(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-05
(45)【発行日】2023-10-16
(54)【発明の名称】基板処理方法、半導体装置の製造方法、基板処理装置、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
H01L 21/205 20060101AFI20231006BHJP
C23C 16/455 20060101ALI20231006BHJP
【FI】
H01L21/205
C23C16/455
(21)【出願番号】P 2022526993
(86)(22)【出願日】2021-05-21
(86)【国際出願番号】 JP2021019395
(87)【国際公開番号】W WO2021241448
(87)【国際公開日】2021-12-02
【審査請求日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】P 2020094304
(32)【優先日】2020-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100091362
【氏名又は名称】阿仁屋 節雄
(72)【発明者】
【氏名】高橋 正紘
(72)【発明者】
【氏名】堀田 英樹
【審査官】長谷川 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-049517(JP,A)
【文献】特開2001-352087(JP,A)
【文献】特開平11-026385(JP,A)
【文献】国際公開第2017/018271(WO,A1)
【文献】特開2013-197307(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/205
C23C 16/455
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)基板に対して半導体元素および塩素を含む第1ガスを供給し、前記基板の表面に設けられた
塩素フリーである絶縁膜上に塩素含有半導体層を形成する工程と、
(b)前記基板に対して半導体元素を含む第2ガスを供給し、前記塩素含有半導体層上に
塩素フリーである半導体膜を形成する工程と、を有し、
(a)において形成する前記塩素含有半導体層の塩素濃度を1.0×10
20atoms/cm
3以上1.0×10
22atoms/cm
3以下とする基板処理方法。
【請求項2】
(a)基板に対して半導体元素および塩素を含む第1ガスを供給し、前記基板の表面に設けられた絶縁膜上に塩素含有半導体層を形成する工程と、
(b)前記基板に対して半導体元素を含む第2ガスを供給し、前記塩素含有半導体層上に半導体膜を形成する工程と、を有し、
(a)において形成する前記塩素含有半導体層の塩素濃度を1.0×10
20
atoms/cm
3
以上1.0×10
22
atoms/cm
3
以下とし、
(a)では、(a1)前記基板に対して前記第1ガスを供給する工程と、(a2)前記基板が存在する空間に残留する前記第1ガスを除去する工程と、を
含むサイクルを所定回数行
う基板処理方法。
【請求項3】
(a)基板に対して半導体元素および塩素を含む第1ガスを供給し、前記基板の表面に設けられた絶縁膜上に塩素含有半導体層を形成する工程と、
(b)前記基板に対して半導体元素を含む第2ガスを供給し、前記塩素含有半導体層上に半導体膜を形成する工程と、を有し、
(a)において形成する前記塩素含有半導体層の塩素濃度を1.0×10
20
atoms/cm
3
以上1.0×10
22
atoms/cm
3
以下とし、
(a)では、(a1)前記基板に対して前記第1ガスを供給する工程と、(a2)前記基板が存在する空間に残留する前記第1ガスを除去する工程と、(a3)前記基板に対して半導体元素および水素を含む第3ガスを供給する工程と、(a4)前記基板が存在する空間に残留する前記第3ガスを除去する工程と、を
含むサイクルを所定回数行
う基板処理方法。
【請求項4】
(a)において形成する前記塩素含有半導体層の塩素濃度を3.0×10
20atoms/cm
3以上5.0×10
21atoms/cm
3以下とする請求項1
~3のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項5】
(a)において形成する前記塩素含有半導体層の厚さを1モノレイヤー以上30Å以下とする請求項1
~3のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項6】
(a)において形成する前記塩素含有半導体層の厚さを2.5Å以上30Å以下とする請求項1
~3のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項7】
(a)において形成する前記塩素含有半導体層の厚さを3Å以上20Å以下とする請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項8】
(a)における前記基板の温度、前記基板が存在する空間の圧力、前記第1ガスの供給流量、前記第1ガスの供給時間のうち1つ以上により、前記絶縁膜と前記半導体膜との界面における塩素濃度を制御する請求項
1~3のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項9】
(a)における前記サイクル数により、前記絶縁膜と前記半導体膜との界面における塩素濃度を制御する請求項
2または
3に記載の基板処理方法。
【請求項10】
(a)における前記基板の温度、前記基板が存在する空間の圧力、前記第1ガスの供給流量、前記第1ガスの供給時間のうち1つ以上により、前記絶縁膜と前記半導体膜との界面におけるダングリングボンド密度を制御する請求項
1~3のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項11】
前記サイクル数により、前記絶縁膜と前記半導体膜との界面におけるダングリングボンド密度を制御する請求項
2または
3に記載の基板処理方法。
【請求項12】
前記塩素含有半導体層の厚さを、前記絶縁膜および前記半導体膜のそれぞれの厚さよりも薄くする請求項
1~3のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項13】
前記半導体元素は、シリコンおよびゲルマニウムのうち少なくともいずれかを含む請求項1
~3のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項14】
前記塩素含有半導体層は、塩素含有シリコン層、塩素含有ゲルマニウム層、および塩素含有シリコンゲルマニウム層のうち少なくともいずれかを含み、
前記半導体膜は、シリコン膜、ゲルマニウム膜、およびシリコンゲルマニウム膜のうち少なくともいずれかを含む請求項1
~3のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項15】
(c)前記塩素含有半導体層上に前記半導体膜を形成した後の前記基板に対してアニールを行う工程を更に有する請求項1
~3のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項16】
前記アニールでは、前記塩素含有半導体層と前記半導体膜を結晶化させる請求項
15に記載の基板処理方法。
【請求項17】
(a)基板に対して半導体元素および塩素を含む第1ガスを供給し、前記基板の表面に設けられた
塩素フリーである絶縁膜上に塩素含有半導体層を形成する工程と、
(b)前記基板に対して半導体元素を含む第2ガスを供給し、前記塩素含有半導体層上に
塩素フリーである半導体膜を形成する工程と、を有し、
(a)において形成する前記塩素含有半導体層の塩素濃度を1.0×10
20atoms/cm
3以上1.0×10
22atoms/cm
3以下とする半導体装置の製造方法。
【請求項18】
(a)基板に対して半導体元素および塩素を含む第1ガスを供給し、前記基板の表面に設けられた絶縁膜上に塩素含有半導体層を形成する工程と、
(b)前記基板に対して半導体元素を含む第2ガスを供給し、前記塩素含有半導体層上に半導体膜を形成する工程と、を有し、
(a)において形成する前記塩素含有半導体層の塩素濃度を1.0×10
20
atoms/cm
3
以上1.0×10
22
atoms/cm
3
以下とし、
(a)では、(a1)前記基板に対して前記第1ガスを供給する工程と、(a2)前記基板が存在する空間に残留する前記第1ガスを除去する工程と、を含むサイクルを所定回数行う半導体装置の製造方法。
【請求項19】
(a)基板に対して半導体元素および塩素を含む第1ガスを供給し、前記基板の表面に設けられた絶縁膜上に塩素含有半導体層を形成する工程と、
(b)前記基板に対して半導体元素を含む第2ガスを供給し、前記塩素含有半導体層上に半導体膜を形成する工程と、を有し、
(a)において形成する前記塩素含有半導体層の塩素濃度を1.0×10
20
atoms/cm
3
以上1.0×10
22
atoms/cm
3
以下とし、
(a)では、(a1)前記基板に対して前記第1ガスを供給する工程と、(a2)前記基板が存在する空間に残留する前記第1ガスを除去する工程と、(a3)前記基板に対して半導体元素および水素を含む第3ガスを供給する工程と、(a4)前記基板が存在する空間に残留する前記第3ガスを除去する工程と、を含むサイクルを所定回数行う半導体装置の製造方法。
【請求項20】
基板に対して半導体元素および塩素を含む第1ガスを供給する第1ガス供給系と、
基板に対して半導体元素を含む第2ガスを供給する第2ガス供給系と、
(a)基板に対して前記第1ガスを供給し、前記基板の表面に設けられた
塩素フリーである絶縁膜上に塩素含有半導体層を形成する処理と、(b)前記基板に対して前記第2ガスを供給し、前記塩素含有半導体層上に
塩素フリーである半導体膜を形成する処理と、を行わせ、(a)において形成する前記塩素含有半導体層の塩素濃度を1.0×10
20atoms/cm
3以上1.0×10
22atoms/cm
3以下とするように、前記第1ガス供給系および前記第2ガス供給系を制御することが可能なよう構成される制御部と、
を有する基板処理装置。
【請求項21】
基板に対して半導体元素および塩素を含む第1ガスを供給する第1ガス供給系と、
基板に対して半導体元素を含む第2ガスを供給する第2ガス供給系と、
(a)基板に対して前記第1ガスを供給し、前記基板の表面に設けられた絶縁膜上に塩素含有半導体層を形成する処理と、(b)前記基板に対して前記第2ガスを供給し、前記塩素含有半導体層上に半導体膜を形成する処理と、を行わせ、(a)において形成する前記塩素含有半導体層の塩素濃度を1.0×10
20
atoms/cm
3
以上1.0×10
22
atoms/cm
3
以下とし、(a)において、(a1)前記基板に対して前記第1ガスを供給する処理と、(a2)前記基板が存在する空間に残留する前記第1ガスを除去する処理と、を含むサイクルを所定回数行わせるように、前記第1ガス供給系および前記第2ガス供給系を制御することが可能なよう構成される制御部と、
を有する基板処理装置。
【請求項22】
基板に対して半導体元素および塩素を含む第1ガスを供給する第1ガス供給系と、
基板に対して半導体元素を含む第2ガスを供給する第2ガス供給系と、
(a)基板に対して前記第1ガスを供給し、前記基板の表面に設けられた絶縁膜上に塩素含有半導体層を形成する処理と、(b)前記基板に対して前記第2ガスを供給し、前記塩素含有半導体層上に半導体膜を形成する処理と、を行わせ、(a)において形成する前記塩素含有半導体層の塩素濃度を1.0×10
20
atoms/cm
3
以上1.0×10
22
atoms/cm
3
以下とし、(a)において、(a1)前記基板に対して前記第1ガスを供給する処理と、(a2)前記基板が存在する空間に残留する前記第1ガスを除去する処理と、(a3)前記基板に対して半導体元素および水素を含む第3ガスを供給する処理と、(a4)前記基板が存在する空間に残留する前記第3ガスを除去する処理と、を含むサイクルを所定回数行わせるように、前記第1ガス供給系および前記第2ガス供給系を制御することが可能なよう構成される制御部と、
を有する基板処理装置。
【請求項23】
(a)基板に対して半導体元素および塩素を含む第1ガスを供給し、前記基板の表面に設けられた
塩素フリーである絶縁膜上に塩素含有半導体層を形成する手順と、
(b)前記基板に対して半導体元素を含む第2ガスを供給し、前記塩素含有半導体層上に
塩素フリーである半導体膜を形成する手順と、
(a)において形成する前記塩素含有半導体層の塩素濃度を1.0×10
20atoms/cm
3以上1.0×10
22atoms/cm
3以下とする手順と、
をコンピュータによって基板処理装置に実行させるプログラム。
【請求項24】
(a)基板に対して半導体元素および塩素を含む第1ガスを供給し、前記基板の表面に設けられた絶縁膜上に塩素含有半導体層を形成する手順と、
(b)前記基板に対して半導体元素を含む第2ガスを供給し、前記塩素含有半導体層上に半導体膜を形成する手順と、
(a)において形成する前記塩素含有半導体層の塩素濃度を1.0×10
20
atoms/cm
3
以上1.0×10
22
atoms/cm
3
以下とする手順と、
(a)において、(a1)前記基板に対して前記第1ガスを供給する手順と、(a2)前記基板が存在する空間に残留する前記第1ガスを除去する手順と、を含むサイクルを所定回数行う手順と、
をコンピュータによって基板処理装置に実行させるプログラム。
【請求項25】
(a)基板に対して半導体元素および塩素を含む第1ガスを供給し、前記基板の表面に設けられた絶縁膜上に塩素含有半導体層を形成する手順と、
(b)前記基板に対して半導体元素を含む第2ガスを供給し、前記塩素含有半導体層上に半導体膜を形成する手順と、
(a)において形成する前記塩素含有半導体層の塩素濃度を1.0×10
20
atoms/cm
3
以上1.0×10
22
atoms/cm
3
以下とする手順と、
(a)において、(a1)前記基板に対して前記第1ガスを供給する手順と、(a2)前記基板が存在する空間に残留する前記第1ガスを除去する手順と、(a3)前記基板に対して半導体元素および水素を含む第3ガスを供給する手順と、(a4)前記基板が存在する空間に残留する前記第3ガスを除去する手順と、を含むサイクルを所定回数行う手順と、
をコンピュータによって基板処理装置に実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理方法、半導体装置の製造方法、基板処理装置、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程の一工程として、基板の表面に設けられた絶縁膜上に半導体膜を形成する工程が行われることがある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、半導体装置の特性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様によれば、
(a)基板に対して半導体元素および塩素を含む第1ガスを供給し、前記基板の表面に設けられた絶縁膜上に塩素含有半導体層を形成する工程と、
(b)前記基板に対して半導体元素を含む第2ガスを供給し、前記塩素含有半導体層上に半導体膜を形成する工程と、を有し、
(a)において形成する前記塩素含有半導体層の塩素濃度を1.0×1020atoms/cm3以上1.0×1022atoms/cm3以下とする技術が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、半導体装置の特性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本開示の一態様で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉部分を縦断面図で示す図である。
【
図2】
図2は、本開示の一態様で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉部分を
図1のA-A線断面図で示す図である。
【
図3】
図3は、本開示の一態様で好適に用いられる基板処理装置のコントローラの概略構成図であり、コントローラの制御系をブロック図で示す図である。
【
図4】
図4は、本開示の一態様における基板処理シーケンスを示す図である。
【
図5】
図5は、本開示の一態様の実施例における塩素濃度とダングリングボンド密度との関係を示すプロット図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<本開示の一態様>
以下、本開示の一態様について
図1~
図4を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において用いられる図面は、いずれも模式的なものであり、図面上の各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。また、複数の図面の相互間においても、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は必ずしも一致していない。
【0009】
(1)基板処理装置の構成
図1に示すように、処理炉202は加熱機構(温度調整部)としてのヒータ207を有する。ヒータ207は円筒形状であり、保持板に支持されることにより垂直に据え付けられている。ヒータ207は、ガスを熱で活性化(励起)させる活性化機構(励起部)としても機能する。
【0010】
ヒータ207の内側には、ヒータ207と同心円状に反応管203が配設されている。反応管203は、例えば石英(SiO2)または炭化シリコン(SiC)等の耐熱性材料により構成され、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。反応管203の下方には、反応管203と同心円状に、マニホールド209が配設されている。マニホールド209は、例えばステンレス鋼(SUS)等の金属材料により構成され、上端および下端が開口した円筒形状に形成されている。マニホールド209の上端部は、反応管203の下端部に係合しており、反応管203を支持するように構成されている。マニホールド209と反応管203との間には、シール部材としてのOリング220aが設けられている。反応管203はヒータ207と同様に垂直に据え付けられている。主に、反応管203とマニホールド209とにより処理容器(反応容器)が構成される。処理容器の筒中空部には処理室201が形成される。処理室201は、基板としてのウエハ200を収容可能に構成されている。この処理室201内でウエハ200に対する処理が行われる。
【0011】
処理室201内には、第1~第3供給部としてのノズル249a~249cが、マニホールド209の側壁を貫通するようにそれぞれ設けられている。ノズル249a~249cを第1~第3ノズルとも称する。ノズル249a~249cは、例えば石英またはSiC等の耐熱性材料である非金属材料により構成されている。ノズル249a~249cには、ガス供給管232a~232cがそれぞれ接続されている。ノズル249a~249cはそれぞれ異なるノズルであり、ノズル249a,249cのそれぞれは、ノズル249bに隣接して設けられている。
【0012】
ガス供給管232a~232cには、ガス流の上流側から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)241a~241cおよび開閉弁であるバルブ243a~243cがそれぞれ設けられている。ガス供給管232aのバルブ243aよりも下流側には、ガス供給管232d,232fがそれぞれ接続されている。ガス供給管232bのバルブ243bよりも下流側には、ガス供給管232e,232gがそれぞれ接続されている。ガス供給管232d~232gには、ガス流の上流側から順に、MFC241d~241gおよびバルブ243d~243gがそれぞれ設けられている。ガス供給管232a~232gは、例えば、SUS等の金属材料により構成されている。
【0013】
図2に示すように、ノズル249a~249cは、反応管203の内壁とウエハ200との間における平面視において円環状の空間に、反応管203の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の配列方向上方に向かって立ち上がるようにそれぞれ設けられている。すなわち、ノズル249a~249cは、ウエハ200が配列されるウエハ配列領域の側方の、ウエハ配列領域を水平に取り囲む領域に、ウエハ配列領域に沿うようにそれぞれ設けられている。平面視において、ノズル249bは、処理室201内に搬入されるウエハ200の中心を挟んで後述する排気口231aと一直線上に対向するように配置されている。ノズル249a,249cは、ノズル249bと排気口231aの中心とを通る直線Lを、反応管203の内壁(ウエハ200の外周部)に沿って両側から挟み込むように配置されている。直線Lは、ノズル249bとウエハ200の中心とを通る直線でもある。すなわち、ノズル249cは、直線Lを挟んでノズル249aと反対側に設けられているということもできる。ノズル249a,249cは、直線Lを対称軸として線対称に配置されている。ノズル249a~249cの側面には、ガスを供給するガス供給孔250a~250cがそれぞれ設けられている。ガス供給孔250a~250cは、それぞれが、平面視において排気口231aと対向(対面)するように開口しており、ウエハ200に向けてガスを供給することが可能となっている。ガス供給孔250a~250cは、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられている。
【0014】
ガス供給管232aからは、第1ガスとして、例えば、ウエハ200上に形成される膜を構成する半導体元素としてのシリコン(Si)および塩素(Cl)を含むガス、すなわち、クロロシラン系ガスが、MFC241a、バルブ243a、ノズル249aを介して処理室201内へ供給される。クロロシラン系ガスは、SiとClとの化学結合(Si-Cl結合)を含む。
【0015】
ガス供給管232bからは、第2ガスとして、例えば、半導体元素としてのSiを含むガスすなわち、シラン系ガスが、MFC241b、バルブ243b、ノズル249bを介して処理室201内へ供給される。
【0016】
ガス供給管232dからは、第3ガスとして、例えば、半導体元素としてのSiおよび水素(H)を含むガス、すなわち水素化ケイ素ガスが、MFC241d、バルブ243d、ガス供給管232a、ノズル249aを介して処理室201内へ供給される。
【0017】
ガス供給管232eからは、第4ガスとして、例えば、H含有ガスが、MFC241e、バルブ243e、ガス供給管232b、ノズル249bを介して処理室201内へ供給される。
【0018】
ガス供給管232c,232f,232gからは、不活性ガスが、それぞれMFC241c,241f,241g、バルブ243c,243f,243g、ガス供給管232a~232c、ノズル249a~249cを介して処理室201内へ供給される。不活性ガスは、パージガス、キャリアガス、希釈ガス等として作用する。
【0019】
主に、ガス供給管232a、MFC241a、バルブ243aにより、第1ガス供給系が構成される。主に、ガス供給管232b、MFC241b、バルブ243bにより、第2ガス供給系が構成される。主に、ガス供給管232d、MFC241d、バルブ243dにより、第3ガス供給系が構成される。主に、ガス供給管232e、MFC241e、バルブ243eにより、第4ガス供給系が構成される。主に、ガス供給管232c,232f,232g、MFC241c,241f,241g、バルブ243c,243f,243gにより、不活性ガス供給系が構成される。
【0020】
上述の各種ガス供給系のうち、いずれか、或いは、全てのガス供給系は、バルブ243a~243gやMFC241a~241g等が集積されてなる集積型ガス供給システム248として構成されていてもよい。集積型ガス供給システム248は、ガス供給管232a~232gのそれぞれに対して接続され、ガス供給管232a~232g内への各種ガスの供給動作、すなわち、バルブ243a~243gの開閉動作やMFC241a~241gによる流量調整動作等が、後述するコントローラ121によって制御されるように構成されている。集積型ガス供給システム248は、一体型、或いは、分割型の集積ユニットとして構成されており、ガス供給管232a~232g等に対して集積ユニット単位で着脱を行うことができ、集積型ガス供給システム248のメンテナンス、交換、増設等を、集積ユニット単位で行うことが可能なように構成されている。
【0021】
反応管203の側壁下方には、処理室201内の雰囲気を排気する排気口231aが設けられている。
図2に示すように、排気口231aは、平面視において、ウエハ200を挟んでノズル249a~249c(ガス供給孔250a~250c)と対向(対面)する位置に設けられている。排気口231aは、反応管203の側壁の下部より上部に沿って、すなわち、ウエハ配列領域に沿って設けられていてもよい。排気口231aには排気管
231が接続されている。排気管231には、処理室201内の圧力を検出する圧力検出器(圧力検出部)としての圧力センサ245および圧力調整器(圧力調整部)としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ244を介して、真空排気装置としての真空ポンプ246が接続されている。APCバルブ244は、真空ポンプ246を作動させた状態で弁を開閉することで、処理室201内の真空排気および真空排気停止を行うことができ、更に、真空ポンプ246を作動させた状態で、圧力センサ245により検出された圧力情報に基づいて弁開度を調節することで、処理室201内の圧力を調整することができるように構成されている。主に、排気管231、APCバルブ244、圧力センサ245により、排気系が構成される。真空ポンプ246を排気系に含めて考えてもよい。
【0022】
マニホールド209の下方には、マニホールド209の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシールキャップ219が設けられている。シールキャップ219は、例えばSUS等の金属材料により構成され、円盤状に形成されている。シールキャップ219の上面には、マニホールド209の下端と当接するシール部材としてのOリング220bが設けられている。シールキャップ219の下方には、後述するボート217を回転させる回転機構267が設置されている。回転機構267の回転軸255は、シールキャップ219を貫通してボート217に接続されている。回転機構267は、ボート217を回転させることでウエハ200を回転させるように構成されている。シールキャップ219は、反応管203の外部に設置された昇降機構としてのボートエレベータ115によって垂直方向に昇降されるように構成されている。ボートエレベータ115は、シールキャップ219を昇降させることで、ウエハ200を処理室201内外に搬入および搬出(搬送)する搬送装置(搬送機構)として構成されている。
【0023】
マニホールド209の下方には、シールキャップ219を降下させボート217を処理室201内から搬出した状態で、マニホールド209の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシャッタ219sが設けられている。シャッタ219sは、例えばSUS等の金属材料により構成され、円盤状に形成されている。シャッタ219sの上面には、マニホールド209の下端と当接するシール部材としてのOリング220cが設けられている。シャッタ219sの開閉動作(昇降動作や回動動作等)は、シャッタ開閉機構115sにより制御される。
【0024】
基板支持具としてのボート217は、複数枚、例えば25~200枚のウエハ200を、水平姿勢で、かつ、互いに中心を揃えた状態で垂直方向に整列させて多段に支持するように、すなわち、間隔を空けて配列させるように構成されている。ボート217は、例えば石英やSiC等の耐熱性材料により構成される。ボート217の下部には、例えば石英やSiC等の耐熱性材料により構成される断熱板218が多段に支持されている。
【0025】
反応管203内には、温度検出器としての温度センサ263が設置されている。温度センサ263により検出された温度情報に基づきヒータ207への通電具合を調整することで、処理室201内の温度が所望の温度分布となる。温度センサ263は、反応管203の内壁に沿って設けられている。
【0026】
図3に示すように、制御部(制御手段)であるコントローラ121は、CPU(Central Processing Unit)121a、RAM(Random Access Memory)121b、記憶装置121c、I/Oポート121dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM121b、記憶装置121c、I/Oポート121dは、内部バス121eを介して、CPU121aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ121には、例えばタッチパネル等として構成された入出力装置122が接続されている。また、コントローラ121には、外部記憶装置123を接続することが可能となっている。
【0027】
記憶装置121cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等で構成されている。記憶装置121c内には、基板処理装置の動作を制御する制御プログラムや、後述する基板処理の手順や条件等が記載されたプロセスレシピ等が、読み出し可能に格納されている。プロセスレシピは、後述する基板処理における各手順をコントローラ121に実行させ、所定の結果を得ることができるように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、プロセスレシピや制御プログラム等を総称して、単に、プログラムともいう。また、プロセスレシピを、単に、レシピともいう。本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、レシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。RAM121bは、CPU121aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0028】
I/Oポート121dは、上述のMFC241a~241g、バルブ243a~243g、圧力センサ245、APCバルブ244、真空ポンプ246、温度センサ263、ヒータ207、回転機構267、ボートエレベータ115、シャッタ開閉機構115s等に接続されている。
【0029】
CPU121aは、記憶装置121cから制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置122からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置121cからレシピを読み出すことが可能なように構成されている。CPU121aは、読み出したレシピの内容に沿うように、MFC241a~241gによる各種ガスの流量調整動作、バルブ243a~243gの開閉動作、APCバルブ244の開閉動作および圧力センサ245に基づくAPCバルブ244による圧力調整動作、真空ポンプ246の起動および停止、温度センサ263に基づくヒータ207の温度調整動作、回転機構267によるボート217の回転および回転速度調節動作、ボートエレベータ115によるボート217の昇降動作、シャッタ開閉機構115sによるシャッタ219sの開閉動作等を制御することが可能なように構成されている。
【0030】
コントローラ121は、外部記憶装置123に格納された上述のプログラムを、コンピュータにインストールすることにより構成することができる。外部記憶装置123は、例えば、HDD等の磁気ディスク、CD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリやSSD等の半導体メモリ等を含む。記憶装置121cや外部記憶装置123は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成されている。以下、これらを総称して、単に、記録媒体ともいう。本明細書において記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶装置121c単体のみを含む場合、外部記憶装置123単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。なお、コンピュータへのプログラムの提供は、外部記憶装置123を用いず、インターネットや専用回線等の通信手段を用いて行ってもよい。
【0031】
(2)基板処理工程
上述の基板処理装置を用い、半導体装置の製造工程の一工程として、基板としてのウエハ200の表面に設けられた絶縁膜上に半導体膜を形成する基板処理シーケンス例について、主に
図4を用いて説明する。以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作はコントローラ121により制御される。
【0032】
図4に示すように、本態様の基板処理シーケンスでは、
ウエハ200に対して第1ガスとしてのクロロシラン系ガスを供給し、ウエハ200の表面に設けられた絶縁膜としてのシリコン酸化膜(SiO膜)上に塩素含有半導体層としてのCl含有Si層を形成するステップA(Cl含有Si層形成)と、
ウエハ200に対して第2ガスとしてのシラン系ガスを供給し、Cl含有Si層上に半導体膜としてのシリコン膜(Si膜)を形成するステップB(Si膜形成)と、を行い、
ステップAにおいて形成するCl含有Si層のCl濃度を1.0×10
20atoms/cm
3以上1.0×10
22atoms/cm
3以下とする。
【0033】
なお、ステップAでは、ウエハ200に対してクロロシラン系ガスを供給するステップA1と、ウエハ200が存在する空間を不活性ガスでパージしてこの空間に残留するクロロシラン系ガスを除去するステップA2と、を非同時に行うサイクルを所定回数(n回、nは1以上の整数)行う。
【0034】
また、本態様の基板処理シーケンスでは、
ステップBを実施した後に、Cl含有Si層およびSi膜をアニールするステップC(アニール)を更に行う。
【0035】
本明細書では、上述の基板処理シーケンスを、便宜上、以下のように示すこともある。以下の変形例等の説明においても、同様の表記を用いる。なお、以下における「ANL」は、アニールを表す。
【0036】
(クロロシラン系ガス→不活性ガス)×n→シラン系ガス→ANL
【0037】
本明細書において「ウエハ」という言葉を用いた場合は、ウエハそのものを意味する場合や、ウエハとその表面に形成された所定の層や膜との積層体を意味する場合がある。本明細書において「ウエハの表面」という言葉を用いた場合は、ウエハそのものの表面を意味する場合や、ウエハ上に形成された所定の層等の表面を意味する場合がある。本明細書において「ウエハ上に所定の層を形成する」と記載した場合は、ウエハそのものの表面上に所定の層を直接形成することを意味する場合や、ウエハ上に形成されている層等の上に所定の層を形成することを意味する場合がある。本明細書において「基板」という言葉を用いた場合も、「ウエハ」という言葉を用いた場合と同義である。
【0038】
(ウエハチャージおよびボートロード)
複数枚のウエハ200がボート217に装填(ウエハチャージ)されると、シャッタ開閉機構115sによりシャッタ219sが移動させられて、マニホールド209の下端開口が開放される(シャッタオープン)。その後、
図1に示すように、複数枚のウエハ200を支持したボート217は、ボートエレベータ115によって持ち上げられて処理室201内へ搬入(ボートロード)される。この状態で、シールキャップ219は、Oリング220bを介してマニホールド209の下端をシールした状態となる。
【0039】
ウエハ200の表面には、絶縁膜として、SiO膜が予め形成されている。絶縁膜は、シリコン酸窒化膜(SiON膜)であってもよい。絶縁膜は、Clを実質的に含まない膜、すなわち、Clフリーな膜であることが好ましい。
【0040】
(圧力調整および温度調整)
処理室201内、すなわち、ウエハ200が存在する空間が所望の圧力(真空度)となるように、真空ポンプ246によって真空排気(減圧排気)される。この際、処理室201内の圧力は圧力センサ245で測定され、この測定された圧力情報に基づきAPCバルブ244がフィードバック制御される。また、処理室201内のウエハ200が所望の処理温度となるように、ヒータ207によって加熱される。この際、処理室201内が所望の温度分布となるように、温度センサ263が検出した温度情報に基づきヒータ207への通電具合がフィードバック制御される。また、回転機構267によるウエハ200の回転を開始する。処理室201内の排気、ウエハ200の加熱および回転は、いずれも、少なくともウエハ200に対する処理が終了するまでの間は継続して行われる。
【0041】
(ステップA:Cl含有Si層形成)
その後、次のステップA1,A2を順次実行する。
【0042】
[ステップA1]
このステップでは、処理室201内のウエハ200、すなわち、ウエハ200の表面に設けられたSiO膜に対してクロロシラン系ガスを供給する。
【0043】
具体的には、バルブ243aを開き、ガス供給管232a内へクロロシラン系ガスを流す。クロロシラン系ガスは、MFC241aにより流量調整され、ノズル249aを介して処理室201内へ供給され、排気口231aより排気される。このとき、ウエハ200に対してクロロシラン系ガスが供給される。このとき、バルブ243c,243f,243gを開き、ノズル249a~249cのそれぞれを介して処理室201内へ不活性ガスを供給するようにしてもよい。
【0044】
後述する処理条件下でウエハ200に対してクロロシラン系ガスを供給することにより、ウエハ200の表面に設けられたSiO膜上に、クロロシラン系ガスに含まれるSiを、SiにClが結合した状態で、吸着(堆積)させることが可能となる。すなわち、クロロシラン系ガスに含まれるSiを、SiとClとの化学結合(Si-Cl結合)を切断することなく保持した状態で、SiO膜上に化学吸着させることが可能となる。
【0045】
[ステップA2]
所定の時間が経過した後、バルブ243aを閉じ、処理室201内へのクロロシラン系ガスの供給を停止する。そして、処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留するガス等を処理室201内から排除する(パージ)。このとき、バルブ243c,243f,243gを開き、処理室201内へ不活性ガスを供給する。不活性ガスはパージガスとして作用する。
【0046】
[所定回数実施]
上述したステップA1,A2を交互に、すなわち、同期させることなく非同時に行うサイクルを所定回数(n回、nは1以上の整数)行うことにより、ウエハ200の表面に設けられたSiO膜上に、Clを高濃度に含むシリコン層(Si層)、すなわち、Cl含有Si層を形成することが可能となる。Cl含有Si層は、絶縁膜であるSiO膜と、後述する半導体膜であるSi膜と、の界面を構成する層となる。Cl含有Si層は、Clを含有するアモルファス(非晶質)状態のSi層となる。
【0047】
Cl含有Si層のCl濃度は、例えば、1.0×1020atoms/cm3以上1.0×1022atoms/cm3以下、好ましくは、3.0×1020atoms/cm3以上5.0×1021atoms/cm3以下とする。
【0048】
Cl含有Si層の厚さは、ウエハ200の表面に設けられたSiO膜、および、後述するSi膜のそれぞれよりも薄いことが好ましい。Cl含有Si層の厚さは、例えば、1モノレイヤー(以下、ML)以上30Å(3nm)以下、好ましくは2.5Å(0.25nm)以上30Å(3nm)以下、より好ましくは3Å(0.3nm)以上20Å(2nm)以下とする。なお、1MLは単分子層または単原子層を意味する。
【0049】
Cl含有Si層のCl濃度、および、厚さは、それぞれ、ステップA1における処理温度(ウエハ200の温度)、処理圧力(ウエハ200が存在する空間の圧力)、クロロシラン系ガスの供給流量、クロロシラン系ガスの供給時間のうち1つ以上により、制御することが可能である。これにより、絶縁膜であるSiO膜と、後述する半導体膜であるSi膜と、の界面におけるダングリングボンド密度を制御することが可能となる。
【0050】
また、Cl含有Si層のCl濃度、および、厚さは、それぞれ、ステップAにおける上述のサイクル数(n回)により、制御することが可能である。これにより、絶縁膜であるSiO膜と、後述する半導体膜であるSi膜と、の界面におけるダングリングボンド密度を制御することが可能となる。
【0051】
ステップA1における処理条件としては、
クロロシラン系ガス供給流量:0.1~1slm
クロロシラン系ガス供給時間:0.5~2分
処理温度(第1温度):350~450℃、好ましくは350~400℃
処理圧力:277~1200Pa(2~9Torr)、好ましくは667~1200Pa(5~9Torr)
が例示される。
【0052】
ステップA2における処理条件としては、
不活性ガス供給流量:0.5~20slm
不活性ガス供給時間:10~30秒
処理圧力:1~30Pa
が例示される。他の処理条件は、ステップA1における処理条件と同様とすることができる。
【0053】
なお、本明細書における「350~450℃」のような数値範囲の表記は、下限値および上限値がその範囲に含まれることを意味する。よって、例えば、「350~450℃」とは「350℃以上450℃以下」を意味する。他の数値範囲についても同様である。
【0054】
第1ガス(クロロシラン系ガス)としては、例えば、モノクロロシラン(SiH3Cl、略称:MCS)ガス、ジクロロシラン(SiH2Cl2、略称:DCS)ガス、トリクロロシラン(SiHCl3、略称:TCS)ガス、テトラクロロシラン(SiCl4、略称:STC)ガス、ヘキサクロロジシラン(Si2Cl6、略称:HCDS)ガス、オクタクロロトリシラン(Si3Cl8、略称:OCTS)ガス等のクロロシラン系ガスを用いることができる。この点は、後述する各ステップや変形例においても同様である。
【0055】
不活性ガスとしては、窒素(N2)ガスの他、アルゴン(Ar)ガス、ヘリウム(He)ガス、ネオン(Ne)ガス、キセノン(Xe)ガス等の希ガスを用いることができる。この点は、後述する各ステップや変形例においても同様である。
【0056】
(昇温)
ステップAが完了した後、すなわち、SiO膜上へのCl含有Si層の形成が完了した後、処理室201内の温度、すなわち、ウエハ200の温度を、上述の第1温度よりも高い第2温度へ変更させるように、ヒータ207の出力を調整する。本ステップを行う際、バルブ243c,243f,243gを開き、ノズル249a~249cを介して処理室201内へ不活性ガスを供給し、排気口231aより排気して、処理室201内をパージした状態とする。ウエハ200の温度が第2温度に到達して安定した後、後述するステップBを開始する。
【0057】
(ステップB:Si膜形成)
ウエハ200の温度が第2温度に到達し安定した後、処理室201内のウエハ200、すなわち、ウエハ200上に形成されたCl含有Si層に対してシラン系ガスを供給する。
【0058】
具体的には、バルブ243bを開き、ガス供給管232b内へシラン系ガスを流す。シラン系ガスは、MFC241bにより流量調整され、ノズル249bを介して処理室201内へ供給され、排気口231aより排気される。このとき、ウエハ200に対してシラン系ガスが供給される。このとき、バルブ243c,243f,243gを開き、ノズル249a~249cのそれぞれを介して処理室201内へ不活性ガスを供給するようにしてもよい。
【0059】
後述する処理条件下でウエハ200に対してシラン系ガスを供給することにより、シラン系ガスを気相中で分解させて、ウエハ200の表面上、すなわち、SiO膜上に形成されたCl含有Si層上にSiを吸着(堆積)させ、Si膜を形成することが可能となる。第2ガスとして、Clを含まないシラン系ガスを用いることで、ウエハ200上に形成されるSi膜を、Clフリーな膜とすることができる。
【0060】
なお、ステップBにおいて、Cl含有Si層上に形成されるSi膜は、アモルファス(非晶質)状態のSi膜、または、アモルファスとポリ(多結晶)との混晶状態のSi膜となる。また、このとき、Cl含有Si層の一部がポリ化して、Cl含有Si層が、Clを含有するアモルファスとポリとの混晶状態のSi層となることもある。
【0061】
所定の時間が経過した後、バルブ243bを閉じ、処理室201内へのシラン系ガスの供給を停止する。そして、ステップA2における処理手順、処理条件と同様の処理手順、処理条件により、処理室201内に残留するガス等を処理室201内から排除する。
【0062】
ステップBにおける処理条件としては、
シラン系ガス供給流量:0.01~5slm
シラン系ガス供給時間:1~300分
不活性ガス供給流量(ガス供給管毎):0~20slm
処理温度(第2温度):450~550℃
処理圧力:30~400Pa(1.5~3Torr)
が例示される。
【0063】
第2ガス(シラン系ガス)としては、例えば、モノシラン(SiH4)ガス、ジシラン(Si2H6)ガス、トリシラン(Si3H8)ガス、テトラシラン(Si4H10)ガス、ペンタシラン(Si5H12)ガス、ヘキサシラン(Si6H14)ガス等の水素化ケイ素ガスや、テトラキス(ジメチルアミノ)シラン(Si[N(CH3)2]4、略称:4DMAS)ガス、トリス(ジメチルアミノ)シラン(Si[N(CH3)2]3H、略称:3DMAS)ガス、ビス(ジエチルアミノ)シラン(Si[N(C2H5)2]2H2、略称:BDEAS)ガス、ビス(ターシャリブチルアミノ)シラン(SiH2[NH(C4H9)]2、略称:BTBAS)ガス等のアミノシラン系ガスを用いることができる。なお、ステップBにおいて形成されるSi膜中へのH、N、C等の不純物の混入抑制等を考慮すると、シラン系ガスとしては、N及びC非含有の水素化ケイ素ガスを用いるのが好ましい。
【0064】
(昇温)
ステップBが完了した後、すなわち、Cl含有Si層上へのSi膜の形成が完了した後、処理室201内の温度、すなわち、ウエハ200の温度を、上述の第2温度よりも高い第3温度へ変更させるようにヒータ207の出力を調整する。本ステップを行う際、バルブ243c,243f,243gを開き、ノズル249a~249cを介して処理室201内へ不活性ガスを供給し、排気口231aより排気して、処理室201内をパージした状態とする。ウエハ200の温度が第3温度に到達して安定した後、後述するステップCを開始する。
【0065】
(ステップC:アニール)
ウエハ200の温度が第3温度に到達し安定した後、処理室201内のウエハ200、すなわち、ウエハ200上に形成されたCl含有Si層およびSi膜のそれぞれに対して熱処理(アニール)を行う。これにより、Cl含有Si層とSi膜を結晶化(ポリ化)させることができる。すなわち、アモルファス状態またはアモルファスとポリとの混晶状態のCl含有Si層とSi膜とを、結晶化させて、ポリ状態のCl含有Si層とSi膜に変化させることができる。このステップは、バルブ243c,243f,243gを開き、処理室201内へ不活性ガスを供給した状態で行ってもよく、また、バルブ243c,243f,243gを閉じ、処理室201内への不活性ガスの供給を停止した状態で行ってもよい。
【0066】
ステップCにおける処理条件としては、
不活性ガス供給流量(各ガス供給管):0~20slm
処理温度(第3温度):550~1000℃、好ましくは600~800℃
処理圧力:0.1~100000Pa
処理時間:1~300分
が例示される。
【0067】
(アフターパージおよび大気圧復帰)
ステップCが完了した後、すなわち、アニールが完了した後、ノズル249a~249cのそれぞれからパージガスとしての不活性ガスを処理室201内へ供給し、排気口231aより排気する。これにより、処理室201内がパージされ、処理室201内に残留するガスや反応副生成物が処理室201内から除去される(アフターパージ)。その後、処理室201内の雰囲気が不活性ガスに置換され(不活性ガス置換)、処理室201内の圧力が常圧に復帰される(大気圧復帰)。
【0068】
(ボートアンロードおよびウエハディスチャージ)
その後、ボートエレベータ115によりシールキャップ219が下降され、マニホールド209の下端が開口される。そして、処理済のウエハ200が、ボート217に支持された状態でマニホールド209の下端から反応管203の外部に搬出(ボートアンロード)される。ボートアンロードの後は、シャッタ219sが移動させられ、マニホールド209の下端開口がOリング220cを介してシャッタ219sによりシールされる(シャッタクローズ)。処理済のウエハ200は、反応管203の外部に搬出された後、ボート217より取り出される(ウエハディスチャージ)。
【0069】
(3)本態様による効果
本態様によれば、以下に示す1つ又は複数の効果が得られる。
【0070】
(a)絶縁膜としてのSiO膜と、半導体膜としてのSi膜と、の界面(以下、Si/SiO界面)にCl含有Si層を形成することで、Si/SiO界面におけるダングリングボンドをClによって終端させ、その密度を低下させる方向に制御することが可能となる。これにより、Si/SiO界面における界面準位密度を低減させる方向に制御することができ、半導体装置の電気特性を向上させることが可能となる。
【0071】
(b)Cl含有Si層のCl濃度を、1.0×1020atoms/cm3以上1.0×1022atoms/cm3以下とすることで、上述の効果を適正に高めることが可能となる。また、Cl含有Si層のCl濃度を、3.0×1020atoms/cm3以上5.0×1021atoms/cm3以下とすることで、上述の効果をより適正に高めることが可能となる。
【0072】
Cl含有Si層のCl濃度を1.0×1020atoms/cm3未満とすると、Si/SiO界面におけるダングリングボンドを十分にClで終端させることができず、界面準位密度を十分に低減させることができないことがある。結果として、半導体装置の電気特性を向上させることができないことがある。Cl含有Si層のCl濃度を1.0×1020atoms/cm3以上とすることで、Si/SiO界面におけるダングリングボンドを十分にClで終端させ、界面準位密度を十分に低減させることができ、半導体装置の電気特性を向上させることが可能となる。Cl含有Si層のCl濃度を3.0×1020atoms/cm3以上とすることで、この効果をより高めることが可能となる。
【0073】
Cl含有Si層のCl濃度を1.0×1022atoms/cm3よりも高くすると、Si/SiO界面におけるダングリングボンド密度に対してCl濃度が過剰となり、Clがキャリア散乱原因となり、半導体装置の電気特性を劣化させてしまうことがある。Cl含有Si層のCl濃度を1.0×1022atoms/cm3以下とすることで、Si/SiO界面におけるダングリングボンド密度に対してCl濃度が過剰となることを抑制することができ、Clがキャリア散乱原因となることを抑制し、半導体装置の電気特性の劣化を抑制することが可能となる。Cl含有Si層のCl濃度を5.0×1021atoms/cm3以下とすることで、この効果をより高めることが可能となる。
【0074】
(c)Cl含有Si層の厚さを1ML以上30Å以下とすることで、上述の効果を適正に高めることが可能となる。Cl含有Si層の厚さを2.5Å以上30Å以下とすることで、上述の効果をより適正に高めることが可能となる。Cl含有Si層の厚さを3Å以上20Å以下とすることで、上述の効果を更に適正に高めることが可能となる。
【0075】
Cl含有Si層の厚さを1ML未満とすると、Si/SiO界面に添加されるCl原子がSi/SiO界面におけるダングリングボンドを終端させるのに不十分となり、界面準位密度を十分に低減させることができないことがある。結果として、半導体装置の電気特性を向上させることができないことがある。Cl含有Si層の厚さを1ML以上とすることで、Si/SiO界面に添加されるCl原子がSi/SiO界面におけるダングリングボンドを終端させるのに十分となり、界面準位密度を十分に低減させることができ、半導体装置の電気特性を向上させることが可能となる。Cl含有Si層の厚さを2.5Å以上とすることで、この効果をより高めることが可能となる。Cl含有Si層の厚さを3Å以上とすることで、この効果を更に高めることが可能となる。
【0076】
Cl含有Si層の厚さを30Åよりも厚くすると、Cl含有Si層よりも上層のSi膜にClが拡散しやすくなることがある。また、Si/SiO界面におけるCl量が過剰となることがある。これらにより、半導体装置の電気特性を劣化させてしまうことがある。Cl含有Si層の厚さを30Å以下とすることで、Cl含有Si層よりも上層のSi膜へのClの拡散を抑制することができ、Si/SiO界面においてCl量が過剰となることを抑制することができ、半導体装置の電気特性の劣化を抑制することが可能となる。Cl含有Si層の厚さを20Å以下とすることで、この効果をより高めることが可能となる。
【0077】
(d)Si/SiO界面に、Cl含有Si層という形でClを取り込むようにしており、これにより、Si/SiO界面だけに、ピンポイントで(局所的に)Clを添加することが可能となる。これにより、Si膜やSiO膜へのClの拡散、混入を抑制することが可能となり、これらの膜へのCl混入に起因する膜特性の劣化、電気特性の劣化を抑制することが可能となる。
【0078】
(e)Si/SiO界面に、Cl含有Si層という形でClを取り込むようにしており、これにより、Si/SiO界面にClを定着させることが可能となる。これにより、Si/SiO界面からこの界面に隣接する膜へのClの拡散を抑制することができ、また、Si/SiO界面におけるCl濃度の均一性を維持することが可能となる。
【0079】
(f)Cl含有Si層形成において、ステップA1,A2を非同時に行うサイクルを所定回数行うことにより、Cl含有Si層のCl濃度および厚さのうち少なくともいずれかを精密に制御することが可能となる。これにより、Si/SiO界面におけるCl濃度およびCl量のうち少なくともいずれかを精密に制御することが可能となる。
【0080】
(g)上述の効果は、Cl含有Si層形成において、上述の各種クロロシラン系ガス、上述の各種不活性ガスを用いる場合や、Si膜形成において、上述の各種シラン系ガス、上述の各種不活性ガスを用いる場合や、アニールにおいて、上述の各種不活性ガスを用いる場合にも、同様に得ることができる。
【0081】
(4)変形例
本態様における基板処理シーケンスは、以下に示す変形例のように変更することができる。これらの変形例は、任意に組み合わせることができる。特に説明がない限り、各変形例の各ステップにおける処理手順、処理条件は、上述の処理シーケンスの各ステップにおける処理手順、処理条件と同様とすることができる。
【0082】
(変形例1)
以下に示す基板処理シーケンスのように、ステップAでは、ウエハ200に対して第1ガスとしてクロロシラン系ガスを供給するステップA1と、ウエハ200が存在する空間を不活性ガスでパージしてこの空間に残留するクロロシラン系ガスを除去するステップA2と、ウエハ200に対して第3ガスとして水素化ケイ素ガスを供給するステップA3と、ウエハ200が存在する空間を不活性ガスでパージしてこの空間に残留する水素化ケイ素ガスを除去するステップA4と、を非同時に行うサイクルを所定回数(n回、nは1以上の整数)行うようにしてもよい。
【0083】
(クロロシラン系ガス→不活性ガス→水素化ケイ素ガス→不活性ガス)×n→シラン系ガス→ANL
【0084】
ステップA3を行う際には、バルブ243dを開き、ガス供給管232d内へ水素化ケイ素ガスを流す。水素化ケイ素ガスは、MFC241dにより流量調整され、ガス供給管232a、ノズル249aを介して処理室201内へ供給され、排気口231aより排気される。このとき、ウエハ200に対して水素化ケイ素ガスが供給される。このとき、バルブ243c,243f,243gを開き、ノズル249a~249cのそれぞれを介して処理室201内へ不活性ガスを供給するようにしてもよい。
【0085】
ステップA3における処理条件としては、
水素化ケイ素ガス供給流量:0.1~1slm
水素化ケイ素ガス供給時間:0.5~2分
が例示される。他の処理条件は、ステップA1における処理条件と同様とすることができる。第3ガス(水素化ケイ素ガス)としては、第2ガスとして例示した上述の各種水素化ケイ素ガスを用いることができる。
【0086】
ステップA4における処理手順、処理条件は、ステップA2における処理手順、処理条件と同様とすることができる。
【0087】
本変形例によっても、上述の態様と同様の効果が得られる。また、ステップA1,A2を行った後、ステップA3,A4を行うことにより、Cl含有Si層のCl濃度を低下させる方向に制御することが可能となる。
【0088】
(変形例2)
以下に示す基板処理シーケンスのように、ステップAでは、ウエハ200に対して第1ガスとしてクロロシラン系ガスを供給するステップA1と、ウエハ200が存在する空間を不活性ガスでパージしてこの空間に残留するクロロシラン系ガスを除去するステップA2と、ウエハ200に対して第4ガスとしてH含有ガスを供給するステップA5と、ウエハ200が存在する空間を不活性ガスでパージしてこの空間に残留するH含有ガスを除去するステップA6と、を非同時に行うサイクルを所定回数(n回、nは1以上の整数)行うようにしてもよい。
【0089】
(クロロシラン系ガス→不活性ガス→H含有ガス→不活性ガス)×n→シラン系ガス→ANL
【0090】
ステップA5を行う際には、バルブ243eを開き、ガス供給管232e内へH含有ガスを流す。H含有ガスは、MFC241dにより流量調整され、ガス供給管232b、ノズル249bを介して処理室201内へ供給され、排気口231aより排気される。このとき、ウエハ200に対してH含有ガスが供給される。このとき、バルブ243c,243f,243gを開き、ノズル249a~249cのそれぞれを介して処理室201内へ不活性ガスを供給するようにしてもよい。
【0091】
ステップA5における処理条件としては、
H含有ガス供給流量:2~10slm
H含有ガス供給時間:2~5分
処理圧力:1333~13332Pa(10~100Torr)
が例示される。他の処理条件は、ステップA1における処理条件と同様とすることができる。H含有ガスとしては、例えは水素(H2)ガスを用いることができる。
【0092】
ステップA6における処理手順、処理条件は、ステップA2における処理手順、処理条件と同様とすることができる。
【0093】
本態様によっても、上述の態様と同様の効果が得られる。また、ステップA1,A2を行った後、ステップA5を行うことにより、Cl含有Si層のCl濃度を低下させる方向に制御することが可能となる。
【0094】
<本開示の他の態様>
以上、本開示の態様を具体的に説明した。但し、本開示は上述の態様に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0095】
上述の態様では、Si膜形成の後にアニールを実施する場合について説明した。しかしながら、以下に示す基板処理シーケンスのように、Si膜形成の後、アニールを実施しなくてもよい。これらの場合においても、上述の態様と同様の効果が得られる。
【0096】
(クロロシラン系ガス→不活性ガス)×n→シラン系ガス
(クロロシラン系ガス→不活性ガス→水素化ケイ素ガス→不活性ガス)×n→シラン系ガス
(クロロシラン系ガス→不活性ガス→H含有ガス→不活性ガス)×n→シラン系ガス
【0097】
上述の態様では、Cl含有半導体層および半導体膜のそれぞれに含まれる半導体元素がSiを含む場合について説明した。しかしながら、Cl含有半導体層および半導体膜に含まれる半導体元素は、Siを含む場合に限らず、Siおよびゲルマニウム(Ge)のうち少なくともいずれかを含んでいてもよい。すなわち、Cl含有半導体層は、Cl含有Si層、Cl含有Ge層、およびCl含有SiGe層のうち少なくともいずれかを含んでいてもよい。また、半導体膜は、Si膜、Ge膜、およびSiGe膜のうち少なくともいずれかを含んでいてもよい。これらの場合においても、上述の態様と同様の効果が得られる。
【0098】
上述の態様では、Cl含有Si層形成からアニールに至る一連のステップを、同一の処理室201内で(in-situで)行う例について説明した。しかしながら、本開示はこのような態様に限定されない。例えば、Cl含有Si層形成からSi膜形成に至る一連のステップを同一の処理室内で行い、その後、アニールを他の処理室内で(ex-situで)行うようにしてもよい。この場合においても上述の態様における効果と同様の効果が得られる。
【0099】
また例えば、Si膜形成とアニールとの間に、Si膜以外の膜(シリコン酸化膜やシリコン窒化膜等)を形成する他のステップ(他の成膜)を行うようにしてもよい。この場合、Cl含有Si層形成からアニールに至る一連のステップ、すなわち、他の成膜を含む一連のステップを、同一の処理室(第1処理室)内で行うようにしてもよい。また、Cl含有Si層形成からSi膜形成に至る一連のステップを同一の処理室(第1処理室)内で行い、他の成膜からアニールに至る一連のステップを他の処理室(第2処理室)内で行うようにしてもよい。また、Cl含有Si層形成からSi膜形成に至る一連のステップを同一の処理室(第1処理室)内で行い、他の成膜を他の処理室(第2処理室)内で行い、アニールをさらに他の処理室(第3処理室)内または第1処理室内で行うようにしてもよい。これらの場合においても上述の態様における効果と同様の効果が得られる。
【0100】
上述の種々の場合において、一連のステップをin-situで行えば、途中、ウエハ200が大気曝露されることはなく、ウエハ200を真空下に置いたまま一貫して処理を行うことができ、安定した基板処理を行うことができる。また、一部のステップをex-situで行えば、それぞれの処理室内の温度を例えば各ステップでの処理温度又はそれに近い温度に予め設定しておくことができ、温度調整に要する時間を短縮させ、生産効率を高めることができる。
【0101】
上述の態様では、ノズル249a~249cが隣接(近接)して設けられている例について説明したが、本開示はこのような態様に限定されない。例えば、ノズル249a,249cは、反応管203の内壁とウエハ200との間における平面視において円環状の空間のうち、ノズル249bから離れた位置に設けられていてもよい。この場合においても上述の態様における効果と同様の効果が得られる。
【0102】
基板処理に用いられるレシピは、処理内容に応じて個別に用意し、電気通信回線や外部記憶装置123を介して記憶装置121c内に格納しておくことが好ましい。そして、処理を開始する際、CPU121aが、記憶装置121c内に格納された複数のレシピの中から、基板処理の内容に応じて、適正なレシピを適宜選択することが好ましい。これにより、1台の基板処理装置で様々な膜種、組成比、膜質、膜厚の膜を、再現性よく形成することができるようになる。また、オペレータの負担を低減でき、操作ミスを回避しつつ、処理を迅速に開始できるようになる。
【0103】
上述のレシピは、新たに作成する場合に限らず、例えば、基板処理装置に既にインストールされていた既存のレシピを変更することで用意してもよい。レシピを変更する場合は、変更後のレシピを、電気通信回線や当該レシピを記録した記録媒体を介して、基板処理装置にインストールしてもよい。また、既存の基板処理装置が備える入出力装置122を操作し、基板処理装置に既にインストールされていた既存のレシピを直接変更するようにしてもよい。
【0104】
上述の態様では、一度に複数枚の基板を処理するバッチ式の基板処理装置を用いて膜を形成する例について説明した。本開示は上述の態様に限定されず、例えば、一度に1枚または数枚の基板を処理する枚葉式の基板処理装置を用いて膜を形成する場合にも、好適に適用できる。また、上述の態様では、ホットウォール型の処理炉を有する基板処理装置を用いて膜を形成する例について説明した。本開示は上述の態様に限定されず、コールドウォール型の処理炉を有する基板処理装置を用いて膜を形成する場合にも、好適に適用できる。
【0105】
これらの基板処理装置を用いる場合においても、上述の態様や変形例と同様なシーケンス、処理条件にて成膜を行うことができ、これらと同様の効果が得られる。
【0106】
また、上述の態様や変形例等は、適宜組み合わせて用いることができる。このときの処理手順、処理条件は、例えば、上述の態様の処理手順、処理条件と同様とすることができる。
【実施例】
【0107】
図1に示す基板処理装置を用い、
図4に示す基板処理シーケンスにより、ウエハの表面に設けられたSiO膜上に、Cl含有Si層およびSi膜をこの順に形成し、評価サンプルを作製した。各ステップにおける処理手順、処理条件は、上述の態様の各ステップにおける処理手順、処理条件と同様とした。評価サンプルとしては、Cl含有Si層におけるCl濃度を変化させたものを複数準備した。そして、それぞれの評価サンプルにおけるダングリングボンド密度を測定した。
【0108】
図5に、各評価サンプルの、Si膜とSiO膜との界面(以下、Si/SiO界面)における、Cl濃度とダングリングボンド密度との関係、すなわち、ダングリングボンド密度のSi/SiO界面におけるCl濃度依存性を示す。
図5の横軸はSi/SiO界面におけるCl濃度[atoms/cm
3]を、縦軸はSi/SiO界面におけるダングリングボンド密度[個/cm
3]をそれぞれ示している。図中の●印は各評価サンプルにおけるダングリングボンド密度の測定値をプロットしたものを示している。
【0109】
図5より、Si/SiO界面におけるCl濃度が高いほど、ダングリングボンド密度が低下していることが分かる。特に、Si/SiO界面におけるCl濃度を1.0×10
20atoms/cm
3以上とすることにより、好ましくは3.0×10
20atoms/cm
3以上とすることにより、ダングリングボンド密度を大幅に低減できることが分かる。
【符号の説明】
【0110】
200 ウエハ(基板)