(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-04
(45)【発行日】2023-10-13
(54)【発明の名称】増幅回路
(51)【国際特許分類】
H04L 25/03 20060101AFI20231005BHJP
H04B 1/16 20060101ALI20231005BHJP
H04L 25/06 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
H04L25/03 D
H04B1/16 Z
H04L25/06
(21)【出願番号】P 2021051321
(22)【出願日】2021-03-25
【審査請求日】2023-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591230295
【氏名又は名称】NTTイノベーティブデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100153006
【氏名又は名称】小池 勇三
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121669
【氏名又は名称】本山 泰
(72)【発明者】
【氏名】美濃谷 直志
(72)【発明者】
【氏名】岸 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】卜部 義和
(72)【発明者】
【氏名】十林 正俊
【審査官】阿部 弘
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-507384(JP,A)
【文献】米国特許第4736391(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 25/03
H04B 1/16
H04L 25/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前段の増幅回路から入力されるベースバンド信号を増幅する増幅回路であって、
入力端子に接続される分離素子と、
前記分離素子と出力端子との間に接続される増幅部と、
前記分離素子と並列に接続される信号中点検出部と、
前記信号中点検出部と直列に接続されるバイアス加算部と、
フレーム検出回路と接続される電圧初期値検出回路と
を備え、
前記電圧初期値検出回路が、前記フレーム検出回路の信号により、前記ベースバンド信号の電圧初期値を保持して、前記信号中点検出部に出力し、
前記信号中点検出部が、前記ベースバンド信号と前記電圧初期値とから中点電圧を検出して前記バイアス加算部に出力し、
前記バイアス加算部が、前記ベースバンド信号をバイアスするバイアス電圧に、前記中点電圧を加え、
前記増幅部が前記ベースバンド信号を増幅することを特徴とする増幅回路。
【請求項2】
前記フレーム検出回路に、前記増幅部の出力が入力されることを特徴とする請求項1に記載の増幅回路。
【請求項3】
前記電圧初期値検出回路が、
前記入力端子と接続する信号遅延回路と、
前記信号遅延回路と接続するサンプルホールド回路とを備え、
前記信号中点検出部が、
前記入力端子と接続する低域通過フィルタと、
前記低域通過フィルタと接続する中点電圧演算部とを備え、
前記サンプルホールド回路が、前記フレーム検出回路の信号により、前記信号遅延回路から入力される前記ベースバンド信号の電圧初期値を保持し、前記電圧初期値を前記中点電圧演算部に出力し、
前記中点電圧演算部が、前記低域通過フィルタの出力と前記サンプルホールド回路の出力との差分を前記バイアス加算部に出力することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の増幅回路。
【請求項4】
前記分離素子を複数備え、
前記信号中点検出部を複数備え、
前記バイアス加算部を複数備え、
前記増幅部を複数備え、
前記複数の分離素子それぞれと並列に、前記複数の信号中点検出部がそれぞれ接続され、
前記電圧初期値検出回路が、前記複数の信号中点検出部それぞれに出力し、
前記複数の信号中点検出部それぞれが、前記複数のバイアス加算部それぞれに出力することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の増幅回路。
【請求項5】
複数の前段の増幅回路から入力される複数のベースバンド信号を増幅する増幅回路であって、
複数の入力端子それぞれに接続される複数の分離素子と、
前記複数の分離素子と複数の出力端子それぞれの間に接続される複数の増幅部と、
前記複数の分離素子それぞれと並列に接続される複数の信号中点検出部と、
前記複数の信号中点検出部それぞれと直列に接続される複数のバイアス加算部と、
チャンネル間補間VL検出回路と
を備え、
前記チャンネル間補間VL検出回路が、前記複数のベースバンド信号のうち低電圧信号を検出して、前記複数の信号中点検出部それぞれに出力し、
前記信号中点検出部が、前記ベースバンド信号と前記低電圧信号とから中点電圧を検出して前記バイアス加算部に出力し、
前記バイアス加算部が、前記ベースバンド信号をバイアスするバイアス電圧に、前記中点電圧を加え、
前記増幅部が前記ベースバンド信号を増幅することを特徴とする増幅回路。
【請求項6】
複数の送信回路の前段に接続され、複数のベースバンド信号が入力される接続回路であって、
複数の入力端子と複数の出力端子の間にそれぞれ接続される複数の分離素子と、
前記複数の分離素子と複数の出力端子それぞれの間に接続される複数の増幅部と、
前記複数の分離素子それぞれと並列に接続される複数のフレーム検出回路と、
前記複数のフレーム検出回路それぞれと直列に接続される複数のスイッチ素子と、
前記複数のスイッチ素子それぞれと直列に接続される複数のバイアス加算部と、
チャンネル間補間VL検出回路の出力とチャンネル間補間VH検出回路の出力とが入力される差分平均中点電圧演算部と
を備え、
前記チャンネル間補間VL検出回路が、複数のベースバンド信号のうち低電圧の信号の入力を検出して、前記低電圧の信号を前記差分平均中点電圧演算部に出力し、
前記チャンネル間補間VH検出回路が、複数のベースバンド信号のうち高電圧の信号の入力を検出して、前記高電圧の信号を前記差分平均中点電圧演算部に出力し、
前記差分平均中点電圧演算部が、前記チャンネル間補間VL検出回路の出力と前記チャンネル間補間VH検出回路の出力とから中点電圧を前記スイッチ素子に出力し、
前記スイッチ素子が、前記フレーム検出回路からの入力により、前記中点電圧を前記バイアス加算部に出力し、
前記バイアス加算部が、前記ベースバンド信号をバイアスするバイアス電圧に、前記中点電圧を加え、
前記増幅部が前記ベースバンド信号を増幅することを特徴とする増幅回路。
【請求項7】
前記チャンネル間補間VH検出回路が、複数のダイオード回路と、抵抗と、電圧源を備え、
前記複数のダイオード回路それぞれの一端に、前記複数のベースバンド信号それぞれが入力し、
前記複数のダイオード回路それぞれの他端に、前記抵抗を介して、前記電圧源が接続され、
前記ダイオード回路が、前記一端から前記他端への方向が順方向となるように接続されることを特徴とする請求項6に記載の増幅回路。
【請求項8】
前記チャンネル間補間VL検出回路が、複数のダイオード回路と、抵抗と、電圧源を備え、
前記複数のダイオード回路それぞれの一端に、前記複数のベースバンド信号それぞれが入力し、
前記複数のダイオード回路それぞれの他端に、前記抵抗を介して、前記電圧源が接続され、
前記ダイオード回路が、前記他端から前記一端への方向が順方向となるように接続されることを特徴とする請求項5から請求項7のいずれか一項に記載の増幅回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベースバンド信号を増幅する増幅回路に関する。
【背景技術】
【0002】
電気信号や光信号の通信においては、NRZやPAM4等の単極性の符号が用いられており、送受信回路の構成がシンプルで低遅延という特徴を有する。電気信号と光信号のいずれの場合でも、受信側で信号増幅の信号処理を実施している。通信路での信号の減衰が大きい場合には信号振幅が小さくなるため、信号増幅の利得を増加させる必要がある。そこで、受信回路は、増幅回路を直列に接続することにより構成される。
【0003】
このように直列に接続されている各増幅回路の出力と入力を直流結合で接続した場合には、初段の増幅器のオフセット誤差も増幅されるため全体の利得が大きいと出力範囲が狭くなる欠点がある。そこで、一般的には、各増幅器の出力と入力が交流結合で接続される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】https://ednjapan.com/edn/articles/1805/11/news018_4.html
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、交流結合で直流成分を含むベースバンド信号を増幅する場合には、交流結合での過渡現象が生じる。その結果、フレーム入力直後の信号では直流成分を含む一方、フレーム入力後に時間が経過したときの信号では直流成分が除去される。この増幅回路をイーサネットに用いる場合には、プリアンブルをフレームの先頭に設けて、フレーム入力直後の直流成分を含む信号は使用しないことにより、先頭の信号の消失が許容されている。
【0006】
しかしながら、非特許文献1に記載の64B/66Bや128B/130Bコーディング等の先頭ビットの消失が許容されない方式では、フレーム先頭から末尾までを直流成分を含めて伝達する必要がある。特に、高密度・低消費電力が求められる通信方式において、コモンモードを除去でき差動成分のみを増幅できる差動信号を使用せずにシングルエンド伝送を使用する場合には、上述の増幅回路において信号の直流成分が除去されるという問題が顕著になる。
【0007】
従来の交流結合された増幅回路において、
図9に示すように、後段増幅器の増幅部は所定のバイアス電圧でバイアスされており、前段増幅器との接続において直流電流が流入してバイアス電圧が変動しないように容量により分離されている。
【0008】
この後段増幅器に前段増幅器からベースバンド信号が送信されたとき、容量の影響によりベースバンド信号に含まれる直流成分が、容量と抵抗のCR時定数に従って徐々に減衰する。そこで、増幅部のバイアス電圧をデータ入力直後のデータ信号に合わせて増幅すると、CR時定数で直流成分が減衰した後のデータが正確に送信されない。一方、バイアス電圧をCR時定数で直流成分が減衰した後のデータ信号に合わせて増幅すると、データ入力直後のデータが正確に送信されない。このように、従来の交流結合された増幅回路では、ベースバンド信号の信号を正確に送信できないので問題となる。
【0009】
本発明の目的は、前段増幅器のオフセット電圧を除去するために交流結合により前段と後段の増幅器を接続し、直流成分を含むベースバンド信号を正確に伝達できる増幅回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述したような課題を解決するために、本発明に係る増幅回路は、前段の増幅回路から入力されるベースバンド信号を増幅する増幅回路であって、入力端子に接続される分離素子と、前記分離素子と出力端子との間に接続される増幅部と、前記分離素子と並列に接続される信号中点検出部と、前記信号中点検出部と直列に接続されるバイアス加算部と、フレーム検出回路と接続される電圧初期値検出回路とを備え、前記電圧初期値検出回路が、前記フレーム検出回路の信号により、前記ベースバンド信号の電圧初期値を保持して、前記信号中点検出部に出力し、前記信号中点検出部が、前記ベースバンド信号と前記電圧初期値とから中点電圧を検出して前記バイアス加算部に出力し、前記バイアス加算部が、前記ベースバンド信号をバイアスするバイアス電圧に、前記中点電圧を加え、前記増幅部が前記ベースバンド信号を増幅することを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る増幅回路は、複数の前段の増幅回路から入力される複数のベースバンド信号を増幅する増幅回路であって、複数の入力端子それぞれに接続される複数の分離素子と、前記複数の分離素子と複数の出力端子それぞれの間に接続される複数の増幅部と、前記複数の分離素子それぞれと並列に接続される複数の信号中点検出部と、前記複数の信号中点検出部それぞれと直列に接続される複数のバイアス加算部と、チャンネル間補間VL検出回路とを備え、前記チャンネル間補間VL検出回路が、前記複数のベースバンド信号のうち低電圧信号を検出して、前記複数の信号中点検出部それぞれに出力し、前記信号中点検出部が、前記ベースバンド信号と前記低電圧信号とから中点電圧を検出して前記バイアス加算部に出力し、前記バイアス加算部が、前記ベースバンド信号をバイアスするバイアス電圧に、前記中点電圧を加え、前記増幅部が前記ベースバンド信号を増幅することを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る増幅回路は、複数の送信回路の前段に接続され、複数のベースバンド信号が入力される接続回路であって、複数の入力端子と複数の出力端子の間にそれぞれ接続される複数の分離素子と、前記複数の分離素子それぞれと並列に接続される複数のフレーム検出回路と、前記複数のフレーム検出回路それぞれと直列に接続される複数のスイッチ素子と、前記複数のスイッチ素子それぞれと直列に接続される複数のバイアス加算部と、チャンネル間補間VL検出回路の出力とチャンネル間補間VH検出回路の出力とが入力される差分平均中点電圧演算部とを備え、前記チャンネル間補間VL検出回路が、複数のベースバンド信号のうち低電圧の信号の入力を検出して、前記低電圧の信号を前記差分平均中点電圧演算部に出力し、前記チャンネル間補間VH検出回路が、複数のベースバンド信号のうち高電圧の信号の入力を検出して、前記高電圧の信号を前記差分平均中点電圧演算部に出力し、前記差分平均中点電圧演算部が、前記チャンネル間補間VL検出回路の出力と前記チャンネル間補間VH検出回路の出力とから中点電圧を前記スイッチ素子に出力し、前記スイッチ素子が、前記フレーム検出回路からの入力により、前記中点電圧を前記バイアス加算部に出力し、前記バイアス加算部が、前記ベースバンド信号をバイアスするバイアス電圧に、前記中点電圧を加え、前記増幅部が前記ベースバンド信号を増幅することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、直流成分を含むベースバンド信号を増幅して、正確に伝達できる増幅回路を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る増幅回路の構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1の実施の形態に係る増幅回路の動作を説明するためのタイムチャート図である。
【
図3】
図3は、本発明の第1の実施の形態に係る増幅回路の動作を説明するための信号の概略図である。
【
図4】
図4は、本発明の第2の実施の形態に係る増幅回路の構成を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、本発明の第3の実施の形態に係る増幅回路の構成を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、本発明の第3の実施の形態に係る増幅回路の構成を示すブロック図である。
【
図7】
図7は、本発明の第4の実施の形態に係る増幅回路の構成を示すブロック図である。
【
図8】
図8は、本発明の第4の実施の形態に係る増幅回路におけるch間補間VH検出回路の構成例を示す図である。
【
図9】
図9は、従来の増幅回路の接続形態を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第1の実施の形態>
本発明の第1の実施の形態に係る増幅回路について
図1~
図3を参照して説明する。
【0016】
<増幅回路の構成>
【0017】
本実施の形態に係る増幅回路10は、
図1に示すように、電圧初期値検出回路102と、フレーム検出回路101と、信号中点検出部103と、バイアス加算部104と、分離素子105と、増幅部106とを備える。分離素子105には、キャパシタを有するコンデンサ等の素子(容量)や光カプラを用いることができる。
【0018】
フレーム検出回路101は、増幅部106から出力されたベースバンド信号(以下、「データ信号」という。)の電圧の変化を検出し、フレーム検出信号を出力する。フレーム検出回路101は、マルチバイブレータ回路、チャタリング防止のRSラッチ回路、低域通過フィルタ等で構成できる。
【0019】
電圧初期値検出回路102は、入力端子111側から順に信号遅延回路1021とサンプルホールド回路1022とを備え、データ信号の未入力時の電圧(以下、「電圧初期値」という。)を検出するとともに、フレーム検出信号の入力により電圧初期値を保持し、電圧初期値を出力する。
【0020】
信号中点検出部103は、入力端子111側から順に低域通過フィルタ1031と中点電圧演算部1032とを備え、データの電圧の高電圧と低電圧の中点の電圧である中点電圧を検出する。
【0021】
バイアス加算部104は、データ信号が入力されると中点電圧を加算して増幅部106に入力されるベースバンド信号をバイアスする。
【0022】
分離素子105は、前段増幅器(図示せず)から入力された信号のオフセットを含む直流成分を除去する。
【0023】
増幅部106は、バイアス加算部104によりバイアスされたベースバンド信号を増幅する。
【0024】
増幅回路10において、分離素子105と並列に、電圧初期値検出回路102と信号中点検出部103とバイアス加算部104により構成される回路が接続され、フレーム検出回路101の出力が電圧初期値検出回路102に入力する。
【0025】
ここで、電圧初期値検出回路102の信号遅延回路1021と、信号中点検出部103の低域通過フィルタ1031とが並列に接続される。
【0026】
電圧初期値検出回路102では、信号遅延回路1021とサンプルホールド回路1022とが直列に接続され、サンプルホールド回路1022にフレーム検出回路101の出力が入力(接続)される。
【0027】
信号中点検出部103では、低域通過フィルタ1031と中点電圧演算部1032とが直列に接続され、サンプルホールド回路1022の出力が中点電圧演算部1032に入力(接続)される。
【0028】
信号中点検出部103の中点電圧演算部1032の出力が、バイアス加算部104に入力(接続)される。バイアス加算部104では、バイアス電圧に中点電圧演算部1032の出力を加算して、増幅部106に出力する。
【0029】
<増幅回路の動作>
本実施の形態に係る増幅回路10の動作を、
図2を参照して説明する。
【0030】
データ信号が増幅回路10に入力する前は、前段の増幅器から電圧初期値として低電圧VLが出力される。その後、信号が入力されると、信号のデータに従ってデータ先頭から高電圧VHと低電圧VLで変化する波形となる(
図2中121)。
【0031】
フレーム検出回路101では、増幅部106で増幅されたデータ信号が変化することを読み取ってフレーム検出信号を高電圧VHで出力し、いったんフレーム検出信号を高電圧VHで出力すると継続して出力する(
図2中122)。その後、データ信号において低電圧VLが所定時間継続する場合等の所定の条件で、高電圧VHの出力を停止し、低電圧VLを出力する(図示せず)。
【0032】
例えば、フレーム検出回路101にマルチバイブレータ回路を用いる場合には、マルチバイブレータ回路がデータ信号の入力により所定の時間幅の矩形波(高電圧VH)を出力し、出力を所定の時間継続し、その後低電圧VLを出力する。
【0033】
また、例えば、フレーム検出回路101にRSラッチ回路を用いる場合には、RSラッチ回路の一方の端子(図示せず)への入力がされない状態を維持して、他方の端子にデータ信号が入力(高電圧VH)された場合に、高電圧VHが出力される。他方の端子へのデータ信号が低電圧VLになった場合でも、高電圧VHの出力が維持される。その後、一方の端子(図示せず)に入力がされた場合に、低電圧VLを出力される。
【0034】
また、例えば、フレーム検出回路101に低域通過フィルタを用いる場合には、データ信号(高電圧VH)が入力されると、信号変化が緩和されるので信号が平坦化して、フレーム検出信号が継続して出力される。一方、データ信号で低電圧VLの出力が継続すると、平坦化される信号の出力が低電圧VLになる。さらに、低域通過フィルタの後段にコンパレータ回路を接続することにより、低域通過フィルタの出力が所定のしきい値以上のときにフレーム検出信号を高電圧VHで出力して、所定のしきい値未満が継続する場合に低電圧VLを出力できる。
【0035】
信号遅延回路1021では、データ信号が遅延される(
図2中123)。その結果、信号遅延回路1021の出力は、フレーム検出信号が出力された時に、まだデータ信号の入力前の電圧初期値が低電圧VLで出力されている。
【0036】
サンプルホールド回路1022には、信号遅延回路1021により遅延された信号が入力される。そこで、サンプルホールド回路1022は、増幅回路10へのデータ信号の入力時より前では、電圧初期値(低電圧VL)がそのまま出力される。また、増幅回路10へのデータ信号の入力時以降では、上述のフレーム検出信号がサンプルホールド回路1022に入力される時に、信号遅延回路1021からデータ信号の入力前の電圧初期値が低電圧VLで入力される。その結果、増幅回路10へのデータ信号の入力後も、電圧初期値(低電圧VL)がホールドされて信号中点検出部103の中点電圧演算部1032に出力される(
図2中124)。
【0037】
信号中点検出部103の低域通過フィルタ1031では、データ入力前は電圧初期値VLが出力され、データ入力後はデータが平滑化されたVL+中点電圧が出力される(
図2中125)。低域通過フィルタ1031において、データ信号は高周波成分が遮断され、低周波成分からなるので、信号変化が緩和され平坦化され、VLに信号変化の平均値である中点電圧を加えたVL+中点電圧が出力される。ここで、出力電圧は、VLからVL+中点電圧まで、低域通過フィルタ1031内部の時定数に従って増加する。
【0038】
中点電圧演算部1032には、通常の減算回路を用いられ、低域通過フィルタ1031の出力とサンプルホールド回路の出力との差分が出力される。その結果、データ入力前はゼロ、データ入力後は中点電圧が出力される(
図2中126)。
【0039】
バイアス加算部104には、通常の加算回路を用いられ、増幅部106のバイアス電圧Vbと中点電圧演算部1032の出力(中点電圧)との和が出力される(
図2中127)。その結果、データ入力前ではVb、データ入力後ではVb+中点電圧で、増幅部106に入力されるベースバンド信号がバイアスされる。
【0040】
前段の増幅器から出力されたベースバンド信号の直流成分は、分離素子105とバイアス加算部104の出力抵抗(図示せず)で形成されるCR時定数により過渡現象により、ベースバンド信号の先頭部分では直流成分の減衰量は小さく、ベースバンド信号の後方部分では直流成分の減衰量が大きくなる。このような波形歪をベースバンド信号の直流成分は有する。(
図3中、破線)。このベースバンド信号がバイアス加算部104の出力(
図3中、点線)によりバイアスされると、ベースバンド信号の直流成分におけるCR時定数による波形歪が、バイアス加算部104の出力の低域通過フィルタ1031内部の時定数による変化(増加)により相殺される(
図3中、実線)。その結果、増幅部106へ入力されるベースバンド信号の波形歪が低減される。
【0041】
このように、本実施の形態に係る増幅回路10は、前段の増幅器から出力されたベースバンド信号を、ベースバンド信号の中点電圧が加算されたバイアス電圧でバイアスして、増幅部106に歪が低減されたベースバンド信号を入力できる。
【0042】
したがって、増幅部106は歪が低減されたベースバンド信号を増幅するので、正確にベースバンド信号を増幅できる。
【0043】
以上のように、本実施の形態に係る増幅回路によれば、前段増幅器のオフセット電圧を除去するために交流結合により前段増幅器と後段の増幅器を接続し、直流成分を含むベースバンド信号を正確に増幅できる。
【0044】
<第2の実施の形態>
本発明の第2の実施の形態に係る増幅回路について
図5を参照して説明する。
【0045】
<増幅回路の構成>
本実施の形態に係る増幅回路20は、
図4に示すように、複数(N個)の入力と出力に対して、1個の電圧初期値検出回路202と、1個のフレーム検出回路201と、複数(N個)の信号中点検出部203_1~203_Nと、複数(N個)のバイアス加算部204_1~204_Nと、複数(N個)の分離素子205_1~205_Nと、増幅部206_1~206_Nとを備える。電圧初期値検出回路202と信号中点検出部203_1~203_Nの構成および電圧初期値検出回路202とフレーム検出回路201との接続形態は、第1の実施の形態と同様である。
【0046】
増幅回路20において、複数の分離素子305_1~305_Nと並列に、それぞれ信号中点検出部203_1~203_Nとバイアス加算部204_1~204_Nとが直列に接続され、複数の入力端子のうち1つの入力端子(例えば、入力端子211_1)に接続される電圧初期値検出回路202の出力が、複数の信号中点検出部203_1~203_Nの中点電圧演算部に入力(接続)される。
【0047】
<増幅回路の動作>
第1の実施の形態と同様に、電圧初期値検出回路202は、データ信号の入力にかかわらず電圧初期値VLを出力する。そこで、本実施の形態に係る増幅回路20によれば、データ信号の入力にかかわらず電圧初期値VLが、複数の信号中点検出部203_1~203_Nの中点電圧演算部に出力される。
【0048】
そこで、全入力(1~N)で電気信号の仕様が同じであれば、1つの入力端子(例えば、入力端子211_1)に接続される電圧初期値検出回路202により、全ての信号中点検出部203_1~203_Nに対して同じ電圧初期値VLを出力できる。
【0049】
その結果、第1の実施の形態と同様に、それぞれの信号中点検出部203_1~203_Nの中点電圧演算部で低域通過フィルタの出力と電圧初期値検出回路202の出力(電圧初期値VL)との差分が出力され、バイアス加算部204_1~204_Nにより送信回路に入力されるベースバンド信号がバイアスされ、ベースバンド信号の波形歪が低減される。
【0050】
このように、本実施の形態に係る増幅回路20は、前段の複数の増幅器から出力されたベースバンド信号を、ベースバンド信号の中点電圧が加算されたバイアス電圧でバイアスして、それぞれ複数の増幅部206_1~206_Nに歪が低減されたベースバンド信号を入力できる。
【0051】
したがって、増幅部206_1~206_Nは歪が低減されたベースバンド信号を増幅するので、正確にベースバンド信号を増幅できる。
【0052】
以上のように、本実施の形態に係る増幅回路によれば、前段増幅器のオフセット電圧を除去するために交流結合により前段増幅器と後段の増幅器を接続し、直流成分を含むベースバンド信号を正確に増幅できる。
【0053】
また、本実施の形態に係る増幅回路20によれば、すべての入力に対して電圧初期値検出回路とフレーム検出回路を配置する構成と比較して、電圧初期値検出回路とフレーム回路が1個であるので、消費電力を低減でき、チップ面積を低減できる。
【0054】
<第3の実施の形態>
本発明の第3の実施の形態に係る増幅回路について
図5~
図6を参照して説明する。本実施の形態に係る増幅回路は、第2の実施の形態に係る増幅回路と比較して、信号中点検出部の前段の構成が異なる。その他の構成は、第2の実施の形態と同様である。
【0055】
<増幅回路の構成>
本実施の形態に係る増幅回路30は、
図6に示すように、複数(N個)の入力と出力に対して、1個のチャンネル(ch)間補間電圧初期値(VL)検出回路301と、複数(N個)の信号中点検出部303_1~303_Nと、複数(N個)のバイアス加算部304_1~304_Nと、複数(N個)の分離素子305_1~305_Nと、複数(N個)の増幅部206_1~206_Nとを備える。信号中点検出部303_1~303_Nの構成は、第1の実施の形態と同様である。
【0056】
増幅回路30において、複数の分離素子305_1~305_Nと並列に、それぞれ信号中点検出部303_1~303_Nとバイアス加算部304_1~304_Nとが直列に接続され、複数の入力端子311_1~311_Nに接続されるch間補間VL検出回路301の出力が、複数の信号中点検出部303_1~303_Nに入力(接続)される。また、バイアス加算部304_1~304_Nの出力がそれぞれ、増幅部306_1~306_Nに接続される。
【0057】
ch間補間VL検出回路301は、入力端子311_1~311_Nと接続し、複数チャンネルの信号の中で低い電圧の信号を検出する。詳細には、
図7に示すように、各入力端子311_1~311_Nと各信号中点検出部303_1~303_Nの入力との間にダイオード回路3011_1~3011_Nを備え、信号中点検出部303_1~303_Nの入力に電圧源(V1)3013に接続された抵抗(Rb)3012が接続される。ここで、ダイオード回路3011_1~3011_Nは、順方向しきい値電圧が0Vの理想ダイオード回路とする。また、ダイオード回路3011_1~3011_Nは、各信号中点検出部303_1~303_Nの入力から各入力端子311_1~311_Nの方向が順方向になるように接続される。
【0058】
<増幅回路の動作>
初めに、ch間補間VL検出回路301の動作を説明する。電圧源の電圧V1はあらかじめ入力信号の低電圧VLと高電圧VHの間でVL<V1<VHとなるように設定されているものとする。
【0059】
入力端子311_1~311_Nのうち1つの入力端子(例えば、入力端子311_1)に電圧初期値として電圧VLが入力されると、V1>VLのため、ダイオード回路(例えば、3011_1)に順方向電圧VLが印加されONとなるので、信号中点検出部303_1~303_Nの入力電圧VaがVLと等しくなる。ここで、入力電圧がVHであるダイオード回路はOFF状態のためVHはVaに影響しない。
【0060】
ここで、Rb3032と信号中点検出部303_1~303_Nの入力に存在するダイオード等の寄生容量で形成されるCR時定数のため、入力端子311_1~311_NがすべてVHになった瞬間からVaはCR時定数に従ってV1に変化する。その結果、CR時定数による所定の時間経過後に、Va=V1になる。したがって、所定の時間以上、入力端子311_1~311_NがすべてVHとなる状態が継続されないと、VaがVLから変化しない。換言すれば、ほとんどVaはVLの状態を維持する。
【0061】
仮に、Va=V1になると、Va=VLのときに信号がVLとVHの間で変化する場合に比べて、信号がV1とVHの間で変化するので、信号変化量(振幅)が減少する。その結果、信号の検知が困難になるなどの不利益が生じる。
【0062】
上述のVaのVLからの変化が発生する確率について、以下に説明する。
【0063】
Vaの変化が発生する確率は、入力端子311_1~311_NがすべてVHとなる状態が10ビット連続で生じたときにVaが変化するようにCR時定数を結滞して、以下の通り計算される。
【0064】
ビットレートを10Gbpsとする。10ビットVHになる確率は1/210となる。N=1の場合では、210/10Gbps=102.4ナノ秒となり、102.4ナノ秒に1回Vaがずれる。N=8の場合では、すべてのチャンネルで10ビットVHとなる確率は1/280となり、280/10Gbps=1.21x1014秒=3.8x106年となる。この結果より、3.8x106年に1回のみVaが変化する。また、チャンネル数が多いほどVaが変化する確率は低くなる。
【0065】
このように、VaのVLからの変化が発生する確率は極めて低いので、VaのVLからの変化が発生することはほとんどない。
【0066】
以上のように、ch間補間VL検出回路301に電圧初期値として電圧VLが入力されると、信号中点検出部303_1~303_Nの入力電圧Vaは電圧初期値VLに維持される。
【0067】
次に、増幅回路30の動作を説明する。
【0068】
上述の通り、信号中点検出部303_1~303_Nの入力Vaは電圧初期値である低電圧VLで維持されるので、信号中点検出部303_1~303_Nからバイアス加算部304_1~304_Nへの出力も低電圧VLで維持される。
【0069】
このように、入力端子311_1~311_Nのうち1つの入力端子に電圧VLが入力されると、低電圧VLが継続してバイアス加算部304_1~304_Nに出力される。
【0070】
その結果、第1~2の実施の形態と同様に、それぞれの信号中点検出部303_1~303_Nの中点電圧演算部で低域通過フィルタの出力とch間補間VL検出回路301の出力(電圧初期値VL)との差分が出力され、バイアス加算部304_1~304_Nにより増幅部306_1~306_Nに入力されるベースバンド信号がバイアスされ、ベースバンド信号の波形歪が低減される。
【0071】
このように、本実施の形態に係る増幅回路30は、前段の複数の増幅器から出力されたベースバンド信号を、ベースバンド信号の中点電圧が加算されたバイアス電圧でバイアスして、それぞれ複数の増幅部306_1~306_Nに歪が低減されたベースバンド信号を入力できる。
【0072】
したがって、増幅部306_1~306_Nは歪が低減されたベースバンド信号を増幅するので、正確にベースバンド信号を増幅できる。
【0073】
以上のように、本実施の形態に係る増幅回路によれば、前段増幅器のオフセット電圧を除去するために交流結合により前段増幅器と後段の増幅器を接続し、直流成分を含むベースバンド信号を正確に増幅できる。
【0074】
また、第2の実施の形態に係る増幅回路では、1つの入出力回路においてVLを抽出して、このVLをN個の入力される信号における最低電圧値とみなして中点電圧が検出された。しかしながら、このVLはN個の入力信号での最低電圧ではないので、N個の入力信号における正確な中点電圧が検出されない。本実施の形態に係る増幅回路では、N個の入力信号での最低電圧を抽出することにより、N個の入力信号におけるより正確な中点電圧を検出できる。
【0075】
また、第2の実施の形態に係る増幅回路では、一の入力端子に信号が入力される前に、他の入力端子に信号が入力された場合には、ベースバンド信号の波形歪を低減できない。一方、本実施の形態に係る増幅回路によれば、1~Nの入力信号に対して低電圧VLを検出するので、1~Nいずれの入力端子に信号が入力された場合でも、ベースバンド信号の波形歪を低減できる。
【0076】
<第4の実施の形態>
次に、本発明の第4の実施の形態に係る増幅回路について
図7~
図8を参照して説明する。
【0077】
<増幅回路の構成>
本実施の形態に係る増幅回路40は、
図7に示すように、複数(N個)の入力と出力に対して、1個のチャンネル(ch)間補間VL検出回路401と、1個のチャンネル(ch)間補間VH検出回路402と、1個の差分平均中点電圧演算部403と複数(N個)のフレーム検出回路404_1~404_Nと複数(N個)のスイッチ(SW)素子405_1~405_Nと複数(N個)のバイアス加算部406_1~406_Nと、複数(N個)の分離素子407_1~407_Nと、複数(N個)の増幅部408_1~408_Nとを備える。
【0078】
接続回路40において、複数(N個)の入力端子411_1~411_Nと複数(N個)の増幅部408_1~408_Nとの間に接続される複数(N個)の分離素子407_1~407_Nと並列に、それぞれフレーム検出回路404_1~404_Nと複数(N個)のスイッチ(SW)素子405_1~405_Nと複数(N個)のバイアス加算部406_1~406_Nとが直列に接続され、バイアス加算部406_1~406_Nの出力はそれぞれ複数(N個)の増幅部408_1~408_Nに接続される。
【0079】
また、複数の入力端子411_1~411_Nに接続されるch間補間VL検出回路401とch間補間VH検出回路402とが差分平均中点電圧演算部403に接続され、差分平均中点電圧演算部403が複数(N個)のスイッチ(SW)素子405_1~405_Nに接続される。
【0080】
チャンネル(ch)間補間VL検出回路401は、第3の実施の形態と同様の構成を有し、各入力端子411_1~411_Nと差分平均中点電圧演算部403の入力との間にそれぞれダイオード回路を備え、差分平均中点電圧演算部403の入力に電圧源4023に接続された抵抗(Rb2)4022が接続される。
【0081】
ch間補間VH検出回路402は、ch間補間VL検出回路401と並列に、入力端子411_1~411_Nと接続し、複数チャンネルの信号の中で高い電圧の信号を検出する。詳細には、
図8に示すように、各入力端子411_1~411_Nと差分平均中点電圧演算部403の入力との間にダイオード回路4021_1~4021_Nを備え、差分平均中点電圧演算部403の入力に電圧源(V1)4023に接続された抵抗(Rb)4022が接続される。ここで、ダイオード回路4021_1~4021_Nは、順方向しきい値電圧が0Vの理想ダイオード回路とする。また、ダイオード回路4021_1~4021_Nは、各入力端子411_1~411_Nから差分平均中点電圧演算部403への入力の方向が順方向になるように接続される。
【0082】
<増幅回路の動作>
初めに、ch間補間VH検出回路402の動作を説明する。電圧源の電圧V1はあらかじめ入力信号の低電圧VLと高電圧VHの間でVL<V1<VHとなるように設定されているものとする。
【0083】
入力端子411_1~411_Nのうち1つの入力端子(例えば、入力端子411_1)に電圧VHが入力されると、V1<VHのため、ダイオード回路(例えば、4021_1)に順方向電圧VLが印加されONとなるので、差分平均中点電圧演算部403の入力電圧Va2がVHと等しくなる。ここで、入力電圧がVLであるダイオード回路はOFF状態のためVLはVa2に影響しない。したがって、入力1~Nの中で電圧がVHである入力があればVa2はVHとなる。
【0084】
ここで、抵抗(Rb2)4022と差分平均中点電圧演算部403の入力に存在するダイオード等の寄生容量で形成されるCR時定数のため、入力端子411_1~411_NがすべてVLになった瞬間からVa2はCR時定数に従ってV1に変化する。その結果、CR時定数による所定の時間経過後に、Va2=V1になる。したがって、所定の時間以上、入力端子411_1~411_NがすべてVLとなる状態が継続されないと、Va2がVHから変化しない。換言すれば、ほとんどVa2はVHの状態を維持する。
【0085】
仮に、Va2=V1になると、Va2=VHのときに信号がVLとVHの間で変化する場合に比べて、信号がV1とVHの間で変化するので、信号変化量(振幅)が減少する。その結果、信号の検知が困難になるなどの不利益が生じる。
【0086】
第3の実施の形態で説明した、VaのVLからの変化が発生する確率と同様に、入力端子411_1~411_NがすべてVLとなる状態は、全ての送信回路にデータが入力されていないとき以外では極めて低く、チャンネル数が多くなるほど確率は低くなる。
【0087】
このように、Va2のVLからの変化が発生する確率は極めて低いので、Va2のVLからの変化が発生することはほとんどない。
【0088】
以上のように、ch間補間VH検出回路402に電圧VHが入力されると、差分平均中点電圧演算部403の入力電圧Va2はVHに維持される。
【0089】
次に、増幅回路40の動作を説明する。
【0090】
チャンネル(ch)間補間VL検出回路401は、第3の実施の形態と同様の構成を有し、複数チャンネルの信号の中で低い電圧の信号を検出する。
【0091】
チャンネル(ch)間補間VH検出回路402は、上述の通り、複数チャンネルの信号の中で高い電圧の信号を検出する。
【0092】
差分平均中点電圧演算部403は、チャンネル(ch)間補間VL検出回路401の出力電圧VLとチャンネル(ch)間補間VH検出回路402の出力電圧VHとから、VLとVHとの中点電圧を演算して、中点電圧をスイッチ(SW)素子405_1~405_Nに出力する。
【0093】
例えば、差分平均中点電圧演算部403は、差動回路の後段に分圧回路を接続して構成できる。差動回路によりVLとVHとの差分の電圧を出力して、その差分の電圧が1/2になるように分圧回路により分圧する。その結果、VLとVHとの中点電圧が演算される。
【0094】
フレーム検出回路404_1~404_Nではそれぞれ、第1の実施の形態と同様に、増幅部408_1~408_Nで増幅されたデータ信号が変化することを読み取って、フレーム検出信号を高電圧VHで出力し、いったんフレーム検出信号を高電圧VHで出力すると継続して、スイッチ(SW)素子405_1~405_Nに出力する。
【0095】
スイッチ(SW)素子405_1~405_Nは、フレーム検出信号がVHで入力されたときにONとなり、差分平均中点電圧演算部403の出力電圧(中点電圧)をバイアス加算部406_1~406_Nに出力する。
【0096】
バイアス加算部406_1~406_Nでは、第1の実施の形態と同様に、送信回路のバイアス電圧Vb1~VbNとスイッチ(SW)素子405_1~405_Nの出力との和が出力される。
【0097】
このように、それぞれの入力端子にデータ信号が入力されたときに、それぞれのバイアス加算部406_1~406_Nでバイアス電圧に中点電圧が加算される。その結果、データ入力前ではVb1~VbN、データ入力後ではVb1~VbN+中点電圧で、それぞれの入力端子から入力されるベースバンド信号がバイアスされ、増幅部408_1~408_Nに出力される。
【0098】
その結果、第1~3の実施の形態と同様に、バイアス加算部406_1~406_Nにより増幅部408_1~408_Nに入力されるベースバンド信号がバイアスされ、ベースバンド信号の波形歪が低減される。
【0099】
このように、本実施の形態に係る増幅回路40は、前段の複数の増幅器から出力されたベースバンド信号を、ベースバンド信号の中点電圧が加算されたバイアス電圧でバイアスして、それぞれ複数の増幅部408_1~408_Nに歪が低減されたベースバンド信号を入力できる。
【0100】
したがって、増幅部408_1~408_Nは歪が低減されたベースバンド信号を増幅するので、正確にベースバンド信号を増幅できる。
【0101】
以上のように、本実施の形態に係る増幅回路によれば、前段増幅器のオフセット電圧を除去するために交流結合により前段増幅器と後段の増幅器を接続し、直流成分を含むベースバンド信号を正確に増幅できる。
【0102】
本実施の形態に係る増幅回路では、第3の実施の形態に係る増幅回路と比較して、N個の入力信号での低電圧に加えて高電圧も抽出することにより、N個の入力信号におけるより正確な中点電圧を検出できる。
【0103】
また、本実施の形態に係る増幅回路によれば、第3の実施の形態に係る増幅回路と同様に、1~Nの入力信号に対して低電圧VLと高電圧VHとを検出するので、1~Nいずれの入力端子に信号が入力された場合でも、ベースバンド信号の波形歪を低減できる。
【0104】
本発明の実施の形態では、フレーム検出回路の入力に増幅部の出力が接続する例を示したが、これに限らない。フレーム検出回路の入力に入力端子が接続してもよい。但し、フレーム検出回路の入力に増幅部の出力が接続する方が、フレーム検出回路が増幅した信号の変化を検出するので、検出感度が高い。
【0105】
本発明の実施の形態では、増幅回路の構成、製造方法などにおいて、各構成部の構造、寸法、材料等の一例を示したが、これに限らない。増幅回路の機能を発揮し効果を奏するものであればよい。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明は、ベースバンド信号を増幅する増幅回路に関するものであり、通信伝送システムに適用することができる。
【符号の説明】
【0107】
10 増幅回路
101 フレーム検出回路
102 電圧初期値検出回路
1021 信号遅延回路
1022 サンプルホールド回路
103 信号中点検出部
1031 低域通過フィルタ
1032 中点電圧演算部
104 バイアス加算部
105 分離素子
106 増幅部
111 入力端子
112 出力端子