(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-04
(45)【発行日】2023-10-13
(54)【発明の名称】ウエハ加工体、ウエハ加工用仮接着材、及び薄型ウエハの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20231005BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20231005BHJP
C09J 183/07 20060101ALI20231005BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
H01L21/304 622J
C09J7/38
C09J183/07
C09J11/06
(21)【出願番号】P 2021550610
(86)(22)【出願日】2020-09-17
(86)【国際出願番号】 JP2020035309
(87)【国際公開番号】W WO2021065547
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-03-07
(31)【優先権主張番号】P 2019178951
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】武藤 光夫
(72)【発明者】
【氏名】田上 昭平
(72)【発明者】
【氏名】菅生 道博
【審査官】杢 哲次
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-50268(JP,A)
【文献】特開2014-96563(JP,A)
【文献】特開2014-241399(JP,A)
【文献】特開2007-246842(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
C09J 7/38
C09J 183/07
C09J 11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に回路面を有し、裏面を加工すべきウエハを支持体に仮接着するためのウエハ加工用仮接着材であって、
前記ウエハの表面に剥離可能に接着可能な熱可塑性樹脂層(A)からなる第一仮接着層と、該第一仮接着層に積層された光硬化性シロキサン重合体層(B)からなる第二仮接着層の2層構造を有する複合仮接着材層を備えたものであ
り、
前記光硬化性シロキサン重合体層(B)が、
(B-1)1分子中に2個以上のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン、
(B-2)1分子中に2個以上のケイ素原子に結合した水素原子(Si-H基)を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:前記(B-1)成分中のアルケニル基に対する(B-2)成分中のSi-H基のモル比が0.3から10となる量、
(B-3)光活性型ヒドロシリル化反応触媒:前記(B-1)成分及び前記(B-2)成分の合計質量に対して金属原子量換算で1~5,000ppm
を含有する光硬化性シロキサン組成物の硬化物層であることを特徴とするウエハ加工用仮接着材。
【請求項2】
前記光硬化性シロキサン組成物が、更に、(B-4)成分としてヒドロシリル化反応制御剤を含有するものであり、かつ、前記(B-3)成分の添加量が、前記(B-1)成分、前記(B-2)成分及び前記(B-4)成分の合計質量に対して金属原子量換算で1~5,000ppmであることを特徴とする請求項
1に記載のウエハ加工用仮接着材。
【請求項3】
前記(B-3)成分の光活性型ヒドロシリル化反応触媒が、(η
5-シクロペンタジエニル)トリ(σ-アルキル)白金(IV)錯体及びβ-ジケトナト白金(II)錯体のいずれか又は両方であることを特徴とする請求項
1又は請求項
2に記載のウエハ加工用仮接着材。
【請求項4】
前記光硬化性シロキサン重合体層(B)の硬化後、25℃での熱可塑性樹脂層(A)に対する25mm幅試験片の180°ピール剥離力が2gf(0.0196N)以上50gf(0.490N)以下であることを特徴とする請求項1から請求項
3のいずれか1項に記載のウエハ加工用仮接着材。
【請求項5】
前記光硬化性シロキサン重合体層(B)の硬化後、25℃での貯蔵弾性率が1,000Pa以上1,000MPa以下であることを特徴とする請求項1から請求項
4のいずれか1項に記載のウエハ加工用仮接着材。
【請求項6】
前記熱可塑性樹脂層(A)が非シリコーン樹脂である請求項1から請求項
5のいずれか1項に記載のウエハ加工用仮接着材。
【請求項7】
(a)表面に回路形成面及び裏面に回路非形成面を有するウエハの前記回路形成面を、請求項1から請求項
6のいずれか1項に記載のウエハ加工用仮接着材に用いられる前記熱可塑性樹脂層(A)と、前記光硬化性シロキサン重合体層(B)とを有する仮接着材層を介して、支持体に接合する際に、前記支持体上に前記光硬化性シロキサン重合体層(B)を形成した後、前記熱可塑性樹脂層(A)の形成された回路付きウエハと真空下で接合する工程と、
(b)前記重合体層(B)を光硬化させる工程と、
(c)前記支持体と接合した前記ウエハの回路非形成面を研削又は研磨する工程と、
(d)前記ウエハの回路非形成面に加工を施す工程と、
(e)前記加工を施したウエハを前記支持体から剥離する工程と、
を含むことを特徴とする薄型ウエハの製造方法。
【請求項8】
(a)表面に回路形成面及び裏面に回路非形成面を有するウエハの前記回路形成面を、請求項1から請求項
6のいずれか1項に記載のウエハ加工用仮接着材に用いられる前記熱可塑性樹脂層(A)と、前記光硬化性シロキサン重合体層(B)とを有する仮接着材層を介して、支持体に接合する際に、前記熱可塑性樹脂層(A)を回路付きウエハ上に形成し、光照射を行った前記光硬化性シロキサン重合体層(B)を支持体上に形成する工程と、
(b)前記熱可塑性樹脂層(A)が形成された回路付きウエハと前記重合体層(B)が形成された支持体とを真空下で接合する工程と、
(c)前記支持体と接合した前記ウエハの回路非形成面を研削又は研磨する工程と、
(d)前記ウエハの回路非形成面に加工を施す工程と、
(e)前記加工を施したウエハを前記支持体から剥離する工程と、
を含むことを特徴とする薄型ウエハの製造方法。
【請求項9】
支持体上に仮接着材層が形成され、かつ仮接着材層上に、表面に回路面を有し、裏面を加工すべきウエハが積層されてなるウエハ加工体であって、
前記仮接着材層が、前記ウエハの表面に剥離可能に接着された熱可塑性樹脂層(A)からなる第一仮接着層と、該第一仮接着層に積層された光硬化性シロキサン重合体層(B)からなる第二仮接着層との2層構造を有する複合仮接着材層を備えたものであ
り、
前記光硬化性シロキサン重合体層(B)が、
(B-1)1分子中に2個以上のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン、
(B-2)1分子中に2個以上のケイ素原子に結合した水素原子(Si-H基)を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:前記(B-1)成分中のアルケニル基に対する(B-2)成分中のSi-H基のモル比が0.3から10となる量、
(B-3)光活性型ヒドロシリル化反応触媒:前記(B-1)成分及び前記(B-2)成分の合計質量に対して金属原子量換算で1~5,000ppm
を含有する光硬化性シロキサン組成物の硬化物層であることを特徴とするウエハ加工体。
【請求項10】
前記光硬化性シロキサン組成物が、更に、(B-4)成分としてヒドロシリル化反応制御剤を含有するものであり、かつ、前記(B-3)成分の添加量が、前記(B-1)成分、前記(B-2)成分及び前記(B-4)成分の合計質量に対して金属原子量換算で1~5,000ppmであることを特徴とする請求項
9に記載のウエハ加工体。
【請求項11】
前記(B-3)成分の光活性型ヒドロシリル化反応触媒が、(η
5-シクロペンタジエニル)トリ(σ-アルキル)白金(IV)錯体及びβ-ジケトナト白金(II)錯体のいずれか又は両方であることを特徴とする請求項
9又は請求項
10に記載のウエハ加工体。
【請求項12】
前記光硬化性シロキサン重合体層(B)の硬化後、25℃での熱可塑性樹脂層(A)に対する25mm幅試験片の180°ピール剥離力が2gf(0.0196N)以上50gf(0.490N)以下であることを特徴とする請求項
9から請求項
11のいずれか1項に記載のウエハ加工体。
【請求項13】
前記光硬化性シロキサン重合体層(B)の硬化後、25℃での貯蔵弾性率が1,000Pa以上1,000MPa以下であることを特徴とする請求項
9から請求項
12のいずれか1項に記載のウエハ加工体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄型ウエハを効果的に得ることを可能にするウエハ加工用接着材、ウエハ加工体、及び薄型ウエハの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
3次元の半導体実装は、より一層の高密度、大容量化を実現するために必須となってきている。3次元実装技術とは、1つの半導体チップを薄型化し、更にこれをシリコン貫通電極(TSV;through silicon via)によって結線しながら多層に積層していく半導体作製技術である。これを実現するためには、半導体回路を形成した基板を非回路形成面(「裏面」ともいう)研削によって薄型化し、更に裏面にTSVを含む電極形成を行う工程が必要である。従来、シリコン基板の裏面研削工程では、研削面の反対側に裏面保護テープを貼り、研削時のウエハ破損を防いでいる。しかし、このテープは有機樹脂フィルムを支持基材に用いており、柔軟性がある反面、強度や耐熱性が不十分であり、TSV形成工程や裏面での配線層形成工程を行うには適しない。
【0003】
そこで、半導体基板をシリコン、ガラス等の支持体に接着層を介して接合することによって、裏面研削、TSVや裏面電極形成の工程に十分耐えうるシステムが提案されている。この際に重要なのが、基板を支持体に接合する際の接着層である。これは基板を支持体に隙間なく接合でき、後の工程に耐えるだけの十分な耐久性が必要で、更に最後に薄型ウエハを支持体から簡便に剥離できることが必要である。このように、最後に剥離することから、本明細書では、この接着層を仮接着層(または仮接着材層)と呼ぶことにする。
【0004】
これまでに公知の仮接着層とその剥離方法としては、光吸収性物質を含む接着材に高強度の光を照射し、接着材層を分解することによって支持体から接着材層を剥離する技術(特許文献1)、及び、熱溶融性の炭化水素系化合物を接着材に用い、加熱溶融状態で接合・剥離を行う技術(特許文献2)が提案されている。前者の技術はレーザ等の高価な装置が必要であり、かつ基板1枚あたりの処理時間が長くなるなどの問題があった。また後者の技術は加熱だけで制御するため簡便である反面、200℃を超える高温での熱安定性が不十分であるため、適用範囲は狭かった。更にこれらの仮接着層では、高段差基板の均一な膜厚形成と、支持体への完全接着にも適さなかった。
【0005】
シリコーン粘着剤を仮接着材層に用いる技術が提案されているが、これは基板を支持体に加熱硬化型のシリコーン粘着剤を用いて接合し、剥離の際にはシリコーン樹脂を溶解、あるいは分解するような薬剤に浸漬して基板を支持体から分離するものである(特許文献3)。そのため剥離に非常に長時間を要し、実際の製造プロセスへの適用は困難である。また剥離後、基板上に残渣として残ったシリコーン粘着剤を洗浄するのにも長時間が必要となり、洗浄除去性という点からも課題を有していた。一方、接合工程においては、加熱硬化型のシリコーンの場合150℃程度の加熱が必要であり、特にホットプレート上で加熱を行う場合ではウエハの反りが問題となることがあった。そのため、ウエハの反りを抑えるために低温で接合させようとした場合には、硬化の完了に長時間を要するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2004-64040号公報
【文献】特開2006-328104号公報
【文献】米国特許第7541264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたもので、接合時のウエハ反りが改善され、良好な剥離性と洗浄除去性を有し、高段差基板の均一な膜厚での形成も可能で、TSV形成、ウエハ裏面配線工程に対する工程適合性が高く、更には、CVD(化学的気相成長)といったウエハ熱プロセス耐性に優れ、薄型ウエハの生産性を高めることができるウエハ加工体、ウエハ加工用仮接着材、及びこれを使用する薄型ウエハの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明では、表面に回路面を有し、裏面を加工すべきウエハを支持体に仮接着するためのウエハ加工用仮接着材であって、前記ウエハの表面に剥離可能に接着可能な熱可塑性樹脂層(A)からなる第一仮接着層と、該第一仮接着層に積層された光硬化性シロキサン重合体層(B)からなる第二仮接着層の2層構造を有する複合仮接着材層を備えたものであることを特徴とするウエハ加工用仮接着材を提供する。
【0009】
本発明のウエハ加工用仮接着材であれば、第二仮接着層に光硬化性シロキサン重合体層用いることで、従来の加熱硬化性シロキサン重合体層に比べ、非加熱で短時間の接合が可能となり、これによって接合時のウエハ反りの軽減と接合工程時間の短縮が達成し得る。また得られる仮接着材は、基材と支持体との良好な剥離性、洗浄除去性も兼ね備えている。そのうえ、高段差基板の均一な膜厚での形成も可能で、TSV形成、ウエハ裏面配線工程に対する工程適合性が高く、更には、CVDといったウエハ熱プロセス耐性に優れ、薄型ウエハの生産性を高めることができる
【0010】
また、本発明では、前記光硬化性シロキサン重合体層(B)が、
(B-1)1分子中に2個以上のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン、
(B-2)1分子中に2個以上のケイ素原子に結合した水素原子(Si-H基)を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:前記(B-1)成分中のアルケニル基に対する(B-2)成分中のSi-H基のモル比が0.3から10となる量、
(B-3)光活性型ヒドロシリル化反応触媒:前記(B-1)成分及び前記(B-2)成分の合計質量に対して金属原子量換算で1~5,000ppm
を含有する光硬化性シロキサン組成物の硬化物層であることが好ましい。
【0011】
このような光硬化性シロキサン重合体層(B)を有するウエハ加工用仮接着材であれば、CVD耐性により優れる。
【0012】
この場合、前記光硬化性シロキサン組成物が、更に、(B-4)成分としてヒドロシリル化反応制御剤を含有するものであり、かつ、前記(B-3)成分の添加量が、前記(B-1)成分、前記(B-2)成分及び前記(B-4)成分の合計質量に対して金属原子量換算で1~5,000ppmであることが好ましい。
【0013】
このようなウエハ加工用仮接着材であれば、硬化前に処理液(光硬化性シロキサン組成物)が増粘やゲル化を起こしにくくなる。
【0014】
また、上記光硬化性シロキサン組成物において、前記(B-3)成分の光活性型ヒドロシリル化反応触媒が、(η5-シクロペンタジエニル)トリ(σ-アルキル)白金(IV)錯体及びβ-ジケトナト白金(II)錯体のいずれか又は両方であることが好ましい。
【0015】
このようなウエハ加工用仮接着材であれば、(B-3)成分の光活性型ヒドロシリル化反応触媒が、UV-B~UV-AのUV光で触媒活性を示すため、ウエハへのダメージを抑えることができる。
【0016】
また、本発明のウエハ加工用仮接着材では、前記光硬化性シロキサン重合体層(B)の硬化後、25℃での熱可塑性樹脂層(A)に対する25mm幅試験片の180°ピール剥離力が2gf(0.0196N)以上50gf(0.490N)以下であることが好ましい。
【0017】
このようなピール剥離力を有する光硬化性シロキサン重合体層(B)を有するウエハ加工用仮接着材であれば、ウエハ研削時にウエハのズレが生じる恐れがなく、また剥離が容易になる。
【0018】
また、本発明のウエハ加工用仮接着材では、前記光硬化性シロキサン重合体層(B)の硬化後、25℃での貯蔵弾性率が1,000Pa以上1,000MPa以下であることが好ましい。
【0019】
このような貯蔵弾性率を有する光硬化性シロキサン重合体層(B)を備えたウエハ加工用仮接着材であれば、ウエハ研削時にウエハのズレが生じる恐れがなく、またウエハへの熱プロセス時にも安定である。
【0020】
また、本発明のウエハ加工用仮接着材では、前記熱可塑性樹脂層(A)が非シリコーン樹脂であることが好ましい。
【0021】
このようなウエハ加工用仮接着材であれば、接合時のウエハ反りの軽減、接合工程時間の短縮、基材と支持体との良好な剥離性、洗浄除去性などの特性が良好になる。
【0022】
また、本発明は、(a)表面に回路形成面及び裏面に回路非形成面を有するウエハの前記回路形成面を、上記ウエハ加工用仮接着材に用いられる前記熱可塑性樹脂層(A)と、前記光硬化性シロキサン重合体層(B)とを有する仮接着材層を介して、支持体に接合する際に、前記支持体上に前記光硬化性シロキサン重合体層(B)を形成した後、前記熱可塑性樹脂層(A)の形成された回路付きウエハと真空下で接合する工程と、
(b)前記重合体層(B)を光硬化させる工程と、
(c)前記支持体と接合した前記ウエハの回路非形成面を研削又は研磨する工程と、
(d)前記ウエハの回路非形成面に加工を施す工程と、
(e)前記加工を施したウエハを前記支持体から剥離する工程と、
を含むことを特徴とする薄型ウエハの製造方法を提供する。
【0023】
また、本発明は、(a)表面に回路形成面及び裏面に回路非形成面を有するウエハの前記回路形成面を、上記ウエハ加工用仮接着材に用いられる前記熱可塑性樹脂層(A)と、前記光硬化性シロキサン重合体層(B)とを有する仮接着材層を介して、支持体に接合する際に、前記熱可塑性樹脂層(A)を回路付きウエハ上に形成し、光照射を行った前記光硬化性シロキサン重合体層(B)を支持体上に形成する工程と、
(b)前記熱可塑性樹脂層(A)が形成された回路付きウエハと前記重合体層(B)が形成された支持体とを真空下で接合する工程と、
(c)前記支持体と接合した前記ウエハの回路非形成面を研削又は研磨する工程と、
(d)前記ウエハの回路非形成面に加工を施す工程と、
(e)前記加工を施したウエハを前記支持体から剥離する工程と、
を含むことを特徴とする薄型ウエハの製造方法も提供する。
【0024】
このような薄型ウエハの製造方法であれば、本発明における少なくとも2層構造を含む仮接着材層をウエハと支持体の接合に使用することで、この仮接着材層を使用して貫通電極構造や、バンプ接続構造を有する薄型ウエハを、容易に製造することができる。
【0025】
また、本発明は、支持体上に仮接着材層が形成され、かつ仮接着材層上に、表面に回路面を有し、裏面を加工すべきウエハが積層されてなるウエハ加工体であって、前記仮接着材層が、前記ウエハの表面に剥離可能に接着された熱可塑性樹脂層(A)からなる第一仮接着層と、該第一仮接着層に積層された光硬化性シロキサン重合体層(B)からなる第二仮接着層との2層構造を有する複合仮接着材層を備えたものであることを特徴とするウエハ加工体を提供する。
【0026】
このようなウエハ加工体であれば、非加熱で短時間の仮接着が可能なため、仮接着材硬化時のウエハ反りの問題が解決され、また接合時間の短縮も図られ、かつ剥離性や洗浄除去性にも優れるため、薄型ウエハの生産性を高めることができる。また高段差基板の均一な膜厚での形成も可能であり、TSV形成、ウエハ裏面配線工程に対する工程適合性が高く、更には、CVD等の熱プロセス耐性も良好という特長を有する。
【0027】
この場合、前記光硬化性シロキサン重合体層(B)が、
(B-1)1分子中に2個以上のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン、
(B-2)1分子中に2個以上のケイ素原子に結合した水素原子(Si-H基)を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:前記(B-1)成分中のアルケニル基に対する(B-2)成分中のSi-H基のモル比が0.3から10となる量、
(B-3)光活性型ヒドロシリル化反応触媒:前記(B-1)成分及び前記(B-2)成分の合計質量に対して金属原子量換算で1~5,000ppm
を含有する光硬化性シロキサン組成物の硬化物層であることが好ましい。
【0028】
このようなウエハ加工体であれば、CVD耐性により優れる。
【0029】
また、この場合、前記光硬化性シロキサン組成物が、更に、(B-4)成分としてヒドロシリル化反応制御剤を含有するものであり、かつ、前記(B-3)成分の添加量が、前記(B-1)成分、前記(B-2)成分及び前記(B-4)成分の合計質量に対して金属原子量換算で1~5,000ppmであることが好ましい。
【0030】
このようなウエハ加工体であれば、硬化前に処理液(光硬化性シロキサン組成物)が増粘やゲル化を起こしにくくなる。
【0031】
また、上記光硬化性シロキサン組成物において、前記(B-3)成分の光活性型ヒドロシリル化反応触媒が、(η5-シクロペンタジエニル)トリ(σ-アルキル)白金(IV)錯体及びβ-ジケトナト白金(II)錯体のいずれか又は両方であることが好ましい。
【0032】
このようなウエハ加工体であれば、(B-3)成分の光活性型ヒドロシリル化反応触媒が、UV-B~UV-AのUV光で触媒活性を示すため、ウエハへのダメージを抑えられる。
【0033】
また、本発明では、前記光硬化性シロキサン重合体層(B)の硬化後、25℃での熱可塑性樹脂層(A)に対する25mm幅試験片の180°ピール剥離力が2gf(0.0196N)以上50gf(0.490N)以下であることが好ましい。
【0034】
このようなピール剥離力を有する光硬化性シロキサン重合体層(B)を有するウエハ加工体であれば、ウエハ研削時にウエハのズレが生じる恐れがなく、また剥離が容易になる。
【0035】
また、本発明では、前記光硬化性シロキサン重合体層(B)の硬化後、25℃での貯蔵弾性率が1,000Pa以上1,000MPa以下であることが好ましい。
【0036】
このような貯蔵弾性率を有する光硬化性シロキサン重合体層(B)を備えたウエハ加工体であれば、ウエハ研削時にウエハのズレが生じる恐れがなく、またウエハへの熱プロセス時にも安定である。
【発明の効果】
【0037】
本発明における仮接着材層は、少なくとも2層構造を有し、特に光硬化性シロキサン変性樹脂(重合体層(B))を基板接合用仮接着層として使用することで、非加熱で短時間の基板接合が可能となり、その結果接合時のウエハの反りが抑えられ、かつ接合時間の短縮も可能となる。また、接合後においても、樹脂の熱分解が生じないことはもとより、特に200℃以上の高温時での樹脂の流動も生じず、耐熱性に優れるためCVD耐性も良好で幅広い半導体成膜プロセスに適用でき、段差を有するウエハに対しても、膜厚均一性の高い接着材層を形成でき、この膜厚均一性のため容易に50μm以下の均一な薄型ウエハを得ることが可能となり、更には、薄型ウエハ作製後、このウエハを支持体より、例えば室温で、容易に剥離することができるため、割れ易い薄型ウエハを容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】本発明のウエハ加工体の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
上記のように、接合工程を非加熱かつ短時間で行うことができ、それに伴って接合時のウエハ反りの低減や接合時間短縮も図られ、また剥離性や剥離後の洗浄除去性も良好で、高段差基板の均一な膜厚での形成も可能であり、TSV形成、ウエハ裏面配線工程に対する工程適合性が高く、更には、CVDといったウエハ熱プロセス耐性に優れるウエハ加工用仮接着材が求められている。
【0040】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、
(A)の熱可塑性樹脂を含有する熱可塑性仮接着層と、
(B)の光硬化性シロキサン重合体を含有する光硬化性仮接着層
との少なくとも2層系を有する複合仮接着材層を、ウエハと支持体の接合にウエハ側から(A)、(B)の順で形成した構造として使用することで上記課題が解決可能であり、貫通電極構造や、バンプ接続構造を有する薄型ウエハを、簡単に製造することができるウエハ加工用仮接着材、及びそれを用いる薄型ウエハの製造方法を見出した。
【0041】
即ち、本発明は、表面に回路面を有し、裏面を加工すべきウエハを支持体に仮接着するためのウエハ加工用仮接着材であって、前記ウエハの表面に剥離可能に接着可能な熱可塑性樹脂層(A)からなる第一仮接着層と、該第一仮接着層に積層された光硬化性シロキサン重合体層(B)からなる第二仮接着層の少なくとも2層構造を有する複合仮接着材層を備えたものであることを特徴とするウエハ加工用仮接着材である。
【0042】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0043】
[ウエハ加工用仮接着材]
本発明のウエハ加工用仮接着材は、表面に回路面を有し、裏面を加工すべきウエハを支持体に仮接着する。そして、前記ウエハの表面に剥離可能に接着可能な熱可塑性樹脂層(A)からなる第一仮接着層と、該第一仮接着層に積層された光硬化性シロキサン重合体層(B)からなる第二仮接着層の少なくとも2層構造を有する複合仮接着材層を備えている。
【0044】
以下、図を参照しながら上記ウエハ加工用仮接着材について説明する。
図1は、本発明のウエハ加工体の一例を示す断面図である。
図1に示すように、本発明のウエハ加工体は、表面に回路面を有し、裏面を加工すべきウエハ(デバイスウエハ)1と、ウエハ1の加工時にウエハ1を支持する支持体3と、これらウエハ1と支持体3との間に介在する仮接着材層2を備え、この仮接着材層2が、熱可塑性樹脂層(A)(第一仮接着層)と、光硬化性シロキサン重合体層(B)(第二仮接着層)の2層構造からなり、第一仮接着層がウエハ1の表面に剥離可能に接着され、第二仮接着層が支持体3に剥離可能に接着されているものである。
【0045】
このように、本発明のウエハ加工用仮接着材は、上記(A)および(B)の積層体からなるものである。
【0046】
本発明のウエハ加工用仮接着材は、非加熱で短時間の硬化が可能なため、接合時のウエハ反りが改善され、また接合工程時間の短縮が図られ、かつ良好な剥離性と洗浄除去性を有し、この仮接着材により、高段差基板の均一な膜厚での形成も可能で、TSV形成、ウエハ裏面配線工程に対する工程適合性が高く、更には、CVDといったウエハ熱プロセス耐性に優れ、剥離も容易で、薄型ウエハの生産性を高めることができるウエハ加工体、及び上記ウエハ加工用仮接着材を使用する薄型ウエハの製造方法を提供することができる。
【0047】
[仮接着材層]
-第一仮接着層/熱可塑性樹脂層(A)(熱可塑性重合体層)-
第一仮接着層は、熱可塑性樹脂(A)から構成される。段差を有するシリコンウエハなどへの適用性から、良好なスピンコート性を有する熱可塑性樹脂が第一仮接着層を形成する材料として好適に使用され、特にガラス転移温度-80~120℃程度の熱可塑性樹脂が好ましく、更に非シリコーン系熱可塑性樹脂が好ましく、例えばオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、スチレン・ブタジエン系熱可塑性エラストマー、スチレン・ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーなどが挙げられ、特に耐熱性に優れた水素添加ポリスチレン系エラストマーが好適である。具体的にはタフテック(旭化成ケミカルズ)、エスポレックスSBシリーズ(住友化学)、ラバロン(三菱化学)、セプトン(クラレ)、DYNARON(JSR)などが挙げられる。またゼオネックス(日本ゼオン)に代表されるシクロオレフィンポリマーおよびTOPAS(日本ポリプラスチック)に代表される環状オレフィンコポリマーが挙げられる。
【0048】
第一仮接着層を、非シリコーン系熱可塑性樹脂から構成すると、接合時のウエハ反りの軽減、接合工程時間の短縮、基材と支持体との良好な剥離性、洗浄除去性などの特性が良好になる。
【0049】
上記のように、熱可塑性樹脂層(A)が、熱可塑性エラストマーであることが好ましい。
【0050】
このようなものであれば、薄型ウエハ作製後、このウエハを支持体から、容易に剥離することができるため、割れ易い薄型ウエハをより容易に扱うことができる。
【0051】
この熱可塑性樹脂層は、上記熱可塑性樹脂を溶剤に溶解して、スピンコートやスプレーコート等の手法で、シリコンウエハ等の半導体基板等の上に形成される。溶剤としては、炭化水素系溶剤、好ましくは、ノナン、p-メンタン、ピネン、イソオクタン等が挙げられるが、そのコーティング性より、ノナン、p-メンタン、イソオクタンがより好ましい。また希釈に使用する溶剤の量としては、作業性や狙いとする膜厚によって適宜調整すればよいが、上記熱可塑性樹脂100質量部に対し100~2,000質量部配合することが好ましい。形成する膜厚に制約はないが、その基板上の段差に応じて樹脂皮膜を形成することが望ましく、好適には、0.5μmから50μm、更に好ましくは0.5~10μmの膜厚が形成される。また、この熱可塑性樹脂には、その耐熱性向上の目的で、酸化防止剤や、コーティング性向上のため、界面活性剤を添加することができる。酸化防止剤の具体例としては、公知の酸化防止剤を使用することができるが、ジ-t-ブチルフェノールなどが好適に使用される。界面活性剤の例としては、フッ素シリコーン系界面活性剤等が使用でき、例えばX-70-1102(信越化学工業株式会社製)等が好適に使用される。
【0052】
-第二仮接着層/光硬化性シロキサン重合体層(B)(光硬化性シリコーン重合体層)-
本発明のウエハ加工体及びウエハ加工用仮接着材の構成要素である光硬化性シロキサン重合体層(B)は、光硬化性のシロキサン重合体を含むものであれば、特に限定されない。例えば、下記(B-1)~(B-3)成分を含み、必要に応じて後述の(B-4)成分を含有する光硬化性シロキサン組成物の硬化物層であることが好ましい。
(B-1)1分子中に2個以上のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン、
(B-2)1分子中に2個以上のケイ素原子に結合した水素原子(Si-H基)を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:(B-1)成分中のアルケニル基に対する(B-2)成分中のSi-H基のモル比が0.3から10となる量、
(B-3)光活性型ヒドロシリル化反応触媒。
【0053】
この場合、光硬化性シロキサン組成物が、更に、(B-4)成分として反応制御剤を含有するものであることが好ましい。その含有量は、(B-1)および(B-2)成分の合計100質量部に対して0.1から10質量部が好ましい。
【0054】
以下、上記光硬化性シロキサン組成物を構成する各成分について説明する。
[(B-1)成分]
(B-1)成分は、1分子中に2個以上のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンである。(B-1)成分は、好ましくは、1分子中に2個以上のアルケニル基を含有する直鎖状又は分岐状のジオルガノポリシロキサンである。特に好ましくは、1分子中に0.3~10mol%、特に0.6mol%(アルケニル基モル数/Siモル数)~9mol%のアルケニル基を含有するジオルガノポリシロキサンである。上記オルガノポリシロキサンは、2種以上の混合物でもよい。
【0055】
このようなジオルガノポリシロキサンとして、具体的には下記式(1)及び/又は(2)で示されるものを挙げることができる。
R1
(3-a)XaSiO-(R1XSiO)m-(R1
2SiO)n-SiR1
(3-a)Xa…(1)
R1
2(HO)SiO-(R1XSiO)m+2-(R1
2SiO)n-SiR1
2(OH)…(2)
(式中、R1はそれぞれ独立して脂肪族不飽和結合を有さない1価炭化水素基、Xはそれぞれ独立してアルケニル基含有1価有機基、aは0~3の整数である。また、式(1)において、2a+mは1分子中にアルケニル基含有量が0.3~10mol%となる数である。式(2)において、m+2は1分子中にアルケニル基含有量が0.3~10mol%となる数である。mは0または10以下の正数であり、nは1~1000の正数である。)
【0056】
上記式中、R1としては、炭素原子数1~10の1価炭化水素基が好ましく、例示すると、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などのアルキル基;シクロヘキシル基などのシクロアルキル基;フェニル基、トリル基などのアリール基などであり、特にメチル基等のアルキル基又はフェニル基が好ましい。R1は、一般式(1)または(2)中、独立してそれぞれ同じ置換基でも異なる置換基でも構わない。
【0057】
Xのアルケニル基含有1価有機基としては、炭素原子数2~10の有機基が好ましく、ビニル基、アリル基、ヘキセニル基、オクテニル基等のアルケニル基;アクリロイルプロピル基、アクリロイルメチル基、メタクリロイルプロピル基等の(メタ)アクリロイルアルキル基;アクリロキシプロピル基、アクリロキシメチル基、メタクリロキシプロピル基、メタクリロキシメチル基等の(メタ)アクリロキシアルキル基;シクロヘキセニルエチル基、ビニルオキシプロピル基などのアルケニル基含有1価炭化水素基が挙げられ、特に、工業的にはビニル基が好ましい。
【0058】
上記一般式(1)中、aは0~3の整数であるが、aが1~3であれば、分子鎖末端がアルケニル基で封鎖されるため、反応性のよいこの分子鎖末端アルケニル基により、短時間で反応を完結することができ好ましい。さらには、コスト面において、a=1が工業的に好ましい。このアルケニル基含有ジオルガノポリシロキサンの性状はオイル状又は生ゴム状であることが好ましい。このアルケニル基含有ジオルガノポリシロキサンは直鎖状であっても分岐状であってもよい。
【0059】
[(B-2)成分]
(B-2)成分は架橋剤であり、1分子中に2個以上のケイ素原子に結合した水素原子(Si-H基)を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンである。(B-2)成分は、1分子中にケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)を少なくとも2個、好ましくは3個以上有するものであり、直鎖状、分岐状、又は環状のものを使用できる。
【0060】
(B-2)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの25℃における粘度は、1~5,000mPa・sであることが好ましく、5~500mPa・sであるのがさらに好ましい。このオルガノハイドロジェンポリシロキサンは2種以上の混合物でもよい。上記粘度は、JIS K 7117-1:1999に記載の方法で測定することができる。
【0061】
(B-2)成分は、(B-1)成分中のアルケニル基に対する(B-2)成分中のSi-H基のモル比(SiH基/アルケニル基)が0.3から10、特に1.0~8.0の範囲となるように配合することが好ましい。このSiH基とアルケニル基とのモル比が0.3以上であれば、架橋密度が低くなることもなく、仮接着材層が硬化しないといった問題も起こらない。10以下であれば、架橋密度が高くなりすぎることもなく、十分な粘着力及びタックが得られる。また、上記のモル比が10以下であれば、処理液の使用可能時間を長くすることができる。
【0062】
[(B-3)成分]
(B-3)成分は光活性型ヒドロシリル化反応触媒である。この光活性型ヒドロシリル化反応触媒は、光、特に波長300~400nmの紫外線の照射によって活性化され、(B-1)成分中のアルケニル基と、(B-2)成分中のSi-H基との付加反応を促進する触媒である。この促進効果には温度依存性があり、高い温度ほど促進効果は高い。よって好ましくは、光照射後は0~200℃、より好ましくは10~100℃の環境温度下で使用することが、適切な反応時間内に反応を完結させる点で好ましい。
【0063】
光活性型ヒドロシリル化反応触媒は、主に白金族系金属触媒あるいは鉄族系金属触媒がこれに該当し、白金族系金属触媒としては白金系、パラジウム系、ロジウム系の金属錯体、鉄族系金属触媒としてはニッケル系、鉄系、コバルト系の鉄族錯体がある。中でも白金系金属錯体は、比較的入手し易くかつ良好な触媒活性を示すため好ましく、よく用いられる。
【0064】
また配位子としてはUV-B~UV-Aの中~長波長のUV光で触媒活性を示すものが、ウエハへのダメージを抑える点で好ましい。そのような配位子としては環状ジエン配位子、β-ジケトナト配位子などが挙げられる。
【0065】
以上より、光活性型ヒドロシリル化反応触媒の好ましい例として、環状ジエン配位子型としては、例えば、(η5-シクロペンタジエニル)トリ(σ-アルキル)白金(IV)錯体、特に具体的には(メチルシクロペンタジエニル)トリメチル白金(IV)、(シクロペンタジエニル)トリメチル白金(IV)、(1,2,3,4,5-ペンタメチルシクロペンタジエニル)トリメチル白金(IV)、(シクロペンタジエニル)ジメチルエチル白金(IV)、(シクロペンタジエニル)ジメチルアセチル白金(IV)、(トリメチルシリルシクロペンタジエニル)トリメチル白金(IV)、(メトキシカルボニルシクロペンタジエニル)トリメチル白金(IV)、(ジメチルフェニルシリルシクロペンタジエニル)トリメチル白金(IV)などが挙げられ、またβ-ジケトナト配位子型としては、β-ジケトナト白金(II)若しくは白金(IV)錯体、特に具体的にはトリメチル(アセチルアセトナト)白金(IV)、トリメチル(3,5-ヘプタンジオネート)白金(IV)、トリメチル(メチルアセトアセテート)白金(IV)、ビス(2,4-ペンタンジオナト)白金(II)、ビス(2,4-へキサンジオナト)白金(II)、ビス(2,4-へプタンジオナト)白金(II)、ビス(3,5-ヘプタンジオナト)白金(II)、ビス(1-フェニル-1,3-ブタンジオナト)白金(II)、ビス(1,3-ジフェニル-1,3-プロパンジオナト)白金(II)、ビス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)白金(II)などが挙げられる。
【0066】
これらの触媒の使用にあたっては、それが固体触媒であるときには固体状で使用することも可能であるが、より均一な硬化物を得るためには適切な溶剤に溶解したものを(B-1)成分のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンに相溶させて使用することが好ましい。
溶媒としては、イソノナン、トルエン、酢酸2-(2-ブトキシエトキシ)エチル等があげられる。
【0067】
(B-3)成分の添加量は有効量であればよいが、通常(B-1)、(B-2)の合計(下記に示す(B-4)成分を含有する場合には、(B-1)、(B-2)及び(B-4)の合計)質量に対し、白金分(金属原子量換算)として1~5,000ppmであり、5~2,000ppmであることが好ましい。1ppm以上であれば組成物の硬化性が低下することもなく、架橋密度が低くなることも、保持力が低下することもない。0.5%以下であれば、組成物の保存安定性や可使時間が極端に短くなる恐れがない。
【0068】
[(B-4)成分]
(B-4)成分は反応制御剤であり、組成物を調合ないし基材に塗工する際に、硬化前に処理液(光硬化性シロキサン組成物)が増粘やゲル化を起こさないようにするために必要に応じて任意に添加するものである。
【0069】
具体例としては、3-メチル-1-ブチン-3-オール、3-メチル-1-ペンチン-3-オール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、1-エチニルシクロヘキサノール、3-メチル-3-トリメチルシロキシ-1-ブチン、3-メチル-3-トリメチルシロキシ-1-ペンチン、3,5-ジメチル-3-トリメチルシロキシ-1-ヘキシン、1-エチニル-1-トリメチルシロキシシクロヘキサン、ビス(2,2-ジメチル-3-ブチノキシ)ジメチルシラン、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ジビニルジシロキサンなどが挙げられ、好ましいのは1-エチニルシクロヘキサノール、及び3-メチル-1-ブチン-3-オールである。
【0070】
組成物中に(B-4)成分を含有する場合、その配合量はその化学構造によって制御能力が異なるため、添加量についてはそれぞれ最適な量に調整すべきであるが、一般的に制御剤の添加量が少なすぎると室温での長期保存安定性が得られず、多すぎると硬化性が鈍くなり十分な硬化性が得られなくなる可能性がある。
【0071】
[その他の成分]
光硬化性シロキサン組成物には、更に以下の成分を、必要に応じて添加することができる。
(ポリオルガノシロキサン)
光硬化性シロキサン組成物にはR2
3SiO0.5単位(式中、R2は独立に炭素原子数1~10の非置換もしくは置換の一価の炭化水素基)及びSiO2単位を含有し、R2
3SiO0.5単位/SiO2単位のモル比が0.3~1.8であるポリオルガノシロキサンを添加しても良い。添加量としては光硬化性シロキサン重合体層(B)中の(B-1)成分の0から30質量%が好ましい。
【0072】
(溶媒)
光硬化性シロキサン組成物は、該組成物の低粘度化による作業性向上や混合性の向上、重合体層(B)の膜厚調整等の理由から、可溶な溶媒で溶液化し、貼合前のプリベイク工程にて溶剤除去を行った後、貼合するというプロセスを用いることができる。そこで用いる溶媒は、組成物が可溶であり、かつプリベイク工程で加熱除去可能であれば特に限定は無いが、例えばペンタン、へキサン、シクロヘキサン、イソオクタン、ノナン、デカン、p-メンタン、ピネン、イソドデカン、リモネンなどの炭化水素系溶剤が好適に使用される。
【0073】
溶液化の操作方法としては、光硬化性シロキサン組成物を調製した後、最後に溶媒を添加し所望の粘度に調整しても良いし、高粘度の(B-1)および/または(B-2)を予め溶媒希釈し、作業性や混合性を改善した上で残りの成分を混合し、光硬化性シロキサン重合体層(B)組成物として調製しても良い。また、溶液化する際の混合方法としては振とう混合機やマグネチックスターラー、各種ミキサーなど、組成物粘度と作業性から適宜混合方法を選択して実施すれば良い。
【0074】
溶媒の配合量は、組成物の粘度や作業性、光硬化性シロキサン重合体層(B)の膜厚調整等から適宜設定すればよいが、例えば光硬化性シロキサン重合体層(B)組成物100質量部に対して10~900質量部、好ましくは20~400質量部である。
【0075】
[光硬化性シロキサン重合体層(B)の形成方法等]
光硬化性シロキサン重合体層(B)は、光硬化性シロキサン組成物またはその溶液をスピンコート、ロールコータなどの方法によって支持体上に形成して使用することができる。このうち、スピンコートなどの方法によって、光硬化性シロキサン重合体層(B)を、支持体上に形成する場合には、重合体層(B)を溶液としてコートすることが好ましい。
また、上記溶液には、公知の酸化防止剤を耐熱性向上のために添加することができる。
【0076】
また、光硬化性シロキサン重合体層(B)は、膜厚が0.1~30μm、好ましくは1.0~15μmの間で形成されて使用されるのが好ましい。膜厚が0.1μm以上であれば、支持体上に塗布する場合に、塗布しきれない部分を生じることなく全体に塗布することができる。一方、膜厚が30μm以下であれば、薄型ウエハを形成する場合の研削工程に耐えることができる。なお、この光硬化性シロキサン重合体層(B)には、耐熱性を更に高めるため、シリカ等のフィラーを必要に応じて添加してもよい。
【0077】
また、光硬化性シロキサン重合体層(B)は、硬化後における25℃での熱可塑性樹脂層(A)に対する25mm幅の試験片(例えば、ポリイミド試験片)の180°ピール剥離力が、通常2gf(0.0196N)以上かつ50gf(0.490N)以下であり、好ましくは3gf(0.0294N)以上30gf(0.294N)以下であり、さらに好ましくは5gf(0.0490N)以上20gf(0.196N)以下である。2gf以上であればウエハ研削時にウエハのズレが生じる恐れがなく、50gf以下であればウエハの剥離が容易となるため好ましい。
なお、180°ピール剥離力は、試験対象層(例えばウエハ上の硬化物層)上に150mm長×25mm幅のポリイミドテープを5本貼り付け、テープが張られていない部分の不要な層を除去し、例えば島津製作所社のAUTOGRAPH(AG-1)を用いて25℃、300mm/分の速度でテープの一端から180°剥離で120mm剥がし、そのときにかかる力の平均(120mmストローク×5回)を、試験対象層の180°ピール剥離力とした。
【0078】
また、光硬化性シロキサン重合体層(B)は、硬化後における25℃での貯蔵弾性率が1,000Pa以上1000MPa以下、好ましくは10,000Pa以上500MPa以下、更に好ましくは100kPa~300MPaである。貯蔵弾性率が1,000Pa以上だと形成される膜の強度は十分であり、ウエハ研削時にウエハのズレやそれに伴うウエハ割れが生じるおそれがなく、1000MPa以下だとCVD等のウエハ熱プロセス中の変形応力を緩和することができるため、ウエハ割れを生じるおそれがない。
なお、貯蔵弾性率は、ずり弾性が測定可能な粘弾性測定装置(例えば、TAインスツルメント社製アレスG2)を用いて測定することができる。測定は、試験対象層を含む基板を、粘弾性測定装置を使用して試験対象層に所定の荷重(例えば、50gf)がかかるようプレートで挟みながら、25℃における弾性率測定を行い、得られた貯蔵弾性率の値を試験対象層の膜弾性率とした。
【0079】
[薄型ウエハの製造方法]
本発明の薄型ウエハの製造方法は、半導体回路等を有するウエハと支持体との接着層として、熱可塑性樹脂層(A)と光硬化性シロキサン重合体層(B)の2層を含む複合仮接着材層を用いることを特徴とするものであり、ここに2つの態様を示す。いずれの態様においても本発明の製造方法により得られる薄型ウエハの厚さは、典型的には5~300μm、より典型的には10~100μmである。
【0080】
本発明の薄型ウエハの製造方法は第一の態様として以下の(a1)~(e)の工程を有する。また、必要に応じて、(f)~(i)の工程を有する。
[工程(a1)]
工程(a1)は、表面に回路形成面及び裏面に回路非形成面を有するウエハの回路形成面を、上記本発明のウエハ加工用仮接着材に用いられる熱可塑性樹脂層(A)と、光硬化性シロキサン重合体層(B)とを有する仮接着材層を介して、支持体に接合する際に、支持体上に光硬化性シロキサン重合体層(B)を形成した後、この重合体層(B)の形成された支持体と、熱可塑性樹脂層(A)の形成された回路付きウエハとを真空下で貼り合わせる工程である。
【0081】
回路形成面及び回路非形成面を有するウエハは、一方の面が回路形成面であり、他方の面が回路非形成面であるウエハである。本発明が適用できるウエハは、通常、半導体ウエハである。該半導体ウエハの例としては、シリコンウエハのみならず、ゲルマニウムウエハ、ガリウム-ヒ素ウエハ、ガリウム-リンウエハ、ガリウム-ヒ素-アルミニウムウエハ等が挙げられる。該ウエハの厚さは、特に制限はないが、典型的には600~800μm、より典型的には625~775μmである。
【0082】
本発明の第一の態様において、光硬化性シロキサン重合体層(B)への光照射は支持体を通して行うため、支持体としてはガラス板、石英板、アクリル板、ポリカーボネート板、ポリエチレンテレフタレート板等の光透過性のある基板が使用可能である。中でもガラス板が紫外線の光透過性があり、かつ耐熱性に優れるため好ましい。
【0083】
仮接着層(A)および(B)は、それぞれフィルムで、ウエハや支持体に形成することもでき、あるいは、それぞれの層を与える組成物またはその溶液をスピンコート、ロールコータなどの方法によりウエハや支持体に形成することもできる。溶液として使用する場合、スピンコート後、その溶剤の揮発条件に応じ、20~200℃、好ましくは30~150℃の温度で、予めプリベイクを行ったのち、使用に供される。
【0084】
仮接着層(A)層と(B)層が形成されたウエハ及び支持体は、(A)および(B)層を介して、接合された基板として形成される。このとき、好ましくは0~200℃、より好ましくは10~100℃の温度領域で、この温度にて減圧下、この基板を均一に圧着することで、ウエハが支持体と接合したウエハ加工体(積層体基板)が形成される。
【0085】
ウエハ貼り合わせ装置としては、市販のウエハ接合装置、例えばEVG社のEVG520IS、850TB、SUSS社のXBS300等が挙げられる。
【0086】
[工程(b1)]
工程(b1)は、光硬化性シロキサン重合体層(B)を光硬化させる工程である。上記ウエハ加工体(積層体基板)が形成された後、光透過性のある支持体側から光照射を行い重合体層(B)を光硬化させる。その際の活性光線種は特に限定はされないが、紫外線が好ましく、さらに波長300-400nmの紫外線であることが好ましい。紫外線照射量(照度)は、積算光量として100mJ/cm2~100,000mJ/cm2、好ましくは500mJ/cm2~10,000mJ/cm2、より好ましくは1,000~5,000mJ/cm2であることが良好な硬化性を得る上で望ましい。紫外線照射量(照度)が上記範囲以上であれば、重合体層(B)中の光活性型ヒドロシリル化反応触媒を活性化するのに十分なエネルギーが得られ、十分な硬化物を得ることができる。一方、紫外線照射量(照度)が上記範囲以下であれば、組成物に十分なエネルギーが照射され、重合体層中の成分の分解が起こったり、触媒の一部が失活したりすることなく、十分な硬化物を得ることができる。
【0087】
紫外線照射は複数の発光スペクトルを有する光であっても、単一の発光スペクトルを有する光であってもよい。また、単一の発光スペクトルは300nmから400nmの領域にブロードなスペクトルを有するものであってもよい。単一の発光スペクトルを有する光は、300nmから400nm、好ましくは350nmから380nmの範囲にピーク(即ち、最大ピーク波長)を有する光である。このような光を照射する光源としては、紫外線発光ダイオード(紫外線LED)や、紫外線発光半導体レーザー等の紫外線発光半導体素子光源が挙げられる。
【0088】
複数の発光スペクトルを有する光を照射する光源としては、メタルハライドランプ、キセノンランプ、カーボンアーク灯、ケミカルランプ、ナトリウムランプ、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ等のランプ等、窒素等の気体レーザー、有機色素溶液の液体レーザー、無機単結晶に希土類イオンを含有させた固体レーザー等が挙げられる。
【0089】
前記光が発光スペクトルにおいて300nmより短い波長領域にピークを有する場合、あるいは、300nmより短い波長領域に前記発光スペクトルにおける最大ピーク波長の放射照度の5%より大きい放射照度を有する波長が存在する場合(例えば、発光スペクトルが広域波長領域に渡ってブロードである場合)、かつ支持体に石英ウエハ等の300nmより短い波長に対しても光透過性を有する基板を用いる場合、光学フィルターにより300nmより短い波長領域にある波長の光を除去することが、十分な硬化物を得る上で好ましい。これにより、300nmより短い波長領域にある各波長の放射照度を最大ピーク波長の放射照度の5%以下、好ましくは1%以下、より好ましくは0.1%以下、さらに好ましくは0%にする。尚、発光スペクトルにおいて300nmから400nmの波長領域に複数のピークが存在する場合には、その中で最大の吸光度を示すピーク波長を最大ピーク波長とする。光学フィルターは300nmより短い波長をカットするものであれば特に制限されず公知の物を使用すればよい。例えば365nmバンドパスフィルター等を使用することができる。なお、紫外線の照度、スペクトル分布は分光放射照度計、例えばUSR-45D(ウシオ電機)にて測定することができる。
【0090】
光照射装置としては、特に限定はされないが、例えばスポット式照射装置、面式照射装置、ライン式照射装置、コンベア式照射装置等の照射装置が使用できる。
【0091】
本発明の光硬化性シロキサン重合体層(B)を硬化させる際、光照射時間は照度にもよるため一概に規定はできないが、例えば1~300秒、好ましくは10~200秒、より好ましくは20~150秒となるように照度調整を行えば、照射時間も適度に短く、作業工程上で特に問題になることは無い。また、光照射を行った光硬化性シロキサン重合体層(B)は、照射の1~120分後、特には5~60分後にはゲル化する。なお、本発明においてゲル化とは光硬化性シロキサン重合体層(B)の硬化反応が一部進行し組成物が流動性を失った状態のことを意味する。
【0092】
また、光照射を行ったウエハ加工体(積層体基板)を40~200℃、好ましくは40~100℃の温度領域で追加の熱処理工程を設けても良い。これによって光照射後の光硬化性シロキサン重合体層の硬化を促進することができ、より短時間で硬化反応を完結させることができる。追加熱処理の時間は、温度によっても異なるため適宜設定すれば良いが、好ましくは10秒~60分、より好ましくは1分~30分である。高い温度にすれば速く硬化が完了するため工程の短縮に繋がるが、高すぎるとウエハ反りが発生する可能性がある。
【0093】
[工程(c)]
工程(c)は、支持体と接合したウエハの回路非形成面を研削又は研磨する工程、即ち、工程(a1)と(b1)を経て貼り合わせて得られたウエハ加工体のウエハ裏面側を研削して、該ウエハの厚みを薄くしていく工程である。ウエハ裏面の研削加工の方式には特に制限はなく、公知の研削方式が採用される。研削は、ウエハと砥石(ダイヤモンド等)に水をかけて冷却しながら行うことが好ましい。ウエハ裏面を研削加工する装置としては、例えば(株)ディスコ製DAG-810(商品名)等が挙げられる。また、ウエハ裏面側をCMP研磨してもよい。
【0094】
[工程(d)]
工程(d)は、回路非形成面を研削したウエハ加工体、即ち、裏面研削によって薄型化されたウエハ加工体の回路非形成面に加工を施す工程である。この工程にはウエハレベルで用いられる様々なプロセスが含まれる。例としては、電極形成、金属配線形成、保護膜形成等が挙げられる。より具体的には、電極等の形成のための金属スパッタリング、金属スパッタリング層をエッチングするウェットエッチング、金属配線形成のマスクとするためのレジストの塗布、露光、及び現像によるパターンの形成、レジストの剥離、ドライエッチング、金属めっきの形成、TSV形成のためのシリコンエッチング、シリコン表面の酸化膜形成など、従来公知のプロセスが挙げられる。
【0095】
[工程(e)]
工程(e)は、工程(d)で加工を施したウエハを支持体から剥離する工程、即ち、薄型化したウエハに様々な加工を施した後、ダイシングする前にウエハを支持体から剥離する工程である。この剥離工程は、ウエハ加工体のウエハ又は支持体の一方を水平に固定しておき、必要によっては100℃程度に加温し、他方を水平方向から一定の角度を付けてピールする方法、事前にウエハ加工体を溶剤に浸漬させて仮接着材層を膨潤させた後、上記同様ピール剥離に処する方法、研削されたウエハの研削面に保護フィルムを貼り、ウエハと保護フィルムをピールする方法、ウエハ加工体のウエハ又は支持体の一方を水平に固定し、100℃程度に加温し、熱可塑性樹脂層(A)の塑性を利用して他方をスライドさせる方法等が挙げられる。
【0096】
本発明には、これらの剥離方法のいずれにも適用可能であるし、もちろん上記の方法には限定されない。
【0097】
また、上記(e)加工を施したウエハを支持体から剥離する工程は、特に以下の工程を含むことが、加工を施したウエハから支持体の剥離を容易にする、剥離時のウエハへのダメージを減らすことができる、剥離後ダイシング工程に容易に進むことができる等の理由から好ましい。
(f)加工を施したウエハのウエハ面にダイシングテープを接着する工程
(g)ダイシングテープ面を吸着面に真空吸着する工程
(h)吸着面の温度が10℃から100℃の温度範囲で、支持体を、加工を施したウエハからピールオフにて剥離する工程
【0098】
また、上記(e)加工を施したウエハを支持体から剥離する工程後に、
(i)剥離したウエハの回路形成面に残存する仮接着材層を除去する工程
を行うことが好ましい。工程(e)により支持体より剥離されたウエハの回路形成面には、仮接着層(A)が一部残存している場合があり、該仮接着層(A)の除去は、例えば、ウエハを洗浄することにより行うことができる。
【0099】
この工程(i)では、仮接着材層中の(A)層である熱可塑性樹脂層を溶解するような洗浄液であればすべて使用可能であり、具体的には、ペンタン、へキサン、シクロヘキサン、デカン、イソノナン、p-メンタン、ピネン、イソドデカン、リモネンなどが挙げられる。これらの溶剤は、1種単独でも2種以上組み合わせて用いてもよい。また、除去しにくい場合は、上記溶剤に、塩基類、酸類を添加してもよい。塩基類の例としては、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、アンモニア等のアミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等のアンモニウム塩類が使用可能である。酸類としては、酢酸、シュウ酸、ベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸などの有機酸が使用可能である。添加量は、洗浄液中濃度で、0.01~10質量%、好ましくは0.1~5質量%である。また、残存物の除去性を向上させるため、既存の界面活性剤を添加してもよい。洗浄方法としては、上記液を用いてパドルでの洗浄を行う方法、スプレー噴霧での洗浄方法、洗浄液槽に浸漬する方法が可能である。温度は10~80℃、好ましくは15~65℃が好適であり、必要があれば、これらの溶解液で(A)層を溶解したのち、最終的に水洗又はアルコールによるリンスを行い、乾燥処理させて、薄型ウエハを得ることも可能である。
【0100】
本発明の薄型ウエハの製造方法の第二の態様として、以下(a2)、(b2)の工程の工程を示す。(b2)以下の工程、つまり(c)~(e)、好ましくは(c)~(h)または(c)~(i)の工程に関しては上述の第一の態様と同様である。
【0101】
[工程(a2)]
工程(a2)は、熱可塑性樹脂層(A)を回路付きウエハ上に形成し、光照射を行った光硬化性シロキサン重合体層(B)を支持体上に形成する工程である。
【0102】
ウエハと支持体を接合した後に光照射を行う第一の態様とは異なり、接合前に光硬化性シロキサン重合体層(B)組成物に光照射を行うことで支持体越しの光照射工程が不要となり、その結果支持体には光透過性が不要となる。よってこの態様によれば、上記支持体に追加してシリコン、アルミニウム、SUS、銅、ゲルマニウム、ガリウム-ヒ素、ガリウム-リン、ガリウム-ヒ素-アルミニウム等の光を透過しない基板も支持体として適用可能である。
【0103】
接合前に光硬化性シロキサン重合体層(B)組成物に光照射を行う方法については、組成物に光照射を行いながら支持体上に塗布する方法、組成物全体に光照射を行った後、支持体上に塗布する方法、支持体上に組成物を塗布した後に光照射を行う方法などが例示できるが、特に限定は無く、作業性を鑑みて適宜選択し行えばよい。また光照射における活性光線種、紫外線照射量(照度)、光源、発光スペクトル、光照射装置、光照射時間については、第一の態様の[工程(b1)]に挙げた方法を用いることができる。
【0104】
第一及び第二仮接着層の形成方法は第一の態様と同様に行うことができ、それぞれフィルム、あるいは対応する組成物またはその溶液をスピンコート、ロールコータなどの方法によりウエハや支持体に形成することができる。溶液として使用する場合、スピンコート後、その溶剤の揮発条件に応じ、20~200℃、好ましくは30~150℃の温度で、予めプリベイクを行ったのち、使用に供される。
【0105】
[工程(b2)]
工程(b2)は、工程(a2)で作製された熱可塑性樹脂層(A)が形成された回路付きウエハと光硬化性シロキサン重合体層(B)が形成された支持体とを真空下で接合する工程である。このとき、好ましくは0~200℃、より好ましくは20~100℃の温度領域で、この温度にて減圧(真空)下、この基板を均一に圧着することで、ウエハが支持体と接合したウエハ加工体(積層体基板)が形成される。
また、ウエハ貼り合わせ装置としては第一の態様と同様のものが使用可能である。
【0106】
ウエハ加工体(積層体基板)形成後は、工程(b1)と同様、40~200℃、好ましくは40~100℃の温度領域で、10秒~60分、より好ましくは1分~30分の追加の熱処理工程を設け、硬化促進を行ってもよい。
【実施例】
【0107】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0108】
[樹脂溶液作製例1]
水素添加ポリスチレン系熱可塑性樹脂セプトン4033(クラレ製)24gをイソノナン176gに溶解し、12質量パーセントのセプトン4033のイソノナン溶液を得た。得られた溶液を、0.2μmのメンブレンフィルターで濾過して、熱可塑性樹脂のイソノナン溶液(A-1)を得た。
【0109】
[樹脂溶液作製例2]
0.5モル%(アルケニル基モル数/Siモル数)のビニル基を分子側鎖に有し、数平均分子量(Mn)が3万のポリジメチルシロキサン80質量部およびイソドデカン400質量部からなる溶液に下記式(M-6)で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンを3.0質量部、エチニルシクロヘキサノールのイソノナン溶液(1.0質量%)0.3質量部を添加し混合した。さらに光活性型ヒドロシリル化反応触媒;(メチルシクロペンタジエニル)トリメチル白金(IV)のイソノナン溶液(白金濃度1.0質量%)を0.5質量部添加し、0.2μmのメンブレンフィルターで濾過して、光硬化性シロキサン重合体溶液(B-a)を得た。
【化1】
【0110】
[樹脂溶液作製例3]
0.5モル%のビニル基を分子側鎖に有し、数平均分子量(Mn)が3万のポリジメチルシロキサン60質量部、および0.15モル%のビニル基を両末端鎖に有し、数平均分子量(Mn)が6万のポリジメチルシロキサン20質量部およびイソドデカン400質量部からなる溶液に(M-6)で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンを2.5質量部、エチニルシクロヘキサノールのイソノナン溶液(1.0質量%)0.3質量部を添加し混合した。さらに光活性型ヒドロシリル化反応触媒;(メチルシクロペンタジエニル)トリメチル白金(IV)のイソノナン溶液(白金濃度1.0質量%)を0.5質量部添加し、0.2μmのメンブレンフィルターで濾過して、光硬化性シロキサン重合体溶液(B-b)を得た。
【0111】
「樹脂溶液作製例4」
5モル%のビニル基を両末端および側鎖に有し、数平均分子量(Mn)が3万のポリジメチルシロキサン80質量部およびイソドデカン400質量部からなる溶液に(M-6)で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン7.5質量部、エチニルシクロヘキサノールのイソノナン溶液(1.0質量%)0.3質量部を添加し混合した。さらに光活性型ヒドロシリル化反応触媒;(メチルシクロペンタジエニル)トリメチル白金(IV)のイソノナン溶液(白金濃度1.0質量%)を0.5質量部添加し、0.2μmのメンブレンフィルターで濾過して、光硬化性シロキサン重合体溶液(B-c)を得た。
【0112】
[樹脂溶液作製例5]
0.5モル%のビニル基を分子側鎖に有し、数平均分子量(Mn)が3万のポリジメチルシロキサン80質量部およびイソドデカン400質量部からなる溶液に(M-6)で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンを3.0質量部、エチニルシクロヘキサノールのイソノナン溶液(1.0質量%)0.3質量部を添加し混合した。さらに光活性型ヒドロシリル化反応触媒;ビス(2,4-へプタンジオナト)白金(II)の酢酸2-(2-ブトキシエトキシ)エチル溶液(白金濃度0.5質量%)1.0質量部添加し、0.2μmのメンブレンフィルターで濾過して、光硬化性シロキサン重合体溶液(B-d)を得た。
【0113】
[樹脂溶液作製例6]
0.5モル%のビニル基を分子側鎖に有し、数平均分子量(Mn)が3万のポリジメチルシロキサン80質量部およびイソドデカン400質量部からなる溶液に(M-6)で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンを3.0質量部、エチニルシクロヘキサノール0.7質量部を添加し混合した。さらに白金触媒;PL-5(信越化学工業株式会社製、白金濃度1.0質量%)0.5質量部添加し、0.2μmのメンブレンフィルターで濾過して、熱硬化性シロキサン重合体溶液(B-e)を得た。
【0114】
上記熱可塑性樹脂溶液、熱硬化性シロキサン重合体溶液の組成等を表1、2に示す。
【表1】
【0115】
【表2】
なお、数平均分子量は、溶媒としてトルエンを使用し、標準ポリスチレンによる検量線を用いてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した結果である。
【0116】
[実施例1~7及び比較例1~4]
表面に高さ10μm、直径40μmの銅ポストが全面に形成された直径200mmシリコンウエハ(厚さ:725μm)に(A)層に対応する材料(A-1)をスピンコート後、ホットプレートにて、150℃で5分間加熱することにより、(A)層を表3に示す膜厚で、ウエハバンプ形成面に成膜した。一方、直径200mm(厚さ:500μm)のガラス板を支持体とし、この支持体に(B)層に相当する光硬化性シロキサン組成物の溶液をスピンコートし、その後70℃で2分間、ホットプレート上で加熱することで表3に示す膜厚で支持体上に(B)層を形成した。このようにして作製した熱可塑性樹脂層(A)を有するシリコンウエハ及び、光硬化性シロキサン重合体層(B)を有するガラス板をそれぞれ、樹脂面が合わされるように、EVG社のウエハ接合装置EVG520ISを用いて25℃、10-3mbar以下、荷重5kNにて真空貼り合わせを行った。その後、室温中、面照射タイプUV-LED(波長365nm)照射器を用いて、表3に示す条件にて光硬化性シロキサン重合体層(B)に光照射を行い、ウエハ加工体を作製した。
【0117】
下記、各種試験によってウエハ加工における評価を行った。その結果を表3に示す。
【0118】
-ウエハ反り確認試験-
上記ウエハ加工体の作製において、(B)層硬化時のウエハの反り状態を目視観察により確認した。反りが全く無かった場合を「○」、反りが発生した場合を「×」で評価した。
【0119】
-接着性試験-
上記ウエハ加工体のサンプルを180℃で1時間オーブンを用いて加熱し、室温まで冷却後、ウエハ界面の接着状況を目視で確認し、界面での気泡などの異常が発生しなかった場合を良好と評価して「○」で示し、異常が発生した場合を不良と評価して「×」で示した。
【0120】
-裏面研削耐性試験-
上記ウエハ加工体のサンプルで反りが発生しなかったものにおいて、グラインダー(DISCO製、DAG810)でダイヤモンド砥石を用いてシリコンウエハの裏面研削を行った。最終基板厚50μmまでグラインドした後、光学顕微鏡(100倍)にてクラック、剥離等の異常の有無を調べた。異常が発生しなかった場合を良好と評価して「○」で示し、異常が発生した場合を不良と評価して「×」で示した。
【0121】
-CVD耐性試験-
シリコンウエハを裏面研削した後の加工体をCVD装置に導入し、2μmのSiO2膜の成膜実験を行ない、その際の外観異常の有無を目視観察により調べた。外観異常が発生しなかった場合を良好と評価して「○」で示し、ボイド、ウエハ膨れ、ウエハ破損等の外観異常が発生した場合を不良と評価して「×」で示した。CVD耐性試験の条件は、以下の通りである。
装置名:プラズマCVD PD270STL(サムコ社製)
RF500W、内圧40Pa
TEOS(テトラエチルオルソシリケート):O2=20sccm:680sccm
【0122】
-剥離性試験-
基板の剥離性は、まず、上記CVD耐性試験を終えたウエハ加工体のウエハ厚さを50μmまで薄型化したウエハ側にダイシングフレームを用いてダイシングテープを貼り、このダイシングテープ面を真空吸着によって、吸着板にセットした。その後、室温にて、ガラスの1点をピンセットにて持ち上げることで、ガラス基板を剥離した。50μm厚のウエハを割ることなく剥離できた場合を「○」で示し、割れなどの異常が発生した場合を不良と評価して「×」で示した。
【0123】
-洗浄除去性試験-
上記剥離性試験終了後のダイシングテープを介してダイシングフレームに装着された直径200mmウエハ(CVD耐性試験条件に晒されたもの)を、接着層を上にしてスピンコーターにセットし、洗浄溶剤としてp-メンタンを5分間噴霧したのち、ウエハを回転させながらイソプロピルアルコール(IPA)を噴霧にてリンスを行った。その後、外観を観察して残存する接着材樹脂の有無を目視でチェックした。樹脂の残存が認められないものを良好と評価して「○」で示し、樹脂の残存が認められたものを不良と評価して「×」で示した。
【0124】
-ピール剥離力試験-
直径200mmシリコンウエハ(厚さ:725μm)上に(A)層に対応する材料をスピンコート後、ホットプレートにて、150℃で5分間加熱することにより表3に示す膜厚で(A)層を形成した。その後、(B)層に相当する光硬化性シロキサン重合体の溶液を、シリコンウエハ上に形成された(A)層上にスピンコートし、さらにその後、ホットプレート上にて70℃、2分間の加熱により溶媒を除去することで、(B)層を表3に示す膜厚で形成した。その後、室温中(B)層に面照射タイプUV-LED(365nm)照射器を用いて光照射、またはホットプレート上での加熱処理を行い(B)層を硬化させた。
その後、上記ウエハ上の(B)層上に150mm長×25mm幅のポリイミドテープを5本貼り付け、テープが張られていない部分の仮接着材層を除去した。次いで島津製作所社のAUTOGRAPH(AG-1)を用いて25℃、300mm/分の速度でテープの一端から180°剥離で120mm剥がし、そのときにかかる力の平均(120mmストローク×5回)をその(B)仮接着層の剥離力とした。その結果を表3に示す。
【0125】
-光硬化性シロキサン重合体(B)層の膜弾性率測定-
ガラス基板上に(B)層に相当する光硬化性シロキサン重合体の溶液をスピンコートし70℃で2分間の加熱により溶媒を除去し、表3中の膜厚でガラス基板上に(B)層を形成した。その後、室温中で面照射タイプUV-LED(365nm)照射器を用い、表3に示す条件にて光硬化性シロキサン重合体層(B)に光照射、またはホットプレート上での加熱処理を行い、ガラス基板上に(B)層の硬化膜を形成した。得られた(B)層を含むガラス基板を、TAインスツルメント社製アレスG2を使用し(B)層に50gfの荷重がかかるよう25mmアルミプレートでサンドし、25℃における弾性率測定を行い得られた貯蔵弾性率の値を(B)層の膜弾性率とした。その結果を表3に示す。
【0126】
【0127】
表3に示されるように、本発明の要件を満たす実施例1~7では、仮接着材層が非加熱かつ短時間で硬化が可能であるため、硬化時のウエハ反りが低減されている。また十分な加工耐久性を有しており、剥離性にも優れるため、剥離後の洗浄除去性が良好であることも確認された。一方で(B)層を有さない比較例1では回路付ウエハと支持体との接着力が不十分となり、裏面研削工程でウエハの脱離が起きてしまった。また(A)層を有さない比較例2ではウエハと(B)層の密着性が強く、剥離時にウエハの割れが発生してしまった。比較例3では、(B)層に従来公知の加熱硬化型の触媒を使用したが、150℃x10minの硬化条件では硬化が不十分となり、ピール剥離力が大きく、また膜弾性率が低い値を示した。また加熱硬化時のウエハ反りも発生したため、その後のウエハ加工工程に進むことができなかった。また比較例4では、比較例3と同様、(B)層に従来公知の加熱硬化型の触媒を使用し、硬化条件を150℃x60minに変更した。その場合、硬化は十分に進行し、ピール剥離力の低下が確認されたものの、加熱硬化時のウエハ反りが発生したため、ウエハ加工工程に進むことはできなかった。
【0128】
[実施例8~10]
表面に高さ10μm、直径40μmの銅ポストが全面に形成された直径200mmシリコンウエハ(厚さ:725μm)に(A)層に対応する材料(A-1)をスピンコート後、ホットプレートにて、150℃で5分間加熱することにより、表4に示す膜厚で(A)層をウエハバンプ形成面に成膜した。一方、(B)層に相当する光硬化性シロキサン組成物の溶液を、支持体として使用する直径200mm(厚さ:500μm)のシリコンウエハ上にスピンコートし、その後70℃で2分間、ホットプレート上で加熱し表4に示す膜厚で支持体上に(B)層を形成した。次いで面照射タイプUV-LED(波長365nm)照射器を用いて、表4に示す条件にて(B)層に光照射を行った。このようにして作製した熱可塑性樹脂層(A)を有するシリコンウエハ及び、光硬化性シロキサン重合体層(B)を有するシリコンウエハをそれぞれ、樹脂面が合わされるように、EVG社のウエハ接合装置EVG520ISを用いて40℃、10-3mbar以下、荷重5kNにて真空貼り合わせを行い、ウエハ加工体を作製した。
【0129】
ピール剥離力試験、膜弾性率測定以外の項目については、上記同様の操作によってウエハ加工における評価を行った。ピール剥離力試験、膜弾性率測定の方法については以下に示す。また評価結果については表4に示す。
【0130】
-ピール剥離力試験-
直径200mmシリコンウエハ(厚さ:725μm)上に(A)層に対応する材料をスピンコート後、ホットプレートにて、150℃で5分間加熱することにより表4に示す膜厚で(A)層を形成した。次いで(A)層上に(B)層に相当する光硬化性シロキサン重合体の溶液をスピンコートし、ホットプレート上で70℃、2分間加熱することによって溶媒除去し、表4に示す膜厚で(B)層を形成した。その後、面照射タイプUV-LED(365nm)照射器を用いて、表4に示す条件で光照射を行い、さらにその後ホットプレート上で40℃、5分間加熱することで(B)層を硬化させた。
その後、上記ウエハ上の(B)層上に150mm長×25mm幅のポリイミドテープを5本貼り付け、テープが張られていない部分の仮接着材層を除去した。島津製作所社のAUTOGRAPH(AG-1)を用いて25℃、300mm/分の速度でテープの一端から180°剥離で120mm剥がし、そのときにかかる力の平均(120mmストローク×5回)を、その(B)仮接着層の剥離力とした。
【0131】
-光硬化性シロキサン重合体(B)層の膜弾性率測定-
ガラス基板上に(B)層に相当する光硬化性シロキサン重合体の溶液をスピンコートした後、70℃、2分間の加熱によって溶媒除去し、表4に示す膜厚でガラス基板上に(B)層を形成した。次いで表4に示す条件にて光照射を行い、その後ホットプレート上で40℃、5分間の加熱処理を行い(B)層を硬化させた。得られた(B)層を含むガラス基板を、TAインスツルメント社製アレスG2を使用して(B)層に50gfの荷重がかかるよう25mmアルミプレートでサンドし、25℃における弾性率測定を行い、得られた貯蔵弾性率の値を(B)層の膜弾性率とした。その結果を表4に示す。
【0132】
【0133】
表4に示されるように、本発明の要件を満たす実施例8~10では、ウエハ接合前に(B)層に相当する光硬化性シロキサン重合体の組成物に光照射を行ってウエハ積層体を作製したが、ウエハ接合後に光照射を実施した実施例1~7と同等のウエハ加工性能が得られることを確認した。
【0134】
実施例8~10(第二の態様)では、ウエハと支持体を接合した後に光照射を行う実施例1~7(第一の態様)とは異なり、接合前に光硬化性シロキサン重合体層(B)組成物に光照射を行うことで支持体越しの光照射工程が不要となり、支持体として光不透過性のシリコンウエハを用いることができる。そのうえ、上記のように、実施例1~7と同等のウエハ加工性能が得られることから、本発明であれば、光を透過しない基板も支持体として適用可能であることが確認された。
【0135】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。