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特許7362431成膜装置、ターゲットユニットの取り外し方法、及びターゲットユニットの取り付け方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-06
(45)【発行日】2023-10-17
(54)【発明の名称】成膜装置、ターゲットユニットの取り外し方法、及びターゲットユニットの取り付け方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/34 20060101AFI20231010BHJP
   H05H 1/46 20060101ALI20231010BHJP
【FI】
C23C14/34 B
C23C14/34 C
H05H1/46 M
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019199222
(22)【出願日】2019-10-31
(65)【公開番号】P2021070852
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】591065413
【氏名又は名称】キヤノントッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 行生
【審査官】今井 淳一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-131644(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/34
H05H 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スパッタリングによって、ターゲットの構成原子による薄膜を基板上に形成する成膜装置において、
チャンバーと、
前記チャンバー内に設けられ、前記ターゲットを有するターゲットユニットと、
前記チャンバーの一部を構成し、かつ、前記ターゲットユニットにおける回転中心軸線方向の一端側の軸受機能を有する第1ケースユニットと、
前記チャンバーの一部を構成し、かつ、前記ターゲットユニットにおける回転中心軸線方向の他端側の軸受機能を有する第2ケースユニットと、
を備え、
前記ターゲットユニットを回転させる駆動系統は、前記第1ケースユニット内から、前記ターゲットユニットへと接続され、
前記ターゲットユニットに供給される冷却液の供給系統と、前記ターゲットに電圧を印加する電気系統は、前記第2ケースユニット内から前記ターゲットユニットへと接続されると共に、
前記ターゲットユニットは、
筒状の前記ターゲットと、
前記ターゲットの内部に設けられ、かつ、磁力を発生する磁力発生部材を有する磁力ユニットと、
を備え、
前記駆動系統は、
前記ターゲットを回転させる第1駆動機構と、
前記磁力ユニットを回転させる第2駆動機構と、
を備え、
前記磁力ユニットは、
径方向内側の空間が冷却液の通路として利用され、径方向外側の環状空間に前記磁力発生部材が収容される密閉空間となる2重管構造となっていることを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
前記磁力ユニットにおける前記径方向内側の空間と、前記磁力ユニットと前記ターゲットとの間の環状隙間が連通されて、冷却液が流れる通路となっていることを特徴とする請求項に記載の成膜装置。
【請求項3】
スパッタリングによって、ターゲットの構成原子による薄膜を基板上に形成する成膜装置において、
チャンバーと、
前記チャンバー内に設けられ、前記ターゲットを有するターゲットユニットと、
前記チャンバーの一部を構成し、かつ、前記ターゲットユニットにおける回転中心軸線方向の一端側の軸受機能を有する第1ケースユニットと、
前記チャンバーの一部を構成し、かつ、前記ターゲットユニットにおける回転中心軸線方向の他端側の軸受機能を有する第2ケースユニットと、
を備え、
前記ターゲットユニットを回転させる駆動系統は、前記第1ケースユニット内から、前記ターゲットユニットへと接続され、
前記ターゲットユニットに供給される冷却液の供給系統と、前記ターゲットに電圧を印加する電気系統は、前記第2ケースユニット内から前記ターゲットユニットへと接続されると共に、
前記第1ケースユニットに回転自在に軸支される第1支持軸部と、
前記第2ケースユニットに回転自在に軸支される第2支持軸部と、
を備え、
前記ターゲットユニットは、これら第1支持軸部と第2支持軸部の双方に対して着脱自在に構成され、
前記ターゲットユニットは、
筒状の前記ターゲットと、
前記ターゲットの内部に設けられ、かつ、磁力を発生する磁力発生部材を有する磁力ユニットと、
を備えると共に、
前記第2支持軸部は、
前記ターゲットに着脱自在に構成される環状の第2ターゲット用支持軸と、
前記磁力ユニットに着脱自在に構成される第2磁力ユニット用支持軸と、
を備え、
前記第2磁力ユニット用支持軸は、前記第2ターゲット用支持軸に対して回転自在に軸支され、
前記第2磁力ユニット用支持軸の内部に冷却液の通路が設けられていることを特徴とする成膜装置。
【請求項4】
前記ターゲットユニットは、
筒状の前記ターゲットと、
前記ターゲットの内部に設けられ、かつ、磁力を発生する磁力発生部材を有する磁力ユニットと、
を備えると共に、
前記第1支持軸部は、
前記ターゲットに着脱自在に構成される環状の第1ターゲット用支持軸と、
前記磁力ユニットに着脱自在に構成される第1磁力ユニット用支持軸と、
を備え、
前記第1磁力ユニット用支持軸は、前記第1ターゲット用支持軸に対して回転自在に軸支されていることを特徴とする請求項に記載の成膜装置。
【請求項5】
スパッタリングによって、ターゲットの構成原子による薄膜を基板上に形成する成膜装
置において、
チャンバーと、
前記チャンバー内に設けられ、前記ターゲットと、前記ターゲットの内部に設けられ、かつ、磁力を発生する磁力発生部材を有する磁力ユニットと、を備えるターゲットユニットと、
記ターゲットユニットにおける回転中心軸線方向の一端側の軸受機能を有する第1ケースユニットと、
記ターゲットユニットにおける回転中心軸線方向の他端側の軸受機能を有する第2ケースユニットと、
前記ターゲットに着脱自在に構成される環状の第2ターゲット用支持軸と、前記磁力ユニットに着脱自在に構成される第2磁力ユニット用支持軸と、前記第2磁力ユニット用支持軸の内部に設けられた冷却液の通路と、前記第2ターゲット用支持軸を介して、前記ターゲットユニットとは反対側に、前記第2磁力ユニット用支持軸を回転自在に軸支する軸受ユニットと、電気配線と、前記電気配線に接続され、かつ前記軸受ユニットに固定されると共に、前記第2ターゲット用支持軸に摺動するように設けられるスリップリングと、を備え、前記第2ケースユニットに回転自在に軸支される第2支持軸部と、
を備え、
前記ターゲットユニットを回転させる駆動系統は、前記第1ケースユニット内から、前記ターゲットユニットへと接続され、
前記ターゲットユニットに供給される冷却液の供給系統と、前記ターゲットに電圧を印加する電気系統は、前記第2ケースユニット内から前記ターゲットユニットへと接続されることを特徴とする成膜装置。
【請求項6】
記軸受ユニットは、前記駆動系統による回転駆動力は伝達されず、かつ、前記第2支持軸部が前記第2ケースユニットに対して回転中心軸線方向にスライドする際には、前記第2支持軸部と共に移動可能に構成されていることを特徴とする請求項に記載の成膜装置。
【請求項7】
前記軸受ユニットの内部に冷却液の通路が設けられており、該軸受ユニットに前記供給系統を構成する配管が接続されていることを特徴とする請求項5または6に記載の成膜装置。
【請求項8】
前記配管は可撓性を有することを特徴とする請求項に記載の成膜装置。
【請求項9】
前記電気配線は可撓性を有することを特徴とする請求項5~8のいずれか一つに記載の成膜装置。
【請求項10】
スパッタリングによって、ターゲットの構成原子による薄膜を基板上に形成する成膜装置において、
チャンバーと、
前記チャンバー内に設けられ、前記ターゲットを有するターゲットユニットと、
前記チャンバーの一部を構成し、かつ、前記ターゲットユニットにおける回転中心軸線方向の一端側の軸受機能を有する第1ケースユニットと、
前記チャンバーの一部を構成し、かつ、前記ターゲットユニットにおける回転中心軸線方向の他端側の軸受機能を有する第2ケースユニットと、
を備え、
前記ターゲットユニットを回転させる駆動系統は、前記第1ケースユニット内から、前記ターゲットユニットへと接続され、
前記ターゲットユニットに供給される冷却液の供給系統と、前記ターゲットに電圧を印加する電気系統は、前記第2ケースユニット内から前記ターゲットユニットへと接続され
と共に、
前記第1ケースユニットに回転自在に軸支される第1支持軸部と、
前記第2ケースユニットに回転自在に軸支される第2支持軸部と、
を備え、
前記ターゲットユニットは、これら第1支持軸部と第2支持軸部の双方に対して着脱自在に構成され、
前記ターゲットユニットと前記第2支持軸部とが固定されていない状態においては、該第2支持軸部は、前記第2ケースユニットに対して回転中心軸線方向にスライド可能に構成されていることを特徴とする成膜装置。
【請求項11】
請求項10に記載の成膜装置における前記ターゲットユニットの取り外し方法であって、
前記ターゲットユニットと前記第2支持軸部との固定を解除する工程と、
前記第2支持軸部を前記第2ケースユニットに対して回転中心軸線方向にスライドさせて、該第2支持軸部を前記ターゲットユニットから離間させる工程と、
前記ターゲットユニットと前記第1支持軸部との固定を解除する工程と、
を有することを特徴とするターゲットユニットの取り外し方法。
【請求項12】
請求項10に記載の成膜装置における前記ターゲットユニットの取り付け方法であって、
前記ターゲットユニットと前記第1支持軸部とを固定する工程と、
前記第2支持軸部を前記第2ケースユニットに対して回転中心軸線方向にスライドさせて、該第2支持軸部を前記ターゲットユニットに近づける工程と、
前記ターゲットユニットと前記第2支持軸部とを固定する工程と、
を有することを特徴とするターゲットユニットの取り付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スパッタリングにより基板に薄膜を形成する成膜装置、ターゲットユニットの取り外し方法、及びターゲットユニットの取り付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スパッタリングにより基板に薄膜を形成する成膜装置においては、カソードの一部となる円筒状のターゲットが、回転しながらスパッタリングするように構成された技術が知られている。このような技術においては、ターゲットの両側に、それぞれ軸受機能が設けられている。
【0003】
従来、ターゲットの片側に、ターゲットを回転させるための駆動系統と、ターゲットの内部に冷却液を供給する供給系統と、ターゲットに電圧を印加する電気系統を集中させて設ける構成が採用されていた。そのため、ターゲットの片側が大型化する傾向にあった。これにより、ターゲット等を交換する際のメンテナンス作業が大掛かりになる傾向にあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-108633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、メンテナンス性の向上を図ることのできる成膜装置、ターゲットユニットの取り外し方法、及びターゲットユニットの取り付け方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
【0007】
本発明の成膜装置は、
スパッタリングによって、ターゲットの構成原子による薄膜を基板上に形成する成膜装置において、
チャンバーと、
前記チャンバー内に設けられ、前記ターゲットを有するターゲットユニットと、
前記チャンバーの一部を構成し、かつ、前記ターゲットユニットにおける回転中心軸線方向の一端側の軸受機能を有する第1ケースユニットと、
前記チャンバーの一部を構成し、かつ、前記ターゲットユニットにおける回転中心軸線方向の他端側の軸受機能を有する第2ケースユニットと、
を備え、
前記ターゲットユニットを回転させる駆動系統は、前記第1ケースユニット内から、前記ターゲットユニットへと接続され、
前記ターゲットユニットに供給される冷却液の供給系統と、前記ターゲットに電圧を印加する電気系統は、前記第2ケースユニット内から前記ターゲットユニットへと接続されると共に、
前記ターゲットユニットは、
筒状の前記ターゲットと、
前記ターゲットの内部に設けられ、かつ、磁力を発生する磁力発生部材を有する磁力
ユニットと、
を備え、
前記駆動系統は、
前記ターゲットを回転させる第1駆動機構と、
前記磁力ユニットを回転させる第2駆動機構と、
を備え、
前記磁力ユニットは、
径方向内側の空間が冷却液の通路として利用され、径方向外側の環状空間に前記磁力発生部材が収容される密閉空間となる2重管構造となっていることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、ターゲットユニットにおける回転中心軸線方向の一方の側に、駆動系統と供給系統と電気系統が集中して配置されていないため、当該一方の側が大型化してし
まうことを抑制することができる。これにより、メンテナンス性を高めることができる。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように、本発明によれば、メンテナンス性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は本発明の実施例に係る成膜装置の概略構成図である。
図2図2は本発明の実施例に係る磁石の配置構成を示す概略図である。
図3図3は本発明の実施例に係るロータリーカソードの概略構成図である。
図4図4は本発明の実施例に係るロータリーカソードの概略構成図である。
図5図5は本発明の実施例に係るロータリーカソードの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0012】
(実施例)
図1図5を参照して、本発明の実施例に係る成膜装置について説明する。本実施例に係る成膜装置は、スパッタリングによって、ターゲットの構成原子による薄膜を基板上に形成する装置である。以下の説明において、ターゲットの回転中心軸線を単に「回転中心軸線」と称し、回転中心軸線に平行な方向を「回転中心軸線方向」と称する。
【0013】
<成膜装置の全体構成>
図1及び図2を参照して、本実施例に係る成膜装置1の全体構成について説明する。図1は本発明の実施例1に係る成膜装置の概略構成図であり、成膜装置全体を断面的に見た場合の概略構成を示している。なお、図1中の上方は、成膜装置1が使用される際の鉛直方向の上方に相当し、図1中の下方は、成膜装置1が使用される際の鉛直方向下方に相当する。図2は磁石の配置構成を示す概略図である。
【0014】
本実施例に係る成膜装置1は、内部を真空雰囲気にすることのできるチャンバー20と、チャンバー20内の上部に設けられるロータリーカソード10とを備えている。ただし、ロータリーカソード10は複数の装置や部材により構成されており、本実施例においては、ロータリーカソード10を構成する複数の装置及び部材のうちの一部は、チャンバー20の外部に設けられている。そして、本実施例に係るチャンバー20はアノードとしても機能する。また、チャンバー20内の下部には、薄膜を形成させる基板40を載置する載置台30が設けられている。この載置台30は、基板40を所望の位置に搬送することができるように構成されている。
【0015】
ロータリーカソード10は、カソードの一部となる円筒状のターゲット110R1を有するターゲットユニット100を備えている。ターゲット110R1としては、SUSやTiからなるバッキングチューブの外周面にIn等の接着剤によりターゲット材料が接着されたタイプやバッキングチューブとターゲット材料が一体となった一体型タイプ等のいずれも適用可能である。そして、ターゲット110R1は、基板40に対向する位置に設けられ、かつスパッタリングの際に回転するように構成されている。
【0016】
また、ターゲットユニット100は、ターゲット110R1の内部に設けられる磁力ユニット120R2を備えている。この磁力ユニット120R2は、2重管構造となっている(図3参照)。すなわち、磁力ユニット120R2は、外筒部121R2と、内筒部1
22R2とを備えている。そして、内筒部122R2の内部の空間(径方向内側の空間)が冷却液の通路として利用され、外筒部121R2と内筒部122R2との間の環状空間(径方向外側の環状空間)に磁力発生部材としての磁石124R2が収容される。外筒部121R2と内筒部122R2との間の環状空間は、密閉空間となっており、冷却液が浸入することはない。
【0017】
図2図1中の磁石124R2を下方からみた図である。磁石124R2は、使用時において、下方に異なる2種類の磁極(N極とS極)が向くように配置される。S極は、N極との間に間隔を空けて、かつN極を取り囲むように設けられている。なお、S極とN極の配置関係は逆でも構わない。このように、ターゲット110R1の内部に磁力ユニット120R2が備えられることにより、ターゲット110R1と基板40との間には磁場(漏えい磁場)が形成される。
【0018】
以上のように構成される成膜装置1においては、ターゲット110R1とアノードとなるチャンバー20との間に一定以上の電圧を印加することにより、これらの間にプラズマが発生する。そして、プラズマ中の陽イオンがターゲット110R1に衝突することで、ターゲット110R1からターゲット材料の粒子が放出される。ターゲット110R1から放出された粒子は、衝突を繰り返しながら、放出された粒子のうちターゲット物質の中性の原子が基板40に堆積していく。これにより、基板40には、ターゲット110R1の構成原子による薄膜が形成される。また、本実施例に係る成膜装置1においては、上記の漏えい磁場によって、図1中Pに示す付近(ターゲット110R1に対して略平行な磁場が形成される付近)にプラズマを集中させることができる。これにより、効率的にスパッタリングが行われるため、基板40へのターゲット物質の堆積速度を向上させることができる。更に、本実施例に係る成膜装置1においては、スパッタリングの最中にはターゲット110R1が回転しているように構成されている。これにより、ターゲット110R1の消耗領域(エロ―ジョンによる浸食領域)が一部に集中することはなく、ターゲット110R1の利用効率を高めることができる。
【0019】
<ロータリーカソード>
特に、図3を参照して、本実施例に係るロータリーカソード10について、より詳細に説明する。図3は本発明の実施例1に係るロータリーカソード10の概略構成図であり、ロータリーカソード10を断面的に見た場合の概略構成を示している。なお、図中、符号Bはボールベアリングなどの軸受であり、符号Gは相対的に静止した表面間を封止するガスケットであり、符号Sは相対的に運動する表面間を封止する密封装置である。これら軸受B,ガスケットG及び密封装置Sについては、説明に必要な個所に設けられたものについてのみ適宜説明し、その他の個所に設けられたものについては特に説明は行わない。
【0020】
ロータリーカソード10は、第1ケースユニットとしてのエンドブロック200と、第2ケースユニットとしてのサポートブロック300により支持されている。また、エンドブロック200とサポートブロック300は、支持部材400により支持されている。これらエンドブロック200とサポートブロック300と支持部材400は、いずれもチャンバー20の一部を構成する部材である。
【0021】
上記の通り、ロータリーカソード10はターゲットユニット100を備えている。このターゲットユニット100は、チャンバー20の内部(V)に設けられる。そして、ターゲットユニット100における回転中心軸線方向の一端側の軸受機能がエンドブロック200に設けられ、ターゲットユニット100における回転中心軸線方向の他端側の軸受機能がサポートブロック300に設けられている。
【0022】
また、ロータリーカソード10は、ターゲットユニット100を回転させる駆動系統と
、ターゲットユニット100に供給される冷却液の供給系統と、ターゲット110R1に電圧を印加する電気系統とを備えている。これら駆動系統、供給系統、及び電気系統は、いずれも複数の部材により構成される。また、ロータリーカソード10は、各種装置の駆動制御を行う制御装置600も備えている。
【0023】
駆動系統は、エンドブロック200内から、ターゲットユニット100へ接続されるように構成されている。すなわち、エンドブロック200は、ケース状のエンドブロック本体210を備えている。このエンドブロック本体210の内部に駆動系統を構成する各種部材が配されることで、駆動系統は、エンドブロック200内からターゲットユニット100に接続されている。なお、エンドブロック本体210の内部は、大気(A)に曝されている。
【0024】
また、冷却液の供給系統と、ターゲット110R1に電圧を印加する電気系統は、サポートブロック300内からターゲットユニット100へと接続されるように構成されている。すなわち、サポートブロック300は、ケース状のサポートブロック本体310を備えている。このサポートブロック本体310の内部に、供給系統を構成する各種部材と、電気系統を構成する各種部材が配されることで、これら供給系統と電気系統は、いずれもサポートブロック300内からターゲットユニット100に接続されている。なお、サポートブロック本体310の内部は、大気(A)に曝されている。
【0025】
また、ロータリーカソード10は、エンドブロック200に回転自在に軸支される第1支持軸部と、サポートブロック300に回転自在に軸支される第2支持軸部とを備えている。そして、ターゲットユニット100は、これら第1支持軸部と第2支持軸部の双方に対して着脱自在に構成されている。
【0026】
より具体的には、第1支持軸部は、ターゲット110R1に着脱自在に構成される環状の第1ターゲット用支持軸220R1と、磁力ユニット120R2に着脱自在に構成される第1磁力ユニット用支持軸230R2とを備えている。第1ターゲット用支持軸220R1は、エンドブロック本体210に形成された挿通孔211に挿通されるように配されて、軸受Bによって、エンドブロック本体210に回転自在に軸支されている。なお、挿通孔211と第1ターゲット用支持軸220R1との間の環状隙間は、密封装置Sにより封止されている。また、第1磁力ユニット用支持軸230R2は、第1ターゲット用支持軸220R1の内側を挿通するように配されて、軸受Bによって、第1ターゲット用支持軸220R1に対して回転自在に軸支されている。なお、第1ターゲット用支持軸220R1と第1磁力ユニット用支持軸230R2との間の環状隙間も、密封装置Sにより封止されている。
【0027】
ターゲット110R1は、固定具240R1によって、第1ターゲット用支持軸220R1に固定される。また、固定具240R1を外すことで、ターゲット110R1を第1ターゲット用支持軸220R1から取り外すことができる。固定具240R1については、クランプなどの締め付け具やボルトとナットの組み合わせなど、各種公知技術を適用することができる。また、磁力ユニット120R2は、第1磁力ユニット用支持軸230R2に対して、回転中心軸線方向への挿抜により着脱することができる。なお、例えば、図示のように、磁力ユニット120R2の端部に設けられる凸部と、第1磁力ユニット用支持軸230R2の端部に設けられる凹部とによる凹凸嵌合構造によって、磁力ユニット120R2を第1磁力ユニット用支持軸230R2に対して着脱自在に構成することができる。なお、これら磁力ユニット120R2と第1磁力ユニット用支持軸230R2は、回転中心軸線を中心とする回転方向の相対的な移動は規制されるように構成されている。従って、第1磁力ユニット用支持軸230R2が回転すると、磁力ユニット120R2も第1磁力ユニット用支持軸230R2と一体的に回転する。なお、磁力ユニット120R2
を第1磁力ユニット用支持軸230R2に対して着脱自在に構成するための構造について、図示の例に限定されることはなく、適宜、公知技術を採用することができる。
【0028】
また、第2支持軸部は、ターゲット110R1に着脱自在に構成される環状の第2ターゲット用支持軸320R1と、磁力ユニット120R2に着脱自在に構成される第2磁力ユニット用支持軸330R2とを備えている。第2ターゲット用支持軸320R1は、サポートブロック本体310に形成された挿通孔311に挿通されるように配されて、軸受Bによって、サポートブロック本体310に回転自在に軸支されている。なお、挿通孔311と第2ターゲット用支持軸320R1との間の環状隙間は、密封装置Sにより封止されている。また、第2磁力ユニット用支持軸330R2は、第2ターゲット用支持軸320R1の内側を挿通するように配されて、軸受Bによって、第2ターゲット用支持軸320R1に対して回転自在に軸支されている。なお、第2ターゲット用支持軸320R1と第2磁力ユニット用支持軸330R2との間の環状隙間も、密封装置Sにより封止されている。
【0029】
第2ターゲット用支持軸320R1は、内筒部321R1と、内筒部321R1と同軸的に設けられ、かつ内筒部321R1の外周面側に設けられる外筒部322R1とを備えている。これら内筒部321R1と外筒部322R1は、中心軸線方向に対しては、相対的なスライド移動が可能に構成されつつ、回転方向に対しての相対的な移動ができないように、回り止め部材323R1によって、回り止めがなされている。従って、駆動系統により回転駆動力が伝達される際においては、内筒部321R1と外筒部322R1は一体的に回転する。なお、外筒部322R1の端部かつ内周面側には、スライド移動による回り止め部材323R1の進入と退出を可能とする切り欠き部322aR1が設けられている。
【0030】
ここで、第2磁力ユニット用支持軸330R2は、その内部に冷却液の通路が設けられている。より具体的には、第2磁力ユニット用支持軸330R2の内部に配管部331R2が設けられており、この配管部331R2の内部と外部に冷却液の通路が設けられている。
【0031】
そして、ターゲット110R1は、固定具340R1によって、第2ターゲット用支持軸320R1(より具体的には、内筒部321R1)に固定される。また、固定具340R1を外すことで、ターゲット110R1を第2ターゲット用支持軸320R1から取り外すことができる。固定具340R1については、クランプなどの締め付け具やボルトとナットの組み合わせなど、各種公知技術を適用することができる。また、磁力ユニット120R2は、第2磁力ユニット用支持軸330R2に対して、回転中心軸線方向への挿抜により着脱することができる。本実施例においては、内筒部122R2の内側に配管部331R2が差し込まれるようにすることで、磁力ユニット120R2を第2磁力ユニット用支持軸330R2に対して着脱自在に構成することができる。なお、これら磁力ユニット120R2と第2磁力ユニット用支持軸330R2は、回転中心軸線を中心とする回転方向の相対的な移動は規制されるように構成されている。従って、磁力ユニット120R2が回転すると、第2磁力ユニット用支持軸330R2も磁力ユニット120R2と一体的に回転する。なお、磁力ユニット120R2を第2磁力ユニット用支持軸330R2に対して着脱自在に構成するための構造について、図示の例に限定されることはなく、適宜、公知技術を採用することができる。
【0032】
また、第2ターゲット用支持軸320R1を介して、ターゲットユニット100とは反対側に、第2磁力ユニット用支持軸330R2を回転自在に軸支する軸受ユニット350が設けられている。この軸受ユニット350は、駆動系統による回転駆動力は伝達されず、かつ、第2支持軸部(第2ターゲット用支持軸320R1及び第2磁力ユニット用支持
軸330R2)がサポートブロック300に対して回転中心軸線方向にスライドする際には、第2支持軸部と共に移動可能に構成されている。この軸受ユニット350の端部に設けられた挿通孔351内に、第2磁力ユニット用支持軸330R2の端部に設けられた軸部332R2が挿通され、軸受Bによって、第2磁力ユニット用支持軸330R2は軸受ユニット350に対して回転自在に軸支されている。
【0033】
<駆動系統>
駆動系統について、より詳細に説明する。駆動系統は、ターゲット110R1を回転させる第1駆動機構と、磁力ユニット120R2を回転させる第2駆動機構とを備えている。本実施例においては、駆動源であるモータ500によって、第1駆動機構と第2駆動機構の両者を駆動させることができるように構成されている。なお、第1駆動機構によって、回転中心軸線を中心に回転する各種部材については数字の符号の後に「R1」を付している。同様に、第2駆動機構によって、回転中心軸線を中心に回転する各種部材については数字の符号の後に「R2」を付している。
【0034】
モータ500によって回転する回転軸510は、軸受Bが備えられた軸受部材520によって、回転自在に支持されている。ターゲット110R1を回転させるための第1駆動機構は、回転軸510に取り付けられる第1プーリ530と、第1ターゲット用支持軸220R1に取り付けられる第2プーリ221R1と、これら第1プーリ530と第2プーリ221R1に巻き付けられる第1ベルト222とから構成される。以上のように構成される第1駆動機構によれば、モータ500により回転軸510が回転すると、回転動力が第1ベルト222によって第2プーリ221R1に伝達されて、ターゲット110R1が第1ターゲット用支持軸220R1及び第2ターゲット用支持軸320R1と共に回転する。
【0035】
磁力ユニット120R2を回転させるための第2駆動機構は、回転軸510に取り付けられる第3プーリ540と、第1磁力ユニット用支持軸230R2に取り付けられる第4プーリ231R2と、これら第3プーリ540と第4プーリ231R2に巻き付けられる第2ベルト232とから構成される。第3プーリ540と回転軸510との間には軸受Bが設けられている。また、回転軸510には、回転動力の第2駆動機構への伝達と遮断を切り替えるクラッチ550が備えられている。より具体的には、このクラッチ550は、回転軸510に対して回転軸510の回転中心軸線と平行に往復移動可能に構成されている。そして、クラッチ550が、第3プーリ540に接触した状態では回転軸510の回転動力が第3プーリ540に伝達され、第3プーリ540から離れると回転軸510の回転動力が第3プーリ540に伝達されないように構成されている。なお、図3においては、第3プーリ540に接触した状態のクラッチ550を実線で示し、第3プーリ540から離れた状態のクラッチ550aを点線で示している。なお、クラッチ550の動力として、電磁力を利用した電磁式クラッチを好適に利用することができる。ただし、これに限らず、機械式、油圧式、空圧式など各種のクラッチを利用することもできる。
【0036】
また、第1磁力ユニット用支持軸230R2には、磁力ユニット120R2の回転を制止させるブレーキ233R2が設けられている。より具体的には、このブレーキ233R2は、第1磁力ユニット用支持軸230R2に対して回転中心軸線と平行に往復移動可能に構成されている。そして、ブレーキ233R2が第4プーリ231R2に接触した状態では第4プーリ231R2の回転が制止され、ブレーキ233R2が第4プーリ231R2から離れると、第4プーリ231R2の回転が可能な状態となる。なお、図3においては、第4プーリ231R2に接触した状態のブレーキ233aを点線で示し、第4プーリ231R2から離れた状態のブレーキ233R2を実線で示している。なお、ブレーキ233R2の動力として、電磁力を利用した電磁式ブレーキを好適に利用することができる。ただし、これに限らず、機械式、油圧式、空圧式など各種のブレーキを利用することも
できる。
【0037】
以上のように構成される第2駆動機構によれば、クラッチ550により駆動伝達がなされる状態、かつブレーキ233R2が解除された状態においては、モータ500により回転軸510が回転すると、回転動力が第2ベルト232によって第4プーリ231R2に伝達されて、第1磁力ユニット用支持軸230R2と共に磁力ユニット120R2が回転する。そして、クラッチ550により動力の伝達が遮断された状態においては、回転軸510の回転動力は磁力ユニット120R2には伝達されない。しかしながら、複数の軸受Bと密封装置Sによる摺動抵抗が発生するため、第2駆動機構によって、磁力ユニット120R2に動力が伝達されていなくても、ターゲット110R1が回転すると磁力ユニット120R2が摺動抵抗によって多少連れ回りする可能性がある。そこで、本実施例に係る第2駆動機構には、上記の通りブレーキ233R2が設けられている。これにより、クラッチ550により動力の伝達が遮断される場合には、ブレーキ233R2によって第4プーリ231R2の回転を制止させることで、磁力ユニット120R2の連れ回りが阻止される。
【0038】
<供給系統と電気系統>
供給系統を構成する第1配管710と第2配管720は、軸受ユニット350に接続されている。軸受ユニット350には、第2磁力ユニット用支持軸330R2の内部に設けられた冷却液の通路と、第1配管710の管内、及び第2配管720の管内とを繋ぐための貫通孔352,353がそれぞれ設けられている。なお、第2磁力ユニット用支持軸330R2の内部に設けられた冷却液の通路のうち、径方向に向かう通路は、放射状に伸びるように複数設けられている。そして、貫通孔352の両側と貫通孔353の両側に、それぞれ密封装置Sが設けられている。このような構成により、いわゆるロータリージョイントが構成され、静止状態にある軸受ユニット350、第1配管710及び第2配管720と、回転する第2磁力ユニット用支持軸330R2との間において、冷却液が外部に漏れることなく、冷却液を循環させることが可能となっている。なお、ロータリージョイントについては、公知技術であるので、その詳細な説明は省略する。
【0039】
図3においては、冷却液の流れ方の一例を矢印にて示している。すなわち、第1配管710から貫通孔352を通って、第2磁力ユニット用支持軸330R2の内部に供給された冷却液は、配管部331R2内を通って、磁力ユニット120R2における内筒部122R2内へと送られる。ターゲットユニット100においては、磁力ユニット120R2における内筒部122R2の内部の空間と、磁力ユニット120R2とターゲット110R1との間の環状隙間が貫通孔123R2により連通されて、冷却液が流れる通路となっている。これにより、内筒部122R2内に送られた冷却液は、貫通孔123R2を通って、磁力ユニット120R2とターゲット110R1との間の環状隙間に送られる。その後、冷却液は、第2磁力ユニット用支持軸330R2における配管部331R2の外側に設けられた通路を通って、貫通孔353から第2配管720を通じて排出される。なお、配管部331R2の外側に設けられる通路は、例えば、貫通孔353に通じるように複数設けられた放射状の通路から、それぞれ第2磁力ユニット用支持軸330R2における図中左側の端面に至るように複数設けられる連通孔により構成することができる。また、図示の例では、第1配管710から第2配管720に冷却液が流れるように構成する場合を示したが、第2配管720から第1配管710に冷却液が流れるように構成するようにしても構わない。
【0040】
電気系統は、電気配線810と、電気配線810に接続されるスリップリング820とを備えている。スリップリング820は、軸受ユニット350に固定され、かつ第2ターゲット用支持軸320R1に摺動するように設けられている。これにより、静止状態にある軸受ユニット350、電気配線810及びスリップリング820に対して、第2ターゲ
ット用支持軸320R1が回転しても、スリップリング820を通じて第2ターゲット用支持軸320R1に電圧が印加される。また、第2ターゲット用支持軸320R1とターゲット110R1も接しているため、ターゲット110R1にも電圧が印加されることになる。
【0041】
<ロータリーカソードの動作制御>
制御装置600によるロータリーカソード10の動作制御について説明する。スパッタリングを行う場合には、基板40の形状等に応じて、薄膜を形成させる部位が異なることがある。そして、薄膜を形成させる部位は、プラズマを集中させる位置を変えることで設定することができる。本実施例に係るロータリーカソード10によれば、磁力ユニット120R2を回転させて、ターゲット110R1に対する磁石124R2の向きを変えることで、プラズマを集中させる位置を変えることが可能となる。
【0042】
また、長期間に亘ってロータリーカソード10が使用されていない場合など、ターゲット110R1の表面が酸化してしまったり、表面に汚れが付着してしまったりする場合がある。そのため、基板40に薄膜を形成させるためのスパッタリングを行う前に、基板40への薄膜の形成を伴わないスパッタリング動作(プリスパッタリングと呼ばれる)を行って、汚れなどを除去する制御を行うことがある。この場合には、例えば、基板40が配置される側とは反対側に磁石124R2を向かせた状態でプリスパッタリングが行われる。
【0043】
以上のような制御が行われることで、基板40に対する所望の位置に薄膜を形成させることが可能となる。
【0044】
<メンテナンス>
ターゲット110R1等が長期使用により経時的に劣化した際に、ターゲット110R1等を交換する際のメンテナンスについて、特に、図4及び図5を参照して説明する。本実施例においては、ターゲットユニット100の着脱を、以下のように容易に行うことができる。すなわち、まず、固定具340R1が取り外される(ターゲットユニット100と第2支持軸部との固定を解除する工程)。そして、第2支持軸部(第2ターゲット用支持軸320R1及び第2磁力ユニット用支持軸330R2)と軸受ユニット350が、中心軸線方向にスライドされることで、これらはターゲットユニット100から離間した状態となる(第2支持軸部を第2ケースユニット(サポートブロック300)に対して回転中心軸線方向にスライドさせて、第2支持軸部をターゲットユニット100から離間させる工程(図4参照))。なお、第2ターゲット用支持軸320R1については、内筒部321R1のみがスライド移動し、外筒部322R1は移動しない。
【0045】
ここで、冷却液を供給するポンプなどの冷却液供給源(不図示)や、電圧を印加する電源(不図示)が移動可能に構成される場合には、図中、実線で示すように、第1配管710及び第2配管720と、電気配線810も、軸受ユニット350と共にスライドする構成を採用することができる。ただし、冷却液供給源や電源が固定される場合には、これらを、可撓性を有する部材により構成するとよい。これにより、軸受ユニット350の移動に伴って、それぞれ点線で示される第1配管710a、第2配管720a、及び電気配線810aは撓むように変形する。従って、冷却液供給源や電源は固定されたままでも支障がない。
【0046】
そして、上記のスライド動作が終了された後に、固定具240R1が取り外される(ターゲットユニット100と第1支持軸部との固定を解除する工程)。これにより、ターゲットユニット100は、第1支持軸部(第1ターゲット用支持軸220R1及び第1磁力ユニット用支持軸230R2)から取り外される(図5参照)。
【0047】
このように、ターゲットユニット100を第1支持軸部及び第2支持軸部から簡単に取り外すことができる。そして、ターゲット110R1を新品のものに交換した後にターゲットユニット100(または、新品のターゲットユニット100)を、上記の取り外し順序とは逆の順序で、簡単に取り付けることができる。つまり、ターゲットユニットの取り付け方法については、以下の通りである。まず、固定具240R1によって、ターゲットユニット100と第1支持軸部とが固定される(ターゲットユニット100と第1支持軸部とを固定する工程(図4参照))。そして、第2支持軸部と軸受ユニット350が、中心軸線方向にスライドされることで、これらはターゲットユニット100に近づけられる(第2支持軸部を第2ケースユニット(サポートブロック300)に対して回転中心軸線方向にスライドさせて、第2支持軸部をターゲットユニット100に近づける工程)。その後、固定具340R1によって、ターゲットユニット100と第2支持軸部とが固定される(ターゲットユニット100と第2支持軸部とを固定する工程)。以上の工程により、ターゲットユニット100が取り付けられる(図3参照)。
【0048】
<本実施例に係る成膜装置の優れた点>
本実施例に係る成膜装置によれば、ターゲットユニットにおける回転中心軸線方向の一方の側(例えば、エンドブロック200側)に、駆動系統と供給系統と電気系統が集中して配置されていないため、当該一方の側が大型化してしまうことを抑制することができる。これにより、メンテナンス性を高めることができる。
【0049】
また、本実施例によれば、第2支持軸部(第2ターゲット用支持軸320R1及び第2磁力ユニット用支持軸330R2)と軸受ユニット350が、サポートブロック本体310に対してスライド可能に構成されている。これにより、メンテナンス性をより一層高くすることができる。
【0050】
(その他)
上記実施例においては、駆動源であるモータ500によって、第1駆動機構と第2駆動機構の両者を駆動させることができるように構成される場合を示した。しかしながら、本発明においては、そのような構成に限定されることはなく、第1駆動機構と第2駆動機構を別々の駆動源(モータ)によって駆動させる構成も適用可能である。
【符号の説明】
【0051】
1 成膜装置
10 ロータリーカソード
20 チャンバー
30 載置台
40 基板
100 ターゲットユニット
110R1 ターゲット
120R2 磁力ユニット
121R2 外筒部
122R2 内筒部
123R2 貫通孔
124R2 磁石
200 エンドブロック
210 エンドブロック本体
211 挿通孔
233R2 ブレーキ
240R1 固定具
300 サポートブロック
310 サポートブロック本体
311 挿通孔
321R1 内筒部
322R1 外筒部
323R1 回り止め部材
331R2 配管部
332R2 軸部
340R1 固定具
350 軸受ユニット
351 挿通孔
352,353 貫通孔
400 支持部材
500 モータ
510 回転軸
520 軸受部材
550 クラッチ
600 制御装置
710 第1配管
720 第2配管
810 電気配線
820 スリップリング
B 軸受
G ガスケット
S 密封装置
図1
図2
図3
図4
図5