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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-06
(45)【発行日】2023-10-17
(54)【発明の名称】加工方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20231010BHJP
   B23Q 17/24 20060101ALI20231010BHJP
【FI】
H01L21/78 F
B23Q17/24 Z
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019138203
(22)【出願日】2019-07-26
(65)【公開番号】P2021022657
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2022-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 直子
【審査官】杢 哲次
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-296604(JP,A)
【文献】特開2002-176012(JP,A)
【文献】特開2019-91781(JP,A)
【文献】特開2007-196326(JP,A)
【文献】特開2013-59833(JP,A)
【文献】特開2010-240776(JP,A)
【文献】特開2010-34515(JP,A)
【文献】特開2017-64821(JP,A)
【文献】特開2006-108219(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
B23Q 17/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物の加工方法であって、
切削ブレードで被加工物を切削する切削ステップと、
試験片を該切削ブレードで一端から他端まで切削して切削溝を形成する切削溝形成ステップと、
該切削溝形成ステップを実施した後、該試験片の該一端側または該他端側の側面を撮像して該切削溝を含む撮像画像を形成する撮像ステップと、
該撮像画像から検出した該切削溝の側壁の傾斜に基づいて該切削ブレードの交換要否を判定する判定ステップと、を備え
該判定ステップでは、該撮像画像の該切削溝の上端に、該切削溝の側壁が該試験片の表面に対して直交している正常画像の該切削溝の上端を重ね、該試験片の表面から所定の距離の判定位置の該撮像画像の該切削溝の該側壁と該正常画像の該切削溝の該側壁との距離が予め定められた許容値以下であると判定すると、該切削ブレードの交換を不要と判定し、許容値を超えていると判定すると、該切削ブレードの交換を必要と判定する加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物の加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハなどの被加工物の切削などの加工方法を実施する切削装置として、切削中にカーフチェックを実施して、ウェーハに発生したチッピングのサイズを検出する切削装置が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-129822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示された切削装置は、切削中に所謂斜め切れが発生すると、個片化されたチップの側面が傾斜し、傾斜した角度が規格値を超えるとチップが不良となってしまう為、切削ブレードの交換が必要となる。
【0005】
従来、斜め切れは、切削加工が終了したウェーハから作業者がチップを抜き取り、顕微鏡を用いてチップの寸法を測定することでチップの側面が傾斜していないかを確認していた。そして、チップの側面が傾斜している場合、切削ブレードを交換していた。しかし、この方法だと斜め切れが発生した状態でも暫くは気づかずにウェーハを加工し続け不良のチップを多量に製造してしまうおそれがあった。また、チップを抜き取ってその寸法を測定するのが手間という問題もある。
【0006】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、より容易に切削ブレードの交換タイミングを判定し不良チップを製造し続けてしまうことを抑制することができる加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の加工方法は、被加工物の加工方法であって、切削ブレードで被加工物を切削する切削ステップと、試験片を該切削ブレードで一端から他端まで切削して切削溝を形成する切削溝形成ステップと、該切削溝形成ステップを実施した後、該試験片の該一端側または該他端側の側面を撮像して該切削溝を含む撮像画像を形成する撮像ステップと、該撮像画像から検出した該切削溝の側壁の傾斜に基づいて該切削ブレードの交換要否を判定する判定ステップと、を備え、該判定ステップでは、該撮像画像の該切削溝の上端に、該切削溝の側壁が該試験片の表面に対して直交している正常画像の該切削溝の上端を重ね、該試験片の表面から所定の距離の判定位置の該撮像画像の該切削溝の該側壁と該正常画像の該切削溝の該側壁との距離が予め定められた許容値以下であると判定すると、該切削ブレードの交換を不要と判定し、許容値を超えていると判定すると、該切削ブレードの交換を必要と判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、より容易に切削ブレードの交換タイミングを判定し不良チップを製造し続けてしまうことを抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態1に係る加工方法を実施する加工装置の構成例を示す斜視図である。
図2図2は、図1に示された加工装置のテーブルユニットの斜視図である。
図3図3は、図2に示された加工装置の制御ユニットの正常画像記憶部に記憶された正常画像の一例を示す図である。
図4図4は、実施形態1に係る加工方法の流れを示すフローチャートである。
図5図5は、図4に示された加工方法の切削ステップを模式的に示す断面図である。
図6図6は、図4に示された加工方法の切削溝形成ステップを模式的に示す断面図である。
図7図7は、図4に示された加工方法の切削溝形成ステップ後の試験片の平面図である。
図8図8は、図4に示された加工方法の撮像ステップを模式的に示す断面図である。
図9図9は、図4に示された加工方法の撮像ステップで得た撮像画像の一例を示す図である。
図10図10は、図4に示された加工方法の判定ステップの一例を示す図である。
図11図11は、実施形態1の変形例に係る加工方法の撮像ステップを模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0011】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1に係る加工方法を図面に基づいて説明する。図1は、実施形態1に係る加工方法を実施する加工装置の構成例を示す斜視図である。図2は、図1に示された加工装置のテーブルユニットの斜視図である。図3は、図2に示された加工装置の制御ユニットの正常画像記憶部に記憶された正常画像の一例を示す図である。図4は、実施形態1に係る加工方法の流れを示すフローチャートである。
【0012】
(加工装置)
実施形態1に係る加工方法は、図1に示す加工装置1が被加工物200を切削加工(加工に相当)する方法である。実施形態1では、被加工物200は、シリコン、サファイア、ガリウムなどを基板204とする円板状の半導体ウェーハや光デバイスウェーハ等のウェーハである。被加工物200は、基板204の表面201に格子状に形成された複数の分割予定ライン202によって格子状に区画された領域にデバイス203が形成されている。
【0013】
また、本発明の被加工物200は、中央部が薄化され、外周部に厚肉部が形成された所謂TAIKO(登録商標)ウェーハでもよく、ウェーハの他に、樹脂により封止されたデバイスを複数有した矩形状のパッケージ基板、セラミックス基板、フェライト基板、又はニッケル及び鉄の少なくとも一方を含む基板等でも良い。実施形態1において、被加工物200は、基板204の裏面205に被加工物200より大径な円板状の粘着テープ210が貼着され、粘着テープ210の外周縁に環状フレーム211が装着されて、環状フレーム211に支持されている。
【0014】
図1に示された加工装置1は、被加工物200をチャックテーブル10で保持し分割予定ライン202に沿って切削ブレード21で切削加工(加工に相当)して個々のチップ206に分割する切削装置である。なお、チップ206は、基板204の一部分とデバイス203とを備える。加工装置1は、図1に示すように、被加工物200を保持面11で吸引保持するチャックテーブル10を備えるテーブルユニット2と、チャックテーブル10が保持する被加工物200を切削ブレード21で切削する切削ユニット20と、チャックテーブル10に保持された被加工物200を撮像する撮像ユニット30と、制御手段である制御ユニット100とを備える。
【0015】
また、加工装置1は、図1に示すように、チャックテーブル10即ちテーブルユニット2を水平方向と平行なX軸方向に加工送りするX軸移動ユニット31と、切削ユニット20を水平方向と平行でかつX軸方向に直交するY軸方向に割り出し送りするY軸移動ユニット32と、切削ユニット20をX軸方向とY軸方向との双方と直交する鉛直方向に平行なZ軸方向に切り込み送りするZ軸移動ユニット33と、チャックテーブル10をZ軸方向と平行な軸心回りに回転する回転移動ユニット34と、を少なくとも備える。加工装置1は、図1に示すように、切削ユニット20を2つ備えた、即ち、2スピンドルのダイサ、いわゆるフェイシングデュアルタイプの切削装置である。
【0016】
チャックテーブル10は、円盤形状であり、被加工物200を保持する保持面11がポーラスセラミック等から形成されている。また、チャックテーブル10は、X軸移動ユニット31により切削ユニット20の下方の加工領域と、切削ユニット20の下方から離間して被加工物200が搬入出される搬入出領域とに亘ってX軸方向に移動自在に設けられ、かつ回転移動ユニット34によりZ軸方向と平行な軸心回りに回転自在に設けられている。チャックテーブル10は、保持面11が図示しない真空吸引源と接続され、真空吸引源により吸引されることで、保持面11に載置された被加工物200を吸引、保持する。実施形態1では、チャックテーブル10は、粘着テープ210を介して被加工物200の裏面205側を吸引、保持する。
【0017】
なお、実施形態1では、チャックテーブル10は、テーブルユニット2のX軸移動ユニット31によりX軸方向に移動するテーブルカバー3に設けられ、X軸移動ユニット31によりX軸方向に移動自在に設けられた回転移動ユニット34により軸心回りに回転自在に支持されている。なお、テーブルカバー3の上面は、水平方向に沿って平坦に形成されている。
【0018】
切削ユニット20は、チャックテーブル10に保持された被加工物200を切削する切削ブレード21を着脱自在に装着した切削手段である。切削ユニット20は、それぞれ、チャックテーブル10に保持された被加工物200に対して、Y軸移動ユニット32によりY軸方向に移動自在に設けられ、かつ、Z軸移動ユニット33によりZ軸方向に移動自在に設けられている。
【0019】
一方の切削ユニット20は、図1に示すように、Y軸移動ユニット32及びZ軸移動ユニット33などを介して、装置本体4から立設した門型の支持フレーム5の一方の柱部に設けられている。他方の切削ユニット20は、図1に示すように、Y軸移動ユニット32及びZ軸移動ユニット33などを介して、支持フレーム5の他方の柱部に設けられている。なお、支持フレーム5は、柱部の上端同士を水平梁により連結している。
【0020】
切削ユニット20は、Y軸移動ユニット32及びZ軸移動ユニット33により、チャックテーブル10の保持面11の任意の位置に切削ブレード21を位置付け可能となっている。
【0021】
切削ユニット20は、Y軸移動ユニット32及びZ軸移動ユニット33によりY軸方向及びZ軸方向に移動自在に設けられたスピンドルハウジング22と、スピンドルハウジング22内に軸心回りに回転自在に設けられたスピンドル23と、スピンドル23に装着される切削ブレード21とを備える。
【0022】
切削ブレード21は、略リング形状を有する極薄の切削砥石である。実施形態1において、切削ブレード21は、いわゆるハブブレードであり、導電性の金属で構成された円環状の円形基台と、円形基台の外周縁に配設されかつ被加工物200を切削する円環状の切り刃とを備える。切り刃は、ダイヤモンドやCBN(Cubic Boron Nitride)等の砥粒と、金属や樹脂等のボンド材(結合材)とからなり所定厚みに形成されている。スピンドル23は、図示しないスピンドルモータにより回転され、先端部に切削ブレード21に装着されている。なお、切削ユニット20のスピンドル23及び切削ブレード21の軸心は、Y軸方向と平行に設定されている。
【0023】
撮像ユニット30は、一方の切削ユニット20と一体的に移動するように、異っぽい鵜の切削ユニット20に固定されている。撮像ユニット30は、チャックテーブル10に保持された切削前の被加工物200の分割すべき領域を撮像する撮像素子を備えている。撮像素子は、例えば、CCD(Charge-Coupled Device)撮像素子又はCMOS(Complementary MOS)撮像素子である。撮像ユニット30は、チャックテーブル10に保持された被加工物200を撮像して、被加工物200と切削ブレード21との位置合わせを行なうアライメントを遂行するため等の画像を得、得た画像を制御ユニット100に出力する。
【0024】
X軸移動ユニット31は、テーブルユニット2のチャックテーブル10を加工送り方向であるX軸方向に移動させることで、チャックテーブル10と切削ユニット20とを相対的にX軸方向に沿って加工送りするものである。Y軸移動ユニット32は、切削ユニット20を割り出し送り方向であるY軸方向に移動させることで、チャックテーブル10と切削ユニット20とを相対的にY軸方向に沿って割り出し送りするものである。Z軸移動ユニット33は、切削ユニット20を切り込み送り方向であるZ軸方向に移動させることで、チャックテーブル10と切削ユニット20とを相対的にZ軸方向に沿って切り込み送りするものである。
【0025】
X軸移動ユニット31、Y軸移動ユニット32及びZ軸移動ユニット33は、軸心回りに回転自在に設けられた周知のボールねじ、ボールねじを軸心回りに回転させる周知のモータ及びチャックテーブル10又は切削ユニット20をX軸方向、Y軸方向又はZ軸方向に移動自在に支持する周知のガイドレールを備える。
【0026】
また、加工装置1は、チャックテーブル10のX軸方向の位置を検出するため図示しないX軸方向位置検出ユニットと、切削ユニット20のY軸方向の位置を検出するための図示しないY軸方向位置検出ユニットと、切削ユニット20のZ軸方向の位置を検出するためのZ軸方向位置検出ユニットとを備える。X軸方向位置検出ユニット及びY軸方向位置検出ユニットは、X軸方向、又はY軸方向と平行なリニアスケールと、読み取りヘッドとにより構成することができる。Z軸方向位置検出ユニットは、モータのパルスで切削ユニット20のZ軸方向の位置を検出する。X軸方向位置検出ユニット、Y軸方向位置検出ユニット及びZ軸方向位置検出ユニットは、チャックテーブル10のX軸方向、切削ユニット20のY軸方向又はZ軸方向の位置を制御ユニット100に出力する。なお、実施形態1では、加工装置1の各構成要素のX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の位置は、予め定められた図示しない基準位置を基準とした位置で定められる。
【0027】
また、加工装置1は、切削前後の被加工物200を収容する図示しないカセットが載置されかつカセットをZ軸方向に移動させるカセットエレベータ40と、切削後の被加工物200を洗浄する洗浄ユニット50と、カセットに被加工物200を出し入れするとともに被加工物200をカセット、チャックテーブル10及び洗浄ユニット50との間で搬送する図示しない搬送ユニットとを備える。
【0028】
また、加工装置1は、試験片用チャックテーブル60を備える。試験片用チャックテーブル60は、テーブルユニット2のテーブルカバー3に設けられ、図2に示すように、矩形状に形成され上面61が平坦な金属材により構成されている。実施形態1では、試験片用チャックテーブル60の長手方向は、Y軸方向と平行である。試験片用チャックテーブル60は、上面61に図2に示す試験片70が載置される。試験片70は、被加工物200の基板204と同じ材料で構成され、平面形が上面61と同形の矩形の平板状に形成されている。
【0029】
試験片用チャックテーブル60は、上面61には図示しない真空吸引源と接続された吸引溝62が形成されている。吸引溝62は、上面61から凹に形成されている。試験片用チャックテーブル60は、真空吸引源により吸引されることで、上面61に載置された試験片70を吸引保持する。実施形態1では、試験片用チャックテーブル60は、テーブルカバー3に取り付けられた回転駆動機構63によりY軸方向と平行な軸心回りに回転自在に支持されている。実施形態1では、回転駆動機構63は、上面61が上方に対面する図2中に実線で示す位置と、上面61が搬入出領域に対面する図2中に点線で示す位置とに亘って試験片用チャックテーブル60を回転する。
【0030】
制御ユニット100は、加工装置1の各構成要素をそれぞれ制御して、被加工物200に対する加工動作を加工装置1に実施させるものでもある。なお、制御ユニット100は、CPU(central processing unit)のようなマイクロプロセッサを有する演算処理装置と、ROM(read only memory)又はRAM(random access memory)のようなメモリを有する記憶装置と、入出力インターフェース装置とを有するコンピュータである。制御ユニット100の演算処理装置は、記憶装置に記憶されているコンピュータプログラムに従って演算処理を実施して、加工装置1を制御するための制御信号を、入出力インターフェース装置を介して加工装置1の各構成要素に出力する。
【0031】
制御ユニット100は、加工動作の状態や画像などを表示する液晶表示装置などにより構成される図示しない表示ユニットと、オペレータが加工内容情報などを登録する際に用いる入力ユニットと、報知ユニット101に接続されている。入力ユニットは、表示ユニットに設けられたタッチパネルと、キーボード等の外部入力装置とのうち少なくとも一つにより構成される。報知ユニット101は、音、光の少なくとも一方を発して、オペレータに報知する。
【0032】
また、制御ユニット100は、図1に示すように、正常画像記憶部102と、比較判定部103とを備える。正常画像記憶部102は、正常な切削ブレード21が試験片70をX軸方向の一端71から他端72に亘って切削して試験片70に形成した切削溝80を両端71,72のうち一端71側の側面711から撮像ユニット30で撮像して得た図3に示す正常画像300を記憶している。正常画像300は、切削溝80の側壁である内面81が試験片70の表面73に対して直交している。また、正常画像記憶部102は、正常画像300の切削溝80の試験片70の表面201から底寄りの所定の距離301を記憶している。所定の距離301は、切削ブレード21で試験片70を切削した際に切削ブレード21の交換要否を判定する判定位置302を規定する距離である。正常画像記憶部102の機構は、記憶装置により実現される。
【0033】
比較判定部103は、切削ブレード21で試験片70を切削して形成した切削溝80(図9等に一例を示し、以下符号80-1で示す)に基づいて、切削ブレード21の交換の要否を判定するものである。比較判定部103は、切削ブレード21で試験片70を切削して形成された切削溝80-1を一端71側の側面711から撮像ユニット30が撮像して得た撮像画像400(図9に一例を示す)の切削溝80-1の内面81-1の傾きに基づいて、切削ブレード21の交換の要否を判定する。比較判定部103の機能は、記憶装置に記憶されたコンピュータプログラムを演算処理装置が実行することで実現される。
【0034】
(加工方法)
実施形態1に係る加工方法は、加工装置1が被加工物200を切削加工する加工動作である。加工方法は、オペレータが、加工内容情報を制御ユニット100に登録し、切削加工前の被加工物200を複数収容したカセットをカセットエレベータ40の上面に設置し、試験片用チャックテーブル60の上方を向いた上面61に試験片70を載置し、オペレータから加工動作の開始指示を受け付けると加工装置1が実施する。加工動作を開始すると、加工装置1は、試験片70を試験片用チャックテーブル60の上面61に吸引保持する。
【0035】
加工方法は、被加工物200の加工方法であって、図4に示すように、切削ステップST1と、切削溝形成ステップST4と、撮像ステップST5と、判定ステップST6とを備える。
【0036】
(切削ステップ)
図5は、図4に示された加工方法の切削ステップを模式的に示す断面図である。切削ステップST1は、切削ブレード21で被加工物200を切削するステップである。切削ステップST1では、加工装置1は、搬送ユニットがカセット内から被加工物200を搬入出領域のチャックテーブル10に搬送し、粘着テープ210を介して裏面205側をチャックテーブル10の保持面11に吸引保持する。
【0037】
切削ステップST1では、加工装置1は、X軸移動ユニットがチャックテーブル10を加工領域に向かって移動して、撮像ユニット30が被加工物200を撮像して、撮像ユニット30が撮像して得た画像に基づいて、アライメントを遂行する。加工装置1は、図5に示すように、分割予定ライン202に沿って被加工物200と切削ユニット20とを相対的に移動させながら、切削ブレード21を各分割予定ライン202に切り込ませて被加工物200を個々のチップ206に分割する。加工装置1は、個々のチップ206に分割された被加工物200を搬送ユニットがチャックテーブル10から洗浄ユニット50に搬送し、洗浄ユニット50が被加工物200を洗浄する。切削ステップST1では、加工装置1は、搬送ユニットが切削加工後で洗浄後の被加工物200を洗浄ユニット50からカセットまで搬送し、カセット内に収容する。
【0038】
加工装置1の制御ユニット100は、加工動作を終了するか否かを判定する(ステップST2)。具体的には、加工装置1の制御ユニット100は、カセット内の全ての被加工物200の切削加工が完了すると加工動作を終了すると判定し、カセット内に未切削加工の被加工物200が残っていると、加工動作を継続すると判定する。
【0039】
加工装置1の制御ユニット100は、加工動作を終了すると判定する(ステップST2:Yes)と、加工動作即ち加工方法を終了する。加工装置1の制御ユニット100は、加工動作を継続すると判定する(ステップST2:No)と、切削ブレード21の交換の要否を判定するタイミングであるか否かを判定する(ステップST3)。
【0040】
切削ブレード21の交換の要否を判定するタイミングは、切削する被加工物200、切削ブレード21の切り刃の材質等によって定められる。切削ブレード21の交換の要否を判定するタイミングは、例えば、一枚の被加工物200を切削する毎、又は所定数の被加工物200を切削する毎であり、加工内容情報の一部として制御ユニット100の記憶装置に記憶される。また、本発明では、切削ブレード21の交換の要否を判定するタイミングは、所定数の分割予定ライン202を切削する毎でも良く、即ち、チャックテーブル10に保持された被加工物200の切削加工中でも良い。この場合、切削ブレード21の交換の要否を判定するタイミングは、互いに平行な分割予定ライン202のうち一方の分割予定ライン202の全てを切削する毎でも良い。
【0041】
加工装置1の制御ユニット100は、切削ブレード21の交換の要否を判定するタイミングではないと判定する(ステップST3:No)と、切削ステップST1に戻る。加工装置1の制御ユニット100は、切削ブレード21の交換の要否を判定するタイミングであると判定する(ステップST3:Yes)と、切削溝形成ステップST4に進む。
【0042】
(切削溝形成ステップ)
図6は、図4に示された加工方法の切削溝形成ステップを模式的に示す断面図である。図7は、図4に示された加工方法の切削溝形成ステップ後の試験片の平面図である。切削溝形成ステップST4は、試験片70を切削ブレード21でX軸方向の一端71から他端72まで切削して切削溝80-1を形成するステップである。
【0043】
実施形態1において、切削溝形成ステップST4では、加工装置1の制御ユニット100は、撮像ユニット30で試験片用チャックテーブル60に吸引保持された試験片70を撮像し、試験片70と切削ブレード21の切り刃とを位置合わせする。加工装置1は、図5に示すように、X軸方向に沿って試験片70と切削ユニット20とを相対的に移動させながら、図6に示すように、切削ブレード21を一端71から他端72に亘って試験片70に切り込ませて、被加工物200に図7に示す切削溝80-1を形成して、撮像ステップST5に進む。なお、実施形態1では、試験片70のX軸方向の一端71から他端72に亘って切削溝80-1を形成したが、本発明では、一端71から他端72まで切りきらず、一端71から他端72側に向かって途中まで切削し、切削ブレード21を上昇させても良い。
【0044】
(撮像ステップ)
図8は、図4に示された加工方法の撮像ステップを模式的に示す断面図である。図9は、図4に示された加工方法の撮像ステップで得た撮像画像の一例を示す図である。撮像ステップST5は、切削溝形成ステップST4を実施した後、試験片70の一端71側または他端72側の側面711,721を撮像して切削溝80-1を含む撮像画像400を形成するステップである。
【0045】
実施形態1において、撮像ステップST5では、加工装置1は、回転駆動機構63で試験片用チャックテーブル60を軸心回りに90度回転して、上面61を搬入出領域に対面させる。実施形態1において、撮像ステップST5では、加工装置1は、図8に示すように、撮像ユニット30で試験片70の一端71側の側面711を撮像して、図9に一例を示す撮像画像400を得て、判定ステップST6に進む。
【0046】
(判定ステップ)
図10は、図4に示された加工方法の判定ステップの一例を示す図である。判定ステップST6は、撮像画像400から検出した切削溝80-1の内面81-1の傾斜に基づいて切削ブレード21の交換の要否を判定するステップである。
【0047】
実施形態1において、判定ステップST6では、撮像画像400に正常画像300の切削溝80(図10に点線で示す)を重ねる。なお、実施形態1では、撮像画像400の切削溝80の上端に正常画像300の切削溝80の上端を重ねる。実施形態1において、判定ステップST6では、制御ユニット100は、判定位置302の撮像画像400の切削溝80-1の内面81-1と正常画像300の切削溝80の内面81との距離401を検出し、検出した距離401が予め定められた許容値以下であると判定すると、切削ブレード21の交換を不要と判定(判定ステップST6:No)し、切削ステップST1に戻る。こうして、実施形態1において、判定ステップST6では、制御ユニット100は、撮像画像400から検出した切削溝80-1の内面81-1の傾斜に基づいて切削ブレード21の交換の要否を判定する。
【0048】
実施形態1において、判定ステップST6では、制御ユニット100は、検出した距離401が予め定められた許容値を超えていると判定すると、切削ブレード21の交換を必要と判定(判定ステップST6:Yes)し、報知ユニット101を動作させて報知(ステップST7)し、加工動作即ち実施形態1に係る加工方法を終了する。なお、本発明では、判定ステップST6における切削ブレード21の交換の要否を判定する方法は、実施形態1に記載されたものに限定されずに、正常画像300の切削溝80の輪郭と撮像画像400の切削溝80の輪郭とを比較しても良く、撮像画像400の切削溝80-1の内面81-1と理想的な切削溝80の内面の仮想線とを比較しても良い。
【0049】
以上説明したように、実施形態1に係る加工方法及び加工装置1は、試験片70に切削溝80-1を形成し、試験片70の側面711を撮像する。撮像し形成した撮像画像400から検出した切削溝80-1の内面81-1の傾斜に基づいて切削ブレード21の交換の要否を判定する。その結果、加工方法及び加工装置1は、従来より容易に切削ブレード21の交換タイミングを判定し不良なチップ206を製造し続けてしまうことを抑制することができるという効果を奏する。
【0050】
〔変形例〕
本発明の実施形態1の変形例に係る加工方法を図面に基づいて説明する。図11は、実施形態1の変形例に係る加工方法の撮像ステップを模式的に示す断面図である。なお、図11は、実施形態1と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0051】
実施形態1の変形例に係る加工方法を実施する加工装置1は、撮像ユニット30と別体でかつ撮像画像400を取得するための第2撮像ユニット90を備え、第2撮像ユニット90を試験片用チャックテーブル60のX軸方向の側方に配置している。変形例において、加工装置1は、撮像ステップST5において、図11に示すように、上面61を上方に向けた試験片用チャックテーブル60に吸引保持された試験片70の他端72側の側面721を撮像して撮像画像400を取得する。
【0052】
なお、第2撮像ユニット90は、撮像ユニット30と同様に、試験片70の他端72側の側面721を撮像する撮像素子を備えている。撮像素子は、例えば、CCD(Charge-Coupled Device)撮像素子又はCMOS(Complementary MOS)撮像素子である。
【0053】
変形例に係る加工方法及び加工装置1は、切削溝形成ステップST4において試験片70に切削溝80-1を形成し、撮像ステップST5において第2撮像ユニット90で試験片70の側面721を撮像する。加工方法及び加工装置1は、判定ステップST6において、実施形態1と同様に、撮像し形成した撮像画像400から検出した切削溝80-1の内面81-1の傾斜に基づいて切削ブレード21の交換の要否を判定する。その結果、変形例に係る加工方法及び加工装置1は、実施形態1と同様に、従来より容易に切削ブレード21の交換タイミングを判定し不良なチップ206を製造し続けてしまうことを抑制することができるという効果を奏する。
【0054】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。なお、実施形態1では、切削加工を停止して、撮像ステップST5及び判定ステップST6を実施したが、本発明では、これに限定されることなく、切削加工中に撮像ステップST5及び判定ステップST6を実施しても良い。
【0055】
また、本発明では、切削装置である加工装置1が、切削ユニット20を一対備えている場合、回転駆動機構63を備える試験片用チャックテーブル60を各切削ユニット20に対応して一対設けても良い。この場合、加工装置1は、試験片用チャックテーブル60をチャックテーブル10を挟んで各切削ユニット20側に配設するのが望ましい。
【符号の説明】
【0056】
21 切削ブレード
70 試験片
71 一端
72 他端
80,80-1 切削溝
81,81-1 内面(側壁)
400 撮像画像
711,721 側面
200 被加工物
ST1 切削ステップ
ST4 切削溝形成ステップ
ST5 撮像ステップ
ST6 判定ステップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11