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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-06
(45)【発行日】2023-10-17
(54)【発明の名称】温熱具
(51)【国際特許分類】
   A61F 7/08 20060101AFI20231010BHJP
   A61F 7/03 20060101ALI20231010BHJP
【FI】
A61F7/08 300
A61F7/08 334S
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019158039
(22)【出願日】2019-08-30
(65)【公開番号】P2021035463
(43)【公開日】2021-03-04
【審査請求日】2022-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松村 嘉員
【審査官】村上 勝見
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3216410(JP,U)
【文献】特開平11-299817(JP,A)
【文献】特表2017-523850(JP,A)
【文献】特開2007-044164(JP,A)
【文献】特開2007-289682(JP,A)
【文献】国際公開第2018/235880(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 7/02
A61F 7/00
A61F 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの顔に載せて使用される温熱具であって、
小豆又は粉末状の流動性を有する発熱材料と、
表側シートと裏側シートとから袋状に形成され、前記発熱材料を収容する収容体と、を備え、
前記収容体は、
オトガイ部を被覆可能な下覆い部と、
前記下覆い部から上方に延びて、眼窩下部、頬、目、こめかみ及び額を被覆可能な上覆い部と、を有し、
前記上覆い部は、
上縁と下縁と一対の側縁とを有し、少なくとも前記下縁が前記表側シートと前記裏側シートとを接合する接合部である収容部を含み、
前記収容部には、前記小豆又は粉末状の流動性を有する発熱材料が直接収容されており、
前記一対の側縁のうち、使用状態の前記温熱具における外側に位置する側縁は、前記上縁と当該側縁との交点と、前記下縁と当該側縁との交点とを通る直線に対し、少なくとも一部が外側に位置している、温熱具。
【請求項2】
前記直線に対して外側に位置する前記側縁における前記直線から最も離れた部分が、前記側縁の中央よりも上縁側に位置している、
請求項1記載の温熱具。
【請求項3】
前記収容体は、前記収容部の端から外側に延びた外周縁部を更に備える、
請求項1又は請求項2記載の温熱具。
【請求項4】
前記収容体は、前記表側シートと前記裏側シートとを外周部で接合することで構成されており、
前記外周縁部は、前記表側シートと前記裏側シートとの端部同士を重ねることで構成されている、請求項3記載の温熱具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温熱具に関し、より詳細には、ユーザの顔に載せて使用される温熱具に関する。
【背景技術】
【0002】
従前より、身体の所定部位に温熱を与えることで、当該所定部位の疲労を癒したり、凝りをほぐしたり等、身体に対してリラックス効果を与えることができる温熱具が知られている。
【0003】
従前より提案されている温熱具としては、首、肩及び腹を対象としたものが多数あるが、顔を対象とした温熱具は比較的少数である。顔を対象とした温熱具としては、例えば、特許文献1に記載されているように、目に特化したものが提案されているが、顔に対し広い範囲で温熱を与えられるものは提案されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-8269公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、顔に対し広い範囲で温熱を与えようとする場合、顔の大部分を覆うような温熱具を、発熱材料とこれを収容する収容部とで構成することが考えられる。
【0006】
しかし、この温熱具を顔の上に載せると、収容部の側方の縁(側縁)は、水平面に対して傾斜する可能性が高い。このとき、この側縁が直線状であると、発熱材料が側縁に沿って移動しやすく、温熱具が顔からずれやすくなる。
【0007】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、顔の広範囲に対して温熱を与えることができる上に、収容部の内部で発熱材料が移動しにくい温熱具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る一態様の温熱具は、ユーザの顔に載せて使用される温熱具であって、発熱材料と、前記発熱材料を収容する少なくとも一つの収容部と、を備える。前記収容部は、上縁と下縁と一対の側縁とを有する。前記一対の側縁のうち、使用状態の前記温熱具における外側に位置する側縁は、前記上縁と当該側縁との交点と、前記下縁と当該側縁との交点とを通る直線に対し、少なくとも一部が外側に位置している。
【0009】
上記温熱具では、前記直線に対して外側に位置する前記側縁 における前記直線から最も離れた部分が、前記側縁の中央よりも上縁側に位置していることが好ましい。
【0010】
上記温熱具は、前記収容部の端から外側に延びた外周縁部を更に備えることが好ましい。
【0011】
上記温熱具は、前記収容部は、表側シートと裏側シートとを外周部で接合することで構成されており、前記外周縁部は、前記表側シートと前記裏側シートとの端部同士を重ねることで構成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る上記態様の温熱具は、顔の広範囲に対して温熱を与えることができる上に、収容部の内部で発熱材料が移動しにくい、という利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る温熱具を顔に載せて使用した状態の斜視図である。
図2図2は、ユーザの顔の部位を説明する説明図である。
図3図3は、同上の温熱具の斜視図である。
図4図4は、同上の温熱具を閉じた状態の側面図である。
図5図5は、図3のA-A線断面図である。
図6図6は、図4の上半分を拡大した側面図である。
図7図7(A)は、使用状態の同上の温熱具を一部破断した側面図である。図7(B)は、比較例の温熱具を一部破断した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(1)実施形態
以下、本発明の一例に係る実施形態について、図面を参照して説明する。
【0015】
温熱具1は、図1に示すように、ユーザの顔に載せて使用され、顔を広範囲で温めることで、疲れを癒したり、顔の筋肉(例えば表情筋)の凝りをほぐしたりして、リラックス効果を与えることができる。温熱具1は、収容体3と、収容体3の中に収まる発熱材料2と、を備える。
【0016】
ここで、温熱具1を説明する前に、図2を参照してユーザの顔の部位を次のように定義する。「下顎」は、下唇91のすぐ下の位置と耳のすぐ下の位置とを結ぶ線L1と、首と顔との境界線L2との間の部分を指し、「オトガイ部」は、下顎の先端を含む一範囲(およそ、口角92を通る上下方向の直線の間の領域H1)を指し、「眼窩下部」は、眼球の入っているくぼみの下方にある一範囲(図の領域H2)を指すものとする。
【0017】
また、図4のように、上下方向及び前後方向を定義し、ユーザが前方向に向いたときを基準に左右方向を定義するが、これらの方向の定義は、温熱具1の使用態様を限定する趣旨ではない。
【0018】
(1.1)発熱材料
発熱材料2(図5)は、発熱し得る材料であり、流動性を有している。発熱材料2は、発熱の原理に制限はなく、例えば、空気との接触により発熱するような使い捨てカイロに用いられる組成物、電子レンジによりマイクロ波の照射を受けることで発熱するような材料(例えば、フェライト等のセラミック粉末、小豆等)等を用いることができる。本実施形態では、以下に説明するように顔に対して効果的な温熱効果を与えるという観点から、小豆(あずき)を用いている。
【0019】
小豆は、水分を多く含有しているため、電子レンジ等で温めると、水分が蒸発して蒸気を発生させ、この蒸気の熱により、顔に対して温熱を与える。この小豆の蒸気による熱は、湿熱であり、湿気のない熱(乾熱)に比べて、皮膚の奥まで届くため、効果的な温熱効果を与えることができる。その上、小豆は、蒸発により内部の水分を失っても、失った水分を空気中から吸収することができるので、繰り返し使うことができて経済的である。
【0020】
(1.2)収容体
収容体3は、発熱材料2を収容できるように袋状に形成されている。収容体3は、図3に示すように、右半部8と、左半部4と、が左右方向の中央側の辺(中央辺41)と下側の辺(下辺42)とで接続されることで構成されており、使用しないときには、図4に示すように、右半部8と左半部4とを重ねるようにして折り曲げることができる。右半部8及び左半部4は、中央辺41が略曲線状に形成されており、右半部8及び左半部4を広げた状態(以下、「使用時の状態」という場合がある)の収容体3は、図3に示すように、ユーザの顔に沿うような立体的な形状をなす。
【0021】
右半部8と左半部4との接続は、例えば、縫合、溶着、接着、ヒートシール等により実現されるが、本実施形態では、縫合が用いられている。右半部8と左半部4とは、上述の通り、中央辺41と下辺42とで接続されているが、中央辺41はその一部に開口部11が存在しており、開口部11では右半部8及び左半部4は接続されていない。開口部11は、温熱具1を顔に載せた際に、ユーザの鼻又は/及び口に対応する位置に配置され、空気を通過させることができる。
【0022】
ここでいう「鼻又は/及び口に対応する位置」とは、呼吸の際に鼻又は口によって外部の空気を取り込み得る位置を意味し、本発明では、必ずしも、鼻又は口が露出しなくてもよいが、開口部11は、広過ぎると温熱具1と顔との間の熱が逃げ、狭過ぎるとユーザが閉塞感を受けるおそれがあることから、上唇から鼻の付け根(両目の間の部分)まで延びる大きさであることが好ましい。
【0023】
右半部8と左半部4とは、左右対称であるため、以下では、主に左半部4を説明し、右半部8について重複した説明は省略する。図4には左半部4を示しており、図中の符号X1で示す部分は、右半部8に対して接続された部分に対応している。
【0024】
左半部4は、ユーザの顔の左側半分に対応する部分である。左半部4は、中央辺41、下辺42、外辺43、及び上辺44で囲まれた縦長に形成されている。
【0025】
中央辺41は、温熱具1を顔に載せた際に、顔の左右方向の中央に位置し、眉間、鼻筋、上唇の窪み、及び下顎の先端に沿う。中央辺41は、上から下に向かって、第一辺411、第二辺412、及び第三辺413と連続しており、鉛直線に対する角度が順に大きくなっており、これによって、顔の立体形状に沿うような温熱具1とすることができる。
【0026】
第一辺411を鉛直線に平行とした場合に、第二辺412及び第三辺413は次のように設定されることが好ましい。鉛直線に対する第二辺412の角度θ1は、1度以上30度以下であることが好ましく、より好ましくは、5度以上15度以下である。鉛直線に対する第三辺413の角度θ2は、5度以上60度以下であることが好ましく、より好ましくは、20度以上40度以下である。また、角度θ2は、角度θ1以上に設定されることが好ましく、より好ましくは、角度θ1よりも大きく設定される。本実施形態では、第一辺411、第二辺412及び第三辺413の各々は直線状に形成されているが、本発明では、シームレスに連続して中央辺41が略円弧状に形成されてもよい。
【0027】
下辺42は、中央辺41の下端につながっており、非使用時の状態において、前後方向に略平行である。左半部4の下辺42と右半部8の下辺42とは、互いに接続されている。
【0028】
外辺43は、温熱具1を顔に載せた際に、顔の左右方向の外側に位置し、フェイスラインのやや外側に沿う。外辺43は、下辺42と上辺44とをつなぎ、外側に膨らむようにやや湾曲している。左半部4の外辺43と右半部8の外辺43とは、互いに接続されておらず、離れる方向(例えば左右方向)に移動させることで、温熱具1を開くことができ(使用時の状態)、近付く方向に移動させることで、温熱具1を閉じることができる(非使用時の状態)。
【0029】
上辺44は、中央辺41の上端と外辺43の上端とにつながっており、非使用時の状態において、前後方向に略平行である。左半部4の上辺44と右半部8の上辺44とは、互いに接続されていない。
【0030】
左半部4は、図5に示すように、ユーザの顔に対向する裏側シート32と、裏側シート32上の表側シート31とを重ね合わせ、その外周縁同士を接合することで袋状に形成されている。表側シート31と裏側シート32との接合は、例えば、縫合、溶着、接着、ヒートシール等により実現されるが、本実施形態では、縫合が用いられている。
【0031】
表側シート31及び裏側シート32は、柔軟性を有していれば特に制限はなく、例えば、織布、不織布、編物等が挙げられ、これらを構成する繊維素材としては、例えば、天然繊維(例えば、綿等)、半合成繊維(例えばレーヨン等)、合成繊維(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル等)、各種繊維を混ぜた繊維等が挙げられる。裏側シート32としては、熱伝導性と、肌触りの観点から、ポリエステルと綿とを混ぜた繊維を用いることが好ましい。一方、表側シート31としては、発熱材料2の熱を逃がさずに保つ観点から、ポリエステルが好ましく、起毛していることがより好ましい。
【0032】
表側シート31又は/及び裏側シート32は、織布、不織布、編物等に加えて、他のシートが重ね合わされていてもよい。例えば裏側シート32は、顔側の面を、ポリプロピレンなどの合成繊維で形成されたメッシュシートとすることで、裏側シート32の肌触りを良好なものとすることができる。
【0033】
表側シート31及び裏側シート32の目付は、特に制限はないが、裏側シート32の目付としては、15g/m以上500g/m以下であることが好ましく、表側シート31の目付としては、15g/m以上500g/m以下であることが好ましい。
【0034】
左半部4は、図4に示すように、複数(ここでは二つ)の収容部51と、温熱具1を顔に載せた状態において左目に対応する位置(左目の大部分に被さる位置)に配置される左目被覆部52と、左半部4の外周縁部をなす左外周縁部53と、を備える。
【0035】
収容部51は、発熱材料2を収容する部分であり、接合部33によって区画されて袋状に形成されている。複数の収容部51は、接合部33を介して上下方向に並んでいる。収容部51を区画する接合部33は、例えば、縫合、溶着、接着、ヒートシール等により実現されるが、本実施形態では、縫合が用いられている。
【0036】
各収容部51は、図6に示すように、接合部33によって構成された上縁511、下縁512、及び一対の側縁513,514を有し、これらによって区画されている。上下方向に並ぶ収容部51のうち上側の収容部51では、上縁511は上辺44に略平行であり、下縁512は、上縁511に平行な直線部分と逆L字状に形成されたL字部とで構成されている。一対の側縁513,514のうちの内側の側縁514は、中央辺41に沿っている。
【0037】
外側の側縁513は、上縁511と当該側縁513との交点A1と、下縁512と当該側縁513との交点A2とを通る直線D1に対し、少なくとも一部が外側に位置している。本実施形態では、外側の側縁513は、直線D1に対し、外側に膨らむように湾曲しており、全体が外側に位置している。外側の側縁513のうち、外側に膨らむ部分(つまり、直線D1に対して最も離れた部分)は、当該側縁513の中央よりも上縁511側に位置していることが好ましい。
【0038】
外側の側縁513の少なくとも一部が、直線D1に対し、外側に位置していると、温熱具1を顔に載せた際、図7(A)に示すように、側縁513の勾配が直線D1の勾配よりも小さくなるので、発熱材料2の下側への移動が妨げられる。一方、直線D1に対し、外側に位置する部分を持たない収容部51では、図7(B)に示すように、側縁513Aが直線D1に沿うため、温熱具1を顔に載せた際に、発熱材料2が側縁513Aに沿って下側に移動しやすい。なお、比較し易くするため、図7(B)に本実施形態の側縁513を想像線で示している。
【0039】
このように、外側の側縁513の少なくとも一部が直線D1に対し外側に位置していることにより、温熱具1をユーザの顔に載せた際、側縁513が水平面に対して傾いた場合に、発熱材料2が下縁512側に移動するのを抑えることができる。このため、温熱具1がユーザの顔からずれることを抑えることができる。さらに、側縁513において外側に膨らむ部分が当該側縁513の中央よりも上縁511側に位置していることにより、発熱材料2を上縁511に近い部分にも留まらせることができて、発熱材料2の均一化を図ることができる。
【0040】
図4に示すように、左目被覆部52は、発熱材料2が収容されていない部分であり、温熱具1を顔に載せた状態において、左目に対応する位置(左目の大部分に被さる位置)に形成されている。左目被覆部52は、上下方向に並ぶ二つの収容部51の間で、かつ中央辺41に沿う位置に配置されている。左目被覆部52は、接合部33(ここでは、縫合)で区画されており、隣接する収容部51に収容された発熱材料2が左目被覆部52に移動しないように構成されている。図3に示すように、左目被覆部52は、右半部8の右目被覆部82と隣り合う。
【0041】
左外周縁部53は、左半部4のうち、外側の辺(下辺42、外辺43、及び上辺44)に沿っている。左外周縁部53は、図3に示すように、右半部8の右外周縁部83と連続している。左外周縁部53及び右外周縁部83は、収容部51の端から外側に延びて、温熱具1の外周縁部63をなしており、顔に載せた状態において、フェイスラインのやや外側に位置する。
【0042】
左外周縁部53は、図5に示すように、接合された外側の辺(例えば外辺43)から所定寸法内側の位置で、表側シート31と裏側シート32とを接合部33で接合することで構成されており、端部(接合部33よりも外側の部分)同士は重なっている。
【0043】
右半部8は、図3に示すように、ユーザの顔の右側半分に対応する部分である。右半部8は、中央辺41、下辺42、外辺43、及び上辺44で囲まれた縦長に形成されている。右半部8は、複数(ここでは二つ)の収容部51と、温熱具1を顔に載せた状態において右目に対応する位置(右目の大部分に被さる位置)に配置される右目被覆部82と、右半部8の外周縁部をなす右外周縁部83と、を備えるが、上述したように、左半部4と対称の構造をしているため、重複した説明は省略する。
【0044】
収容体3は、図3に示すように、下覆い部61と、下覆い部61から上方に延びて眼窩下部を被覆可能な上覆い部62と、を備える。下覆い部61と上覆い部62との境界は、本実施形態では、シームレスであるが、境界線によって区画されてもよい。
【0045】
下覆い部61は、オトガイ部を被覆可能に構成されており、本実施形態では、温熱具1を顔に載せた際に下顎の略全体を覆うことができる。下覆い部61は、オトガイ部のうちの下方向を向く面及び下顎の下面に対応する第一領域611と、オトガイ部のうちの前方向を向く面に対応する第二領域612と、を含む。
【0046】
第一領域611は、図3に示すように、接合部33によって第二領域612と区画されている。第一領域611は、発熱材料2を収容する収容部51よりも発熱材料2の充填率が小さい。以下、この発熱材料2の充填率が小さくなるように区画された部分を「区画部7」という。
【0047】
ここで、本発明でいう「充填率」とは、当該区画に充填し得る最大の発熱材料2の重さに対する、実際に充填された発熱材料2の重さの比を意味する。区画部7は、収容部51よりも発熱材料2の充填率が小さければ、発熱材料2が収容されていてもよいが、発熱材料2が収容されていないことが好ましい。本実施形態では、区画部7は、発熱材料2が収容されていない。
【0048】
第二領域612は、第一領域611と上覆い部62との間に位置しており、第一領域611よりも充填率が大きい。第二領域612は、本実施形態では、上述したように、上覆い部62にシームレスに連続しており、二つの収容部51のうちの下側の収容部51の一部である。すなわち、第二領域612の充填率は、当該収容部51の充填率と同じである。
【0049】
図4に示すように、第一領域611と第二領域612との境界613(接合部33)は、後ろ方向に行くに従って上方向に行くように水平面に対して傾斜している。当該境界613は、略直線状に形成されているが、曲線状に形成されていてもよいし、段状に形成されてもよい。当該境界613が後ろ方向に行くに従って上方向に行くように傾斜していることで、温熱具1を顔に載せた際に、当該境界613を、下顎のライン(下顎の下縁)に沿わせることができる。
【0050】
上覆い部62は、図3に示すように、下覆い部61につながっており、少なくとも眼窩下部を覆うように構成されている。上覆い部62は、眼窩下部だけでなく、頬、目、こめかみ及び額を覆うように、広く形成されることが好ましい。
【0051】
(2)作用効果
以上説明した温熱具1によると、収容部51の一対の側縁513,514のうち、使用状態の温熱具1における外側に位置する側縁513は、直線D1に対し、少なくとも一部が外側に位置しているため、温熱具1を顔に載せた際、図7(A)に示すように、当該外側に位置する部分に発熱材料2が留まり、発熱材料2の移動が妨げられる。したがって、温熱具1をユーザの顔に載せた際、側縁513が水平面に対して傾いた場合に、側縁513が直線D1に沿うような温熱具1に比べて、勾配を小さくすることができ、発熱材料2が下縁512側に移動するのを抑え、温熱具1がユーザの顔からずれることを抑えることができる。
【0052】
また、本実施形態に係る温熱具1では、収容部51において、直線D1に対して外側に位置する側縁513において、直線D1から最も離れた部分が、側縁513の中央よりも上縁511側に位置しているため、発熱材料2を上縁511に近い部分にも留まらせることができて、発熱材料2の均一化を図ることができる。
【0053】
また、温熱具1は、収容部51の端から外側に延びた外周縁部63を備えるため、外周縁部63をフェイスラインに沿わせることができ、フィット感を向上することができる上に、温熱具1と顔との間にある温められた空気が、外部に逃げるのを防ぐことができ、温度低下を抑えることができる。
【0054】
また、外周縁部63は、表側シート31と裏側シート32とを重ねることで構成されているため、柔軟性を持ち、顔の表面に沿いやすく、外周縁部63と顔の表面との間に隙間が生じにくい。この結果、温熱具1と顔との間にある温められた空気が、外部に逃げるのを防ぐことができ、温度低下を抑えることができる。
【0055】
(3)変形例
上記実施形態は、本発明の様々な実施形態のうちの一つに過ぎない。実施形態は、本発明の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。以下、実施形態の変形例を説明する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0056】
上記実施形態では、直線D1に対して外側に位置する側縁513を有する収容部51は、上下方向に並ぶ二つの収容部51のうちの上側の収容部51のみであったが、本発明では、全ての収容部51において、当該側縁513を持つように構成してもよい。
【0057】
上記実施形態では、四つの収容部51を有する収容体3で構成したが、本発明では、一つの収容部51で構成されてもよいし、左右一つずつの収容部51で構成されてもよい。
【0058】
上記実施形態では、外側の側縁513の中央よりも上側の部分が外側に膨らんでいたが、本発明では、側縁513の中央で外側に膨らむよう、側縁513が円弧状に形成されてもよい。また、外側に膨らむ部分は、本実施形態では滑らかに続く曲線状に形成されたが、本発明では、複数の直線をつなぐようにして形成されてもよい。
【0059】
上記実施形態に係る温熱具1では、収容体3の上被い部62は、ユーザの顔の額までを覆う大きさに形成されているが、目までを覆う大きさに形成されていてもよいし、眼窩下部までを覆う大きさに形成されていてもよく、どの場合でもユーザの顔の広範囲に温熱効果を与えることができる。
【0060】
本発明にて、「略平行」、又は「略直交」のように「略」を伴った表現が、用いられる場合がある。例えば、「略平行」とは、実質的に「平行」であることを意味し、厳密に「平行」な状態だけでなく、数度程度の誤差を含む意味である。他の「略」を伴った表現についても同様である。
【0061】
また、本発明において「前端部」及び「前端」などのように、「…端部」と「…端」とで区別した表現が用いられている。例えば、「前端部」とは、「前端」を含む一定の範囲を持つ部分を意味する。他の「…端部」を伴った表現についても同様である。
【符号の説明】
【0062】
1 温熱具
2 発熱材料
3 収容体
31 表側シート
32 裏側シート
51 収容部
511 上縁
512 下縁
513 側縁(外側に位置する側縁)
514 側縁
63 外周縁部
A1 交点
A2 交点
D1 直線

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7