンカ―ナット挿通孔が設けられ、コンクリート地盤にはアンカーボルトが設けられる漏洩同軸ケーブルの敷設方法であってもよい。
【0100】
さらに前記トラフ本体の上部に樹脂製のトラフ蓋を配置してトラフを閉じることで、前記漏洩同軸ケーブルが載置される前記ケーブル支持部材の支持部の少なくとも一部において、ポリエチレン発泡シートまたはゴム成形体のいずれかからなる押圧体によって前記漏洩同軸ケーブルを押圧する工程を有してもよい。この際の押圧力を、漏洩同軸ケーブルの断面変形歪み率が0.2%の範囲内で加えることで、漏洩同軸ケーブル100m当たり、300kg以上の引き抜き力を付与しないとケーブルの位置ずれが生じないように漏洩同軸ケーブルを敷設する敷設方法を提供することができる。これにより、環境温度変化による伸縮防止だけでなく、ケーブルの盗難防止にも有効な敷設方法とすることができる。
【0101】
第5の発明によれば、漏洩同軸ケーブルをトラフ本体の内部に配置されたケーブル支持部材上に配置するのみで漏洩同軸ケーブルを敷設することができため、その他の固定部材や把持部材等が不要であり、容易に漏洩同軸ケーブルを敷設することができる。
【0102】
特に、トラフ蓋を閉じる際に、押圧体で漏洩同軸ケーブルを押圧することで、漏洩同軸ケーブルに押圧力を加えることができ、漏洩同軸ケーブルの熱膨張伸縮によるケーブル軸方向の伸縮に対する抵抗並びに外部からの引き抜き抵抗を大きくすることができる。この結果、ケーブル軸方向の伸縮を緩和するとともに、トラフ内部から漏洩同軸ケーブルを一方向に引っ張り出すことを困難とすることができる。
【0103】
第6の発明は、第1の発明に係る漏洩同軸ケーブルの敷設構造において、トラフ構造体を構成する無機物を含む樹脂材料の、周波数400~440MHz帯域における誘電率が3.15以下のポリオレフィン系リサイクル樹脂であり、前記ポリオレフィン系リサイクル樹脂の、引張強さが20MPa以上、曲げ弾性率が1000MPa以上であると同時に、JISK7111に基づくシャルピー衝撃試験により得られたシャルピー衝撃値が5kJ/m2以上の特性を有するものであり、前記誘電率が3.15以下を満足するとともに最大壁厚さが10mm以下に形成され、JISK7209に基づく、23℃×24時間吸水後の吸水率が0.15%以下を満足する前記トラフ構造体の内部に載置された漏洩同軸ケーブルと列車の車両上アンテナとの間で400MHz帯の周波数帯域で、洩同軸ケーブルの直上1.5mの高さ位置に設置した半波長ダイポールアンテナによりネットワークアナライザまたはスぺクトラムアナライザを用いて通信を行う場合に、前記トラフ表面が乾燥状態またはトラフの外表面及び内表面を水で濡らして吸水させた状態のいずれの状態においても、前記トラフ構造体を用いずにコンクリート地盤上の高さ調整した前記ケーブル支持部材上に前記漏洩同軸ケーブルを所定高さ、所定角度に載置した場合との比較において、伝送損失が±2dB/km以内、結合損失が±2dB以内の範囲の通信特性を得ることが可能であることを特徴とする漏洩同軸ケーブル敷設構造を用いた通信方法である。
【0104】
上記無機物を含むポリオレフィン系リサイクル樹脂によれば、良好な通信特性を有するため、列車線路と略平行に配置されたトラフ構造体内部に配置された漏洩同軸ケーブルと列車の車両上アンテナとの間で良好な通信状態を確保できることが期待できる。
【0105】
前記トラフ構造体を用いずにコンクリート地盤上の高さ調整した前記ケーブル支持部材上に前記漏洩同軸ケーブルを所定高さ、所定角度に載置した場合との比較において、伝送損失が±2dB/km以内、結合損失が±2dB以内の範囲の通信特性を得ることが可能であることが望ましい。
【0106】
第7の発明は、第1の発明に係る漏洩同軸ケーブルの敷設構造を用い、前記漏洩同軸ケーブルの敷設構造におけるトラフ構造体を構成する無機物を含む樹脂材料が、周波数400~440MHz帯域における誘電率が3.15以下のポリオレフィン系リサイクル樹脂であり、前記ポリオレフィン系リサイクル樹脂の、引張強さが20MPa以上、曲げ弾性率が1000MPa以上であると同時に、JISK7111に基づくシャルピー衝撃試験により得られたシャルピー衝撃値が5kJ/m2以上の特性を有するものであり、前記誘電率が3.15以下を満足するとともに最大壁厚さが10mm以下に形成され、JISK7209に基づく、23℃×24時間吸水後の吸水率が0.15%以下を満足する前記トラフ構造体の内部に載置された漏洩同軸ケーブルと列車の車両上アンテナとの間で400MHz帯の周波数帯域で、洩同軸ケーブルの直上1.5mの高さ位置に設置した半波長ダイポールアンテナによりネットワークアナライザまたはスぺクトラムアナライザを用いて、通信を行う場合に、前記トラフ表面が乾燥状態またはトラフの外表面及び内表面を水で濡らして吸水させた状態のいずれの状態においても、前記トラフ構造体を用いずにコンクリート地盤上の高さ調整した前記ケーブル支持部材上に前記漏洩同軸ケーブルを所定高さ、所定角度に載置した場合との比較において、伝送損失が±2dB/km以内、結合損失が±2dB以内の範囲の通信特性を得ることが可能であることを特徴とする漏洩同軸ケーブル敷設構造を用いた通信システムである。
【0107】
前記トラフ構造体を用いずにコンクリート地盤上の高さ調整した前記ケーブル支持部材上に前記漏洩同軸ケーブルを所定高さ、所定角度に載置した場合との比較において、伝送損失が±2dB/km以内、結合損失が±2dB以内の範囲の通信特性を得ることが可能であることが望ましい。
【0108】
また、前記漏洩同軸ケーブルの敷設構造に用いる、前記トラフ構造体を構成するトラフ蓋とトラフ本体の最大壁厚さが10mm以下に形成されることで、コンクリートトラフなどと比べた場合に、誘電率及びトラフ構造体の壁部の最大厚さの両者をともに低く抑えることが可能であり、トラフ構造体内の漏洩同軸ケーブルと列車上の車両上アンテナとの間においても良好な通信特性が得られる。
【0109】
また、漏洩同軸ケーブルの敷設構造におけるトラフ構造体を構成する樹脂材料が周波数400~440MHz帯域における誘電率が3.15以下の無機物を含むポリオレフィン系リサイクル樹脂であれば、トラフ構造体の内部に載置された漏洩同軸ケーブルと列車の車両上アンテナとの間で400MHz帯の周波数帯で通信を行うことができる。このとき、トラフ構造体は、所定の引張強さ20MPa以上や曲げ弾性率1000MPa以上の強度を有していることから、通信システムを構成する部材に必要な強度を満足することは言うまでもない。
【発明の効果】
【0110】
本発明によれば、スロットの高さと向きを一定に保つことができるとともに、列車等からの風の影響や、水濡れや汚染等による影響を抑制することが可能であり、環境温度変化や紫外線照射によるケーブルの劣化を緩和することが可能な、漏洩同軸ケーブルの最大曲げ半径を超えないような漏洩同軸ケーブル敷設構造、漏洩同軸ケーブルの敷設方法、漏洩同軸ケーブルの敷設構造を用いた通信方法ならびに通信システムを実現することができる。特に、誘電率を所定以下する漏洩ケーブルのトラフ構造体を実現したことから、上記通信方法及び通信システムを使用して、車両上アンテナと良好な通信を行うことができる。さらに、本発明の漏洩同軸ケーブルの敷設構造では、コルゲート構造の保護部材に比べて、曲げ剛性に優れる材料からなる直線性に優れるトラフを使用するため、高剛性で直線施工性に優れる漏洩同軸ケーブルの敷設構造を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【
図1】漏洩同軸ケーブル敷設構造1を示す分解斜視図。
【
図2】漏洩同軸ケーブル敷設構造1を示す組立斜視図。
【
図3】漏洩同軸ケーブル敷設構造1aを示す組立斜視図。
【
図5】漏洩同軸ケーブル5のスロット23の配置等を示す概念図。
【
図6B】ケーブル支持部材11に漏洩同軸ケーブル5を配置する工程を示す図。
【
図7C】トラフ固定用ボルト挿通孔41を示す断面図。
【
図7D】トラフ本体3aをアンカーボルト43でコンクリート地盤35へ固定した状態を示す図。
【
図9A】トラフ本体3aにケーブル支持部材11を配置する工程を示す図。
【
図9B】トラフ本体3aにケーブル支持部材11を配置した状態を示す図。
【
図10A】他の実施形態にかかるトラフ本体3aの部分平面図。
【
図10B】他の実施形態にかかるトラフ本体3aの断面図であり、
図10AのF-F線断面図。
【
図11】漏洩同軸ケーブル敷設構造1を示す断面図。
【
図12】漏洩同軸ケーブル敷設構造1bを示す断面図。
【
図13】漏洩同軸ケーブル敷設構造1の平面概念図の一例。
【
図15】漏洩同軸ケーブル敷設構造1cの平面概念図の一例。
【
図16B】ケーブル支持部材11bに漏洩同軸ケーブル5を配置した状態を示す図。
【
図17A】漏洩同軸ケーブル敷設構造1dのトラフ蓋3bを閉じる前の状態を示す正面図。
【
図17B】漏洩同軸ケーブル敷設構造1dを示す正面図。
【
図18A】漏洩同軸ケーブル敷設構造1eのトラフ蓋3bを閉じる前の状態を示す正面図。
【
図18B】漏洩同軸ケーブル敷設構造1eを示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0112】
[第1の実施形態]
以下、図面を参照しながら、本発明の第1の実施形態について説明する。
図1は、本発明にかかる漏洩同軸ケーブル敷設構造1を示す分解斜視図であり、
図2は漏洩同軸ケーブル敷設構造1を示す組立斜視図である。
【0113】
漏洩同軸ケーブル用のトラフ3は、主に、トラフ本体3aとトラフ蓋3bからなる。トラフ本体3aおよびトラフ蓋3bは、樹脂製であり、プレス成型や射出成型によって成型される。トラフ本体3aとトラフ蓋3bの材質としては、例えば、高強度、高耐食性、高耐候性のリサイクル樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等と、難燃材等からなる樹脂組成物)を用いることができる。トラフ本体3aとトラフ蓋3bは、通常、1m程度の長さである。トラフ本体3aとトラフ蓋3bの長さは、厳密には1mより少し長めに設定され、隣接するトラフ3を接続した場合に、接続時に重複する長さを引くと略1mの長さとなっても良い。
【0114】
トラフ本体3aとトラフ蓋3bの長手方向の一方の端部と他方の端部には、それぞれ接続部13a、13bが設けられる。接続部13aは、トラフ本体3aの内面側に凹溝を有し、接続部13bは、トラフ本体3aの外面側に、凹溝に対応した突起を有する。このため、一のトラフ本体3aの接続部13aと、隣り合う他のトラフ本体3aの接続部13bとを互いに接続することで、トラフ3同士を連結することができる。
【0115】
なお、
図3に示す漏洩同軸ケーブル敷設構造1aのように、トラフ3には、少なくとも一方の端部に接続部がなくてもよい。このようなトラフを複数個連続して配置する場合には、相互に隣接するトラフ3を所定個数連接すればよい。なお、トラフ本体3aにトラフ蓋3bが被冠されたトラフ3を複数個連接したものを、トラフ構造体と称する。以下の説明では、接続部13a、13bを有する漏洩同軸ケーブル敷設構造1について説明するが、漏洩同軸ケーブル敷設構造1aについても同様である。
【0116】
トラフ本体3aは、底部7と、底部7の両側に略直角に起立する側壁部9より構成される。すなわち、トラフ本体3aは、略U字型断面を有する。トラフ本体3aの両端部近傍の側壁部9の上部には、固定金具15が取り付けられる。固定金具15にはナットが固定されている。
【0117】
一方、トラフ蓋3bは、トラフ本体3a上に配置され、トラフ本体3aの上部を塞ぐものである。トラフ蓋3bの所定の位置には、ボルト用の挿通孔が設けられ、トラフ蓋3bを閉じて、トラフ蓋3bの上方からボルト17を固定金具15にねじ込むことで、トラフ蓋3bをトラフ本体3aに固定することができる。なお、トラフ蓋3bとトラフ本体3aの固定は、本実施形態には限られないが、トラフ蓋3bが固定金具などの金属部品で覆われる部位が少ないほど良い。
【0118】
トラフ本体3aの内部には、漏洩同軸ケーブル5が収容される。以下漏洩同軸ケーブル5の構造について説明する。
図4Aは、漏洩同軸ケーブル5を示す斜視図であり、
図4Bは、漏洩同軸ケーブル5を示す断面図である。漏洩同軸ケーブル5は、主に、内部側から順に、内部導体19、絶縁体紐21aを含む絶縁体21、外部導体25、外部導体25に設けられるスロット23、外部シース27、支持線29等から構成される。
【0119】
内部導体19は、例えばアルミニウム製や銅製であり、図示した様な中空のパイプ状のものを使用することができる。内部導体19の外周には、スパイラル状の絶縁体紐21aを含む絶縁体21が配置される。絶縁体21は、内部導体19の略全長にわたって形成される。絶縁体21は、ポリエチレン樹脂やフッ素樹脂などの安定した良好な絶縁性を有する樹脂等によって形成される。なお、絶縁体紐21aを含む絶縁体21に代えて、中実樹脂、発泡樹脂、あるいは樹脂シート部材をケーブル軸方向に対して螺旋状に券回したものであっても良い。
【0120】
絶縁体21の外周には、外部導体25が設けられる。外部導体25は、例えばアルミニウム製または銅製の直管またはコルゲート管である。外部導体25には、複数のスロット23が所定間隔で設けられる。スロット23は、例えば、漏洩同軸ケーブル5の長手方向に対してある傾斜角度をもたせた長穴状に形成される。このスロット23により、漏洩同軸ケーブル5の内部と外部との間で電磁エネルギーの授受を行うという漏洩同軸ケーブル特有の機能が付与される。
【0121】
図5は、漏洩同軸ケーブル5におけるスロット23の配置を示す概念図である。漏洩同軸ケーブル5は、複数の漏洩同軸ケーブル5同士を相互に接続して用いられる。漏洩同軸ケーブル5同士のケーブル接続部31と端末接続部32との間においては、給電点(給電部34)からの距離が遠くなる程、漏洩同軸ケーブル5のスロット23の配置角度がケーブル軸方向に対して大きくなるように配置される。または、給電点(給電部34)からの距離が遠くなる程、スロット23が高密度になるように、スロット23の配置間隔が小さく配置されてもよい。
【0122】
外部導体25の外周には、外部シース27が設けられる。外部シース27は、外部導体25の外周を覆うように設けられ、首部を介して支持線29と一体で成形される。すなわち、支持線29は、外部シース27で被覆され、外部導体25と所定距離離隔して相互に対向して配置される。支持線29は、例えば鋼線等で構成される。支持線29は、一般的には、漏洩同軸ケーブル5の環境温度変化による伸縮や自重による弛みを防止して、漏洩同軸ケーブル5の寸法安定性を付与する目的で設けられるが、漏洩同軸ケーブル5を壁面等に吊り下げる際に使用される部位である。図示した例では、スロット23は、支持線29とは略逆側に配置される。なお、スロット23は外部導体25の支持線29と正反対の位置に設けられても良いし、正反対の位置から所定角度を有するように配置されても良い。
【0123】
図1に示すように、トラフ本体3aの内部であって、長手方向の所定位置に、ケーブル支持部材11が配置される。
図6Aは、ケーブル支持部材11を示す斜視図である。ケーブル支持部材11は、樹脂製及び/又はゴム製であり、例えばトラフ3と同一の材質で構成される。ケーブル支持部材11は、トラフ本体3aの内部形状に対応した外形を有し、幅方向のほぼ中央の上面に支持部33が形成される。支持部33は、略半円弧状(略半円形状)の凹部であり、ケーブル支持部材11の両面に貫通して設けられる。また、支持部33の略中央には、さらに、漏洩同軸ケーブル5の支持線29を収納する溝33aが形成される。ここで、ケーブル支持部材11の支持部形成面と反対側のトラフ底面(上面)との接触面には、特に図示しないが1つまたは複数の水捌け用の溝が形成されても良い。水捌け用の溝の形状は特に限定されないが、例えば半円弧上の溝であっても良い。
【0124】
図6Bは、ケーブル支持部材11に漏洩同軸ケーブル5を配置する工程を示す図である。ケーブル支持部材11の支持部33には、支持線29を下側に向けて漏洩同軸ケーブル5が載置される(図中矢印C)。この際、支持線29は、溝33aに嵌まり込み、漏洩同軸ケーブル5の本体の略半周が支持部33で支持される。すなわち、ケーブル支持部材11の支持部33は、漏洩同軸ケーブル5が収納可能な形状に形成される。
【0125】
以上のように、漏洩同軸ケーブル敷設構造1においては、トラフ本体3aにトラフ蓋3bが被冠されたトラフ3が形成する閉空間の内部において、トラフ3の長手方向の所定位置に樹脂製及び/又はゴム製のケーブル支持部材11が配置される。また、ケーブル支持部材11の支持部33に、支持線29を下側に向けて、溝33aに支持線29が収納されるように漏洩同軸ケーブル5が載置される。
【0126】
次に、漏洩同軸ケーブルの敷設方法について説明する。まず、トラフ本体3aをコンクリート地盤に固定する。
図7A~
図7Dは、トラフ本体3aをコンクリート地盤35に固定する工程を示す図であり、
図7Aは、コンクリート地盤35にトラフ本体3aを設置した状態を示す断面図、
図7Bは、
図7AのB部拡大図である。
【0127】
トラフ本体3aの底部7の裏面において、トラフ本体3aの幅方向の略中央には、トラフ本体3aの長手方向に沿って所定長さを有する一対のリブ37が設けられる。相互に対向するリブ37の間には溝39bが形成される。また、トラフ本体3aの底部7の表面において、溝39bに対応する部位には、トラフ本体3aの長手方向に沿って所定長さを有する溝39aが設けられる。
【0128】
図7Cに示すように、溝39a、39bの長手方向のいずれかの位置には、トラフ固定用ボルト挿通孔41を形成することができる。
図7Dに示すように、予めコンクリート地盤35にアンカーナット45を埋設し、相互に対向するリブ37の間に形成されたトラフ固定用ボルト挿通孔41にアンカーボルト43を挿通してアンカーナット45と螺合する。以上により、トラフ本体3aをコンクリート地盤35に固定することができる。ここで、トラフのコンクリート地盤への固定は、アンカーボルトを地盤に固定し、トラフ本体3aをナット固定しても良い。
【0129】
なお、トラフ固定用ボルト挿通孔41は、トラフ本体3aに予め形成しておいてもよい。
図8Aは、トラフ本体3aの平面図、
図8Bは、トラフ本体3aの底面図である。トラフ本体3aの長手方向と幅方向の略中央には、長穴状のトラフ固定用ボルト挿通孔41が形成される。コンクリート地盤35にアンカーナット45を埋設する位置を、既設のトラフ固定用ボルト挿通孔41の位置に合わせることで、新たにトラフ固定用ボルト挿通孔41を形成する必要がない。
【0130】
このように、コンクリート地盤35にトラフ3を固定する工程では、トラフ固定用ボルト挿通孔41にアンカーボルト43を挿通することで、トラフ本体3aをコンクリート地盤35に固定することができる。この際、トラフ固定用ボルト挿通孔41としては、トラフ本体3aの長手方向と幅方向の略中央にトラフ本体の長手方向に向けて形成された長穴状(例えば略長方形状または長円形)の既設のものを用いてもよい。または、底部7の裏面の幅方向の中央にトラフ3の長手方向に沿って所定長さを有する相互に対向するリブ37間に形成された溝のいずれかの位置に形成してもよい。ここで、長円形とは、長円形の短辺側の両端が外方に向けて円弧状に形成された図形である。
【0131】
このように、トラフ本体3aに形成された既設のトラフ固定用ボルト挿通孔41はトラフ長手方向に所定寸法で長く伸びた長穴である。また、トラフ本体3aの溝39a、39bの任意の位置にトラフ固定用ボルト挿通孔41を形成することもできる。このため、アンカーボルト43の固定位置(アンカーナット45埋設位置)に対応するように、トラフ固定用ボルト挿通孔41の形成位置を調整することが可能である。
【0132】
また、特に図示しないが、トラフ本体3aをコンクリート地盤に固定する場合に、トラフ本体3aの一方の端部と他方の端部にそれぞれ接続部13a、13bが形成され、それぞれの接続部13a、13bを所定角度相互に傾けて接続することができる。このようにすることで、コンクリート地盤に設けられたアンカーナットの形成位置の位置ずれを吸収することが可能であることは言うまでもない。
以上のように、アンカーナットの固定位置の調整として、前記トラフ本体3aの接続部13a、13bの接続角度を左右方向、上下方向の少なくともいずれかに調整することで、トラフ固定用ボルト挿通孔41のトラフ本体の長手方向の形成位置の距離の調整の他、トラフ本体の幅方向のトラフ本体の固定位置の位置ずれの両者を調整することが可能となる。
【0133】
次に、トラフ本体3aの内部にケーブル支持部材11を配置する。
図9Aは、トラフ本体3a内部にケーブル支持部材11を配置する工程を示す図であり、
図9Bは、トラフ本体3aの所定の位置にケーブル支持部材11が配置された状態を示す図である。
【0134】
前述したように、ケーブル支持部材11は、トラフ本体3aとは別体に形成される。ケーブル支持部材11は、トラフ本体3aの断面内側に形成された固定部49に固定される。固定部49は、ケーブル支持部材11が挿入されて固定できるように、トラフ本体3aの内側面に形成された相互に対向する内リブ47
aで構成される。内リブ47
aの間にケーブル支持部材11が挿入されて固定される(
図9Aの矢印D)。
【0135】
このようにすることで、ケーブル支持部材11の設置位置を容易に把握でき、内リブ47aの間に挿入するだけでケーブル支持部材11をトラフ本体3aに固定することができるため作業も容易である。なお、トラフ本体3aの内側面に相互に対向する内リブ47aのみが形成され、内底面には、内リブ47bが形成されない方が望ましい。このように、トラフ本体3aの内側面のみに内リブ47aが形成され、ケーブル支持部材11がこの内リブ47aの間に挿入され、内リブ47aのみにより固定される場合には、底面に水捌け用の溝が形成されているケーブル支持部材を用いることが望ましい。
【0136】
この場合には、何らかの原因によりトラフ本体3aの内部に雨水が浸入したしたとして
も、浸入した雨水がトラフ本体3aの内リブ47bにより堰き止められることがない。ケーブル支持部材11の底面に形成された水捌け用の溝が、トラフ本体3aの内底面における流路を形成して、トラフ本体3aの底部にたまった水を、トラフ本体3aの接続部に向けて流し出すことができるためである。これにより、万一トラフ本体3aの内底面に雨水が溜ったとしても、漏洩同軸ケーブル5から放出される電磁波の雨水による反射や吸収などの電磁波特性への影響を少なくすることができる。
【0137】
次に、トラフ本体3aの内部に配置されたケーブル支持部材11の支持部33に、支持線29を下側に向けて漏洩同軸ケーブル5を配置する。最後に、トラフ本体3a上にトラフ蓋3bを配置し、ボルト17(
図2参照)で固定することで、漏洩同軸ケーブル敷設構造1が形成される。
【0138】
なお、ケーブル支持部材11は、トラフ本体3aと別体ではなく、一体で形成してもよい。
図10Aは、ケーブル支持部材11が一体で形成されたトラフ本体3aの部分平面図であり、
図10Bは、
図10AのF-F線断面図である。
【0139】
図10A、
図10Bに示す実施形態では、ケーブル支持部材11が、樹脂製のトラフ本体3aと一体で形成される。したがって、トラフ本体3aには、ケーブル支持部材11を固定するための固定部が不要である。このように、ケーブル支持部材11は、樹脂製のトラフ本体3aと一体で形成されてもよく、または別体で形成されてもよい。なお、以下の説明では、ケーブル支持部材11が、トラフ本体3aと別体で形成される例について説明するが、一体で形成される場合も同様である。
【0140】
図11は、漏洩同軸ケーブル敷設構造1の正面図である。ケーブル支持部材11によって、トラフ本体3aの底部7から所定の高さで漏洩同軸ケーブル5を配置することができる。ここで、前述したように、漏洩同軸ケーブル5は、支持線29とは逆側にスロット23が形成される。したがって、漏洩同軸ケーブル5のスロット23は、概ね上方に向けて配置される。
【0141】
図中Eは、スロット23の中心位置が配置される範囲である。このように、ケーブル支持部材11によって、漏洩同軸ケーブル5のスロット23が、トラフ本体3aの底部7から所定の高さで、所定角度になるように、漏洩同軸ケーブル5を支持することができる。
【0142】
なお、漏洩同軸ケーブル5の配置は、
図11に示す例には限られない。例えば、
図12に示す漏洩同軸ケーブル敷設構造1bのように、漏洩同軸ケーブル5の支持線29が、真下に向くように配置されなくてもよい。この場合には、ケーブル支持部材11の溝33aを斜めに形成すればよい。このようにすることで、スロット23の中心位置の範囲Eを所定の角度で斜め方向に向けることもできる。
【0143】
図13は、漏洩同軸ケーブル敷設構造1の平面概念図の一例(但し、トラフ蓋3bの図示を省略する)である。前述したように、複数のトラフ3を連接させたトラフ構造体51の所定位置に、所定間隔で複数のケーブル支持部材11が配置される。漏洩同軸ケーブル5は、トラフ構造体51が形成する閉空間の内部において、ケーブル支持部材11の所定高さに形成された支持部33に載置される。
【0144】
ここで、前述したように、漏洩同軸ケーブル5同士は、相互にケーブル接続部31によって接続される。この際、ケーブル接続部31は、トラフ構造体51において、ケーブル支持部材11の配置部以外の位置に配置される。このため、ケーブル接続部31とケーブル支持部材11とが干渉することがない。
【0145】
また、通常トラフ構造体を構成するトラフ本体3aとトラフ蓋3bの長さは1mで、ケーブル支持部材11は、トラフ構造体51の長手方向の所定位置に対して所定間隔で設けることができる。例えば、1m以上6m以下の間隔に設定することができ、2m以上6m以下の間隔(図中G)ごとに設けられることが望ましい。6m以下の間隔で、ケーブルを支持することで、ケーブル支持部材11間の自重による弛みを防止するとともに漏洩同軸ケーブルを安定して確実に支持することができる。さらに、ケーブル支持部材11を2m以上の間隔で設けることで、ケーブル支持部材11の自重による弛みを防止するとともに、ケーブル支持部材11の設置個数を抑えることができるので、漏洩同軸ケーブルは2m以上の間隔で支持することが望ましい。
【0146】
また、トラフ本体3aとトラフ蓋3bの長さが1mでない場合でも、ケーブル支持部材11を2m以上6m以下の間隔で設ければ、上記の効果が得られる。ここで、ケーブル支持部材11はトラフ3の所定位置に形成される。このため、長さ1mのトラフ3を用いた場合には、ケーブル支持部材11の間隔を所定長さ2mにするためには3個のトラフ3が連接されている必要がある。また、ケーブル支持部材11の間隔を所定長さ5mにするためには6個のトラフ3が連接されている必要がある。また、トラフ3の長さが1mでない場合には、トラフ3の長さに応じて適宜組み合わせれば良い。
【0147】
また、ケーブル支持部材11を6m以下の間隔で設けることで、ケーブル支持部材11の自重によるケーブル支持部材11間の弛みを防止することができる。このため、漏洩同軸ケーブル5の弛みによるスロット23からの電磁波が放射される方向の変化を抑制して、安定した送受信を可能にすることができる。また、漏洩同軸ケーブル5の弛みによって、漏洩同軸ケーブル5がトラフ本体3aの底部7に接触することがなく、トラフ3内に雨水が浸入した場合の漏洩同軸ケーブル5の水濡れや損傷を抑制することができる。ここで、ケーブル支持部材11がトラフ本体3aに一体成形されている場合には、ケーブル支持部材11が一体成形されているトラフ本体3aと、一体成形されていないトラフ本体3aを組わせてトラフ構造体51を形成すれば良い。
【0148】
以上説明したように、本実施の形態によれば、漏洩同軸ケーブル5が、トラフ3内に収容されるため、雨濡れや列車からの風圧などの影響を漏洩同軸ケーブル5が直接受けることがなく、漏洩同軸ケーブル5の通信特性を安定させることができる。このため、長期にわたって安定して漏洩同軸ケーブル5の敷設状態を維持することができる。また、吊り下げ式などと異なり、漏洩同軸ケーブル5を吊り下げるための支柱や固定治具等も不要である。また、漏洩同軸ケーブル5がトラフ3内に設置されるため、外部環境温度の変化や紫外線照射によるケーブル被覆部材の劣化などを緩和することができる。
【0149】
また、トラフ本体3aをコンクリート地盤35に固定するアンカーボルト43を挿通するトラフ固定用ボルト挿通孔41として、既設の穴を用いることで、別途の穴あけ加工が不要である。また、アンカーナット45の配置が多少ずれても、トラフ固定用ボルト挿通孔41が長穴であれば、位置合わせが容易である。また、アンカーナット45の配置が既設の穴からずれている場合でも、トラフ固定用ボルト挿通孔41は、溝39a、39bに沿った位置に容易に形成することができる。この際、リブ37を、トラフ固定用ボルト挿通孔41を形成するためのガイドとして利用することができる。
【0150】
また、トラフ本体3a及びトラフ蓋3bは、いずれも電波を殆ど遮蔽しない樹脂製である。このため、トラフ本体3aとトラフ蓋3bで囲まれる閉空間の内部に漏洩同軸ケーブル5を収容しても、トラフ3の内部の漏洩同軸ケーブル5と、トラフ3の外部のアンテナとの間で、電波の吸収の少ない安定した送受信が可能である。
【0151】
また、トラフ本体3aとトラフ蓋3bとの固定にはボルト17が用いられ、トラフ本体
3aとコンクリート地盤35との固定はアンカーボルト43で行われる。このため、トラフ本体3aとトラフ蓋3bとの固定や、トラフ本体3aとコンクリート地盤35との固定のために、アングル部材やバンド状の部材が使用されないため、固定部材による電磁波の影響を抑制することができる。
【0152】
また、漏洩同軸ケーブル5がケーブル支持部材11上に配置される。このため、漏洩同軸ケーブル5を、トラフ本体3aの内部において、所定の高さに支持することができる。このため、トラフ本体3a内に、水が浸入した場合であっても、漏洩同軸ケーブル5が水濡れすることを抑制することができる。また、コンクリート地盤35から所定距離離して配置することで、コンクリート地盤35での電波の反射の影響も抑制することができる。また、アンカーボルト43の頂部と漏洩同軸ケーブル5の下部が所定距離離間して配置されるため、両者が干渉することがない。コンクリート地盤35に直接漏洩同軸ケーブル5を載置する場合に比べて、コンクリート地盤35による反射の影響を少なくすることが可能になり、さらに、漏洩同軸ケーブル5の巻癖により、漏洩同軸ケーブル5が蛇行することを防止できる。
【0153】
また、トラフ本体3aの長手方向に垂直な断面において、漏洩同軸ケーブル5を、ケーブル支持部材11によって、トラフ本体3aの内部に常に一定の角度で配置することができる。すなわち、漏洩同軸ケーブル5のスロット23の方向を、常に一定の方向に向けて配置することが可能である。このため、例えば列車に設けられたアンテナと漏洩同軸ケーブル5との間で良好な信号の送受信が可能である。
【0154】
ここで、漏洩同軸ケーブル5は、スロット23の設計により、電波の漏れ量の制御が可能である。本実施形態では、給電点(給電部34)からの距離が遠くなるにつれて、漏洩同軸ケーブル5のスロット23の配置角度がケーブル軸方向に対して大きくなるか、あるいはスロット23が高密度になるように配置される。このため、この特性を利用して、給電点から離れるにつれて、スロット23の配置角度と配置密度が大きくなるように設計することで、中継間隔を大きくすることができる。例えば、漏洩同軸ケーブル5の中継間隔を1300m~1500mとすることができるが、中継間隔は、必ずしも上記の範囲に限らず1000m以下に設定することもできる。
【0155】
なお、漏洩同軸ケーブル5のケーブル接続部31においては、例えば、増幅器等を設置してもよい。このようにすることで、複数の漏洩同軸ケーブル5を接続した場合でも、全長にわたって、安定した信号の良好な送受信が可能である。
【0156】
[第2の実施形態]
次に、第2の実施形態について説明する。
図14Aは、第2の実施形態で用いられるケーブル支持部材11aの斜視図であり、
図14Bは正面図である。なお、以下の説明において、第1の実施形態と同様の機能等を奏する構成については、
図1~
図13と同様の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0157】
ケーブル支持部材11aは、ケーブル支持部材11とほぼ同様の構成であるが、支持部33の配置が異なる。前述したケーブル支持部材11は、支持部33の中心線がケーブル支持部材11の幅方向のほぼ中央(
図14Bの線H上)に配置された。これに対し、ケーブル支持部材11aは、支持部33の中心線(
図14Bの線I)が、ケーブル支持部材11aの幅方向の中央からずれた位置に配置される。
【0158】
図15は、ケーブル支持部材11aが用いられた、漏洩同軸ケーブル敷設構造1cを示す平面概念図の一例(但し、トラフ蓋3bの図示を省略する)である。前述したように、複数のトラフ3が連接されたトラフ構造体51において、長手方向の所定の間隔で複数の
ケーブル支持部材11aが配置される。それぞれのケーブル支持部材11aの支持部33に漏洩同軸ケーブル5が配置される。
【0159】
ここで、長手方向に互いに隣り合うケーブル支持部材11aは、互いに逆向きに形成される。すなわち、トラフ本体3aの幅方向に対して、ケーブル支持部材11aの支持部33のずれ方向が、交互に変わるように配置される。図示した例では、図中上から順に、支持部33が図中右方向→左方向→右方向にずれるように、ケーブル支持部材11aが向きを変えて配置される。
【0160】
ケーブル支持部材11aの支持部33には、漏洩同軸ケーブル5が配置される。また、ケーブル支持部材11aの支持部33の幅方向の配置が、トラフ構造体51の長手方向に対して交互になるように配置される。このため、漏洩同軸ケーブル5は、トラフ構造体51の長手方向に対して連続した曲がり部が交互に形成されるように略S字状に湾曲して弛み配置される。この際、漏洩同軸ケーブル5はケーブル支持部材11aにより拘束されて、それぞれケーブル支持部材11aの幅(厚み)方向端部において、トラフ3の中心方向に向けて曲げられる。すなわち、漏洩同軸ケーブル5は、ケーブル支持部材11aの幅(厚み)に相当する距離拘束された状態で、ケーブル支持部材11aの両端部において、所定の方向にそれぞれ曲げられることになる。そのため、漏洩同軸ケーブル5に発生する応力がケーブル支持部材11aの両側に分散され、ケーブル支持部材11aの中央部に配置された漏洩同軸ケーブル5の1点に応力が集中することがない。
【0161】
ケーブル支持部材11aの中心からの支持部33のずれの量は、例えば、略半円形の支持部33の中心がケーブル支持部材11aの中心からずれる量で評価することができ、これをオフセット量と定義する。
【0162】
なお、ケーブル支持部材11aの支持部33のオフセット量は、使用される漏洩同軸ケーブル5の許容曲げ角度と、ケーブル支持部材11aの設置間隔に応じて設定することができる。例えば、漏洩同軸ケーブル5の外部導体25がアルミニウム製の管の場合には、曲げ角度を4°に設定することができるが、繰り返しS字状に曲げられるため安全を考慮すると、曲げ角度を2°以下とすることが望ましい。尚、外部導体25を銅管で形成すると、外部導体をアルミニウム管で形成した場合よりS字状の曲げ角度を大きくできるが、本発明では、アルミニウム管の曲げ角度に合わせて、曲げ角度の上限を2°とする。
【0163】
ここで、支持部33がオフセットして形成されたケーブル支持部材11aを用い、所定距離離間した隣り合うケーブル支持部材11aの向きを相互に反転して千鳥配置してもよい。このようにすることで、ケーブル支持部材11a中心線に対して、それぞれ反対方向に支持部33をオフセットさせることができる。このため、隣り合うケーブル支持部材11aの支持部33のオフセット合計量は、個々のケーブル支持部材11aの支持部33のオフセット量の2倍となる。
【0164】
例えば、漏洩同軸ケーブル5の曲げ角度を2°とする場合の漏洩同軸ケーブル5のずれ量は、1m当り約3.5cmであり、2m当り約7cmとなる。このため、例えば、ケーブル支持部材11aを2m間隔で配置する場合には、ケーブル支持部材11aの支持部33の形成位置は、中心から3.5cmオフセットさせて形成すればよい。このように、例えば右方向に3.5cmオフセットさせてケーブル支持部材11aを配置し、その次のケーブル支持部材11aを逆向きに配置することで、支持部33を左側に3.5cmオフセットさせて配置することができる。
【0165】
なお、漏洩同軸ケーブル5の曲げ角度を0.5°とする場合の漏洩同軸ケーブル5のずれ量は、1m当り約0.87cmであり、2m当り約1.74cmとなる。ここで、曲が
り角度が0.5°未満であると、漏洩同軸ケーブルの曲げ部のずれ量が小さすぎて余長を持たせる効果が不足する。そのため、漏洩同軸ケーブル5の曲げ角度は、0.5°以上2°以下にする必要があり、1°以上2°以下に設定するのが望ましい。
【0166】
このようにケーブル支持部材11aの支持部33および溝33aが、長手方向に、オフセット量が異なる向きに配置されることで、漏洩同軸ケーブル5はこれに沿ってガイドされ、平面視においてS字状に蛇行しながら配設される。例えば、漏洩同軸ケーブル外径約51mmの場合に、支持部材の支持部33の溝33aの長さは、トラフ長手方向の長さは60mmであるが、溝33aの長さは適宜決定すれば良い。
ここで、S字状の山部谷部が支持部材33の溝33aで短い直線状に拘束され,その山部谷部の両端部で内側に曲げられることで、S字の中心近傍に変曲点を有する緩み配置が実現できる。このような形態とすることで、S字状に配設した漏洩同軸ケーブル5の長さに余裕が与えられるため、地震などの揺れで漏洩同軸ケーブル5に引張力がかかったときにも安定した敷設状態が維持される。
【0167】
上記の弛み配置の周期は、ケーブル支持部材11aの配置間隔である2mから6mである。ケーブル支持部材11aの間隔が6mを超えると、自重による弛みの影響が現われ、漏洩同軸ケーブル5の高さが不均一になり、通信特性が不安定になるので好ましくない。また、ケーブル支持部材11aの間隔が2m未満になると、漏洩同軸ケーブルに少ない曲げ角度において曲げを安定して付与したり、さらにケーブルのS字状曲げの山部谷部への局部的な応力集中を避けることが困難になる。また、同時に、ケーブル支持部材11aの設置個数増加による不必要なコスト上昇を招く。したがって、ケーブル支持部材11aの配置間隔は2mから6mが望ましい。このように配置間隔を6m以下とすることで、漏洩同軸ケーブル自体の剛性により、自重による撓みの影響を受けることがない。
【0168】
なお、漏洩同軸ケーブル敷設構造1cでは、ケーブル支持部材11aのみではなく、一部にケーブル支持部材11を用いてもよい。すなわち、漏洩同軸ケーブル敷設構造1cでは、少なくとも一部にケーブル支持部材11aが用いられ、ケーブル支持部材11aの支持部33が、ケーブル支持部材11aの幅方向の中心から所定距離オフセットした位置に形成されていればよい。このようにすることで、漏洩同軸ケーブル5を、ケーブル支持部材11a上に、トラフ構造体51の長手方向に対して略S字状に弛み配置することができる。
【0169】
第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、漏洩同軸ケーブル5を、トラフ構造体51の長手方向に対して略S字状に弛み配置することで、漏洩同軸ケーブル5を緩んだ状態で配置することが可能となる。このため、漏洩同軸ケーブル5が環境温度変化だけでなく、地震などの際に外部から張力を受けた時に応力を緩和することができ、漏洩同軸ケーブルの変形を防止することができる。
【0170】
[第3の実施形態]
次に、第3の実施形態について説明する。
図16Aは、第3の実施形態で用いられるケーブル支持部材11bの斜視図である。ケーブル支持部材11bは、ケーブル支持部材11とほぼ同様の構成であるが、ケーブル支持部材11bの周方向に沿って、側面及び底面に溝53が形成される点で異なる。
【0171】
図16Bは、ケーブル支持部材11bに漏洩同軸ケーブル5を配置した状態を示す正面図である。前述したように、ケーブル支持部材11bの支持部33に、漏洩同軸ケーブル5が配置される。また、溝53には紐状固定部材55が配置される。紐状固定部材55としては、例えば、樹脂製の結束バンドが用いられる。
【0172】
紐状固定部材55によって、漏洩同軸ケーブル5をケーブル支持部材11bに固定することができる。すなわち、ケーブル支持部材11bに載置された漏洩同軸ケーブル5の少なくとも一部が、紐状固定部材55によってケーブル支持部材11bに縛りつけられて、ケーブル支持部材11bに固定される。ここで、紐状固定部材の締め付け力としては、通常は、漏洩同軸ケーブルの断面変形が起こらない範囲の締め付け力で締め付けることが望ましい。また、後述する漏洩同軸ケーブルを押圧体で押圧しない場合には、紐状固定部材の締め付け力を漏洩同軸ケーブルの断面変形歪み率が0.2%の範囲内で加えてもよい。なお、漏洩同軸ケーブル敷設構造において、すべての位置にケーブル支持部材11bを配置しなくてもよく、少なくとも一部にケーブル支持部材11bを配置し、残りはケーブル支持部材11を配置してもよい。また、ケーブル支持部材11bにおいても、ケーブル支持部材11aと同様に、支持部33の位置を幅方向にオフセットさせてもよい。
【0173】
第3の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、漏洩同軸ケーブル5を、紐状固定部材55でケーブル支持部材11bに固定することで、地震等の際に、ケーブル支持部材11bの支持部33から漏洩同軸ケーブル5がずれることがない。また、漏洩同軸ケーブル5を固定する紐状固定部材55の締め付け力を強くすることで、漏洩同軸ケーブル5を安定して固定することができる。
【0174】
[第4の実施形態]
次に、第4の実施形態について説明する。
図17Aは、漏洩同軸ケーブル敷設構造1dのトラフ蓋3bを閉じる前の状態を示す正面図であり、
図17Bは、漏洩同軸ケーブル敷設構造1dのトラフ蓋3bを閉じた状態を示す正面図である。漏洩同軸ケーブル敷設構造1dにおいては、トラフ蓋3bの裏面に、押圧体59aが配置される。押圧体59aは、樹脂発泡体で、例えば、ポリエチレン発泡シート製であり、複数のポリエチレン発泡シートが積層されて構成される。
【0175】
押圧体59aは、トラフ蓋3bの裏面であって、トラフ蓋3bを閉じた際に、ケーブル支持部材11が配置される位置に対応する部位に配置される。したがって、トラフ蓋3bをトラフ本体3aに対してボルト17で固定する際に、押圧体59aは、ケーブル支持部材11上の漏洩同軸ケーブル5の上部に配置される。
【0176】
なお、漏洩同軸ケーブル敷設構造1dにおいて、ケーブル支持部材11が配置されるすべての部位に、押圧体59aが配置されなくてもよい。すなわち、少なくとも一部のケーブル支持部材11の上部に、押圧体59aが配置されればよい。
【0177】
また、押圧体59aの厚みは、トラフ蓋3bを閉じた際における、トラフ蓋3b裏面と漏洩同軸ケーブル5上端との隙間よりも厚い。したがって、トラフ蓋3bをトラフ本体3aに対してボルト17で固定する際に、トラフ蓋3bによって押圧体59aを押圧することができる。このため、ケーブル支持部材11上に載置された漏洩同軸ケーブル5が押圧体59aによって押圧され(
図17Bの矢印J)、漏洩同軸ケーブル5を固定することができる。
【0178】
なお、ポリエチレン発泡シート製の押圧体59aは、極めて変形量が大きい。このため、
図17Aに示すように、正面視で略矩形の押圧体59aであっても、漏洩同軸ケーブル5を押圧する際には、押圧体59aは、漏洩同軸ケーブル5の外形に沿って変形して漏洩同軸ケーブル5の上面に密着する。このため、漏洩同軸ケーブル5は、ケーブル支持部材11と押圧体59bとで挟み込まれ、効率よく漏洩同軸ケーブル5を固定することができる。
【0179】
たとえば、ポリエチレン発泡シート(40倍発泡品:厚さ10mmを6枚積層した積層
体)を押圧体59aとして用い、寸法:厚さ60mm×長さ120mm×幅140mmの所定厚さのポリエチレン発泡樹脂シートを、最も押圧量が大きい漏洩同軸ケーブルの頂部を16%押圧した場合には、押圧体59aによる押圧力の増加に起因する漏洩同軸ケーブル5の引き抜き力の増加は、8.0kgである。同様に、ポリエチレン発泡シート(40倍発泡品)を押圧体59aとして用い、30%押圧した場合には、押圧体59aによる押圧力の増加に起因する漏洩同軸ケーブル5の引き抜き力の増加は、13.0kgである。このため、押圧体59aを2m間隔で100m区間に50個配置した場合における漏洩同軸ケーブル5の引き抜き力の増加は、それぞれ400kg、650kgとなる。ここで、例えば、30%押圧した場合の漏洩同軸ケーブルの押圧前後の直径変化51.01mmから50.93mmに対応する断面変形歪み率は0.16%であり、0.20%以下とすることが可能になる。つまり、発泡倍率40倍のポリエチレン発泡シートを2mの所定間隔毎に設けることにより、漏洩同軸ケーブルの100m当たりの引き抜き力を400Kg以上とすることが可能になる。これにより、押圧距離と押圧量を調整することで100m当たり300kg以上の引き抜き力を確保することが可能である。
【0180】
なお、押圧体としては、ポリエチレン発泡シート製には限られない。
図18Aは、漏洩同軸ケーブル敷設構造1eのトラフ蓋3bを閉じる前の状態を示す正面図であり、
図18Bは、漏洩同軸ケーブル敷設構造1eのトラフ蓋3bを閉じた状態を示す正面図である。漏洩同軸ケーブル敷設構造1eでは、トラフ蓋3bの裏面に押圧体59bが配置される。押圧体59bは、ゴム成形体である。
【0181】
ゴム成形体からなる押圧体59bは、ポリエチレン発泡シート製の押圧体59aと比較すると変形量が小さい。このため、押圧体59bには、予め、漏洩同軸ケーブル5の外形に応じた形状の切欠き61が形成される。例えば、図示したように、押圧体59bの下面に半円状の切欠き61が形成される。
【0182】
切欠き61における押圧体59bの厚みは、おおよそ、トラフ蓋3bを閉じた際における、トラフ蓋3b裏面と漏洩同軸ケーブル5の上端との隙間と等しいか、やや厚い。したがって、トラフ蓋3bをトラフ本体3aに対してボルト17で固定する際に、トラフ蓋3bによって押圧体59bを押圧すると、ケーブル支持部材11上に載置された漏洩同軸ケーブル5が押圧体59bによって押圧され(
図18Bの矢印K)る。このため、漏洩同軸ケーブル5を固定することができる。この場合には、漏洩同軸ケーブル5は、ケーブル支持部材11の支持部33と押圧体59bの切欠き61とで挟み込まれて固定される。
【0183】
第4の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、押圧体59a、59bによって漏洩同軸ケーブル5が押圧されるため、漏洩同軸ケーブル5と押圧体59a、59bとの接触によって、漏洩同軸ケーブル5に摩擦力を加えることができる。このため、漏洩同軸ケーブル5に対する軸方向の膨張伸縮に対する抵抗力を大きくしたり、引き抜き抵抗を大きくすることができる。この結果、トラフ本体3aの内部から漏洩同軸ケーブル5を一方向に引っ張り出すことが困難となる。このため、漏洩同軸ケーブル5が盗難されることを抑制することができる。ここで、ポリエチレン発泡樹脂製シートの積層体からなる押圧体59aとゴム成形体からなる押圧体59bの両者を比較すると、低誘電率材料であるポリエチレンの発泡材である前者の押圧体59aは、さらに低誘電率な材料となるため、後者のゴム押圧体59bと比較して、その低誘電率特性から漏洩同軸ケーブルから放射される電磁界を乱す度合いの少ない良好な押圧体として使用できる。
【実施例】
【0184】
[コンクリートトラフと樹脂製トラフの通信特性確認試験]
前述の通り、漏洩同軸ケーブルは、電波を送受信し、列車と無線通信をおこなうための
ケーブルである。このため、ケーブル保護の目的で、ケーブルをトラフ内に配置すると、トラフによって電波伝搬の損失が生じ、列車との送受信特性が悪化する可能性がある。つまり、トラフに収納することで、結合損失特性が悪化する可能性がある。又、漏洩同軸ケーブルは開放形の伝送路である為、周囲にトラフが存在すると、漏洩同軸ケーブルの内部を伝送する電波も影響を受ける可能性がある。つまり、伝送損失特性が悪化する可能性がある。このため、樹脂製のトラフ構造体の通信特性(結合損失特性、及び伝送損失特性)の確認試験を行った。この際、樹脂製のトラフ構造体を使用せず、コンクリート地盤上のケーブル支持部材にケーブルを載置するのみの場合も比較した。
【0185】
(通信特性確認試験方法)
漏洩同軸ケーブルは支持線に張力を掛けて所定長さ敷設して、漏洩同軸ケーブルの減衰量である伝送損失及び結合損失を測定した。測定は、コンクリート地盤面上に直接配置したケーブル支持部材上に、漏洩同軸ケーブルを所定高さで直接載置したリファレンス材を試験材Aとした。これに対し、トラフ蓋をトラフ本体に被冠して閉空間を構成して、トラフ内の閉空間のケーブル支持部材の所定高さの支持部に漏洩同軸ケーブルを載置したものを試験材B、試験材Cとし、それぞれの試験材について通信特性を比較した。なお、ケーブル支持部材の配置は、いずれも2m間隔とし、所定高さの支持部に、スロットが所定方向を向くよう漏洩同軸ケーブルを長さ約10mの直線状に載置した。ここで、試験時のトラフ構造体に漏洩同軸ケーブルを載置した状態について詳細に説明を行う。試験に用いたトラフ構造体におけるトラフ本体の内寸は、幅170mm×高さ145mm×長さ約1000mmで、その内部には支持部材を配置した。支持部材の寸法は、幅150mm×高さ80mm×長さ60mm(トラフ長手方向)で、幅方向の中央に半円形(27R)の支持部を有する。支持部の最下端には、支持線を収納する溝が形成されている。支持部には漏洩同軸ケーブルが載置され、トラフ本体の側壁部の上部には、トラフ蓋が被冠される。この際、漏洩同軸ケーブルの上部とトラフ蓋の間には、高さ約40mmの空間が確保できる。
【0186】
ここで、試験材A、試験材B、試験材Cのケーブル支持部材を配置する高さは、試験材Cのトラフ本体の底厚に合わせて、いずれも一定となるように樹脂シートを用いて50mmに調整した。ここで、試験材Bには、後述するポリオレフィン系リサイクル樹脂製トラフを用い、試験材Cには、コンクリートトラフを用いたが、試験材Bに用いた樹脂製トラフと試験材Cに用いたコンクリートトラフは、同種サイズ規格のものを用いた。なお、試験材Bに用いたポリオレフィン系リサイクル樹脂は、無機物を合計でリサイクル樹脂の全質量の36質量%含むものを用いた。なお、試験材Bの無機物の樹脂材料全体に対するそれぞれの無機物の質量割合は、強度、難燃性、耐候性などを考慮して水酸化マグネシウム19質量%、炭酸カルシウム15質量%、酸化チタン2質量%である。
【0187】
また、いずれの試験材においても、支持線を挿入する溝を、ケーブル支持部材の底面に対して垂直に形成した同一のケーブル支持部材を用いた。すなわち、漏洩同軸ケーブルのスロットがコンクリート地盤に対して、垂直に上方を向くようにケーブル支持部材の底面から高さ約40mmの位置に配置した。そのため、いずれの試験材の場合にも、漏洩同軸ケーブルのコンクリート地盤からの支持高さは同一である。
【0188】
ここで、試験材Bにはポリオレフィン系リサイクル樹脂製トラフ本体とトラフ蓋を用い、試験材Cにはコンクリート製のトラフ本体とトラフ蓋を用いた。これらの試験材A、試験材B、試験材Cについて通信特性を評価した。なお、試験材B、試験材Cのトラフ本体とトラフ蓋の表面をそれぞれ水で濡らした場合も評価した。この場合、トラフ本体とトラフ蓋に吸水させるため、トラフ本体とトラフ蓋を、トレイの水中に24時間浸漬した後、さらにトレイから取り出したトラフを何回か傾けて表面の付着水を除去した。これらの試験材B、試験材Cに対応するそれぞれの試験材を試験材D、試験材Eとして、試験材D、試験材Eの通信特性も合わせて評価した。この際、試験材D、試験材Eの場合の漏洩同軸ケーブルの支持高さは、試験材B、試験材Cの場合と同様に設定した。
【0189】
結合損失特性の測定は、具体的には以下の方法による。漏洩同軸ケーブルの一端(片端)から、所定周波数でCW(Continuous wave)信号を、発信器等を用いて入力し、漏洩同軸ケーブルの内部にCW信号を伝送させる。尚、この際、他端(反片端)には無反射終端抵抗器を接続する。そして、漏洩同軸ケーブルから放射される電波のCW信号の強さを、漏洩同軸ケーブルの直上1.5mの高さ位置に設置した半波長ダイポールアンテナにより、スペクトラムアナライザなどの受信器を用いて受信する。この際、半波長ダイポールアンテナを漏洩同軸ケーブルの敷設長10mに沿って、所定速度で移動させて測定を行った。この漏洩同軸ケーブル内部を伝送するCW信号の強度と、その直上の半波長ダイポールアンテナの受信するCW信号の強度とのデシベル差を、ケーブル長手方向に関して平均した値を結合損失とした。
【0190】
一方、伝送損失特性の測定は、具体的には以下の方法による。漏洩同軸ケーブルの一端(片端)から、ネットワークアナライザ、又はトラッキングジェネレータ付きのスペクトラムアナライザを用いて、所定周波数範囲のCW信号を入力する。そして、他端(反片端)から出力されるCW信号を、同測定器を用いて受信する。それらの2つの信号の強さのデシベル差を伝送損失とした。
【0191】
表1には、各種試験材の漏洩同軸ケーブルの通信特性評価試験結果を示す。この際、伝送損失については、400~440MHzにおける測定結果の周波数に関しての平均の値とした。又、漏洩同軸ケーブルの実際の一区間長が約1.5kmであることを想定して、表示の単位としては、dB/kmに換算した値とした。
【0192】
【0193】
(通信特性評価結果)
400MHzから440MHz帯における樹脂製トラフを用いた試験材Bとリファレンスの試験材Aの伝送損失は、ほぼ同等で約22dB/kmであった。これに対して、コンクリートトラフを用いた試験材Cは27dB/kmであり、コンクリートトラフを用いた試験材Cは樹脂製トラフを用いた試験材Bに比べて劣っていた。また、リファレンスの試験材Aの400MHz、440MHz帯での結合損失はともに、63dBであるのに対して、試験材Bの結合損失は、400MHzで62dB、440MHzで63dBあり、両者はほぼ同等であった。これに対して、コンクリートトラフを用いた試験材Cの結合損失は、リファレンスの試験材Aと比較して、400MHzで3dB、440MHzで5dB損失が増加した。ここで、コンクリートトラフの場合には、結合損失(平均値)が大きいだけでなく、ばらつきも大きくなった。
【0194】
このように、樹脂製のトラフ構造体を用いた場合の通信特性は、樹脂製のトラフを用いない場合(リファレンス)と比較して、伝送損失が±1dB/km以内、結合損失を±1dB以内であった。すなわち、樹脂製のトラフ構造体を用いても、樹脂製のトラフを用いない場合(リファレンス)と比較して、伝送損失と結合損失は、少なくとも±2dB/km以内、±2dB以内の範囲の通信特性を満足することが確認された。
【0195】
さらに、樹脂製トラフの外表面及び内表面を水で濡らして吸水させたものを試験材D、コンクリートトラフの外表面及び内表面を水で濡らして吸水させたトラフを試験材Eとして、通信特性確認試験を行なった。その結果、樹脂製トラフを用いた試験材Dは、トラフ外表面及び内表面を水で濡らして吸水させても、トラフ外表面及び内表面が殆ど吸水しないため、伝送損失、結合損失ともに、外表面及び内表面が乾燥した場合と殆どかわらない。これに対して、コンクリートトラフの外表面及び内表面を水で濡らして吸水させた試験材Eの場合には、コンクリートの吸水により、伝送損失が3dB/km、結合損失が約1dB増加し、伝送損失、結合損失ともに増加する傾向を示した。
【0196】
以上より、樹脂製のトラフ本体とトラフ蓋を用いたトラフ構造体が形成する閉空間の内部に樹脂製のケーブル支持部材を配置し、その上に漏洩同軸ケーブルを所定高さ、所定角度に載置した場合の400~440MHz帯域の所定条件における通信特性は、リファレンス(トラフ構造体が存在せずにコンクリート地盤上に樹脂シートで高さ調整して配置されたケーブル支持部材上に漏洩同軸ケーブルを所定高さ、所定角度に載置した場合)と比べて、伝送損失の変化が±1dB/km以内、結合損失の変化が±1dB以内の範囲の通信特性であることが確認できた。すなわち、少なくとも、伝送損失と結合損失をそれぞれ±2dB/km以内、±2dB以内の通信特性を得ることが可能である。
雨水の影響について考察すると、漏洩同軸ケーブルの近傍に水、雨水が多く存在すると、水自身が大きな電磁波吸収特性を持つことから、漏洩同軸ケーブルの伝送損失特性、並びに結合損失特性は顕著に悪化するが、漏洩同軸ケーブルを支持部材付きのトラフに収納し、漏洩同軸ケーブルの上面からトラフ構造体までの離隔を一定程度確保できている場合、例えば40mm程度確保できる場合には、冠水条件下に近い条件下おいても漏洩同軸ケーブルの近傍での水の存在が回避できるため、伝送損失特性、並びに結合損失特性の悪化を抑制することが可能となる。
【0197】
同様に、トラフ構造体の400~440MHz帯域における通信特性確認試験での試験結果として、トラフ構造体の外表面及び内表面を水で濡らして吸水させた場合も、トラフ構造体の外表面及び内表面が乾燥状態の場合と同等の通信特性が得られた。さらに、リファレンスと比べた場合にも、伝送損失の変化が±1dB/km以内、結合損失の変化が±1dB以内の範囲の通信特性を有することが確認でき、そのため伝送損失の変化と結合損失の変化が、それぞれ±2dB/km以内、±2dB以内である通信特性を得ることが可能である。一方、コンクリートトラフは、樹脂製トラフに比べて水で濡らして吸水させた場合の通信特性が乾燥状態に比べてさらに劣ることが分かる。
【0198】
(試験材の吸水率)
前記試験材Bは無機物を合計でリサイクル樹脂の全質量の36質量%含むポリオレフィン系リサイクル樹脂であり、23℃×24時間吸水後の吸水率をASTM D570相当のJISK7209に基づいて測定した結果、吸水率は0.13%であり、0.15%以下を満足した。なお、リサイクル材や無機物を含まないポリオレフィン樹脂の吸水率は、0.025%であり、0.03%以下を満足する。また、コンクリートのJIS A 1110に基づく吸水率は、コンクリートに用いる素骨材の種類や打設時の水とセメント比により値は異なるが、24時間吸水試験後の吸水率は、少なくても2%以上である。したがって、ポリオレフィン系リサイクル樹脂と比較してコンクリートの吸水率は、1桁以上高いことが知られている。これが、無機物を所定量含むリサイクル樹脂製トラフを用いても、伝送損失や結合損失が増加しないにも関わらず、吸水により、コンクリートトラフの伝送損失や結合損失が低下する原因と考えられる。
【0199】
(試験材の耐食性確認試験)
また、前記試験材Bからなるポリオレフィン系リサイクル樹脂を、JISK7114に準拠した、室温で24時間浸漬を行う試験において、以下のような耐食性確認試験を行ない、それぞれの質量変化率を求めた。
(1)海水模擬液である3%NaCl水溶液の浸漬試験。
(2)融雪剤模擬液としての30%CaCl2浸漬試験。
(3)酸性雨模擬液としてのH2SO4とHNO3を2:1の割合で混合した液体を1%濃度に希釈した試験液での浸漬試験。
なお、各試験ともに試験片を3枚作製して試験を実施し、3枚の平均値を求めた。試験の結果を表2に示す。
【0200】
【0201】
この結果、上記いずれの試験においても、試験前の試験片の質量に対する試験後の試験片の質量の質量変化率は、0.1%以下であることが確認された。このように、本願の漏洩同軸ケーブルによる通信用のリサイクル樹脂製のトラフは、海水模擬液及び融雪剤模擬液、酸性雨模擬液の環境試験のいずれをも満足したので、過酷な外部環境にも追従することができる。
【0202】
また、試験材Bからなるポリオレフィン系リサイクル樹脂に関して、耐食性に加えて、耐候性の確認試験を行った。この試験には、岩崎電気社製の耐候性促進試験機(アイスーパーUVテスター:型番SUV-W161)を使用した。ポリオレフィン系リサイクル樹脂に対して、250時間から、250時間間隔で、2000時間まで、250時間、500時間、750時間、1000時間、1250時間、1500時間、1750時間、2000時間の8水準の各所定時間、所定の条件で紫外光を照射し、それぞれの試験片の引張強度とシャルピー衝撃値を求めた。
【0203】
ここで、耐候性促進試験機の光源には、波長295nm以上の紫外線を照射する岩崎電気社製の耐候性試験機用メタルハライドランプを用いた。紫外光照射の条件としては、紫外光の照射強度を、90mW/cm2とし、雨を想定したスプレー噴霧は行わずに、湿度50%の環境下にて、紫外光の照射を行った。また、それぞれの試験片及び試験は、JIS K7161、JIS K7162に則り、試験を行った。ここで、引張試験片は、その表面を照射面とし、シャルピー衝撃試験片は、ノッチ形成面に対して、垂直な方向から、すなわちノッチ形成面の法線方向から紫外光照射を行った。試験結果を表3に示す。
【0204】
【0205】
表3に示すように、紫外光照射前の試験片の引張強度、シャルピー衝撃値に対して、紫外光2000時間照射後の試験片の引張強度の残率は95%以上、シャルピー衝撃値の残率は90%以上であり、急激な強度低下などは起こらずに十分な強度と衝撃特性を有することが確認された。
【0206】
なお、表1には記載を省いたが、前述した通信特性評価で用いたポリオレフィン系リサイクル樹脂の材料の他、ポリオレフィン樹脂であるバージン材を用いた高密度ポリエチレン樹脂製のトラフを用いて、同様の通信特性評価試験を行った。高密度ポリエチレン樹脂製トラフ本体とトラフ蓋を用いた場合にも、試験材B、試験材Dと同様に、リファレンス材に対して、伝送損失が±1dB/km以内、結合損失が±1dB以内の範囲の通信特性を有することが確認できた。すなわち、伝送損失と結合損失をそれぞれ±2dB/km以内、±2dB以内の通信特性を得ることが可能であることが分かった。
【0207】
トラフを形成するポリオレフィン樹脂は、コストダウンのため、所定強度を有する高耐食性、高耐候性のポリオレフィン系リサイクル樹脂とすることが望ましい。この際、炭酸カルシウムや水酸化マグネシウムあるいは酸化チタンなどの無機物を、通信特性に影響のない範囲で、リサイクル樹脂の全質量の40質量%以下加えてもよいが、通常は、無機物の量は、34質量%以上36質量%以下であることが望ましい。リサイクル樹脂に36質量%前後の無機物を含有させることで、耐候性に優れた難燃ポリオレフィン樹脂とすることもできる。そのため、ポリオレフィン系リサイクル樹脂の全質量の36質量%以上40質量%範囲内で無機物を加えても、実用上問題ない強度と電気通信特性を維持できる。また、前記ポリオレフィン系リサイクル樹脂は、電気通信特性に優れ、耐食性も問題がないことが確認された。もちろん、ポリオレフィン系リサイクル樹脂用いれば、ポリオレフィン樹脂とほぼ同様の強度を有する上にコストダウンも可能になる。樹脂製トラフは、リサイクル樹脂でなく、所定強度を有する汎用樹脂を用いることができるが、この場合には、ポリオレフィン系リサイクル樹脂の代わりに、誘電特性、耐水性に優れるポリオレフィン樹脂のバージン樹脂が適している。
【0208】
なお、無機物を含むポリオレフィン系リサイクル樹脂材料としては、少なくとも無機物として水酸化マグネシウムと酸化チタンを含み、誘電率が3.15以下であることが望ましい。この場合、水酸化マグネシウムの含有量がポリオレフィン系リサイクル樹脂材料の全質量に対して18質量%以上であることが望ましい。より望ましくは、無機物は、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化チタンの3種であり、ポリオレフィン系リサイクル樹脂材料の全質量に対するそれぞれの含有割合が水酸化マグネシウム18~21.3質量%、炭酸カルシウム14~16.5質量%、酸化チタン2~2.2質量%の範囲で含有され、無機物の含有量の合計がポリオレフィン系リサイクル樹脂材料の全質量に対して34質量%以上40質量%以下であることが望ましい。このようにすることで、難燃性と通信特性に優れるポリオレフィン系リサイクル樹脂材料を得ることができる。
【0209】
例えば、このようなポリオレフィン系リサイクル樹脂材料は、電気通信用の構造体又は部材用の材料として有効である。例えば、前述したトラフ構造体に用いることで、通信特性に優れた通信方法や通信システムを得ることができる。
【0210】
(トラフ本体を形成する材料の誘電率測定試験)
<誘電率の測定方法>
誘電率測定は、測定周波数帯域により、最適な測定方法が異なるが、本発明のような400MHzの周波数帯においては、静電容量法による測定が適するものとされている。また、本発明のような樹脂中に複数の無機物が分散した材料の誘電率は、樹脂中に無機物を含有することで母材樹脂のみの場合より大きくなり、さらに無機物の分散状態による影響を受けるため、実測しないと予測ができないものである。
【0211】
本発明においては、トラフ構造体を形成するポオレフィン系リサイクル樹脂に関して、誘電率の測定を行った。誘電率測定は、樹脂と無機物を混練後ロールにより加工して得た幅15mm×長さ15mm×厚さ2mmの試験片を用いた。静電容量法にて、周波数帯域として、100MHz~600MHzの広帯域の周波数帯域をスキャンして、試験片の400~440MHzの周波数帯域の誘電率の測定を行ない、そこから400MHz、420MHz、440MHzにおける誘電率を得て測定値とした。
【0212】
測定には、KEYSIGHT TECHNOLOGIES社製のE4991Bインピーダンスアナーライザを使用した。試験片の測定用固定治具は同社のE16453Aを用いて、5回繰り返して測定を行ない、その平均値を各周波数帯における誘電率とした。
【0213】
<誘電率測定に用いたトラフ本体を形成する材料>
トラフ本体を形成する材料として、下記の試験材B、試験材B1、試験材B2の3種の材料を用意して、誘電率測定を行った。誘電率測定には、試験材Bの他、樹脂組成のばらつきを考慮した組成B1、無機物のばらつきを考慮した組成B2を試作して、誘電率を求めた。
【0214】
ここで、試験材Bは無機物の含有量がリサイクル樹脂の目標組成である。また、試験材B1は、基材樹脂を構成する樹脂組成においてポリプロピレンが増加したものである。具体的には、試験材Bは、ポリエチレン:ポリプピレン=9:1の組成比であるのに対して、試験材B1は、ポリプロピレンを2倍とし、ポリエチレン:ポリプピレン=8:2に相当する組成の材料である。
【0215】
試験材B2は、無機物の目標とする標準組成に対して、何らかの原因でばらついて無機物の含有量が約10%多めの場合を想定したものである。試験材Bの水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化チタンのそれぞれの無機物の含有量は、それぞれ20.9質量%、16.5質量%、2.2質量%で、合計39.6質量%であるが、試験材B2は、無機物の合計組成を切りよく40質量%とするため、水酸化マグネシウム21.3質量%、炭酸カルシウム16.5質量%、酸化チタン2.2質量%とした材料である。
【0216】
尚、通常含有される無機物の含有量は、それぞれの無機物が配合計算により加えられるため、同時に全ての無機物が10%も増加することがなく、実際には高々数%程度のばらつきの範囲に収まるものと考えられる。そのため、試験材B2における誘電率を抑えておけば、無機物の含有量が多い場合のばらつきを把握するためには十分であると考えられる。また、本発明では、逆に、無機物の含有量が目標の標準組成より、僅かに少ない場合として、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化チタンのそれぞれの無機物の含有量が、それぞれ18質量%、14質量%、2質量%で、合計34質量%含むことが許容されるため、この組成に相当する試験材を試験材B3として、試験材B1、B2に加えて、試験材B3の誘電率測定を行った。
【0217】
<トラフ本体を形成する材料の誘電率測定結果>
トラフ本体を形成する材料の誘電率測定結果として、各試験材の誘電率測定結果を、表4に示す。試験材Bの誘電率の測定結果は、400~440MHzの周波数帯域において、いずれの周波数においても一定で3.04であった。また、樹脂組成がポリプロピレンの量が多めの試験材B1の誘電率は、周波数が400、420MHzでは、3.06であり、周波数が440MHzでは、3.07であった。さらに各無機物含有量を約10%多めとした試験材B2の誘電率は、周波数400、420MHzでは3.14で、440MHzで3.15であり、試験材Bと比較して、試験材B2の誘電率は0.10~0.11程度大きくなった。
【0218】
これに対して、無機物の含有量が少ない試験材B3の誘電率は、周波数が400MHz、420MHzでは、3.00であり、周波数が440MHzの場合は、3.01となり、試験材B3の誘電率は、試験材Bの誘電率より、わずかに誘電率が低い結果となった。以上の結果より、樹脂中に含有される材料の誘電率への影響は、樹脂成分の変動の影響よりも無機物の方が大きいと考えられるものの、無機物の含有量が最大のB2の場合でも、標準組成の試験材Bに較べて、誘電率の増加はそれほど大きくなく、影響は小さい。ちなみに、前述のように、この周波数帯域におけるポリエチレンの誘電率は、2.35、ポリプロピレンの誘電率は、2.65である。
【0219】
【0220】
<コンクリートトラフのとの誘電率の比較>
表4における試験材B~B3の誘電率と、コンクリートの誘電率を対比すると、試験材Bの誘電率は、測定周波数帯域が400MHz~440MHzの全域で、3.04であり、無機物含有量が高い試験材B2の誘電率でも、たかだか3.15である。これに対して、通常コンクリートの誘電率は、6.0とされており、上記の試験材に用いた樹脂よりもはるかに高い。そのため、表1に示す試験結果において、コンクリート製のトラフの通信特性が本発明の樹脂製のトラフと比べて劣っていたものと思われる。
【0221】
<試験材B1、B2、B3の電気通信試験結果>
ここで、確認のために、試験材B1、B2、B3について、表1と同様の条件にて、400MHz、420MHz、440MHzの3つの周波数において電気通信特性の評価を行った。その結果、試験材B1の伝送損失、結合損失は、伝送損失がいずれの周波数でも22dB、結合損失が400MHz、420MHzでは62dBで、440MHzでは63dBであり、試験材Bと同様であった。
【0222】
これに対して、無機物の含有量が少ない試験材B3は、伝送損失は、22dBで、結合損失は、400~440MHzのいずれの周波数においても、62MHzで一定であった。無機物含有量が多い試験材B2の場合でも、伝送損失は22dBであるが、結合損失が400MHz、420MHz、440MHzのいずれの周波数においても63dBであり、結合損失が1dB程度増加する結果が得られた。
【0223】
以上の試験材B1、試験材B2、試験材B3の測定結果は、表1のリファレンス材と同様の結果を示すことが分かった。すなわち、試験材B1、試験材B2、試験材B3の樹脂製のトラフを用いる場合に、樹脂製のトラフを用いないで漏洩同軸ケーブルを露出して配置したリファレンスの場合と比較して、伝送損失と結合損失は、少なくとも±2dB/km以内、±2dB以内の範囲の通信特性を満足することが確認された。ここで、漏洩同軸ケーブルを樹脂製トラフ構造体の内部の支持部材上に配置した場合と、露出配置したリファレンスが同等の電気通信特性を示したのは、コンクリート地盤からの反射波の影響がリファレンスの方が大きいためと考えられる。
【0224】
さらに、樹脂製トラフとコンクリートトラフにおける電磁波の損失を考慮するにあたっては、より厳密には、誘電率の他、それぞれの材料の厚さの影響を考慮する必要がある。そのため、本発明の通信特性の確認試験に使用した樹脂製トラフとコンクリートトラフの厚さの関係を調査した。樹脂製トラフは、トラフ蓋の蓋厚が10mm、トラフ本体における壁厚が7mmで、トラフ本体の最大壁厚さが10mmであるのに対して、コンクリートトラフの場合には、トラフ蓋の蓋厚さが30mmで、トラフ本体における壁厚が50mmであり、トラフ本体の最大厚さが50mmであった。なお、コンクリートトラフの壁厚が樹脂製トラフより厚いのは、コンクリ―トトラフは電磁波を吸収するため、鉄筋を配置することができないため、壁厚が厚くする必要があるためである。
【0225】
以上のように、樹脂製トラフの場合にはいずれも、コンクリートトラフと比べて、誘電率が低いだけでなく、トラフによって遮蔽されるトラフ蓋とトラフ本体を合わせたトラフ構造体の外周の最大遮蔽厚さが10mm以下であり、コンクリートトラフの場合の遮蔽厚さより薄い。このように、電気通信特性には、誘電率のみでなく、トラフ構造体の最大遮蔽厚さの影響が重畳される。このことにより、前記の電気通信試験において、試験材B、試験材B1、試験材B2、試験材B3の無機物を含むポリオレフィン樹脂製トラフが、コンクリートトラフよりも、良好な通信特性が得られる結果となった。
【0226】
<トラフを形成する材料の引張試験及び曲げ試験>
トラフを形成する材料の引張試験は、試験材B、B1、B2、B3について、射出成形によりシート状に加工した後、そこからJIS-K7113に準拠し、JIS2号試験片に加工して引張速度50mm/minで行った。曲げ試験は、試験材B、B1、B2、B3の試験片について、JIS K7171に準拠しサンプル厚さ4mm、曲げ速度2mm/minにて曲げ弾性率を測定した。詳細には、射出成形で試験片(厚さ4mm、幅10mm、長さ80mm)を作製し、支点間距離64mm、支点及び作用点の曲率半径5mm、試験速度2mm/minにて荷重を負荷して、曲げ試験を行ない、曲げ弾性率を測定した。ここで、引張試験及び曲げ試験は各5回を行なって、その平均値を引張強さ及び曲げ弾性率として求めた。
【0227】
ここで、曲げ弾性率 Efは、
歪み0.0005(εf1)における撓み量において測定した曲げ応力σf1
歪み0.0025(εf2)における撓み量において測定した曲げ応力σf2
を求めて、これらの差を、それぞれの対応する歪み量の差で割ること、
すなわち、次式 Ef=(σf2-σf1)/(εf2-εf1)
で求めることができる。結果を表5に示す。
【0228】
【0229】
漏洩同軸ケーブル用のトラフ構造体用の材料としては、引張強度が20MPa以上、曲げ弾性率が1000MPa以上であれば、使用可能であると考えられる。表5に示す引張試験と曲げ試験の結果からは、試験材B、B1、B2、B3のいずれの試験材もこれらの値を満足する。
【0230】
ここで、トラフ用材料としては、トラフ構造体が所定の電気通信特性を満足し、トラフ構造体としての必要な機械的特性を有していれば、実用に供することができる。そこで、漏洩同軸ケーブルを収容するトラフ用の材料として、誘電率が3.15以下であり、さらに引張強度が20MPa以上で、曲げ弾性率が1000MPa以上の材料を用いれば、漏洩同軸ケーブルの電気通信特性を阻害することなく、漏洩同軸ケーブル用トラフ構造体の材料として使用することができる。このため、試験材B、B1、B2、B3のいずれも漏洩同軸ケーブル用のトラフ構造体を構成するトラフ本体やトラフ蓋体の材料として使用できる。
【0231】
<トラフを形成する材料のシャルピー衝撃試験>
ケーブル収納用構造物は、保線作業中のミスなどにより工具がぶつけられることがあるため、漏洩同軸ケーブルを収容するトラフ構造体用の材料としては、所定の衝撃強度が必要とされる。例えば、シャルピー衝撃強度として5kJ/m2以上の機械的特性を有することが期待される。このため、試験材B、B1、B2、B3について、JISK7111に基づき、ノッチ付き試験片により、23℃にてシャルピー衝撃試験を行った。試験は、繰り返し5回行いその平均値をシャルピー衝撃値とした。表5に示したシャルピー衝撃試験の結果は、いずれも上記の5kJ/m2以上を満足するものであった。この結果、本願発明の無機物を含むポリオレフィン樹脂材料は、電気通信特性と衝撃特性ともに実用上問題ないものであることが確認できた。
【0232】
以上のように、漏洩同軸ケーブルの敷設構造におけるトラフを構成する、無機物を含む樹脂が、静電容量法により測定された、上記の周波数400~440MHz帯域における誘電率が3.15以下のポリオレフィン系リサイクル樹脂であれば、通信特性にすぐれた漏洩同軸ケーブルの敷設構造を用いた通信方法を得ることができる。このように、所定の誘電率を有する材料を、漏洩同軸ケーブルの敷設構造におけるトラフ構造体に適用することで、トラフ構造体の内部に載置された漏洩同軸ケーブルと列車の車両上アンテナとの間で400MHz帯の周波数帯域で通信を行う通信方法を実現することができる。この際、漏洩同軸ケーブルが収納されるトラフ構造体の壁厚が薄い方が望ましく、例えば、最大壁厚さを10mm以下とすることが望ましい。
【0233】
さらに、漏洩同軸ケーブルの敷設構造におけるトラフを構成する、無機物を含む樹脂が、静電容量法により測定された400~440MHz周波数帯域における誘電率が3.15以下の無機物を含むポリオレフィン樹脂であれば、通信特性にすぐれた漏洩同軸ケーブルの敷設構造を用いた通信システムを得ることができる。このように、所定の誘電率を有する材料を、漏洩同軸ケーブルの敷設構造におけるトラフ構造体に適用することで、トラフ構造体の内部に載置された漏洩同軸ケーブルと列車の車両上アンテナとの間で400MHzの周波数帯域で通信を行う通信システムを実現することができる。この場合でも、無機物を含むポリオレフィン樹脂で形成したトラフ構造体として、漏洩同軸ケーブルが収納されるトラフ構造体の壁厚が薄い方が望ましく、例えば、最大壁厚さを10mm以下とすることが望ましい。
【0234】
また、前記無機物を含むポリオレフィン系リサイクル樹脂材料として、誘電率が3.15以下を満足するだけでなく、引張強度が20MPa以上、曲げ弾性率が1000MPa以上を満足するトラフ本体を提供することが可能になる。また、引張強度や曲げ特性として曲げ弾性率だけでなく、衝撃特性として、シャルピー衝撃強さが5kJ/m2以上を満足するトラフ本体の成形体を得ることができる。
【0235】
<試験材B1、B2,B3に関する吸水率、耐食性、耐候性試験>
試験材Bに対して行った、23℃×24時間吸水後の吸水率の測定と同様に、試験材B1、試験材B2、試験材B3についても追加で同様の試験を行った。その結果、トラフ本体を形成する材料は、いずれの材料もASTM D570相当のJIS K7209に基づく、23℃×24時間吸水後の吸水率が、0.15%以下を満足した。そのため、いずれの試験材を用いてもトラフ本体を形成することができる。
【0236】
また、表2に示す試験材Bにおける試験と同様に、試験材B1、試験材B2、試験材B3についても追加で同様の耐食性試験を行った。その結果、トラフ本体を形成する材料は、いずれの材料もJIS K7114に準拠した、室温で24時間浸漬を行う試験において、海水模擬液である3%NaCl水溶液の浸漬試験、融雪剤模擬液としての30%CaCl2浸漬試験、及び酸性雨模擬液としてのH2SO4とHNO3を2:1の割合で混合した液体を1%濃度に希釈した試験液での浸漬試験の、海水模擬液試験、融雪剤模擬液試験、酸性雨模擬液試験における質量変化率が、0.10%以下を満足する結果が得られた。このため、トラフ本体をいずれの材料のポリオレフィン樹脂材料で形成することも可能である。
【0237】
また、表3に示す試験材Bにおける試験と同様に、試験材B1、試験材B2、試験材B3についても追加で同様の試験を行った。その結果、トラフ本体を形成する材料は、湿度50%の環境下にて、90mW/cm2の照射強度の紫外光を、2000時間照射する耐候性促進試験後における、ポリオレフィン系リサイクル樹脂の引張強度の残率は、紫外光照射前の引張強度の95%以上であり、シャルピー衝撃値の残率は、紫外光照射前のシャルピー衝撃値の90%以上を満足することが確認された。そのため、トラフ本体をいずれのポリオレフィン樹脂材料を用いて形成することもできる。
【0238】
<漏洩同軸ケーブルの敷設構造を用いた車両上アンテナとの通信方法>
以上のように、漏洩同軸ケーブルの敷設構造におけるトラフ構造体を構成する樹脂材料を、周波数400~440MHz帯域における誘電率が3.15以下の無機物を含むポリオレフィン系リサイクル樹脂で形成することで、トラフ構造体の内部に載置された漏洩同軸ケーブルと列車の車両上アンテナとの間で、周波数400MHz帯域で良好が通信を行うことが可能な、漏洩同軸ケーブルの敷設構造を用いた通信方法を得ることができる。また、この際、トラフ構造体の最大壁厚を10mm以下にすることが望ましい。トラフ構造体の壁厚を10mm以下とすることで、良好な通信状態を得ることができる。
【0239】
また、トラフ構造体を用いずにコンクリート地盤上に高さ調整したケーブル支持部材上に漏洩同軸ケーブルを所定高さ、所定角度に載置した場合との比較において、伝送損失が±2dB/km以内、結合損失が±2dB以内の範囲の通信特性を有する、漏洩同軸ケーブルの敷設構造を用いた通信方法を得ることができる。
【0240】
<漏洩同軸ケーブルの敷設構造を用いた車両上アンテナとの通信システム>
さらに、漏洩同軸ケーブルの敷設構造におけるトラフ構造体を構成する樹脂材料が、周波数400~440MHz帯域における誘電率が3.15以下の無機物を含むポリオレフィン系リサイクル樹脂であれば、トラフ構造体の内部に載置された漏洩同軸ケーブルと列車の車両上アンテナとの間で400MHz帯の周波数帯域で通信を行う漏洩同軸ケーブルの敷設構造を用いた通信システムを得ることができる。
【0241】
また、トラフ構造体を用いずにコンクリート地盤上に高さ調整したケーブル支持部材上に漏洩同軸ケーブルを所定高さ、所定角度に載置した場合との比較において、伝送損失が±2dB/km以内、結合損失が±2dB以内の範囲の通信特性を有する、漏洩同軸ケーブルの敷設構造を用いた通信システムを得ることができる。
【0242】
以上の本発明の特徴をまとめると、漏洩同軸ケーブル5を外部環境に露出配置せずに、樹脂製トラフで形成された閉空間内のケーブル支持部材11、11a、11b上に漏洩同軸ケーブル5を配置しても、樹脂製トラフの電波吸収による伝送特性の低下がなく良好な通信特性が得られた。そのため、列車通過時の風圧による漏洩同軸ケーブル5の局部的な屈曲疲労による損傷を受けることが防止され耐久性が向上する。さらに、紫外線照射による漏洩同軸ケーブル5の劣化がないため、漏洩同軸ケーブル5の寿命を飛躍的に延ばすことが可能な漏洩同軸ケーブルの敷設構造が得られる。
【0243】
また、本発明においては、漏洩同軸ケーブル5をトラフ3内部のケーブル支持部材11、11a、11bの支持部33に載置するため、列車の風圧を受けて漏洩同軸ケーブル5が振動したり、漏洩同軸ケーブル5の表面が雨水などにより濡れることがない。このため、漏洩同軸ケーブル5から発信する電波の通信特性が安定し、良好な通信特性が得られる。また、トラフ3を樹脂で形成すれば、コンクリートと異なり、トラフ3の表面が雨に濡れてもトラフ3が雨水を殆ど吸収することがないため、通信特性が安定する。また、樹脂製トラフはコンクリートと異なり軽量であることから、設置作業性に優れる。さらに、漏洩同軸ケーブル5が外部環境に露出しないことから、外部環境の温度変化の影響も緩和できる。また、漏洩同軸ケーブル5がケーブル支持部材11、11a、11bに載置されるので、コンクリート地盤からの電波の影響を緩和できる。
【0244】
また、漏洩同軸ケーブル5は、トラフ3内のケーブル支持部材11a上に、長手方向に対して連続した曲がり部が交互に形成されるように略S字状に湾曲して弛み配置することもできる。このようにすることで、外部環境温度変化や地震などの際に、漏洩同軸ケーブル5に張力が負荷されても、張力による漏洩同軸ケーブル5の外部導体などの破断を防止することが可能になる。
【0245】
さらに、漏洩同軸ケーブル5の少なくとも一部が、紐状固定部材55でケーブル支持部材11bに縛りつけられて、ケーブル支持部材11bに固定されることで、漏洩同軸ケーブル5を確実に支持することができる。また、少なくとも一部のケーブル支持部材11、11a、11bにおいて、ケーブル支持部材11、11a、11bに載置される漏洩同軸ケーブル5の上部にポリエチレン発泡シートまたはゴム成形体のいずれかからなる押圧体59a、59bを配置することで、押圧体59a、59bで漏洩同軸ケーブル5を押圧することができる。このため、ケーブル支持部材11、11a、11b上に載置された漏洩同軸ケーブル5を、押圧力により安定して固定することができる。
【0246】
さらに、トラフ本体3aの長手方向と幅方向の略中央に、トラフ本体の長手方向に向けて形成された長穴状の既設のトラフ固定用ボルト挿通孔41に挿通されたアンカーボルト43によって、トラフ本体3aをコンクリート地盤35へ容易に固定することができる。また、底部7の裏面の幅方向の中央に形成され、トラフ本体の長手方向に沿って所定長さを有する相互に対向するリブ37の間の溝の任意の位置にトラフ固定用ボルト挿通孔41を形成してもよい。この場合でも、トラフ固定用ボルト挿通孔41に挿通されたアンカーボルト43によって、トラフ本体3aをコンクリート地盤35へ固定することができる。このため、コンクリート地盤35に設けるアンカーナット45の固定位置が多少ずれたとしても、トラフ本体3aを容易に固定することができる。
【0247】
本発明によれば、スロットの高さと向きを一定に保つことができ、列車等からの風の影響や、水濡れや汚染等による影響を抑制することが可能であり、環境温度変化や紫外線照射によるケーブルの劣化を緩和することが可能な、漏洩同軸ケーブル敷設構造、漏洩同軸ケーブルの敷設方法を提供し、漏洩同軸ケーブルの敷設構造を用いた通信方法ならびに通信システムを実現することができる。
【0248】
上記通信方法及び通信システムを使用して、車両上アンテナと良好な通信を行うことができる。本発明の漏洩同軸ケーブルの敷設構造を用いた通信方法ならびに通信システムを用いれば、トラフに難燃性を付与するとともに低損失での車両上アンテナとの通信が可能になる。
【0249】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態をトラフ長1mの場合を中心に説明したが、本発明の技術的範囲は、明細書に記載したトラフ長1mの場合の実施の形態に限らず、他のトラフ長の場合にも適用できる。以上の他、当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0250】
例えば、各実施形態の構成は、互いに組みわせることができることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0251】
1、1a、1b、1c、1d、1e………漏洩同軸ケーブル敷設構造
3………トラフ
3a………トラフ本体
3b………トラフ蓋
5………漏洩同軸ケーブル
7………底部
9………側壁部
11、11a、11b………ケーブル支持部材
13a、13b………接続部
15………固定金具
17………ボルト
19………内部導体
21………絶縁体
21a………絶縁体紐
23………スロット
25………外部導体
27………外部シース
29………支持線
31………ケーブル接続部
32………端末接続部
33………支持部
33a………溝
34………給電部
35………コンクリート地盤
37………リブ
39a、39b………溝
41………トラフ固定用ボルト挿通孔
43………アンカーボルト
45………アンカーナット
47a、47b………内リブ
49………固定部
51………トラフ構造体
53………溝
55………紐状固定部材
59a、59b………押圧体
61………切欠き