(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-06
(45)【発行日】2023-10-17
(54)【発明の名称】真空および/または圧空成形容器、並びにその製造方法
(51)【国際特許分類】
B65D 1/00 20060101AFI20231010BHJP
B65D 1/28 20060101ALI20231010BHJP
B65D 81/38 20060101ALI20231010BHJP
B29C 51/10 20060101ALI20231010BHJP
B29C 51/14 20060101ALI20231010BHJP
【FI】
B65D1/00 111
B65D1/28
B65D81/38 J
B29C51/10
B29C51/14
(21)【出願番号】P 2020046770
(22)【出願日】2020-03-17
【審査請求日】2022-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000226976
【氏名又は名称】日清食品ホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】西野 嘉貢
(72)【発明者】
【氏名】橋本 健司
【審査官】永田 勝也
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-138399(JP,A)
【文献】特開2019-177488(JP,A)
【文献】特開2019-142565(JP,A)
【文献】特開2005-263288(JP,A)
【文献】特開2000-225662(JP,A)
【文献】米国特許第05817402(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 1/00
B65D 1/28
B65D 81/38
B29C 51/10
B29C 51/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空および/または圧空成形された熱可塑性樹脂からなる容器本体と、押出ラミネートにより主強度材である紙の両面にポリエチレン層を設けた積層体と、からなる容器において、
前記容器本体と前記積層体とは、容器本体の熱可塑性樹脂と積層体の内側のポリエチレン層とが熱接着することで一体化しており、
前記積層体は、外側のポリエチレン層上に印刷層を備えるとともに、積層体の外側のポリエチレン層が発泡することで発泡層を形成している、真空および/または圧空成形容器。
【請求項2】
側面に発泡層を備えた真空および/または圧空成形容器の製造方法であって、
押出ラミネートにより主強度材である紙の両面にポリエチレン層を設けた発泡前の積層体を金型の内壁面に沿って逆錐台状または筒状に成形し
て配置する配置工程と、
前記逆錐台状または筒状に成形した発泡前の積層体の内側に熱可塑性樹脂からなる容器本体が配置される
と同時に、積層体の内側と容器本体とが熱接着するように、熱可塑性樹脂シートを真空および/または圧空加工する真空および/または圧空加工工程と、
積層体を加熱して、積層体の最外層を発泡させる発泡工程と、
を含む、真空および/または圧空成形容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は真空および/または圧空成形容器に関する。より詳しくは、側面に発泡層を備えた真空および/または圧空成形容器に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、多種多様な容器が市場に流通している。容器はその用途に応じて、様々な機能が求められている。例えば、食品を内包した容器の場合、ガスバリア性、耐漏水性、耐熱性などの機能が求められる。これらの機能は、1又は2以上の素材を組み合わせることで達成されている。
【0003】
容器に食品を内包して用いる一例として、即席麺やインスタントスープなどの即席食品が挙げられる。これらの即席食品は、容器内に規定量の熱湯を注湯することで喫食が可能となる。そのため、これらの即席食品には、耐漏水性が求められる。
【0004】
耐漏水性を有する容器としては、ポリプロピレンやポリスチレンなどの熱可塑性樹脂からなる容器が知られている。熱可塑性樹脂からなる容器は耐漏水性に優れるが、容器内部の熱が容器の外側に伝わりやすいという特徴もある。そのため、容器内に熱湯などを注湯した場合、容器を直接把持することが難しい。
【0005】
そこで、熱可塑性樹脂容器の外側にコルゲート紙を巻きつける方法や、熱可塑性樹脂容器との間に空気層ができるように熱可塑性樹脂容器よりも一回り大きな紙製容器と嵌合させた、いわゆる二重容器とする方法が従来から行われている(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】実開平05-084621公報
【文献】特開2000-062753公報
【0007】
ところで、コルゲート紙を巻きつけた場合、耐熱性は向上するが、美観が劣るといった問題が新たに生じる。そこで、コルゲート紙の表面に印刷を行うことも考えられる。しかし、コルゲート紙の場合、用いることができる色彩数に制限が生じることがある。また、熱可塑性樹脂容器にコルゲート紙を巻き付けたり、二重容器にしたりすると、嵩張ったり、スタッキングしづらくなったりするといった問題も生じる。さらに、重量も増加するため、輸送コストがかさむといった問題も生じる。さらにまた、熱可塑性樹脂容器にコルゲート紙を貼り付けたり、二重容器を一体化させたりするためには、別工程として行うための装置が必要となるといった問題も生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、印刷性に優れ、嵩張りや大幅な重量増加がなく、しかも既存の設備を用いて耐熱性を備えた熱可塑性樹脂からなる容器が作れないか検討を行った。そして、発泡層を容器の側面に設けることで上記課題を解決できることを新たに見出し、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題解決のため、本発明は、側面に発泡層を備えた真空および/または圧空成形容器を提供する。また、上記課題解決のため、本発明は、真空および/または圧空成形された熱可塑性樹脂からなる容器側面と、紙を主強度材とし最外層に発泡層を備えた積層体とが一体化している真空および/または圧空成形容器を提供する。さらに、上記課題解決のため、本発明は、金型の内壁面に沿って逆錐台状または筒状に成形した発泡前の積層体を配置する配置工程と、前記逆錐台状または筒状に成形した発泡前の積層体の内側に熱可塑性樹脂からなる容器が配置されるように、熱可塑性樹脂シートを真空および/または圧空加工する真空および/または圧空加工工程と、積層体を加熱して、積層体の最外層を発泡させる発泡工程と、を含む、真空および/または圧空成形容器の製造方法を提供する。
【0010】
かかる構成によれば、熱可塑性樹脂からなる容器と発泡層を備えた積層体とが一体成形されているため、コルゲート紙を熱可塑性樹脂からなる容器に巻き付けるよりも印刷性に優れ、嵩張りや大幅な重量増加も防ぐことができる。また、金型を用いることで、熱可塑性樹脂からなる容器と発泡層を備えた積層体とが一体成形を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、既存の設備を用いて、印刷性、耐熱性に優れた熱可塑性樹脂からなる容器を提供することができる。また、容器と積層体とが一体成形されるため、外れにくい。さらに、積層体は一体成形時には発泡させず、一体成形後に発泡可能であるため、嵩張りを抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を説明する。本実施形態にかかる成形容器は、熱可塑性樹脂からなる容器本体と、最外層に発泡層を備えた積層体が一体化している丼型形状を例に説明する。
【0013】
本実施形態における容器本体は、糸尻部を備えた丼型形状であり、開口部から外側に延びるフランジ部を備えている。
【0014】
容器本体に用いることができる熱可塑性樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、ポリウレタン樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂層は単層でも良いし、積層であっても良い。このうち、成形のしやすさの観点から、ポリスチレン樹脂またはポリプロピレン樹脂が好ましい。
【0015】
本実施形態にかかる熱可塑性樹脂容器の成形方法としては、射出成形、真空成形、圧空成形、真空圧空成形、熱板成形などの慣用の成形方法を用いることができる。本実施形態においては、真空成形、圧空成形または真空圧空成形が好ましい。
ここで、真空成形とは、加熱して可撓性を高めた熱可塑性樹脂シートを吸引して型に密着させることで、所定の形状に成形する方法を言う。圧空成形とは、加熱して可撓性を高めた熱可塑性樹脂シートを下側の型と上側の圧空BOXにて挟み、圧力により熱可塑性樹脂シートを型に密着させることで、所定の形状に成形する方法を言う。真空圧空成形とは、真空成形と圧空成形とを組み合わせた成形方法をいう。
【0016】
本実施形態にかかる積層体は、紙を主強度材とし最外層に発泡層を備えている。具体的には、紙基材の片面にポリエチレンAの層が、もう片面にポリエチレンAよりも融点の高いポリエチレンBの層で構成されている。ここで、発泡前の積層体の厚みとしては30~100μmが好ましい。30μm未満だと、紙基材やポリエチレン層の十分な厚みが確保できず、結果として十分な発泡層が得られない。一方、100μmより厚すぎると、嵩張ってしまう。また、発泡後の積層体の厚みとしては1200μm未満が好ましい。1200μm以上だと、嵩張ってしまったり、スタッキングしづらくなったりしてしまう。さらに、発泡層の厚みとしては400μm以上であることが好ましい。
【0017】
紙基材の坪量は、取り扱い性等により適宜選択可能であるが、通常は200g/m2以上400g/m2以下程度のものが好ましく、250g/m2以上350g/m2以下のものがより好ましい。本発明では、紙基材中に含まれる水分を利用して発泡前の発泡層(以下、単に「未発泡層 」とも言う。)を発泡させて発泡層とするため、紙基材に含まれる水分が重要である。紙基材の含水率としては、約5~10重量%の範囲内であることが好ましい。
【0018】
次に、ポリエチレンについて説明する。本発明においては種々のポリエチレンを用いることができるが、ポリエチレンAとしては低~中密度ポリエチレンを、ポリエチレンBとしては中~高密度ポリエチレンを用いることが好ましい。大まかな定義としては、低密度ポリエチレンは、融点が95~130℃、密度が0.91~0.929g/cm3のポリエチレンをさす。中密度ポリエチレンは、融点が110~135、密度が0.93~0.941g/cm3のポリエチレンをさす。高密度ポリエチレンとは、融点が120~140℃、密度が0.942~0.97g/cm3のポリエチレンをさす。
【0019】
なお、ポリエチレンAとポリエチレンBとは、融点の差が5℃以上あることが好ましく、10℃以上あることがより好ましい。ポリエチレンAとポリエチレンBとの融点の差が小さいと、発泡させる際の温度制御が困難となる。
【0020】
さらに、本発明においては、容器本体と積層体とを一体化させるために、ポリエチレンBに容器本体と同じ素材を添加することが好ましい。容器本体と同じ素材を用いることで、積層体と容器本体との接着力が増し、一体化させることができる。本実施形態においては、ポリエチレンBにポリプロピレンを添加することが好ましい。ここで、ポリエチレンBに添加するポリプロピレン量としては、10~50重量%であることが好ましい。10%未満だと容器本体との接着力が不十分であり、50%より多いと積層体の成形に支障をきたす恐れがある
【0021】
ポリエチレンBに容器本体と同じ素材を添加する以外に、ポリエチレンB層の上に容器本体と同じ素材の層を一層設けてもよい。本実施形態においては、ポリエチレンB層の上にポリプロピレン層を設けることが好ましい。ポリプロピレン層の厚みとしては、5~15μmが好ましい。5μm未満だと接着性が安定しない。15μmより厚くすると、加工性が悪くなる。
【0022】
積層体の製造方法について説明する。ここでは、ポリエチレンの塗工方法としてTダイを用いた場合を例に説明するが、これに限られるものではない。積層体は、ロール状に巻かれた紙基材(原紙)を巻き出しながら、ガイドローラーに従って紙基材を最初のTダイまで送る。Tダイから押出ラミネートを行い、溶融したポリエチレンAを紙基材の片面に塗工する。ポリエチレンAを塗工した面をチルドローラーで冷却し、ポリエチレンA層を設ける。なお、ポリエチレンA層の厚みとしては40~200μmが好ましい。この範囲であれば、発泡後に十分な断熱性を実現できる。
【0023】
紙基材の片面にポリエチレンA層を設けた後、今度はポリエチレンA層とは反対側の面にポリエチレンB層を設ける。具体的には、Tダイから押出ラミネートを行い、溶融したポリエチレンBをポリエチレンA層とは反対側の紙基材に塗工する。ポリエチレンB層を塗工した面をチルドローラーで冷却し、ポリエチレンB層を設ける。これにより、紙基材の両面にポリエチレン層が設けられた積層体が得られる。ポリエチレンB層の厚みとしては、25~80μmであることが好ましい。なお、本実施形態ではポリエチレンAを先に塗工したが、ポリエチレンBを先に塗工してもよい。また、ポリエチレンA層とポリエチレンB層とを設ける(時間)間隔は短い方が好ましい。間隔が長すぎると紙基材から水分が抜けて、ポリエチレンが発泡し難くなるためである。
【0024】
得られた積層体のポリエチレンA層表面には印刷を行うこともできる。印刷を行うことで装飾を付与することができ、美観が良くなる。印刷は未発泡層に対して行うのが好ましい。未発泡層であれば印刷が行いやすい。
【0025】
次に、本実施形態にかかる成形容器の製造方法について説明する。ここでは真空成形を例に説明する。まず、印刷を施した上述の積層体を所定の形状に打ち抜く。打ち抜いた積層体は、印刷面を外側に向けて端部と端部を接着すると、丼型容器の側面と一致する形状となる。
【0026】
まず、端部と端部を接着した積層体を、真空成形装置の金型内に配置する。続いて、加熱したポリプロピレンシートを金型の上部に配置し、金型に表面に設けられた吸引口からポリプロピレンシートを吸引する。ポリプロピレンシートは吸引によって金型に密着することで変形し、所定の容器本体形状となる。また、ポリプロピレンシートが吸引によって変形するとき、積層体の内側面と容器本体の胴部とが当接する。積層体の内側面にはポリプロピレンが含まれているため、加熱されたポリプロピレンシートが積層体の内側面に当接すると、積層体とポリプロピレンシートとが接着して一体化する。これにより、接着剤を用いなくても積層体と容器本体とを一体化することができる。なお、ポリプロピレンシートを真空成形する際に、冶具でポリプロピレンシートを押してもよい。冶具を用いることにより、より確実にポリプロピレンシートを所望の容器本体形状に近づけることができる。また、冶具で押さえることにより、積層体とポリプロピレンシートとの接着を確実ならしめることができる。
【0027】
次に、積層体と容器本体とが一体化した成形容器を金型から外し、オーブン内へと搬送する。オーブン内は、ポリエチレンAの融点以上ポリエチレンBの融点未満に設定されている。これにより、積層体の外側面を加熱発泡させる。なお、加熱温度がポリエチレンAの融点未満であると、発泡層を設けることができない。一方、加熱温度がポリエチレンBの融点を超えると、積層体の内外面全てが発泡してしまったり、十分な発泡が得られなくなってしまったりするため好ましくない。また、容器本体の形状が歪む恐れもある。
【0028】
以上説明したように、本実施例にかかる真空成形容器は、コルゲート紙を巻いた容器よりも嵩張らず、しかも軽量である。また、積層体に印刷可能であるため、美観も優れる。さらに、新たな装置を用いなくても、容器本体と積層体とを一体化させることができるという極めて優れた効果を奏する。
【0029】
上記実施例では真空成形装置を用いたが、本発明は真空成形に限らず他の成形方法を用いても製造できる。例えば、真空成形装置の代わりに圧空成形装置を用いて行ってもよい。圧空成形装置を用いる場合、加熱した熱可塑性樹脂シートを金型の上に配置するまでは真空成形装置と同じである。圧空成形装置では、圧空BOXを用いて熱可塑性樹脂シートの上から圧力を加えることで、ポリプロピレンシートは金型に密着し、所定の容器本体形状となる。また、ポリプロピレンシートが圧力によって変形するとき、積層体の内側面と容器本体の胴部とが当接して一体化する。さらに、真空圧空成形装置を用いて製造することもできる。真空圧空成形装置の場合、金型からは吸引し、圧空BOXからは圧力を加える。