(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-06
(45)【発行日】2023-10-17
(54)【発明の名称】水性種子被覆組成物
(51)【国際特許分類】
A01N 25/04 20060101AFI20231010BHJP
A01C 1/06 20060101ALI20231010BHJP
A01N 25/10 20060101ALI20231010BHJP
【FI】
A01N25/04 102
A01C1/06 Z
A01N25/10
(21)【出願番号】P 2020569965
(86)(22)【出願日】2019-06-18
(86)【国際出願番号】 US2019037636
(87)【国際公開番号】W WO2019246031
(87)【国際公開日】2019-12-26
【審査請求日】2022-06-02
(32)【優先日】2018-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【氏名又は名称】森住 憲一
(72)【発明者】
【氏名】ゲブリウェト・ゲブレメスケル
(72)【発明者】
【氏名】加藤 雅己
(72)【発明者】
【氏名】レヴィ・ノイフェルト
【審査官】神野 将志
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-514181(JP,A)
【文献】特表2016-513123(JP,A)
【文献】特開2015-077100(JP,A)
【文献】米国特許第03947996(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性媒体中のポリビニルアルコールポリマーバインダー及び疎水性農薬添加剤の溶液、分散液、乳状液又は懸濁液を含む被覆組成物であって、
ここで、前記疎水性農薬添加剤は、殺菌剤、殺虫剤及び抗線虫薬から成る群から選択される少なくとも1種の疎水性農薬添加剤を含み、
(1)前記ポリビニルアルコールは、
(A)(a)モノマーの合計モル量に基づいて0.1モル%から15モル%のエチレン含有量、
(b)300から3000の粘度-平均重合度、及び
(c)85モル%から100モル%の加水分解度
を有する酢酸ビニルとコモノマーとしてのエチレンとの加水分解されたコポリマー;及び
(B)酢酸ビニルとコモノマーとしての1種以上の不飽和酸との加水分解されたコポリマー、ここで、
(a)前記不飽和酸は、
(i)不飽和モノカルボン酸、
(ii)不飽和ジカルボン酸、
(iii)(i)のアルキルエステル、
(iv)(ii)のアルキルエステル、
(v)(i)のアルカリ金属塩、
(vi)(ii)のアルカリ金属塩、
(vii)(i)のアルカリ土類金属塩、
(viii)(ii)のアルカリ土類金属塩、及び
(ix)(i)の無水物及び(x)(ii)の無水物、
から成る群から選択され、
(b)前記コポリマーは、
(i)モノマーの合計モル量に基づいて0.1モル%から15モル%の不飽和酸含有量、
(ii)300から3000の粘度-平均重合度、及び
(iii)70モル%から100モル%の加水分解度
を有する
から成る群から選択される;及び
(2)前記被覆組成物は、被覆組成物の総重量に基づいて0.5重量%から10重量%のポリビニルアルコールを含む
ことを特徴とする、前記被覆組成物。
【請求項2】
前記被覆組成物が、殺菌
剤を含むことを特徴とする、請求項1に記載の被覆組成物。
【請求項3】
前記ポリビニルアルコールが(A)であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の被覆組成物。
【請求項4】
前記ポリビニルアルコールが(B)であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の被覆組成物。
【請求項5】
前記ポリビニルアルコール(B)が、50重量%以上の冷水溶解度(CWS、20℃)を有することを特徴とする、請求項4に記載の被覆組成物。
【請求項6】
ポリビニルアルコールのフィルムでカプセル化された種子であって、前記ポリビニルアルコールは、
(A)(a)モノマーの合計モル量に基づいて0.1モル%から15モル%のエチレン含有量、
(b)300から3000の粘度-平均重合度、及び
(c)85モル%から100モル%の加水分解度
を有する酢酸ビニルとコモノマーとしてのエチレンとの加水分解されたコポリマー;
及び
(B)酢酸ビニルとコモノマーとしての1種以上の不飽和酸との加水分解されたコポリマー、
ここで、
(a)前記不飽和酸は、
(i)不飽和モノカルボン酸、
(ii)不飽和ジカルボン酸、
(iii)(i)のアルキルエステル、
(iv)(ii)のアルキルエステル、
(v)(i)のアルカリ金属塩、
(vi)(ii)のアルカリ金属塩、
(vii)(i)のアルカリ土類金属塩、
(viii)(ii)のアルカリ土類金属塩、及び
(ix)(i)の無水物及び
(x)(ii)の無水物、
から成る群から選択され、
(b)前記コポリマーは、
(i)モノマーの合計モル量に基づいて0.1モル%から15モル%の不飽和酸含有量、
(ii)300から3000の粘度-平均重合度、及び
(iii)70モル%から100モル%の加水分解度
を有する
から成る群から選択される:ここで
前記フィルムが疎水性農薬添加剤をさらに含む、ことを特徴とする、前記種子。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか一項に記載の被覆組成物を前記種子に塗布し、そのように塗布されたコーティングを乾燥させることによって前記種子が得られることを特徴とする、請求項6に記載の種子。
【請求項8】
請求項6又は請求項7に記載された複数の種子であって、0.1グラム/100000種子未満の平均バルク粉塵発生特性を有することを特徴とする、複数の種子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、バインダーとして特定のポリビニルアルコールコポリマー樹脂に基づく水性種子被覆組成物及びこのような被覆組成物で被覆された種子に関する。得られた被覆種子は、バルク低発塵性、バルク種子流動性及び良好な発芽特性の望ましい組み合わせを有する。
【0002】
特に、ポリビニルアルコールコポリマーは、(a)酢酸ビニルと少量のエチレンとの特定の高度に加水分解されたコポリマー、及び(b)酢酸ビニルと少量の不飽和酸コモノマー成分との特定の高度に加水分解されたコポリマーから選択される。
【0003】
種子被覆組成物は、疎水性「農薬」添加剤及び他の任意の添加剤と共に、水性担体媒体中にこのようなポリビニルアルコールコポリマーを含む。
【背景技術】
【0004】
種子処理は、取り扱い性を改善し、発芽前に種子を保護し、並びに発芽方法を支援するために種子に材料を塗布することを指す。加えて、種子処理は、殺虫剤、殺菌剤及び抗線虫薬などの活性「農薬」原料を組み込むことによって、種子又は得られる植物に害虫抵抗性を授ける。種子の取り扱い性を改善する植物成長調節剤を種子被覆配合物に加えてもよい。種子処理により、葉面殺菌剤又は殺虫剤の伝統的な散布が不要となり、又は少なくともその必要性が低減される。
【0005】
残念なことに、多くの既知の種子処理は、種子材料の貯蔵及び塗布中に過剰な塵を生成することが知られており、バルク種子の塊化(clumping)をもたらす可能性や、発芽効率を低減させる可能性がある。
【0006】
種子の取り扱い、発芽、貯蔵及び成長性能を改善する多様及び多数の種子被覆組成物及び原料が、文献に開示されている。例えば、米国特許第3698133号明細書、米国特許第3707807号明細書、米国特許第3947996号明細書、米国特許第4249343号明細書、米国特許第4272417号明細書、米国特許第4729190号明細書、米国特許第5849320号明細書、米国特許第5876739号明細書、米国特許第90101131号明細書、国際公開第90/11011号、国際公開第2005/062899号、国際公開第2008/037489号、国際公開第2013/166020号及び国際公開第2017/187994号を参照されたい。
【0007】
水性種子被覆組成物は、典型的には、水性媒体、1種以上の機能性添加剤、及び塗布後乾燥するとすぐに種々の機能性添加剤のためのマトリックスを形成するバインダー、並びに種子を覆うための保護フィルムを含む。
【0008】
いくつかの種子処理は、予防的処理及び強化、例えば、1種以上の植物誘導物質及び/又は接種剤と組み合わせた農薬(例えば殺菌剤及び/又は殺虫剤)を有する処理を組み込む。
【0009】
上記に組み込まれた文献に開示されているように、多くの異なる材料が水性種子被覆組成物中のバインダーとして使用されている。
【0010】
開示されたバインダー材料の中には、一般に、ポリビニルアルコールホモポリマー、コポリマー、及びそれらの機能的に修飾された及び/又は架橋された種類が含まれる。例えば、上記に組み込まれた米国特許第3707807号明細書、米国特許第3947996号明細書、米国特許第4249343号明細書、米国特許第4272417号明細書、米国特許第5849320号明細書、米国特許第5876739号明細書、米国特許第90101131号明細書、及び国際公開第2017/187994号を参照されたい。
【0011】
いくつかのポリビニルアルコールを含有する市販のポリマーバインダーの中には、低い水溶性/分散性、低い被覆種子流動性、高水準の粉塵発生(ダストオフ)及び/又は植栽特性に乏しいものがある。
【0012】
例えば、粉塵発生を低減するために最適化された種子被覆添加剤により、種子流動性が乏しくなることがある。これは、コーティングの粘着性を高めて発塵の影響を受けにくくするために加えられた原料が、通常は粉塵発生を低減する粘着性が流動性の問題を引き起こすため、許容できないほどの乏しい流動性及び植栽特性を引き起こす可能性があるという事実によって説明することができる。
【0013】
一方、コーティングの種子流動性特性を増加させる因子は、粉塵発生特性(ダストオフ性)に対して負の影響を有する。機械的に種子を植えるためには、種子が凝集しないことが不可欠である。疎水性が不十分なポリマーバインダーで被覆された種子は、特に、夏に貯蔵庫で遭遇するような暖かく湿った空気に曝されると、互いに固着する。
【0014】
長期間の貯蔵安定性を改善し、種子の発芽及び種子の取り扱い性能を維持又は改善さえしながら、低粉塵発生の特性を提供する、水系の生分解性及び費用対効果の高い種子コーティングが必要とされる。本発明は、バインダーとしてある特定のポリビニルアルコールに基づく種子処理配合物を開示しており、これを種子に塗布すると、粉塵発生特性、長期保存安定性、種子流動性、植栽性、並びに発芽特性の良好な組み合わせの被覆種子が提供される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】米国特許第3698133号明細書
【文献】米国特許第3707807号明細書
【文献】米国特許第3947996号明細書
【文献】米国特許第4249343号明細書
【文献】米国特許第4272417号明細書
【文献】米国特許第4729190号明細書
【文献】米国特許第5849320号明細書
【文献】米国特許第5876739号明細書
【文献】米国特許第90101131号明細書
【文献】国際公開第90/11011号
【文献】国際公開第2005/062899号
【文献】国際公開第2008/037489号
【文献】国際公開第2013/166020号
【文献】国際公開第2017/187994号
【発明の概要】
【0016】
本発明によれば、水性種子被覆組成物中で疎水性農薬と組み合わせた、ある特定のポリビニルアルコールコポリマーバインダーが、塵落ち特性、種子流動性、貯蔵安定性及び発芽率などの望ましい特徴の全体的な組み合わせを提供することが見出された。
【0017】
第1の態様において、本発明は、水性媒体中のポリビニルアルコールポリマーバインダー及び疎水性農薬添加剤の溶液、分散液、乳状液又は懸濁液を含む、被覆組成物を提供する。:
【0018】
ここで、(1)上記ポリビニルアルコールバインダーは、以下の(A)及び(B)から成る群から選択されるポリビニルアルコールコポリマーである。
【0019】
(A)酢酸ビニルとコモノマーとしてのエチレンとの加水分解されたコポリマーであって、
【0020】
(a)モノマーの合計モル量に基づいて約0.1モル%から約15モル%のエチレン含有量、
【0021】
(b)約300から約3000の粘度-平均重合度、及び
【0022】
(c)約85モル%から100モル%の加水分解度を有する、コポリマー。
【0023】
(B)酢酸ビニルとコモノマーとしての1種以上の不飽和酸との加水分解されたコポリマーであって、
【0024】
(a)上記不飽和酸は、
【0025】
(i)不飽和モノカルボン酸、
【0026】
(ii)不飽和ジカルボン酸、
【0027】
(iii)(i)のアルキルエステル、
【0028】
(iv)(ii)のアルキルエステル、
【0029】
(v)(i)のアルカリ金属塩、
【0030】
(vi)(ii)のアルカリ金属塩、
【0031】
(vii)(i)のアルカリ土類金属塩、
【0032】
(viii)(ii)のアルカリ土類金属塩、及び
【0033】
(ix)(i)の無水物及び(x)(ii)の無水物から成る群から選択され、及び
【0034】
(b)上記コポリマーは、
【0035】
(i)モノマーの合計モル量に基づいて約0.1モル%から約15モル%の不飽和酸含有量、
【0036】
(ii)約300から約3000の粘度-平均重合度、
【0037】
(iii)約70モル%から100モル%の加水分解度を有する、コポリマー。
【0038】
また、(2)上記被覆組成物は、被覆組成物の合計重量に基づいて、約0.5重量%から約10重量%のポリビニルアルコールバインダーを含む。
【0039】
第2の態様において、本発明は、ポリビニルアルコールバインダー及び疎水性農薬添加剤のフィルムでカプセル化された種子を提供し、ここで、上記ポリビニルアルコールバインダーは、以下の(A)及び(B)から成る群から選択されるポリビニルアルコールコポリマーである。
【0040】
(A)酢酸ビニルとコモノマーとしてのエチレンとの加水分解されたコポリマーであって、
【0041】
(a)モノマーの合計モル量に基づいて約0.1モル%から約15モル%のエチレン含有量、
【0042】
(b)約300から約3000の粘度-平均重合度、及び
【0043】
(c)約85モル%から100モル%の加水分解度を有する、コポリマー。
【0044】
(B)酢酸ビニルとコモノマーとしての1種以上の不飽和酸との加水分解されたコポリマーであって、
【0045】
(a)上記不飽和酸は、
【0046】
(i)不飽和モノカルボン酸、
【0047】
(ii)不飽和ジカルボン酸、
【0048】
(iii)(i)のアルキルエステル、
【0049】
(iv)(ii)のアルキルエステル、
【0050】
(v)(i)のアルカリ金属塩、
【0051】
(vi)(ii)のアルカリ金属塩、
【0052】
(vii)(i)のアルカリ土類金属塩、
【0053】
(viii)(ii)のアルカリ土類金属塩、及び
【0054】
(ix)(i)の無水物及び
【0055】
(x)(ii)の無水物から成る群から選択され、
【0056】
(b)上記コポリマーは、
【0057】
(i)モノマーの合計モル量に基づいて約0.1モル%から約15モル%の不飽和酸含有量、
【0058】
(ii)約300から約3000の粘度-平均重合度、及び
【0059】
(iii)約70モル%から100モル%の加水分解度を有する、コポリマー。
【0060】
第3の態様において、本発明は、上に記述された被覆組成物を種子に塗布し、塗布されたコーティングを乾燥させることによって得られた種子を提供する。
【0061】
第4の態様において、本発明は、上に記述された複数の種子を提供し、上記の複数は、約0.1g/l00000種子未満の平均粉塵発生特性を有する。
【0062】
ある実施形態では、上記被覆組成物は、さらにデンプンを含む。
【0063】
本発明のこれら及び他の実施形態、特徴及び利点は、以下の詳細な説明を読むことで、当業者によってより容易に理解されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0064】
本発明は、水性種子被覆組成物、このような被覆組成物ポリビニルアルコール生成物で被覆された種子、特定のバルク粉塵発生特性を有する複数のこのような種子に関する。さらなる詳細は下記で提供される。
【0065】
本明細書の文脈において、本明細書中で言及される全ての刊行物、特許出願、特許及び他の参考文献は、もし他に示されていない場合、全ての目的のために、あたかも完全に記載されているかのように、それらの全体が参照により本明細書に明示的に組み込まれるものとする。
【0066】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術的及び科学的用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。矛盾がある場合には、定義を含む、本明細書が制御する。
【0067】
明白に記されている場合を除き、商標は大文字で示される。
【0068】
他に明言されない限り、すべてのパーセンテージ、割合、比率等は重量によるものである。
【0069】
他に明言されない限り、psi単位で表現された圧力はゲージ圧であり、kPa単位で表現された圧力は絶対圧である。しかしながら、圧力差は絶対圧(例えば、圧力1は圧力2より25psi高い)として表現される。
【0070】
量、濃度、その他の値又はパラメータが、範囲又は上下の値のリストとして与えられる場合、これは、範囲が別々に開示されているか否かにかかわらず、任意の上限及び下限の任意の対から形成される全ての範囲が具体的に開示されているものとして理解されるべきである。数値の範囲が本明細書に列挙されている場合、他に明言がない限り、その範囲は、その終点、及びその範囲内の全ての整数及び分数を含むことを意図している。本開示の幅は、範囲を定義する場合に列挙される特定の値に限定されることは意図されていない。
【0071】
用語「約」が範囲の値又は終点を記述する際に使用される場合、本開示は、参照される特定の値又は終点を含むと理解されるべきである。
【0072】
本明細書中で使用される、用語「含む(comprises)」、「含んでいる(comprising)」、「含有する(includes)」、「含有している(including)」、「有する(has)」、「有している(having)」又はそれらの任意の他の変形は、非排除的な包含に及ぶことを意図する。例えば、要素のリストを含む方法、方式、物品、又は装置は、必ずしもこれらの要素のみに限定されず、このような方法、方式、物品、又は装置に明白に載っていないか、又は固有でない他の要素を含むことができる。
【0073】
移行句「から成る(consisting of)」は、請求項で特定されていない要素、工程又は原料を除き、通常それと共に関連する不純物を除いて、列挙されているもの以外の材料を含むことで請求項を閉じる。句「から成る」は、請求項の本体部の節にある場合、前文の直後ではなく、その節に記載されている要素のみを制限する:他の要素は、全体として請求項から除外されない。
【0074】
移行句「本質的に~から成る(consisting essentially of)」は、請求項の幅を特定の材料又は工程に限定し、請求項の発明の基本的及び新規な特性に実質的に影響を与えない。請求項の「本質的に~から成る」は、「から成る」形式で書かれた閉じた請求項及び「含む」形式で作成された完全に開いた請求項の間の中間の立場を占める。本明細書に定義される任意の添加剤、そのような添加剤に適切なレベルで、及び少量の不純物は、用語「本質的に~から成る」によって組成物から除外されない。
【0075】
さらに、明白に反対の明言がない限り、「又は」及び「及び/又は」は包括的なものを指し、排除的なものを指すものではない。例えば、条件A又はB、又は、A及び/又はBは、以下の:Aは真(又は存在する)及びBは偽(又は存在しない)、Aは偽(又は存在しない)及びBは真(又は存在する)、及びAとBの両方は真(又は存在する)のいずれかに1つよって満たされている。
【0076】
本明細書における様々な要素及び成分を説明するための「1つ(a)」又は「1つ(an)」の使用は、単に便宜のためであり、開示の一般的な意味を与えるためである。この記述は、1つ又は少なくとも1つを含むように読むべきであり、単数形は、それが別の意味であることが明らかでない限り、複数形も含む。
【0077】
本明細書で使用される用語「主な部分(predominant portion)」は、本明細書で別の定義がされない限り、参照材料の50%よりも多いことを意味する。特定されていない場合、パーセントは、分子(水素、メタン、二酸化炭素、一酸化炭素及び硫化水素など)を参照する場合はモル量基準であり、その他(炭素含有量など)は、重量基準である。
【0078】
本明細書で使用される用語「かなりの部分(substantial portion)」又は「実質上(substantially)」は、他に定義されない限り、使用される文脈において当業者によって理解されるように、全て、ほぼ全て又は圧倒的多数を意味する。これは、工業規模又は商業規模の状況で通常生じる100%からの何らかの合理的な分散を考慮に入れることを意図している。
【0079】
用語「激減した(depleted)」又は「低減した(reduced)」は、元々の存在から低減することと同義である。例えば、流れ(stream)から材料のかなりの部分を除去することは、その材料の実質上激減した、材料-激減流れを生成する。逆に、用語「高める(enriched)」又は「増加する(increased)」は、元々の存在よりも大きいことと同義である。
【0080】
本明細書で使用される、用語「コポリマー」は、2種以上のコモノマーの共重合から得られた共重合ユニットを含む、ポリマーを指す。この点について、コポリマーは、そのコモノマーの構成又はそのコモノマーの構成の量、例えば「酢酸ビニル及び15モル%のコモノマーを含むコポリマー」、又は同様の記述を参照して本明細書に記述され得る。このような記述は、コモノマーを共重合ユニットとして指さないという点で、コポリマーの慣用的な命名法、例えば国際純正・応用化学連合(IUPAC)命名法を含まないという点で;プロダクト・バイ・プロセスの用語を使用していないという点で;又は別の理由のため;非公式とみなすことができる。しかしながら、本明細書で使用される、コポリマーをそのコモノマーの構成又はそのコモノマーの構成の量を参照して記述することは、コポリマーが特定のコモノマーの共重合ユニット(特定された場合は、特定された量で)を包含することを意味する。自然に引き出せる結論として、コポリマーは、限定された状況においてそのようであると明白に明言されない限り、与えられたコモノマーを与えられた量で包含する反応混合物の生成物ではない。
【0081】
用語「ユニット」は、ユニット操作を指す。1つよりも多い「ユニット」が存在すると記述される場合、他に記述がない限り、これらのユニットは並列のように操作される。しかしながら、1つの「ユニット」は、文脈に応じて、直列又は並列の1つより多いユニットを含み得る。例えば、熱処理ユニットは、第1の冷却ユニットに続いて第2の冷却ユニットを直列に含み得る。
【0082】
本明細書で使用される用語「自由に流れる(free-flowing)」粒子(又は凝集体又は種子)は、当該技術分野の当業者によってよく理解されるように、粒子が実質的にさらに凝集しない(例えば、実質的にさらに凝集せず、固結せず又は塊化しない)ことを意味する。自由に流れる粒子は、「乾燥」する必要はないが、望ましくは、粒子の水分含有量は、表面水分が最小(又はなし)であるように実質上内部に包含される。
【0083】
用語「固形分」は、水性被覆組成物から水を除去した後に残る材料を指す。
【0084】
便宜上、本発明の多くの要素は別々に論じられ、任意のリストが提供され、数値は範囲内であってもよい;しかしながら、本開示の目的のために、それは、このような別れた成分、リスト項目又は範囲の任意の組合せの任意の請求項に対する開示の幅又は本開示の支持に対する制限とみなされるべきではない。他に明言がない限り、本開示と可能ないずれ及びすべての組み合わせは、すべての目的のために明示的に開示されていると考えられるべきである。
【0085】
本明細書に記述されたものと同様又は同等の方法及び材料は、本開示の実施又は試験において使用することができるが、適切な方法及び材料が本明細書に記述される。本明細書の材料、方法、及び実施例は、このように単に例示的であり、具体的に明言されているのを除いて、限定することを意図していない。
【0086】
[ポリビニルアルコールコポリマー]
ポリビニルアルコールホモポリマー及びコポリマーは、一般的な意味でよく知られたポリマーであり、様々な最終用途のために多くの形態で一般に市販されている。
【0087】
ポリビニルアルコールは、ビニルアルコールから直接容易に生成することはできない。その代わりに、ポリビニルアルコールは、酢酸ビニルを(任意のコモノマーと)重合してポリ酢酸ビニルを生成し、その後、アセテート基がさまざまな程度でヒドロキシル基に加水分解することによって、商業規模で生成する。いくつかの異なる加水分解方法がよく知られており、この目的のために、使用することができる。
【0088】
本発明での使用に適したポリビニルアルコールは、2つの一般的なカテゴリーに分類することができる:
【0089】
(1)酢酸ビニルとコモノマーとしてのエチレンとの加水分解されたコポリマーであって、ここで、コポリマーは、(a)モノマーの合計モル量に基づいて約0.1モル%から約15モル%のエチレン含有量、(b)約300から約3000の粘度-平均重合度、及び(c)約85モル%から100モル%の加水分解度を有する;及び
【0090】
(2)酢酸ビニルとコモノマーとしての1種以上の特定の不飽和酸との加水分解されたコポリマーであって、ここで、コポリマーは、(i)モノマーの合計モル量に基づいて約0.1モル%から約15モル%の不飽和酸モノマー含有量、(ii)約300から約3000の粘度-平均重合度、及び(iii)約70モル%から100モル%の加水分解度を有する。
【0091】
[ポリビニルアルコールコポリマー(1)]
ポリビニルアルコールコポリマー(1)は、(同等の加水分解度及び重合度のポリビニルアルコールホモポリマーと比較して)より疎水性であるが、ある程度の温水(35℃)で溶解特性を有する加水分解された酢酸ビニル/エチレンコポリマーである。
【0092】
ポリビニルアルコールコポリマー(1)のためのポリ酢酸ビニルコポリマー出発材料は、典型的には、重合触媒の存在下、コモノマーとしてエチレンを少量用い、酢酸ビニルモノマーのフリーラジカル重合によって生成する。
【0093】
酢酸ビニルの商業的な重合において一般的に使用される溶媒はメタノールである。重合は、典型的には、l0℃から80℃の温度範囲で行われる。重合範囲の下限は、改善された性能で生成物を与えることが知られている。酢酸ビニルの変換率は、広い範囲にわたって変化し得る。20%から100%の範囲の変換は満足のいくものであるが、商業的には少なくとも約30%の変換が好ましい。
【0094】
ポリ酢酸ビニルコポリマー(及び得られたポリビニルアルコールコポリマー(1))のエチレン含有量は、モノマーの合計モル量に基づいて、約0.1モル%、約0.5モル%、約1.0モル%、又は約2.5モル%、から約15モル%、約10モル%、又は約8モル%の範囲である。
【0095】
ポリ酢酸ビニルコポリマー(及び得られたポリビニルアルコールコポリマー(1))の粘度-平均重合度は、約300、約500又は約700から、約3000又は約2000までのあたりで変動する。ポリビニルアルコールコポリマーの粘度-平均重合度は、JIS K6726(1994)に準拠して測定した値である。具体的には、ポリビニルアルコールコポリマーは、99.5モル%又はそれ以上の加水分解度まで再鹸化され及び精製され、そしてその後に、その粘度-平均重合度は、30℃の水中で測定したその固有粘度[η](l/g)から次式(I)を使用して計算され得る。
【0096】
P=([η]x10000/8.29)(l/0.62) (I)
【0097】
ポリ酢酸ビニルは、当該技術分野の当業者に一般に知られている加水分解又はアルコール分解の方法によって、ポリビニルアルコールに変換される。このような方法において、ポリ酢酸ビニルは、水酸化ナトリウム又はナトリウムメチラートのようなアルカリ触媒と接触する。この反応の主生成物はポリビニルアルコール及び酢酸メチルである。
【0098】
ポリビニルアルコールコポリマー(1)にとって、加水分解度は、約85%、約90モル%又は約97モル%から100モル%(最大)である。加水分解度はJIS K6726(1994)に準拠して測定することができる。
【0099】
[ポリビニルアルコールコポリマー(2)]
ポリビニルアルコールコポリマー(2)は、加水分解された酸官能性ポリ酢酸ビニルコポリマーである。
【0100】
ポリ酢酸ビニルコポリマー出発材料は、典型的には、重合触媒の存在下、酢酸ビニルモノマーと1種以上の「酸官能」コモノマーとのフリーラジカル重合によって生成する。酢酸ビニルの商業的な重合において一般的に使用される溶媒はメタノールである。重合は、典型的には、l0℃から80℃の温度範囲で行われる。重合範囲の下限は、改善された性能で生成物を与えることが知られている。酢酸ビニルからポリ酢酸ビニルへの変換率は、広い範囲にわたって変化し得る。20%から100%の範囲の変換は満足のいくものであるが、商業的には少なくとも約30%の変換が好ましい。
【0101】
「酸官能」コモノマーは、(i)不飽和モノカルボン酸、(ii)不飽和ジカルボン酸、(iii)(i)のアルキルエステル、(iv)(ii)のアルキルエステル、(v)(i)のアルカリ金属塩、(vi)(ii)のアルカリ金属塩、(vii)(i)のアルカリ土類金属塩、(viii)(ii)のアルカリ土類金属塩、(ix)(i)の無水物及び(x)(ii)の無水物の1種以上である。
【0102】
このようなコモノマーの例のいくつかのは、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシル(hydroxyl methacrylate)、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-ブチル、マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル、無水マレイン酸、イタコン酸、イタコン酸モノメチル、イタコン酸ジメチル、及び無水イタコン酸を含む。
【0103】
好ましいのは、低級アルキル(C1からC8又はC1からC4)アクリレート及びメタクリルである。このようなコモノマーの非限定的な例は、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル(ethyl methyacrylate)、アクリル酸i-プロピル、メタクリル酸i-プロピル、アクリル酸n-プロピル、メタクリル酸n-プロピル、アクリル酸i-ブチル、メタクリル酸i-ブチル、アクリル酸n-ブチル、メタクリル酸n-ブチル、アクリル酸t-ブチル、メタクリル酸t-ブチル、アクリル酸エチルヘキシル、メタクリル酸エチルヘキシル及びその他を含む。好ましいコモノマーは、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル及びそれらの混合物、及び特にアクリル酸メチルを含む。
【0104】
ポリ酢酸ビニルコポリマー(及び得られたポリビニルアルコールコポリマー(2))のコモノマー含有量は、約0.1モル%、約0.5モル%又は約1モル%から約15モル%、約10モル%又は約8モル%の範囲である。アクリル酸メチルの場合、その量は、モノマーの合計モル量に基づいて、典型的には約10モル%又はそれ以下である。メタクリル酸メチルの場合、その量は、モノマーの合計モル量に基づいて、典型的には約5モル%以下である。
【0105】
ポリ酢酸ビニルコポリマー(及び得られたポリビニルアルコールコポリマー(2))の粘度-平均重合度は、約300,約500、又は約700から約3000、又は約2000のあたりで変動する。ポリビニルアルコールコポリマーの粘度-平均重合度は、上記JIS K6726(1994)に準拠して測定した値である。
【0106】
ポリ酢酸ビニルは、当該技術分野の当業者に一般に知られる加水分解又はアルコール分解の方法により、ポリビニルアルコールに変換される。このような方法において、ポリ酢酸ビニルは、水酸化ナトリウム又はナトリウムメチラートのようなアルカリ触媒と接触する。この反応の主生成物はポリビニルアルコール及び酢酸メチルである。
【0107】
得られたポリビニルアルコールは、もちろん、出発のポリ酢酸ビニルと実質上同じモノマー構成及び重合度を有するであろう。
【0108】
ポリビニルアルコールコポリマー(2)は、約70モル%、約75モル%、約85モル%、約93モル%、約95モル%、約98モル%、又は約99モル%から100モル%(最大)の加水分解度を有するべきである。加水分解度はJIS K6726(1994)に準拠して測定することができる。
【0109】
良好な冷水溶解性のポリビニルアルコールコポリマー(2)では、米国特許出願公開第2019/0055326号明細書に記述されているような懸濁液アルコール分解方法が、この記述された懸濁液アルコール方法は適切な冷水(20℃)溶解性を有するポリビニルアルコールコポリマーをもたらすので、ポリ酢酸ビニルコポリマーをポリビニルアルコールコポリマー(2)に加水分解するために望ましく使用される。このような方法により、上記に組み込まれた開示で論じられたような「ポップコーン様」形態を有するポリビニルアルコールコポリマー凝集粒子が生成する。
【0110】
上記の組み込まれた開示に記述されているように、適切なポリビニルアルコールは、ポリ酢酸ビニルからポリビニルアルコールを得て、メタノール及び酢酸メチル溶媒系中で懸濁液として回収する懸濁液アルコール分解方法によって生成することができる。このような方法は、望ましくは連続的である。懸濁液アルコール分解方法は、一般的な意味で米国特許第2734048号明細書に開示されているように、当該技術分野の当業者によく知られているが、しかし以前に組み込まれた米国特許出願公開第2019/0055326号明細書で論じられ、以下で論じられるように修正される。
【0111】
ある実施形態では、典型的には約30重量%から約60重量%のポリ酢酸ビニルコポリマーのメタノール溶液である第1の溶液、及びメタノール中の希釈したナトリウムメチラートアルコール分解触媒の第2の溶液は、アルコール分解ユニットに連続的に供給され、そこで反応が進行して、アルコール化されたポリ酢酸ビニル(ポリビニルアルコール)及び酢酸メチルの第1の懸濁液が生成する。
【0112】
触媒量は、典型的には、反応混合物の重量に基づいて約0.2重量%から約0.5重量%の範囲である。
【0113】
アルコール分解ユニットにおけるアルコール分解反応の温度は、典型的には、約58℃、又は約64℃から、約70℃、又は約68℃である。アルコール分解ユニット内の圧力は、大気圧より僅かに低い圧力から僅かに高い圧力の範囲であるが、典型的には、大気圧より僅かに高い圧力である。
【0114】
アルコール分解ユニットは、少なくとも部分的に攪拌条件下でアルコール分解が行われるような攪拌手段を包含する。このような攪拌手段は、当該技術分野の当業者によく知られている。
【0115】
アルコール分解が約40-50%に達する場合、ポリマーが部分的に析出する。不溶性材料は、メタノールと溶媒和したポリマー分子のゲルの形をとる。さらにアルコール分解によって溶解度が低下すると、ゲルはより硬くなり、連携した溶媒分子を排除し始める。アルコール分解が完了した場合、ポリマー及び溶媒は互いに不溶である。もし、このゲルを乱さない状態にすると、アルコール分解が進行し、生成物は大量の扱いにくい形で得られる。しかしながら、約40%のアルコール分解より上のこの範囲中、ゲルが機械的に扱われる(攪拌される)と、ポリマーはアルコール中に不溶性の微細に分割された固体に分解される。崩壊するゲルは、前のアルコール分解サイクルからの微粒子を一緒にトラップ及び付着し、所望の「ポップコーンボール」形態のポリビニルアルコールを生成する。
【0116】
ある実施形態では、アルコール分解ユニットは、反応が進行して部分的にアルコール化されたポリ酢酸ビニルの懸濁液を生成する一次アルコール分解容器から構成される。一次アルコール分解容器からの懸濁液は、アルコール分解反応を完了するための付加的な滞留時間を提供する攪拌された保持容器にオーバーフローする。次いで、攪拌された保持容器からの懸濁液は、1つ以上の仕上げユニットを介してポンプ輸送され、短絡した(short-circuited)ポリ酢酸ビニルと反応して、したがって、変換を所望の完了である99.5%又はそれ以上まで上げることを確実にする。
【0117】
好ましい変換は、上記の加水分解の程度である。
【0118】
次いで、得られた第1のポリビニルアルコール懸濁液は、任意に、酸と共に中和ユニットに供給されて、過剰なアルカリ触媒の主な部分未満(50当量%未満)、又は25当量%未満、又は10当量%未満、又は5当量%未満を中和し、第2の懸濁液を生成してもよい。典型的には、用いられる酸は酢酸である。中和ユニットに入る温度は、アルコール分解ユニットにおける温度よりもわずかに低く、一般に約53℃から約60℃の範囲であり、典型的には約55℃から約58℃の範囲である。中和ユニット内の圧力条件は、典型的には、アルコール分解ユニット内の圧力条件と同様である。
【0119】
存在する場合、中和ユニットを使用して、得られた第2懸濁液のpHを制御することができる。
【0120】
望ましくは、中和ユニットは、存在せず(又は、もし存在する場合回避されるか、又は実質上酸供給なしで存在するか、又は酸供給なしで存在する)、過剰のアルカリ触媒は、実質上中和されず(又は中和されない)、第1懸濁液中に残留する。
【0121】
ある実施形態では、中和ユニットから得られた第2の懸濁液は、第1の懸濁液が存在する場合、又は存在しない場合、次いで任意の熱処理ユニットに供給される。第1の懸濁液、又は存在する場合、第2の懸濁液の温度は、熱処理ユニット内で熱処理ユニットに入る温度より低くなる。最終的なポリビニルアルコールコポリマー粒子の所望の形態に応じて、温度は50℃未満、40℃未満、35℃未満、30℃未満、25℃未満、又は周囲条件より低くすることができ、より低い温度はより高い非晶質及びより少ない結晶含有物をもたらす。
【0122】
熱処理ユニットは、穏やかな加熱、又は加熱なし、あるいは能動的冷却を備えた貯蔵タンクであり得、その結果、懸濁液の温度は、入口と出口との間で低下する。
【0123】
ある実施形態では、熱処理ユニットは存在しない。
【0124】
ある実施形態では、熱処理された懸濁液、又は熱処理ユニットが存在しないか利用されていない場合、第2の懸濁液、又は熱処理ユニット及び中和ユニットが存在しないか利用されていない場合、第1の懸濁液は、ポリビニルアルコールが懸濁液から分離されてポリビニルアルコールのウェットケーキ及び分離液を生成する固-液分離ユニットに供給される。固-液分離ユニットは、遠心分離機及び/又は濾過装置、又は他の従来の固-液分離装置であり得る。
【0125】
代替の実施形態では、熱処理ユニット及び固液分離ユニットは、懸濁液及び固体の滞留時間が第2の懸濁液の温度を所望の水準まで低下させるのに十分である単一のユニット操作に組み合わせることができる。
【0126】
ある実施形態では、この方法は、ポリビニルアルコールのウェットケーキを洗浄して精製したポリビニルアルコールのウェットケーキを生成する工程をさらに含み、その後、乾燥工程を施す。得られたポリビニルアルコールのウェットケーキは、任意に、ウェットケーキを洗浄ユニットに供給することによって精製することができ、ここで、典型的には、新鮮な又は再利用されたメタノール流と接触させて、灰分及び他の汚染物を除去し、精製されたポリビニルアルコールのウェットケーキを生成する。
【0127】
最終的な粒子状凝集ポリビニルアルコール粒子を生成するために、遠心分離後の精製したポリビニルアルコールのウェットケーキ、又は洗浄ユニットが存在しないか又は使用されていない場合のウェットケーキは、乾燥ユニットに供給され、そこで、得られた粒子状凝集ポリビニルアルコールコポリマー粒子が、従来の手段により乾燥され、ポリビニルアルコールコポリマー凝集粒子を、好ましくは自由に流れる粉末として回収できるように、十分な残存液体含有物を除去する。
【0128】
上記の懸濁液アルコール方法によって生成したポリビニルアルコールコポリマー凝集粒子のD(90)粒子サイズは、約1pm又は約10pmから約1000pm又は約400pmの範囲である。
【0129】
上記の懸濁液アルコール方法によって生成したポリビニルアルコールコポリマー凝集粒子の嵩密度は0.55g/cm3又はそれ以下であることが好ましく、約0.50g/cm3又はそれ以下であることがより好ましい。
【0130】
追加の方法の詳細は、上記に組み込まれた米国特許出願公開第2019/0055326号明細書、並びに米国特許第2734048号明細書、米国特許第3497487号明細書、米国特許第3654247号明細書及び当該技術分野の当業者の一般的知識を参照することによって得ることができる。
【0131】
[農薬]
種子被覆組成物は、1種以上の疎水性農薬をさらに含む。本発明の文脈では、「農薬」は、生物からの種子への損傷を防止する又は低減する殺虫剤、殺菌剤、抗線虫薬及び同様の材料などの剤を指すために広く使用される。
【0132】
本発明の文脈において、「疎水性」農薬添加剤は、それ自体は水に溶解性しないか、又は(例えば、界面活性剤なしで)水に安定に分散できないものである。
【0133】
このような疎水性農薬は、当該技術分野の当業者には一般的によく知られており、一般に市販されている。
【0134】
適切な殺菌剤の例は、pyraclostrobin、fluxapyroxad、ipconazole、triflozystrobin、metalaxyl(metalaxyl 265 ST)、fludioxonil(fludioxonil 4L ST)、thiabendazole(thiabendazole 4L ST)、itriticonazole、imidacloprid、tefluthrin、及びこれらの組合せを含む。
【0135】
適切な殺虫剤の例は、clothianidin、imidacloprid、SENATOR(登録商標) 600 ST (Nufarm US)、tefluthrin、terbufos、cypermethrin、thiodicarb、lindane、furathiocarb、acephate、及びこれらの組合せを含む。
【0136】
疎水性農薬は、典型的にはこのような農薬の製造業者によって推奨された投与量に準拠して少量(望ましい殺虫効果を達成するための「有効量」)で利用される。
【0137】
[水性被覆組成物]
水性被覆組成物は、主なキャリア媒体として水を含む。
【0138】
ポリビニルアルコールコポリマーは、水性被覆組成物中で、被覆組成物の合計重量に基づいて約0.5重量%、約1.0重量%、又は約2.0重量%から約10重量%、約8重量%、又は約6重量%の量で使用される。
【0139】
以下に記述される任意の成分に応じて、本発明に準拠する水性被覆組成物の固形分は、典型的には、水性被覆組成物の合計重量に基づいて、約1重量%、約2重量%、又は約5重量%から約25重量%、又は約20重量%の範囲である。
【0140】
水性被覆組成物は、種子に塗布するために水で希釈できる濃縮物として提供することもできる。
【0141】
ポリビニルアルコールコポリマー及び他の任意の原料に応じて、水性被覆組成物は、溶液、分散液、乳状液又は懸濁液の形態であってもよく、これらの用語は当業者に理解される。例えば、成分のいくつかは溶液中にあってもよく、一方、他の成分は分散、乳化及び/又は懸濁されてもよい。このような場合、水性被覆組成物の成分は、塗布前に水性被覆中に実質上均一に分配されるべきである。従って、水性被覆組成物は、望ましくは、穏やかな加熱を伴う又は伴わない攪拌のような従来の手段により成分を容易に均一に分配することができる安定な溶液、乳状液及び/又は分散液、又は溶液、乳状液、分散液及び/又は懸濁液であるべきである。
【0142】
[任意の成分]
ポリビニルピロリドン、デンプン及び高分子量のポリエチレングリコールなどのポリビニルアルコールと互換性のある他のポリマーを、ポリビニルアルコールに配合してコーティング性能を高めてもよい。可塑剤、タルク、顔料及び脱タック剤(detackifier)を、任意に、種子被覆溶液、乳状液又は懸濁液に加えてもよい。
【0143】
[水性被覆組成物の塗布]
種子に水性被覆組成物を塗布するための方法は、当業者によく知られている。従来の方法は、例えば、混合、スプレー又はそれらの組合せを含む。ロータリーコーター、ドラムコーター及び流動層のような、様々なコーティング技術を利用した様々なコーティング機が市販されている。種子を、バッチ式又は連続式のコーティング方法によって、被覆してもよい。
【0144】
種子は、望ましくは被覆組成物のフィルムで実質上一様に被覆される。
【0145】
[被覆された種子]
本明細書に記述の種子被覆組成物を用いて処理される種子は、例えば、小麦、大麦、ライ麦、オート麦、米、ソルガム、リンゴ、ナシ、プラム、モモ、アーモンド、チェリー、イチゴ、ラズベリー、ブラックベリー、テンサイ、飼料用ビート、マメ、ヒラマメ、エンドウ、大豆、アブラナ、マスタード、ポピー、オリーブ、ヒマワリ、ココナッツ、トウゴマ、ココア豆、マロウ、キュウリ、メロン、綿、亜麻、麻、ジュート、オレンジ、レモン、グレープフルーツ、マンダリン、ホウレンソウ、レタス、アスパラガス、キャベツ、ニンジン、タマネギ、トマト、ジャガイモ、パプリカ、アボカド、花、低木、広葉樹、果植物、大豆、マメ、トマト、コショウ、ジャガイモ、コム(COM)、タマネギ、球根、米、ソルガム、トウモロコシ、タバコ、ナッツ、コーヒー、サトウキビを含む。
【実施例】
【0146】
本発明は、ポリマーの性能の以下の具体例からさらに理解されるであろう。しかしながら、これらの実施例は、いかなる手段においても本発明の一般的な幅を制限するものと解釈されるべきではないことが理解されるであろう。
【0147】
CPVOH#1は、株式会社クラレ(日本、東京都)から商品名「クラレポバール(商標)22-88」で市販されている部分加水分解(87から89モル%)、中粘度(20.5から24.5mPa・s)のポリビニルアルコールホモポリマーであった。
【0148】
CPVOH#2は、株式会社クラレ(日本、東京都)から商品名「クラレポバール(商標)5-88」で市販されている部分加水分解(86.5から90モル%)、低粘度(4.6から5.4mPa・s)ポリビニルアルコールホモポリマーであった。
【0149】
PVOH1-1は、酢酸ビニル及びエチレンのコポリマーを加水分解することによって得られた、高加水分解(98.2モル%)、中程度の粘度-平均重合度(1550)、及び4.1モル%のエチレン含有量のエチレン-ビニルアルコールコポリマーであった。
【0150】
PVOH2-1は、酢酸ビニル及びアクリル酸メチルのコポリマーを加水分解することによって得られた、高加水分解(99.5モル%)、中程度の粘度-平均重合度(1440)、及び5.1モル%のアクリル酸メチル含有量のアクリル酸メチル-ビニルアルコールコポリマーであった。
【0151】
<実施例1>大豆種子の処理
テーブル2に従って種子被覆配合物を調製した。大豆種子は、Acceleron(登録商標)パッケージ(Monsanto社、metalaxyl、pyraclostrobin、imidacloprid及びfluxapyroxadを含む)のベース、カラーコートレッド(Color Coat Red)及び水で処理して、Accelron(登録商標)パッケージの5.8fl.oz/cwtの割合を達成した。
【0152】
【0153】
ダストオフ手順:乾燥させ、処理した大豆種子を真空下の密閉系で転がした(tumbled)。空気の流れは、ふるいを通して濾過された容器を通して維持した。フィルタ上の塵の量を秤量し、その結果を以下のテーブル3に示す。
【0154】
【0155】
見てわかるように、PVOHタイプ(1)及び(2)はいずれも、対照(PVOHなし)又は標準的なポリビニルアルコールホモポリマー(CPVOH)の被覆よりも発生した塵の量が少ないことを示す。
【0156】
温発芽(Warm Germination):この試験は、未処理の種子及び処理を施した種子の最大発芽能を決定するために使用した。湿ったクレープセルロース紙上に100粒の種子を4回繰り返し植え、25℃に7日間置き、それらの後、苗をAOSA規則に準拠して「正常」、「異常」又は「枯死」と評価した。「正常」発芽率は、試験期間内に発芽した種子の平均数として、「異常」又は「枯死」種子を除いた数を、元の種子の総数で割り、100を掛け、決定した。その結果を以下のテーブル4に示す。
【0157】
【0158】
温発芽試験は理想的及びストレスのない発芽条件を表していたので、その結果は、本発明の被覆組成物は理想的な条件下での発芽率に有害な影響を及ぼさなかったということを示す。それゆえ、これらの結果は、本発明の被覆組成物は、有用な種子被覆を決定するために望ましい対照種子と比較して、種子の発芽を害したり、低減しなかったことを示す。
【0159】
低温発芽試験(Cold germination test):この試験は、土壌水分が高く、土壌温度が低い及び微生物活性と関連づける不利な条件下で、種子が発芽する能力を測定するように設計されている。湿ったクレープセルロース紙上に100粒の種子を4回繰り返し植え、砂で覆った。覆われたトレイは、l0℃に7日間置き、25℃に4日間移され、その後、活力を考慮してAOSA規則に準拠して苗を「正常」として評価した。「正常」発芽率は、試験期間内に発芽した種子の平均数として、「異常」又は「枯死」種子を除いた数を、元の種子の総数で割り、100を掛け、決定した。その結果を以下のテーブル5に示す。
【0160】
【0161】
低温発芽試験の結果は、本発明に準拠した被覆組成物で被覆された種子の%発芽率に重要な改善があることを示す。
【0162】
加速劣化試験:加速劣化試験は、倉庫保管における種子ロットの持ち越し可能性を概算する。種子を秤量し、水ジャケット付きチャンバーに置き、43℃及び高湿度で72時間維持した。湿ったクレープセルロース紙上に100粒の種子を4回繰り返し植え、砂で覆った。植えられ覆われたトレイを25℃に7日間置き、その後AOSA規則に準拠して正常な苗を評価した。「正常」発芽率は、試験期間内に発芽した種子の平均数として、「異常」又は「枯死」種子を除いた数を、元の種子の総数で割り、100を掛け、決定した。その結果を以下のテーブル6に示す。
【0163】
【0164】
加速劣化の結果は、対照と比べて、少なくとも被覆種子の材料の変質がないことを示す。それゆえ、これらの結果は、本発明の被覆組成物が、有用な種子被覆を決定するために望ましい対照種子と比較して、種子の発芽を害したり、低減しなかったことを示す。
【0165】
流動性:大豆の乾燥流量は、相対湿度56%、温度25℃で、種子の1200g(300gの4回の反復)が漏斗を流れるのに要する時間として、測定した。大豆に被覆を加えると、種子の流れがかなり遅くなる傾向があり、望ましい特性ではない。テーブル7に示すように、本発明に準拠した被覆組成物の使用は、対照と比較して1秒未満流れを低下させ、効果的に未処理種子と同じ速さで流れた。
【0166】
種子のブリッジ(Bridging)は、コーターの外に存在する種子が貯蔵ホッパーに集められ、近づいてくる種子によって圧縮された場合に起こる。これは、装置のブロック、労力及び時間の点で種子処理施設へ課題を提示する。テーブル7に示すように、本発明に準拠する被覆組成物の使用は、ブリッジの傾向を示さなかった。
【0167】
【0168】
植栽性:種子間の植え付け距離が標的距離の+/-25%となる正確な植え付け距離を見出した。1つの種子を植えるべきと期待される標的を評価した:1つの種子が外れた場合、それを外れた標的(標的の総数の割合として計算される)として数え、2つ以上連続して標的が外れた場合、それらを複数の外れた標的として数えた。試験当たりの使用された種子の数は1000粒であった。テーブル8は、本発明に準拠して処理した種子が対照よりも良好な植栽性を示したことを示す。明らかに、増加した植え付け率及び1つの標的又は完全に標的を外れ重複した種子の低い発生率は、植物のより均一な立ち位置(スタンド)を可能にし、それはより良い成長条件及び究極的には植えられた単位面積あたりの収量の増加に貢献する。
【0169】