(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-06
(45)【発行日】2023-10-17
(54)【発明の名称】中央コア部材を伴った小径繊維編組
(51)【国際特許分類】
D07B 1/04 20060101AFI20231010BHJP
A61L 17/10 20060101ALI20231010BHJP
【FI】
D07B1/04
A61L17/10
(21)【出願番号】P 2020560874
(86)(22)【出願日】2019-01-17
(86)【国際出願番号】 US2019013962
(87)【国際公開番号】W WO2019147460
(87)【国際公開日】2019-08-01
【審査請求日】2021-11-09
(32)【優先日】2018-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【氏名又は名称】森住 憲一
(72)【発明者】
【氏名】パトリック・コフィー
(72)【発明者】
【氏名】フォレスト・スローン
【審査官】藤原 敬士
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-530314(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0267316(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0199208(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D07B 1/04
A61L 17/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外表面、内表面、および内表面により規定され体積を有する中央中空部分を有するストランドの管状編組シース;並びに
管状編組シースの中央中空部分内のコア
を含んでなるコードであって、
管状編組シースは
、8cN/dtex以上の引張強度を各々が有するストランドを含んでなり;
コードが弛緩状態のとき、管状編組シースは
、20μm
~5mmの外径および中央中空部分の弛緩体積を有す
る円筒の形状を有しており、コアは、管状編組シースの中央中空部分の弛緩体積を満たしておらず;かつ
コードが長手方向に張力をかけられた状態のとき、管状編組シースの中央中空部分の少なくとも一部の張力をかけられた状態における体積が弛緩体積より小さくなるように、管状編組シースは長手方向張力下で伸長し;かつ
張力をかけられた状態における体積の管状編組シースの内表面は、コアと管状編組シースの間のずれが減少するように、コア表面に接触してコア表面を締め付ける
ことを特徴とするコード。
【請求項2】
(i)弛緩状態における管状編組シースの編組のピックカウントは1インチ
(2.54cm)あたり30~3000のフィラメント単位交錯である;または(ii)コアは1メートルあたり0超~1600回転(tpm)の撚りレベルで撚られている;または(iii)コアは編組コアである;または(iv)コアは弛緩状態における管状編組シースの中央中空部分の体積
の95%超を占める;または(v)管状編組シースのストランドエンドカウントは4~24エンドである;または(vi)コードの単位長さあたりのコアの質量に対する管状編組シースの質量の質量比
は95/5
~50/50である;または(vii)コードの線密度
は30
~5000デニールである;または(viii)管状編組シースの編組角は弛緩状態
で5°
~95°であり、編組角は長手方向に張力をかけられた状態で増大する;または(ix)(i)~(viii)の任意の組み合わせであることを特徴とする、請求項1に記載のコード。
【請求項3】
弛緩状態にあるとき、コードのシース成分とコア成分とは下記式:
c/10 ≦ p/t
[式中、cはシースの編組キャリアの数であり、pはシースにおける1メートルあたりのピックカウントであり、tは1メートルあたりの回転数で表したコアのフィラメントの撚りレベルである]
を満たすことを特徴とする、請求項1または2に記載のコード。
【請求項4】
弛緩状態にあるとき、コードのシース成分とコア成分との関係は式(I):
c/
10 ≦ p/t ≦ c/2 (I)
[式中、cはシースの編組キャリアの数であり、pはシースにおける1
メートルあたりのピックカウントであり、tは1メートルあたりの回転数で表したコアのフィラメントの撚りレベルである]
に従うことを特徴とする、請求項1または2に記載のコード。
【請求項5】
長手方向に張力をかけられた状態における管状編組シースのピックカウントは、弛緩状態におけるピックカウントと比べて低減していることを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載のコード。
【請求項6】
(x)管状編組シースの各ストランドは個々に撚り若しくは無撚りモノフィラメントである;または管状編組シースの各ストランドは個々に撚り若しくは無撚りマルチフィラメントである;または管状編組シースはストランドの組み合わせであって、各ストランドは個々に撚り若しくは無撚りのモノフィラメント若しくはマルチフィラメントである;および(xi)コアは撚り若しくは無撚りモノフィラメントである;またはコアは撚り若しくは無撚りマルチフィラメントである;またはコアはストランドの組み合わせであって、各ストランドは個々に撚り若しくは無撚りのモノフィラメント若しくはマルチフィラメントであることを特徴とする、請求項1~5のいずれかに記載のコード。
【請求項7】
(xii)管状編組シースのストランドは、液晶ポリエステルフィラメント、アラミドフィラメント、コポリマーアラミドフィラメント、ポリエーテルエーテルケトンフィラメント、ポリ(p-フェニレンベンゾビスオキサゾール)フィラメント、超高分子量ポリエチレンフィラメント、高弾性ポリエチレンフィラメント、ポリプロピレンフィラメント、ポリエチレンテレフタレートフィラメント、ポリアミドフィラメント、ポリヒドロキノンジイミダゾピリジンフィラメント、高強度ポリビニルアルコールフィラメントおよびそれらの組み合わせからなる群から選択されるフィラメントを含んでなる;または(xiii)コアは、液晶ポリエステルフィラメント、アラミドフィラメント、コポリマーアラミドフィラメント、ポリエーテルエーテルケトンフィラメント、ポリ(フェニレンベンゾビスオキサゾール)フィラメント、超高分子量ポリエチレンフィラメント、ポリプロピレンフィラメント、高弾性ポリエチレンフィラメント、ポリエチレンテレフタレートフィラメント、ポリアミドフィラメント、高強度ポリビニルアルコールフィラメントおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される1以上のフィラメントを含んでなる;または(xiv)(xii)および(xiii)の両方であることを特徴とする、請求項1~6のいずれかに記載のコード。
【請求項8】
管状編組シースのストランドは液晶ポリエステルフィラメントを含んでなり、液晶ポリエステルフィラメントの含有量は管状編組シースの総質量に対して少なくとも50質量%であることを特徴とする、請求項7に記載のコード。
【請求項9】
コードが弛緩状態のとき、管状編組シースの外径
は20μm
~3m
mであることを特徴とする、請求項1~8のいずれかに記載のコード。
【請求項10】
コアまたは管状編組シースの少なくとも1つは、架橋シリコーンポリマーまたは未架橋シリコーンポリマーまたは長鎖脂肪酸の被覆を有する、フィラメント、繊維またはストランドを含んでなることを特徴とする、請求項1~9のいずれかに記載のコード。
【請求項11】
シースの線密度はコアの線密度
と一致することを特徴とする、請求項1~10のいずれかに記載のコード。
【請求項12】
管状編組シースは、15cN/dtex以
上の引張強度を各々が有するストランドを含んでなることを特徴とする、請求項1~11のいずれかに記載のコード。
【請求項13】
請求項1~12のいずれかに記載のコードを含んでなる引張部材であって、引張部材の外径は0.04mm以上、かつ0.7mm以
下であることを特徴とする、引張部材。
【請求項14】
請求項13に記載の引張部材を含んでなる医療用の糸または縫合糸。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、従来から知られている同径のコードに比べて向上した総合的な強度および寸法安定性を有し、引張荷重が管理された小径の編組コードを対象とする。本発明のコードは、小径および高強度が要求される用途に適する。
【背景技術】
【0002】
中央コア構造を有する編組コードは通常、幅広い応用における用途に使用可能である。一般的に、既知の構造の各々において、編組外側シースは、例えば摩耗および環境ストレスから内側コア構造を保護する働きをする。中央コア構造は、単一成分であっても、内部撚り、編組および/または更なる撚りが付されていてよい複数の糸であっても、コードの強度および剛性に寄与する。このように通常、コアの寸法および構造を変更することにより、コードの強度を高めることができる。直径の大きなロープ等の用途では、コアの直径、従ってロープの直径の増大は、一般的に利用価値に悪影響を及ぼさない。しかし、3mm未満の小径および高い粘靭性が要求される用途では、コードの直径を大きくして強度を高めることは望ましくない。
【0003】
各々が引張荷重のかなりの部分を支持するよう、カバーと中央コアが各々設計されている二重編組構造の従来のロープが知られている。約0.25インチ(約6mm)の小さい直径で入手可能なこれらのロープは典型的には、ナイロンまたはポリエステル等の低弾性繊維で作られている。そのような低弾性材料を用いて、長手方向の応力負荷が比例的に分配されるコアシース構造コードを構成することは、コアおよびシースのストランド撚り、編組パターンおよびレイ角度の適切な調整により可能である。しかし、例えば高分子量ポリエチレン(HMPE)または液晶ポリマー(LCP)といった高強度高弾性の材料を用いてコードを構成する場合、コアおよびシースの形状により長手方向の負荷のバランスをとることは容易にはできず、従って、従来の高粘靭性コードでは、コアが本質的に全ての長手方向の応力を支持する必要がある。
【0004】
従来の小径編組コードにより支持される引張荷重は、編組シースと中央コア部材との間で均等に分配され得ない。結果として、これらのコードが引き伸ばされると、編組シースおよびコアは、引張力の印加に対して異なった応答をする。シースは中央コア部材とは無関係にその力に応答し、これにより、中心の糸は、周囲のシースに対して長手方向に動く。コア部材は、特に糸で構成されている場合、丸みのある断面形状を維持する代わりに、自身を平らにしてシース内で再分布され得る。
【0005】
従って、細かい編組の非常に細い(直径が約3mm未満の)コードの多くでは、通常は、コア成分は存在し得ず、細いコードは主として構造を単純にするために中空の編組として構成され得る。このアプローチの大きな欠点は、そのような小径コードの負荷容量を付加的に増やすために、少量の繊維が各編組要素に添加され得ることである。各要素への添加により、構造の全体的なトルクバランスは維持される。例えば、12ストランドの編組コード構造において、コードの強度を高めるために各ストランドの寸法は増大されるであろう。非常に細いコード、即ち直径3mm未満のコードをこのように扱う場合、コードメーカーは使用可能な増大する繊維デニールを考慮する必要がある。例えば、各ストランドが100デニールLCP繊維である12ストランド編組コードを考えるとき、使用可能な強度増大の次の増分は、各ストランドが2つの100デニールLCP繊維で構成されている場合であろう。しかし、この総繊維カウントの増大は、元々の直径の約1.4倍の総コード直径の増大も招く。
【0006】
従って、引張荷重の管理のために設計された非常に細いコードおよび極細のコード(1mm以下の外径)が、対応する直径の増大をほとんどまたは全く伴わず全体的な強度が増大され、コードの全成分により全引張応力が比例的に支持される(このとき、引張力はコア成分とシース成分の間により均等に分配される)ような構造を有することが有利であろう。これにより、コード全体の構造が、コードの通常の形状の歪みを好ましくは伴わずに引張力に調和して応答する。更に、そのような引張荷重の管理された構造により、同じ直径の従来のコードよりも向上した安定性および強度を有し、設定された直径を有するコードを得ることが可能であるべきである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、高弾性繊維を用いて6mm未満の外径を有するコード構造を設計することであって、この設計は、引張荷重がコードの全成分により比例的に分配されるように引張荷重が管理された構造をもたらす。
【課題を解決するための手段】
【0008】
これらおよび他の目的は、本発明によって達成され、その第一の態様は、外表面、内表面、および内表面により規定され体積を有する中央中空部分を有するストランドの管状編組シース;並びに
管状編組シースの中央中空部分内のコア
を含んでなるコードであって、
管状編組シースは、約8cN/dtex以上の引張強度を各々が有するストランドを含んでなり;
コードが弛緩状態のとき、管状編組シースは、約20μm~約5mmの外径および中央中空部分の弛緩体積を有する実質的に円筒の形状を有しており、コアは、管状編組シースの中央中空部分の弛緩体積を満たしておらず;かつ
コードが長手方向に張力をかけられた状態のとき、管状編組シースの中央中空部分の少なくとも一部の張力をかけられた状態における体積が弛緩体積より小さくなるように、管状編組シースは長手方向張力下で伸長し;かつ
張力をかけられた状態における体積の管状編組シースの内表面は、コアと管状編組シースの間のずれが減少するように、コア表面に接触してコア表面を締め付ける、
コードを提供する。
【0009】
第一の態様の一態様では、弛緩状態における管状編組シースの編組のピックカウントは、1インチ(2.54cm)あたり30~3000交錯(1cmあたり10~1200フィラメント単位交錯)であり、長手方向に張力をかけられた状態における管状編組シースのピックカウントは、弛緩状態におけるピックカウントと比べて低減している。
【0010】
第一の態様の別の態様では、コア成分は、弛緩状態における管状編組シースの中央中空部分の体積の約95%超を占める。
【0011】
第一の態様の別の態様では、管状編組シースの各ストランドは、撚り若しくは無撚りモノフィラメント、または撚り若しくは無撚りマルチフィラメントであってよく、または管状編組シースはストランドの組み合わせであり、各ストランドは個々に撚り若しくは無撚りのモノフィラメント若しくはマルチフィラメントである。
【0012】
第一の態様の別の態様では、管状編組シースのストランドは、液晶ポリエステルフィラメント、アラミドフィラメント、コポリマーアラミドフィラメント、ポリエーテルエーテルケトンフィラメント、ポリ(p-フェニレンベンゾビスオキサゾール)フィラメント、超高分子量ポリエチレンフィラメント、高弾性ポリエチレンフィラメント、ポリプロピレンフィラメント、ポリエチレンテレフタレートフィラメント、ポリアミドフィラメント、ポリヒドロキノンジイミダゾピリジンフィラメント、高強度ポリビニルアルコールフィラメントおよびそれらの組み合わせからなる群から選択されるフィラメントであってよい。
【0013】
第一の態様の追加の態様では、管状編組シースのストランド(エンド)カウントは4~24であってよい。
【0014】
更なる追加の態様では、コア成分は、撚り若しくは無撚りのモノフィラメント若しくはマルチフィラメント構造であってよい;および/または1以上のフィラメントは、液晶ポリエステルフィラメント、アラミドフィラメント、コポリマーアラミドフィラメント、ポリエーテルエーテルケトンフィラメント、ポリ(p-フェニレンベンゾビスオキサゾール)フィラメント、超高分子量ポリエチレンフィラメント、高弾性ポリエチレンフィラメント、ポリプロピレンフィラメント、ポリエチレンテレフタレートフィラメント、ポリアミドフィラメント、高強度ポリビニルアルコールフィラメント、ポリヒドロキノンジイミダゾピリジンフィラメント(PIPD)およびそれらの組み合わせからなる群から選択されてよい。別の態様では、コアはストランドの組み合わせであって、各ストランドは個々に撚り若しくは無撚りのモノフィラメント若しくはマルチフィラメントである。別の追加の態様では、コアは撚り合わされており、撚り構造は1メートルあたり0超~1600回転を含む。
【0015】
第一の態様の別の態様では、コードの単位長さあたりのコアの質量に対する管状編組シースの質量の質量比は約95/5~約50/50である。
【0016】
第一の態様の更に別の態様では、コードが弛緩状態のとき、管状編組シースの外径は約20μm~約5mmである。
【0017】
第一の態様の更に別の態様では、コードの線密度は、約30~約5000デニールであり、または約50~約5000デニールでさえある。
【0018】
第一の態様の更に別の態様では、管状編組シースの編組角は弛緩状態で約5°~約95°であり、編組角は長手方向に張力をかけられた状態で増大する。
【0019】
第二の態様では、本発明は、第一の態様および上述した態様の全てに従ったコードであって、コアおよび管状編組シースの少なくとも1つは、架橋シリコーンポリマーまたは未架橋シリコーンポリマーまたは長鎖脂肪酸の被覆を有する、フィラメント、繊維またはストランドを含んでなる、コードを提供する。
【0020】
別の態様では、本発明は、本明細書に記載の態様に従ったコードを含んでなり、約0.04mm~約0.7mmの外径を有する医療用の糸または縫合糸に関する。
【0021】
特定の態様では、(i)弛緩状態における管状編組シースの編組のピックカウントは1インチ(2.54cm)あたり30~3000のフィラメント単位交錯である;または(ii)コアは1メートルあたり0超~1600回転(tpm)の撚りレベルで撚られている;または(iii)コアは編組コアである;または(iv)コアは弛緩状態における管状編組シースの中央中空部分の体積の約95%超を占める;または(v)管状編組シースのストランド(エンド)カウントは4~24エンドである;または(vi)コードの単位長さあたりのコアの質量に対する管状編組シースの質量の質量比は約95/5~約50/50である;または(vii)コードの線密度は約30~約5000デニールである;または(viii)管状編組シースの編組角は弛緩状態で約5°~約95°であり、編組角は長手方向に張力をかけられた状態で増大する;または(ix)(i)~(viii)の任意の組み合わせである。
【0022】
別の特定の態様では、(x)管状編組シースの各ストランドは個々に撚り若しくは無撚りモノフィラメントである;または管状編組シースの各ストランドは個々に撚り若しくは無撚りマルチフィラメントである;または管状編組シースはストランドの組み合わせであって、各ストランドは個々に撚り若しくは無撚りのモノフィラメント若しくはマルチフィラメントである;および(xi)コアは撚り若しくは無撚りモノフィラメントである;またはコアは撚り若しくは無撚りマルチフィラメントである;またはコアはストランドの組み合わせであって、各ストランドは個々に撚り若しくは無撚りのモノフィラメント若しくはマルチフィラメントである。
【0023】
別の特定の態様では、(xii)管状編組シースのストランドは、液晶ポリエステルフィラメント、アラミドフィラメント、コポリマーアラミドフィラメント、ポリエーテルエーテルケトンフィラメント、ポリ(p-フェニレンベンゾビスオキサゾール)フィラメント、超高分子量ポリエチレンフィラメント、高弾性ポリエチレンフィラメント、ポリプロピレンフィラメント、ポリエチレンテレフタレートフィラメント、ポリアミドフィラメント、ポリヒドロキノンジイミダゾピリジンフィラメント、高強度ポリビニルアルコールフィラメントおよびそれらの組み合わせからなる群から選択されるフィラメントを含んでなる;(xiii)コアは、液晶ポリエステルフィラメント、アラミドフィラメント、コポリマーアラミドフィラメント、ポリエーテルエーテルケトンフィラメント、ポリ(フェニレンベンゾビスオキサゾール)フィラメント、超高分子量ポリエチレンフィラメント、ポリプロピレンフィラメント、高弾性ポリエチレンフィラメント、ポリエチレンテレフタレートフィラメント、ポリアミドフィラメント、高強度ポリビニルアルコールフィラメントおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される1以上のフィラメントを含んでなる;または(xiv)(xii)および(xiii)の両方である。
【0024】
前述の説明は、本発明の一般的な紹介および要約の提供を意図しており、特に明記していない限り、その開示に限定することを意図したものではない。本発明の好ましい態様は、更なる利点と共に、添付の図面と併せて以下の詳細な説明を参照することによって最もよく理解されるであろう。
【0025】
開示およびそれに付随する多くの利点のより完全な理解は、添付の図面と併せて検討する際に以下の詳細な説明を参照することにより、より良好になり、容易に得られるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【発明を実施するための形態】
【0027】
本明細書において、本明細書で言及された全ての出版物、特許出願、特許、およびその他の参考文献は、他に記載のない限り、完全に記載されているかのように、あらゆる目的でその全体が参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0028】
特に定義されていない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合は、定義を含む本明細書が支配する。
【0029】
特に明記されていない限り、商標は大文字で示されている。
【0030】
特に記載のない限り、全ての割合、部、比率等は重量による。
【0031】
量、濃度、またはその他の値若しくはパラメーターが範囲、または上限値と下限値のリストとして記載されている場合、それらは、範囲が個別に開示されているかどうかに関係なく、範囲の上限と下限の任意の対から形成される全ての範囲を具体的に開示していると理解されるべきである。数値の範囲が本明細書に記載されている場合、特に明記されていない限り、範囲は、その終点、並びに範囲内の全ての整数および分数を含むことが意図されている。この開示の範囲が、範囲を規定するときに記載される特定の値に限定されることは意図されていない。
【0032】
「約」という用語が使用される場合、それは、ある効果または結果がある許容範囲内で得られることを意味するために使用されており、そのような許容範囲を得る方法は当業者に知られている。「約」という用語が値または範囲の終点を説明する際に使用されている場合、その開示は、言及されている特定の値または終点を含むと理解されるべきである。
【0033】
本明細書で使用される場合、「含んでなる」、「含んでなり」、「包含する」、「包含し」、「有する」、「有し」またはそれらが変形した用語は、非排他的な包含を含むことが意図されている。例えば、要素のリストを含んでなるプロセス、方法、物品若しくは装置は、必ずしもそれらの要素だけに限定されるわけではなく、明示的には記載されていないか、またはそのようなプロセス、方法、物品若しくは装置に固有である他の要素を含むことができる。
【0034】
「からなる」という移行句は、クレームで特定されていない要素、工程または成分を除外し、通常付随する不純物を除き、記載されているもの以外の物質の包含に対してクレームをクローズする。「からなる」という句が、前文の直後ではなく、クレーム本文の文節に存在する場合、この句は、その文節に記載されている要素のみを限定し、その他の要素は、全体としてクレームから除外されない。
【0035】
「から本質的になる」という移行句は、クレームの範囲を、特定の材料または工程であって、クレームされた発明の基本的かつ新規な特性に実質的に影響しないものに限定する。「から本質的になる」のクレームは、「からなる」形式で記載されたクローズドクレームと「含む」形式で記載された完全オープンクレームとの中間を占める。本明細書で特定される任意の添加剤は、そのような添加剤に適した濃度で添加してよく、少量の不純物は、「から本質的になる」という用語によって組成物から除外されない。
【0036】
更に、逆のことが明記されていない限り、「または」および「および/または」は包含的であり、排他的ではない。例えば、条件AまたはB、或いはAおよび/またはBは、以下のいずれかを満たす:Aは正しい(または存在する)かつBは正しくない(または存在しない)、Aは正しくない(または存在しない)かつBは正しい(または存在する)、並びにAおよびBはともに正しい(または存在する)。
【0037】
本明細書の様々な要素および成分を説明するための「a」または「an」の使用は、単に便宜上のものであり、開示の一般的な意味を与えるためのものである。この記載は、1つまたは少なくとも1つを含むように理解されるべきであり、単数形は、そうでないことを意味することが明らかでない限り、複数形も含む。
【0038】
本明細書で使用される「主な部分」または「主に」という用語は、本明細書で特に定義されていない限り、参照材料の50%超を意味する。特定されていない場合、割合は(水素およびエチレンのような)分子を参照する場合はモル基準であり、(添加剤含有量のように)それ以外の場合は質量基準または重量基準である。
【0039】
本明細書で使用される「実質的な部分」または「実質的に」という用語は、特に定義がない限り、使用されている文脈において当業者により理解されるように、全てまたはほぼ全てまたは大部分を意味する。これは通常、工業規模または商業規模の状況で発生する100%からのある程度の妥当な変動を考慮することを目的としている。
【0040】
「減少した」または「低減した」という用語は、元々存在していたものから少なくなったことと同義である。例えば、流れから物質のかなりの部分を除去すると、物質が実質的に減少した物質減少流れが生じる。逆に、「強化された」または「増加した」という用語は、元々存在していたよりも増えたことと同義である。
【0041】
本明細書で使用される場合、「コポリマー」という用語は、2つ以上のコモノマーの共重合から生じる共重合単位を含むポリマーを指す。これに関連して、コポリマーは、その構成コモノマーまたはその構成コモノマーの量、例えば「エチレンと15重量%のコモノマーを含むコポリマー」または同様の説明を参照して本明細書に記載され得る。そのような説明は、コモノマーを共重合単位と称していない、コポリマーの従来の命名法、例えば国際純正・応用化学連合(IUPAC)の命名法が含まれていない、またはプロダクトバイプロセスの用語を使用していない、または別の理由で、非形式的と見なされ得る。しかし、本明細書で使用する場合、その構成コモノマーまたはその構成コモノマーの量に関するコポリマーの説明は、コポリマーが特定されているコモノマーの共重合単位を(特定されている場合は特定の量で)含むことを意味する。当然の結果として、限定された状況でそうであると明記されていない限り、コポリマーは、所定のコモノマーを所定の量で含有する反応混合物の生成物ではない。
【0042】
本明細書全体を通して、他に定義および説明されていない限り、関連する測定値を測定するために使用される技術用語および方法は、ASTM D885M - 94, Standard Test Methods for Tire Cords, Tire Cord Fabrics, and Industrial Filament Yarns Made From Man-made Organic-base Fibers [Metric] published February, 1995の説明に従う。
【0043】
便宜上、本発明の多くの要素は個別に説明され、オプションのリストが提供され得、数値は範囲内にあり得る;しかし、本開示の目的のために、それは、そのような別個の成分、リスト事項または範囲の任意の組み合わせの任意のクレームに対する、本開示の範囲または本開示のサポートについての制限と見なされるべきではない。特に明記しない限り、本開示で可能なあらゆる組み合わせは、全ての目的のために明示的に開示されていると見なされるべきである。
【0044】
本明細書に記載されているものと同様または同等の方法および材料を本開示の実施または試験に使用することができ、適切な方法および材料は本明細書に記載されている。従って、本明細書の材料、方法、および例は、例示のためだけのものであり、具体的に述べられている場合を除いて、限定することは意図されていない。
【0045】
背景技術の段落で述べたように、編組ストランドの外側シースとそのシース内のコア成分とを有するコード構造は、従来から知られており、一般的なロープから繊維糸に至る様々な用途に適用されている。しかし、細いコードおよび極細のコードを必要とする特殊な用途のために、高い強度および安定性を有する製品を提供しながら最小直径のコードを実現することは、継続的な研究の対象である。前述したように、中空編組構造の強度を高めると、直径は大幅に増大する。
【0046】
典型的には、シースの機能は、コア成分を保護することであり、コアが引張荷重を支持し、コードに強度を提供する必要がある。
【0047】
しかし、高い強度および安定性に加えて、例えば1mm未満の小さな外径が要求される用途において、本発明者らは、コードの全成分によって引張力応力が分配される引張荷重管理をもたらし得る設計を調べ、そして、コードに印加される引張応力に寄与するおよび/またはそれを比例的に支持するシース構造を有することにより、全態様において直径全体が強度および安定性に寄与する(それにより、シースがコア部材の保護層として主に作用する従来のコアシースコードと比べてより高い強度および寸法安定性を有するコードがもたらされる)コードが提供されるであろうことを検討した。
【0048】
本発明者らは、コアシースが特定の構造配置であると、コード全体の構造がコードの通常の形状の歪みを好ましくは伴わずに引張力に調和して応答するよう、引張力がコア成分とシース成分に間により均一に分配される、高弾性繊維を含む細い直径のコードが得られ得ることを見出した。そのような構造を有することにより、同じ直径の従来のコードより高い安定性および強度を有し、特定の直径を有するコードを得ることができるはずである。細いまたは極細の中空編組コードとは異なり、発明者らは、コア構造を供給することにより、前述のシース編組における繊維カウントの増加と比べて、直径への影響を最小限に抑えながら繊維カウントを増加させることにより、強度の漸増的増大が可能となるであろうと推論した。発明者らは、1×100d増分がシース編組よりもコア要素に徐々に加えられるならば、例えば100デニール繊維LCPを用いて、強度増大のより微細な増分が得られ得ると推論した。それに応じて、編組および/または撚りを有するコア成分、並びにシース編組角は、コアとシースとの間に均等に応力負荷を分配するために適合され得る。高引張強度および低クリープの組み合わせを有し、5mm以下の直径を有するコードが必要とされる用途については、引張荷重が管理されてコアとシースに比例的に分配される設計が有利であろう。
【0049】
従って、第一の態様では、本発明は、
外表面、内表面、および内表面により規定され体積を有する中央中空部分を有するストランドの管状編組シース;並びに
管状編組シースの中央中空部分内のコア
を含んでなるコードであって、
管状編組シースは、約8cN/dtex以上の引張強度を各々が有するストランドを含んでなり;
コードが弛緩状態のとき、管状編組シースは、約20μm~約5mmの外径および中央中空部分の弛緩体積を有する実質的に円筒の形状を有しており、コアは、管状編組シースの中央中空部分の弛緩体積を満たしておらず;かつ
コードが長手方向に張力をかけられた状態のとき、管状編組シースの中央中空部分の少なくとも一部の張力をかけられた状態における体積が弛緩体積より小さくなるように、管状編組シースは長手方向張力下で伸長し;かつ
張力をかけられた状態における体積の管状編組シースの内表面は、コアと管状編組シースの間のずれが減少するように、コア表面に接触してコア表面を締め付ける、
コードを提供する。
【0050】
コードの一態様では、弛緩状態にあるとき、コードのシース成分とコア成分との関係は式(I):
c/10 ≦ p/t ≦ c/2 (I)
[式中、cはシースの編組キャリアの数であり、pはシースにおける1メートルあたりのピックカウントであり、tは1メートルあたりの回転数で表したコアのフィラメントの撚りレベルである]
に従う。
【0051】
好ましくは、シースの線密度はコアの線密度に実質的に一致する。
【0052】
コア要素についての管状編組は従来から知られており、管状編組ユニットは市販されている。単純な管状編組シースは、ストランドの各群が反対方向に配置されたストランドの群の上および下を交互に通過するよう、材料の複数のストランドを斜めに機械的に交差させることによりコア成分の上に形成され得る。編組構造の一般図を
図1に示す。この図では、長手方向の編組軸は、コードの方向に平行に走り、所定の編組ストランドに平行な方向の線は、編組構造の編組角を規定する。
【0053】
編組角に加えて、編組は、長手方向の編組軸に沿って単位長さあたりに見られるステッチまたはS単位の数として定義されるピック数により特徴付けられ得る。また、編組の長手方向に関するピックカウントに加えて、編組は、編組軸に垂直な線に沿った単位寸法あたりの反復単位数を規定するライン数により特徴付けられ得る。編組角、ピック数およびライン数は、顕微鏡で編組を観察することにより測定できる。
【0054】
実際の編組パターンは、交絡のパターンに応じて変化し得る。一般的なパターンには、平織り、綾織り、パナマ織りが含まれ、これらは当業者に知られている。更に、様々な編組構造が同じ織りを並べたストランドの数により分類され得る。一般的な編組パターンを、1×1パターン(
図2)および2×1パターン(
図3)として例示するが、これらに限定されるものではない。
【0055】
本発明の態様を通して、中央コアのストランドおよび管状編組シースのストランドの撚り、編組パターンおよびレイ角度は、コアとシースの間の引張荷重のバランスをとるよう設計される。
【0056】
編組機器は市販されており、異なる性能のユニットを得ることができる。本明細書に記載する態様では、編組はより細いデニールの編組のために設計された、STEEGER(Steeger USA、米国サウスカロライナ州インマン)および/またはHERZOG(Herzog GmbH、ドイツ国オルデンブルク)の編組機器を用いて製造してよい。しかし、機器はこれらに限定されない。シースコア設計に必須の事項は、編組機器が中央コアの周囲を編組する能力を備えていることである。STEEGERは、シースコア性能を備える機器として当業者によく知られている。本明細書に記載の態様に応じて、編組を製造するためのキャリアの最小数は3である。キャリアの上限は、限定されず、編組パラメーターおよび設計に応じて決めればよい。
【0057】
本発明の特定の態様では、コア成分表面は、管状編組シースの適用前にコロナ処理またはプラズマ処理されてよい。そのような処理は、長手方向に張力をかけられた状態のときにコア成分と管状編組シースの内表面との間の接触表面相互作用を高め、更には締め付け効果を高め、コア成分とシースの間の負荷分散の均等化を高める、表面の不整または変更をもたらし得る。
【0058】
これらの態様の本発明は、開示されている要素が存在する限り、既知のパターンおよび特性のいずれかの適用により得ることができる。
【0059】
本発明の態様では、管状編組シースが長手方向張力下になく弛緩状態にあるとき、管状編組シースの中央中空部分の体積がコア成分により完全に占められないように、管状編組シースは、コア成分について形成され得る。弛緩状態では、編組は外径、編組角およびピックカウントにより少なくとも規定され得る。第一の態様では、編組(従ってコード)の外径は約20μm以上、かつ約5mm以下または約3mm以下または約1mm以下である。
【0060】
管状編組シースは偶数のストランドで調製され得、本発明のコード構造は1インチ(2.54cm)あたり4以上、かつ24以下または18以下または12以下のストランド(エンド)を有してよい。
【0061】
各ストランドの引張強度は、少なくとも約8cN/dtexまたは少なくとも約15cN/dtexまたは少なくとも約22cN/dtex、および典型的には約30cN/dtex以下であってよい。より高い引張強度のストランドは、ストランドが編組デバイスで扱うのに十分な柔軟性を持っている限り使用してよい。ストランド引張強度が約8cN/dtex未満であると、後続の段落で説明するように、ストランドは、長手方向に張力をかけられた状態に付した際にコアを締め付けるのに十分な強度を有さない場合がある。
【0062】
上述の通り、コードが弛緩状態のとき、コア部材により占有されておらず、管状編組シース中空部分に存在する空き体積が存在する。弛緩状態では、管状編組シースの編組角は約5°~約85°または約5°~約90°であってよく、または約5°~約95°でさえあり得る。しかし、長手方向張力をコードに印加すると、編組角が減少し、ピックカウントが低減するように、印加された張力は長手方向に張力をかけられた状態をもたらし、編組構造は伸長される。更に、この伸長の故に、管状編組シース(外側および内側)の直径は、管状編組シースの内表面の少なくとも一部がコア部材に接触してコア部材を締め付けるように収縮する。
【0063】
長手方向の張力下に得られた締め付け構造の効果、並びにコアおよびシースの適当な設計により達成された負荷バランスの故に、引張荷重管理は、コア成分および管状編組シースが付随的に機能してコードに引張強度を付与することをもたらす。
【0064】
当業者に理解されるように、第一の態様により達成される締め付け効果および引張強度は、弛緩状態における、編組の編組パターン、ストランドカウント、ストランド構造、ストランド撚り、編組角およびピックカウント、並びにコア構造および撚りの選択により調整され得る。これらの変更および編組技術の当業者によく知られている他の変更の影響は、日常的な実験および/または構造分析によって測定することができる。
【0065】
管状編組シースのストランド成分は、撚り若しくは無撚りモノフィラメント構造、撚り若しくは無撚りマルチフィラメント構造、または撚り若しくは無撚りモノフィラメントと撚り若しくは無撚りマルチフィラメントとの組み合わせであってよい。モノフィラメントは撚り合わされていてよく、マルチフィラメント構造は編組および/または撚り合わせであってよい。撚り構造が存在する幾つかの態様では、撚り構造は1600tpmまでの撚りカウントを含んでよい。
【0066】
個々のフィラメントは、約0.2デニール以上または約0.4デニール以上または約0.6デニール以上、約10デニール以下または約8.0デニール以下または約6.0デニール以下の重量で変化してよい。選択したフィラメントデニールがフィラメントの化学組成とコードの最終用途に応じて変化することを、当業者は理解する。
【0067】
これらの態様では、シース編組のストランドは、同一の寸法、構造および組成であってよく、またはストランドは、寸法、構造および組成のいずれかが異なっていてもよい。例えば、コードが長手方向に張力をかけられた状態であるときにコアの強いグリップまたは締め付けが得られるように、シースは異なったデニール、編組または撚りのストランドで構成されていてよい。更に、編組は、異なった化学組成のストランドを含んでよい。そのような構造は、当業者により理解される実験的設計ツールによりコードの強度およびトルク特性を更に増大させるために設計され得る。
【0068】
管状編組シースのストランド(またはフィラメント)の化学組成は、高引張強度、高粘靭性および低クリープの組み合わせをもたらすことが知られている高性能ポリマーのいずれかであってよく、液晶ポリエステルフィラメント、アラミドフィラメント、コポリマーアラミドフィラメント、ポリエーテルエーテルケトンフィラメント、ポリ(p-フェニレンベンゾビスオキサゾール)(PBO)フィラメント、超高分子量ポリエチレンフィラメント、高弾性ポリエチレンフィラメント、ポリプロピレンフィラメント、ポリエチレンテレフタレートフィラメント、ポリアミドフィラメント、高強度ポリビニルアルコールフィラメント、ポリヒドロキノンジイミダゾピリジン(PIPD)フィラメントおよびそれらの組み合わせからなる群から選択されるフィラメントから選択され得るが、これらに限定されない。
【0069】
より具体的には、ストランドは好ましくは、例えば、液晶ポリエステル繊維、アラミド繊維、PBO繊維、超高分子量ポリエチレン繊維および高強度ポリビニルアルコール繊維からなる群から選択される少なくとも1つ繊維、より好ましくは液晶ポリエステル繊維およびアラミド繊維からなる群から選択される少なくとも1つ繊維、特に好ましくは液晶ポリエステル繊維を含んでなる。
【0070】
本発明の一態様では、液晶ポリエステル繊維は、液晶ポリエステル樹脂を溶融紡糸することにより得ることができる。この紡績繊維は、機械的性質を高めるために更に熱処理されてもよい。液晶ポリエステルは、例えば芳香族ジオール、芳香族ジカルボン酸または芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する反復重合単位で構成されている。液晶ポリエステルは任意に、芳香族ジアミン、芳香族ヒドロキシアミンまたは芳香族アミノカルボン酸に由来する重合単位を更に含み得る。
【0071】
例示的な重合単位を表1に示す。
【0072】
【0073】
これらの式における置換基Yの数は、環構造中の置換可能な位置の最大数と等しく、各Yは独立して、水素原子、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、アルキル基(例えば、1~4個の炭素原子を有するアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基またはt-ブチル基)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基等)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基等)、アラルキル基[ベンジル基(フェニルメチル基)、フェネチル基(フェニルエチル基)等]、アリールオキシ基(例えばフェノキシ基等)またはアラルキルオキシ基(例えばベンジルオキシ基等)を表す。
【0074】
より好ましい重合単位は、表2、表3および表4に示す構造であってよい。
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】
式中の重合単位が複数の構造を表し得る単位であるとき、2以上の単位は、ポリマーを構成する重合単位として組み合わせて使用され得る。
【0079】
表2、3および4の重合単位において、nは1または2の整数であり、各単位n=1、n=2は単独でまたは組み合わせて存在してよく;Y1およびY2はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、アルキル基(例えば、1~4個の炭素原子を有するアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基またはt-ブチル基)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基等)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基等)、アラルキル基(ベンジル基(フェニルメチル基)、フェネチル基(フェニルエチル基)等)、アリールオキシ基(例えばフェノキシ基等)またはアラルキルオキシ基(例えばベンジルオキシ基等)であってよい。これらの基のうち、Yは、好ましくは、水素原子、塩素原子、臭素原子またはメチル基である。
【0080】
更に、表3の(14)行におけるZは、下記式で示される二価の基を含んでよい。
【0081】
液晶ポリエステルは、好ましくは、重合単位としてのナフタレン骨格を含んでなる組み合わせであってよい。特に好ましくは、液晶ポリエステルは、ヒドロキシ安息香酸に由来する重合単位(A)およびヒドロキシナフトエ酸に由来する重合単位(B)の両方を含んでなる。例えば、単位(A)は式(A)で示されてよく、単位(B)は式(B)で示されてよい。溶融成形性向上の観点から、単位(B)に対する単位(A)の比は、9/1~1/1、好ましくは7/1~1/1、より好ましくは5/1~1/1の範囲であってよい。
【0082】
【0083】
重合単位(A)および重合単位(B)の和は、総重合単位に基づいて、例えば約65mol%以上または約70mol%以上または約80mol%以上であってよい。ポリマー中に約4~約45mol%の重合単位(B)を含んでなる液晶ポリエステルが特に好ましい場合がある。
【0084】
液晶ポリエステルの融点は、約250℃以上または約260℃以上、約360℃以下または約320℃以下の範囲であってよい。本明細書において採用した融点は、JIS K7121試験法に準拠し、示差走査熱量計(DSC:METTLER Co.製のTA3000)により測定および観察される主吸収ピーク温度である。具体的には、上記DSC装置において10~20mgの試料を使用し、試料をアルミニウム皿に封入した後、キャリアガスとしての窒素を100cc/分の流量で流し、20℃/分の速度で加熱した際の吸熱ピークを測定する。ポリマーの種類に依存して、DSC測定の最初の実行で明確なピークが現れない場合は、温度を、50℃/分の昇温速度(または加熱速度)で、予想される流動温度よりも50℃高い温度に上昇させ、次いで、同じ温度で3分間完全に溶解させ、更に、-80℃/分の温度低下速度(または冷却速度)で50℃に冷却する。その後、吸熱ピークを、20℃/分の昇温速度で測定してよい。
【0085】
市販のLCPは、下記を包含する:クラレ株式会社製VECTRAN(登録商標)HT BLACK、クラレ株式会社製VECTRAN(登録商標)HT、東レ株式会社製SIVERAS(登録商標)、ZEUS製モノフィラメント、およびKB SEIREN, LTD製ZXION(登録商標)。
【0086】
液晶ポリエステルは、単独でまたは組み合わせて使用してよい。
【0087】
本発明において、「アラミド繊維」は、芳香族(ベンゼン)環で構成された分子骨格を含んでなり、高い耐熱性および高強度を有するポリアミド繊維を意味する。
【0088】
アラミド繊維は、その化学構造に応じてパラ-アラミド繊維およびメタ-アラミド繊維に分類され得る。
【0089】
「アラミド繊維」は、好ましくはパラ-アラミド繊維を含んでなる。
【0090】
市販のアラミド繊維の例は、以下を包含する:パラ-アラミド繊維、例えば、E.I. du Pont de Nemours and Company製KEVLAR(登録商標)、Kolon Industries Inc.製HERACRON(登録商標)、並びに帝人株式会社製のTWARON(登録商標)およびTECHNORA(登録商標);並びにメタ-アラミド繊維、例えば、E.I. du Pont de Nemours and Company製NOMEX(登録商標)および帝人株式会社製CONEX(登録商標)。
【0091】
これらのアラミド繊維は、単独でまたは組み合わせて使用してよい。
【0092】
ポリヒドロキノンジイミダゾピリジン(PIPD)フィラメント繊維は、下記反復単位:
で示されるポリマーに基づく。
【0093】
この材料は、従来M5と称され、DuPontから市販されている。
【0094】
ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(ポリ(p-フェニレン-2,6-ベンゾビスオキサゾール)(PBO)繊維は、東洋紡株式会社製のZYLON(登録商標)ASおよびZYLON(登録商標)HMとして市販されている。
【0095】
本実施態様に従った超高分子量ポリエチレン繊維は、約5.0dL/g以上または約7.0dL/g以上または約10dL/g以上、約30dL/g以下または約28dL/g以下または約24dL/g以下の範囲の固有粘度を有してよい。「超高分子量ポリエチレン繊維」の固有粘度が約5.0dL/g~約30dL/gの範囲にあると、良好な寸法安定性を有する繊維が得られる。
【0096】
ナイロン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、およびポリエチレンテレフタレートのような特定のポリマーについて、希釈液の粘度測定手順を記載するASTM基準(例えば、Test Methods D789、D1243、D1601、およびD4603、並びにPractice D3591)を使用できる。一般的に、ポリマーを希薄溶液に溶解し、対照試料に対し、キャピラリー管を介した落下時間を特定の温度で測定する。
【0097】
「超高分子量ポリエチレン繊維」の重量平均分子量は、約700,000以上または約800,000以上または約900,000以上、約8,000,000以下または約7,000,000以下または約6,000,000以下であってよい。「超高分子量ポリエチレン繊維」の重量平均分子量が約700,000~約8,000,000の範囲であると、高い引張強度および弾性率を得ることができる。
【0098】
通常のGPC法により「超高分子量ポリエチレン繊維」の重量平均分子量を容易に測定することはできない。「Polymer Handbook Fourth Edition, Chapter 4 (John Wiley, published 1999)」に記載されている下記式:
重量平均分子量=5.365×104×(固有粘度)1.37
に従って、上記固有粘度の値に基づき重量平均分子量を求めることができる。
【0099】
「超高分子量ポリエチレン繊維」の反復単位は、実質的にエチレンであることが好ましい。しかし、エチレンのホモポリマーに加えて、エチレンと少量の他のモノマー(例えば、α-オレフィン、アクリル酸およびその誘導体、メタクリル酸およびその誘導体、並びにビニルシランおよびその誘導体)とのコポリマーを使用することもできる。ポリエチレン繊維は、部分架橋構造を有してよい。ポリエチレン繊維は、高密度ポリエチレンと超高分子量ポリエチレンとのブレンド、低密度ポリエチレンと超高分子量ポリエチレンとのブレンド、または高密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンと超高分子量ポリエチレンとのブレンドであってもよい。ポリエチレン繊維は、異なった重量平均分子量を有する2以上の超高分子量ポリエチレンの組み合わせ、または異なった分子量分布を有する2以上のポリエチレンであってよい。
【0100】
市販の「超高分子量ポリエチレン繊維」は、以下を包含する:東洋紡株式会社製のDYNEEMA(登録商標)SK60、DYNEEMA(登録商標)SK、IZANAS(登録商標)SK60およびIZANAS(登録商標)SK71;並びにHoneywell, Ltd製のSPECTRA FIBER 900(登録商標)およびSPECTRA FIBER 1000。
【0101】
これらの「超高分子量ポリエチレン繊維」は、単独でまたは組み合わせて使用できる。
【0102】
コア成分は、撚り若しくは無撚りモノフィラメント、または撚り若しくは無撚りマルチフィラメント、または撚り若しくは無撚りモノフィラメントと撚り若しくは無撚りマルチフィラメントとの組み合わせであってよい。コア成分は編組構造であってよい。コア組成は、上述した高性能ポリマーフィラメントからなっていてよく、液晶ポリエステルフィラメント、アラミドフィラメント、コポリマーアラミドフィラメント、ポリエーテルエーテルケトンフィラメント、ポリ(p-フェニレンベンゾビスオキサゾール)フィラメント、超高分子量ポリエチレンフィラメント、高弾性ポリエチレンフィラメント、ポリプロピレンフィラメント、ポリエチレンテレフタレートフィラメント、ポリアミドフィラメント、高強度ポリビニルアルコールフィラメントおよびそれらの組み合わせからなる群から選択されるフィラメントであってよい。
【0103】
コア成分のフィラメントの組成は、コードの使用目的に関連する特定の性質のために選択すればよく、構成すればよい。
【0104】
コアおよび管状編組シースの負荷分散への寄与を変更および均等化するために、選択したコア部材のポリマー組成とともに、モノフィラメント若しくはマルチフィラメントであるかどうかに拘わらずコア部材に適用された織りまたは編組および/または撚りを、上記管状編組シースの調整と組み合わせて調整し得ることは、当業者により理解される。このようにして、コードの全体的な引張強度および寸法安定性は、コードの直径を維持または低減させながら増大させることができる。
【0105】
本発明の特定の一態様では、コードはLCPコア成分およびLCP管状編組シースを含んでよい。コアの構造および管状編組シースの構造は、上記変形の範囲内で、および当業者に知られている他の変形に従って変化し得る。
【0106】
特定の一態様では、上記態様に記載のコードは引張部材として使用され得、引張部材の外径は約0.04mm~約0.7mmである。別の態様では、引張部材は、約0.04mm~約0.6mmまたは約0.04mm~0.5mmの外径を有してよい。例示的な引張部材は、医療用の糸または縫合糸である。
【0107】
別の態様では、コードの性能および特性は、当業者に従来から知られている仕上げ組成物の適用によって変更および管理され得る。例えば、コアおよび/または管状編組シースの少なくとも1つは、架橋シリコーンポリマーまたは未架橋シリコーンポリマーまたは長鎖脂肪酸の被覆を有する、フィラメント、繊維またはストランドを含んでなる。例示的な長鎖脂肪酸は、ステアリン酸である。架橋シリコーンポリマーの高性能ポリエチレンロープへの適用は、US 8881496 B2に記載されている。
【0108】
架橋シリコーンポリマーの適用、特に管状編組シースおよび/またはコアのストランドに含まれるフィラメントおよび/またはマルチフィラメントへの適用により、本発明の引張強度管理されたコード構造に有利な性能向上がもたらされ得る。
【0109】
一般的に、シリコーン樹脂を調製するために使用できる3つの架橋反応方法が存在する:1)過酸化物フリーラジカルの生成下で重合の熱活性化が生じる過酸化物硬化;2)熱または湿気の影響下におけるスズ塩またはチタンアルコキシド触媒の存在下での縮合;および3)温度または光で開始され得、白金またはロジウム錯体により触媒される付加反応化学。
【0110】
これらの系のそれぞれは、例えばDow Comingから市販されており、当業者に知られている。
【0111】
コードが長手方向応力下にあるとき、締め付け効果が得られる前に摩擦相互作用を克服する必要があり得る非被覆デバイスと比べて編組がより効果的に応答するように、架橋シリコーン被覆は、ストランドの耐湿性を高め得、かつストランドの潤滑性も高め得る。
【0112】
被覆組成物は、当業者に知られている表面塗布技術により適用してよい。これらの表面適用技術には、仕上剤ガイドを介した仕上剤溶液の簡単なポンプ輸送が含まれ得、この技術では、繊維が仕上剤と接触し、毛管作用によって繊維束に吸い上げられる。或いは、他の技術には、噴霧、ロール塗布、または浸漬被覆のような浸漬塗布技術が含まれ得る。適用した仕上剤溶液を含む繊維の後続処理には、仕上剤の固定および/または仕上剤組成物の架橋度の制御を目的としたローラーを用いた処理が含まれ得る。ローラーは加熱されていても加熱されていなくてもよい。次いで、架橋性シリコーンポリマーの架橋をもたらすために被覆組成物を硬化させてよい。熱硬化を用いる場合、その温度は、約20℃以上、または約50℃以上、または約120℃以上、約200℃以下、または約170℃以下、または約150℃以下であってよい。硬化温度は、実際に用いるフィラメント、繊維またはストランドおよび架橋系の熱安定性により決定すればよい。
【0113】
得られる架橋度を制御して、異なる程度の柔軟性または他の表面特性をフィラメント、繊維またはストランドに付与することができる。架橋度は、架橋系の供給業者によって記載され、当業者に知られている方法によって制御することができる。
【0114】
架橋度は、モノマーを溶解するが架橋ポリマーを溶解しない溶媒で被覆を抽出する、US 8881496 B2に記載された方法によって測定してもよい。架橋度は、抽出前後の重量の差から求めることができる。
【0115】
架橋度は、被覆の総重量に基づいて、少なくとも約20%、または少なくとも約30%、または少なくとも約50%であり得る。最大架橋度は約100%であってよい。
【0116】
架橋被覆の重量は、フィラメント、繊維またはストランドの総重量に基づいて、約1重量%以上、かつ約20重量%以下、または約10重量%以下、または約5重量%以下であってよい。
【0117】
上記説明は、当業者が本発明を製造および使用できるようにするために提示されており、特定の用途およびその要件に関連して提供されている。好ましい態様への様々な変更は当業者には容易に明らかであり、本明細書で定義される一般的な原理は、本発明の精神および範囲から逸脱することなく他の態様および用途に適用され得る。従って、本発明は、示されている態様に限定されることを意図するものではなく、本明細書に開示される原理および特徴と一致する最も広い範囲が与えられるべきである。これに関して、本発明における特定の態様は、広く考えると、本発明の全ての利点を示さないことがある。
【実施例】
【0118】
下記実施例において、シースストランド(糸)は全て、Kuraray America Inc.(テキサス州ヒューストン)から入手可能な液晶ポリエステル(LCP)であった。用いたVectran(登録商標)HTグレードは、100デニールまたは200デニールであった。コアは、コアが存在しない参考例6以外では、Kuraray製の200、400または1500デニールのLCP糸を含み、実施例10および11ではHoneywell Ltd.製の1300デニールの高分子量ポリエチレン(HMPE)Spectra(登録商標)糸を含んでいた。実施例12では、Dow DuPont(デラウェア州ウィルミントン)製のパラアラミド(AP)Kevlar(登録商標)49糸であった。1500デニールLCP糸は1550d/300f Vectran(登録商標)HT 150 766-1 14Aであった。実施例のシース成分およびコア成分の構造を表5にまとめる。全実施例において編組キャリアの数は4であった。
【0119】
【0120】
tpi=撚りの1インチ(2.54cm)あたりの回転数
ppi=シース糸のカウント(単位:1インチ(2.54cm)あたりのピック数)
【0121】
表6に、コアの推定直径、シースの単独ストランド直径、および最終コードの外径をまとめる。全ての寸法はマイクロメートル単位で示す。
【0122】