(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-06
(45)【発行日】2023-10-17
(54)【発明の名称】ワイヤーソーによって半導体ウェーハを生成するための方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20231010BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20231010BHJP
B28D 5/04 20060101ALI20231010BHJP
【FI】
H01L21/304 611W
H01L21/68 N
B28D5/04 C
(21)【出願番号】P 2021534904
(86)(22)【出願日】2019-12-12
(86)【国際出願番号】 EP2019084799
(87)【国際公開番号】W WO2020126784
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-08-11
(31)【優先権主張番号】102018221921.4
(32)【優先日】2018-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】599119503
【氏名又は名称】ジルトロニック アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Siltronic AG
【住所又は居所原語表記】Einsteinstrasse 172,81677 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バイヤー,アクセル
(72)【発明者】
【氏名】フリンタルト,カール
(72)【発明者】
【氏名】ビースナー,ペーター
(72)【発明者】
【氏名】ゲーマッハー,ボルフガング
(72)【発明者】
【氏名】クロイツェダー,ロベルト
【審査官】中田 剛史
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-047673(JP,A)
【文献】特開2003-145407(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
H01L 21/683
B28D 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤーソーによってワークピースを処理することにより、前記ワークピースから半導体ウェーハを生成するための方法であって、
ワイヤー案内ローラー間に張り渡されて走行方向に動くワイヤーの配列を通して、前記ワークピースを供給するステップと、
前記ワイヤーが前記ワークピースに係合すると、切り溝を生成するステップと、
前記ワイヤーの配列を通して前記ワークピースを供給する間に、固定基準点に対する前記切り溝の各々の位置を測定し、
理想的な前記切り溝の形成のために必要な前記固定基準点に対する位置である設定点位置と比較することで、前記切り溝の配置エラーを判断するステップと、
前記ワイヤーの配列を通る前記ワークピースの供給中に、前記ワークピースの長手方向軸に沿って、判断された前記配置エラーに応じた前記ワークピースの補償運動を誘発するステップとを含む、方法。
【請求項2】
前記ワイヤーの配列を通る前記ワークピースの前記供給の前に、前記ワイヤーソーによって前もって生成された半導体ウェーハの局部形状を測定することで、前記切り溝の前記配置エラーを判断するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記切り溝に光学的放射、IR放射、X線放射もしくはγ線放射を照射することによって、前記切り溝の機械的感知によって、または、前記切り溝の誘導測定もしくは容量測定によって、前記切り溝の位置を測定し、測定された前記位置を前記切り溝の前記設定点位置と比較することにより、前記切り溝の前記配置エラーを判断するステップを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
複数のワークピースの処理の過程で、前記ワイヤーソーに特有の補正プロファイルの変化を追跡するステップと、
前記変化が確立されたしきい値を上回った場合に、予知保全処置を開始するステップとを含む、請求項1または2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ワイヤーソーによってワークピースを処理することにより、ワークピースから半導体ウェーハを生成するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
先行技術/問題
JP 11 165 251 Aは、ワイヤーソーによってワークピース(インゴット)からウェーハを生成するための方法であって、ワークピースの軸方向に沿って、ワイヤーソーのワイヤー領域のワイヤーのたわみの大きさおよび方向を検出するステップと、検出の結果に応じて、ワイヤーのたわみを補正するためにワークピースの補償運動を誘発するステップとを含む、方法を開示する。
【0003】
JP 2000 15 552 Aは、ワイヤーの走行方向が反転した瞬間に、ワークピースの軸方向に沿って、予め定められた大きさの範囲でワークピースの補償運動を誘発するステップを含み、大きさは、ワイヤーの走行方向が反転した瞬間にワイヤーのたわみが補正されるように予め定められる、同様の方法を開示する。
【0004】
US 5 875 770は、ワークピースを処理する前にウェーハの反り曲線を検出するステップと、ワークピースの軸方向に沿って、反りが減少したウェーハが形成されるような範囲でワークピースの補償運動を誘発するステップとを含む、同様の方法を開示する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これらの利用可能な解決策にもかかわらず、ワイヤーソーによってワークピースから半導体ウェーハを生成するための方法の改良の必要性が依然として存在する。特に、たとえば、半導体ウェーハの局所的平坦性に悪影響を及ぼす、ワークピースおよび/またはワイヤー案内ローラーの熱膨張の結果として、ワークピースとワイヤーとが相対運動を実行することが、考慮されるべきである。
【0006】
特に、方法の改良は、特に反りおよびナノトポグラフィに関するその平坦性が、公知のやり方で生成されるウェーハの平坦性よりも良好である半導体ウェーハが利用可能であるように、必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
説明された一連の問題は、この発明の目的を生み出した。
この発明の目的は、ワイヤーソーによってワークピースを処理することにより、ワークピースから半導体ウェーハを生成するための方法であって、
ワイヤー案内ローラー間に張り渡されて走行方向に動くワイヤーの配列を通して、ワークピースを供給するステップと、
ワイヤーがワークピースに係合すると、切り溝を生成するステップと、
切り溝の配置エラーを判断するステップと、
ワイヤーの配列を通るワークピースの供給中に、ワークピースの長手方向軸に沿って、判断された配置エラーに応じたワークピースの補償運動を誘発するステップとを含む、方法によって達成される。
【0008】
ワークピースから切断された半導体ウェーハは、上側面および下側面と、それら2つの間に延在するエッジとを有する。ワークピースから切断後、上側面および下側面はできるだけ平坦であり、互いの間の距離が最大限に均一であるということが、従来から望まれる。開始時の側面の平坦性および半導体ウェーハの厚さの均一性がより良好であるほど、成功はより大きく、また、電子部品を形成するために半導体ウェーハをさらに処理する産業の厳格な要件を満たす目標製品を形成するために、ラップ仕上げおよび/または研削、エッチング、研磨、およびオプションでコーティングといったその後のステップによって半導体ウェーハを改良する支出がより低い。上側面は、半導体ウェーハの表側とも呼ばれ、概して、半導体ウェーハのさらなる処理の過程で電子部品の構造を適用するよう意図された面である。
【0009】
本発明は、ワイヤーソーによってワークピースを処理する際、その配置が理想と見なされる配置からできるだけずれていない切り溝がワークピースにおいて形成されることを保証する目的を有する。均一な厚さと最大限に平坦な側面とを有する半導体ウェーハが求められる場合、理想的な切り溝は、直線状に、かつ、ワークピースの長手方向軸に対して直角に延在する。言い換えれば、そのような切り溝の中央を通る軌跡は、ワークピースの長手方向軸に対して垂直に配向された直線に沿って延在する。そのような軌跡は以下に、目標軌跡と呼ばれるであろう。したがって、実際の軌跡が目標軌跡からずれる場合、切り溝の配置エラーがある。これは、切り溝の中央を指す位置ベクトルがもはや目標軌跡で終わらない場合に当てはまる。
【0010】
切り溝の配置エラーは、たとえば、ワイヤーが、ワークピースへのその係合中に、その走行方向に対して垂直に、すなわち、それが張り渡されるワイヤー案内ローラーの回転軸の方向に動く場合、または、ワークピースが、ワイヤーの配列を通る供給中の熱の発現のために軸方向に膨張する場合に、生じる。後者の場合、切り溝の配置エラーは、切り溝がワークピースの中央からより離れている場合に、それに応じてより大きくなる。ワークピースの中央とは、ワークピースの2つの端の間の位置である。
【0011】
本発明の一局面は、ワークピースとワイヤーとの間の相対運動をもたらした理由にかかわらず、切り溝の配置エラーを判断することである。そのような理由の例は、ワイヤーの運動、ワークピースの運動、またはワークピースの熱膨張である。本発明の別の局面は、特定のワイヤーソーを使用する場合に系統的に生じる切り溝の配置エラーと、特定のワイヤーソーの使用とは独立してランダムに生じる切り溝の配置エラーとを区別することである。
【0012】
便宜上、少なくとも1つの閉じた制御ループがセットアップされ、制御偏差、すなわち、切り溝の確認された配置エラーが、操作された変数の修正、すなわち、ワークピースの補償運動の誘発を用いて対応される。
【0013】
この発明の第1の構成によれば、切り溝の配置エラーの判断は、ワイヤーの配列を通るワークピースの供給中に実行される。好ましくは、固定基準点に対する切り溝の各々の位置が測定され、設定点位置と比較される。切り溝の設定点位置とは、理想的な切り溝が形成されるために必要とされるであろう固定基準点に対する位置である。切り溝の測定位置の、その設定点位置からの偏差は、切り溝の配置エラーに相当する。偏差は原則として、切り溝ごとに異なるため、偏差は、切り溝の配置エラーを求めるために平均化される。言い換えれば、各切り溝に、同じ配置エラーが割り当てられる。平均化は重み付けなしで実行されてもよく、または、特定の切り溝の配置エラーが特別に重み付けされる。切り溝の配置エラーから、補正プロファイルが導き出されてもよく、それは、切り溝の配置エラーを排除するために、ワークピースの供給中にワークピースが動かされるべき大きさおよび方向を特定する。ワークピースへのワイヤーの侵入深さを越えたと見なされると、補正プロファイルは、切り溝の確認された配置エラーのプロファイルを補完するプロファイルを有する。
【0014】
固定基準点に対する切り溝の位置の測定は、好ましくは、切り溝に光学的放射、IR放射、X線放射、またはγ線放射を照射することによって実行される。さらに、切り溝の機械的感知、または、切り溝の誘導測定もしくは容量測定も、想定され得る。切り溝のそのような直接観測は、ワークピースとワイヤーとの間のあらゆる相対運動を明らかにする。
【0015】
切り溝の確認された配置エラーに応じて、ワークピースの供給中、確認された配置エラーとは反対方向に向けられるワークピースの補償運動が、その長手方向軸に沿って誘発される。切り溝の配置エラーはこのため、ワークピースの供給中、連続的に減少され、最適な場合には排除される。
【0016】
この発明の第2の構成によれば、切り溝の配置エラーの判断は、ワイヤーの配列を通るワークピースの供給前に実行される。この手順により、特定のワイヤーソーを使用する場合に系統的に生じる切り溝の配置エラーが判断される。切り溝の配置エラーを判断するために、特定のワイヤーソーによって前もって生成された半導体ウェーハの局部形状が測定される。これらの半導体ウェーハは、このワイヤーソーによって処理された1つ以上のワークピースから生じる。半導体ウェーハの局部形状は、半導体ウェーハに隣接する切り溝の軌跡をほぼ再現する。好ましくは、SEMI MF 1390-0218に従った反り測定の中間面の局部形状が、具体的には以下のように得られる。半導体ウェーハの中心を通って延在する線上にある中間面の測定値を選択することによって、高さ線(線走査(line scan:LS))が生成される。測定値は、好ましくは半導体ウェーハを切断する際のワークピースの供給方向において、半導体ウェーハの直径に続く線上にあるか、または、そのような方向から少なくともせいぜい±20°ずれたものである。
【0017】
特定のワイヤーソーを使用する場合に系統的に生じる切り溝の配置エラーを識別するために、このワイヤーソーによって1つ以上のワークピースから生成された半導体ウェーハの局部形状は、単一の局部形状を求めるために平均化される。平均化は重み付けなしで実行されてもよく、または、特定の半導体ウェーハの局部形状が、ワークピースにおけるそれらの相対的配置のために特別に重み付けされる。たとえば、平均化の際、以前に処理された1つ以上のワークピースの中央の領域または端のうちの1つの領域から得られた半導体ウェーハの局部形状のみを考慮に入れることが可能である。平均化された局部形状に基づいて、次に、特定のワイヤーソーが使用され、軌跡に影響を与える他の影響が無視される場合に、切り溝の軌跡がどうなるかが推測される。そのような軌跡は、その後、予想軌跡と呼ばれるであろう。ワークピースの供給中に予想される切り溝の配置エラーが、予想軌跡と目標軌跡との比較から得られる。比較は、ワイヤーソーに特有の補正プロファイルを与え、それは、ワイヤーの配列を通るワークピースの供給中の、ワークピースへのワイヤーの侵入深さの関数としてのワークピースの補償運動の方向および大きさを特定する。ワイヤーソーに特有の補正プロファイルのプロファイルは、原則として、平均化された局部形状のプロファイルを補完する。
【0018】
ワイヤーソーに特有の補正プロファイルはまた、好ましくは、ワイヤーソーの性能の変化を速やかに識別し、それに対応することができるために使用される。ワークピースの処理の過程で生じる、ワイヤーソーに特有の補正プロファイルの変化は、摩耗を免れないワイヤーの、および/または、ワイヤー案内ローラーのコーティングの、または、ワイヤーソーの別の構成要素の摩耗を示す。したがって、ワイヤーソーに特有の補正プロファイルの変化について、しきい値が定義されてもよく、これに達すると、予知保全処置が開始される。そのようなしきい値に達する前でさえ、ワイヤーソーに特有の補正プロファイルの変化は、作業成果の摩耗関連劣化に対抗する適合処置を実行するための理由として解釈されてもよい。そのような適合処置は、たとえば、切断媒体懸濁液の組成および/または温度を変更すること、または、冷却液の温度を変更すること、および、ワイヤー速度または他のプロセス特有パラメータを変更することを伴ってもよい。
【0019】
第3の構成は、第1の構成と第2の構成とを組合せることを伴う。ワークピースの供給中に、ワークピースの補償運動の第1の部分が、この発明の第1の構成に従ってワイヤーの侵入深さの関数としてリアルタイムで判断される補正プロファイルに基づいて誘発される。ワイヤーの配列を通るワークピースの供給前に、ワークピースの補償運動のさらに別の部分が、この発明の第2の構成に従って判断されたワイヤーソーに特有の補正プロファイルに基づいて誘発される。切り溝の配置エラーに対する、ランダムに生じ、したがって予測できない影響と、特定のワイヤーソーの使用のために系統的に生じる影響とはしたがって、互いに別々に考慮される。
【0020】
ワイヤーソーに特有の補正プロファイルは、もちろん、この発明に従った方法の第1の構成に従って導き出される補正プロファイルを記録することによって得られてもよい。
【0021】
本発明は、ワイヤーに固定された砥粒を含むワイヤーとともに、または、砥粒がなく、切断媒体懸濁液と組合されて効果を発揮するワイヤーとともに、使用されてもよい。特に、ダイヤモンドが砥粒として想定されてもよい。ここで問題になっているワイヤーは、ワイヤーソーのワイヤー案内ローラーに巻きつけられるワイヤーの区分である。ワイヤーソーのワイヤー案内ローラーの数は、この発明の使用にとって本質的ではない。たとえば、ワイヤーソーは、2つ、3つ、4つ、または、さらにより多い数のワイヤー案内ローラーを含んでいてもよい。
【0022】
ワークピースは好ましくは、多結晶または単結晶状態で存在し得るシリコンなどの半導体材料から構成される。ワークピースの輪郭は、正方形、矩形、または円形である。この発明に従った方法は、少なくとも200mm、特に少なくとも300mmの直径を有する単結晶シリコンの丸い半導体ウェーハの生成のにとって特に好適である。
【0023】
この発明を、図面を参照して、以下にさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】この発明に従った方法を実行するのに好適なワイヤーソーの特徴を示す図である。
【
図2】切り溝の中央を通る実際の軌跡が目標軌跡とどのように異なり得るかを示す図である。
【
図4】半導体ウェーハの反り測定の中間面から導き出された高さ線を示す図である。
【
図5】半導体ウェーハの反り測定の中間面から導き出された高さ線を示す図である。
【
図6】半導体ウェーハの反り測定の中間面から導き出された高さ線を示す図である。
【
図7】半導体ウェーハの反り測定の中間面から導き出された高さ線を示す図である。
【
図8】半導体ウェーハの反り測定の中間面から導き出された高さ線を示す図である。
【
図9】半導体ウェーハの反り測定の中間面から導き出された高さ線を示す図である。
【
図10】
図4に対応するものの、縦座標の目盛りがより高度に分解されているという違いを有する図である。
【
図11】
図5に対応するものの、縦座標の目盛りがより高度に分解されているという違いを有する図である。
【
図12】
図6に対応するものの、縦座標の目盛りがより高度に分解されているという違いを有する図である。
【
図13】ワークピースの処理の過程で、ワイヤーソーに特有の補正プロファイルがどのように変化し得るかを示す図である。
【
図14】ワークピースの処理の過程で、ワイヤーソーに特有の補正プロファイルがどのように変化し得るかを示す図である。
【
図15】ワークピースの処理の過程で、ワイヤーソーに特有の補正プロファイルがどのように変化し得るかを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、この発明に従った方法を実行するのに好適なワイヤーソーの特徴を示す。ワイヤーソーはソーイングワイヤー1を含み、それは、左ワイヤー案内ローラー3および右ワイヤー案内ローラー4の周りを螺旋状に数回通されるとともに、本発明の説明のためにワイヤーと呼ばれる、ワイヤー案内ローラーの上側で走るワイヤー区分が、平行に走ってワイヤーウェブ11を形成するように、溝2によって案内される。ワークピース15が、ソーイングストリップ16に、たとえば接着剤17によって固定される。ソーイングストリップ16には、(表示的に表わされた)供給装置12によって、ワイヤーウェブ11に対して垂直な矢印方向18にワークピース15が供給され、ウェブ11のワイヤーと係合するようになる。オプションで、ワイヤーソーは、左の細長い噴流22および右の細長い噴流23の形をした切断媒体懸濁液を左ワイヤー案内ローラー3および右ワイヤー案内ローラー4上に送出するためのノズル21を有する左ノズル列19および右ノズル列20を含む。
【0026】
ワイヤー案内ローラーは、軸5および軸6の周りを回転可能に搭載される。それらの軸と、図示された例では円柱状のインゴットであるワークピース15の軸14とは、互いに平行に配向される。切断プロセスを開始するために、一方のワイヤー案内ローラー、たとえば左ワイヤー案内ローラー3が、回転(7)して駆動される(マスター)。他方のワイヤー案内ローラー(スレーブ)、この例では右ワイヤー案内ローラー4が、ワイヤー1によって引っ張られて、同じ向きで回転方向8に共回転する。ワイヤーがワークピース15に係合すると、切り溝13が形成される。
【0027】
従来、ワイヤー長手方向運動9、10の方向は、ワークピース15を完全に切断する間に数回反転される(破線矢印)。往復運動と呼ばれる、ワイヤーの方向変更のこれらの対のうちの各個々の1つでは、ワイヤーは、ある方向においてより長い長さにわたって動かされ、反対方向においてより短い長さにわたって動かされる。
【0028】
この発明によれば、切り溝の配置エラーの判断後、ワークピース15の補償運動が、ワークピース15の軸14に沿って、確認された配置エラーに応じて、具体的には、切り溝の確認された配置エラーから導き出された補正プロファイルおよび/またはワイヤーソーに特有の補正プロファイルに基づいて誘発される。両矢印4は、供給装置12によって引き起こされるワークピース15の補償運動を表わす。
【0029】
図2は、ワークピースへのワイヤーの係合中に切り溝を観察することによって得られ得る画像を断面図で示す。それは、ワークピース15およびワークピースを通って延在する切り溝13の一部を示す。切り溝の形成中、切り溝13の中央を通って延在する実際の軌跡は、目標軌跡24から多かれ少なかれ著しくずれる。この差異は、切り溝13の確認された配置エラーを表わす。前述のように、この発明は、ワークピースの長手方向軸に沿って、切り溝の確認された配置エラーに応じたワークピースの補償運動を誘発することを提案する。
【0030】
この発明の第1の構成に従った、実際の軌跡と目標軌跡との比較、または、この発明の第2の構成に従った、予想軌跡と目標軌跡との比較は、ワークピースにおけるワイヤーの侵入深さの関数としての切り溝の配置エラーのプロファイルの説明と、切り溝の配置エラーのプロファイルをそれぞれ補完する、補正プロファイル(この発明の第1の構成)、または、ワイヤーソーに特有の補正プロファイル(この発明の第2の構成)とをもたらす。
【0031】
図3は、目標軌跡からの実際の軌跡の偏差Δがワイヤーの侵入深さPの関数としてプロットされている補正プロファイルを示す。偏差Δに相当する、方向および大きさを有するワークピースの補償運動は、供給装置によって誘発される。切り溝の配置エラーがない(Δ=0)場合(図示された例では、侵入深さがほぼ-90mmになるまで当てはまらない)にのみ、ワークピースの補償運動の誘発が停止される。
【0032】
図4~
図9は、補正プロファイルによって特定されるワークピースの補償運動が半導体ウェーハの切断中に誘発された場合(
図4~
図6)、または、そのような補償運動の誘発が省略された場合(
図7~
図9)の、ワイヤーウェブのワイヤーによってワークピースから切断された3つの半導体ウェーハそれぞれの高さ線LSを示す。高さ線はそれぞれ、半導体ウェーハの切断中のワークピースの方向においてそれぞれの半導体ウェーハの直径に続く線上にある中間面の測定値が選択された状態で、反り測定の中間面から導き出される。ワークピースにおける半導体ウェーハの位置は、半導体ウェーハを切断する際、3つの半導体ウェーハ50の各々の間に、さらに別の半導体ウェーハが形成されるようになっていた。高さ線の比較から明らかであるように、この発明を使用した場合の半導体ウェーハは、著しくより平坦であり、ワークピースにおけるそれらの位置の影響も特にない。これは、
図10~
図12によっても確認される。それらは、それらにおいて縦座標の目盛りがより高度に分解されているという点でのみ、
図4~
図6と異なる。
【0033】
図13、
図14、および
図15は、複数のワークピースの処理の過程で、ワイヤーソーに特有の補正プロファイルがどのように絶えず変わり得るかを示す。したがって、偏差Δのためのしきい値を定義することが有利であり、それを上回ると、予知保全処置が開始される。しきい値は、たとえば、
図15に表わされるような最大偏差Δ
maxを有するワイヤーソーに特有の補正プロファイルのみが予知保全処置の開始をもたらすように定義されてもよい。
【0034】
実施形態の例の前述の説明は、例示として理解されるべきである。それによりなされた開示は、一方では、当業者が本発明およびそれに関連付けられた利点を理解することを可能にし、他方では、当業者の理解において、説明された構造および方法への明らかな変更および修正も含む。したがって、すべてのそのような変更および修正、ならびに均等物は、請求項の保護の範囲によって網羅されるよう意図されている。
【符号の説明】
【0035】
使用される参照番号のリスト
1 ソーイングワイヤー
2 溝
3 左ワイヤー案内ローラー
4 右ワイヤー案内ローラー
5 軸
6 軸
7 回転
8 回転方向
9 ワイヤー長手方向運動
10 ワイヤー長手方向運動
11 ワイヤーウェブ
12 供給装置
13 切り溝
14 軸
15 ワークピース
16 ソーイングストリップ
17 接着剤
18 矢印方向
19 ノズル列
20 ノズル列
21 ノズル
22 噴流
23 噴流
24 目標軌跡