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特許7362040グレージングチャンネル、およびグレージングチャンネル付き窓ガラス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-06
(45)【発行日】2023-10-17
(54)【発明の名称】グレージングチャンネル、およびグレージングチャンネル付き窓ガラス
(51)【国際特許分類】
   E06B 3/62 20060101AFI20231010BHJP
   E06B 3/64 20060101ALI20231010BHJP
【FI】
E06B3/62 Z
E06B3/64
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2019234908
(22)【出願日】2019-12-25
(65)【公開番号】P2020109248
(43)【公開日】2020-07-16
【審査請求日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】P 2018248333
(32)【優先日】2018-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(72)【発明者】
【氏名】荒巻 粛
(72)【発明者】
【氏名】桶谷 幸史
【審査官】河本 明彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-199946(JP,A)
【文献】特開2007-211524(JP,A)
【文献】特開平09-013814(JP,A)
【文献】特開2009-179996(JP,A)
【文献】特開平09-060432(JP,A)
【文献】特開平09-328969(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 3/62
E06B 3/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
窓ガラスを窓枠に取り付ける際に、窓ガラスの周縁部に装着されるグレージングチャンネルであって、
底面部と、前記底面部に接するコーナー部と、前記コーナー部から立設させた側壁部とを有する本体部と、
前記側壁部の上部から前記窓ガラスの主面に向けて斜め上方に延びるシール部と、を備え、
前記シール部の一部にサポート部を有し、
前記底面部、前記側壁部、および前記サポート部は硬質部材からなり、
前記シール部は軟質部材からなり、
前記サポート部が、前記シール部の表面であって、前記本体部と反対側に配置される、グレージングチャンネル。
【請求項2】
窓ガラスを窓枠に取り付ける際に、窓ガラスの周縁部に装着されるグレージングチャンネルであって、
底面部と、前記底面部に接するコーナー部と、前記コーナー部から立設させた側壁部とを有する本体部と、
前記側壁部の上部から前記窓ガラスの主面に向けて斜め上方に延びるシール部と、を備え、
前記シール部の一部にサポート部を有し、
前記底面部、前記側壁部、および前記サポート部は硬質部材からなり、
前記シール部は軟質部材からなり、
前記コーナー部は、軟質部材からなる、グレージングチャンネル。
【請求項3】
窓ガラスを窓枠に取り付ける際に、窓ガラスの周縁部に装着されるグレージングチャンネルであって、
底面部と、前記底面部に接するコーナー部と、前記コーナー部から立設させた側壁部とを有する本体部と、
前記側壁部の上部から前記窓ガラスの主面に向けて斜め上方に延びるシール部と、を備え、
前記シール部の一部にサポート部を有し、
前記底面部、前記側壁部、および前記サポート部は硬質部材からなり、
前記シール部は軟質部材からなり、
前記本体部の、前記底面部と前記コーナー部との間、および前記側壁部と前記コーナー部との間に、陥入部を有する、グレージングチャンネル。
【請求項4】
前記陥入部は、縦断面において、前記本体部の内面および外面の両方に形成される、請求項3に記載のグレージングチャンネル。
【請求項5】
前記サポート部が、前記シール部の表面であって、前記本体部の側に配置される、請求項から4のいずれか一項に記載のグレージングチャンネル。
【請求項6】
前記窓枠から前記側壁部の内面までの距離に対する、前記窓枠から前記窓ガラスの主面までの距離の比が3以上である、請求項1からのいずれか一項に記載のグレージングチャンネル。
【請求項7】
前記窓枠から前記窓ガラスの主面までの距離が3mm以上である、請求項1からのいずれか一項に記載のグレージングチャンネル。
【請求項8】
前記シール部の厚みに対する前記窓枠から前記窓ガラスの主面までの距離の比が1以上である、請求項1からのいずれか一項に記載のグレージングチャンネル。
【請求項9】
前記シール部より前記底面部の側に位置し、前記側壁部から突出する、硬質部材と軟質部材とで構成される舌片状部を備える、請求項1から8のいずれか一項に記載のグレージングチャンネル。
【請求項10】
前記軟質部材の硬度が60度以上80度未満であり、前記硬質部材の硬度が80度以上100度以下である、請求項1からのいずれか一項に記載のグレージングチャンネル。
【請求項11】
前記硬質部材が、ポリ塩化ビニル、ABS樹脂、AES樹脂、クロロプレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴム、シリコンゴム、およびサーモプラスチックエラストマーからなる群から選択されるいずれかの材料で構成される、請求項1から10のいずれか一項に記載のグレージングチャンネル。
【請求項12】
縦断面において、前記側壁部の長溝部の前記シール部に向かって延びる方向にある中心線L1と前記シール部の延出方向にある中心線L2とのなす角θ1が120~175°である、請求項1から11のいずれか一項に記載のグレージングチャンネル。
【請求項13】
前記グレージングチャンネルは、前記窓ガラスの両側縁部に別々に接合される、請求項1から12のいずれか一項に記載のグレージングチャンネル。
【請求項14】
前記グレージングチャンネルの長手方向の寸法を300mmに切断することにより作製される試験体を、アルミ板の2つの主面の側縁部に1つずつ装着し、開口幅が32mmの窓枠に前記試験体が接触してから嵌合させ終わるまでに前記試験体に掛かる、嵌合試験装置において測定した最大荷重Y(単位:N/100mm)が下記式(1)、式(2)を満たす、請求項13に記載のグレージングチャンネル。
44X+48X+112 ≦ Y ≦ 63X+55X+250 式(1)
X=(D×2+V)-32 式(2)
ここで、Dは前記試験体の前記側壁部の溝底と前記シール部の先端との前記アルミ板の厚さ方向の長さ、Vは前記アルミ板の厚さ(単位:mm)である。
【請求項15】
前記側壁部の溝底と前記シール部の先端との前記窓ガラスの厚さ方向の長さが1mm以上である、請求項1から14のいずれか一項に記載のグレージングチャンネル。
【請求項16】
縦断面において、前記側壁部の前記窓枠に嵌合する嵌合幅が0.1~0.5mmである、請求項1から15のいずれか一項に記載のグレージングチャンネル。
【請求項17】
縦断面において、前記シール部の断面積と前記サポート部の断面積の和が5~25mm2である、請求項1から16のいずれか一項に記載のグレージングチャンネル。
【請求項18】
前記グレージングチャンネルは巻廻されている、請求項1から17のいずれか一項に記載のグレージングチャンネル。
【請求項19】
前記グレージングチャンネルは、直径200~1500mmの芯部材に巻廻されている、請求項18に記載のグレージングチャンネル。
【請求項20】
前記グレージングチャンネルは直径220~2000mmに巻廻されている、請求項18または19に記載のグレージングチャンネル。
【請求項21】
請求項1から17のいずれか一項に記載のグレージングチャンネルと、
前記グレージングチャンネルが取り付けられた窓ガラスと
を有する、グレージングチャンネル付き窓ガラス。
【請求項22】
前記窓ガラスは、第1のガラス板と、第2のガラス板と、前記第1のガラス板および前記第2のガラス板とを隔置するためのスペーサと、前記第1のガラス板および前記第2のガラス板との間に形成された中空層とを有する複層ガラスである請求項21に記載のグレージングチャンネル付き窓ガラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グレージングチャンネル、およびグレージングチャンネル付き窓ガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
窓ガラスを窓枠に取り付ける際、グレージングチャンネルが窓ガラスの周縁部に装着される。特許文献1において、開口を有する断面U字状の硬質樹脂部と、硬質樹脂部に一体成型され硬質樹脂部の開口の両先端に設けられた軟質樹脂部と、を備えるグレージングチャンネルを、二層の複層ガラスに装着することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-211524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
グレージングチャンネルは、窓ガラスと窓枠との間をシールするために使用される。従来のグレージングチャンネルは、窓ガラスの性能を安定して保持するため、窓ガラスの厚みと窓枠の開口幅との差が2mm以上5mm以下、すなわち窓ガラスと窓枠との距離が1mm以上2.5mm以下を前提として用いられている。しかしながら、窓ガラスの厚みと窓枠の開口幅との差がこれ以上大きくなった場合、窓ガラスを安定して窓枠に保持することが難しくなる懸念がある。
【0005】
また、近年、断熱性、遮音性等を向上させるため、三層の複層ガラスを、高機能の窓ガラスとして使用することが検討されている。三層の複層ガラスの厚みは、二層の複層ガラスの厚みより厚いため、三層の複層ガラスに対応する窓枠は、幅広の開口幅となる。
【0006】
幅広の開口幅の窓枠には、三層の複層ガラスだけでなく二層の複層ガラスが取り付けられる。二層の複層ガラスを幅広の開口幅の窓枠に適用する場合、窓ガラスと窓枠との距離が大きくなり、上述したように、従来のグレージングチャンネルでは、窓ガラスを安定して窓枠に保持することが難しくなる懸念がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、窓ガラスの性能を安定して保持できるグレージングチャンネル、およびグレージングチャンネル付き窓ガラスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、窓ガラスを窓枠に取り付ける際に、窓ガラスの周縁部に装着されるグレージングチャンネルは、底面部と、前記底面部に接するコーナー部と、前記コーナー部から立設させた側壁部とを有する本体部と、前記側壁部の上部から前記窓ガラスの主面に向けて斜め上方に延びるシール部と、を備え、前記シール部の一部にサポート部を有し、前記底面部、前記側壁部、および前記サポート部は硬質部材からなり、前記シール部は軟質部材からなる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、窓ガラスの性能を安定して保持できるグレージングチャンネル、およびグレージングチャンネル付き窓ガラスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、第1実施形態のグレージングチャンネル付き窓ガラスの概略縦断面図である。
図2図2は、図1の一部を拡大したグレージングチャンネル付き窓ガラスの断面図である。
図3図3は、第1実施形態のグレージングチャンネルの概略断面図である。
図4図4は、試験体Gの概略断面図である。
図5図5は、試験体Hの概略断面図である。
図6図6は、試験体Jの概略断面図である。
図7図7は、試験体Kの概略断面図である。
図8図8は、XとYとの関係を示したグラフである。
図9図9は、第2実施形態のグレージングチャンネル付き窓ガラスの概略縦断面図である。
図10図10は、第3実施形態のグレージングチャンネル付き窓ガラスの概略縦断面図である。
図11図11は、グレージングチャンネルが芯部材にロール状に巻廻された斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面にしたがって本発明の好ましい実施形態について説明する。本発明は以下の好ましい実施形態により説明される。本発明の範囲を逸脱すること無く、多くの手法により変更を行うことができ、実施形態以外の他の実施形態を利用することができる。したがって、本発明の範囲内における全ての変更が特許請求の範囲に含まれる。
【0012】
本明細書において、方向、位置を表わす「上」「下」「左」「右」は、窓ガラスを建物に取り付けた際の「上」「下」「左」「右」を意味する。
【0013】
<第1実施形態>
第1実施形態について、図1図2を参照して説明する。図1はグレージングチャンネル付き窓ガラスの断面図であり、図2図1の一部を拡大したグレージングチャンネル付き窓ガラスの断面図である。なお、実施形態では、グレージングチャンネルが、二層の複層ガラスで構成される窓ガラスに装着される場合について説明する。実施形態に係るグレージングチャンネルは、防火性能を有するガラス、例えば網入りガラス、また、複層ガラス等の窓ガラスに好適に装着することができる。
【0014】
実施形態に係るグレージングチャンネル付き窓ガラス10は、図1に示されるように、二層の複層ガラス20と、複層ガラス20を構成している第1のガラス板22および第2のガラス板24の周縁に位置する側縁部22a、24aに別々に装着されるグレージングチャンネル50とを有する。そして、グレージングチャンネル付き窓ガラス10は、例えば窓枠80に形成された溝部82に取り付けられる。
【0015】
複層ガラス20は、図1に示されるように、第1のガラス板22および第2のガラス板24と、第1のガラス板22および第2のガラス板24を隔置するスペーサ26と、を備える。第1のガラス板22および第2のガラス板24と、スペーサ26とにより中空層28が画定される。スペーサ26は第1のガラス板22および第2のガラス板24の内側主面の側縁に沿って配置されるので、第1のガラス板22および第2のガラス板24の間隔がスペーサ26により一定に保持される。
【0016】
第1のガラス板22、および第2のガラス板24は、例えばソーダライムガラス、アルミノシリケートガラス、アルミノボロシリケートガラス、無アルカリガラス等の無機ガラスの板である。
【0017】
第1のガラス板22、および第2のガラス板24は、例えば、物理強化処理、または化学強化処理等の強化処理が施されたガラス板であってもよい。また、第1のガラス板22、および第2のガラス板24は、複数のガラス板を貼り合わせた合わせガラスであってもよい。
【0018】
第1のガラス板22、および第2のガラス板24の主面に、機能を向上させるための機能性膜を形成してもよい。機能性膜として、例えば低放射性膜(Low-E膜)、防曇膜、防汚膜、撥水性膜が挙げられる。第1のガラス板22、および第2のガラス板24の厚みは、例えば1mm以上24mm以下の範囲であることが好ましい。
【0019】
第1のガラス板22の内側主面と、第1のガラス板22の内側主面に対向するスペーサ26の面とが、一次シール30により接着される。また、第2のガラス板24の内側主面と、第2のガラス板24の内側主面に対向するスペーサ26の面とが、一次シール30により接着される。さらに、スペーサ26の外側(中空層28の反対側)と、第1のガラス板22および第2のガラス板24とにより、凹状の溝が形成され、凹状の溝に二次シール32が充填される。二次シール32は一次シール30に接する。一次シール30と二次シール32とにより、中空層28が外気から遮断される。
【0020】
スペーサ26は中空状に構成され、空洞部を有する。スペーサ26の内側(中空層28の側)の面には、スペーサ26の長手方向(紙面に垂直な方向)に沿って通気孔34が所定の間隔で設けられる。通気孔34はスペーサ26の空洞部に貫通するように形成される。これによって、スペーサ26の空洞部と中空層28とが連通する。また、スペーサ26の空洞部には、粒状ゼオライト等の乾燥剤36が充填されているので、中空層28内の気体が通気孔34を介して乾燥剤36によって乾燥される。
【0021】
スペーサ26は、アルミニウムを主材質とする金属製スペーサであっても、スペーサ本体を硬質の樹脂製としてその表面にアルミニウムシートを被覆したスペーサであってもよい。また、スペーサ26は、樹脂製スペーサであってもよい。樹脂製スペーサを用いる場合は、一次シールと二次シールを用いなくてもよい。
【0022】
一次シール30としては、通常架橋処理されないブチルゴム、又はポリイソブチレンをベースとし、着色と補強を目的としたカーボンブラック等のフィラーを含有せしめたものが好適である。なお、一次シール30は固化せず、粘着性のみを有するため、いわゆる複層ガラスにおけるスペーサ26と第1のガラス板22および第2のガラス板24との間の接着は、二次シール32により確保される。
【0023】
二次シール32としては、ポリサルファイド(横浜ゴム株式会社製:商品名:ハマタイトSM9000)、シリコーン(東レ・ダウコーニング株式会社製:商品名:SE936)、ウレタン(サンユレック株式会社製:商品名:SANYU IGS205)等の硬化性
エラストマをベースとし、第1のガラス板22および第2のガラス板24の接着性を発現するために適当な変性を加えられたもの等が好適である。
【0024】
実施形態のグレージングチャンネル50について説明する。図1に示されるように、グレージングチャンネル50は、本体部52とシール部54と、を備える。本体部52は、底面部52Aと、底面部52Aに接するコーナー部52Bと、コーナー部52Bから立設される側壁部52Cと、を備える。底面部52Aと側壁部52Cとは、硬質部材で構成されている。なお、底面部52Aと側壁部52Cとは略直交の位置関係にある。また、コーナー部52Bは、底面部52Aと側壁部52Cとの間に位置する。
【0025】
シール部54は、側壁部52Cの上部から、複層ガラス20の主面に向けて斜め上方に延びる。シール部54は、側壁部52Cから離れるにしたがい、底面部52Aから徐々に離れる。シール部54は軟質部材で構成されており、その弾性力により内側方向に複層ガラス20を押圧するため、複層ガラス20を保持することができる。また、シール部54は、窓枠80と係合する係合部54Bを有する。
【0026】
図1に示されるように、窓枠80は、グレージングチャンネル付き窓ガラス10を収容するための溝部82、およびグレージングチャンネル50と係合する一対の爪部84を備える。一対の爪部84が窓枠80の開口幅を決定する。爪部84の内側先端が、窓枠80からの距離を測定するための基準となる。
【0027】
側壁部52Cは、シール部54との間に、窓枠80の爪部84と嵌合する長溝部122を設けておくことが好ましい。長溝部122は、窓枠80の爪部84と接する溝底124を備える。溝底124は、面一な平坦面として形成されることが好ましい。
【0028】
図1に示されるように、実施形態のグレージングチャンネル50は、シール部54の一部に硬質部材からなるサポート部56を備える。シール部54の一部とは、シール部54とサポート部56とが接している状態を意味する。また、サポート部56とは、図2において、鉛直上に延びる側壁部52の上端52Dの側面52Eを起点として複層ガラス20の主面に向けて斜め上方に延びる部分を指す。
【0029】
次に、上記構成の作用について説明する。図1に示されるように、第1のガラス板22および第2のガラス板24の側縁部22a、24aにグレージングチャンネル50が別々に装着されており、シール部54、54により、複層ガラス20が両主面側から保持される。この状態で、例えば、複層ガラス20の何れかの主面に風圧等の圧力を受けると、圧力の方向に複層ガラス20は移動しようとし、圧力の方向にあるシール部54を押圧する。シール部54が軟質部材で構成されているので、シール部54は、更に変形しようとする。一方、圧力の方向と反対側のシール部54と複層ガラス20との距離は広がろうとし、シール部54による複層ガラス20を保持する力が弱まる懸念がある。
【0030】
実施形態において、シール部54は、その一部に硬質部材からなるサポート部56を備えているので、サポート部56は複層ガラス20の押圧に抗して、シール部54が変形することを抑制する。サポート部56は、複層ガラス20に対する反発力をシール部54に付与できる。サポート部56を含む一対のシール部54は、複層ガラス20を安定して保持することができる。したがって、複層ガラス20で構成される窓ガラスの性能が安定して保持される。
【0031】
実施形態では、サポート部56は、本体部52の側壁部52Cに連続して設けられる。この構造は、サポート部56をシール部54に容易に配置させることができる。実施形態では、サポート部56は、シール部54の表面であって、本体部52の側に配置される。この構成は、窓として設置した際に、シール部54とサポート部56との界面が露出しない外観を提供し、意匠性を向上させることができる。
【0032】
窓枠80から側壁部52Cの内面までの距離Aに対する、窓枠80から複層ガラス20の主面までの距離Bの比(B/A)が3以上である場合、サポート部56を設けることが好ましい。比(B/A)が3以上とは、側壁部52Cの内面から複層ガラス20の主面までの距離が大きくなることを意味する。この距離が大きくなると、本体部52から複層ガラス20の主面に延びるシール部54の長さが大きくなる。シール部54の長さが大きくなると、シール部54は変形しやすくなる。変形を抑制するために、サポート部56をシール部54に配置することが、より好ましい。窓枠80から側壁部52Cの内面までの距離Aとは、爪部84の内側先端から、爪部84の内側先端に直交する直線と側壁部52Cの内面との交点までの距離を意味する。側壁部52Cが傾いている場合、最も長い距離を意味する。
【0033】
また、窓枠80から複層ガラス20の主面までの距離Bが3mm以上の場合、シール部54の長さが大きくなり、シール部54は変形しやすくなる。変形を抑制するためサポート部56を配置することが、より好ましい。
【0034】
また、シール部54の厚みCに対する、窓枠80から複層ガラス20の主面までの距離Bの比(B/C)が1以上である場合、サポート部56を設けることが好ましい。シール部54の厚みCは、シール部54の最も厚い部分の厚みを意味する。比(B/C)が1以上とは、複層ガラス20の主面までの距離Bに対して、相対的にシール部54の厚みCが薄いことを意味する。シール部54の厚みCが相対的に薄くなると変形しやすくなるため、その変形を抑制するためサポート部56をシール部54に配置することが、より好ましい。
【0035】
また、シール部54の厚みCは、1.0~2.5mmであることが好ましい。シール部54の厚みが1.0~2.5mmであれば、グレージングチャンネル50が複層ガラス20を保持しやすい。シール部54の厚みCは、1.5~2.2mmがより好ましく、1.7~1.9mmがさらに好ましい。
【0036】
なお、上述の距離A、および距離Bは、グレージングチャンネル付き窓ガラス10を窓枠80に取り付けた状態での距離を意味する。
【0037】
実施形態において、図1に示されるように、好ましくは、本体部52は、側壁部52Cから突出する舌片状部58、および舌片状部60を備える。舌片状部58は、底面部52Aを基準として、舌片状部60より上方に配置される。
【0038】
舌片状部58は、硬質部材58Aおよび軟質部材58Bにより構成される。同様に、舌片状部60は、硬質部材60Aおよび軟質部材60Bにより構成される。複層ガラス20にグレージングチャンネル50を装着した際、軟質部材58Bおよび軟質部材60Bは変形し、その弾性力により内側方向に複層ガラス20を押圧する。舌片状部58、および舌片状部60は、シール部54を補完し、複層ガラス20に対する保持力を向上させることができる。
【0039】
また、舌片状部58は硬質部材58Aを備えるので、舌片状部58は複層ガラス20に対する反発力を有することができ、同様に、舌片状部60は硬質部材60Aを備えるので、舌片状部60は複層ガラス20に対する反発力を有することができる。舌片状部58および舌片状部60の変形を抑制することができる。
【0040】
なお、本実施形態においては、舌片状部58は硬質部材58Aを備え、舌片状部60は硬質部材60Aを備えるが、舌片状部58は硬質部材58Aを備えずに軟質部材58Bのみにより構成されてもよく、舌片状部60は硬質部材60Aを備えずに軟質部材60Bのみにより構成されてもよい。
【0041】
実施形態において、グレージングチャンネル50は、図3に示すように、底面部52Aと側壁部52Cとが略直線状となるように押出成形され、コーナー部52Bを軸にして、底面部52Aと側壁部52Cとが略直交となるように折り曲げることにより製造されることが好ましい。底面部52Aと側壁部52Cとが略直線状となるように押出成形されれば、長手方向(紙面垂直方向)に巻廻でき、運搬、保管がしやすい。
【0042】
図11は、グレージングチャンネル50が芯部材90にロール状に巻廻された斜視図である。図11に示すように、グレージングチャンネル50を芯部材90に巻廻する場合には、直径D1が200~1500mmの芯部材90にグレージングチャンネル50を巻廻することが好ましい。芯部材90の直径D1が200mm以上であれば、巻廻したグレージングチャンネル50を開いた際に、グレージングチャンネル50が巻廻の状態に戻りにくいため、複層ガラス20に装着しやすく、作業性がよい。芯部材90の直径D1は、400mm以上がより好ましい。また、芯部材90の直径D1が1500mm以下であれば、巻廻したグレージングチャンネル50が大きすぎず、運搬、保管がしやすい。芯部材90の直径D1は、1000mm以下がより好ましい。また、底面部52A、側壁部52C、サポート部56、硬質部材58A、および硬質部材60Aの硬度が100度以下であれば、巻廻したグレージングチャンネル50を開いた際にグレージングチャンネル50が巻廻の状態に戻りにくい。
【0043】
巻廻されたグレージングチャンネル50は、直径D2が220~2000mmであることが好ましい。巻廻されたグレージングチャンネル50の直径D2が220mm以上であれば、巻廻したグレージングチャンネル50を開いた際に、グレージングチャンネル50が巻廻の状態に戻りにくいため、複層ガラス20に装着しやすく、作業性がよい。巻廻されたグレージングチャンネル50の直径D2は、400mm以上がより好ましい。また、巻廻されたグレージングチャンネル50の直径D2が2000mm以下であれば、巻廻したグレージングチャンネル50が大きすぎず、運搬、保管がしやすい。巻廻されたグレージングチャンネル50の直径D2は、1000mm以下がより好ましい。
【0044】
第1のガラス板22の周縁に位置する側縁部22aに装着されるグレージングチャンネル50と、第2のガラス板24の周縁に位置する側縁部24aに装着されるグレージングチャンネル50とを組み合わせて、芯部材90にロール状に巻廻してもよい。グレージングチャンネル50、50を組み合わせて芯部材90に巻廻することにより、芯部材90を1つ用いればよく、作業性がよい。
【0045】
実施形態において、図1図3に示されるように、グレージングチャンネル50は、本体部52の、底面部52Aとコーナー部52Cとの間、および側壁部52Cとコーナー部52Bとの間に、陥入部59を有することが好ましい。コーナー部52Bを軸にして、底面部52Aと側壁部52Cとを折り曲げるときに、陥入部59があることにより、グレージングチャンネル50に応力がかかりにくく、破損しにくい。
【0046】
陥入部59が本体部52の内面に形成されることにより、底面部52Aと側壁部52Cとを折り曲げるときに本体部52の内面が縮みやすくなり、グレージングチャンネル50がコーナー部52Bで破断しにくい。また、陥入部59が本体部52の外面に形成されることにより、底面部52Aと側壁部52Cとを折り曲げやすく、グレージングチャンネル50がコーナー部52Bで破断しにくい。
【0047】
陥入部59は、本体部52の内面のみ又は外面のみに形成されてもよいが、本体部52の内面および外面の両方に形成されることが好ましい。陥入部59が本体部52の内面および外面の両方に形成されることにより、グレージングチャンネル50に応力がさらにかかりにくく、破損しにくい。
【0048】
コーナー部52Bは、軟質部材からなることが好ましい。コーナー部52Bを軸にして、底面部52Aと側壁部52Cとを折り曲げるときに、コーナー部52Bが軟質部材からなることにより、グレージングチャンネル50に応力がかかりにくく、破損しにくい。
【0049】
図3に示すように、コーナー部52Bの長さPは、1~15mmであることが好ましい。ここで、コーナー部52Bの長さPとは、底面部52Aと側壁部52Cとが略直線状であるときの底面部52Aと側壁部52Cとの最短距離を意味する。コーナー部52Bの長さPが1mm以上であれば、コーナー部52Bを軸にして、底面部52Aと側壁部52Cとを折り曲げることが容易である。また、コーナー部52Bの長さPの上限は特に限定されないが、15mm以下であってもよく、5mm以下であってもよく、3mm以下であってもよい。
【0050】
底面部52Aの厚さQは、0.5~2mmが好ましく、0.5~1.5mmがより好ましい。底面部52Aの厚さQが0.5mm以上であれば、グレージングチャンネル50が切断されにくく複層ガラス20を保護することができる。底面部52Aの厚さQが2mm以下であれば、側壁部52Cとの偏差が少なく成形性がよい。
【0051】
側壁部52Cの厚さRは、0.5~2mmが好ましく、0.5~1.5mmがより好ましい。側壁部52Cの厚さRが0.5~2mmであれば、グレージングチャンネルとしての機能を果たし組立性がよく、底面部52Aとの偏差も少なく押出成形性がよい。
【0052】
コーナー部52Bの長さPを、底面部52Aの厚さQまたは側壁部52Cの厚さRで除した値は、2~7であることが好ましい。コーナー部52Bの長さPを、底面部52Aの厚さQまたは側壁部52Cの厚さRで除した値が2~7であれば、コーナー部52Bを軸にして、底面部52Aと側壁部52Cとを折り曲げることが容易である。
【0053】
サポート部56の先端から複層ガラス20の主面までの距離、硬質部材58Aの先端から複層ガラス20の主面までの距離、および硬質部材60Aの先端から複層ガラス20の主面までの距離は、略等しいことが好ましい。シール部54、舌片状部58、および舌片状部60が、同様の柔軟性、および反発力の特性を有することが可能になる。
【0054】
底面部52A、側壁部52C、サポート部56、硬質部材58A、および硬質部材60Aの硬度は、80度以上100度以下であることが好ましく、80度以上95度以下であることがより好ましい。
【0055】
シール部54、コーナー部52B、軟質部材58B、および軟質部材60Bの硬度は、60度以上80度未満であることが好ましい。なお、硬度は、JIS K6253(2012)に準拠して測定したデュロメータ硬さの値である。
【0056】
底面部52A、側壁部52C、サポート部56、硬質部材58A、硬質部材60A、シール部54、コーナー部52B、軟質部材58B、および軟質部材60Bを構成する材料は、例えばポリ塩化ビニル、ABS樹脂(アクリロニトリル (Acrylonitrile)、ブタジエン(Butadiene)、スチレン (Styrene)共重合合成樹脂)、AES樹脂(アクリロニトリル
・エチレン-プロピレン-ジエン・スチレン樹脂)、CR(クロロプレンゴム)、EPDM(エチレン・プロピレン・ジエンゴム)、SR(シリコンゴム)、およびTPE(サーモプラスチックエラストマー)が挙げられる。
【0057】
底面部52A、側壁部52C、サポート部56、硬質部材58A、硬質部材60A、シール部54、コーナー部52B、軟質部材58B、および軟質部材60Bの硬度は、ポリ塩化ビニルおよびTPE(サーモプラスチックエラストマー)の場合、可塑剤の配合により調整することができる。可塑剤を配合することにより、硬度を小さくすることができる。可塑剤としては、例えば、フタル酸エステル(DOP、DINP、DIDP、DUP)、アジピン酸エステル、ポリエステル系可塑剤、エポキシ系可塑剤、トリメリット酸系可塑剤、リン酸系可塑剤が挙げられる。ポリ塩化ビニルまたはTPEの量を100としたときに可塑剤を60以上80以下配合することにより、硬度を80度以下とすることができる。また、底面部52A、側壁部52C、サポート部56、硬質部材58A、硬質部材60A、シール部54、コーナー部52B、軟質部材58B、および軟質部材60Bの硬度は、構成する材料の分子構造(例えば構成する材料の分子量)を変えること、ゴム系材料の場合は鉱油などを含ませることにより調整することができる。
【0058】
本実施形態に係るグレージングチャンネル50は、縦断面において、長溝部122のシール部54に向かって延びる方向にある中心線Lとシール部の延出方向にある中心線Lとのなす角θが120~175°であることが好ましい(図2参照)。なお、角度θは、窓ガラスを窓枠に装着する前の状態での角度を表す。θが120~175°であれば、複層ガラス20を窓枠80にはめたときにグレージングチャンネル50に荷重がかかりにくく、複層ガラス20を窓枠80に装着しやすい。θは、130~160°がより好ましく、140~150°がさらに好ましい。
【0059】
本実施形態に係るグレージングチャンネル50は、縦断面において、舌片状部60の側壁部52Cに向かって延びる方向にある中心線Lと長溝部122のシール部54に向かって延びる方向にある中心線Lとのなす角θ2が、90°~170°であることが好ま
しい。θ2が、90°~180°であれば、複層ガラス20を窓枠80にはめたときにグ
レージングチャンネル50に荷重がかかりにくく、複層ガラス20を窓枠80に装着しやすい。θ2は、100°~160°がより好ましく、110°~150°がさらに好まし
く、120°~140°が特に好ましい。なお、角度θは、窓ガラスを窓枠に装着する前の状態での角度を表す。
【0060】
本実施形態に係るグレージングチャンネル50は、θとθとの比θ/θが0.7~1.7であることが好ましい。θ/θが0.7~1.7であれば、複層ガラス20を窓枠80にはめたときにグレージングチャンネル50に荷重がかかりにくく、複層ガラス20を窓枠80に装着しやすい。θ/θは、0.9~1.4がより好ましく、1.0~1.2がさらに好ましい。
【0061】
本実施形態に係るグレージングチャンネル50は、縦断面において、シール部54の断面積とサポート部56の断面積の和が5~25mmであることが好ましい。シール部54の断面積とサポート部56の断面積の和が5~25mmであれば、後述する式(1)を満たしやすく、窓ガラスを窓枠に装着しやすく、窓ガラスの性能を安定して保持しやすい。シール部54の断面積とサポート部56の断面積の和は、8~20mmがより好ましく、10~15mmがさらに好ましい。
【0062】
本実施形態に係るグレージングチャンネル50は、縦断面において、シール部54の断面積が5~25mmであることが好ましく、4~23mmがより好ましく、7~20mmがさらに好ましい。シール部54の断面積が4~23mmであれば、後述する式(1)を満たしやすく、窓ガラスを窓枠に装着しやすく、窓ガラスの性能を安定して保持しやすい。
【0063】
本実施形態に係るグレージングチャンネル50は、縦断面において、サポート部56の断面積が0.1~5mmであることが好ましく、1~4mmがより好ましく、2~3mmがさらに好ましい。サポート部56の断面積が0.1~5mmであれば、後述する式(1)を満たしやすく、窓ガラスを窓枠に装着しやすく、窓ガラスの性能を安定して保持しやすい。
【0064】
本実施形態に係るグレージングチャンネル50は、縦断面において、サポート部56の断面積を、窓枠80から複層ガラス20の主面までの距離Bで除した値が、0.03~1.0であることが好ましく、0.05~0.7であることがより好ましく、0.2~0.6であることがさらに好ましい。サポート部56の断面積を、窓枠80から複層ガラス20の主面までの距離Bで除した値が、0.03~1.0であれば、後述する式(1)を満たしやすく、窓ガラスを窓枠に装着しやすく、窓ガラスの性能を安定して保持しやすい。
【0065】
本実施形態に係るグレージングチャンネル50は、縦断面において、舌片状部58の硬質部材58Aの断面積が0.1~5mmであることが好ましく、0.3~4mmがより好ましく、1~3mmがさらに好ましい。硬質部材58Aの断面積が0.1~5mmであれば、後述する式(1)を満たしやすく、窓ガラスを窓枠に装着しやすく、窓ガラスの性能を安定して保持しやすい。
【0066】
本実施形態に係るグレージングチャンネル50は、縦断面において、舌片状部58の硬質部材58Aの断面積を、窓枠80から複層ガラス20の主面までの距離Bで除した値が、0.03~1.0であることが好ましく、0.05~0.7であることがより好ましく、0.2~0.6であることがさらに好ましい。舌片状部58の硬質部材58Aの断面積を、窓枠80から複層ガラス20の主面までの距離Bで除した値が、0.03~1.0であれば、後述する式(1)を満たしやすく、窓ガラスを窓枠に装着しやすく、窓ガラスの性能を安定して保持しやすい。
【0067】
本実施形態に係るグレージングチャンネル50は、縦断面において、舌片状部60の硬質部材60Aの断面積が0.1~5mmであることが好ましく、0.3~4mmがより好ましく、1~3mmがさらに好ましい。硬質部材60Aの断面積が0.1~5mmであれば、後述する式(1)を満たしやすく、窓ガラスを窓枠に装着しやすく、窓ガラスの性能を安定して保持しやすい。
【0068】
本実施形態に係るグレージングチャンネル50は、縦断面において、舌片状部60の硬質部材60Aの断面積を、窓枠80から複層ガラス20の主面までの距離Bで除した値が、0.03~1.0であることが好ましく、0.05~0.7であることがより好ましく、0.2~0.6であることがさらに好ましい。硬質部材60Aの断面積を、窓枠80から複層ガラス20の主面までの距離Bで除した値が、0.03~1.0であれば、後述する式(1)を満たしやすく、窓ガラスを窓枠に装着しやすく、窓ガラスの性能を安定して保持しやすい。
【0069】
本実施形態に係るグレージングチャンネル50は、縦断面において、サポート部56と舌片状部58の硬質部材58Aの断面積と舌片状部60の硬質部材60Aの断面積との和を、窓枠80から複層ガラス20の主面までの距離Bで除した値が、0.03~2.0であることが好ましく、0.5~1.5であることがより好ましく、0.8~1.3であることがさらに好ましい。サポート部56と舌片状部58の硬質部材58Aと舌片状部60の硬質部材60Aの断面積との和を、窓枠80から複層ガラス20の主面までの距離Bで除した値が、0.03~2.0であれば、後述する式(1)を満たしやすく、窓ガラスを窓枠に装着しやすく、窓ガラスの性能を安定して保持しやすい。
【0070】
本実施形態に係るグレージングチャンネル50は、側壁部52Cの溝底124とシール部54の先端54Aとの複層ガラス20の厚さ方向の長さD(図2参照)が1mm以上であることが好ましい。長さDが1mm以上であれば、後述する式(1)を満たしやすく、窓ガラスを窓枠に装着しやすく、窓ガラスの性能を安定して保持しやすい。長さDは、3mm以上がより好ましく、5mm以上がさらに好ましい。長さDの上限は特に限定されないが、10mm以下であってよい。なお、長さDは、グレージングチャンネル付き窓ガラス10を窓枠80に取り付けた後の状態での距離を意味する。
【0071】
本実施形態に係るグレージングチャンネル50は、縦断面において、側壁部52Cの窓枠80に嵌合する嵌合幅E(図2参照)が0.1~0.5mmであることが好ましい。嵌合幅Eが0.1~0.5mmであれば、後述する式(1)を満たしやすく、窓ガラスを窓枠に装着しやすく、窓ガラスの性能を安定して保持しやすい。嵌合幅Eは、0.2~0.4mmがより好ましい。なお、嵌合幅Eは、グレージングチャンネル付き窓ガラス10を窓枠80に取り付ける前の状態での距離を意味する。
【0072】
本実施形態に係るグレージングチャンネル50を、厚さが22mm、23mm、24mm、25mm、26mm、または27mmの7種類の複層ガラス20に装着することを想
定する。また、開口幅が26mm、32mm、35mmの3種類の窓枠80を用いることを想定する。
【0073】
この場合、窓枠80と複層ガラス20との例えば3~13mmの間隙を埋めるためには、グレージングチャンネル50とガラス板22、24とで形成される空間部140がその間隙の間隔に応じてつぶれることが望まれる。そして、この空間部140がスムースにつぶれるために、グレージングチャンネル50の形状を決める角度(θ1、θ)、グレー
ジングチャンネル50の硬度、寸法等を、上記の値に調整することが好ましい。
【0074】
上記の空間部140のスムースなつぶれは、すなわちグレージングチャンネル50が柔軟であることを示すものであり、複層ガラス20を窓枠80に装着する際の組み付け作業性を向上できるものである。さらに、グレージングチャンネル50の形状を決める角度(θ1、θ)、グレージングチャンネル50の硬度、寸法等の各項目が上記の好ましい数値範囲にあることは、組み付け作業性を向上させるとともに、複層ガラス20の窓枠80への装着保持力を損なうこともない。
【0075】
このように空間部140のつぶれがスムースであり、複層ガラス20と窓枠80との装着保持力が充分に得られ、かつ上記の間隙の例示にある3mmから13mmまでの間隔に対応させるためのグレージングチャンネル50の形状のバリエーションは、上記グレージングチャンネル50の各項目が好ましい範囲内にあれば多くても6種で足り、従来のグレージングチャンネルのように14種も用意する必要がない。
【0076】
また、ガラス板22、24に対するグレージングチャンネル50の取り付けは、グレージングチャンネルの断面形状を有する押し出し機の押し出し口から、樹脂材料を直接または接着剤を介してガラス板面上に押し出し一体成形することによって、簡便に人手をかけずにグレージングチャンネルをガラス板に接合できる。この場合、ガラス板、とりわけ複層ガラスの両面に押し出し口を近接または当接させて、押し出し口をガラス板面に対しその周縁部に沿うように移動させることによって、ガラス板面の全周にグレージングチャンネルを一体成形できる。そして、グレージングチャンネルをガラス板のコーナー部で人手によって曲げる必要もなく、容易にガラス板にグレージングチャンネルを周回配置できる。
【0077】
このようにグレージングチャンネルを押し出し成形する場合、グレージングチャンネルの材料としては、押し出し成形可能な樹脂材料が用いられる。その樹脂材料としては熱可塑性樹脂材料、熱硬化性樹脂材料、湿気硬化性樹脂材料等、種々の材料が例示され、押し出し後に放冷するだけで直ちに固化する点に鑑みて熱可塑性樹脂材料が好ましく、ポリ塩化ビニル樹脂材料は特に好ましい。
【0078】
本実施形態に係るグレージングチャンネル50は、グレージングチャンネル50の長手方向(図1の紙面垂直方向)の寸法を300mmに切断することにより作製される試験体を、アルミ板の2つの主面の側縁部に1つずつ装着し、開口幅が32mmの窓枠に試験体の係合部54Bを嵌合させたときに、試験体にかかる最大荷重Yが下記式(1)、式(2)を満たすことが好ましい。
【0079】
44X+48X+112 ≦ Y ≦ 63X+55X+250 式(1)
X=(D×2+V)-32 式(2)
ここで、アルミ板は複層ガラス20を模擬したものであり、Dは試験体の側壁部52Cの溝底124とシール部54の先端54Aとのアルミ板の厚さ方向の長さ、Vはアルミ板の厚さ(単位:mm)である。Y≧44X+48X+112であれば、複層ガラス20を窓枠80に安定して保持することができる。また、Y≦63X+55X+250であれば、複層ガラス20を窓枠80に装着しやすい。グレージングチャンネル50の硬度、側壁部52Cの溝底124とシール部54の先端54Aとの複層ガラス20の厚さ方向の長さD、および側壁部52Cの窓枠80に嵌合する嵌合幅Eを調整することにより、式(1)、式(2)を満たすことができる。
【0080】
本発明者らは、次の試験を行い、式(1)、式(2)を満たせば、窓ガラスを窓枠に装着しやすく、窓ガラスの性能を安定して保持しやすいことを見出した。
【0081】
まず、寸法が異なる5種類のグレージングチャンネルを作製した。グレージングチャンネルは、硬質部材として硬度が約100度のポリ塩化ビニルを、軟質部材として硬度が約70度のポリ塩化ビニルを、押し出し機の押し出し口から押し出すことにより作製した。なお、作製したグレージングチャンネルは、底面部、コーナー部、側壁部、およびサポート部は硬質部材からなり、シール部は軟質部材からなる。作製したグレージングチャンネルを長さ方向(図1の紙面垂直方向)の寸法を300mmに切断し、試験体G~Lとした。また、複層ガラスを模擬した、厚さが異なる複数のアルミ板を用意した。作製したそれぞれの試験体をアルミ板の主面の側縁部に1つずつ装着した。
【0082】
図4~7は、試験体G~Lの形状、寸法を示しており、図4は試験体G、図5は試験体H、図6は試験体J、図7は試験体Kである。
【0083】
クランプで固定した開口幅が32mmの窓枠に、試験体G~Lの係合部をそれぞれ嵌合させたときの、試験体に掛かる最大荷重Yを求めた。ここで、試験体に掛かる最大荷重Yとは、窓枠に試験体が接触してから嵌合させ終わるまでに試験体に掛かる、嵌合試験装置(AGC社製、KS01)において測定した荷重の最大値のことである。
【0084】
また、窓枠Mは、不二サッシ社製であり、窓枠Nは、LIXIL社製である。
【0085】
表1に、測定に用いた試験体及び窓枠の種類、試験体の寸法と、最大荷重Y(単位:N/100mm)を示す。Xが1mm、0.5mm、0mm、0.5mmとなるように、異なる厚さのアルミ板を用いた。試験体G~Lのいずれにおいても、陥入部59の陥入量は0.3~0.5mm、底面部52Aの硬度は80~98、コーナー部52Bの硬度は60~80、側壁部52Cの硬度は80~98の範囲内であった。表1において、シール部54の断面積、サポート部56の断面積、舌片状部58の硬質部材58Aの断面積、舌片状部60の硬質部材60Aの断面積は、アルミ板の主面の側縁部に1つずつ装着される試験体のうち、試験体1つあたりの値を意味する。
【0086】
【表1】
【0087】
例1~例8は、例9と比べて、試験体を窓枠に嵌合させたときに空間部がスムースにつぶれ、試験体を窓枠に装着しやすく、窓枠に安定して保持することができた。
【0088】
図8は、XとYとの関係を示したグラフである。図8において、グラフ上の下方の点線
は、「Y=44X+48X+112」を示し、上方の点線は「Y=63X+55X+250」を示している。例1~例8は、下方の点線および上方の点線に囲まれた領域にあり、例9は、上方の点線よりもYが大きい領域にある。
【0089】
この結果から、「44X+48X+112 ≦ Y ≦ 63X+55X+250」であるグレージングチャンネルを用いることにより、「Y>63X+55X+250」であるグレージングチャンネル又は「Y<44X+48X+112」であるグレージングチャンネルを用いるときと比べて、窓ガラスを窓枠に装着しやすく、窓ガラスの性能を安定して保持できることがわかった。
【0090】
また、本実施形態のグレージングチャンネル50は、底面部52Aが、ガラス板22、24の端面22b、24bを覆うことが好ましい。こうしてガラス板22、24のエッジがグレージングチャンネル50によってカバーされることになり、ガラス板の搬送時やガラス板の施工時に生じやすい、エッジの欠け等のガラス板の破損を低減できる。
【0091】
本実施形態のグレージングチャンネル50は、窓枠の開口幅Fに対する、縦断面において側壁部52Cの溝底124とシール部54の先端54Aとの複層ガラス20の厚さ方向の長さDの2倍の比(2×D/F)が0.02~0.5であることが好ましい。窓枠の開口幅に対する、縦断面においてグレージングチャンネル50が複層ガラス20の端面に接する長さの比が0.02~0.5であれば、グレージングチャンネルが窓枠から外れにくく、窓ガラスの性能を安定して保持できる。
【0092】
一般に、窓枠のガラス溝幅は一定のものである。一方で、複層ガラスは、その用途や施工部位に応じて、その厚みが様々である。このため、窓枠に複層ガラスを装着する場合、窓枠と複層ガラスとの間隙が一律ではない。実施形態におけるグレージングチャンネル付き窓ガラス10は、グレージングチャンネル50とガラス板22、24とで形成される空間部140がつぶれることによって、上記の間隙のばらつきに対応できる。
【0093】
そして、実施形態におけるグレージングチャンネル50は、シール部54の先端54Aがガラス板22、24に固着されずに当接することが好ましい。先端54Aがガラス板22、24と固着することなく接していることによって、間隙が小さい場合に先端54Aの位置がずれやすく、空間部140が間隙の違いに対応してつぶれやすい。
【0094】
<第2実施形態>
第2実施形態について、図9を参照して説明する。図9は、グレージングチャンネル付き窓ガラスの断面図である。上述した第1実施形態と同一の構成には、同一の符号を付することにより詳細な説明を省略する場合がある。
【0095】
実施形態に係るグレージングチャンネル付き窓ガラス10は、図9に示されるように、二層の複層ガラス20と、複層ガラス20の周縁部に装着されるグレージングチャンネル50とを有する。そして、グレージングチャンネル付き窓ガラス10は、例えば窓枠80に形成された溝部82に取り付けられる。
【0096】
グレージングチャンネル50は、硬質部材からなる本体部52と、本体部52に一体成形される軟質部材からなる一対のシール部54と、を備える。本体部52は、底面部52Aと、底面部52Aに接するコーナー部52Bと、コーナー部52Cの両縁部から立設される側壁部52Cと、を備える。
【0097】
第2実施形態のグレージングチャンネル50と、第1実施形態のグレージングチャンネル50とは、本体部52が複層ガラス20の周縁部に対し開口するU字状の断面を持つ構造であることが異なる。なお、U字状の断面とは略U字状であればよい。
【0098】
また、サポート部56は、複層ガラス20の主面に向けて斜め上方に延びる方向に設けられており、サポート部56が複層ガラス20の主面に直交する場合に比較して、サポート部56によるシール部54に付与される反発力を小さくできる。また、シール部54の柔軟性を維持することができる。シール部54の柔軟性は、複層ガラス20にグレージングチャンネル50を装着することを容易にする。したがって、サポート部56によりシール部54は、柔軟性と反発性とを持ち合わせることができる。
【0099】
実施形態では、サポート部56は、シール部54の表面であって、本体部52の側に配置される。この構成は、窓として設置した際に、シール部54とサポート部56との界面が露出しない外観を提供し、意匠性を向上させることができる。
【0100】
第2実施形態のグレージングチャンネル50は、底面部52Aを切断することにより、第1実施形態のグレージングチャンネル50として使用することも可能である。
【0101】
<第3実施形態>
第3実施形態について、図10を参照して説明する。図10は、グレージングチャンネル付き窓ガラスの断面図である。上述した第1実施形態および第2実施形態と同一の構成には、同一の符号を付することにより詳細な説明を省略する場合がある。
【0102】
実施形態に係るグレージングチャンネル付き窓ガラス10は、図10に示されるように、二層の複層ガラス20と、複層ガラス20の周縁部に装着されるグレージングチャンネル50とを有する。そして、グレージングチャンネル付き窓ガラス10は、例えば窓枠80に形成された溝部82に取り付けられる。
【0103】
第3実施形態のグレージングチャンネル50と、第2実施形態のグレージングチャンネル50とは、シール部54の一部に配置されるサポート部56の位置が異なる。
【0104】
図9に示されるように、サポート部56は、シール部54の表面であって、本体部52と反対側に配置される。
【0105】
この構成は、窓として設置した際に、サポート部56が露出する。露出されたサポート部56は、シール部54の撥水性および防汚性を向上させることができる。
【0106】
第3実施形態のグレージングチャンネル50は、底面部52Aを切断することにより、第1実施形態のグレージングチャンネル50として使用することも可能である。
【0107】
以上、本発明の一実施形態に係るグレージングチャンネルを説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。他の実施形態の一部又は全部との組み合わせや置換などの種々の変形及び改良が、本発明の範囲内で可能である。
【符号の説明】
【0108】
10・・・グレージングチャンネル付き窓ガラス、20・・・複層ガラス、22・・・第1のガラス板、24・・・第2のガラス板、26・・・スペーサ、28・・・中空層、30・・・一次シール、32・・・二次シール、34・・・通気孔、36・・・乾燥剤、50・・・グレージングチャンネル、52・・・本体部、52A・・・底面部、52B・・・コーナー部、52C・・・側壁部、54・・・シール部、56・・・サポート部、58・・・舌片状部、58A・・・硬質部材、58B・・・軟質部材、59・・・陥入部、60・・・舌片状部、60A・・・硬質部材、60B・・・軟質部材、80・・・窓枠、82・・・溝部、84・・・爪部、90…芯部材、140・・・空間部
図1
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図6
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図9
図10
図11