(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-05
(45)【発行日】2023-10-16
(54)【発明の名称】電気融着プラグ
(51)【国際特許分類】
F16L 47/02 20060101AFI20231006BHJP
F16L 55/11 20060101ALI20231006BHJP
B29C 65/34 20060101ALI20231006BHJP
B29C 57/10 20060101ALI20231006BHJP
【FI】
F16L47/02
F16L55/11
B29C65/34
B29C57/10
(21)【出願番号】P 2019114211
(22)【出願日】2019-06-20
【審査請求日】2022-05-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(73)【特許権者】
【識別番号】522068452
【氏名又は名称】東邦ガスネットワーク株式会社
(72)【発明者】
【氏名】加藤 晃士
(72)【発明者】
【氏名】阪 正憲
(72)【発明者】
【氏名】松井 健吾
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-207698(JP,A)
【文献】特開2009-097657(JP,A)
【文献】特開平07-243577(JP,A)
【文献】特開平05-278110(JP,A)
【文献】特開昭62-279922(JP,A)
【文献】特開2001-355784(JP,A)
【文献】特開平08-336892(JP,A)
【文献】特開2001-082665(JP,A)
【文献】特開平08-187800(JP,A)
【文献】特開平07-009480(JP,A)
【文献】特開平06-123393(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102537571(CN,A)
【文献】特開2019-173915(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 47/00-55/115
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂で形成されている円柱形状のプラグ本体部と、
前記プラグ本体部の外周部に配置されている発熱部と、
前記プラグ本体部を軸線方向に押圧しているプラグ本体部押圧手段と、を有
し、
前記プラグ本体部押圧手段は、
圧縮されることで圧縮方向と逆側の方向に向かって反発する弾性部材と、
前記プラグ本体部に少なくとも一部が固定されており、前記弾性部材を圧縮した状態で保持している保持部材と、を有する、
電気融着プラグ。
【請求項2】
前記弾性部材は、圧縮される方向に貫通する空洞が形成された筒状であり、
前記保持部材は、
前記プラグ本体部に少なくとも一部が固定され、前記プラグ本体部の端部から軸線方向に延びるように設けられ、前記空洞に通されて前記弾性部材を保持している軸部と、
前記軸部における、前記プラグ本体部の側と逆側の端部に設けられ、前記弾性部材を前記プラグ本体部に向かって圧縮している圧縮部と、を有する、
請求項
1に記載の電気融着プラグ。
【請求項3】
前記軸部は、前記プラグ本体部と螺合されて設けられている、
請求項
2に記載の電気融着プラグ。
【請求項4】
前記軸部は、前記プラグ本体部にインサート成形されて設けられている、
請求項
2に記載の電気融着プラグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂製の管の内部に形成される流路を閉塞する電気融着プラグに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、都市ガスなどの燃料ガスや上水を需要家に供給するための埋設管には、例えば、ポリエチレンなどの熱可塑性樹脂製の管が広く使用されている。熱可塑性樹脂製の管の接続には、管と同様に熱可塑性樹脂で成形され、その内面に電熱線が埋め込まれた電気融着継手が使用されている。電気融着継手は、管に外嵌された状態で電熱線に通電することによって内面と管の外面とを融着接合させるので、容易に管と接続することができる。
【0003】
通常、流路の断面積を減少させないために、電気融着継手は管に外嵌されるタイプのものが一般的である。一方で、流路の断面積の減少を考慮する必要がない、例えば管の端部や途中で流路を閉塞させるような場合には、管の内径側に挿入されるものが求められる場合がある。
【0004】
そこで、管の内径側に挿入される電気融着式の部材として、いくつかのものが提案されている。例えば、特許文献1や特許文献2には、
図6に示すような管の内径側に挿入される熱可塑性樹脂製円筒体の外周に発熱体が埋設された管路閉塞用キャップが開示されている。また、特許文献1には、管路閉塞用キャップが、管の端部に固定される中栓に螺合されている螺旋軸の先端に管路閉塞用キャップが被せられ、螺旋軸をねじ込むことで管内の所定の位置まで押し込まれることが開示されている。本明細書において、
図6は特許文献1から転載して記載している。
【0005】
【文献】特開平6-207698号公報
【文献】特開2001-82665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されている方法によれば、螺旋軸はねじ込みによって直線的に移動するので、直線的に移動できる管端から比較的近い位置であれば管路閉塞用キャップを管の内径側に押し込むことができる。しかし、管端から比較的遠い位置、例えば、管端から数メートル離れた位置を、この方法で閉塞する場合には、押し込み量に応じて長い螺旋軸が必要になる。螺旋軸は長さが長いと管端への装着や取扱いが難しくなるので、広い作業スペースが必要になるという課題がある。
【0007】
また、特許文献1などに開示されている管端閉塞用キャップは、挿入される管の内径よりも外径が小さすぎると確実な融着接合ができなくなることから、挿入される管の内径と略同じ外径に形成される。そのため、挿入される管が大きく曲っているような場合には、所定の位置まで管路閉塞用キャップを押し込むことができないという課題がある。
【0008】
本発明は、上記の諸課題に鑑みてなされたものであり、管の内径側に、管端から軸方向の所望の位置まで容易に挿入することができて、且つ、挿入された位置で確実に管と融着接合される電気融着プラグを提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の電気融着プラグ1は、熱可塑性樹脂で形成されている円柱形状のプラグ本体部2と、プラグ本体部の外周部に配置されている発熱部3と、プラグ本体部の少なくとも一方の端部に設けられ、プラグ本体部を軸線方向に押圧しているプラグ本体部押圧手段4と、を有し、
プラグ本体部押圧手段4は、圧縮されることで圧縮方向と逆側の方向に向かって反発する弾性部材41と、プラグ本体部に少なくとも一部が固定されており、弾性部材41を圧縮した状態で保持している保持部材42と、を有することを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明の電気融着プラグにおいて、弾性部材41は、圧縮される方向に貫通する空洞を有し、
保持部材42は、
プラグ本体部の端部から軸線方向に延びるように設けられ、空洞に通されて弾性部材41を保持している軸部421と、
軸部421における、プラグ本体部の側と逆側の端部に設けられ、弾性部材41をプラグ本体部2に向かって圧縮している圧縮部422と、を有するものであってもよい。
【0012】
また、本発明の電気融着プラグにおいて、軸部421は、プラグ本体部2と螺合されて設けられてもよい。
【0013】
また、本発明の電気融着プラグにおいて、軸部421aは、プラグ本体部2aにインサート成形されて設けられてもよい
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る電気融着プラグは、プラグ本体部がプラグ本体部押圧手段によって軸線方向に押圧されていることで、融着時には外径が拡大する。それにより、本発明に係る電気融着プラグは、その外面と管の内面との間に隙間がある場合であっても、融着時にはその隙間を埋めて外面が管の内面に密着することができるので、融着性を損なうことなく外径を管の内径に対して細くすることができる。このように、本発明によれば、管の内径側に容易に挿入できて、且つ挿入された位置で管と確実に融着接合される電気融着プラグを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係る電気融着プラグの正面図である。
【
図2】本発明の第1の実施の形態に係る電気融着プラグの断面図である。
【
図3】本発明の第1の実施の形態に係る電気融着プラグが管Pに挿入されている状態を示す断面図である。
【
図4】本発明の第1の実施の形態に係る電気融着プラグが管Pに融着されている状態を示す断面図である。
【
図5】本発明の第2の実施の形態に係る電気融着プラグの断面図である。
【
図6】従来技術の管路閉塞用キャップを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の詳細について、図を参照しつつ説明する。なお、ここに記載する本発明の実施の形態はあくまで例示に過ぎず、本発明はこれに限られない。本発明の要旨の範囲内で種々の変更が可能である。
【0017】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る電気融着プラグの正面図である。
図2は、本発明の第1の実施の形態に係る電気融着プラグの断面図である。
【0018】
図1に示すように、電気融着プラグ1は、プラグ本体部2と発熱部3と本体圧縮部4とを有している。
【0019】
プラグ本体部2は、閉塞しようとする図示しない熱可塑性樹脂製の管Pと同じ熱可塑性樹脂で円柱形状に形成されている。プラグ本体部2の外径は、管Pの内径側に容易に挿入できるように、管Pの内径よりも細く形成されている。
【0020】
発熱部3は、プラグ本体部2の外周部に配置されている。発熱部3は、プラグ本体部2の外周部に形成されている2条の螺旋溝21に埋め込まれている電熱線31である。電熱線31は、プラグ本体部2の軸線方向の一方の側(
図1におけるプラグ本体部2の右側)から他方の側(
図1におけるプラグ本体部2の左側)に向かって螺旋溝21に埋め込まれて巻回されている。更に、電熱線31は、他方の側で折り返されて一方の側に向かって螺旋溝21に埋め込まれて外周部に巻回されている。このように、電熱線31は、その両端がプラグ本体部2の軸線方向の一方の側(
図1におけるプラグ本体部2の右側)に来るように設けられている。電熱線31の両端は、プラグ本体部2の一方の側に固定されている通電用のコネクタピン32に接続されている。管Pに電気融着プラグ1を融着接合する際、電熱線31は、コネクタピン32に接続された図示しない融着用電源装置によって通電されることで発熱して、プラグ本体部2と管Pとを加熱溶融させる。
【0021】
発熱部3は、プラグ本体部と管とを加熱溶融することができればよく、
図1に示す形態に限られず、他の形態の発熱部であってもよい。例えば、発熱部は、螺旋溝が形成されていない円柱形状のプラグ本体部の外周部に巻回されている、外周が熱可塑性樹脂で被覆されている電熱線(所謂、樹脂被覆電熱線)であってもよい。
【0022】
プラグ本体部押圧手段4は、弾性部材41と、保持部材42と、中間部材43とを有し、プラグ本体部2の片側(
図1におけるプラグ本体部2の左側)の端部に設けられ、プラグ本体部2を軸線方向に押圧している。
【0023】
プラグ本体部押圧手段4の各部の詳細を順に説明する。
弾性部材41は、例えば、コイルばねであり、圧縮される方向に貫通する空洞が形成されている、弾性を有する筒状の部材である。弾性部材41は、圧縮されることで圧縮方向と逆側に向かって反発する。弾性部材41は、コイルばねの他に、弾性を有する例えばゴムなどの材料で形成された筒状の部材であってもよい。
【0024】
保持部材42は、軸部421と圧縮部422とで構成されている。
軸部421は、プラグ本体部2の端部から軸線方向に延びるように設けられ、弾性部材41の空洞に通されて弾性部材41を保持している。軸部421は、プラグ本体部2の側の端部外周におねじ423が形成されている。軸部421は、プラグ本体部2に形成されている本体めねじ22におねじ423がねじ込まれることで、プラグ本体部2に少なくとも一部が固定されている。
【0025】
圧縮部422は、軸部421における、プラグ本体部2の側と逆側の端部に設けられている、軸部421よりも外径が大きくなるよう設けられている部分である。圧縮部422は、例えば、軸部421の端部に一体で形成されている鍔である。圧縮部422は、おねじ423を本体めねじ22にねじ込むことで、弾性部材41の端部を押して弾性部材41をプラグ本体部2に向かって圧縮している。圧縮部422は、軸部と一体に形成された鍔の他に、ねじ込みなどの手段によって軸部421の端部に設けられてもよい。
【0026】
中間部材43は、弾性部材41とプラグ本体部2の間に挟まれて設けられている、例えば平座金などのリング部材である。弾性部材41とプラグ本体部2との間に中間部43を介在させることで、圧縮に伴う弾性部材41の反発力が、プラグ本体部2の端面EFに均等に伝えられる。したがって、弾性部材41とプラグ本体部2との間に中間部材43を介在させることが好ましい。一方で、弾性部材41をプラグ本体部2に直接接触させても必要かつ十分な程度にプラグ本体部2の端面EFに均等に弾性部材41の反発力を伝えることができる場合には、中間部材43は省略することができる。
【0027】
次いで、電気融着プラグ1を使用して管Pの内部を閉塞する際の、電気融着プラグの動きを
図3及び
図4を参照して説明する。
図3は、管Pの内部に電気融着プラグ1が挿入された状態を示し、
図4は、管Pと電気融着プラグ1が融着されている状態を示す断面図である。
【0028】
図3に示すように、電気融着プラグ1は、管Pの内部に挿入される。電気融着プラグ1は、管Pの内部の所定の位置まで、管Pの管端(図示を省略)から軸線方向に沿って挿入される。電気融着プラグ1は、例えば、挿入用の棒状の部材などの何らかの挿入手段によって管Pに挿入される。
【0029】
電気融着プラグ1は、プラグ本体部2の外径が管Pの内径よりも細く形成されており、
図3に示すように、管Pに挿入されたときには、プラグ本体部2の外面OSと電気融着継手1の内面ISとの間に隙間が形成されるようになっている。よって、電気融着プラグ1は、管Pの内部に容易に挿入される。また、挿入抵抗が小さいので管端から比較的遠い位置にも容易に挿入される。また、電気融着プラグ1は、挿入しようとする管Pが曲っていても、その曲りの程度が、挿入の際にプラグ本体部2の外面OSと電気融着継手1の内面ISとの間の隙間がなくならない程度のものであれば、管Pの内部に容易に挿入される。
【0030】
電気融着プラグ1は、管Pの内部の所定の位置まで挿入されたのち、コネクタピン32に接続されている融着用電源装置(図示を省略)によって電熱線31に通電することによって、
図4に示すように管Pの内部と融着接合される。
【0031】
電熱線31に通電されると、プラグ本体部2は、電熱線31が発熱することで加熱されて溶融する。加熱されて軟化したプラグ本体部2は、端面EFがプラグ本体押圧手段4によって押圧されているので、弾性部材41の反発力を受けて変形する。プラグ本体部2の軸心方向に沿った長さはL1からL2に短くなる。ここで、L1は変形前のプラグ本体部2の軸心方向の長さであり、L2は変形後のプラグ本体部2の軸心方向の長さである。プラグ本体部2の体積は大きく変わらないので、プラグ本体部2は、
図4に示すように長さが短くなるに伴って外径が拡大する。プラグ本体部2は、管Pの内面ISとの隙間を埋めるように外径が拡大して、外面OSが管Pの内面ISに密着する。電気融着プラグ1は、プラグ本体部2の外面OSと管Pの内面ISとが密着することで、電熱線31の熱が両方にしっかりと伝わるので、管Pと確実に融着接合される。
【0032】
(第2の実施の形態)
図5は、本発明の第2の実施の形態に係る電気融着プラグの断面図である。
【0033】
第2の実施の形態に係る電気融着プラグにおいて、第1の実施の形態に係る電気融着プラグと共通する部分については、同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0034】
図5に示すように、電気融着プラグ1aは、プラグ本体部2aと発熱部3とプラグ本体押圧手段4aとを有している。
【0035】
プラグ本体部押圧手段4aは、保持部材42aと弾性部材41と中間部材43とを有し、プラグ本体部2aの片側(
図5におけるプラグ本体部2aの左側)の端部に設けられ、プラグ本体部2aを軸線方向に押圧している。
【0036】
保持部材42aは、軸部421aと圧縮部422aとで構成されている。
軸部421aは、弾性部材41の空洞に通されることが可能な外径の円柱であって、インサート成形によりプラグ本体部2aに設けられている。軸部421aのプラグ本体部2a側の端部には大径部423aが形成されている。大径部423aは、インサート成形によりプラグ本体部2aの内部に埋め込まれている。軸部421aは、大径部がプラグ本体部2aに引っかかっていることで、プラグ本体部2aに対して軸線方向に固定されている。
【0037】
また、軸部421aは、プラグ本体部2aの端部から軸線方向に延びるように設けられ、端部外周におねじ424aが形成されている。軸部421aは、空洞に通されて弾性部材41を保持し、弾性部材41は、おねじ424aにナットなどの圧縮部422aをねじ込むことによって圧縮されている。
【0038】
(その他の実施の形態)
図1又は
図5の電気融着プラグでは、弾性部材41はプラグ本体部に向かって圧縮されて装着されることで、圧縮と逆方向の力によってプラグ本体部を軸線方向に押圧しているが、本発明において弾性部材の形態はこれに限られない。弾性部材は、引き伸ばした状態でプラグ本体部に装着され、縮もうとする力を使ってプラグ本体部を軸線方向に押圧するものであってもよい。また、弾性部材は、プラグ本体部を軸線方向に押圧可能に設けることができるものであれば、筒状に限られず中実であってもよい。
【符号の説明】
【0039】
1、1a:電気融着プラグ
2、2a:プラグ本体部
21:螺旋溝
22:本体めねじ
OS:外面
EF:端面
3:発熱部
31:電熱線
32:コネクタピン
4、4a:プラグ本体部押圧手段
41:弾性部材
42、42a:保持部材
421、421a:軸部
422、422a:圧縮部
423:おねじ
423a:大径部
424a:おねじ
43:中間部材
P:管
IS:内面