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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-06
(45)【発行日】2023-10-17
(54)【発明の名称】光学積層体
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/26 20060101AFI20231010BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20231010BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20231010BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20231010BHJP
【FI】
G02B5/26
B32B7/023
G09F9/00 313
G02B5/30
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021556290
(86)(22)【出願日】2020-01-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-23
(86)【国際出願番号】 KR2020001457
(87)【国際公開番号】W WO2020204330
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-09-16
(31)【優先権主張番号】10-2019-0037450
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ナ・ヨン・シン
(72)【発明者】
【氏名】キュン・イル・ラ
(72)【発明者】
【氏名】ジン・ソク・ビョン
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・レ・チャン
(72)【発明者】
【氏名】キョン・ムン・コ
【審査官】小久保 州洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-028196(JP,A)
【文献】特開2010-256625(JP,A)
【文献】特表2018-533762(JP,A)
【文献】特開2018-205464(JP,A)
【文献】特開2018-180518(JP,A)
【文献】国際公開第2010/095447(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0141787(US,A1)
【文献】特表2005-535934(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/26
B32B 7/023
G09F 9/00
G02B 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学機能層と、前記光学機能層の少なくとも一面に形成された下記数式4を満たす耐赤化層と、を含み、
前記光学機能層は、ヨウ素系偏光層であり、
前記耐赤化層は、空隙含有層であるか、空隙含有層を含む積層体であり、
前記空隙含有層は、バインダーおよび中空粒子を含み、
前記バインダーは、3個の重合性官能基を有する多官能性アクリレートの重合物を含む、光学積層体:
[数式4]
≦0.9×H
数式4で、Hは、高分子フィルムと前記高分子フィルムの一面に形成された前記耐赤化層の積層体の熱拡散率であり、Hは、前記高分子フィルムの熱拡散率であり、熱拡散率は、NETZSCH社のLFA 457 MicroFlash装置を使用して測定される
【請求項2】
光学機能層は、偏光層または位相差層である、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項3】
耐赤化層は、800nm~1300nmの波長の光に対する反射率が2%以上である、請求項1または2に記載の光学積層体。
【請求項4】
耐赤化層は、小角X線散乱の散乱強度のlog値グラフで0.06~0.209nm-1の散乱ベクトルの範囲内に少なくとも一つのピークを示す、請求項1~3のいずれか一項に記載の光学積層体。
【請求項5】
耐赤化層は、下記数式6を満たすAの値が1.5以下であり、Bの値が0~0.01の範囲内であり、Cの値が0~0.001の範囲内である、請求項1~4のいずれか一項に記載の光学積層体:
[数式6]
【数1】
数式6で、n(λ)は、波長λにおける前記耐赤化層の屈折率であり、λは、300~1800nmの範囲内のいずれか一つの波長である。
【請求項6】
中空粒子は、粒度分布の重量累積曲線でD10粒径、D50粒径およびD90粒径がそれぞれ25nm~50nm、50nm~95nmおよび100nm~200nmの範囲内にある、請求項1~5のいずれか一項に記載の光学積層体。
【請求項7】
空隙含有層は、ソリッド粒子を含まない、請求項1~6のいずれか一項に記載の光学積層体。
【請求項8】
耐赤化層は、厚みが200nm以上である、請求項1~7のいずれか一項に記載の光学積層体。
【請求項9】
耐赤化層が最外郭表面を形成しない、請求項1~8のいずれか一項に記載の光学積層体。
【請求項10】
耐赤化層と光学機能層の距離が90μm以内である、請求項1~9のいずれか一項に記載の光学積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年3月29日付けで提出された韓国特許出願第10-2019-0037450号に基づいて優先権を主張し、当該韓国特許出願文献に開示された内容は、本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本出願は、光学積層体または耐赤化層に関する。
【背景技術】
【0003】
ディスプレイ装置がより苛酷な条件で駆動および/または維持される場合が増加している。例えば、ナビゲーションや、車両計器盤など車両用ディスプレイに使用されるディスプレイ装置は、夏には非常に高温で維持および/または駆動される。
【0004】
ディスプレイ装置の用途に応じて偏光板等の光学積層体が、いわゆるカバーガラスと呼ばれるガラス基板と接触した状態で使用され得る。カバーガラス等は、通常、光学積層体に比べて熱伝導特性に優れている。したがって、カバーガラスに接触している光学積層体には熱がさらに良く伝達される。
【0005】
これにより、偏光板等の光学積層体にも、従来に比べて格別苛酷な条件(特に、従来に比べて顕著に高い温度に維持される条件)の下で耐久性が維持されることが要求される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本出願は、耐赤化層、光学積層体およびディスプレイ装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書において言及する物性のうち測定温度および/または測定圧力が結果に影響を及ぼす物性は、特に別途言及しない限り、常温および/または常圧で測定した結果である。
【0008】
用語「常温」は、加温および減温されない自然そのままの温度であり、例えば、10℃~30℃の範囲内のいずれか一つの温度、約23℃または約25℃程度の温度を意味する。本明細書において温度の単位は、特に別途規定しない限り、℃である。
【0009】
用語「常圧」は、加圧および減圧されない自然そのままの圧力であり、通常、大気圧水準の約1気圧程度を意味する。
【0010】
本明細書において測定湿度が結果に影響を及ぼす物性は、特に別途規定しない限り、当該物性は、前記常温および常圧状態で別途調節されない自然そのままの湿度で測定した物性である。
【0011】
本出願は、光学積層体、ディスプレイ装置または耐赤化層に関する。前記光学積層体またはディスプレイ装置は、前記耐赤化層を含むことができる。本出願において用語「耐赤化層」は、光学機能層を含む多様な光学積層体に適用されて、前記光学積層体または該光学積層体に適用された光学機能層の赤化を防止、緩和、軽減、抑制および/または遅延させることができるすべての種類の層を意味し得る。特に前記耐赤化層は、後述する偏光層(特にヨウ素系偏光層)のように熱に非常に弱い光学機能層が顕著に高い温度のような非常に苛酷な条件で使用および維持される場合にも、該光学機能層の赤化を効果的に防止、緩和、軽減、抑制および/または遅延させることができる。
【0012】
前記赤化とは、光学積層体または光学機能層が赤く変化する現象を意味する。赤化の発生の有無は、例えば、いわゆるCIE L色空間のa値を通じて確認することができる。CIE L色空間で前記a値が正の方向に大きくなることは、対象物がさらに赤色(red)を帯びることを意味する。また、前記a値が負の方向にその絶対値が大きくなるほど、対象物がさらに緑色(green)を帯びることを意味する。したがって、光学機能性層または光学積層体のa値の変化が初期a値に比べて正の方向に大きくなったことは、該光学機能性層または光学積層体が赤化したことを意味する。
【0013】
本出願において用語「耐赤化層」は、光学積層体に適用されるか、光学機能層と共に適用されて、前記光学積層体および/または光学機能層のa値の正数方向への変化または増加を防止、緩和、軽減、抑制および/または遅延させることができるすべての種類の層を意味し得る。
【0014】
前記赤化は、主に光学積層体および/または光学機能層に熱が加えられた場合に容易に発生し、したがって、前記光学積層体および/または光学機能層が高い温度で維持されるほど、前記赤化は容易に発生する。
【0015】
本出願において用語「耐赤化層」は、耐熱テスト後に光学積層体または光学機能層の前記a値の変化量の絶対値を2以下にすることができる層を称し得る。前記耐熱テストは、前記光学積層体および/または光学機能層を約95℃で約750時間程度維持するか、約105℃で約250時間維持するテストを意味する。前記a値の変化量は、前記耐熱テスト後のa値a から前記耐熱テスト前のa値(初期a値)a を引いた数値a -a であるか、あるいは、反対に初期a値(前記a )から前記耐熱テスト後のa値a を引いた数値a -a であり得る。耐赤化層の趣旨に照らして前記a値の変化量は、前記耐熱テスト後のa値a から前記初期a値a を引いた数値a -a であり得る。
【0016】
前記耐熱テストは、通常の耐熱テストに比べて苛酷な条件で行われた耐熱テストであり得る。例えば、前記耐熱テストは、前記光学積層体および/または光学機能層の上面と下面(例えば、上部全面と下部全面)をガラス基板と接触させた状態で行った耐熱テストであり得る。ガラス基板は、通常、光学積層体または光学機能層に比べて熱伝達がうまくいく素材であるので、ガラス基板と接触させた状態で耐熱テストを行うと、加えられた熱の光学積層体および/または光学機能層への影響がさらに大きくなる。前記耐熱テストに適用されるガラス基板の種類は、特に制限されないが、本明細書においては、厚みが略1.1mmのソーダライムガラス基板が適用されたものを基準とする。ガラス基板は、通常、0.6W/mK~1.38W/mK程度の熱伝導度を有するものと知られているが、本出願の光学積層体または光学機能層は、上記のような高い熱伝導度を有するガラス基板が接触した状態で前記耐熱テストが行われても、赤化が防止、緩和、軽減、抑制および/または遅延され得る。本明細書において言及する耐熱テスト関連色座標および/または透過率の数値は、前記厚み1.1mm程度のソーダライムガラスが適用されたものを基準とし、前記耐熱テストにおいて接触は、前記光学機能層またはそれを含む光学積層体が、前記ガラス基板(厚み1.1mm程度のソーダライムガラス板)と直接接触した状態を意味し得る。
【0017】
本出願の光学積層体は、光学機能層と、前記光学機能層の少なくとも一面に形成されている前記耐赤化層とを含むことができる。光学積層体が前記耐赤化層を含むことによって、前記光学積層体または光学機能層の赤化が防止、緩和、軽減、抑制および/または遅延され得る。
【0018】
例えば、前記光学積層体またはそれに含まれる光学機能層は、耐熱テスト後に下記数式1によるCIE Lの色座標a値の変化量△aの絶対値が2以内であり得る。本出願において言及する色座標は、JASCO V-7100スペクトロフォトメーター(Spectrophotometer)を使用して測定した結果である。
【0019】
[数式1]
△a=a -a
【0020】
数式1で、△aは、前記色座標aの変化量であり、a は、前記耐熱テスト後の色座標a値であり、a は、前記耐熱テスト前の色座標a値(初期a値)である。
【0021】
前記変化量△aの絶対値は、他の例示において、約1.9以内、約1.8以内、約1.7以内、約1.6以内、約1.5以内、約1.4以内、約1.3以内、約1.2以内、約1.1以内、約1.0以内、約0.9以内、約0.8以内、約0.7以内、約0.6以内、約0.5以内、約0.4以内、約0.3以内、約0.2以内または約0.1以内であってもよい。前記変化量△aの絶対値は、その数値が低いほど赤化が起こらなかったことを意味するので、その下限値は制限がない。一つの例示において、前記変化量△aの絶対値は、0以上であり得る。一つの例示において、前記変化量△aの絶対値は、前記a値が初期に比べて正の方向に変化する場合の変化量であり得る。
【0022】
前記耐熱テストは、前述したように、前記光学積層体および/または光学機能層を約95℃で約750時間程度維持するか、約105℃で約250時間維持する過程である。このような耐熱テストは、当該光学積層体および/または光学機能層の上面と下面(上部全面および下部全面)を前記ガラス基板(厚み1.1mm程度のソーダライムガラス板)と接触させた状態で行うことができる。前記接触は、直接接触であり得る。このようなa値の変化量は、本明細書の実施例で記述する方式で測定することができる。
【0023】
光学積層体および/または光学機能層に赤化が起こると、通常、透過率が落ちる現象が現れる。本出願の光学積層体は、赤化に対する耐性が卓越しているので、透過率の変化もないか、最小化される。
【0024】
例えば、前記光学積層体または光学機能層は、数式1を確認するためのものと同じ耐熱テストで下記数式2による透過率(光学積層体が偏光板であるか、光学機能層が偏光層である場合には、単体透過率(single transmittance))の変化量△Tsの絶対値が5以内であり得る。前記透過率は、JASCO V-7100スペクトロフォトメーター(Spectrophotometer)を使用して可視光領域の光、例えば、略380nm~780nmの範囲内の光に対して測定した結果である。
【0025】
[数式2]
△Ts=T-T
【0026】
数式2で、△Tsは、前記透過率(光学積層体が偏光板であるか、光学機能層が偏光層である場合には、単体透過率(single transmittance))の変化量であり、Tは、前記耐熱テスト後の透過率(光学積層体が偏光板であるか、光学機能層が偏光層である場合には、単体透過率(single transmittance))(耐熱耐久テスト後の透過率)であり、Tは、前記耐熱テスト前の透過率(光学積層体が偏光板あるか、光学機能層が偏光層である場合には、単体透過率(single transmittance))である。
【0027】
前記変化量△Tsの絶対値は、他の例示において、約4.9以下、約4.8以下、約4.7以下、約4.6以下、約4.5以下、約4.4以下、約4.3以下、約4.2以下、約4.1以下、約4以下、約3.9以下、約3.8以下、約3.7以下、約3.6以下、約3.5以下、約3.4以下、約3.3以下、約3.2以下、約3.1以下、約3以下、約2.9以下、約2.8以下、約2.7以下、約2.6以下、約2.5以下、約2.4以下、約2.3以下、約2.2以下、約2.1以下、約1.9以下、約1.8以下、約1.7以下、約1.6以下、約1.5以下、約1.4以下、約1.3以下、約1.2以下、約1.1以下、約1.0以下、約0.9以下、約0.8以下、約0.7以下、約0.6以下、約0.5以下、約0.4以下、約0.3以下、約0.2以下または約0.1以下であり得る。前記透過率の変化がないほど赤化がないこととなるので、前記変化量△Tsの絶対値の下限は0である。このような変化量△Tsの絶対値は、他の例示において、略0超過であってもよい。
【0028】
前記透過率の変化量を測定するための耐熱テストは、前記a値の変化量を測定するための耐熱テストと同じ条件で行うことができる。透過率は、本明細書の実施例に記載された方式で測定することができる。
【0029】
光学積層体は、光学機能層を含む。用語「光学機能層」は、光学的に意図された少なくとも一つの機能を示す層である。前記光学的に意図された機能の例としては、線偏光や円偏光のような偏光の生成、反射、屈折、吸収、散乱および/または位相遅延(Phase retardation)がある。光学分野では、前記のような機能を有する層が多様に知られており、本出願において適用される光学機能層の例には、前記公知の光学機能層のうち赤化が問題になるすべての種類の層が含まれ得る。
【0030】
一つの例示において、前記光学機能層は、偏光層または位相差層であり得る。本明細書においては、前記光学機能層が偏光層である場合について記述するが、前記光学機能層の種類が偏光層に制限されるものではない。また、光学機能層が偏光層である場合は、前記光学積層体は偏光板であり得る。
【0031】
本明細書において用語「偏光層」と「偏光板」は、異なる対象を称する。用語「偏光層」は、例えば偏光機能を示す多層または単層を単独で称し、偏光板は、前記偏光層と共に偏光機能がない他の要素を含む積層体を称し得る。前記で偏光層と共に含まれる他の要素としては、偏光層の保護フィルムあるいは保護層、前記耐赤化層、位相差層、接着剤層、粘着剤層、ハードコート層または低反射(Low Reflection)層等が例示され得るが、これに制限されるものではない。
【0032】
本出願において適用される偏光層の種類は基本的に制限されない。公知となった最も一般的な偏光層は、線形吸収型偏光層であって、いわゆるポリビニルアルコール(poly(vinyl alcohol))(以下、PVAと呼ぶことができる)偏光層である。本明細書において用語「PVA」は、特に別途規定しない限り、ポリビニルアルコールまたはその誘導体を意味する。PVA偏光層としては、例えばヨウ素や二色性色素のような吸収異方性物質が吸着および配向されている延伸PVAフィルムや、いわゆるコーティング型PVA偏光層であって、PVAをコーティング方式に適用して薄く形成した偏光層等が知られているが、本出願では、上記のような種類の偏光層がすべて適用され得る。PVA偏光層の他にも、LLC(Lyotropic Liquid Crystal)等の液晶化合物で形成した偏光板、重合性液晶化合物(いわゆるRM(Reactive Mesogen)と二色性染料をGH(Guest-Host)方式で配向させて形成した偏光層等も、本出願において適用され得る。
【0033】
本出願においては、特に前記偏光層として、ヨウ素系偏光層が適用される場合にも、前記ヨウ素系偏光層の赤化を効果的に防止、緩和、軽減、抑制および/または遅延させることができる。
【0034】
ヨウ素系偏光層は、前記吸収異方性物質としてヨウ素系物質が適用された偏光層である。前記吸収異方性物質としては、代表的にヨウ素系物質が適用されるか、アゾ染料等のような二色性染料が適用され得る。前者の場合、ヨウ素系偏光層と呼ばれ、後者の場合、染料系偏光層と呼ばれ得る。ヨウ素系偏光層は、一般的に、染料系偏光層に比べて優れた光学性能(例えば、高い透過率、高い偏光度および高いコントラスト)を示すことができる。しかしながら、ヨウ素系偏光層は、染料系偏光層に比べて耐熱性が大きく落ちる。特にヨウ素系偏光層に含まれるヨウ素系物質は、高温および/または高湿条件で分解して、I物質を容易に発生させ、これは、可視光領域の不適切な吸収を通じて赤化を誘発する。したがって、高温および/または高湿条件における耐久性が必須的に要求される用途では、光学的特性の損失を甘受しても、染料系偏光層が適用される場合がある。しかしながら、本出願によれば、ヨウ素系偏光層が適用される場合にも、さらには、そのようなヨウ素系偏光層が顕著に高い温度条件のような苛酷な条件で維持および使用される場合にも、該ヨウ素系偏光層の赤化を効果的に防止、緩和、軽減、抑制および/または遅延させることができる。したがって、本出願によれば、前記ヨウ素系偏光層の短所を解決しながらも、その長所を取ることができる。
【0035】
前記ヨウ素系偏光層は、ヨウ素系PVA偏光層であり得る。ヨウ素系PVA偏光層は、前記延伸PVAフィルムや、コーティング型PVA偏光層にヨウ素系物質が配向されている偏光層である。
【0036】
本出願によれば、上記のように耐久性の弱いヨウ素系偏光層が適用される場合にも、赤化現象を効果的に防止しつつ、該偏光層の長所を取ることができるが、本出願において適用される偏光層の種類がヨウ素系偏光層に制限されるものではない。
【0037】
本出願の実施例において適用された偏光層は、ヨウ素系PVA偏光層であり、このような偏光層は、通常、PVA円盤フィルムを染色および延伸して製造する。PVA偏光層の前記製造工程では、任意に膨潤、架橋、洗浄および/または補色工程等の追加工程が進行されることもでき、このような工程を通じてPVA偏光層を製造する過程は公知となっている。
【0038】
一つの例示において、光学積層体の耐久性、特に高温信頼性を確保するために、前記偏光層としては、亜鉛成分を含むヨウ素系PVA偏光層を使用することができる。前記で亜鉛成分としては、亜鉛および/または亜鉛イオン等が例示される。前記PVA偏光層は、また、追加成分としてカリウムまたはカリウムイオンのようなカリウム成分を含むこともできる。このような成分が含まれた偏光層を使用すると、高温条件でも安定的に耐久性が維持される光学積層体を提供することができる。
【0039】
前記カリウムおよび/または亜鉛成分の比率は、追加で調節され得る。例えば、PVA偏光層に含まれているカリウム成分Kと亜鉛成分Znの比率K/Znは、一つの例示において、0.2~8の範囲内であり得る。前記比率K/Znは、他の例示において、約0.4以上、0.6以上、0.8以上、1以上、1.5以上、2以上または2.5以上であり得、7.5以下、7以下、6.5以下、6以下、5.5以下、約5以下、約4.5以下または約4以下であり得る。前記比率は、モル比であるか、重量比であり得る。
【0040】
PVA偏光層に含まれるカリウム成分の含量は、約0.1~2重量%であり得る。前記カリウム成分の比率は、他の例示において、約0.15重量%以上、約0.2重量%以上、約0.25重量%以上、約0.3重量%以上、約0.35重量%以上、0.4重量%以上、または約0.45重量%以上、約0.5重量%以上、約0.55重量%以上、約0.6重量%以上、約0.65重量%以上、約0.7重量%以上、約0.75重量%以上または約0.8重量%以上であり得、約1.95重量%以下、約1.9重量%以下、約1.85重量%以下、約1.8重量%以下、約1.75重量%以下、約1.7重量%以下、約1.65重量%以下、約1.6重量%以下、約1.55重量%以下、約1.5重量%以下、約1.45重量%以下、約1.4重量%以下、約1.35重量%以下、約1.3重量%以下、約1.25重量%以下、約1.2重量%以下、約1.15重量%以下、約1.1重量%以下、約1.05重量%以下、約1重量%以下、約0.95重量%以下、約0.9重量%以下または約0.85重量%以下程度であり得る。
【0041】
一つの例示において、前記カリウム成分と亜鉛成分の比率は、下記数式3を満たすように含まれていてもよい。
【0042】
[数式3]
0.70~1=1/(1+0.025d/R)
【0043】
数式3で、dは、PVA偏光層の厚み(μm)であり、Rは、偏光層に含まれているカリウム成分の重量比K(単位:weight%)と亜鉛成分の重量比Zn(単位:weight%)の比率K/Znである。
【0044】
前記偏光層にカリウムおよび亜鉛成分を含ませることによって、高温における信頼性に優れた偏光層を提供することができる。
【0045】
数式3で、1/(1+0.025d/R)の値は、他の例示において、約0.75以上、0.8以上または0.85以上であってもよく、前記1/(1+0.025d/R)の値は、約0.97以下、約0.95以下または約0.93以下程度であってもよい。
【0046】
以上記述した内容においてカリウムおよび/または亜鉛成分の含量は、本明細書の実施例に記載された方式で測定することができる。
【0047】
本出願の実施例において適用される偏光層は、公知の偏光層の製造方法により製造された偏光層であり得る。また、本出願において偏光層として前記カリウムおよび/または亜鉛成分を含む偏光層を適用しようとする場合に、前記公知の偏光層の製造過程で偏光層に亜鉛および/またはカリウムが含まれ得るように工程条件を制御して製造することができる。
【0048】
前述したように、PVA偏光層は、通常、PVAフィルム(円盤フィルム)を染色および延伸して製造し、任意に膨潤、架橋、洗浄および/または補色工程が前記PVA偏光層の製造過程で追加で行われ得る。前記延伸工程は、別途の工程で行われたり、あるいは前記染色、膨潤および/または架橋等の他の工程と同時に行われることもできる。このような製造過程では、染色液、架橋液、膨潤液、洗浄液および/または補色液等の処理液が適用されるが、この処理液の成分を調節することによって、前記カリウムおよび/または亜鉛成分の包含の有無を決定するか、その比率等を調節することができる。
【0049】
染色工程では、PVAフィルムに吸収異方性物質を吸着および/または配向させることができる。このような染色工程は、必要に応じて、延伸工程と共に行われ得る。染色は、前記フィルムを吸収異方性物質を含む溶液、例えば、ヨウ素溶液に浸漬させて行われ得る。ヨウ素溶液としては、例えば、ヨウ素Iおよび溶解補助剤であるヨウ化化合物によりヨウ素イオンを含有させた水溶液等が使用され得る。ヨウ化化合物としては、例えばヨウ化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化亜鉛、ヨウ化アルミニウム、ヨウ化鉛、ヨウ化銅、ヨウ化バリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化スズまたはヨウ化チタン等が使用され得る。ヨウ素溶液のうちヨウ素および/またはヨウ化イオンの濃度は、目的とする偏光層の光学特性を考慮して調節され得、このような調節方式は公知である。通常、染色液(ヨウ素溶液)内のヨウ素の含量は、約0.01~5重量%程度であり、ヨウ化化合物の濃度は、約0.01~10重量%程度であり得る。前記ヨウ素含量は、他の例示において、0.05重量%以上、0.1重量%以上または0.15重量%以上であってもよく、4.5重量%以下、4重量%以下、3.5重量%以下、3重量%以下、2.5重量%以下、2重量%以下、1.5重量%以下、1重量%以下または0.5重量%以下程度であってもよい。前記ヨウ化化合物の濃度も、他の例示において、0.05重量%以上、0.1重量%以上、0.5重量%以上、1重量%以上、1.5重量%以上または2重量%以上であってもよく、9重量%以下、8重量%以下、7重量%以下、6重量%以下、5重量%以下、4重量%以下または3重量%以下程度であってもよい。染色工程でヨウ素溶液の温度は、通常、20℃~50℃、25℃~40℃程度であり、浸漬時間は、通常、10秒~300秒または20秒~240秒程度であるが、これに制限されるものではない。
【0050】
延伸工程は、一般的に、一軸延伸で行うが、必要に応じて、二軸延伸など他の方式の延伸も適用され得る。このような延伸は、前記染色および/または後述する架橋工程と共に行うこともできる。延伸方法は、特に制限されず、例えば、湿式方式が適用され得る。このような湿式方法では、例えば、染色後、延伸を行うことが一般的である。延伸は、架橋と共に行われ得、複数回または多段で行うこともできる。湿式延伸方法に適用される処理液に前述したヨウ化化合物を含有させることができる。前記処理液内にヨウ化化合物の濃度は、約0.01~10重量%程度であり得る。前記ヨウ化化合物の濃度も、他の例示において、0.05重量%以上、0.1重量%以上、0.5重量%以上、1重量%以上、1.5重量%以上または2重量%以上であってもよく、9重量%以下、8重量%以下、7重量%以下、6重量%以下、5重量%以下、4重量%以下または3.5重量%以下程度であってもよい。延伸において処理温度は、通常、25℃以上、30℃~85℃または40℃~70℃の範囲内の程度であり、処理時間は、通常、10秒~800秒または30秒~500秒間であるが、これに制限されるものではない。延伸過程において総延伸倍率は、配向特性等を考慮して調節することができ、PVAフィルムの元長を基準として総延伸倍率が3倍~10倍、4倍~8倍または5倍~7倍程度であり得るが、これに制限されるものではない。前記で総延伸倍率は、延伸工程以外の膨潤、染色および/または架橋工程等の他の工程でも延伸を伴う場合には、各工程におけるの延伸を含む累積延伸倍率を意味し得る。このような総延伸倍率は、配向性、偏光層の加工性ないし延伸切断可能性等を考慮して適正範囲で調節され得る。
【0051】
偏光層の製造工程では、前記染色および延伸に追加で膨潤工程を進行することができ、これは、通常、染色工程の前に進行される。膨潤によりPVAフィルム表面の汚染やブロッキング防止剤を洗浄することができ、また、これにより、染色ムラ等の不均一を減らすことができる効果もある。
【0052】
膨潤工程では、通常、水、蒸留水または純水等が使用され得る。当該処理液の主成分は水であり、必要に応じて、ヨウ化カリウム等のヨウ化化合物または界面活性剤等のような添加物や、アルコール等が少量含まれていてもよい。膨潤過程における処理温度は、通常、20℃~45℃または20℃~40℃程度であるが、これに制限されない。膨潤ムラは、染色ムラを誘発し得るので、このような膨潤ムラの発生ができる限り抑制されるように工程変数が調節され得る。膨潤工程でも、任意に適切な延伸が行われ得る。延伸倍率は、PVAフィルムの元長を基準として6.5倍以下、1.2~6.5倍、2倍~4倍または2倍~3倍程度であり得る。膨潤過程における延伸は、膨潤工程の後に行われる延伸工程における延伸を小さく制御することができ、フィルムの延伸破断が発生しないように制御することができる。
【0053】
架橋工程は、例えば、ホウ素化合物のような架橋剤を使用して行うことができる。架橋工程の順序は、特に制限されず、例えば、染色および/または延伸工程と共に行ったり、別途に進行することができる。架橋工程は、複数回実施することもできる。ホウ素化合物としては、ホウ酸またはホウ砂等が使用され得る。ホウ素化合物は、水溶液または水と有機溶媒の混合溶液の形態で一般的に使用され得、通常、ホウ酸水溶液が使用される。ホウ酸水溶液においてのホウ酸の濃度は、架橋度とそれによる耐熱性等を考慮して適正範囲で選択され得る。ホウ酸水溶液等にもヨウ化カリウム等のヨウ化化合物を含有させることができる。前記ホウ酸水溶液内にヨウ化化合物の濃度は、約0.01~10重量%程度であり得る。前記ヨウ化化合物の濃度も、他の例示において、0.05重量%以上、0.1重量%以上、0.5重量%以上、1重量%以上、1.5重量%以上または2重量%以上であってもよく、9重量%以下、8重量%以下、7重量%以下、6重量%以下、5重量%以下、4重量%以下または3.5重量%以下程度であってもよい。架橋工程は、前記PVAフィルムをホウ酸水溶液等に浸漬することによって行うことができるが、この過程で処理温度は、通常、25℃以上、30℃~85℃または30℃~60℃程度の範囲であり、処理時間は、通常、5秒~800秒間または8秒~500秒間程度である。
【0054】
偏光層の製造過程では、金属イオン処理が行われ得、これは、通常、補色工程と呼ばれ得る。このような処理は、例えば、金属塩を含有する水溶液にPVAフィルムを浸漬することによって実施する。これを通じて、偏光層内に金属イオン等のような金属成分を含有させることができるが、この過程で前記金属成分の種類や比率を調節することができる。適用され得る金属イオンとしては、コバルト、ニッケル、亜鉛、クロム、アルミニウム、銅、マンガンまたは鉄等の遷移金属の金属イオンが例示さ得、これらのうち適切な種類の選択により色調の調節が可能になり得る。
【0055】
亜鉛を含む偏光層を製造するために、前記補色工程で適用される処理液(金属塩を含む水溶液)内に亜鉛成分が含まれ得る。ただし、必要に応じて、前記亜鉛成分は、他の工程中に適用されることもでき、このような場合には、染色液や、架橋液など他の処理液あるいは別途の処理液に前記亜鉛成分が含まれることもできる。前記亜鉛成分は、例えば、塩化亜鉛、ヨウ化亜鉛、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛および酢酸亜鉛等から選ばれた一つ以上の亜鉛塩を前記水溶液に溶解させて導入することができる。このような場合に、目的とする亜鉛含量を達成するためには、前記亜鉛塩の濃度を約0.01~10重量%程度に調整することができる。前記亜鉛塩の濃度も、他の例示において、0.05重量%以上、0.1重量%以上、0.5重量%以上、1重量%以上、1.5重量%以上または2重量%以上であるか、9重量%以下、8重量%以下、7重量%以下、6重量%以下、5重量%以下、4重量%以下または3重量%以下程度であってもよい。必要に応じて、前記処理液にカリウム成分も含まれ得る。カリウム成分としては、ヨウ化カリウム等のカリウム塩が例示され得る。前記カリウム塩の濃度は、約0.01~10重量%程度であり得る。前記濃度も、他の例示において、0.05重量%以上、0.1重量%以上、0.5重量%以上、1重量%以上、1.5重量%以上、2重量%以上、2.5重量%以上、3重量%以上、3.5重量%以上、4重量%以上、4.5重量%以上または5重量%以上であるか、9重量%以下、8重量%以下、7重量%以下または6重量%以下程度であってもよい。補色工程で上記のように亜鉛塩やカリウム塩を適用することによって、目的とする水準の亜鉛およびカリウム成分を偏光層に含ませることができる。
【0056】
偏光層の製造過程では、染色、架橋および延伸後に洗浄工程が進行され得る。このような洗浄工程は、通常、前記補色工程前に行われ得、水を使用して行うことができる。必要に応じて、前記洗浄工程に適用される水には、ヨウ素、ヨウ化物、その他金属塩等の他の成分や、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノールまたはプロパノール等の液体アルコール等の成分が適正量配合されることもできる。
【0057】
このような工程を経た後に乾燥工程を行って偏光層を製造することができる。乾燥工程では、例えば、偏光層に要求される水分率等を考慮して適切な温度で適切な時間の間行われ得、このような条件は特に制限されない。
【0058】
前記過程で前述したように、偏光層内に亜鉛および/またはカリウム成分を含ませることができる。しかしながら、前記亜鉛および/またはカリウム成分を含む偏光層を製造するための方式が前記に制限されるものではない。例えば、亜鉛塩を膨潤、染色、架橋、延伸および/または洗浄処理に適用される処理液内に含ませて、補色工程でなく、他の工程で亜鉛成分を偏光層に含ませることもできる。また、前記膨潤、染色、架橋、延伸および/または洗浄処理等に適用される処理液にヨウ化カリウムなどカリウム成分が含まれる場合もあるので、この過程でカリウム成分の比率を調整することもできる。当業者は、一般的な偏光層の製造方法を適切に採用して、目的に応じて所望の水準の亜鉛および/またはカリウム成分を偏光層に含ませることができる。
【0059】
前記偏光層の厚みは制限されない。本出願では、一般的な公知の偏光層が適用され得るので、その厚みも通常の厚みが適用される。通常、偏光層の厚みは、5μm~80μmの範囲内であり得るが、これに制限されるものではない。
【0060】
本出願の光学積層体は、前記耐赤化層を含む。
【0061】
本出願は、前記耐赤化層を含む光学積層体またはディスプレイ装置に関するか、あるいは前記耐赤化層に関する。
【0062】
用語「耐赤化層」は、前記言及したように、光学積層体および/または光学機能層の赤化を防止、緩和、軽減、抑制および/または遅延させることができる層である。光学積層体および/または光学機能層の赤化は、熱および/または湿気により発生するか、少なくとも熱および/または湿気により加速化するものと予想される。ディスプレイ装置の用途拡大に伴って、光学積層体および/または光学機能層がさらに高温に露出する場合がより多くなり、これにより、従前には赤化が問題にならなかった光学機能層や光学積層体が前記新しい用途で赤化を発生させる場合が頻繁になっている。
【0063】
これにより、前記耐赤化層としては、光学積層体および/または光学機能層に加えられる熱を遮断するか、加えられる熱の程度を軽減させるか、あるいは熱の伝達速度を遅延させる役割をする層を適用することができる。
【0064】
一つの例示において、前記耐赤化層は、後述する空隙含有層(多孔性層)(または多孔性層)であるか、または前記空隙含有層(多孔性層)(または多孔性層)を含む積層体であって、光学機能層に十分に隣接して存在する層であり得る。耐赤化層を空隙含有層(多孔性層)とするか、あるいはその空隙含有層(多孔性層)を含む層とすることによって、熱の伝達を効果的に遮断することができる。前記で光学機能層は、前述したヨウ素系偏光層のように赤化の原因となる層であり得る。また、耐赤化層が光学機能層に十分に隣接して存在するというのは、前記耐赤化層の位置および前記耐赤化層と光学機能層との間の距離が前記耐赤化層が光学機能層への熱の伝達を、赤化を防止、緩和、軽減、抑制および/または遅延させることができる水準で遮断できるように調節された場合である。例えば、後述する本出願の耐赤化層と類似した構成の層が存在するとしても、そのような層が前記光学機能層への熱の伝達を遮断できる位置および距離に存在しないと、そのような層は、本出願でいう耐赤化層と言えない。例えば、前記十分に隣接して存在するというのは、赤化の原因となる光学機能層と前記耐赤化層との間の距離が約90μm以内、約85μm以内、約80μm以内、約75μm以内、約70μm以内、約65μm以内、約60μm以内、約55μm以内、約50μm以内、約45μm以内、約40μm以内、約35μm以内、約30μm以内、約25μm以内、約20μm以内、約15μm以内、約10μm以内、約5μm以内、約1μm以内、約0.9μm以内、約0.8μm以内、約0.7μm以内、約0.6μm以内、約0.5μm以内、約0.4μm以内、約0.3μm以内または約0.2μm以内である場合であり得る。また、前記十分な隣接には、前記光学機能層と耐赤化層が互いに接する場合も含まれ、このような場合に、前記距離は、0μmである。したがって、前記距離の下限は、0μmである。前記距離は、他の例示において、約0.01μm以上、約0.02μm以上、約0.03μm以上、約0.04μm以上、約0.05μm以上、約0.09μm以上または0.1μm以上程度であってもよい。前記で距離は、前記耐赤化層および前記光学機能層の対向する表面間の最短間隔、最大間隔または平均間隔であり得る。
【0065】
一つの例示において、前記耐赤化層は、後述する空隙含有層(多孔性層)(または多孔性層)であるか、または前記空隙含有層(多孔性層)(または多孔性層)を含む積層体であって、光学機能層の赤化の防止が可能な十分に厚みを有する層であり得る。すなわち、耐赤化層を空隙含有層(多孔性層)とするか、あるいはその空隙含有層(多孔性層)を含む層とする場合にも、適した厚みが確保されないと、熱の伝達を効果的に遮断することができない。例えば、後述する本出願の耐赤化層と類似した構成の層が存在するとしても、そのような層が前記光学機能層への熱の伝達を遮断できるほどの厚みを有しないと、そのような層は、本出願でいう耐赤化層と言えない。一つの例示において、前記十分な厚みは、例えば、約200nm以上、約250nm以上、約300nm以上、約350nm以上、約400nm以上、約450nm以上、約500nm以上、約550nm以上、約600nm以上、約650nm以上、約700nm以上、約750nm以上、約800nm以上、約850nm以上または約900nm以上程度であってもよい。前記厚みの上限は特に制限されない。耐赤化層は、厚いほど、熱を防止、緩和、軽減、抑制および/または遅延させる効果が向上する。したがって、前記耐赤化層または空隙含有層(多孔性層)の厚みの上限は、前記熱の防止、緩和、軽減、抑制および/または遅延効果が確保される限り、光学積層体に対して要求される厚み等を考慮して選択され得、特別な制限はない。前記耐赤化層または空隙含有層(多孔性層)の厚みは、一つの例示において、約3,000nm以下、約2,900nm以下、約2,800nm以下、約2,700nm以下、約2,600nm以下、約2,500nm以下、約2,400nm以下、約2,300nm以下、約2,200nm以下、約2,100nm以下、約2,000nm以下または約1,950nm以下程度であってもよい。
【0066】
一つの例示において、前記耐赤化層は、所定範囲の熱拡散率を有する層であり得る。例えば、前記耐赤化層は、当該耐赤化層を高分子フィルム上に形成して積層体を製造し、前記積層体に対して95℃で測定した熱拡散率が前記高分子フィルム単独の熱拡散率に比べて90%以下になる水準の熱拡散率を有し得る。
【0067】
このような場合に、前記耐赤化層は、下記数式4を満たすことができる。
【0068】
本出願において用語「耐赤化層」は、空隙含有層(多孔性層)自体または前記空隙含有層(多孔性層)を少なくとも含む積層体を称し得る。したがって、下記数式4でいう耐赤化層は、空隙含有層(多孔性層)であるか、あるいはそれを含む積層体であり得る。
【0069】
[数式4]
≦0.9×H
【0070】
数式4で、Hは、高分子フィルムと前記高分子フィルムの一面に形成された前記耐赤化層の積層体の熱拡散率であり、Hは、前記高分子フィルムの熱拡散率である。
【0071】
本明細書において前記熱拡散率の測定のための高分子フィルムの種類は特に制限されるものではない。例えば、前記数式4における高分子フィルムは、厚み約60μmのTAC(Triacetyl cellulose)フィルムであり得る。前記積層体の熱拡散率(95℃)は、他の例示において、前記TACフィルムの熱拡散率(95℃)Hの約89%以下程度、約88%以下程度、約87%以下程度、約86%以下程度、約85%以下程度、約84%以下程度、約83%以下程度、約82%以下程度、約81%以下程度、約80%以下程度、約79%以下程度、約78%以下程度、約77%以下程度、約76%以下程度、約75%以下程度、約74%以下程度、約73%以下程度、約72%以下程度、約71%以下程度、約70%以下程度、約69%以下程度、約68%以下程度、約67%以下程度、約66%以下程度または65%以下程度であるか、約10%以上程度、約11%以上程度、約12%以上程度、約13%以上程度、約14%以上程度、約15%以上程度、約16%以上程度、約17%以上程度、約18%以上程度、約19%以上程度、約20%以上程度、約21%以上程度、約22%以上程度、約23%以上程度、約24%以上程度、約25%以上程度、約26%以上程度、約27%以上程度、約28%以上程度、約29%以上程度、約30%以上程度、約31%以上程度、約32%以上程度、約33%以上程度、約34%以上程度、約35%以上程度、約36%以上程度、約37%以上程度、約38%以上程度、約39%以上程度、約40%以上程度、約41%以上程度、約42%以上程度、約43%以上程度、約44%以上程度、約45%以上程度、約46%以上程度、約47%以上程度、約48%以上程度、約49%以上程度、約50%以上程度、約51%以上程度、約52%以上程度、約53%以上程度、約54%以上程度、約55%以上程度、約56%以上程度、約57%以上程度、約58%以上程度、約59%以上程度または約60%以上程度であってもよい。
【0072】
したがって、数式4で、前記Hに乗算される係数は、0.89、0.88、0.87、0.86、0.85、0.84、0.83、0.82、0.81、0.80、0.79、0.78、0.77、0.76、0.75、0.74、0.73、0.72、0.71、0.70、0.69、0.68、0.67、0.66または0.65であり得る。また、数式4で、Hは、約0.10×H以上、約0.11×H以上、約0.12×H以上、約0.13×H以上、約0.14×H以上、約0.15×H以上、約0.16×H以上、約0.17×H以上、約0.18×H以上、約0.19×H以上、約0.20×H以上、約0.21×H以上、約0.22×H以上、約0.23×H以上、約0.24×H以上、約0.25×H以上、約0.26×H以上、約0.27×H以上、約0.28×H以上、約0.29×H以上、約0.30×H以上、約0.31×H以上、約0.32×H以上、約0.33×H以上、約0.34×H以上、約0.35×H以上、約0.36×H以上、約0.37×H以上、約0.38×H以上、約0.39×H以上、約0.40×H以上、約0.41×H以上、約0.42×H以上、約0.43×H以上、約0.44×H以上、約0.45×H以上、約0.46×H以上、約0.47×H以上、約0.48×H以上、約0.49×H以上、約0.50×H以上、約0.51×H以上、約0.52×H以上、約0.53×H以上、約0.54×H以上、約0.55×H以上、約0.56×H以上、約0.57×H以上、約0.58×H以上、約0.59×H以上または約0.60×H以上であってもよい。
【0073】
前記耐赤化層または空隙含有層(多孔性層)の表面特性は制御され得る。前記耐赤化層または空隙含有層(多孔性層)は、赤化が防止、緩和、軽減、抑制および/または遅延されなければならない光学機能層と隣接して位置するために、前記光学機能層に直接付着するか、あるいは前記光学機能層と隣接する光学積層体の他の層に付着し得る。このような場合に、前記耐赤化層または空隙含有層(多孔性層)の表面特性が制御されることによって、当該耐赤化層または空隙含有層(多孔性層)は、前記光学機能層または他の層と優れた密着性を有して付着し得、これにより、前記赤化をより効果的に防止、緩和、軽減、抑制および/または遅延させることができる。例えば、前記耐赤化層または空隙含有層(多孔性層)は、原子間力顕微鏡(AFM,Atomic Force Microscope)で測定した表面積比(Surface Area Ratio)が約0.02以上である表面を少なくとも一つ含むことができる。例えば、耐赤化層または空隙含有層(多孔性層)の主表面のうち少なくとも一つの表面、あるいは両表面がいずれも前記表面積比を有し得る。一つの例示において、少なくとも前記表面積比を有する耐赤化層または空隙含有層(多孔性層)の表面は、前記耐赤化層または空隙含有層(多孔性層)が付着した前記光学機能性層または他の層に向かう表面であり得る。前記耐赤化層または空隙含有層(多孔性層)の表面積比は、他の例示において、約0.022以上、約0.024以上、約0.026以上、約0.028以上、約0.03以上、約0.032以上または0.034以上であるか、約0.5以下、約0.45以下、約0.4以下、約0.35以下、約0.3以下または約0.25以下程度であってもよい。前記表面積比は、実施例に記載された方法により測定することができる。
【0074】
耐赤化層または空隙含有層(多孔性層)は、赤外線に対して目的とする水準の反射率を示すことができる。熱は、赤外線の形態でも伝達されるので、これに対して適切な反射率を示す場合にも、目的とする赤化防止特性を確保することができる。本明細書において用語「赤外線」は、略800nm~1,300nmの範囲内のいずれか一つの波長、または前記範囲内の一部領域の範囲内の波長または前記領域全体の波長を有する電磁気波を意味し得る。したがって、前記赤外線反射率は、800nm~1,300nmの範囲内のいずれか一つの波長に対する反射率であるか、あるいは前記範囲内の一部領域の範囲または全体領域に対する平均反射率であり得る。前記反射率は、本明細書の実施例の記載方式によって測定することができる。前記耐赤化層または空隙含有層(多孔性層)は、前記赤外線反射率が約2%以上であり得る。前記反射率は、他の例示において、約2.5%以上、約3%以上、約3.5%以上または約4%以上であってもよい。前記反射率は、その数値が高いほど耐赤化層または空隙含有層(多孔性層)が光学積層体および/または光学機能層に印加される熱を適切に遮断および/または遅延させることができることを意味するので、その上限は特に制限されない。例示的に、前記赤外線反射率は、約10%以下、約9%以下、約8%以下、約7%以下、約6%以下または約5%以下程度であってもよい。
【0075】
耐赤化層または空隙含有層(多孔性層)としては、光学積層体に適用され得る適正な透過率を有し、前記特性(熱拡散率、表面積比および/または反射率)を有するものであれば、特別な制限なく多様な層が適用され得る。上記のような特性を有するものであれば、赤化の防止、緩和、軽減、抑制および/または遅延が可能であるので、透過率が適正に確保されるものであれば、理論上、すべて本出願において適用可能である。前記で光学積層体において要求される透過率は、約70%以上、約75%以上、約80%以上、約85%以上または約90%以上であり得る。前記透過率は、その数値が高いほど適したものであって、その上限は特に制限されない。例えば、前記透過率は、約100%以下、約95%以下または約90%以下程度であり得る。前記で透過率は、可視光領域の光、例えば、略380nm~780nmの範囲内のいずれか一つの波長、または前記範囲内の一定領域の波長または前記領域全体に対する透過率であるか、平均透過率であり得る。耐赤化層として空隙含有層(多孔性層)を適用するか、その空隙含有層(多孔性層)を含む積層体を適用する場合に、前記耐赤化層に存在する空隙により熱の伝達が効果的に遮断され得るが、その空隙が光学積層体内で光を散乱ないし回折させることによって、透過率の観点からは不利なことがある。しかしながら、本出願では、後述するように、空隙の形態を制御することによって、前記光の散乱ないし回折による透過率の低下がないか、少なくともそのような低下が使用に問題がない水準に制限され得る。
【0076】
耐赤化層としては、例えば、空隙含有層(多孔性層)を適用するか、あるいは空隙含有層(多孔性層)を含む層を適用することができる。すなわち、前述したように、本出願において耐赤化層は、前記空隙含有層(多孔性層)自体を称するか、赤化を防止するという目的を満足する限り、前記空隙含有層(多孔性層)と他の層を含む積層体を称することもできる。一つの例示において、前記耐赤化層は、前記空隙含有層(多孔性層)を含むことによって、前記言及された特性(熱拡散率、表面積比および/または赤外線反射率)を示すことができる。したがって、前記言及した熱拡散率、表面積比および/または赤外線反射率は、前記空隙含有層(多孔性層)に対するものであるか、または少なくとも前記空隙含有層(多孔性層)を含む積層体に対するものであってもよい。前記で空隙含有層(多孔性層)と共に赤化層に含まれる他の要素の種類は特に制限されず、例えば、前記偏光層またはその保護フィルム、位相差フィルム等のような光学積層体を構成する要素であり得る。
【0077】
前記空隙含有層は、内部に少なくとも一つ以上の空隙(void)を含む層であり、このような空隙を通じて、耐赤化層は、熱の伝達の防止、緩和、軽減、抑制および/または遅延の機能を行うことができる。本出願において前記空隙含有層を多孔性層と称する場合に、前記空隙含有層の内部には、少なくとも2つ以上の空隙(void)が含まれる。前述した物性、例えば、熱拡散率、表面積比および/または反射率等が確保されるためには、耐赤化層が前記空隙含有層(多孔性層)を含むことが重要である。この際、空隙含有層(多孔性層)に含まれる空隙の形態は、特別な制限がなく、例えば、略球形または楕円体形態であるか、その他多様な形態の空隙がすべて適用され得る。
【0078】
空隙のサイズ(直径)は、概略0.5nm~100nmの範囲内であり得る。前記空隙のサイズは、当該空隙が球形である場合には、その粒子直径を意味し、球形でない場合には、当該空隙を同一体積の球形と仮定したときの前記球形の粒子直径である。前記空隙のサイズは、他の例示において、約1nm以上、約2nm以上、約3nm以上、約4nm以上、約5nm以上、約6nm以上、約7nm以上、約8nm以上、約9nm以上、約10nm以上、約11nm以上、約12nm以上、約13nm以上、約14nm以上、約15nm以上、約16nm以上、約17nm以上、約18nm以上、約19nm以上、約20nm以上、約21nm以上、約22nm以上、約23nm以上、約24nm以上、約25nm以上、約26nm以上、約27nm以上、約28nm以上、約29nm以上、約31nm以上、約32nm以上、約33nm以上、約34nm以上、約35nm以上、約36nm以上、約37nm以上または約38nm以上であるか、約99nm以下、約98nm以下、約97nm以下、約96nm以下、約95nm以下、約94nm以下、約93nm以下、約92nm以下、約91nm以下、約90nm以下、約89nm以下、約88nm以下、約87nm以下、約86nm以下、約85nm以下、約84nm以下、約83nm以下、約82nm以下、約81nm以下、約79nm以下、約78nm以下、約77nm以下、約76nm以下、約75nm以下、約74nm以下、約73nm以下、約72nm以下、約71nm以下、約69nm以下、約68nm以下、約67nm以下、約66nm以下、約65nm以下、約64nm以下、約63nm以下、約62nm以下、約61nm以下、約59nm以下、約58nm以下、約57nm以下、約56nm以下、約55nm以下、約54nm以下、約53nm以下、約52nm以下、約51nm以下、約50nm以下、約49nm以下、約48nm以下、約47nm以下、約46nm以下または約45nm以下程度であってもよい。
【0079】
耐赤化層の効果を最大化し、前述した物性(熱拡散率、表面積比および/または反射率等)を確保し、その透過率も維持するために、前記空隙含有層(多孔性層)内の空隙の位置ないし分布が制御され得る。
【0080】
例えば、前記耐赤化層または空隙含有層(多孔性層)は、小角X線散乱(SAXS,Small Angle X-ray Scattering)分析の散乱強度のlog値グラフで0.06nm-1~0.209nm-1の散乱ベクトル(scattering vector)の範囲内に少なくとも一つのピークを示すことができる。前記特性は、空隙間の平均的距離を反映する特性である。例えば、前記ピークを示す散乱ベクトルが小さくなることは、耐赤化層または空隙含有層(多孔性層)内の空隙間の平均的距離が遠くなる傾向を意味し、反対に大きくなることは、空隙間の平均的距離が近くなる傾向を意味する。
【0081】
前記散乱ベクトルが約0.06nm-1以上であれば、耐赤化層または空隙含有層(多孔性層)内で空隙が適正に密集して印加される熱を遮断するか、軽減させることができる特性において有利である。また、前記ベクトルが約0.209nm-1以下であれば、耐赤化層または空隙含有層(多孔性層)内で空隙が適正な間隔をもって配置されて、耐赤化層または空隙含有層(多孔性層)の表面の粗さ(roughness)等が適正水準に維持され、これは、耐赤化層または空隙含有層(多孔性層)の光学積層体への適用をより容易にすることができる。また、前記散乱ベクトルの範囲内で耐赤化層の透過率も、適切な範囲に維持することができる。前記ピークが確認される散乱ベクトルは、他の例示において、約0.065nm-1以上、約0.07nm-1以上、約0.075nm-1以上、約0.08nm-1以上、約0.085nm-1以上、約0.09nm-1以上、約0.095nm-1以上または0.1nm-1以上であってもよく、また、約0.205nm-1以下、約0.2nm-1以下、約0.19nm-1以下、約0.185nm-1以下、約0.18nm-1以下または約0.16nm-1以下であってもよい。
【0082】
前記でピーク(peak)は、前記分析により確認される散乱強度のlog値のグラフで前記散乱強度のlog値が上に凸状に現れる極値または変曲点である。前記散乱ベクトルは、下記数式5により定義される値であり、このような散乱ベクトルの範囲内で前記ピークは、少なくとも一つ以上確認され得る。
【0083】
[数式5]
q=4πsin(θ/λ)
【0084】
数式5で、qは、前記散乱ベクトルであり、θは、散乱角度の1/2倍の値であり、λは、照射したX線の波長(単位:nm)である。
【0085】
小角X線散乱の評価を進行する方式は、本明細書の実施例の記載に従う。
【0086】
耐赤化層または空隙含有層(多孔性層)は、下記数式6を満たすAの値が1.5以下であり、Bの値が0~0.01の範囲内であり、Cの値が0~0.001の範囲内であり得る。
【0087】
[数式6]
【数1】
【0088】
数式6で、n(λ)は、波長λにおける前記耐赤化層または空隙含有層(多孔性層)の屈折率であり、λは、300~1800nmの範囲内のいずれか一つの波長である。
【0089】
数式6は、前記耐赤化層または空隙含有層(多孔性層)に対して楕円偏光法(ellipsometry)で測定した偏極の楕円率をいわゆるコーシーモデル(Cauchy model)によってフィッティング(fitting)したものである。耐赤化層または空隙含有層(多孔性層)が前記数式6を満たす前述した範囲のA、BおよびCの値を有するとき、耐赤化層または空隙含有層(多孔性層)は、耐赤化機能を発現し得る空隙特性を有し得る。前記数式6は、耐赤化層または空隙含有層(多孔性層)が示す屈折率特性を反映する。耐赤化層または空隙含有層(多孔性層)の全体屈折率は、耐赤化層または空隙含有層(多孔性層)を構成する空隙の屈折率とバインダーなどその他空隙以外の成分の屈折率により決定される。したがって、耐赤化層または空隙含有層(多孔性層)の前記数式6におけるA、BおよびCの値は、耐赤化層内の空隙の量を反映することができる。一つの例示において、前記A、Bおよび/またはCの値が前記範囲内であれば、耐赤化層または空隙含有層(多孔性層)内の空隙が熱の移動を適切に遮断ないし遅延させることができる水準で存在しつつ、耐赤化層または空隙含有層(多孔性層)の表面の粗さ(roughness)等が適正水準に維持されて、耐赤化層または空隙含有層(多孔性層)の光学積層体への適用をさらに容易にすることができる。また、前記A、Bおよび/またはCの値の範囲内で、耐赤化層または空隙含有層(多孔性層)の光学積層体内における透過率も安定的に維持することができる。
【0090】
前記Aの値は、他の例示において、約1.1以上、約1.15以上、約1.2以上、約1.25以上または約1.3以上であり得る。前記でBの値は、他の例示において、約0.0001以上、約0.0002以上、約0.0003以上、約0.0004以上、約0.0005以上、約0.0006以上または約0.0007以上であるか、約0.009以下、約0.008以下、約0.007以下、約0.006以下、約0.005以下または約0.004以下程度であってもよい。前記でCの値は、他の例示において、約0.000001以上、約0.000002以上、約0.000003以上、約0.000004以上、約0.000005以上、約0.000006以上、約0.000007以上、約0.000008以上、約0.000009以上、約0.00001以上、約0.00002以上、約0.00003以上、約0.00004以上、約0.00005以上、約0.00006または約0.00007以上であるか、約0.0009以下、約0.0008以下、約0.0007以下、約0.0006以下、約0.0005以下または約0.0004以下程度であってもよい。
【0091】
数式6で、λは、約300~約1800nmの範囲内のいずれか一つの波長であり、一つの例示において、約400nm以上または約500nm以上であるか、約1700nm以下、約1600nm以下、約1500nm以下、約1400nm以下、約1300nm以下、約1200nm以下、約1100nm以下、約1000nm以下、約900nm以下、約800nm以下、約700nm以下または約600nm以下であるか、約550nmの波長範囲であり得る。数式6を満たす耐赤化層または空隙含有層(多孔性層)は、屈折率(550nmの波長を基準)が略1.5以下であり得、他の例示において、前記屈折率は、約1.1以上または約1.15以上であり得る。
【0092】
耐赤化層または空隙含有層(多孔性層)において空隙の体積分率は、約0.1以上であり得る。前記体積分率は、耐赤化層または空隙含有層(多孔性層)の全体体積を1に換算したときに空隙が占める空間の体積の比率である。このような範囲で耐赤化層または空隙含有層(多孔性層)は、熱の伝達を適切に遮断ないし軽減することができる。また、前記範囲内で、耐赤化層または空隙含有層(多孔性層)の光学積層体内における透過率も安定的に維持することができる。前記体積分率は、浮力法等を通じて耐赤化層または空隙含有層(多孔性層)の密度、質量および体積等を確認して測定するか、後述するように、耐赤化層または空隙含有層(多孔性層)を中空粒子を使用して形成する場合に適用された中空粒子の量とバインダーの量等を通じて確認することができる。
【0093】
耐赤化層または空隙含有層(多孔性層)は、多様な方式で形成することができる。空隙を含有する層を形成する代表的な方法は、中空粒子(hollow particle)を適用する方式である。したがって、一つの例示において、前記耐赤化層は、少なくともバインダーおよび中空粒子を含むことができる。
【0094】
前記バインダーおよび中空粒子のシェル(shell)部位の屈折率、中空粒子およびその内部の気孔のサイズ分布、中空粒子の量等を制御して前述した特性(熱拡散率(数式4)、表面特性(AFMの表面積比)、赤外線反射率、可視光透過率、SAXS特性、体積分率および/または屈折率特性)を満足させることができる。
【0095】
バインダーとしては、特別な制限なく多様な種類が適用され得る。例えば、バインダーとしては、光学用に適用され得る多様な硬化性樹脂組成物が適用され得る。適用され得る光学用樹脂としては、例えば、アクリル系、エポキシ系および/またはシリコーン系等があり、前記樹脂またはそれを形成し得る前駆体を適用して前記バインダーを形成することができる。このような樹脂または前駆体は硬化性であり得、例えば、紫外線や電子線等の光の照射により硬化する物質、熱により硬化する物質あるいは湿気など他の作用により硬化する物質であり得る。
【0096】
バインダーとしては、屈折率(550nmの波長を基準)が略1.1~1.6の範囲内であるものを適用することができる。このような屈折率の範囲の下で中空粒子と組み合わせられて前述した数式6を満たす耐赤化層を容易に形成することができる。前記屈折率は、他の例示において、約1.15以上、約1.2以上、約1.25以上、約1.3以上、約1.35以上または約1.4以上であるか、約1.55以下または約1.5以下程度であり得る。
【0097】
このような屈折率を満足させる代表的なバインダーは、アクリル系バインダーである。耐赤化層のバインダーは、重合性アクリル化合物の重合単位を含むことができる。
【0098】
一つの例示において、前記アクリル化合物は、炭素数が1~20、炭素数1~16、炭素数1~12、炭素数1~8または炭素数1~4のアルキル基またはアルコキシ基を有するアルキル(メタ)アクリレートまたはアルコキシ(メタ)アクリレート;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレートまたは8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等のような一官能性アクリレート化合物;1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペート(neopentylglycol adipate)ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバル酸(hydroxy pivalic acid)ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(dicyclopentanyl)ジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性シクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリロキシエチルイソシアヌレート、アリル(allyl)化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ヘキサヒドロフタル酸ジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチルプロパンジ(メタ)アクリレート、アダマンタン(adamantane)ジ(メタ)アクリレートまたは9,9-ビス[4-(2-アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン(fluorene)等のような二官能性アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、三官能型ウレタン(メタ)アクリレートまたはトリス(メタ)アクリロキシエチルイソシアヌレート等の三官能型アクリレート;ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレートまたはペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の四官能型アクリレート;プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の五官能型アクリレート;およびジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートまたはウレタン(メタ)アクリレート(ex.イソシアネート単量体およびトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートの反応物)等の六官能型アクリレート等を使用することができる。
【0099】
多官能性アクリレートとしては、当業界でいわゆる光硬化性オリゴマーと呼ばれる化合物であって、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレートまたはポリエーテルアクリレート等も使用することができる。前記のような化合物のうち適切な種類を一種または二種以上選択して使用することができる。
【0100】
耐赤化層または空隙含有層(多孔性層)を形成するバインダーの種類は、前記に制限されず、その他他の多様な光学用材料がすべて適用され得る。
【0101】
中空粒子と組み合わせられて目的とする特性(熱拡散率(数式4)、表面特性(AFMの表面積比)、赤外線反射率、可視光透過率、SAXS特性、体積分率および/または屈折率特性)が満足される適切な空隙特性を確保するために、前記バインダーとしては、前記記述した種類のうち多官能性アクリレートが適用され得る。すなわち、前記バインダーは、前記多官能性アクリレートの重合物を含むことができる。多官能性アクリレートは、少なくとも2個以上の重合性官能基(アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基)を有する化合物である。前記アクリル系重合性官能基の数は、他の例示において、3個以上であるか、10個以下、9個以下、8個以下、7個以下、6個以下、5個以下、4個以下または3個以下であり得る。このような多官能性アクリレートとしては、ヒドロキシ基を有さず、環構造(例えば、芳香族環構造であるか、ジシクロペンタジエン構造)を有しない化合物が適用されることが、目的とする架橋度と気孔特性を通じて熱拡散率(数式4)、表面特性(AFMの表面積比)、赤外線反射率、可視光透過率、SAXS特性、体積分率および/または屈折率特性が安定的に確保される耐赤化層を形成することにおいて有利である。同じ理由で、耐赤化層(空隙含有層(多孔性層))のバインダーには、前記ヒドロキシ基や環構造が存在しないか、または、存在してもその比率が制限された方が良い。また、前記多官能性アクリレートとしては、分子量が約150~約1,000g/molの範囲内である化合物を使用することが、目的とする架橋度と気孔特性を通じて熱拡散率(数式4)、表面特性(AFMの表面積比)、赤外線反射率、可視光透過率、SAXS特性、体積分率および/または屈折率特性が安定的に確保される耐赤化層を形成することにおいて有利である。前記分子量は、他の例示において、約170g/mol以上、約190g/mol以上、約210g/mol以上、約230g/mol以上、約250g/mol以上、約270g/mol以上または約290g/mol以上であるか、約980g/mol以下、約960g/mol以下、約940g/mol以下、約920g/mol以下、約900g/mol以下、約880g/mol以下、約860g/mol以下、約840g/mol以下、約820g/mol以下、約800g/mol以下、約780g/mol以下、約760g/mol以下、約740g/mol以下、約720g/mol以下、約700g/mol以下、約680g/mol以下、約660g/mol以下、約640g/mol以下、約620g/mol以下、約600g/mol以下、約580g/mol以下、約560g/mol以下、約540g/mol以下、約520g/mol以下、約500g/mol以下、約480g/mol以下、約460g/mol以下、約440g/mol以下、約420g/mol以下、約400g/mol以下、約380g/mol以下、約360g/mol以下、約340g/mol以下、約320g/mol以下または約300g/mol以下程度であってもよい。目的とする特性の確保をより効率的にするという観点から、バインダーは、実質的に前記多官能性アクリレートを主成分として含むことができる。したがって、バインダー内で前記多官能性アクリレートの重量比は、約50%以上、約52%以上、約54%以上、約56%以上、約58%以上、約60%以上、約62%以上、約64%以上、約66%以上、約68%以上、約70%以上、約72%以上、約74%以上、約76%以上、約78%以上、約80%以上、約82%以上、約84%以上、約86%以上、約88%以上、約90%以上、約92%以上、約94%以上、約96%以上または98%以上程度であり得、この比率は、約100%以下または約100%未満程度であってもよい。前記比率は、バインダー内における前記多官能性アクリレートの比率であり、例えば、空隙含有層(多孔性層)がバインダーおよび中空粒子を含む層である場合には、前記空隙含有層(多孔性層)の全体重量から前記中空粒子を引いた重量を基準とした比率であり得る。
【0102】
中空粒子としては、例えば、前記言及された各物性を満足させるために、特定の粒度分布を有する粒子を使用することができる。例えば、中空粒子としては、粒度分布の重量累積曲線でD10粒径が約20nm~約50nmまたは約25nm~約50nmの範囲内にある粒子、D50粒径が約55nm~約100nmまたは約50nm~約95nmの範囲内にある粒子、およびD90粒径が約100nm~約200nmまたは約110nm~約180nmの範囲内にある粒子をそれぞれ適用することができる。前記でD10、D50およびD90粒径は、それぞれ、中空粒子の全体重量を100重量とし、粒径別の重量を表示する累積分布グラフで最大値(100重量%)の約10重量%、約50重量%および約90重量%に該当する粒径の値である。上記のような粒径分布を有する粒子の適用を通じて目的とする耐赤化層を効果的に形成することができる。
【0103】
前記D10粒径は、他の例示において、約21nm以上、約22nm以上、約23nm以上、約24nm以上、約25nm以上、約26nm以上、約27nm以上、約28nm以上、約29nm以上、約30nm以上、約31nm以上または32nm以上であるか、約49nm以下、約48nm以下、約47nm以下、約46nm以下、約45nm以下、約44nm以下、約43nm以下、約42nm以下、約41nm以下、約40nm以下、約39nm以下、約38nm以下、約37nm以下、約36nm以下、約35nm以下、約34nm以下または約33nm以下程度であってもよい。
【0104】
前記D50粒径は、他の例示において、約56nm以上、約57nm以上、約58nm以上、約59nm以上、約60nm以上、約61nm以上または62nm以上であるか、約99nm以下、約98nm以下、約97nm以下、約96nm以下、約95nm以下、約94nm以下、約93nm以下、約92nm以下、約91nm以下、約90nm以下、約89nm以下、約88nm以下、約87nm以下、約86nm以下、約85nm以下、約84nm以下、約83nm以下、約82nm以下、約81nm以下、約79nm以下、約78nm以下、約77nm以下、約76nm以下、約75nm以下、約74nm以下、約73nm以下、約72nm以下、約71nm以下または約70nm以下程度であってもよい。
【0105】
前記D90粒径は、他の例示において、約111nm以上、約112nm以上、約113nm以上、約114nm以上、約115nm以上、約116nm以上、約117nm以上、約118nm以上、約119nm以上、約120nm以上、約121nm以上、約122nm以上または123nm以上であるか、約179nm以下、約178nm以下、約177nm以下、約176nm以下、約175nm以下、約174nm以下、約173nm以下、約172nm以下、約171nm以下、約170nm以下、約169nm以下、約168nm以下、約167nm以下、約166nm以下、約165nm以下、約164nm以下、約163nm以下、約162nm以下、約161nm以下、約160nm以下、約159nm以下、約158nm以下、約157nm以下、約156nm以下、約155nm以下、約154nm以下、約153nm以下、約152nm以下、約151nm以下、約150nm以下、約149nm以下、約148nm以下、約147nm以下、約146nm以下、約145nm以下、約144nm以下、約143nm以下、約142nm以下、約141nm以下、約140nm以下、約139nm以下、約138nm以下、約137nm以下、約136nm以下、約135nm以下、約134nm以下、約133nm以下、約132nm以下、約131nm以下、約130nm以下、約129nm以下、約128nm以下、約127nm以下または約126nm以下程度であってもよい。
【0106】
中空粒子としては、気孔のサイズが前記空隙のサイズに対応する粒子を適用することができる。したがって、前記気孔のサイズは、約0.5nm~約100nmの範囲内であり得る。
【0107】
前記気孔のサイズは、他の例示において、約1nm以上、約2nm以上、約3nm以上、約4nm以上、約5nm以上、約6nm以上、約7nm以上、約8nm以上、約9nm以上、約10nm以上、約11nm以上、約12nm以上、約13nm以上、約14nm以上、約15nm以上、約16nm以上、約17nm以上、約18nm以上、約19nm以上、約20nm以上、約21nm以上、約22nm以上、約23nm以上、約24nm以上、約25nm以上、約26nm以上、約27nm以上、約28nm以上、約29nm以上、約31nm以上、約32nm以上、約33nm以上、約34nm以上、約35nm以上、約36nm以上、約37nm以上または約38nm以上であるか、約99nm以下、約98nm以下、約97nm以下、約96nm以下、約95nm以下、約94nm以下、約93nm以下、約92nm以下、約91nm以下、約90nm以下、約89nm以下、約88nm以下、約87nm以下、約86nm以下、約85nm以下、約84nm以下、約83nm以下、約82nm以下、約81nm以下、約79nm以下、約78nm以下、約77nm以下、約76nm以下、約75nm以下、約74nm以下、約73nm以下、約72nm以下、約71nm以下、約69nm以下、約68nm以下、約67nm以下、約66nm以下、約65nm以下、約64nm以下、約63nm以下、約62nm以下、約61nm以下、約59nm以下、約58nm以下、約57nm以下、約56nm以下、約55nm以下、約54nm以下、約53nm以下、約52nm以下、約51nm以下、約50nm以下、約49nm以下、約48nm以下、約47nm以下、約46nm以下または約45nm以下程度であってもよい。
【0108】
中空粒子としては、前記のような特性を有し、バインダーと共に前述した特性(熱拡散率(数式4)、表面特性(AFMの表面積比)、赤外線反射率、可視光透過率、SAXS特性、体積分率および/または屈折率特性)を示すことができるものであれば、特別な制限なく多様な種類を適用することができる。
【0109】
例えば、中空粒子としては、シェル(shell)部位が有機物からなる有機粒子、無機物からなる無機粒子および/または有無機物質からなる有無機粒子等を使用することができる。このような粒子としては、PMMA(poly(methyl methacrylate))等のアクリル粒子、エポキシ粒子、ナイロン粒子、スチレン粒子および/またはスチレン/ビニル単量体の共重合体粒子等や、シリカ粒子、アルミナ粒子、酸化インジウム粒子、酸化スズ粒子、酸化ジルコニウム粒子、酸化亜鉛粒子および/またはチタニア粒子等の無機粒子等が例示され得るが、これに制限されるものではない。
【0110】
耐赤化層または空隙含有層(多孔性層)は、前記中空粒子を約5重量%以上の比率で含むことができる。前記比率は、他の例示において、約10重量%以上、約15重量%以上、約20重量%以上、約25重量%以上、約30重量%以上、約35重量%以上、約40重量%以上、約45重量%以上、約50重量%以上、約55重量%以上、約60重量%以上、約65重量%以上、約70重量%以上、約75重量%以上、約80重量%以上、約85重量%以上、約90重量%以上、約95重量%以上、約100重量%以上、約105重量%以上、約110重量%以上、約115重量%以上、約120重量%以上、約125重量%以上、約130重量%以上、約135重量%以上、約140重量%以上、約145重量%以上、約150重量%以上、約155重量%以上、約160重量%以上、約165重量%以上、約170重量%以上、約175重量%以上または約180重量%以上であり得る。前記比率は、他の例示において、約9,000重量%以下、約8,000重量%以下、約7,000重量%以下、約6,000重量%以下、約5,000重量%以下、約4,000重量%以下、約3,000重量%以下、約2,000重量%以下、約1,000重量%以下、約900重量%以下、約800重量%以下、約700重量%以下、約600重量%以下、約500重量%以下、約400重量%以下、約300重量%以下、約250重量%以下、約240重量%以下、約230重量%以下、約220重量%以下、約210重量%以下または約200重量%以下程度であってもよい。
【0111】
前記中空粒子の比率は、目的とする特性によって調節され得る。一つの例示において、前記耐赤化層または空隙含有層(多孔性層)は、粒子としては中空粒子のみを含むことができる。すなわち、このような例示において、耐赤化層または空隙含有層(多孔性層)は、いわゆるソリッド(solid)粒子は含まなくてもよい。これにより、目的とする耐赤化層または空隙含有層(多孔性層)の特性をより適切に具現することができる。
【0112】
前記耐赤化層または空隙含有層(多孔性層)は、前記成分の他にも、必要に応じて当業界に公知となった任意の添加剤を含むことができる。このような添加剤としては、前記バインダーに対する硬化剤や開始剤、酸化防止剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤、調色剤、消泡剤、界面活性剤および/または可塑剤等が例示され得る。
【0113】
耐赤化層または空隙含有層(多孔性層)の厚みは、目的とする耐赤化性能の発現のために制御され得る。例えば、前記耐赤化層または空隙含有層(多孔性層)は、厚みが約200nm以上であり得る。このような厚みの範囲で目的とする耐赤化性能が効果的に発現することができる。前記厚みは、他の例示において、約250nm以上、約300nm以上、約350nm以上、約400nm以上、約450nm以上、約500nm以上、約550nm以上、約600nm以上、約650nm以上、約700nm以上、約750nm以上、約800nm以上、約850nm以上または約900nm以上程度であってもよい。前記厚みの上限は特に制限されない。通常、耐赤化層は、厚いほど、熱を防止、緩和、軽減、抑制および/または遅延させる効果が向上する。したがって、前記耐赤化層または空隙含有層(多孔性層)の厚みの上限は、前記熱の防止、緩和、軽減、抑制および/または遅延効果が確保される限り、光学積層体に対して要求される厚み等を考慮して選択され得、特別な制限はない。前記耐赤化層または空隙含有層(多孔性層)の厚みは、一つの例示において、約3,000nm以下、約2,900nm以下、約2,800nm以下、約2,700nm以下、約2,600nm以下、約2,500nm以下、約2,400nm以下、約2,300nm以下、約2,200nm以下、約2,100nm以下、約2,000nm以下または約1,950nm以下程度であってもよい。
【0114】
光学積層体内で耐赤化層の位置は、目的とする耐赤化性能の確保のために、やはり制御され得る。
【0115】
前記耐赤化層は、光学積層体に別途に含まれる層であるか、あるいは光学積層体内にすでに存在する層(ex.接着剤層や粘着剤層)に空隙を形成して具現した層であり得る。
【0116】
光学積層体内で前記耐赤化層の位置は、目的、すなわち赤化の防止、緩和、軽減、抑制および/または遅延のために制御され得る。
【0117】
例えば、耐赤化層は、光学積層体内で赤化の主要な原因となる光学機能層とできるだけ近く位置し得る。すなわち、光学積層体において前記耐赤化層と前記光学機能層との間の距離が制御され得る。前記で距離は、前記耐赤化層および前記光学機能層の対向する表面間の最短間隔、最大間隔または平均間隔であり得る。一つの例示において、前記耐赤化層と光学機能層との間の距離は、約90μm以内、約85μm以内、約80μm以内、約75μm以内、約70μm以内、約65μm以内、約60μm以内、約55μm以内、約50μm以内、約45μm以内、約40μm以内、約35μm以内、約30μm以内、約25μm以内、約20μm以内、約15μm以内、約10μm以内、約5μm以内、約1μm以内、約0.9μm以内、約0.8μm以内、約0.7μm以内、約0.6μm以内、約0.5μm以内、約0.4μm以内、約0.3μm以内または約0.2μm以内であり得る。光学機能層と耐赤化層が最も近く位置する場合は、前記2個の層が互いに接する場合であり、このような場合に前記距離は0μmである。したがって、前記距離の下限は0μmである。前記距離は、他の例示において、約0.01μm以上、約0.02μm以上、約0.03μm以上、約0.04μm以上、約0.05μm以上、約0.09μm以上または約0.1μm以上程度であってもよい。
【0118】
このような耐赤化層は、光学積層体の最外郭表面を形成しない位置に配置され得る。すなわち、耐赤化層は、光学積層体の最外層でなくてもよい。このような位置の設定は、光学積層体および/または光学機能層の耐赤化特性を発現することに要求され得る。
【0119】
他の例示において、光学積層体は、前記耐赤化層と光学機能層と共に更なる層を含み、前記耐赤化層が前記光学機能層と前記更なる層との間に位置し得る。図1は、このような層構成の一つの例示であり、前記更なる層30、耐赤化層20および光学機能層10が順次形成された場合を示す。前記で更なる層は、保護フィルム、粘着剤層、接着剤層、ハードコート層、反射防止層、位相差層または輝度向上層等であるか、後述するカバーグラス等であり得るが、これに制限されるものではない。
【0120】
上記のような配置によって本出願の光学積層体は、多少高い表面反射率を示すことができる。すなわち、本出願の耐赤化層は、その構成上、反射率を低減する作用をすることができるが、このような耐赤化層が表面に存在しないので、別途の反射防止層等が形成されない限り、前記光学機能層の表面反射率は、多少高く形成され得る。例えば、前記光学積層体は、反射率が約2%以上であり得る。前記で反射率は、可視光領域の光、例えば、略380nm~780nmの範囲内のいずれか一つの波長、または前記範囲内の一定領域の波長または前記領域全体に対する反射率であるか、平均反射率であり得る。前記反射率は、他の例示において、約2.5%以上、約3%以上、約3.5%以上または約4%以上であるか、約10%以下、約9%以下、約8%以下、約7%以下、約6%以下または約5%以下程度であってもよい。
【0121】
上記のような配置により光学機能層および/または光学積層体の赤化現象を効果的に防止、緩和、軽減、抑制および/または遅延させることができる。
【0122】
前記光学積層体は、前記耐赤化層と光学機能層を基本的に含む限り、多様な異なる層をも含むことができる。
【0123】
このような層は、例えば、前記光学積層体に対する保護フィルム、粘着剤層、接着剤層、位相差フィルム、ハードコート層または低反射層等が例示され得る。前記層は、前述した更なる層であってもよい。
【0124】
前記更なる層の種類としては、当業界に公知となった一般的な構成が適用され得る。例えば、前記保護フィルムとしては、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性または等方性等に優れた樹脂フィルムが使用され得、このようなフィルムの例としては、TAC(triacetyl cellulose)フィルム等のセルロース樹脂フィルム、ポリエステルフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアミドフィルム、ポリイミドフィルム、ポリオレフィンフィルム、アクリルフィルム、ノルボルネン樹脂フィルム等の環形ポリオレフィンフィルム、ポリアリレートフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム等を例示することができる。また、フィルム形態の保護層の他にも、(メタ)アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系またはシリコーン系等の熱または光硬化型樹脂を硬化させた硬化樹脂層を前記保護フィルムに適用することもできる。このような保護フィルムは、光学機能層の一面または両面に形成され得る。
【0125】
位相差フィルムとしては、一般的な素材が適用され得、例えば、一軸または二軸延伸された複屈折性高分子フィルムまたは液晶ポリマーの配向フィルムまたは重合性液晶化合物の重合層等が適用され得る。位相差フィルムの厚みも特に制限されない。
【0126】
前記記述した保護フィルムまたは位相差フィルムは、接着剤等により光学機能層等に付着し得るが、このような保護フィルム等には、コロナ処理、プラズマ処理、プライマー処理またはケン化処理等のような接着容易処理が施されていてもよい。また、保護フィルムが光学機能層または耐赤化層に付着する場合に、前記保護フィルムの前記光学機能層または耐赤化層に付着する面とは反対側の面には、ハードコート層、低反射層、反射防止層、スティッキング防止層、拡散層またはヘイズ層等が存在し得る。
【0127】
光学積層体には、前記保護フィルムまたは位相差フィルムの他にも、例えば反射板または半透過板等の多様な要素が存在することもでき、その種類は特に制限されない。
【0128】
光学積層体の各層の接着のために接着剤が使用され得る。接着剤としては、イソシアネート系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、ゼラチン系接着剤、ビニル系ラテックス系または水系ポリエステル等が例示され得るが、これに制限されるものではない。接着剤としては、通常、水系接着剤が使用され得るが、付着するフィルムの種類によっては、無溶剤タイプの光硬化型接着剤が使用されることもできる。
【0129】
光学積層体は、液晶パネルやカバーガラス等の他の部材との接着のために粘着剤層が含まれ得る。粘着剤層を形成する粘着剤は、特に制限されず、例えばアクリル系重合体、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテルまたはフッ素系やゴム系等のポリマーをベースポリマーとするものを適切に選択して使用することができる。このような粘着剤層の露出面に対しては、実用に供するまでの間にその汚染防止等を目的に離型フィルムが臨時付着してカバーされ得る。
【0130】
このような光学積層体は、多様な形態の構造を有し得る。例えば、図2は、最も基本的な光学積層体である偏光板の構造において耐赤化層20が導入された構造である。すなわち、基本的な偏光板は、偏光層100の少なくとも一面に保護フィルム301が付着した構造を有するが、前記耐赤化層20が前記偏光層100と保護フィルム301との間に位置し得る。図2の構造で各層100、20、301の接着には、接着剤や粘着剤が使用され得る。一つの例示において、図2の耐赤化層20は、別途の層であるか、それ自体が前記接着剤や粘着剤であり得る。すなわち、接着剤や粘着剤に中空粒子等を導入して空隙含有層(多孔性層)で構成して、耐赤化層の役割をするようにすることができる。
【0131】
図2で偏光層100の下部、すなわち耐赤化層20と反対側の面にも保護フィルム302が付着しているが、この保護フィルム302は省略されたり、他の種類の層(例えば、前述した位相差フィルムや、硬化樹脂層等)になり得る。例えば、前記耐赤化層20と反対側の面に存在する保護フィルム302の下部、すなわち前記保護フィルム302の偏光層100側の面と反対側の面には、粘着剤層が形成されていてもよく、前記保護フィルム302の代わりに粘着剤層が形成されていてもよい。
【0132】
図3は、変形構造として、偏光層100の一面に2枚の保護フィルム301、302が存在し、その保護フィルム301、302の間に耐赤化層20が存在する場合である。この場合にも、前記層の接着には、粘着剤や接着剤が適用され得、この際、耐赤化層20が粘着剤や接着剤であってもよい。このような構造において偏光層100の下部に存在する保護フィルム303に対する事項は、図2の構造において偏光層100の下部に存在する保護フィルム302の場合と同じである。
【0133】
図2および図3の構造は、本出願の一つの例示であり、本出願の光学積層体は、その他にも、多様な構造で構成され得る。
【0134】
本出願は、また、前記光学積層体を含むディスプレイ装置に関する。前記ディスプレイ装置の種類は、特別な制限なく多様であり得、例えば、公知のLCD(Liquid Crystal Display)またはOLED(Organic Light Emitting Display)等であり得、このようなディスプレイ装置において前記光学積層体は、通常の方式で適用され得る。
【0135】
特に前記光学積層体は、いわゆるカバーガラス(Cover glass)を含むディスプレイ装置に効果的に適用される。
【0136】
このような装置は、通常、カバーガラスと該カバーガラスにいわゆるOCA(Optical Clear Adhesive)やOCR(Optical Clear Resin)等で付着した光学積層体を含むが、前記光学積層体として本出願の積層体が適用され得る。したがって、前記ディスプレイ装置は、カバーガラスと、前記カバーガラスに付着した光学積層体とを含み、前記光学積層体は、前記光学機能層と、前記光学機能層の少なくとも一面に形成されている耐赤化層とを含むことができ、この際、前記耐赤化層は、前記カバーガラスと前記光学機能層との間に位置し得る。
【0137】
通常、カバーガラスを含むディスプレイ装置は、車両用ナビゲーション等の用途に適用されるが、この際、熱伝導率の高いカバーガラスにより前記赤化現象がさらに問題になる。
【0138】
しかしながら、本出願の光学積層体は、前記構造の装置に適用されて、前記問題点を解決することができる。
【0139】
前記ディスプレイ装置の具体的な構造は、本出願の光学積層体が適用される限り、特別な制限はなく、公知の構造に従うことができる。
【発明の効果】
【0140】
本出願では、非常に苛酷な条件(例えば、非常に高温条件)で駆動されたり、維持される場合にも、いわゆる赤化現象が誘発されない光学積層体またはそれに適用される耐赤化層を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0141】
図1】本出願の光学積層体の例示的な構造を説明するための図である。
図2】本出願の光学積層体の例示的な構造を説明するための図である。
図3】本出願の光学積層体の例示的な構造を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0142】
以下、本出願による実施例等を通じて前記偏光層等をより具体的に説明するが、本出願の範囲が以下に制限されるものではない。
【0143】
以下では、偏光層等の各物性は、下記の方式で測定した。
【0144】
1.厚みの測定
偏光層および耐赤化層等の厚みは、TEM(Transmission Electron Microscopy)機器を適用して測定することができる。前記TEM機器で偏光層や耐赤化層の断面を撮影した後に、撮影されたイメージから当該層の厚みを確認することができる。本実施例では、TEM機器としてHitachi社のH-7650製品を使用した。
【0145】
2.中空粒子の粒度分布および気孔サイズの測定
中空粒子の粒度分布は、Otsuka Electronics社のELSZ-2000装備を用いて測定した。また、中空粒子の粒子直径および気孔サイズは、TEM(Transmission Electron Microscopy)機器を適用して測定した。本実施例では、TEM機器としてHitachi社のH-7650製品を使用した。前記粒子直径および気孔サイズは、前記TEM機器を使用して実施例等で製造された光学積層体(偏光板)における耐赤化層の断面を撮影(10000倍の倍率)した後に任意に50個の中空粒子を選択してそれぞれの粒子直径と気孔サイズを求め、その算術平均を粒子直径および気孔サイズの代表値とした。
【0146】
3.CIE色座標の測定
色座標は、JASCO V-7100スペクトロフォトメーター(Spectrophotometer)を使用して測定した。前記JASCO V-7100スペクトロフォトメーターは、当該機器に内蔵された偏光子の吸収軸に対して測定対象偏光板の吸収軸を0度から360度まで回転させて透過率が最小となる地点で色座標(TD色座標)を測定し、前記透過率が最小となる地点でさらに測定対象偏光板の吸収軸を時計方向に90度回転させて色座標(MD色座標)を測定した後に、各測定値を基準として色座標の代表値を導き出す機器である。本明細書の実施例に記載された色座標は、前記JASCO V-7100スペクトロフォトメーターで確認される色座標である。
【0147】
4.透過率および反射率の測定
偏光板の単体透過率等は、JASCO V-7100スペクトロフォトメーター(Spectrophotometer)を使用して測定した。前記JASCO V-7100スペクトロフォトメーター(Spectrophotometer)は、偏光板の透過率等を380~780nmの範囲内で測定して前記波長範囲に対する代表値を導き出す機器であり、本実施例では、このようなJASCO V-7100スペクトロフォトメーター(Spectrophotometer)で確認される透過率を記載した。
【0148】
5.偏光層のカリウムKおよび亜鉛Znの重量比の測定
偏光層に存在するカリウムKと亜鉛Znの重量比は、次の方式で測定した。まず、常温(約25℃)で約65重量%濃度の硝酸水溶液(2mL)に偏光層0.1g程度を溶かした後に、水(Deionized water)で40mLまで希釈した後に、ICP-OES(Optima 5300)を使用して偏光層に含まれているカリウムKと亜鉛Znの重量をそれぞれ測定した。
【0149】
6.耐赤化層の熱拡散率の評価
耐赤化層の熱拡散率は、次のような方式で測定した。下記実施例で記述した方式で厚みが略60μm程度のTAC(Triacetyl cellulose)フィルム(ヒョースン社製、PG601F)上に耐赤化層を形成した状態で前記熱拡散率を評価した。この際、耐赤化層の厚みは、各実施例に記載されている。前記TACフィルム/耐赤化層の積層体の上面および下面にグラファイトコーティング(graphite coating)を行った。前記グラファイトコーティングは、CRAMLIN社のGRAPHITE製品を使用して形成した。前記製品は、スプレー方式でグラファイトコーティングができる製品であり、当該製品を前記積層体の上面(耐赤化層の面)と下面(TACフィルム)に1回程度噴射後に乾燥してグラファイト層を形成した。その後、NETZSCH社のLFA 457 MicroFlash製品を使用して熱拡散率を測定した。熱拡散率は、95℃の温度を基準として測定し、前記一つのグラファイト面から他のグラファイト面への温度伝達の可否を通じて確認した。このような方式で積層体(耐赤化層/TACフィルム)の熱拡散率を評価し、実施例では、TACフィルムに対する前記積層体の熱拡散率の相対比率を記載した。
【0150】
7.耐赤化層の赤外線反射率の評価
耐赤化層の赤外線反射率は、次の方式で確認した。下記実施例で記述した方式で厚みが略60μm程度のTAC(Triacetyl cellulose)フィルム上に耐赤化層を形成した状態で前記赤外線反射率を評価した。この際、耐赤化層の厚みは、各実施例に記載されている。前記耐赤化層/TACフィルムの積層体のTACフィルムの下面(耐赤化層が形成されていないフィルムの面)にブラックテープ(TOMOEGAWA社、ブラックPETフィルム)を付着して暗色化処理を行い、SHIMADZU社のSolidspec 3700装備を使用して、反射率(Reflectance)モードで800~1300nmの波長領域における平均反射率を測定した。前記機器を使用すると、800nm~1300nmの範囲内で1nm間隔の波長範囲に対する反射率を確認することができ、本実施例では、各波長に対する反射率の算術平均値を赤外線反射率の代表値とした。
【0151】
8.耐赤化層の小角X線散乱(SAXS:Small Angle X ray Scattering)の評価
耐赤化層の小角X線散乱の評価は、次の方式で行った。下記実施例で記述した方式で厚みが略60μm程度のTAC(Triacetyl cellulose)フィルム上に耐赤化層を形成した状態で前記評価を進行した。この際、耐赤化層の厚みは、各実施例に記載されている。前記TACフィルム/耐赤化層の積層体を横および縦がそれぞれ1cm程度になるようにカットして試験片を製作する。前記試験片の耐赤化層に0.0733nmの波長のX線を4m離れた距離で照射して散乱ベクトルによる散乱強度を求めた。前記測定は、浦項加速器4Cビームラインで行い、垂直のサイズが0.023mm程度であり、水平のサイズが0.3mm程度であるX線を利用した。検出器としては、2D mar CCDを利用した。散乱された2D回折パターンのイメージを得た後に、これをstandard試料(polyethylene-block-polybutadiene-block-polystyrene,SEBS)を通じて得られたsample-to-detector距離を用いてcalibrationし、circular averageを通じて散乱ベクトル(q)による散乱強度を換算した。この際、散乱ベクトルは、下記数式Aにより求めた。
【0152】
[数式A]
q=4πsin(θ/λ)
【0153】
数式Aで、qは、前記散乱ベクトルであり、θは、散乱角度(単位:度)の1/2倍の数値であり、λは、照射したX線の波長(単位:オングストローム(Å))である。
【0154】
9.Cauchy Parameterの測定
耐赤化層の屈折率およびCauchy Parameterは、次の方式で行った。下記実施例で記述した方式で厚みが略60μm程度のTAC(Triacetyl cellulose)フィルム上に耐赤化層を形成した状態で前記評価を進行した。この際、耐赤化層の厚みは、各実施例に記載されている。前記積層体(耐赤化層/TACフィルム)の耐赤化層に対して装備(J.A.Woollam Co.M-2000)を使用して前記特性を評価した。前記耐赤化層に対して前記装備を適用して70度の入射角の条件で380nm~1,000nmの波長範囲で線偏光を測定した。測定された線偏光データ(Ellipsometry data (Psi(Ψ)、delta(Δ)))をComplete EASE softwareを用いて下記一般式1のCauchy modelのMSEが25以下になるように最適化(fitting)して、下記数式6のn(λ)、A、BおよびCを求めた。最適化過程でRoughness機能をon(範囲-20~50nm)として適用した。
【0155】
[数式6]
【数2】
【0156】
数式6で、n(λ)は、波長λnmにおける屈折率である。
【0157】
10.表面積比の評価
耐赤化層(空隙含有層(多孔性層))の表面積比(Surface Area Ratio)は、AFM機器(Atomic Force Microscope,Park Systems,XE7)を使用して測定した。実施例の記載のようにTACフィルムの一面に形成された耐赤化層(空隙含有層(多孔性層))を有する積層体を横および縦長さが1cmになるようにカットして製作したサンプルをカーボンテープを使用して機器のステージに固定させ、測定を行った。測定のための探針(tip)としては、PPP-NCHR 10(Force Constant:42N/m、Resonance Frequency 330kHz)を使用した。測定条件は、下記の通りである。
【0158】
<測定条件>
x-scan size:1μm
y-scan size:1μm
Scan rate:0.7~1Hz
Z Servo Gain:1
Set Point:10~15nm
【0159】
前記条件で測定したデータをXEIプログラムを用いて下記条件で平坦化した。
【0160】
<平坦化条件>
Scope:Line
Orientation:X and Y axis
Regression Order:1
【0161】
平坦化後に、XEIプログラム内のRegion tabで表面積比を抽出した。
【0162】
製造例1.偏光層(A)の製造
厚みが約30μmのPVA(poly(vinyl alcohol))フィルム(日本合成社、M3004L)をヨウ素I0.2重量%およびヨウ化カリウムKI 2.5重量%を含む28℃の染色液に60秒間浸漬させて染色処理した。次に、染色されたPVAフィルムをホウ素1重量%およびヨウ化カリウムKI 3重量%を含む35℃の水溶液(架橋液)に60秒間浸漬させて架橋処理した。この後、架橋されたPVAフィルムをロール間延伸方法を用いて5.4倍の延伸倍率で延伸させた。延伸されたPVAフィルムを25℃のイオン交換水に60秒間浸漬させて洗浄し、硝酸亜鉛2重量%およびヨウ化カリウムKI 5重量%を含む25℃の水溶液に30秒間浸漬させた。この後、PVAフィルムを80℃の温度で60秒間乾燥させてPVA偏光層を製造した。前記製造された偏光層の最終厚みは、約12μm程度であり、カリウム含量は、約0.9重量%であり、亜鉛含量は、約0.3重量%であった。また、1/(1+0.025d/R)は、約0.9であった。前記でdは、偏光層の厚み(12μm)であり、Rは、偏光層に含まれているカリウム成分の重量比K(単位:weight)と亜鉛成分の重量比Zn(単位:weight)の比率K/Znである。
【0163】
製造例2.偏光層(B)の製造
厚みが約45μmのPVA(poly(vinyl alcohol))フィルム(日本合成社、M4504L)を円盤フィルムとして使用して偏光層を製造した。まず、前記円盤フィルムに対して膨潤処理を行った。膨潤処理は、円盤フィルムを25℃の温度の純水に30秒間浸漬して行った。膨潤処理過程で最終延伸倍率の約28%程度までが延伸されるように延伸を進行した。次に、純水にヨウ素Iおよびヨウ化カリウムKIがそれぞれ0.2重量%および2.5重量%程度の濃度で溶解した染色液を使用して染色処理を行った。染色処理は、28℃の前記染色液内に円盤フィルムを約2分間浸漬して行った。この過程で最終延伸倍率の約40%程度までが延伸されるように延伸を進行した。この後、染色されたPVAフィルムをホウ素1重量%およびヨウ化カリウム3重量%を含む35℃の水溶液(架橋液)に60秒間浸漬させて架橋処理した。次に、前記円盤フィルムを延伸した。延伸は、ホウ酸とヨウ化カリウムをそれぞれ3重量%程度で含む水溶液(処理液)内で行った。前記処理液の温度は、50℃程度であった。次に、水溶液で前記延伸されたフィルムを洗浄した。この際、水溶液の温度は、約25℃程度であり、洗浄処理は、1分以内で行った。その後、フィルムを乾燥してPVA偏光層を製造した(厚み:27μm、総延伸倍率:5.4倍)。
【0164】
製造例3.耐赤化層(A)材料の製造
バインダーとしてTMPTA(trimethylolpropane triacrylate)を適用し、中空シリカ粒子(Hollow Silica Particle)を適用して、耐赤化層を製造した。前記中空シリカ粒子としては、D10、D50およびD90粒径がそれぞれ32.1nm、62.6nmおよび123.4nmである粒子を使用した。この場合、耐赤化層を形成した後に、TEMで測定した気孔サイズの平均は、略38.3nm程度であり、粒子直径は、略53nm程度であった。前記バインダー、前記中空シリカ粒子、含フッ素化合物(RS-90、DIC社)および開始剤(Irgacure 127、Ciba社)を、固形分を基準として31:65:0.1:3.9の重量比(バインダー:中空シリカ粒子:含フッ素化合物:開始剤)で溶媒MIBK(methyl isobutyl ketone)に希釈してコーティング液を製造した。
【0165】
製造例4.耐赤化層(B)材料の製造
バインダーとしてTMPTA(trimethylolpropane triacrylate)を適用し、中空シリカ粒子(Hollow Silica Particle)を適用して、耐赤化層を製造した。前記中空シリカ粒子としては、D10、D50およびD90粒径は、それぞれ39.9nm、70.6nmおよび126.0nmである粒子を使用した。この場合、耐赤化層を形成した後に、TEMで測定した気孔サイズの平均は、略44.1nm程度であり、粒子直径は、略61nm程度であった。前記バインダー、前記中空シリカ粒子、含フッ素化合物(RS-90、DIC社)および開始剤(Irgacure 127、Ciba社)を55.1:40:1.1:3.8の重量比(バインダー:中空シリカ粒子:含フッ素化合物:開始剤)で溶媒MIBK(methyl isobutyl ketone)に希釈してコーティング液を製造した。
【0166】
製造例5.耐赤化層(C)材料の製造
バインダーとしてPETA(Pentaerythritol triacrylate)を適用し、中空シリカ粒子(Hollow Silica Particle)を適用して耐赤化層を製造した。前記中空シリカ粒子としては、D10、D50およびD90粒径がそれぞれ39.9nm、70.6nmおよび126.0nmである粒子を使用した。この場合、耐赤化層を形成した後にTEMで測定した気孔サイズの平均は、略44.1nm程度であり、粒子直径は、略61nm程度であった。前記バインダー、前記中空シリカ粒子、含フッ素化合物(RS-90,DIC社)および開始剤(Irgacure 127,Ciba社)を76.5:20:0.5:3.0の重量比(バインダー:中空シリカ粒子:含フッ素化合物:開始剤)で溶媒MIBK(methyl isobutyl ketone)に希釈してコーティング液を製造した。
【0167】
製造例6.耐赤化層(D)材料の製造
バインダーとしてPETA(Pentaerythritol triacrylate)を適用し、中空シリカ粒子(Hollow Silica Particle)を適用して、耐赤化層を製造した。前記中空シリカ粒子としては、D10、D50およびD90粒径がそれぞれ39.9nm、70.6nmおよび126.0nmである粒子を使用した。この場合、耐赤化層を形成した後にTEMで測定した気孔サイズの平均は、略44.1nm程度であり、粒子直径は、略61nm程度であった。前記バインダー、前記中空シリカ粒子、含フッ素化合物(RS-90、DIC社)および開始剤(Irgacure 127、Ciba社)を86.5:10:0.5:3.0の重量比(バインダー:中空シリカ粒子:含フッ素化合物:開始剤)で溶媒MIBK(methyl isobutyl ketone)に希釈してコーティング液を製造した。
【0168】
製造例7.樹脂層(A)材料の製造
バインダーとしてPETA(Pentaerythritol triacrylate)を適用し、中空粒子を適用しない代わりに、ソリッドシリカ粒子(Solid Silica Particle)を適用して、樹脂層材料を製造した。前記ソリッドシリカ粒子としては、D10、D50およびD90粒径がそれぞれ43.1nm、69.9nmおよび125.8nmである粒子を使用した。この場合、樹脂層を形成した後にTEMで測定した粒子直径は、略60nm程度であった。前記バインダー、前記ソリッドシリカ粒子、含フッ素化合物(RS-90、DIC社)および開始剤(Irgacure 127、Ciba社)を31:65:0.1:3.9の重量比(バインダー:ソリッドシリカ粒子:含フッ素化合物:開始剤)で溶媒MIBK(methyl isobutyl ketone)に希釈してコーティング液を製造した。
【0169】
実施例1.
製造例1で得られた偏光層(A)に一般的な光学用水系接着剤層(厚み:100nm)を適用して、保護フィルムとして厚みが略30μm程度のCOP(Cycloolefin Polymer)フィルム(製造社:Zeon)を付着した。別途に、厚みが略60μm程度のTAC(Triacetyl cellulose)フィルム(ヒョースン社)上に耐赤化層を形成した。耐赤化層は、製造例3の耐赤化層(A)材料をMayer barでコートし、60℃程度で1分程度乾燥した後に、紫外線を照射(252mJ/cm)して、最終厚みが約450nm程度になるように形成した。前記形成された耐赤化層のTACフィルムと接する面と反対側の表面に対して測定した表面積比(Surface Area Ratio)は、約0.148水準であった。次に、前記製造したCOPフィルムと偏光層(A)の積層体の偏光層(A)に前記耐赤化層とTACフィルムの積層体の耐赤化層を前記同じ水系接着剤(厚み:100nm)で付着した。次に、偏光板の下部にアクリル系粘着剤層を形成して、保護フィルム(COPフィルム)、接着剤層、偏光層、接着剤層、耐赤化層、保護フィルム(TACフィルム)および粘着剤層が順次積層された構造の偏光板(光学積層体)を製造した。
【0170】
実施例2.
耐赤化層を変更したことを除いては、実施例1と同一に偏光板を製造した。前記耐赤化層は、製造例4のコーティング溶液をMayer barを用いて実施例1と同じTACフィルムにコートし、60℃で1分間乾燥した後に、紫外線を照射(252mJ/cm)して、最終厚みが600nmになるように形成した。前記方式で形成された 耐赤化層を適用したことを除いて、実施例1と同一に偏光板を製作した。前記形成された耐赤化層のTACフィルムと接する面と反対側の表面に対して測定した表面積比(Surface Area Ratio)は、約0.0359水準であった。
【0171】
実施例3.
耐赤化層を変更したことを除いては、実施例1と同一に偏光板を製造した。前記で耐赤化層は、製造例5のコーティング材料を使用して実施例1と同じ方式で形成するものの、最終厚みは、略950nm程度になるように形成した。上記のように形成した耐赤化層を適用したことを除いては、実施例1と同一に偏光板を製作した。前記形成された耐赤化層のTACフィルムと接する面と反対側の表面に対して測定した表面積比(Surface Area Ratio)は、約0.109水準であった。
【0172】
比較例1.
耐赤化層を適用しないことを除いては、実施例1と同一に偏光板を製造した。
【0173】
実施例4.
偏光層として製造例2の偏光層(B)を適用し、耐赤化層の厚みを300nm程度に変更したことを除いては、実施例1と同一に偏光板を製造した。前記形成された耐赤化層のTACフィルムと接する面と反対側の表面に対して測定した表面積比(Surface Area Ratio)は、約0.0715水準であった。
【0174】
実施例5.
偏光層として製造例2の偏光層(B)を適用し、耐赤化層の厚みを400nm程度に変更したことを除いては、実施例1と同一に偏光板を製造した。前記形成された耐赤化層のTACフィルムと接する面と反対側の表面に対して測定した表面積比(Surface Area Ratio)は、約0.1643水準であった。
【0175】
比較例2.
耐赤化層を適用しないことを除いては、実施例4と同一に偏光板を製造した。
【0176】
実施例6.
偏光層として製造例2の偏光層(B)を適用し、製造例5の耐赤化層のコーティング材料を適用して厚みが約500nmの耐赤化層を形成して適用したことを除いては、実施例1と同一に偏光板を製造した。前記形成された耐赤化層のTACフィルムと接する面と反対側の表面に対して測定した表面積比(Surface Area Ratio)は、約0.2207水準であった。
【0177】
実施例7.
製造例4の耐赤化層用コーティング材料を適用したことを除いては、実施例6と同一に偏光板を製造した。前記形成された耐赤化層のTACフィルムと接する面と反対側の表面に対して測定した表面積比(Surface Area Ratio)は、約0.0387水準であった。
【0178】
実施例8.
製造例3の耐赤化層用コーティング材料を適用したことを除いては、実施例6と同一に偏光板を製造した。前記形成された耐赤化層のTACフィルムと接する面と反対側の表面に対して測定した表面積比(Surface Area Ratio)は、約0.0513水準であった。
【0179】
実施例9
耐赤化層として製造例6の耐赤化層材料を適用して厚みが約3000nmの耐赤化層を適用したことを除いては、実施例6と同一に偏光板を製造した。前記形成された耐赤化層のTACフィルムと接する面と反対側の表面に対して測定した表面積比(Surface Area Ratio)は、約0.0611水準であった。
【0180】
比較例3.
厚みが略60μm程度のTAC(Triacetyl cellulose)フィルム(ヒョースン社、PG601F)上に樹脂層を形成した。製造例7の樹脂層(A)材料をMayer barでコートし、60℃で1分程度乾燥した後に紫外線を照射(252mJ/cm)して、最終厚みが約450nm程度になるように樹脂層を形成した。前記形成された樹脂層のTACフィルムと接する面と反対側の表面に対して測定した表面積比(Surface Area Ratio)は、約0.01水準であった。製造例1で得られた偏光層(A)に一般的な光学用水系接着剤層(厚み:100nm)を適用して、保護フィルムとして厚みが略30μm程度のCOP(Cycloolefin Polymer)フィルム(製造社:Zeon)を付着した。前記製造したCOPフィルムと偏光層(A)の積層体の偏光層(A)に前記形成された樹脂層を前記と同じ水系接着剤(厚み:100nm)で付着した。次に、偏光板の下部にアクリル系粘着剤層を形成して、保護フィルム(COPフィルム)、接着剤層、偏光層、接着剤層、樹脂層、保護フィルム(TACフィルム)および粘着剤層が順次積層された構造の偏光板(光学積層体)を製造した。
【0181】
前記それぞれの実施例で形成された耐赤化層の特性を下記表1に整理して記載した(比較例1および2の場合、耐赤化層未形成、比較例3の場合、樹脂層の特性を記載)。
【0182】
【表1】
【0183】
前記実施例および比較例に対して耐熱テストを進行した後に、単体透過率および色座標aの変化量を評価して、下記表2に整理して記載した。前記で耐熱テストは、各実施例または比較例で製造された偏光板の上面と下面の全面を、厚みが約1.1mm程度のソーダライムガラス(セウォンテック社)と接触させてラミネートした後に、105℃で250時間維持して行った。また、肉眼で赤化現象が確認されるか否かを観察して、確認される場合にNG、確認されない場合にPASSで下記表2に整理して記載した(下記表2で透過率の単位は%である)。
【0184】
【表2】
図1
図2
図3