(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-04
(45)【発行日】2023-10-13
(54)【発明の名称】化合物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C07F 7/21 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
C07F7/21
(21)【出願番号】P 2019198848
(22)【出願日】2019-10-31
【審査請求日】2022-08-22
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「有機ケイ素機能性化学品製造プロセス技術開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 正安
(72)【発明者】
【氏名】野澤 竹志
(72)【発明者】
【氏名】松本 朋浩
(72)【発明者】
【氏名】八木橋 不二夫
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 一彦
【審査官】神谷 昌克
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-292643(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109735144(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第101007824(CN,A)
【文献】特開2006-253510(JP,A)
【文献】特開2008-063228(JP,A)
【文献】国際公開第2018/193732(WO,A1)
【文献】Angewandte Chemie International Edition,1999年,Vol.38, No.5,pp.661-664
【文献】Chemistry - A European Journal,2016年,Vol.22, No.39,pp.13857-13864
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(2):
【化1】
(式中、p
1は0、1又は2である。)
で表される化合物と、アルキル化剤と、を反応させることにより、下記一般式(3):
【化2】
(式中、Z
3は、水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基であり、
ただし、1個又は2個以上のZ
3は、前記置換基を有していてもよいアルキル基であり;p
1は、上記と同じである。)
で表される化合物を得る、化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オルトケイ酸の縮合物又はその誘導体と見做せる、かご型の骨格を有する一群のシロキサン化合物は、機能性ケイ素材料として種々の分野で有望であり、新規化合物の探索と、その製造方法が種々検討されている。
【0003】
例えば、非特許文献1には、このようなかご型シロキサン化合物の1種として、以下に示す合成ルートによって、下記式(90)で表される化合物(本明細書においては、「化合物(90)」と称することがある)を原料として、下記式(91)で表される化合物(本明細書においては、「化合物(91)」と称することがある)を得たことが開示されている。
【0004】
【0005】
非特許文献2には、以下に示す合成ルートによっても、下記式(90)で表される化合物(90)を原料として、下記式(92)で表される化合物(本明細書においては、「化合物(92)」と称することがある)を得たことが開示されている。
【0006】
【化2】
(Rは、エチル基、イソプロピル基、tert-ブチル基、n-オクチル基、シクロヘキシル基、又はトリメチルシリル基である。)
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】V.W.Day,et.J.Am.Chem.Soc.,Vol.107,No.26,(1985)8262-8264.
【文献】Naoto Ueda et.al. Material Technology,Vol.26(2008)162-169.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、非特許文献1,2の化合物(91)、化合物(92)の合成方法では、原料である化合物(90)を、工業的スケールで入手することが難しいという問題点があった。
【0009】
このように、従来のかご型シロキサン化合物には、実用的な方法では製造できないものがあり、製造方法の改良が望まれていた。
また、現状、かご型シロキサン化合物の探索も十分に為されているとは言えず、新規のかご型シロキサン化合物の探索も望まれていた。
【0010】
本発明は、新規のかご型シロキサン化合物と、その製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、下記一般式(2):
【0012】
【化3】
(式中、p
1は0、1又は2である。)
で表される化合物と、アルキル化剤と、を反応させることにより、下記一般式(3):
【0013】
【化4】
(式中、Z
3は、水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基であり、(2p
1+6)個のZ
3は互いに同一でも異なっていてもよく、ただし、1個又は2個以上のZ
3は、前記置換基を有していてもよいアルキル基であり;p
1は、上記と同じである。)
で表される化合物を得る、化合物の製造方法を提供する。
【0014】
また、本発明は、下記一般式(30):
【0015】
【化5】
(式中、p
1は0、1又は2であり;Z
30は、水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基であり、(2p
1+6)個のZ
30は互いに同一でも異なっていてもよく、ただし、1個又は2個以上のZ
30は、前記置換基を有していてもよいアルキル基である。)
で表される化合物(ただし、p
1が1であり、8個のZ
30がすべてメチル基、エチル基、イソプロピル基、tert-ブチル基、n-オクチル基、又はシクロヘキシル基である化合物を除く)である。
【0016】
また、本発明は、下記一般式(3021):
【0017】
【0018】
(式中、Z31は、水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基であり、8個のZ31は互いに同一でも異なっていてもよく、ただし、1個又は2個以上のZ31は、前記置換基を有していてもよいアルキル基である。)
で表される化合物(ただし、8個のZ30がすべてメチル基、エチル基、イソプロピル基、tert-ブチル基、n-オクチル基、又はシクロヘキシル基である化合物を除く)である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、新規のかご型シロキサン化合物と、その製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】実施例1で得られた化合物の
29Si-NMRデータである。
【
図2】実施例1で得られた化合物のESI-TOF-MS(negative)スぺクトルである。
【
図3】実施例2で得られた化合物の
29Si-NMRデータである。
【
図4】実施例3で得られた化合物の
29Si-NMRデータである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<<化合物の製造方法>>
本発明の一実施形態に係る化合物の製造方法は、下記一般式(2):
【0022】
【化7】
(式中、p
1は0、1又は2である。)
で表される化合物と、アルキル化剤と、を反応させることにより、下記一般式(3):
【0023】
【化8】
(式中、Z
3は、水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基であり、(2p
1+6)個のZ
3は互いに同一でも異なっていてもよく、ただし、1個又は2個以上のZ
3は、前記置換基を有していてもよいアルキル基であり;p
1は、上記と同じである。)
で表される化合物を得る。
【0024】
本実施形態の製造方法によれば、従来の化合物(90)を原料とする製造方法とは異なり、実用的な方法で、かご型シロキサン化合物を製造できる。
以下、まず、目的物である化合物(3)について説明する。
【0025】
<化合物(3)>
化合物(3)は、前記一般式(3)で表される。
一般式(3)中、p1は、化合物(3)のかごのサイズを規定しており、0、1又は2である。
すなわち、p1が0である場合の化合物(3)は、下記一般式(31)で表され(本明細書においては、この化合物を「化合物(31)」と称することがある)、p1が1である場合の化合物(3)は、下記一般式(32)で表され(本明細書においては、この化合物を「化合物(32)」と称することがある)、p1が2である場合の化合物(3)は、下記一般式(33)で表される(本明細書においては、この化合物を「化合物(33)」と称することがある)。
【0026】
【0027】
すなわち、p1が0である場合の化合物(3)(化合物(31))の製造方法は、下記式(21):
【0028】
【化10】
で表される化合物と、アルキル化剤と、を反応させることにより、下記一般式(31):
【0029】
【化11】
(式中、Z
3は、水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基であり、6個のZ
3は互いに同一でも異なっていてもよく、ただし、1個又は2個以上のZ
3は、前記置換基を有していてもよいアルキル基である。)
で表される化合物(化合物(31))を得る、化合物(31)の製造方法である。
【0030】
また、p1が1である場合の化合物(3)(化合物(32))の製造方法は、下記式(22):
【0031】
【化12】
で表される化合物(2,4,6,8,10,12,14,16,17,18,19,20-ドデカオキサ1,3,5,7,9,11,13,15-オクタシラペンタシクロ[9.5.1.1
3,9.1
5,15.1
7,13.]イコサン1,3,5,7,9,11,13,15-オクタノール(CAS番号119558-12-2)、本明細書においては、「化合物(22)」と称することがある)と、アルキル化剤と、を反応させることにより、下記一般式(32):
【0032】
【化13】
(式中、Z
3は、水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基であり、8個のZ
3は互いに同一でも異なっていてもよく、ただし、1個又は2個以上のZ
3は、前記置換基を有していてもよいアルキル基である。)
で表される化合物(化合物(32))を得る、化合物(32)の製造方法である。
【0033】
また、p1が2である場合の化合物(3)(化合物(33))の製造方法は、下記式(23):
【0034】
【化14】
で表される化合物と、アルキル化剤と、を反応させることにより、下記一般式(33):
【0035】
【化15】
(式中、Z
3は、水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基であり、10個のZ
3は互いに同一でも異なっていてもよく、ただし、1個又は2個以上のZ
3は、前記置換基を有していてもよいアルキル基である。)
で表される化合物(化合物(33))を得る、化合物(33)の製造方法である。
【0036】
Z3における前記アルキル基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれであってもよい。
【0037】
Z3における、直鎖状又は分岐鎖状の前記アルキル基の炭素数は、特に限定されないが、1~20であることが好ましい。
このような直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、1-メチルブチル基、n-ヘキシル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、2,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、n-ヘプチル基、2-メチルヘキシル基、3-メチルヘキシル基、2,2-ジメチルペンチル基、2,3-ジメチルペンチル基、2,4-ジメチルペンチル基、3,3-ジメチルペンチル基、3-エチルペンチル基、2,2,3-トリメチルブチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基等が挙げられる。
直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基の炭素数は、1~10であることがより好ましく、例えば、1~6、及び1~3のいずれかであってもよい。
【0038】
Z3における、環状の前記アルキル基は、単環状及び多環状のいずれであってもよい。
環状の前記アルキル基の炭素数は、3以上であれば特に限定されないが、3~20であることが好ましい。
環状の前記アルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、1-アダマンチル基、2-アダマンチル基、トリシクロデシル基等が挙げられる。
環状のアルキル基の炭素数は、3~15であることがより好ましく、例えば、3~10、及び3~6のいずれかであってもよいし、5~15及び5~10のいずれかであってもよい。
【0039】
Z3における前記アルキル基は、直鎖状又は分岐鎖状の鎖状構造と、環状構造と、が混在したものであってもよい。
このような鎖状構造と環状構造が混在した前記アルキル基としては、例えば、シクロペンチルメチル基、1-シクロペンチルエチル基、シクロヘキシルメチル基、1-シクロヘキシルエチル基等の、上述の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基における1個又は2個以上の水素原子が、上述の環状のアルキル基で置換された構造を有する基;メチルシクロペンチル基、エチルシクロペンチル基、メチルシクロヘキシル基、エチルシクロヘキシル基、ジメチルシクロヘキシル基等の、上述の環状のアルキル基における1個又は2個以上の水素原子が、上述の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基で置換された構造を有する基等が挙げられる。
鎖状構造と環状構造が混在した前記アルキル基の炭素数は、4以上であれば特に限定されないが、4~25であることが好ましく、例えば、6~15であってもよい。
【0040】
Z3における前記アルキル基は、置換基を有していてもよい。「置換基を有していてもよい」と記載する場合、アルキル基中の水素原子(-H)を1価の基で置換する場合と、メチレン基(-CH2-)を2価の基で置換する場合との両方を含む。すなわち、前記置換基としては、1価の置換基であってもよく、2価の置換基であってもよい。1価の置換基としては、ハロゲン原子、1価の不飽和炭化水素基、又はアリール基等が挙げられる。ハロゲン原子としては、前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。2価の置換基としては、酸素原子、硫黄原子、2価の不飽和炭化水素基、エステル基、カルボニル基等が挙げられる。
【0041】
一般式(3)中、(2p1+6)個(すなわち、p1が0の場合には6個、p1が1の場合には8個、p1が2の場合には10個)のZ3は、互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、(2p1+6)個のZ3は、すべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよいし、一部のみ同一であってもよい。
【0042】
ただし、一般式(3)中、すべてのZ3が水素原子であることはなく、1個又は2個以上のZ3は、前記置換基を有していてもよいアルキル基であり、(2p1+6)個のZ3がすべて、前記置換基を有していてもよいアルキル基であってもよい。
【0043】
一般式(3)中、1個又は2個以上のZ3が水素原子である場合(すなわち、化合物(3)における、すべてのZ3が前記置換基を有していてもよいアルキル基であるもの、ではない場合)、前記置換基を有していてもよいアルキル基の結合位置は、特に限定されない。
【0044】
好ましい化合物(3)の例を以下に列挙する。ただし、化合物(3)はこれらに限定されない。
【0045】
【0046】
【0047】
【0048】
【0049】
【0050】
【0051】
【0052】
【0053】
【0054】
【0055】
【0056】
次に、原料である化合物(2)及びアルキル化剤について、順次説明する。
【0057】
<化合物(2)>
化合物(2)は、前記一般式(2)で表される。
一般式(2)中のp1は、一般式(3)中のp1と同じである。
【0058】
化合物(2)は、例えば、国際公開第2018/193732号に記載の方法で製造できる。
化合物(2)としては、その製造時における操作(例えば、洗浄条件、取り出し条件、精製条件等)を適宜選択することで、水和水を含まないものを調製できる。このような、水和水を含まない化合物(2)(例えば結晶)を用いることで、アルキル化剤等の、化合物(3)の製造原料を大過剰量使用することが避けられ、化合物(3)を効率よく、良好な収率で製造できる。
【0059】
化合物(2)は、溶媒成分の分子を含まないものであってもよいし、水以外の溶媒成分の分子を含むものであってもよい。前記溶媒成分としては、例えば、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)等が挙げられる。DMAcの分子を含む化合物(2)は、製造が容易で、かつ水和水を含まない化合物(2)として、好ましいものの一例である。
【0060】
1分子の化合物(2)が含む溶媒成分の分子数は、化合物(2)の製造時における操作条件によって、調節できる。
例えば、DMAcの分子を含む化合物(2)において、1分子の化合物(2)が含むDMAcの分子数は、例えば、1~20のいずれかであってもよいが、これは一例である。
例えば、ドデカン(n-C12H26)の分子を含む化合物(2)において、1分子の化合物(2)が含むドデカン(n-C12H26)の分子数は、例えば、1~20のいずれかであってもよいが、これは一例である。
【0061】
<アルキル化剤>
アルキル化剤としては、アルキルトリフラート(トリフルオロメタンスルホン酸メチル、トリフルオロメタンスルホン酸エチル等)、ハロゲン化アルキル、アルキル硫酸エステル(ジメチル硫酸、ジエチル硫酸等)、アルキルトシラート(p-トルエンスルホン酸メチル等)、アルキルメシラート(メタンスルホン酸メチル等)等が挙げられる。
ハロゲン化アルキルとしては、例えば、塩化メチル、臭化メチル、ヨウ化メチル、塩化エチル、臭化エチル、ヨウ化エチル、塩化プロピル、臭化プロピル、ヨウ化プロピル、塩化ブチル、臭化ブチル、ヨウ化ブチル、塩化ヘキシル、臭化ヘキシル、ヨウ化ヘキシル、塩化デシル、臭化デシル、ヨウ化デシル、塩化ヘキサデシル、臭化ヘキサデシル、ヨウ化ヘキサデシル、塩化オクタデシル、臭化オクタデシル、ヨウ化オクタデシル、塩化コレステリル、臭化コレステリル、ヨウ化コレステリル、塩化コレスタリル、臭化コレスタリル、ヨウ化コレスタリル、3-アセトキシプロピルヨージド、4-ヨード酪酸メチル、炭素原子数が1~50のポリフルオロアルキルクロリド、炭素原子数が1~50のポリフルオロアルキルブロミド、炭素原子数が1~50のポリフルオロアルキルヨード、臭化ベンジル等が挙げられる。
【0062】
次に、化合物(2)とアルキル化剤とを反応させる方法全般について、説明する。
【0063】
<化合物(2)とアルキル化剤との反応条件>
化合物(3)は、化合物(2)とアルキル化剤とを反応させることにより得られる。
反応に供するアルキル化剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、目的とする化合物(3)の構造に応じて、適宜選択すればよい。
アルキル化剤を2種以上用いる場合には、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて適宜調節できる。
【0064】
なお、本明細書においては、化合物(3)、(2)及びアルキル化剤の種類数に関する記載では、特に断りのない限り、立体異性体を考慮していない。
【0065】
アルキル化剤の使用量は、目的とする化合物(3)の構造等に応じて、適宜調節できる。
例えば、化合物(3)中の、置換基を有していてもよいアルキル基の数に応じて、アルキル化剤の使用量を調節できる。
【0066】
例えば、p1の値によらず、アルキル化剤の使用量が、化合物(2)の使用量に対して、1~2倍モル量である場合には、1分子中の前記置換基を有していてもよいアルキル基の数が1~2個である化合物(3)が好適に得られる。
例えば、p1の値によらず、アルキル化剤の使用量が、化合物(2)の使用量に対して、3~4倍モル量である場合には、1分子中の前記置換基を有していてもよいアルキル基の数が3~4個である化合物(3)が好適に得られる。
例えば、p1の値によらず、アルキル化剤の使用量が、化合物(2)の使用量に対して、5~6倍モル量である場合には、1分子中の前記置換基を有していてもよいアルキル基の数が5~6個である化合物(3)が好適に得られる。
例えば、p1が0である場合、アルキル化剤の使用量が、化合物(2)の使用量に対して、6倍モル量以上である場合には、1分子中の前記置換基を有していてもよいアルキル基の数が6個である化合物(3)が、より高収率で得られる。
例えば、p1が1又は2である場合、アルキル化剤の使用量が、化合物(2)の使用量に対して、7~8倍モル量である場合には、1分子中の前記置換基を有していてもよいアルキル基の数が7~8個である化合物(3)が好適に得られる。
例えば、p1が1である場合、アルキル化剤の使用量が、化合物(2)の使用量に対して、8倍モル量以上である場合には、1分子中の前記置換基を有していてもよいアルキル基の数が8個である化合物(3)が、より高収率で得られる。
例えば、p1が2である場合、アルキル化剤の使用量が、化合物(2)の使用量に対して、9~10倍モル量である場合には、1分子中の前記置換基を有していてもよいアルキル基の数が9~10個である化合物(3)が好適に得られる。
例えば、p1が2である場合、アルキル化剤の使用量が、化合物(2)の使用量に対して、10倍モル量以上である場合には、1分子中の前記置換基を有していてもよいアルキル基の数が10個である化合物(3)が、より高収率で得られる。
【0067】
アルキル化剤の使用量は、例えば、化合物(2)の使用量に対して、(2p1+6)の1~2倍モル量であってもよい。このような使用量は、例えば、前記置換数が(2p1+6)個である(すなわち、すべてのZ3が置換基を有していてもよいアルキル基である)場合に好適である。これは、p1が1である場合であれば、アルキル化剤の使用量は、化合物(2)の使用量に対して8~16倍モル量であってもよく、このような使用量は、例えば、前記置換数が8である(すなわち、すべてのZ3がアルキル化剤基である)場合に好適である、ことを意味する。
【0068】
なお、ここまでで説明したアルキル化剤の使用量は、目的とする化合物(3)を効率よく、良好な収率で得るための一例であり、アルキル化剤の使用量は、化合物(3)の製造条件全般を考慮して、適宜調節できる。
また、ここまでで説明したアルキル化剤の使用量は、2種以上のアルキル化剤を用いる場合には、用いるアルキル化剤の全種類の合計使用量を意味する。
【0069】
[塩基]
化合物(2)とアルキル化剤との反応時には、塩基を用いることが好ましい。塩基を用いることにより、化合物(3)の生成量が顕著に増大する。
【0070】
前記塩基は、有機塩基であることが好ましい。
前記有機塩基としては、例えば、アニリン、ピリジン、ピペリジン等の芳香族アミン;トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン等の脂肪族アミン等が挙げられる。
【0071】
前記塩基を用いる場合、塩基は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて適宜調節できる。
【0072】
前記塩基を用いる場合、塩基の使用量は、例えば、アルキル化剤の使用量に応じて、調節できる。
その場合、塩基の使用量は、アルキル化剤の使用量に対して、0~2倍モル量であることが好ましく、例えば、0.85~1.5倍モル量であってもよい。塩基の前記使用量が0.8倍モル量以上であることで、化合物(3)の生成量がより増大する。塩基の前記使用量が前記2倍モル量以下であることで、塩基の過剰使用が抑制される。
【0073】
[溶媒]
化合物(2)とアルキル化剤との反応は、溶媒を用いずに行ってもよいが、溶媒を用いて行うことが好ましい。溶媒を用いることにより、反応液の流動性が向上し、化合物(2)とアルキル化剤との反応がより円滑に進行し、副生成物の生成量も低減できる。
【0074】
前記溶媒は、化合物(2)、アルキル化剤等の、反応に用いる成分との反応性を有しないものが好ましい。
前記溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、1,4-ジオキサン、テトラヒドロピラン、ジブチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン等のエーテル(エーテル結合を有する化合物);N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)等のアミド;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル;1,2-ジクロロエタン、塩化メチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素(置換基としてハロゲン原子を有する炭化水素);プロピオニトリル、アセトニトリル等のニトリル(シアノ基を有する化合物);トルエン、n-ヘキサン、メチルシクロヘキサン等の炭化水素等が挙げられる。
【0075】
溶媒を用いる場合、前記溶媒は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて適宜調節できる。
【0076】
溶媒を用いる場合、溶媒の使用量は、特に限定されないが、例えば、(化合物(2)1mmolに対して、0~200mL)であることが好ましく、(化合物(2)1mmolに対して、10~100mL)であることがより好ましい。溶媒の使用量が前記下限値以上であることで、溶媒を用いたことによる効果がより顕著に得られる。溶媒の前記使用量が前記上限値以下であることで、溶媒の過剰使用が抑制される。
【0077】
[他の成分]
化合物(2)とアルキル化剤との反応時には、本発明の効果を損なわない範囲内において、化合物(2)と、アルキル化剤と、前記塩基と、前記溶媒と、のいずれにも該当しない他の成分を用いてもよい。
前記他の成分の種類は、特に限定されず、目的に応じて任意に選択できる。
【0078】
前記他の成分を用いる場合、前記他の成分は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて適宜調節できる。
【0079】
前記他の成分を用いる場合、前記他の成分の使用量は、特に限定されず、前記他の成分の種類に応じて、任意に選択できる。
【0080】
[他の反応条件]
反応温度は、適宜調節すればよく、特に限定されない。
反応温度は、10~40℃であることが好ましく、例えば、18~30℃等の室温であってもよい。
【0081】
反応時間は、化合物(3)の生成量が増大するように、反応温度等、他の条件に応じて適宜調節すればよく、特に限定されない。
反応時間は、例えば、アルキル化剤がアルキルトリフラート(トリフルオロメタンスルホン酸メチル、トリフルオロメタンスルホン酸エチル等)の場合であれば、1~72分間であることが好ましく、1~60分間であることがより好ましい。反応時間は、例えば、アルキル化剤がハロゲン化アルキル(塩化メチル、臭化メチル等)の場合であれば、1~72時間であることが好ましく、1~60時間であることがより好ましい。
【0082】
本実施形態においては、反応終了後、必要に応じて公知の手法によって後処理を行った後、公知の手法によって化合物(3)を取り出すことができる。
例えば、反応終了後、適宜必要に応じて、ろ過、洗浄、抽出、pH調整、脱水、濃縮等の後処理操作をいずれか単独で、又は2種以上組み合わせて行い、次いで、濃縮、結晶化、再沈殿、カラムクロマトグラフィー等により、化合物(3)を取り出すことができる。また、取り出した化合物(3)は、さらに必要に応じて、結晶化、再沈殿、カラムクロマトグラフィー、抽出、溶媒による結晶の撹拌洗浄等の操作をいずれか単独で、又は2種以上組み合わせて、1回又は2回以上行うことによって、精製してもよい。
反応終了後に、化合物(3)を用いる他の工程を引き続き行う場合には、反応終了後に、必要に応じて公知の手法によって後処理を行った後、化合物(3)を取り出すことなく、引き続き前記他の工程を行ってもよい。
【0083】
化合物(2)とアルキル化剤との反応によって、複数種の化合物(3)が生成している場合、上述の後処理操作及び精製操作のいずれか一方又は両方を、適宜選択して行うことにより、目的とする化合物(3)を得られる。複数種の化合物(3)が生成していても、化合物(3)の構造からその特性を推測できるため、その特性に適した後処理操作又は精製操作を選択することにより、目的とする化合物(3)の収率を向上させることができる。
また、アルキル化剤の使用量、その他の反応条件等を調節することで、目的とする化合物(3)の生成率を向上させることによって、化合物(3)の収率を向上させることができる。
【0084】
化合物(3)の構造は、例えば、核磁気共鳴(NMR)分光法、質量分析法(MS)、赤外分光法(IR)、紫外・可視分光法(UV-VIS吸収スペクトル)、元素分析法等の公知の手法によって、確認できる。
【0085】
<<化合物>>
【0086】
本発明の一実施形態に係る化合物は、下記一般式(30):
【0087】
【化27】
(式中、p
1は0、1又は2であり;Z
30は、水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基であり、(2p
1+6)個のZ
30は互いに同一でも異なっていてもよく、ただし、1個又は2個以上のZ
30は、前記置換基を有していてもよいアルキル基である。)
で表される(ただし、p
1が1であり、8個のZ
30がすべてメチル基、エチル基、イソプロピル基、tert-ブチル基、n-オクチル基、又はシクロヘキシル基である化合物を除く)。
【0088】
本実施形態の化合物(本明細書においては、「化合物(30)」と称することがある)は、機能性ケイ素材料として利用可能であり、有用性が高い。
【0089】
一般式(30)中、p1は、化合物(30)のかごのサイズを規定しており、0、1又は2である。
一般式(30)中のp1は、先に説明した一般式(3)中のp1と同じである。
【0090】
化合物(30)は、p1が1であり、p1が1であり、8個のZ30がすべてメチル基、エチル基、イソプロピル基、tert-ブチル基、n-オクチル基、又はシクロヘキシル基である化合物を含まない点を除けば、先に説明した化合物(3)と同じである。
すなわち、p1が0である場合の化合物(30)は、下記一般式(301)で表され、p1が1である場合の化合物(30)は、下記一般式(302)で表され、p1が2である場合の化合物(30)は、下記一般式(303)で表される。
【0091】
【化28】
(式中、Z
30は、上記と同じである。)
【0092】
一般式(30)中のZ30は、それぞれ、先に説明した一般式(3)中のZ3と同じである。
【0093】
一般式(30)中のZ30は、「p1が1である場合に、8個のZ30がすべてエチル基、イソプロピル基、tert-ブチル基、n-オクチル基、若しくはシクロヘキシル基、又は、8個のZ30のうち、少なくとも1個がメチル基であり残りが水素原子とはならない」という条件を満たす点を除けば、先に説明した一般式(3)中のZ3と同じである。
例えば、一般式(30)中、(2p1+6)個のZ30は互いに同一でも異なっていてもよい。
【0094】
好ましい化合物(30)としては、例えば、Z30が、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~20の置換基を有していてもよいアルキル基であるものが挙げられる。
より好ましい化合物(30)としては、例えば、Z30が、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~6の置換基を有していてもよいアルキル基であるものが挙げられる。
【0095】
特に好ましい化合物(30)の一例としては、例えば、p1が0である場合の、下記一般式(3011):
【0096】
【化29】
(式中、Z
31は、水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基であり、(2p
1+6)個のZ
3は互いに同一でも異なっていてもよく、ただし、1個又は2個以上のZ
3は、前記置換基を有していてもよいアルキル基である。)
で表される化合物が挙げられる。
【0097】
また、特に好ましい化合物(30)の他の例としては、例えば、p1が1である場合の、下記一般式(3021):
【0098】
【化30】
(式中、Z
31は、水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基であり、8個のZ
3は互いに同一でも異なっていてもよく、ただし、1個又は2個以上のZ
3は、前記置換基を有していてもよいアルキル基である。)
で表される化合物(ただし、8個のZ
30がすべてメチル基、エチル基、イソプロピル基、tert-ブチル基、n-オクチル基、又はシクロヘキシル基である化合物を除く)が挙げられる。
【0099】
また、特に好ましい化合物(30)の他の例としては、例えば、p1が2である場合の、下記一般式(3031):
【0100】
【化31】
(式中、Z
31は、水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基であり、10個のZ
3は互いに同一でも異なっていてもよく、ただし、1個又は2個以上のZ
3は、前記置換基を有していてもよいアルキル基である。)
で表される化合物が挙げられる。
【0101】
好ましい化合物(30)の例としては、先に列挙した好ましい化合物(3)と同じものが挙げられる。
【実施例】
【0102】
以下、具体的実施例により、本発明についてより詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に、何ら限定されるものではない。
【0103】
本実施例で用いている略称の意味を以下に示す。
DMAc:N,N-ジメチルアセトアミド
TfOMe:トリフルオロメタンスルホン酸メチル
TfOEt:トリフルオロメタンスルホン酸エチル
DMF:N,N-ジメチルホルムアミド
Me:メチル基
Ee:エチル基
Me3SiPh:トリメチルフェニルシラン
【0104】
以下に示す化合物(3)の収率は、化合物(2)を基準としている。
以下において、「mmol」は「10-3モル」を示す。
以下においては、化合物(3)、化合物(2)の個々の化合物の名称を、これら化合物を表す式に付した符号を用いて決定している。例えば、後述する「式(3021)-1で表される化合物」は、「化合物(3021)-1」と称する。
【0105】
<<組成物(32)-3の製造>>
[合成例1]
下記の化学反応式に示すように、オクタキス(テトラメチルアンモニウム)ペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13.]オクタシロキサン-1, 3, 5, 7, 9, 11, 13, 15-オクタキス(イルオキシド)水和物(CAS番号69667-29-4(以下、「Q8(TMA)8・nH2O」と略す場合がある。))633mg(0.30mmol)をDMAc8mLに懸濁させた分散液にメルドラム酸411mg(2.85mmol)を加え、10分間攪拌することで無色透明の溶液を得た。この溶液の29Si-NMR及び高分解能質量分析(ESI-TOF-MS)を測定し、このほか、各種NMR、及びX線結晶構造解析により、溶液にはプロトンにイオン交換された籠型オクタオール(化合物(22))が生成していることが確認した。反応溶液を濃縮して、GPCにより化合物(22)に帰属されるピーク部分を分取した。
【0106】
【0107】
化合物(22)を含む溶液を濃縮し、貧溶媒法により2℃にて再結晶化することにより、化合物(22)を含む無色固体(板状結晶)としてNMR収率84%(392mg)で単離した。すなわち、化合物(22)を35.6質量%含む組成物(32)-3を得た。この組成物(32)-3は、1分子の化合物(22)、及び、11.5分子のDMAcからなる結晶構造を備えていることが明らかになった(1H-NMR(Acetone-d6):6.44ppm、29Si-NMR(Acetone-d6):-100.2ppm)。このように、化合物(22)とアミド化合物からなる結晶構造を備えている組成物(32)-3が得られた。
【0108】
<<組成物(32)-4の製造>>
[合成例2]
Q8(TMA)8・48.7H2O、2.02g(1.00mmol)をTHF37.5mLに懸濁させた分散液に硝酸0.761mL(12.0mmol)を加え、30分間攪拌することで懸濁液を得た。この懸濁液をフィルター濾過(THF8mLで洗浄)した。
この濾液の中にベンゼン10mL(112.6mmol)を加え混合した。この溶液を5℃、減圧度6000Pa(45torr)の条件下で濃縮することで、籠型オクタオール(化合物(22))を含む無色固体(柱状結晶)を単離した。この無色固体をアセトニトリル10mLの中に移し、室温で6時間静置したのち液体(アセトニトリル)と無色固体とを分離した。再びアセトニトリル10mLを加えて3日間静置したのち液体(アセトニトリル)と無色固体とを分離した。
得られた無色固体にジエチルエーテル10mLを加え、室温で1日静置したのち液体(ジエチルエーテル)と無色固体とを分離した。
得られた無色固体にドデカン(n-C12H26)10mLを加え、室温で1日静置したのち液体(ドデカン)と無色固体とを分離した。この操作により、化合物(22)を57.2質量%含む組成物である無色固体(柱状結晶)を収率53%(513mg)で単離した。この組成物(32)-4は、1分子の化合物(22)と2.4分子のドデカン(n-C12H26)からなることが明らかになった(1H-NMR(DMF-d7):7.72ppm、29Si-NMR(DMF-d7):-100.1ppm)。
【0109】
<<化合物(3)の製造>>
[実施例1]
化合物(2)として、DMAcを含む化合物(22)の混合結晶である組成物(32)-3を用い、化合物(4)として化合物(3021)-1を製造した。より具体的には、以下のとおりである。
組成物(32)-3(29.0mg、化合物(22)として、0.02mmol)をDMF(1mL)に溶解させ、得られた溶液に、TfOMe(27.7mg、0.168mmol、8.4eq)及びジイソプロピルエチルアミン(24.2mg、0.188mmol、9.4eq)を加えて15分間撹拌し無色透明溶液を得た。ゲル化することはなかった。
【0110】
【0111】
得られた無色透明溶液についてはこれ以上の単離操作は行わず、化合物(22)のHがメチル基に置換された化合物(3021)-1(組成式:Si
8O
20C
8H
24、以下「Si
8O
12[OMe]
8」と表記する場合がある。)のDMF溶液をNMR収率88%で得た。
得られた化合物(3021)-1のNMRデータを以下に示す。これらのうち、
29Si-NMRのデータを
図1に示す。得られた化合物(3021)-1のESI-TOF-MS(negative)スぺクトルのデータを
図2に示す。
【0112】
1H-NMR(DMF-d7): 3.83ppm
13C-NMR(DMF-d7):52.3ppm
29Si-NMR(DMF-d7):-101.5ppm
【0113】
[実施例2]
化合物(3)として、化合物(22)及びドデカンを含む組成物(32)-4を用い、化合物(4)として化合物(3021)-2及び化合物(3021)-3を製造した。より具体的には、以下のとおりである。
組成物(32)-4(19.3mg、化合物(22)として、0.02mmol)をDMF(1mL)に溶解させ、得られた溶液に、TfOEt(31.1mg、0.18mmol、9.0eq)及びジイソプロピルエチルアミン(25.2mg、0.19mmol、9.5eq)を加えて15分間撹拌し無色透明溶液を得た。ゲル化することはなかった。
【0114】
【0115】
得られた無色透明溶液についてはこれ以上の単離操作は行わず、29Si-NMRスペクトルから、化合物(22)の全てのHがエチル基に置換された化合物(3021)-2(組成式:Si8O20C16H40、以下「Si8O12[OEt]8」と表記する場合がある。)及び化合物(22)のうち7個のHがエチル基に置換された化合物(3021)-3(組成式:Si8O20C15H36、式「Si8O12[OEt]7(OH)」と表記することができる。)が生成していることを確認した(29Si-NMR(CD3CN):-100.0(SiOH)、-102.5ppm(SiOEt))。
【0116】
29Si-NMRのデータを
図3に示す。化合物(3021)-2(Si
8O
12[OEt]
8)のDMF溶液をNMR収率35%で得た。
【0117】
[実施例3]
化合物(3)として、化合物(22)及びドデカンを含む組成物(32)-4を用い、化合物(4)として化合物(3021)-2を製造した。より具体的には、以下のとおりである。
組成物(32)-4(19.3mg、化合物(22)として、0.02mmol)をDMF(1mL)に溶解させ、得られた溶液に、TfOEt(48.1mg、0.27mmol、13.5eq)及びジイソプロピルエチルアミン(36.8mg、0.286mmol、14.3eq)を加えて15分間撹拌し無色透明溶液を得た。ゲル化することはなかった。
【0118】
【0119】
得られた無色透明溶液についてはこれ以上の単離操作は行わず、化合物(22)のHがエチル基に置換された化合物(3021)-2(Si8O12[OEt]8)のDMF溶液をNMR収率54%で得た。
【0120】
得られた化合物(3021)-2の、
29Si-NMRのデータを
図4に示す(
29Si-NMR(CD
3CN):-102.5ppm)。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明は、機能性ケイ素材料又はその中間体として、さらに、これらの製造方法として、利用可能である。