(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-06
(45)【発行日】2023-10-17
(54)【発明の名称】貫通孔を含む構造体を有する積層体
(51)【国際特許分類】
B32B 3/24 20060101AFI20231010BHJP
C09J 153/00 20060101ALI20231010BHJP
C09J 133/08 20060101ALI20231010BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20231010BHJP
【FI】
B32B3/24 Z
C09J153/00
C09J133/08
B32B27/30 A
(21)【出願番号】P 2020563387
(86)(22)【出願日】2019-12-25
(86)【国際出願番号】 JP2019051017
(87)【国際公開番号】W WO2020138238
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2022-07-08
(31)【優先権主張番号】P 2018245072
(32)【優先日】2018-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野 友裕
(72)【発明者】
【氏名】中田 加那予
(72)【発明者】
【氏名】赤井 真
【審査官】高崎 久子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-224430(JP,A)
【文献】特開2009-079120(JP,A)
【文献】特開2017-145315(JP,A)
【文献】国際公開第2018/139655(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/179479(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/175119(WO,A1)
【文献】中国実用新案第201459013(CN,U)
【文献】Donatas Satas編著,「粘着技術ハンドブック」,初版,日刊工業新聞社,1997年03月31日,pp.436-441
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J
B32B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、その基材の少なくとも一方の表面に設けられた基部および貫通孔を含む構造体とを有する積層体であり、
該構造体の基部が、メタクリル酸エステル単位
を含む2つの重合体ブロック(A1)および(A2)と、一般式CH
2=CH-COOR
1(1)(式中、R
1は炭素数1~3の有機基を表す)で示されるアクリル酸エステル
(1)単位
および一般式CH
2
=CH-COOR
2
(2)(式中、R
2
は炭素数4~12の有機基を表す)で示されるアクリル酸エステル(2)単位を含む1つの重合体ブロック(B)とからなり、(A1)-(B)-(A2)ブロック構造を有し、重量平均分子量が50,000~250,000であり、重合体ブロック(A1)および(A2)の合計含有量が
4質量%以上、35質量%以下であるアクリル系トリブロック共重合体(I)を
基部となる成分の総量に対して60質量%以上含有
し、
前記重合体ブロック(A1)および(A2)のメタクリル酸エステル単位となるメタクリル酸エステルが、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸tert-ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸イソボルニルおよびメタクリル酸フェニルから選ばれる少なくとも1種であり、
前記メタクリル酸エステル単位の割合が、重合体ブロック(A1)および(A2)のそれぞれの重合体ブロック中、80質量%以上であり、
前記重合体ブロック(A1)および(A2)それぞれのガラス転移温度は60~140℃であり、
前記アクリル酸エステル(1)が、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n-プロピルから選ばれる少なくとも1種であり、
前記アクリル酸エステル(2)が、アクリル酸n-ブチルおよびアクリル酸2-エチルヘキシルから選ばれる少なくとも1種であり、
前記重合体ブロック(B)中のアクリル酸エステル(1)単位およびアクリル酸エステル(2)単位の質量比(1)/(2)が95/5~5/95であり、
前記アクリル酸エステル(1)および(2)の合計単位の割合が、重合体ブロック(B)中80質量%以上であり、
前記重合体ブロック(B)のガラス転移温度は、-70~30℃である、
積層体。
【請求項2】
請求項1に記載の積層体を含むホットメルト用接着部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリル系トリブロック共重合体からなる基部および貫通孔を含む構造体を有する積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば板状体等の中実体に針穴加工等の後加工を施す、繊維状物にパンチング加工を施す等して、貫通孔を有する構造体が作製されてきた。しかし、これら構造体の作製は、手間がかかる点で問題である。
この手間がかかる問題を解消する一手段として、基材シートの片側表面または両側表面に、1層以上の貫通孔を有する熱可塑性エラストマー層がモールド印刷成型された積層体が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また板状体等の構造体がエラストマーから作製される場合、その軟質性から、粘接着性能が期待される性能の1つである。エラストマーをその材料として用いた場合、位置合わせをする必要性等から、仮固定のしやすさが求められる場合がある。
また、粘着性能においては、様々な被着体への接着性が求められる場合があり、特に金属へ高い接着性が求められる場合がある。また、汎用的なシートとして用いられている可塑剤を多く含む軟質ポリ塩化ビニル(PVC)に接合した場合、可塑剤移行による粘着性能低下の抑制を求められる場合が多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、仮固定しやすくする場合には、粘着性が高くなる傾向にある。また、様々な被着体への粘着性を高めようとした場合は、粘着付与樹脂や可塑剤等を添加する場合が多いため、位置合わせするために一度剥離する場合等に糊残りしやすい傾向にある。特に可塑剤を多く含む軟質ポリ塩化ビニルに仮固定した場合等は、位置合わせするために一度剥離する場合等に、更に糊残りしやすくなる。したがってこれら特性の全てを満足する構造体を作製することは困難であった。
本発明の目的は、仮固定等における操作性と粘着性の両立が可能であり、かつ糊残りの抑制が可能であり、様々な被着体、特に金属への接着性にも優れた、基部および貫通孔を含む構造体とを有する積層体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、上記目的は、
[1]基材と、その基材の少なくとも一方の表面に設けられた基部および貫通孔を含む構造体とを有する積層体であり、
該構造体の基部が、メタクリル酸エステル単位からなる2つの重合体ブロック(A1)および(A2)と、一般式CH2=CH-COOR1(1)(式中、R1は炭素数1~3の有機基を表す)で示されるアクリル酸エステル単位を含む1つの重合体ブロック(B)とからなり、(A1)-(B)-(A2)ブロック構造を有し、重量平均分子量が50,000~250,000であり、重合体ブロック(A1)および(A2)の合計含有量が35質量%以下であるアクリル系トリブロック共重合体(I)を含有する、積層体、
[2][1]に記載の積層体を含むホットメルト用接着部材、
等により達成される。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、仮固定等における操作性と粘着性の両立が可能であり、かつ糊残りの抑制が可能であり、様々な被着体、特に金属への接着性にも優れた、基部および貫通孔を含む構造体と基材とを有する積層体が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸エステル」は「メタクリル酸エステル」と「アクリル酸エステル」との総称であり、また「(メタ)アクリル」は「メタクリル」と「アクリル」との総称である。
【0008】
本発明の積層体は、アクリル系トリブロック共重合体(I)を含有する基部および貫通孔を含む構造体を有する。構造体が上記基部および貫通孔を有しているため、通気性に優れるだけでなく、仮固定等において、操作性と粘着性に優れる。また、糊残りの抑制も可能となる。
上記構造体は、網目状に連続したアクリル系トリブロック共重合体(I)からなる基部および貫通孔から形成されていることが好ましい態様である。このような構造を有することで、通気性により優れるだけでなく、仮固定等において、操作性と粘着性により優れる。また、糊残りの抑制にもより優れる。また、様々な被着体、特に金属への接着性にも優れる。
上記網目状となる形状としては、例えば、メッシュ形状、ハニカム形状、ウロコ形状、タイル形状等が挙げられる。また、上記構造体の形状としては、貫通孔が離散的に設けられたドット形状、縞形状等であってもよい。
【0009】
上記構造体の、貫通孔以外の部分(基部)は、アクリル系トリブロック共重合体(I)を含有する。アクリル系トリブロック共重合体(I)は、メタクリル酸エステル単位からなる2つの重合体ブロック(A1)および(A2)と、一般式CH2=CH-COOR1(1)(式中、R1は炭素数1~3の有機基を表す)で示されるアクリル酸エステル単位を含む1つの重合体ブロック(B)とからなり、(A1)-(B)-(A2)ブロック構造を有し、重量平均分子量が50,000~250,000であり、重合体ブロック(A1)および(A2)の合計含有量が35質量%以下である。
アクリル系トリブロック共重合体(I)が構造体の基部を形成していることにより、仮固定等における操作性と粘着性に優れるだけでなく、被着体に含まれる可塑剤の移行に伴い生じやすい糊残りの抑制が可能であり、様々な被着体、特に金属への接着性にも優れる構造体を有する積層体が得られる。
【0010】
(重合体ブロック(A1)および(A2))
アクリル系トリブロック共重合体(I)は、メタクリル酸エステル単位からなる重合体ブロック(A1)および(A2)の2つのメタクリル酸エステル単位からなる重合体ブロックを有する。
【0011】
上記重合体ブロック(A1)および(A2)の構成単位となるメタクリル酸エステルとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸sec-ブチル、メタクリル酸tert-ブチル、メタクリル酸n-ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸n-オクチル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル等の官能基を有さないメタクリル酸エステル;メタクリル酸メトキシエチル、メタクリル酸エトキシエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸2-アミノエチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル等の官能基を有するメタクリル酸エステル等が挙げられる。
【0012】
これらの中でも、得られる重合体の耐熱性、耐久性を向上させる観点から、官能基を有さないメタクリル酸エステルが好ましく、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸tert-ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸フェニルがより好ましく、重合体ブロック(A1)および(A2)と重合体ブロック(B)との相分離がより明瞭となり、アクリル系トリブロック共重合体(I)を含有する基部および貫通孔を含む構造体の凝集力が高くなる点からメタクリル酸メチルがさらに好ましい。重合体ブロック(A1)および(A2)は、これらメタクリル酸エステルの1種から構成されていても、2種以上から構成されていてもよい。また、上記アクリル系トリブロック共重合体(I)は、メタクリル酸エステル単位からなる重合体ブロックとして重合体ブロック(A1)および(A2)の2つを有するが、これら重合体ブロック(A1)および(A2)を構成するメタクリル酸エステルは、同一であっても異なっていてもよい。また、重合体ブロック(A1)および(A2)中に含まれるメタクリル酸エステル単位の割合は、重合体ブロック(A1)および(A2)のそれぞれの重合体ブロック中、60質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましく、95質量%以上がよりさらに好ましい。また、重合体ブロック(A1)および(A2)のメタクリル酸エステル単位の割合は100質量%であってもよい。
【0013】
なお、メタクリル酸エステル単位からなる各重合体ブロック(A1)および(A2)に含まれるメタクリル酸エステル単位の立体規則性は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0014】
アクリル系トリブロック共重合体(I)では、重合体ブロック(A1)および(A2)の合計含有量は35質量%以下であり、32質量%以下であることが好ましい。また、重合体ブロック(A1)および(A2)の合計含有量は4質量%以上であることが好ましく、8質量%以上であることがより好ましい。重合体ブロック(A1)および(A2)の合計含有量が上記範囲内であると、アクリル系トリブロック共重合体(I)を基部および貫通孔を含む構造体に用いた際に、得られる積層体の操作性と粘着性に優れ、被着体に含まれる可塑剤の移行に伴い生じやすい糊残りも抑制が可能であり、様々な被着体、特に金属への接着性にも優れる傾向にある。また、アクリル系トリブロック共重合体(I)に含まれる重合体ブロック(A1)および(A2)それぞれの含有量は同一であっても異なっていてもよい。
【0015】
上記重合体ブロック(A1)および(A2)それぞれのガラス転移温度(Tg)は60~140℃であることが好ましく、70~130℃であることがより好ましく、80~130℃であることがさらに好ましい。ガラス転移温度がこの範囲にあると、本発明の積層体の通常の使用温度においてこの重合体ブロック(A1)および(A2)は物理的な疑似架橋点として作用し凝集力が発現することになり、耐久性、耐熱性等に優れる積層体が得られる。なお、本明細書におけるガラス転移温度は、DSC測定で得られた曲線の外挿開始温度である。
【0016】
上記重合体ブロック(A1)および(A2)それぞれのTgは、同一でも異なっていてもよい。上記重合体ブロック(A1)および(A2)それぞれのTgが異なる場合でも、双方の重合体ブロックのTgが上記範囲であることが好ましい一態様である。
【0017】
(重合体ブロック(B))
アクリル系トリブロック共重合体(I)は、一般式CH2=CH-COOR1(1)(式中、R1は炭素数1~3の有機基を表す)で示されるアクリル酸エステル単位(以下、アクリル酸エステル(1)単位ともいう。)を含む、1つの重合体ブロック(B)を1つ有する。重合体ブロック(B)にアクリル酸エステル(1)単位が含まれることにより、粘着性を付与しつつ、被着体に含まれる可塑剤の移行に伴い生じやすい糊残りの抑制が可能であり、様々な被着体、特に金属への接着性にも優れる積層体が得られる。
【0018】
アクリル酸エステル(1)としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n-プロピル等の官能基を有さないアクリル酸エステル;アクリル酸2-メトキシエチル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸2-アミノエチル、アクリル酸グリシジル等の官能基を有するアクリル酸エステル等が挙げられる。
【0019】
これらの中でも、得られるアクリル系トリブロック共重合体(I)の可塑剤に対する耐性が高まる観点、透明性、柔軟性および被着体への接着性の観点から、官能基を有さないアクリル酸エステルが好ましく、アクリル酸メチル、アクリル酸エチルがより好ましく、アクリル酸メチルがさらに好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0020】
重合体ブロック(B)を構成するアクリル酸エステル単位は、さらに一般式CH2=CH-COOR2(2)(式中、R2は炭素数4~12の有機基を表す)で示されるアクリル酸エステル(2)単位を含んでいることも好ましい一態様である。
【0021】
アクリル酸エステル(2)としては、例えば、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸sec-ブチル、アクリル酸tert-ブチル、アクリル酸n-ペンチル、アクリル酸イソペンチル、アクリル酸n-ヘキシル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸n-オクチル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸デシル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル等の官能基を有さないアクリル酸エステル;アクリル酸2-エトキシエチル、アクリル酸2-(ジエチルアミノ)エチル、アクリル酸テトラヒドロフルフリル、アクリル酸2-フェノキシエチル等の官能基を有するアクリル酸エステル等が挙げられる。
【0022】
これらの中でも、重合体ブロック(A1)および(A2)と重合体ブロック(B)との相分離がより明瞭となり、得られる構造体の凝集力が高まる点、および、粘着性が高まる点から、官能基を有さないアクリル酸エステルが好ましく、アクリル酸n-ブチルおよびアクリル酸2-エチルヘキシルがより好ましく、アクリル酸n-ブチルがさらに好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0023】
上記重合体ブロック(B)中のアクリル酸エステル(1)単位およびアクリル酸エステル(2)単位の質量比(1)/(2)は95/5~5/95であることが好ましい。質量比が上記範囲内であると、アクリル酸エステル(1)単位に起因する可塑剤に対する耐性と、アクリル酸エステル(2)単位に起因する被着体への粘着性とのバランスに優れる。そのため、アクリル系ブロック共重合体(I)を含有する基部を含む構造体と基材との積層体では、基材に可塑剤が含まれている場合でも、可塑剤が構造体には移行しにくく、耐久性に優れた積層体が得られる。上記の観点から、上記アクリル酸エステルの質量比(1)/(2)は90/10~15/85であることが好ましく、90/10~20/80であることがより好ましく、80/20~20/80であることがさらに好ましい。
【0024】
また、上記重合体ブロック(B)がアクリル酸エステル(1)単位のみからなることも好ましい一態様である。上記重合体ブロック(B)がアクリル酸エステル(1)単位のみからなると、例えば基材等に可塑剤が含まれている場合には、可塑剤に対する耐性がより高まる。
【0025】
また、上記重合体ブロック(B)中のアクリル酸エステル(1)の占める割合の下限は15%であることが好ましく、25%であることがより好ましく、40%であることがさらに好ましい。
【0026】
上記重合体ブロック(B)に用いるアクリル酸エステルの組み合わせとしては、例えば、アクリル酸メチル/アクリル酸n-ブチル、アクリル酸メチル/アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸メチル/アクリル酸n-ブチル/アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸エチル/アクリル酸n-ブチル、アクリル酸エチル/アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸エチル/アクリル酸n-ブチル/アクリル酸2-エチルヘキシル等が挙げられる。
【0027】
重合体ブロック(B)中に、アクリル酸エステル(1)に加えてアクリル酸エステル(2)が含まれる場合には、含まれるアクリル酸エステル(1)および(2)の合計単位の割合は、重合体ブロック(B)中60質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましく、100質量%であってもよい。
【0028】
上記重合体ブロック(B)を複数の単量体により共重合する場合は、ランダム共重合体からなるものでもよいし、ブロック共重合体やグラフト共重合体からなるものでもよいし、さらにテーパー状ブロック共重合体(グラジェント共重合体)からなるものでもよい。
【0029】
上記重合体ブロック(B)のガラス転移温度は、-70~30℃であることがより好ましく、-50~25℃であることがより好ましく、-40~20℃であることがさらに好ましく、-30~15℃であることが最も好ましい。ガラス転移温度がこの範囲にあると、使用温度において柔軟で、操作性と粘着性が高く、被着体等に含まれる可塑剤に対する耐性が高い構造体を有する積層体を得ることができる。
【0030】
上記重合体ブロック(A1)および(A2)、ならびに重合体ブロック(B)には、本発明の効果を損なわない範囲で、お互いの単量体単位が含有されていてもよい。例えば、重合体ブロック(A1)または(A2)と重合体ブロック(B)との境界でテーパード構造を有していてもよい。また、重合体ブロック(A1)または(A2)と重合体ブロック(B)とはお互いの単量体単位を含有しないものであってもよい。
【0031】
また、上記重合体ブロック(A1)および(A2)ならびに重合体ブロック(B)は、必要に応じて他の単量体を含有してもよい。かかる他の単量体としては、例えば(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸等のカルボキシル基を有するビニル系単量体;(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン等の官能基を有するビニル系単量体;スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、m-メチルスチレン等の芳香族ビニル系単量体;ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン系単量体;エチレン、プロピレン、イソブテン、オクテン等のオレフィン系単量体;ε-カプロラクトン、バレロラクトン等のラクトン系単量体等が挙げられる。各重合体ブロックがこれら他の単量体を含有する場合、その含有量は、各重合体ブロックを構成する単量体の全質量に対して、好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下、よりさらに好ましくは5質量%以下である。
【0032】
アクリル系トリブロック共重合体(I)は、重合体ブロック(A1)を(A1);重合体ブロック(A2)を(A2);重合体ブロック(B)を(B);としたときに、重合体ブロック(A1)、重合体ブロック(B)、重合体ブロック(A2)の順に結合した、(A1)-(B)-(A2)ブロック構造を有する。アクリル系トリブロック共重合体(I)がこの構造をとることにより、接着力、保持力、凝集力に優れる構造体となる。
【0033】
アクリル系トリブロック共重合体(I)の重量平均分子量(Mw)は50,000~250,000である。凝集力および製造時の取扱性の点からは、50,000~230,000であることが好ましく、55,000~220,000であることがより好ましく、60,000~200,000であることがさらに好ましい。アクリル系トリブロック共重合体(I)のMwが50,000未満であると凝集力に劣るおそれがある。また、Mwが250,000を超えると製造時の取り扱い性に劣るおそれがある。
【0034】
アクリル系トリブロック共重合体(I)の分子量分布(Mw/Mn)は1.0~1.5であることが好ましく、1.0~1.4であることがより好ましい。なお、本明細書における重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定により求めた標準ポリスチレン換算の重量平均分子量および数平均分子量である。
【0035】
本発明で用いられるアクリル系トリブロック共重合体(I)の製造方法は、化学構造に関する本発明の条件を満足する重合体が得られる限りにおいて特に限定されることなく、公知の手法に準じた方法を採用することができる。一般に、分子量分布の狭いブロック共重合体を得る方法としては、構成単位である単量体をリビング重合する方法が取られる。このようなリビング重合の手法としては、例えば、有機希土類金属錯体を重合開始剤としてリビング重合する方法(特開平06-93060号公報参照)、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤としアルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩等の鉱酸塩の存在下でリビングアニオン重合する方法(特表平05-507737号公報参照)、有機アルミニウム化合物の存在下で、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤としリビングアニオン重合する方法(特開平11-335432号公報参照)、原子移動ラジカル重合法(ATRP)(Macromolecular Chemistry and Physics、2000年、201巻、p.1108~1114参照)等が挙げられる。
【0036】
上記製造方法のうち、有機アルミニウム化合物の存在下で有機アルカリ金属化合物を重合開始剤としてリビングアニオン重合する方法は、得られるブロック共重合体の透明性が高いものとなり、残存単量体が少なく臭気が抑えられ、また、構造体の基部として用いる際、貼り合わせ後の気泡の発生を抑制できるため好ましい。さらに、メタクリル酸エステル重合体ブロックの分子構造が高シンジオタクチックとなり、構造体の基部の耐熱性を高める効果がある点、比較的温和な温度条件下でリビング重合が可能で工業的に生産する場合に環境負荷(主に重合温度を制御するための冷凍機にかかる電力)が小さい点でも好ましい。
【0037】
上記有機アルミニウム化合物としては、例えば下記一般式(3)
AlR3R4R5 (3)
(式(3)中、R3、R4およびR5はそれぞれ独立して置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基またはN,N-二置換アミノ基を表すか、あるいはR3が上記したいずれかの基であり、R4およびR5が一緒になって置換基を有していてもよいアリーレンジオキシ基を形成している。)で表される有機アルミニウム化合物が挙げられる。
【0038】
上記一般式(3)で表される有機アルミニウム化合物としては、重合のリビング性の高さや取り扱いの容易さ等の点から、イソブチルビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノキシ)アルミニウム、イソブチルビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノキシ)アルミニウム、イソブチル〔2,2'-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノキシ)〕アルミニウム等が好ましく挙げられる。
【0039】
上記有機アルカリ金属化合物としては、例えば、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、イソブチルリチウム、tert-ブチルリチウム、n-ペンチルリチウム、テトラメチレンジリチウム等のアルキルリチウムおよびアルキルジリチウム;フェニルリチウム、p-トリルリチウム、リチウムナフタレン等のアリールリチウムおよびアリールジリチウム;ベンジルリチウム、ジフェニルメチルリチウム、ジイソプロペニルベンゼンとブチルリチウムの反応により生成するジリチウム等のアラルキルリチウムおよびアラルキルジリチウム;リチウムジメチルアミド等のリチウムアミド;メトキシリチウム、エトキシリチウム等のリチウムアルコキシド等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、重合開始効率が高いことから、アルキルリチウムが好ましく、中でもtert-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウムがより好ましく、sec-ブチルリチウムがさらに好ましい。
【0040】
また、上記リビングアニオン重合は、通常、重合反応に不活性な溶媒の存在下で行われる。溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;クロロホルム、塩化メチレン、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル等が挙げられ、トルエンが好適に用いられる。
【0041】
ブロック共重合体は、例えば、単量体を重合して得た所望のリビングポリマー末端に、所望の重合体ブロック(重合体ブロック(A2)、重合体ブロック(B)等)を形成する工程を所望の回数繰り返した後、重合反応を停止させることにより製造できる。具体的には、例えば有機アルミニウム化合物の存在下、有機アルカリ金属化合物からなる重合開始剤により、第1の重合体ブロックを形成する単量体を重合する第1工程、第2の重合体ブロックを形成する単量体を重合する第2工程、および、第3の重合体ブロックを形成する単量体を重合する第3工程を含む複数段階の重合工程を経て、得られた重合体の活性末端をアルコール等と反応させ、重合反応を停止させることにより、アクリル系トリブロック共重合体(I)を製造できる。上記のような方法によれば、重合体ブロック(A1)-重合体ブロック(B)-重合体ブロック(A2)からなるトリブロック共重合体を製造できる。
【0042】
重合温度としては、重合体ブロック(A1)および(A2)を形成する際は0~100℃、重合体ブロック(B)を形成する際は-50~50℃が好ましい。上記範囲より重合温度が低い場合には、反応の進行が遅くなり、反応を完結させるのに長時間必要となる。一方、上記範囲より重合温度が高い場合には、リビングポリマー末端の失活が増え、分子量分布が広くなったり、所望のブロック共重合体が得られなくなったりする。また、重合体ブロック(A1)および(A2)ならびに重合体ブロック(B)はそれぞれ1秒~20時間の範囲で重合できる。
【0043】
本発明の構造体の基部となる成分には、上記アクリル系トリブロック共重合体(I)が含有される。本発明の効果を奏する限り、その基部となる成分に含まれるアクリル系トリブロック共重合体(I)の含有量は特に制限はないが、上記アクリル系トリブロック共重合体(I)は、基部となる成分の総量に対して40質量%以上含むことが好ましく、50質量%以上含むことがより好ましく、60質量%以上含むことがさらに好ましく、70質量%以上含むことが特に好ましく、100質量%であってもよい。基部に40質量%以上のアクリル系トリブロック共重合体(I)が含まれることにより、基部の特性がより発揮されやすくなる。
【0044】
本発明の構造体の基部となる成分は、本発明の効果を損なわない範囲で、他の重合体、粘着付与樹脂、軟化剤、可塑剤、熱安定剤、光安定剤、帯電防止剤、難燃剤、発泡剤、着色剤、染色剤、屈折率調整剤、フィラー、硬化剤、滑剤、膠着防止剤、防蟻剤、防鼠剤等の添加剤が含まれていてもよい。これら他の重合体および添加剤は、1種が含まれていてもよいし、2種以上含まれていてもよい。
【0045】
上記他の重合体としては、例えば、ポリメタクリル酸メチルおよび(メタ)アクリル酸エステル重合体または共重合体等のアクリル系樹脂;ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン、ポリブテン-1、ポリ-4-メチルペンテン-1、ポリノルボルネン等のオレフィン系樹脂;エチレン系アイオノマー;ポリスチレン、スチレン-無水マレイン酸共重合体、ハイインパクトポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂、AES樹脂、AAS樹脂、ACS樹脂、MBS樹脂等のスチレン系樹脂;スチレン-メタクリル酸メチル共重合体;スチレン-メタクリル酸メチル-無水マレイン酸共重合体;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸等のポリエステル樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ポリアミドエラストマー等のポリアミド;ポリカーボネート;ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン;ポリビニルアルコール;エチレン-ビニルアルコール共重合体;ポリアセタール;ポリフッ化ビニリデン;ポリウレタン;変性ポリフェニレンエーテル;ポリフェニレンスルフィド;シリコーンゴム変性樹脂;アクリル系ゴム;シリコーン系ゴム;SEPS、SEBS、SIS等のスチレン系熱可塑性エラストマー;IR、EPR、EPDM等のオレフィン系ゴム等が挙げられる。これらの中でも、構造体の基部となる成分に含まれるアクリル系トリブロック共重合体(I)との相容性の観点から、ポリメタクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エステル重合体または共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、AS樹脂、スチレン-メタクリル酸メチル-無水マレイン酸共重合体、ポリ乳酸、ポリフッ化ビニリデンが好ましく、ポリメタクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン-メタクリル酸メチル-無水マレイン酸共重合体がより好ましい。
【0046】
上記(メタ)アクリル酸エステル重合体または共重合体としては、例えば、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸n-ブチル、ポリアクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸メチルとアクリル酸メチルのランダム共重合体、メタクリル酸メチルとアクリル酸n-ブチルのランダム共重合体等が挙げられる。
【0047】
上記構造体の基部となるアクリル系トリブロック共重合体(I)を含む配合物の製造方法は特に制限されず、例えば、各成分を、ニーダールーダー、押出機、ミキシングロール、バンバリーミキサー等の既知の混合または混練装置を使用して、100~250℃の範囲内の温度で混合することにより製造できる。また、各成分を有機溶媒に溶解して混合した後、該有機溶媒を留去することによって製造してもよい。中でも、各成分を二軸押出機にて、150~240℃の範囲内の温度で溶融混練した後、押出し、切断することでペレット等の形態にすることが好ましい。
【0048】
上記構造体を製造する方法は、アクリル系トリブロック共重合体(I)を含む基部および貫通孔を含む構造体を作製できる限り特に制限がない。例えば、以下の方法が挙げられる。
(1)アクリル系トリブロック共重合体(I)を含む配合物を溶融押出して長繊維を作製し、この長繊維から短繊維の集合物を作製し、これら短繊維の集合物を接着剤または熱により圧着して構造体を作製する方法。
(2)アクリル系トリブロック共重合体(I)を含む配合物の溶融物から、メルトブロー法により、構造体を作製する方法。
(3)凹凸を備えたパターン層を有する基盤上にアクリル系トリブロック共重合体(I)を含む配合物の溶融物を塗布する、若しくは基盤上で配合物を溶融させた後に基部および貫通孔を含む物を基板上から剥離することにより、構造体を作製する方法(パターン印刷法)。
【0049】
これら方法の中でも、凹部の形状を所望の形状に対応する形状にすることにより、所望の形状の基部および貫通孔を含む構造体が作製しやすいことなどから、パターン印刷法により本発明の構造体を作製することが好ましい一態様である。
【0050】
本発明の積層体は、基材と、その基材の少なくとも一方の表面に設けられた、基部および貫通孔を含む上記構造体とを有している。
上記積層体としては、例えば、基部および貫通孔を含む上記構造体/基材からなる2層の積層体;基部および貫通孔を含む上記構造体/基材/基部および貫通孔を含む上記構造体からなる3層の積層体;基部および貫通孔を含む上記構造体/基材/基部および貫通孔を含む上記構造体/基材からなる4層の積層体;基部および貫通孔を含む上記構造体/基材/基部および貫通孔を含む上記構造体/基材/基部および貫通孔を含む上記構造体からなる5層の積層体;基材/基部および貫通孔を含む上記構造体/基材からなる3層の積層体;等が挙げられる。
また、本発明の積層体において、基部および貫通孔を含む上記構造体が最外層を形成する場合は、その外側に、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンフィルム、離型処理されたPETフィルム、離型紙、等の剥離層を設けてもよい。
【0051】
積層体に用いられる基材としては、例えば、紙、樹脂シートまたはフィルム、繊維質材料からなる織布または不織布等が挙げられる。樹脂シート若しくはフィルムまたは繊維質材料となる熱可塑性高分子材料としては、例えば、ポリエステル、ポリアミド、アクリル樹脂、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等の塩化ビニル系樹脂等が挙げられる。熱可塑性高分子材料から繊維質材料を作製する場合は、例えば、これら熱可塑性高分子材料を溶融紡糸すればよい。また、熱可塑性高分子材料から樹脂シートまたはフィルムを作製する場合には、例えば、これら熱可塑性高分子材料を溶融押出成形により作製すればよい。
その他の繊維質材料としては、例えば、綿、麻、絹、羊毛等の天然繊維;ガラスファイバー、炭素繊維等の無機繊維;等が挙げられる。これら繊維質材料から作製された織布が作製できるが、織布としては、織物、編物等が挙げられる。また、これら繊維質材料から、機械的方法、化学的方法、あるいはこれら方法を組み合わせることにより不織布は作製できる。
【0052】
本発明の積層体は、上述のようにして得られた基部および貫通孔を含む構造体を、基材に積層することにより得られる。積層する方法については、本発明の積層体が得られる限り特に制限はない。例えば、以下の方法が挙げられる。
(1)基部および貫通孔を含む構造体を、接着剤または熱により基材に圧着して積層体を製造する方法。
(2)上記メルトブロー法により、基材上に直接基部となる材料をメルトブローすることにより、積層体を製造する方法。
(3)凹凸を備えたパターン層を有する基盤上にアクリル系トリブロック共重合体(I)を含む配合物の溶融物を塗布した後、若しくは基盤上で配合物を溶融させた後に基部および貫通孔を含む物を基板上から剥離した後、溶融状態で基材に転写することにより積層体を製造する方法。
【0053】
これら方法の中でも、所望の形状の構造体が形成された積層体が作製しやすいこと等から、パターン印刷法を経て積層体を製造する、上記(3)の方法が好ましい一態様である。
【0054】
本発明で得られる積層体は、仮固定等における操作性と粘着性が両立されており、被着体への接着性に優れている。また、その積層体に含まれる構造体は、ホットメルト特性に優れる。そのため、本発明の積層体はその積層体を含むホットメルト用接着部材として用いることが好適な一態様である。
【0055】
本発明の積層体は種々の用途に使用できる。具体的には、例えば、表面保護用、マスキング用、包装・パッケージ用、事務用、ラベル用、装飾・表示用、製本用、ダイシングテープ用、医療・衛生用、合わせガラス用、ガラス飛散防止用、電気絶縁用、電子機器保持固定用、半導体製造用、光学表示フィルム用、粘着型光学フィルム用、電磁波シールド用または電気・電子部品の封止材用の粘着テープ・フィルム・シートの他、医療用材料、フィルター材料、食品包装材料、住宅材料、台所材料、帽子材料、等が挙げられる。
【0056】
表面保護用途としては、金属、プラスチック、ゴム、木材等、種々の材料に使用でき、具体的には塗料面、金属の塑性加工や深絞り加工時、自動車部材、光学部材の表面保護のために使用できる。該自動車部材としては、塗装外板、ホイール、ミラー、ウィンドウ、ライト、ライトカバー等が挙げられる。該光学部材としては、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ等の各種画像表示装置;偏光フィルム、偏光板、位相差板、導光板、拡散板、DVD等の光ディスク構成フィルム;電子・光学用途向け精密ファインコート面板等が挙げられる。
【0057】
マスキング用途としては、プリント基板やフレキシブルプリント基板の製造時のマスキング;電子機器でのメッキやハンダ処理時のマスキング;自動車等車両の製造、車両・建築物の塗装、捺染、土木工事見切り時のマスキング等が挙げられる。
【0058】
包装用途としては、重量物梱包、輸出梱包、段ボール箱の封緘、缶シール等が挙げられる。事務用途としては、事務汎用、封緘、書籍の補修、製図、メモ用等が挙げられる。ラベル用途としては、価格、商品表示、荷札、POP、ステッカー、ストライプ、ネームプレート、装飾、広告用等が挙げられる。
【0059】
ラベル用途としては、紙、加工紙(アルミ蒸着加工、アルミラミネート加工、ニス加工、樹脂加工等を施された紙)、合成紙等の紙類;セロハン、プラスチック材料、布、木材および金属製のフィルム等を基材層とするラベルが挙げられる。基材層としては、例えば、上質紙、アート紙、キャスト紙、サーマル紙、ホイル紙、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、OPPフィルム、ポリ乳酸フィルム、合成紙、合成紙サーマル、オーバーラミフィルム等が挙げられる。
【0060】
上記ラベルの被着体としては、プラスチックボトル、発泡プラスチック製ケース等のプラスチック製品;ダンボール箱等の紙製・ダンボール製品;ガラス瓶等のガラス製品;金属製品;セラミックス等その他の無機材料製品等が挙げられる。
【0061】
装飾・表示用途としては、危険表示シール、ラインテープ、配線マーキング、蓄光テープ、反射シート等が挙げられる。
【0062】
粘着型光学フィルム用途としては、例えば偏光フィルム、偏光板、位相差フィルム、視野角拡大フィルム、輝度向上フィルム、反射防止フィルム、アンチグレアフィルム、カラーフィルター、導光板、拡散フィルム、プリズムシート、電磁波シールドフィルム、近赤外線吸収フィルム、機能性複合光学フィルム、ITO貼合用フィルム、耐衝撃性付与フィルム、視認性向上フィルム等の片面若しくは両面の少なくとも一部または全部に粘着剤層を形成した光学フィルム等が挙げられる。かかる粘着型光学フィルムは、上記光学フィルムの表面保護のために用いられる保護フィルムも含む。粘着型光学フィルムは、液晶表示装置、PDP、有機EL表示装置、電子ペーパー、ゲーム機、モバイル端末等の各種画像表示装置に好適に用いられる。
【0063】
電気絶縁用途としては、コイルの保護被覆または絶縁、モータ・トランス等の層間絶縁等が挙げられる。電子機器保持固定用途としては、キャリアテープ、パッケージング、ブラウン管の固定、スプライシング、リブ補強等が挙げられる。半導体製造用としては、シリコーンウエハーの保護用等が挙げられる。
【0064】
医療・衛生用途としては、鎮痛消炎剤(プラスター、パップ)、感冒用貼付剤、鎮痒パッチ、角質軟化剤等の経皮吸収薬用途;救急絆創膏(殺菌剤入り)、サージカルドレッシング・サージカルテープ、絆創膏、止血絆、ヒト排泄物処理装着具用テープ(人工肛門固定テープ)、縫合用テープ、抗菌テープ、固定テーピング、自着性包帯、口腔粘膜貼付テープ、スポーツ用テープ、脱毛用テープ等種々のテープ用途;フェイスパック、目元潤いシート、角質剥離パック等の美容用途;オムツ、ペットシート等の衛生材料の結合用途;冷却シート、温熱カイロ、防塵、防水、害虫捕獲用等が挙げられる。
【0065】
電子・電気部品の封止材用途としては、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、有機EL照明、太陽電池等の封止剤が挙げられる。
【0066】
合わせガラス用途としては、自動車用フロントガラス、自動車用サイドガラス、自動車用サンルーフ、自動車用リアガラス、ヘッドアップディスプレイ用ガラス等が挙げられる。
【0067】
医療用材料としては、オムツ用部材、生理用ナプキン部材、手術着・白衣・患者衣・検診衣用部材、覆布・ガウン・ドレープ用部材、サポーター部材、滅菌袋用部材、お産用パット、乳房用パット、キャップ部材、マスク部材、シーツ用部材、抗菌マット、創傷治療用品、薬品吸収体、血液吸収体等が挙げられる。
【0068】
フィルター材料としては、除湿フィルター、集塵用フィルター、エアーフィルター、HEPAフィルター、液体カートリッジフィルター、自動車エンジン用エアークリーナー、ウィルス・バクテリア除去フィルター、ドライクリーニング用フィルター等が挙げられる。
【0069】
食品包装材料としては、トレーライナー、おしぼり、ふきん、ペーパータオル、除湿材料、抗菌シート、メッシュキャップ等が挙げられる。
【0070】
住宅材料としては、デスクマット、テーブルマット、テーブルクロス、テーブルデコレーション、透明フィルム、ランチョンマット、窓貼りフィルム、窓飾りシート、ウインドーレース、 バスカーテン、カフェカーテン、カーテンライナー、クッションフロアー、フロアクロス、フロアーシート、ジョイントマット、ズレ防止シート、床材とレベリング材の間のずれ止めシート、床材とモルタルの間のずれ止めシート、壁装飾シート、装飾シート、座椅子、コタツ上掛け、パネルドア、ペットマット、ツメ傷保護シート、ペットスロープ、ラグカバー、透湿防水シート、日除け、オーニング、ベランダ装飾部材、の他、ハウスラップ、ルーフィング等の土壌被覆材等が挙げられる、
【0071】
台所材料としては、食器棚シート、冷蔵庫シート、メッシュクロス、キッチンシート等が挙げられる。
【0072】
衣料材料としては、帽子、防寒衣料、肌着(シャツ、ブリーフ、腹巻き、ステテコ、パッチ、ショーツ、ガードル、ペチコート、レギンス、ソックス、タイツ等)、スポーツ衣料、カジュアル衣料等に用いられる吸汗シート、ムレ防止シート等が挙げられる。
【実施例】
【0073】
以下に本発明を実施例、比較例等によりさらに具体的に説明するが、本発明は以下の例により何ら限定されない。なお、以下に示す製造例1~6では、単量体やその他の化合物は、常法により乾燥精製し、窒素にて脱気して使用した。また、単量体や他の化合物の反応系への移送および供給は窒素雰囲気下で行った。
【0074】
以下の例において、得られた重合体、ブロック共重合体、およびランダム共重合体の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)はGPCによりポリスチレン換算分子量で求め、これら値から分子量分布(Mw/Mn)は算出した。GPCで用いた測定装置および条件は次のとおりである。
[GPC測定の装置および条件]
・装置:東ソー株式会社製GPC装置「HLC-8020」
・分離カラム:東ソー株式会社製「TSKgel GMHXL」、「G4000HXL」および「G5000HXL」を直列に連結
・溶離剤:テトラヒドロフラン
・溶離剤流量:1.0ml/分
・カラム温度:40℃
・検出方法:示差屈折率(RI)
【0075】
また、以下の例において、ブロック共重合体における各重合体ブロックの含有量は、1H-NMR測定によって求めた。1H-NMR測定で用いた測定装置および条件は次のとおりである。
[1H-NMR測定の装置および条件]
・装置:日本電子株式会社製核磁気共鳴装置「JNM-LA400」
・重溶媒:重水素化クロロホルム
1H-NMRスペクトルにおいて、3.6ppm、3.7ppmおよび4.0ppm付近のシグナルは、それぞれ、メタクリル酸メチル単位のエステル基(-O-CH
3)、アクリル酸メチル単位のエステル基(-O-CH
3)およびアクリル酸n-ブチル単位のエステル基(-O-CH
2-CH2-CH2-CH3)に帰属され、これらの積分値の比から各単量体単位のモル比を求め、これを単量体単位の分子量をもとに質量比に換算することによって各重合体ブロックの含有量を求めた。
【0076】
[通気性1]
厚さ95μmのポリエステル系不織布(廣瀬製紙株式会社製、15TH-36)からなる基材の片面に、製造例1~4のアクリル系トリブロック共重合体、実施例5~7の配合物、および比較例3のスチレン系トリブロック共重合体、比較例5の熱可塑性ポリウレタンエラストマーの厚さ100μmの平面層を溶融状態で転写する公知の印刷法により積層し、貫通孔を含まない構造体を有する積層体を作製し、40℃、90%RHの雰囲気下で、JISZ0208(B法)に準拠して測定することで、アクリル系トリブロック共重合体自身、スチレン系トリブロック共重合体自身、熱可塑性ポリウレタンエラストマー自身、配合物自身の通気性を評価した。
【0077】
[通気性2]
実施例1~7、11、比較例1、3で得られた基部および貫通孔を含む構造体(または貫通孔を含まない構造体)と貫通孔を有さない基材からなる積層体を幅10mm、長さ100mmに切り出し、40℃、90%RHの調湿下に保管した木板上に貼り合わせた後、木板下側から40℃、90%RHの加湿空気を供給した後の装着性を2段階で感性評価を行い、通気性2を判断した。なお、実施例11では、積層体の両面が構造体のため、一方の構造体の表面をPETフィルムでカバーした後、他方の面の構造体を木板上に貼り合わせた後、上述と同様の手法で通気性2を判断した。
1.一部で浮きが発生する。
2.浮きが発生することなく、剥がれない。
【0078】
[通気性3]
実施例8~10、比較例2、4~5で得られた基部および貫通孔を含む構造体と不織布基材とを有する積層体を身体に装着し、かいた汗による蒸れ性を3段階で感性評価を行った。
1.蒸れが大きく、皺が発生しやすい
2.蒸れは感じられるが、皺の発生までは起きない。
3.蒸れが感じられず、さらさら感を有する。
【0079】
[軽量化]
基部および貫通孔を含む構造体における、貫通孔が占める割合を空隙率として算出した。空隙率が50%以上の場合は軽量化できていると判断し、「○」と評価した。50%未満の場合は、軽量化できておらず、「△」と評価した。
【0080】
[糊残り]
実施例1~10、比較例1~5で得られた積層体を幅10mm、長さ100mmに切り出し、この切り出した積層体の構造体を有する側の面をガラス板に貼り合わせ、2kgローラで2往復させて圧着し評価用サンプルを作製した。評価用サンプルを室温で24時間静置した後に積層体をはがし、ガラス表面を目視確認した。糊残り等は見られず、被着体(ガラス板)の汚染が確認されなかった場合を「無」と評価し、糊残り等は見られ、被着体の汚染が確認された場合を「有」と評価した。
【0081】
[可塑剤移行性]
実施例1~10、比較例1~5では、得られた積層体を幅10mm、長さ100mmに切り出し、基部および貫通孔を含む構造体を有する側の面を1mm厚の軟質ポリ塩化ビニル(PVC)板(ダイヤプラスフィルム株式会社製、ヒシプレーンシートXS-004、可塑剤94PHR添加)に貼り合わせ、2kgローラで2往復させて圧着し評価用サンプルを作製した。実施例11では、積層体の両面が構造体のため、一方の構造体の表面をPETフィルムでカバーした後、上述の手法により、他方の面の構造体を軟質ポリ塩化ビニル(PVC)板に貼り合わせた。評価用サンプルを室温で5日間静置した後に積層体をはがした際の、基部および貫通孔を含む構造体表面、1mm厚の軟質PVC板の表面を目視確認した。被着体の軟質PVC板(1mm厚)側からの可塑剤移行がほとんどなく、糊残り等はなく、被着体の汚染が確認されなかった場合を「無」と評価し、可塑剤移行による糊残り等が見られ、被着体の汚染が確認された場合を「有」と評価した。
【0082】
[仮固定性]
実施例1~10、比較例1~5では、得られた積層体から縦50mm、横50mmの試験片を1枚切り出した後、上記サイズで位置決めした95μmのポリエステル系不織布(廣瀬製紙株式会社製、15TH-36)上に、上記積層体をセットし、2kgローラで2往復させてこれら試験片を圧着させた。実施例11では、得られた積層体から縦50mm、横50mmの試験片を1枚切り出した後、上記サイズで位置決めした95μmのポリエステル系不織布(廣瀬製紙株式会社製、15TH-36)2枚を用い、積層体を挟むようにしてセットし、2kgローラで2往復させてこれら試験片を圧着させた。位置決めした場所からのずれが発生しなかった場合を「A」、少しでもずれが確認された場合を「B」と評価した。
【0083】
[高極性被着体との接着力-1]
実施例1~10および比較例1~5で得られた積層体を幅10mm、長さ140mmの大きさにカットして試験片を作製した。試験片の基材側の面に接するようにアルミホイル(東洋アルミニウム製、RANAFOIL E、両面粗化タイプ、80μm)をセットし、その後この試験片を、試験片の構造体側の面が、厚さ1mmの被着体(SUS(ステンレス鋼)基材、またはアルミ基材)に接するように、被着体上にセットし、110℃で圧着させた。その後、室温(23℃)にて24時間保管後、ISO29862に準拠して、インストロン社製万能試験機「5566型」を用いて、23℃において50mm/minの速度で180°の方向に剥離して層間接着力を測定し評価した。
【0084】
[高極性被着体との接着力-2]
実施例11で得られた積層体を幅10mm、長さ140mmの大きさにカットして試験片を作製した。得られた試験片の両面を厚さ1mmのSUS基材で挟み、110℃で圧着させた。その後、室温(23℃)にて24時間保管後、接着状態を確認した。
【0085】
《製造例1》[アクリル系トリブロック共重合体(I-1)の製造]
(1)2Lの三口フラスコに三方コックを付け内部を窒素で置換した後、室温で撹拌しながら、トルエン938gと1,2-ジメトキシエタン20.2gを加え、続いて、イソブチルビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシ)アルミニウム20.8mmolを含有するトルエン溶液41.4gを加え、さらにsec-ブチルリチウム2.60mmolを含有するsec-ブチルリチウムのシクロヘキサン溶液1.53gを加えた。(2)続いて、これにメタクリル酸メチル21.8gを撹拌下室温で加えさらに60分間撹拌を続けた。反応液は当初、黄色に着色していたが、60分間撹拌後には無色となった。
(3)その後、重合液の内部温度を-30℃に冷却し、撹拌下アクリル酸メチルとアクリル酸n-ブチルの混合液(質量比75/25)246gを2時間かけて滴下し、滴下終了後-30℃でさらに5分間撹拌を続けた。
(4)その後、これにメタクリル酸メチル25.2gを加え、一晩室温にて撹拌した。
(5)メタノール12.2gを添加して重合反応を停止した後、得られた反応液を撹拌下15kgのメタノール中に注ぎ、白色沈殿物を析出させた。得られた白色沈殿物を回収し、乾燥させることにより、アクリル系トリブロック共重合体(I-1)260gを得た。得られたアクリル系トリブロック共重合体(I-1)の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を上述の方法でGPC測定により求め、これら値から(Mw/Mn)を算出した。また、上述した1H-NMR測定により、アクリル系トリブロック共重合体(I-1)中のメタクリル酸メチル単位からなる重合体ブロックの合計含有量を求めた。
アクリル系トリブロック共重合体(I-1)の性状を表1に示す。
【0086】
《製造例2》[アクリル系トリブロック共重合体(I-2)の製造]
(1)2Lの三口フラスコに三方コックを付け内部を窒素で置換した後、室温で撹拌しながら、トルエン938gと1,2-ジメトキシエタン20.2gを加え、続いて、イソブチルビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシ)アルミニウム20.8mmolを含有するトルエン溶液41.4gを加え、さらにsec-ブチルリチウム2.60mmolを含有するsec-ブチルリチウムのシクロヘキサン溶液1.53gを加えた。(2)続いて、これにメタクリル酸メチル21.8gを撹拌下室温で加えさらに60分間撹拌を続けた。反応液は当初、黄色に着色していたが、60分間撹拌後には無色となった。
(3)その後、重合液の内部温度を-30℃に冷却し、撹拌下アクリル酸メチルとアクリル酸n-ブチルの混合液(質量比50/50)246gを2時間かけて滴下し、滴下終了後-30℃でさらに5分間撹拌を続けた。
(4)その後、これにメタクリル酸メチル25.2gを加え、一晩室温にて撹拌した。
(5)メタノール12.2gを添加して重合反応を停止した後、得られた反応液を撹拌下15kgのメタノール中に注ぎ、白色沈殿物を析出させた。得られた白色沈殿物を回収し、乾燥させることにより、アクリル系トリブロック共重合体(I-2)260gを得た。得られたアクリル系トリブロック共重合体(I-2)の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を上述の方法でGPC測定により求め、これら値から(Mw/Mn)を算出した。また、上述した1H-NMR測定により、アクリル系トリブロック共重合体(I-2)中のメタクリル酸メチル単位からなる重合体ブロックの合計含有量を求めた。アクリル系トリブロック共重合体(I-2)の性状を表1に示す。
【0087】
《製造例3》[アクリル系トリブロック共重合体(I-3)の製造]
(1)2Lの三口フラスコに三方コックを付け内部を窒素で置換した後、室温で撹拌しながら、トルエン1154gと1,2-ジメトキシエタン24.9gを加え、続いて、イソブチルビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシ)アルミニウム19.0mmolを含有するトルエン溶液37.8gを加え、さらにsec-ブチルリチウム3.22mmolを含有するsec-ブチルリチウムのシクロヘキサン溶液1.89gを加えた。
(2)続いて、これにメタクリル酸メチル22.9gを撹拌下室温で加えさらに60分間撹拌を続けた。反応液は当初、黄色に着色していたが、60分間撹拌後には無色となった。
(3)その後、重合液の内部温度を-30℃に冷却し、撹拌下アクリル酸メチルとアクリル酸n-ブチルの混合液(質量比20/80)150gを2時間かけて滴下し、滴下終了後-30℃でさらに5分間撹拌を続けた。
(4)その後、これにメタクリル酸メチル38.2gを加え、一晩室温にて撹拌した。
(5)メタノール12.2gを添加して重合反応を停止した後、得られた反応液を撹拌下15kgのメタノール中に注ぎ、白色沈殿物を析出させた。得られた白色沈殿物を回収し、乾燥させることにより、アクリル系トリブロック共重合体(I-3)200gを得た。得られたアクリル系トリブロック共重合体(I-3)の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を上述の方法でGPC測定により求め、これら値から(Mw/Mn)を算出した。また、上述した1H-NMR測定により、アクリル系トリブロック共重合体(I-3)中のメタクリル酸メチル単位からなる重合体ブロックの合計含有量を求めた。
アクリル系トリブロック共重合体(I-3)の性状を表1に示す。
【0088】
《製造例4》[アクリル系トリブロック共重合体(I-4)の合成]
(1)2Lの三口フラスコに三方コックを付け内部を窒素で置換した後、室温で撹拌しながら、トルエン936gと1,2-ジメトキシエタン51.4gを加え、続いて、イソブチルビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシ)アルミニウム16.5mmolを含有するトルエン溶液32.9gを加え、さらにsec-ブチルリチウム7.00mmolを含有するsec-ブチルリチウムのシクロヘキサン溶液4.10gを加えた。
(2)続いて、これにメタクリル酸メチル65.0gを撹拌下、室温で加え、さらに60分間撹拌をつづけた。反応液は当初、黄色に着色していたが、60分間撹拌後には無色となった。
(3)その後、重合液の内部温度を-30℃に冷却し、撹拌下アクリル酸n-ブチル226gを2時間かけて滴下し、滴下終了後-30℃でさらに5分間撹拌を続けた。
(4)その後、これにメタクリル酸メチル161gを加え、一晩室温にて撹拌した。
(5)メタノール13.7gを添加して重合反応を停止した後、得られた反応液を撹拌下15kgのメタノール中に注ぎ、白色沈殿物を析出させた。得られた白色沈殿物を回収し、乾燥させることにより、アクリル系トリブロック共重合体(I-4)430gを得た。得られたアクリル系トリブロック共重合体(I-4)の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を上述の方法でGPC測定により求め、これら値から(Mw/Mn)を算出した。また、上述した1H-NMR測定により、アクリル系トリブロック共重合体(I-4)中のメタクリル酸メチル単位からなる重合体ブロックの合計含有量を求めた。アクリル系トリブロック共重合体(I-4)の性状を表1に示す。
【0089】
《製造例5》[アクリル系トリブロック共重合体(I-5)の合成]
(1)2Lの三口フラスコに三方コックを付け内部を窒素で置換した後、室温で撹拌しながら、トルエン936gと1,2-ジメトキシエタン51.4gを加え、続いて、イソブチルビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシ)アルミニウム16.5mmolを含有するトルエン溶液32.9gを加え、さらにsec-ブチルリチウム6.62mmolを含有するsec-ブチルリチウムのシクロヘキサン溶液3.88gを加えた。
(2)続いて、これにメタクリル酸メチル52.9gを撹拌下、室温で加え、さらに60分間撹拌をつづけた。反応液は当初、黄色に着色していたが、60分間撹拌後には無色となった。
(3)その後、重合液の内部温度を-30℃に冷却し、撹拌下アクリル酸n-ブチル226gを2時間かけて滴下し、滴下終了後-30℃でさらに5分間撹拌を続けた。
(4)その後、これにメタクリル酸メチル46.2gを加え、一晩室温にて撹拌した。
(5)メタノール13.7gを添加して重合反応を停止した後、得られた反応液を撹拌下15kgのメタノール中に注ぎ、白色沈殿物を析出させた。得られた白色沈殿物を回収し、乾燥させることにより、アクリル系トリブロック共重合体(I-5)300gを得た。得られたアクリル系トリブロック共重合体(I-5)の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を上述の方法でGPC測定により求め、これら値から(Mw/Mn)を算出した。また、上述した1H-NMR測定により、アクリル系トリブロック共重合体(I-5)中のメタクリル酸メチル単位からなる重合体ブロックの合計含有量を求めた。アクリル系トリブロック共重合体(I-5)の性状を表1に示す。
【0090】
《製造例6》[スチレン系トリブロック共重合体の製造]
撹拌装置付き耐圧容器中に、シクロヘキサン23kg、sec-ブチルリチウム(11質量%、シクロヘキサン溶液)99mlを加え、この溶液にスチレン467gを30分かけて加えて50℃で30分間重合した。続いてイソプレン6380gを60分かけて加えて50℃で90分間重合した。その後、さらにスチレン467gを30分かけて加えて50℃で30分間重合し、ポリスチレン-ポリイソプレン-ポリスチレントリブロック共重合体(以下、これをスチレン系トリブロック共重合体(A-1)と称する)を含む反応混合液を得た。得られたスチレン系トリブロック共重合体(A-1)の重量平均分子量は95000であり、1H-NMRによって測定したスチレン含有量は18質量%であった。
かかるスチレン系トリブロック共重合体(A-1)を含む反応混合液に、オクチル酸ニッケル(64質量%、シクロヘキサン溶液)90gにトリイソプロピルアルミニウム(20質量%、シクロヘキサン溶液)460gを加えて別途調製した水素添加触媒を添加し、80℃、1MPaの水素雰囲気下で水素添加反応を行い、上記したポリスチレン-ポリイソプレン-ポリスチレントリブロック共重合体の水素添加物(以下、これをスチレン系トリブロック共重合体(I'-1)と称する)を得た。得られたスチレン系トリブロック共重合体(I'-1)の重量平均分子量は102000であり、1H-NMRによって測定したスチレン含有量および水素添加率はそれぞれ17質量%、99%であった。
【0091】
上記製造例1~5で得たアクリル系トリブロック共重合体(I-1)~(I-5)のブロック構造、重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)、重合体ブロック(A)を構成するPMMA重合体ブロック(メタクリル酸メチル単位100質量%からなる重合体ブロック)の合計含有量、重合体ブロック(B)の構成成分、ならびに重合体ブロック(B)における質量比を表1に示す。なお、表1中、PMMAはメタクリル酸メチル単位100質量%からなる重合体ブロック、PMA/PnBAはアクリル酸メチル単位とアクリル酸n-ブチル単位のみからなるブロック、PnBAはアクリル酸n-ブチル単位100質量%からなるブロックを意味する。
【0092】
【0093】
《実施例1》[基部および貫通孔を含む構造体と基材とを有する積層体(II-1)の製造]
厚さ100μmのポリ塩化ビニル(PVC)製の基材フィルム(アズワン株式会社製)の片面に、製造例1で得られたアクリル系トリブロック共重合体(I-1)からなるメッシュ形状1(貫通孔の大きさ:縦横800μm、基部の太さ:300μm、厚さ100μm)の凹凸を備えたパターン層を溶融状態で転写する公知のパターン印刷法により積層し、基部および貫通孔を含む構造体(目付量:58g/m2)と基材とを有する積層体を作製した。
【0094】
《実施例2~3》[基部および貫通孔を含む構造体と基材とを有する積層体(II-2~3)の製造]
アクリル系トリブロック共重合体(I-1)を、製造例2~3で得られたアクリル系トリブロック共重合体(I-2)または(I-3)に変更した以外は、実施例1と同様の手法により、基部および貫通孔を含む構造体と基材とを有する積層体を作製した。
【0095】
《実施例4》[基部および貫通孔を含む構造体と基材とを有する積層体(II-4)の製造]
貫通孔の形状を、表2に記載のメッシュ形状2に変更した以外は、実施例2と同様の手法により、基部および貫通孔を含む構造体と基材とを有する積層体を作製した。
【0096】
《実施例5~7》[基部および貫通孔を含む構造体と基材とを有する積層体(II-5~7)の製造]
表2に記載の2種のアクリル系トリブロック共重合体を表2に記載の配合比に基づき、二軸押出機により220℃で溶融混練した後、押出し、切断することによって配合物を得た。アクリル系トリブロック共重合体(I-1)を、この配合物に変更した以外は、実施例1と同様の手法により、基部および貫通孔を含む構造体と基材とを有する積層体を作製した。
【0097】
《実施例8》[基部および貫通孔を含む構造体と基材とを有する積層体(II-8)の製造]
基材を、表2に記載のポリエステル系不織布(廣瀬製紙株式会社製、15TH-36、厚さ95μm)に変更した以外は、実施例1と同様の手法により、基部および貫通孔を含む構造体と不織布基材とを有する積層体を作製した。
【0098】
《実施例9~10》[基部および貫通孔を含む構造体と基材とを有する積層体(II-9~10)の製造]
アクリル系トリブロック共重合体(I-1)を、アクリル系トリブロック共重合体(I-2)または(I-3)に変更した以外は、実施例8と同様の手法により、基部および貫通孔を含む構造体と不織布基材とを有する積層体を作製した。
【0099】
《実施例11》[基部および貫通孔を含む構造体と基材とを有する積層体(II-11)の製造]
表4に記載の厚みのポリ塩化ビニル(PVC)製の基材フィルム(アズワン株式会社製)の両面に、製造例2で得られたアクリル系トリブロック共重合体(I-2)からなるメッシュ形状1(貫通孔の大きさ:縦横800μm、基部の太さ:300μm、厚さ100μm)の凹凸を備えたパターン層を溶融状態で転写する公知のパターン印刷法により積層し、基材の両面に基部および貫通孔を含む構造体(構造体1および2)(目付量:58g/m2)を有する積層体を作製した。
【0100】
《比較例1》[貫通孔を含まない構造体と基材とを有する積層体(III-1)の製造]
厚さ100μmのPVC製の基材フィルムの片面に、製造例2で得られたアクリル系トリブロック共重合体(I-2)からなる厚さ100μm(目付量:110g/m2)の平面層を溶融状態で転写する公知の印刷法により積層し、貫通孔を含まない構造体と基材とを有する積層体を作製した。
【0101】
《比較例2》[貫通孔を含まない構造体と基材とを有する積層体(III-2)の製造]
基材を、表3に記載のポリエステル系不織布(廣瀬製紙株式会社製、15TH-36、厚さ95μm)に変更した以外は、比較例1と同様の手法により、貫通孔を含まない構造体と不織布基材とを有する積層体を作製した。
【0102】
《比較例3》[基部および貫通孔を含む構造体と基材とを有する積層体(III-3)の製造]
アクリル系トリブロック共重合体(I-1)を、製造例5で得られたスチレン系トリブロック共重合体(I'-1)に変更した以外は、実施例1と同様の手法により、基部および貫通孔を含む構造体と基材とを有する積層体を作製した。
【0103】
《比較例4》[基部および貫通孔を含む構造体と基材とを有する積層体(III-4)の製造]
基材を、表3に記載のポリエステル系不織布(廣瀬製紙株式会社製、15TH-36、厚さ95μm)に変更した以外は、比較例3と同様の手法により、基部および貫通孔を含む構造体と不織布基材とを有する積層体を作製した。
【0104】
《比較例5》[基部および貫通孔を含む構造体と基材とを有する積層体(III-5)の製造]
アクリル系トリブロック共重合体(I-1)を、熱可塑性ポリウレタンエラストマー(東ソー株式会社製、パールセンU-204B)に変更した以外は、実施例8と同様の手法により、基部および貫通孔を含む構造体と不織布基材とを有する積層体を作製した。
【0105】
通気性1の方法により、構造体の基部を構成する重合体自身、配合物自身の通気性の評価を行った。本発明の構造体の基部を構成する材料となる、製造例1~3で得られたアクリル系トリブロック共重合体(I-1)~(I-3)自身からなる層、実施例5~7で得られた配合物自身からなる層(それぞれ厚さ:100μm)、比較例5に用いた熱可塑性ポリウレタンエラストマーについては、400g/m2・24hr以上の高い通気性を示した。一方、比較例3、4に用いたスチレン系トリブロック共重合体自身からなる層(それぞれ厚さ:100μm)については、30g/m2・24hrと通気性が非常に悪かった。
【0106】
実施例1~7の結果(表2)に示されるように、本発明の条件を満たす基部および貫通孔を含む構造体とポリ塩化ビニル(PVC)製の基材とを有する積層体については、通気性2の評価結果は、「2」であり、通気性が高いために加湿空気による影響が小さく、基部および貫通孔を含む構造体と基材とを有する積層体が木板から剥がれることはなかった。軽量化の評価においては、いずれも基部および貫通孔を含む構造体の空隙率は50%以上であり、軽量化されていると判断し、「○」とした。また、可塑剤移行性の評価においては、被着体の1mm厚の軟質PVC板の表面を目視確認したところ、被着体の軟質PVC板(1mm厚)側からの可塑剤移行による糊残り等はなく、被着体汚染は「無」とした。また、仮固定性の評価においては、位置決めした場所からのずれが発生せず、仮固定性が高いことから「A」とした。また、高極性被着体との接着性に関しては、SUS板、アルミ板ともに、15N/10mm以上の高い接着性を示した。
【0107】
実施例8~10の結果(表2)に示されるように、本発明の条件を満たす基部および貫通孔を含む構造体と不織布基材とを有する積層体については、通気性3の評価結果は、「3」であり、蒸れが感じられず、さらさら感を有していた。軽量化の評価においては、いずれも基部および貫通孔を含む構造体の空隙率は50%以上であり、軽量化されていると判断し、「○」とした。また、可塑剤移行性の評価においては、被着体の1mm厚の軟質PVC板の表面を目視確認したところ、被着体の軟質PVC板(1mm厚)側からの可塑剤移行による糊残り等はなく、被着体汚染は「無」とした。また、仮固定性の評価においては、位置決めした場所からのずれが発生せず、仮固定性が高いことから「A」とした。また、高極性被着体との接着性に関しては、SUS板、アルミ板ともに、15N/10mm以上の高い接着性を示した。
【0108】
実施例11の結果(表4)に示されるように、本発明の条件を満たす、基材の両面に基部および貫通孔を含む構造体を有する積層体については、通気性2の評価結果は、「2」であり、通気性が高いために加湿空気による影響が小さく、基部および貫通孔を含む構造体と基材とを有する積層体が木板から剥がれることはなかった。軽量化の評価においては、いずれも基部および貫通孔を含む構造体の空隙率は50%以上であり、軽量化されていると判断し、「○」とした。可塑剤移行性の評価においては、被着体の1mm厚の軟質PVC板の表面を目視確認したところ、被着体の軟質PVC板(1mm厚)側からの可塑剤移行による糊残り等はなく、被着体汚染は「無」とした。また、仮固定性の評価においては、位置決めした場所からのずれが発生せず、仮固定性が高いことから「A」とした。また、また、ステンレス鋼板同士を手で剥がそうとしたが、ずれないほど、強固に接着していることを確認した。
【0109】
一方、比較例1の結果(表3)に示されるように、本発明の条件を満たさない貫通孔を含まない構造体とPVC製の基材とを有する積層体の場合は、通気性2の評価結果は、「1」であり、空隙部がないために加湿空気による影響が大きく、構造体と木板の間で一部浮きが発生した。また、軽量化の評価においては、貫通孔を有さない構造体のため、軽量化にはつながらず、「△」とした。また、可塑剤移行性の評価においては、被着体の1mm厚の軟質PVC板の表面を目視確認したところ、被着体の軟質PVC板(1mm厚)側からの可塑剤移行による糊残り等はなく、被着体汚染は「無」とした。また、仮固定性の評価においては、位置決めした場所からのずれが発生せず、仮固定性が高いことから「A」とした。また、高極性被着体との接着性に関しては、SUS板、アルミ板ともに、15N/10mm以上の高い接着性を示した。
【0110】
比較例2の結果(表3)に示されるように、本発明の条件を満たさない貫通孔を含まない構造体と不織布基材とを有する積層体については、通気性3の評価結果は、「1」であり、空隙部がないために、構造体と身体の間で蒸れが大きく、皺が発生しやすかった。また、軽量化の評価においては、貫通孔を有さない構造体のため、軽量化にはつながらず、「△」とした。また、可塑剤移行性の評価においては、被着体の1mm厚の軟質PVC板の表面を目視確認したところ、被着体の軟質PVC板(1mm厚)側からの可塑剤移行による糊残り等はなく、被着体汚染は「無」とした。また、仮固定性の評価においては、位置決めした場所からのずれが発生せず、仮固定性が高いことから「A」とした。また、高極性被着体との接着性に関しては、SUS板、アルミ板ともに、15N/10mm以上の高い接着性を示した。
【0111】
比較例3の結果(表3)に示されるように、本発明の条件を満たさない基部および貫通孔を含む構造体とPVC製の基材とを有する積層体の場合は、通気性2の評価結果は、「1」であり、空隙部はあるものの、通気性の低い基部および貫通孔を含む構造体のため、加湿空気による影響が大きく、構造体と木板の間で一部浮きが発生した。また、軽量化の評価においては、いずれも基部および貫通孔を含む構造体の空隙率は50%以上であり、軽量化されていると判断し、「○」とした。また、可塑剤移行性の評価においては、被着体の1mm厚の軟質PVC板の表面を目視確認したところ、被着体の軟質PVC板(1mm厚)側からの可塑剤移行による糊残り等があり、被着体汚染は「有」とした。また、仮固定性の評価においては、位置決めした場所からのずれが発生し、仮固定性が低かったことから「B」とした。また、高極性被着体との接着性に関しては、SUS板、アルミ板ともに、15N/10mm未満であり、接着性が低かった。
【0112】
比較例4の結果(表3)に示されるように、本発明の条件を満たさない基部および貫通孔を含む構造体と不織布基材とを有する積層体の場合は、通気性3の評価結果は、「2」であり、空隙部はあるものの、通気性の低い基部および貫通孔を含む構造体のため、構造体と身体の間で皺は発生しなかったものの、蒸れは感じられた。また、軽量化の評価においては、いずれも基部および貫通孔を含む構造体の空隙率は50%以上であり、軽量化されていると判断し、「○」とした。また、可塑剤移行性の評価においては、被着体の1mm厚の軟質PVC板の表面を目視確認したところ、被着体の軟質PVC板(1mm厚)側からの可塑剤移行による糊残り等があり、被着体汚染は「有」とした。また、仮固定性の評価においては、位置決めした場所からのずれが発生し、仮固定性が低かったことから「B」とした。また、高極性被着体との接着性に関しては、SUS板、アルミ板ともに、10N/10mm未満であり、接着性が低かった。
【0113】
比較例5の結果(表3)に示されるように、本発明の条件を満たさない基部および貫通孔を含む構造体と不織布基材とを有する積層体の場合は、通気性3の評価結果は、「3」であり、蒸れが感じられず、さらさら感を有していた。また、軽量化の評価においては、いずれも基部および貫通孔を含む構造体の空隙率は50%以上であり、軽量化されていると判断し、「○」とした。また、可塑剤移行性の評価においては、被着体の1mm厚の軟質PVC板の表面を目視確認したところ、被着体の軟質PVC板(1mm厚)側からの可塑剤移行による糊残り等はなく、被着体汚染は「無」とした。また、仮固定性の評価においては、位置決めした場所からのずれが発生し、仮固定性が低かったことから「B」とした。また、高極性被着体との接着性に関しては、SUS板、アルミ板ともに、15N/10mm未満であり、接着性が低かった。
【0114】
以上から、本発明のアクリル系トリブロック共重合体を含有する基部および貫通孔を含む構造体と基材とを有する積層体は、仮固定等における操作性と粘着性の両立が可能であり、かつ糊残りの抑制が可能であり、様々な被着体、特に金属への接着性にも優れることがわかる。
【0115】
【0116】
【0117】