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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-04
(45)【発行日】2023-10-13
(54)【発明の名称】基板処理方法及び基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
H01L21/302 301Z
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020048974
(22)【出願日】2020-03-19
(65)【公開番号】P2021150488
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2022-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【弁理士】
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 隆史
(74)【代理人】
【識別番号】100212059
【弁理士】
【氏名又は名称】三根 卓也
(72)【発明者】
【氏名】高橋 信博
(72)【発明者】
【氏名】清水 昭貴
(72)【発明者】
【氏名】浅田 泰生
【審査官】加藤 芳健
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-507505(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0006175(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0019681(US,A1)
【文献】国際公開第2018/180670(WO,A1)
【文献】特開2016-143781(JP,A)
【文献】特開2007-214390(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン層とシリコンゲルマニウム層が交互に積層された基板の処理方法であって、
リモートプラズマを使用してラジカル化されたフッ素及び酸素を含むガスを用いて、前記シリコンゲルマニウム層の露出面の表層を選択的に酸化して酸化膜を形成する工程と、
形成された前記酸化膜を除去する工程と、を含む、基板処理方法。
【請求項2】
前記酸化膜の形成に用いられるガスはOガス及びフッ素含有ガスを含み、Oガスに対するフッ素含有ガスの体積比率が0.1vol%以上、1.0vol%以下である、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
形成される前記酸化膜の厚みを、前記酸化膜の形成を行うプラズマ酸化処理部の内部圧力により制御する、請求項1または2に記載の基板処理方法。
【請求項4】
形成される前記酸化膜の厚みは、前記酸化膜を形成する工程の処理時間に依らず飽和し、
前記酸化膜を形成する工程においては、前記酸化膜の形成厚みが飽和するよりも前に、前記酸化膜の形成を行うプラズマ酸化処理部に対するガスの供給を停止する、請求項1~3のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記酸化膜を形成する工程と、前記酸化膜を除去する工程と、を含むサイクルを繰り返し行う、請求項1~4のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記酸化膜を除去する工程は、
前記酸化膜を反応生成物に変質する工程と、
前記基板を加熱して、前記酸化膜の変質により生成された反応生成物を昇華する工程と、を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記酸化膜を除去する工程は、少なくともHFガス及びNHガスを含むガスを用いて行われる、請求項1~6のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項8】
シリコン層とシリコンゲルマニウム層が交互に積層された基板を処理する基板処理装置であって、
リモートプラズマを使用してラジカル化されたフッ素及び酸素を含むガスを用いて、前記シリコンゲルマニウム層の露出面の表層を選択的に酸化して酸化膜を形成するプラズマ処理部と、
形成された前記酸化膜を除去する除去部と、
前記プラズマ処理部及び前記除去部の動作を制御する制御部と、を備える、基板処理装置。
【請求項9】
前記酸化膜の形成に用いられるガスはOガス及びフッ素含有ガスを含み、
前記制御部は、Oガスに対するフッ素含有ガスの体積比率が0.1vol%以上、1.0vol%以下となるように、前記プラズマ処理部の動作を制御する、請求項8に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記制御部は、形成される前記酸化膜の厚みを、前記プラズマ処理部の内部圧力により制御する、請求項8または9に記載の基板処理装置。
【請求項11】
形成される前記酸化膜の厚みは、前記プラズマ処理部における処理時間に依らず飽和し、
前記制御部は、
前記酸化膜の形成厚みが飽和するよりも前に、前記プラズマ処理部に対するガスの供給を停止するように、前記プラズマ処理部の動作を制御する、請求項8~10のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項12】
前記制御部は、
前記プラズマ処理部における前記酸化膜の形成と、前記除去部における前記酸化膜の除去と、を含むサイクルを繰り返し行うように、前記プラズマ処理部及び前記除去部の動作を制御する、請求項8~11のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項13】
前記制御部は、前記酸化膜を反応生成物に変質した後、前記基板を加熱して、前記酸化膜の変質により生成された反応生成物を昇華するように、前記除去部の動作を制御する、請求項8~12のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項14】
前記制御部は、前記酸化膜の除去を、少なくともHFガス及びNHガスを含むガスを用いて行うように、前記除去部の動作を制御する、請求項8~13のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理方法及び基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、シリコンとシリコンゲルマニウムを有する基板のエッチング方法が開示されている。特許文献1に記載の方法によれば、エッチングガスのガス系をFガス及びNHガスとし、FガスとNHガスの比率を変化させることにより、シリコンに対するシリコンゲルマニウムの選択的エッチング、及びシリコンゲルマニウムに対するシリコンの選択的エッチングを行うことを図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-143781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示にかかる技術は、シリコン層とシリコンゲルマニウム層が交互に積層された基板の処理において、シリコン層に対するシリコンゲルマニウム層の選択的エッチングを適切に行う。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、シリコン層とシリコンゲルマニウム層が交互に積層された基板の処理方法であって、リモートプラズマを使用してラジカル化されたフッ素及び酸素を含むガスを用いて、前記シリコンゲルマニウム層の露出面の表層を選択的に酸化して酸化膜を形成する工程と、形成された前記酸化膜を除去する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、シリコン層とシリコンゲルマニウム層が交互に積層された基板の処理において、シリコン層に対するシリコンゲルマニウム層の選択的エッチングを適切に行う。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】従来のウェハ処理の様子を模式的に示す説明図である。
図2】本実施形態にかかるウェハ処理の主な工程を示すフロー図である。
図3】本実施形態にかかるウェハ処理の様子を模式的に示す説明図である。
図4】プラズマ処理装置の構成の一例を示す縦断面図である。
図5】プラズマ酸化処理の時間と酸化量の関係を示すグラフである。
図6】エッチング処理装置の構成の一例を示す縦断面図である。
図7】本実施形態にかかるウェハ処理の結果の一例を示す説明図である。
図8】他の方法に係るウェハ処理の様子を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
半導体デバイスにおいて、シリコンを含有する膜は、広範で様々な用途に適用される。例えばシリコンゲルマニウム(SiGe)膜やシリコン(Si)膜は、ゲート電極やチャネル材料などに用いられている。そして従来、ナノシートまたはナノワイヤといったGAA(Gate all around)トランジスタの製造工程では、図1に示すように、(a)基板(ウェハW)へのSiGe層とSi層の積層、(b)SiGe層の選択的エッチング、(c)絶縁膜としてのインナースペーサ(IS)の埋め込み、(d)余分なインナースペーサのエッチング、が順次行われている。なお、(c)において埋め込まれる絶縁膜は、この後の工程において埋め込まれるメタルゲートとソース・ドレインとの間の寄生容量を低減するための絶縁膜として構成される。
【0009】
上述した特許文献1に開示された技術は、この(b)SiGe層の選択的エッチングを行うための方法である。具体的には、チャンバ内に配置された基板に対してエッチングガスとしてのFガス、NHガスを供給し、このFガスとNHガスの体積比率を制御することにより、Si層に対するSiGe層の選択的エッチングを行うことができる。
【0010】
ところで、このようなSiGe層の選択的エッチングにおいては、積層された各SiGe層のエッチング量を均一に制御することが求められる。しかしながら、特許文献1に記載のエッチング手法では、エッチング条件により各SiGe層のエッチング量を均一に制御することが困難である場合があった。すなわち、従来のSiGe膜の選択的エッチング手法には改善の余地があった。
【0011】
本開示にかかる技術は上記事情に鑑みてなされたものであり、シリコン層とシリコンゲルマニウム層が交互に積層された基板の処理において、シリコン層に対するシリコンゲルマニウム層の選択的エッチングを適切に行う。以下、本実施形態にかかる基板処理方法としてのウェハ処理について、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素においては、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0012】
図2は、本実施形態にかかるSiGe層の選択的エッチングの主な工程を示すフロー図である。また図3は、SiGe層の選択的エッチングの主な工程を示す説明図である。なお、以下の説明においてSiGe層とSi層の交互に配列された各層が露出する端面(側面)をSiGe層及びSi層の「露出面」と呼称する場合がある。
【0013】
図2及び図3に示すように本実施形態にかかるSiGe層の選択的エッチングでは、ウェハW上に積層されたSi層及びSiGe層のうち、SiGe層の露出面表層に選択的に酸化膜Oxを形成する工程(図2のステップT1)と、形成された酸化膜Oxを除去する工程(図2のステップT2)と、を行う。これらステップT1及びステップT2は、図3(e)に示すようにSiGe層の露出面から深さ方向に対して、所望のエッチング量が得られるまで繰り返し行われる(図2の分岐C1)。
【0014】
その後、SiGe層に所望のエッチング量が得られると、ウェハWの表層に残存する、より具体的には、特にSi層及びSiGe層の露出面表層に残存する酸化膜Oxを除去する。具体的には、例えば、酸化膜Oxを変質させて反応生成物を生成するCOR(Chemical Oxide Removal)処理(図2のステップT3)と、ウェハWの加熱によりCOR処理において酸化膜Oxが変質して生成された反応生成物を昇華させるPHT(Post Heat Treatment)処理(図2のステップT4)を行う。
【0015】
以下、図2及び図3に示す各工程の詳細な方法について説明する。
【0016】
<ステップT1:酸化膜の形成>
図2のステップT1においては、プラズマ処理部としてのプラズマ処理装置1を用いてSiGe層の露出面表層を選択的に酸化し、これにより、SiGe層の露出面から深さ方向に対して酸化膜Ox(例えばSiO膜)を形成する。
【0017】
図4に示すようにプラズマ処理装置1は、ウェハWを収容する密閉構造の処理容器10を備えている。処理容器10は、例えばアルミニウム又はアルミニウム合金からなり、上端が開放され、処理容器10の上端は天井部となる蓋体10aにより閉塞されている。処理容器10の側面にはウェハWの搬入出口(図示せず)が設けられ、この搬入出口を介してプラズマ処理装置1の外部と接続されている。搬入出口はゲートバルブ(図示せず)により開閉自在に構成されている。
【0018】
処理容器10の内部は、仕切板11によって上方のプラズマ生成空間Pと、下方の処理空間Sとに仕切られている。すなわち、本実施形態にかかるプラズマ処理装置1は、プラズマ生成空間Pが処理空間Sと分離されたリモートプラズマ処理装置として構成されている。
【0019】
仕切板11は、プラズマ生成空間Pから処理空間Sに向けて間を空けて重ね合わせられるように配置される少なくとも2つの板状部材12、13を有している。板状部材12、13は、重ね合わせ方向に貫通して形成されるスリット12a、13aをそれぞれ有している。そして、各スリット12a、13aは平面視において重ならないように配置され、これにより仕切板11は、プラズマ生成空間Pでプラズマが生成する際にプラズマ中のイオンが処理空間Sへ透過することを抑制する、いわゆるイオントラップとして機能する。より具体的には、スリット12a及びスリット13aが重ならないように配置されるラビリンス構造により、異方的に移動するイオンの移動を阻止する一方、等方的に移動するラジカルを透過させる。
【0020】
プラズマ生成空間Pは、処理容器10内に処理ガスを供給する給気部20と、処理容器10内に供給される処理ガスをプラズマ化するプラズマ生成部30と、を有している。
【0021】
給気部20には複数のガス供給源(図示せず)が接続され、フッ素含有ガス(例えばNFガス)、酸素含有ガス(例えばOガス)及び希釈ガス(例えばArガス)を含む処理ガスを処理容器10の内部にそれぞれ供給する。なお、SiGe層の露出面表層に酸化膜Oxを形成することができれば、給気部20に供給される処理ガスの種類はこれに限定されない。
【0022】
また給気部20には、プラズマ生成空間Pに対する処理ガスの供給量を調節する流量調節器(図示せず)が設けられている。流量調節器は、例えば開閉弁及びマスフローコントローラを有している。
【0023】
プラズマ生成部30は、RFアンテナを用いる誘導結合型の装置として構成されている。処理容器10の蓋体10aは、例えば石英板により形成され、誘電体窓として構成される。蓋体10aの上方には、処理容器10のプラズマ生成空間Pに誘導結合プラズマを生成するためのRFアンテナ31が形成されている。RFアンテナ31は、電源側と負荷側のインピーダンスの整合をとるための整合回路を有する整合器32を介して、プラズマの生成に適した一定周波数(通常は13.56MHz以上)の高周波電力を任意の出力値で出力する高周波電源33に接続されている。
【0024】
処理空間Sは、処理容器10内でウェハWを載置する載置台40と、処理容器10内の処理ガスを排出する排気部50と、を有している。
【0025】
載置台40は、ウェハWを載置する上部台41と、処理容器10の底面に固定され、上部台41を支持する下部台42を有している。上部台41の内部には、ウェハWの温度を調節する温度調節機構43が設けられている。
【0026】
排気部50は、処理容器10の底部に設けられた排気管を介して、例えば真空ポンプ等の排気機構(図示せず)に接続されている。また排気管には、自動圧力制御弁(APC)が設けられている。これら排気機構と自動圧力制御弁により、処理容器10内の圧力が制御される。
【0027】
以上のプラズマ処理装置1には、制御部としての制御装置60が設けられている。制御装置60は、例えばCPUやメモリ等を備えたコンピュータであり、プログラム格納部(図示せず)を有している。プログラム格納部には、プラズマ処理装置1におけるウェハWの処理を制御するプログラムが格納されている。なお、上記プログラムは、コンピュータに読み取り可能な記憶媒体Hに記録されていたものであって、当該記憶媒体Hから制御装置60にインストールされたものであってもよい。
【0028】
プラズマ処理装置1は以上のように構成されている。次に、プラズマ処理装置1を用いて行われるプラズマ酸化処理(酸化膜Oxの形成)について説明する。なお、プラズマ処理装置1に搬入されるウェハWには、あらかじめSi層とSiGe層が交互に積層して形成されている。
【0029】
先ず、図3(a)に示すようにSi層とSiGe層が交互に積層して形成されたウェハWを、載置台40へと載置する。プラズマ処理装置1に搬入されたウェハWには、図3(b)に示すようにSiGe層の露出面表層に酸化膜Oxが形成される。
【0030】
具体的には、載置台40上にウェハWが載置されると、プラズマ生成空間Pに給気部20から処理ガス(本実施形態においてはNFガス、Oガス及びArガス)を供給するとともに、RFアンテナ31に高周波電力を供給し、誘導結合プラズマである酸素及びフッ素を含有するプラズマを生成する。換言すれば、生成されたプラズマは酸素ラジカル(O)及びフッ素ラジカル(F)を含有している。
【0031】
ここで、プラズマ生成空間Pに供給される処理ガスの流量は、O:NF=100~2500sccm:1~20sccmであることが好ましく、より好ましくはOガスに対するNFガスの体積比率が0.1vol%以上、1.0vol%以下である。また、プラズマ生成空間Pにおける高周波電力の出力は100W~1000W、プラズマ生成空間Pの内部圧力(真空度)は6.67Pa~266.6Pa(50mTorr~2000mTorr)であることが好ましい。またこの時、載置台40上に載置されたウェハWの温度は0℃~120℃、より好ましくは15~100℃に制御されることが好ましい。
【0032】
プラズマ生成空間Pにおいて生成されたプラズマは、仕切板11を介して処理空間Sへと供給される。ここで、仕切板11には前述のようにラビリンス構造が形成されているため、プラズマ生成空間Pにおいて生成されたラジカルのみが、処理空間Sへと透過する。処理空間Sにラジカルが透過すると、ウェハWの表面に付着した不純物がFによって除去される。次に、SiGe層にOが作用することでSiGe層の露出面表層が酸化され、当該露出面表層に酸化膜Ox(SiO膜)が形成される。ここで、SiGe層の酸化においてはGeに代わりOがSiに結合するが、これによりGeはガス化(例えばGeやGeOF)して飛散する。ガス化したGeは、例えばFやArにより排気部50まで運搬され、回収される。
【0033】
ここで、本実施形態にかかるプラズマ酸化処理においては、SiGe層の露出面表層のみならず、Si層の露出面表層においても酸化が進行し、酸化膜Ox(SiO膜)が形成される。しかしながら、本発明者らが鋭意検討を行ったところ、SiGe層の酸化速度はSi層の酸化速度と比較して大きい(例えば10倍程度)ことを知見した。換言すれば、本実施形態にかかるプラズマ酸化処理においては、SiGe層に対する酸化膜Oxの形成厚みに対して、Si層に対する酸化膜Oxの形成厚みが小さい(例えば1/10程度)ため、適切にSiGe層の選択的な酸化を行うことができる。
【0034】
また、本実施形態にかかるプラズマ酸化処理においては、上述のように等方的に移動するラジカルのみが処理空間Sに透過される。このため、プラズマ酸化処理により形成される酸化膜Oxの形成厚みが、ウェハWの面内において均一、かつ、積層された各SiGe層において均一になる。換言すれば、形成される酸化膜Oxの厚みのバラつき、特に、積層して形成された各SiGe層の露出面表層に形成される酸化膜Oxの厚みのばらつきを小さくできる。
【0035】
またここで、本実施形態にかかるプラズマ酸化処理は、プラズマ処理装置1における処理時間でSiGe層の酸化量、換言すれば形成される酸化膜Oxの露出面からの厚みが飽和するプロセスである。本実施形態においては、一度のプラズマ酸化処理により形成される酸化膜Oxの厚みは、図5に示すように、例えば、約10nmである。
【0036】
なお、図5に示すSiGe層の飽和酸化量(酸化膜Oxの飽和形成厚み)は、SiGe層に対するラジカルの到達深さにより決定される。換言すれば、プラズマ処理装置1の内部圧力を制御してSiGe層に対するラジカルの到達深さを制御することで、SiGe層の飽和酸化量を制御できる。具体的には、例えばプラズマ処理装置1の内部圧力を上げることにより飽和酸化量を大きく、すなわち形成される酸化膜Oxの厚みを大きくできる。また例えば、プラズマ処理装置1の内部圧力を下げることにより飽和酸化量を小さく、すなわち形成される酸化膜Oxの厚みを小さくできる。
【0037】
なおプラズマ処理装置1における処理時間が長くなった場合、処理空間Sに供給されるラジカルによるSi層への作用が大きくなり、Si層の酸化量、すなわち露出面表層に形成される酸化膜Oxの形成厚みが大きくなるおそれがある。本実施形態にかかるSiGe層の選択的エッチングは、後述するように、形成された酸化膜Oxを除去することにより行われるが、このようにSi層の酸化量が大きくなった場合、SiGe層の酸化量は上述のように処理時間に依存せずに飽和するため、SiGe層の選択比率(Si層の酸化量に対するSiGe層の酸化量の比率)が低下する。
【0038】
そこで、かかるSi層へのラジカルの影響を抑制するため、本実施形態にかかるプラズマ酸化処理は、SiGe層の酸化量が飽和酸化量に到達するよりも前に、処理容器10に対する処理ガスの供給を停止することが好ましい。これにより、SiGe層の選択比率の低下を適切に抑制できる。また、このようSiGe層の酸化量が飽和酸化量に到達するよりも前に処理ガスの供給を停止した場合であっても、処理容器10の内部に残存する処理ガス(プラズマ)によりSiGe層の酸化を進行させることができ、SiGe層の酸化量を適切に飽和酸化量に近づけることができる。
【0039】
<ステップT2:酸化膜の除去>
SiGe層の露出面表層に酸化膜Oxが形成されると、次に、除去部としてのエッチング処理装置101を用いて、ステップT1において形成された酸化膜Oxの除去、例えばガスエッチングが行われる。図6はかかる酸化膜Oxの除去を行うためのエッチング処理装置101の構成の概略を示す縦断面図である。
【0040】
図6に示すようにエッチング処理装置101は、ウェハWを収容する密閉構造の処理容器110を備えており、処理容器110の内部には処理空間Sが形成されている。処理容器110の側面にはウェハWの搬入出口(図示せず)が設けられ、この搬入出口を介してエッチング処理装置101の外部と接続されている。搬入出口はゲートバルブ(図示せず)により開閉自在に構成されている。またエッチング処理装置101には、処理容器110内でウェハWを載置する載置台120、処理空間S内にエッチングガスを供給する供給部130、及び処理容器110内のエッチングガスを排出する排気部140が設けられている。
【0041】
載置台120は処理容器110の底面に固定して設けられ、上面にウェハWを保持するウェハ保持面が形成されている。載置台120の内部には、ウェハ保持面上に保持されたウェハWの温度を調節する温度調節機構121が設けられている。
【0042】
供給部130は、処理容器110の内部にエッチングガスとしてのフッ素含有ガス(例えばHFガス)、アンモニア(NH)ガス、希釈ガス(例えばArガス)、及び不活性ガス(例えばNガス)をそれぞれ供給する複数のガス供給源131と、処理容器110の天井部に設けられ、処理空間S内に処理ガスを吐出させる複数の吐出口を有するシャワーヘッド132とを有している。ガス供給源131は、シャワーヘッド132に接続された供給管を介して処理容器110の内部と接続されている。
【0043】
また供給部130には、処理容器110の内部に対するエッチングガスの供給量を調節する流量調節器133が設けられている。流量調節器133は、例えば開閉弁及びマスフローコントローラを有している。
【0044】
排気部140は、処理容器110の底部に設けられた排気管を介して、例えば真空ポンプ等の排気機構(図示せず)に接続されている。また排気管には、自動圧力制御弁(APC)が設けられている。これら排気機構と自動圧力制御弁により、処理容器110内の圧力が制御される。
【0045】
以上のエッチング処理装置101には、制御部としての制御装置150が設けられている。制御装置150は、例えばCPUやメモリ等を備えたコンピュータであり、プログラム格納部(図示せず)を有している。プログラム格納部には、エッチング処理装置101におけるウェハWの処理を制御するプログラムが格納されている。なお、上記プログラムは、コンピュータに読み取り可能な記憶媒体Hに記録されていたものであって、当該記憶媒体Hから制御装置150にインストールされたものであってもよい。
【0046】
なお、エッチング処理装置101に設けられる制御装置150は、プラズマ処理装置1に設けられる制御装置60と共通のものであってもよい。すなわちエッチング処理装置101は、制御装置150に代えて、プラズマ処理装置1に設けられた制御装置60と接続されてもよい。
【0047】
エッチング処理装置101は以上のように構成されている。次に、エッチング処理装置101を用いて行われるガスエッチング処理(酸化膜Oxの除去)について説明する。なお、エッチング処理装置101に搬入されたウェハWには、あらかじめ前述のステップT1において、SiGe層の露出面表層に酸化膜Oxが形成されている。
【0048】
先ず、図3(b)に示すようにSiGe層の露出面表層に酸化膜Oxが形成されたウェハWを、載置台120へと載置する。エッチング処理装置101に搬入されたウェハWは、図3(c)に示すように酸化膜Oxが除去される。
【0049】
具体的には、載置台120上にウェハWが載置されて処理容器110の内部が密閉されると、先ず、処理空間Sに希釈ガス(Arガス)、及び不活性ガス(Nガス)を供給する。この時、処理空間Sの内部圧力を例えば30mTorr~5000mT、載置台120上のウェハWの温度を例えば0℃~150℃に制御する。
【0050】
処理空間Sの内部圧力、及びウェハWの温度が所望の状態となると、続いて、処理空間Sにフッ素含有ガス(HFガス)、及びNHガスを更に供給する。この時、処理空間Sに供給されるHFガス及びNHガスの流量を、例えばそれぞれ10~1000sccmに、Arガス及びNガスの流量を、例えばそれぞれ0sccm~1000sccmに制御する。そして、このように処理空間SにHFガス及びNHガスを供給することで、SiGe層の露出面表層に形成された酸化膜Oxのガスエッチングを開始する。
【0051】
ここで、本実施形態にかかるガスエッチング処理においては、酸化膜Ox(SiO膜)と、Si層及びSiGe層のエッチングレートの差から、ステップT1において形成された酸化膜Oxが選択的に除去される。換言すれば、ステップT1においてはSi層とSiGe層の酸化速度の差によりSiGe層に対して酸化膜Oxが選択的に形成されるため、本実施形態にかかるガスエッチング処理おいては、SiGe層の選択的なエッチング除去を適切に行うことができる。
【0052】
また上述したように、ステップT1におけるプラズマ酸化処理においては、酸化膜Oxの形成厚みを、ウェハWの面内において均一、かつ、積層された各SiGe層において均一にすることができる。すなわち、本実施形態にかかるガスエッチング処理においては、SiGe層の除去をウェハWの面内において均一、かつ、積層された各SiGe層において均一に行うことができる。
【0053】
また更に、ステップT1におけるプラズマ酸化処理においては、図5に示したように一度のプラズマ酸化処理により形成される酸化膜Oxの厚みが処理時間に依らずに飽和する。すなわち、一度のガスエッチング処理におけるSiGe層のエッチング量が酸化膜Oxの形成厚みと一致して飽和するため、SiGe層のエッチング量を容易に制御することができる。またこの時、上述のように酸化膜Oxの形成厚みはプラズマ処理装置1の内部圧力により制御できるため、SiGe層のエッチング量を更に適切に制御することができる。
【0054】
<分岐C1:酸化膜の形成、及び除去の繰り返し処理>
本実施形態にかかる酸化膜Oxの形成(ステップT1)及び酸化膜Oxの除去(ステップT2)、すなわちSiGe層の除去は、以上のようにして行われる。ここで、上述したように、本実施形態にかかるSiGe層の酸化量(SiGe層のエッチング量)は、図5に示したようにプラズマ処理時間に依らずに飽和する。すなわち、一度の酸化膜Oxの形成、及び除去によっては、SiGe層に所望のエッチング量を得られない場合がある。そこで本実施形態にかかるSiGe層の選択的エッチング手法においては、この酸化膜Oxの形成(ステップT1)及び除去(ステップT2)を含むウェハ処理のサイクルを繰り返し行うことにより、SiGe層を所望の深さまでエッチング除去する。
【0055】
換言すれば、本実施形態において繰り返し行われるウェハ処理のサイクル数は、必要となるSiGe層の総エッチング量に応じて決定される。
【0056】
このように、一連のウェハ処理のサイクルを繰り返し行う場合であっても、一度のサイクルにおけるSiGe層のエッチング量は、SiGe膜の飽和酸化量に一致するため、SiGe層の総エッチング量は容易に制御することできる。またこの時、上述のようにSiGe膜の飽和酸化量はプラズマ処理装置1の内部圧力により制御されるため、SiGe層の総エッチング量を更に適切に制御することができる。そして、このようにSiGe層の総エッチング量を適切に制御できるため、SiGe層の選択的エッチング処理後のSiGe層の線幅、すなわち後工程において形成されるチャネル幅を任意の寸法に制御することができる。
【0057】
酸化膜の形成、及び除去のサイクルを繰り返し行うことでSiGe層に所望の総エッチング量が得られると、ウェハWを次工程への搬送に先立って、ウェハWの表層、より具体的には、特にSi層及びSiGe層の露出面表層に残存する酸化膜Oxを除去する。酸化膜Oxの除去方法は特に限られるものではなく、例えばドライエッチングやウェットエッチング等により行われてもよいが、以下の説明においてはウェハWに対してCOR処理、及びPHT処理を順次行う場合を例に説明を行う。
【0058】
<ステップT3:酸化膜の変質(反応生成物の生成)>
図2のステップT3においては、除去部としてのCOR処理装置を用いてSi層及びSiGe層の露出面表層に残存する酸化膜Oxにエッチングガスを作用させ、これにより酸化膜Oxを変質させて反応生成物を生成する(COR処理)。
【0059】
COR処理装置(図示せず)は、例えば図6に示したエッチング処理装置101と同等の構成を有している。すなわちCOR処理装置は、例えば内部に処理空間Sが形成された処理容器と、処理容器内でウェハWを載置する載置台と、処理空間Sにエッチングガスを供給する供給部と、処理容器内の処理ガスを排出する排気部と、を備えている。換言すれば、本実施形態にかかるCOR処理は、ステップT2のガスエッチング処理を行うエッチング処理装置101において行われてもよい。
【0060】
本実施形態にかかるCOR処理においては、先ず、ステップT1及びステップT2においてSiGe層の選択的エッチングが行われたウェハWを、載置台へと載置する。次に、密閉された処理容器の内部に希釈ガス(Arガス)、及び不活性ガス(Nガス)を供給し、処理容器内の圧力を例えば30mTorr~5000mT、載置台上のウェハWの温度を例えば0℃~150℃に制御する。
【0061】
処理空間Sの内部圧力、及びウェハWの温度が所望の状態となると、続いて、処理空間Sにフッ素含有ガス(HFガス)、及びNHガスを更に供給する。この時、処理空間S内に供給されるHFガス及びNHガスの流量を、例えばそれぞれ50~500sccmに、Arガス及びNガスの流量を、例えばそれぞれ100sccm~600sccmに制御する。そして、このように処理空間Sに供給したHFガス及びNHガスを、ウェハWの表面に残存する酸化膜Oxに作用させることで、酸化膜Oxを反応生成物であるフッ化アンモニウム系化合物に変質する。
【0062】
<ステップT4:反応生成物の昇華>
ステップT3において酸化膜Oxが変質されると、続いて、除去部としてのPHT処理装置を用いて酸化膜Oxの変質により生成された反応生成物(フッ化アンモニウム系化合物)を昇華する(PHT処理)。
【0063】
PHT処理装置(図示せず)は、例えばCOR処理装置と同等の構成を有している。すなわちPHT処理装置は、例えば内部に処理空間Sが形成された処理容器と、処理容器内でウェハWを載置する載置台と、処理空間Sにエッチングガスを供給する供給部と、処理容器内の処理ガスを排出する排気部と、を備えている。換言すれば、本実施形態にかかるPHT処理は、ステップT3のCOR処理を行うCOR処理装置において行われてもよい。また換言すれば、ステップT2における酸化膜Oxの除去、ステップT3におけるCOR処理、及びステップT4における本PHT処理を、それぞれ同一のエッチング処理装置101において行ってもよい。
【0064】
本実施形態にかかるPHT処理においては、先ず、ステップT3においてCOR処理が行われたウェハWを、載置台へと載置する。次に、密閉された処理容器の内部に処理ガスとしての不活性ガス(Nガス)を供給するとともに、載置台上のウェハWの温度を例えば85℃以上に制御する。COR処理において生成された反応生成物であるフッ化アンモニウム系化合物は、熱により昇華する。すなわち、このようにウェハWの温度を上昇させることにより、ステップT3のCOR処理において生成されたフッ化アンモニウム系化合物、すなわち変質された酸化膜Oxを昇華させて除去することができる。なお、昇華した反応生成物は、例えば処理ガス(Nガス)と共により排気部50において回収される。
【0065】
なお、ステップT3における酸化膜Oxの変質、及びステップT4における酸化膜Oxの変質により生成された反応生成物の昇華は、反応生成物であるフッ化アンモニウム系化合物が除去されるまで繰り返し行われてもよい。そして、このようにしてウェハWの表層、特にSi層及びSiGe層の露出面表層に残存する酸化膜Oxが除去されると、本実施形態にかかる一連のSiGe層の選択的エッチングが終了する。
【0066】
<本実施形態にかかるウェハ処理の効果>
本実施形態によれば、リモートプラズマを使用してラジカル化された処理ガスを用いることで、SiGe層に対して、ウェハWの面内で均一、かつ、積層された各SiGe層で均一に酸化膜Oxを形成できる。そして、このように形成された酸化膜Oxの除去によりSiGe層のエッチングを行うことにより、SiGe層のエッチング量を、ウェハWの面内で均一、かつ、積層された各SiGe層で均一に行うことができる。すなわち、積層された各SiGe層におけるエッチング量のバラつきを低減できる。
【0067】
本実施形態によれば、Si層とSiGe層の酸化速度の差によりSiGe層が選択的に酸化されるとともに、酸化膜Ox(SiO膜)とSi層及びSiGe層のエッチングレートの差から酸化膜Oxを選択的にエッチングできる。すなわち、本実施形態によれば、SiGe層の選択的エッチングを適切に行うことができる
【0068】
また、本実施形態におけるプラズマ酸化処理によれば、酸化膜Oxの形成厚みが処理時間に依らずに飽和するため、酸化膜Oxの除去に伴うSiGe層のエッチング量を容易に制御できる。またこの時、酸化膜Oxの形成厚みはプラズマ酸化処理を行うプラズマ処理装置の内部圧力により制御されるため、SiGe層のエッチング量を更に適切に制御できる。
【0069】
また更に、本実施形態によればこのようなSiGe層の露出面表層に対する酸化膜Oxの形成、及び形成された酸化膜Oxの除去を繰り返し行うことにより、容易にSiGe層を所望の総エッチング量で除去できる。更にこの時、酸化膜Oxの形成厚みを、プラズマ酸化処理を行うプラズマ処理装置の内部圧力により制御することで、SiGe層の総エッチング量を更に適切に制御できる。
【0070】
なお、以上の実施形態においてはSiGe層の露出面表層に形成された酸化膜Ox(SiO膜)の除去を、フッ素含有ガス(HFガス)及びアンモニア(NH)ガスを用いたガスエッチングにより行ったが、酸化膜Oxの除去方法はこれに限定されない。例えばSiGe層の露出面表層に形成された酸化膜Oxはウェットエッチングにより除去されてもよいし、例えば上述のCOR処理、及びPHT処理を行うことで除去されてもよい。
【0071】
ここで図7に、本実施形態にかかるSiGe層の選択的エッチングを行った場合における処理結果の一例を示す。本例においては、先ず、上述のようにリモートプラズマを用いてラジカル化された処理ガスを用いてSiGe層の露出面表層に対して選択的に酸化膜Oxを形成した。そして、図7(a)は上記実施形態に示したように、フッ素含有ガス(HFガス)及びアンモニア(NH)ガスを用いたガスエッチングにより酸化膜Oxの除去を行った場合、図7(b)はウェットエッチングにより酸化膜Oxの除去を行った場合における処理結果をそれぞれ示している。
【0072】
図7(a)及び図7(b)に示すように、本実施形態に示したようにリモートプラズマを用いてラジカル化された処理ガスにより酸化膜Oxを形成することで、SiGe層の露出面からのエッチング量(EA:Etching Amount)を、均一に制御できた。具体的には、図7に示すように積層して形成された各SiGe層のエッチング量のバラつきは2.2%程度となった。このように、本実施形態にかかるSiGe層の選択エッチング手法によれば、積層された各SiGe層における総エッチング量のバラつきを、適切に低減することができる。
【0073】
なお、以上の実施形態においてはステップT1のプラズマ酸化処理、及びステップT2の酸化膜Oxのエッチング除去処理を、それぞれプラズマ処理装置1、及びエッチング処理装置101において行ったが、これらプラズマ酸化処理及びエッチング除去処理は、同一の処理容器内において行われてもよい。すなわち、例えばプラズマ処理装置1において処理空間SにエッチングガスとしてのHFガス及びNHガスを供給できるように構成すれば、プラズマ処理装置1において酸化膜Oxのエッチング除去を行うことができる。
【0074】
また、上述したようにステップT2のエッチング除去処理、ステップT3のCOR処理、及びステップT4のPHT処理は同一の処理容器(エッチング処理装置101)において行うことができる。換言すれば、上述のようにプラズマ処理装置1において酸化膜Oxのエッチング除去ができるように構成すれば、図2のステップT1~ステップT4に係る一連のウェハ処理を同一の処理容器内において行うことができる。
【0075】
なお、以上の実施形態においてはSiGe層の選択的エッチングにより、図3に示したように当該SiGe層の表層を所定の深さまで除去する場合を例に説明を行ったが、図8に示すように、SiGe層は全抜きされてもよい。かかる場合であっても、本実施形態にかかる手法を適用することによりSiGe層の選択的エッチングを適切に行うことができる。またこの時、上述したように、SiGe層の酸化量が飽和酸化量に達する前に処理容器に対する処理ガスの供給を停止し、かつ、処理容器の内部に残存した処理ガスによりSiGe層の酸化量が飽和酸化量に達するようにプラズマ酸化処理の時間を制御することで、繰り返し行われるウェハ処理のサイクルにかかる時間を適切に短縮できる。
【0076】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【0077】
なお、以下のような構成も本開示の技術的範囲に属する。
【0078】
(1)シリコン層とシリコンゲルマニウム層が交互に積層された基板の処理方法であって、リモートプラズマを使用してラジカル化されたフッ素及び酸素を含むガスを用いて、前記シリコンゲルマニウム層の露出面の表層を選択的に酸化して酸化膜を形成する工程と、形成された前記酸化膜を除去する工程と、を含む、基板処理方法。
前記(1)によれば、リモートプラズマを使用してラジカル化されたガスを用いることで、積層された各シリコンゲルマニウム層で均一に酸化膜を形成できる。そして、このように形成された酸化膜の除去によりシリコンゲルマニウム層の除去を行うことにより、積層された各シリコンゲルマニウム層におけるエッチング量のバラつきを低減できる。
【0079】
(2)前記酸化膜の形成に用いられるガスはOガス及びフッ素含有ガスを含み、Oガスに対するフッ素含有ガスの体積比率が0.1vol%以上、1.0vol%以下である、前記(1)に記載の基板処理方法。
【0080】
(3)形成される前記酸化膜の厚みを、前記酸化膜の形成を行うプラズマ酸化処理部の内部圧力により制御する、前記(1)または前記(2)に記載の基板処理方法。
【0081】
(4)形成される前記酸化膜の厚みは、前記酸化膜を形成する工程の処理時間に依らず飽和し、前記酸化膜を形成する工程においては、前記酸化膜の形成厚みが飽和するよりも前に、前記酸化膜の形成を行うプラズマ酸化処理部に対するガスの供給を停止する、前記(1)~前記(3)のいずれかに記載の基板処理方法。
【0082】
(5)前記酸化膜を形成する工程と、前記酸化膜を除去する工程と、を含むサイクルを繰り返し行う、前記(1)~前記(4)のいずれかに記載の基板処理方法。
前記(5)によれば、酸化膜の形成、及び酸化膜の除去を繰り返し行うことにより、シリコンゲルマニウム層に対するエッチング総量を適切に制御できる。
【0083】
(6)前記酸化膜を除去する工程は、前記酸化膜を反応生成物に変質する工程と、前記基板を加熱して、前記酸化膜の変質により生成された反応生成物を昇華する工程と、を含む前記(1)~前記(5)のいずれかに記載の基板処理方法。
【0084】
(7)前記酸化膜を除去する工程は、少なくともHFガス及びNHガスを含むガスを用いて行われる、前記(1)~前記(6)のいずれかに記載の基板処理方法。
【0085】
(8)シリコン層とシリコンゲルマニウム層が交互に積層された基板を処理する基板処理装置であって、リモートプラズマを使用してラジカル化されたフッ素及び酸素を含むガスを用いて、前記シリコンゲルマニウム層の露出面の表層を選択的に酸化して酸化膜を形成するプラズマ処理部と、形成された前記酸化膜を除去する除去部と、前記プラズマ処理部及び前記除去部の動作を制御する制御部と、を備える、基板処理装置。
【0086】
(9)前記酸化膜の形成に用いられるガスはOガス及びフッ素含有ガスを含み、前記制御部は、Oガスに対するフッ素含有ガスの体積比率が0.1vol%以上、1.0vol%以下となるように、前記プラズマ処理部の動作を制御する、前記(8)に記載の基板処理装置。
【0087】
(10)前記制御部は、形成される前記酸化膜の厚みを、前記プラズマ処理部の内部圧力により制御する、前記(8)または前記(9)に記載の基板処理装置。
【0088】
(11)形成される前記酸化膜の厚みは、前記プラズマ処理部における処理時間に依らず飽和し、前記制御部は、前記酸化膜の形成厚みが飽和するよりも前に、前記プラズマ処理部に対するガスの供給を停止するように、前記プラズマ処理部の動作を制御する、前記(8)~前記(10)のいずれかに記載の基板処理装置。
【0089】
(12)前記制御部は、前記プラズマ処理部における前記酸化膜の形成と、前記除去部における前記酸化膜の除去と、を含むサイクルを繰り返し行うように、前記プラズマ処理部及び前記除去部の動作を制御する、前記(8)~前記(11)のいずれかに記載の基板処理装置。
【0090】
(13)前記制御部は、前記酸化膜を反応生成物に変質した後、前記基板を加熱して、前記酸化膜の変質により生成された反応生成物を昇華するように、前記除去部の動作を制御する、前記(8)~前記(12)のいずれかに記載の基板処理装置。
【0091】
(14)前記制御部は、前記酸化膜の除去を、少なくともHFガス及びNHガスを含むガスを用いて行うように、前記除去部の動作を制御する、前記(8)~前記(13)のいずれかに記載の基板処理装置。
【符号の説明】
【0092】
Ox 酸化膜
Si シリコン
SiGe シリコンゲルマニウム
W ウェハ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8