IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピアの特許一覧 ▶ ジーカ テクノロジー アクチェンゲゼルシャフトの特許一覧

特許7362660サッシ異形材内のガラスパケットの接着接続及び補強
<>
  • 特許-サッシ異形材内のガラスパケットの接着接続及び補強 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-06
(45)【発行日】2023-10-17
(54)【発明の名称】サッシ異形材内のガラスパケットの接着接続及び補強
(51)【国際特許分類】
   E06B 3/22 20060101AFI20231010BHJP
   C09J 4/02 20060101ALI20231010BHJP
   E06B 3/24 20060101ALI20231010BHJP
   E06B 3/54 20060101ALI20231010BHJP
【FI】
E06B3/22
C09J4/02
E06B3/24
E06B3/54 Z
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020562179
(86)(22)【出願日】2019-08-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-25
(86)【国際出願番号】 EP2019071038
(87)【国際公開番号】W WO2020030601
(87)【国際公開日】2020-02-13
【審査請求日】2022-07-25
(31)【優先権主張番号】18188303.4
(32)【優先日】2018-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】511002984
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(73)【特許権者】
【識別番号】506416400
【氏名又は名称】シーカ テクノロジー アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100116975
【弁理士】
【氏名又は名称】礒山 朝美
(72)【発明者】
【氏名】カイ ブロックミュラー
(72)【発明者】
【氏名】マティーアス ディック
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102014014658(DE,A1)
【文献】国際公開第2014/026756(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0000232(US,A1)
【文献】特表2004-522847(JP,A)
【文献】西独国特許出願公開第3543524(DE,A1)
【文献】特表2011-511191(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 1/00-11/08
C09J 1/00- 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のガラス板を含むガラスパケット(2)を有するサッシ異形材であって、
ポリマーから構成され、かつ本質的に前記サッシ異形材上の前記ガラスパケット(2)の接触エリア全体の下に取り付けられる補強要素(3)を有しており、
前記補強要素(3)と前記ガラスパケット(2)との間の物質対物質接合は、少なくとも2つの接着要素(4)によって提供され、かつ
前記接着要素(4)は、23℃及び50%相対大気湿度で、少なくとも100N/mmのISO37に準拠した弾性率を有することを特徴とする、
サッシ異形材。
【請求項2】
前記補強要素(3)は、前記補強要素の一部が前記ガラスパケット(2)の表側に配置され、かつ前記補強要素の別の部分が前記ガラスパケット(2)の下側に配置されるように角度を付けられていることを特徴とする、請求項1に記載のサッシ異形材。
【請求項3】
前記補強要素(3)は、前記接着要素に接合された側において、特に金属又はPVCから構成された接着促進材料でコーティングされていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のサッシ異形材。
【請求項4】
前記ガラスパケット(2)と前記補強要素(3)との間で後側の縁の領域に配置される接着要素(4)を有することを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のサッシ異形材。
【請求項5】
前記ガラスパケット(2)と前記補強要素(3)との間で表側の縁の領域において、好ましくは前記ガラスパケットの前記表側に配置される接着要素(4)を有することを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のサッシ異形材。
【請求項6】
前記補強要素(3)は、熱可塑性ポリマー、好ましくはポリエステル、特に好ましくはポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート及びそれらの混合物を含むことを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のサッシ異形材。
【請求項7】
前記補強要素(3)は、補強のための繊維、好ましくはガラス繊維をさらに含有することを特徴とする、請求項6に記載のサッシ異形材。
【請求項8】
前記補強要素(3)は、10~60重量%、好ましくは20~60重量%、特に好ましくは40~55重量%の割合の繊維を含有することを特徴とする、請求項7に記載のサッシ異形材。
【請求項9】
前記補強要素(3)中の前記熱可塑性ポリマーは、好ましくは、前記熱可塑性ポリマーと異なるポリマー、より好ましくはPVCでできた外層を有することを特徴とする、請求項6~8のいずれか一項に記載のサッシ異形材。
【請求項10】
前記接着要素(4)は、フリーラジカルで硬化可能な二成分(メタ)アクリレート接着組成物に基づくことを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載のサッシ異形材。
【請求項11】
前記接着要素(4)は、23℃及び50%相対大気湿度で、少なくとも160N/mm、より好ましくは少なくとも200N/mm及び/又は2000N/mm以下、好ましくは1500N/mm以下の、ISO37に準拠した弾性率を有することを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載のサッシ異形材。
【請求項12】
前記ガラスパケット(2)は、少なくとも3つのガラス層(5)を有することを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載のサッシ異形材。
【請求項13】
前記補強要素(3)は、前記接着要素を介して前記ガラスパケット(2)に直接接合し、かつ任意選択的に、前記ガラスパケット(2)の方向において前記補強要素(3)に隣接する中空空間があることを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載のサッシ異形材。
【請求項14】
以下の工程を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載のサッシ異形材を製造するための方法:
- 中空異形材を提供すること、
- 前記中空異形材に補強要素(3)を取り付けること、
- 前記補強要素(3)に複数の接着要素(4)を取り付けること、ここで、前記接着要素(4)は、23℃及び50%相対大気湿度で、少なくとも100N/mmのISO37に準拠した弾性率を有する、及び
- 前記複数の接着要素(4)をガラスパケット(2)と接触させて、前記接着要素(4)を介した前記補強要素(3)と前記ガラスパケット(2)との間の物質対物質接合を形成すること。
【請求項15】
請求項1~13のいずれか一項に記載のサッシ異形材の曲げ強度を改善するための、接着要素(4)と補強要素(3)との組み合わせの使用であって、
ガラスパケット(2)は、前記サッシ異形材に配置された前記補強要素(3)に前記接着要素(4)を介して物質対物質結合によって接合しており、かつ前記接着要素(4)は、23℃及び50%相対大気湿度で、少なくとも100N/mmのISO37に準拠した弾性率を有する、
使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスパケットを有するサッシ異形材であって、ポリマーから構成され、且つ本質的にガラスパケットの接触エリア全体の下に取り付けられる補強要素を有し、及び補強要素とガラスパケットとの間の物質対物質接合は、接着要素によって提供される、サッシ異形材に関する。本発明は、そのようなサッシ異形材を製造するための方法と、サッシ異形材の曲げ強度を改善するための、接着要素と補強要素との組み合わせの使用とにさらに関する。
【背景技術】
【0002】
サッシ異形材、特に押出し熱可塑性ポリマーから作られたマルチチャンバ中空異形材の形態の異形材は、窓又はドア枠異形材としてよく使用される。最新の窓システムでは、しばらくの間、断熱特性の所望の改善のためにより複数のグレージングに向かう傾向があり、今日では3重グレージングが標準であり、4重グレージングも珍しくない。結果として、そのような窓及びドアは、複数のガラス層のために比較的重く、且つ幅がある。
【0003】
しかしながら、軽量化及び断熱効果の向上を目的とした中空異形材構造により、このような異形材は、曲げ力の影響を受けやすくなっており、その結果、異形材は、歪んだり損傷したりする可能性がある。
【0004】
断熱効果を著しく損なうことなく、このような中空異形材の曲げ強度を向上させるために、国際公開第2009/098068A1号パンフレットにおいて、外側異形材(すなわちファサードに接合されている異形材の部分)及び内側異形材(すなわちガラスに接合されている異形材の部分)において、中空異形材に垂直に(すなわち取り付けられた状態において視認可能な前及び後側に平行に)配置された補強要素を設けることが提案されている。
【0005】
複数のグレージング、特に3重又は4重のグレージングの場合、特定の問題は、上から中空異形材に作用し、中空異形材の垂直変形につながる可能性があるガラスパケットの重さである。この問題は、国際公開第2009/098068A1号パンフレットに記載されている補強要素によって完全に満足のいくように解決されたわけではない。
【0006】
独国特許出願公開第102014014658号明細書は、ガラスパケットと、その下に取り付けられた補強要素とを含む窓の補強異形材を開示している。補強要素は、接着ストリップによってガラスパケットに接合される。
【0007】
独国特許出願公開第3543524A1号明細書は、ガラスパケットと、その下に取り付けられ、シリコーン又はブチル接着剤ボンディングによってガラスパケットに固定されたガラスブロックフレームとを有するサッシ異形材を開示している。ここで、シリコーン接着剤によるボンディングが部屋側のシールを形成し、ブチル接着剤によるボンディングが天候側のシールを提供する。このような接着剤は、一般に、比較的柔らかく、10MPa未満の弾性率を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の目的は、既知のシステムと比較して、外力の作用下で曲げ剛性が改善されたドア及び窓システムのためのサッシ異形材を提案することであった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の態様によれば、本発明は、複数のガラス板を含むガラスパケットを有するサッシ異形材であって、
ポリマーから構成され、かつ本質的にサッシ異形材上のガラスパケットの接触エリア全体の下に取り付けられる補強要素を有しており、
補強要素とガラスパケットとの間の物質対物質接合は、少なくとも2つの接着要素によって提供され、かつ
接着要素は、23℃及び50%相対大気湿度で、少なくとも100N/mmのISO37に準拠した弾性率を有することを特徴とする、
サッシ異形材を提供する。
【0010】
本発明に関連して、「ガラスパケット」は、互いに重ねて配置され、且つスペーサによって互いに分離することができる複数のガラス板である。ガラスパケットにおいて、ガラスパケット内の1枚のガラス板の、別のガラス板に対する水平の動きが不可能であるように、ガラス板は、重ねた状態で一般に固定される。
【0011】
本発明に関連して、「サッシ異形材」は、ガラスパケットと接触している異形材の部分である。ここで、「サッシ異形材」という用語は、ガラスパケットを取り囲む異形材全体だけでなく、その一部、例えば異形材の上部又は下部又は側部も包含する。
【0012】
接触エリアは、本発明の目的のために、ガラスパケットがその広がり方向(すなわちその厚さ方向ではない)においてサッシ異形材と接触している領域のみを指定する。
【0013】
本発明の目的のために、「本質的に完全に」は、サッシ異形材の補強要素がサッシ異形材のガラスパケットの接触エリアの少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、さらにより好ましくは少なくとも90%を覆うことを意味する。ここで、ガラスパケットは、前側又は後側において突出できるため、この領域においてガラスパケットとサッシ異形材との間に補強要素が配置されない。しかしながら、補強要素が異形材の端部にないこと、又は補強要素が不連続であり、補強要素の個々のセクション間にギャップがあること、又は補強要素がガラスパケットとサッシ異形材との間に中空の空間を形成する穴を有することも可能である。
【0014】
本発明の目的のために、補強要素がガラスパケットの接触エリア全体の領域に取り付けられる場合に好ましい。さらに、補強要素は、ガラスパケットの接触エリアよりも大きい広がりを有し、それによりガラスパケットに対して張り出した部分を形成することが好ましい。
【0015】
本発明の目的のために、補強要素が、補強要素の一部がガラスパケットの表側又は後側に配置され、及び補強要素の別の部分がガラスパケットの下側に配置されるように角度が付けられる場合も好ましい。補強要素が、補強要素の一部がガラスパケットの表側に配置され、及び補強要素の別の部分がガラスパケットの下側に配置されるように角度が付けられる場合もさらに好ましい。この場合、角度は、有利には約90°である。
【0016】
角度の付いた補強要素は、特に好ましくは、L字形であり、すなわち補強要素の一方のエリアが他方のエリアよりも大きい。この目的のために、大きい方のエリアがガラスパケットの下に配置され、及び小さい方のエリアがガラスパケットの表側又は後側、好ましくは表側に配置されることも好ましい。このような構造では、サッシ異形材に対して縦方向及び横方向の両方で好ましい剛性がサッシ要素に見出される。
【0017】
ガラスパケットの「表側」は、ここで、外側異形材のビードに対して向けられた窓の側であり、ガラスパケットの「後側」は、このビードの反対の側である。
【0018】
本発明によるサッシ異形材では、補強要素とガラスパケットとの間に少なくとも2つの接着要素が設けられている。このようにして、接着要素を1つのみ使用する場合と比較して、同等の安定性を維持しながら材料の使用量を減らすことができる。
【0019】
さらに、サッシ異形材の接着要素の1つがガラスパケットと補強要素との間で後側の縁の領域に配置されることが好ましい。この場合、接着要素は、ガラスパケットの下側に配置される。サッシ異形材の接着要素の1つがガラスパケットと補強要素との間で表側の縁の領域に配置される、接着要素を有する場合も同様に好ましい。この場合、接着要素がガラスパケットの表側に配置されることが特に有利である。接着要素の1つがガラスパケットと補強要素との間で後側の縁の領域に配置され、及び接着要素の1つがガラスパケットと補強要素との間で表側の縁の領域に配置される、少なくとも2つの接着要素を有するサッシ異形材が最も好ましい。
【0020】
補強要素に関して、本発明は、いかなる特定の限定も受けないが、ただし、補強要素の材料の曲げ強度が、サッシ異形材の中空異形材が作られる材料の曲げ強度よりも高くなければならないことを条件とする。したがって、補強要素は、原則として任意の熱可塑的に加工可能なポリマーで作ることができる。そのような熱可塑的に加工可能なポリマーは、それ自体当業者に知られており、先行技術において多くの場合に記載されてきた。
【0021】
特に、ポリアミド、特にポリアミド-6及びポリアミド-6.6など、熱可塑性の部分的に結晶性又は非晶質のポリマー、ポリエチレンテレフタレート及びポリブチレンテレフタレート、ポリオキシメチレン、ポリスルホン又はポリエーテルスルホン、またポリフェニレンスルフィド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル又はスチレンポリマー及びコポリマー、例えばアクリロニトリル-ブタジエン-スチレンが補強要素の製造に適している。特に適したポリマーは、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート及びそれらの混合物である。
【0022】
言及されたポリマーは、純粋な形態において又は当業者に知られている従来のポリマー助剤との混合物として使用することができる。好ましい実施形態では、繊維状又は粒子状のフィラーを提供された熱可塑性ポリマーが使用される。適切なフィラーは、ガラス繊維、ガラス球、鉱物フィラー又はナノ粒子である。特に、熱可塑性ポリマーは、ガラス繊維で補強される。ガラス繊維で補強された熱可塑性ポリマーは、典型的には、10~60重量%、好ましくは20~60重量%、特に好ましくは40~55重量%のガラス繊維を含有する。ここで、重量パーセントは、熱可塑性ポリマーとガラス繊維との総重量に基づく。特に適切なガラス繊維は、1μm~1cmの範囲、好ましくは10μm~600μmの範囲、特に好ましくは30μm~300μmの範囲の長さを有する。その構成要素において、好ましいガラス繊維の平均長さ対直径比は、100:1、好ましくは50:1、特に好ましくは30:1の範囲である。
【0023】
補強要素を製造するための好ましい熱可塑性ポリマーは、>3,000N/mm、好ましくは>10,000N/mmの、23℃における試験標準ISO527-1/-2に準拠した弾性率、>50℃、好ましくは>100℃、特に好ましくは>150℃の軟化温度及び23℃で測定された場合の<6・10-5-1、好ましくは<5・10-5-1、最も好ましくは<4・10-5-1の熱膨張係数を有する。
【0024】
補強要素は、非常に特に好ましくは、ポリブチレンテレフタレート又はポリエチレンテレフタレートとポリブチレンテレフタレートとの混合物であり、且つ10~60重量%、好ましくは20~60重量%、特に好ましくは40~55重量%のガラス繊維を含有する熱可塑性ポリマーから製造され、ここで、重量パーセントは、熱可塑性ポリマーとガラス繊維との総重量に基づいており、ガラス繊維は、1μm~1cmの範囲、好ましくは10μm~600μmの範囲、特に好ましくは30μm~300μmの範囲の長さを有し、その構成要素において、100:1、好ましくは50:1、特に好ましくは30:1の範囲のその領域における平均長さ対直径比を有し、23℃において>3,000N/mm、好ましくは>10,000N/mmの弾性率と、>50℃、好ましくは>100℃、特に好ましくは>150℃の軟化温度と、<6・10-5-1、好ましくは<5・10-5-1、最も好ましくは<4・10-5-1の膨張係数とを有する。このような材料で作られた補強要素は、曲げ荷重下のガラス中の応力が、ガラス板によって耐えることができる測定値を超えないこと、したがってガラスの割れが防止されることを適切な方法で保証することを可能にする。
【0025】
補強要素は、前述の材料のみから形成することができるが、それは、例えば、好ましくは熱可塑性ポリマーと異なるポリマーから形成された外層を有することもできる。特に適した外層材料は、例えば、PVC(ポリ塩化ビニル)である。さらに、接着要素と接合する補強要素の側を、接着要素と補強要素の材料との間の接着性を改善する材料でコーティングすることが可能である。補強要素が、例えば、ガラス繊維含有量の高い材料で作られている場合、そのような材料に直接塗布された接着剤の接着性が不利に損なわれる可能性がある。この不利点は、望ましい方法で補強要素に接着すると共に、接着要素との良好な付着を形成することができる材料によって補うことができる。
【0026】
そのような接着促進材料は、原則として、補強材料と接着要素との間の良好な接着性を仲介する任意の材料であり得る。この目的に特に適した接着促進材料は、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)である。したがって、補強要素、特に10~60重量%、好ましくは20~60重量%のガラス繊維の割合を含有するポリブチレンテレフタレート又はポリエチレンテレフタレートとポリブチレンテレフタレートとの混合物の形態の熱可塑性ポリマーで作られた補強要素は、一実施形態において、接着要素と接触する側において、特に0.2~2mm、好ましくは0.5~1mmの範囲の厚さのPVCの層でコーティングされる。そのような補強要素は、例えば、共押出しプロセスによって有利に製造することができる。代替として、補強要素は、接着促進層としての金属層を有することができ、これは、接着要素と接触する補強要素の側において、例えばPVD又は他のコーティングプロセスによって適用される。
【0027】
本発明の目的のために、接着要素は、補強要素に対するガラスパケットの安定した接合のために使用可能であり、且つ硬化状態において少なくとも100N/mmの、(23℃及び50%相対大気湿度における)ISO37に準拠した弾性率を有する任意の適切な接着材料に基づくことができる。
【0028】
したがって、単一成分及び多成分の両方の接着剤組成物が接着要素に可能である。本発明との関連において、二成分接着剤組成物、特にフリーラジカルで硬化可能な二成分(メタ)アクリレート接着剤組成物が特に好ましい。そのような適切な接着剤組成物は、例えば、国際公開第02/70620号パンフレットに記載されている。特に、その組成物は、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート又はメチル(メタ)アクリレートに基づく組成物である。この種の適切な接着剤は、例えば、Sika Schweiz AGからSikaFast(登録商標)の商品名で市販されている。さらなる適切な例示的な接着剤は、SikaPower(登録商標)及びSikaForce(登録商標)の商品名で市販されている。
【0029】
さらに、硬化状態において、少なくとも160N/mm、好ましくは少なくとも200N/mm及び/又は2000N/mm以下、好ましくは1500N/mm以下の、(23℃及び50%相対大気湿度における)ISO37に準拠した弾性率を有する材料が接着要素に好ましい。さらに、少なくとも60の、DIN 53505に準拠したショアA硬度が接着要素に適切であると示唆することができ、少なくとも70が好ましいと示唆することができ、少なくとも80がより好ましいと示唆することができる。これらの特性の結果として、1つ又は複数の接着要素は、補強要素と組み合わせて、サッシ異形材に極めて有利な曲げ剛性を与える好ましい剛性を有する。他方では、これらの仕様は、温度変動の場合、例えば輸送中、接着剤及びガラスの異なる膨張挙動の結果として生じる応力が減少され、ガラスに亀裂を生じない程度に接着要素が十分に柔軟であることを保証する。
【0030】
本発明の目的のために、比較的高い重量を有するガラスパケットを特に使用することもできる。したがって、少なくとも3つのガラス層、より好ましくは3又は4つのガラス層を有するガラスパケットが好ましい。
【0031】
上記によれば、補強要素は、接着要素を介してガラスパケットに物質対物質ボンディングによって接合されている。ここで、補強要素がこの接合において接着材料に直接接合されて接触すること、すなわち補強要素と接着材料との間において、サッシ要素の中空異形材の材料などの他の材料が存在しないことが好ましい。接着要素は、複数の接着要素の形態であるため、接着要素で覆われていない領域に中空の空間が形成される可能性がある。
【0032】
上記の補強要素に加えて、サッシ異形材は、さらなる補強要素を含有することができる。例えば、国際公開第2009/098068A1号パンフレットの図5に示されるように、外側又はサッシ異形材内において、サッシ異形材の表側又は後側の領域に配置されたさらなる補強要素が存在することが考えられる。同様に、1つ又は複数の補強要素が、サッシ異形材が挿入される外側異形材内に配置されることが可能である。この場合、国際公開第2009/098068A1号パンフレットの図1~4に示されるように、1つ又は複数の補強要素が外側異形材を通して長手方向に延びることが好ましい。ここで、追加の1つ又は複数の補強要素は、垂直に又は傾斜させて異形材に一体化することもできる。
【0033】
追加の補強要素が作られる材料は、サッシ異形材の補強要素が作られる材料と同じ又は異なる材料であり得るが、この補強要素と追加の補強要素とは、同じ材料から作られることが好ましい。
【0034】
本発明のさらなる態様は、好ましくは、請求項1~13のいずれかに記載のサッシ異形材を製造するための方法であって、
- 中空異形材を提供するステップ、
- 中空異形材に補強要素を取り付けるステップ、
- 補強要素に複数の接着要素を取り付けるステップであって、接着要素(4)は、少なくとも100N/mmの、(23℃及び50%相対大気湿度における)ISO37に準拠した弾性率を有する、ステップ、及び
- 複数の接着要素をガラスパケットと接触させて、接着要素を介した補強要素とガラスパケットとの間の物質対物質接合を形成するステップ
を含む方法に関する。
【0035】
ここで、ガラスパケットと補強要素との接合が方法の最後に行われることを除いて、ステップの順序は、重要ではない。しかしながら、この場合、中空異形材及び補強要素は、例えば、共押出しによって1つのステップで製造することができるため、中空異形材への補強要素の取り付けは、製造方法の初期の段階で実行することが好ましい。
【0036】
さらに別の態様は、サッシ異形材の曲げ強度を改善するための、接着要素と補強要素との組み合わせの使用であって、ガラスパケットは、サッシ異形材に配置された補強要素に接着要素を介して物質対物質ボンディングによって接合され、及び接着要素(4)は、少なくとも100N/mmの、(23℃及び50%相対大気湿度における)ISO37に準拠した弾性率を有する、使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明によるサッシ異形材を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
サッシ異形材1は、補強要素3を有する中空異形材を含み、補強要素3の上において、3枚のガラス板5を有するガラスパケット2が配置されている。2つの接着要素4がガラスパケット間に取り付けられ、ガラスパケット2は、これらを介して補強要素3に接合される。これらの接着要素4間の領域において、ガラスパケット2と補強要素3との間に小さい中空の空間がある。サッシ異形材は、補強要素(図示せず)を同様に含有する外側異形材に接合することができる。
【0039】
以下では、実用的な実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、これらは、本特許出願の保護の範囲を限定するものとして解釈すべきでない。
【実施例
【0040】
PVCサッシ、ガラスパケット、Ultradur製の補強要素及び様々な接着剤からなる様々なガラスサッシの曲げ剛性を、有限要素モデル(FEM)を使用して計算した。基準サッシのための基準として、約2MPaの(硬化状態における)弾性率を有する典型的なシリコーン接着剤を有する構造を使用した。本発明によるサッシ異形材について、約100MPaの(硬化状態における)弾性率を有する硬い接着剤又は1000MPaの弾性率を有する接着剤のいずれかを基準として使用した。図1に示すように、接着剤は、ガラスパケットに取り付ける必要がある。
【0041】
具体的には、計算は、以下の構造に基づいている。
ガラス板の寸法:2.0×1.0m
2枚の外側ガラス板の厚さ:それぞれ4mm
3重ガラスパケットの距離:4mmガラス+16mm空気+4mmガラス+16mm空気+4mmガラス
補強要素の厚さ:3mm、弾性率14,000MPa
接着剤の厚さ:3mm、幅4mm
【0042】
ガラスサッシの保管中に各場合において、250Nの力で荷重をかけたときのガラスサッシの長辺及び短辺の中央のガラスサッシのたるみを、簡略化された有限要素モデルを使用して計算した。これらの計算の結果を以下の表1に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
計算は、複合材料の同じ構造で接着剤の弾性率が増加すると、力の導入点でのたるみの大幅な減少が確立されることを示す。
本明細書に開示される発明は以下の態様を含む:
[1]複数のガラス板を含むガラスパケット(2)を有するサッシ異形材であって、
ポリマーから構成され、かつ本質的に前記サッシ異形材上の前記ガラスパケット(2)の接触エリア全体の下に取り付けられる補強要素(3)を有しており、
前記補強要素(3)と前記ガラスパケット(2)との間の物質対物質接合は、少なくとも2つの接着要素(4)によって提供され、かつ
前記接着要素(4)は、23℃及び50%相対大気湿度で、少なくとも100N/mm のISO37に準拠した弾性率を有することを特徴とする、
サッシ異形材。
[2]前記補強要素(3)は、前記補強要素の一部が前記ガラスパケット(2)の表側に配置され、かつ前記補強要素の別の部分が前記ガラスパケット(2)の下側に配置されるように角度を付けられていることを特徴とする、上記[1]に記載のサッシ異形材。
[3]前記補強要素(3)は、前記接着要素に接合された側において、特に金属又はPVCから構成された接着促進材料でコーティングされていることを特徴とする、上記[1]又は[2]に記載のサッシ異形材
[4]前記ガラスパケット(2)と前記補強要素(3)との間で後側の縁の領域に配置される接着要素(4)を有することを特徴とする、上記[1]~[3]のいずれか一つに記載のサッシ異形材。
[5]前記ガラスパケット(2)と前記補強要素(3)との間で表側の縁の領域において、好ましくは前記ガラスパケットの前記表側に配置される接着要素(4)を有することを特徴とする、上記[1]~[4]のいずれか一つに記載のサッシ異形材。
[6]前記補強要素(3)は、熱可塑性ポリマー、好ましくはポリエステル、特に好ましくはポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート及びそれらの混合物を含むことを特徴とする、上記[1]~[5]のいずれか一つに記載のサッシ異形材。
[7]前記補強要素(3)は、補強のための繊維、好ましくはガラス繊維をさらに含有することを特徴とする、上記[6]に記載のサッシ異形材。
[8]前記補強要素(3)は、10~60重量%、好ましくは20~60重量%、特に好ましくは40~55重量%の割合の繊維を含有することを特徴とする、上記[7]に記載のサッシ異形材。
[9]前記補強要素(3)中の前記熱可塑性ポリマーは、好ましくは、前記熱可塑性ポリマーと異なるポリマー、より好ましくはPVCでできた外層を有することを特徴とする、上記[6]~[8]のいずれか一つに記載のサッシ異形材。
[10]前記接着要素(4)は、フリーラジカルで硬化可能な二成分(メタ)アクリレート接着組成物に基づくことを特徴とする、上記[1]~[9]のいずれか一つに記載のサッシ異形材。
[11]前記接着要素(4)は、23℃及び50%相対大気湿度で、少なくとも160N/mm 、より好ましくは少なくとも200N/mm 及び/又は2000N/mm 以下、好ましくは1500N/mm 以下の、ISO37に準拠した弾性率を有することを特徴とする、上記[1]~[10]のいずれか一つに記載のサッシ異形材。
[12]前記ガラスパケット(2)は、少なくとも3つのガラス層(5)を有することを特徴とする、上記[1]~[11]のいずれか一つに記載のサッシ異形材。
[13]前記補強要素(3)は、前記接着要素を介して前記ガラスパケット(2)に直接接合し、かつ任意選択的に、前記ガラスパケット(2)の方向において前記補強要素(3)に隣接する中空空間があることを特徴とする、上記[1]~[12]のいずれか一つに記載のサッシ異形材。
[14]以下の工程を含む、サッシ異形材、好ましくは、上記[1]~[13]のいずれか一つに記載のサッシ異形材を製造するための方法:
- 中空異形材を提供すること、
- 前記中空異形材に補強要素(3)を取り付けること、
- 前記補強要素(3)に複数の接着要素(4)を取り付けること、ここで、前記接着要素(4)は、23℃及び50%相対大気湿度で、少なくとも100N/mm のISO37に準拠した弾性率を有する、及び
- 前記複数の接着要素(4)をガラスパケット(2)と接触させて、前記接着要素(4)を介した前記補強要素(3)と前記ガラスパケット(2)との間の物質対物質接合を形成すること。
[15]サッシ異形材の曲げ強度を改善するための、接着要素(4)と補強要素(3)との組み合わせの使用であって、
ガラスパケット(2)は、前記サッシ異形材に配置された前記補強要素(3)に前記接着要素(4)を介して物質対物質結合によって接合しており、かつ前記接着要素(4)は、23℃及び50%相対大気湿度で、少なくとも100N/mm のISO37に準拠した弾性率を有する、
使用。
図1