(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-03
(45)【発行日】2023-10-12
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物、ドライフィルム、硬化物、プリント配線板および半導体素子
(51)【国際特許分類】
G03F 7/023 20060101AFI20231004BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20231004BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
G03F7/023
G03F7/004 512
H05K1/03 610H
(21)【出願番号】P 2020509915
(86)(22)【出願日】2019-03-14
(86)【国際出願番号】 JP2019010709
(87)【国際公開番号】W WO2019188379
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2022-02-17
(31)【優先権主張番号】P 2018065814
(32)【優先日】2018-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591021305
【氏名又は名称】太陽ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096714
【氏名又は名称】本多 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124121
【氏名又は名称】杉本 由美子
(74)【代理人】
【識別番号】100176566
【氏名又は名称】渡耒 巧
(74)【代理人】
【識別番号】100180253
【氏名又は名称】大田黒 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100169236
【氏名又は名称】藤村 貴史
(72)【発明者】
【氏名】本松 譲
(72)【発明者】
【氏名】秋元 真歩
【審査官】塚田 剛士
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/057143(WO,A1)
【文献】特開2018-031799(JP,A)
【文献】特開2001-109144(JP,A)
【文献】国際公開第2016/199868(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/022825(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/057393(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004 - 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アルカリ可溶性樹脂と、(B)感光剤と、(C)一般式(1)で表される重合単位を100~10,000含むポリエーテル化合物と、を含む感光性樹脂組成物であって、
前記(A)アルカリ可溶性樹脂は、ポリベンゾオキサゾール前駆体であり、その配合量は、前記感光性樹脂組成物固形分全量基準で60~90質量%であ
り、
前記(B)感光剤として、ナフトキノンジアジド化合物を含むことを特徴とする感光性樹脂組成物。
(一般式(1)中、Xは、炭素数1~10のアルキレン基を示す。)
【請求項2】
前記(C)ポリエーテル化合物が、さらに、一般式(2)で表される重合単位を1~1,000含むことを特徴とする請求項1記載の感光性樹脂組成物。
(一般式(2)中、Yは、炭素数1~10のアルキレン基を示す。ただし、一般式(1)中のXと同一である場合を除く。)
【請求項3】
前記(C)ポリエーテル化合物が、さらに、一般式(3)で表される重合単位を1~1,000含むことを特徴とする請求項1記載の感光性樹脂組成物。
(一般式(3)中、Zは、反応性官能基またはフェニル基を側鎖に有する炭素数1~10のアルキレン基を示す。)
【請求項4】
請求項1記載の感光性樹脂組成物を、フィルムに塗布、乾燥して得られる樹脂層を有することを特徴とするドライフィルム。
【請求項5】
請求項1~
3のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物または請求項
4記載のドライフィルムの樹脂層を、硬化して得られることを特徴とする硬化物。
【請求項6】
請求項
5に記載の硬化物を有することを特徴とするプリント配線板。
【請求項7】
請求項
5に記載の硬化物を有することを特徴とする半導体素子。
【請求項8】
請求項
5に記載の硬化物を有することを特徴とする電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の保護膜、ウェハーレベルパッケージ(WLP)の再配線層用絶縁膜、受動部品の絶縁部分等に用いて好適な感光性樹脂組成物、ドライフィルム、硬化物、プリント配線板および半導体素子に関する。
【背景技術】
【0002】
LSIのバッファーコート膜やウェハーレベルパッケージ(WLP)の再配線層用絶縁膜には、ポリイミドやポリベンゾオキサゾール(PBO)等の耐熱樹脂の前駆体を含む感光性樹脂組成物の硬化膜が用いられている。これらの感光性樹脂組成物は、耐熱樹脂の前駆体を環化させるための加熱処理により硬化させている。従来の加熱処理は300℃以上であったが、近年、半導体素子の熱ダメージを抑制するために、耐熱樹脂の前駆体を低温で硬化させることが求められるようになってきた。
【0003】
これに対し従来、低温硬化可能な感光性樹脂組成物とするため、メチロール基を構造中に含む架橋剤などを含有させ、この架橋剤が樹脂と低温で架橋することで硬化膜特性を向上させることが検討されている。例えば、低温硬化可能なポジ型感光性樹脂組成物に関しメラミン系や尿素系架橋剤(特許文献1)を含むものがある。
【0004】
一方、上記のような感光性樹脂組成物の硬化物には、機械・熱衝撃信頼性を確保するために、伸び率(破断伸び)も求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
メラミン系や尿素系架橋剤を配合すると、低温硬化が可能となるが、十分な耐薬品性をもたせるには、多くの架橋剤を添加しなくてはならず、その結果、架橋密度が上昇することから、伸び率が低下してしまう問題があった。
【0007】
そこで本発明の目的は、300℃未満の低温で硬化し、耐薬品性と伸び率がともに向上した硬化物を得ることができる感光性樹脂組成物、該組成物から得られる樹脂層を有するドライフィルム、該組成物または該ドライフィルムの樹脂層の硬化物、該硬化物を有する半導体素子、プリント配線板および電子部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討した結果、感光性樹脂組成物が、特定のポリエーテル化合物を含むことにより、上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明の感光性樹脂組成物は、(A)アルカリ可溶性樹脂と、(B)感光剤と、(C)一般式(1)で表される重合単位を100~10,000含むポリエーテル化合物と、を含むことを特徴とするものである。
(一般式(1)中、Xは、炭素数1~10のアルキレン基を示す。)
【0010】
本発明の感光性樹脂組成物は、前記(C)ポリエーテル化合物が、さらに、一般式(2)で表される重合単位を1~1,000含むことが好ましい。
(一般式(2)中、Yは、炭素数1~10のアルキレン基を示す。ただし、一般式(1)中のXと同一である場合を除く。)
【0011】
本発明の感光性樹脂組成物は、前記(C)ポリエーテル化合物が、さらに、一般式(3)で表される重合単位を1~1,000含むことが好ましい。
(一般式(3)中、Zは、反応性官能基またはフェニル基を側鎖に有する炭素数1~10のアルキレン基を示す。)
【0012】
本発明の感光性樹脂組成物は、前記(A)アルカリ可溶性樹脂として、ポリベンゾオキサゾール前駆体を含むことが好ましい。
【0013】
本発明の感光性樹脂組成物は、前記(B)感光剤として、ナフトキノンジアジド化合物を含むことが好ましい。
【0014】
本発明のドライフィルムは、前記感光性樹脂組成物を、フィルムに塗布、乾燥して得られる樹脂層を有することを特徴とするものである。
【0015】
本発明の硬化物は、前記感光性樹脂組成物または前記ドライフィルムの樹脂層を、硬化して得られることを特徴とするものである。
【0016】
本発明のプリント配線板は、前記硬化物を有することを特徴とするものである。
【0017】
本発明の半導体素子は、前記硬化物を有することを特徴とするものである。
【0018】
本発明の電子部品は、前記硬化物を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、300℃未満の低温で硬化し、耐薬品性と伸び率がともに向上する硬化物を得ることができる感光性樹脂組成物、該組成物から得られる樹脂層を有するドライフィルム、該組成物または該ドライフィルムの樹脂層の硬化物、該硬化物を有する半導体素子、プリント配線板および電子部品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の感光性樹脂組成物が含有する成分について詳述する。
【0021】
[(A)アルカリ可溶性樹脂]
本発明の感光性樹脂組成物は、アルカリ可溶性樹脂を含む。アルカリ可溶性樹脂は、活性エネルギー線を照射した露光後の現像において、現像液としてのアルカリ水溶液に可溶な樹脂である。アルカリ可溶性樹脂は、これまでの感光性樹脂組成物に用いられてきたアルカリ可溶性ポリマーを使用することができる。アルカリ可溶性ポリマーは、分子中にアルカリ可溶性基を有するもの、具体的には、カルボキシル基、フェノール性水酸基、スルホン酸基、チオール基等を有するものが挙げられる。なかでも、フェノール性水酸基またはカルボキシル基を有するポリマーが好ましく、ノボラック樹脂、レゾール樹脂、ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール前駆体などが挙げられる。好ましくはポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール前駆体である。これらのポリマーを所定の温度で加熱すると脱水閉環し、ポリイミド、またはポリベンゾオキサゾール、或いは両者の共重合という形で耐熱性樹脂が得られる。
【0022】
ポリベンゾオキサゾール前駆体は、次の一般式(4)の繰り返し構造を有するポリヒドロキシアミド酸であることが好ましい。
(式中、Xは4価の有機基を示し、Yは2価の有機基を示す。nは1以上の整数であり、好ましくは10~50、より好ましくは20~40である。)
【0023】
ポリベンゾオキサゾール前駆体を上記の合成方法で合成する場合、上記一般式(4)中、Xは、上記ジヒドロキシジアミン類の残基であり、Yは、上記ジカルボン酸の残基である。
【0024】
上記ジヒドロキシジアミン類としては、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジヒドロキシビフェニル、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジヒドロキシビフェニル、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェニル)スルホン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン等が挙げられる。中でも、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパンが好ましい。
【0025】
上記ジカルボン酸としては、イソフタル酸、テレフタル酸、5-tert-ブチルイソフタル酸、5-ブロモイソフタル酸、5-フルオロイソフタル酸、5-クロロイソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジカルボキシビフェニル、4,4’-ジカルボキシジフェニルエーテル、4,4’-ジカルボキシテトラフェニルシラン、ビス(4-カルボキシフェニル)スルホン、2,2-ビス(p-カルボキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-カルボキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン等の芳香環を有するジカルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、1,2-シクロブタンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロペンタンジカルボン酸等の脂肪族系ジカルボン酸が挙げられる。中でも、4,4’-ジカルボキシジフェニルエーテルが好ましい。
【0026】
上記一般式(4)中、Xが示す4価の有機基は脂肪族基でも芳香族基でもよいが、芳香族基であることが好ましく、2つのヒドロキシ基と2つのアミノ基がオルト位に芳香環上に位置することがより好ましい。上記4価の芳香族基の炭素原子数は、6~30であることが好ましく、6~24であることがより好ましい。上記4価の芳香族基の具体例としては以下に示す基が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、ポリベンゾオキサゾール前駆体に含まれうる公知の芳香族基を用途に応じて選択すればよい。
【0027】
【0028】
上記4価の芳香族基は、上記芳香族基の中でも以下に示す基であることが好ましい。
【0029】
上記一般式(4)中、Yが示す2価の有機基は脂肪族基でも芳香族基でもよいが、芳香族基であることが好ましく、芳香環上で上記一般式(4)中のカルボニルと結合していることがより好ましい。上記2価の芳香族基の炭素原子数は、6~30であることが好ましく、6~24であることがより好ましい。上記2価の芳香族基の具体例としては以下に示す基が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、ポリベンゾオキサゾール前駆体に含まれる公知の芳香族基を用途に応じて選択すればよい。
【0030】
(式中、Aは単結合、-CH
2-、-O-、-CO-、-S-、-SO
2-、-NHCO-、-C(CF
3)
2-、-C(CH
3)
2-からなる群から選択される2価の基を表す。)
【0031】
上記2価の有機基は、上記芳香族基の中でも以下に示す基であることが好ましい。
【0032】
ポリベンゾオキサゾール前駆体は、上記のポリヒドロキシアミド酸の繰り返し構造を2種以上含んでいてもよい。また、上記のポリヒドロキシアミド酸の繰り返し構造以外の構造を含んでいてもよく、例えば、ポリアミド酸の繰り返し構造を含んでいてもよい。
【0033】
ポリベンゾオキサゾール前駆体の数平均分子量(Mn)は、5,000~100,000であることが好ましく、8,000~50,000であることがより好ましい。ここで数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、標準ポリスチレンで換算した数値である。また、ポリベンゾオキサゾール前駆体の重量平均分子量(Mw)は10,000~200,000であることが好ましく、16,000~100,000であることがより好ましい。ここで重量平均分子量は、GPCで測定し、標準ポリスチレンで換算した数値である。Mw/Mnは1~5であることが好ましく、1~3であることがより好ましい。
【0034】
ポリベンゾオキサゾール前駆体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ポリベンゾオキサゾール前駆体を合成する方法は特に限定されず、公知の方法で合成すればよい。例えば、アミン成分としてジヒドロキシジアミン類と、酸成分としてジカルボン酸ジクロリド等のジカルボン酸のジハライドとを反応させて得ることができる。
【0035】
(A)アルカリ可溶性樹脂の配合量は、組成物固形分全量基準で60~90質量%であることが好ましい。60質量%以上で含むことにより、密着性、表面硬化性が良好になる。また、90質量%以下で含むことにより、硬化物中の架橋密度の低下を防ぐことができ、塗膜特性が良好となる。
【0036】
[(B)感光剤]
本発明の感光性樹脂組成物は、感光剤を含む。(B)感光剤としては、特に制限はなく、光酸発生剤や光重合開始剤、光塩基発生剤を用いることができる。光酸発生剤は、紫外線や可視光等の光照射により酸を発生する化合物であり、光重合開始剤は、同様の光照射によりラジカルなどを発生する化合物であり、光塩基発生剤は、同様の光照射により分子構造が変化するか、または、分子が開裂することにより1種以上の塩基性物質を生成する化合物である。本発明においては、(B)感光剤として、光酸発生剤を好適に用いることができる。
光酸発生剤としては、ナフトキノンジアジド化合物、ジアリールスルホニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、ジアルキルフェナシルスルホニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、アリールジアゾニウム塩、芳香族テトラカルボン酸エステル、芳香族スルホン酸エステル、ニトロベンジルエステル、芳香族N-オキシイミドスルフォネート、芳香族スルファミド、ベンゾキノンジアゾスルホン酸エステル等を挙げることができる。光酸発生剤は、溶解阻害剤であることが好ましい。中でもナフトキノンジアジド化合物であることが好ましい。
【0037】
ナフトキノンジアジド化合物としては、具体的には例えば、トリス(4-ヒドロキシフェニル)-1-エチル-4-イソプロピルベンゼンのナフトキノンジアジド付加物(例えば、三宝化学研究所社製のTS533,TS567,TS583,TS593)や、テトラヒドロキシベンゾフェノンのナフトキノンジアジド付加物(例えば、三宝化学研究所社製のBS550,BS570,BS599)や、4-{4-[1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エチル]-α,α-ジメチルベンジル}フェノールのナフトキノンジアジド付加物(例えば、三宝化学研究所社製のTKF-428,TKF-528)等を使用することができる。
【0038】
また、光重合開始剤としては、慣用公知のものを用いることができ、例えば、オキシムエステル基を有するオキシムエステル系光重合開始剤、α-アミノアセトフェノン系光重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤、チタノセン系光重合開始剤などを用いることができる。
【0039】
前記オキシムエステル系光重合開始剤としては、市販品として、BASFジャパン社製のCGI-325、イルガキュアーOXE01、イルガキュアーOXE02、ADEKA社製N-1919、NCI-831などが挙げられる。
【0040】
前記α-アミノアセトフェノン系光重合開始剤としては、具体的には、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパノン-1、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタン-1-オン、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、N,N-ジメチルアミノアセトフェノンなどが挙げられ、市販品としては、IGM Resins社製のOmnirad(オムニラッド)907、Omnirad(オムニラッド)369、Omnirad(オムニラッド)379などを用いることができる。
【0041】
前記アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤としては、具体的には、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルホスフィンオキサイドなどが挙げられ、市販品としては、IGM Resins社製のOmnirad(オムニラッド)TPO、Omnirad(オムニラッド)819などを用いることができる。
【0042】
前記チタノセン系光重合開始剤としては、具体的には、ビス(シクロペンタジエニル)-ジ-フェニル-チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)-ジ-クロロ-チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)-ビス(2、3、4、5、6ペンタフルオロフェニル)チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)-ビス(2、6-ジフルオロ-3-(ピロール-1-イル)フェニル)チタニウムなどが挙げられる。市販品としては、IGM Resins社製のOmnirad(オムニラッド)784などが挙げられる。
【0043】
また、光塩基発生剤としては、イオン型光塩基発生剤でもよく、非イオン型光塩基発生剤でもよいが、イオン型光塩基発生剤の方が組成物の感度が高く、パターン膜の形成に有利になるので好ましい。塩基性物質としては、例えば、2級アミン、3級アミンが挙げられる。
【0044】
イオン型の光塩基発生剤としては、例えば、芳香族成分含有カルボン酸と3級アミンとの塩や、和光純薬社製イオン型PBGのWPBG-082、WPBG-167、WPBG-168、WPBG-266、WPBG-300等を用いることができる。
【0045】
非イオン型の光塩基発生剤としては、例えば、α-アミノアセトフェノン化合物、オキシムエステル化合物や、N-ホルミル化芳香族アミノ基、N-アシル化芳香族アミノ基、ニトロベンジルカーバメイト基、アルコオキシベンジルカーバメート基等の置換基を有する化合物等が挙げられる。その他の光塩基発生剤として、和光純薬社製のWPBG-018(商品名:9-anthrylmethyl N,N’-diethylcarbamate)、WPBG-027(商品名:(E)-1-[3-(2-hydroxyphenyl)-2-propenoyl]piperidine)、WPBG-140(商品名:1-(anthraquinon-2-yl)ethyl imidazolecarboxylate)、WPBG-165等を使用することもできる。
【0046】
(B)感光剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。(B)感光剤の配合量は、組成物固形分全量基準で3~20質量%であることが好ましい。
【0047】
[(C)一般式(1)で表される重合単位を100~10,000含むポリエーテル化合物]
本発明の感光性樹脂組成物は、(C)一般式(1)で表される重合単位を100~10,000含むポリエーテル化合物(以下、単に「(C)ポリエーテル化合物」とも称する)を含む。
(一般式(1)中、Xは、炭素数1~10のアルキレン基を示す。)
【0048】
(C)ポリエーテル化合物は、(A)アルカリ可溶性樹脂との相溶性が高いため、一般式(1)で表される重合単位を100以上含む高分子量体においても、乾燥や硬化過程において、均一なモルフォロジーを維持する。その結果、(C)ポリエーテル化合物を含む本発明の感光性樹脂組成物は、300℃未満の低温で硬化させても、十分な耐薬品性と機械的特性を有することができる。
【0049】
更に、上記一般式(1)で表される化合物は、親水性であるため、アルカリ現像液に対する溶解性を阻害しない。その結果、(C)ポリエーテル化合物を含む本発明の感光性樹脂組成物は、従来の感光性樹脂組成物と同等の解像性を有することができる。
【0050】
以上のことから(C)ポリエーテル化合物を含む本発明の感光性樹脂組成物は、耐薬品性や機械的特性、解像性を低下させることなく、300℃未満の低温加熱で硬化させることができる。
【0051】
一般式(1)で表される重合単位を100以上含むことによって、本発明の感光性樹脂組成物を300℃未満の低温で硬化させた場合であっても、十分な耐薬品性と機械的特性が示される。また、重合単位が10,000以下だと、溶剤への溶解性が良好であり、感光性樹脂組成物の作製に好適である。より好ましくは、1,000~10,000である。重合単位を1,000以上含むことによって、未露光部と露光部の溶解速度差であるコントラストが向上し、良好な解像性を示す。
【0052】
(C)ポリエーテル化合物の両末端は、-OR(Rは水素原子または炭素数1~10のアルキレン基を示す)であることが好ましい。Rがとり得る炭素数1~10のアルキレン基としては、上記一般式(1)中のXと同様のものが挙げられる。末端を主鎖骨格と同様にすることで、分子量違いによる相溶性の変化を低減することができる。(C)ポリエーテル化合物の両末端は、-OHであることが好ましい。これにより、アルカリ現像液に対する良好な溶解性を示すようになる。
【0053】
上記一般式(1)中、Xで示される炭素数1~10のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基(=-CH2CH(CH3)-)、テトラメチレン基、1,1-ジメチルテトラメチレン基、ブチレン基、オクチレン基、デシレン基等の直鎖または分岐鎖状アルキレン基が挙げられる。これらの中でも、親水性が高く、アルカリ水溶液に対する現像性の観点から、炭素数2~4のアルキレン基が好ましく、エチレン基がより好ましい。
【0054】
(C)ポリエーテル化合物は、ランダム共重合体、ブロック共重合体等の共重合体であってもよい。他の重合単位としては、例えば、一般式(2)で表される重合単位が挙げられる。
(一般式(2)中、Yは、炭素数1~10のアルキレン基を示す。ただし、一般式(1)中のXと同一である場合を除く。)
【0055】
上記一般式(2)中、Yで示される炭素数1~10のアルキレン基としては、上記一般式(1)中のXと同様のものが挙げられる。中でも、分岐鎖状アルキレン基であることが好ましく、結晶化度が低くなり、(A)アルカリ可溶性樹脂との相溶性が高く、より均一なモルフォロジーを形成することから、本発明の感光性樹脂組成物を300℃未満の低温で硬化させた場合においても、より良好な機械的特性を有する。それらの中でも、炭素数3~5の分岐鎖状アルキレン基がより好ましく、プロピレン基がさらに好ましい。
【0056】
(C)ポリエーテル化合物に含まれる上記一般式(2)で表される重合単位の数は、1~1,000であることが好ましく、10~100であることがより好ましい。また、上記一般式(1)で表される重合単位の数に対する上記一般式(2)で表される重合単位の数の比率は、10%以下であることが望ましい。
【0057】
また、(C)ポリエーテル化合物が含んでもよい他の重合単位としては、例えば一般式(3)で表される重合単位が挙げられる。
【0058】
(一般式(3)中、Zは、反応性官能基またはフェニル基を側鎖に有する炭素数1~10のアルキレン基を示す。前記反応性官能基としては、アルデヒド基、アシル基、カルバモイル基、イソシアネート基、イミダゾール基、シラノール基、アルコキシシリル基、メチロール基、アルコキシメチル基、エポキシ基、オキセタニル基、ビニル基、エチニル基、アリル基、アクリル基、メタクリル基等が挙げられる。)前記反応性官能基を側鎖に有することで、硬化時に(A)アルカリ可溶性樹脂と反応することで、硬化後における均一なモルフォロジーを維持する。また、側鎖にフェニル基を含むことで、芳香環を多く含む(A)アルカリ可溶性樹脂との相溶性を高めることができる。
【0059】
(C)ポリエーテル化合物に含まれる一般式(3)で表される重合単位は、1~1,000であることが好ましく、10~100であることがより好ましい。
【0060】
(C)ポリエーテル化合物に含まれる重合単位のうち、一般式(1)で表される重合単位の割合が、70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。
【0061】
また、(C)ポリエーテル化合物に含まれる重合単位のうち、一般式(2)で表される重合単位の割合が、1~50%であることが好ましく、3~20%であることがより好ましく、5~10%であることがさらに好ましい。
【0062】
また、(C)ポリエーテル化合物に含まれる重合単位のうち、一般式(1)で表される重合単位と一般式(2)で表される重合単位の合計の割合が、80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。また、側鎖の占める分子量が小さくなり、(A)アルカリ可溶性樹脂と適度な相互作用をすることにより機械的特性をより向上させるとともに、アルカリ現像液に対する良好な溶解性を両立できることから、98%より大きいことがさらに好ましく、100%であることが特に好ましい。
【0063】
(C)ポリエーテル化合物の具体的な化合物としては、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)およびポリプロピレンオキシド(PPO)、エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体(P(EO/PO))、その他、P(EO/PO)に側鎖にビニル基およびフェニル基を有するエチレンオキシドを共重合体させたポリエーテルを挙げることができる。
【0064】
上記ポリエーテルの中でも、上記のとおり、PEOはPPOよりも親水性が高く、アルカリ水溶液に対する現像性の観点から、PEOのほうが好ましい。同様の理由から、P(EO/PO)においては、EOに対するPOの比率が10%以下であることが望ましい。
【0065】
また、上記のとおり、P(EO/PO)はPEOよりも結晶化度が低いため、P(EO/PO)はPEOよりも(A)アルカリ可溶性樹脂との相溶性が高く、より均一なモルフォロジーを形成する。その結果、P(EO/PO)はPEOよりも、本発明の感光性樹脂組成物を300℃未満の低温で硬化させた場合においても、より良好な機械的特性を有する。
【0066】
(C)ポリエーテル化合物は、上述したような、エチレンオキシドやプロピレンオキシドの重合体および共重合体が好ましい。また、(C)ポリエーテル化合物は、重合単位が、Xがエチレン基である一般式(1)の重合単位およびYがプロピレン基である一般式(2)の重合単位のみからなる(C)ポリエーテル化合物であることがより好ましい。
【0067】
(C)ポリエーテル化合物は、市販品でもよく、例えば、SIGMA-ALDRICH製PEO(Mn=5,000)、和光純薬工業社製PEO(Mn=8,000、20,000、100,000、200,000)、明成化学社製アルコックスEPー1010N、CP-A2H、CP-B2、日本ゼオン社製ZEOSPAN8100、8030、8010等のポリエーテル化合物が挙げられる。
【0068】
(C)ポリエーテル化合物は、数平均分子量(Mn)が、3,000~300,000であることが好ましく、5,000~200,000であることがより好ましい。
【0069】
(C)ポリエーテル化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0070】
(C)ポリエーテル化合物の配合量は、(A)アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して、1~20質量部が好ましく、3~15質量部がより好ましい。また、7~15質量部であることがさらに好ましく、7質量部以上で含むことにより、感光性樹脂組成物を低温で硬化させた場合に機械的特性をより向上できる。また、15質量部以下で含むことにより、樹脂組成物内に十分に混合し得る。
【0071】
(シランカップリング剤)
本発明の感光性樹脂組成物は、シランカップリング剤を含むことができる。シランカップリング剤は、特に限定されないが、アリールアミノ基を有するシランカップリング剤、および二つ以上のトリアルコキシシリル基を有するシランカップリング剤が好ましい。解像性に優れることから、アリールアミノ基を有するシランカップリング剤であることが、より好ましい。
【0072】
アリールアミノ基を有するシランカップリング剤について説明する。アリールアミノ基のアリール基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基等の芳香族炭化水素基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基等の縮合多環芳香族基、チエニル基、インドリル基等の芳香族複素環基が挙げられる。
【0073】
アリールアミノ基を有するシランカップリング剤は、次の一般式(5)で示される基を有する化合物であることが好ましい。
(式中、R
51~R
55はそれぞれ独立に水素原子または有機基を表す。)
【0074】
上記一般式(5)中、R51~R55が水素原子であることが好ましい。
【0075】
アリールアミノ基を有するシランカップリング剤は、ケイ素原子とアリールアミノ基とが、炭素数1~10の有機基、好ましくは炭素数1~10のアルキレン基で結合していることが好ましい。
【0076】
アリールアミノ基を有するシランカップリング剤の具体例としては以下に示す化合物であることが好ましい。
【0077】
次に、二つ以上のトリアルコキシシリル基を有するシランカップリング剤について説明する。二つ以上のトリアルコキシシリル基を有するシランカップリング剤が有するトリアルコキシシリル基はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、また、これらの基が有するアルコキシ基はそれぞれ同じでも異なっていてもよい。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられるが、中でも、メトキシ基、エトキシ基であることが好ましい。
【0078】
二つ以上のトリアルコキシシリル基を有するシランカップリング剤は、少なくとも二つのケイ素原子が、炭素数1~10の有機基、好ましくは炭素数1~10のアルキレン基で結合していることが好ましい。
【0079】
二つ以上のトリアルコキシシリル基を有するシランカップリング剤の具体例は、次の化合物であることが好ましい。
【0080】
シランカップリング剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、上述したアリールアミノ基を有するシランカップリング剤、および二つ以上のトリアルコキシシリル基を有するシランカップリング剤以外のシランカップリング剤を含有してもよい。
【0081】
シランカップリング剤の配合量は、組成物固形分全量基準で1~15質量%であることが好ましい。1~15質量%であると露光部の現像残りを防止することができる。
【0082】
[増感剤、密着助剤、その他の成分]
本発明の感光性樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、更に光感度を向上させるために公知の増感剤や、基材との接着性向上のため公知の密着助剤や、架橋剤などを配合することもできる。更に、本発明の感光性樹脂組成物に加工特性や各種機能性を付与するために、その他に様々な有機または無機の低分子または高分子化合物を配合してもよい。例えば、界面活性剤、レベリング剤、可塑剤、微粒子等を用いることができる。微粒子には、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン等の有機微粒子、コロイダルシリカ、カーボン、層状珪酸塩等の無機微粒子が含まれる。また、本発明の感光性樹脂組成物に各種着色剤および繊維等を配合してもよい。
【0083】
[溶剤]
本発明の感光性樹脂組成物に用いられる溶剤は、(A)アルカリ可溶性樹脂、(B)感光剤、(C)前述した一般式(1)で表される化合物、および、他の添加剤を溶解させるものであれば特に限定されない。一例としては、N,N’-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N,N’-ジメチルアセトアミド、ジエチレングリコールジメチルエーテル、シクロペンタノン、γ-ブチロラクトン、α-アセチル-γ-ブチロラクトン、テトラメチル尿素、1,3-ジメチル-2-イミダゾリノン、N-シクロヘキシル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミド、ピリジン、γ-ブチロラクトン、ジエチレングリコールモノメチルエーテルを挙げることができる。これらは単独で用いても、二種以上を混合して用いてもかまわない。使用する溶剤の量は、塗布膜厚や粘度に応じて適宜に定めることができる。例えば、(A)アルカリ可溶性樹脂100質量部に対し、50~9000質量部の範囲で用いることができる。
【0084】
本発明の感光性樹脂組成物は、ポジ型であることが好ましい。
【0085】
[ドライフィルム]
本発明のドライフィルムは、本発明の感光性樹脂組成物をキャリアフィルムに塗布後、乾燥して得られる樹脂層を有するものである。この樹脂層を、基材に接するようにラミネートして使用される。
【0086】
本発明のドライフィルムは、キャリアフィルムに本発明の感光性樹脂組成物をブレードコーター、リップコーター、コンマコーター、フィルムコーター等の適宜の方法により均一に塗布し、乾燥して、上記した樹脂層を形成し、好ましくはその上にカバーフィルムを積層することにより、製造することができる。カバーフィルムとキャリアフィルムは同一のフィルム材料であっても、異なるフィルムを用いてもよい。
【0087】
本発明のドライフィルムにおいて、キャリアフィルムおよびカバーフィルムのフィルム材料は、ドライフィルムに用いられるものとして公知のものをいずれも使用することができる。
キャリアフィルムとしては、例えば2~150μmの厚さのポリエチレンテレフタレート等のポリエステルフィルム等の熱可塑性フィルムが用いられる。
カバーフィルムとしては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等を使用することができるが、樹脂層との接着力が、キャリアフィルムよりも小さいものが良い。
【0088】
本発明のドライフィルム上の樹脂層の膜厚は、100μm以下が好ましく、5~50μmの範囲がより好ましい。
【0089】
[硬化物]
本発明の硬化物は、上述した本発明の感光性樹脂組成物を用い所定のステップにて硬化させたものである。その硬化物であるパターン膜は、公知慣用の製法で製造すればよく、例えば、(A)アルカリ可溶性樹脂としてポリベンゾオキサゾール前駆体を含有するポジ型感光性樹脂組成物の場合、次の各ステップにより製造する。
【0090】
まず、ステップ1として、感光性樹脂組成物を基材上に塗布、乾燥することにより、あるいはドライフィルムから樹脂層を基材上に転写することにより、塗膜を得る。感光性樹脂組成物を基材上に塗布する方法としては、従来から感光性樹脂組成物の塗布に用いられていた方法、例えば、スピンコーター、バーコーター、ブレードコーター、カーテンコーター、スクリーン印刷機等で塗布する方法、スプレーコーターで噴霧塗布する方法、さらにはインクジェット法等を用いることができる。塗膜の乾燥方法としては、風乾、オーブンまたはホットプレートによる加熱乾燥、真空乾燥等の方法が用いられる。また、塗膜の乾燥は、感光性樹脂組成物中のポリベンゾオキサゾール前駆体の閉環が起こらないような条件で行うことが望ましい。具体的には、自然乾燥、送風乾燥、あるいは加熱乾燥を、70~140℃で1~30分の条件で行うことができる。好ましくは、ホットプレート上で1~20分乾燥を行う。また、真空乾燥も可能であり、この場合は、室温で20分~1時間の条件で行うことができる。
感光性樹脂組成物の塗膜が形成される基材に特に制限はなく、シリコンウェハー等の半導体基材、配線基板、各種樹脂、金属等に広く適用できる。
【0091】
次に、ステップ2として、上記塗膜を、パターンを有するフォトマスクを介して、あるいは直接的に、露光する。露光光線は、(B)感光剤としての光酸発生剤を活性化させることができる波長のものを用いる。具体的には、露光光線は、最大波長が350~410nmの範囲にあるものが好ましい。上述したように、増感剤を適宜に配合することにより、光感度を調製することができる。露光装置としては、コンタクトアライナー、ミラープロジェクション、ステッパー、レーザーダイレクト露光装置等を用いることができる。
【0092】
続いて、ステップ3として、必要に応じて上記塗膜を短時間加熱し、未露光部のポリベンゾオキサゾール前駆体の一部を閉環してもよい。ここで、閉環率は、30%程度である。加熱時間および加熱温度は、ポリベンゾオキサゾール前駆体の種類、塗布膜厚、(B)感光剤の種類によって適宜変更する。
【0093】
次いで、ステップ4として、上記塗膜を現像液で処理する。これにより、塗膜中の露光部分を除去して、本発明の感光性樹脂組成物のパターン膜を形成することができる。
【0094】
現像に用いる方法としては、従来知られているフォトレジストの現像方法、例えば回転スプレー法、パドル法、超音波処理を伴う浸せき法等の中から任意の方法を選択することができる。現像液としては、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の有機アミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド等の四級アンモニウム塩類等の水溶液を挙げることができる。また、必要に応じて、これらにメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の水溶性有機溶媒や界面活性剤を適当量添加してもよい。その後、必要に応じて塗膜をリンス液により洗浄してパターン膜を得る。リンス液としては、蒸留水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等を単独または組み合わせて用いることができる。また、現像液として上記溶剤を使用してもよい。
【0095】
その後、ステップ5として、パターン膜を加熱して硬化塗膜(硬化物)を得る。この加熱により、ポリベンゾオキサゾール前駆体を閉環し、ポリベンゾオキサゾールを得る。加熱温度は、感光性樹脂組成物のパターン膜を硬化可能なように適宜設定する。例えば、不活性ガス中で、150℃以上300℃未満で5~120分程度の加熱を行う。加熱温度のより好ましい範囲は、180~250℃である。本発明の感光性樹脂組成物は、(C)ポリエーテル化合物を含むので、環化が促進され、300℃未満の加熱温度とすることができる。加熱は、例えば、ホットプレート、オーブン、温度プログラムを設定できる昇温式オーブンを用いることにより行う。このときの雰囲気(気体)としては空気を用いてもよく、窒素、アルゴン等の不活性ガスを用いてもよい。
【0096】
なお、本発明の感光性樹脂組成物がネガ型感光性樹脂組成物の場合、(B)感光剤として、光酸発生剤に代えて光重合開始剤または光塩基発生剤を用いて、上記ステップ4において塗膜を現像液で処理することにより、塗膜中の未露光部分を除去して、本発明の感光性樹脂組成物のパターン膜を形成することができる。
【0097】
本発明の感光性樹脂組成物の用途は特に限定されず、例えば、塗料、印刷インキ、または接着剤、あるいは、表示装置、半導体装置、電子部品、光学部品、または建築材料の形成材料として好適に用いられる。具体的には、表示装置の形成材料としては、層形成材料や画像形成材料として、カラーフィルター、フレキシブルディスプレイ用フィルム、レジスト材料、配向膜等に用いることができる。また、半導体装置の形成材料としては、レジスト材料、バッファーコート膜のような層形成材料等に用いることができる。さらに、電子部品の形成材料としては、封止材料や層形成材料として、プリント配線板、層間絶縁膜、配線被覆膜等に用いることができる。さらにまた、光学部品の形成材料としては、光学材料や層形成材料として、ホログラム、光導波路、光回路、光回路部品、反射防止膜等に用いることができる。さらにまた、建築材料としては、塗料、コーティング剤等に用いることができる。
【0098】
本発明の感光性樹脂組成物は、主にパターン形成材料として用いられ、それによって形成されたパターン膜は、例えば、ポリベンゾオキサゾールなどからなる永久膜として耐熱性や絶縁性を付与する成分として機能することから、特に半導体装置、表示体装置および発光装置の表面保護膜、層間絶縁膜、再配線用絶縁膜、フリップチップ装置用保護膜、バンプ構造を有する装置の保護膜、多層回路の層間絶縁膜、受動部品用絶縁材料、ソルダーレジストやカバーレイ膜などのプリント配線板の保護膜、ならびに液晶配向膜等として好適に利用できる。特に、銅配線やアルミニウム配線と接する絶縁膜等に用いて好適である。
【実施例】
【0099】
以下、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。なお、以下において「部」および「%」とあるのは、特に断りのない限り全て質量基準である。
【0100】
(ポリベンゾオキサゾール(PBO)前駆体の合成)
攪拌機、温度計を備えた0.5リットルのフラスコ中にN-メチルピロリドン212gを仕込み、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシアミドフェニル)ヘキサフルオロプロパン28.00g(76.5mmol)を撹拌溶解した。その後、フラスコを氷浴に浸し、フラスコ内を0~5℃に保ちながら、4,4-ジフェニルエーテルジカルボン酸クロリド25.00g(83.2mmol)を固体のまま5gずつ30分間かけて加え、氷浴中で30分間撹拌した。その後、室温で5時間撹拌を続けた。撹拌した溶液を1Lのイオン交換水(比抵抗値18.2MΩ・cm)に投入し、析出物を回収した。その後、得られた固体をアセトン420mLに溶解させ、1Lのイオン交換水に投入した。析出した固体を回収後、減圧乾燥してカルボキシル基末端の、以下に示す繰り返し構造を有するポリベンゾオキサゾール(PBO)前駆体A-1を得た。ポリベンゾオキサゾール前駆体A-1の数平均分子量(Mn)は12,900、重量平均分子量(Mw)は29,300、Mw/Mnは2.28であった。
【0101】
【0102】
(実施例1~9)
上記で合成したポリベンゾオキサゾール前駆体100質量部に対して、(B)感光剤としてナフトキノンジアジド化合物B-1(三宝化学社製TKF-428)を10質量部と、シランカップリング剤として、アリールアミノ基を有するシランカップリング剤(信越シリコーン社製KBM-573)を7質量部と、以下に示すC-1~C-4のポリエーテル化合物をそれぞれ配合した後、ベンゾオキサゾール前駆体が30質量%になるようにγ-ブチロラクトン(GBL)を加えてワニスとし、実施例1~9の感光性樹脂組成物を調整した。尚、C-1としてSIGMA-ALDRICH製PEO(Mn=5,000)、和光純薬工業社製PEO(Mn=8,000、20,000、100,000、200,000)、C-2として明成化学社製アルコックスEP-1010N(エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドのランダム共重合体、m:n=12:1、Mn=約10万)、C-3として明成化学社製アルコックスCP-A2H(アリルグリシジルエーテルとエチレンオキサイド、プロピレンオキサイドのランダム共重合体、l:m:n=96:1:3、Mn=約8万)、C-4として明成化学社製アルコックスCP-B2(エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとフェニルグリシジルエーテルのランダム共重合体、n:m:l=97:1:2、Mn=約10万)を用いた。
【0103】
【0104】
(比較例1~6)
また、比較例1として、上述したC-1の(C)ポリエーテル化合物を配合しなかった以外は実施例1と同様として、比較例1の感光性樹脂組成物を調整した。
また、比較例2~6として、上述した(C)ポリエーテル化合物C-1~C-4の代わりに以下に示すメラミン系もしくは尿素系架橋剤C-5~C-8を配合した以外は実施例1~5と同様として、比較例2~6の感光性樹脂組成物を調整した。
【0105】
【0106】
このようにして調製した実施例1~9、比較例1~6の感光性樹脂組成物について、解像性、耐薬品性、破断伸びを評価した。評価方法は、以下のとおりである。
【0107】
(評価用乾燥塗膜の作製方法)
上記感光性樹脂組成物をスピンコーターにてシリコン基板上に塗布した。ホットプレートで120℃3分乾燥させ、感光性樹脂組成物の乾燥塗膜を得た。
【0108】
(耐薬品性の評価)
上記得られた乾燥塗膜を240℃の温度で、1時間ホットプレートで加熱し、得られた硬化物をガンマブチロラクトン(GBL)に10分浸漬し、膜厚変化とクラックの有無を評価した。表1および表2における耐薬品性の評価は、以下の基準とした。
膜厚変化
○:膜厚変化が±1%未満
△:膜厚変化が±1%以上5%未満
×:膜厚変化が±5%以上
クラック
○:1cm区画にクラックなし
△:1cm区画にクラック1個以上10個未満
×:1cm区画にクラック10個以上
【0109】
(破断伸びの評価)
上記得られた乾燥塗膜を240℃の温度で、1時間ホットプレートで加熱し、PCT装置(エスペック社製HAST SYSTEM TPC-412MD)を用いて、121℃、飽和、0.2MPaの条件で168時間経過後、剥がした厚さ30μmの硬化膜を、長さ50mm×幅5mmに裁断し、島津製作所製「EZ-SX」により引張試験を行った。つかみ具間距離は30mm、引張速度は3mm/mm、測定は7回行い、そのうちの上位3つの平均を破断伸びとした。
表1および表2における破断伸び評価は、以下の基準とした。
◎:20%以上
○:15%以上20%未満
△:10%以上15%未満
×:10%未満
【0110】
表1および表2に、加熱時の加熱温度を示すとともに、耐薬品性、破断伸びの評価結果を併記する。
【0111】
【0112】
【0113】
表1および表2から分かるように、(C)重合単位が100~10,000であるポリエーテル化合物を含む実施例1~9は、240℃といった低温で十分に硬化させることができ、十分な耐薬品性と破断伸びを示した。さらに、(C)ポリエーテル化合物として、C-2の化合物を含有する実施例6は、破断伸びをより向上させることができた。なお、実施例1~9は、従来の感光性樹脂組成物と同等の解像度を有していた。
【0114】
これに対して、比較例1は、(C)ポリエーテル化合物を配合していなかったため、加熱温度240℃では十分に硬化させることができなかった。また、比較例2~5は、(C)ポリエーテル化合物以外の添加剤を架橋剤として配合しているが、十分な耐薬品性が得られなかった。更に、比較例6は、メラミン系架橋剤の添加量を増やしたことで、耐薬品性を向上させたが、従来の感光性樹脂組成物よりも破断伸びを低下させた。