(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-04
(45)【発行日】2023-10-13
(54)【発明の名称】測定装置、被加工物の検査方法、及び、画像データの表示方法
(51)【国際特許分類】
G01B 11/30 20060101AFI20231005BHJP
G01N 21/956 20060101ALI20231005BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
G01B11/30 A
G01N21/956 A
H01L21/78 F
(21)【出願番号】P 2019149746
(22)【出願日】2019-08-19
【審査請求日】2022-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100142804
【氏名又は名称】大上 寛
(72)【発明者】
【氏名】山田 陽平
(72)【発明者】
【氏名】梶原 佑介
【審査官】仲野 一秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-113383(JP,A)
【文献】特開2014-206513(JP,A)
【文献】特開2006-121286(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
G01N 21/84-21/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工後の被測定物を測定する測定装置であって、
該被測定物を保持する被測定物保持機構と、
該被測定物保持機構で保持された被測定物を撮像し、画像データを形成する撮像機構と、
該被測定物保持機構に対して該撮像機構を相対移動させる移動機構と、
該画像データを記憶する記憶部を有したコントローラと、
該画像データを表示する表示モニタと、を備え、
該表示モニタは、
該移動機構で該撮像機構を移動させ小区画ごとに順次撮像した画像データをもとに形成される位置指定画像を表示する位置指定画像表示領域と、
該位置指定画像表示領域に表示された被測定物の指定位置の拡大画像、及び/又は、所定の測定値を表示する拡大画像表示領域と、を有し、
該位置指定画像は、該各小区画の画像データの画素数を縮小し、画素数の縮小した画像データを同一平面に配列することで、一つの画像として形成可能とする、測定装置。
【請求項2】
該被測定物保持機構は、被測定物を保持する保持面を構成する透明体からなる載置面を有し、
該撮像
機構は、
被測定物の上面を撮像する上方撮像ユニットと、
該載置面を挟んで該上方撮像ユニットに対面して配設され、被測定物の下面を撮像する下方撮像ユニットと、を有し、
該位置指定画像表示領域は、該上方撮像ユニット、及び、該下方撮像ユニットでそれぞれ撮像された画像データに基づく位置指定画像を表示可能に構成され、
該拡大画像表示領域は、
該位置指定画像表示領域に表示された被測定物の指定位置の拡大画像、及び/又は、所定の測定値を表示可能に構成される、
ことを特徴とする請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の測定装置で被測定物を検査する検査方法であって、
該被測定物保持機構で被測定物を保持する保持ステップと、
該被測定物保持機構で保持された被測定物を該撮像機構で撮像する撮像ステップと、
該撮像ステップを実施した後、該被測定物保持機構から被測定物を搬出する被測定物搬出ステップと、
該被測定物搬出ステップを実施した後、該表示モニタに該画像データに基づく位置指定画像、及び、拡大画像と所定の測定値、の少なくとも1つを表示する表示ステップと、
を有する被加工物の検査方法。
【請求項4】
加工後の被測定物の画像データの表示方法であって、
該被測定物を小区画ごとに順次撮像した画像データをもとに形成される位置指定画像と、
該位置指定画像の指定位置の該被測定物の拡大画像である拡大画像、及び/又は、該画像データに基づいて測定された所定の測定値を表示する、ものであり、
該位置指定画像は、該各小区画の画像データの画素数を縮小し、画素数の縮小した画像データを同一平面に配列することで、一つの画像として形成可能とする、
被測定物の画像データの表示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工後の被加工物を測定し検査する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
被加工物である板状のウェーハを切削ブレードや、レーザー照射によりダイシング加工する技術は知られている。
【0003】
例えば、切削ブレードを用いたダイシング加工において、切削により形成される切削溝を撮像し、チッピング(切削溝の縁に発生する欠け)のサイズ、切削溝幅(カーフ幅)、切削位置等を確認するための所謂カーフチェックが実施されることが知られている。
【0004】
特許文献1では、ダイシング前に実施するプリカットの結果を、カーフを画像処理してチェックすることで検出し、この検出結果が良好であればウェーハのダイシングを遂行し、不良であれば再びプリカットを遂行する技術が開示されている。
【0005】
特許文献2では、被加工物の位置、形状、大きさを形状認識手段によって認識する形状認識工程と、形状認識によって得られた情報に基づいてカーフを光学的手段の直下に位置付けてカーフチェックを遂行するカーフチェック工程と、を備えるカーフチェック方法が開示されている。
【0006】
以上のようなカーフチェックにおいて、画像解析により、チッピングのサイズや切削位置のずれ、切削溝の幅が予め設定した許容範囲を超える場合には、警告を発信するなどして、装置停止、点検などが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平5―326700号公報
【文献】特開平7-130806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
カーフチェックは予め任意に設定した箇所において自動的に実施されるものであり、カーフチェックの回数が多くなると加工に要する時間が長くなり生産性が落ちることになる。
【0009】
また、ダイシング装置では、通常、被加工物のダイシングが終了した後にその被加工物について使用したカーフチェック用の画像データは消去されることから、ダイシング終了後に画像データを参照して加工結果を解析することができなかった。
【0010】
加えて、カーフチェック用の画像データのように、被加工物において設定された一部の箇所だけでなく、被加工物の全体について記録し、各被加工物についての加工結果を記録し、後に必要になった際に参照できるようにしておきたいという要望がある。
【0011】
以上に鑑み、本願発明は、被加工物の全体の画像データを記録することで、後に必要になった際に加工結果を確認し得る測定装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様によれば、
加工後の被測定物を測定する測定装置であって、
該被測定物を保持する被測定物保持機構と、
該被測定物保持機構で保持された被測定物を撮像し、画像データを形成する撮像機構と、
該被測定物保持機構に対して該撮像機構を相対移動させる移動機構と、
該画像データを記憶する記憶部を有したコントローラと、
該画像データを表示する表示モニタと、を備え、
該表示モニタは、
該移動機構で該撮像機構を移動させ小区画ごとに順次撮像した画像データをもとに形成される位置指定画像を表示する位置指定画像表示領域と、
該位置指定画像表示領域に表示された被測定物の指定位置の拡大画像、及び/又は、所定の測定値を表示する拡大画像表示領域と、を有する測定装置とする。
【0013】
また、該被測定物保持機構は、被測定物を保持する保持面を構成する透明体からなる載置面を有し、
該撮像ユニットは、
被測定物の上面を撮像する上方撮像ユニットと、
該載置面を挟んで該上方撮像ユニットに対面して配設され、被測定物の下面を撮像する下方撮像ユニットと、を有し、
該位置指定画像表示領域、及び、該拡大画像表示領域は、
それぞれ、
該上方撮像ユニット、及び、該下方撮像ユニットでそれぞれ撮像された画像データに基づく位置指定画像、拡大画像、所定の測定値、の少なくとも1つを表示可能に構成される、こととする。
【0014】
また、該被測定物保持機構で被測定物を保持する保持ステップと、
該被測定物保持機構で保持された被測定物を該撮像機構で撮像する撮像ステップと、
該撮像ステップを実施した後、該被測定物保持機構から被測定物を搬出する被測定物搬出ステップと、
該被測定物搬出ステップを実施した後、該表示モニタに該画像データに基づく位置指定画像、拡大画像、所定の測定値、の少なくとも1つを表示する表示ステップと、
を有する被加工物の検査方法とする。
【0015】
また、加工後の被測定物の画像データの表示方法であって、
該被測定物を小区画ごとに順次撮像した画像データをもとに形成される位置指定画像、
該位置指定画像の指定位置の該被測定物の拡大画像である拡大画像、
該画像データに基づいて測定された所定の測定値、
の少なくとも1つを表示する被測定物の画像データの表示方法とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の構成によれば、被加工物の全体が撮像され、画像データを記憶部に記憶させる構成とするため、被加工物全体の加工結果を記録でき、後に必要になった際にも加工結果を確認できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】デバイスに分割された被測定物を模式的に示す斜視図である。
【
図4】
図4(A)は、被測定物保持機構を模式的に示す斜視図であり、
図4(B)は、撮像機構を模式的に示す斜視図である。
【
図5】測定装置を備える加工装置を模式的に示す斜視図である。
【
図6】
図6(A)は、載置部を模式的に示す上面図であり、
図6(B)は、載置部を模式的に示す断面図である。
【
図7】被測定物を検査する際の被測定物保持機構、撮像機構、及び被測定物の位置関係を模式的に示す断面図である。
【
図8】
図8(A)は、被測定物を連続的に撮像する様子について説明する図である。
図8(B)は、画像データとコントローラの構成について説明する図である。
【
図9】表示モニタの表示画面(低倍率表示)の構成例について示す図である。
【
図10】表示モニタの表示画面(高倍率表示)の構成例について示す図である。
【
図11】
図11(A)~(D)は、特定の倍率の位置指定画像を特定の解像度の画像データで形成し、表示させることについて説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
添付図面を参照して、本発明の一態様に係る実施形態について説明する。本実施形態に係る測定装置は、例えば、加工装置により加工されたワーク(被加工物)を被測定物として、該被測定物を上面及び下面から同時に撮像して検査できるものである。
【0019】
まず、被測定物について説明する。被測定物は、例えば、Si(シリコン)、SiC(シリコンカーバイド)、GaN(ガリウムナイトライド)、GaAs(ヒ化ガリウム)、若しくは、その他の半導体等の材料からなる略円板状のウェーハである。または、被測定物は、サファイア、ガラス、石英等の材料からなる基板等である。また、被測定物は、モールド樹脂等で封止された複数のデバイスチップが含まれるパッケージ基板等でもよい。
【0020】
図1は、被測定物1の一例であるウェーハを模式的に示す斜視図である。被測定物1の表面1aは、例えば、互いに交差する複数のストリート3と呼ばれる分割予定ラインで区画されている。被測定物1であるウェーハの表面1aのストリート3で区画された各領域にはIC(Integrated Circuit)、LSI(Large-Scale Integrated circuit)等のデバイス5が形成されている。ウェーハをストリート3に沿って分割すると、個々のデバイスチップを形成できる。
【0021】
被測定物1の分割には、例えば、円環状の切削ブレードによりストリート3に沿って被測定物1を切削できる切削装置が使用される。または、ストリート3に沿って被測定物1にレーザビームを照射して被測定物1をレーザー加工するレーザー加工装置が使用される。
【0022】
被測定物1を切削装置やレーザー加工装置等の加工装置に搬入する前に、
図1に示す通り、被測定物1は、環状のフレーム9と、該フレーム9の開口を塞ぐように貼られたテープ7と、が一体化されて、フレームユニット11が形成される。テープ7が貼着され、該テープ7を介してフレーム9に装着された被測定物1は、この状態で加工装置に搬入され加工される。
【0023】
図2は加工装置によって加工されてデバイス5,5に分割された後の被測定物1の様子を示すものであり、この例では、ブレードダイシングによる切削がなされた場合を示している。
【0024】
被測定物1がストリート3に沿って適切に加工されたことを確認するために、本実施形態に係る測定装置では、被測定物1の加工箇所が撮像され被測定物1が検査される。該測定装置では、例えば、被測定物1がストリート3に沿って検査され、加工痕の形成位置や、加工痕に沿って被測定物1に形成されるチッピングと呼ばれる欠けの形状や大きさ、分布、クラック(亀裂)等が調査される。また、被測定物1が分割されて形成されたデバイスチップの大きさが確認される。ただし、該測定装置の使用用途はこれに限定されない。
【0025】
以下、複数のデバイス5が形成され、ストリート3に沿って分割されたウェーハが被測定物1である場合を例に本実施形態について説明するが、被測定物1はこれに限定されない。本実施形態に係る測定装置で検査される被測定物1は、加工装置等により加工されていなくてもよい。
【0026】
図3は、測定装置56を模式的に示す斜視図である。測定装置56は、該測定装置56の各構成を支持する基台60を備える。基台60には、X軸方向に沿った開口62が形成されている。測定装置56は、基台60の開口62を跨ぐように配設され被測定物1を保持できる被測定物保持機構58と、被測定物保持機構58に保持された被測定物1を撮像できる撮像機構82と、を備える。
【0027】
測定装置56は、被測定物保持機構58と、撮像機構82と、をX軸方向に沿って相対的に移動できるX軸移動ユニット64aと、Y軸方向に沿って相対的に移動できるY軸移動ユニット64bと、を備える。
図4(A)には、測定装置56のX軸移動ユニット64a及び被測定物保持機構58の斜視図が模式的に示されている。
図4(B)には、撮像機構82の斜視図が模式的に示されている。
【0028】
該X軸移動ユニット64aは、基台60の上面の開口62の側方にX軸方向に沿って伸長したガイドレール66aを備える。また、基台60の上面のガイドレール66aとは反対側の開口62の側方には、ガイドレール66aに平行に伸長したガイドレール66bを備える。ガイドレール66aには移動体68aがスライド可能に装着されており、ガイドレール66bには移動体68bがスライド可能に装着されている。
【0029】
移動体68a及び移動体68bの上には、両移動体68a,68bを跨るように橋状の支持構造74が配設されている。また、移動体68a及び移動体68bの一方の下端にはナット部(不図示)が設けられており、このナット部にはガイドレール66a,66bに平行なボールネジ70が螺合されている。
【0030】
ボールネジ70の一端部には、パルスモータ72が連結されている。パルスモータ72でボールネジ70を回転させると、移動体68a,68bはガイドレール66a,66bに沿ってX軸方向に移動し、橋状の支持構造74がX軸方向に移動する。被測定物保持機構58は、基台60の開口62と重なる位置で支持構造74に支持される。X軸移動ユニット64aは、支持構造74をX軸方向に沿って移動させることで被測定物保持機構58をX軸方向に沿って移動できる。
【0031】
被測定物保持機構58は、上下に露出した透明体を有する載置部76を有する。該透明体は、例えば、ガラス、樹脂等の材料で形成される。該透明体の上面は、テープ7を介して被測定物1が載置される載置面76aとなる。被測定物保持機構58は、載置面76aに載せられた被測定物1を支持できる。
【0032】
また、
図3に示すように、測定装置56には、操作インタフェースとしてタッチパネル式に構成される表示モニタ89が設けられ、詳しくは後述するように、ウェーハの検査結果などを表示することが可能となっている。
【0033】
以上のように構成した測定装置56は、
図5に示すように、加工装置2の一部に組み込まれて使用することもできる。
【0034】
加工装置2は、基台4の上にカセット支持台6が設けられ、カセット支持台6にフレームユニット11(
図1)を収容したカセットが載置される。カセットから搬出されたウェーハは被加工物保持ユニット14にて保持され、被加工物保持ユニット14を設けた移動テーブル12をX軸方向に移動させて、加工ユニット32,32の位置に加工送りがされる。
【0035】
加工ユニット32,32による加工によって、
図2に示すように、ウェーハ(被測定物1)において、ストリート3(
図1)に沿った切削溝3aが形成され、ダイシングが行われる。
【0036】
加工を終えたウェーハは、洗浄装置40によって洗浄された後、検査ユニットの被測定物保持機構58の載置部76へと搬送される。
【0037】
なお、本明細書においては、加工装置2については、ウェーハ(被測定物1)を切削加工するものの他、レーザーダイシングを行うレーザー加工装置で構成されることもできる。
【0038】
図6(A)は、被測定物保持機構58を模式的に示す上面図であり、
図6(B)は、被測定物保持機構58を模式的に示す断面図である。該透明体は載置面76aとは反対側の裏面側にも露出しているため、載置面76aに載る被測定物1を下面側から観察可能である。
【0039】
被測定物保持機構58は、テープ吸引保持面78bを該載置部76の外周側に備えるテープ保持部78を備える。テープ保持部78は、テープ吸引保持面78bに形成された吸引溝78aを有する。吸引溝78aには、図示しない吸引路を経て、図示しない吸引源が接続されている。被測定物保持機構58は、さらに、テープ保持部78の周囲に配置され、フレームユニット11のフレーム9を支持できる環状のフレーム支持部80を備える。
【0040】
フレーム支持部80と、フレーム9と、が重なるように被測定物保持機構58の上にフレームユニット11を載せ、該吸引源を作動させると、テープ7を介して被測定物保持機構58に被測定物1が吸引保持される。このとき、被測定物保持機構58と、テープ7と、の間が吸引されて載置面76aの全面にテープ7が密着するため、被測定物保持機構58に保持された被測定物1が検査中にずれることはない。
【0041】
例えば、被測定物1が反りを有したウェーハ等である場合においても、被測定物保持機構58に被測定物1を保持させるとき、載置面76aの全体にテープ7が密着する。そのため、被測定物1は、反りが緩和された状態で被測定物保持機構58に吸引保持される。被測定物保持機構58に保持された被測定物1の反りが緩和されていると、被測定物1の各領域を次々に撮像する際に撮像ユニットの焦点が被測定物1からずれにくくなるため、被測定物1をより鮮明に撮像できる。
【0042】
次に撮像機構82について説明する。
図3、及び、
図4(A)に示すように、撮像機構82は、例えば、開口62、X軸移動ユニット64a、及び被測定物保持機構58を跨ぐように基台60の上に配設された門型の支持構造84により支持される。支持構造84の上には、撮像機構82をY軸方向に沿って移動させるY軸移動ユニット64bが配設されている。
【0043】
Y軸移動ユニット64bは、支持構造84の上面にY軸方向に沿って配設された一対のガイドレール86を備える。一対のガイドレール86には、撮像機構82を支持する移動体88がスライド可能に装着されている。移動体88の下面にはナット部(不図示)が設けられており、このナット部には一対のガイドレール86に平行なボールネジ90が螺合されている。
【0044】
ボールネジ90の一端部には、パルスモータ92が連結されている。パルスモータ92でボールネジ90を回転させると、移動体88はガイドレール86に沿ってY軸方向に移動し、撮像機構82がY軸方向に移動する。X軸移動ユニット64a及びY軸移動ユニット64bは、協働して、被測定物保持機構58及び撮像機構82を載置面76aに平行な方向に相対的に移動できる移動機構として機能する。
【0045】
図3、及び、
図4(B)に示すように、撮像機構82は、被測定物保持機構58の載置部76の上方に配設された上方撮像ユニット106aと、該載置部76の下方に配設された下方撮像ユニットと106bと、を備える。これにより、測定装置56は、被測定物1の同一位置を上面側(表面1a側)と、下面側(裏面1b側)と、の双方から同時に観察できる測定装置として構成される。
【0046】
撮像機構82は、上方撮像ユニット106a及び該下方撮像ユニット106bを連結する連結部108をさらに備える。
【0047】
上方撮像ユニット106aは、柱状の支持構造94aに支持される。柱状の支持構造94aの前面には、上方撮像ユニット106aを昇降させる昇降機構96aが配設されている。昇降機構96aは、Z軸方向に沿った一対のガイドレール98aと、該ガイドレール98aにスライド可能に装着された移動体100aと、該移動体100aの後面に設けられたナット部に螺合されたボールネジ102aと、を有する。
【0048】
移動体100aの前面には、上方撮像ユニット106aが固定されている。そして、ボールネジ102aの一端部にはパルスモータ104aが連結されている。パルスモータ104aでボールネジ102aを回転させると、移動体100aがガイドレール98aに沿ってZ軸方向に沿って移動し、移動体100aに固定された上方撮像ユニット106aが昇降する。
【0049】
連結部108の上端部は、例えば、支持構造94aの後面側下端部に接続されており、連結部108の下端部は、下方撮像ユニット106bを支持する柱状の支持構造94bの後面側上端部に接続されている。支持構造94bの前面には、支持構造94aに配設された昇降機構96aと同様に構成された昇降機構96bが配設されている。
【0050】
昇降機構96bは、Z軸方向に沿った一対のガイドレール98bと、該ガイドレール98bにスライド可能に装着された移動体100bと、該移動体100bの後面に設けられたナット部に螺合されたボールネジ102bと、を有する。ボールネジ102bの一端部にはパルスモータ104bが連結されている。パルスモータ104bでボールネジ102bを回転させると、移動体100bの前面に固定された下方撮像ユニット106bが昇降する。
【0051】
上方撮像ユニット106aは下方を向いており、被測定物保持機構58の上面に載る被測定物1を上方から撮像できる。また、下方撮像ユニット106bは上方を向いており、該被測定物1を透明体で構成された載置部76及びテープ7を通して被測定物1を下方から撮像できる。上方撮像ユニット106a及び下方撮像ユニット106bは、例えば、エリアカメラ、ラインカメラ、3Dカメラ、又は赤外線カメラ等である。
【0052】
次に、撮像ユニットによる撮像、及び、検査の実施形態について説明する。
図7には、被測定物保持機構58により被測定物1が吸引保持されている際のフレームユニット11及び被測定物保持機構58の断面図が模式的に示されている。
図7に示す通り、該吸引源を作動させると、テープ7及び載置面76aの隙間が排気され、テープ7及び載置面76aが密着する。
【0053】
なお、被測定物1の検査が完了した後、吸引源を停止させてフレームユニット11を被測定物保持機構58から搬出する際に、載置面76aからのテープ7の剥離が容易となるように、例えば、載置面76aはフッ素樹脂でコーティングされていてもよい。
【0054】
図7において上側に位置する被測定物1の表面は、可視光カメラで構成される上方撮像ユニット106aで撮像される。
図8(A)に示すように、被測定物1(ウェーハ)の撮像領域は、x行、y列の小区画A11,A12・・・として区画され、各小区画A11,A12・・・(表面側)が順番に撮像される。
【0055】
同様に、
図7において下側に位置する被測定物1の裏面は、赤外線カメラで構成される下方撮像ユニット106bで撮像される。この裏面も同様に、
図8(A)に示すように、各小区画A11,A12・・・(裏面側)が順番に撮像される。
【0056】
以上の撮像は、
図8(B)に示すように、コントローラ400による制御により実行され、各小区画A11,A12・・・の表面と裏面の画像データは、記憶部402(ストレージ)に順次記憶される。例えば、小区画A11における表面の画像は画像データRa11として,裏面の画像は画像データRb11として、それぞれ記憶部402に記憶される。
【0057】
コントローラ400の演算部401は、記憶部402に記憶された各画像データをメモリ404(RAM)に読み出し、
図9に示すように、複数の画像データを同一面内に配列して組合せてなる位置指定画像204,304(
図9参照)を表示モニタ89に表示する。位置指定画像204,304(
図9)は、
図8(B)に示される各小区画A11,A12・・・の画像データを縮小し、縮小した画像データを
図8(A)に示す順番で同一平面に配列して一つの画像として形成したものである。
【0058】
図9は、表示モニタ89の表示例を示すものであり、左側上段に第1の位置指定画像表示領域202が設けられ、表面側の位置指定画像204が表示される。同様に、右側上段に第2の位置指定画像表示領域302が設けられ、裏面側の位置指定画像304が表示される。
図9に示す位置指定画像204,304は、被測定物1の全体を表示する倍率が設定された場合において表示されるものであり、例えば、このときの倍率がデフォルトの倍率として「1倍」と規定される。
【0059】
なお、第1の位置指定画像表示領域202において、表面側と裏面側の位置指定画像204,304を選択的に表示できるようにしてもよく、第2の位置指定画像表示領域302についても同様である。また、左右の位置指定画像表示領域202,302について、それぞれ別の被測定物の位置指定画像204,304が表示され、2つの被測定物の比較ができる構成としてもよい。
【0060】
図9に示す表示モニタ89の表示形態において、第1の位置指定画像表示領域202の下方には、第1の位置指定画像表示領域202において指定された任意の領域の拡大画像を表示するための第1の拡大画像表示領域206が設けられる。同様に、第2の位置指定画像表示領域302の下方には、第2の位置指定画像表示領域302において指定された任意の領域の拡大画像を表示するための第2の拡大画像表示領域306が設けられる。
【0061】
図9に示すように、位置指定画像表示領域202,302には、それぞれ拡大指定枠203,303が表示される。拡大指定枠203,303をタッチすると、拡大指定枠203,303内に含まれる位置指定画像204,304の拡大画像207,307が拡大画像表示領域206,306に表示される。拡大画像207,307は、例えば、拡大指定枠203,303をタッチ回数によって倍率を上げることができ、タッチするたびに拡大画像207,307が2倍づつ拡大されるようにすることができる。拡大画像表示領域206,306の近傍には、拡大、縮小のボタン212,312が配置され、ボタン212,312のタッチ操作によっても拡大、縮小が可能となっている。
【0062】
拡大指定枠203,303は、位置指定画像表示領域202,302内において任意に移動させることができ、被測定物の任意の位置の拡大画像207,307を表示させることができる。この場合、拡大指定枠203,303の移動と連動し、拡大画像207,307も自動的に表示が更新される構成としてもよい。
【0063】
あるいは、拡大指定枠203,303は固定とし、位置指定画像204,304を移動させることによって、被測定物の任意の位置の拡大画像207,307を表示させることとしてもよい。この場合、位置指定画像204,304の移動と連動し、拡大画像207,307も自動的に表示が更新される構成としてもよい。
【0064】
また、拡大指定枠203,303の大きさは、拡大、縮小可能な構成としてもよい。
【0065】
さらに、上段の位置指定画像表示領域202,302に表示される位置指定画像204,304は、
図9の状態から
図10に示すように、拡大表示することことができる。これにより、拡大された位置指定画像204,304を参照しつつ、拡大したい箇所を拡大指定枠203,303のタッチ操作によって拡大することが可能となり、優れた操作性を実現できる。
【0066】
図10に示すように、拡大画像表示領域206,306の横には、自動測定した所定の測定値が表示される。所定の測定値は、例えば、平均チッピングサイズU1(例えば各チッピングの面積の平均値、または各チッピングのカーフエッジからの距離の平均値)、最大ピッチングサイズU2(例えば拡大画像に含まれるチッピングのうちで最大のもの)、溝幅U3(横方向に表示される切削溝の縦幅や縦方向に表示される切削溝の横幅であって、カーフ幅とも呼ばれる)などである。各測定項目の算出は、
図8(B)に示すコントローラ400において、記憶部402に記憶されたプログラムを演算部401にて実行することにより行われるものであり、具体的な算出方法については特に限定されるものではない。
【0067】
次に、
図11(A)~(D)に示す位置指定画像204の表示方法に関する内容について説明する。
最下部に示される
図11(D)の位置指定画像204は、倍率を1倍(デフォルトの倍率)として、被加工物の全体が表示された様子が示されている。
そして、ピンチアウト操作により、
図11(C)では2T倍、
図11(D)では4T倍、
図11(A)では8T倍の順に表示倍率が高くなり、表示される画像が拡大される様子が示されている(2T倍、4T倍、8T倍のTは説明の便宜上使用するものであり、自然数である)。
【0068】
例えば、
図11(A)に示す位置指定画像表示領域202内の枠Aが、ピンチアウト操作によって、
図11(B)において位置指定画像表示領域202の全範囲に表示される様子が示されている。
なお、
図11(A)~(D)では、表面位置指定画像表示領域202に表示される位置指定画像204について説明するものであるが、
図10に示す表面位置指定画像表示領域302においても同様である。
【0069】
図11(A)において表示される位置指定画像204は、左側に示される画像データRa11(RAW),Ra12(RAW)・・・を同一面内で配列することで生成される画像である。位置指定画像表示領域202では、隣り合う4つの画像データRa11(RAW),Ra12(RAW),Ra21(RAW),Ra22(RAW)を並べて位置指定画像204が形成される例を示している。
図11(A)で表現される画像データRa11(RAW)などは、撮像時の画素数のままの所謂生データ(画素数(高解像度)を維持したまま加工された後のデータも含む(RAW画像)を表現している。
【0070】
他の
図11(B)~(D)においても同様であるが、撮像した画像データRa11(RAW)を縮小して位置指定画像204を形成している。例えば、
図11(B)では、
図11(A)の位置指定画像204の作成に利用していた画像データをそれぞれ1/4に縮小し(画素数の変更)、縮小した画像データRa11(1/4)・・・を配列して位置指定画像204を形成することとしている。なお、Ra11(1/4)のカッコ内の数値は、画素数を1/4にしたことを表現している。
【0071】
図11(B)から
図11(C)においても同様に、画素数を1/4にすることを表現している。
図11(D)は、画素数を最も少なくして、被測定物の全体を表示することを示している。
【0072】
図11(A)に示す撮像時の画素数のままの所謂生データである画像データRa11(RAW)は、
図10に示す拡大画像表示領域206,306に表示される拡大画像207,307において、最高倍率を表示する際に用いられることになる。このように、所謂生データである画像データRa11(RAW)も記憶部402に保存しておくことで、高画質の画像を画質を落とすことなく、表示することが可能となる。
【0073】
以上のように、各小区画A11,A12・・・(
図8(A))について撮像された画像データは、画像データRa11(RAW),Ra12(RAW)・・・として記憶部402に保存されており(
図8(B))、適宜読み出されて位置指定画像204を形成するために使用される。
【0074】
そして、
図11(A)~(D)に示すように、位置指定画像204の倍率に応じて適宜画像データを読み出すとともに画素数を変更(縮小)して配列し、位置指定画像204を表示させる。例えば、
図11(C)に示すように、位置指定画像204の倍率が2T倍で低いときは、画素数を1/16に縮小した画像データRa11(1/16)・・・を使用して位置指定画像204が形成される。この際、位置指定画像204の細部を確認する必要がないため、粗い画像で表示されても不都合はない。
【0075】
そして、
図11(B)に示すように、位置指定画像204の倍率が上げられた場合には、より画素数の大きい画像データRa11(1/4)・・・が使用され、位置指定画像204が形成される。
【0076】
他方、
図11(D)に示すように、最も低い倍率(1倍)の際には、画素数を小さくした画像データを用いて一つの全体マップMを形成し、この全体マップMが位置指定画像204として利用される。
【0077】
なお、位置指定画像204の倍率に応じて適宜画像データを読み出すとともに画素数を変更(縮小)することとする他、予め、画素数を縮小した画像データを作成し、記憶部402に保存しておき、読み出すこととしてもよい。
【0078】
このようにして、
図8(B)に示すように、演算部401は、画像データを拡大倍率に相応な画素数に縮小してメモリ404(RAM)にロードし、拡大倍率に相応な位置指定画像204を形成することができる。こうしてメモリ404の使用量を少なく済ますことができ、表示速度も高速なものとすることができる。
【0079】
また、
図11(A)~(D)に示す位置指定画像204の作成においては、位置指定画像表示領域202の範囲内に表示させるために必要な画像データRa11のみを適宜画素数を変更しメモリ404(RAM)にロードすることとしてもよい。即ち、指定された倍率の位置指定画像204を作成するための画像データRa11をすべてメモリ404(RAM)にロードにロードするのではなく、一部の画像データRa11を用いて位置指定画像204を作成することとする。
【0080】
これにより、演算部401は拡大倍率に応じて位置指定画像204の作成に必要最低数の画像データをメモリ404(RAM)にロードし、位置指定画像表示領域202において表示させるために必要な位置指定画像204を形成することができる。こうしてメモリ404の使用量を少なく済ますことができ、表示速度も高速なものとすることができる。
【0081】
以上のようにして、本発明を実施することができる。
即ち、
図1,
図3,
図8(A)(B)、
図9に示すように、
加工後の被測定物1を測定する測定装置56であって、
被測定物1を保持する被測定物保持機構58と、
被測定物保持機構58で保持された被測定物1を撮像し、画像データを形成する撮像機構82と、
被測定物保持機構58に対して該撮像機構82を相対移動させる移動機構(X軸移動ユニット64a及びY軸移動ユニット64b)と、
画像データを記憶する記憶部を有したコントローラ400と、
画像データを表示する表示モニタ89と、を備え、
表示モニタ89は、
移動機構で該撮像機構82を移動させ小区画A11,A12・・・ごとに順次撮像した画像データRa11,Ra12・・・をもとに形成される位置指定画像204,304を表示する位置指定画像表示領域202,302と、
位置指定画像表示領域202,302に表示された被測定物の指定位置の拡大画像207,307、及び/又は、所定の測定値(平均チッピングサイズU1など)を表示する拡大画像表示領域206,306と、を有する測定装置56とするものである。
【0082】
これにより、被加工物の全体が撮像され、画像データを記憶部に記憶させる構成とするため、被加工物全体の加工結果を記録でき、後に必要になった際にも加工結果を確認できる。
【0083】
また、
図4(A)(B)に示すごとく、
被測定物保持機構58は、被測定物1を保持する保持面を構成する透明体からなる載置面76aを有し、
撮像機構82は、
被測定物の上面を撮像する上方撮像ユニット106aと、
載置面76aを挟んで該上方撮像ユニット106aに対面して配設され、被測定物1の下面を撮像する下方撮像ユニット106bと、を有し、
位置指定画像表示領域202,302、及び、拡大画像表示領域206,306は、
それぞれ、
該上方撮像ユニット106a、及び、該下方撮像ユニット106bでそれぞれ撮像された画像データに基づく位置指定画像204,304、拡大画像207,307、所定の測定値(平均チッピングサイズU1など)、の少なくとも1つを表示可能に構成される、こととするものである。
【0084】
これにより、板状の被測定物の表面と裏面の両方の測定や観察を同時に行うことができ、被測定物の測定に関するスループットを向上させることができる。
【0085】
また、
図3、及び、
図9に示すごとく、
測定装置56で被測定物1を検査する検査方法であって、
被測定物保持機構58で被測定物1を保持する保持ステップと、
被測定物保持機構58で保持された被測定物1を撮像機構82で撮像する撮像ステップと、
撮像ステップを実施した後、被測定物保持機構58から被測定物1を搬出する被測定物搬出ステップと、
被測定物搬出ステップを実施した後、表示モニタ89に画像データに基づく位置指定画像204,304、拡大画像207,307、所定の測定値(平均チッピングサイズU1など)、の少なくとも1つを表示する表示ステップと、
を有する被加工物の検査方法とするものである。
【0086】
ここで、被測定物搬出ステップは、
図3において、被測定物保持機構58から図示せぬ搬出機構により被測定物保持機構58に保持されていた被測定物1(フレームユニット11)を、他の部位に搬出するステップであり、当該被測定物搬出ステップにより、測定の一連の流れが終わるものである。そして、このように測定が完了した後に、各種画像によって被測定物の状態を確認することや検査が行われるものである。この検査は、測定後の時間が経過した後でも行うことが可能となり、これは、画像データを保存がされることによって実現が可能となるものである。このようにして、後に必要になった際に加工結果を確認したいという要望にも応えることができる。
【0087】
なお、このように事後的に被測定物の測定や観察を実行可能とするために、被測定物のシリアル番号などを指定して、各種画像データの読み出しが可能となるように構成される。
【0088】
また、
図8乃至
図11に示す如く、
加工後の被測定物1の画像データの表示方法であって、
被測定物1を小区画A11,A12・・・ごとに順次撮像した画像データRa11,Ra12・・・をもとに形成される位置指定画像204,304、
位置指定画像204,304の指定位置の被測定物の拡大画像である拡大画像207,307、
画像データRa11,Ra12・・・に基づいて測定された所定の測定値(平均チッピングサイズU1など)、
の少なくとも1つを表示する被測定物の撮像データの表示方法とするものである。
【0089】
この構成において、位置指定画像204,304を参照しつつ、所望の位置を指定することで拡大画像207,307や、所定の測定値を確認することができ、オペレータにとって操作のし易いインタラクティブな表示方法が実現され、測定や観察を効率よく実施することができる。
【符号の説明】
【0090】
1 被測定物
1a 表面
1b 裏面
2 加工装置
3a 切削溝
56 測定装置
58 被測定物保持機構
89 表示モニタ
106a 上方撮像ユニット
106b 下方撮像ユニット
202 第1の位置指定画像表示領域
203 拡大指定枠
303 拡大指定枠
204 位置指定画像
206 第1の拡大画像表示領域
207 拡大画像
302 第2の位置指定画像表示領域
304 位置指定画像
306 第2の拡大画像表示領域
307 拡大画像
A11 小区画
Ra11 画像データ
U1 平均チッピングサイズ
U2 最大ピッチングサイズ
U3 溝幅